JP2009541409A - ヘパラナーゼの抑制の為にデフィブロチドを使用する方法。 - Google Patents

ヘパラナーゼの抑制の為にデフィブロチドを使用する方法。 Download PDF

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Abstract

骨髄腫腫瘍細胞(U266)及びヒト微小血管内皮細胞(HMEC)のヘパラナーゼ酵素の活性及び発現に対するデフィブロチドの効果を検証する為に研究が実施された。本研究は、デフィブロチドが、ヘパラナーゼの抑制により及び/又はヘパラナーゼ遺伝子発現の下方制御により正に影響される病気、例えば糖尿病などの処置の為の医薬の製造の為に有効に用いられうることを実証した。
【選択図】図3

Description

この研究の範囲は、骨髄腫腫瘍細胞(U266)及びヒト微小血管内皮細胞(HMEC)についてのヘパラナーゼの活性及び発現に対するデフィブロチドの効果を検証することであった。
1.当技術分野の状況
デフィブロチドは、主にその抗血栓性活性の理由で用いられるが(3)、それは、例えば急性腎不全の処置(4)及び急性心筋虚血の処置(5)などの他の適用において用いられうる。デフィブロチドは、緊急の臨床状態の処置において、例えば化学療法投与計画の高い用量に関連する毒性を抑制する為に、特には肝臓静脈閉塞症候群の処置においても用いられ(11、12);デフィブロチドは、フルダラビンの抗白血病効果を変えることも無く、フルダラビンにより誘発されるアポトーシスに対して及び内皮細胞及び上皮細胞のアロアクチベーション(alloactivation)に対して保護作用を有すると示され(13);リポポリサッカライドにより媒介される内皮の損傷のモデルにおいて達成されたデフィブロチドの保護効果についての前臨床データも存在する(14)。デフィブロチドは最近、抗腫瘍剤として特に有効であることも明らかになった(10)。HIV感染(9)及び他の病気(8)を処置する為にデフィブロチドを使用する方法について特許が付与された。
語「デフィブロチド(これ以降DFという)」は通常は、動物及び/又は植物組織からの抽出物により得られるポリデオキシリボヌクレオチドを指し(1、2);該ポリデオキシリボ−ヌクレオチドは通常は、アルカリ金属塩、一般的にはナトリウム塩の形で用いられ;そのCAS登録番号は83712−60−1である。
均一且つ明確な物理学的/化学的特徴を有し且つあり得る望ましくない副作用も無いDFを製造する方法が、米国特許に記載される(6、7)。特に、これらの特許(両方とも参考文献として本明細書に組み込まれる)に従い製造されたDFは、ランダム配列の以下の式に対応するポリデオキシリボヌクレオチドであり、
Figure 2009541409
ここで、P=リン酸基、dAp=デオキシアデニルのモノマー、dGp=デオキシグアニルのモノマー、dTp=デオキシチミジルのモノマー、dCp=デオキシシチジルのモノマー、であり、
及び、好ましい実施態様に従い、以下の化学物理的特性を提示する:
・電気泳動=均一な陽極移動度;
・吸光係数、260±1nmでのE1cm 1%=220±10°;
・吸光反応、E230/E260=0.45±0.04;
・モル吸光係数(リンに参照された)、(P)=7.750±500;
・ロータリーパワー(rotary power)の可逆的な深色効果、ネイティブDNAにおける%として示される;h=±155;
・0.95±0.5のプリン:ピリミジン比。
このポリデオキシリボヌクレオチドは、それが抽出により又は合成的に得られるかどうかに依存せずに、好ましくは本発明の目的の為に用いられる化合物である。
2.背景
ヘパラナーゼはエンドグリコシダーゼであり、これは細胞外マトリックス(ECM)におけるヘパラン硫酸プロテオグリカンのヘパラン硫酸側鎖を分解する。ヘパラナーゼは、ECM分解(degradation)において重要な役割を果たし、腫瘍細胞及び炎症性白血球の遊走及び血管外遊出を促進する。分解に際して、ヘパラナーゼは、細胞増殖及び走化性を刺激する成長因子及びサイトカインを放出する(15、16)。
ヘパラナーゼは、骨髄性白血球(すなわち好中球)において、血小板において及びヒト胎盤において高度に発現される。ヒトヘパラナーゼは、原発腫瘍の種々のタイプにおいて上方制御されることが発見されており、いくつかのケースにおいて、増加した腫瘍侵襲性及び及び血管増生に関連し並びに乏しい将来の生存に関連する(17)。これらの観察、ヘパラナーゼ遺伝子サイレンシングの抗がん効果及びヘパラナーゼ抑制性分子の抗がん効果、並びに単独の機能的ヘパラナーゼの予期されない同定は、該酵素が、抗がん剤開発についての有望な標的であることを示唆する。
DFは、該酵素の活性を抑制すること及びその発現を下方制御する作用をしうる。該ヘパラナーゼ活性及びそのあり得る抑制は、heparan Degrading Enzyme Assay Kitにより測定されうる一方で、その発現及びあり得る下方制御はリアルタイムPCRにより評価されうる。
3.方法の記載
ヘパラナーゼ発現及びその活性に対するDFの効果を評価する為に、U266及びHMEC細胞が、24時間、種々の濃度でのDFと一緒に又は生理食塩水(対照細胞)と一緒にインキュベートされた。デフィブロチドとのインキュベーション後、該細胞は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.4により洗浄され、そして種々のU266試料及びHMEC試料が、種々の実験の為に調製された。
3.1.リアルタイムPCR
3.1.1. RNA単離
RNAが、24時間、生理食塩水(対照)又は150及び400μg/mlの用量でのDFにより処理されたU266細胞及びHMEC細胞(1.5×10細胞/ml)から単離された。該RNAを単離する為に、QiagenからのRNeasy Mini Kitが、製造者の指示に従い用いられた。
明白な28S及び18Sリボソームサブユニットバンドの存在について調べる為に、全ての試料について、1%アガロースゲル電気泳動(エチジウムブロマイドにより染色された)が実施された。
3.1.2.cDNA合成
MuLV逆転写酵素、ランダム・ヘキサマー及びdNTPミックスを含むiScript(商標)cDNA Synthesis Kit(Bio−Rad)を用いる一本鎖cDNA合成の為の基質として精製されたRNAが用いられた。該インキュベーションは、42℃で30分間実施された。鋳型は、逆転写反応から作られたcDNAである。
3.1.3.リアルタイムPCR
リアルタイムPCRを実施する為に、サイバーグリーンPCRマスターミックス試薬(SYBER Green PCR−Bio−Rad)が用いられた。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)産物の直接の検出が、二本鎖DNAへのSYBER Greenの結合により引き起こされる蛍光の増加を測定することによりモニターされた。ヘパラナーゼに特異的なプライマー
Figure 2009541409
を用いたリアルタイムPCRが、サイバーグリーンPCRマスターミックス試薬と一緒に用いられる為に設計されたMyIQ PCR配列検出システム(Bio−Rad)について実施された。サイクリングパラメーターは、3分間の95℃、95℃;45℃;72℃での夫々30秒間の45サイクル、及び5分間の72℃であった。データは、MyIQ PCRソフトウェアにより取得され及び加工された。ハウスキーピングアクチン転写物が、RNAの量及び質について正規化するために用いられた。
3.2.ヘパラナーゼ活性アッセイ:
ヘパラナーゼ活性が、U266抽出物において、市販のHeparan Degrading Enzyme Kit(タカラバイオ株式会社) により、製造者の指示に従い測定された。U266細胞は、24時間、生理食塩水(対照)又は50、100及び150μg/mlの用量でのDFにより処理された。
3.2.1.方法の原理
Heparan Degrading Enzyme Assay Kitは、培養された細胞におけるヘパラン分解性酵素の活性を測定し、ヘパラン様分子とbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)とが互いに結合する特性を利用する。CBD−FGFは、ヒトフィブロネクチンの細胞結合性ドメインとヒト線維芽細胞成長因子との融合タンパク質である(タカラバイオ株式会社)。このCBD−FGFは、このキットに供給されるマイクロタイタープレート上に、CBD領域中にエピトープを有する抗フィブロネクチン抗体により捕捉されることにより、結合される。加えて、ビオチン化ヘパラン硫酸が、該酵素の基質として用いられる。分解されていない基質だけがCBD−FGFに結合できるので、アビジン−ペルオキシダーゼによって分解されないままである基質の検出が、高感度の測定を実現する。
該反応は、以下の模式的な段階の後に実施された:
・ビオチン化ヘパラン硫酸と試料との反応
・96ウェルプレートに固定化されたCBD−FGFのウェル内への該反応物の移動
・CBD−FGFに結合した分解されていないままであるビオチン化ヘパラン硫酸とアビジンPOD複合体との反応
・POD基質による発色
ヘパラナーゼ活性の検量線が、図1において報告される。
4.結果
4.1.ヘパラナーゼ遺伝子発現に対するデフィブロチドの効果
4.1.1.骨髄腫腫瘍細胞に対する効果
リアルタイムPCRが、生理食塩水(対照)により又は150及び400μg/mlの用量でのDFにより処理されたU266細胞から調製されたcDNAに対して実施された。該実験は3回実施され、そして、結果が、ハウスキーピングアクチン遺伝子により正規化されたmRNA水準として表される。
図2に集約される結果は、DFが、ヘパラナーゼ遺伝子発現を変化することを通じて、U266骨髄腫細胞系統に対して作用することを示す。
4.1.2.ヒト微小血管内皮細胞に対する効果
リアルタイムPCRが、生理食塩水(対照)により又は150μg/mlの用量でのDFにより処理されたHMEC細胞から調製されたcDNAに対して実施された。該実験は3回実施され、そして、結果が、ハウスキーピングアクチン遺伝子により正規化されたmRNA水準として現される。
図3に集約される結果は、DFが、ヘパラナーゼ遺伝子発現を変化することを通じて、微小血管内皮細胞に対して作用することを示す。
4.2.骨髄腫細胞系統におけるヘパラナーゼの酵素活性に対するデフィブロチドの効果
ヘパラナーゼの活性が、Heparan Degrading Enzyme Assay kitを用いて、生理食塩水(対照)により又は50、100及び150μg/mlの用量でのDFにより処理されたU266細胞について測定された。該実験は3回実施され、そして、ヘパラナーゼの活性が、吸光度の減少により示される。
図4に集約される結果は、DFが、骨髄腫細胞系統においてヘパラナーゼ活性を干渉することを示す。
5.結論
ヘパラン硫酸(HS)の開裂に関するエンドグリコシダーゼであるヘパラナーゼは、ECM分解において重要な役割を果たし、腫瘍細胞及び炎症性白血球の遊走及び血管外遊出を促進する(15、16、17)。ヘパラナーゼの抑制が、関節炎及び多発性硬化症などの自己免疫疾患及び炎症性疾患を含むヒトの病気の軽減及び治療を助けうると考えられる。
我々の研究において、ヘパラナーゼが骨髄腫細胞系統U266について高い発現及び活性を有すること、及び、DFがヘパラナーゼ遺伝子の下方制御及びその酵素活性の減少のいずれにおいても重要な役割を果たすことを、我々は示した。
重要な結果が、ヒト微小血管内皮細胞を研究することによっても得られた。ヘパラン硫酸(HS)は、系統が血管である内皮細胞の機能に不可欠である。例えば、HSは、血管新生、腫瘍転移及び内皮細胞増殖に寄与する。この文脈において、ヘパラナーゼは、内皮細胞ヘパラン硫酸の正常な代謝を変化することができ、内皮の機能を劇的に変える。我々の結果は、HMEC細胞のヘパラナーゼ遺伝子発現の下方制御における、DFの重要な役割を示した。
これらの結果を踏まえて、本発明の対象は、それ故に、特には、HMEC細胞について、ヘパラナーゼの抑制により及び/又はヘパラナーゼ遺伝子発現の下方制御により、正に影響される又は正に影響されうる病気のそれら全ての処置の為の医薬の製造の為にDFを使用する方法により表される。
実際に、ヘパラナーゼの抑制が、関節炎及び多発性硬化症などの自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患を含む、ヒトの病気の軽減又は治療を助けうることが広く考えられる(18、19、20、21、22、23)。
ヘパラナーゼの抑制は、有痛性の炎症を結果する、血管を裏打ちする細胞の間に穴を掘る白血球の流入を防ぐであろう。炎症は正常な免疫応答である一方で、疾患部位に侵入する白血球の数を制限する為のヘパラナーゼの抑制は、炎症を有意に軽減しうる。
特に、炎症性疾患のうち、ヘパラナーゼの抑制は特に、腎臓疾患を処置することにおいて有効であろう。ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)は実際に、組織内のタンパク質間の空間を満たすのに役立つ「接着剤」である。腎臓において、これらは特に重要であり、なぜならばそれらは、それが血のフィルターとして働くやり方に影響するからである。腎臓は、糸球体と命名された無数のふるい又はフィルターから構成される。これらのふるいは、尿の内容物を制御する為に働き、そしてそれらの完全性は健康を維持する為に必須である。これらのふるいの足場は、HSPGを含む多くの複雑な分子から構成される。HSPGは「ガード」として役割を果たし、望ましくない物質の尿への排出を確保するが、なお必要とされるタンパク質の保持を確保する。ヘパラナーゼは、これらの「ガード」(HSPG)を消化すると考えられる;結果として、通常は循環内に維持される物質が、尿へと失われ、タンパク尿をもたらす。もし阻止されなければ、このタンパク質損失は、腎臓疾患の進行及び腎不全に寄与する。種々の研究は、ヘパラナーゼの活性型が病気において顕著に増加されることを確認した。ヘパラナーゼ遮断は、進行中のタンパク質損失を防ぐことにより及び病気の進行を停止することにより、ヒトにおいて有益であると判明しうる(24)。
最後に、自己免疫疾患のうち、ヘパラナーゼの抑制は、糖尿病を処置することにおいて特に有効であろう。制御できない高血糖は実際に、糖尿病性血管合併症の発生の主要なリスク要因である。内皮細胞は、高血糖により標的とされる第1の細胞である。高グルコースによる内皮損傷の機構はいまだ不十分に理解される。高血糖により誘発されるヘパラナーゼ産生及び続くヘパラン硫酸の分解は、内皮損傷に寄与しうる。Hanらは、高グルコースが、HSを分解するヘパラナーゼ上方制御を誘発し、細胞損傷を引き起こしうることを提案し、及び、糖尿病性合併症における高血糖とヘパラナーゼ誘導との間の関係を示した(25)。
DFを投与する方法に関して、それらは本発明の目的の為に限定されない。すなわち、DFは、当技術分野において知られる方法及び薬量学(posology)従い哺乳類に(及び特にはヒトに)投与されることができ、一般に、それは経口的に、筋肉内に、腹腔内に、皮下に又は静脈内に投与されてよく、最後の言及された経路が好ましいものである。
6.文献
1.米国特許第3,770,720号明細書
2.米国特許第3,899,481号明細書
3.米国特許第3,829,567号明細書
4.米国特許第4,694,134号明細書
5.米国特許第4,693,995号明細書
6.米国特許第4,985,552号明細書
7.米国特許第5,223,609号明細書
8.米国特許第5,977,083号明細書
9.米国特許第6,699,985号明細書
10.国際公開第2005/023273号パンフレット
Figure 2009541409

Figure 2009541409
ヘパラナーゼ活性の検量線を示す図である。 デフィブロチドにより刺激されたU266細胞についてのヘパラナーゼ遺伝子発現を示す図である。 デフィブロチドにより刺激されたHMEC細胞についてのヘパラナーゼ遺伝子発現を示す図である。 デフィブロチドにより刺激されたU266細胞についてのヘパラナーゼ活性を示す図である。

Claims (8)

  1. 糖尿病の処置の為の医薬の製造の為にデフィブロチドを使用する方法。
  2. 該医薬が哺乳類に投与されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 該哺乳類がヒトであることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
  4. ヘパラナーゼ遺伝子発現がヒト微小血管内皮細胞において抑制されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  5. デフィブロチドが、経口的に、筋肉内に、腹腔内に、皮下に又は静脈内に投与されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  6. 該医薬が、水性溶液若しくは水性懸濁物の形又は固体の経口的に投与可能な製剤、例えば錠剤などの形であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  7. 該医薬が、通例の添加剤及び/又はアジュバントを含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
  8. デフィブロチドが天然由来又は合成由来であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
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