JP2009537594A - o−キシロールの気相酸化による無水フタル酸の製造 - Google Patents

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Abstract

o−キシロールと酸素含有ガスとのガス状混合物を主要反応器中で、互いに別々の温度調節可能な少なくとも2つの反応帯域に導通させ、未反応のo−キシロール、無水フタル酸酸化不足生成物および無水フタル酸を含有するガス状の中間体反応生成物に反応させ、および中間体反応生成物を後方反応器中に導入することにより、無水フタル酸をo−キシロールの接触気相酸化によって製造する方法が記載されており、この場合、主要反応器中での反応帯域の温度は、中間体反応生成物中の未反応のo−キシロールの濃度が少なくとも0.5質量%であるように調節される。この方法は、製品品質の本質的な劣化なしに無水フタル酸の全収量の上昇を可能にする。

Description

本発明は、o−キシロールを主要反応器および後接続された後方反応器中で気相酸化することによって無水フタル酸を製造する方法に関する。
o−キシロールおよび/またはナフタリンを無水フタル酸(PSA)へ気相酸化することは、十分に公知であり、刊行物中にしばしば記載されている。1つの概要は、例えばH. Suter, Phthalsaeureanhydrid und seine Verwendung, Steinkopf Verlag, Darmstadt, 1972またはF. K. Towae, W. Enke, R. Jaeckh., N. Bhargava, Ullmann's Encycloaedia of Industrial Chemistry, Vo. A20, 1992, 第181〜190頁に記載されている。
一般に、o−キシロールの酸化反応は、空気と接して塩溶融液で温度調節された管束反応中で行なわれる。この場合には、反応器中で使用される炭化水素の変換および同時に形成される無水フタル酸の高い生産性を達成しようと努力される。これは一面では達成されるが、しかし、同時に高いホットスポット温度による触媒の損傷を回避させるために、一般に種々に活性触媒が層状に反応器中に配置され、この場合一般に僅かに活性の触媒は、反応混合物がこの触媒に一番手として接触し、最も活性の触媒は触媒スタックからのガスの出口に対して存在するように固定床中に配置されている。この触媒のこの種の活性構造は、例えばドイツ連邦共和国特許第19823262号明細書、ドイツ連邦共和国特許第19823275号明細書、ドイツ連邦共和国特許第10040827号明細書およびドイツ連邦共和国特許第10206989号明細書中に記載されている。
しかし、殊によりいっそう高い炭化水素負荷率の場合には、COおよびCO2への全酸化による反応器中での収量損失なしに十分に良好な製品品質を得ることは、ますます困難になる。それというのも、この場合には、最も活性ではあるが、非選択的な触媒層は、触媒スタックのガス出口で全変換率に対してよりいっそう貢献するに相違ないからである。この効果は、数時間に亘って一般に強く負荷された1つの選択層または複数の選択層の緩徐な不活性化によって触媒スタックのガス入口で生じる。
先に記載された困難を克服するための1つの方法は、唯一の反応器の代わりに2個の分離された反応器を使用することにある。即ち、例えばドイツ連邦共和国特許第2005969号明細書には、無水フタル酸を互いに分離された2個の反応器中で製造する方法が記載されている。第1の反応器は、塩浴冷却された、十分に等温的に運転される管束反応器であり、第2の反応器は、断熱的に運転されるシャフト炉である。この場合、第1の反応器中での反応は、使用される炭化水素の1〜20質量%が不変のままであるように実施される。更に、この方法は、第1の反応器中での熱交換剤の温度T1が380〜430℃であり、断熱的に運転される第2の反応工程の入口温度T2が関係式T2=T1−5〜150℃に従うことによって特徴付けられている。
ドイツ連邦共和国特許第19807018号明細書および米国特許第5969160号明細書に記載の方法は、少なくとも2個の分離された反応器を含み、この場合第1の反応器は、塩浴冷却された主要反応器であり、第2の反応器は、同じ触媒または異なる触媒を有する、冷却装置なしの後方反応器である。この場合、生成物ガス流は、後方反応器中で上方から下方へ生じる。この方法は、不足酸化条件に向けて主要反応器中での温度の低下を可能にする。それというのも、主要反応器出口または後方反応器入口でのフタリド値は、0.5〜0.9質量%の範囲内にあるからである。前記条件の制御は、o−キシロール含量を主要反応器出口または後方反応器入口で観察することによって行なわれ、この場合このo−キシロール含量は、明らかに100ppm(0.01質量%)未満である。
もう1つの後方反応器の概念は、H. -J. Eberle, J. Breimair, H. Domes, T. Gutermuth, PTQ Summer 2000, 129-133中に記載されている。この場合には、多層触媒を含む、塩浴冷却された管束反応器にハニカム触媒を備えた後方反応器が後接続されており、その際生成物ガス流は、後方反応器帯域への入口の前方で生成物ガス冷却器を介して望ましい入口温度に冷却される。この後方反応器は、第1に形成された無水フタル酸の所定の品質を維持するために、殊に高いo−キシロール負荷量および老化された主要反応器触媒の際に使用される。後方反応器入口でのo−キシロール濃度は、寿命の最終時に到達した主要反応器触媒で生成物ガス流中の有機成分の総和に対して約0.65〜0.70質量%であり、酸化不足の副成分、例えばフタリドまたはo−トリルアルデヒドの濃度は、生成物ガス流中の有機成分の総和に対して0.20〜0.50質量%である。
本発明は、無水フタル酸の全収量を製品品質の本質的な劣化なしに上昇させるという課題を基礎とする。
この課題は、o−キシロールと酸素含有ガスとのガス状混合物を主要反応器中で、互いに別々の温度調節可能な少なくとも2つの反応帯域に導通させ、未反応のo−キシロール、無水フタル酸酸化不足生成物および無水フタル酸を含有するガス状の中間体反応生成物に反応させ、および中間体反応生成物を後方反応器中に導入することにより、o−キシロールの接触気相酸化によって無水フタル酸を製造する方法によって解決され、この方法は、主要反応器中での反応帯域の温度を、中間体反応生成物中の未反応のo−キシロールの濃度が、中間体反応生成物中の有機成分の質量に対して少なくとも0.5質量%であるように調節することによって特徴付けられる。
典型的には、中間体反応生成物中の未反応のo−キシロールの濃度は、少なくとも0.6質量%、特に0.65〜5質量%、よりいっそう好ましくは0.7〜2.0質量%である。
特に、中間体反応生成物中の無水フタル酸酸化不足生成物の濃度の総和は、中間体反応生成物中の有機成分の質量に対して少なくとも0.5質量%である。無水フタル酸酸化不足生成物は、無水フタル酸より低い酸化段階を有するC8体であり、このC8体は、無水フタル酸に後酸化可能である。これには、殊にo−トリルアルデヒド、o−トリル酸およびフタリドが属する。
典型的には、中間体反応生成物中のo−トリルアルデヒドおよびフタリドの濃度の総和は、0.6〜1.5質量%、よりいっそう好ましくは0.7〜1.3質量%である。 特に、中間体の反応生成物中のo−トリルアルデヒドの濃度は、少なくとも0.25質量%、殊に0.35〜0.6質量%である。
特に、中間体の反応生成物中のフタリドの濃度は、少なくとも0.25質量%、殊に0.35〜0.6質量%である。
中間体の反応生成物中のo−キシロールの含量は、特に20g/Nm3以下であり、特に好ましくは、15g/m3以下である。
本発明による方法の好ましい実施態様において、中間体の反応生成物中のo−キシロールの濃度に対する測定値は、連続的にかまたは時間間隔をおいて、例えば1週間当たり少なくとも1回または毎日少なくとも1回で得られ、この測定値から主要反応器中の反応帯域の温度に対する制御の干渉が形成される。即ち、中間体の反応生成物中のo−キシロールの濃度が所定の目標値未満になるかまたは本発明による限界値を生じる場合には、1つ以上または全ての反応帯域の温度は、降下することができ、或いは、中間体の反応生成物中のo−キシロールの濃度が高すぎる場合には、この温度は、上昇することができる。
中間体の反応生成物中の有機成分の質量に対する、o−キシロールまたは無水フタル酸酸化不足生成物、例えばo−トリルアルデヒドまたはフタリドの濃度は、周囲温度(23℃)で中間体の反応生成物の前記温度で縮合可能な全ての成分を縮合し、この縮合物を適当な溶剤中、例えばアセトン中でのガスクロマトグラフィーにより分析することにより、算出することができる。場合によっては中間体の反応生成物中に含有されている一酸化炭素および/または二酸化炭素は、中間体の反応生成物の有機成分とは見なされない。
主要反応器に供給される反応ガスは、一般に、酸素以外になお適当な反応調節剤および/または希釈剤、例えば水蒸気、二酸化炭素および/または窒素を含有することができる分子状酸素含有ガスとo−キシロールとを混合することによって形成され、この場合この酸素含有ガスは、一般に酸素1〜100モル%、特に2〜50モル%、特に有利に10〜30モル%、水蒸気0〜30モル%、特に0〜10モル%ならびに二酸化炭素0〜50モル%、特に0〜1モル%、残分窒素を含有することができる。酸素含有ガスは、一般に空気である。
主要反応器中に侵入するガス状混合物のo−キシロール負荷量は、一般に、ガス1Nm3当たり30g〜150g、特に少なくとも60g/Nm3、例えば75〜120g/Nm3である。
主要反応器として、有利に塩浴冷却される管状反応器が使用され、この管状反応器は、少なくとも2個の分離された塩浴を含む。管束の2つ(またはそれ以上の)区間には、空間的に分離された伝熱媒体が塩浴の形状で周囲を流れる。触媒が充填された個々の管は、上側の管状床または下側の管状床中に開口する。この管は、反応器の内部を伝熱媒体のために2つ以上の帯域に分配する少なくとも1つの遮蔽板に案内されている。反応ガスは、一般に上方から下方へ、即ち重力の方向に管に導通されるが、しかし、反対の流動方向も考えることができる。それぞれの帯域は、対応配置され、反応器のジャケットには、互いに距離を置いて管状通路が存在し、この管状通路を通じて伝熱媒体は、反応器から取り出されるかまたは循環ポンプへの通過後に反応器に再び供給される。循環ポンプにより循環される伝熱媒体の部分流は、冷却器に導通され、この冷却器中で、例えば飽和蒸気が形成される。反応器の内部には、通常、邪魔板が存在し、伝熱媒体に管束の範囲で半径方向の流動成分が分配される。
好ましい実施態様において、主要反応器は、2つまたは3つの反応帯域を含み、たいていは有利に2つの反応帯域を含む。
管入口と管出口との伝熱媒体の温度差は、それぞれの帯域に対して0.5〜12℃、多くの場合に1〜8℃であることができる。伝熱媒体は、それぞれの帯域中で反応ガスに関連して直流ならびに向流で管状反応器を通過することができる。
主要反応器は、典型的には、330〜390℃の伝熱媒体の温度で運転される。主要反応器中のガス温度は、340〜460℃の範囲内、特に有利に370〜435℃の範囲内にある。
それぞれ塩浴が延在している管区間は、反応帯域を表わす。それぞれの反応帯域は、無水フタル酸へのo−キシロールの気相酸化の触媒反応に適している、触媒または種々の触媒の重なり合った層で充填されている。特に、シェル型触媒または球状触媒が重要であり、不活性の担持触媒からなる前記触媒のコア上には、触媒活性の金属酸化物からなる1つ以上の層が施こされている。
一般に、反応帯域は、異なる活性の触媒を含み、この場合ガス状混合物の流れ方向で最も下流に置かれた反応帯域は、一般に上流と境を接してる反応帯域より高い活性を有する1つ以上の触媒を含む。触媒スタックは、該触媒スタックが主に、即ち長手方向の延在部(Laengenausdehnung)の少なくとも60%、特に少なくとも80%に対応配置されて反応帯域中に含まれていることが重要である。
一般に、たいていは下流に置かれた反応帯域は、上流と境を接してる反応帯域より低い温度、例えばそれぞれの反応帯域に対応配置されている伝熱媒体に対して少なくとも2℃、特に少なくとも4℃低い温度で運転される。包囲する伝熱媒体の最も低い温度は、反応帯域が運転される温度と見なされる。
複数の反応帯域は、同一の触媒、特に次に定義された選択的触媒を含むこともできる。
ガス入口側に置かれた触媒がよりいっそう高い選択性に対して有利に減少された活性を有する、活性構造化された触媒スタックは、例えば冒頭に記載された本明細書中の記載から公知である。この場合、選択性は、無水フタル酸と無水フタル酸に後酸化可能な全てのC8体との総和に関連する選択性である。このガス入口側に置かれた触媒は、しばしば、"選択的触媒"と呼称され、ガス出口側に置かれた"活性触媒"とは異なる。
ガス状混合物の流れ方向で最も上流に置かれた単数または複数の反応帯域および/または上流で、ガス状混合物の流れ方向で最も下流に置かれた反応帯域と境を接している反応帯域は、有利に選択的触媒を含む。
ガス状混合物の流れ方向で最も下流に置かれた反応帯域は、特に少なくとも1つの活性触媒を含む。
典型的な選択的触媒は、
a)その活性材料が銀、バナジウム、および場合によっては1つ以上の促進剤金属を含有する多重金属混合酸化物、殊に銀−酸化バナジウム−ブロンズを含む1つ以上の触媒、
b)酸化バナジウムおよび二酸化チタンを基礎とする1つ以上の触媒、この場合この活性材料のアルカリ金属含量は、0.12質量%以上であり、活性材料の燐含量(Pとして計算した)は、0.20質量%以下であり、および
c)前記定義a)に記載の1つ以上の触媒と前記定義b)に記載の1つ以上の触媒との組合せである。
典型的な活性触媒は、酸化バナジウムおよび二酸化チタンを基礎とする触媒であり、この場合活性材料のアルカリ金属含量は、0.20質量%以下である。場合によっては、活性材料は、燐を含有し;この活性材料の燐含量は、例えば0.12質量%以上である。
銀、バナジウムおよび場合によっては1つ以上の促進剤金属を含有する多重金属混合酸化物、ならびに銀−酸化バナジウム−ブロンズおよびその製造は、例えばWO 00/27753、WO 01/85337およびWO 2005/012216の記載から自体公知である。銀−酸化バナジウム−ブロンズは、1未満の原子状Ag:V比を有する銀−酸化バナジウム化合物である。一般に、半導電性または金属導電性の酸化物固体が重要であり、この酸化物固体は、有利に層状構造体またはトンネル構造体中で結晶化し、この場合バナジウムは、[V25]ホスト格子中でV(IV)に部分的に還元されて存在する。銀−酸化バナジウム−ブロンズは、200℃を上廻る、殊に300℃を上廻る温度で多重金属混合酸化物の分解によって形成される。
適当なのは、例えば一般式I
Aga-c1 c2d*eH2O I
〔式中、aは、0.3〜1.9の値を有し、
1は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属、Bi,Ti、Cu、Zn、Cd、Pb、Cr、Au、Al、Fe、Co、Ni、Mo、Nb、Ce、W、Mn、Ta、Pd、Pt、Ruおよび/またはRhから選択された少なくとも1つの金属を表わし、
cは、0〜0.5の値を有し、但し、(a−c)は、0.1を上廻るものとし、
dは、式I中の酸素とは異なる元素の原子価および頻度によって定められる数を表わし、および
eは、0〜20、特に0〜5の値を有する〕で示される多重金属混合酸化物である。
式Iの多重金属酸化物中で、変数aは、特に0.5〜1.0、特に有利に0.6〜0.9の値を有し、変数bは、特に0〜0.1であり、および変数cの値は、特に0.005〜0.2、殊に0.01〜0.1である。
数dは、式Iの多重金属酸化物中の酸素とは異なる元素の原子価および頻度から定められる。含水量の1つの基準である数eは、特に0〜5である。
1は、特にNa、K、Rb、Tl、Ni、W、Co、Fe、Mo、Nb、Zn、CeおよびMnを表わす。
特に好ましいのは、一般式Ia
Aga2d*eH2O Ia
[式中、
aは、0.6〜0.9の値であり、
dは、上記の意味を有し、
eは、0〜5の値を有する〕で示される多重金属酸化物である。
この多重金属酸化物の製造のために、一般に、五酸化バナジウム(V25)の懸濁液は、銀化合物の溶液ならびに場合によっては金属成分M1の化合物およびQの化合物の溶液と一緒に加熱される。この反応のための溶剤として、好ましくは、水が使用される。銀塩として、好ましくは、硝酸銀が使用され、別の可溶性銀塩、例えば酢酸銀、過塩素酸銀またはフッ化銀の使用は、同様に可能である。
銀成分M1の塩としては、一般に、使用される溶剤中で可溶性である塩が選択される。本発明による多重金属酸化物を製造する際に溶剤として水を使用する場合には、例えば金属成分M1の過塩素酸塩またはカルボキシレート、殊に酢酸塩を使用することができる。好ましくは、当該金属成分M1の硝酸塩が使用される。
式Iの多重金属酸化物の望ましい化学組成に応じて、該多重金属酸化物の製造のために、式Iのaおよびcから生じる量のV25、銀化合物ならびに金属成分M1の化合物が互いに反応される。こうして形成された多重金属酸化物は、反応混合物から単離することができ、さらに使用されるまで貯蔵されることができる。特に好ましくは、得られた多重金属酸化物懸濁液の単離は、噴霧乾燥により実施される。噴霧乾燥された粉末は、不活性担体上に施こされる。
酸化バナジウムおよび二酸化チタンを基礎とする触媒は、二酸化チタン(そのアナターゼ変態の形)と共に五酸化バナジウムを含有する。酸化バナジウムおよび二酸化チタンを基礎とする典型的な触媒およびその製造は、ドイツ連邦共和国特許第19823262号明細書中に記載されている。
特に、酸化バナジウムおよび二酸化チタンを基礎とする触媒は、か焼された状態で、V25として計算した酸化バナジウム1〜20質量%およびTiO2として計算した二酸化チタン80〜99質量%を含有する。更に、微少量で多数の別の酸化物化合物が含有されていてよく、この酸化物化合物は、促進剤として触媒の活性および選択性に影響を及ぼす。活性を減少させかつ選択性を上昇させる促進剤として、一般に、アルカリ金属、例えばセシウム、リチウム、カリウムおよびルビジウム、殊にセシウムが使用される。
活性を上昇させる添加剤として、一般に、燐化合物が使用される。選択的触媒には、燐化合物の添加剤は全く使用されないかまたは場合によっては燐化合物の僅かな添加剤が使用される。
更に、酸化バナジウムおよび二酸化チタンを基礎とする触媒は、アンチモン化合物を含有することができる。
前記成分は、酸化物の形または化合物の形で使用され、この場合この化合物は、加熱の際または酸素の存在下での加熱の際に酸化物に変換される。バナジウム成分として、酸化バナジウムまたは加熱の際に酸化バナジウムに変換されるバナジウム化合物は、個別的にかまたはその混合物の形で使用されることができる。特に、V25またはNH4VO3が使用される。還元剤、例えば蟻酸または蓚酸は、共用されてもよく、バナジウム(V)化合物は、少なくとも部分的にバナジウム(IV)に還元される。適当な促進剤(前駆体)化合物は、相応する酸化物または加熱後に酸化物に変換される化合物、例えば硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩である。適当なのは、例えばNa2CO3、K2O、Cs2O、Cs2CO3、Cs2SO4、P25、(NH42HPO4、Sb23である。
活性材料の形成のために、一般に、バナジウム成分の化合物、二酸化チタンの化合物ならびに促進剤(前駆体)化合物の水性懸濁液は、適当な量で準備され、この懸濁液は、十分な均質化が達成されるまで攪拌される。更に、この懸濁液は、噴霧乾燥されることができるかまたはそれ自体被覆のために使用されることができる。
本発明による方法で使用される触媒は、一般に、触媒活性材料が外殻状で不活性担体上に施こされている外殻触媒である。触媒活性材料の層厚は、一般に0.02〜0.2mm、特に0.05〜0.1mmである。一般に、触媒は、実質的に均一な化学組成を有する外殻状で施こされた活性材料層を有する。
不活性の担持材料として、実際に公知の全ての担持材料が使用されてよい。例えば、石英(SiO2)、陶磁器、酸化マグネシウム、二酸化錫、炭化ケイ素、ルチル型、粘土(Al23)、珪酸アルミニウム、ステアタイト(珪酸マグネシウム)、珪酸ジルコニウム、珪酸セリウムまたは前記担持材料の混合物が使用される。担持材料は、一般に非多孔質である。好ましい担持材料として、殊にステアタイトおよび炭化ケイ素を強調することができる。担持材料の形状は、一般に重要ではない。例えば、触媒は、球、リング、タブレット、螺旋体、管、押出品または分割体の形で使用されることができる。前記触媒単体の寸法決定は、通常、外殻触媒の製造のために、芳香族炭化水素の気相部分酸化に使用される触媒担体に対応する。好ましくは、ステアタイトは、3〜6mmの直径を有する球の形または5〜9mmの外径および4〜7mmの長さを有するリングの形で使用される。
担体上への活性材料層の施与は、自体公知の任意の方法で、例えば施糖衣用ドラム中での溶液または懸濁液の噴霧または渦動床中での溶液または懸濁液での被覆によって行なうことができる。この場合、触媒活性材料には、有機結合剤、有利にコポリマーを、有利に酢酸ビニル/ラウリン酸ビニル、酢酸ビニル/アクリレート、スチレン/アクリレート、酢酸ビニル/マレエート、酢酸ビニル/エチレンならびにヒドロキシエチルセルロースの水性分散液の形で添加することができ、その際、活性材料成分の溶液の固体含有量に対して3〜20質量%の結合剤量が有利に使用される。塗布された結合剤は触媒の充填及び反応器の運転開始後に短時間に燃焼される。この結合剤の添加は、更に、活性材料を担体上に良好に付着させるため、触媒の輸送及び充填を容易にするという利点を有する。
主要反応器から流出するガス状の中間体の反応生成物は、後方反応器に供給される。専ら、後方反応器への流入が形成され、即ち中間体の反応生成物には、ガス、例えば新鮮な空気または排気、またはo−キシロールは、混和されない。
後方反応器として、不均一な接触気相酸化の実施に適している全ての反応器、殊に固定配置された触媒スタックを備えた固定床反応器、管束型反応器、触媒被覆されたモノリスのハニカム体を備えた反応器等が使用される。垂直方向または水平方向の構造形式は、重要であり;垂直方向の反応器は、下方からかまたは上方から接するように流れることができる。
多くの場合には、主要反応器から流出する中間体の反応生成物が後方反応器中への流入前に適当な冷却段により冷却されることは、好ましい。この場合、主要反応器からの出口温度と後方反応器中への入口温度との差は、特に少なくとも5℃、殊に少なくとも10℃である。冷却段の効率は、有利に中間体の反応生成物中のo−キシロール濃度および後方反応器触媒の活性に依存して、無水フタル酸の収量および純度が最大になるように制御される。
この場合、主要反応器、冷却段および後方反応器は、離隔された装置中に配置されていてよい。冷却段として、液体冷却される間接的な熱交換器またはガス−ガス熱交換器が適しており、このガス−ガス熱交換器により、主要反応器に供給される反応ガスは、予熱されてよい。
しかし、他の選択可能な方法によれば、主要反応器と冷却段または冷却段と後方反応器は、唯一の装置中に組み込まれていてもよい。例えば、冷却段は、主要反応器の反応管の直接的な延長部として形成されていてよく、この延長部は、冷却段の範囲で触媒で充填されておらず、および伝熱媒体の別々の循環路によるかまたは冷却器から来る伝熱媒体の部分流で冷却されてよい。
主要反応器、冷却段および後方反応器の機能部は、ドイツ連邦共和国特許第10144857号明細書の記載と同様に、唯一のケーシング内に配置されていてもよい。
後方反応器の構造形式は、その運転形式により左右される。1つの可能な実施態様において、後方反応器は、本質的に断熱的に運転される。
もう1つの可能な実施態様において、後方反応器中で生じる反応熱の少なくとも一部分は、伝熱媒体での間接的な冷却によって導出される。後方反応器に適した伝熱媒体は、伝熱油、塩溶融液、空気または水である。典型的な冷却方法は、優先権の古い特許出願DE102004061770中に見出すことができる。特に好ましいのは、反応ガスが最初に断熱的な触媒層を貫流し、引続き熱薄板の間に堆積された触媒層を乾留するような構造形式である。
後方反応器触媒として、好ましくは、外殻触媒または球状触媒が使用され、不活性の担持材料からなる前記触媒のコア上には、触媒活性の金属酸化物からなる1つ以上の層が施こされている。典型的な担持材料および典型的な使用される金属酸化物および促進剤は、ドイツ連邦共和国特許第19823262号明細書中に見出すことができる。特に、主要反応器中で使用される触媒とは異なる触媒が使用される。後方反応器中では、特に酸化バナジウムおよび二酸化チタンを基礎とする触媒が使用され、この場合活性材料のアルカリ金属含量は、0.20質量%以下である。場合によっては、活性材料は、燐を含有し;この活性材料の燐含量は、例えば0.12質量%以上である。
後方反応器は、典型的には240〜360℃のガス温度、特に有利に270〜350℃で運転される。後方反応器中で発生する最大のガス温度は、主要反応器中で発生する最大のガス温度より少なくとも30℃、殊に少なくとも40℃低い。
一般に、後方反応器から流出する反応ガスは、生成物ガス冷却器中で冷却され、無水フタル酸は、熱い反応ガスから、通常、交互に運転される無水フタル酸分離器により分離される。場合によっては、この分離器には、所謂液体分離器が前接続されていてよく、このことは、特に高い負荷量の際に好ましい。
また、本発明による方法は、接触気相酸化による別の生成物、例えばナフタリンまたはo−キシロール/ナフタリン混合物からの無水フタル酸、プロペンからのアクリル酸、ベンゼン、ブタン、ブテンまたはブタジエンからの無水フタル酸、トルエンからの安息香酸等の製造に転用可能である。
本発明を次の実施例および比較例によって詳説する。

触媒の製造
主要反応器触媒Iの製造(選択的触媒)
施糖衣用ドラム中で18時間の攪拌後に蓚酸104.9g、五酸化バナジウム39.4g、酸化アンチモン17.0g、硫酸セシウム2.87g、燐酸水素アンモニウム3.15g、ホルムアミド149.0g、20m2/gのBET表面積を有するアナターゼ変態の二酸化チタン465.9gおよび水721.0gからなる懸濁液236.6gを、160℃で有機結合剤13.0gと一緒に寸法8×6×5mm(外径×高さ×内径)のステアタイトリング1400g上に施こす。第2の工程で、こうして被覆されたリングを、蓚酸56.7g、五酸化バナジウム21.0g、硫酸セシウム2.87g、ホルムアミド198.0g、二酸化チタン501.9gおよび水720.3gからなる、先に同様に18時間攪拌された第2の懸濁液236.2gで有機結合剤12.8gと一緒に被覆する。
触媒を450℃で1時間か焼した後、ステアタイトリング上に施こされた活性材料は、9.3%である。この活性材料は、組成V255.75%、Sb231.6%、Cs0.40%、P0.08%、残分TiO2を有する。
主要反応器触媒IIの製造(活性触媒)
施糖衣用ドラム中で18時間の攪拌後に蓚酸106.4g、五酸化バナジウム39.4g、酸化アンチモン17.0g、硫酸セシウム0.63g、燐酸水素アンモニウム3.35g、ホルムアミド149.6g、20m2/gのBET表面積を有するアナターゼ変態の二酸化チタン467.5gおよび水719.1gからなる懸濁液538.0gを、160℃で寸法8×6×5mm(外径×高さ×内径)のステアタイトリング1400g上に施こす。
触媒を450℃で1時間か焼した後、ステアタイトリング上に施こされた活性材料は、10.5%である。この活性材料は、組成V257.5%、Sb233.2%、Cs0.09%、P0.17%、残分TiO2を有する。
後方反応器触媒の製造
施糖衣用ドラム中で18時間の攪拌後に蓚酸105.5g、五酸化バナジウム39.4g、酸化アンチモン17.0g、硫酸セシウム0.29g、燐酸水素アンモニウム8.9g、ホルムアミド149.0g、20m2/gのBET表面積を有するアナターゼ変態の二酸化チタン467.0gおよび水720.5gからなる懸濁液540.2gを、160℃で寸法8×6×5mm(外径×高さ×内径)のステアタイトリング1400g上に施こす。
触媒を450℃で1時間か焼した後、ステアタイトリング上に施こされた活性材料は、10.6%である。この活性材料は、組成V257.5%、Sb233.2%、Cs0.04%、P0.41%、残分TiO2を有する。
実施例1〜7
主要反応器として、99本の標準管および2本の熱管を備えた管束型反応器を使用した。標準管は、25mmの内径を有し、熱管は、29mmの内径を有し、ドイツ連邦共和国特許第10110847号明細書に記載された、10cmの間隔で温度測定位置を有する組み込まれた30個の多重要素または試料採取要素を備えたスリーブ(直径10mm)を有する。圧力の調整により、それぞれの管入口に同じ入口圧力が印加されるように準備した。場合によっては、99本の標準管の場合、なお例えば主要反応器触媒Iを添加するかまたは吸着し、2本の熱管の場合には、圧力調整を、球状ステアタイトおよび石英砂の形での不活性材料の添加によって達成した。鉄管は、温度調整のために2つの離隔された塩浴中に存在する塩溶融液によって包囲されていた。下方の塩浴(塩浴B)は、管を下方の管状床によって140cmの高さになるまで包囲し、上方の塩浴(塩浴A)は、管を上方の管状床に到るまで140cmの高さで包囲した。
後方反応器(内径45cm、高さ約100cm)は、約90cmの高さで冷却蛇管(直径12mm、冷却蛇管距離約30mm)を装備しており、この冷却蛇管は、下方部で冷媒としての周囲温度を有する空気と反応作用された。この後方反応器を後方反応器触媒で65cmの充填高さになるまで充填した。
この装置を運転するために、空気/o−キシロール混合物を主要反応器入口温度約200〜205℃で上方から下方へ主要反応器に導通し、引続き熱交換器中で一定の後方反応器入口温度に冷却し、引続き後方反応器により上方から下方へ導通した。使用されたo−キシロールは、98.5〜99.0質量%の純度を有していた。後方反応器の下方部での空気冷却は、47cm(実施例1、4、6および7)の高さまたは53cmの高さ(実施例2、3および5)に亘り行なわれ、したがって後方反応器出口の上方10cmで測定された、触媒スタック中の一定の温度が生じた。
一般に主要反応器触媒の通常のランナップ時間(Hochfahrzeit)後、第1表中に記載の結果を得ることができた。
実施例8
試験を実施例1〜7に記載の方法に相応して実施したが、しかし、この場合には、後方反応器は、断熱的に運転され、即ち空気は、冷却蛇管に導通されなかった。結果は、第1表中に記載されている。
比較例1〜9
試験を実施例1〜7に記載の方法に相応して実施したが、しかし、この場合には、後方反応器は、断熱的に運転され、主要反応器の2つの塩浴は、本質的同じ温度で運転された。結果は、第2表中に記載されている。
表中で、
運転日数は、主要反応器触媒の第1の始動時からの運転日数を表わし;
塩浴Aは、反応器入口に向かって置かれた塩浴の塩浴温度を表わし;
塩浴Bは、反応器出口に向かって置かれた塩浴の塩浴温度を表わし;
o−キシロールHR出口、o−トリルアルデヒドHR出口またはフタリドHR出口は、主要反応器出口での粗製生成物ガスの有機成分の質量%でのo−キシロール含量、o−トリルアルデヒド含量またはフタリド含量を表わし;
o−キシロールHR出口、o−トリルアルデヒドHR出口またはフタリドHR出口は、後方反応器出口での粗製生成物ガスの有機成分の質量%でのo−キシロール含量、o−トリルアルデヒド含量またはフタリド含量を表わし;
NR出口でのPSA収量は、後方反応器出口での粗製生成物ガスの分析による100%のo−キシロールに関連する質量%でのPSA収量を表わす。
Figure 2009537594
Figure 2009537594

Claims (15)

  1. o−キシロールと酸素含有ガスとのガス状混合物を主要反応器中で、互いに別々の温度調節可能な少なくとも2つの反応帯域に導通させ、未反応のo−キシロール、無水フタル酸酸化不足生成物および無水フタル酸を含有するガス状の中間体反応生成物に反応させ、および中間体反応生成物を後方反応器中に導入することにより、無水フタル酸をo−キシロールの接触気相酸化によって製造する方法において、主要反応器中での反応帯域の温度を、中間体反応生成物中の未反応のo−キシロールの濃度が、中間体反応生成物中の有機成分の質量に対して少なくとも0.5質量%であるように調節することを特徴とする、無水フタル酸をo−キシロールの接触気相酸化によって製造する方法。
  2. 中間体の反応生成物中の無水フタル酸酸化不足生成物の濃度の総和は、少なくとも0.5質量%である、請求項1記載の方法。
  3. o−トリルアルデヒドおよびフタリドの濃度の総和は、少なくとも0.5質量%である、請求項1または2記載の方法。
  4. 中間体の反応生成物中のo−トリルアルデヒドの濃度は、少なくとも0.25質量%である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
  5. 中間体の反応生成物中のフタリドの濃度は、少なくとも0.25質量%である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
  6. 反応帯域は、異なる活性の触媒を含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
  7. ガス状混合物の流れ方向で最も下流に置かれた反応帯域は、上流と境を接してる反応帯域より高い活性を有する触媒を含む、請求項6記載の方法。
  8. ガス状混合物の流れ方向で最も下流に置かれた反応帯域は、酸化バナジウムおよび二酸化チタンを基礎とする少なくとも1つの触媒を含み、この場合活性材料のアルカリ金属含量は、0.20質量%以下である、請求項6または7記載の方法。
  9. 上流で、ガス状混合物の流れ方向で最も下流に置かれた反応帯域と境を接している反応帯域は、
    a)その活性材料が銀、バナジウム、および場合によっては1つ以上の促進剤金属を含有する多重金属混合酸化物を含む1つ以上の触媒、
    b)酸化バナジウムおよび二酸化チタンを基礎とする1つ以上の触媒、この場合この活性材料のアルカリ金属含量は、0.12質量%以上であり、活性材料の燐含量は、0.20質量%以下であるか、または
    c)前記定義a)に記載の1つ以上の触媒と前記定義b)に記載の1つ以上の触媒との組合せから選択された触媒を含む、請求項6から8までのいずれか1項に記載の方法。
  10. たいていは下流に置かれた反応帯域は、上流と境を接してる反応帯域より低い温度で運転される、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
  11. 中間体の反応生成物中のo−キシロールの濃度に対する測定値が得られ、この測定値から主要反応器中の反応帯域の温度に対する制御の干渉が形成される、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
  12. 主要反応器中に流入するガス状混合物のo−キシロール負荷量は、少なくとも60g/Nm3である、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
  13. 後方反応器中で生じる反応熱の少なくとも一部分を伝熱媒体での間接的な冷却によって導出する、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
  14. 後方反応器を本質的に断熱的に運転する、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
  15. 主要反応器から流出する中間体の反応生成物を後方反応器中への入口前で冷却する、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
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