JP2009537534A - 急性失血の治療方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、血液代替物を使用して、急性失血を治療する新規の方法、及び血液代替物を含む新規の医薬組成物に関する。本発明の方法に有用な血液代替物は、(1)酸素正常状態下で細胞培養において試験した場合、エリスロポエチンの発現を誘導すること、及び/又は(2)(a)対象のヘマトクリット若しくはヘモグロビンの増倍時間の減少、及び/又は(b)対象の循環エリスロポエチンレベルの増加によって測定した場合、酸素正常状態下で赤血球形成を誘導することが可能である。本発明の医薬組成物に有用な血液代替物は、(1)HIF-1α発現を安定させること、及び/又は(2)NF-κBを下方制御することが可能である。好ましくは、血液代替物は、架橋ヘモグロビン血液代替物、或いはより好ましくは、過ヨウ素酸酸化ATPと分子内架橋し、過ヨウ素酸酸化アデノシンと分子内架橋し、及び還元グルタチオンと結合したヘモグロビンを含む架橋ヘモグロビンである。
【選択図】 図1

Description

(1.序)
本発明は、急性失血、好ましくは急性失血性貧血、又はより好ましくは(i)疾患による急性失血、(ii)手術中に起こる急性失血、若しくは(iii)外傷による急性失血によって生じる貧血を治療又は予防するための新規の方法に関する。本発明の方法は、血液容量を増加させ、急性失血に伴う低酸素を抑えるとともに、酸素正常状態下で赤血球形成を誘導するのに有効な量の血液代替物を、それを必要とする対象に投与することを含む。特に、本発明の方法に有用な血液代替物は、(1)酸素正常状態下で細胞培養において試験した場合、エリスロポエチンの発現を誘導すること、及び/又は(2)(a)対象のヘマトクリット若しくはヘモグロビンの増倍時間の減少、又は(b)対象の循環エリスロポエチンレベルの増加、によって測定した場合、酸素正常条件下での赤血球形成を誘導することが可能である。
本発明は、また、架橋ヘモグロビン血液代替物の治療又は予防有効量又は容量を、医薬として許容し得る担体中に含む新規の医薬組成物であって、該架橋ヘモグロビン血液代替物は、酸素正常条件下で細胞培養において試験した場合、エリスロポエチンの発現を誘導する医薬組成物に関する。本発明は、さらに、架橋ヘモグロビンの治療又は予防有効量又は容量を、医薬として許容し得る担体中に含む新規の医薬組成物であって、該架橋ヘモグロビンは、過ヨウ素酸酸化ATPと分子内架橋し、過ヨウ素酸酸化アデノシンと分子内架橋し、及び還元グルタチオンと結合したヘモグロビンを含む。本発明の医薬組成物に有用な架橋ヘモグロビン血液代替物及び架橋ヘモグロビンは、(1)HIF-1α発現を安定化させること及び/又は(2)細胞培養で試験した場合、NF-κBを下方調節することが可能である。
(2.発明の背景)
赤血球の代用として無細胞ヘモグロビン(ヒト及びウシ)を使用することの可能性が19世紀後半から検討されてきたが、血液代替物の研究に労力が集中されたのは過去数十年間にすぎない。この遅い試みの背景にある主たる推進力は、血液由来感染性物質の潜在的な伝染に関する懸念及び世界的な供血者の不足であった(Sellardsら、(1916) J Med Res 34:469;Amberson WR(1934) J Cell Compar Physiol 5:359〜382;Amberson WR(1937) Biol Rev 12:48〜86;Winslow RM(2002) Curr Opin Hematol 9(2):146〜151;Winslow RM (2003) J Intern Med 253:508〜517)。
米国において、高感度のスクリーニング試験の実施により、感染病の伝染リスクがB型肝炎では1:63,000まで、そしてHIVでは1:493,000まで低下し、C型肝炎及びヒトT細胞白血病ウィルスの伝染率についてその中間であった(Schreiberら、(1996) N Engl J Med 334 (26):1685〜1690)。血液がクロイツフェルト-ヤコブ病又はそのウシ変異体を伝染させ得るかどうかの疑問に対する答えはまだ見つかっていないが、発展国における血液安全性が劇的に向上した(Hootsら、(2001) Transfus Med Rev 15(2 Suppl l):45〜59)。
他方で、発展途上国における血液供給の安全性の欠如は、世界保健機関及び国際的な科学界にとって緊急の関心事になっている。感染人口が多い発展途上国では、推定600万単位の供血血液が、HIV、肝炎及び梅毒について試験されていない(世界保健機関ホームページ(2005) www.who.int.;Wakeら、(1998) Trop Doct 28(l):4〜8)。
世界保健機関は、世界中で毎年1億単位の血液の需要があり、3.75秒毎に米国市民が輸血を必要としていると推定している。それと同時に、供血者の率が低下している。供血率が低いため、血液銀行が需要を満たさない場合が非常に多い。米国は、ヨーロッパから血液を既に輸入している。毎年約1200万単位を使用する米国では、2030年までに毎年3〜4百万単位の不足が想定された。この供血血液不足の想定には、自然災害、テロリスト攻撃及び戦争における血液のより緊急的な需要が考慮されていない。血液の需要が毎年1%の割合で上昇している一方で、米国の供血は、毎年1%の割合で減少している(Surgenorら、(1990) N Engl J Med 322(23):1646〜1651;Hawkins D. (1999) US News World Rep 126(3):34;National Blood Data Resource Center Web Page (2005) www.nbdrc.org;North Central Blood Services Web Page (2005) www.yourbloodcenter.org)。
血液の取得及び試験の費用は、劇的に増加した。現在のところ、1単位の血液を収集、試験及び輸血する費用は約1000ドルであり、それには、スクリーニングされたが汚染されていた血液を与えられた人による訴訟の費用が考慮されていない(Blumbergら、(1996) Am J Surg 171:324〜330)。
輸血に赤血球を使用する別の短所は、冷凍保存しなければならず、その際でも濃縮赤血球の保存寿命もわずか42日間にすぎないことである。また、それらの輸血には、事故現場又は戦場において実施できない血液型判定及び交叉試験が必要である(Williamsら、(1977)「血液及び血液成分の保存並びに臨床使用(Preservation and Clinical Use of Blood and Blood Components)」. Hematology. McGraw-Hill Book Company、New York)。
(2.1.血液代替物)
輸血医療におけるこれら及び他の問題により、血液代替物における新たな代替手段を模索することが必要になった。効果的な血液代替物は、輸血感染病のリスクをなくし、世界の血液供給を管理するのに利用可能な選択肢を変えることになるであろう。交叉試験を必要とせず、病原体のない普遍的に適合可能な血液代替物は、民生用途及び軍事用途の双方に大きな世界市場を開くことになる。実用的な酸素担持溶液を有するという影響は広く、病原体を含まない潜在的に無限の血液代替物から出発する。普遍的な血液代替物は、出血性ショックの患者の緊急治療手順を変えることが可能であり;待機手術時の手術中血液希釈に使用することが可能であり;移植のために提供された臓器の生存時間を長くすることが可能であり;心臓の梗塞及び卒中などの生命に係わる疾患を治療するための血液の酸素担持能力を向上させることが可能であり;腫瘍放射線増感、貧血及び他の血液疾患の治療に使用することが可能である(Winslow RM. (2002) Curr Opin Hematol 9(2):146〜151)。
10年未満のうちに、血液代替物の研究が、科学フィクションから現実になった。しかし、使用可能な血液代替物の商業的開発は、ある程度制限され、まだ成功に至っていない。いくつかの異なる遊離ヘモグロビンをベースとした血液代替物が開発されたが、それらは、有害な副作用があるため、限定されたヒト安全性試験で良好でないことが証明された。これらの製品の大きな問題は、それらの血管収縮活性である。報告された他の問題は、酸化ストレスの悪化及び全身性炎症反応の増幅である(「赤血球置換物としての酸素治療剤の安全性及び有効性評価のための基準についてのワークショップ(Workshop on Criteria for Safety and Efficacy Evaluation of Oxygen Therapeutics as Red Cell Substitutes)」(1999) NIH、Bethesda MD;Winslow RM.(2000) Vox Sang 79(1):1〜20)。
実際、HEMASSIST(商標)(Baxter Healthcare、IL(イリノイ)州Round Lake)の商業的開発(Walderの米国特許第4,598,064号及び同第4,600,531号;Estepの米国特許第4,831,012号及び同第5,281,579号)が停止され、ラフィノース重合ヒトヘモグロビン溶液であるHEMOLINK(商標)(Hemosol、カナダMissisauga)の開発(Hsiaの米国特許第4,857,636号)が、ヒトにおける高い死亡率又は心筋梗塞の増加により中止された。それより前に、組換えHbであるOPTRO(商標)(Somatogen、CO(コロラド)州Boulder)の商業的開発(Hoffmanらの米国特許第5,028,588号、同第5,563,254号及び同第5,661,124号;Rosenthalの米国特許第5,631,219号)は、重篤な全身性炎症反応が試験対象患者で観察されたため取り消された。ウシグルタルアルデヒド重合ヘモグロビン溶液であるHEMOPURE(登録商標)(Biopure Inc.、MA(マサチューセッツ)州Cambridge)(Rauschらの米国特許第5,084,558号、同第5,296,465号及び同第5,753,616号;Lightらの米国特許第5,895,810号)は、「安全性の懸念」から臨床的使用が一時中断された。2002年に、Northfield Laboratories(IL(イリノイ)州Evanston)(Sehgalらの米国特許第4,826,811号、同第5,194,590号、同第5,464,814号、同第6,133,425号、同第6,323,320号及び同第6,914,127号)は、待機手術の患者に使用されるグルタルアルデヒド重合ヒトヘモグロビン溶液である同社のPOLYHEME(登録商標)に対する米国の法的承認が得られなかった。現在、POLYHEME(登録商標)は、自動車事故犠牲者の酷い出血を治療するための特別な使用に基づく臨床試験が施されている(「赤血球置換物としての酸素治療剤の安全性及び有効性評価のための基準についてのワークショップ(Workshop on Criteria for Safety and Efficacy Evaluation of Oxygen Therapeutics as Red Cell Substitutes)」、1999年9月27〜29日、NIH、Bethesda、MD;Simoni J. (2005) 「人工酸素担体」中のIn: Artificial Oxygen Carrier. その最前線 K. Kobayashiら(編集). Springer-Verlag, Tokyo 2005、75〜126頁;Moore E.(2003) J Am Coll Surgeons 196:1〜17)。
効果的な酸素担持血漿増量剤であるために、血液代替物は、いくつかの要件を満たさなければならない。病原体を含まず、無毒性で、非免疫原性で非病原性であり、保存寿命が長いことに加えて、これらの製品は、効果的な組織酸素化及び少なくとも24時間の循環滞留時間を可能にするのに十分な全血に近い良好な酸素担持能力を有するべきである。血液代替物製品のコロイド浸透圧及び粘度は、血漿のそれを超えるべきではない(「赤血球置換物としての酸素治療剤の安全性及び有効性評価のための基準についてのワークショップ(Workshop on Criteria for Safety and Efficacy Evaluation of Oxygen Therapeutics as Red Cell Substitutes)」(1999) NIH、Bethesda、MD;Guidance for Industry. Criteria for Safety and Efficacy Evaluation of Oxygen Therapeutics as Red Cell Substitutes (2004)米国保健社会福祉省、食品医薬品局、FDA生物製剤評価センター、Rockville、MD)。
効果的な血液代替物は、血液流(血管拡張)及び組織/臓器灌流(酸素化)を直ちに最大限に大きくすることが可能であるのに加えて、赤血球形成をも刺激すべきである。血液代替物の循環滞留時間が短く(24時間未満の半減期)、ヘム自己酸化率が高い(1日当たり30%を超える)ため、これらの製品の赤血球形成活性は、失血性貧血の治療において必須の成分である。酸化ヘムは、酸素を運ぶ能力が低下するため、赤血球形成の刺激は、血液代替物による治療の極めて重要な要素である。内因性赤血球による失血の迅速な補充は、最も魅力的な将来の血液代替物と思われる。換言すれば、急性貧血の治療において、血液代替物は、体が、適正な組織酸素化を維持するのに十分な赤血球を産生することができるようになるまで、一時的な「酸素」ブリッジとして機能すべきである(「赤血球置換物としての酸素治療剤の安全性及び有効性評価のための基準についてのワークショップ(Workshop on Criteria for Safety and Efficacy Evaluation of Oxygen Therapeutics as Red Cell Substitutes)」(1999) NIH、Bethesda、MD)。
造血の重要な部分である赤血球形成は、細胞分裂及び分化のいくつかの段階を介した多分化幹細胞からの赤血球の発達である。多分化幹細胞は、骨髄幹細胞(CFU-GEMM)を生じ、これはバースト形成単位赤血球(BFU-E)に変化し、次いでコロニー形成単位赤血球(CFU-E)及び前赤芽球に変化する。前赤芽球は、好塩基性正常芽細胞に変化し、細胞としての多染性赤芽球は、ヘモグロビンの産生を開始する。次いで、細胞質がより好酸性になると、整色性赤芽球に変化する。その核を押し出した後に、細胞は、網状血球として循環に入り、それらのポリリボソームを失った後、数日以内に成熟赤血球になる。正常な条件において、赤血球形成過程全体で5日程度しか要しない。成熟赤血球の寿命は、約90〜120日であり、継続的な交換を必要とする(Hillman RS、Finch CA:Red Cell Manual. 第7版、Philadelphia:F.A. Davis, cl996、viii、190頁)。
赤血球形成の調節は、酸素圧力(濃度)、並びに酸素及び酸化還元調節転写因子及び多くの成長因子(エリスロポエチン-EPO、IL-3、IL-9、SCF、GM-CSF)及び鉱物、特に鉄を含む細胞酸化還元状態に基づいて、高感度なフィードバック形によって制御される複雑なプロセスである(Adamson JW (1991) Biotechnology 19:351〜361;Sasaki R (2003) Int Med 42(2):142〜149;Lacombe Cら、(1998) Haematologica 83(8):724〜732)。
EPOは、赤血球形成に関与する唯一の成長因子でないが、委任前駆体及び抗アポトーシス保護物質の増殖に対する最も重要な調節剤である。EPO受容体(EpoR)によるEPOの主たる機能は、委任赤血球前駆体をアポトーシスから救うことである。抗アポトーシスタンパク質Bcl-X(L)のEPO依存性無調節は、外因性シグナルから独立したアポトーシス保護された委任赤芽球の「デフォルト」末端分化を可能にする(Socolovskyら、(1999) Cell 98(2):181〜91;Dolznigら、(2002) Curr Biol 12(13):1076〜1085)。
赤血球形成事象及び因子の概略表現は、CFU-GEMM→(EPO、SCF、IL-9)→BFU-E→(EPO、SCF、GM-CST、IL-3)→CFU-E→(EPO、GM-CSF)→ERYTHROBLAST (EPO)→RETICULOCYTE→RBCを含んでいた。
貧血は、低酸素をもたらす血液の酸素担持能力の病的な不足と定義づけられる。貧血の主たる原因は、急性失血、難治性貧血に対する二次的な慢性病、癌、血管内溶血、及び赤血球隔離の増大又はその産生の減少である。低酸素に対する自然の応答は、赤血球形成応答の増大である(Campbell K. (2004) Nurs Times 100(47):40〜43)。
低酸素は、EPOを産生する腎臓(皮質)周細管性間質細胞をシミュレートする。EPOは、肝臓、並びにそれが神経アポトーシス及び低酸素時の損傷から保護する脳の星状細胞でも合成される。酸素調節転写因子;低酸素誘導性因子-1α(HIF-1α)及び-1β(HIF-1β)は、ヒト染色体7の単一遺伝子の制御を受けるこの過程を媒介する。遺伝子コードEPOの3'エンハンサに対して特異的に結合するHIF-1は、また、低酸素への適応において重要な他の遺伝子における促進剤である(Semenzaら、(1992) MoI Cell Biol 12;5447〜5454;Brinesら、(2005) Nat Rev Neurosci 6(6):484〜494)。
Semenza & Wangが同定したHIF-1は、2つの塩基性ヘリックスループ-ヘリックス/PASタンパク質(HIF-1α)及びアクリル炭化水素核輸送体HIF-1βからなるヘテロダイマーである。HIF-1βは、酸素にさほど影響されないのに対して、HIF-1αは、低酸素状態でのみ存在する。酸素正常状態において、HIF-1αの分解は、ピロール-4-ヒドロキシラーゼによるプロリン残基の酸素媒介ヒドロキシル化に依存する。HIF-1αのヒドロキシル化は、ヒドロキシル化領域に結合するが、非ヒドロキシル化領域に結合しないフォンヒッペリンダウ腫瘍抑制タンパク質により急速に分解を開始する。フォンヒッペリンダウ腫瘍抑制タンパク質は、ユビキチン結合機構に対するユビキチンリガーゼ結合HIF-1αの一部である(Wangら、(1995) J Biol Chem 270;1230〜1237;Wangら、(1993) J Biol Chem 268;21513〜21518;Kallioら、(1999) J Biol Chem 274(10):6519〜6525)。
しかし、低酸素状態において、酸素の欠乏は、細胞質から核に迅速に移行し、以下の事項に関与する数十個の酸素調節標的遺伝子のマスター調節剤として作用するHIF-1αの分解を抑制する:
1)酸素輸送:赤血球形成(EPO);鉄輸送(トランスフェリン);鉄取込み(トランスフェリン受容体)
2)血管調節:血管形成(VEGF、EG-VEGF、PAI-1);血管緊張の制御(iNOS、α1B-アドレナリン作動性受容体、ET-1);血管リモデリング(HO-1)
3)嫌気性エネルギー:グルコース取込み(グルコース輸送体1);解糖調節(PFKFB3);解糖(ホスホフラクトキナーゼ1、アルドラーゼ、GAPDH、ホスホグリセリン酸キナーゼ1、エノラーゼ1、乳酸デヒドロゲナーゼA(Wenger RH (2002) FASEB J 16;1151〜1162;Gleadleら、(1997) Blood 89(2):503〜509;Gleadleら、(1998) MoI Med Today 4(3):122〜129)。
HIF-1αを酸素正常状態で安定化させることもできる。例えば、酸化ストレスにおいて、反応性酸素種(ROS)は、NF-κBを活性化し、炎症性遺伝子(すなわちTNF-α、IL-1β、IL-6)を誘導する細胞酸化還元平衡を変化させることによって、HIF-1αを安定化することができる。しかし、これらの炎症性サイトカインは、また、EPO遺伝子に対するHIF-1α結合を阻害する一方、VEGF遺伝子誘導を促進することで、赤血球形成を抑制し、血管形成を加速させ得る。癌患者において、この減少は、効果的な血管形成により重度の貧血及び過度の腫瘍成長をもたらし得る。同様に、酸素正常状態の下でHIF-1αを安定化させることも知られる他の炎症性媒介物質TGF-βは、赤血球前駆体細胞の分化を阻止しながら、EPOの赤血球形成活性を低下させることが可能である(Hellwing-Burgelら、(1999) Am Soc Hematol 94:1561〜1567;Linch DC (1989) Schweiz Med Wochenschr 119(39):1327〜1328)。
炎症は、また、末期腎臓病の患者におけるEPO抵抗性の病理に関係する。TNF-α、IL-1β及びIL-6は、尿毒症における赤血球形成を抑制することが示唆されている。動物モデル及びヒトにおいて、IL-6の投与は、赤血球前駆体細胞に対する直接的な阻害によって低増殖性貧血を引き起こす(Treyら、(1995) Crit Rev Oncol Hematol 21:1〜8;Yuenら、(2005) ASAIO J 51(3):236〜241)。
酸素正常状態でHIF-1αを安定させることが知られる他の因子としては、NO、PDGF及びoxLDLが挙げられる。HIF-1α酸素正常状態調節を支配する分子経路は、ROS、PI3K、TOR及びMAPキナーゼ、特にERK 1/2に媒介される(Haddadら、(2000) J Biol Chem 275(28):21130〜21139;Haddadら、(2001) FEBS Lett 505(2):269〜274;Landoら、(2000) J Biol Chem 275(7):4618〜4627;Richardら、(1999) J Biol Chem 274(46):32631〜32637)。
遊離ヘモグロビンが赤血球形成応答に恐らく関与することに関する最初の所見は、粗製ヘモグロビン溶液の投与後にヒトにおける赤血球形成指数(網状血球値及びヘマトクリット)の増加を確認したAmbersonによって1949年に提示された。この実験は、腎不全による患者の死という悲劇的な結末で終わった(Ambersonら、(1949) J Appl Physiol 1:469〜489)。無感質ヘモグロビン溶液を正常なヒト志願者に注入したSavitskyによって30年後に実施された臨床試験も同様の悲劇的結末であった。このヘモグロビンで治療されたすべての対象は、全身性高血圧症及び腎不全を示し、1人が死亡した(Savitskyら、(1978) Clin Pharmacol Ther 23:73〜80)。
これらの初期の臨床実験は、非架橋ヘモグロビンが極めて有害であり、輸血に適さないことを証明した。その時点で、著者は、これらの病理的事象のメカニズムを説明することができなかった。現行の知識を適用することによって、Amberson及びSavitskyの臨床試験で見られた病理的応答、特に血圧の急上昇は、ヘモグロビンの固有の毒性の結果であったことを示唆するのが妥当である。ここで、酸化窒素を除去し、他の血管緊張制御メカニズムに影響を与えることによるヘモグロビンをベースとした血液代替物は、心臓出力の低下及び全血管末梢抵抗の増加に伴う血圧の重度の上昇をもたらし得ることが明らかである(Simoni J. (2005) 「人工酸素担体」中の.その最前線.K. Kobayashiら(編集). Springer-Verlag、Tokyo、2005、75〜126頁)。
ヘモグロビンは、昇圧物質であり、現在使用されている化学的又は組換え改質技術は、この問題を修正しなかった。HEMASSIST(商標)、OPTRO(商標)-rHbl.1、POLYHEME(登録商標)、HEMOPURE(登録商標)及びHEMOLINK(商標)を含むすべての試験済血液代替物製品は、血管収縮、すなわち血管代替物開発者の主たる大敵である副作用を引き起こした。これらの血管代替物の注入後に観察された血圧の上昇は、血管収縮に起因する末梢血管抵抗の増加によって引き起こされる(Winslow RM (1994) Transf Clin Biol 1(1);9〜14;Hessら、(1994) Artif Cells Blood Substit Immobil Biotechnol 22(3):361〜372;Kasperら、(1996) Cardiovasc Anesth 83(5):921〜927;Kasperら、(1998) Anesth Anal 87(2):284〜291;Winslow RM (2003) J Intern Med 253:508〜517)。該製品のいくつかは、組織/臓器の灌流速度を低下させ、低酸素をもたらし得る毛管流の遮断を生じる傾向があることも報告された(Cheungら、(2001)Anesth Anal 93:832〜838)。
低酸素環境は、HIF-1αを安定させるため、血管収縮を促進し、低酸素をもたらす血液代替物は、HIF-1α調節遺伝子を誘導することが理論的に見込まれる。しかし、このメカニズムは、空気を渇望する組織に十分量の酸素を送達することである血液代替物の主たる役割と矛盾する。虚血臓器に対する酸素の適正な送達は、ヘモグロビン溶液の血液代替物としての法的承認における主たる要件である。したがって、当該「赤血球形成効果」を病的と見なすべきである。血液代替物製品は、無毒性で効果的と見なされるためには、血液流量及び組織灌流、すなわち酸素化を最大限に増加させる必要がある(「赤血球置換物としての酸素治療剤の安全性及び有効性評価のための基準についてのワークショップ(Workshop on Criteria for Safety and Efficacy Evaluation of Oxygen Therapeutics as Red Cell Substitutes)」(1999) NIH、Bethesda、MD;Guidance for Industry. Criteria for Safety and Efficacy Evaluation of Oxygen Therapeutics as Red Cell Substitutes (2004)米国保健社会福祉省、食品医薬品局、FDA生物製剤評価センター、Rockville、MD)。
当該血液代替物は、より高用量で使用すると、それらの初期の低酸素誘導赤血球形成応答を阻害し得る炎症反応を誘発し得ることも理論的に見込まれる。
1990年代に、ヘモグロビンは、炎症に関与する遺伝子の調節に関与する酸化還元調節転写因子NF-κBの強力な誘導剤であることをSimoniらが発見した。彼は、内皮NF-κBの活性が、ヘモグロビンの酸化促進能力、及びGSH/GSSGを酸化平衡に移行させるヘモグロビン媒介細胞酸化ストレスの程度に依存し得ることを見いだした。この試験において、グルタルアルデヒド重合ウシヘモグロビンは、非改質ヘモグロビンより強力なNF-κB誘導剤であるようであった。Simoniらはこの効果を、グルタルアルデヒド重合ヘモグロビンが内皮脂肪の過酸化を最大にし、細胞内GSHの欠乏を最大にするという事実と関連づけた。これらの試験に基づいて、Simoniらは、NF-κBをヘモグロビン誘導酸化ストレスとヘモグロビン媒介炎症応答との「ブリッジ」と見なすことができることを示唆した。加えて、彼の発見は、ヘモグロビンをシグナル伝達分子と見なすための基礎を確立した(Simoniら、(1997) Artif Cells Blood Substit Immobil Biotechnol 25(1-2):193〜210;Simoniら、(1997) Artif Cells Blood Substit Immobil Biotechnol 25(1〜2):211〜225;Simoniら、(1998) ASAIO J 44(5):M356〜367;Simoniら、(1994) Artif Cells Blood Substit Immobil Biotechnol 22(3):525〜534;Simoniら、(2000) ASAIO J 46(6):679〜692;Simoniら、(1994) Artif Cells Blood Substit Immobil Biotechnol 22(3):777〜787;Pahl HL (1999) Oncogene 18:6853〜6866;Gilmore TD (2005))。
Simoniによる後の研究によって、NF-κBを誘発するヘモグロビン溶液は、HIF-1α調節遺伝子、特にEPOを抑制し得ることが実証された(Simoniら、(2003) Artificial Blood 11(1):69;Simoniら、(2003) ASAIO J 49(2):181;Simoni J. (2005)、「人工酸素担体」中の.その最前線.K. Kobayashiら(編集)、Springer-Verlag、Tokyo、2005、75〜126頁)。
初期の赤血球前駆体におけるNF-κB経路の高活性が、赤血球特異的遺伝子の抑制に関与することも報告された(Liuら、(2003) J Biol Chem 278(21):19534〜19540)。
炎症は、一般には、特に貧血及び癌におけるEPO抵抗の病理に貢献することが認められる(Yuenら、(2005) ASAIO J 51 (3):236-241;Hellwig-Burgelら、(1999) 94(5):1561〜1567)。
したがって、細胞の酸化還元状態を変化させる血液代替物は、NF-κB調節遺伝子(すなわちサイトカイン)を誘発させ、酸素正常状態においてさえもHIF-1αを安定させる得ることが理論的に見込まれる。しかし、当該状態では、HIF-1αのEPO遺伝子への効果的な結合が炎症性サイトカインによって阻害される。ヘモグロビンは、炎症性サイトカインの産生に関連づけられ、炎症性サイトカインは、強力な抗赤血球形成物質であるため、高い炎症促進能力を有する血液代替物は、赤血球形成応答を阻害し得ることを示唆するのが妥当である。
実際、現在試験されている血液代替物のいくつかは、血管収縮事象を媒介するだけでなく、炎症反応を誘導することも可能であることが報告された。それらの応答は、用量漸増試験(臨床試験の後期の相)時により顕著であり、BaxterのHEMASSIST(商標)、BiopureのHEMOPURE(登録商標)、SomatogenのrHbl.l-OPTRO(商標)及びNorthfieldのPOLYHEME(登録商標)について観察された。血管収縮及び虚血/炎症応答は、これらの血液代替物の臨床開発の方向変換、停止又は中止の主たる理由として引用された(Simoni J. (2005)、Artificial Oxygen Carrier. Its Front Line. K. Kobayashiら(編集)、Springer-Verlag、Tokyo、2005、75〜126頁)。
現在試験されている血液代替物の見込まれる赤血球形成活性に対する別の科学的根拠は、ヘモグロビンが天然のアポトーシス促進能を有することである。この所見は、EPOの赤血球形成促進剤としての主たる機能が委任赤芽球をアポトーシスから保護することで、それゆえ赤血球形成を生じさせることができるため非常に重要である(Socolovskyら、(1999) Cell 98(2):181〜91;Dolznigら、(2002) Curre Biol 12(13):1076〜1085)。
非改質ヘモグロビンが、ヒト内皮細胞に対するアポトーシス促進能を有すること、並びにカスパーゼ-8及び-9が、細胞内GSHの欠乏によって加速され得る効果を制御することが報告された(Meguroら、(2001) J Neurochem 77(4):1128〜1135;Simoniら、(2002) ASAIO J 48(2):193)。ジアスピリン改質ヘモグロビン(HEMASSIST(商標))及びそのグルタルアルデヒド重合バージョンも、アポトーシス細胞死を示す形態的変化、G2/M拘束、及びDNA断片化を誘導する(Goldmanら、(1998) Am J Physiol 275(3 Pt2):H1046-53);D'Agnilloら、(2001) Blood 98(12):3315〜3323)。生体外心臓灌流モデルに使用されるHEMOPURE(登録商標)(Biopure)の獣医用バージョンであるオキシグロビンは、冠状動脈抵抗の著しい増加に伴うアポトーシス内皮細胞死(TUNELアッセイ)をもたらすことが見いだされた(Moharaら、(2005) ASAIO J 51(3):288〜295)。
骨髄細胞と直に接触するアポトーシス促進能を有する任意の薬剤は、抗赤血球形成活性を有することが見いだされた。当該薬剤は、EPOの抗アポトーシス効果と競合して、赤血球形成を不可能にする。実際、ヘモグロビンをベースとした血液代替物は、骨髄細胞によって部分的に清浄化されるため、赤芽球と直に接触する(Shumら、(1996) Artif Cells Blood Substit Immobil Biotechnol 24(6):655〜683)。
ヘモグロビンは、アポトーシス促進能を有し、骨髄と直に接触し得ることを認識すると、アポトーシス促進活性を有する血液代替物製品は、比較的高濃度で与えられた場合、赤血球形成を阻害することを示唆するのが妥当である。
科学文献及び特許文献には、ヘモグロビンをベースとした血液代替物の赤血球形成能力に関する限定された情報が掲載されている。1997年に、Rosenthalら(米国特許第5,631,219号)は、赤血球前駆体細胞を含む前駆体幹細胞の成長又は分化の増強を通じて組換えヘモグロビン(rHbl.1)により哺乳類における赤血球形成を刺激するための方法を請求した。Hoffmanらの米国特許第5,028,588号、同第5,563,254号及び同第5,661,124号は、組換えヘモグロビンrHbl.1(商品名OPTRO(商標))を保護する。
米国特許第5,631,219号において、0.5又は1.0mg/kg体重の投与量のrHbl.1を毎週3回マウスに静脈投与すると、骨髄の赤血球の早期の前駆体であるBFU-Eが増加した。Rosenthalらの米国特許第5,631,219号には、正常なマウス(BDF-1)をrHbl.1で処理した後にヘマトクリットが増加することが報告された。rHbl.1が委任赤血球前駆体以外のレベルで作用するかどうかを評価するために、Rosenthalは、非常に早期の非委任前駆体細胞、すなわちコロニー形成単位-脾臓(CFU-S)に対するrHbl.1の影響を評価した。
米国特許第5,631,219号によれば、Rosenthalは、0.5mg/kg体重の濃度のrHbl.1によりCFU-Sの数が増加することを見いだした。米国特許第5,631,219号において、ヘモグロビン0.5mg/1kg体重のより低い投与レベルは、rHbl.1のより高い投与量(5及び10mg/kg)より良好に機能し、予想外に低い投与量で最大の効果が発揮されることが示唆される。
理論的説明を提供することなく、Rosenthalらは、低投与量(0.5mg/kg体重)のrHbl.1が前駆体細胞に対して直接又は間接的に働いて、赤血球形成を向上させるとともに、赤血球形成因子として作用すると結論づけた。
Rosenthalらによって使用されたrHbl.1の濃度(0.5〜10mg/kg体重)は、酸素輸送、すなわち急性失血の治療に関して臨床的に不適切である。治療に有効であるためには、ヘモグロビンをベースとした血液代替物をミリグラム単位でなくグラム単位で輸血すべきである。したがって、米国特許第5,631,219号は、急性失血性貧血の治療に適応し得ない。
また、米国特許第5,631,219号における特許された請求項は、提示された実施例と一致しない。Rosenthalは、ヘモグロビンの治療有効レベルが0.001から10.000mg/kg体重であると特許請求した。これらの請求項は、0.5mg/kg体重の濃度のrHbl.1のみが赤血球形成効果を有することを示すRosenthalの実施例によって裏づけられていない。恐らく、Rosenthalは、投与量が約1.75g(1.750mg)/kg体重の化学的に改質されたウシヘモグロビン溶液がヒトにおいて効果的な赤血球形成応答を示したことを記載した我々の公開文献に影響されたのであろう。米国特許第5,631,219号は、この文献に依存している(Feolaら、(1992) Surg Gynecol Obstet 174(5):379〜386)。
1997年に、Moqattashらは、正常なマウス及びAIDSマウスにおけるAZTの抑制効果から造血活性を救う注入rHbl.1及びEPOの能力を比較した。結果は、より高濃度(10〜15mg/kg体重)のrHbl.1を使用しても、たいていの血液指数がより有意には増加しなかった。さらに、組合せ治療、すなわち5-mg rHbl.1/kg体重+2U EPO/マウス/日は、5-mg/kg体重のrHbl.1単独より良好に作用することが示された(Moqattashら、(1997) Acta Haematol 98(2):76〜82)。
2年後に、Luttonらは、Rosenthalの研究に首尾良く挑戦した。臨床的に適切な投与量の架橋及び非架橋ヘモグロビンのウサギにおける造血効果を分析することによって、高濃度の両ヘモグロビン溶液は、BFU-E及びCFU-Sの産生に有意な変動をもたらさなかったため、それらは造血活性を示さないと彼は結論づけた(Luttonら、(1999) Pharmacology 58:319〜324)。
組換え(すなわちrHbl.1)、架橋四量体(すなわちHEMASSIST(商標))及び重合(すなわち、HEMOPURE(登録商標)、POLYHEME(登録商標))ヘモグロビンを様々な前臨床及び臨床試験で広範に試験した。すべての試験済ヘモグロビン溶液は、毒性を有することが示された(「赤血球置換物としての酸素治療剤の安全性及び有効性評価のための基準についてのワークショップ(Workshop on Criteria for Safety and Efficacy Evaluation of Oxygen Therapeutics as Red Cell Substitutes)」(1999) NIH、Bethesda、MD)。
48人の健康な男性志願者を無作為に割り当てて、15〜320mg/kg体重の5%rHbl.1を与えたrHbl.1のヒト臨床試験では、胃腸不良、発熱、寒気、頭痛及び背痛等の重篤な副作用が伴った(Vieleら、(1997) Anesthesiology 86(4):848〜858)。手術を受け、67〜365mg/kg体重のrHbl.1が与えられた患者に対する別の臨床試験では、重篤な有害事象が生じなかった。しかし、患者は、高血圧症、炎症症状及び膵臓酵素の増加を示した。これらの臨床試験においても、rHbl.1の赤血球形成効果は報告されなかった(Hayesら、(2001 Cardiothorac Vase Anesth 15(5):593〜602)。
rHbl.1の臨床実験が極めて不満足であったために、この組換え血液代替物製品の商業的開発が終了された。90年代後半に、Somatogen/Baxterは、臨床的に不満足なrHbl.1に代わる新規の第2世代組換え製品(rHb2.0;Olsonらの米国特許第6,022,849号)に集中した。その新規の製品は、酸化窒素との反応率が低くなるように設計されていた。しかし、2年間の前臨床試験後に、rHb2.0の商業的開発も打ち切られた。
rHbl.1の臨床実験は、米国特許第5,631,219号において、より低い投与レベル(体重1kg当たり0.5mgのヘモグロビン)がより高い投与量(5及び10mg/kg)より良好に作用する理由を理解するのに役立てることができる。恐らく、より高い投与量のrHb1.1の強い炎症促進及びアポトーシス促進能が、EPO遺伝子の誘導を抑制して、赤血球形成を不可能にするものと思われる。したがって、数mg/kg体重より高い濃度のrHbl.1は、赤血球形成の阻害をもたらしながら、造血炎症事象の一部としての炎症促進食細胞の産生を促進することを示唆するのが妥当である。
ヘモグロビンをベースとした他の血液代替物製品も臨床試験の最後の相で失敗に終わった。
HEMASSIST(商標)による第III相試験は、悲劇的結末で終わった。HEMASSIST(商標)で治療された患者は、対照群の患者に比べて死亡率が有意に高かった。1998年6月には、FDAの提言により、安全性の懸念からHEMASSIST(商標)の開発計画を中断した。HEMASSIST(商標)の臨床試験では、赤血球形成効果又は造血効果が報告されなかった(Sloanら、(1999) JAMA 282:1857〜1864)。
HEMOPURE(登録商標)(Rauschらの米国特許第5,084,558号、同第5,296,465号及び同第5,753,616号;Lightらの米国特許第5,895,810号)は、「安全性の懸念」から臨床的使用が一時中断された。この製品の強い血管収縮、酸化促進、炎症促進及びアポトーシス促進能は、必然的に血液代替物としてのその実用性を制限し得る(Kasperら、(1996) Cardiovasc Anesth 83(5):921〜927;Kasperら、(1998) Anesth Anal 87(2):284〜291)。
HEMOPURE(登録商標)単独の赤血球形成効果は実証されなかった(Gawryl MS (2003) Artif Blood 11(1):46)。しかし、エホバの証人の胃腸出血後の重度の貧血の治療にHEMOPURE(登録商標)(+EPO)が実験的に使用された。3.5g/dLの初期ヘモグロビンを有する50歳の男性にHEMOPURE(登録商標)(7単位)及び高投与量の組換えEPO(500U/kg/日)を注射した。最初にヘモグロビンレベルを維持し、次いで、rEPO治療の24日目に最大量の7.6g/dLになるまで徐々に増加させた。この事例は、HEMOPURE(登録商標)(半減期が24時間未満)が初期治療として機能すると同時に、骨髄赤血球産生に対する組換えEPOの最大限の効果を待つことができることを証明している。HEMOPURE(登録商標)単独では、赤血球形成能力を有さないことがこの臨床試験で示された(Gannonら、(2002) Crit Care Med 30(8):1893〜1895)。
2002年に、POLYHEME(登録商標)(Sehgalらの米国特許第4,826,811号、同第5,194,590号、同第5,464,814号、同第6,133,425号、同第6,323,320号及び同第6,914,127号)は、待機手術患者における使用について米国の法的承認が得られなかった。現在、POLYHEME(登録商標)は、自動車事故犠牲者の酷い出血を治療するための特別な使用に基づく臨床試験が施されている。
過去に、POLYHEME(登録商標)は、持続性結腸出血にかかり、2.9g/dLのヘモグロビンを有する重度の貧血の女性を治療するのに使用された。この臨床試験では、赤血球形成応答を刺激するのに必要な高投与量の組換えEPOとともにPOLYHEME(登録商標)が使用された。したがって、POLYHEME(登録商標)は、HEMOPURE(登録商標)と同様に、単独では赤血球形成活性を有さない可能性が高い(Allisonら、(2004) Southern Med J 97(12):1257〜1258)。
HEMOLINK(商標)(Hsiaの米国特許第4,857,636号)の臨床開発は、ヒトにおける(炎症をベースとした)心筋梗塞の発生率が高いため停止された。HEMOLINK(商標)は、非処理ヘモグロビンと比較して、自己酸化、酸化改質及びヘム基の保全性に関して不安定であることが示された。高度な血管収縮特性、酸化促進特性及び炎症促進特性を示すHEMOLINK(商標)は、赤血球形成を単独で刺激する製品として特徴づけられなかった(Alayash Al (2004) Nature 3:152〜159;Riess JG (2001) Chem Rev 101(9):2797〜2919)。
過去において、他の血液代替物製品(HEMOPURE(登録商標))、POLYHEME(登録商標))と同様に、HEMOLINK(商標)を、重度の貧血にかかり、3.2g/dLのヘモグロビンを有する53歳のエホバの証人の女性の特別の治療において試験した。この試験においても、高投与量の組換えEPO及び硫酸鉄とともにHEMOLINK(商標)が投与された。14日後、患者のヘモグロビンレベルは、6.5g/dLまでしか増加せず、ヘマトクリットは23%であった。この試験は、毒性のヘモグロビンをベースとした血液代替物単独では赤血球形成事象を刺激し得ないことのさらなる証拠を提供した(Lanzingerら、(2005) Can J Anaesth 52(4):369-373)。
ヘモグロビンの赤血球形成活性に関する基本的な研究も非常に制限されている。最近、低酸素状態下のヘモグロビンは、HIF-1αの発現を増加させることが報告された。ウシ大動脈内皮細胞モデル、及びHIF-1αを検出するためのウェスタンブロット法を使用して、両非改質ヘモグロビン溶液において、HIF-1αの発現の増加は、第一鉄-Hbの減少及び第二鉄-Hbの蓄積(ヘムの酸化)に関連づけられることが示唆された。この試験において、著者は、HEMASSIST(商標)と同様に、ジアスピリン架橋ヘモグロビンを使用した(Yehら、(2004) Antioxid Redox Signal 6:944〜953)。
この実験は、第一鉄(酸素化)でなく第二鉄(酸化)ヘモグロビンに内皮細胞を長時間接触させると、HO-1及びフェリチンの産生量の増加により、第2酸化物の攻撃に対して顕著な抵抗性を有するようになることを示唆する先の見解に対するより分子的な詳細を提供するのに加えて、ここでその現象はHIF-1α調節されることが知られることを示唆する(Ballaら、(1995) Am J Physiol 268(2 Pt l):L321〜327)。
ヘモグロビンをベースとした効果的な酸素担体は、失血性貧血に伴う低酸素状態に対処できなければならないため、上記知見は、低酸素を悪化させ、その結果HIF-1αを誘導させる製品に対してのみ適用することができる。実際、現在臨床開発が進められている血液代替物製品は、良く知られた血管収縮能力及び高い自己酸化率を保有していた。しかし、Yehの研究では、ヘモグロビンと赤血球形成の関連づけがなされなかった。
現在臨床開発が進められている血液代替物の赤血球形成活性の明らかな欠如を輸血課国立衛生研究所、Warren G. Magnuson Clinical Center、National Institute of Health、MD(メリーランド)州BethesdaのDr. Harvey G. Kleinの見解によって要約することができる。「血液代替物:如何に溶液に近づけるか?(Blood substitutes: how close to a solution?)」という題名の彼の2005年の総括書の中で、彼は次のように述べている。「第III相試験におけるヒト、ウシ及び組換え源からのヘモグロビン誘導赤血球代替物は、時間単位の実測半減期を有し、慢性貧血のための赤血球形成を刺激する輸液又は薬物に代用される可能性は小さいが、(1)適合可能な血液が直ぐに入手できない場合の輸血に対するブリッジとして、(2)手術の自己血液希釈管理の補助剤として、又はさらに(3)癌の放射線治療又は管理においてさえ、役割を果たすことができる」(Klein HG (2005) Dev Biol (Basel) 120:45〜52)。
上記分析は、理想的な血液代替物がまだ開発されていなかったことを示す。完璧な血液代替物は、出血が抑制されるまで患者を維持する必要がある。無細胞血液代替物は、循環半減期が短いため、失血を補償するための赤血球形成を刺激する能力を有するべきである。患者を維持するために、血液代替物は、血液流量及び組織灌流、それゆえ酸素化を最大化する必要がある。赤血球形成を刺激するために、血液代替物は、低酸素状態及び酸素正常状態下でHIF-1αを安定させ、酸化促進及び炎症促進反応を制御することによって、EPO遺伝子に対するHIF-1αの結合を容易にする必要がある。EPOの主たる機能が委任赤血球前駆体をアポトーシスから救うことであるため、血液代替物は、また、アポトーシス促進活性に関与すべきでない。これらの事象は、次に、失血を内因性赤血球で瞬間的に補償する効果的な赤血球形成を開始するのに必要である。
虚血臓器に対する酸素の適正な送達は、血液代替物としてのヘモグロビン溶液の法的承認における主たる要件である。したがって、血管収縮を誘導し、強い酸化促進能力、炎症促進能力及びアポトーシス促進能を有する血液代替物は、患者にとって有害であり、臨床的に許容されない。
現在臨床試験が進められている製品は、第一世代の血液代替物であり、今はあらゆるヘモグロビン固有の毒性問題に対処する「新世代の」血液代替物に努力が向けられている。第二世代の製品は、急性失血性貧血及び外傷の治療を含むすべての臨床指標に使用され得ると考えられる。
現在試験されている血液代替物は、赤血球形成活性が欠如しているため、組織灌流及び酸素化を最大にし、赤血球形成を刺激することで、ひいては内因性赤血球で失血を補う能力を有する改善された酸素担持溶液の必要性が依然存在する。当該血液代替物による赤血球形成の刺激は、低酸素状態及び酸素正常状態で生じる必要がある。生命に係わる貧血の場合は、当該血液代替物は、組織酸素化を維持する初期治療並びにHIF-1αの安定化及びEPO産生を通じての患者の赤血球形成応答の刺激によりヘマトクリットを正常化する二次的な治療として機能する必要がある。この治療は、高価な組換えEPO媒介の必要性を排除することになる。
特許文献において、HIF-1αの安定化は、低酸素関連組織傷害の治療における治療有益性を提供できることがいくつか示されている。Semenzaの米国特許第6,562,799号は、安定したHIF-1αタンパク質の治療有効量を対象に投与することによって低酸素又は虚血関連組織障害を治療するための方法を提供する。Gregoryらの米国特許第6,432,927号は、転写活性化が可能な低酸素誘導性因子タンパク質のDNA結合領域による虚血組織傷害を軽減するための方法を提供する。Kaelinらは、米国特許第6,849,718号において、低酸素及び虚血関連組織傷害を治療するためのHIF-1α突然変異タンパク質を含有する医薬組成物並びにそれらの組成物の使用方法を提供する。Arbeitの米国特許第6,838,430号は、治傷を加速させるための安定なHIF-1α変異体の使用を提供する。
しかし、特許を取得したこれらの方法は、HIF-1α依存性EPO誘導、したがって赤血球形成を促進する上でのヘモグロビンをベースとした血液代替物の使用を扱っていない。
虚血組織及び臓器に対する酸素送達の最適化並びに赤血球形成応答の効果的な刺激は、血液代替物としてのこれらの薬剤の法的承認において最も重要な要因である。本発明の血液代替物は、上記課題に対処する。
(2.2.急性失血の治療)
現在、米国では、法的に承認された血液代替物が存在しない。そのため、輸血が、急性失血の対象における血液容量を迅速に回復させる唯一の信頼できる手段である。しかし、輸血にはいくつかのリスクが伴う。第1に、供血者の血液を試験して、輸血に対する適性及び受血者に対する適合性を判断する必要がある。適合性試験には、通常、(1)不適合の赤血球(red blood cells)(RBC)の輸血を防ぐための供血者及び受血者の血液の血液型の検査;並びに(2)RBCにRh因子Rh0(D)が存在する(Rh-陽性)か存在しない(Rh-陰性)かを判断するためのRh検査が含まれる。また、例えば、直接抗グロブリン試験(直接Coombs'試験)及び間接抗グロブリン試験(直接Coombs'試験)を用いて、供血血液をスクリーニングして、溶血性疾患又は重度の輸血反応を引き起こし得る不測の抗RBC抗体を確認する必要がある。
供血者の血液が受血者に合致すると仮定しても、輸血により多くの併発症が生じ得る。例えば、輸血の最中又は後の供血者若しくは受血者(通常は前者)のRBCの溶血が、ABO/Rh不適合、不適合血漿、RBCの溶血又は脆弱(例えば、保存血液の過温又は不適切なIV溶液との接触)或いは非等張性溶液の注入によって生じ得る。反応は、不適合な供血者のRBCが受血者の血漿中の抗体によって溶血した場合に最も酷く、呼吸困難、発熱、寒気、顔面紅潮、酷い痛み(特に腰部)、並びに血圧降下、吐き気及び嘔吐をもたらすショックを引き起こし得る。通常は供血者血漿中のアレルゲン又はより低頻度にはアレルギー性の供血者の抗体による供血者血液の未知の成分に対するアレルギー反応もよく見られる。これらの反応は、通常、輸血の最中又は直後のじんま疹、水腫、一時的な目眩及び頭痛による軽度のものであるが、希には過敏性が生じることもある。別の併発症は、より低頻度であるが、肺内の受血者WBCを凝集及び脱顆粒させる供血者血漿中の抗白血球(white blood cell)(WBC)抗体によって引き起こされる輸血関連急性肺傷害である。大量の空気が血管に注入されると、心臓内の血液が発泡し、その結果としてポンピングが不十分になって、心不全になり得る。輸血された血液又は血液成分におけるさらに少数の生存リンパ球によって引き起こされ得る移植片対宿主病も輸血に起因し得る。採取時の不適切な防菌技術により、又は過渡的無症状供血者によって生じ得る細菌汚染の心配もある。最後に、そして最も重要なこととして、輸血の受血者は、肝炎、HIV、サイトメガロウィルス(CMV)及びヒトT細胞リンパ指向性ウィルスI型(HTLV-I)感染を含むが、それらに限定されないウィルス病伝染のリスクを常に有することになる。
(3.発明の要旨)
本発明は、急性失血性貧血、すなわち(i)疾患による急性失血、(ii)手術中に起こる急性失血若しくは(iii)外傷による急性失血によって生じる貧血を治療又は予防するための特定の血液代替物を、それを必要とする対象において使用する方法に関する。本発明の方法は、血液容量を回復させるとともに、低酸素を抑え、酸素正常状態下で赤血球形成を誘導する血液代替物の使用を含む。現在のところ対象において失血から迅速に回復させる唯一の信頼できる手段である輸血は、血液容量を回復させ、低酸素を抑えるのに有効である。しかし、急性失血によって引き起こされる緊急時に輸血を使用することは、供血者の血液と受血者の血液との適合性を試験する時間がなく、供血者の血液に存在する免疫成分に伴う多くの併発症(例えば、RBCの溶血、アレルギー反応、輸血関連急性肺傷害、移植片対宿主病、細菌汚染、ウィルス病伝染等)を誘発するリスクが常に存在するため望ましくない。さらに、酸素正常状態を一時的に回復させる輸血は、それ自体の赤血球を補充する体の能力を低下させる。特に、赤血球形成に関与する体内のエリスロポエチンの産生の増加が低酸素状態によって誘導される。したがって、輸血は、低酸素に対する「迅速な手当」であるが、究極的には赤血球形成を遅くするため、内因性赤血球を血液循環に補充する体の能力を低下させる。ヒトへの使用に向けて現在試験されている血液代替物にも同様の理由で問題がある。特に、多くの血液代替物の循環滞留時間が短く(半減期は24時間未満)、ヘム自己酸化率が高い(1日当たり30%を超える)ため、内因性赤血球を体の血液循環に補充する必要な赤血球形成活性を有さない。本発明の方法に使用される血液代替物は、酸素正常状態下であっても赤血球形成を誘導することが可能であるため、本発明は、この問題を改善するものである。
ある実施態様において、失血は、出血性疾患、潰瘍又は血管破壊若しくは動脈瘤などの疾患に関連づけられる。ある他の実施態様において、失血は、待機手術(例えば、整形手術)などの手術中に生じた。ある他の実施態様において、失血は、火傷、射創又は刺し傷などの外傷による。ある実施態様において、失血は、対象が33%を超える血液を失うような重度である。ある他の実施態様において、失血は、対象が20%から33%の血液を失うような中等度である。ある他の実施態様において、失血は、対象が20%未満の血液を失うような軽度である。好ましくは、対象はヒトである。7g/dL未満のヘモグロビンを有するヒトの対象は、本発明の方法を用いて有利に治療され得る。
本発明の方法は、血液容量を増加させ、急性失血に伴う低酸素を抑えるのに有効な量の血液代替物を、それを必要とする対象に投与することを含む。本発明の方法に有用な血液代替物は、(1)酸素正常状態下で細胞培養において試験した場合、エリスロポエチンの発現を誘導すること;及び/又は(2)(a)対象のヘマトクリット若しくはヘモグロビンの増倍時間の減少、又は(b)対象の循環エリスロポエチンレベルの増加によって測定した場合、酸素正常条件下での赤血球形成を誘導すること;が可能である。所望により、血液代替物は、細胞培養で試験した場合、HIF-1α発現を安定させること、及び/又は細胞培養で試験した場合、NF-κB発現を下方制御することを示すことも可能である。
これらの特性を発揮するあらゆる血液代替物を本発明の方法に使用することができる。例えば、該血液代替物は、ヘモグロビン血液代替物、より具体的には、過ヨウ素酸酸化ATPと分子内で架橋し、過ヨウ素酸酸化アデノシンと分子内で架橋し、及び還元グルタチオンと結合したヘモグロビンを含む架橋ヘモグロビンであり得る。好ましい実施態様において、本発明の方法に使用される架橋ヘモグロビンは、1:1から1:3のモル比のヘモグロビン及び過ヨウ素酸酸化ATP;1:1から1:10のモル比のヘモグロビン及び過ヨウ素酸酸化アデノシン;及び/又は、1:1から1:20のモル比のヘモグロビン及び還元グルタチオンを含む。この製品の商品名は、HEMOTECH(商標)であり、o-アデノシン5'-三リン酸(o-ATP)、o-アデノシン及び還元グルタチオン(GSH)と架橋した純粋のウシHbを含む架橋ヘモグロビンである。架橋ヘモグロビンに関するより詳細な記載は、その全体が参照により本明細書に組み込まれているFeolaらの米国特許第5,439,882号に見いだすことができる。
本発明は、また、本発明の方法又は他の治療両方に使用できるある濃度又は容量の血液代替物を含む新規の医薬組成物に関する。例えば、当該新規の組成物は、(1)(a)7gから122.5g未満まで、又は(b)122.5gを超える量から700gまでの治療有効量、或いは(2)0.6リットル未満の治療有効容量の架橋ヘモグロビン血液代替物を医薬として許容し得る担体中に含むことができ、該架橋ヘモグロビン血液代替物は、酸素正常状態下において細胞培養で試験した場合、エリスロポエチンの発現を誘導する。
他の新規の医薬組成物は、(1)(a)7gから122.5g未満まで、又は(b)122.5gを超える量から700gまでの治療有効量、或いは(2)0.6リットル未満の治療有効容量の架橋ヘモグロビンを医薬として許容し得る担体に含み、該架橋ヘモグロビンは、過ヨウ素酸酸化ATPと分子内で架橋し、過ヨウ素酸酸化アデノシンと分子内で架橋し、及び還元グルタチオンと結合したヘモグロビンである。
ある実施態様において、本発明の医薬組成物に使用される架橋ヘモグロビンを非電解質水溶液に溶解させる。医薬組成物は、マンニトール及び/又は電解質をさらに含むことができる。
本発明の新規の医薬組成物を、本発明の方法並びにあらゆる他の方法(例えば、慢性失血性貧血又は長期間失血によって引き起こされる貧血の治療)に使用することができる。
動物対象における急性失血の治療のための架橋ヘモグロビンを使用して、本発明の方法を説明する。
(3.1.定義)
本明細書に用いられているように、「約」という用語は、標準的な実験誤差(例えば、標準偏差)を包括することを意図する。標準偏差の定義、計算及び解釈に関するさらなる情報を、限定はしないが、「統計学(Statistics)」、W. W. Norton & Company;第3版(1997年9月1日);及び「統計学の基本原理(The Basic Principles of Statistics)」、W.H. Freeman & Company; Bk&Cdr第3版(2003年6月1日)などの統計の本に見いだすことができる。
本明細書に用いられているように、「有効量」及び「有効容量」という用語は、本発明の1つ以上の血液代替物及び/又は医薬組成物が投与される対象において、血液容量を増加させ、血液流量を回復させ、組織酸素化レベルを回復させ、血行動態パラメータを回復させ、急性失血に伴う低酸素を抑え、循環EPO又はEPO合成を増加させ、ヘマトクリットレベルを回復させ、ヘモグロビンレベルを回復させ、HIF-1αを安定させ、NF-κBを下方制御し、前赤芽球のアポトーシス事象を抑え、及び/又は抗赤血球形成炎症性サイトカインの産生を抑えるのにそれぞれ十分な量及び容量をいう。
本明細書に用いられているように、「低酸素の」及び「低酸素」という用語は、酸素が減少した状態をいう。低酸素は、酸素分圧の低下、不十分な酸素輸送、及び/又は組織が酸素を使用できないことによって引き起こされ、体の機能の低下を引き起こし得る。低酸素状態(1.5% O2、93.5% N2及び5% CO2)は、例えば、加湿された変化しやすい好気性の作業ステーションで達成され得る。
本明細書に用いられているように、「疾患(illness)」という用語は、「疾患(disease)」という用語と互換的に用いられる。急性失血を引き起こす疾患は、任意の種類の細胞(例えば、体細胞、生殖細胞、胚細胞、幹細胞)、組織(例えば、骨、筋肉、結合組織、血液)及び/又は臓器(例えば、脳、腎臓、肺、心臓、膵臓、前立腺、卵巣、子宮、胃腸管)を含み得る。
本明細書に用いられているように、「酸素正常状態の」及び「酸素正常状態」という用語は、正常な酸素のレベルをいう。典型的には、酸素正常状態は、吸入ガスにおける酸素の分圧が、海面の空気のそれと等しく、約150mmHgである状態をいう。酸素正常状態は、95%の空気及び5%のCO2である。
本明細書に用いられているように、急性失血に関して「予防する」、「予防している」及び「の予防」という用語(又は文法的に同等の用語)は、急性失血又は急性失血に伴う症状若しくは組織病理を遅らせること又は予防することをいう。
本明細書に用いられているように、「予防有効量」及び「予防有効容量」という用語は、対象が急性失血にかかるのを遅らせる、又は予防するのに十分なそれぞれ量又は容量をいう。例えば、予防有効量又は予防有効容量は、血液代替物及び/又は医薬組成物が投与される対象において、血液容量を増加させ、血液流量を回復させ、組織酸素化レベルを回復させ、血行動態パラメータを回復させ、急性失血に伴う低酸素を抑え、循環EPO又はEPO合成を増加させ、ヘマトクリットレベルを回復させ、ヘモグロビンレベルを回復させ、HIF-1αを安定させ、NF-κBを下方制御し、前赤芽球のアポトーシス事象を抑え、及び/又は抗赤血球形成炎症性サイトカインの産生を抑えるのに十分な本発明の血液代替物又は医薬組成物の量又は容量をいうことができる。予防有効量又は予防有効容量は、急性失血に伴う症状又は組織病理の治療又は管理における予防有益性を提供する本発明の血液代替物又は医薬組成物の量又は容量をいうこともできる。さらに、本発明の血液代替物又は医薬組成物に関する予防有効量又は予防有効容量は、急性失血又は急性失血に伴う症状若しくは組織病理の治療、管理又は改善における予防有益性を提供する、血液代替物又は医薬組成物単独若しくは他の治療薬との組合せの量又は容量をいう。
本明細書に用いられているように、「対象」及び「患者」という用語は、互換的に用いられる。対象は、動物であり得る。特に、対象は、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット及びマウス)又は霊長類(例えば、カニクイザルなどのサル、チンパンジー及びヒト)などの哺乳類であり得る。
本明細書に用いられているように、「手術(surgery)」という用語は、「手術(operation)」という用語と互換的に用いられる。急性失血を引き起こす手術は、任意の種類の細胞(例えば、体細胞、生殖細胞、胚細胞、幹細胞)、組織(例えば、骨、筋肉、結合組織、血液)及び/又は臓器(例えば、脳、腎臓、肺、心臓、膵臓、前立腺、卵巣、子宮、胃腸管)を含み得る。
本明細書に用いられているように、「治療有効量」及び「治療有効容量」という用語は、急性失血の対象に何らかの改善又は有益性を提供するのに十分なそれぞれ量及び容量をいう。例えば、治療有効量又は治療有効容量は、血液代替物又は医薬組成物が投与される対象において、血液容量を増加させ、血液流量を回復させ、組織酸素化レベルを回復させ、血行動態パラメータを回復させ、急性失血に伴う低酸素を抑え、循環EPO又はEPO合成を増加させ、ヘマトクリットレベルを回復させ、ヘモグロビンレベルを回復させ、HIF-1αを安定させ、NF-κBを下方制御し、前赤芽球のアポトーシス事象を抑え、及び/又は抗赤血球形成炎症性サイトカインの産生を抑えるのに十分な本発明の血液代替物又は医薬組成物の量又は容量をいうことができる。治療有効量又は治療有効容量は、急性失血に伴う症状又は組織病理の治療若しくは管理における治療有益性を提供する本発明の血液代替物又は医薬組成物の量又は容量をいうこともできる。さらに、本発明の血液代替物又は医薬組成物に関する治療有効量又は治療有効容量は、急性失血又は急性失血に伴う症状若しくは組織病理の治療、管理又は改善における治療有益性を提供する、血液代替物又は医薬組成物単独若しくは他の治療薬との組合せの量又は容量をいう。
本明細書に用いられているように、「外傷」という用語は、「傷害」という用語と互換的に用いられる。急性失血を引き起こす外傷は、任意の種類の細胞(例えば、体細胞、生殖細胞、胚細胞、幹細胞)、組織(例えば、骨、筋肉、結合組織、血液)及び/又は臓器(例えば、脳、腎臓、肺、心臓、膵臓、前立腺、卵巣、子宮、胃腸管)を含み得る。
本明細書に用いられているように、急性失血に関して「治療する」、「治療している」及び「の治療」という用語(又は文法的に同等の用語)は、急性失血又は急性失血に伴う症状若しくは組織病理を軽減又は解消することをいう。
ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHをベースとした血液代替物及び同種血漿で治療された、全血液の33及び66%の失血にかかっているCoebusザルのヘマトクリット(%)を示す図である。
ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHをベースとした血液代替物で治療された、又は治療されていない、全血液の66%の失血にかかっているウサギのヘマトクリット(%)を示す図である。
ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHをベースとした血液代替物で治療された、全血液の40%の失血にかかっているラットの血圧と組織酸素化(pO2)のグラフである。
体重1kg当たり約1.75gの投与量(全血液容量計算値の25%)のヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHをベースとした血液代替物で治療された鎌形赤血球貧血患者から得た全ヘモグロビン(g/dL)、血漿ヘモグロビン(gm/dL)及び網赤血球数(%)を含む概要データを示す図である。
体重1kg当たり約1.75gの投与量(全血液容量計算値の25%)のヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHをベースとした血液代替物で治療された鎌形貧血患者におけるEPOの血中濃度を示す図である。
低酸素状態及び酸素正常状態下における(A) HIF-1α安定性及び(B)ヒト星状細胞によるEPO産生における、0.1、1.0及び1.75g/dLの濃度のヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHをベースとした血液代替物及び非改質ヘモグロビン溶液の影響を示す図である。
低酸素状態及び酸素正常状態下でのヒト星状細胞における抗赤血球NF-κBの活性における、0.1、1.0及び1.75g/dLの濃度のヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHをベースとした血液代替物及び非改質ヘモグロビン溶液の影響を示す図である。
(5.発明の詳細な説明)
本発明は、急性失血、好ましくは急性失血性貧血、又はより好ましくは(i)疾患による急性失血、(ii)手術中に起こる急性失血、若しくは(iii)外傷による急性失血によって生じる貧血を治療又は予防するための新規の方法に関する。本発明の方法は、血液容量を増加させ、急性失血に伴う低酸素を抑え、酸素正常状態下で赤血球形成を誘導するのに有効な量の血液代替物を、それを必要とする対象に投与することを含む。より詳細には、本発明の方法に有用な血液代替物は、(1)酸素正常状態下で細胞培養において試験した場合、エリスロポエチンの発現を誘導すること、及び/又は(2)(a)対象のヘマトクリット若しくはヘモグロビンの増倍時間の減少、又は(b)対象の循環エリスロポエチンレベルの増加によって測定した場合、酸素正常条件下での赤血球形成を誘導することが可能である。
本発明は、また、架橋ヘモグロビン血液代替物の治療又は予防有効量若しくは容量を医薬として許容し得る担体中に含む医薬組成物であって、該架橋ヘモグロビン血液代替物は、酸素正常条件下で細胞培養において試験した場合、エリスロポエチンの発現を誘導する、前記医薬組成物に関する。本発明は、さらに、架橋ヘモグロビンの治療又は予防有効量又は容量を医薬として許容し得る担体中に含む新規の医薬組成物であって、該架橋ヘモグロビンは、過ヨウ素酸酸化ATPと分子内架橋し、過ヨウ素酸酸化アデノシンと分子内架橋し、及び還元グルタチオンと結合したヘモグロビンを含む。本発明の医薬組成物に有用な架橋ヘモグロビン血液代替物及び架橋ヘモグロビンは、(1)HIF-1α発現を安定化させること、及び/又は(2)細胞培養で試験した場合、NF-κBを下方調節することが可能である。この製品の商標名は、HEMOTECH(商標)であり、o-アデノシン5'-三リン酸(o-ATP)、o-アデノシン及び還元グルタチオン(GSH)と架橋した純粋のウシHbを含む架橋ヘモグロビンである。架橋ヘモグロビンに関するより詳細な記載は、その全体が参照により本明細書に組み込まれているFeolaらの米国特許第5,439,882号に見いだすことができる。
本発明は、急性失血治療を必要とする対象に有用な方法、医薬組成物及びキットに関する。特に、本発明は、急性失血性貧血の対象に有用な方法、医薬組成物及びキットに関する。以下のサブセクションは、(a)本発明に従って治療できる患者集団(セクション5.1及びそのサブセクション);(b)本発明に包括される急性失血治療の新規のプロトコル(セクション5.2);及び(c)これら及び他の治療に使用できる新規の医薬組成物(セクション5.4);をより詳細に説明する。
(5.1.急性失血治療を必要とする対象)
貧血は、赤血球細胞の数又はヘモグロビンの量が小さくなる状態である。重度の貧血は、ヘモグロビンレベルが7g/dL未満であると臨床的に定義される(「診断及び治療のメルクマニュアル。第11節:血液学及び腫瘍学。第127章:貧血(The Merck Manual of Diagnosis and Therapy. Section 11:Hematology and Oncology. Chapter 127:Anemias)」、849〜850頁. John Wiley & Sons;第17版(1999年3月1日)。急性出血後貧血としても知られる急性失血性貧血は、急激な大量出血(急性失血)によって引き起こされる貧血である。骨髄貯蔵が限定されるため、貧血は、自然発生的又は外傷による大血管の崩壊又は切開(例えば、大動脈瘤)、病変による動脈の浸食(例えば、十二指腸潰瘍)、又は正常な止血の不良に伴う大量出血に起因し得る。急性失血貧血症の直接的な影響は、出血の持続時間及び容量に依存する。
急性失血性貧血は、長時間にわたる中等度の失血によって引き起こされる小球性貧血である慢性失血性貧血と異なる。例えば、慢性貧血は、慢性出血性GI管病変(例えば、十二指腸潰瘍、痔)又は泌尿器系若しくは婦人科系の部位に起因し得る。慢性失血性貧血は、循環赤血球の平均サイズが通常より小さくなる、小球赤血球集団を発生させる赤血球形成不良又は不足によって引き起こされ得る。赤血球形成不良又は不足は、鉄の欠乏、鉄輸送の欠乏及び/又は不十分若しくは異常な鉄の利用の結果であり得る。慢性失血性貧血は、また、ビタミンB12、葉酸塩又はビタミンCの欠乏によって引き起こされ得る。慢性失血性貧血は、細網内皮過剰活性、免疫異常、赤血球膜の変化、のいずれかによって生じる過度の溶血、赤血球代謝障害又はヘモグロビン合成不良(例えば鎌形赤血球貧血)によってさらに引き起こされ得る。急性失血貧血と慢性失血性貧血の違いに関するさらなる説明を、その全体が参照により本明細書に組み込まれている「診断及び治療のメルクマニュアル。第11節:血液学及び腫瘍学。第127章:貧血(The Merck Manual of Diagnosis and Therapy. Section 11:Hematology and Oncology. Chapter 127:Anemias)」、849〜850頁、John Wiley & Sons;第17版(1999年3月1日)において見いだすことができる。
急性失血性貧血の多くの原因が存在する。例えば、急性失血貧血は、疾患、手術又は外傷によって引き起こされ得る。そのため、対象は、本明細書において以下のセクション5.1.1に記載のような疾患による急性失血;本明細書において以下のセクション5.1.2に記載のような手術中に生じる急性失血;又は以下のセクション5.1.3に記載のような外傷の結果としての急性失血;を有する対象であり得る。
ある実施態様において、対象は、失神、目眩、渇き、発汗、虚脈及び速脈、及び速呼吸を含むが、それらに限定されない急性失血に伴う症状を示し得る。ある他の実施態様において、対象は、急性失血に伴う症状が臨床的にないようであり得る。
ある実施態様において、対象は、低酸素及び組織壊死を含むが、それらに限定されない急性失血に伴う組織病理を示し得る。ある他の実施態様において、対象は、急性失血に伴う組織病理が臨床的にないようであり得る。
ある実施態様において、対象は、輸血、生理食塩水又はブドウ糖注入、エリスロポエチンの注射を含むが、それらに限定されない急性失血に対する1種以上の治療を受けている最中とすることができ、又は既に受けている。
ある実施態様において、対象は、重度の失血、或いは血液容量の33%又は3分の1を超える失血を被っている。ある他の実施態様において、対象は、中等度の失血、或いは血液容量の20%から33%の失血を被っている。ある他の実施態様において、対象は、軽度の失血、或いは血液容量の20%未満の失血を被っている。正常な血液容量は、ヒトの対象では体重の約8%又は約5リットルである。
ある実施態様において、対象は、10g/dL、9g/dL、8g/dL、7g/dL、5g/dL、4g/dL、3g/dL又は2g/dL以下のヘモグロビンを有する。一実施態様において、対象は、7g/dL未満のヘモグロビンを有する。
本明細書に用いられているように、「対象」及び「患者」という用語は、互換的に用いられる。対象は、動物であり得る。特に、対象は、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット及びマウス)又は霊長類(例えば、カニクイザルなどのサル、チンパンジー及びヒト)などの哺乳類であり得る。
好ましくは、対象は、ヒトである。一実施態様において、対象は、ヒトの乳児又はヒトの未熟児である。別の実施態様において、対象は、ヒトの小児である。別の実施態様において、対象は、ヒトの成人である。さらに別の実施態様において、対象は、ヒトの高齢者である。本明細書に用いられているように、「ヒトの乳児」という用語は、年齢が24カ月未満、好ましくは16カ月未満、6カ月未満、3カ月未満、2カ月未満又は1カ月未満のヒトをいう。本明細書に用いられているように、「ヒトの小児」という用語は、年齢が24カ月から18歳のヒトをいう。本明細書に用いられているように、「ヒトの成人」という用語は、18歳以上の年齢のヒトをいう。本明細書に用いられているように、「ヒトの高齢者」という用語は、55歳以上の年齢のヒトをいう。
一定の状況において、対象は、免疫無防備状態又は免疫抑制状態である。例えば、対象は、HIV陽性又はAIDS患者であり得る。
(5.1.1.疾患による急性失血)
対象は、疾患による急性失血を有する対象であり得る。一実施態様において、対象は、急性失血を引き起こす疾患にかかっている、又は当該疾患と診断された対象であり得る。別の実施態様において、対象は、遺伝要因(例えば、家族の病歴)及び/又は環境要因(例えば、食事)の結果として急性失血を引き起こす疾患にかかりやすい、又はかかるリスクを有し得る。
本明細書に用いられているように、「疾患(illness)」という用語は、「疾患(disease)」という用語と互換的に用いられる。急性失血を引き起こす疾患は、任意の種類の細胞(例えば、体細胞、生殖細胞、胚細胞、幹細胞)、組織(例えば、骨、筋肉、結合組織、血液)及び/又は臓器(例えば、脳、腎臓、肺、心臓、膵臓、前立腺、卵巣、子宮、胃腸管)を含み得る。急性失血を引き起こし得る疾患の例としては、出血性疾患、潰瘍、病変、血管破壊及び動脈瘤破壊が挙げられるが、それらに限定されない。
いくつかの出血性疾患は、出生児に存在し、希な遺伝性障害によって引き起こされる。例えば、対象は、凝血タンパク質因子VIII(血友病A)又は因子IX(血友病B)のいずれかが欠乏しているため、凝血不良及び/又は断続的な制御不能出血を起こす血友病者であり得る。対象は、月経が始まり、各月経時に制御不能な出血を起こす血友病の女性であり得る(例えば、Quickら、「女児における血友病状態(Hemophilic condition in a girl)」 AMA Am J Dis Child. 1953 Jun;85(6):698〜705参照)。血友病は、一定の疾患(例えば、ビタミンK欠乏症、重度の肝臓病、フォン-ウィルブランド病、白血病、骨髄障害、汎発性血管内凝固、妊娠に伴う子癇、蛇毒への曝露)又は治療(例えば、アスピリン、ヘパリン又はワーファリンなどの抗凝血薬の使用又は抗生物質の長期使用)通じても発生し得る。対象は、ビタミンK欠乏症を有する新生児であり得る「診断及び治療のメルクマニュアル、第1節:栄養疾患、第3章:ビタミン欠乏、依存、及び毒性(The Merck Manual of Diagnosis and Therapy. Section 1:Nutritional Disorders. Chapter 3:Vitamin Deficiency, Dependency, And Toxicity)」、42頁、John Wiley & Sons;第17版(1999年3月1日)。
疾患の前、最中及び/又は後に、本発明の血液代替物及び医薬組成物を対象に投与することができる。該血液代替物及び医薬組成物の投与のタイミング及び量/容量は、熟練した実務者が、例えば、対象における失血の程度を考慮しながら通常の技量を用いて選択することができる。
(5.1.2.手術中に生じる急性失血)
対象は、手術中に生じる急性失血を有する対象であり得る。一実施態様において、対象は、急性失血を引き起こし得る手術を受けているものであってよい。別の実施態様において、対象は、急性失血を引き起こし得る手術を受ける予定であるものであってよい。別の実施態様において、対象は、遺伝要因(例えば、家族の病歴)及び/又は環境要因(例えば、食事)の結果として急性失血を引き起こし得る手術を必要とする高リスクの傾向がある、又は高リスクを有し得る。
本明細書に用いられているように、「手術(surgery)」という用語は、「手術(operation)」という用語と互換的に用いられる。急性失血を引き起こす手術は、任意の種類の細胞(例えば、体細胞、生殖細胞、胚細胞、幹細胞)、組織(例えば、骨、筋肉、結合組織、血液)及び/又は臓器(例えば、脳、腎臓、肺、心臓、膵臓、前立腺、卵巣、子宮、胃腸管)を含み得る。急性失血を引き起こし得る手術の例としては、待機手術が挙げられるが、それに限定されない。
随意又は待機手術、必須手術及び緊急又は非常手術を含むが、それらに限定されない多くの異なる種類の手術が存在する。随意又は待機手術は、人が受けることを選択し、良好な生活の質を継続するのに必ずしも必須でなくてもよい手術である。例は、急性、慢性、外傷性及び再発性傷害、並びに筋骨格系の他の障害に係わる整形外科手術である。他の例は、見えない痣又は疣を除去することである。必須手術は、将来の生活の質を保証するのに行う必要がある手術である。必須手術は、非常手術と異なり、必ずしも直ちに行われない。例は、他の形の医薬及び治療が役立たない場合に腎臓結石を除去することである。緊急又は非常手術は、急性虫垂炎などの緊急の医学的状態に反応して行われる。
多くの外科手術は、出血又は失血の高いリスクを伴うことが報告された。例えば、脳アミロイド脈管障害(例えば、Matkovicら、「脳アミロイド脈管障害における出血の外科リスク(Surgical risk of hemorrhage in cerebral amyloid angiopathy)」、Stroke、1991 Apr;22(4):456〜61参照);脳動脈瘤の修復(例えば、Maybergら、「動脈瘤クモ膜下出血に対するガイド(Guidelines for the management of aneurysmal subarachnoid hemorrhage)」、「米国心臓病協会、脳卒中委員会の特別ライティンググループからの医療従事者への声明(A statement for healthcare professionals from a special writing group of the Stroke Council, American Heart Association.)」Stroke、1994 Nov;25(ll):2315〜28;Tsutsumiら、非破壊性脳動脈瘤の外科治療後のクモ膜下出血のリスク(Risk of subarachnoid hemorrhage after surgical treatment of unruptured cerebral aneurysms))、Stroke、1999 Jun;30(6):l181〜4;及びWirth FP. 「偶発的頭蓋内動脈瘤の外科治療(Surgical treatment of incidental intracranial aneurysms)」Clin Neurosurg. 1986;33:125〜35参照);動静脈奇形に対する放射線手術(例えば、Friedmanら、「動静脈奇形に対する放射線手術後の出血のリスク(The risk of hemorrhage after radiosurgery for arteriovenous malformations)」J Neurosurg、1996、Jun;84(6):912〜9;Huntら、「頭蓋内動脈瘤の修復における介入時間に関連する外科リスク(Surgical risk as related to time of intervention in the repair of intracranial aneurysms)」、J Neurosurg. 1968 Jan;28(l):14〜20参照);後循環動脈瘤の血管内治療(例えば、Guglielmiら、「電気的に脱着可能なコイルを使用した電気血栓形成による後循環動脈瘤の血管内治療(Endovascular treatment of posterior circulation aneurysms by electrothrombosis using electrically detachable coils)」、J Neurosurg. 1992 Oct;77(4):515〜24参照);増殖性硝子体網膜症(例えば、Bonnetら、「グレードBのPVRの網膜付着における重度手術後増殖性硝子体網膜症の外科リスク要因(Surgical risk factors for severe postoperative proliferative vitreoretinopathy (PVR) in retinal detachment with grade B PVR)」、Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 1995 Dec;233(12):789〜91参照);脂肪腫切除(例えば、Rodriguezら、「大量出血源としての結腸脂肪腫(Colonic lipoma as a source of massive hemorrhage)」、Report of a case. Dis Colon Rectum. 1990 Nov;33(11):977〜9参照);洞手術(例えば、Schnipperら、「洞手術の頭蓋内併発症の管理(Management of intracranial complications of sinus surgery)」、Otolaryngol Clin North Am. 2004 Apr;37(2):453〜72、ix参照)。そのように、対象は、脳アミロイド脈管障害;脳動脈瘤の修復;動静脈奇形に対する放射線手術;後循環動脈瘤の血管内治療;増殖性硝子体網膜症;脂肪腫切除;又は洞手術;を受けている、受ける予定である、又は受けた対象であり得る。
手術の前、最中及び/又は後に、本発明の血液代替物及び医薬組成物を対象に投与することができる。該血液代替物及び医薬組成物の投与のタイミング及び量/容量は、熟練した実務者が、例えば、対象における失血の程度を考慮しながら通常の技量を用いて選択することができる。
(5.1.3.外傷による急性失血)
対象は、外傷による急性失血を有する対象であり得る。一実施態様において、対象は、急性失血を引き起こし得る外傷を負っている、又は当該外傷と診断された。別の実施態様において、対象は、遺伝要因(例えば、3倍性X染色体症候群))及び/又は環境要因(例えば、犯罪の多い地域に住んでいる)の結果として急性失血を引き起こす外傷を被るリスクに曝されやすい、又はリスクを有し得る。
本明細書に用いられているように、「外傷」という用語は、「傷害」という用語と互換的に用いられる。急性失血を引き起こす外傷は、任意の種類の細胞(例えば、体細胞、生殖細胞、胚細胞、幹細胞)、組織(例えば、骨、筋肉、結合組織、血液)及び/又は臓器(例えば、脳、腎臓、肺、心臓、膵臓、前立腺、卵巣、子宮、胃腸管)を含み得る。急性失血を引き起こし得る外傷の例としては、火傷、銃創及び刺し傷が挙げられるが、それらに限定されない。
偶発的傷害及び/又は犯罪的障害を含むが、それらに限定されない多くの異なる種類の外傷が存在する。偶発的傷害は、任意の種類の事故(例えば、偶発的死亡、自動車事故、むち打ち、溺水、転落、運動傷害、火傷、機械事故、窒息、自然事故、偶発的眼傷害、職業傷害、玩具関連傷害)において被る傷害である。犯罪的傷害は、犯罪行為(例えば、児童虐待、殺人、襲撃)によって引き起こされる障害である。特に、銃創及び刺し傷。
外傷の前、最中及び/又は後に、本発明の血液代替物及び医薬組成物を対象に投与することができる。該血液代替物及び医薬組成物の投与のタイミング及び量/容量は、熟練した実務者が、例えば、対象における失血の程度を考慮しながら通常の技量を用いて選択することができる。
(5.2.急性失血治療)
本発明の方法は、血液容量を増加させ、急性失血に伴う低酸素を抑えるのに有効な量又は容量の1つ以上の血液代替物及び/又は医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。酸素正常状態下の細胞培養でエリスロポエチンの発現を誘導する能力に基づいて、使用する血液代替物を選択することができる。対象に使用すると、(a)対象のヘマトクリット若しくはヘモグロビンの増倍時間の減少、又は(b)対象の循環エリスロポエチンレベルの増加によって測定した場合、酸素正常状態下で赤血球形成を増強することを示すことができる。特に、本発明の方法は、本明細書において以下のそれぞれセクション5.3(及びそのサブセクション)及びセクション5.4に記載した1つ以上の血液代替物及び/又は医薬組成物の治療又は予防有効量若しくは容量を、それを必要とする対象に投与することを含む。本発明は、急性失血性貧血を治療又は予防するための方法を提供する。例えば、本発明は、疾患による急性失血(前出のセクション5.2.1参照)又は手術中に生じる急性失血(前出のセクション5.1.2参照)又は外傷による急性失血(前出のセクション5.1.3参照)を治療又は予防するための方法を提供する。
本発明の血液代替物は、いくつかの理由により急性失血治療に特に有用である。第1に、最も重要なこととして、本発明の血液代替物は、急性失血中にショックを引き起こし得る体液減少を補償するために血液容量を増加させ、患者における低酸素を抑えるだけでなく、酸素正常状態下で赤血球形成を刺激する。当該対象は、失血事象の最中及び後に失った血液を補充するとともに、ヘマトクリットレベルを向上及び/又は維持するために多数の輸血を必要とするため、これは、急性失血患者の治療にとって非常に有利であり得る。本発明の血液代替物は、他の血液代替物及び供血者血液より高速及び高率で赤血球形成を誘導するため、投与回数を減少させることができる。
第2に、本発明の血液代替物は、受血者に対する輸血適性及び適合性を判断するための試験を行う必要がないため、急性失血治療における使用に好適且つ容易である。また、本発明の血液代替物は、遺贈者血液に存在する免疫成分に伴う多くの併発症(例えば、RBCの溶血、アレルギー反応、輸血関連急性肺傷害、移植片対宿主病、細菌汚染、ウィルス病伝染等)を誘発しない。
本発明の治療及び予防方法は、対象における血行動態の多くの側面又は血液循環の物理的側面を向上させる。より具体的には、本発明の方法に使用される血液代替物及び医薬組成物の物理的存在は、対象の血行動態を向上させることができる。例えば、本発明の治療及び予防方法は、対象の血液容量を増加させる。具体的な実施態様において、血液容量は、5%、10%、20%、50%、100%、200%又は500%以上増加する。具体的な実施態様において、血液容量は、0.1リットル、0.5リットル、1.0リットル、1.5リットル又は2.0リットル以上増加する。当業者に良く知られている方法を用いて血液容量を測定することができる。例えば、使い捨て小容量血圧変換器(Ohmeda, Pte, Ltd、シンガポール)と接続されたカテーテルを使用して、血液容量を測定することができる。
本発明の治療及び予防方法は、対象における血液流量を回復させることもできる。ヒトでは、正常な血液流量は、250から300ml/分である。具体的な実施態様において、血液流量の5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%が回復される。当業者に良く知られている方法を用いて血液流量を測定することができる。例えば、使い捨て小容量血圧変換器(Ohmeda, Pte, Ltd、シンガポール)と接続されたカテーテルを使用して、血液流量を測定することができる。
本発明の治療及び予防方法は、対象における組織酸素化レベルを回復させることもできる。組織酸素化レベルは、体全体にわたって均一でない。組織/臓器灌流を最大にすることによって、組織酸素化レベルを向上させることができる。具体的な実施態様において、組織酸素化レベルの5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%が回復される。当業者に良く知られている方法を用いて組織酸素化レベルを測定することができる。例えば、マイクロコンピュータを備えたDO-166プローブのインターフェースを、(pHバージョン6071、Lazar Research Laboratories)及びCardiomax Circulatory System Computerのチャート記録計と接続することによって組織酸素化レベルを連続的に記録することができる。
本発明の治療及び予防方法は、対象における血行動態パラメータを回復させることもできる。血行動態パラメータには、心拍出量(CO;ml/分;心係数(CI)、ml/分/体重100g)、1回心拍出量(SV;ml/拍動/体重100g)、平均動脈圧(MAP;mmHg)、脈圧(PP、mmHg)、心拍(HR;拍動数/分)、全末梢抵抗(TPR;(dyn/秒/cm-5)×103)及び血液温度が含まれるが、それらに限定されない。ヒトでは、正常な心拍出量は、毎分5から6リットルであり;正常な心係数は、毎分2.5から4リットルであり;正常な1回心拍出量は、心拍毎に60から130mlであり;正常な平均動脈圧は、70から90mmHgであり;正常な脈圧は、20から60mmHgであり;正常な心拍は、毎分60から100回であり;正常な全末梢抵抗は、770から1500dyn/秒/cm-5であり;正常な血液温度は、37℃である。具体的な実施態様において、1つ以上の血行動態パラメータの5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%が回復される。当業者に良く知られている方法を用いて血行動態パラメータを測定することができる。例えば、全自動Cardiomax Circulatory System Computer(Columbus Instruments、OH(オハイオ)州Columbus)を使用して、血行動態パラメータを測定することができる。
本発明の治療及び予防方法は、対象における急性失血に伴う低酸素も抑える。具体的な実施態様において、低酸素は、5%、10%、20%、50%、100%、200%、500%又は1000%以上抑えられる。当業者に良く知られている方法を用いて低酸素を測定することができる。例えば、組織酸素化レベルを代用として用いて低酸素を測定することができる。
本発明の治療及び予防方法は、対象における出血性ショックを抑制することもできる。出血性ショックは、約66%の心係数の低下、TPRの著しい上昇を伴う、約67%の平均動脈圧の低下並びに約78%の組織酸素化の減少を特徴とする。
本発明の治療及び予防方法は、対象において、赤血球形成(すなわち赤血球産生)に関与するエリスロポエチンの内因的産生を向上させることもできる。例えば、本発明の治療及び予防方法は、対象におけるEPO又はEPO合成を増加させることができる。エリスロポエチン(EPO)は、骨髄における赤血球の産生を調節する腎臓内の特殊細胞によって産生される糖タンパク質ホルモン(46kD)である。具体的な実施態様において、循環EPO又はEPO合成が、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、500%又は1000%以上増加する。具体的な実施態様において、循環EPOレベルは、5mU/ml、10mU/ml、20mU/ml、50mU/ml、100mU/ml、150mU/ml又は200mU/ml以上増加する。当業者に良く知られている方法を用いて循環EPOレベル及びEPO合成を測定することができる。例えば、高度特殊Quantikine In Vitro Diagnostic Human Erythropoietin ELISA(R&P Systems Inc.、MN(ミネソタ)州Minneapolis)又はEPO-Trac125I RIA Kit (INCSTAR Corp. 現在Dia Sorin S.p.A.、イタリアSallugi)を使用して、循環EPOレベル及びEPO合成を細胞培養上清で測定することができる。
本発明の治療及び予防方法は、対象におけるヘマトクリットレベルを回復させることもできる。ヘマトクリットは、全血の容量に対する赤血球の容量の比であり、百分率で表され、無ヘモグロビン血漿を含有する血液サンプルにおける赤血球形成の強力な指標である。正常なヘマトクリットは、成人男性では47±5%であり、成人女性では42±5%である(「診断及び治療のメルクマニュアル。第11節:血液学及び腫瘍学。第127章:貧血(The Merck Manual of Diagnosis and Therapy. Section 11:Hematology and Oncology. Chapter 127:Anemias)」、854頁、John Wiley & Sons;第17版(1999年3月1日))。具体的な実施態様において、ヘマトクリットレベルの5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%が回復される。当業者に良く知られている方法を用いてヘマトクリットを測定することができる。例えば、ヘパリン化マイクロヘマトクリット毛管(Fisher Scientific、TX(テキサス)州Houston)及びマイクロヘマトクリット遠心機(Damon ICE Division、MA(マサチューセッツ)州Needham)を使用して、ヘマトクリットを測定することができる。
本発明の治療及び予防方法は、対象におけるヘモグロビンレベルを回復させることもできる。ヘモグロビンは、赤血球(RBC)における鉄含有酸素輸送金属タンパク質である。正常なヘモグロビンは、成人男性では16±2g/dLであり、成人女性では14±2g/dLである(「診断及び治療のメルクマニュアル。第11節:血液学及び腫瘍学。第127章:貧血(The Merck Manual of Diagnosis and Therapy. Section 11:Hematology and Oncology. Chapter 127:Anemias)」、854頁、John Wiley & Sons;第17版(1999年3月1日))。具体的な実施態様において、ヘモグロビンレベルの5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%が回復される。当業者に良く知られている方法を用いてヘモグロビンを測定することができる。例えば、HemoCue B-Hemoglobin Photometer (HemoCue Corp.、スウェーデンAngelholm)を使用してヘモグロビンを測定することができる。
本発明の治療及び予防方法は、対象におけるHIF-1α発現を安定させることもできる。具体的な実施態様において、HIF-1αの5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%を安定させる。当業者に良く知られている方法を用いてHIF-1α安定化を測定することができる。高スループットTransAM ELISAベースのアッセイ(Active Motif、CA(カリフォルニア)州Carlsbad)を使用してHIF-1α安定化を測定することができる。
本発明の治療及び予防方法は、対象におけるNF-κB発現を下方制御することもできる。具体的な実施態様において、NF-κB発現の5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%が下方制御される。当業者に良く知られている方法を用いてNF-κB活性化を測定することができる。例えば、TransAM(商標)NF-κB p65 転写因子アッセイキット(Active Motif、CA(カリフォルニア)州Carlsbad)を使用してNF-κB活性化を測定することができる。
本発明の治療及び予防方法は、対象における前赤芽球のアポトーシスを抑えることもできる。具体的な実施態様において、前赤芽球のアポトーシスが、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%抑えられる。当業者に良く知られている方法を用いてアポトーシス事象を測定することができる。例えば、アネキシンV-FITC及びヨウ化プロピジウム蛍光プローブをそれぞれ使用して初期アポトーシス事象及び後期アポトーシス事象を評価することができる(Sigma Chemical)。
本発明の治療及び予防方法は、対象における抗赤血球形成炎症性サイトカインの産生を抑えることもできる。抗赤血球形成炎症性サイトカインとしては、TNF-α、TGF-β1、IL-1、IL-6等が挙げられるが、それらに限定されない。具体的な実施態様において、1つ以上の抗赤血球形成炎症性サイトカインの産生が、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%抑えられる。当業者に良く知られている方法を用いて抗赤血球形成炎症性サイトカインの産生を測定することができる。例えば、TNF-αヒトEIAキット(Cayman Chemical、MI(ミシガン)州Ann Arbor)を使用してTNF-αを測定することができ、Human TGF-beta 1 Quantikine Immunoassay(R&D Systems)を使用してTGF-β1を測定することができる。
本明細書に用いられているように、「有効量」及び「有効容量」という用語は、本発明の1つ以上の血液代替物及び/又は医薬組成物が投与される対象において、血液容量を増加させ、血液流量を回復させ、組織酸素化レベルを回復させ、血行動態パラメータを回復させ、急性失血に伴う低酸素を抑え、循環EPO又はEPO合成を増加させ、ヘマトクリットレベルを回復させ、ヘモグロビンレベルを回復させ、HIF-1αを安定させ、NF-κBを下方制御し、前赤芽球のアポトーシス事象を抑え、及び/又は抗赤血球形成炎症性サイトカインの産生を抑えるのにそれぞれ十分な量及び容量をいう。
本明細書に用いられているように、「治療有効量」及び「治療有効容量」という用語は、急性失血の対象に何らかの改善又は有益性を提供するのに十分なそれぞれ量及び容量をいう。例えば、治療有効量又は治療有効容量は、血液代替物又は医薬組成物が投与される対象において、血液容量を増加させ、血液流量を回復させ、組織酸素化レベルを回復させ、血行動態パラメータを回復させ、急性失血に伴う低酸素を抑え、循環EPO又はEPO合成を増加させ、ヘマトクリットレベルを回復させ、ヘモグロビンレベルを回復させ、HIF-1αを安定させ、NF-κBを下方制御し、前赤芽球のアポトーシス事象を抑え、及び/又は抗赤血球形成炎症性サイトカインの産生を抑えるのに十分な本発明の血液代替物又は医薬組成物の量又は容量を指し得る。治療有効量又は治療有効容量は、急性失血に伴う症状又は組織病理の治療若しくはは管理における治療有益性を提供する本発明の血液代替物又は医薬組成物の量又は容量をいうこともできる。さらに、本発明の血液代替物又は医薬組成物に関する治療有効量又は治療有効容量は、急性失血又は急性失血に伴う症状若しくは組織病理を治療、管理又は改善における治療有益性を提供する、血液代替物又は医薬組成物単独若しくは他の治療薬との組合せの量又は容量をいう。
本明細書に用いられているように、「予防有効量」及び「予防有効容量」という用語は、急性失血の対象が急性失血にかかるのを遅らせる、又は予防するのに十分なそれぞれ量及び容量をいう。例えば、予防有効量又は予防有効容量は、血液代替物又は医薬組成物が投与される対象において、血液容量を増加させ、血液流量を回復させ、組織酸素化レベルを回復させ、血行動態パラメータを回復させ、急性失血に伴う低酸素を抑え、循環EPO又はEPO合成を増加させ、ヘマトクリットレベルを回復させ、ヘモグロビンレベルを回復させ、HIF-1αを安定させ、NF-κBを下方制御し、前赤芽球のアポトーシス事象を抑え、及び/又は抗赤血球形成炎症性サイトカインの産生を抑えるのに十分な本発明の血液代替物又は医薬組成物の量又は容量を指し得る。予防有効量又は予防有効容量は、急性失血に伴う症状又は組織病理の治療若しくは管理における予防有益性を提供する本発明の血液代替物又は医薬組成物の量又は容量をいうこともできる。さらに、本発明の血液代替物又は医薬組成物に関する予防有効量又は予防有効容量は、急性失血又は急性失血に伴う症状若しくは組織病理を治療、管理又は改善における予防有益性を提供する、血液代替物又は医薬組成物単独若しくは他の治療薬との組合せの量又は容量をいう。
本明細書に用いられているように、急性失血に関して「治療する」、「治療している」及び「の治療」という用語(又は文法的に同等の用語)は、急性失血又は急性失血に伴う症状若しくは組織病理を軽減又は解消することをいう。
本明細書に用いられているように、急性失血に関して「予防する」、「予防している」及び「の予防」という用語(又は文法的に同等の用語)は、急性失血又は急性失血に伴う症状若しくは組織病理を遅らせる、又は予防することをいう。
治療又は予防有効量又は容量及び投与頻度は、急性失血の種類及び重度、又は急性失血に伴う症状若しくは組織病理に応じて異なる。治療又は予防有効量若しくは容量及び投与頻度は、治療される対象に応じても異なる。例えば、治療又は予防有効量若しくは容量及び投与頻度は、対象の年齢、性別、体重及び応答に応じて異なる。
具体的な実施態様において、急性失血の対象に投与すべき本発明の血液代替物又は医薬組成物の全日量は、1g、2g、3g、4g、5g、6g、7g、8g、9g、10g、20g、50g、100g、200g、500g又は1000g以上である。好ましい実施態様において、急性失血の対象に投与すべき本発明の血液代替物又は医薬組成物の全日量は、単一又は分割投与で投与される7gから700g、好ましくは7gから122.5g未満、又は122.5gを超える量から700gまでの範囲である。
具体的な実施態様において、急性失血の対象に投与すべき本発明の血液代替物又は医薬組成物の全日容量は、0.01リットル、0.05リットル、0.1リットル、0.2リットル、0.5リットル、1.0リットル、1.5リットル又は2.0リットル以上である。好ましい実施態様において、急性失血の対象に投与すべき本発明の血液代替物又は医薬組成物の全日量は、単一又は分割投与で投与される0.1リットルから1リットルの範囲、好ましくは0.6リットルである。
当業者にとって明らかなように、場合によってはこれらの数字及び範囲外の量及び容量を用いる必要があり得る。
治療過程の時間の長さは、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも7週間、少なくとも10週間、少なくとも13週間、少なくとも15週間、少なくとも20週間、少なくとも6カ月間又は少なくとも1年であってよい。ある実施態様において、急性失血が終わる、又は制御されるまで、或いは急性失血が部分的又は完全に退化するときまでの期間にわたって本発明の血液代替物又は医薬組成物を投与することができる。
本発明の血液代替物又は医薬組成物を、6カ月間にわたって、或いは栄養補助食品健康教育法(Dietary Supplement Health and Education Act)(DSHEA)又は他の政府若しくは工業ガイドラインによる推奨使用期間に従って補助食品として投与することができる。さらに、栄養士、医師又は治療担当医は、個々の患者の応答に関連して、医薬品又は補助食品としての本発明の血液代替物及び医薬組成物の使用をどのように、いつ中断、調整又は終了するかを把握することが留意される。
輸血、生理食塩水又はブドウ糖注入、エリスロポエチン注射などの(ただし、それらに限定されない)従来の治療様式のいずれかを利用して、本発明の血液代替物及び医薬組成物を投与することができる。
ある実施態様において、本発明の1つ以上の血液代替物及び/又は医薬組成物を順次投与する。ある他の実施態様において、本発明の1つ以上の血液代替物及び/又は医薬組成物を同時に投与する。
本発明の方法の治療及び予防効果を当業者に知られている任意の方法によって定期的に監視することができる。例えば、血液容量、急性失血に伴う低酸素、ヘマトクリットレベル、ヘモグロビンレベル、血行動態パラメータ、血液流量、組織酸素化レベル、循環EPOレベル、EPO合成、HIF-1α発現、NF-κB発現、前赤芽球のアポトーシス事象、抗赤血球形成炎症性サイトカインレベル及び/又は治療後の対象の全体的な健康状態、物理的健康状態及び/又は情動的健康状態を治療後1週、2週、3週又は4週目までに測定することができる。医師の訪問は、治療過程の前、最中及び/又は後に、例えば、毎日、毎週、各週、毎月又は毎年行うことができる。
(5.3.血液代替物)
本発明の血液代替物は、好ましくは、病原体を含まず、無毒性であり、非免疫原生であり、非発熱性であり、保存寿命が長い。
特に、本発明の方法及び医薬組成物に有用な血液代替物は、(1)酸素正常状態下で細胞培養において試験した場合、エリスロポエチンの発現を誘導すること、及び/又は(2)(a)対象のヘマトクリット若しくはヘモグロビンの増倍時間の減少、又は(b)対象の循環エリスロポエチンレベルの増加によって測定した場合、酸素正常条件下での赤血球形成を誘導することが可能である。これらの特性を示すあらゆる血液代替物を本発明の方法及び医薬組成物に使用することができる。
上述の特性を示す、現在知られている血液代替物及び/又は市販の血液代替物を含むあらゆる血液代替物を、本発明の方法及び医薬組成物に使用することができる。例えば、本発明に使用される良好な血液代替物は、血液容量を増加させ、急性失血に伴う低酸素を抑えるとともに、(1)酸素正常状態下で細胞培養において試験した場合、エリスロポエチンの発現を誘導すること及び/又は(2)(a)対象のヘマトクリット若しくはヘモグロビンの増倍時間の減少又は(b)対象の循環エリスロポエチンレベルの増加によって測定した場合、酸素正常条件下での赤血球形成を誘導することが可能である、o-アデノシン5'-三リン酸(o-ATP)、o-アデノシン及び還元グルタチオン(GSH)(例えば、HEMOTECH(商標))と架橋した純粋のウシHbを含む架橋ヘモグロビンであることが見いだされた。上述のHEMASSIST(商標)(Baxter Healthcare、IL(イリノイ)州Round Lake)、HEMOLINK(商標)(Hemosol、Inc., カナダToronto)、OPTRO(商標)(Somatogen、CO(コロラド)州Boulder)、HEMOPURE(登録商標)(Biopure Inc.、MA(マサチューセッツ)州Cambridge)、POLYHEME(登録商標)(Northfield Laboratories Inc.、IL(イリノイ)州Evanston)、並びに古いヒトの血液から採取され、遊離ヘモグロビンの毒性を除去するためにポリエチレングリコール(PEG)と混合されたHEMOSPAN(登録商標)(Sangart, Inc.、CA(カリフォルニア)州San Diego)、及びヘモグロビン担体及びCNO複合体からなるHEMOZYME(登録商標)(SynZyme Technologies、LLC、CA(カリフォルニア)州Irvine)などの他の血液代替物は、酸素正常状態下で赤血球形成を誘導することが可能であることが知られていない。しかしながら、それらは、対象において赤血球形成できるように、内因性エリスロポエチンの産生を誘導するように構成され得ると考えられる。
ある実施態様において、本発明の方法及び医薬組成物に有用な血液代替物は、酸素正常状態下で細胞培養において試験した場合、エリスロポエチンの発現を誘導することが可能である。具体的な実施態様において、エリスロポエチンの発現は、ベースラインレベルの5%以下、10%、20%、50%、100%、200%又は500%以上誘導される。当業者に良く知られている任意の方法を用いてエリスロポエチンの発現を測定することができる。
ある実施態様において、本発明の方法及び医薬組成物に有用な血液代替物は、対象のヘマトクリットの増倍時間の減少によって測定した場合、酸素正常状態下で赤血球形成を誘導することが可能である。具体的な実施態様において、対象のヘマトクリットの増倍時間は、5%以下に、10%、20%、50%、100%、200%又は500%以上減少する。具体的な実施態様において、対象のヘマトクリットの増倍時間は、6時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日又は20日以上減少する。具体的な実施態様において、対象のヘマトクリットの増倍時間は、30日、20日、10日、9日、8日、7日、6日、5日、4日、3日、2日、1日、12時間又は6時間未満である。好ましい実施態様において、対象のヘマトクリットの増倍時間は、3日未満である。当業者に良く知られている任意の方法を用いて対象のヘマトクリットの増倍時間を測定することができる。
ある実施態様において、本発明の方法及び医薬組成物に有用な血液代替物は、対象のヘモグロビンの増倍時間の減少によって測定した場合、酸素正常状態下で赤血球形成を誘導することが可能である。具体的な実施態様において、対象のヘモグロビンの増倍時間は、5%以下、10%、20%、50%、100%、200%又は500%以上減少する。具体的な実施態様において、対象のヘモグロビンの増倍時間は、6時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日又は20日以上減少する。具体的な実施態様において、対象のヘモグロビンの増倍時間は、30日、20日、10日、9日、8日、7日、6日、5日、4日、3日、2日、1日、12時間又は6時間未満である。好ましい実施態様において、対象のヘモグロビンの増倍時間は、7日である。当業者に良く知られている任意の方法を用いて対象のヘモグロビンの増倍時間を測定することができる。
ある実施態様において、本発明の方法及び医薬組成物に有用な血液代替物は、対象の循環エリスロポエチンレベルの増加によって測定されるように、酸素正常状態下で赤血球形成を誘導することが可能である。具体的な実施態様において、対象の循環エリスロポエチンレベルは、5%以下、10%、20%、50%、100%、200%又は500%以上増加する。具体的な実施態様において、対象の循環エリスロポエチンレベルは、5mU/ml、10mU/ml又は20mU/ml以上増加する。具体的な実施態様において、対象の循環エリスロポエチンレベルは、20mU/ml、50mU/ml、100mU/ml、200mU/ml、500mU/ml又は1000mU/ml以上である。好ましい実施態様において、対象の循環エリスロポエチンレベルは、15±5mU/mlである。当業者に良く知られている任意の方法を用いて対象の循環エリスロポエチンレベルを測定することができる。
本発明の一態様によれば、血液代替物は、前出のセクション5.3.1に記載した架橋ヘモグロビン又は前出のセクション5.4に記載した新規の組成物である。
(5.3.1.架橋ヘモグロビン)
本発明の架橋ヘモグロビンとしては、その全体が参照により本明細書に組み込まれているFeolaらの米国特許第5,439,882号に記載されたものが挙げられるが、それらに限定されない。特に、本発明の架橋ヘモグロビンは、HEMOTECH(商標)を含む。
架橋ヘモグロビンは、過ヨウ素酸酸化ATP(o-ATP)と分子内で架橋し、過ヨウ素酸酸化アデノシン(o-アデノシン)と分子内で架橋して、ポリヘモグロビンを形成するヘモグロビンを含む。
本発明の架橋ヘモグロビンにおけるヘモグロビンと過ヨウ素酸酸化ATPは、1:1から1:3又はその間のあらゆる範囲のモル比であり得る。
本発明の架橋ヘモグロビンにおけるヘモグロビンと過ヨウ素酸酸化アデノシンは、1:1から1:10又はその間のあらゆる範囲のモル比であり得る。
本発明の架橋ヘモグロビンにおけるヘモグロビンと過ヨウ素酸酸化ATPは、1:1から1:3又はその間のあらゆる範囲のモル比で存在し、本発明の架橋ヘモグロビンにおけるヘモグロビンと過ヨウ素酸酸化アデノシンは、1:1から1:10又はその間のあらゆる範囲のモル比であり得る。
本発明の架橋ヘモグロビンにおけるヘモグロビンは、還元グルタチオンとさらに結合する。還元グルタチオンの添加は、ヘモグロビンと過ヨウ素酸酸化アデノシンとの架橋反応を停止させる。
具体的な実施態様において、本発明の架橋ヘモグロビンにおけるヘモグロビンと還元グルタチオンは、1:1から1:20又はその間のあらゆる範囲のモル比である。
過ヨウ素酸酸化ATP、過ヨウ素酸酸化アデノシン及び還元グルタチオンを当業者に知られている任意の方法によってヘモグロビンと架橋させることができる(例えば、Feolaらの米国特許第5,439,882号参照)。
好ましくは、ヘモグロビンは、ウシヘモグロビンである。しかし、本明細書において、ヘモグロビンの他の源を利用することもできる。好ましくは、本発明の架橋ヘモグロビンは、約50%、30%、20%、10%、5%未満若しくは1%以下のmet-ヘモグロビンを含むか、又はmet-ヘモグロビンを含まない。
本発明の架橋ヘモグロビンは、好ましくは約130から390キロダルトンの分子量、より好ましくは約190から260キロダルトンの分子量、最大で1000キロダルトンを超える分子量を有する。
ヘモグロビン、過ヨウ素酸酸化ATP、過ヨウ素酸酸化アデノシン及び還元グルタチオンを商業源(Sigma Chemical Co.、Mo(ミズーリ)州St. Louis)から入手するか、又はその全体が参照により本明細書に組み込まれているFeolaらの米国特許第5,439,882号に記載されている方法に従って調製することができる。
本発明の架橋ヘモグロビンを非電解質水溶液に溶解させることができる。本発明の架橋ヘモグロビンの水溶液に添加できる非電解質の例は、ヒトアルブミン、種々の血漿成分及び血漿である。しかし、医薬として許容され、本発明の架橋ヘモグロビンの酸素担持機能を損なわないデキストラン及びヒドロキシエチルデンプンなどの非電解質を利用することもできる。
その全体が参照により本明細書に組み込まれているFeolaらの米国特許第5,439,882号に記載されているものを含むが、それらに限定されない方法によって、本発明の架橋ヘモグロビンを製造することができる。
例えば、本発明の架橋ヘモグロビンは、
(a)全血を白血球-赤血球混合物、血小板及び血漿に分離し、そのようにして得られた混合物を水溶液に懸濁させるステップと;
(b)白血球-赤血球混合物を含む水溶液を冷却して、白血球を凝集させ、白血球凝集物を除去して、実質的に白血球のない溶液を得るステップと;
(c)実質的に白血球のない溶液を低張液に対して透析して、実質的に白血球のない溶液中の赤血球からヘモグロビンを抽出し、高静水圧下での限外濾過によって、実質的に白血球のない溶液中の抽出ヘモグロビンから赤血球を分離除去して、抽出ヘモグロビン溶液を得るステップと;
(d)抽出ヘモグロビン溶液中の抽出ヘモグロビンをカルボキシ-ヘモグロビンに変換して、カルボキシ-ヘモグロビン溶液を得るステップと;
(e)カルボキシ-ヘモグロビン溶液を低温殺菌して、非ヘムタンパク質を変性させ、析出させるステップと;
(f)リン脂質及び析出した非ヘムタンパク質をカルボキシ-ヘモグロビン溶液から除去するステップと;
(g)アフィニティクロマトグラフィーによって内毒素をカルボキシ-ヘモグロビン溶液から除去するステップと;
(h)カルボキシ-ヘモグロビン溶液中のカルボキシ-ヘモグロビンを約10g/dLの濃度まで濃縮して、濃縮カルボキシ-ヘモグロビン溶液を得るステップと;
(i)濃縮カルボキシ-ヘモグロビン溶液中のカルボキシ-ヘモグロビンをo-ATPと反応させて、カルボキシ-ヘモグロビンの主として分子内の架橋を達成することで、分子内架橋カルボキシ-ヘモグロビン溶液を得るステップと;
(j)o-ATPカルボキシ-ヘモグロビンを、カルボキシ-ヘモグロビンの主として分子内の架橋を達成するのに有効な量でo-アデノシンと反応させることで、分子内及び分子間架橋カルボキシ-ヘモグロビン溶液を得、グルタチオンを分子内及び分子間架橋カルボキシ-ヘモグロビン溶液に添加して、o-アデノシン架橋反応を失活させるステップと;
(k)分子内及び分子間架橋カルボキシ-ヘモグロビン溶液中の架橋カルボキシ-ヘモグロビンを架橋オキシ-ヘモグロビンに変換するステップと;を含む方法によって製造される。
具体的な実施態様において、全血を遠心することによって、ステップ(a)の血小板及び血漿から白血球-赤血球混合物を分離する。別の具体的な実施態様において、ステップ(b)の白血球凝集物を濾過によって分離する。別の具体的な実施態様において、溶媒抽出によってステップ(f)のカルボキシ-ヘモグロビン溶液からリン脂質及び析出した非ヘムタンパク質を除去する。別の具体的な実施態様において、ステップ(h)の濃縮カルボキシ-ヘモグロビン溶液をほぼ正常緊張溶液に対する透析によって濃縮する。
(5.4.医薬組成物及びキット)
本発明は、また、本発明の方法又は他の治療方法に使用できる一定の濃度又は容量の血液代替物を含む新規の医薬組成物に関する。例えば、当該新規の組成物は、7gから122.5g未満の治療有効量の架橋ヘモグロビン血液代替物を医薬として許容し得る担体中に含むことができ、該架橋ヘモグロビン血液代替物は、酸素正常状態下で細胞培養において試験した場合、エリスロポエチンの発現を誘導する。或いは、該組成物は、122.5gを超える量から700g未満の治療有効量の架橋ヘモグロビン血液代替物を医薬として許容し得る担体中に含むことができ、該架橋ヘモグロビン血液代替物は、酸素正常状態下で細胞培養において試験した場合、エリスロポエチンの発現を誘導する。一方、該組成物は、0.6リットル未満の治療有効容量の架橋ヘモグロビン血液代替物を医薬として許容し得る担体中に含むことができ、該架橋ヘモグロビン血液代替物は、酸素正常状態下で細胞培養において試験した場合、エリスロポエチンの発現を誘導する。
他の新規の医薬組成物は、7gから122.5g未満の治療有効量の架橋ヘモグロビンを医薬として許容し得る担体に含み、該架橋ヘモグロビンは、過ヨウ素酸酸化ATPと分子内架橋し、過ヨウ素酸酸化アデノシンと分子内架橋し、及び還元グルタチオンと結合したヘモグロビンである。或いは、該組成物は、122.5gを超える量から700g未満の治療有効量の架橋ヘモグロビンを医薬として許容し得る担体中に含むことができ、該架橋ヘモグロビンは、過ヨウ素酸酸化ATPと分子内架橋し、過ヨウ素酸酸化アデノシンと分子内架橋し、及び還元グルタチオンと結合したヘモグロビンである。別の実施態様において、該組成物は、0.6リットル未満の治療有効容量の架橋ヘモグロビンを医薬として許容し得る担体中に含むことができ、該架橋ヘモグロビンは、過ヨウ素酸酸化ATPと分子内架橋し、過ヨウ素酸酸化アデノシンと分子内架橋し、及び還元グルタチオンと結合したヘモグロビンである。
ある実施態様において、本発明の医薬組成物に使用される架橋ヘモグロビン血液代替物及び架橋ヘモグロビンは、細胞培養で試験した場合、HIF-1α発現を安定させる。具体的な実施態様において、本発明の医薬組成物に使用される架橋ヘモグロビン血液代替物及び架橋ヘモグロビンは、細胞培養で試験した場合、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%のHIF-1α発現を安定させる。
ある他の実施態様において、本発明の医薬組成物に使用される架橋ヘモグロビン血液代替物及び架橋ヘモグロビンは、細胞培養で試験した場合、NF-κB発現を下方制御する。具体的な実施態様において、本発明の医薬組成物に使用される架橋ヘモグロビン血液代替物及び架橋ヘモグロビンは、細胞培養で試験した場合、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%のNF-κB発現を下方制御する。
ある実施態様において、本発明の医薬組成物に使用される架橋ヘモグロビンは、1:1から1:3のモル比のヘモグロビン及び過ヨウ素酸酸化ATPを含む。ある実施態様において、本発明の医薬組成物に使用される架橋ヘモグロビンは、1:1から1:10のモル比のヘモグロビン及び過ヨウ素酸酸化アデノシンを含む。ある実施態様において、本発明の医薬組成物に使用される架橋ヘモグロビンは、1:1から1:20のモル比のヘモグロビン及び還元グルタチオンを含む。ある実施態様において、本発明の医薬組成物に使用される架橋ヘモグロビンは、1:1から1:3のモル比のヘモグロビン及び過ヨウ素酸酸化ATP; 1:1から1:10のモル比のヘモグロビン及び過ヨウ素酸酸化アデノシン;並びに1:1から1:20のモル比のヘモグロビン及び還元グルタチオン;を含む。
これらの特性を示す、前出のセクション5.3に記載のあらゆる架橋ヘモグロビン血液代替物及び架橋ヘモグロビンを本発明の医薬組成物に使用することができる。
ある実施態様において、本発明の医薬組成物に使用される架橋ヘモグロビンを非電解質水溶液に溶解させる。
医薬組成物は、マンニトール及び/又は電解質をさらに含むことができる。本発明の医薬組成物に使用できる電解質としては、ナトリウム陽イオン、カリウム陽イオン、カルシウム陽イオン及びマグネシウム陽イオン、並びに塩化物陰イオン、重炭酸陰イオン、グルコン酸陰イオン及び硫酸陰イオンが挙げられるが、それらに限定されない。
具体的な実施態様において、本発明の医薬組成物は、約1g以下、5g、10g、15g、20g、25g、30g、40g、50g、60g、70g、80g、90g、100g、150g、200g、300g、500g、1000g又は2000g以上の血液代替物を含む。好ましい実施態様において、本発明の医薬組成物は、約7gから約122.5g未満の血液代替物を含む。別の好ましい実施態様において、本発明の医薬組成物は、約122.5gから約700gの血液代替物を含む。
具体的な実施態様において、本発明の医薬組成物は、0.1リットル以下、0.2リットル、0.3リットル、0.4リットル、0.5リットル、0.6リットル、0.7リットル、0.8リットル、0.9リットル、1.0リットル、2.0リットル、5.0リットル又は10.0リットル以上の血液代替物を含む。好ましい実施態様において、本発明の医薬組成物は、約0.6リットル未満の血液代替物を含む。
本発明の医薬組成物を、本発明の方法、並びに慢性失血性貧血(例えば、鎌形細胞貧血)の治療を含むが、それに限定されない他の方法に使用することができる。
本発明の医薬組成物を当業者に知られている任意の方法によって投与することができる。本発明の医薬組成物の投与方法としては、非経口投与(例えば、皮下投与、筋肉内投与、眼窩内投与、嚢内投与、髄腔内投与、胸骨内投与、静脈内投与、皮内投与、腹腔内投与、門脈内投与)、硬膜外投与及び粘膜投与(例えば鼻内投与)が挙げられるが、それらに限定されない。
ある実施態様において、医薬組成物を非経口投与する。医薬組成物を非経口投与する場合は、成分が投与前に混合されるように無菌水又は食塩水のアンプルを提供することができる。具体的な実施態様において、本発明の医薬組成物を注入によって投与する。別の具体的な実施態様において、本発明の医薬組成物を注射、好ましくは静脈内注射によって投与する。
本発明の医薬組成物を、固形剤、カプセル剤、錠剤、ゲル剤等を含むが、それらに限定されない単位剤形に処方することができる。本発明の医薬組成物をアンプル又はサシェなどの気密密封容器中の凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として処方することもできる。
本発明の医薬組成物を、1つ以上の容器を含むキットで供給することもできる。各容器は、同一又は異なる医薬組成物を含むことができる。
該キットは、医薬組成物を注射するための好ましくは無菌の形のニードル若しくはシリンジ及び/又は梱包アルコールパッドをさらに含むことができる。臨床家又は患者による本発明の血液代替物及び医薬組成物の投与のための説明書が所望により含まれる。
上記説明及び図面は、本発明の原理を単に例示するものであり、そこには様々な追加、変更及び代用を加えてもよいことが理解されるであろう。特に、本発明をその主旨又は本質的な特性から逸脱することなく、他の具体的な形、構造、配置、割合、並びに他の要素、材料及び成分で具体化することができる。加えて、本明細書に記載される特徴を単独又は他の特徴と組み合わせて用いることができる。したがって、本明細書に開示した実施態様は、あらゆる点において例示的と見なされるべきであり、限定的と見なされるべきでなく、本発明の範囲は、添付の請求項によって示され、上記説明に限定されない。
(6.実施例)
以下の実施例は、いかなる場合も本発明の範囲を限定することを意図することなく、本発明の具体的な実施態様を説明する目的で提示される。
(6.1.実施例1-生命に係わる貧血の霊長類におけるヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物を用いた治療によるインビボのヘマトクリットの上昇)
(6.1.1.方法)
算定血液容量の3分の1(33%)及び3分の2(66%)に等しい量の血液を除去した後、科学文献(Feolaら、(1988) Circulatory Shock 25:275〜290)に既に報告されている方法に従ってdL当たり10gのヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSH血液代替物の等容注入を行ったそれぞれ6匹のオマキザルを含む4つのグループで実験を行った。
この実験では、同種血漿を対照として血液代替物の代わりに使用した。体重が4から5kgの健康な雄ザルをケタミンHCl12.5mg/kgの筋肉内注射により鎮静させた。無菌の16ゲージテフロンカテーテルを経皮的に大腿動脈及び1つの大腿静脈に挿入した。ヘパリンを投与しなかった。動物に室内空気を自然に吸い込ませた。調製物を安定させた後、サルを以下の処理グループの1つに割り当てた。(I)算定全血液容量の3分の1(33%)を大腿動脈から除去し、静脈を通じて注入された等容量のヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物(体重1kg当たり約2.3g)で置換したグループ;(II)算定全血液容量の3分の2(66%)を大腿動脈から除去し、静脈を通じて注入された等容量のヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物(体重1kg当たり約4.6g)で置換したグループ;(III)算定全血液容量の3分の1(33%)を大腿動脈から除去し、静脈を通じて注入された等容量の同種血漿で置換したグループ;及び(IV)算定全血液容量の3分の2(66%)を大腿動脈から除去し、静脈を通じて注入された等容量の同種血漿で置換したグループ。
血液除去後のベースライン時、並びにヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物及び同種血漿注入の1、2、4、5、7、9、11、14、16、18、20、22及び24日後に血液サンプルを採取し、無血漿ヘモグロビンを含有する血液サンプルにおける赤血球形成の最も有力な指標であるヘマトクリットについて試験した。ヘマトクリットは、充填赤血球の容量の全血の容量に対する比であり、百分率で表される。ヘパリン化マイクロヘマトクリット毛管(Fisher Scientific、TX(テキサス)州Houston)及びマイクロヘマトクリット遠心機(Damon ICE Division、MA(マサチューセッツ)州Needham)を使用して、ヘマトクリットを測定した。
(6.1.2.結果)
グループI、II及びIIIにおけるすべての動物は、処理後も生存していたが、グループIVでは1匹(16%)が24時間以内に死亡した。
図1に見られるように、算定全血液容量の3分の1及び3分の2の除去後に、ヘマトクリットがそれぞれ約30%(Hbは約9g/dLであった)及び13%(ヘモグロビンは約4.5g/dLであった)に下がる。ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物を投与すると、算定全血液容量の3分の1の置換から約3.5日後に(グループI)、及び算定全血液容量の3分の2の置換から約8.5日後(グループII)にヘマトクリットがベースライン値に戻った。対照的に、同種血漿で処理した動物は、ヘマトクリットを迅速に正常化することができなかった。血漿が33%置換輸血されたグループIIIでは、約10日後にヘマトクリットが正常に戻り、66%置換輸血されたグループIVでは、約24日後にヘマトクリットがベースライン値に達した。
66%置換治療を受けた血液代替物グループ(II)では3日足らずでヘマトクリットが2倍になったのに対して、同種血漿で処理したグループIVでは、生存動物において、約10日間でヘマトクリットが2倍になった。
(6.1.3.結論)
ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物を投与すると、生命に係わる(66%の)失血後も赤血球量が極めて迅速に正常値まで回復した。この血液代替物は、急性失血性貧血に対する自然の赤血球形成応答を2倍以上加速させた。この血液代替物の循環半減期が約24時間であると仮定すると、この製品は、初期復活段階における酸素担体としてだけでなく、赤血球形成応答の効果的な刺激剤として作用した。
他の血液代替物で実験的に処理した生命に係わる貧血の患者における報告されたヘマトクリット増倍時間は、大量の組換えEPO投与物で同時に治療した後も10から24日間であった(Lanzingerら、(2005) Can J Anaesth 52(4):369〜373;Gannonら、(2002) 30(8):1893〜1895;Allisonら、(2004) 97(12):1257〜1258)。
正常な状況では、赤血球形成(多能性幹細胞からRBC)が5日以内で生じるため、現在試験されている血液代替物製品(EPOによって支持)を用いて得られた結果は、臨床的に許容されず、骨髄細胞に対するこれらのヘモグロビンの直接毒性効果を示す。
対照的に、ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物単独による治療後のヘマトクリットの増倍時間が3日間未満であることは、この血液代替物製品が真の独自の直接的な赤血球形成能力を有することを示唆している。
(6.2.実施例2-生命に係わる貧血のウサギにおけるヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物を用いた治療によるインビボのヘマトクリットの上昇)
(6.2.1.方法)
科学文献(Feolaら、(1988) Surg Gynecol Obstet 166:211〜222;Simoniら、(1990) Biomat Art Cells Art Org 18(2):189〜202)に既に報告されている方法に従って、体重4.0Kgの12匹のニュージーランドウサギに対して、1%リドカインによる局部麻酔下で一方の耳の中枢動脈及び他方の耳のmarglobal静脈に無菌カニューレを挿入した。
計測後、算定全血液容量の3分の1(33%)をウサギから除去してから15分後に、さらに3分の1(33%)を除去した。実験ウサギ(n=6)に合計失血と同じ容量(体重1kg当たり4.6g)のヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物を注入した。別の6匹には、出血後に処理を施さなかった。1時間以内にこれらの動物のすべてが死亡した。血液代替物が注入された実験グループの動物は、すべて生存していた。
血液除去後のベースライン時並びにヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物注入の1、2、4、7、9及び14日後に血液サンプルを採取した。血液サンプルを実施例1のようにヘマトクリットについて試験した。
(6.2.2.結果-結論)
図2に見られるように、算定全血液容量の3分の2を除去した後に、ヘマトクリットが約9.5%に下がる(ヘモグロビンは約4.0g/dLであった)。ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物を投与すると、約8.5日間でそれらのベースラインヘマトクリットを取り戻した。ウサギにおいても、ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物を投与すると、生命に係わる(66%の)失血後も赤血球量が極めて迅速に正常値まで回復した。ヘマトクリット増倍時間は、約3日であった。ウサギにおいても、この血液代替物製品は、初期復活段階における酸素担体としてだけでなく、赤血球形成の効果的な刺激剤として作用した。
(6.3.実施例3-ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物による復活後における生命に係わる貧血の正常血圧ラットの血行動態及び組織酸素化)
(6.3.1.方法)
体重350〜450gmの10匹の正常血圧の雄性SDラット(Charles River、NY(ニューヨーク)州Kingston)に30mg/kg体重のペントバルビタールナトリウムを腹腔内投与して麻酔をかけ、ペントバルビタールナトリウムの注射に応じて無菌の顕微手術を施し、科学文献に既に報告されている方法(Simoniら、(1996) ASAIO J 42(5):M773〜782)に従って無菌の顕微手術を施した。
血行動態値を評価し、基準サンプルを収集するために、左右大腿動脈、左大腿静脈及び外頚静脈を外科的に露出させ、ポリエチレンカテーテル(型式PE-50、Becton Dickinson and Co.、NJ(ニュージャージー)州Parsippany)をカニューレ挿入した。右大腿動脈に配置され、使い捨ての小容量血圧変換器(Ohmeda、Pte、Ltd、シンガポール)と接続されたカテーテルを介して動脈血圧を連続的に測定した。心拍出量(CO)を測定するために、恒温マイクロプローブ(型式IF、外径1/3mm;Columbus Instruments、OH(オハイオ)州Columbus)を頸動脈から上行大動脈に通し、外頚静脈に配置されたカテーテルを介して100μLの食塩水溶液を室温で右房に注射した。組織酸素化(tpO2)を測定するために、DO-166酸素マイクロプローブ(Lazer Research Laboratories, Inc.、CA(カリフォルニア)州Los Angeles)を大腿二頭筋(右脚)に外科的に挿入した。実験全体を通じて、血液温度を加熱パッドで37±0.1℃に維持した。すべての動物に自然に呼吸させた。
全自動カーディオマックスサキュラトリシステムコンピュータ(Columbus Instruments、OH(オハイオ)州Columbus)を使用することによって、心拍出量(CO;ml/分;心係数(cardiac index(CI))、ml/分/体重100g)、1回心拍出量(SV;ml/拍動/体重100g)、平均動脈圧(MAP;mmHg)、脈圧(PP、mmHg)、心拍(HR;拍動数/分)、全末梢抵抗(TPR;(dyn/秒/cm-5) × 103)及び血液温度を含む血行動態パラメータを記録した。マイクロコンピュータを備えたDO-166プローブ(pHバージョン6071、Lazar Research Laboratories)のインタフェイスと、カーディオマックスサキュラトリシステムコンピュータのチャート式記録計とを接続することによって、組織酸素化を連続的に記録した。
ヘモグロビン量(グラム)に既知の酸素飽和量及び1.36(全飽和量のヘモグロビンが担持する酸素の量)を掛けることによって、動脈血液酸素含有量(血液100ml中のO2量(ml))を計算した。CO(L/分)に動脈血液酸素輸送量(血液100ml当たりの量(ml))を掛け、調製係数10を掛けることにより、血液酸素輸送量(O2量(ml)/分)を計算した。
外科準備及びカーディオマックスシステムの較正を完了した後、血行動態及び組織酸素含有量パラメータの安定化のために30分間を割り当てた。全血液容量の40%(各ラットについて体重(kg)の7%と同等として計算した)又は体重1kg当たり2.8gに対応する容量の動脈血液を除去することによって出血性ショックを誘導した。血液の除去は、5分間で完了した。出血性ショックは、30分間続いた。結局、全失血と同じ容量のヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物でラットを処理した。処理は、10分間で完了した。次いで、90分間の後処理時間を通じてすべてのラットを調べた。実験終了時に、ペントバルビタールナトリウムの静脈投与によってラットを殺した。
(6.3.2.結果)
以下(表1)及び図3に要約されている結果は、血液除去後にTPRが上昇し、CI、MAP及び組織pO2が低下した後、TPRが直ぐに正常値まで低下し、CI、MAP及び組織pO2が迅速に正常化したことを示している。さらに、後処理時間全体において血管拡張及び良好な組織酸素化が認められた。
Figure 2009537534
(6.3.3.結論)
この実験は、心係数の約66%の低下、平均動脈圧の約67%の低下、及びTPRの著しい増加、並びに組織酸素化の約78%の低下によって特徴づけられる出血性ショックをヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物で順調に治療できることを示している。血管拡張活性、及び出血に続く血管収縮の軽減を、主としてアデノシンと関連づけることができ、これは血管拡張特性及び抗炎症特性を有し、我々の技術(Feola、Simoni及びCanizaroへの米国特許第5439882号)において、分子内架橋剤及びヘモグロビン表面改質剤として使用されている。この実験は、また、治療ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物が、組織/臓器灌流を最大にすることによって組織酸素化を向上させることを証明した。
虚血臓器への適正な酸素送達は、これらの薬剤の血液代替物としての法的承認における本質的な要因である。図1、図2、図3、図4、図5及び図6A&Bに示すように、虚血組織及び臓器への酸素送達をインビボで最大化することは、赤血球形成応答を阻止しなかった。
(6.4.実施例4-鎌形赤血球貧血患者の治療に使用されるヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物の赤血球形成効果)
(6.4.1.方法)
科学文献(Feolaら、(1992) Surg Gynecol Obstet 174(5):379〜386)に既に報告されているように、ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物をヒトにおいて試験した。9人の患者のグループを、Kinshasaの鎌形赤血球貧血センターで治療した。4〜13歳の5人の男性及び4人の女性であった。それらの小児患者の5人は、ヘモグロビンレベルが5g/dL以下の重度の貧血を示した。それらの小児患者の4人は、ヘモグロビンレベルが約8g/dLのより軽度の貧血を有していたが、「鎌形赤血球発症」、すなわち手足(2患者)、左肺(1患者)及び脾臓(1患者)における急性微小血管閉塞にかかっていた。それらの患者は、痛み、発汗並びに汎発性倦怠感及び衰弱を示した。
ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物を、全血液容量の25%(各患者について体重(kg)の7%として計算した)に対応する容量、体重1kg当たり約1.75gで静脈注射した。初期ヘモグロビンが3.5g/dLの重度貧血の1人の患者は、2日間連続で2回の輸血を受けた。
生命徴候、すなわち体温、脈拍、呼吸及び血圧を血液代替物の投与の間及びその後2時間にわたって15分毎に測定した。血液代替物投与前の2時間及び血液代替物投与後の2時間にわたって尿量を測定した。ヘモグロビンの存在について尿を試験した。
血液サンプルを血液代替物投与の前、直後、その2時間後及び5日間にわたって毎日採取した。患者の血液を無血漿ヘモグロビン、全ヘモグロビン及び網状血球について試験した。
小容量のEDTA血漿を-20℃で保管し、後にエリスロポエチンレベルの測定を行った。EPOをEPO-Trac125I RIA Kit(INCSTAR Corp. 現在Dia Sorin S.p.A.、イタリアSallugi)で検出した。INCSTAR EPO-Trac125I RIA手順は、トレーサ及び標準の双方に組換えヒトエリスロポエチンを利用する競合結合放射線免疫測定法である。このアッセイを用いると、EPOの最小検出可能濃度は5.5mU/mLである。苛酷な溶血(ヘモグロビンが約4g/dL)でもEPO-Trac RIAを干渉しないことが、同社によって実施された干渉試験によって証明された。結果を血漿のmU/mLで表した。
(6.4.2.結果)
アレルギー反応を示した患者はおらず、いずれも健康状態は概ね向上した。熱は下がり、脈拍は緩和され、血管拡張を示す脈圧の上昇とともに血圧が安定した(表2)。
Figure 2009537534
図4に見られるように、ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物は、5日間にわたって、約7日間の増倍時間で、約6.3±2.0g/dLの全グループの平均値から約10.9±1.3g/dL(p<0.001)まで全ヘモグロビンを連続的に向上させた。
図4に見られるように、全ヘモグロビンの上昇は、約3.7±3.1から約44.2±7.2パーセント(p<0.001)の網状血球の有意な増加に対応づけられた。
図5に見られるように、ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物による治療は、循環EPOレベルを有意に増加させた。1日後、EPOレベルは、約1.6倍増加し、3日目には約210mU/mLの最大濃度に達した。5日目でもEPOレベルはベースラインよりわずかに大きかった。
ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物による治療は、全ヘモグロビンの正常値への極めて高い回復をもたらした。この血液代替物は、網状血球の大量産生をもたらすEPOの合成を加速させた。
これは、ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物がRBCの直接的な代替物を提供するばかりでなく、新たなRBCの産生を加速させるEPOの合成を刺激することを示唆している。この刺激は、単に5日間にわたって記録された。
(6.4.3.結論)
結論として、ヘモグロビン-ATP-アデノシン-グルタチオンベースの血液代替物を、生命に係わる貧血にかかっているヒトに有意な容量で投与すると、毒性又はアレルギー性反応をもたらさず、全体的な状態を向上させ、患者の赤血球形成応答が刺激された。
(6.5.実施例5-ヒト星状細胞をモデルとして使用した酸素正常状態及び低酸素状態におけるヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物の赤血球形成促進因子;HIF-1α安定化及びEPOの産生における影響)
(6.5.1.方法)
ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物は、EPO遺伝子の誘導剤として知られるHIF-1αの安定剤として作用するかどうかを評価するために、EPO産生が可能なヒト星状細胞におけるこの血液代替物の影響を評価した。
典型的に、赤血球形成の基本的な刺激剤であるEPOは、胎児肝臓及び成人腎臓によって産生される。最近、EPO産生の新たな部位が確認された。それは中枢神経系である。中枢神経系において、星状細胞は、低酸素/虚血に応答するEPOの主たる生産者である(Siren AL、Knerlich F、Poser W、Gleiter CH、Bruck W、Ehrenreich Hの論文、「ヒト虚血/低酸素脳におけるエリスロポエチン及びエリスロポエチン受容体(Erythropoietin and erythropoietin receptor in human ischemic/hypoxic brain)」、Acta Neuropathol (Berl) 101 (3):271〜276、2001;Sasaki Rの論文、「エリスロポエチンの多面的機能(Pleiotropic functions of erythropoietin)」、Int Med 42(2):142〜149、2003)。
星状細胞において、HIF-1αは、EPO発現を調節する。EPOは、ニューロンを低酸素/虚血応力から保護する神経保護の役割を果たすようである。EPO誘導神経保護は、アポトーシス促進性Belファミリー構成要素のBadのリン酸化に基づく。EPO受容体はニューロンに発現するため、EPOは、ニューロンEPO受容体を活性化することによってニューロンにおける低酸素誘導アポトーシスを阻害することができる(Variano M、Dello Russo C、Pozzoli G、Battagia A、Scambia G、Tringali G、Aloe-Spiriti MA、Preziosi P、Navarra Pの論文、「エリスロポエチンは、インビトロでラット小膠細胞に対する抗アポトーシス効果を発揮する(Erythropoietin exerts anti-apoptotic effects on rat microglial cells in vitro)」、Eur J Neurosci 16(4):684〜692、2002)。
赤血球形成におけるEPOの主たる機能は、赤血球前駆体をアポトーシスから救うことであるため(Socolovskyら、(1999) Cell 98(2):181〜91;Dolznigら、(2002) Curr Biol 12(13):1076〜1085)、発明者らは、星状細胞モデルが、HIF-1αの運命及びEPO合成に対する血液代替物の影響を調べるための最良のヒト細胞系であると考えた。
(酸素正常状態)
第2の継代である正常なヒト星状細胞の初期培養物をClonetics(Bio-Wittaker、A Cambrex Co、CA(カリフォルニア)州San Diego)から入手した。細胞がコンフルエンス(約50000個/cm2)に達するまで5%CO2及び温度37℃の加湿雰囲気において、AGM BulletKit培地(Clonetics)とともに75cm2の組織培養フラスコ(Corning Glass Works、NY(ニューヨーク)州Corning)に培養した。次いで、星状細胞を6ウェル細胞培養プレート(Corning)及びガラスカバースリップに継代培養した。トリプシン試薬パック(Clonetics)を使用して、細胞継代を実施した。輸送時に星状細胞を5分以内でトリプシン処理した。4回目から6回目の細胞継代を用いてすべての実験を実施した。星状細胞は、既に、HIV、肝炎、マイコプラズマ、細菌、酵母、真菌に対して陰性であり;かつGFAPに対して陽性であることが試験で判明しており、CD68及びCNPアーゼに対して陰性であることが染色で判明していた(Clonetics分析認定)。
次いで、コンフルエント星状細胞を、最終濃度が0.1、1.0及び1.75g/dLのヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物が追加された培地とともに約18時間インキュベートした。陽性対照星状細胞を、最終濃度が0.1、1.0及び1.75g/dLの非改質ヘモグロビンが追加された培地とともにインキュベートした。陰性対照星状細胞を、FBSで置換されたヘモグロビン溶液の不在下で培養した。
酸素正常状態を表す空気95%の雰囲気中ですべての実験を実施した。処理後、細胞を様々な生化学法及び分子生物法によって評価した。
ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物のHIF-1α安定化における影響及び酸素正常状態でヒトEPO遺伝子を誘導するその効果を、高スループットTransAM ELISAベースのアッセイ(Active Motif、CA(カリフォルニア)州Carlsbad)を用いて細胞核抽出物において測定した。このアッセイでは、ヒトEPO遺伝子由来の低酸素応答要素(5'-TACGTGCT-3')を含有するオリゴヌクレオチドで96ウェルプレートを固定した。ノニデントP-40、並びにDTT及びプロテアーゼ阻害薬カクテル(Active Motif)が追加された溶解緩衝剤を使用して、核抽出物を生星状細胞から得た。核抽出物をHIF-1αの検出に供した。核抽出物に存在するHIF-1αは、ヒトEPO遺伝子に結合し、一次抗体に接触可能であった。次いで、一次抗体を二次HRP結合抗体によって認識し、高感度の比色分析読取値が得られた。3550-UVマイクロプレート読取装置(BioRad)を使用して反応を450nmで読み取った。結果を核抽出物2.5μg当たり450nmにおけるODで表した。製造元が提供したCOS-7核抽出物を、HIF-1α活性化及びEPO遺伝子に対する結合のための陽性対照として使用した。
高度に特異的なQuantikine In Vitro Diagnostic Human Erythropoietin ELISA(R&D Systems Inc.、MN(ミネソタ)州Minneapolis)を使用して、ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物のEPO合成における影響を細胞培養上清において評価した。このアッセイは、二重抗体サンドイッチ法に基づく。ヒトEPOに特異的なモノクローナル抗体が予めコーティングされたマイクロプレートウェルを細胞培養上清又はヒトEPO標準とともにインキュベートした。インキュベーション及び洗浄後、HRPと結合した抗EPOポリクローナル抗体とともにウェルをインキュベートした。第2のインキュベーション中に、抗体-酵素結合体は、固定されたEPOに結合する。洗浄後、クロモゲンを添加して、青色の複合体を形成する。発色量は、サンプル又は標準におけるEPOの量に正比例する。結果をmU/mLで表した。このアッセイによる最小検出可能EPO投与量は、0.6mU/mL未満であった。
(低酸素)
低酸素状態(1.5% O2、93.5% N2及び5% CO2)を加湿された変化しやすい好気性の作業ステーションで達成した。実験前に、培地を1.5%の酸素レベルで一晩にわたって予平衡させた。
上記のように培養したコンフルエント星状細胞を、最終濃度が0.1、1.0及び1.75g/dLのヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物が追加された予平衡した培地の存在下で約18時間にわたって低酸素(1.5% O2)に曝した。陽性対照星状細胞を、最終濃度が0.1、1.0及び1.75g/dLの非改質ヘモグロビンが追加された予平衡した培地とともにインキュベートした。陰性対照星状細胞を、FBSで置換されたヘモグロビン溶液の不在下で培養した。
低酸素状態を表す1.5% O2、95.5% N2及び5% CO2の雰囲気の暗所ですべての手順を実施した。曝露後、細胞を以下の事項について評価した。
1)上記のように、TransAM ELISA法によって実施したヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物のHIF-1α安定化に対する影響及びヒトEPO遺伝子を誘導するその能力、及び
2)上記のように、Quantikine IVD human EPO ELISAで評価したヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物の低酸素におけるEPO合成に対する影響。
(6.5.2.結果)
ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物及び非改質ヘモグロビン溶液の赤血球形成促進因子;HIF-1α及びEPOに対する影響を表3及び4並びに図6及び7に示す。
表3は、低酸素状態及び酸素正常状態下におけるヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物及び非改質ヘモグロビン溶液のHIF-1α安定性及びEPO遺伝子に対するその結合に対する影響を示す。
Figure 2009537534
表4は、低酸素状態及び酸素正常状態下でのEPO産生におけるヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物及び非改質ヘモグロビン溶液の影響を示す。
Figure 2009537534
(6.5.3.結論)
この試験は、HIF-1αを、低酸素状態及び酸素正常状態下で星状細胞の核抽出物において見いだすことができることを示した。さらに、この試験は、試験されたヘモグロビン溶液が低酸素環境及び酸素正常環境においてHIF-1α安定化、核転位及びEPO遺伝子に対する結合に対して異なる影響を有することを示した。
図6A及び表3に見られるように、非改質ヘモグロビン溶液は、特に低酸素において、HIF-1αの細胞質内分解を増加させ、EPO遺伝子に対するその結合活性を(より高い投与量において)有意に低下させた。非改質ヘモグロビン溶液は、酸素正常状態又は低酸素状態下でHIF-1αを安定させなかった。
対照的に、ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物は、両方の酸素状態下でHIF-1αの誘導を増加させた。この血液代替物は、投与量依存的様式で、HIF-1αを安定させ、EPO遺伝子に対するその結合を増加させた。この血液代替物は、どの試験濃度においても、酸素正常状態及び低酸素状態下でHIF-1αを安定させることが可能であった。該製品は、1.0〜1.75g/dLの投与量で最も効果的であった。当該転写効果は、赤血球形成応答が加速することを示唆する。
実際、図6B及び表4に見られるように、この血液代替物は、酸素正常状態及び低酸素状態下でEPOの産生を効果的に増加させた。どの試験濃度においても赤血球形成効果が認められた。ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物は、効果的な赤血球形成促進因子として作用した。
非改質ヘモグロビンは、EPOの合成を阻止したが、それは、赤血球形成の阻害を示唆している。この効果は、より高いヘモグロビン濃度においてより効果的であると思われた。
(6.6.実施例6-ヒト星状細胞をモデルとして使用した酸素正常状態及び低酸素におけるヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物の抗赤血球形成因子;NF-κB、TNF-α及びTGF-β1並びにアポトーシスに対する影響)
(6.6.1.方法)
ヒト星状細胞は、抗赤血球形成剤として作用するTNF、IL-1、IL-6、TGF-β1などの炎症性サイトカインを産生することが知られるため(Hellwing-Burgelら、(1999) Am Soc Hematol 94:1561〜1567;Linch DC (1989) Schweiz Med Wochenschr 119(39):1327〜1328;Treyら、(1995) Crit Rev Oncol Hematol 21:1〜8;Yuenら、(2005) ASAIO J 51(3):236〜241)、血液代替物の抗炎症効力並びにそのHIF-1α安定性及びEPO誘導に対する影響を調べるためにこのヒト細胞モデルを選択した(Van Wagonerら、(1999) J Neurosci 19(13):5236〜5244;Ohら、(1999) J Neurovirol 5(l):82〜94;Flandersら、(1998) Prog Neurobiol 54(l):71〜85)。
背景技術のセクションで述べたように、非改質ヘモグロビン溶液及び改質ヘモグロビン溶液は、強いアポトーシス促進効果を有する(Meguroら、(2001) J Neurochem 77(4):1128〜1135;Simoniら、(2002) ASAIO J 48(2):193;Goldmanら、(1998) Am J Physiol 275 (3 Pt2):H 1046-53);D'Agnilloら、(2001) Blood 98(12):3315〜3323;Moharaら、(2005) ASAIO J 51(3):288〜295)。
EPOの主たる機能は、前赤芽球をアポトーシスから保護することであるため(Socolovskyら、(1999) Cell 98(2):181〜91;Dolznigetら、(2002) Curre Biol 12(13):1076〜1085)、輸血されたヘモグロビンは、骨髄細胞赤芽球と直に接触することが示され(Shum、(1996) Artif Cells Blood Substit Immobil Biotechnol 24(6):655〜683)、それゆえ血液代替物のアポトーシス促進及び抗赤血球形成効果を評価することも重要であると考えた。
(酸素正常状態)
実施例5に記載されているように、ヒト星状細胞モデルを使用してこれらの実験を実施した。酸素正常状態を表す95%空気及び5%CO2の雰囲気ですべての実験を実施した。手短に述べると、最終濃度が0.1、1.0及び1.75g/dLのヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物が追加された培地でコンフルエント星状細胞を約18時間インキュベートした。最終濃度が0.1、1.0及び1.75g/dLの非改質ヘモグロビンが追加された培地とともに陽性対照星状細胞をインキュベートした。FBSで置換されたヘモグロビン溶液の不在下で陰性対照星状細胞を培養した。
処理後に、様々な生化学法及び分子生物法によって細胞を評価した。
TransAM(商標)NF-κB p65転写因子アッセイキット(Active Motif、CA(カリフォルニア)州Carlsbad)を使用して、核細胞抽出物において核活性化及びNF-κBのDNA結合の評価をアッセイした。この方法は、NF-κB活性化を検出/定量するための第1のELISAベースの方法であって、NF-κB共通部位(5'-GGGACTTTCC-3')を含む固定オリゴヌクレオチドがその上に存在する96ウェルプレートを含む。この試験では、核抽出物に存在する活性型のNF-κBであるp65ヘテロ二量体をこのオリゴヌクレオチドとともにインキュベートに供した。DTT及び製造元が供給したプロテアーゼ阻害薬カクテルを含む完全溶解緩衝剤を使用して、核抽出物を生細胞から得た。完全結合緩衝剤にDTT及びニシン精子DNAを追加した。インキュベーション後、形成されたDNA-タンパク質複合体は、p65上のエピトープを認識する一次抗体に接触可能になった。DNA-タンパク質複合体は、NF-κBが活性化され、DNAに結合する場合にのみ一次抗体に接触可能であった。次いで、この反応をp65に対するHRP結合二次抗体で認識し、ベンジジン誘導体及び過酸化水素を使用して現像した。マイクロプレート読取装置Bio-Rad型式3550-UVを使用して450nmで反応を読み取った。結果を全細胞抽出物2.5μg当たり450nmにおけるODで表した。製造元が提供したHeLa全細胞抽出物を、NF-κB活性化及びDNA結合に対する陽性対照として使用した。
抗赤血球形成活性を有する炎症促進サイトカイン(TNF-α及びTGF-β1)の産生の評価を市販のELISAキットで測定した。
TNF-αヒトEIAキット(Cayman Chemical、MI(ミシガン)州Ann Arbor)を使用してTNF-αをアッセイした。このアッセイは、ヒトTNF-αに対するモノクロナル抗体を用いた二重抗体「サンドイッチ」技術に基づく。マイクロタイタープレートにコーティングしたこの抗体は、ウェルに導入されたすべてのヒトTNF-αに結合した。次いで、ヒトTNF-α分子のエピトープに選択的に結合するアセチルコリンエステラーゼ(AchE):Fab'結合体をウェルに加えた。「サンドイッチ」をプレートに固定し、余剰の試薬を洗い流した。検体の濃度を、AchEの酵素活性をエルマン試薬で測定することによって求め、マイクロプレート読取装置(Bio-Rad型式3550-UV)で分光光度測定した。結果をpg/mLで表した。
細胞培養上清、血清及び血漿(R&D Systems)における活性化ヒトTGF-β1濃度を求めるために、Human TGF-beta 1 Quantikine ImmunoassayでTGF-β1を測定した。この試験では、細胞培養上清中の潜伏性TGF-β1を、酸活性化及び中和によって免疫反応形に変質させた。その後、固定TGF-β可溶性受容体を含むマイクロプレートを使用して、TGF-β1をアッセイした。インキュベーション及び洗浄後、最初のステップで結合したTGF-β1の量に比例して基質とともに発色する二次抗体-酵素試薬を添加した。TGF-β1の濃度をpg/mLで表した。
アポトーシス。この試験では、星状細胞をカバースリップ上で成長させて、ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物に接触させ、アネキシンV-FITC及びヨウ化プロピジウム蛍光プローブ(Sigma Chemical)をそれぞれ使用して初期アポトーシス事象及び後期アポトーシス事象について評価した。アネキシンV-FITCは、ホスファチジルセリンに結合し、緑色蛍光として検出されるプローブである。ヨウ化プロピジウムは、細胞DNAに結合し、蛍光を発する。アポトーシスの初期の段階では、リン脂質の非対称性の欠如が、通常は膜の内部に見られるホスファチジルセリンの膜外部への転位をもたらす。したがって、ホスファチジルセリンが膜の外部で利用可能になると、アネキシンがそれに結合し、アポトーシス過程の開始が確認される。対照的に、細胞DNAの断片化をもたらすアポトーシスの進行をヨウ化プロピジウムで検出する。結果を蛍光顕微鏡で評価した。
(低酸素)
実施例6でも、低酸素状態(1.5% O2、93.5% N2及び5% CO2)を加湿された可変好気性の作業ステーションで達成した。
上記のように培養したコンフルエント星状細胞を、最終濃度が0.1、1.0及び1.75g/dLのヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物が追加された予平衡した培地の存在下で約18時間にわたって低酸素(1.5% O2)に曝した。陽性対照星状細胞を、最終濃度が0.1、1.0及び1.75g/dLの非改質ヘモグロビンが追加された予平衡した培地とともにインキュベートした。陰性対照星状細胞を、FBSで置換されたヘモグロビン溶液の不在下で培養した。
上記のように、低酸素状態を表す1.5% O2、95.5% N2及び5% CO2の雰囲気の暗所ですべての手順を実施した。上記のように、曝露後、細胞を以下の事項について評価した。
1)上記のように、核活性化、及びTransAM(商標)NF-κB p65転写因子アッセイキット(Active Motif)を使用して核細胞抽出物でアッセイしたNF-κBのDNA結合、
2)上記のように、市販のELISAキットを使用した抗赤血球形成活性を有する炎症促進サイトカイン(TNF-α及びTGF-β1)の産生、及び
3)上記の初期及び後期アポトーシス。
(6.6.2.抗炎症効果-結果/結論)
Figure 2009537534
Figure 2009537534
図7に見られるように、ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物は、すべての試験濃度及び酸素レベルでNF-κB活性化を阻害した。対照的に、非改質ヘモグロビンは、投与量に依存してNF-κB誘導を活性化させる。この効果は、酸素正常状態でより大きかった。
表5及び6に見られるように、ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物は、投与量依存的様式で、両方の試験酸素状態において、TGF-β1の形成を阻害し、かつ最も強力な抗赤血球形成剤であるTNF-αの産生を増加させなかった。この効果を、この血液代替物がNF-κBを誘導することができないことに関連づけることができる。
しかし、非改質ヘモグロビン溶液は、特により高い濃度(1及び1.75g/dL)で与えられた場合、両方の抗赤血球形成剤、すなわちTGF-β1及びTNF-αの産生を増加させた。
実施例6に記載の実験は、ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物が、抗炎症能力を有するのに対して、非改質ヘモグロビンは炎症促進特性を有することを明示する。
NF-κB経路の高活性が、赤血球特異的遺伝子の抑制に関与するのに対して、TGF-β1は、赤血球前駆体の分化を阻止し、TNF-αは、EPO遺伝子に対するHIF-1α結合を阻害するため、ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物の抗炎症特性が、赤血球形成因子として機能することが可能であることを示唆することは妥当である。
(6.6.3.抗アポトーシス効果-結果/結論)
酸素正常状態下の対照星状細胞は、アポトーシス促進応答を示さなかった。アネキシンの表面結合の欠如、並びに初期及び後期アポトーシス事象の不在として解釈できるヨウ化プロピジウムの核蓄積が蛍光分析によって明らかになった。低酸素は、アネキシンV-FITCの星状細胞の表面への蓄積をもたらした。この効果は、初期アポトーシスにおいて生じる、ホスファチジルセリンの膜の外部への転位を示すものである。
星状細胞を非改質ヘモグロビンで処理すると、酸素正常状態において早期のアポトーシスが生じ、低酸素において後発的なアポトーシスが生じた。非改質ヘモグロビン溶液に接触された低酸素星状細胞におけるヨウ化プロピジウムの蓄積は、血漿膜の低下及びDNAの断片化の結果であった。より高濃度の非改質ヘモグロビンは、より荒廃的な効果をもたらした。
ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物は、どの試験濃度又は酸素含有量においてもアポトーシス反応を誘導しなかった。
赤血球形成促進剤としてのEPOの主たる機能は、前赤芽球をアポトーシスから保護することであるため、EPOのHIF-1α媒介産生を加速させるヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物は、EPO機能に干渉しない。対照的に、高度なアポトーシス促進機能を有する非改質ヘモグロビン溶液は、特により高濃度において、抗赤血球形成剤として機能し得る。
(6.6.4.全般的な結論)
米国特許第5,439,882号に記載されているように、ヘモグロビンをATP、アデノシン及びGSHで化学的/薬理学的に改質すると、血管拡張活性及び良好な組織酸素化能力、並びにHIF-1α安定化及びそれに伴うEPO誘導による赤血球形成活性を有する改善型血液代替物製品が得られた。この血液代替物製品の抗炎症及び抗アポトーシス能力は、赤血球形成応答を加速させる。
この血液代替物製品は、高濃度(g/kg体重)で赤血球形成促進能力を発揮することによって、組織酸素化を維持する初期治療、及び患者の赤血球形成応答の刺激を介してヘマトクリットを正常化する二次的な治療として機能することができる。
ヘモグロビン-ATP-アデノシン-GSHベースの血液代替物治療は、高価な組換えEPO支持体を必要としない。
(6.7.(予言的)実施例7-対象における急性失血の治療)
(6.7.1.実験計画No. 1)
急性失血性貧血と診断されたヒトの対象を、等しい数の男性及び女性、成人及び小児を含むグループAとBに分ける。
グループAの対象を一定期間にわたって本発明の血液代替物で治療し、グループBの対象に同期間に当たって偽血液代替物を与える。
治療期間の最中及び後に、対象のヘマトクリットレベル、ヘモグロビンレベル、循環エリスロポエチンレベル及び血行動態パラメータを測定して比較する。
(6.7.2.実験計画No. 2)
手術中に33%を超える血液容量の失血を経験したヒトの対象の第1のグループに本発明の血液代替物を与える。手術中に33%を超える血液容量の失血を経験したヒトの対象の第2のグループに従来の輸血を施す。両グループは、等しい数の男性及び女性、成人及び小児を有する。
手術の最中及び後に、対象のヘマトクリットレベル、ヘモグロビンレベル、循環エリスロポエチンレベル及び血行動態パラメータを測定して比較する。
(6.7.3.実験計画No. 3)
外傷(例えば、銃傷創、自動車事故)により33%を超える血液容量の失血を経験したヒトの対象の第1のグループに本発明の血液代替物を与える。同じ種類の外傷により33%を超える血液容量の失血を経験したヒトの対象の第2のグループに従来の輸血を施す。両グループは、等しい数の男性及び女性、成人及び小児を有する。
その後、対象のヘマトクリットレベル、ヘモグロビンレベル、循環エリスロポエチンレベル及び血行動態パラメータを測定して比較する。
本発明は、本明細書に記載した具体的な実施態様にその範囲が限定されるものではない。実際、記載した実施態様に加えて、本発明の様々な変更が、先述の説明及び添付の図面から当業者に明らかになるであろう。そのような変更も添付の特許請求の範囲に含められることを意図する。
様々な文献が本明細書に引用されており、その開示内容の全体が参照により組み込まれている。

Claims (121)

  1. 対象における急性失血性貧血を治療するための方法であって、該対象において血液容量を増加させ、急性失血性貧血に伴う低酸素を抑えるのに有効な量の血液代替物を、それを必要とする対象に投与することを含み、該血液代替物は、酸素正常状態下で細胞培養において試験した場合、エリスロポエチンの発現を誘導する、前記方法。
  2. 対象における急性失血性貧血を治療するための方法であって、該対象において血液容量を増加させ、急性失血性貧血に伴う低酸素を抑えるのに有効な量の血液代替物を、それを必要とする対象に投与することを含み、該血液代替物は、該対象のヘマトクリット又はヘモグロビンの増倍時間の減少によって測定した場合、酸素正常状態下で赤血球形成を誘導する、前記方法。
  3. 対象における急性失血性貧血を治療するための方法であって、該対象において血液容量を増加させ、急性失血性貧血に伴う低酸素を抑えるのに有効な量の血液代替物を、それを必要とする対象に投与することを含み、該血液代替物は、該対象の循環エリスロポエチンレベルの増加として測定した場合、酸素正常状態下で赤血球形成を誘導する、前記方法。
  4. 前記急性失血が重度である、請求項1から3のいずれか一項記載の方法。
  5. 前記対象が33%を超える失血を有する、請求項4記載の方法。
  6. 前記急性失血が中等度である、請求項1から3のいずれか一項記載の方法。
  7. 前記対象が20%から33%の失血を有する、請求項6記載の方法。
  8. 前記急性失血が軽度である、請求項1から3のいずれか一項記載の方法。
  9. 前記対象が20%未満の失血を有する、請求項8記載の方法。
  10. 前記対象がヒトである、請求項1から3のいずれか一項記載の方法。
  11. 前記対象が7g/dL未満のヘモグロビンを有する、請求項10記載の方法。
  12. 対象における急性失血性貧血を治療するための方法であって、該対象において血液容量を増加させ、急性失血性貧血に伴う低酸素を抑えるのに有効な量の架橋ヘモグロビン血液代替物を、それを必要とする対象に投与することを含み、該架橋ヘモグロビン血液代替物は、酸素正常状態下で細胞培養において試験した場合、エリスロポエチンの発現を誘導する、前記方法。
  13. 対象における急性失血性貧血を治療するための方法であって、該対象において血液容量を増加させ、急性失血性貧血に伴う低酸素を抑えるのに有効な量の架橋ヘモグロビン血液代替物を、それを必要とする対象に投与することを含み、該架橋ヘモグロビン血液代替物は、該対象のヘマトクリット又はヘモグロビンの増倍時間の減少によって測定した場合、酸素正常状態下で赤血球形成を誘導する、前記方法。
  14. 対象における急性失血性貧血を治療するための方法であって、該対象において血液容量を増加させ、急性失血性貧血に伴う低酸素を抑えるのに有効な量の架橋ヘモグロビン血液代替物を、それを必要とする対象に投与することを含み、該架橋ヘモグロビン血液代替物は、該対象の循環エリスロポエチンレベルの増加として測定した場合、酸素正常状態下で赤血球形成を誘導する、前記方法。
  15. 前記急性失血が重度である、請求項12から14のいずれか一項記載の方法。
  16. 前記対象が33%を超える失血を有する、請求項15記載の方法。
  17. 前記急性失血が中等度である、請求項12から14のいずれか一項記載の方法。
  18. 前記対象が20%から33%の失血を有する、請求項17記載の方法。
  19. 前記急性失血が軽度である、請求項12から14のいずれか一項記載の方法。
  20. 前記対象が20%未満の失血を有する、請求項19記載の方法。
  21. 前記対象がヒトである、請求項12から14のいずれか一項記載の方法。
  22. 前記対象が7g/dL未満のヘモグロビンを有する、請求項21記載の方法。
  23. 対象における急性失血性貧血を治療するための方法であって、架橋ヘモグロビンの治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含み、該架橋ヘモグロビンは、
    (a)過ヨウ素酸酸化ATPと分子内架橋し;
    (b)過ヨウ素酸酸化アデノシンと分子内架橋し;及び
    (c)還元グルタチオンと結合した;ヘモグロビンを含む、前記方法。
  24. 前記急性失血が重度である、請求項23記載の方法。
  25. 前記対象が33%を超える失血を有する、請求項24記載の方法。
  26. 前記急性失血が中等度である、請求項23記載の方法。
  27. 前記対象が20%から33%の失血を有する、請求項26記載の方法。
  28. 前記急性失血が軽度である、請求項23記載の方法。
  29. 前記対象が20%未満の失血を有する、請求項28記載の方法。
  30. 前記対象がヒトである、請求項23記載の方法。
  31. 前記対象が7g/dL未満のヘモグロビンを有する、請求項30記載の方法。
  32. 前記架橋ヘモグロビンにおけるヘモグロビン及び過ヨウ素酸酸化ATPが、1:1から1:3のモル比である、請求項23記載の方法。
  33. 前記架橋ヘモグロビンにおけるヘモグロビン及び過ヨウ素酸酸化アデノシンが、1:1から1:10のモル比である、請求項23記載の方法。
  34. 前記架橋ヘモグロビンにおけるヘモグロビン及び還元グルタチオンが、1:1から1:20のモル比である、請求項23記載の方法。
  35. 対象において手術中に生じる失血を治療するための方法であって、該対象において血液容量を増加させ、失血に伴う低酸素を抑えるのに有効な量の血液代替物を、それを必要とする対象に投与することを含み、該血液代替物は、酸素正常状態下で細胞培養において試験した場合、エリスロポエチンの発現を誘導する、前記方法。
  36. 対象において手術中に生じる失血を治療するための方法であって、該対象において血液容量を増加させ、失血に伴う低酸素を抑えるのに有効な量の血液代替物を、それを必要とする対象に投与することを含み、該血液代替物は、該対象のヘマトクリット又はヘモグロビンの増倍時間の減少によって測定した場合、酸素正常状態下で赤血球形成を誘導する、前記方法。
  37. 対象において手術中に生じる失血を治療するための方法であって、該対象において血液容量を増加させ、失血に伴う低酸素を抑えるのに有効な量の血液代替物を、それを必要とする対象に投与することを含み、該血液代替物は、該対象の循環エリスロポエチンレベルの増加として測定した場合、酸素正常状態下で赤血球形成を誘導する、前記方法。
  38. 前記急性失血が重度である、請求項35から37のいずれか一項記載の方法。
  39. 前記対象が33%を超える失血を有する、請求項38記載の方法。
  40. 前記急性失血が中等度である、請求項35から37のいずれか一項記載の方法。
  41. 前記対象が20%から33%の失血を有する、請求項40記載の方法。
  42. 前記急性失血が軽度である、請求項35から37のいずれか一項記載の方法。
  43. 前記対象が20%未満の失血を有する、請求項42記載の方法。
  44. 前記対象がヒトである、請求項35から37のいずれか一項記載の方法。
  45. 前記対象が7g/dL未満のヘモグロビンを有する、請求項44記載の方法。
  46. 前記手術が待機手術である、請求項35から37のいずれか一項記載の方法。
  47. 対象において手術中に生じる失血を治療するための方法であって、該対象において血液容量を増加させ、失血に伴う低酸素を抑えるのに有効な量の架橋ヘモグロビン血液代替物を、それを必要とする対象に投与することを含み、該架橋ヘモグロビン血液代替物は、酸素正常状態下で細胞培養において試験した場合、エリスロポエチンの発現を誘導する、前記方法。
  48. 対象において手術中に生じる失血を治療するための方法であって、該対象において血液容量を増加させ、失血に伴う低酸素を抑えるのに有効な量の架橋ヘモグロビン血液代替物を、それを必要とする対象に投与することを含み、該架橋ヘモグロビン血液代替物は、該対象のヘマトクリット又はヘモグロビンの増倍時間の減少によって測定した場合、酸素正常状態下で赤血球形成を誘導する、前記方法。
  49. 対象において手術中に生じる失血を治療するための方法であって、該対象において血液容量を増加させ、失血に伴う低酸素を抑えるのに有効な量の架橋ヘモグロビン血液代替物を、それを必要とする対象に投与することを含み、該架橋ヘモグロビン血液代替物は、該対象の循環エリスロポエチンレベルの増加として測定した場合、酸素正常状態下で赤血球形成を誘導する、前記方法。
  50. 前記急性失血が重度である、請求項47から49のいずれか一項記載の方法。
  51. 前記対象が33%を超える失血を有する、請求項50記載の方法。
  52. 前記急性失血が中等度である、請求項47から49のいずれか一項記載の方法。
  53. 前記対象が20%から33%の失血を有する、請求項52記載の方法。
  54. 前記急性失血が軽度である、請求項47から49のいずれか一項記載の方法。
  55. 前記対象が20%未満の失血を有する、請求項54記載の方法。
  56. 前記対象がヒトである、請求項47から49のいずれか一項記載の方法。
  57. 前記対象が7g/dL未満のヘモグロビンを有する、請求項56記載の方法。
  58. 前記手術が待機手術である、請求項47から49のいずれか一項記載の方法。
  59. 対象において手術中に生じる失血を治療するための方法であって、架橋ヘモグロビンの治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含み、該架橋ヘモグロビンは、
    (a)過ヨウ素酸酸化ATPと分子内架橋し;
    (b)過ヨウ素酸酸化アデノシンと分子内架橋し;及び
    (c)還元グルタチオンと結合した;ヘモグロビンを含む、前記方法。
  60. 前記急性失血が重度である、請求項59記載の方法。
  61. 前記対象が33%を超える失血を有する、請求項60記載の方法。
  62. 前記急性失血が中等度である、請求項59記載の方法。
  63. 前記対象が20%から33%の失血を有する、請求項62記載の方法。
  64. 前記急性失血が軽度である、請求項59記載の方法。
  65. 前記対象が20%未満の失血を有する、請求項64記載の方法。
  66. 前記対象がヒトである、請求項59記載の方法。
  67. 前記対象が7g/dL未満のヘモグロビンを有する、請求項66記載の方法。
  68. 前記架橋ヘモグロビンにおけるヘモグロビン及び過ヨウ素酸酸化ATPが、1:1から1:3のモル比である、請求項59記載の方法。
  69. 前記架橋ヘモグロビンにおけるヘモグロビン及び過ヨウ素酸酸化アデノシンが、1:1から1:10のモル比である、請求項59記載の方法。
  70. 前記架橋ヘモグロビンにおけるヘモグロビン及び還元グルタチオンが、1:1から1:20のモル比である、請求項59記載の方法。
  71. 前記手術が待機手術である、請求項59記載の方法。
  72. 対象における外傷による失血を治療するための方法であって、該対象において血液容量を増加させ、失血に伴う低酸素を抑えるのに有効な量の血液代替物を、それを必要とする対象に投与することを含み、該血液代替物は、酸素正常状態下で細胞培養において試験した場合、エリスロポエチンの発現を誘導する、前記方法。
  73. 対象における外傷による失血を治療するための方法であって、該対象において血液容量を増加させ、失血に伴う低酸素を抑えるのに有効な量の血液代替物を、それを必要とする対象に投与することを含み、該血液代替物は、該対象のヘマトクリット又はヘモグロビンの増倍時間の減少によって測定した場合、酸素正常状態下で赤血球形成を誘導する、前記方法。
  74. 対象における外傷による失血を治療するための方法であって、該対象において血液容量を増加させ、失血に伴う低酸素を抑えるのに有効な量の血液代替物を、それを必要とする対象に投与することを含み、該血液代替物は、該対象の循環エリスロポエチンレベルの増加として測定した場合、酸素正常状態下で赤血球形成を誘導する、前記方法。
  75. 前記急性失血が重度である、請求項72から74のいずれか一項記載の方法。
  76. 前記対象が33%を超える失血を有する、請求項75記載の方法。
  77. 前記急性失血が中等度である、請求項72から74のいずれか一項記載の方法。
  78. 前記対象が20%から33%の失血を有する、請求項77記載の方法。
  79. 前記急性失血が軽度である、請求項72から74のいずれか一項記載の方法。
  80. 前記対象が20%未満の失血を有する、請求項79記載の方法。
  81. 前記対象がヒトである、請求項72から74のいずれか一項記載の方法。
  82. 前記対象が7g/dL未満のヘモグロビンを有する、請求項81記載の方法。
  83. 対象における外傷による失血を治療するための方法であって、該対象において血液容量を増加させ、失血に伴う低酸素を抑えるのに有効な量の架橋ヘモグロビン血液代替物を、それを必要とする対象に投与することを含み、該架橋ヘモグロビン血液代替物は、酸素正常状態下で細胞培養において試験した場合、エリスロポエチンの発現を誘導する、前記方法。
  84. 対象における外傷による失血を治療するための方法であって、該対象において血液容量を増加させ、失血に伴う低酸素を抑えるのに有効な量の架橋ヘモグロビン血液代替物を、それを必要とする対象に投与することを含み、該架橋ヘモグロビン血液代替物は、該対象のヘマトクリット又はヘモグロビンの増倍時間の減少によって測定した場合、酸素正常状態下で赤血球形成を誘導する、前記方法。
  85. 対象における外傷による失血を治療するための方法であって、該対象において血液容量を増加させ、失血に伴う低酸素を抑えるのに有効な量の架橋ヘモグロビン血液代替物を、それを必要とする対象に投与することを含み、該架橋ヘモグロビン血液代替物は、該対象の循環エリスロポエチンレベルの増加として測定した場合、酸素正常状態下で赤血球形成を誘導する、前記方法。
  86. 前記急性失血が重度である、請求項83から85のいずれか一項記載の方法。
  87. 前記対象が33%を超える失血を有する、請求項86記載の方法。
  88. 前記急性失血が中等度である、請求項83から85のいずれか一項記載の方法。
  89. 前記対象が20%から33%の失血を有する、請求項88記載の方法。
  90. 前記急性失血が軽度である、請求項83から85のいずれか一項記載の方法。
  91. 前記対象が20%未満の失血を有する、請求項90記載の方法。
  92. 前記対象がヒトである、請求項83から85のいずれか一項記載の方法。
  93. 前記対象が7g/dL未満のヘモグロビンを有する、請求項92記載の方法。
  94. 対象における外傷による失血を治療するための方法であって、架橋ヘモグロビンの治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含み、該架橋ヘモグロビンは、
    (a)過ヨウ素酸酸化ATPと分子内架橋し;
    (b)過ヨウ素酸酸化アデノシンと分子内架橋し;及び
    (c)還元グルタチオンと結合した;ヘモグロビンを含む、前記方法。
  95. 前記急性失血が重度である、請求項94記載の方法。
  96. 前記対象が33%を超える失血を有する、請求項95記載の方法。
  97. 前記急性失血が中等度である、請求項94記載の方法。
  98. 前記対象が20%から33%の失血を有する、請求項97記載の方法。
  99. 前記急性失血が軽度である、請求項94記載の方法。
  100. 前記対象が20%未満の失血を有する、請求項99記載の方法。
  101. 前記対象がヒトである、請求項94記載の方法。
  102. 前記対象が7g/dL未満のヘモグロビンを有する、請求項101記載の方法。
  103. 前記架橋ヘモグロビンにおけるヘモグロビン及び過ヨウ素酸酸化ATPが、1:1から1:3のモル比である、請求項94記載の方法。
  104. 前記架橋ヘモグロビンにおけるヘモグロビン及び過ヨウ素酸酸化アデノシンが、1:1から1:10のモル比である、請求項94記載の方法。
  105. 前記架橋ヘモグロビンにおけるヘモグロビン及び還元グルタチオンが、1:1から1:20のモル比である、請求項94記載の方法。
  106. 架橋ヘモグロビン血液代替物の治療有効量を、医薬として許容し得る担体中に含む医薬組成物であって、前記治療有効量は、7gから122.5g未満であり、該架橋ヘモグロビン血液代替物は、酸素正常状態下で細胞培養において試験した場合、エリスロポエチンの発現を誘導する、前記医薬組成物。
  107. 架橋ヘモグロビン血液代替物の治療有効量を、医薬として許容し得る担体中に含む医薬組成物であって、前記治療有効量は、122.5gを超える量から700g未満であり、該架橋ヘモグロビン血液代替物は、酸素正常状態下で細胞培養において試験した場合、エリスロポエチンの発現を誘導する、前記医薬組成物。
  108. 架橋ヘモグロビン血液代替物の治療有効容量を、医薬として許容し得る担体中に含む医薬組成物であって、前記治療有効容量は、0.6リットル未満であり、該架橋ヘモグロビン血液代替物は、酸素正常状態下で細胞培養において試験した場合、エリスロポエチンの発現を誘導する、前記医薬組成物。
  109. 前記架橋ヘモグロビン血液代替物が、細胞培養で試験した場合、HIF-1α発現を安定させる、請求項106から108のいずれか一項記載の医薬組成物。
  110. 前記架橋ヘモグロビン血液代替物が、細胞培養で試験した場合、NF-κBを下方制御する、請求項106から108のいずれか一項記載の医薬組成物。
  111. 架橋ヘモグロビンの治療有効量を、医薬として許容し得る担体中に含む医薬組成物であって、前記治療有効量は、7gから122.5g未満であり、該架橋ヘモグロビンは、
    (a)過ヨウ素酸酸化ATPと分子内架橋し;
    (b)過ヨウ素酸酸化アデノシンと分子内架橋し;及び
    (c)還元グルタチオンと結合した;ヘモグロビンを含む、前記医薬組成物。
  112. 架橋ヘモグロビンの治療有効量を、医薬として許容し得る担体中に含む医薬組成物であって、前記治療有効量は、122.5gを超える量から700gであり、該架橋ヘモグロビンは、
    (a)過ヨウ素酸酸化ATPと分子内架橋し;
    (b)過ヨウ素酸酸化アデノシンと分子内架橋し;及び
    (c)還元グルタチオンと結合した;ヘモグロビンを含む、前記医薬組成物。
  113. 架橋ヘモグロビンの治療有効容量を、医薬として許容し得る担体中に含む医薬組成物であって、前記治療有効容量は、0.6リットル未満であり、該架橋ヘモグロビンは、
    (a)過ヨウ素酸酸化ATPと分子内架橋し;
    (b)過ヨウ素酸酸化アデノシンと分子内架橋し;及び
    (c)還元グルタチオンと結合した;ヘモグロビンを含む、前記医薬組成物。
  114. 前記架橋ヘモグロビンが、細胞培養で試験した場合、HIF-1α発現を安定させる、請求項111から113のいずれか一項記載の医薬組成物。
  115. 前記架橋ヘモグロビンが、細胞培養で試験した場合、NF-κBを下方制御する、請求項111から113のいずれか一項記載の医薬組成物。
  116. 前記架橋ヘモグロビンにおけるヘモグロビン及び過ヨウ素酸酸化ATPが、1:1から1:3のモル比である、請求項111から113のいずれか一項記載の医薬組成物。
  117. 前記架橋ヘモグロビンにおけるヘモグロビン及び過ヨウ素酸酸化アデノシンが、1:1から1:10のモル比である、請求項111から113のいずれか一項記載の医薬組成物。
  118. 前記架橋ヘモグロビンにおけるヘモグロビン及び還元グルタチオンが、1:1から1:20のモル比である、請求項111から113のいずれか一項記載の医薬組成物。
  119. 前記架橋ヘモグロビンが非電解質水溶液に溶解された、請求項111から113のいずれか一項記載の医薬組成物。
  120. マンニトールをさらに含む、請求項111から113のいずれか一項記載の医薬組成物。
  121. 電解質をさらに含む、請求項111から113のいずれか一項記載の医薬組成物。
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