JP2009533530A - 導電性ポリマー組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、導電性ポリマー組成物、およびそれらの有機電子デバイスへの使用に関する。

Description

本発明は、一般に、導電性ポリマー組成物、および有機電子デバイスにおけるそれらの使用に関する。
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)(35 U.S.C.§119(e))に基づき、2006年4月13日出願の米国仮出願第60/791,815号明細書による優先権を主張し、この出願の記載内容全体を本明細書に援用する。
有機電子デバイスは、活性層を含む製品の分類の1つとして定義される。このようなデバイスは、電気エネルギーを放射線に変換したり、電子的過程を介して信号を検出したり、放射線を電気エネルギーに変換したり、あるいは、1つまたは複数の有機半導体層を含んだりする。
有機発光ダイオード(OLED)は、エレクトロルミネッセンスが可能な有機層を含む有機電子デバイスである。導電性ポリマーを含有するOLEDは、以下の構成を有することができる:
アノード/緩衝層/EL材料/カソード
通常、アノードは、たとえば、インジウム/スズ酸化物(ITO)などの、透明でありEL材料中に正孔を注入する能力を有するあらゆる材料である。任意選択的に、アノードは、ガラスまたはプラスチックの基体上に支持されている。EL材料としては、蛍光性化合物、蛍光性およびリン光性の金属錯体、共役ポリマー、ならびにそれらの混合物が挙げられる。通常、カソードは、EL材料中に電子を注入する能力を有するあらゆる材料(たとえばCaまたはBaなど)である。
緩衝層は、典型的には導電性ポリマーであり、アノードからEL材料層中への正孔の注入を促進する。緩衝層として使用される典型的な導電性ポリマーとしては、ポリアニリン、およびポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDT)などのポリジオキシチオフェンが挙げられる。これらの材料は、たとえば、米国特許公報(特許文献1)に記載されているように、ポリ(スチレンスルホン酸)(PSS)などの水溶性ポリマー酸の存在下で、水溶液中でアニリンまたはジオキシチオフェンのモノマーを重合させることによって調製することができる。
水溶性ポリマースルホン酸を使用して合成された水性導電性ポリマー分散体は、望ましくないほど低いpH値を有する。このような低pHは、このような緩衝層を含有するELデバイスの応力寿命の減少や、デバイス内の腐食の原因となりうる。したがって、改善された性質を有する組成物およびそれらから製造された層が必要とされている。
低電圧がかかったときに大電流を流す能力を有する導電性ポリマーも、薄膜電界効果トランジスタなどの電子デバイス用の電極として有用である。このようなトランジスタにおいては、電子および/または正孔の電荷担体の高い移動性を有する有機半導体膜が、ソース電極とドレイン電極との間に存在する。ゲート電極は、半導体ポリマー層の反対側にある。電極用途で有用となるためには、導電性ポリマーまたは半導体ポリマーのいずれかの再溶解を回避するために、導電性ポリマー、ならびに導電性ポリマーを分散または溶解させるための液体が、半導体ポリマーおよび半導体ポリマー用溶媒に対して相溶性である必要がある。多くの導電性ポリマーは、電極として使用するには導電性が低すぎる。したがって、改善された導電性ポリマーが必要とされている。
米国特許第5,300,575号明細書 米国特許第5,463,005号明細書 米国特許第3,282,875号明細書 米国特許出願第60/105,662号明細書 国際公開第9831716(A1)号パンフレット 国際公開第99/52954(A1)号パンフレット 米国特許出願第60/176,881号明細書 欧州特許出願公開第1 026 152 A1号明細書 米国特許第4,358,545号明細書 米国特許第4,940,525号明細書 米国特許第4,433,082号明細書 米国特許第6,150,426号明細書 国際公開03/006537号パンフレット 米国特許第6,670,645号明細書 国際公開第03/063555号パンフレット 国際公開第2004/016710号パンフレット 国際公開第03/008424号パンフレット 国際公開第03/091688号パンフレット 国際公開第03/040257号パンフレット 米国特許第6,303,238号明細書 国際公開第00/70655号パンフレット 国際公開第01/41512号パンフレット A.フェイリング(Feiring)ら,J.Fluorine Chemistry 2000,105,129−135 A.フェイリング(Feiring)ら,Macromolecules 2000,33,9262−9271 D.D.デマルト(Desmarteau),J.Fluorine Chem.1995,72,203−208 A.J.アップルビー(Appleby)ら,J.Electrochem.Soc.1993,140(1),109−111 「可溶性導電性ポリマーから製造した可撓性発光ダイオード」(Flexible light−emitting diodes made from soluble conducting polymer),Nature vol.357,pp 477 479(11 June 1992) Y.ワン(Wang),カーク・オスマー工業化学百科事典第4版(Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,Fourth Edition),Vol.18,p.837−860,1996 CRC化学物理ハンドブック第81版(CRC Handbook of Chemistry and Physics,81st Edition)(2000) カバ(Cava)ら,Organic Letters,2001,Vol.3,No.26,Pages 4283−4285
したがって、改善された物理的性質および電気的性質を有する導電性ポリマー組成物が引き続き必要とされている。
SeまたはTeから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有する本質的に導電性のポリマーと、フッ素化酸ポリマーとを含む導電性ポリマー組成物を提供する。
別の一実施形態においては、上記導電性ポリマーとフッ素化酸ポリマーとの水性分散体を提供する。
別の一実施形態においては、導電性ポリマー組成物の製造方法であって、導電性モノマーが加えられるとき、または酸化剤が加えられるときに少なくとも一部のフッ素化酸ポリマーが存在するのであればあらゆる順序で、水と、SeまたはTeから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有する少なくとも1つの前駆体モノマーと、少なくとも1つのフッ素化酸ポリマーと、酸化剤との組み合わせを形成するステップを含む方法を提供する。
別の一実施形態においては、本発明の新規な導電性ポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含む電子デバイスを提供する。
図面は例として提供しているものであり、本発明の限定を意図したものではない。
以上の概要および以下の詳細な説明は、単に例示的および説明的なものであり、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明を限定するものではない。
一実施形態においては、本質的に導電性のポリマーとフッ素化酸ポリマーとを含む導電性ポリマー組成物を提供する。
多数の態様および実施形態を以上に説明してきたが、これらは単に例示的で非限定的なものである。本明細書を読めば、本発明の範囲から逸脱しない他の態様および実施形態が実現可能であることが、当業者には分かるであろう。
いずれか1つまたは複数の本発明の実施形態のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。この詳細な説明では、最初に、用語の定義および説明を扱い、続いて、導電性前駆体モノマー、非導電性前駆体モノマー、フッ素化酸ポリマー、導電性組成物の調製、緩衝層、電子デバイス、そして最後に実施例を扱う。
(1.用語の定義および説明)
本明細書において使用される場合、用語「ポリマー」は、少なくとも3つの繰り返し単位を有するように形成されたポリマーまたはオリゴマーを意味する。この用語は、ホモポリマーおよびコポリマーを含んでいる。用語「本質的に導電性」は、カーボンブラックや導電性金属粒子を加えなくても導電性となることができる材料を意味する。ある実施形態においては、本質的に導電性のポリマーは、プロトン化された形態では導電性であり、プロトン化されていない形態では非導電性である。用語「フッ素化酸ポリマー」は、酸性プロトンを有する基を有するポリマーであって、そのポリマー中の少なくとも一部の水素がフッ素で置き換えられているポリマーを意味する。用語「酸性基」は、イオン化することによって水素イオンをブレンステッド塩基に供与して塩を形成することができる基を意味する。本発明の組成物は、1つまたは複数の異なる導電性コポリマーと、1つまたは複数の異なるフッ素化酸ポリマーとを含むことができる。
SeまたはTeである少なくとも1つのヘテロ原子を有する本質的に導電性のあらゆるポリマーを本発明の新規組成物中に使用することができる。一実施形態においては、本質的に導電性のポリマーは、少なくとも10-6S/cmの導電率を有するフィルムを形成する。
本発明の新規組成物に好適な導電性ポリマーは、少なくとも1つのモノマーから製造することができる。本明細書においてはこのようなモノマーを「導電性前駆体モノマー」と呼ぶ。単独で重合させた場合に本質的に導電性ではないホモポリマーを形成するモノマーを「非導電性前駆体モノマー」と呼ぶ。本発明の新規組成物に好適な導電性ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーであってよい。これらのコポリマーは、2つ以上の導電性前駆体モノマーから製造することもできるし、1つまたは複数の導電性前駆体モノマーと1つまたは複数の非導電性前駆体モノマーとの組み合わせから製造することもできる。用語「2つ以上のモノマー」は、互いに直接重合させることができる2つ以上の別々のモノマーを意味するし、反応させると1つの中間モノマーを形成しその後重合が行われる2つ以上の異なるモノマーも意味する。
一実施形態においては、本発明の本質的に導電性のポリマーは、少なくとも1つのSeまたはTeのヘテロ原子を有する少なくとも1つの第1の導電性前駆体モノマーと、第1の導電性前駆体モノマーとは異なる少なくとも1つの第2の導電性前駆体モノマーとのコポリマーである。一実施形態においては、第2の導電性前駆体モノマーは、少なくとも1つのSeまたはTeのヘテロ原子を有する。一実施形態においては、第2の導電性前駆体は、チオフェン類、ピロール類、アニリン類、および多環式芳香族から選択される。本明細書において使用される場合、用語「多環式芳香族」は、2つ以上の芳香環を有する化合物を意味する。これらの環は、1つまたは複数の結合によって連結していてもよいし、互いに縮合していてもよい。用語「芳香環」は、ヘテオアロマティック(heteoaromatic)環を含むことを意図している。「多環式ヘテオアロマティック(heteoaromatic)」化合物は、少なくとも1つの複素環式芳香環を有する。
一実施形態においては、本発明の本質的に導電性のポリマーは、1つまたは複数の導電性前駆体モノマーの酸化重合によって調製される。
(2.導電性前駆体モノマー)
一実施形態においては、本発明の導電性ポリマーは、以下の式Iを有する少なくとも1つの導電性前駆体モノマーから製造され:
Figure 2009533530
式中:
1は、それぞれ同じかまたは異なるように独立して選択され、そして、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、アミドスルホネート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択されるか;あるいは両方のR1基が一緒になってアルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成して、3、4、5、6、または7員の芳香環または脂環式環を完成させてもよく、その環は任意選択的に、1つまたは複数の二価の窒素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、または酸素原子を含んでもよい。
Q=Se、Teである。
本明細書において使用される場合、用語「アルキル」は、脂肪族炭化水素から誘導される基を意味し、非置換の場合も置換されている場合もある線状、分岐、および環状の基を含んでいる。用語「ヘテロアルキル」は、アルキル基中の1つまたは複数の炭素原子が窒素、酸素、硫黄などの別の原子で置き換えられているアルキル基を意味することを意図している。用語「アルキレン」は、2つの結合点を有するアルキル基を意味する。
本明細書において使用される場合、用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する脂肪族炭化水素から誘導される基を意味し、非置換の場合も置換されている場合もある線状、分岐、および環状の基を含んでいる。用語「ヘテロアルケニル」は、アルケニル基中の1つまたは複数の炭素原子が窒素、酸素、硫黄などの別の原子で置き換えられているアルケニル基を意味することを意図している。用語「アルケニレン」は、2つの結合点を有するアルケニル基を意味する。
本明細書において使用される場合、置換基に関する以下の用語は、以下に示す式を意味する:
「アルコール」 −R3−OH
「アミド」 −R3−C(O)N(R6)R6
「アミドスルホネート」 −R3−C(O)N(R6)R4−SO3
「ベンジル」 −CH2−C65
「カルボキシレート」 −R3−C(O)O−Zまたは−R3−O−C(O)−Z
「エーテル」 −R3−(O−R5p−O−R5
「エーテルカルボキシレート」 −R3−O−R4−C(O)O−Zまたは−R3−O−R4−O−C(O)−Z
「エーテルスルホネート」 −R3−O−R4−SO3
「エステルスルホネート」 −R3−O−C(O)−R4−SO3
「スルホンイミド」 −R3−SO2−NH−SO2−R5
「ウレタン」 −R3−O−C(O)−N(R62
式中、すべての「R」基はそれぞれ同じかまたは異なるものであり:
3は単結合またはアルキレン基であり:
4はアルキレン基であり
5はアルキル基であり
6は水素またはアルキル基であり
pは0または1〜20の整数であり
Zは、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、N(R54、またはR5である。
上記基はいずれも、さらに非置換の場合も置換されている場合もあり、いずれの基も、過フッ素化基などのように、1つまたは複数の水素がFで置換されていてもよい。一実施形態においては、上記アルキル基およびアルキレン基は1〜20個の炭素原子を有する。
一実施形態においては、導電性前駆体モノマー中、両方のR1が一緒になって−O−(CHY)m−O−を形成し、式中、mは2または3であり、Yは、それぞれ同じかまたは異なるものであり、そして、水素、ハロゲン、アルキル、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択され、これらのY基は、部分的または完全にフッ素化されていてもよい。一実施形態においては、すべてのYが水素である。一実施形態においては、ポリチオフェンが、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である。一実施形態においては、少なくとも1つのY基が水素ではない。一実施形態においては、少なくとも1つのY基が、少なくとも1つの水素がFで置換された置換基である。一実施形態においては、少なくとも1つのY基が過フッ素化されている。
一実施形態においては、上記モノマーは式I(a)を有し:
Figure 2009533530
式中:
7は、それぞれ同じかまたは異なるものであり、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択され、但し、少なくとも1つのR7が水素ではなく、
mは2または3であり、
QはSeまたはTeである。
式I(a)の一実施形態においては、mが2であり、1つのR7が、5個を超える炭素原子のアルキル基であり、他のすべてのR7が水素である。
式I(a)の一実施形態においては、少なくとも1つのR7基がフッ素化されている。一実施形態においては、少なくとも1つのR7基が、少なくとも1つのフッ素置換基を有する。一実施形態においては、そのR7基が完全フッ素化されている。
式I(a)の一実施形態においては、縮合脂環式環上のR7置換基によって、モノマーの水に対する溶解性が改善され、フッ素化酸ポリマーの存在下での重合が促進される。
式I(a)の一実施形態においては、mが2であり、1つのR7が、スルホン酸−プロピレン−エーテル−メチレンであり、他のすべてのR7が水素である。一実施形態においては、mが2であり、1つのR7が、プロピル−エーテル−エチレンであり、他のすべてのR7が水素である。一実施形態においては、mが2であり、1つのR7がメトキシであり、他のすべてのR7が水素である。一実施形態においては、1つのR7が、スルホン酸ジフルオロメチレンエステルメチレン(−CH2−O−C(O)−CF2−SO3H)であり、他のすべてのR7が水素である。
一実施形態においては、少なくとも1つのR7基がフッ素化されている。一実施形態においては、そのR7基が完全フッ素化されている。
一実施形態においては、本発明の導電性の前駆体モノマーは縮合多環式複素環式芳香族モノマーである。一実施形態においては、本発明の導電性前駆体モノマーは式Vを有し:
Figure 2009533530
式中:
QはSeまたはTeであり;
8、R9、R10、およびR11は、それぞれ同じかまたは異なるように独立して選択され、そして、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、アミドスルホネート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択され;
8とR9、R9とR10、およびR10とR11、のうち少なくとも1つがアルケニレン鎖を形成して5または6員の芳香環を完成させ、その環は、任意選択的に1つまたは複数の二価の窒素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、または酸素原子を含むことができる。
一実施形態においては、導電性前駆体モノマーは、式V(a)、V(b)、V(c)、V(d)、V(e)、V(f)、およびV(g)を有し:
Figure 2009533530
式中:
QはSeまたはTeであり;
Tは、それぞれ同じかまたは異なるものであり、S、NR6、O、SiR6 2、Se、Te、およびPR6から選択され;
6は、水素またはアルキルである。
これらモノマーは、アルキル、ヘテロアルキル、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択される基でさらに置換されていてもよい。一実施形態においては、これらの置換基がフッ素化されている。一実施形態においては、これらの置換基が完全フッ素化されている。
一実施形態においては、本発明の新規組成物中のポリマーを形成するために使用が考慮される導電性前駆体モノマーは式VIを含み:
Figure 2009533530
式中:
QはSeまたはTeであり;
Tは、S、NR6、O、SiR6 2、Se、Te、およびPR6から選択され;
Eは、アルケニレン、アリーレン、およびヘテロアリーレンから選択され;
R6は、水素またはアルキルであり;
12は、それぞれ同じかまたは異なるものであり、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、アミドスルホネート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択されるか;あるいは2つのR12基が一緒になってアルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成して、3、4、5、6、または7員の芳香環または脂環式環を完成させてもよく、その環は任意選択的に1つまたは複数の二価の窒素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、または酸素原子を含んでもよい。
(非導電性前駆体モノマー)
一実施形態においては、本発明の本質的に導電性のポリマーは、上記のような少なくとも1つの導電性前駆体モノマーと少なくとも1つの非導電性前駆体モノマーとのコポリマーである。コポリマーに望まれる性質に悪影響を及ぼさないのであれば、あらゆる種類の非導電性前駆体モノマーを使用することができる。一実施形態においては、非導電性前駆体モノマーが、モノマー単位の総数を基準にして50%以下を構成する。一実施形態においては、非導電性前駆体モノマーが、モノマー単位の総数を基準にして30%以下を構成する。一実施形態においては、非導電性前駆体モノマーが、モノマー単位の総数を基準にして10%以下を構成する。
非導電性前駆体モノマーの代表的な種類としては、アルケニル、アルキニル、アリーレン、およびヘテロアリーレンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。非導電性モノマーの例としては、限定するものではないが、フルオレン、オキサジアゾール、チアジアゾール、ベンゾチアジアゾール、フェニレンビニレン、フェニレンエチニレン、ピリジン、ジアジン類、およびトリアジン類が挙げられ、これらすべてがさらに置換されていてもよい。
一実施形態においては、本発明のコポリマーは、最初に構造A−B−Cを有する中間前駆体モノマーを形成することによって製造され、式中、AおよびCは、同じかまたは異なっていてもよい導電性前駆体モノマーを表し、Bは非導電性前駆体モノマーを表す。このA−B−C中間前駆体モノマーは、ヤマモト(Yamamoto)、スティル(Stille)、グリニャール(Grignard)メタセシス、スズキ(Suzuki)、およびネギシ(Negishi)カップリングなどの標準的な合成有機技術を使用して調製することができる。次に、この中間前駆体モノマー単独で酸化重合させる、または1つまたは複数の別の導電性前駆体モノマーとともに酸化重合させることによって、本発明のコポリマーが形成される。
(4.フッ素化酸ポリマー)
本発明のフッ素化酸ポリマーは、フッ素化されており、酸性プロトンを有する酸性基を有するあらゆるポリマーであってよい。本明細書において使用される場合、用語「フッ素化」は、炭素に結合する少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられていることを意味する。この用語は、部分フッ素化材料および完全フッ素化材料を含んでいる。一実施形態においては、フッ素化酸ポリマーは高フッ素化されている。用語「高フッ素化」は、炭素に結合した利用可能な水素の少なくとも50%が、フッ素で置き換えられていることを意味する。酸性プロトンを有する基を以降「酸性基」と呼ぶ。一実施形態においては、酸性プロトンは3未満のpKaを有する。一実施形態においては、酸性プロトンは0未満のpKaを有する。一実施形態においては、酸性プロトンは−5未満のpKaを有する。酸性基は、ポリマー主鎖に直接結合していてもよいし、ポリマー主鎖上の側鎖に結合していてもよい。酸性基の例としては、カルボン酸基、スルホン酸基、スルホンイミド基、リン酸基、ホスホン酸基、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。酸性基はすべてが同じものである場合もあるし、ポリマーは2種類以上の酸性基を有することもできる。
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは水溶性である。一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは水に対して分散性である。
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、有機溶剤でぬらすことができる。用語「有機溶剤でぬらすことができる」は、フィルムに成形した場合に有機溶剤でぬらすことができる材料を意味する。この用語は、単独ではフィルム形成性ではないがぬらすことができる導電性ポリマー組成物を形成するポリマー酸も含んでいる。一実施形態においては、ぬらすことができる材料は、40°以下の接触角でフェニルヘキサンによってぬらすことができるフィルムを形成する。本明細書において使用される場合、用語「接触角」は、図1に示される角度Φを意味することを意図している。液体媒体の液滴の場合、角度Φは、表面の面と、液滴の外側端部から表面までの線との交差部分によって定義される。さらに、角度Φは、液滴が適用された後で表面上で平衡位置に達した後で測定され、すなわち「静的接触角」である。有機溶剤でぬらすことができるフッ素化ポリマー酸のフィルムが、この表面として示されている。一実施形態においては、接触角は35°以下である。一実施形態においては、接触角は30°以下である。接触角の測定方法は周知となっている。
一実施形態においては、上記ポリマーの主鎖がフッ素化されている。好適なポリマー主鎖の例としては、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、およびそれらのコポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態においては、ポリマー主鎖が高フッ素化されている。一実施形態においては、ポリマー主鎖が完全フッ素化されている。
一実施形態においては、酸性基は、スルホン酸基またはスルホンイミド基から選択される。スルホンイミド基は次式を有し:
−SO2−NH−SO2−R
式中、Rはアルキル基である。
一実施形態においては、酸性基はフッ素化側鎖上にある。一実施形態においては、フッ素化側鎖は、アルキル基、アルコキシ基、アミド基、エーテル基、およびそれらの組み合わせから選択される。
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、フッ素化オレフィン主鎖と、ペンダントフッ素化エーテルスルホネート基、ペンダントフッ素化エステルスルホネート基、またはペンダントフッ素化エーテルスルホンイミド基とを有する。一実施形態においては、このポリマーは、1,1−ジフルオロエチレンと2−(1,1−ジフルオロ−2−(トリフルオロメチル)アリルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸とのコポリマーである。一実施形態においては、このポリマーは、エチレンと、2−(2−(1,2,2−トリフルオロビニルオキシ)−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸とのコポリマーである。これらのコポリマーは、対応するフッ化スルホニルポリマーとして製造することができ、後にスルホン酸形態に変換することができる。
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、フッ素化および部分フッ素化ポリ(アリーレンエーテルスルホン)のホモポリマーまたはコポリマーである。このコポリマーはブロックコポリマーであってよい。コモノマーの例としては、ブタジエン、ブチレン、イソブチレン、スチレン、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、式VIIを有するモノマーのホモポリマーまたはコポリマーであり:
Figure 2009533530
式中:
bは1〜5の整数であり、
13はOHまたはNHR14であり、
14は、アルキル、フルオロアルキル、スルホニルアルキル、またはスルホニルフルオロアルキルである。
一実施形態においては、上記モノマーは以下に示す「SFS」または「SFSI」であり:
Figure 2009533530
重合後、得られたポリマーを酸形態に変換することができる。
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、酸性基を有するトリフルオロスチレンのホモポリマーまたはコポリマーである。一実施形態においては、このトリフルオロスチレンモノマーは式VIIIを有し:
Figure 2009533530
式中:
Wは、(CF2b、O(CF2b、S(CF2b、(CF2bO(CF2bから選択され、
bは独立して1〜5の整数であり
13はOHまたはNHR14であり、
14は、アルキル、フルオロアルキル、スルホニルアルキル、またはスルホニルフルオロアルキルである。
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、式IXを有するスルホンイミドポリマーであり:
Figure 2009533530
式中:
fは、フッ素化アルキレン、フッ素化ヘテロアルキレン、フッ素化アリーレン、またはフッ素化ヘテロアリーレンから選択され;
nは少なくとも4である。
式IXの一実施形態においては、Rfはパーフルオロアルキル基である。一実施形態においては、Rfはパーフルオロブチル基である。一実施形態においては、Rfはエーテル酸素を含有する。一実施形態においては、nは10を超える。
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、フッ素化ポリマー主鎖および式Xを有する側鎖を含み:
Figure 2009533530
式中:
15は、フッ素化アルキレン基またはフッ素化ヘテロアルキレン基であり;
16は、フッ素化アルキル基またはフッ素化アリール基であり;
aは0または1〜4の整数である。
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは式XIを有し:
Figure 2009533530
式中:
16は、フッ素化アルキル基またはフッ素化アリール基であり;
cは独立して0または1〜3の整数であり;
nは少なくとも4である。
フッ素化酸ポリマーの合成は、たとえば、(非特許文献1);(非特許文献2);(非特許文献3);(非特許文献4);およびデマルト(Desmarteau)の米国特許公報(特許文献2)に記載されている。
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、構造(XII)を有するエチレン系不飽和化合物から誘導される少なくとも1つの繰り返し単位を含み:
Figure 2009533530
式中、dは0、1、または2であり;
17〜R20は独立して、H、ハロゲン、1〜10個の炭素原子のアルキルまたはアルコキシ、Y、C(Rf’)(Rf’)OR21、R4Y、あるいはOR4Yであり;
Yは、COE2、SO22、またはスルホンイミドであり;
21は、水素または酸不安定性保護基であり;
f’は、それぞれ同じかまたは異なるものであり、1〜10個の炭素原子のフルオロアルキル基であるか、1つに合わせたものが(CF2eとなるかであり、eは2〜10であり;
4はアルキレン基であり;
2は、OH、ハロゲン、またはOR5であり;
5はアルキル基であり;
但し、R17〜R20の少なくとも1つが、Y、R4Y、またはOR4Yである。
4、R5、およびR17〜R20は、ハロゲンまたはエーテル酸素によって任意選択的に置換されていてもよい。
構造(XII)の代表的なモノマーの一部の説明的で非限定的な例を以下に示しており:
Figure 2009533530
式中、R21は、第3級陽イオンの形成または第3級陽イオンへの転位が可能な基であり、より典型的には1〜20個の炭素原子のアルキル基であり、最も典型的にはt−ブチルである。
d=0の場合の構造(XII)である構造(XII−a)の化合物は、以下の式に示されるような構造(XIII)の不飽和化合物とクアドリシクラン(テトラシクロ[2.2.1.02,63,5]ヘプタン)との付加環化反応によって調製することができる。
Figure 2009533530
この反応は、約0℃〜約200℃の範囲の温度、より典型的には約30℃〜約150℃の範囲の温度において、ジエチルエーテルなどの不活性溶媒の非存在下または存在下で実施することができる。1つまたは複数の試薬または溶媒の沸点以上で実施される反応の場合、揮発性成分の減少を回避するために、通常は密閉反応器が使用される。より大きな値のd(すなわち、d=1または2)を有する式XIIの化合物は、d=0である式XIIの化合物をシクロペンタジエンと反応させることによって調製することができ、このことは当技術分野において周知である。
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、エチレン系不飽和炭素に結合した少なくとも1つのフッ素原子を含有する少なくとも1つのエチレン系不飽和化合物から誘導された繰り返し単位も含む。このフルオロオレフィンは2〜20個の炭素原子を含む。代表的なフルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、パーフルオロ−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、パーフルオロ−(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)、CF2=CFO(CF2tCF=CF2(式中のtは1または2である)、およびRf’’OCF=CF2(式中のRf’’は1〜約10個の炭素原子の飽和フルオロアルキル基である)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態においては、このコモノマーはテトラフルオロエチレンである。
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、シロキサンスルホン酸を含むペンダント基を有するポリマー主鎖を含む。一実施形態においては、このシロキサンペンダント基は以下の式を有し:
Figure 2009533530
式中:
aは1〜bであり;
bは1〜3であり;
22は、独立してアルキル、アリール、およびアリールアルキルからなる群から選択される非加水分解性基であり;
23は、1つまたは複数のエーテル酸素原子によって置換されていてもよい二座アルキレン基であり、但し、R23は、SiとRfとの間に直線状に配置された少なくとも2つの炭素原子を有し;
fは、1つまたは複数エーテル酸素原子によって置換されていてもよいパーフルオルアルキレン(perfluoralkylene)基である。
一実施形態においては、ペンダントシロキサン基を有する本発明のフッ素化酸ポリマーは、フッ素化主鎖を有する。一実施形態においては、この主鎖は過フッ素化されている。
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは、フッ素化された主鎖および式(XIV)によって表されるペンダント基を有し、
−Og−[CF(Rf 2)CF−Ohi−CF2CF2SO3H (XIV)
式中、Rf 2は、F、または、非置換であるか、1つまたは複数のエーテル酸素原子によって置換されているかのいずれかであり1〜10個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、h=0または1であり、i=0〜3であり、g=0または1である。
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーは式(XV)を有し
Figure 2009533530
式中、j≧0、k≧0、および4≦(j+k)≦199であり、Q1およびQ2はFまたはHであり、Rf 2は、F、あるいは、非置換であるか、1つまたは複数のエーテル酸素原子によって置換されているかのいずれかであり1〜10個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、h=0または1であり、i=0〜3であり、g=0または1である。一実施形態においては、Rf 2は−CF3であり、g=1、h=1、およびi=1である。一実施形態においては、ペンダント基が3〜10mol%の濃度で存在する。
一実施形態においては、Q1はHであり、k≧0であり、Q2はFであり、これは、コナリー(Connolly)らの米国特許公報(特許文献3)の教示により合成することができる。別の好ましい一実施形態においては、Q1はHであり、Q2はHであり、g=0であり、Rf 2はFであり、h=1であり、I=1であり、同時継続中の米国特許公報(特許文献4)により合成することができる。さらに別の実施形態は、ドライスデール(Drysdale)らの(特許文献5)、ならびに同時継続中の米国出願のチェ(Choi)らの(特許文献6)、および米国特許公報(特許文献7)における種々の教示により合成することができる。
一実施形態においては、本発明のフッ素化酸ポリマーはコロイド形成性ポリマー酸である。本明細書において使用される場合、用語「コロイド形成性」は、水に対して不溶性であり、水性媒体中に分散させた場合にコロイドを形成する材料を意味する。コロイド形成性ポリマー酸は、通常、約10,000〜約4,000,000の範囲内の分子量を有する。一実施形態においては、このポリマー酸は約100,000〜約2,000,000の分子量を有する。コロイドの粒度は、通常2ナノメートル(nm)〜約140nmの範囲内である。一実施形態においては、このコロイドは2nm〜約30nmの粒度を有する。酸性プロトンを有するあらゆる完全フッ素化コロイド形成性ポリマー材料を使用することができる。一実施形態においては、コロイド形成性フッ素化ポリマー酸は、カルボン酸基、スルホン酸基、およびスルホンイミド基から選択される酸性基を有する。一実施形態においては、コロイド形成性フッ素化ポリマー酸はポリマースルホン酸である。一実施形態においては、コロイド形成性ポリマースルホン酸は過フッ素化されている。一実施形態においては、コロイド形成性ポリマースルホン酸はパーフルオロアルキレンスルホン酸である。
一実施形態においては、本発明のコロイド形成性ポリマー酸は、高フッ素化スルホン酸ポリマー(「FSAポリマー」)である。「高フッ素化」は、ポリマー中のハロゲン原子および水素原子の総数の少なくとも約50%、一実施形態においては少なくとも約75%、別の一実施形態においては少なくとも約90%がフッ素原子であることを意味する。一実施形態においては、このポリマーは過フッ素化されている。用語「スルホネート官能基」は、スルホン酸基またはスルホン酸基の塩のいずれかを意味し、一実施形態においてはアルカリ金属塩またはアンモニウム塩である。この官能基は、式−SO35で表され、式中のE5は「対イオン」とも呼ばれる陽イオンである。E5は、H、Li、Na、K、またはN(R1)(R2)(R3)(R4)であってよく、R1、R2、R3、およびR4は同じかまたは異なるものであり、一実施形態においては、これらはH、CH3、またはC25である。別の一実施形態においては、E5はHであり、この場合そのポリマーは「酸形態」にあると言われる。E5は、Ca++、およびAl+++などのイオンによって表されるような多価であってもよい。当業者には明らかなように、一般にMx+と表される多価対イオンの場合、対イオン1つ当たりのスルホネート官能基数が価数「x」と等しくなる。
一実施形態においては、FSAポリマーは、主鎖に結合した反復する側鎖を有するポリマー主鎖を含み、これらの側鎖は陽イオン交換基を有する。ポリマーには、ホモポリマー、または2つ以上のモノマーのコポリマーが含まれる。通常、コポリマーは、非官能性モノマーと、後にスルホネート官能基を加水分解できるフッ化スルホニル基(−SO2F)などの陽イオン交換基またはその前駆体を有する第2のモノマーとから形成される。たとえば、第1のフッ素化ビニルモノマーと、フッ化スルホニル基(−SO2F)を有する第2のフッ素化ビニルモノマーとのコポリマーを使用することができる。可能性のある第1のモノマーとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリジン(vinylidine fluoride)、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。TFEが好ましい第1のモノマーである。
別の実施形態においては、可能性のある第2のモノマーとしては、ポリマー中に所望の側鎖を提供することができるスルホネート官能基または前駆体基を有するフッ素化ビニルエーテルが挙げられる。希望するなら、エチレン、プロピレン、およびR−CH=CH2(式中のRは、1〜10個の炭素原子の過フッ素化アルキル基である)などの追加のモノマーを、これらのポリマー中に組み込むことができる。これらのポリマーは、本明細書においてランダムコポリマーと呼ばれる種類であってよく、すなわち、コモノマーの相対濃度が可能な限り一定に維持され、それによって、ポリマー鎖に沿ったモノマー単位の分布がそれらの相対濃度および相対反応性に従う重合によって製造されるコポリマーであってよい。重合の過程中にモノマーの相対濃度を変化させることによって製造される不規則性のより低いコポリマーを使用することもできる。(特許文献8)に開示されるものなどの、ブロックコポリマーと呼ばれる種類のポリマーを使用することもできる。
一実施形態においては、FSAポリマーは、高フッ素化された、一実施形態においては過フッ素化された、炭素主鎖および以下の式で表される側鎖を含み、
−(O−CF2CFRf 3a−O−CF2CFRf 4SO35
式中、Rf 3およびRf 4は独立して、F、Cl、または1〜10個の炭素原子を有する過フッ素化アルキル基から選択され、a=0、1、または2であり、E5は、H、Li、Na、K、またはN(R1)(R2)(R3)(R4)であり、R1、R2、R3、およびR4は同じかまたは異なるものであり、一実施形態においてはこれらはH、CH3、またはC25である。別の一実施形態においてはE5はHである。前述したように、E5は多価であってもよい。
一実施形態においては、本発明のFSAポリマーとしては、たとえば、米国特許公報(特許文献3)、ならびに米国特許公報(特許文献9)および米国特許公報(特許文献10)に開示されているポリマーが挙げられる。好ましいFSAポリマーの一例は、パーフルオロカーボン主鎖および次式で表される側鎖を含み、
−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO35
式中、Xは前出の定義の通りである。この種類のFSAポリマーは、米国特許公報(特許文献3)に開示されており、テトラフルオロエチレン(TFE)と、過フッ素化ビニルエーテルのCF2=CF−O−CF2CF(CF3)−O−CF2CF2SO2F(パーフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホニルフルオリド)(PDMOF))との共重合の後、スルホニルフルオリド基の加水分解によってスルホネート基に変換し、必要に応じてイオン交換することによってそれらを所望のイオン形態に変換することによって製造することができる。米国特許公報(特許文献9)および米国特許公報(特許文献10)に開示されている種類のポリマーの一例は、側鎖−O−CF2CF2SO35を有し、式中のE5は前出の定義の通りである。このポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)と、過フッ素化ビニルエーテルのCF2=CF−O−CF2CF2SO2F(パーフルオロ(3−オキサ−4−ペンテンスルホニルフルオリド)(POPF))との共重合の後、加水分解し、さらに必要に応じてイオン交換することによって製造することができる。
一実施形態においては、FSAポリマーは、通常、約33未満のイオン交換比を有する。本明細書において、「イオン交換比」または「IXR」は、陽イオン交換基に対するポリマー主鎖中の炭素原子数として定義される。約33未満の範囲内であれば、個別の用途に応じて希望通りにIXRを変動させることができる。一実施形態においてはIXRは約3〜約33であり、別の一実施形態においては約8〜約23である。
ポリマーの陽イオン交換能力は、多くの場合当量(EW)で表現される。本明細書の目的では、当量(EW)は、1当量の水酸化ナトリウムを中和するために必要となる、酸形態のポリマーの重量と定義される。ポリマーがパーフルオロカーボン主鎖を有し、側鎖が−O−CF2−CF(CF3)−O−CF2−CF2−SO3H(またはその塩)であるスルホネートポリマーの場合、約8〜約23のIXRに相当する当量範囲は約750EW〜約1500EWとなる。このポリマーのIXRは、式:50IXR+344=EWを使用して当量と関連づけることができる。米国特許公報(特許文献9)および米国特許公報(特許文献10)に開示されているスルホネートポリマー、たとえば側鎖−O−CF2CF2SO3H(またはその塩)を有するポリマーに対して同じIXR範囲が使用されると、陽イオン交換基を有するモノマー単位の分子量が低いため、その当量はある程度低くなる。約8〜約23の好ましいIXR範囲の場合、その対応する当量範囲は約575EW〜約1325EWとなる。このポリマーのIXRは、式:50IXR+178=EWを使用して当量と関連づけることができる。
FSAポリマーは、コロイド水性分散体として調製することができる。これらは、他の媒体中の分散体の形態であってもよく、そのような媒体の例としては、アルコール、テトラヒドロフランなどの水溶性エーテル、水溶性エーテルの混合物、およびそれらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。この分散体を製造する際、ポリマーは酸形態で使用することができる。米国特許公報(特許文献11)、米国特許公報(特許文献12)、および(特許文献13)には、水性アルコール性分散体の製造方法が開示されている。分散体を製造した後、濃度と分散させる液体の組成とを、当技術分野において周知の方法によって調整することができる。
FSAポリマーを含むコロイド形成性ポリマー酸の水性分散体は、典型的には、安定なコロイドが形成されるのであれば、可能な限り小さい粒度、および可能な限り小さいEWを有する。
FSAポリマーの水性分散体は、ナフィオン(Nafion)(登録商標)分散体として、本願特許出願人より市販されている。
本明細書において前述したポリマーの一部は、非酸形態、たとえば、塩、エステル、またはフッ化スルホニルとして形成することができる。後述するように、これらは、導電性組成物を調製するために酸形態に変換される。
(5.導電性組成物の調製)
本発明の新規導電性コポリマー組成物は、(i)フッ素化酸ポリマーの存在下での前駆体モノマーの重合によって;または(ii)最初に本来導電性であるポリマーを形成した後、それをフッ素化酸ポリマーと組み合わせることによって調製される。
((i)フッ素化酸ポリマーの存在下での前駆体モノマーの重合)
一実施形態においては、本発明の導電性コポリマー組成物は、フッ素化酸ポリマーの存在下での前駆体モノマーの酸化重合によって形成される。一実施形態においては、前駆体モノマーは1種類の導電性前駆体モノマーを含む。一実施形態においては、前駆体モノマーは、2つ以上の異なる導電性前駆体モノマーを含む。一実施形態においては、これらのモノマーは、構造A−B−Cを有する中間前駆体モノマーを含み、式中、AおよびCは、同じかまたは異なっていてもよい導電性前駆体モノマーを表しており、Bは、非導電性前駆体モノマーを表している。一実施形態においては、この中間前駆体モノマーは、1つまたは複数の導電性前駆体モノマーとともに重合される。
一実施形態においては、上記の酸化重合は均一水溶液中で行われる。別の一実施形態においては、別の一実施形態においては、酸化重合は、水と有機溶剤とのエマルジョン中で行われる。一般に、酸化剤および/または触媒の適切な溶解性を得るために、ある程度の水が存在する。過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの酸化剤を使用することができる。塩化第二鉄、または硫酸第二鉄などの触媒も存在することができる。結果として得られる重合生成物は、フッ素化酸ポリマーと会合した導電性ポリマーの溶液、分散体、またはエマルジョンとなる。一実施形態においては、本来導電性ポリマーが正に帯電しており、フッ素化酸ポリマー陰イオンによって電荷のバランスがとられる。
一実施形態においては、本発明の新規な導電性ポリマー組成物の水性分散体の製造方法は、前駆体モノマーと酸化剤との少なくとも一方が加えられるときに少なくとも一部のフッ素化酸ポリマーが存在するのであれば任意の順序で、水と、少なくとも2つの前駆体モノマーと、少なくとも1つのフッ素化酸ポリマーと、酸化剤とを混合することによって反応混合物を形成するステップを含む。
一実施形態においては、本発明の新規な導電性ポリマー組成物の製造方法は:
(a)フッ素化酸ポリマーの水溶液または分散体を提供するステップと;
(b)ステップ(a)の溶液または分散体に酸化剤を加えるステップと;
(c)ステップ(b)の混合物に少なくとも1つの前駆体モノマーを加えるステップとを含む。
別の一実施形態においては、酸化剤を加える前に、フッ素化酸ポリマーの水溶液または分散体に前駆体モノマーが加えられる。これに続いて、酸化剤を加える前述のステップ(b)が行われる。
別の一実施形態においては、通常、約0.5重量%〜約4.0重量%の範囲内の全前駆体モノマーの濃度で、水と前駆体モノマーとの混合物が形成される。この前駆体モノマー混合物がフッ素化酸ポリマーの水溶液または分散体に加えられ、酸化剤を加える前述のステップ(b)が行われる。
別の一実施形態においては、上記水性重合混合物は、硫酸第二鉄、塩化第二鉄などの重合触媒を含むことができる。この触媒は、最終ステップの前に加えられる。別の一実施形態においては、触媒は酸化剤とともに加えられる。
一実施形態においては、重合は、水に対して混和性である共分散液体(co−dispersing liquid)の存在下で行われる。好適な共分散液体の例としては、エーテル、アルコール、アルコールエーテル、環状エーテル、ケトン、ニトリル、スルホキシド、アミド、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態においては、共分散液体はアルコールである。一実施形態においては、共分散液体は、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、およびそれらの混合物から選択される有機溶剤である。一般に、共分散液体の量は約60体積%未満とすべきである。一実施形態においては、共分散液体の量は約30体積%未満である。一実施形態においては、共分散液体の量は5〜50体積%の間である。重合中に共分散液体を使用することによって、粒度が顕著に減少し、分散体の濾過性が改善される。さらに、この方法によって得られた緩衝材料は、粘度の増加が見られ、これらの分散体から作製された膜は高品質となる。
共分散液体は、本発明の方法の任意の時点で反応混合物に加えることができる。
一実施形態においては、重合は、ブレンステッド酸である共酸(co−acid)の存在下で行われる。この酸は、HCl、硫酸などの無機酸、あるいは酢酸またはp−トルエンスルホン酸などの有機酸であってよい。あるいは、この酸は、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸などの水溶性ポリマー酸、または前述の第2のフッ素化酸ポリマーであってよい。複数の酸の組み合わせを使用することもできる。
共酸は、最後に加えられる酸化剤または前駆体モノマーのいずれかが加えられる前の、本発明の方法の任意の時点で反応混合物に加えることができる。一実施形態においては、共酸が加えられた後で、前駆体モノマーとフッ素化酸ポリマーとの両方が加えられ、最後に酸化剤が加えられる。一実施形態においては、共酸が加えられた後で、前駆体モノマーが加えられ、続いてフッ素化酸ポリマーが加えられ、最後に酸化剤が加えられる。
一実施形態においては、重合は、共分散液体と共酸との両方の存在下で行われる。
一実施形態においては、最初に、水と、アルコール共分散剤と、無機共酸との混合物を反応容器に投入する。これに、前駆体モノマーと、フッ素化酸ポリマーの水溶液または分散体と、酸化剤とをこの順序で加える。混合物を不安定化する可能性のある高イオン濃度の局所領域が形成されないようにするため、酸化剤はゆっくり滴下する。別の一実施形態においては、酸化剤および前駆体モノマーは、反応混合物中に、制御された速度で別々に同時に注入する。この混合物を撹拌し、次に、制御された温度において反応を進行させる。重合が完了してから、反応混合物を強酸陽イオン樹脂で処理し、撹拌し、濾過し、続いて、塩基性陰陰イオン交換樹脂で処理し、撹拌し、濾過する。前述したように、別の添加順序を使用することもできる。
本発明の新規導電性ポリマー組成物の製造方法において、酸化剤の全前駆体モノマーに対するモル比は、一般に0.1〜2.0の範囲内であり、一実施形態においては0.4〜1.5である。フッ素化酸ポリマーの全前駆体モノマーに対するモル比は、一般に0.2〜5の範囲内である。一実施形態においては、この比は1〜4の範囲内である。全体の固形分は、一般に、重量パーセントの単位で、約1.0%〜10%の範囲内であり、一実施形態においては約2%〜4.5%の範囲内である。反応温度は、一般に約4℃〜50℃の範囲内であり、一実施形態においては約20℃〜35℃の範囲内である。任意選択的に使用される共酸の前駆体モノマーに対するモル比は約0.05〜4である。酸化剤の添加時間は粒度および粘度に影響を与える。したがって、添加速度を遅くすることによって粒度を減少させることができる。同時に、添加速度を遅くすることによって粘度は増加する。反応時間は、一般に約1〜約30時間の範囲内である。
((ii)本質的に導電性のポリマーとフッ素化酸ポリマーとの混合)
一実施形態においては、本質的に導電性のポリマーが、フッ素化酸ポリマーとは別に形成される。一実施形態においては、これらのポリマーは、対応するモノマーを水溶液中で酸化重合させることによって調製される。一実施形態においては、酸化重合は水溶性酸の存在下で行われる。一実施形態においては、この酸は、水溶性非フッ素化ポリマー酸である。一実施形態においては、この酸は、非フッ素化ポリマースルホン酸である。この酸の一部の非限定的な例は、ポリ(スチレンスルホン酸)(「PSSA」)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)(「PAAMPSA」)、およびそれらの混合物である。その酸の陰イオンが、導電性ポリマーにおける正電荷用の対イオンとなる。この酸化重合は、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物などの酸化剤を使用して行われる。
本発明の新規な導電性ポリマー組成物は、本質的に導電性のポリマーをフッ素化酸ポリマーとブレンドすることによって調製される。これは、本質的に導電性のポリマーの水性分散体を、ポリマー酸の分散体または溶液に加えることによって行うことができる。一実施形態においては、この組成物は、成分を確実に混合するために、超音波処理またはマイクロ流動化を使用してさらに処理される。
一実施形態においては、本質的に導電性のポリマーおよびフッ素化酸ポリマーの一方または両方が、固体の形態で分離される。この固体材料は、水中、あるいは他の成分の水溶液または分散体の中に再分散させることができる。たとえば、本質的に導電性のポリマーの固体を、フッ素化酸ポリマー水溶液または分散体の中に分散させることができる。
((iii)pH調整)
合成された時点では、本発明の新規導電性コポリマー組成物の水性分散体は、一般に非常に低いpHを有する。一実施形態においては、デバイスの性質に悪影響を与えずに、pHをより高い値に調整される。一実施形態においては、分散体のpHは約1.5〜約4に調整される。一実施形態においては、pHは3〜4の間に調整される。pHは、イオン交換、または塩基性水溶液を使用した滴定などの周知の技術を使用して調整できることが分かっている。
一実施形態においては、重合反応の完了後、分解した化学種、副反応生成物、および未反応モノマーを除去するため、およびpHを調整するために、好適な条件下で、合成された状態の水性分散体を、少なくとも1つのイオン交換樹脂と接触させることによって、所望のpHを有する安定な水性分散体が生成される。一実施形態においては、合成された状態の水性分散体を、第1のイオン交換樹脂および第2のイオン交換樹脂と任意の順序で接触させる。合成された状態の水性分散体は、第1および第2のイオン交換樹脂の両方で同時に処理することもできるし、一方で処理した後に続いて他方で処理することもできる。
イオン交換は、流体媒体(水性分散体など)中のイオンが、流体媒体に対して不溶性である固定された固体粒子に結合した類似の荷電イオンと交換される可逆的な化学反応である。本明細書においては、あらゆるこのような物質を意味するために用語「イオン交換樹脂」が使用される。イオン交換基が結合するポリマー支持体が架橋性を有するため、この樹脂は不溶性となる。イオン交換樹脂は、陽イオン交換体または陰イオン交換体に分類される。陽イオン交換体は、交換に利用可能な正に帯電した可動イオンを有し、典型的には、プロトンまたはナトリウムイオンなどの金属イオンを有する。陰イオン交換体は、負に帯電した交換可能なイオンを有し、典型的には水酸化物イオンを有する。
一実施形態においては、第1のイオン交換樹脂は、プロトンイオンまたは金属イオンの形態、典型的にはナトリウムイオンの形態であってよい陽イオン酸交換樹脂である。第2のイオン交換樹脂は塩基性陰イオン交換樹脂である。プロトン交換樹脂などの酸性陽イオン交換樹脂と、塩基性陰イオン交換樹脂との両方が、本発明の実施において使用が考慮されている。一実施形態においては、酸性陽イオン交換樹脂は、スルホン酸陽イオン交換樹脂などの無機酸陽イオン交換樹脂である。本発明の実施において使用が考慮されるスルホン酸陽イオン交換樹脂としては、たとえば、スルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、スルホン化架橋スチレンポリマー、フェノール−ホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂、ベンゼン−ホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂、およびそれらの混合物が挙げられる。別の一実施形態においては、酸性陽イオン交換樹脂は、カルボン酸、アクリル、またはリンの陽イオン交換樹脂などの有機酸陽イオン交換樹脂である。さらに、異なる陽イオン交換樹脂の混合物を使用することができる。
別の一実施形態においては、塩基性陰イオン交換樹脂は、第3級アミン陰イオン交換樹脂である。本発明の実施において使用が考慮される第3級アミン陰イオン交換樹脂としては、たとえば、第3級アミノ化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、第3級アミノ化架橋スチレンポリマー、第3級アミノ化フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、第3級アミノ化ベンゼン−ホルムアルデヒド樹脂、およびそれらの混合物が挙げられる。さらに別の一実施形態においては、塩基性陰イオン交換樹脂は、第4級アミン陰イオン交換樹脂、あるいはこれらおよびその他の交換樹脂の混合物である。
第1および第2のイオン交換樹脂は、合成された状態の水性分散体に、同時または連続のいずれかで接触させることができる。たとえば、一実施形態においては、両方の樹脂は、合成された状態の導電性コポリマーの水性分散体に同時に加えられ、少なくとも約1時間、たとえば約2時間〜約20時間の間、分散体との接触を維持する。次に、濾過することによって、イオン交換樹脂を分散体から除去することができる。フィルターのサイズは、比較的大きなイオン交換樹脂粒子が除去され、より小さな分散粒子は通過するように選択される。理論によって束縛しようと望むものではないが、イオン交換樹脂は、重合を停止させ、さらに、イオン性および非イオン性の不純物、ならびに大部分の未反応モノマーを合成された状態の水性分散体から効率的に除去すると考えられている。さらに塩基性の陰イオン交換樹脂および/または酸性の陽イオン交換樹脂は、酸性部位をより塩基性にするため、結果として分散体のpHが増加する。一般に、新規導電性コポリマー組成物1グラム当たり、約1〜5グラムのイオン交換樹脂が使用される。
多くの場合、塩基性イオン交換樹脂を使用することでpHを所望の値に調整することができる。場合によっては、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの溶液などの塩基性水溶液を使用して、pHをさらに調整することができる。
別の一実施形態においては、本発明の新規導電性コポリマー組成物の水性分散体に高導電性添加剤を加えることによって、より導電性の高い分散体が形成される。比較的高いpHを有する分散体が形成されるので、この導電性添加剤、特に金属添加剤は、分散体中の酸には引き寄せられない。好適な導電性添加剤の例としては、金属の粒子およびナノ粒子、ナノワイヤ、カーボンナノチューブ、黒鉛の繊維または粒子、炭素粒子、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(6.緩衝層)
本発明の別の一実施形態においては、本発明の新規導電性ポリマー組成物を含む水性分散体から堆積させた緩衝層を提供する。用語「緩衝層」または「緩衝材料」は、導電性または半導体材料を意味することを意図しており、限定するものではないが、下にある層の平坦化、電荷輸送および/または電荷注入特性、酸素または金属イオンなどの不純物の捕捉、ならびに有機電子デバイスの性能を促進または改善する他の特徴などの、1つまたは複数の機能を有機電子デバイス中で有することができる。用語「層」は、用語「フィルム」と交換可能に使用され、希望する領域を覆うコーティングを意味する。この用語は大きさによって限定されることはない。この領域は、デバイス全体の大きさであってもよいし、実際の視覚的表示などの特殊機能領域の小ささ、または1つのサブピクセルの小ささであってもよい。層およびフィルムは、気相堆積、液相堆積(連続的技術および不連続な技術)、および熱転写などの従来のあらゆる堆積技術によって形成することができる。連続堆積技術としては、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティング、および連続ノズルコーティングが挙げられるが、これらに限定されるものではない。不連続堆積技術としては、インクジェット印刷、グラビア印刷、およびスクリーン印刷が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の新規導電性のコポリマー組成物の乾燥フィルムは、一般に水中に再分散しない。したがって、緩衝層を複数の薄層として適用することができる。さらに、緩衝層には、損傷を引き起こすことなく異なる水溶性または水分散性の材料の層を上塗りすることができる。本発明の新規導電性のコポリマー組成物を含む緩衝層は、驚くべきことに、改善されたぬれ性を有することが分かった。
別の一実施形態においては、別の水溶性または水分散性の材料とブレンドした本発明の新規導電性コポリマー組成物を含む水性分散体から堆積させた緩衝層を提供する。添加することができる材料の種類の例としては、ポリマー、染料、コーティング助剤、有機および無機の導電性インクおよびペースト、電荷輸送材料、架橋剤、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。この別の水溶性または水分散性の材料は、単純な分子またはポリマーであってもよい。好適なポリマーの例としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリ(チエノチオフェン)、およびそれらの組み合わせなどの導電性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(7.電子デバイス)
本発明の別の実施形態においては、2つの電気接触層に間に配置された少なくとも1つの電気活性層を含む電子デバイスが提供され、このデバイスは新規の緩衝層をさらに含む。層または材料に言及する場合の用語「電気活性」は、電子的または電気放射的(electro−radiative)性質を示す層または材料を意味することを意図している。電気活性層材料は、放射線を発する場合もあるし、放射線を受けた場合に電子−正孔対の濃度変化を示す場合もある。
図2に示されているように、典型的なデバイス100は、アノード層110、緩衝層120、電気活性層130、およびカソード層150を有する。カソード層150には、任意選択的に電子注入/輸送層140が隣接する。
このデバイスは、アノード層110またはカソード層150に隣接することができる支持体または基体(図示せず)を含むことができる。ほとんどの場合、支持体はアノード層110に隣接している。支持体は、可撓性の場合も剛性の場合もあるし、有機の場合も無機の場合もある。支持体材料の例としては、ガラス、セラミック、金属、およびプラスチックフィルムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アノード層110は、カソード層150よりも正孔の注入が効率的な電極である。アノードは、金属、混合金属、合金、金属酸化物、または混合酸化物を含有する材料を含むことができる。好適な材料としては、2族元素(すなわち、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、11族元素、4族、5族、および6族の元素、ならびに8〜10族の遷移元素の混合酸化物が挙げられる。アノード層110を光透過性にするためには、インジウム・スズ酸化物などの12族、13族、および14族の元素の混合酸化物を使用することができる。本明細書において使用される場合、語句「混合酸化物」は、2族元素、あるいは12族、13族、または14族の元素から選択される2つ以上の異なる陽イオンを有する酸化物を意味する。アノード層110の材料の一部の非限定的な具体例としては、インジウム・スズ酸化物(「ITO」)、インジウム・亜鉛酸化物、アルミニウム・スズ酸化物、金、銀、銅、およびニッケルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アノードは、有機材料、特に、ポリアニリンなどの導電性ポリマー、たとえば、(非特許文献5)に記載される代表的な材料も含むことができる。アノードおよびカソード少なくとも1つは、発生した光を観察できるように、少なくとも部分的に透明となるべきである。
アノード層110は、化学蒸着法または物理蒸着法、あるいはスピンキャスト法によって形成することができる。化学蒸着は、プラズマ化学蒸着(「PECVD」)または金属有機化学蒸着(「MOCVD」)として行うことができる。物理蒸着としては、イオンビームスパッタリングなどのスパッタリング、ならびにeビーム蒸発、および抵抗蒸発のあらゆる形態を挙げることができる。物理蒸着の具体的な形態としては、高周波マグネトロンスパッタリング、および誘導結合プラズマ物理蒸着(「IMP−PVD」)が挙げられる。これらの堆積技術は、半導体製造分野においては周知である。
一実施形態においては、アノード層110は、リソグラフィ作業中にパターンが形成される。このパターンは、希望に応じて変更することができる。これらの層は、第1の電気接触層材料を適用する前に、第1の可撓性複合バリア構造上にパターンが形成されたマスクまたはレジストを配置することなどによってパターンを形成することができる。あるいは、これらの層は、全体の層として適用することができ(ブランケット堆積とも呼ばれる)、続いて、たとえば、パターンが形成されたレジスト層と湿式化学エッチングまたはドライエッチング技術とを使用してパターンを形成することができる。当技術分野において周知の他のパターン形成方法を使用することもできる。
通常、緩衝層120は、当業者に周知の多種多様の技術を使用して基体上に堆積される。典型的な堆積技術としては、前述したように、気相堆積、液相堆積(連続的技術および不連続な技術)、および熱転写が挙げられる。
図示されていないが、緩衝層120と電気活性層130との間に、任意選択的に層が存在することができる。この層は正孔輸送材料を含むことができる。正孔輸送材料の例は、たとえば、(非特許文献6)にまとめられている。正孔輸送分子および正孔輸送ポリマーの両方を使用することができる。一般に使用される正孔輸送分子としては、4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(TDATA);4,4’,4”−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(MTDATA);N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD);1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC);N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD);テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA);α−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS);p−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH);トリフェニルアミン(TPA);ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP);1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP);1,2−trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB);N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB);N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(α−NPB);および銅フタロシアニンなどのポルフィリン系化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般に使用される正孔輸送ポリマーとしては、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリ(ジオキシチオフェン)、ポリアニリン、およびポリピロールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリスチレンやポリカーボネートなどのポリマー中に、上述のものなどの正孔輸送分子をドープすることによって、正孔輸送ポリマーを得ることもできる。
デバイスの用途に依存するが、電気活性層130は、印可電圧によって活性化される発光層(発光ダイオードまたは発光電気化学セル中など)、放射エネルギーに応答し、バイアス電圧の印可を伴ってまたは伴わずに信号を発生する材料の層(光検出器中など)であってよい。一実施形態においては、電気活性材料は、有機エレクトロルミネッセンス(「EL」)材料である。限定するものではないが、小分子有機蛍光化合物、蛍光性およびリン光性の金属錯体、共役ポリマー、ならびにそれらの組み合わせおよび混合物などのあらゆるEL材料をデバイス中に使用することができる。蛍光化合物の例としては、ピレン、ペリレン、ルブレン、クマリン、それらの誘導体、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属錯体の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)などの金属キレート化オキシノイド化合物;米国特許公報(特許文献14)、ならびに(特許文献15)および(特許文献16)に開示されるような、フェニルピリジン配位子、フェニルキノリン配位子、またはフェニルピリミジン配位子を有するイリジウムの錯体などのシクロメタレート化イリジウムおよび白金エレクトロルミネッセンス化合物、ならびに、たとえば、(特許文献17)、(特許文献18)、および(特許文献19)に記載されているような有機金属錯体、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。電荷輸送ホスト材料と金属錯体とを含むエレクトロルミネッセンス発光層が、トンプソン(Thompson)らの米国特許公報(特許文献20)、ならびにバローズ(Burrows)およびトンプソン(Thompson)の(特許文献21)、および(特許文献22)に記載されている。共役ポリマーの例としては、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリ(スピロビフルオレン)、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、それらのコポリマー、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
任意選択の層140は、電子の注入/輸送の両方を促進する機能を果たす場合もあるし、層界面における消光反応を防止する閉じ込め層として機能する場合もある。より具体的には、層140は、電子の移動を促進し、層130および150が直接接触している場合の消光反応の可能性を減少させることができる。任意選択の層140の材料の例としては、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニル−フェノラト)アルミニウム(III)(BAlQ)およびトリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)などの金属キレート化オキシノイド化合物;テトラキス(8−ヒドロキシキノリナト)ジルコニウム;2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、および1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンズイミダゾール)ベンゼン(TPBI)などのアゾール化合物;2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリンなどのキノキサリン誘導体;9,10−ジフェニルフェナントロリン(DPA)および2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA)などのフェナントロリン誘導体;ならびにそれらの1つまたは複数のあらゆる組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。あるいは、任意選択の層140は無機であってもよく、BaO、LiF、Li2Oなどを含むことができる。
カソード層150は、電子または負電荷担体の注入に特に有効な電極である。カソード層150は、第1の電気接触層(この場合はアノード層110)よりも低い仕事関数を有するあらゆる金属または非金属であってよい。本明細書において使用される場合、用語「低い仕事関数」は、約4.4eV以下の仕事関数を有する材料を意味することを意図している。本明細書において使用される場合、「高い仕事関数」は、少なくとも約4.4eVの仕事関数を有する材料を意味することを意図している。
カソード層の材料は、1族のアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Rb、Cs)、2族金属(たとえば、Mg、Ca、Baなど)、12族金属、ランタニド(たとえば、Ce、Sm、Euなど)、およびアクチニド(たとえば、Th、Uなど)から選択することができる。アルミニウム、インジウム、イットリウム、およびそれらの組み合わせなどの材料も使用することができる。カソード層150の材料の非限定的な具体例としては、バリウム、リチウム、セリウム、セシウム、ユウロピウム、ルビジウム、イットリウム、マグネシウム、サマリウム、ならびにそれらの合金および組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
通常、カソード層150は、化学蒸着法または物理蒸着法によって形成される。ある実施形態においては、アノード層110に関して前述したようにして、カソード層にパターンが形成される。
デバイス中の他の層は、そのような層が果たすべき機能を考慮することによってそのような層に有用であることが知られているあらゆる材料でできていてよい。
ある実施形態においては、水および酸素などの望ましくない成分がデバイス100内に入るのを防止するために、接触層150の上に封入層(図示せず)が堆積される。このような成分は、有機層130に対して悪影響を及ぼす場合がある。一実施形態においては、封入層は障壁層またはフィルムである。一実施形態においては、封入層はガラス蓋である。
図示していないが、デバイス100が追加の層を含むことができることは理解できよう。当技術分野において周知である別の層、またはその他の別の層を使用することができる。さらに、上記のいずれかの層は、2つ以上副層を含む場合があるし、層状構造を形成している場合もある。あるいは、アノード層110、正孔輸送層120、電子輸送層140、カソード層150、および別の層の一部またはすべては、電荷担体輸送効率またはデバイスの他の物理的性質を向上させるために、処理、特に表面処理を行うことができる。各構成層の材料の選択は、デバイスの稼働寿命を考慮して高いデバイス効率を有するデバイスを得ること、製造時間、および複雑な要因、ならびに当業者に認識されている他の問題点の目標の釣り合いを取ることによって、好ましくは決定される。最適な構成要素、構成要素の構成、および組成の決定は、当業者の日常的な作業であることは理解できるであろう。
一実施形態において、種々の層は以下の範囲の厚さを有する:アノード110、500〜5000Å、一実施形態においては1000〜2000Å;緩衝層120、50〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å、;光活性層130、10〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;任意選択の電子輸送層140、50〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;カソード150、200〜10000Å、一実施形態においては300〜5000Å。デバイス中の電子−正孔再結合領域の位置、したがってデバイスの発光スペクトルは、各層の相対厚さによって影響されうる。たとえば、電子−正孔再結合領域が発光層中に存在するように、電子輸送層の厚さを選択すべきである。層の厚さの望ましい比は、使用される材料の厳密な性質に依存する。
動作中、適切な電源(図示せず)からの電圧がデバイス100に印加される。それによって、デバイス100の層に電流が流れる。電子が有機ポリマー層に入り、フォトンを放出する。アクティブマトリックスOLEDディスプレイと呼ばれる一部のOLEDでは、光活性有機薄膜の個別の堆積物を、電流の流れによって独立して励起させることができ、それによって個別のピクセルを発光させることができる。パッシブマトリックスOLEDディスプレイと呼ばれる一部のOLEDでは、光活性有機薄膜の堆積物は、電気接触層の横列および縦列によって励起させることができる。
本明細書において使用される場合、用語「含んでなる」、「含んでなること」、「含む」、「含むこと」、「有する」、「有すること」、またはそれらの他のあらゆる変形は、非排他的な包含を扱うことを意図している。たとえば、ある一連の要素を含むプロセス、方法、物品、または装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されるわけではなく、そのようなプロセス、方法、物品、または装置に関して明示されず固有のものでもない他の要素を含むことができる。さらに、反対の意味で明記されない限り、「または」は、包含的な「または」を意味するのであって、排他的な「または」を意味するのではない。たとえば、条件AまたはBが満たされるのは、Aが真であり(または存在する)Bが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在しない)Bが真である(または存在する)、ならびにAおよびBの両方が真である(または存在する)のいずれか1つによってである。
また、本発明の要素および成分を説明するために「a」または「an」も使用されている。これは単に便宜的なものであり、本発明の一般的な意味を提供するために行われている。この記述は、1つまたは少なくとも1つを含むものと読むべきであり、明らかに他の意味となる場合を除けば、単数形は複数形も含んでいる。
層、材料、部材、または構造に関して言及される場合、用語「正孔輸送」は、そのような層、材料、部材、または構造が、比較的効率的かつ少ない電荷損失で、そのような層、材料、部材、または構造の厚さを通過する正電荷の移動を促進することを意味することを意図している。
層、材料、部材、または構造に関して言及される場合、用語「電子輸送」は、そのような層、材料、部材、または構造が、そのような層、材料、部材、または構造から別の層、材料、部材、または構造への負電荷の移動を助長または促進することを意味する。
用語「有機電子デバイス」は、1つまたは複数の半導体の層または材料を含むデバイスを意味することを意図している。有機電子デバイスとしては:(1)電気エネルギーを放射線に変換するデバイス(たとえば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、ダイオードレーザー、または照明パネル)、(2)電子的過程を介して信号を検出するデバイス(たとえば、光検出器 光導電セル、フォトレジスタ、フォトスイッチ、フォトトランジスタ、光電管、赤外線(「IR」)検出器、またはバイオセンサー)、(3)放射線を電気エネルギーに変換するデバイス(たとえば、光起電性デバイスまたは太陽電池)、ならびに(4)1つまたは複数の有機半導体層を含む1つまたは複数の電子部品(たとえば、トランジスタまたはダイオード)を含むデバイスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
特に定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。式中、文字Q、R、T、W、X、Y、およびZは、それらに定義されている原子または基を表すために使用されている。他のすべての文字は、従来の原子記号を表すために使用されている。元素周期表中の縦列に対応する族の番号は、(非特許文献7)に見ることができる「新表記法」(New Notation)の規則を使用している。
本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料について以下に説明する。本明細書において言及されるあらゆる刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、それらの記載内容全体が援用される。矛盾が生じる場合には、定義を含めて本明細書に従うものとする。さらに、材料、方法、および実施例は、単に説明的なものであり、限定を意図したものではない。
明確にするため、別々の実施態様の状況で、前述または後述される本発明の特定の特徴は、1つの実施態様において組み合わせて提供することもできることを理解されたい。逆に、簡潔にするため、1つの実施態様の状況で説明される本発明の種々の特徴を、別々に提供したり、あらゆる副次的な組み合わせで提供したりすることもできる。さらに、複数の値が複数の範囲内にあると言及されている場合、そのそれぞれの値がそれらの範囲内に含まれる。
導電性前駆体モノマーの3,4−エーチレンジオキシセレノフェン(ehtylenedioxyselenophene)(「EDOS」)は、(非特許文献8)に記載のようにして調製することができる。
(実施例1)
この実施例では、新規な導電性ポリマー組成物の調製に使用される有機溶剤でぬらすことができるフッ素化酸ポリマーの調製を示す。このポリマーは、エチレン(「E」)と、2−(2−(1,2,2−トリフルオロビニルオキシ)−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルフルオリド(「PSEPVE」)とのコポリマーであり、スルホン酸形態に変換されている。この結果得られるポリマーを「E−PSEPVE酸」と呼ぶ。
Figure 2009533530
210mLのハステロイ(Hastelloy)C276反応容器に、60gのPSEPVE(0.13mol)と、バートレル(Vertrel)(登録商標)XF中のHFPO二量体過酸化物の0.17M溶液1mLとを投入した。この容器を−35℃まで冷却し、−3PSIGまで減圧し、窒素をパージした。この減圧/パージのサイクルをさらに2回繰り返した。次にこの容器に20gのエチレン(0.71mol)を加え、さらに900PSIGの窒素を加えた。この容器を24℃まで加熱すると、圧力が1400PSIGまで上昇した。反応温度を24℃で18時間維持すると、圧力が1350PSIGまで低下した。容器に通気し、61.4gの未精製材料を回収した。10gのこの材料を85℃および20ミリTorrにおいて10時間乾燥させて、8.7gの乾燥ポリマーを得た。
上記で調製したスルホニルフルオリドコポリマーのスルホン酸への変換は、以下の方法で行った。19.6gの混合物と5.6gの炭酸リチウムとを300mLの乾燥メタノール中で6時間還流させた。この混合物を室温まで冷却し、すべての残留固形分を濾過により除去した。メタノールを減圧除去して、ポリマーのリチウム塩15.7gを生じさせた。次に、このポリマーのリチウム塩を水に溶解させ、水に色が残らなくなるまで水で十分に洗浄したプロトン酸交換樹脂であるアンバーリスト(Amberlyst)15を加えた。この混合物を撹拌し、濾過した。濾液に新しいアンバーリスト(Amberlyst)15樹脂を加え、再び濾過した。このステップをさらに2回繰り返した。次に、最終濾液から水を除去した後、固形分を真空オーブン中で乾燥させた。
(机上の実施例2)
この実施例では、有機溶剤でぬらすことができるフッ素化スルホン酸ポリマーの存在下での前駆体モノマーの酸化重合による導電性ポリマー組成物の調製を示す。前駆体モノマーは、3,4−エチレンジオキシセレノチオフェン(EDOS)である。水溶性フッ素化スルホン酸ポリマーは、実施例1で得たE−PSEPVEである。
実施例1で作製した2.09%のE−PSEPVE酸と脱イオン水との水溶液を250mLのエルレンマイヤーフラスコに注ぐ。この混合物をマグネチックスターラーで10分間撹拌する。撹拌しながら反応溶液にEDOSを加える。硫酸第二鉄水和物を脱イオン水に溶解させて、反応混合物に加え、撹拌する。その反応混合物中に過硫酸ナトリウム溶液を滴下する。重合は室温で進行させることができる。
上記反応混合物を、米国ペンシルバニア州ピッツバーグのバイエル(Bayer,Pittsburgh,PA,USA)の架橋ポリスチレンのスルホン酸ナトリウム塩の商標名であるレバチット(Lewatit)(登録商標)S100と;米国ペンシルバニア州ピッツバーグのバイエル(Bayer,Pittsburgh,PA,USA)架橋ポリスチレンの第3級/第4級アミンの遊離塩基/塩化物の商標名のレバチット(Lewatit)(登録商標)MP62 WSとの2つのイオン交換樹脂で処理する。
(机上の実施例3)
この実施例では、ナフィオン(Nafion)(登録商標)の存在下での3,4−エチレンジオキシセレノオフェン(ethylenedioxyselenoophene)(EDOS)の酸化重合を示す。このナフィオン(Nafion)(登録商標)は、EWが1017.7のパーフルロエチレンスルホン酸(perfluroethylenesulfonic acid)の23.3%(w/w)水性コロイド分散体であった。このナフィオン(Nafion)(登録商標)は、温度が約270℃であることを除けば米国特許公報(特許文献12)の実施例1パート2の手順と類似の手順によって製造される。ナフィオン(Nafion)(登録商標)は、有機溶剤でぬらすことができないフッ素化ポリマー酸のコロイド分散体である。
上記ナフィオン(Nafion)(登録商標)に、脱イオン水および37%(w/w)HCl溶液を加える。撹拌しながらこの酸/水混合物に硫酸第二鉄溶液を加える。撹拌を続けながら一定速度で14時間かけて、この酸/水/触媒混合物に過硫酸ナトリウム溶液およびEDOSモノマーを加える。添加終了から約8時間後に反応を停止させる。反応混合物にレバチット(Lewatit)MP62WSイオン交換樹脂およびレバチット・モノプラス(Lewatit Monoplus)S100イオン交換樹脂を加え、さらに5時間撹拌する。最後に濾紙を使用して分散体からイオン交換樹脂を除去する。
接触角を説明する図である。 有機電子デバイスの概略図である。

Claims (14)

  1. SeまたはTeの少なくとも1つのヘテロ原子を有する少なくとも1つの本質的に導電性のポリマーと;
    少なくとも1つのフッ素化酸ポリマーと
    を含むことを特徴とするポリマー組成物。
  2. 前記導電性ポリマーが、式I:
    Figure 2009533530
    (式中:
    1は、それぞれ同じかまたは異なるように独立して選択され、そして、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、アミドスルホネート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択されるか;あるいは両方のR1基が一緒になってアルキレン鎖またはアルケニレン鎖を形成して、3、4、5、6、または7員の芳香環または脂環式環を完成させてもよく、その環は任意選択的に、1つまたは複数の二価の窒素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、または酸素原子を含んでもよく、
    QはSeまたはTeである)
    を有する少なくとも1つのモノマーから製造されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
  3. 前記導電性ポリマーが、式I(a):
    (式中:
    7は、それぞれ同じかまたは異なり、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アルケニル、ヘテロアルケニル、アルコール、アミドスルホネート、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択され、但し、少なくとも1つのR7は水素ではなく、
    mは2または3であり、
    Q=SeまたはTeである)
    を有する少なくとも1つの導電性前駆体モノマーから製造されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
  4. 前記ポリマーが、式V:
    Figure 2009533530
    (式中:
    QはSeまたはTeであり;
    8、R9、R10、およびR11は、それぞれ同じかまたは異なるように独立して選択され、そして、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、アミドスルホネート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択され;
    8とR9、R9とR10、およびR10とR11、のうち少なくとも1つが一緒になってアルケニレン鎖を形成して、5または6員の芳香環を完成させ、その環は、任意選択的に1つまたは複数の二価の窒素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、または酸素原子を含んでもよい)
    を有する少なくとも1つの導電性前駆体モノマーから製造されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
  5. 前記本質的に導電性のポリマーが、式VI:
    Figure 2009533530
    (式中:
    QはSeまたはTeであり;
    Tは、S、NR6、O、SiR6 2、Se、Te、およびPR6から選択され;
    Zは、アルケニレン、アリーレン、およびヘテロアリーレンから選択され;
    6は水素またはアルキルであり;
    12は、それぞれ同じかまたは異なり、そして、水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキチオ(alkythio)、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、ニトリル、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、ベンジル、カルボキシレート、エーテル、エーテルカルボキシレート、アミドスルホネート、エーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびウレタンから選択される)
    を有する前駆体モノマーから誘導されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
  6. 前記水溶性フッ素化酸ポリマーが、カルボン酸基、スルホン酸基、スルホンイミド基、リン酸基、ホスホン酸基、およびそれらの組み合わせから選択される酸性基を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
  7. 前記フッ素化酸ポリマーが、有機溶剤でぬらすことができることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
  8. フッ素化酸ポリマーが、1,1−ジフルオロエチレンと2−(2,2−ジフルオロ−2−(トリフルオロメチル)アリルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸とのコポリマー、エチレンと2−(2−(1,2,2−トリフルオロビニルオキシ)−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸とのコポリマー、およびそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
  9. 前記フッ素化酸ポリマーが、式VII:
    Figure 2009533530
    (式中:
    qは1〜5の整数であり、
    13はOHまたはNHR14であり、
    14は、アルキル、フルオロアルキル、スルホニルアルキル、またはスルホニルフルオロアルキルである)
    および式VIII:
    Figure 2009533530
    から選択される式を有する少なくとも1つのモノマーから誘導されることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
  10. 前記フッ素化酸ポリマーが、フッ素化ポリマー主鎖および
    式X:
    Figure 2009533530
    (式中:
    15は、フッ素化アルキレン基またはフッ素化ヘテロアルキレン基であり;
    16は、フッ素化アルキル基またはフッ素化アリール基であり;
    pは0または1〜4の整数である)
    を有する側鎖を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
  11. 前記フッ素化酸ポリマーが式XI:
    Figure 2009533530
    (式中:
    16は、フッ素化アルキルまたはフッ素化アリール基であり;
    a、b、c、d、およびeはそれぞれ独立して、0または1〜3の整数であり;
    nは少なくとも4である)
    を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
  12. 前記本質的に導電性のポリマーがポリ(3,4−エチレンジオキシセレノフェン)であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
  13. 請求項1に記載のポリマー組成物を含む少なくとも1つの緩衝層を含むことを特徴とする電子デバイス。
  14. 前記本質的に導電性のポリマーがポリ(3,4−エチレンジオキシセレノフェン)であることを特徴とする請求項26に記載のデバイス。
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