JP2009533340A - 細胞移植片のための複数膜の免疫隔離システム - Google Patents
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Abstract
本発明は、細胞移植片を保護し、そしてそれ故、免疫抑制の必要性なくして細胞機能および生存を可能にする免疫隔離カプセル化システムに関する。この免疫隔離システムは、大きな動物モデルで再現可能な機能に対する複数の設計パラメーターの最適化を独立して可能にする、複数構成要素、複数膜のカプセルである。本発明はまた、生物学的材料をカプセル化するための複数膜の組成物に関し、(a)上記生物学的材料と生体適合性であり、そして上記膜内に上記生物学的材料を保持するに十分な機械的強度を所有し、そして宿主の免疫系中の抗体からの免疫保護を提供する内側膜;(b)上記宿主中の化学物質から上記内側膜を補強するに十分な化学的安定性を所有する中央膜;および(c)上記宿主と生体適合性であり、そして上記内側膜および上記中央膜を上記宿主の非特異的な生来の免疫系から遮蔽するに十分な機械的強度を所有する外側膜を備える。
Description
(発明の分野)
本発明は、免疫抑制なくして大きな動物およびヒトにおいて用いられ得る細胞移植片のための複数膜の免疫隔離システムに関する。
本発明は、免疫抑制なくして大きな動物およびヒトにおいて用いられ得る細胞移植片のための複数膜の免疫隔離システムに関する。
(連邦政府資金説明)
本発明は、NASA規約NAG5−12429の下、連邦政府からの資金を用いて一部なされた。従って、連邦政府は、本発明において特定の権利を有している。
本発明は、NASA規約NAG5−12429の下、連邦政府からの資金を用いて一部なされた。従って、連邦政府は、本発明において特定の権利を有している。
(発明の背景)
世界保健機構は、2000年現在で、176百万人の人々が全世界で糖尿病を患っていると推定している。この数は、2030年までに倍以上になると予測されている。インシュリン依存性または1型糖尿病を有する患者においては、自己免疫プロセスが、膵島のインシュリン産生性β細胞を破壊する。ヒトインシュリンの注入は、いくぶん有効ではあるが、正常なグルコース恒常性を正確に回復せず、これは、糖尿病性腎障害、網膜症、神経障害および心臓血管疾患のような重篤な合併症に至り得る。
世界保健機構は、2000年現在で、176百万人の人々が全世界で糖尿病を患っていると推定している。この数は、2030年までに倍以上になると予測されている。インシュリン依存性または1型糖尿病を有する患者においては、自己免疫プロセスが、膵島のインシュリン産生性β細胞を破壊する。ヒトインシュリンの注入は、いくぶん有効ではあるが、正常なグルコース恒常性を正確に回復せず、これは、糖尿病性腎障害、網膜症、神経障害および心臓血管疾患のような重篤な合併症に至り得る。
最近、細胞移植が、糖尿病、パーキンソン病、ハンティングトン病などのような、ホルモンまたはタンパク質欠損により特徴付けられる多くのヒト疾患の処置に対する熱狂を生み出した。しかし、多くの技術的および物流的挑戦は、細胞移植が有効に働くことを妨げた。特に、移植された細胞は、移植レシピエントによる免疫攻撃から保護されなければならない。これは、しばしば、患者を広範な種々の重篤な副作用に曝し得る相当の毒性を有する強力な免疫抑制剤を必要とする。
代替のアプローチは、移植された細胞を半透過性膜内に囲むことである。理論上は、この半透過性膜は、細胞を免疫攻撃から保護し、その一方、細胞機能/生存に重要な分子の流入、および所望の細胞産物の流出の両方を可能にするように設計されている。この免疫隔離アプローチは、2つの主要な可能性:i)免疫抑制薬物およびそれらに付随する副作用なしの細胞移植、およびii)自己移植片(宿主幹細胞由来)、同種移植片(原発性細胞または幹細胞由来)、異種移植片(ブタ細胞またはその他)、または遺伝子操作された細胞のような種々の供給源からの細胞の使用を有している。この技法は、齧歯類のような小動物を処置することで有効であったが、この技法は、より大きな哺乳動物を処置するために用いられるとき、有効でないことが見出された。
特定の免疫隔離システムが、大きな動物モデルで試験されたが、多くのこれらの実験は、自発的糖尿病患者または利用された免疫抑制剤に対して実施された。非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;および非特許文献5を参照のこと。さらに、これら実験の多くは、受容可能な科学的標準まで再現できなかった。実験コントロールおよびこれら実験の一貫性の欠如は、複雑な科学的解釈および制限された適用性を有している。
Sunら、「Normalization of diabetes in spontaneously diabetic cynomolgus monkeys by xenografts of microencapsulated porcine islets without immunosuppressant」J.Clin.Invest.98:1417〜22(1996) Lanzaら、「Transplantation of islets using microencapsulation:studies in diabetic rodents and dogs」J.Mol.Med.77(1):206〜10(1999) Calafiore R、「Transplantation of minimal volume microcapsules in diabetic high mammalians」Ann NY Acad.Sci.875:219〜32(1999) Heringら、「Long term(>100 days)diabetes reversal in immunosuppressed nonhuman primate recipients of porcine islet xenographs」American J.Transplantation、4:160〜61(2004) Soon−Shiongら、「Insulin independence in a Type 1 diabetic patient after encapsulated islet transplantation」Lancet 343:950〜951(1994)
Sunら、「Normalization of diabetes in spontaneously diabetic cynomolgus monkeys by xenografts of microencapsulated porcine islets without immunosuppressant」J.Clin.Invest.98:1417〜22(1996) Lanzaら、「Transplantation of islets using microencapsulation:studies in diabetic rodents and dogs」J.Mol.Med.77(1):206〜10(1999) Calafiore R、「Transplantation of minimal volume microcapsules in diabetic high mammalians」Ann NY Acad.Sci.875:219〜32(1999) Heringら、「Long term(>100 days)diabetes reversal in immunosuppressed nonhuman primate recipients of porcine islet xenographs」American J.Transplantation、4:160〜61(2004) Soon−Shiongら、「Insulin independence in a Type 1 diabetic patient after encapsulated islet transplantation」Lancet 343:950〜951(1994)
明らかに、ホルモン欠損疾患を処置するための生存細胞の免疫保護の期待は、実現されていない。従って、当該技術分野で必要なものは、免疫抑制薬物の使用なくして大きな哺乳動物で用いられ得る再現可能で、かつ有効な細胞療法処置である。本発明は、その必要性に答える。
(発明の簡単な要旨)
本発明は、生物学的材料をカプセル化するための複数膜の組成物に関し、(a)上記生物学的材料と生体適合性であり、そして上記膜内に上記生物学的材料を保持するに十分な機械的強度を所有し、そして宿主の免疫系中の抗体からの免疫保護を提供する内側膜;(b)上記宿主中の化学物質から上記内側膜を補強するに十分な化学的安定性を所有する中央膜;および(c)上記宿主と生体適合性であり、そして上記内側膜および上記中央膜を上記宿主の非特異的な生来の免疫系から遮蔽するに十分な機械的強度を所有する外側膜を備える。上記中央膜はまた、上記内側膜を上記外側膜と結合させる。
本発明は、生物学的材料をカプセル化するための複数膜の組成物に関し、(a)上記生物学的材料と生体適合性であり、そして上記膜内に上記生物学的材料を保持するに十分な機械的強度を所有し、そして宿主の免疫系中の抗体からの免疫保護を提供する内側膜;(b)上記宿主中の化学物質から上記内側膜を補強するに十分な化学的安定性を所有する中央膜;および(c)上記宿主と生体適合性であり、そして上記内側膜および上記中央膜を上記宿主の非特異的な生来の免疫系から遮蔽するに十分な機械的強度を所有する外側膜を備える。上記中央膜はまた、上記内側膜を上記外側膜と結合させる。
本発明はまた、生物学的材料をカプセル化し得る複数膜の組成物に関し、これらは、(a)アルギン酸ナトリウム、硫酸セルロース、ポリ(メチレン−コ−グアニジン)、および塩化カルシウムを含む膜;(b)ポリカチオンを含む膜;および(c)カルボキシル基または硫酸基を有する炭水化物ポリマーを含む膜を含む。上記ポリカチオンは、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、ポリ−L,D−リジン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリ−L−オルニチン、ポリ−D−オルニチン、ポリ−L,D−オルニチン、ポリ−L−アスパラギン酸、ポリ−D−アスパラギン酸、ポリ−L,D−アスパラギン酸、ポリアクリル酸、ポリ−L−グルタミン酸、ポリ−D−グルタミン酸、ポリ−L,D−グルタミン酸、スクシニル化ポリ−L−リジン、スクシニル化ポリ−D−リジン、スクシニル化ポリ−L,D−リジン、キトサン、ポリアクリルアミド、ポリ(ビニルアルコール)またはそれらの組み合わせである。
本発明はまた、糖尿病または関連障害を患う被験体を処置する方法に関し、この方法は、この被験体にインシュリン産生島細胞を含む十分な量の組成物を投与する工程を包含し、ここで、この組成物は、(a)上記生物学的材料と生体適合性であり、そして上記膜内に上記生物学的材料を保持するに十分な機械的強度を所有し、そして宿主の免疫系中の抗体からの免疫保護を提供する内側膜;(b)上記被験体中の化学物質から上記内側膜を補強するに十分な化学的安定性を所有する中央膜;および(c)上記宿主と生体適合性であり、そして上記内側膜および上記中央膜を上記被験体の非特異的な免疫応答系から遮蔽するに十分な機械的強度を所有する外側膜を含む。
本発明はまた、糖尿病または関連障害を患う被験体を処置する方法に関し、この方法は、この被験体にインシュリン産生島細胞を含む十分な量の組成物を投与する工程を包含し、ここで、この組成物は、(a)アルギン酸ナトリウム、硫酸セルロース、ポリ(メチレン−コ−グアニジン)、および塩化カルシウムを含む膜;(b)ポリカチオンを含む膜;および(c)カルボキシル基または硫酸基を有する炭水化物ポリマーを含む膜を含む複数膜のカプセルである。このポリカチオンは、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、ポリ−L,D−リジン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリ−L−オルニチン、ポリ−D−オルニチン、ポリ−L,D−オルニチン、ポリ−L−アスパラギン酸、ポリ−D−アスパラギン酸、ポリ−L,D−アスパラギン酸、ポリアクリル酸、ポリ−L−グルタミン酸、ポリ−D−グルタミン酸、ポリ−L,D−グルタミン酸、スクシニル化ポリ−L−リジン、スクシニル化ポリ−D−リジン、スクシニル化ポリ−L,D−リジン、キトサン、ポリアクリルアミド、ポリ(ビニルアルコール)、またはそれらの組み合わせである。
本発明はまた、糖尿病または関連障害を患う大きな哺乳動物被験体を、免疫抑制を含まない細胞療法処置で処置する方法に関する。この方法は、上記被験体に、少なくとも30日間インシュリンの持続放出を提供するインシュリン産生島細胞を含む細胞療法の処置組成物を投与する工程を包含する。この組成物は、持続放出期間の間に有意な分解を示さない。
本発明はまた、機能する免疫系を有する大きな哺乳動物中に導入されたとき、この免疫系からの免疫攻撃により引き起こされる有意な分解を受けることなく少なくとも30日の間生物活性因子を分泌する、生物学的材料を含むカプセルに関する。
本発明はまた、患者におけるグルコースレベルを少なくとも30日間安定化する方法に関し、この方法は、糖尿病または関連する障害を患う患者にインシュリン産生島細胞を含む組成物の細胞療法処置を投与する工程を包含する。この細胞療法処置は、免疫抑制を含むさらなる処置と組み合わせて投与されない。
(発明の詳細な説明)
細胞療法処置において生物学的材料の有効かつ持続的なカプセル化を可能にする免疫隔離システムが開発された。細胞の産物(ホルモン、タンパク質、神経伝達物質など)の放出により最良に処置される任意の疾患は、免疫隔離された細胞の移植のための候補である。免疫隔離の可能な細胞タイプは、膵島、肝細胞、ニューロン、副甲状腺細胞、および凝固因子を分泌する細胞を含む。細胞療法システムにおいて膵島をカプセル化することを用いるとき、このシステムは、代理の生物−人工膵臓、および糖尿病を患う患者に対する機能的処置を提供する。
細胞療法処置において生物学的材料の有効かつ持続的なカプセル化を可能にする免疫隔離システムが開発された。細胞の産物(ホルモン、タンパク質、神経伝達物質など)の放出により最良に処置される任意の疾患は、免疫隔離された細胞の移植のための候補である。免疫隔離の可能な細胞タイプは、膵島、肝細胞、ニューロン、副甲状腺細胞、および凝固因子を分泌する細胞を含む。細胞療法システムにおいて膵島をカプセル化することを用いるとき、このシステムは、代理の生物−人工膵臓、および糖尿病を患う患者に対する機能的処置を提供する。
本発明は、生物学的材料をカプセル化するための複数膜の組成物に関し、(a)上記生物学的材料と生体適合性であり、そして上記膜内に上記生物学的材料を保持するに十分な機械的強度を所有し、そして宿主の免疫系中の抗体からの免疫保護を提供する内側膜;(b)上記宿主中の化学物質から上記内側膜を補強するに十分な化学的安定性を所有する中央膜;および(c)上記宿主と生体適合性であり、そして上記内側膜および上記中央膜を上記宿主の非特異的な生来の免疫系から遮蔽するに十分な機械的強度を所有する外側膜を備える。上記中央膜はまた、上記内側膜を上記外側膜と結合させる。
上記複数の膜の組成物は、少なくとも3つの膜を含む組成物である。この組成物は、好ましくは、生物学的材料をカプセル化する能力を有するカプセルまたは組成物のいずれかである。しかし、その他のシステムもまた機能し得る。
上記内側膜は、上記生物学的材料と生体適合性であるべきである。すなわち、上記生物学的材料は、この生物学的材料を殺傷するか、またはそうでなければこの生物学的材料に有害であるように、この生物学的材料と相互作用するべきではない。この内側膜はまた、この膜内に上記生物学的材料を保持するに十分な機械的強度を所有し、そして宿主の免疫系中の抗体からの免疫保護を提供する。
上記中央膜は、上記内側膜を上記宿主中の化学物質から補強するに十分な化学的安定性を所有する。この中央膜によって提供される化学的安定性はまた、上記宿主における化学物質の影響に耐える際に、上記内側膜および外側膜の両方を支援する。上記宿主中の共通の化学物質は、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、およびカリウムイオン、ならびに血流中のその他の化学物質を含む。上記中央膜は、これら化学物質に対して化学的に安定であり、これは、上記膜の劣化を遅延させる。これは、上記膜、そして結果として、上記内側膜によって覆われている生物学的材料の寿命を延長する。上記中央膜はまた、上記内側膜を上記外側膜と、好ましくは親和性結合により結合させる。これら膜をこの方法で一緒に結合することは、より堅くかつより粘着性の複数膜の組成物をもたらす架橋効果を提供し、そして膜分離の可能性を排除または低減する。
上記外側膜は、上記宿主と生体適合性であるべきである。上記外側膜は、上記宿主と接触している複数膜の組成物の一部分であるので、それは、宿主がこの組成物を異種物体として取り扱わず、そしてそれを拒絶し、またはそれを破壊することを試みないように十分に生体適合性であるべきである。本文脈で用いられるとき、用語「生体適合性」は、免疫系または異物線維性応答のような、宿主の種々の保護システムの有害な影響を避け、そして有意な時間の期間の間機能的なままである、移植された組成物およびその含有物の能力のことをいう。さらに、「生体適合性」はまた、上記組成物およびその含有物によって引き起こされる特異的な所望されない細胞毒性または全身影響(例えば、所望の免疫隔離機能性を妨害すること)のないことを意味する。
上記外側膜はまた、上記内側膜を上記宿主の非特異的な生来の免疫系から遮蔽するに十分な機械的強度を所有すべきである。好中球、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞などを含む上記生来の免疫系は、活性化されるとき、上記複数膜の組成物またはカプセルを飲み込むことにより攻撃し得る。それはまた、抗体の活性を刺激し得、上記組成物の内側の島を攻撃する。
上記別個の膜におけるこれら特徴の組み合わせは、上記組成物が、単一の膜によっては与えられない方法で連帯して機能することを可能にする。特に、各膜は、この複数膜の組成物が、大きな動物の移植の相反する目的に合致することを可能にする様式にある少なくとも1つの機能を果たす。各膜は、島の健康および機能性を維持しながら、最適物質輸送を可能にするように設計されている。
例えば、物質輸送を改善するために膜のポアサイズを増加することは、カプセル安定性を脅かし得る。同様に、カプセル安定性を改善するためにポリマー濃度を増加することは、物質輸送を低減し得る。これらの相反する目的は、カプセル設計および性能に関する妥協に至り得る。好ましいシステムでは、複数様相の相反する目的に合致するその設計を妥協することが要求される単一膜のシステムはない。各膜は、1つまたは2つの特異的課題のみを果たすように設計されている。ともに、これら複数の膜は、免疫抑制の必要性なくして大きな動物モデルにおける細胞移植の相反する目的の大部分またはすべてに合致する。
上記内側膜の膜厚みは、好ましくは、約5ミクロン〜約100ミクロンの範囲である。より好ましくは、上記膜の厚みは、約10ミクロン〜約60ミクロンの範囲であり、そして最も好ましくは、約20ミクロン〜約40ミクロンの範囲である。一般に、膜が厚くなるほど、より大きな機械的強度が提供される。しかし、膜が厚くなり過ぎると、物質輸送能力は、減退し始める。
上記中央膜は、好ましくは、約5ミクロン未満の厚み、好ましくは1〜3ミクロンの厚みを有する。上記外側膜は、代表的には、約5〜500ミクロンの範囲の厚みを有し、好ましくは約100〜約300ミクロンの範囲であり;しかし、約10〜約30ミクロンの範囲の外側膜厚みもまた好適である。
上記複数膜の組成物は、上記生物学的材料から生物活性因子の放出を可能にするに十分に大きいが、免疫系からの抗体の侵入を防ぐに十分に小さい間隙率を有する。可能であるとき、上記複数膜の組成物に侵入することから防がれるべき、生存細胞を破壊する既知の抗体がある。例えば、約300キロダルトンの分子量を有するIgMは、島含有カプセルに曝されるとき、特に致命的であり得る。これら既知の抗体を考慮して、上記複数膜の組成物の間隙率カットオフ(すなわち、カットオフサイズより大きいポアの数の相当な減少)は、300キロダルトンより少なくあるべきである。さらに、膜は、しばしば、ランダムネットワークシステムとして処方されるので、この間隙率カットオフは、好ましくは、約250キロダルトンより少ない。これは、設計された膜が、300キロダルトンより大きいポアがほとんどないか、またはないことをより良好に確実にする。
一方、上記間隙率カットオフは、約50キロダルトンより大きくあるべきであり、上記生物学的材料が、この複数膜の組成物から自由に放出される能力を有することを確実にする。この間隙率カットオフは、好ましくは、約50キロダルトン〜約250キロダルトンの範囲であり、約50キロダルトンより小さい分子量を有する分子の通過を許容し、その一方、約250キロダルトンより大きい分子量を有する分子の通過を防ぐ。より好ましくは、上記間隙率カットオフは、約80キロダルトン〜約150キロダルトンの範囲である。
本発明の1つの実施形態では、各膜は異なる間隙率を有し、内側膜は約50〜150キロダルトンの範囲の間隙率カットオフを有し;中央膜は約100〜約200キロダルトンの範囲の間隙率カットオフを有し;そして外側膜は約150〜約250キロダルトンの範囲の間隙率カットオフを有する。種々の間隙率の膜を有することは、他の領域の間で、物質輸送および免疫保護を支援する。
上記生物学的材料は、膜によってカプセル化され得る任意の材料であり得る。代表的には、上記生物学的材料は、被験体に導入されたとき、特定の治療結果をこの被験体に提供し得る細胞または細胞の群である。好ましくは、この生物学的材料は、膵島、肝細胞、脈絡膜叢、ニューロン、副甲状腺細胞、および凝固因子を分泌する細胞である。最も好ましくは、上記生物学的材料は、膵島または糖尿病を患う患者を処置し得るその他のインシュリン産生性の島である。
上記生物活性因子は、上記生物学的材料から放出または分泌され得る任意の作用因子である。例えば、膵島は、生物活性因子インシュリンを分泌し得る能力を有し;脈絡膜叢は、脳脊髄液を分泌する能力を有し;ニューロンは、神経系に影響し得るドーパミンのような作用因子を分泌する能力を有し;そして副甲状腺細胞は、被験体におけるカルシウムおよびリンの代謝に影響し得る作用因子を分泌する能力を有する。好ましくは、上記生物活性因子はインシュリンである。
上記宿主は、カプセル化された複数膜の組成物を必要とするか、またはそうでなければそれを受容し得る、任意の被験体を含み得る。この宿主は、齧歯類のような小さな哺乳動物を含み得るが、上記複数膜の組成物は、大きな動物に特に適切である。好ましくは、この宿主はヒトである。
上記複数膜の組成物は、内側膜、中央膜、および外側膜を含むべきであるが、それは1つ以上のさらなる膜を含み得る。さらなる膜は、上記3つの膜システムにより提供される特徴に、より良好またはより多くの増大された特徴を提供するために所望され得る。例えば、これらさらなる膜は、独立に、または連帯して、上記複数膜の組成物に、さらなる免疫保護、機械的強度、化学的安定性、および/または生体適合性を提供する。
本発明はまた、生物学的材料をカプセル化し得る複数膜の組成物に関し、(a)アルギン酸ナトリウム、硫酸セルロース、および複数成分ポリカチオンを含む膜;(b)ポリカチオンを含む膜;および(c)カルボキシル基または硫酸基を有する炭水化物ポリマーを含む膜を含む。
1つの膜は、アルギン酸ナトリウム、硫酸セルロース、および複数成分のポリカチオンを含むべきである。このポリカチオンは、好ましくは、ポリ(メチレン−コ−グアニジン)、および塩化カルシウム、塩化ナトリウム、またはそれらの組み合わせのいずれかを含む。この膜は、その全体が参考として本明細書中に援用される米国特許第5,997,900号中に記載されるカプセル化システムであり得る。
第2の膜は、ポリカチオンを含むべきである。好ましくは、このホリカチオンは、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、ポリ−L,D−リジン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリ−L−オルニチン、ポリ−D−オルニチン、ポリ−L,D−オルニチン、ポリ−L−アスパラギン酸、ポリ−D−アスパラギン酸、ポリ−L,D−アスパラギン酸、ポリアクリル酸、ポリ−L−グルタミン酸、ポリ−D−グルタミン酸、ポリ−L,D−グルタミン酸、スクシニル化ポリ−L−リジン、スクシニル化ポリ−D−リジン、スクシニル化ポリ−L,D−リジン、キトサン、ポリアクリルアミド、ポリ(ビニルアルコール)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、上記ポリカチオンは、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、ポリ−L,D−リジン、ポリ−L−オルニチン、ポリ−D−オルニチン、ポリ−L,D−オルニチン、キトサン、ポリアクリルアミド、ポリ(ビニルアルコール)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。最も好ましくは、上記ポリカチオンは、ポリ−L−リジンである。
上記第2の膜はまた、好ましくは、アルギン酸ナトリウム、硫酸セルロース、およびポリ(メチレン−コ−グアニジン)からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む。より好ましくは、上記第2の膜は、ポリカチオンおよび3つのすべての化合物を含む。最も好ましくは、上記第2の膜は、ポリ−L−リジン、アルギン酸ナトリウム、硫酸セルロース、およびポリ(メチレン−コ−グアニジン)を含む。
上記第3の膜は、カルボキシル基または硫酸基を有する炭水化物ポリマーを含む。この炭水化物ポリマーは、好ましくは、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低級メトキシペクチン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、トラガカントゴム、ペクチン酸ナトリウム、κカラゲーニン、およびιカラゲーニンからなる群から選択される。より好ましくは、この炭水化物ポリマーは、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、およびアルギン酸カルシウムからなる群から選択される。最も好ましくは、上記炭水化物ポリマーは、アルギン酸ナトリウムである。
上記第3の膜はまた、好ましくは、無機金属塩を含む。適切な金属塩は、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化コリン、塩化ストロンチウム、グルコン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸カリウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、およびそれらの組み合わせを含む。好ましくは、上記無機金属塩は、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カルシウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。最も好ましくは、上記無機金属塩は、塩化カルシウムである。
上記複数膜の組成物では、上記第1の膜は、好ましくは、内側膜であり、上記第2の膜は、好ましくは、内側または中央膜であり、そして上記第3の膜は、好ましくは、外側膜である。上記複数膜の組成物はまた、1つ以上のさらなる膜をさらに備え得る。
好ましくは、上記複数膜の組成物は、5つの成分/3つの膜カプセルシステムである。この5つの成分は、アルギン酸ナトリウム(SA)、硫酸セルロース(CS)、ポリ(メチレン−コ−グアニジン)(PMCG)、塩化カルシウム(CaCl2)、およびポリ−L−リジン(PLL)である。上記内側膜は、同じPMCG−CS/CaCl2−アルギン酸膜であり、小動物モデルで首尾良く試験された。この膜は、免疫隔離と物質輸送との間の適正なバランスを提供するように設計されている。上記中央膜は、好ましくは、上記内側膜を補強する薄い織り合わされたPMCG−CS/PLL−アルギン酸膜である。強いイオン結合(例えば、PMCG−CS/PLL−アルギン酸システムに存在するもの)は、化学的安定性の提供を支援し得る。さらに、比較的大きなポアサイズをもつ薄膜を有することは、この膜が、内側膜の免疫隔離と物質輸送との間のバランスを混乱させないようにすることを支援し得る。上記中央膜はまた、この中央膜のPLL濃度を外方に向かって徐々に増加することにより内側膜および外側膜のためのインピーダンス整合を提供し得、この内側膜を外側膜と結合する。CaCl2/アルギン酸の外側膜は、宿主免疫系から2つの内側膜のPMCGおよびPLLを遮蔽する。この膜は、カプセルの生体適合性を改良し、そしてまた、安定性のためのさらなる機械的強度、および免疫保護を提供し得る。
本発明はまた、糖尿病または関連障害を患う被験体を処置する方法に関し、この被験体に、インシュリンを産生する島細胞を含む十分な量の組成物を投与する工程を包含する。この組成物は:(a)上記生物学的材料と生体適合性であり、そして膜内に上記生物学的材料を保持するに十分な機械的強度を所有し、そして被験体の免疫系中の抗体からの免疫保護を提供する内側膜;(b)上記被験体中の化学物質から上記内側膜を補強するに十分な化学的安定性を所有する中央膜;および(c)宿主と生体適合性であり、そして上記内側膜および上記中央膜を上記被験体の非特異的な免疫応答系から遮蔽するに十分な機械的強度を所有する外側膜;を備える複数膜のカプセルである。
糖尿病または関連障害は、制限されないで、以下の障害:1型糖尿病、2型糖尿病、成人発症型糖尿病(MODY)、潜伏性自己免疫成人糖尿病(LADA)、損傷したグルコース耐性(IGT)、損傷した空腹時グルコース(IFG)、妊娠糖尿病、およびメタボリックシンドロームXを含む。好ましくは、上記の方法は、1型糖尿病または2型糖尿病を処置するために用いられる。
上記被験体は、糖尿病または関連障害を患う任意の動物であり得る。好ましくは、上記被験体は、ヒトのような大きな哺乳動物である。
インシュリンを産生する島細胞は、好ましくは、膵臓の島であるが、インシュリンを再生し得るその他の細胞が適している。ブタまたはヒトの膵臓の島が、特に被験体がヒトである場合に好ましい。
本発明はまた、糖尿病または関連障害を患う患者を処置する方法に関し、この患者にインシュリン産生島細胞を含む十分な量の組成物を投与する工程を包含する。この組成物は:(a)アルギン酸ナトリウム、硫酸セルロース、および複数成分のポリカチオンを含む膜;(b)ポリカチオンを含む膜;および(c)カルボキシル基または硫酸基を有する炭水化物ポリマーを含む膜を含む、複数成分のカプセルである。上記ポリカチオンは、膜(b)中にあり、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、ポリ−L,D−リジン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリ−L−オルニチン、ポリ−D−オルニチン、ポリ−L,D−オルニチン、ポリ−L−アスパラギン酸、ポリ−D−アスパラギン酸、ポリ−L,D−アスパラギン酸、ポリアクリル酸、ポリ−L−グルタミン酸、ポリ−D−グルタミン酸、ポリ−L,D−グルタミン酸、スクシニル化ポリ−L−リジン、スクシニル化ポリ−D−リジン、スクシニル化ポリ−L,D−リジン、キトサン、ポリアクリルアミド、ポリ(ビニルアルコール)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。上記複数膜の組成物はまた、上記で論議される3つに加え、1つ以上の膜を含み得る。
本発明はまた、糖尿病または関連障害を患う大きな哺乳動物被験体を、免疫抑制を含まない細胞療法処置で処置する方法に関する。この方法は、上記被験体に、少なくとも30日間インシュリンの持続放出を提供するインシュリン産生島細胞を含む組成物の細胞療法処置を投与する工程を包含する。この組成物は、上記持続放出期間の間に有意な分解を示さない。
当該技術分野で公知であるように、細胞療法は、損傷または機能不全組織および/または細胞を置換または修復するためのヒトまたは動物細胞の移植である。投与される細胞のタイプは、作用しなくなっている患者中の器官または組織とある程度一致する。糖尿病または関連する障害を患う患者に関して、細胞療法処置は、膵臓細胞の機能を複製し得、そしてインシュリンを特定の状態の到来(すなわち、被験体中の高められたグルコースレベル)に際し被験体中に放出し得る、インシュリン産生細胞の移植を含む。
細胞療法処置は、代表的には、異種(動物)細胞(例えば、ヒツジ、ウシ、ブタ、およびサメから)、またはヒト組織からの細胞抽出物のいずれかの導入を含む。これら細胞は、植込み(implantation)、移植(transplantation)、注入または当該技術分野で公知のその他の手段を通じて導入され得る。細胞は、宿主中に直接導入され得るか、または、細胞カプセル化もしくは細胞上の特別の被覆(免疫系を、新たな細胞を宿主に生来のものであると認識させるような設計をすること)を通じて導入される。2つの一般的な細胞カプセル化方法:マイクロカプセル化およびマクロカプセル化が用いられている。代表的には、マイクロカプセル化においては、細胞は、小さな選択透過性の球形コンテナ中に隔離され、一方、マクロカプセル化においては、細胞は、より大きな非球形の膜中に閉じ込められる。種々のポリマー材料が、これらカプセル化方法におけるカプセルの膜を形成するために用いられている。
上記細胞療法処置は、好ましくは、被験体の体腔中へのカプセル化細胞の移植を含む。これは、体腔中に外科的開口部を生成すること、およびこの開口部を通って体腔中にカプセル化細胞を導入することにより実施され得る。これは、カプセル化された細胞を、上記開口部を通して運ぶ漏斗タイプデバイス中に注ぐことのような、妥当と思われる単純な技法により達成され得、それらを体腔中に導入する。皮下注入のような、当該技術分野で公知のその他の技法がまた用いられ得る。
一旦、体腔内にあると、カプセル化された細胞は、次いで、体腔中を自由に移動し得る。代表的には、これらカプセル化された細胞は、最終的には被験体の腹膜のひだに到達する。この腹膜のひだは、カプセル化された細胞にとっては好ましい場所である。なぜなら、これら細胞が腹膜のひだの機能を妨害する危険がほとんどないからである。対照的に、カプセル化された細胞が、肝臓または腎臓のような別の器官の外壁に付着すると、これらカプセル化された細胞が、これら器官の機能を破壊し得、その他の医療懸念に至る可能性がある。
このカプセル化細胞療法処置は、機能する免疫系を抑制するよう設計された免疫抑制作用因子とともに投与されないか、またはそうでなければ被験体の免疫系が細胞療法処置を拒絶することを防ぐ。多くの細胞療法処置は、免疫抑制作用因子の使用を必要とし、移植される生物学的材料が、宿主の免疫系によって攻撃および拒絶されないことを確実にする。免疫抑制作用因子は、宿主が細胞療法処置を受容する機会を増加させるが、免疫抑制薬物が宿主に有害な影響を引き起こし得ることは十分に証明されている。特に、免疫抑制作用因子は、感染に対する被験体の抵抗を低下させ、感染を処置することをより難しくし、そして制御されない出血の機会を増加する。これら薬物はまた、島にも有害であり得る。
本明細書で用いられる場合、用語「持続放出」は、放出が起こるであろう場合、上記生物学的材料からの生物学的作用因子の連続する放出をいう。例えば、上記生物学的材料が膵臓の島であり、そして上記生物学的作用因子がインシュリンである場合、この膵臓の島は、移植後、膵臓の島が、宿主のグルコースレベルが特定の点に到達したことを認識するときはいつもインシュリンを宿主中に連続的に放出する。宿主中のグルコースレベルが維持された後、膵臓の島は、さらなるインシュリンを分泌することを一時的に止める。しかし、宿主中のグルコースレベルが再びインシュリンが必要とされる点に再び到達するとき、この一時的に休止状態の膵臓の島は、再びインシュリンを分泌し始める。このタイプの継続的放出は、持続放出の例である。
上記持続放出期間は、少なくとも30日続くべきである。好ましくは、それは少なくとも60日;より好ましくは少なくとも120日;そして最も好ましくは少なくとも180日続く。上記組成物がより長くインシュリンの持続放出を提供し得るほど、より長く、患者は、さらなる処置を必要とすることなく、この細胞療法処置単独で機能し得る。例えば、この細胞療法処置が少なくとも180日間継続し得る場合、患者は、ほぼ6ヶ月に一度の追加処置を受ける必要があるのみである。これは、糖尿病患者が、自らの障害を連続的にモニターしなければならないこと、および高血糖および低血糖を矯正すること、および注射によりインシュリンを摂取すること、またはそうでなければ炭水化物摂取および肝臓による血流中へのグルコースの規則的かつ連続的な放出を相殺することなしで、毎日の活動の自由度の有意な増加を可能にする。これはまた、インシュリンショックまたはケトアシドーシスの出現を低減すること、および糖尿病関連合併症の発症を予防または遅延することにより、全体としてより大きな血糖上昇制御を可能にする。
細胞を含む組成物が宿主の免疫系によって効率的に攻撃されるとき、この免疫系は上記組成物を損傷または破壊し得、この組成物の顕著な分解を引き起こす。宿主の免疫系が、外来物質(本事例では細胞を含む組成物である)を攻撃し得る2つの主な達成方法がある。第1は、宿主中の白血球細胞が、この細胞を含む組成物を食べ尽くし得るか、または表面に接着し、そして内側の生物学的材料を押しつぶし得るかのいずれかであり得る。第2は、宿主の免疫系が、宿主の免疫系が、組成物のポアを貫通する能力を有する特異的抗体を生成し得、そして内側の生物学的材料を攻撃することである。これら攻撃のいずれかは、上記組成物の特定の形態の分解を引き起こす。しかし、上記組成物が、十分な生体適合性、化学的安定性、および機械的強度を備える場合、この免疫系によっと引き起こされる損傷および上記組成物の分解は最小である。その一方、上記組成物が、十分に生体適合性でかつ化学的に安定でなく、そして十分な機械的強度を所有しない場合、この組成物は攻撃を受け、そして対応する分解がこれらの攻撃によって引き起こされる。有効な攻撃は、上記組成物中の生物学的材料を損傷または破壊し、そしてこの組成物を分解された状態にする。
従来の細胞療法システムは、イヌモデルのような大きな動物中に導入されるとき、安定であるのは1月未満であることが見出された。このイヌモデルで顕著な分解を経験した従来法により生成されたカプセル化細胞の例は、図1に見出され得る。図1は、同一の方法および処理ステップの下で調製され、正常C57/B16マウス(左)および正常雑種イヌの腹腔中に移植された2つの単一膜カプセルを描写する。カプセルは、30日後回収され、そして写真撮影された。齧歯類カプセルは分解は示さないが、イヌカプセルは、宿主の免疫系によるカプセル中の破損および生物学的材料の破壊に起因して顕著な分解を示す。
本発明はまた、機能する免疫系を有する大きな哺乳動物中に導入されるとき、上記免疫系からの免疫攻撃により引き起こされる有意な分解を生ずることなく、少なくとも30日の間生物活性因子を分泌する生物学的材料を含むカプセルに関する。
用語「カプセル」は、カプセル化システム中で用いられる任意のタイプのカプセル化デバイスをいい、マイクロカプセル化およびマクロカプセル化を含む。好ましくは、このカプセルは、マイクロカプセル化技法で用いられるもののような球形のカプセルである。このカプセルは、米国特許第5,260,002号および同第6,001,312号に記載されるもののような、特別の装置およびリアクターを用いて形成され得、これらの特許はその全体が参考として本明細書中に援用される。
本発明はまた、患者におけるグルコースレベルを少なくとも30日間安定化する方法に関し、糖尿病または関連する障害を患う患者に、インシュリン産生島細胞を含む、組成物の細胞療法処置を投与する工程を包含する。この細胞療法処置は、免疫抑制を含むさらなる処置と組み合わせて投与されない。
当該技術分野で周知であるように、糖尿病または関連する障害を患う患者は、適正に機能する膵臓を通じて安定化されない自らの身体中のグルコースレベルを有している。糖尿病患者または不安定グルコースレベルを患う任意のその他のタイプの患者においてグルコースレベルを安定化することは、インシュリン産生島細胞を含む組成物の細胞療法処置を通じて達成され得る。この細胞療法処置は、このグルコースレベルを、少なくとも30日;好ましくは少なくとも60日;より好ましくは、少なくとも120日;そして最も好ましくは、少なくとも180日間安定化し得る。
利用され得るカプセル化のための細胞を調製するいくつかの公知のプロセスが存在する。1つの形態は、細胞が使用されるべき患者から細胞を抽出することと、そしてそれらを、患者中に戻す移植のために必要なレベルまで増加させるまで実験室設定で培養することをを含む。しかし、細胞増加は、膵臓細胞のようなすべてのタイプの細胞について達成されていない。別の手順は、処理されて、そして生理食塩水溶液中に懸濁された、新鮮に取り出された動物組織を用いる。この新鮮細胞の調製物は、次に、患者中に直ちに注入されるか、または注入される前に凍結乾燥されること、もしくは液体窒素中で冷凍されることによって保存されるかのいずれかであり得る。細胞は、使用前に、細菌、ウイルスまたは寄生虫のような病原体について試験され得る。
ブタ膵臓島細胞は、研究実験室または地方の屠殺場から得たブタまたは小ブタの膵臓から収穫され得る。好ましくは、これらブタまたは子ブタは、島の寄付の目的のために繁殖され、そしてモニターされた特定病原体未感染(SPF)動物である。あるいは、初期または完全に発育していない免疫系を含む新生児の島、実験室で成熟される島を含む胎児ブタの島、または実験室で再生され得る細胞を含む幹細胞研究からの胎児細胞がまた、島を供給するために用いられ得る。健常患者から寄付されるヒトの島は、理論的には島の良好な供給源を代表し、そして免疫問題がより少ない傾向にある。しかし、現在、毎年寄付されるヒトの島は十分でなく、実際的処置として、ヒトの島が、島の唯一の供給源として用いられることを事実上妨げている。
以下の実施例は、本発明を例示することが意図される。これら実施例は、請求項によって規定される本発明の範囲を制限するために用いられるべきではない。
カプセル設計:
以下の実施例は、5つの成分/3つの膜のカプセルシステムを利用する。このシステムは、大きな動物におけるカプセル性能を最適化するための系統的トレードオフ研究を実施するための設計柔軟性を提供する。このシステムの5つの成分は、アルギン酸ナトリウム(SA)、硫酸セルロース(CS)、ポリ(メチレン−コ−グアニジン)(PMCG)、塩化カルシウム(CaCl2)、およびポリ−L−リジン(PLL)である。内側膜は、PMCG−CS/CACL2−アルギン酸であり(約100kDaの間隙率、20〜40ミクロンの厚み);中央膜は、織り合わされたPMCG−CS/PLL−アルギン酸薄膜であり(約150kDaの間隙率、1〜3ミクロンの厚み);そして外側膜は、CaCl2/アルギン酸(約250kDaの間隙率、100〜300ミクロンの厚み)である。
以下の実施例は、5つの成分/3つの膜のカプセルシステムを利用する。このシステムは、大きな動物におけるカプセル性能を最適化するための系統的トレードオフ研究を実施するための設計柔軟性を提供する。このシステムの5つの成分は、アルギン酸ナトリウム(SA)、硫酸セルロース(CS)、ポリ(メチレン−コ−グアニジン)(PMCG)、塩化カルシウム(CaCl2)、およびポリ−L−リジン(PLL)である。内側膜は、PMCG−CS/CACL2−アルギン酸であり(約100kDaの間隙率、20〜40ミクロンの厚み);中央膜は、織り合わされたPMCG−CS/PLL−アルギン酸薄膜であり(約150kDaの間隙率、1〜3ミクロンの厚み);そして外側膜は、CaCl2/アルギン酸(約250kDaの間隙率、100〜300ミクロンの厚み)である。
カプセル最適化:
以下の試験が、カプセルを最適化するために実施された。すべての膜は一緒に機能すべきであるので、カプセルが製作された後は、1つの膜が別の膜にどのように影響するのかを予測することは困難である。例えば、中央膜を形成するプロセスは、内側膜の性能を改変し得る。同様に、外側膜を形成するプロセスは、中央膜および内側膜の性能を改変し得る。さらに、個々の各膜の前もった特徴付けは、複数膜のカプセルが移植宿主の内側でどのように機能するかを予測しない。これらの理由のため、カプセル形成は、各膜を成分として備え、以下の表に列挙される複数のパラメーターをもつ全体システムとして取り扱われた。各成分(膜)の所望の機能が列挙され、そしてこのシステム(カプセル)の全体性能が製作後測定された。
以下の試験が、カプセルを最適化するために実施された。すべての膜は一緒に機能すべきであるので、カプセルが製作された後は、1つの膜が別の膜にどのように影響するのかを予測することは困難である。例えば、中央膜を形成するプロセスは、内側膜の性能を改変し得る。同様に、外側膜を形成するプロセスは、中央膜および内側膜の性能を改変し得る。さらに、個々の各膜の前もった特徴付けは、複数膜のカプセルが移植宿主の内側でどのように機能するかを予測しない。これらの理由のため、カプセル形成は、各膜を成分として備え、以下の表に列挙される複数のパラメーターをもつ全体システムとして取り扱われた。各成分(膜)の所望の機能が列挙され、そしてこのシステム(カプセル)の全体性能が製作後測定された。
生体適合性:
カプセルの生体適合性は、移植宿主から、カプセルの免疫発生成分を遮蔽することに依存する。カプセル膜の長期間の生体適合性は、6ヶ月半の間、健常イヌに移植されたカプセル化島の検査が、合併症を示さなかったとき証明された。図2を参照のこと。
カプセルの生体適合性は、移植宿主から、カプセルの免疫発生成分を遮蔽することに依存する。カプセル膜の長期間の生体適合性は、6ヶ月半の間、健常イヌに移植されたカプセル化島の検査が、合併症を示さなかったとき証明された。図2を参照のこと。
図2は、処置の後6ヶ月以上で示される正常イヌ(2/14/01にカプセル化された島を受け、そして8/14/01に屠殺されたイヌ)の腹膜のひだを描写する。屠殺の前、この動物には合併症は観察されず、そして屠殺の後、器官の中またはその上に異常はなかった。この図は、腹膜のひだの最小限の炎症応答および中程度の血管形成を示す。わずかな数のカプセル(1%未満)が、乏しい量のフィブリン、および表面への希な単核細胞接着を含むことが観察された。このイヌから回収された大部分のカプセルの表面は清浄かつ透明であり、そして裸眼でかろうじて見えたが、顕微鏡下では容易に明らかであった。組織反応性の証拠は最小限であった。内臓床中の任意のその他の器官システムの関与は観察されなかった。これらカプセルは腹膜のひだに緩く接着し、そして容易に洗い流され、これらカプセルが係留されたが、この腹膜のひだ中に埋めこまれてはいなかったことを示した。カプセル一体性は優れ、最小のカプセル「破損」が観察された。6ヶ月半後に取り出された回収カプセル化島は、なお生存していた。
物質移動:
織り合わされたパイプモデルを用い、物質移動はR4/Dに比例し、ここでRは平均ポアサイズ、そしてDは膜厚みである。その全体が参考として本明細書中に援用される、Wang T.、「New Technologies for Bioartificial Organs」Artif.Organs、22、1:p.68〜74(1998)を参照のこと。膜ポアサイズは、サイズ排除クロマトグラフィー法を用いて測定され得る。その全体が参考として本明細書中に援用される、Brissovaら、「Control and measurement of permeability for design of microcapsule cell delivery system」J.Biomed.Mat.Res.,39:61〜70(1998)を参照のこと。
織り合わされたパイプモデルを用い、物質移動はR4/Dに比例し、ここでRは平均ポアサイズ、そしてDは膜厚みである。その全体が参考として本明細書中に援用される、Wang T.、「New Technologies for Bioartificial Organs」Artif.Organs、22、1:p.68〜74(1998)を参照のこと。膜ポアサイズは、サイズ排除クロマトグラフィー法を用いて測定され得る。その全体が参考として本明細書中に援用される、Brissovaら、「Control and measurement of permeability for design of microcapsule cell delivery system」J.Biomed.Mat.Res.,39:61〜70(1998)を参照のこと。
図3は、80KDa(直径が約12ナノメーター)のカットオフをもつカプセル膜のポアサイズ分布を示す。このポアサイズは、グルコースおよびインシュリンが出入りするに十分大きく、そして免疫系を、島が存在するカプセルのコアに透過させないほど十分小さい。この図は、カプセル膜のポアサイズ分布の関数として、正規化された保持時間を示す。カプセル膜のポアサイズは、マイクロカプセルで充填されたカラムからのデキストラン溶質の排除を測定するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により決定された。溶質サイズ排除係数(KSEC)の測定値および溶質分子の既知のサイズは、膜ポアサイズ分布およびカプセル透過性が推定されることを可能にする。
免疫保護:
ランダムウォークモデルを用い、免疫保護はD2/R2に比例し、ここで、Dは膜厚みであり、そしてRは平均ポアサイズである。Wang T.,「New Technologies for Bioartificial Organs」Artif.Organs、22,1:p.68〜74(1998)を参照のこと。一般に、免疫保護の目的は、物質輸送の目的に相反する。しかし、膜厚みおよびポアサイズに対するそれらの能力の依存性は十分に異なっているため、両方の目的を同時に満足するためのパラメーターを調節することが可能である。
ランダムウォークモデルを用い、免疫保護はD2/R2に比例し、ここで、Dは膜厚みであり、そしてRは平均ポアサイズである。Wang T.,「New Technologies for Bioartificial Organs」Artif.Organs、22,1:p.68〜74(1998)を参照のこと。一般に、免疫保護の目的は、物質輸送の目的に相反する。しかし、膜厚みおよびポアサイズに対するそれらの能力の依存性は十分に異なっているため、両方の目的を同時に満足するためのパラメーターを調節することが可能である。
機械的強度:
上記カプセルの機械的強度は、カプセルが破裂するまで、このカプセルに対して増加する一軸負荷をかけることにより測定された。カプセルの機械的強度、膜厚みの機能は、カプセルの透過性を改変することなく、移植目的に合致するように、グラムのフラクションから数十グラムの負荷までのいずれかで調節され得る。
上記カプセルの機械的強度は、カプセルが破裂するまで、このカプセルに対して増加する一軸負荷をかけることにより測定された。カプセルの機械的強度、膜厚みの機能は、カプセルの透過性を改変することなく、移植目的に合致するように、グラムのフラクションから数十グラムの負荷までのいずれかで調節され得る。
図4は、2つの異なるポリマー濃度のカプセルの機械的強度を、破裂負荷 対 カプセル膜厚みおよびサイズをプロットすることによって示す。この曲線の傾きは、破裂ストレスを、そしてそれ故、カプセル膜の固有の強度を間接的に表す。このチャートは、カプセルの機械的破裂強度を、それらに一軸負荷をかけることにより測定する。黒丸は、0.6−0.6アルギン酸−CSカプセルを表し、白丸は、0.9−0.9アルギン酸−CSカプセルを表し、そして黒四角は、PLL−アルギン酸システムを表す。このチャートで観察されるように、特定のポリマーは、その他より強いが、一般に、より厚い膜がより強い膜である傾向にあることが観察される。
安定性:
カプセルの安定性は、主として化学的結合および膜厚みの安定性に依存する。イヌのような大きな動物の腹膜内流体は、上記カプセル膜と化学的に反応し得、それ故、機械的強度を弱くする。
カプセルの安定性は、主として化学的結合および膜厚みの安定性に依存する。イヌのような大きな動物の腹膜内流体は、上記カプセル膜と化学的に反応し得、それ故、機械的強度を弱くする。
図5は、異なる化学的組成および膜厚みをもつ2つのカプセルの機械的強度を示す。安定性は、これらカプセルがその機械的強度を、40℃でイヌ血清中でインキュベートされた1/e倍だけ損失する時間の長さを測定することにより実験的に決定された。適正に設計されたカプセルシステムは、大きな動物の腹膜の不利な環境中で数年間継続し得ると考えられる。図5では、カプセルの機械的強度は、カプセルがイヌ血清中40℃でインキュベートされたとき、時間の関数として測定された。黒菱形は、0.6−0.6アルギン酸−CSカプセルを表し、黒四角は、0.9−0.9アルギン酸−CSカプセルを表し、そして白四角は、0.6−0.6アルギン酸−CSカプセルを表す。安定性は、経時的に最も少ない量の変動によって示される。このチャートにおいては、上記0.6−0.6アルギン酸−CSカプセルが最も少ない量の変動を示し、そしてそれ故、試験された3つのうちで最も安定なカプセルであると考えられた。
上記複数膜のカプセル化された島の生体適合性および機能的能力は、膵臓切除されたイヌモデル中で研究された。この動物のサイズ、そしてそれ故、血液容量は、血漿グルコースおよびインシュリン、グルコース耐性の評価ならびに生体適合性および安全性の評価の毎日の評価を可能にする。さらに、このイヌモデルは、ヒトグルコース恒常性および糖尿病の広く利用されるモデルである。イヌにおける全膵臓切除は、内因性インシュリンの完全な不在を生じ、そしてそれ故、インシュリン濃度の評価は、カプセル化された島の機能および応答性に直接評価され得る。
イヌ調製:
平均体重7.6kgを有するいずれかの性の雑種イヌを研究した。動物は、American Association for the Accreditation of Animalの保護ガイドラインに合致する施設に収容した。すべての動物ケア手順は、Vanderbilt’s Institutional Animal Care and Use Committeeによって検査され、そして認可された。カプセル化された島の腹腔内投与の17日〜24日前に、全膵臓切除を以下のように実施した。手術後期間中、動物に、乾燥重量に基づき、標準的な食事の食餌および決まった食餌を与えた(34%タンパク質、14.5%脂肪、46%炭水化物、および5.5%繊維)。外分泌膵臓酵素、リパーゼ(70,000U)、アミラーゼ(210,000U)、およびプロテアーゼ(210,000U)を、食物消化を支援するため、そして外分泌膵臓機能の不在を補償するためにそれらの食事とともに投与された。動物は、供給後12時間で、24時間の間糖尿なくして正常血糖を維持するために、調節された投薬量で毎日インシュリン注入を受けた。このインシュリン要求は、ほぼ0.6〜0.9U/kg Regular Porkおよび1.0〜1.3U/kg NPH Pork、q24時間の範囲であった。
平均体重7.6kgを有するいずれかの性の雑種イヌを研究した。動物は、American Association for the Accreditation of Animalの保護ガイドラインに合致する施設に収容した。すべての動物ケア手順は、Vanderbilt’s Institutional Animal Care and Use Committeeによって検査され、そして認可された。カプセル化された島の腹腔内投与の17日〜24日前に、全膵臓切除を以下のように実施した。手術後期間中、動物に、乾燥重量に基づき、標準的な食事の食餌および決まった食餌を与えた(34%タンパク質、14.5%脂肪、46%炭水化物、および5.5%繊維)。外分泌膵臓酵素、リパーゼ(70,000U)、アミラーゼ(210,000U)、およびプロテアーゼ(210,000U)を、食物消化を支援するため、そして外分泌膵臓機能の不在を補償するためにそれらの食事とともに投与された。動物は、供給後12時間で、24時間の間糖尿なくして正常血糖を維持するために、調節された投薬量で毎日インシュリン注入を受けた。このインシュリン要求は、ほぼ0.6〜0.9U/kg Regular Porkおよび1.0〜1.3U/kg NPH Pork、q24時間の範囲であった。
カプセル化された島の投与: 膵臓切除の後、毎日のインシュリン必要量を安定化させた。動物を12時間断食させ、そしてプロポフォル(4.4mg.kg、IV)およびイソフルラン(2.0% O2吸入による)を用いて全身麻酔下に置いた。1.5cmの背正中側腹切開術を実施し、そして7.0mm I.D.カニューレを腹腔スペース中に挿入する。カニューレの自由端に漏斗を接続する。イヌアルブミンを含む改変されたHanks溶液中に懸濁されたカプセル化島を、室温で腹部スペース中に投与した。カプセルの投与された総充填容量は、150〜200mlであった。腹腔内カニューレは直ちに除去され、そして側腹切開術の切開を閉鎖した。動物を回復させ、そして直ちにそれらの毎日の定量を供給した。この定量は、カプセル化島投与の時間から2時間以内に消費された。食物の投与後6〜8時間に、血液を、血糖上昇状態の評価のために集め、そして毎日の収集は、その後3日間実施した。
毎日の評価および臨床評価:
投与期間直後に、動物に標準的な毎日の定量を供給し、そして血液収集は、グルコースおよびインシュリンの決定のために2〜3日間隔で実施された。血液収集のときに、動物の体重を測定し、そして全身の身体状態を評価した。経口グルコース耐性試験を、カプセル化島投与の2〜4週後に実施した。18時間の絶食の後、18−gaugeの血管カテーテルを、血液の収集のために左または右の頸静脈のいずれかに配置した。デキストロース(0.7gm/kg)を、ベースライン血液サンプルの収集後、経口投与した。血液サンプルは、最初の20分間は2.5分間隔で、そしてその後、3時間の試験の持続時間の間は、5分および10分間隔で収集した。血漿グルコースレベルは、Beckman GlucoseIIアナライザー(Beckman Instruments Palo Alto CA.)を用いるグルコースオキシダーゼ法により決定した。血漿インシュリンは、二重抗体システムを用いるラジオイムノアッセイによって決定された。
投与期間直後に、動物に標準的な毎日の定量を供給し、そして血液収集は、グルコースおよびインシュリンの決定のために2〜3日間隔で実施された。血液収集のときに、動物の体重を測定し、そして全身の身体状態を評価した。経口グルコース耐性試験を、カプセル化島投与の2〜4週後に実施した。18時間の絶食の後、18−gaugeの血管カテーテルを、血液の収集のために左または右の頸静脈のいずれかに配置した。デキストロース(0.7gm/kg)を、ベースライン血液サンプルの収集後、経口投与した。血液サンプルは、最初の20分間は2.5分間隔で、そしてその後、3時間の試験の持続時間の間は、5分および10分間隔で収集した。血漿グルコースレベルは、Beckman GlucoseIIアナライザー(Beckman Instruments Palo Alto CA.)を用いるグルコースオキシダーゼ法により決定した。血漿インシュリンは、二重抗体システムを用いるラジオイムノアッセイによって決定された。
カプセル化島投与の日に、外因性インシュリンは差し控え、そして血液グルコースレベルをモニターした。免疫抑制薬物は、動物に投与しなかった。
膵島の隔離および評価:
膵島の単離のために、雑種のイヌ(体重20〜28kg)を、18時間の絶食の後、全身麻酔下に置いた。正中側腹切開術を実施した。胃十二指腸静脈および動脈、膵臓静脈動脈、ならびに膵十二指腸静脈および動脈を単離し、そして結紮糸を各血管の周りに配置した。主膵臓導管は、十二指腸入口の地点で識別され、そして解剖された。結紮糸をこの導管の周りに置いた。18−gaugeの血管カテーテルをこの導管に挿入し、そして先端2〜3cmを、それが膵臓中の導管分岐の直の主導管構造中に残るように進行させた。このカテーテルを、導管に縫合し、その位置を固定した。回収の直前に、先に配置した血管結紮糸を締め、そして動物を安楽死させた。膵臓は、すべての腹腔および血管付属物から横切開し、そして十二指腸から切り裂いた。一旦切除されると、膵臓は、先に配置した導管カテーテルを経由して氷冷University of Wisconsin(UW−D)灌流溶液で直ちに灌流した。
膵島の単離のために、雑種のイヌ(体重20〜28kg)を、18時間の絶食の後、全身麻酔下に置いた。正中側腹切開術を実施した。胃十二指腸静脈および動脈、膵臓静脈動脈、ならびに膵十二指腸静脈および動脈を単離し、そして結紮糸を各血管の周りに配置した。主膵臓導管は、十二指腸入口の地点で識別され、そして解剖された。結紮糸をこの導管の周りに置いた。18−gaugeの血管カテーテルをこの導管に挿入し、そして先端2〜3cmを、それが膵臓中の導管分岐の直の主導管構造中に残るように進行させた。このカテーテルを、導管に縫合し、その位置を固定した。回収の直前に、先に配置した血管結紮糸を締め、そして動物を安楽死させた。膵臓は、すべての腹腔および血管付属物から横切開し、そして十二指腸から切り裂いた。一旦切除されると、膵臓は、先に配置した導管カテーテルを経由して氷冷University of Wisconsin(UW−D)灌流溶液で直ちに灌流した。
肉眼検査を実施し、全体の膵臓が灌流されていることを確かめた。回収された腺を氷上に移し、そこで、UW−D溶液をUW−D中のコラゲナーゼ(Crescent Chemical)の溶液に置き換えた。これら腺を、次いで、振とう水浴中に置き、そして40℃で約35分間消化した。解離した組織は、400μmメッシュスクリーンを通して濾過し、そして氷冷培地で数回洗浄し、コラゲナーゼを除去し、そして不活性化した。島と外分泌腺組織との間の密度差に基づき、不連続フィコールグラジエントを用いて島と外分泌腺組織とを分離した。密度遠心分離の後、これら島を集め、洗浄し、そして10%FBS(Fetal Bovine Serum)および抗生物質で補充した組織培養M199培地に移した。48〜72時間の培養の間、単離された島は、それらのコンパクトな外観を維持し、そしてカプセル表面は円滑なままであった。
島単離を56のイヌ膵臓について実施した。膵臓あたりの平均の単離結果のプロフィールを以下に示す(50μmより小さい島フラグメントは定量していない)。単離された島の数に加え、単離物の質を、島直径、純度、島生存率、および島機能を決定することにより評価した。平均の島直径は変動するので、単離収率は、平均の島容積と直径が150μmの「標準的」島の容積との比を算出することにより正規化されている。得られる値は、当量島数(EIN)と称され、そして異なる単離について収率比較を可能にする。島純度は、島特異的色素ジチゾンで染色されたサンプルから決定された。この色素は、島を赤く染色するが、外分泌腺組織は染色されないで残す。大部分の外分泌組織は、培養の最初の24時間の間に死滅し、培養の間に純度が約95%までの増加を生じた。
島生存率は、カルセインAM(生存細胞を蛍光緑に染色する)およびエチジウムブロミド(死滅細胞の核を蛍光赤に染色する)の組み合わせで染色したサンプルから決定される。生存率は、1(すべての細胞が死滅)〜4(すべての細胞が生存)のスケールで評価する。5つの代表的な単離物の平均を以下の表に示す。
膵臓あたりの島 435±38K
島直径 106±3.8μm
島当量数 0.48±0.4
純度 87.3±1.2%
生存率 3.5±0.1
カプセル形成および特徴付け:
カプセルは、米国特許第5,260,002号または同第6,002,312号に記載されるような、液滴発生器および化学反応チャンバーを用いて作製され得、この両方の特許は、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。
膵臓あたりの島 435±38K
島直径 106±3.8μm
島当量数 0.48±0.4
純度 87.3±1.2%
生存率 3.5±0.1
カプセル形成および特徴付け:
カプセルは、米国特許第5,260,002号または同第6,002,312号に記載されるような、液滴発生器および化学反応チャンバーを用いて作製され得、この両方の特許は、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。
別の液滴発生器システムは、二重(duo)シリンジシステムであり、そこでは、2つ以上のシリンジが並列に連結され、そして生存細胞を健常に維持するために温度浴中に浸される。シリンジを含む温度浴は、約4℃の温度を有する氷水浴であり得、これは、細胞を休眠状態に維持することを支援する。島は、休眠状態にあるとき、移植プロセスの間に被る損傷がより少ないことが見出された。この二重シリンジシステムは、実験が他方のシリンジで継続中である間一方のシリンジの再充填を可能にすることにより連続的操作を提供する。これらシリンジはまた、島密度を均一を維持する(すなわち、シリンジ中の島のより均一な分布を維持する)ことを支援する、シリンジ内側に位置するゆっくり回転するプロペラを含み得る。
上記化学反応装置は、溶液(例えば、カチオン溶液)で満たされている複数ループチャンバーリアクターを含む。このカチオン溶液浴は、カチオン流れによって供給され、このカチオン流れは、溶液を連続的に補充し、そしてこのチャンバーに導入されるアニオン滴を運び去る。連続的なSA/CS滴は、囲われた膵臓の島とともに、滴発生器から流れ得、そして;島の偏心、滴変形、および衝撃にともなう泡巻き込み問題を低減または最小にするように指定された高さおよび角度でカチオン流れに入る。この滴は、次いで、ポリカチオン流れによって複数ループリアクター中に運ばれる。このリアクターは、複合体形成の時間を制御すること、および特定の重力沈降効果を打ち消すことを支援する。カプセルは、連続操作のための、同じか、または異なるポリカチオン溶液により、第2のループリアクター中に運ばれる。これは、カプセル直径および球形度、ならびに膜厚みおよび均一性のより厳重な制御を容易にする。
カプセルは、約0.5mm〜約3.0mmの範囲の直径、および約0.006mm〜約0.125mmの範囲の厚みで産生され得る。
カプセルの機械的強度は、先に論議されそして図4に描写されるように、カプセルが破裂または平坦なディスクにすっかり圧縮されるまで、このカプセルにかける一軸負荷を増加させることにより測定され得る。カプセルの機械的強度、膜組成物の機能および厚みは、カプセルの透過性を有意に改変することなく、移植目的に合致するようにグラムのフラクションから数十グラムの負荷までのいずれかで調節され得る。
所定範囲の透過度(デキストラン排除測定に基づく、40kDa〜230kDaの範囲の間隙率カットオフ)を有する一連のカプセルが開発され、そして特徴付けられた。カプセル透過性は、デキストラン分子量標準を用いて、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を利用することにより測定され得る。透過性および成分濃度を測定することは、カプセル透過性のより良好な制御および操作を可能にする。カプセル膜の見かけのポアサイズは、マイクロカプセルで充填されたカラムからのデキストラン溶質の排除を測定するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により決定された。中性多糖分子量標準を用いることにより、溶質拡散がその分子寸法によりのみ制御されるときの条件下で膜の性質を評価することが可能である。溶質サイズ排除係数(KSEC)の測定された値、および溶質分子の既知のサイズを基に、膜ポアサイズ分布が推定され得る。
(新たなカプセルのインビボ機能)
刺激に応答するカプセル化島のインシュリン分泌:
島の単離、直径、純度、および生存率試験の後、島を48〜72時間の間培養し、そして複数膜のカプセルでカプセル化した。遊離の島およびカプセル化した島のインシュリン分泌能力を、以下に記載のように細胞灌流システムで決定した。カプセル化した島によるインシュリン分泌は、洗い流し液(perifusate)として0.1%BSAで補充したRPMI1640を用い、1ml/分の流速で細胞灌流装置中で評価された。カプセル化された島は、2mMのグルコースで30分間洗い流し、そしてカラム通過液は棄てた。2mMのグルコースの30分の洗い流し、20mMのグルコース+0.045mMのIBMX(栄養物)の30分の灌流、および2mMのグルコースの60分の灌流の間に、洗い流し液の3mlのサンプルを集めた。サンプルを、イヌインシュリン標準品とともにCoat−a−Countキット(Diagnostic Products Corporation、Los Angeles、CA)を用い、インシュリンについて二連でアッセイした。分泌されたインシュリンの量を、島の数に対して正規化した。
刺激に応答するカプセル化島のインシュリン分泌:
島の単離、直径、純度、および生存率試験の後、島を48〜72時間の間培養し、そして複数膜のカプセルでカプセル化した。遊離の島およびカプセル化した島のインシュリン分泌能力を、以下に記載のように細胞灌流システムで決定した。カプセル化した島によるインシュリン分泌は、洗い流し液(perifusate)として0.1%BSAで補充したRPMI1640を用い、1ml/分の流速で細胞灌流装置中で評価された。カプセル化された島は、2mMのグルコースで30分間洗い流し、そしてカラム通過液は棄てた。2mMのグルコースの30分の洗い流し、20mMのグルコース+0.045mMのIBMX(栄養物)の30分の灌流、および2mMのグルコースの60分の灌流の間に、洗い流し液の3mlのサンプルを集めた。サンプルを、イヌインシュリン標準品とともにCoat−a−Countキット(Diagnostic Products Corporation、Los Angeles、CA)を用い、インシュリンについて二連でアッセイした。分泌されたインシュリンの量を、島の数に対して正規化した。
インシュリン分泌促進薬に対する動的応答によって評価されるように、カプセル化された島によるインシュリン分泌は、インシュリン分泌におけるわずかな遅れを有するカプセル化されていない遊離の島と同様のプロフィールを有した。図6を参照のこと。インシュリン分泌におけるこの遅れ、および刺激物の除去後のインシュリン分泌の休止は、(a)分泌促進薬がカプセルに入り、そして島に到達する時間、および(b)インシュリンがカプセルを出る時間を反映する。
図6は、インシュリンを放出する島の分泌レベルを測定する細胞灌流システムを描写する。遊離の島(カプセル化されていない)、単一膜システム中にカプセル化された島(カプセル化された島)、および複数膜のシステム中にカプセル化された島(層でカプセル化)が独立に評価された。インシュリン分泌のための刺激は、グラフの上にある黒の棒で示される。3分毎に集められた灌流フラクション中のインシュリンは、ラジオイムノアッセイによって定量された。島の数は正規化されず、このチャートの焦点は、グラフの高さよりはむしろ応答時間である。わずか1分の遅れをともなう3つのグラフにおける応答時間の類似性は、複数膜のシステムにカプセル化された島が、移植された動物の内側で正常に機能することを示唆している。
カプセル化された島の機能と安全性:
全膵臓切除イヌモデルを用い、腹腔内に投与されたカプセル化イヌ島(異物移植片)を10の糖尿病動物で評価した。継続的な4日間の180mg/mlより高いグルコースレベルによって決定されるような糖尿病の再発が、移植後ほぼ100日にイヌ1で生じた。先の移植で使用したものと同じ刺激を用いて細胞灌流システムで回収および試験されたカプセル化島を図6に示す。図7を参照のこと。
全膵臓切除イヌモデルを用い、腹腔内に投与されたカプセル化イヌ島(異物移植片)を10の糖尿病動物で評価した。継続的な4日間の180mg/mlより高いグルコースレベルによって決定されるような糖尿病の再発が、移植後ほぼ100日にイヌ1で生じた。先の移植で使用したものと同じ刺激を用いて細胞灌流システムで回収および試験されたカプセル化島を図6に示す。図7を参照のこと。
図7は、カプセル化された島が、高グルコース+IBMXに対する応答によって証明されるように、なお生存しているが、減少したインシュリン分泌能力を有することを示す。これらの結果は、再発した糖尿病は、不適切な島の塊が原因であることを示唆し、そしてさらに、これは、異系移植片反応の結果ではなく、減少した島の塊または機能に起因することを示唆する。
イヌ10の絶食グルコース濃度、体重、およびフラクトサミン測定は、代表的データとして、図8〜10に示される。回収されたカプセルは、清浄かつ無傷であり、移植物の寿命は、カプセル安定性によってはもはや制限されず、むしろ島塊の損失によって制限される。
図8は、イヌ異物移植の血中グルコース分析を描写する。複数膜のシステムにカプセル化された島の異物移植は、全膵臓切除を受けたイヌモデル(イヌ番号10)における糖尿病を覆す効き目を示した。上のパネルは、食事後12〜18時間で集めた静脈血漿中のグルコース濃度を示す。下のパネルは、投与された皮下ブタインシュリンの毎日の投与量を示す。この下のパネルにある棒の上部分は、NPHインシュリンを示し、そして棒の下部分は、通常のインシュリンを示す。18および19日に、処置を中止し、このイヌが糖尿病であったことを確認した。上のパネルで見られるように、グルコースレベルは、インシュリン処置を止めたとき劇的に上昇した。インシュリン処置は20日に再開された。25日の朝にインシュリン処置を再び止めた。25日の午後に、複数膜のシステム中にカプセル化された島が、垂直線によって示されるようにイヌに移植された。上のパネルに示されるように、グルコースレベルは、200日を超えてインシュリン処置の期間の間観察されたグルコースレベルに匹敵するか、それより良好なレベルで安定化されたままであった。下のパネルは、この時間の期間の間にさらなるインシュリン処置が投与されなかったことを確かめている。
図9は、イヌ異物移植の体重分析を描写する。上のパネルおよび下のパネルは、図8から導入された。中央のパネルは、試験期間の間にモニターされた動物体重を示す。このチャートに見られるように、このイヌの体重は、試験期間全体で安定なままであった。
図10は、イヌ異物移植のフラクトサミン分析を描写する。上および下のパネルは、図8から導入された。中央のパネルは、糖尿病被験体において2〜3週に亘る平均化された血中グルコースレベルの指標であるフラクトサミン測定を示す。400のフラクトサミンレベルは、同様の指標である、8.0のA1C測定とほぼ等価である。中央パネルの陰の領域は、受容可能なフラクトサミンレベルを示す。このチャートから観察され得るように、試験された日のフラクトサミンレベルは、受容可能なレベル内に入る。試験されたフラクトサミンレベルは、6.0(110〜120日)〜8.0(195〜200日)の範囲のA1Cレベルと等価である。
再移植:
絶食高血糖症が動物で再発するとき、上記移植手順が、正常血糖を維持するために繰り返され得る。例えば、イヌ7は40,000EIN/kgを受けたが、ほぼ90日の間、いくらかの見かけのグルコース制御を維持し得るに過ぎなかった。このイヌは、次いで、2つの移植物で合計63,000EIN/kgのカプセル化された島の第2の用量を受けた(これら移植物は、島の利用可能性に起因して1月離れて投与された)。正常血糖は、ほぼ110日継続した。これらの結果はイヌ6の100,000EIN/kgでの移植で観察される結果を同様であり、そして絶食グルコース制御を提供することにおける有効性に匹敵する。
絶食高血糖症が動物で再発するとき、上記移植手順が、正常血糖を維持するために繰り返され得る。例えば、イヌ7は40,000EIN/kgを受けたが、ほぼ90日の間、いくらかの見かけのグルコース制御を維持し得るに過ぎなかった。このイヌは、次いで、2つの移植物で合計63,000EIN/kgのカプセル化された島の第2の用量を受けた(これら移植物は、島の利用可能性に起因して1月離れて投与された)。正常血糖は、ほぼ110日継続した。これらの結果はイヌ6の100,000EIN/kgでの移植で観察される結果を同様であり、そして絶食グルコース制御を提供することにおける有効性に匹敵する。
図11は、任意の補充インシュリンまたは免疫抑制なくして、90〜110mg/dlのイヌ7の毎日の絶食血中グルコースを示す。垂直線は島移植の日を示す。上のパネルは、食事後12〜18時間に集められた静脈血漿グルコース濃度を示すデータ点である。下のパネルは、投与された皮下ブタインシュリンの毎日の用量を示し、棒の上部分はNPHインシュリンを示し、そして棒の下部分は通常インシュリンを示す。この図は、第2の移植後直ちに安定化するグルコースレベルによって証明されるように、再移植の有効性を示す。
これらの結果は、さらなる移植が、初期移植よりは良好でないとしても同様に機能することを示唆している。引き続く移植は初期移植より良好に機能すると考えられる。なぜなら、この処置に慣れ、そして血管新生を最小にする被験体の能力のためである。再移植は、改良されたグルコース制御を提供し、そして生体適合性の点から見ると、この動物において良好に耐性を示した。4つの成功した再移植が、1つの被験体で機能した;しかし、被験体で実施し得る移植の数に事実上の制限はない。
静脈内グルコース耐性試験(IVGTT):
静脈内グルコース耐性試験(IVGTT)を、すべての動物に対して実施し、カプセル化された島のインビボ機能を評価した。図12は、イヌ5のIVGTT結果を示す。静脈内デキストロース(300mg/kg)をt=0で、先に複数膜システム中にカプセル化された島の移植を受けたイヌに投与した。静脈サンプルを頚静脈から集め、血漿グルコースおよびインシュリンを決定した。
静脈内グルコース耐性試験(IVGTT)を、すべての動物に対して実施し、カプセル化された島のインビボ機能を評価した。図12は、イヌ5のIVGTT結果を示す。静脈内デキストロース(300mg/kg)をt=0で、先に複数膜システム中にカプセル化された島の移植を受けたイヌに投与した。静脈サンプルを頚静脈から集め、血漿グルコースおよびインシュリンを決定した。
被験体の血中グルコースレベルは約105分で正常に戻り、これは、6のコントロールイヌによって示される50分平均より長いが、過度に長くはない。グルコースのクリアリングの速度(K値)は高かったが、なお通常範囲内であった。すべての移植された動物についての循環性インシュリンの値は、IVGTTの75分でベースを超えて平均40%増加し、そしてこの試験の残りでそのレベルにとどまった。カプセル化された島を有するイヌは、コントロール動物ではしばしば見られる第1相のインシュリン放出を示さなかった。グルコース投与に応答するインシュリンスパイクの欠如(これは、IP移植部位の希釈効果に起因するようである)は、島が、正常血糖を維持するのに十分なインシュリンを分泌する自らの能力を漸次失う原因となり得る。
Claims (58)
- 生物学的材料をカプセル化するための複数膜の組成物であって:
a.該生物学的材料と生体適合性であり、そして該膜内に該生物学的材料を保持するに十分な機械的強度を所有し、そして宿主の免疫系中の抗体からの免疫保護を提供する内側膜;
b.該宿主中の化学物質から該内側膜を補強するに十分な化学的安定性を所有する中央膜;および
c.該宿主と生体適合性であり、そして該内側膜および該中央膜を該宿主の非特異的な生来の免疫系から遮蔽するに十分な機械的強度を所有する外側膜;を備え、
ここで、該中央膜が、該内側膜を該外側膜に結合させる、複数膜の組成物。 - 前記複数膜の組成物が、前記生物学的材料から生物活性因子の放出を可能にするに十分大きいが、免疫系からの抗体の侵入を防ぐに十分小さい間隙率を有する、請求項1に記載の複数膜の組成物。
- 前記間隙率のカットオフが、約50キロダルトン〜約250キロダルトンの範囲である、請求項2に記載の複数膜の組成物。
- 各々の膜が、前記複数膜の組成物が大きな動物の移植の相反する目的に合致することを可能にする様式で少なくとも1つの機能を実施する、請求項1に記載の複数膜の組成物。
- 前記生物学的材料が、膵島、肝細胞、脈絡膜叢、ニューロン、副甲状腺細胞、および凝固因子を分泌する細胞からなる群から選択される、請求項1に記載の複数膜の組成物。
- 前記生物学的材料が、膵島である、請求項5に記載の複数膜の組成物。
- 前記生物活性因子が、インシュリンである、請求項2に記載の複数膜の組成物。
- 前記宿主が、大きい哺乳動物である、請求項1に記載の複数膜の組成物。
- 前記大きい哺乳動物が、ヒトである、請求項8に記載の複数膜の組成物。
- 1つ以上のさらなる膜を含む、請求項1に記載の複数膜の組成物。
- 前記さらなる膜が、前記複数膜の組成物に、免疫保護、機械的強度、化学的安定性、および/または生体適合性を提供する、請求項10に記載の複数膜の組成物。
- 前記内側膜の膜厚みが、約5〜約150ミクロンの範囲である、請求項1に記載の複数膜の組成物。
- 前記膜厚みが、約10〜約60ミクロンの範囲である、請求項12に記載の複数膜の組成物。
- 生物学的材料をカプセル化し得る複数膜の組成物であって:
a.アルギン酸ナトリウム、硫酸セルロース、ポリ(メチレン−コ−グアニジン)、および塩化カルシウムを含む膜;
b.ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、ポリ−L,D−リジン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリ−L−オルニチン、ポリ−D−オルニチン、ポリ−L,D−オルニチン、ポリ−L−アスパラギン酸、ポリ−D−アスパラギン酸、ポリ−L,D−アスパラギン酸、ポリアクリル酸、ポリ−L−グルタミン酸、ポリ−D−グルタミン酸、ポリ−L,D−グルタミン酸、スクシニル化ポリ−L−リジン、スクシニル化ポリ−D−リジン、スクシニル化ポリ−L,D−リジン、キトサン、ポリアクリルアミド、ポリ(ビニルアルコール)およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリカチオンを含む膜;および
c.カルボキシル基または硫酸基を有する炭水化物ポリマーを含む膜、を含む、複数膜の組成物。 - 前記ポリカチオンが、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、ポリ−L,D−リジン、ポリ−L−オルニチン、ポリ−D−オルニチン、ポリ−L,D−オルニチン、キトサン、ポリアクリルアミド、ポリ(ビニルアルコール)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載の複数膜の組成物。
- 前記ポリカチオンが、ポリ−L−リジンである、請求項15に記載の複数膜の組成物。
- 前記炭水化物ポリマーが、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低級メトキシペクチン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、トラガカントゴム、ペクチン酸ナトリウム、κカラゲーニン、およびιカラゲーニンからなる群から選択される、請求項14に記載の複数膜の組成物。
- 前記炭化水素ポリマーが、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、およびアルギン酸カルシウムからなる群から選択される、請求項17に記載の複数膜の組成物。
- 前記膜(b)が、アルギン酸ナトリウム、硫酸セルロース、およびポリ(メチレン−コ−グアニジン)からなる群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含む、請求項14に記載の複数膜の組成物。
- 前記膜(c)が、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化コリン、塩化ストロンチウム、グルコン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸カリウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される無機金属塩をさらに含む、請求項14に記載の複数膜の組成物。
- 前記無機金属塩が、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カルシウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項20に記載の複数膜の組成物。
- 1つ以上のさらなる膜をさらに備える、請求項14に記載の複数膜の組成物。
- 糖尿病または関連障害を患う被験体を処置する方法であって、該患者にインシュリン産生島細胞を含む十分な量の組成物を投与する工程を包含し、ここで、該組成物が、
a.該生物学的材料と生体適合性であり、そして膜内に該生物学的材料を保持するに十分な機械的強度を所有し、そして該被験体の免疫系中の抗体からの免疫保護を提供する内側膜;
b.該被験体中の化学物質から該内側膜を補強するに十分な化学的安定性を所有する中央膜;および
c.宿主と生体適合性であり、そして該内側膜および該中央膜を該被験体の非特異的な生来の免疫系から遮蔽するに十分な機械的強度を所有する外側膜;を備える複数膜のカプセルである、方法。 - 前記糖尿病または関連障害が、1型糖尿病、2型糖尿病、若年の成人発症型糖尿病(MODY)、潜伏性自己免疫成人糖尿病(LADA)、損傷したグルコース耐性(IGT)、損傷した空腹時グルコース(IFG)、妊娠糖尿病、およびメタボリックシンドロームXからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
- 前記被験体が、大きい哺乳動物である、請求項23に記載の方法。
- 前記大きい哺乳動物が、ヒトである、請求項25に記載の方法。
- 前記複数膜のカプセルが、前記インシュリン産生島細胞からのインシュリンの放出を可能にするに十分大きいが、免疫系からの抗体の侵入を防ぐに十分小さい間隙率を有する、請求項23に記載の方法。
- 前記間隙率のカットオフが、約50キロダルトン〜約250キロダルトンの範囲である、請求項27に記載の方法。
- 各々の膜が、前記複数膜の組成物が大きな動物の移植の相反する目的に合致することを可能にするように少なくとも1つの機能を実施する、請求項23に記載の方法。
- 糖尿病または関連障害を患う被験体を処置する方法であって、該被験体にインシュリン産生島細胞を含む十分な量の組成物を投与する工程を包含し、ここで、該組成物が:
a.アルギン酸ナトリウム、硫酸セルロース、ポリ(メチレン−コ−グアニジン)、および塩化カルシウムを含む膜;
b.ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、ポリ−L,D−リジン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリ−L−オルニチン、ポリ−D−オルニチン、ポリ−L,D−オルニチン、ポリ−L−アスパラギン酸、ポリ−D−アスパラギン酸、ポリ−L,D−アスパラギン酸、ポリアクリル酸、ポリ−L−グルタミン酸、ポリ−D−グルタミン酸、ポリ−L,D−グルタミン酸、スクシニル化ポリ−L−リジン、スクシニル化ポリ−D−リジン、スクシニル化ポリ−L,D−リジン、キトサン、ポリアクリルアミド、ポリ(ビニルアルコール)およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリカチオンを含む膜;および
c.カルボキシル基または硫酸基を有する炭水化物ポリマーを含む膜、を含む複数膜のカプセルである、方法。 - 前記ポリカチオンが、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、ポリ−L,D−リジン、ポリ−L−オルニチン、ポリ−D−オルニチン、ポリ−L,D−オルニチン、キトサン、ポリアクリルアミド、ポリ(ビニルアルコール)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
- 前記ポリカチオンが、ポリ−L−リジンである、請求項31に記載の方法。
- 前記炭水化物ポリマーが、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低メトキシペクチン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、トラガカントゴム、ペクチン酸ナトリウム、κカラゲーニン、およびιカラゲーニンからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
- 前記炭化水素ポリマーが、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、およびアルギン酸カルシウムからなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
- 前記膜(b)が、アルギン酸ナトリウム、硫酸セルロース、およびポリ(メチレン−コ−グアニジン)からなる群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含む、請求項30に記載の方法。
- 前記膜(c)が、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化コリン、塩化ストロンチウム、グルコン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸カリウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される無機金属塩をさらに含む、請求項30に記載の方法。
- 前記無機金属塩が、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カルシウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
- 1つ以上のさらなる膜をさらに備える、請求項30に記載の方法。
- 糖尿病または関連障害を患う被験体を、免疫抑制を含まない細胞療法処置で処置する方法であって、該方法は:
該被験体に、少なくとも30日間インシュリンの持続放出を提供するインシュリン産生島細胞を含む組成物の細胞療法処置を投与する工程を包含し、ここで、該組成物が、該持続放出期間の間に有意な分解を示さない、方法。 - 前記持続放出期間が、少なくとも60日続く、請求項39に記載の方法。
- 前記持続放出期間が、少なくとも120日続く、請求項40に記載の方法。
- 前記持続放出期間が、少なくとも180日続く、請求項41に記載の方法。
- 前記組成物が、複数膜の組成物である、請求項39に記載の方法。
- 前記複数膜の組成物が少なくとも3つの膜を含み、該膜の各々が、アルギン酸ナトリウム、硫酸セルロース、ポリ(メチレン−コ−グアニジン)、塩化カルシウム、およびポリ−L−リジンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む、請求項43に記載の方法。
- 機能する免疫系を有する大きな哺乳動物中に導入されたとき、該免疫系からの免疫攻撃により引き起こされる有意な分解を受けることなく少なくとも30日の間生物活性因子を分泌する、生物学的材料を含むカプセル。
- 前記生物学的作用因子が、インシュリンである、請求項45に記載のカプセル。
- 前記大きな哺乳動物が、ヒトである、請求項45に記載のカプセル。
- 前記カプセルが、前記生物活性因子を少なくとも60日分泌する、請求項45に記載のカプセル。
- 前記カプセルが、前記生物活性因子を少なくとも120日分泌する、請求項48に記載のカプセル。
- 前記カプセルが、前記生物活性因子を少なくとも180日分泌する、請求項49に記載のカプセル。
- 前記カプセルが、複数膜のカプセルである、請求項45に記載のカプセル。
- 前記複数膜のカプセルが少なくとも3つの膜を含み、該膜の各々が、アルギン酸ナトリウム、硫酸セルロース、ポリ(メチレン−コ−グアニジン)、塩化カルシウム、およびポリ−L−リジンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む、請求項51に記載のカプセル。
- 患者におけるグルコースレベルを少なくとも30日間安定化する方法であって、糖尿病または関連する障害を患う患者にインシュリン産生島細胞を含む組成物の細胞療法処置を投与する工程を包含し、ここで、該細胞療法処置が、免疫抑制を含むさらなる処置と組み合わせて投与されない、方法。
- 前記グルコースレベルが、少なくとも60日間安定化される、請求項53に記載の方法。
- 前記グルコースレベルが、少なくとも120日間安定化される、請求項54に記載の方法。
- 前記グルコースレベルが、少なくとも180日間安定化される、請求項55に記載の方法。
- 前記組成物が、複数膜の組成物である、請求項53に記載の方法。
- 前記複数膜の組成物が少なくとも3つの膜を含み、該膜の各々が、アルギン酸ナトリウム、硫酸セルロース、ポリ(メチレン−コ−グアニジン)、塩化カルシウム、およびポリ−L−リジンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む、請求項57に記載の方法。
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