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Description
本発明は、クロスヘッド型大型低速ユニフロー式2サイクルディーゼル機関に関し、具体的には、燃料噴射および排気弁作動に関連するエンジン構成部品に関する。
典型的には、クロスヘッド型大型2サイクルディーゼル機関は、船用推進や、発電プラントの原動機として使用される。大きさが非常に大きいことだけが原因ではないが、これらの熱機関の構成は、他のどの熱機関とも異なる。2サイクルの原理と、50°Cで最大700cStの粘度を有する重油の使用(重油は、室温では非流動性)とにより、エンジン業界において独自の部類に属している。
この種類の多くの従来エンジンにおいて、排ガス弁および燃料噴射システムは、エンジンのクランク軸に直接連結される回転カムによって駆動されている。2サイクルエンジンは、シリンダへの吸気を制御するために掃気ポートを使用し、結果的に、吸気タイミングは、クランク角に強固に関連付けられる。
この種類のエンジンの燃料消費、信頼性、および出力の要求は極めて高い。近年では、環境要求事項により、排ガスの排出削減が強く求められている。場合によっては矛盾しているこれらの要求を満たすためには、従来の回転カム駆動による排気弁および燃料噴射装置では得られない、燃料噴射タイミングおよび燃料噴射量に対する柔軟な制御、ならびに排気弁の開放程度および開閉タイミングに対する完全かつ柔軟な制御が可能であることが必要であると考えられている。
クロスヘッド型大型ユニフロー式2サイクルディーゼルエンジンはMAN B&W Diesel(登録商標)のMC−Cエンジンシリーズ形式において知られている。このエンジンには、エンジンの長さ方向に沿って、カム軸ハウジングに延出するカム軸が設けられる。カム軸には、燃料噴射用のカムと、排気弁作動用のカムとが設けられる。
シリンダ毎に1つの燃料カムが、カム軸に設けられる。各燃料カムは、エンジンサイクル毎に噴射される燃料量の調整のために可変容量型であるピストン型の燃料ポンプ(シリンダ毎に1つのピストンポンプ)に作用する。ピストンポンプの出口は、該当するシリンダに関連付けられる噴射器の入口に、高圧導管を介して接続される。レートの調整(例えば、エンジンサイクルの時間中に噴射される燃料の量または圧力に関するプロファイルおよびタイミング)は、カム輪郭および噴射器の特性によってのみ可能であり、そのカム輪郭および噴射器の特性は、エンジン構成後に容易に変更することができない。
シリンダ毎に1つの排気カムがカム軸に設けられる。排気カムは、いわゆる「油圧プッシュロッド」に作用する。例えば、排気弁の開放タイミング、排気弁の閉鎖タイミング、および排気弁開放延長などの排気弁の開放プロファイルは、全てエンジンの建造中に確定し、後になって容易に変更することができない。
外洋航行船で動作する大型2サイクルディーゼルエンジンに適用される排出要件は、IMOという国際組織で決定される。さらに、地元当局は、地域独特の要求を提示することができる。これらの排出要件は着実に拘束性を増してきており、必ずしも完全に予測可能であるとは限らない。許容排出レベルは、岸からの距離により決定することができる。従って、エンジンは、海岸線の動作よりも高い排出レベルで、沖において動作させることが可能になる。
現在と今後の排出レベルを満たすことを可能にするために、電子制御エンジンが、20世紀の80年代および90年代に開発された。
MAN B&W Diesel A/S(登録商標)のMEエンジンシリーズは、電子油圧制御排気弁および電子油圧作動燃料噴射を備えるクロスヘッド型大型2サイクルディーゼルエンジンである。油圧システムは、エンジン潤滑システムからの油で動作する。潤滑油システムは、3バールから4バールの低圧ポンプで動作する。別の高圧型ポンプは、約200バールで潤滑油をコモンレールに供給する。コモンレールからの潤滑油は、油圧弁を介して燃料増圧器に導かれる。この燃料増圧器は、コモンレールにおける200バールの圧力を、燃料経路において所要の最大800バールから1000バールまで引き上げる。燃料経路は、燃料が流動性および適切な粘度を確実に有するように加熱される。コモンレールからの潤滑油は、タイミング弁を介して油圧排気弁アクチュエータに導かれ、排気弁を動作させる。
燃料システムは、高圧燃料(重油)を噴射器に提供する増圧器を駆動する油圧動力システムからの、油圧作動油(このエンジンにおいて潤滑油と同一)を使用する。シリンダ毎に1つの増圧器が提供される。増圧器の高圧側は、所要のレベルである約800バールから1000バールに燃料を加圧する。電子制御油圧比例弁により、噴射燃料のレート調整(Rate Shaping)およびタイミングが可能になる。ゆえに、レート調整およびタイミングの変更は、エンジン構成後であっても非常に容易であり、また、負荷または稼働速度などの変更条件に直接応じて、エンジン動作中であっても適用してもよい。
油圧シリンダ型アクチュエータは、各排気弁に装着され、電子制御バルブを介して高圧油圧供給システムから高圧油圧媒質が設けられる。排気弁は、ガススプリングにより閉鎖方向に付勢される。排気弁の開放運動および排気弁の閉鎖運動のタイミング、ならびに排気弁の開放延長は、電子制御バルブで制御可能である。ゆえに、排気弁のタイミングおよび開放延長の変更は、エンジン構成後であっても非常に容易である。
燃料噴射および排気弁作動の双方は、適切なソフトウェアを備えるプログラム可能な制御装置によって制御される。
ゆえに、電子制御型エンジンは、その設定においてさらなる自由度を有するため、数が多く、また多くの場合矛盾しているエンジンに課される要件を満たすことが容易になる。このようなエンジンのオペレータは、低い建造費用で、特有の高出力、高燃料効率、および高信頼性を要求する。多くの場合、排出要件は、最大燃焼圧および最大燃焼温度、ならびに燃料効率および出力を増加させるその他の側面を制限している。これにより、このようなエンジンの最適動作設定を決定するという課題が、この型のエンジンを開発する技術者に求められる。エンジン設定において自由度が増加し、また、エンジン動作中またはエンジンライフタイム中のこのようなエンジンの設定変更において柔軟性が増加したことによって、カム軸エンジンよりも有意な利点が電子制御エンジンにもたらされる。
しかしながら、電子制御燃料噴射および排気弁作動の設置費用は比較的高く、かつエンジンの大きさとは比較的無関係である。これは、エンジンが大型になるとこれらの構成部品の費用も上がるという、このようなエンジンのその他の構成部品の多くに一般的に当てはまる通常のパターンに従わないことを意味する。実際のところ、これは、ピストン直径が約90cmを越える超大型のこのようなエンジンが、電子制御燃料噴射および排気システムを備えても安価に建造される一方で、ピストン直径が約60cm未満の小型のこのようなエンジンが、カム軸作動モデルとは対照的に、電子燃料噴射および排気弁作動システムを備える場合に非常に費用がかかるということを意味する。
小口径エンジンに関して競争力をもたらす低い建造費用は、市場での成功には最も重要である。従って、出力や燃料消費、信頼性、排出制限における要件を満たすために必要な、運転条件設定における自由度および柔軟性を、従来のカム軸エンジンに匹敵する費用水準で実現しうる、約60cm未満のピストン直径を有する大型2サイクルディーゼルエンジンに対する要望が存在する。
これに関連して、大型2サイクルディーゼルエンジンの電子燃料制御システムに関連する油圧システムに関する費用および複雑性の低減や、信頼性の改善に対する必要性も存在する。
このような背景から、本発明の目的は、上述の要望を実現可能であるクロスヘッド型大型ユニフロー式2サイクルディーゼルエンジンを提供することにある。
この目的は、それぞれ少なくとも1つの排気弁を有する複数のシリンダと、シリンダ毎に1つ以上設けられる燃料噴射装置と、その嵩を圧縮することによりポテンシャルエネルギーを蓄積しうる高圧流体の流体源および/または圧縮によりポテンシャルエネルギーを蓄積しうるアキュムレータと、少なくとも1つの電子制御油圧弁と、を備えるクロスヘッド型大型ユニフロー式2サイクルディーゼルエンジンであって、燃料噴射は蓄積されたポテンシャルエネルギーにより主に駆動され、燃料噴射は少なくとも1つの油圧弁によって制御され、シリンダの各々に関連付けられる少なくとも1つの排気弁の作動のためのカムが設けられる少なくとも1つのカム軸と、各々、カム軸上の対応するカムによって駆動される複数の油圧ピストンポンプと、排気弁毎に設けられる、開放方向に排気弁を移動するための油圧アクチュエータと、排気弁毎に設けられる、油圧ピストンポンプを油圧アクチュエータに接続するための油圧導管と、排気弁毎に設けられる、排気弁を閉鎖方向に付勢させるための弾性部材とを、さらに備えるエンジンを提供することによって、請求項1に従い達成される。
本出願の発明者は、電子制御エンジンの利点は、燃料噴射の側面に偏っていることに気が付いた。電子燃料噴射によって、エンジンの最適動作パラメータの決定に関して相当な柔軟性が提供され、また、現在の排出要件を満たすことを考慮し、ならびにエンジンがそのライフタイムの後期に順守する必要があり得る今後の排出要件に対する柔軟性を考慮して、相当な柔軟性が提供される。排気弁作動システムから油圧を分離することによって、燃料噴射圧力の選択をより自由に行なうことができる。それによって、あらゆる状況における理想的な噴射圧力に関する可能性が改善される。現在利用可能な電子制御排気弁作動システムは、相当量の油圧動力を使用するため、エンジンの総合燃料効率を低下させている。
排気弁がカム軸制御によるものであるため、燃料噴射および弁作動を電子制御により行うエンジンと比較すると、全体の油圧力の必要性は低下する。これにより、油圧力の必要性を、電動ポンプとして業界で標準的に利用可能な、より小型のポンプで賄うことが可能になる。このような電動ポンプは、エンジンのクランク軸からの動力によって駆動される大型の油圧ポンプの設置費用と比較すると、大幅なコスト削減であることは明らかである。
好ましくは、高圧流体は、燃料とは異なる媒体であり、且つ燃料とは分けられている。この場合、高圧流体および燃料は、シリンダ毎にそれぞれ少なくとも1つ設けられるピストン装置によって分離され、高圧流体は燃料噴射中にピストン装置を移動させ、次にピストン装置が、該当するシリンダ内の燃焼室に燃料を移動させる。
前記ピストン装置は、増圧器であることが可能であり、また、ピストン装置は、高圧油圧作動油に対向する大きな有効面積と、燃料に対向する小さい有効面積とを有するピストンを備えることが好ましい。これにより、噴射圧力よりも大幅に低い圧力で動作する油圧媒体の使用が可能になる。
好ましくは、所定量の高圧流体が、エンジンの長さ方向に沿って延在する供給導管に収容される。供給導管は、エンジンの長さ方向に沿って分布する複数の圧縮室を備え、相当量のポテンシャルエネルギーが油圧作動油自体の圧縮により蓄積可能になるように、圧縮室が高圧油圧作動油のための十分な容積を備える。この特徴により、膜型アキュムレータの使用は回避可能になるため、膜型アキュムレータが不具合に陥る傾向にあることから、これが利点となる。
好ましくは、1対の隣接するシリンダに高圧油圧作動油を供給するために1つの圧縮室が設けられる。
前記エンジンは、カム軸および供給導管が収容されるカム軸ハウジングをさらに備える。従って、供給導管は、損傷から遮へいされる適所に収納され、また、カム軸ハウジングは、高圧流体で充填された供給導管が破裂する危険性から、供給導管付近の人々を保護する。
好ましくは、圧縮室は、カム軸ハウジング内部に少なくとも部分的に配置される。従って、圧縮室によって、エンジンが整頓される。
圧縮室は、カム軸ハウジングと、1つの壁の少なくとも一部を共有し、エンジンの建造用材料の量を削減させるようにしてもよい。
好ましくは、圧縮室は、金属の固体ブロックに凹部を一致させることによって形成され、圧縮室が、そのライフタイム中に露出され変動高圧に抵抗するようにする。
高圧流体の流体源は、1つ以上の電動高圧ポンプであってもよい。燃料システムの別々の始動ポンプの必要性が無くなるため、電動高圧ポンプの使用によりエンジンを開始し易くなる。
好ましくは、1つの油圧弁が、2つ以上のエンジンシリンダに対する燃料噴射を制御する。従って、エンジンの建造に必要とされる電子制御油圧弁の数は削減される。所要の制御容量の削減は、特に、サイズに依存しない費用に敏感である、より小型のエンジンに該当する。
好適な実施形態によると、高圧油圧作動油は燃料である。この実施形態において、所定量の高圧油圧作動油がコモンレールに収容されることが好ましい。
噴射の制御に使用される油圧弁は、比例弁であることが好ましい。油圧弁は、1つ以上のコンピュータによって制御される。1つ以上のコンピュータは、燃料噴射のタイミングおよび/またはレート調整を、エンジンの動作状態に適合させるように構成される。この特徴により、出力、信頼性、反応性、および排出に関するエンジン性能が容易に最適化される。
1つ以上のコンピュータは、エンジン負荷が減少している場合に、燃料噴射のタイミングを早めるように構成される。従って、最大燃料圧は、低負荷状態中に高レベルに保持可能である。
好ましくは、燃料噴射のレートは、所望の噴射プロファイルを得るために、燃料噴射中に調節可能である。この特徴により、エンジン設定の自由度が増加し、出力、信頼性、反応性、および排出に関するエンジン性能が容易に最適化される。
エンジンは、1つ以上のコンピュータによって制御もされるシリンダ潤滑システムをさらに備えてもよい。この場合、高圧油圧作動油は、シリンダ潤滑システムにも動力供給してもよい。電子制御シリンダ潤滑システムにより、使用燃料の質の変化に迅速に適合することが可能になる。それによって、エンジンが高品質燃料(例えば、低硫黄含量の燃料)で動作している場合に、燃料消費の次に大きい変動動作費用をもたらすシリンダ油の相当量を、節約することが可能になる。
好ましくは、排気弁が、カム軸上の対応するカムによって規定される戻り工程タイミングよりも先に、その戻り工程を開始できるようにするべく、油圧ピストンポンプを弁アクチュエータに接続する高圧導管は、電子制御弁手段によって減圧可能である。従って、排気弁作動において多少の柔軟性が得られ、エンジン動作設定における自由度が増加する。
好ましくは、カム軸上の対応するカムによって規定される戻り工程タイミングより、その戻り工程を遅延させるべく、油圧ピストンポンプを弁アクチュエータに接続する高圧導管は、電子弁手段によって選択的に遮断可能である。従って、排気弁作動において多少の柔軟性が得られ、エンジン動作設定における自由度が増加する。1つ以上のコンピュータは、エンジンの動作状況に関連して、排気弁の閉鎖のタイミングの前倒しまたは遅延を制御するように構成されてもよい。
カム軸には、クランク軸の角度位置に対してその角度位置を調整するための機構が設けられることが可能であり、前記機構は、排気弁の開閉のタイミングを変化させるために、追加のコンピュータのうちの1つによって制御されることが好ましい。従って、排気弁作動において多少の柔軟性が得られ、エンジン動作設定における自由度が増加する。
本発明のさらなる目的は、クロスヘッド型大型ユニフロー式2サイクルディーゼルエンジンを提供することにある。それぞれ少なくとも1つの排気弁を有する複数のシリンダと、排気弁を作動するためのカム軸を内部に配するカム軸ハウジングと、エンジンの長さ方向に沿って分布する流体駆動エンジン構成部品に、供給導管を介して高圧流体を供給する高圧油圧システムと、を備えるクロスヘッド型大型ユニフロー式2サイクルディーゼルエンジンであって、供給導管は、カム軸ハウジング内に配置される、エンジンを提供することによって、請求項25に従い達成される。
供給導管をカム軸ハウジング内部に配置することで、カム軸ハウジングの壁によって高圧供給導管の破裂の危険性からエンジン担当者を保護することから、2重壁の供給導管の必要性が無くなる。
供給導管は、高圧流体を電子燃料噴射システムに供給するために使用可能である。
また、供給導管は、高圧流体を電子シリンダ潤滑システムに供給するために使用されてもよい。
本発明のさらに別の目的は、信頼性およびロバスト性が改善された電子燃料噴射システムを備えるクロスヘッド型大型ユニフロー式2サイクルディーゼルエンジンを提供することにある。本発明は、シリンダ毎に少なくとも1つの排気弁を有する複数のシリンダと、シリンダ毎の1つ以上の燃料噴射装置と、高圧流体の流体源と、ポテンシャルエネルギーが圧縮により蓄積される所定量の高圧流体と、少なくとも1つの電子制御油圧弁と、を備えるクロスヘッド型大型ユニフロー式2サイクルディーゼルエンジンであって、前記所定量は、シリンダに隣接してエンジンに沿って延在する供給導管に収容され、供給導管は、前記所定量に保存可能であるポテンシャルエネルギーの量を増加させるための十分な容積を有する複数の圧縮室を備え、前記燃料噴射は、前記所定量に蓄積されるエネルギーによって主に駆動され、前記燃料噴射は、前記少なくとも1つの油圧弁によって制御される、エンジンを提供することによって、請求項28に従い達成される。
前記圧縮室は、油圧作動油にポテンシャルエネルギーを保存するために、十分な容積を有し、全燃料噴射工程中に、必要な油圧作動油の最大流量が利用可能であるようにしている。供給導管自体の中の流体の体積の大きさは、この目的には十分ではない。拡大された体積で圧縮室を使用することによって、ポテンシャルエネルギーに蓄積するガス状の媒体を有する膜型アキュムレータの使用は、回避可能になる。
好ましくは、1つの圧縮室は、一対の隣接するシリンダに高圧油圧作動油を供給するために設けられる。従って、圧縮室の数は、最小化可能であるため、設置費用が削減される。
圧縮室は、金属の固体ブロックの、好ましくは円筒状の凹部である凹部に一致させることによって形成可能である。
本発明に従うクロスヘッド型大型ユニフロー式2サイクルディーゼルエンジンに関するさらなる目的、特徴、利点、および特性は、詳細な説明より明らかになるだろう。
本明細書の以下の詳細な説明部分において、図面に示される例示的実施形態を参照して、本発明についてより詳細に説明する。
図1および2は、正面断面図における本発明の好適な実施形態に従うエンジン1と、エンジンの側面から見た1つのシリンダとを示す。エンジン1は、クロスヘッド型のユニフロー式低速2サイクルディーゼルエンジンであり、船舶の推進システムまたは発電プラントの原動機になりうる。典型的には、このようなエンジンは、3本から最大14本のシリンダを一列に有する。エンジン1は、クランク軸3の主軸受を有する台板2から組立てられる。
クランク軸3は半組立型である。半組立型は、焼嵌めによって主ジャーナル軸に連結される鋳鋼スローまたは鍛鋼スローから製作される。
台板2は、一つの部分として製作可能であり、あるいは製造施設に応じた適切なサイズの部分に分割可能である。台板は、高く溶接された長手方向の桁と、鋳鋼軸受支持を有する溶接された横桁とから製作される。あるいは、台板は、鋳物設計であってもよい。鋳物設計において台板と一体型の油受けは、強制潤滑油および冷却油システムからの戻り油を回収する。
連結棒8は、鋳鋼製または鍛鋼製であり、軸受キャップ(クロスヘッド軸受およびクランクピン軸受用)を備える。クロスヘッドおよびクランクピン軸受キャップは、スタッドおよびナットによって連結棒8に固定される。このスタッドおよびナットは、油圧ジャッキにより締め付けられる。クロスヘッド軸受22は、軸受メタルに裏打ちされる1組の薄肉鉄シェルを含む。クランクピン軸受には、軸受メタルに裏打ちされる薄肉鉄シェルが設けられる。潤滑油は、クロスヘッド22および連結棒8におけるダクト(図面では見えない)を通って供給される。
主軸受は、軸受メタルに裏打ちされる1組の薄肉鉄シェルを含む。特別な工具およびクランク軸を上昇させるための油圧工具によって、底部シェルは、内外に回転可能である。シェルは、軸受キャップ(図示せず)によって適所に維持される。
台板の上に溶接設計のA型フレームボックス4が装着される。フレームボックスは、鋳物設計または溶接設計であることが可能である。排気側のフレームボックスには、シリンダ毎に開放弁が設けられており、一方、カムシャフト側のフレームボックスには、シリンダ毎に大型のヒンジ式ドアが設けられている。クロスヘッドガイドは、フレームボックスと一体型である。
シリンダフレーム5は、フレームボックス4の上部に搭載される。控えボルト(図示せず)は、台板2をシリンダフレーム5に連結し、また、その構造を一体化して維持する。控えボルトは、油圧ジャッキで締め付けられる。
シリンダフレーム5は、カム軸ハウジング25と共に1つ又は複数の部品として鋳造されるか、あるいは溶接により製造される。カム軸ハウジング25は、そこに溶接/ボルト締結されるか、あるいは図示されるように、シリンダフレームと一体型である。
シリンダフレーム5には、掃気空間の洗浄用ならびにカム軸側の掃気ポートおよびピストンリングの点検用のアクセスカバーが設けられている。シリンダフレームは、シリンダライナー6と共に掃気空間を形成する。掃気受け9は、その開放側でシリンダフレーム5にボルト締結される。シリンダフレームの底部に、ピストン棒のパッキン箱(stuffing box)があり、これには、掃気用の封止リングと、掃気空間に油が入らないようにするオイルリングとが設けられる。
ピストン13は、ピストンクラウンおよびピストンスカートを含む。ピストンクラウンは耐熱鋼製であり、4つのリング溝を有し、この溝部の上面および下面には硬質クロムがめっきされている。
ピストン棒14は、4つのネジでクロスヘッド22に連結される。ピストン棒14は、中心穴(図面では見えない)を有し、冷却油管と連結してピストン13の冷却油用の入口および出口を形成する。
クロスヘッド22は、鍛鋼製であり、また、白色合金を含む鋳鋼滑り金を稼働面に備える。油入口用伸縮式管(図では見えない)と、油出口用管は、滑り金の上に装着される。
シリンダライナー6は、ユニフロー型であり、シリンダフレーム5に担持される。シリンダライナー6は、合金鋳鉄製であり、低位置のフランジによってシリンダフレーム5に懸架される。ライナーの最上部は、鋳鉄製冷却ジャケットによって囲まれる。シリンダライナー6は、シリンダ潤滑用に排気ポート7およびドリル穴(図示せず)を有する。
カム軸28は、カム軸ハウジング25において白色合金に裏打ちされる軸受シェルに組み込まれる。カム軸28は、軸上に焼き嵌めされる排気カム、指示カム、推力円板、および鎖車と一体化している。排気カムは、硬化ローラーレースを有する鋼鉄から製作される。それらは、油圧式に調整および分解可能である。
シリンダ6はユニフロー式であり、エアボックス5'に位置付けられる掃気ポート7を有する。この排気ポートには、掃気受け9(図1)から、ターボ過給気10(図1)で加圧された掃気が供給される。
ターボ過給機10への吸気は、ターボ過給機の吸気消音器(図示せず)を介してエンジン室から直接発生する。ターボ過給機10から、給気管(図示せず)、空気冷却器(図示せず)、および掃気受け9を介して、シリンダライナー6の掃気ポート7に空気が導かれる。
エンジンには1つ以上のターボ過給機が取り付けられる。このターボ過給機は、4〜9本のシリンダを有するエンジンの場合は後部(aft end)に、10本以上のシリンダ型エンジンの場合は排気側に配置される。
エンジンには、電動式掃気ブロア(図示せず)が設けられる。ブロアの吸引側は、空気冷却器の次の掃気空間に接続される。空気冷却器と掃気受けの間に逆止め弁(図示せず)が取り付けられ、この逆止め弁は、補助ブロアが空気を供給する際に自動的に閉鎖する。補助ブロアは、低中負荷状態でターボ過給器の圧縮機を補助する。
図3に詳細に示される排気弁11は、シリンダカバー12のシリンダ上部の中心に装着される。膨張行程の終了時に、エンジンのピストン13が掃気ポート7を越えて下降する前に、排気弁11は開放し、それによって、ピストン13上の燃焼室15内の燃焼ガスは、排気受け17に開放している排気路16を通って流出し、燃焼室15内の圧力は解放される。排気弁11は、ピストン13の上方運動中に再び閉鎖する。排気弁11は、空気圧式バネ20によって上方に駆動される。
排気弁11はカム軸28によって開放される。このカム軸は、シリンダフレーム5に隣接してエンジンの長さ方向に沿って延在するカム軸ハウジング25内に配置される。また、燃料噴射システム(後により詳しく説明する)に関連付けられる油圧システムの高圧供給導管30も、カム軸ハウジング25に配置される。供給導管30は、実質的にエンジンの全長に亘って延在する。供給導管30がカム軸ハウジング内に配置されるため、供給導管30に2重壁を使用する必要はないが、カム軸ハウジング内に配置されない場合は、高度に加圧された供給導管30が破裂する際にエンジンのオペレータを保護するために、2重壁が必要になる。
図3および4は、シリンダライナー6、シリンダカバー12、および排気弁ハウジングの上部を示す。シリンダカバー12は、一体型で製作される鍛鋼製であり、水を冷却するための穴を有する。シリンダカバー12は、排気弁11のための中心穴と、2つまたは3つの燃料噴射装置23、安全弁(図示せず)、始動弁(図示せず)、および指圧器弁(図示せず)のための穴とを有する。各シリンダカバー12には、2つまたは3つの燃料噴射装置23、1つの始動弁、1つの安全弁、1つの指圧器弁が装備される。燃料噴射装置23の開放は、燃料増圧器(後により詳しく説明する)によって生成される高圧燃料油によって制御され、燃料噴射装置23は、バネによって閉鎖される。自動スライド穴(図示せず)によって、燃料噴射装置を介する燃料油の循環、および燃料噴射装置23を燃料増圧器に連結する高圧管を介する燃料油の循環が可能になる。また、自動スライド穴によって、エンジン1の停止時に噴射器23のスピンドルが動かない場合に、燃焼室15に燃料油が溢れないようにする。スライド穴およびその他の管からの油は、クローズドシステムにおいてに導かれる。
排気弁ハウジングは鋳鉄製であり、水を冷却するように配列される。ハウジングには、鋼鉄製の底部部品が設けられ、肉盛金属が座部に溶接されている。底部部品は、水によって冷却される。弁スピンドル自体は、耐熱鋼製であり、肉盛金属が座部に溶接されている。排気弁ハウジングには、スピンドルガイドが設けられる。排気弁ハウジングは、控えボルトおよびナットによってシリンダカバー12に締結される。油圧排気弁アクチュエータ21は、排気弁ハウジングの上部に装着される。加圧されると、排気弁は、油圧アクチュエータ21によって下方向(開放方向)に付勢される。油圧アクチュエータ21は、シリンダ内にピストンを備え、そのシリンダ内のピストン上に圧力室を備える。また、排気弁ハウジングは、排気弁スピンドル11を上方に(閉鎖方向)に付勢する空気バネ20も備える。空気バネ20は、バネピストンを備え、バネ室は、排気弁ハウジングのシリンダにおけるバネピストンの下に配置される。
各排気弁の油圧排気弁アクチュエータ21は、圧力管35を介してピストンポンプ37(図6)に接続される。この実施形態において、シリンダ毎に1つのピストンポンプ37および1つの排気弁11が存在するが、シリンダ毎に複数のピストンポンプまたは複数の排気弁が存在してもよい(図示せず)。
図7に示されように、ローラー案内ハウジング46上にピストンポンプ37が装着される。ローラー42はカム軸28のそれぞれのカム29に追従する。従って、ピストンポンプ37はカム軸28によって作動される。
図5は、エンジンの斜視図であり、いくつかの構成部品が説明の目的のために除外されている。カム軸28は、カム軸28をクランク軸3に連結するチェーン駆動26によって駆動される。チェーン駆動26には、チェーン締め(図示せず)および案内棒(図示せず)が設けられ、長いチェーン長を支持する。この実施形態の変形例によると、チェーン駆動は、エンジンの高圧油圧のための油圧ポンプ(図示せず)に動力供給する。また、チェーンは、2次釣り合い重りを駆動する役割を果たす。チェーン駆動の代替として、カム軸は、ギアと伝動して駆動可能である(図示せず)。
図6は、図5の一部分を示し、カム軸ハウジング25およびシリンダ6をより詳細に示す。この図面において、導管31が、供給導管30から分岐することが分かる。導管31は、油圧制御弁41を有する分配器ブロック40を介して、供給導管30を増圧器39に接続する。分配器ブロック40は、カム軸ハウジング25の頂板部に装着される。
また、カム軸28のカム29によって作動されるピストンポンプ37も、カム軸ハウジング25の頂板部25'に配置される。ピストンポンプ37は、圧力管35を介して油圧排気弁アクチュエータ21に接続される。
各シリンダ6には、2つまたは3つの噴射器23が設けられ、それぞれが導管(図6において図示されないが、図8の参照数字51で示される)に連結されて、増圧器39の1つまたは複数のポートにつながる。
各分配器ブロック40は、2つの比例制御弁41を担持する。この比例制御弁41は、分配器ブロック40の上部のポートと、カム軸ハウジング25における戻し導管(図8の65)および供給導管30との連結を制御する。増圧器39は、各分配器ブロック40の上部に装着され、分配器ブロック40の上部のポートに連通する。従って、分配器ブロック40は、油圧作動燃料増圧器39の機械的支持の役割を果たす。
図7A、7C、および7Cは、異なる断面図における圧縮室ハウジング68を斜視図で詳細に示す。圧縮室67は、油圧作動油にポテンシャルエネルギーを保存するために十分な容積を有し、燃料噴射の全工程中において、要求される油圧作動油の最大流量を受け入れられるようになっている。
この実施形態において、2つの圧縮室67を備える1つの圧縮室ハウジング68が、隣接する1対のシリンダ6毎に提供される、しかしながら、シリンダ毎の圧縮室の数は増減してもよい。
圧縮室67には、局所的に分岐する導管31を介して供給導管30から高圧油圧作動油が供給される。導管31と導管30との接続は、カム軸ハウジング25の底部に装着される連結ブロック30'により実現される。
圧縮室ハウジング68は、カム軸ハウジング25の頂板部に一体化された部分として形成される。カム軸ハウジング25の頂板部は、長手方向に複数部分に分割される。このような種類の部分の1つは、内部に形成される2つの円筒状の圧縮室67を備える金属スラブであり、また、このスラブは、圧縮室ハウジング68も形成する。また、この頂板部は、上部に増圧器39が配置される分配器ブロック40も担持する。円筒状の圧縮室67の長手方向軸は、カム軸28の長手方向軸に平行に配置される。圧縮室67は、金属の固体スラブにおける2つの平行な穴を一致させることによって製造される。圧縮室67は、圧縮室ハウジング68に締結される円形の固定板69によって密閉される。圧縮室ハウジング68を通る上向きの穴(図示せず)は、分配器ブロック40の圧縮室に接続する。分配器ブロックが圧縮室ハウジング68の上部に直接装着されているため、高圧油圧作動油が圧縮室67から分配器ブロック40まで移動しなければならない経路が非常に短くなる。
その他の種類のカム軸ハウジング25頂板部(図7の断面図に示される)は、ピストンポンプ37を担持する。
2つの種類のカム軸ハウジング頂板部は、カム軸ハウジング25の長さ方向に沿って交互に配列される。2つの種類の頂板部間の移行部に長手方向の重複部分が存在し、頂板部は、この重複部分で締結される。
図8は、燃料噴射システムを概略的に示す。燃料は燃料供給設備73から増圧器39に供給される。燃料供給設備73は、図面において詳細に示されていない。燃料供給設備73は、ディーゼル油および重油の両方が使用可能であるように構成される。燃料は給油タンクから電動供給ポンプに導かれ、この電動供給ポンプによって、燃料循環システムの低圧部分で約4バールの圧力を維持することができる。従って、適用される温度範囲において、通気ボックス(venting box)における燃料のガス化が回避される。燃料油は、燃料システムの低圧部分から電動循環ポンプに導かれる。この電動循環ポンプは、エンジン1の入口の直前に位置するヒーターおよび全流量フィルタを介して燃料油をポンプで送り込み、ここで燃料はそれぞれの増圧器39に分配される。
燃料噴射は、シリンダ毎に、電子制御増圧器39によって実行される。増圧器は、低圧側(油圧作動油が適用される側)から高圧側(燃料側)に、一定の比率で圧力を倍増させる。
燃料増圧器39は、加圧された油圧作動油によって動力が供給される。この油圧作動油はエンジン潤滑油であってもよい。圧力ポンプ60は、典型的には数百バールの高圧油圧作動油を、供給導管30を介してシリンダに供給する。油圧作動油がエンジン潤滑油である場合、圧力ポンプ60は、より低い圧力で動作するエンジン潤滑ポンプではない。戻り流体は、導管65を介してシリンダからタンク61に移送され、そこからポンプ60によって、その流体が引き込まれる。
圧縮室67は、1対のシリンダ毎に提供される(エンジンに奇数のシリンダが存在する場合、そのシリンダのうちの1つについては圧縮室が1つであってもよい)。導管69は、圧縮室67を、2つの比例制御弁41と2つのオン/オフ弁55とに接続する。本実施形態の変形例(図示せず)によると、ガス充填膜型アキュムレータが、圧縮室の代替として、または圧縮機に付加的に使用される。
エンジン1の各シリンダ6は電子制御ユニット99に関連付けられる。この電子制御ユニット99は、一般的な同期信号や制御信号を受信し、また特に線59を介して電子制御信号を比例制御弁41に伝送する。シリンダ毎に1つの制御ユニット99が存在してもよく、あるいは、いくつかのシリンダが、同一の制御ユニットに関連付けられてもよい(図示せず)。また、制御ユニット99は、全シリンダに共通する包括的な制御ユニットからの信号を受信してもよい(図示せず)。
制御ユニット99は、エンジンの動作状況に応じて、燃料噴射のタイミング、レート調整、および量を計算する。ここで制御ユニットは、クランク軸の回転位置、クランク軸の回転速度(制御ユニット99により回転位置信号から導き出され得る)、外気温度、負荷、種々のエンジン流体の温度に関する情報を受信する。また、制御ユニットは、エンジンを逆回転させるための燃料噴射のタイミングを適切に調節する。比例制御弁41のスプール運動は、フィードバック制御ループにおいて制御ユニット99によって制御される。あるいは、このフィードバック制御ループは、比例制御弁41自体に含まれることが可能である。比例弁41の開放プロファイルは、最適レート調整のために予め定められて制御ユニット99に保存されている所望の開放プロファイルに合うようにされる。
比例制御弁41は、その静止位置において、圧力室をタンクに接続する。増圧器の低圧側を圧力室に連結させ、タンクに接続する。制御ユニット99が、所定のシリンダの燃料噴射を開始する信号を送信すると、比例制御弁41の1つがある程度まで開放することによって、導管69を介して、増圧器39の低圧側を圧縮室67に接続する。
増圧器の低圧側における圧力は増幅され、典型的には、約400バールと約1500バールの間の噴射圧力に達する。供給導管51は、高圧燃料を燃料噴射装置23に移送し、燃料噴射装置23は、ノズルを介して燃料室15に燃料を噴射することによって、燃料を霧状化する。
また、制御ユニット99は、オン/オフ弁55を制御する。このオン/オフ弁55は、シリンダ注油器57への高圧流体の供給を制御する。動作状態およびクランク軸の位置に基づき、制御ユニット99は、シリンダにポンプで送り込まれる潤滑油の時期および量を決定する。オン/オフ弁55は、その静止位置において、シリンダ注油器57をタンク61に接続する。所定のオン/オフ弁55が、潤滑油を特定のシリンダにポンプで送り込む信号を制御ユニット99から受信すると、オン/オフ弁55は、導管69を介してシリンダ注油器57を圧縮室67に連結するように開放し、シリンダ注油器は、潤滑油をポンプでシリンダへ送り込むことを開始する。制御ユニット99は、オン/オフ弁55の作動の長さを介してシリンダにポンプで送り込まれる潤滑油の量を決定する。
図9は、燃料噴射工程の例示的なレート調整プロファイルを示す。圧力上昇は、実質的に均一で高い燃焼圧を長時間保持するように、意図的になだらかでゆっくりであり、この燃焼圧は、全負荷下において最大許容燃焼圧に近い。
図10および11は、本発明の別の実施形態を示す。この実施形態において、電子燃料噴射は、いわゆるコモンレール型である。このシステムにおいて、個別の油圧作動油は存在しないが、代わりに、燃料が高圧力に維持され、噴射のためのエネルギーは、燃料の圧縮により保存される。コモンレールは、それぞれ2つのシリンダに関連付けられる複数の部分95に分割されている。この構成の利点は、エンジン動作中のエンジン1のねじれ運動に適合するという、コモンレールのさらなる改善にある。この構成でない場合は、非常に長く継ぎ目のないコモンレール管は変形し、疲労にさらされることになり得る。
図12は、コモンレール噴射システムを概略的に示す。典型的には、エンジンは、重油(Heavy Fuel Oil; HFO)(水乳化および非水乳化の両方)で動作する。乳化は、個別の乳化ユニット(図示せず)において行われる。エンジン運転用の燃料は、加熱タンク129に保管される。HFOの粘度は、50°Cで500cStから700cStであり、室温で流動不可能である。タンクにおけるHFOは、常時、つまりエンジン停止中も約50°Cに維持される。典型的には、この種類のエンジンを備える船舶には、発電機一式(発電セット)、つまり、より小型のディーゼルエンジンが設けられ、この小型のディーゼルエンジンにより、主エンジン停止中に、船舶および主エンジンに電力および熱が提供される。加熱タンク129から、HFOは、フィルタまたは遠心分離機130ならびに予熱器131に導かれる。予熱器131を出るHFOの温度は、動作状況およびHFOの等級に応じて制御される。エンジン停止中、油圧システムを介して低圧力でHFOが循環される際、HFOの温度は、45°Cから60°Cの範囲に維持される。エンジン動作中、予熱器131を出るHFOの温度は、HFOの粘度に応じて90°Cから150°Cの間に維持される。センサー(図示せず)は、予熱器131(または別の適切な場所)のすぐ下流のHFOの粘度を測定する。典型的には、予熱器131を出るHFOの温度は、測定点において、10cStから20cStの範囲の粘度になるように制御される。
叉状中間導管132は、予熱器を、高圧燃料ポンプ133と補助低圧循環ポンプ134の両方に接続する。逆止め弁135は、逆吸引を防止するために、各ポンプの下流の導管に配置される。
エンジン動作中、高圧燃料ポンプ133は、歯車137を介してクランク軸3上の歯車136によって駆動される。ここで、高圧燃料ポンプ133は、1000バールから1500バールの呼び圧力を生成するが、圧力は、動作状況に応じて600バールから2000バールの間で変動してもよい。
エンジン停止中、補助低圧循環ポンプ134は、電気モーター138によって駆動される。ここで、エンジン停止中に、油圧システムを介してHFOを循環させるために、約3バールから約10バールの圧力が供給される。
コモン燃料レール140は、全シリンダに沿って延在し、シリンダ6との連結は、図12に示されないが、コモンレールから延出する短い上向きの線によって示される。コモンレールは、エンジンの長さ方向に沿って延出する1つの長い管によって形成される必要はない。代わりに、コモンレールは、図10および11に示されるように、各々がいくつかのシリンダを含む相互連続する部分に分割されてもよい。
隣接する1対のシリンダには、コモンレール140から分岐し、かつ比例制御弁125の入口ポートにつながる供給導管141を介してHFOが供給される。供給導管141には、いくつかの流体アキュムレータ142が設けられ、この流体アキュムレータによって、比例制御弁125の開放時に流体量の大部分が供給され、比例制御弁125の閉鎖中にコモンレール140から次に供給される。
供給導管120は、比例制御弁125の2つの出口ポートのうちの一方を、2つの隣接するシリンダのうちの一方の噴射器23に接続する。別の供給導管124は、比例制御弁125の2つの出口ポートのうちの他方を、2つの隣接するシリンダのうちの他方の噴射器23に接続する。また、比例制御弁125は、戻しHFOのための戻し導管143に接続される2つのタンクポートも有する。
比例制御弁125は、3つの主要位置を有するソレノイド駆動スプール弁である。ソレノイド144は、ライン128を介して制御ユニット99から制御信号を受信する。別の実施形態(図示せず)によると、ソレノイド44は、絶縁スペーサを介して弁ハウジングに連結される。
ソレノイド144が作動しない中立位置において、比例制御弁125の入口ポートは、閉鎖され、比例制御弁125の2つの出口ポートは、戻し導管143に接続される。
スプール弁を左側(図12の左)に付勢するようにソレイドを作動する場合、比例制御弁の入口ポートは、供給導管120に連結され、制御弁125に関連付けられる2つのシリンダのうちの一方における燃焼室15に噴射器23が燃料を噴射するようにする。この位置において、圧力導管124は、戻し導管143に接続される。
スプール弁を右側(図12の右)に付勢するようにソレイド44を作動する場合、比例制御弁125の入口ポートは、供給導管124に連結され、比例制御弁125に関連付けられる2つのシリンダのうちの他方における燃焼室15に噴射器23が燃料を噴射するように、高圧HFOが通される。この位置において、圧力導管120は、戻し導管143に接続される。
燃料噴射タイミング、噴射燃料体積、および噴射パターンの形状は、比例弁125で制御される。
この実施形態の図示されない変形例において、ポートの数が少なく、かつ2つの位置しかない1つの比例制御弁を使用して、1つのシリンダのための燃料噴射を制御する。この変形例において、比例制御弁は、その静止位置において供給導管を低圧回路に接続し、また、その2つの位置のうちの一方において、供給導管をコモンレールに接続する。
この実施形態の図示されない別の変形例において、その中断部分におけるコモンレールは、ガス充填膜アキュムレータ142および148を備えない。
さらなる好適な実施形態(図示せず)によると、コモン燃料レールから噴射器までの燃料流量は、オン/オフ型弁によって制御される。
既存の燃料制限装置146が供給導管120、124の両方に設けられ、比例制御弁125が誤って長時間開放し過ぎた場合に、シリンダに入るHFOの量が超過することを回避する。
戻し配管143における圧力は、数バールの超過圧力に維持され、空気が油圧システムに浸透することを回避し、かつ水乳化HFOに含まれる水が蒸気泡を生成することを防ぐようにする。戻し導管143への下流端における圧力制御弁147により、既定の最小超過圧力が、戻し導管143において保持されるようになる。戻し導管143における超過圧力は、3バールから10バールであることが好ましい。アキュムレータまたは膨張容器148は、戻し導管143に接続され、比例制御弁125が位置を変化する際に発生可能である圧力変動を吸収するようにする。
第2の戻し導管149は、噴射器23の出口ポートに接続され、戻し導管43につながる。圧力制御弁147の下流において、戻し導管143は、使用済みのHFOを予熱器131に供給し、そのサイクルを完了させる。
予熱器131の出口からコモンレール140へのHFO、およびコモンレール40から比例制御弁125を介して噴射器23へHFOを移送する導管には、加熱コイルで表される加熱手段が設けられる。導管は、例えば、蒸気トレースまたは電気加熱要素によって、その全長に亘って加熱されることができる。これらの導管の加熱は、熱いHFOが予熱器から下流に移動する際の熱損失を減少させる役割を果たす。エンジン動作中、噴射器および油圧弁アクチュエータに向かう導管におけるHFOの温度は、150°C近くに維持されるが、使用するHFOの粘度によって左右される。供給導管120および供給導管124などの、その長さの一部に平行する隣接導管には、共通の加熱手段(図示せず)が設けられてもよい。
また、戻し配管143および149には、上述と同じ種類の加熱手段が備えられる。戻し配管におけるHFOの温度は、あまり重要ではなく、加熱手段は、HFOの温度が50°C未満にならないように較正される。
エンジン停止中、HFOは、循環ポンプ134によって油圧システムを循環し(3バールから10バールの比較的低圧力で)、油圧システムへの空気の閉じ込めを回避し、また、HFOの局所的な冷却および硬化を回避する。
上記実施形態の変形例(図示せず)によると、油圧ピストンポンプ37を弁アクチュエータ21に接続する高圧導管35は、電子制御弁手段によって減圧可能であり(制御ユニット99により制御される)、排気弁が、カム軸のそれぞれのカムによって規定される戻り工程タイミングより先に、その戻り工程を開始できるようにする。
上記実施形態のさらなる変形例(図示せず)によると、油圧ピストンポンプ37を弁アクチュエータ21に接続する高圧導管35は、電子弁手段によって選択的に遮断可能であり(制御ユニット99により制御される)、カム軸のそれぞれのカムによって規定される戻り工程タイミングの後まで、戻り工程を遅延させるようにする。
1つ以上の制御ユニット99が、エンジンの動作に関連して、排気弁の閉鎖のタイミングの前倒しまたは遅延を制御するように構成されてもよい。
上記実施形態のさらに別の変形例(図示せず)によると、カム軸28には、クランク軸3の角度位置に対してカム軸28の角度位置を調整するための電気油圧機構が設けられる。この機構は、追加の制御ユニット99のうちの1つによって制御され、排気弁の開閉のタイミングを変化させる。
好適な実施形態は、シリンダが一列に配列されるエンジンのみを示したが、本発明は、V構成またはU構成などのその他のシリンダ配列でも使用可能である。
請求項で使用される用語の「備える」は、その他の要素またはステップを除外しない。請求項で使用される単数形の用語は、複数形を除外しない。
請求項で使用される参照符号は、範囲を限定するものとして解釈されないものとする。
説明目的のために、本発明について詳しく記載されたが、このような詳細が単にその目的のためのものだけではないこと、ならびに本発明の範囲を逸脱することなく、当業者によって変更可能であることを理解されたい。
Claims (24)
- それぞれ少なくとも1つの排気弁を有する複数のシリンダと、シリンダ毎に1つ以上設けられる燃料噴射装置と、圧縮されることによりポテンシャルエネルギーを蓄積しうる高圧流体を供給するための高圧流体源と、少なくとも1つの電子制御油圧弁とを備え、前記燃料噴射装置が、前記蓄積されるポテンシャルエネルギーにより主に駆動されると共に、前記電子制御油圧弁によって制御されるように構成される、クロスヘッド型大型ユニフロー式2サイクルディーゼルエンジンであって、
各々対応する前記排気弁を動作させる複数のカムが搭載される、少なくとも1つのカム軸と、
各々前記カム軸上の対応するカムによって駆動される複数の油圧ピストンポンプと、
前記排気弁毎に、開放方向に前記排気弁を移動するための油圧アクチュエータと、前記油圧ピストンポンプを前記油圧アクチュエータに接続するための油圧導管と、前記排気弁を閉鎖方向に付勢するための弾性部材と、
前記エンジンの長さ方向に沿って延在し、所定量の前記高圧流体を収容しうる供給導管と、
前記カム軸及び前記供給導管を収容するカム軸ハウジングと、
を有する、エンジン。 - 前記高圧流体は燃料とは異なる媒体であり、且つ前記燃料とは分けられている、請求項1に記載のエンジン。
- 前記高圧流体および前記燃料は、シリンダ毎に少なくとも1つ設けられるピストン装置によって分離され、前記高圧流体は、前記燃料噴射中に前記ピストン装置を移動させ、次に、前記ピストン装置は、該当する前記シリンダ内の前記燃焼室に前記燃料を移動させる、請求項2に記載のエンジン。
- 前記ピストン装置は増圧器であり、また前記ピストン装置は、油圧作動油である前記高圧流体に対する有効面積が、前記燃料に対する有効面積よりも大きいピストンを備える、請求項3に記載のエンジン。
- 前記供給導管は、前記エンジンの長手方向に沿って分布する複数の圧縮室を備え、前記圧縮室は、圧縮されることにより所望のポテンシャルエネルギーを蓄積しうる量の前記油圧作動油を収容しうるだけの容積を有する、請求項4に記載のエンジン。
- 隣接する1対のシリンダに対して前記油圧作動油を供給するために1つの圧縮室が設けられる、請求項5に記載のエンジン。
- 前記圧縮室は、前記カム軸ハウジング内部に少なくとも部分的に配置される、請求項6に記載のエンジン。
- 前記圧縮室は、前記カム軸ハウジングと、壁部の少なくとも一部を共有する、請求項7に記載のエンジン。
- 前記圧縮室は、金属の固体ブロックに空洞を加工することによって形成される、請求項5から8のいずれかに記載のエンジン。
- 前記高圧流体の流体源は1つ以上の電動高圧ポンプを備える、請求項1から9のいずれかに記載のエンジン。
- 1つの油圧弁が、2つ以上のエンジンシリンダに対する燃料噴射を制御する、請求項1から10のいずれかに記載のエンジン。
- 油圧作動油である前記高圧流体は燃料である、請求項1に記載のエンジン。
- 前記所定量の高圧油圧作動油がコモンレールに収容される、請求項12に記載のエンジン。
- 前記油圧弁は比例弁である、請求項1から13のいずれかに記載のエンジン。
- 前記油圧弁は、1つ以上のコンピュータによって制御される、請求項1から14のいずれかに記載のエンジン。
- 前記1つ以上のコンピュータは、前記燃料噴射のタイミングおよび/またはレート調整を、前記エンジンの動作状態に適合させるように構成される、請求項15に記載のエンジン。
- 前記1つ以上のコンピュータは、前記エンジン負荷が減少している場合に、前記燃料噴射のタイミングを早めるように構成される、請求項16に記載のエンジン。
- 前記燃料噴射のレートは、所望の噴射プロファイルを得るために、前記燃料噴射中に調節可能である、請求項15または16に記載のエンジン。
- 前記1つ以上のコンピュータによって制御されるシリンダ潤滑システムをさらに備える、請求項15から18のいずれかに記載のエンジン。
- 前記高圧流体は、前記シリンダ潤滑システム動力を供給する、請求項19に記載のエンジン。
- 前記排気弁が、前記カム軸上の前記対応するカムによって規定される戻り工程タイミングよりも先に、その戻り工程を開始できるようにするべく、前記油圧ピストンポンプを前記油圧アクチュエータに接続する前記油圧導管を、電子制御弁手段によって減圧しうるように構成される、請求項1から20のいずれかに記載のエンジン。
- 前記カム軸上の前記対応するカムによって規定される前記戻り工程タイミングより、その戻り工程を遅延させるべく、前記油圧ピストンポンプを前記油圧アクチュエータに接続する前記油圧導管を、電子弁手段によって選択的に遮断しうるように構成される、請求項1から21のいずれかに記載のエンジン。
- 前記エンジンの動作状況に関連して、前記排気弁の閉鎖のタイミングの前倒しまたは遅延を1つ以上のコンピュータで制御するように構成される、請求項21または22に記載のエンジン。
- 前記カム軸には、クランク軸の角度位置に対してその角度位置を調整するための機構が設けられ、前記機構は、前記排気弁の開閉のタイミングを変化させるため前記コンピュータによって制御される、請求項23に記載のエンジン。
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