JP2009532058A - 酵素検出技術 - Google Patents

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Abstract

酵素又は酵素阻害剤の存在又は量を検出するための診断試験キットが提供される。診断キットは基質抱合体を利用して、基質及び/又は基質の酵素触媒反応中に形成された生成物の直接検出を介して、酵素又は酵素阻害剤の検出を容易にする。基質抱合体は、レポーターに接合された(例えば、共有結合された、物理的に吸着された等)基質を含む。1つの実施形態においては、例えば、ペプチド、タンパク質、又は糖タンパク質基質は、レポーター(例えば、染色ラテックス粒子)に接合される。この実施形態においては、基質は、酵素に開裂標的を提供する。具体的には、基質抱合体と接触すると、酵素は、基質との反応を触媒してレポーターに接合された酵素触媒反応の生成物を含む生成物抱合体を形成する。次いでレポーターによって示された信号を用いて、試験サンプル中の酵素又は酵素阻害剤の存在又は量を示すことができる。
【選択図】図1

Description

試験サンプル中の特定の酵素の存在又は量を求めることは、多くの場合望ましい。場合によっては、酵素が存在するだけで、例えば、組織又は臓器障害の存在を示すことができる。同様に、異常な酵素濃度はまた、細菌又はウイルス感染症などの他の病状を示すことができる。例えば、プロテアーゼ(例えば、アルパラギン酸プロテアーゼ)及びメタロペプチダーゼは、カンジダ膣炎(「イースト菌感染症」)を起こす恐れがある微生物、カンジダ・アルビカンスの病原性を増大させると考えられる。試験サンプル中の酵素の存在及び濃度はまた、幾つかの種類の癌及び他の病状の診断マーカーとして働くことができる。例えば、前立腺特異抗原(PSA)は、前立腺癌のよく知られているマーカーである。診断マーカーの他の例としては、カテプシンB(癌)、カテプシンG(気腫、リウマチ性関節炎、炎症)、プラスミノーゲン活性化因子(血栓、慢性炎症、癌)、及びウロキナーザ(癌)がある。
酵素の存在を検出するための1つの従来の技術は、Braach−Maksvytis他の米国特許第6,348,319号に記載されている。Braach−Maksvytis他は、酵素によって基質の消化を感知することによって機能する。例えば、Braach−Maksvytis他の図1は、第1のゾーン11及び第2のゾーン12を含むデバイス10を示す。第1のゾーン11は、プロテアーゼ16によって開裂可能なペプチドリンカー15を介してストレプトアビジン14(レポーター)にリンクされたポリマービーズ13(キャリア)を備える。プロテアーゼ16を付加すると、ストレプトアビジン14が遊離されて、膜のインピーダンスの変化によってストレプトアビジンの存在を検出する、バイオセンサー膜17を含む第2のゾーン12に移動する。(Col.5,II.25−30)。しかしながら、残念なことに、Braach−Maksvytis他によって説明されたような技術は、患者によって比較的迅速な診断(自己診断又は医療関係者の助けによる)を必要とするものなどの、ある種の用途では複雑過ぎて法外な費用がかかる。
したがって、試験サンプル中の酵素の存在を正確に検出する簡単で安価な技術の必要性が現在ある。
米国特許第6,348,319号 米国特許第6,243,980号 米国特許2004/0081971 米国特許第4,748,116号 米国特許第5,786,137号 米国特許第6,197,537号 米国特許第6,235,464号 米国特許第6,485,926号 米国特許第4,275,149号 米国特許第5,670,381号 米国特許第5,252,459号 米国特許第6,261,779号 米国特許第6,585,939号 米国特許第4,614,723号 米国特許第5,464,741号 米国特許第5,518,883号 米国特許第5,922,537号 米国特許第6,004,530号 米国特許第6,582,930号 米国特許第6,613,583号 米国特許第6,468,741号 米国特許第6,444,423号 米国特許第6,362,011号 米国特許第5,731,147号 米国特許第5,591,581号 米国特許第6,030,840号 米国特許第5,585,279号 米国特許第5,573,909号 米国特許第6,242,268号 米国特許第5,637,509号 米国特許第5,075,077号 米国特許出願公報第2004/0043502号 米国特許出願公報第2003/0119202号 米国特許出願公報第2003/0124739号 米国特許第3,700,623号 米国特許第3,772,076号 米国特許第4,537,657号 Clin.Chem.42,1196−1201(1966) Anal.Chem.70,596−601(1998)
本発明の1つの実施形態によれば、試験サンプル中の酵素又は酵素阻害剤を検出するための方法が開示される。本方法は、培養混合物を形成するように、レポーターに接合された基質を各々が含む複数の基質抱合体と試験サンプルを接触させる段階を含む。基質は、レポーターに接合されている間、酵素触媒反応を受けてレポーターに接合された生成物を形成することができる。レポーターは、直接間接を問わず検出信号を発生させることができる。本方法は、基質抱合体又は生成物抱合体のいずれかをその中に優先的に拘束する、第1の検出ゾーンを形成するクロマトグラフ培地に培養混合物を付与する段階を更に含む。第1の検出ゾーン内の第1の検出信号の存在又は強度が求められる。
第1の検出信号は、その中に固定されたレポーターなどによって第1の検出ゾーン内で発生させることができる。第1の検出ゾーン内の第1の検出信号の強度は、試験サンプル中の酵素又は酵素阻害剤の存在を表すことができる。例えば、生成物抱合体が第1の検出ゾーン内に取り込まれると、第1の検出ゾーン内の第1の検出信号の強度が、試験サンプル中の酵素の量に正比例するものとなり、試験サンプル中の酵素阻害剤の量に同様に反比例するものとなるようにすることができる。反対に、基質抱合体が第1の検出ゾーン内に取り込まれると、第1の検出ゾーン内の第1の検出信号の強度が、試験サンプル中の酵素の量に反比例するものとなり、試験サンプル中の酵素阻害剤の量に同様に正比例するものとなるようにすることができる。
本発明の別の実施形態によれば、試験サンプル中の酵素又は酵素阻害剤を検出するための診断キットが開示される。このキットは、レポーターに接合された基質を各々が含む複数の基質を備える。1つの実施形態においては、例えば、レポーターは、検出可能物質で標識された粒状物を含む。基質抱合体の基質は、酵素によって触媒されて生成物抱合体としてレポーターに接合された生成物を形成する反応が可能である。該キットは、試験サンプルと連通状態に置くことができるクロマトグラフ培地(例えば、多孔性膜)を更に備える。クロマトグラフ培地は、生成物抱合体又は基質抱合体のいずれかをその中に優先的に拘束する第1の検出ゾーンを形成する。例えば、受容物質は、例えば、基質の酵素触媒反応中に形成された生成物に特定のモノクローナル抗体のようなレポーターに接合された状態にある反応生成物に対して特定の結合親和性を有する第1の検出ゾーン内に固定することができる。したがって、生成物抱合体は、第1の受容物質とこの生成物の特定の結合を介して第1の検出ゾーン内に固定されることになり、生成物に接合されたレポーターから第1の検出ゾーン内に発生した検出信号の存在又は強度を求めて、試験サンプル中の酵素又は酵素阻害剤の存在又は量を示すことができるようになる。
ある種の実施形態においては、クロマトグラフ培地は、基質抱合体又は生成物抱合体の両方ではなく、いずれかをその中に捕捉することができる、第2の検出ゾーンを更に含むことができる。例えば、第1の検出ゾーンが生成物抱合体を捕捉するように設計される場合には、第2の検出ゾーンは、基質抱合体を捕捉するように設計することができ、逆もまた同じである。第2の検出信号は、第2の検出ゾーン内に固定されたレポーターなどによって該第2の検出ゾーン内に発生させることができる。
本発明の他の特徴及び態様は、以下により詳細に説明される。
当業者に向けられる本発明の最良の形態を含む本発明の完全で実施可能な程度の開示事項は、添付図面を参照して本明細書の残りの部分により詳細に記載されている。
本明細書及び図面の参照文字の繰り返し使用により、本発明の同じ又は類似の特徴或いは要素を表すことが意図される。
(配列表)
配列ID番号:1は、本明細書に記載されたようにタンパク質キナーゼの検出において基質として利用することができる例示的ペプチド配列を表す。
本明細書で用いられる場合、「試験サンプル」という用語は、一般的に酵素及び/又は酵素阻害剤を含有する疑いがある物質を意味する。例えば、試験サンプルは、血液、間質液、唾液、接眼レンズ液、脳脊髄液、汗、尿、乳汁、腹水、粘膜、滑液、腹膜液、膣液、羊水、及びその他を含む生理液のような生物学的起源から得られ又はこれに由来するものとすることができる。生理液の他に、環境又は食料品分析を実施するために水、食料品、その他のような他の液体サンプルを用いることができる。加えて、固体物質を試験サンプルとして用いることができる。試験サンプルは、供給源から得られたときに直接、又はサンプルの特性を修正する前処理の後に用いることができる。例えば、このような前処理は、血液からプラズマの調製、粘性流体の希釈、及びその他を含むことができる。前処理の方法はまた、濾過、沈澱、希釈、蒸留、混合、濃縮、干渉成分の不活性化、試薬の付加等を含むことができる。更に、固体試験サンプルを修正して液体培地を形成し、酵素及び/又は酵素阻害剤等を遊離するのにも有利なものとなる。
以下において、本発明の種々の実施形態について詳細に言及し、その1つ又はそれ以上の実施例を後述する。各実施例は、本発明の説明のために提示するものであり、本発明を限定するものではない。実際に、当業者であれば、種々の修正及び変更を本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、本発明において行うことができる点は明らかであろう。例えば、1つの実施形態の一部として図示され又は記載された特徴は、別の実施形態に用いられて更に別の実施形態をもたらすことができる。したがって、本発明は、添付の請求項及び本発明の均等技術の範囲内にあるこのような修正及び変形形態を包含することが意図される。
本発明は、一般的には酵素又は酵素阻害剤の存在又は量を検出するための診断試験キットに関する。診断キットは、酵素触媒反応に基質を採用して、試験サンプル中の酵素又は酵素阻害剤の検出を容易にする。基質は、レポーターに接合された(例えば、共有結合、物理的吸着等)基質を含む基質抱合体の形態で提示される。1つの実施形態においては、例えば、ペプチド、タンパク質、又は糖タンパク質基質が、染色ラテックス粒子に接合される。基質抱合体と接触すると、酵素は、基質を開裂して生成物を形成する。しかしながら、酵素によって触媒された反応は、レポーター又はレポーターへの基質の接合に影響を与えない。したがって、反応生成物は、レポーターに接合された生成物を含む生成物抱合体の形態になるであろう。直接間接を問わずレポーターによって発生された信号を用いて、試験サンプル中の酵素又は酵素阻害剤の存在又は量を示すことができる。
種々の種類の酵素を、本発明によって検出することができる。例えば、転移酵素、加水分解酵素、リアーゼ、及びその他を検出することができる。幾つかの実施形態においては、対象となる酵素は、加水分解反応を触媒する酵素を意味する「加水分解酵素」又は「加水分解性酵素」である。このような加水分解性酵素の実施例は、これらに制限されるものではないが、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、リパーゼ、核酸分解酵素、ホモ−又はヘテロ−オリゴサッカリダーゼ、ホモ−又はヘテロ−ポリサッカリダーゼ、ホスファターゼ、スルファターゼ、ノイラミニダーゼ及びエステラーゼを含む。1つの実施形態においては、例えば、ペプチダーゼを検出することができる。「ペプチダーゼ」は、より短いペプチドに見られるペプチド結合を開裂する加水分解性酵素である。プロテアーゼの実施例は、制限されるものではないが、メタロペプチダーゼ、ジペプチジルペプチダーゼI、II、又はIV、及びその他を含む。別の実施形態においては、プロテアーゼを検出することができる。「プロテアーゼ」は、より長いペプチド及びタンパク質に見られるペプチド結合を開裂する加水分解性酵素である。本発明により検出することができるプロテアーゼの実施例は、制限されるものではないが、セリンプロテアーゼ(例えば、キモトリプシン、トリプシン、エラスターゼ、PSA等)、アスパラギン酸プロテアーゼ(例えば、ペプシン)、チオールプロテアーゼ(例えば、プロホルモンチオールプロテアーゼ)、メタロプロテアーゼ、酸プロテアーゼ、及びアルカリプロテアーゼを含む。更に他の酵素は、Bronstein他の米国特許第6,243,980号及びYue他の米国特許2004/0081971に記載されており、これら特許のすべては、すべての目的のためにこれらを引用することによりその全体が本明細書に組み入れられる。
上述のもののような基質を開裂する酵素の他に、この診断キットは、代替的に、基質上で結合形成を触媒する酵素の存在を検出するために利用することができる。例えば、官能基を基質に転移する転移酵素、第2の分子を基質に共有結合するリガーゼ、又はポリメラーゼを、検出することができる。検出することができる例示的転移酵素としては、キナーゼ及びメチラーゼがある。例えば、タンパク質キナーゼ、クレアチンキナーゼ、ヘキソキナーゼ、及びその他を含むキナーゼは、基質のリン酸化の検出によって検出することができる。メチラーゼIIのようなメチラーゼは、1つ又はそれ以上のメチル基を基質に付加することによって検出することができる。
同様に、様々な既知の酵素阻害剤のいずれもまた、本発明により検出することができる。例えば、加水分解性酵素の既知の阻害剤は、制限されるものではないが、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、リパーゼ、核酸分解酵素、ホモ−又はヘテロ−オリゴサッカリダーゼ、ホモ−又はヘテロ−ポリサッカリダーゼ、ホスファターゼ、スルファターゼ、ノイラミニダーゼ及びエステラーゼを含む。プロテアーゼ阻害剤は、例えば、アスパラギン酸プロテアーゼ阻害剤、セリンプロテアーゼ阻害剤、チオールプロテアーゼ阻害剤、メタロプロテアーゼ阻害剤、酸又はアルカリプロテアーゼ阻害剤、及びその他を含むことができる。プロテアーゼ阻害剤の幾つかの特定の実施例は、ベンズアミデインbenzamideine、インドール、ペプスタチン、オボマクログロブリン、ハロペリドール、遷移状態模倣剤、及びその他を含む。転移酵素阻害剤の幾つかの特定の実施例は、グルタチオンS−転移酵素及びSarasar(登録商標)、ベンゾシクロヘプタピリジル・ファルネシル転移酵素阻害剤(FTI)を阻害するエタクリン酸を含む。
上述したように、基質抱合体を本発明に用いて、酵素又は酵素阻害剤の存在又は量を検出する。基質抱合体は、レポーターに接合された基質を含む。「基質」という用語は、酵素の存在によって又は存在下で化学的に作用されて生成物を形成する物質を一般的には意味する。基質は、天然に生じる可能性があり又は合成することができる。基質の具体的な種類は、例えば、タンパク質又は糖タンパク質、ペプチド、核酸(例えば、DNA及びRNA)、抗原、抗体、炭水化物、脂質、エステル、これらの誘導体、及びその他を含むことができる。加水分解性酵素に好適な幾つかの基質は、例えば、エステル、アミド、ペプチド、エーテル、又は酵素的に加水分解型結合を有する他の化学化合物を含む。酵素触媒加水分解反応により、例えば、1つの生成物としてヒドロキシル又はアミン化合物、第2の生成物として遊離リン酸塩、酢酸塩等を得ることができる。ペプチダーゼ及び/又はプロテアーゼに好適な幾つかの基質は、カゼイン(例えば、β−カゼイン、アゾカゼイン等)、アルブミン(例えば、牛血清アルブミン(BSA))、ヘモグロビン、ミオグロビン、ケラチン、ゼラチン、インスリン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン、エラスチン、及びその他などのペプチド、タンパク質、及び/又は糖蛋白質を含むことができる。キナーゼ及び/又はメチラーゼに好適な幾つかの基質は、オバアルブミン、ペプチド、クレアチン、ヘキソース、ヌクレオチド、ヌクレオシド、脂質、及びその他を含むことができる。更に他の好適な基質は、Simonsson他の米国特許第4,748,116号、Diamond他の米国特許第5,786,137号、Rao他の米国特許第6,197,537号、Henderson他の米国特許第6,235,464号、及びNemori他の米国特許第6,485,926号に記載されており、これら特許のすべては、すべての目的のためにこれらを引用することによりその全体が本明細書に組み入れられる。
レポーターは、直接間接を問わず検出可能信号を発生させることができるあらゆる物質を含むことができる。好適な検出可能物質は、例えば、色原体、発光化合物(例えば、蛍光性、リン光性等)、放射性化合物、視覚化合物(例えば、ラテックス又は金のような金属粒子)、信号生成物質を含有するリポソーム又は他の小胞、酵素及び/又は基質、並びにその他を含むことができる。例えば、検出可能物質としての用途に好適な幾つかの酵素は、Litman他の米国特許第4,275,149号に記載されており、この特許は、すべての目的のためにこれを引用することによりその全体が本明細書に組み入れられる。酵素/基質系の1つの実施例は、酵素アルカリホスファターゼ及び基質ニトロブルーテトラゾリウム−5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−リン酸塩、これらの誘導体又は類似物、或いは基質4−メチルウンベリフェリル−リン酸塩である。他の好適なレポーターは、Jou他の米国特許第5,670,381号及びTarcha他の米国特許第5,252,459号に記載することができ、これら特許のすべては、すべての目的のためにこれらを引用することによりその全体が本明細書に組み入れられる。
幾つかの実施形態においては、レポーターは、光学的に検出可能信号を生成する発光化合物を含有するものとすることができる。発光化合物は、分子、ポリマー、デンドリマー、粒状物、及びその他とすることができる。例えば、好適な蛍光分子は、制限されるものではないが、蛍光、ユウロピウムキレート、フィコビリタンパク質、ローダミン、並びにこれらの誘導体及び類似物を含むことができる。他の好適な蛍光化合物は、通常「量子ドット」と呼ばれる半導体ナノ結晶である。例えば、このようなナノ結晶は、化学式CdXのコアを含有することができ、式中Xはセレン、テルリウム、硫黄、及びその他である。ナノ結晶はまた、化学式YZの上にあるシェルで不動態化することができ、式中Yはカドミウム又は亜鉛であり、Zは硫黄又はセレンである。好適な半導体ナノ結晶の1つの実施例はまた、Barbera−Guillem他の米国特許第6,261,779号、及びDapprichの米国特許第6,585,939号に記載することができ、これら特許のすべては、すべての目的のためにこれらを引用することによりその全体が本明細書に組み入れられる。
更に、好適なリン光性化合物は、ルテニウム、オスミウム、レニウム、イリジウム、ロジウム、プラチナ、インジウム、パラジウム、モリブデン、テクネチウム、銅、鉄、クロム、タングステン、亜鉛、及びその他などの1つ又はそれ以上の金属の金属錯体を含むことができる。特に好ましいのは、ルテニウム、レニウム、オスミウム、プラチナ、及びパラジウムである。金属錯体は、水性又は非水環境中の錯体の溶解性を促進する1つ又はそれ以上のリガンドを含有することができる。例えば、リガンドの幾つかの好適な実施例は、制限されるものではないが、ピリジン、ピラジン、イソニコチンアミド、イミダゾール、ビピリジン、ターピリジン、フェナントロリン、ジピリドフェナジン、ポルフィリン、ポルフィン、及びこれらの誘導体を含む。このようなリガンドは、例えば、アルキル、置換アルキル、アリル、置換アリル、アラルキル、置換アラルキル、カルボキシレート、カルボキシアルデヒド、カルボキサミド、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、イミノ、ヒドロキシカルボニル、アミノカルボニル、アミジン、グアニジン、ウレイド、含硫黄基、リン含有基、及びN−ヒドロキシ−コハク酸イミドのカルボキシレートエステルと置換することができる。
ポルフィリン及びポルフィン金属錯体は、メチレン橋とともに結合されて金属キレート内部空洞を有する環状構造を形成するピロール基を保有する。これらの分子の多くは、好適な溶媒(例えば水)及び無酸素環境下に室温で強力なリン光特性を示す。リン光特性を示すことができる幾つかの好適なポルフィリン錯体は、制限されるものではないが、プラチナ(II)コプロポルフィリン−I及びIII、パラジウム(II)コプロポルフィリン、ルテニウムコプロポルフィリン、亜鉛(II)−コプロポルフィリン−I、これらの誘導体、及びその他を含む。同様に、リン光特性を示すことができる幾つかの好適なポルフィン錯体は、制限されるものではないが、プラチナ(II)テトラ−メソ−フルオロフェニルポルフィン及びパラジウム(II)テトラ−メソ−フルオロフェニルポルフィンを含む。更に他の好適なポルフィリン及び/又はポルフィン錯体は、Schmidt他の米国特許第4,614,723号、Hendrixの米国特許第5,464,741号、Soiniの米国特許第5,518,883号、Ewart他の米国特許第5,922,537号、Sagner他の米国特許第6,004,530号、及びPnomarev他の米国特許第6,582,930号に記載されており、これら特許のすべては、すべての目的のためにこれらを引用することによりその全体が本明細書に組み入れられる。
ビピリジン金属錯体はまた、リン光性化合物として利用することができる。好適なビピリジン錯体の幾つかの実施例は、制限されるものではないが、ビス[(4,4’−カルボメトキシ)−2,2’−ビピリジン]2−[3−(4−メチル−2,2’−ビピリジン−4−イル)プロピル]−1,3−ジオキソランルテニウム(II)、ビス(2,2’ビピリジン)[4−(ブタン−1−アル)−4’−メチル−2,2’−ビ−ピリジン]ルテニウム(II)、ビス(2,2’−ビピリジン)[4−(4’−メチル−2,2’−ビピリジン−4’−イル)−酪酸]ルテニウム(II)、トリス(2,2’ビピリジン)ルテニウム(II)、(2,2’−ビピリジン)[ビス−ビス(1,2−ジフェニルホスフィノ)エチレン]2−[3−(4−メチル−2,2’−ビピリジン−4’−イル)プロピル]−1,3−ジオキソランオスミウム(II)、ビス(2,2’−ビピリジン)[4−(4’−メチル−2,2’−ビピリジン)−ブチルアミン]ルテニウム(II)、ビス(2,2’−ビピリジン)[1−ブロモ−4(4’−メチル−2,2’−ビピリジン−4’−イル)ブタン]ルテニウム(II)、ビス(2,2’−ビピリジン)マレイミドヘキサン酸,4−メチル−2,2’−ビピリジン−4’−ブチルアミドルテニウム(II)、及びその他を含む。リン光特性を示すことができる更に他の好適な金属錯体は、Richter他の米国特許第6,613,583号、Massey他の米国特許第6,468,741号、Meade他の米国特許第6,444,423号、Massey他の米国特許第6,362,011号、Bard他の米国特許第5,731,147号、及びMassey他の米国特許第5,591,581号に記載することができ、これら特許のすべては、すべての目的のためにこれらを引用することによりその全体が本明細書に組み入れられる。
場合によっては、「時間分解」発光検出技術が利用される。時間分解検出は、光の1つ又はそれ以上の短パルスで発光化合物を励起し、次いで、典型的には、残りの発光信号を測定する前に、励起した後ある一定時間(例えば約1から100マイクロ秒)待つ段階を含む。このようにして、あらゆる短寿命のリン光性又は蛍光性背景信号及び散乱励起放射線が取り除かれる。背景信号の多くを取り除くこの能力は、従来の蛍光又はリン光よりも2から4オーダー大きい感受性をもたらすことができる。したがって時間分解検出は、一定の発光物質の特性を利用することによって、放出源から又は散乱過程(励起放射線の散乱から得られる)から背景信号を減少させるように設計される。
効果的に機能するために、時間分解技術は、発光化合物では比較的長い放出寿命を必要とする。これは、あらゆる短寿命背景信号が放散した十分後に化合物がその信号を発するためには必要である。更に、長い発光寿命は、時間ゲート測定に低コスト回路を用いることを可能にする。例えば、検出可能化合物は、約1マイクロ秒よりも大きな、幾つかの実施形態においては約10マイクロ秒よりも大きな、幾つかの実施形態においては約150マイクロ秒よりも大きな、及び幾つかの実施形態においては約100マイクロ秒から約1000マイクロ秒の発光寿命を有することができる。加えて、化合物はまた、比較的大きな「ストークスシフト」を有することができる。「ストークスシフト」という用語は、励起線又は帯よりも長い放出波長に対して発光放射線のスペクトル線又は帯の変位と一般的には定義される。比較的大きなストークスシフトは、発光化合物の励起波長をその放出波長から遠く離れたままにすることが可能であり、かつ励起波長と放出波長との間の大きな差が、放出信号から反射励起放射線を取り除くのを容易にするとので望ましい。更に、大きなストークスシフトはまた、幾つかの体液(例えば血液)と共に存在するタンパク質又はコロイドに起因するサンプル中の発光分子からの干渉及び/又は光分散を最小にする。加えて、大きなストークスシフトはまた、背景干渉を取り除く高価で高精度のフィルタに対する要件を最小にする。例えば、幾つかの実施形態においては、発光化合物は、約50ナノメートルよりも大きな、幾つかの実施形態においては約100ナノメートルよりも大きな、及び幾つかの実施形態においては約100から約350ナノメートルのストークスシフトを有する。
例えば、時間分解検出技術で使用するための1つの好適な種類の蛍光化合物は、サマリウム(Sm(III))、ジスプロシウム(Dy(III))、ユウロピウム(Eu(III))、及びテルビウム(Tb(III))のランタニドキレートを含む。このようなキレートは、実質的により短い波長でキレートの励起後に、強く赤方偏移した、狭帯域の、長寿命放出を示すことができる。典型的には、キレートは、分子中のランタニドに近接して位置する発色団に起因する強い紫外線励起帯を保有する。発色団による励起の後で、励起エネルギーは、励起された発色団からランタニドに移送することができる。これに続いて、ランタニドの蛍光放出特性がある。ユウロピウムキレートは、例えば、フルオレセインがわずか約28ナノメートルであるのに比較して、約250から約350ナノメートルの格別に大きなストークスシフトを有する。同様に、ユウロピウムキレートの蛍光は、他の蛍光化合物が約1から100ナノ秒であるのに比較して約100から約1000マイクロ秒の寿命を有する長寿命である。加えて、これらのキレートは、典型的には約50パーセント放出で約10ナノメートル未満の帯域幅を有する狭い放出スペクトルを有する。1つの好適なユウロピウムキレートは、N−(p−イソチオシアナトベンジル)−ジエチレントリアミン四酢酸−Eu+3である。
加えて、水溶液又は懸濁液中において不活性で、安定した本質的に蛍光性であるランタニドキレートを本発明で用いることにより、水溶液又は懸濁液中で限られた溶解性を有し、クエンチング問題を抱えるキレートを保護するために頻繁に用いられる、ミセル形成試薬の必要性を打ち消すことができる。このようなキレートの1つの例は、4−[2−(4−イソチオシアナトフェニル)エチニル]−2,6−ビス([N,N−ビス(カルボキシメチル)アミノ]メチル)−ピリジン[参照:Lovgren,T.,et al.;Clin.Chem.42,1196−1201(1966)]。幾つかのランタニドキレートはまた、格別に高い信号対雑音比を示す。例えば、1つのこのようなキレートは、四座β−ジケトネート−ユウロピウムキレート[参照:Yuan,J.and Matsumoto,K.;Anal.Chem.70,596−601(1998)]。上述の蛍光化合物に加えて、本発明で用いるのに好適な他の化合物は、Mullinax他の米国特許第6,030,840号、Davidsonの米国特許第5,585,279号、Singer他の米国特許第5,573,909号、Wieder他の米国特許第6,242,268号、及びHemmila他の米国特許第5,637,509号に記載されており、これら特許のすべては、すべての目的のために、これらを引用することによりその全体が本明細書に組み入れられる。
上述したように、レポーターは、本発明の幾つかの実施形態において検出可能信号を間接的に発生させることができる。このような場合には、レポーターは、検出可能物質を特に含有することはないであろうが、その代り、検出可能物質と相互作用して検出信号を発生させるものとすることができる。例えば、幾つかの実施形態においては、レポーターは、更に本明細書に記載されるように特定の結合対のメンバーとすることができ又はこれを含むことができる。例えば、特定の結合対のメンバーであるか、又はこれを含むレポーターは、特定の結合対の別のメンバーに抱合された検出可能物質と接触状態に置くことができる。したがって、生成物抱合体又は基質抱合体のメンバーであるレポーターは、検出可能物質に結合することになり、ここで検出可能物質に結合されたレポーターを含む抱合体は、次に当業者によく知られている技術を用いて容易に検出することができる(直接間接を問わず)。以下により詳細に説明されるように、レポーターが特定の結合メンバーを含有するときには、特定の結合メンバーは、デバイス上で固定される場合があるので、他の特定の結合メンバーと異なり、かつそれとの特定の結合親和性がないことが一般的には望ましい。
レポーターが、直接間接を問わず信号を発生させるかどうかに関係なく、このレポーターは、粒状物(「ビーズ」又は「マイクロビーズ」と呼ばれることもある)を含有することができる。とりわけ、粒状物は、クロマトグラフ培地を通って進むレポーターの能力を高め、以下に記載するように検出ゾーン内に固定されるようになる。例えば、核、マイコプラズマ、プラスミド、プラスチド、哺乳類細胞(例えば赤血球ゴースト)、単細胞微生物(例えば、バクテリア)、多糖類(例えばアガロース)等のような天然粒子を用いることができる。更に、合成粒子をまた利用することができる。例えば、1つの実施形態においては、ラテックス粒子は、蛍光又は着色色素で標識される。あらゆるラテックス粒子を用いることができるが、ラテックス粒子は、典型的にはポリスチレン、ブタジエンスチレン、スチレンアクリル−ビニルターポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、ポリビニルアセテート、ポリビニルピリジン、ポリジビニルベンゼン、ポリブチレンテレフタレート、アクリロニトリル、塩化ビニル−アクリレート、及びその他、或いはアルデヒド、カルボキシル、アミノ、ヒドロキシル、又はこれらのヒドラジド誘導体から形成される。他の好適な粒状物は、Jou他の米国特許第5,670,381号及びTarcha他の米国特許第5,252,459号に記載することができる。好適な蛍光粒子の商業的に入手可能な実施例は、「FluoSphere」(Red580/605)及び「TransfluoSphere」(543/620)という商標名でモレキュラープローブ・インコーポレーテッドによって販売されている蛍光カルボキシル化ミクロスフェア、並びに米国オレゴン州ユージンのモレキュラープローブ・インコーポレーテッドによって同様に販売されている「Texas Red」及び5−及び6−カルボキシテトラメチルローダミンを含む。加えて、好適な着色されたラテックス微粒子の商業的に入手可能な実施例は、米国インディアナ州フィッシャーズのバングスラボラトリーズ・インコーポレーテッドによって販売されているカルボキシル化ラテックスビーズを含む。
利用される場合、粒状物の形状は、一般的には変更することができる。1つの特定の実施形態においては、例えば、粒状物は球状である。しかしながら、平板、ロッド、円盤、棒、管、不規則形状等のような他の形状も本発明によって企図される点は理解する必要がある。加えて、粒状物の大きさはまた変更することができる。例えば、粒状物の平均大きさ(例えば直径)は、約0.1ナノメートルから約1,000ミクロン、幾つかの実施形態においては約0.1ナノメートルから約100ミクロン、及び幾つかの実施形態においては約1ナノメートルから約10ミクロンにわたることができる。例えば、「ミクロン規模」粒状物が多くの場合望ましい。利用される場合、このような「ミクロン規模」粒状物は、約1ミクロンから約1,000ミクロン、幾つかの実施形態においては約1ミクロンから約100ミクロン、及び幾つかの実施形態においては約1ミクロンから約10ミクロンの平均大きさを有することができる。同様に、「ナノ規模」粒状物も利用することができる。このような「ナノ規模」粒状物は、約0.1から約10ナノメートル、幾つかの実施形態においては約0.1から約5ナノメートル、及び幾つかの実施形態においては約1から約5ナノメートルの平均大きさを有することができる。
レポーターは、一般的には様々なよく知られている技術のいずれを用いても基質に加えることができる。例えば、基質に対するレポーターの共有アタッチメントは、カルボン酸、アミノ、アルデヒド、ブロモアセチル、ヨードアセチル、チオール、エポキシ及び他の反応性官能基、並びに残余遊離基及びラジカルカチオンを用いて実施することができ、これらを通してカップリング反応を実施することができる。表面官能基はまた、レポーターの表面が極性基の比較的高い表面濃度を含有することができるために、官能性コモノマーとして組み入れることができる。ある種の場合には、レポーターは、それ以上の修正を必要とすることなく基質に対して直接共有結合を可能にすることができる。共有結合以外に物理吸着のような他のアタッチメント技術をまた、本発明で利用することができる点も理解する必要がある。更に他の非共有リンケージ技術は、二次抗体(例えば、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、及び/又はビオチン)のような抗体及び/又は抗原を採用することができる。
レポーターを基質に共有結合するための1つの特定の技術を、ここでより詳細に記載する。この特定の実施形態においては、基質はβカゼインであり、レポーターは染色粒子である。例えば、レポーターは、「FluoSphere」という名称でモレキュラープローブ・インコーポレーテッドから入手可能な赤色カルボキシル化ラテックス粒子とすることができる。
染色粒子をβカゼインと共有抱合するために、粒状物表面上のカルボン酸基は、図2に示すようにカルボジイミド(例えば、エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC))で先ず活性化される。タンパク質及び糖蛋白質基質(例えば、βカゼイン)は、リシン(K)残基の側鎖及び/又は各ポリペプチドのN−末端などの上に典型的には1級アミン基(NH2)を保有するので、活性化されたカルボン酸基は、次に基質の1級アミン(−NH2)と反応してアミド結合を形成することができる。この反応は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(例えば、pH7.2)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)(例えば、pH5.3)、又はホウ酸緩衝剤(例えば、pH8.5)などの緩衝剤で起こる可能性がある。必要に応じて、次に得られた基質抱合体は、例えばあらゆる残りの活性化部位を遮断するようにエタノールアミンで遮断することができる。
基質抱合体が形成されると、使用者は、試験サンプル及び他の何らかの必要な成分を、ある時間の間、基質抱合体により培養することができる。例えば、当業者であれば、酵素触媒反応の培養時間は対象となる酵素の活性によって決まり、次に一部は温度、pH、基質濃度、阻害剤(競合的(基質に結合)、不競合的(酵素基質錯体に結合)、又は非競合的(酵素及び/又は酵素基質錯体に結合))、及びその他の存在によって決まることを容易に認識する。これらの要因を、必要に応じて選択的に制御して、培養時間を増減させることができる。例えば、培養時間は、約1分よりも大きく、幾つかの実施形態においては約5から約50分、及び幾つかの実施形態においては約10から約25分とすることができる。同様に、pHを選択的に制御して、酵素活性を促進することができる。例えば、試験サンプル中の塩基性物質の高レベルにより、例えば8よりも大きな幾つかの酵素の最適活性には高すぎるpHを生じる可能性がある。具体的には、酵素は、約3から約8、及び幾つかの実施形態においては約4から約7のpHレベルで最適活性を保有することができる。したがって、必要に応じて、緩衝剤又は他のpH変換化合物を採用して、望ましいpHを維持することができる。
培養後、試験サンプル中に存在するあらゆる酵素は、典型的には基質抱合体の少なくとも一部の基質と反応することになる。結果として、生成物抱合体(レポーター生成物)、部分的に反応した錯体(例えば、レポーター−基質−酵素)、未反応基質抱合体(レポーター−基質)、並びに酵素触媒反応の2次反応物質及び生成物を含む種々の種を形成することができる。例えば、加水分解性酵素の場合には、酵素触媒開裂反応中に基質抱合体から開裂された物質は、培養混合物中に含まれることになる。新規の結合が基質上に形成される酵素触媒反応の場合を考えると、培養混合物内に含まれる物質は、反応中に含まれる他の反応物質(例えば、ATP、メチル供与反応物質、アミノ酸のようなモノマー、及びポリメラーゼ又はリガーゼによって基質に付加することができるヌクレオチド等)並びに酵素触媒反応中に形成される二次生成物(例えば、ADP)を含むであろう。より長い培養時間及びより大きな酵素濃度により、得られた培養混合物中の生成物抱合体のより大きな濃度を得ることができる。
本発明によれば、診断試験キットはまた、基質抱合体及び/又は生成物抱合体を培養混合物中に存在する他の種から化学的に分離するためのクロマトグラフ培地を採用する分析デバイスを収容する。遠心分離のような他の分離技術と異なり、クロマトグラフ培地は、使い捨てキットとすることが望ましい場合を含み、多くの消費者向け用途に対して得られる診断試験キットを簡略化しその費用を低減することができる。
図1を参照すると、例えば、本発明により酵素の存在又は量を示すのに用いることができる分析デバイス20の1つの実施形態が、ここでより詳細に記載される。図示するように、分析デバイス20は、任意に設けられる支持体21によって支持されたクロマトグラフ培地23を含む。クロマトグラフ培地23は、流体が流体チャネル、多孔性膜等を通過することができる様々な物質のいずれからも作ることができる。例えば、クロマトグラフ培地23は、これらに制限されるものではないが、多糖類のような天然、合成、又は合成的に修飾された天然物質(例えば、酢酸セルロース及びニトロセルロースなどの紙及びセルロース誘導体などのセルロース物質)、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ナイロン、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリエステル、ポリプロピレン、シリカ、不活性化アルミナ、珪藻土、硫酸マグネシウムなどの無機物質、或いは塩化ビニル、塩化ビニル−プロピレンコポリマー、及び塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマーなどのポリマーを有する多孔性ポリマーマトリックス内に規則的に分散された他の無機微細分離物質、天然(例えば、木綿)及び合成(例えば、ナイロン又はレーヨン)の両方の布、シリカゲル、アガロース、デキストラン、及びゼラチンなどの多孔性ゲル、ポリアクリルアミドのようなポリマー薄膜、並びにその他などの物質から形成された多孔性膜とすることができる。1つの特定の実施形態においては、クロマトグラフ培地は、ニトロセルロース及び/又はポリエーテルスルホン物質から形成される。「ニトロセルロース」という用語は、ニトロセルロース単独、又は硝酸と1から7の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸のような他の酸との混合エステルとすることができる、セルロースの硝酸エステルを意味する点は理解する必要がある。
支持体21は、クロマトグラフ培地23を支持することができるあらゆる物質から形成することができる。必須ではないが、支持体21は、光がこれを容易に貫通するように透明とすることができる。加えて、培地を通って流れる流体が支持体21を通して漏れないように、支持体21が液体不透過性であることも一般的には望ましい。支持体に好適な物質の実施例は、制限されるものではないが、ガラスと、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル(例えば、Mylar(登録商標)薄膜)、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、エポキシド、メタクリレート、及びポリメラミンなどのポリマー物質と、その他を含む。当技術分野でよく知られているように、クロマトグラフ培地23は、支持体21上にキャストすることができ、得られた積層体は、望ましい大きさ及び形状にダイ切断することができる。代替的には、クロマトグラフ培地23は、例えば、接着剤で支持体21に簡単に積層することができる。幾つかの実施形態においては、ニトロセルロース又はナイロン多孔性膜は、Mylar(登録商標)薄膜に接着される。感圧接着剤のような接着剤を用いて、多孔性膜をMylar(登録商標)薄膜に結合する。この種の積層構造体は、米国マサチューセッツ州ベッドフォードのミリポア・コーポレーションから商業的に入手可能であると考えられる。好適な積層構造体の更に他の実施例は、Durley,III他の米国特許第5,075,077号に記載されており、この特許は、すべての目的のためにこれを引用することによりその全体が本明細書に組み入れられる。
分析デバイス20はまた、吸収材料28を利用することができる。吸収材料28は、クロマトグラフ培地23全体を通って移動した流体を一般的には受け取る。当技術分野でよく知られているように、吸収材料28は、毛細管作用及び培地23を通る流体流れを促進するのを助けることができる。
上述の培養プロセスは、試験サンプルをクロマトグラフ培地23に付与する前に行うことができ、又はこのプロセスは、分析手順(すなわち、試験サンプルが付与された後培養が培養ウエル内などで起こる)の一部として組み入れることができる。例えば、培養混合物は、クロマトグラフ培地23の一部に直接付与することができ、これを通って次に図1の矢印「L」によって示した方向に進むようにすることができる。代替的には、混合物は、先ずサンプルパッド22又はクロマトグラフ培地23と流体連通状態の他の物質に付与することができる。サンプルパッド22を形成するのに用いることができる幾つかの好適な物質としては、これらに制限されるものではないが、ニトロセルロース、セルロース、多孔性ポリエチレンパッド、及びガラス繊維濾紙がある。必要に応じて、サンプルパッド22はまた、このパッドに拡散的又は非拡散的のいずれかで加えられた1つ又はそれ以上の分析前処理試薬を含有することができる。
それにもかかわらず、クロマトグラフ培地23は、第1の検出ゾーン31を形成し、その中に酵素触媒反応の生成物抱合体又は基質抱合体のいずれかを捕捉して検出することができる(例えば、間接的に)。より具体的には、第1の検出ゾーン31内で抱合体を捕捉するのに利用される方法は、2つのうちの1つだけが第1の検出ゾーン31内で捕捉されるように、生成物抱合体と基質抱合体を区別する。例えば、1つの実施形態においては、クロマトグラフ培地23は、第1の検出ゾーン31を形成し、その中に生成物抱合体を捕捉して検出することができる。生成物抱合体を捕捉するこの手法は、酵素触媒反応の生成物の性質及び利用するレポーターの性質に応じて決めることができる。幾つかの実施形態においては、第1の受容物質は、生成物抱合体を捕捉するために第1の検出ゾーン31内に固定することができる。詳細には、第1の受容物質は、基質の酵素触媒反応中に形成された生成物に対して特定の結合親和性を示すものとすることができる。したがって、第1の受容物質は、特定の結合対すなわち分子の一方がもう1つの分子に化学的に及び/又は物理的に特定的に結合する2つの異なる分子の第1のメンバーとすることができ、一方、特定の結合対の第2のメンバーは、レポーターに接合された状態にある基質/酵素反応中に形成された生成物とすることができる。例えば、免疫反応特定の結合メンバーは、組換えDNA法又はペプチド合成によって形成されたものを含む抗原、ハプテン、抗体(一次又は二次)、及びこれらの錯体を含むことができる。抗体は、モノクローナル又はポリクローナル抗体、組み換えタンパク質或いはこれらの混合物又はフラグメント、並びに抗体と他の特定の結合メンバーとの混合物とすることができる。他の一般的な特定の結合メンバーとしては、これらに制限されるものではないが、ビオチン及びアビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、キャプトアビジン、又は抗ビオチン抗体、タンパク質A及びG、炭水化物及びレクチン、相補的ヌクレオチド配列(標的核酸配列を検出するために、DNAハイブリダイゼーション分析に用いるプローブ及びキャプチャ核酸配列を含む)、組み換え法によって形成されたものを含む相補的ペプチド配列、エフェクタ及び受容体分子、ホルモン及びホルモン結合タンパク、酵素補助因子及び酵素、酵素阻害剤及び酵素、これらの誘導体並びにその他がある。更に、特定の結合対は、類似物、誘導体、及び/又は元の特定の結合メンバーのフラグメントであるメンバーを含むことができる。特定の結合メンバーとして用いるためのこのような抗体、及びこれらの抗体の適合性の調製の詳細は、当業者によく知られている。
1つの特定の実施形態においては、基質(例えば、オバアルブミンのような遊離ジカルボン酸残基を含むタンパク質)は、Sアデノシル−L−メチルメチオニンのような好適なメチル源の存在下でメチラーゼによってメチル化することができる。メチル化生成物抱合体は、メチル化タンパク質とメチル化タンパク質に対して特定の結合親和性を示す受容物質との間の特定の結合によって、第1の検出ゾーン31内で固定された状態になることができる。例えば、第1の受容物質は、メチル化タンパク質に対して特定のモノクローナル抗体とすることができる。生成物抱合体を固定すると、検出可能物質(例えば、レポーター)によって発生された信号を検出することができる。
別の実施形態においては、キナーゼを検出することができる。例えば、Ablタンパク質キナーゼのようなタンパク質キナーゼは、レポーターに接合されたSEQ ID NO.:1のようなペプチド配列を含む基質抱合体と培養することができる。キナーゼ及び例えばATPのようなリン酸供給源の存在下で、ペプチドは、リン酸化することができる。したがって、第1の受容物質は、例えばモノクローナル抗体及びその他のようなリン酸化反応に続いて、SEQ ID NO.:1に対する特定の結合メンバーとすることができる。
図1を参照すると、本発明の診断キットは、第2の検出ゾーン35を含むことができる。第1の検出ゾーン31の下流として図示されているが、これは本発明の要件ではなく、第2の検出ゾーン35は、第1の検出ゾーン31の上流又は下流のいずれかとすることができる。第2の検出ゾーン35内に、基質抱合体又は生成物抱合体のいずれかを捕捉して検出することができる。例えば、第1の検出ゾーン31が優先的に生成物抱合体を拘束する実施形態を考えると、第2の検出ゾーン35は、基質抱合体の捕捉のために設計することができ、逆もまた同じである。したがって、第2の検出ゾーン35内に、検出ゾーン31で第1の受容物質に結合しない基質抱合体及び/又は部分的に反応した錯体を捕捉して検出することができる。
例えば、第2の受容物質は、第2の検出ゾーン35内に固定することができ、この第2の検出ゾーン35は、未反応基質抱合体、酵素触媒開裂反応中にレポーターから遊離される基質の一部、及び/又は部分的に反応した錯体(例えば、レポーター−基質−酵素錯体)に対して静止結合部位として働くものとすることができる。第2の受容物質は、2つを区別するように酵素触媒反応の生成物と比較して基質と異なる結合を示すことになる、あらゆる好適な結合剤とすることができる。例えば、第2の受容物質は、上述のもののような結合メンバーを含むことができる。第2の受容物質は、基質抱合体に特定的に結合することが望ましいので、第2の受容物質は、第1の受容物質とは異なるものとされる。例えば、両物質は、例えばモノクローナル抗体のような類似の種類のものとすることができるが、第1の受容物質は基質を拘束することはなく、第2の受容物質は、レポーターに接合された状態にある酵素触媒反応の生成物を拘束しないものとする。
上述の実施例においては、基質は、メチラーゼによって標的にすることができる遊離ジカルボン酸残基を含むタンパク質とすることができ、第2の受容物質は、タンパク質基質(例えば、タンパク質基質に対して産生されるモノクローナル抗体)に対する特定の結合メンバーとすることができる。同様に、SEQ ID NO.:1のような基質を考慮すると、第2の受容物質は、例えばポリペプチドに対して産生されるモノクローナル抗体のようなSEQ ID NO.:1に特定的に結合する結合メンバーとすることができる。
第1の検出ゾーン31及び任意的に設けられる第2の検出ゾーン35は、使用者が、試験サンプル中の酵素の濃度をうまく求めることができるように、一般的に、区別できる検出領域を幾つでも形成することができる。検出ゾーン31、35を有する各領域は、同じか又は異なる受容物質を含有することができる。例えば、検出ゾーン31は、2つ又はそれ以上の区別できる検出領域(例えば、線、点等)を含むことができる。2つ又はそれ以上の明確な検出領域の使用は、半定量化の促進及び/又は基質抱合体又は他の物質の超過に起因する誤判定の可能性の抑制などの一定の利点を提供することができる。ゾーンを有する検出領域は、クロマトグラフ培地23を通って試験サンプルの流れに実質的に垂直な方向に線状で配置することができる。同様に幾つかの実施形態においては、検出領域は、培地23を通って試験サンプルの流れに実質的に平行な方向に線状で配置することができる。
第1の検出ゾーン31が生成物抱合体を捕捉するように設計されたこれらの実施形態においては、酵素濃度が試験サンプル中で増加し始めると、第1の検出ゾーン31で受容物質に対して特定の結合親和性を有するより多くの生成物抱合体が形成される。したがって第1の検出ゾーン31におけるレポーターの量の増加により、信号強度の増大をもたらす。この信号強度の増大から、酵素の存在又は濃度を容易に求めることができる。例えば、1つの実施形態においては、酵素の量は、第1の検出ゾーン31における信号強度I1に正比例する。必要に応じて、信号強度I1は、強度曲線を生成するために既知の酵素濃度の範囲で酵素濃度に対してプロットすることができる。未知の試験サンプル中の酵素量を求めるために、次に信号強度は、強度曲線により酵素濃度に換算することができる。
第1の検出ゾーン31の1つ又はそれ以上の明確な領域は、信号強度と酵素濃度との間で前述の関係を示すことができる点は理解する必要があるが、しかしながら、各々の明確な領域はこのような関係を示す必要はない。例えば、幾つかの実施形態においては、複数の明確な領域の1つだけが、酵素の濃度に正比例する信号強度を示すものとすることができる。誤判定を低減させるのに用いるもののような他の明確な領域の信号強度は、そうでなければ一定のままの可能性があり、或いは信号強度の増大及び/又は低下を示す可能性がある。検出ゾーン31の少なくとも1つの明確な領域が正比例関係を満足させる限り、第1の検出ゾーン31によって示す信号強度は、酵素濃度に正比例すると考えられる。
本発明によれば、関心酵素の検出感度のレベルは、望ましい用途に応じて選択的に制御することができる。検出感度を制御するための1つの特定の技術は、第1の検出ゾーン31で用いる第1の受容物質の量を操作する段階を含む。例えば、高濃度の酵素を含有する疑いがあるサンプルを分析すると、第1の受容物質の量は、酵素溶媒反応によって形成することができる生成物抱合体の総量を取り込むのに必要な最小値に等しいか又はこれよりも大きくすることができる。したがって、特定の量の酵素が試験サンプル中に存在する場合には、非常に高い割合の基質抱合体が酵素と反応して、検出ゾーン31において固定される生成物抱合体を形成することになり、レポーターの本質的に全てが、第1の検出ゾーン31内に存在することになる。高い割合の生成物抱合体を取り込むのに必要な最少量は、実験的に求めることができ、一般的には酵素との基質の反応性によって決まる。
高検出感度が望ましい用途(例えば、酵素濃度が低いと疑われるか又は培養時間が短い場合)においては、第1の受容物質の量は、利用する生成物抱合体の総量を取り込むのに必要な最小値よりも多くすることができる。第1の受容物質を大量に使用することは、そうでない場合に実際の濃度よりもわずかに低い測定酵素濃度がもたらされることに比べて、あらゆる部分的に反応した錯体が第1の検出ゾーン31において捕捉される可能性を増大させる、といった利点を含む、様々な利点を提供することができる。すなわち、部分的に反応した錯体は、完全に反応した生成物抱合体と比較して、立体障害等に起因して受容物質に結合する可能性は一般的に少ないものとなる。これにより、部分的に反応した錯体が、第1の検出ゾーン31に結合することになる可能性を統計的に低下させる。
基質抱合体が、第2の検出領域35で直接検出可能であると、酵素濃度の減少は、基質抱合体及び/又は部分的に反応した錯体の存在に起因して、第2の検出ゾーン35における信号強度I2の増大をもたらす。この信号強度の増大から、酵素の存在又は濃度は、容易に求めることができる。例えば、1つの実施形態においては、酵素の量は、第2の検出ゾーン35における信号強度I2に反比例する。必要に応じて、信号強度I2は、既知の酵素濃度の範囲で酵素濃度に対してプロットして強度曲線を生成することができる。未知の試験サンプル中の酵素量を求めるために、次に信号強度は、強度曲線により酵素濃度に換算することができる。第1の検出ゾーン31に対して上記で議論されたように、第2の検出ゾーン35の1つの明確な領域が、反比例関係を満足させる限り、第2の検出ゾーン35によって示す信号強度は、酵素濃度に反比例すると考えられる。
同様に、第1の検出ゾーン31における信号強度(I1)と第2の検出ゾーンに35おける信号強度(I2)との間に反比例関係が存在する可能性がある。例えば、レポーターの所定の量が存在するので、第2の検出ゾーン35で取り込まれた量が、第1の検出ゾーン31で取り込まれた量に反比例する。この反比例関係の結果として、酵素の濃度は、場合によっては、両検出ゾーンで信号強度を比較することによって拡張範囲にわたって効果的に測定することができる。例えば、1つの実施形態においては、酵素の量は、信号強度「I1」対信号強度「I2」の比率に正比例する。この比率が低下する範囲に基づいて、酵素の全体の濃度範囲を求めることができる。必要に応じて、I1対I2の比率は、強度曲線を生成するために既知の酵素濃度の範囲で酵素濃度に対してプロットすることができる。未知の試験サンプル中の酵素量を求めるために、次に信号強度比は、強度曲線により酵素濃度に換算することができる。I1とI2との間の別の数学的関係は、強度曲線を生成するために酵素濃度に対してプロットすることができる点に留意されたい。例えば、1つの実施形態においては、I1/(I1+I2)の値は、強度曲線を生成するために酵素濃度に対してプロットすることができる。
上述したように、本発明のある種の実施形態では、直接検出できないレポーターを利用することができる。したがって、レポーターは、遊離されたとき、幾つかの手法でその後の検出のために検出可能物質と相互作用することが一般的には望ましい。例えば、レポーターを含む生成物抱合体及び/又は基質抱合体に結合するように構成された、検出可能信号を発生させることができるプローブを採用することができる。例えば、プローブは、標識され又はそうでなければ検出可能物質と共に付与された粒状物を含有することができる。場合によっては、幾つかの手法でプローブを修正することが望ましい。例えば、プローブを特定の結合メンバーで修正して、生成物抱合体に対して特定の親和性を有する抱合プローブを形成することができる。特定の結合メンバーは、上述のような手法で共有結合及び/又は物理吸着などを通して様々なよく知られている技術のいずれを用いても、一般的にはプローブに抱合することができる。1つの特定の実施形態においては、プローブ表面上のカルボン酸基は、活性化されかつ特定の結合メンバーのアミノ基と反応して、アミド結合を形成する。利用するとき、プローブ及びレポーターに用いる特定の結合対は、第1の受容物質及び第2の受容物質に用いる特定の結合対とは異なるのが一般的には望ましい。これは、プローブ及びレポーターが、上述の結合機構に実質的に干渉しないことを保証するのに役立つ。
プローブは、酵素検出プロセスのあらゆる段階で生成物抱合体及び/又は基質抱合体と接触させることができる。例えば、幾つかの実施形態においては、プローブは、検出が望ましい領域から上流の場所で分析デバイス20に付与することができる。例えば、1つの実施形態においては、プローブは、検出ゾーン31及び35から上流であるがサンプルパッド22からは下流に位置する抱合パッド(図示せず)に付与することができる。
このような実施形態においては、様々な分析フォーマットを用いて、生成物抱合体を検出することができる。1つの実施形態においては、例えば、生成物抱合体が抱合プローブの特定の結合メンバーに対して及び第2の受容物質に対して親和性を有する、「サンドイッチ」分析フォーマットが用いられる。例えば、抗体、抗原等を含む生成物抱合体は、典型的には2つ又はそれ以上の結合部位(例えば、エピトープ)を有する。これらの結合部位の1つは、抱合プローブの特定の結合メンバーによって占められた状態になる。しかしながら、生成物抱合体の遊離結合部位は、その後第1の検出ゾーン31内に固定された受容物質に結合して、新規三元サンドイッチ錯体を形成することができる。代替的には、生成物抱合体は、直接間接を問わず「競合」分析フォーマットを用いて検出することができる。このような場合には、抱合プローブの特定の結合メンバーは、生成物抱合体と同じ又はこれの類似物とすることができる。したがって、第1の検出ゾーン31に達すると、抱合検出プローブ及び生成物抱合体は、固定受容物質の利用可能結合部位を競合する。勿論、いずれの他の分析フォーマットもまた、本発明で使用するのに好適である。
生成物抱合体が間接的に検出可能である上述の実施形態では、試験サンプル中の酵素濃度の増大は、より多数の生成物抱合体の形成をもたらす。したがって、サンドイッチ分析フォーマットを用いる場合、より多くの生成物抱合体は、酵素の量が第1の検出ゾーン31で信号強度に正比例するように抱合プローブに結合する。他方、競合分析フォーマットを用いる場合、酵素の量は、第1の検出ゾーン31で信号強度に反比例する。いずれの場合でも、信号強度は、強度曲線を生成するために既知の酵素濃度の範囲で酵素濃度に対してプロットすることができる。未知の試験サンプル中の酵素量を求めるために、次に信号強度は、強度曲線により酵素濃度に換算することができる。
図3を参照すると、蛍光を用いてプロテアーゼの存在を検出するための方法の1つの実施形態が、ここでより詳細に説明される。最初に、プロテアーゼPを含有する試験サンプルが、各々が基質47(例えば、タンパク質又は糖タンパク質)に接合された蛍光粒子43を含む基質抱合体SCと混合される。基質抱合体SCは、十分な時間期間プロテアーゼPと培養することが可能であり、酵素触媒反応を介して基質42から開裂されたポリペプチド、未反応基質抱合体SC、プロテアーゼP、並びに各々が酵素触媒反応を介して生成された生成物48に対して蛍光粒子43接合部を含む、酵素触媒反応によって生成された生成物抱合体PCを含む培養混合物(図3に示した番号65)を形成する。培養混合物65は、図示した方向矢印によって示すようにサンプルパッド22に付与され、次に第1の検出ゾーン31まで進む。酵素触媒反応によって生成された生成物48に対して特定の第1の受容物質90が、第1の検出ゾーン31内に固定される。したがって、第1の検出ゾーン31内の利用可能結合部位は、生成物抱合体PCによって占めることができる。しかしながら、基質抱合体SCは、第2の検出ゾーン35まで進んで、未反応基質47に対して特定の結合メンバーであるその中に含有された第2の受容物質92に結合する。したがって基質47に接合された蛍光粒子43はまた、第2の検出ゾーン35まで進んで第2の受容物質に結合する。
一旦取り込まれると、蛍光粒子43の信号強度は、第1の検出ゾーン31及び/又は第2の検出ゾーン35で測定することができる。蛍光検出は、一般的に、励起光子から放出光子を分離する波長フィルタリングと、放出光子を記録して、通常電気信号又は写真画像として記録可能出力を生成する検出器とを利用する。本発明で用いるための1つの好適な蛍光検出器は、米国ニュージャージー州エジソンのSPEXインダストリーズ・インコーポレーテッドによって販売されているFluoroLog III Spectrofluorometerである。好適な蛍光検出器の別の実施例は、Song他の米国特許出願公報第2004/0043502号に記載されており、この特許は、すべての目的のためにこれを引用することによりその全体が本明細書に組み入れられる。蛍光の使用がこの特定の実施形態において利用されるが、あらゆる他の既知の検出技術もまた、本発明において利用することができる点は理解する必要がある。例えば、他の好適な光学的検出技術は、制限されるものではないが、リン光、回折、反射率、透過率等を含むことができる。光学式読取装置は、光を放出することができかつ検出信号(例えば、伝達され又は反射された光、放出された蛍光或いはリン光等)を記録することもできる。例えば、1つの実施形態においては、反射分光光度計又は読取装置を利用して、ビジュアルカラー(例えば、染色ラテックス微小粒子)を示すレポーターの存在を検出することができる。1つの好適な反射読取装置は、例えば、Kaylor他の米国特許出願公報第2003/0119202号に記載されており、この特許は、すべての目的のためにこれを引用することによりその全体が本明細書に組み入れられる。
信号強度を測定するのに用いる技術に関係なく、プロテアーゼPの絶対量は、第1の検出ゾーン31における信号強度を第2の検出ゾーン35における信号強度と比較することによって確認することができる。例えば、上述のように、プロテアーゼPの量は、I1/I2の比率によって求めることができ、前に確認した強度曲線を用いてこの比率を酵素濃度に換算することができる。代替的には、信号強度I1又はI2はまた、酵素の存在又は濃度を示すのに単独で用いることができる。勿論、本発明はまた、酵素の単なる存在が、実際の酵素濃度に対して特定の相関関係なしに信号強度によって確かめられる定性的実施形態を企図する。
図4を参照すると、蛍光を用いて転移酵素の存在を検出するための方法の1つの実施形態が、ここでより詳細に説明される。最初に、転移酵素Tを含有する試験サンプルは、各々が基質67(例えば、ポリペプチド)に接合された蛍光粒子43を含む基質抱合体SCと混合される。基質抱合体SCは、十分な時間期間転移酵素と培養することが可能であり、転移酵素の標的となる部分を提供することができる成分64(例えば、ATP)、未反応基質抱合体SC、転移酵素T、並びに各々が酵素触媒反応を介して生成された生成物68(例えば、リン酸化ポリペプチド)に接合された蛍光粒子43を含む酵素触媒反応によって生成された生成物抱合体PCを含む培養混合物(図4に示した番号65)を形成する。培養混合物65は、図示された方向矢印によって示すようにサンプルパッド22に付与され、次に第1の検出ゾーンまで進む。酵素触媒反応によって生成された生成物68に対して特定の第1の受容物質91が、第1の検出ゾーン31内に固定される。したがって、第1の検出ゾーン31内の利用可能結合部位は、生成物抱合体PCによって占めることができる。しかしながら、未反応基質抱合体SCは、第2の検出ゾーン35まで進んで、未反応基質67に対して特定の結合メンバーであるその中に含有された第2の受容物質93に結合する。したがって基質67に接合された蛍光粒子43はまた、第2の検出ゾーン35まで進んで第2の受容物質に結合する。一旦取り込まれると、信号強度は、本明細書に記載された他の実施形態ついて記載されたように測定して分析することができる。
1つの例示的用途においては、診断キットは、RASタンパク質活性化サイクルに含まれる酵素の存在を求めるために用いることができる。RASタンパク質は、広範な信号経路にとって重要な分子スイッチとして機能する。これらの経路は、細胞骨格完全性、細胞接着及び移動、並びにアポトーシスを含むプロセスを制御する。RASタンパク質は、活性型(RAS−GTP)と不活性型(RAS−GDP)との間を循環する。
RASタンパク質は、浸潤及び転移の進展並びにアポトーシスの低下につながる癌においては多くの場合無秩序である。したがって、診断キットは、RAS−GTPをその不活性RAS−GDP型に戻すGTP加水分解の比率を増大させる、GTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の存在の判定に利用することができる。例えば、GAPを含有する試験サンプルは、各々がRAS−GTP基質に接合された蛍光粒子を含む基質抱合体と混合することができる。基質抱合体は、十分な時間期間試験サンプルと培養することが可能であり、未反応基質抱合体(RAS−GTP/粒状物)と、酵素触媒反応によって生成された生成物抱合体(RAS−GDP/粒状物)とを含むことができる培養混合物を形成する。培養混合物は、上述のようにサンプルパッドに付与され、次いで検出ゾーンまで進む。酵素触媒反応によって生成された生成物RAS−GDP又は任意なものとしては基質RAS−GTPのいずれかに対して特定の受容物質が、検出ゾーン内に固定される。例えば、ある種の代謝経路においてRAS−GTPによって活性化されたMAPキナーゼは、検出ゾーン内に固定することができる。したがって、検出ゾーン内の利用可能結合部位は、MAPキナーゼ受容物質を優先的に拘束する基質抱合体(RAS−GTP/粒状物)によって占めるようにすることができる。したがって基質に接合された蛍光粒子はまた、検出ゾーン内で結合されることになる。しかしながら、生成物抱合体(RAS−GDP/粒状物)は、MAPキナーゼ受容物質を優先的に結合することなく検出ゾーンを通過することができる。一旦取り込まれると、信号強度は、本明細書に記載された他の実施形態ついて記載されたように測定して分析され、試験サンプル中のGAPの存在を求めることができる。
別の実施形態においては、診断試験キットを利用して、RAS活性化タンパク質の存在を求めることができる。例えば、診断試験キットを利用して、RAS−GDPのその活性型RAS−GTPへの再活性化を触媒するG交換因子(GEF)(例えば、CDC25、SOS1、SOS2)の存在を求めることができる。この実施形態によれば、基質抱合体は、蛍光粒子に接合されたタンパク質の不活性型RAS−GDPを含むことができる。活性化GEFを含有する試験サンプルと基質抱合体を培養すると、RAS−GDPはRAS−GTP型に活性化することができる。この場合には、生成物抱合体(RAS−GTP/粒状物)は、検出ゾーン内に固定されたMAPキナーゼによって取り込まれて、試験サンプル中のGEFの存在又は量を求めることができる。
診断試験キットの別の例示的用途は、試験サンプル中のアンギオテンシン変換酵素(ACE)の存在の判定である。ACEは、アンギオテンシンIIへのアンギオテンシンIの変換を触媒するエクソペプチダーゼである。アンギオテンシンIは、主にアンギオテンシンIIの前駆体として存在するように見られ、一方、アンギオテンシンIIは、強力な血管収縮物質であり、高血圧、心疾患及び糖尿病性腎症などの病状において役割を果たすと考えられる。この特定の実施形態によれば、診断試験キットは、レポーターに接合されたアンギオテンシンIを含む基質抱合体を含むことができる。基質抱合体をACEを含有する試験サンプルと培養すると、アンギオテンシンIをアンギオテンシンIIに変換することができる。診断試験キットの検出ゾーンは、例えば、AT1又はAT2のようなアンギオテンシンIIに対して特定の受容物質をこの中に固定された状態で含有することができる。検出ゾーン内の生成物抱合体(アンギオテンシンII/レポーター)の結合及び検出は、試験サンプル中のACEの存在を示すことができる。
本発明の診断キットは、上述の検出ゾーン31、35に加えて他のゾーンを含むことができる。例えば、分析デバイスは、任意なものとしては較正ゾーンを含むことができる。この実施形態においては、較正ゾーン(図示せず)は、膜23上に形成され、検出ゾーン31及び任意の検出ゾーン35から下流に位置付けられる。しかしながら、代替的には較正ゾーンはまた、検出ゾーン31及び/又は任意の検出ゾーン35から下流に位置付けることができる。較正ゾーンは、膜23の長さの範囲を通過するあらゆる較正プローブに結合することができる受容物質を備える。較正プローブを利用するときには、該較正プローブは、基質抱合体及び生成物抱合体に用いる検出可能物質と同じ又は異なる検出可能物質を含有することができる。更に較正プローブはまた、上述のような特定の結合メンバーに抱合することができる。例えば、1つの実施形態においては、ビオチン化較正プローブを用いることができる。一般的に言えば、較正プローブは、これらが検出ゾーン31及び検出ゾーン35で第1又は第2の受容物質に結合しないといったように選択される。較正ゾーンの受容物質は、検出ゾーン31又は検出ゾーン35で用いる受容物質と同じ又は異なるものとなる。例えば、1つの実施形態においては、較正ゾーンの受容物質は、抗原、ハプテン、抗体結合タンパク質(例えば、タンパク質A、タンパク質G、又はタンパク質A/G)、ニュートラアビジン、アビジン、ストレプトアビジン、キャプトアビジン、一次又は二次抗体、或いはこれらの錯体等の生物学的受容物質である。Song他の米国特許出願公報第2003/0124739号に記載され、この特許は、すべての目的のためにこれを引用することによりその全体が本明細書に組み入れられるような、較正ゾーンの受容物質(例えば、高分子電解質)に対して種々の非生物学的物質を利用するのが同様に望ましいものとなる。
高分子電解質を利用するときには、該高分子電解質は、正味正電荷又は負電荷及びほぼ中性の正味電荷を有するものとすることができる。例えば、正味正電荷を有する高分子電解質の幾つかの好適な実施形態は、制限されるものではないが、ポリリジン(米国ミズーリ州セントルイスのシグマ−アルドリッチケミカル・カンパニーインコーポレーテッドから商業的に入手可能)、ポリエチレンイミン、ポリ(ジメチルアミン−コ−エピクロロヒドリンのようなエピクロロヒドリン−官能性ポリアミン及び/又はポリアミドアミン、ポリジアリルジメチル−塩化アンモニウム、4級アンモニウム水溶性モノマーでグラフトされたセルロースコポリマー又はセルロース誘導体などのカチオン性セルロース誘導体、及びその他を含む。1つの特定の実施形態においては、4級アンモニウム水溶性モノマーを含有するセルロース誘導体であるCelQuat(登録商標)SC−230M又はH−100(ナショナルスターチアンドケミカル・インコーポレーテッドから入手可能)を利用することができる。更に、正味負電荷を有する高分子電解質の幾つかの好適な実施例は、制限されるものではないが、ポリ(エチレン−コ−メタクリル酸、ナトリウム塩)のようなポリアクリル酸、及びその他を含む。両親媒性高分子電解質(すなわち、極性及び非極性部分を有する)のような、他の高分子電解質もまた利用することができる点も理解する必要がある。例えば、好適な両親媒性高分子電解質の幾つかの実施例は、制限されるものではないが、ポリ(スチリル−b−N−メチル2−ビニルピリジニウム(pyridnium)ヨージド)及びポリ(スチリル−b−アクリル酸)を含み、両方共、カナダのドーヴァルのポリマーソース・インコーポレーテッドから入手可能である。
あらゆる高分子電解質を一般的には用いることができるが、特定の用途に選択される高分子電解質は、基質抱合体、生成物抱合体、較正プローブ、膜、及びその他の性質に応じて変更することができる。詳細には、高分子電解質の分散電荷により、高分子電解質が反対電荷を有する物質に結合することを可能にする。したがって、例えば、正味正電荷を有する高分子電解質は、多くの場合負の電荷を帯びたプローブと結合する態勢がよく整っており、一方、正味負電荷を有する高分子電解質は、多くの場合正の電荷を帯びたプローブに結合する態勢がよく整っている。したがって、このような場合には、これらの分子間のイオン相互作用により、必要な結合が較正ゾーン内で起こることを可能にする。それにもかかわらず、イオン相互作用は、較正ゾーン内で望ましい結合を達成するのに主に利用されるが、高分子電解質はまた、同様の電荷を有するプローブと結合することができる。
高分子電解質は、プローブに結合するように設計されるので、この高分子電解質は、膜23の表面上に実質的に非拡散的に固定されるのが典型的には望ましい。そうでなければ、プローブは、使用者によって容易に検出されないであろう。したがって、高分子電解質は、これらの高分子電解質が膜23のマトリックス内に実質的に拡散しないといったように膜23に付与することができる。詳細には、高分子電解質は、典型的には膜23の表面上に存在する官能基とイオン及び/又は共有結合を形成して、その結果高分子電解質が膜23の上に固定されたままになる。必須ではないが、高分子電解質と膜23との間の共有結合の形成は、高分子電解質を膜23の上により恒久的に固定するのが望ましいものとなる。例えば、1つの実施形態においては、高分子電解質を形成するのに用いるモノマーは、先ず溶液中に形成され、次いで膜23に直接付与される。種々の溶媒(例えば、有機溶媒、水等)は、溶液を形成するために利用することができる。一旦付与されると、モノマーの重合は、加熱、電子線照射、遊離基重合、及びその他を用いて開始される。場合によっては、ポリマーが重合すると、これらのモノマーは膜23のある種の官能基と共有結合を形成し、これによって得られた高分子電解質を膜23の上に固定する。例えば、1つの実施形態においては、エチレンイミンモノマーは、幾つかの膜(例えば、ニトロセルロース)の表面上に存在するカルボキシル基と共有結合を形成することができる。
別の実施形態においては、高分子電解質は、膜23に付与する前に形成することができる。必要に応じて、高分子電解質は、有機溶媒、水、及びその他を用いて先ず溶液中に形成することができる。その後に、高分子電解質溶液は、膜23に直接付与され次いで乾燥される。乾燥すると、高分子電解質は、高分子電解質と反対の電荷を有する膜23の表面上に存在するある種の官能基とイオン結合を形成することができる。例えば、1つの実施形態においては、正の電荷を帯びたポリエチレンイミンは、幾つかの膜(例えば、ニトロセルロース)の表面上に存在する負の電荷を帯びたカルボキシル基とイオン結合を形成することができる。
加えて、高分子電解質はまた、種々のよく知られている技術を用いて膜23に架橋結合することができる。例えば、幾つかの実施形態においては、エピクロロヒドリン−官能性ポリアミン及び/又はポリアミドアミンは、架橋性の正の電荷を帯びた高分子電解質として用いることができる。これらの物質の実施例は、Keimの米国特許第3,700,623号及びKeimの米国特許第3,772,076号、Keimの米国特許第4,537,657号に記載されており、これら特許のすべては、すべての目的のためにこれを引用することによりその全体が本明細書に組み入れられ、Kymene(商標)という商標名で米国デラウエア州ウィルミントンのハーキュリース・インコーポレーテッドによって販売されていると考えられる。例えば、Kymene(商標)450及び2064は、ある種のタイプの膜(例えば、ニトロセルロース)上に存在するカルボキシル基と共有結合を形成することができ、硬化すると膜のポリマー骨格と架橋結合することができる、エポキシド環及び4級アンモニウム基を含有するエピクロロヒドリン−官能性ポリアミン及び/又はポリアミドアミン化合物である。幾つかの実施形態においては、架橋結合温度は、約50℃から約120℃にわたることができ、架橋結合時間は、約10から約600秒にわたることができる。
膜23上に高分子電解質を非拡散的に固定するための種々の技術を上述したが、高分子電解質化合物を非拡散的に固定するための他の技術のいずれをも、本発明で用いることができることを理解すべきである。実際に、前述の方法は、本発明で用いることができる技術の例示であることを意図しているに過ぎない。例えば、幾つかの実施形態においては、ある種の成分は、膜23のマトリックス内へのこのような高分子電解質の拡散を実質的に阻害する可能性がある高分子電解質溶液に付加することができる。
場合によっては、膜23はまた、分析が適切に実施されているという信号を使用者に与える制御ゾーン(図示せず)を形成することができる。例えば、制御ゾーン(図示せず)は、プローブ又はプローブ上に固定された受容物質と化学的及び/又は物理的結合を一般的には形成することができる固定受容物質を含有することができる。このような受容物質の幾つかの例としては、これらに制限されるものではないが、抗原、ハプテン、抗体、タンパク質A又はG、アビジン、ストレプトアビジン、二次抗体、及びこれらの錯体がある。加えて、制御ゾーン受容物質に対して種々の非生物学的物質を利用するのが同様に望ましいものとなる。例えば、幾つかの実施形態においては、制御ゾーン受容物質はまた、取り込まれなかったプローブに結合することができる上述のような高分子電解質を含むことができる。制御ゾーンにおける受容物質は、プローブに対して特定のものであるに過ぎないので、検体が存在するかどうかにかかわらず信号が生じる。制御ゾーンは、膜23に沿ってあらゆる場所に位置付けることができるが、検出ゾーン31及び検出ゾーン35から下流に位置付けられるのが好ましい。
前述の検出技術は、特に酵素に関連して記載されている。しかしながら、上述したように、本発明は、試験サンプル中の酵素阻害剤の存在又は量を検出するのに等しく好適である。試験サンプル中の酵素阻害剤の存在を検出するために、対応する酵素の所定の量は、試験サンプルと混合して培養を可能にすることができる。酵素阻害剤のある一定量の存在下では、酵素触媒反応は検出可能速度で進行しない。したがって、酵素阻害剤濃度と信号強度との間の関係は、酵素濃度と信号強度との間の関係とは反対になる。1つの例証として、酵素触媒反応は、ある一定量の阻害剤の存在下では起こることはない。したがって、いかなる生成物抱合体も、その最低信号強度を発生させる検出ゾーン31では取り込まれることはない。他方、酵素阻害剤の量が減少すると、酵素は、上述のように生成物抱合体の形成を生じさせる。したがって検出ゾーン31で発生された信号強度は、生成物抱合体の存在の対応する増大に起因して増大し始める。同様に、検出ゾーン35で発生された信号強度は、幾つかの実施形態においては生成物抱合体の存在の対応する低下に起因して低下し始める。したがって、この特定の実施形態においては、試験サンプル中の酵素阻害剤の量は、検出ゾーン31で信号強度に反比例し、検出ゾーン35で信号強度に正比例する。
本発明の診断試験キットは、酵素又は酵素阻害剤の現場試験を速やかに実施することができる、比較的簡単で費用効果のある方法を提供するものである。試験キットは、この試験キットが、早急にかつ高い信頼性のある一貫した試験結果につながる試験条件下で、試験を実施する人によって容易に観察されるように目に見える試験結果を提供することができる。診断試験キットはまた、試験が終了すると必要に応じてこの診断試験キットを廃棄することができるように使い捨てである。
本発明は、本発明の特定の実施形態に関して詳細に記載したが、当業者であれば、上述の事項の理解に到達すると、これらの実施形態の改変、変更、及び均等物を容易に考え出すことができる点は理解されるであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の請求項及び本発明のあらゆる均等物の範囲と評価すべきである。
本発明の診断試験キットで用いることができる分析デバイスの1つの実施形態の斜視図である。 基質にレポーターを共有結合するための1つの実施形態の図解説明である。 試験サンプル中の酵素の存在又は量を検出するために、本発明の1つの実施形態で用いることができる1つの分析技術の概略図である。 試験サンプル中の酵素の存在又は量を検出するために、本発明の別の実施形態で用いることができる別の分析技術の概略図である。
符号の説明
10 デバイス
11、12 ゾーン
13 ポリマービーズ
14 ストレプトアビジン
15 ペプチドリンカー
16 プロテアーゼ
17 バイオセンサー膜
20 分析デバイス
21 支持体
22 サンプルパッド
23 クロマトグラフ培地
28 吸収材料
31、35 検出ゾーン
42、47、67 基質
43 蛍光粒子
48、68 生成物
64 成分
65 培養混合物
90、91、93 受容物質
L 矢印
P プロテアーゼ
PC 生成物抱合体
SC 基質抱合体
T 転移酵素

Claims (22)

  1. 試験サンプル中の酵素又は酵素阻害剤を検出するための診断キットであって、
    レポーターに接合された基質を各々が含む複数の基質抱合体を備え、
    前記基質抱合体の酵素触媒反応が、前記レポーターに接合された該酵素触媒反応の生成物を含む生成物抱合体を形成し、
    第1の検出ゾーンを形成するクロマトグラフ培地が設けられ、前記第1の検出ゾーン内に、前記基質抱合体及び前記生成物抱合体のうちの1つだけを優先的に拘束するようにされており、
    前記基質抱合体又は前記生成物抱合体の拘束が、前記第1の検出ゾーン内に第1の検出信号を発生させ、酵素又は酵素阻害剤の存在又は量を前記第1の検出信号から求めることができるようになる、
    ことを特徴とする診断キット。
  2. 前記レポーターが、前記第1の検出信号を直接発生させることができる検出可能物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の診断試験キット。
  3. 前記レポーターが、特定の結合メンバーを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の診断試験キット。
  4. 特定の結合メンバーに抱合されたプローブを更に含み、該プローブが、前記検出信号を直接生成することができる検出可能物質を更に含むことを特徴とする請求項1−3のいずれか1項に記載の診断試験キット。
  5. 前記プローブの前記特定の結合メンバーが、前記レポーターの前記特定の結合メンバーに対して特定の結合親和性を有することを特徴とする請求項4に記載の診断試験キット。
  6. 受容物質が、前記第1の検出ゾーン内に固定され、前記生成物抱合体が、前記受容物質に対して特定の結合親和性を示すことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の診断試験キット。
  7. 前記受容物質が、モノクローナル抗体であることを特徴とする請求項6に記載の診断試験キット。
  8. 前記クロマトグラフ培地は、前記基質抱合体をその中に優先的に拘束する第2の検出ゾーンを更に含み、前記第2の検出ゾーン内の前記基質抱合体の拘束が、第2の検出信号を発生させることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の診断試験キット。
  9. 第2の受容物質が、前記第2の検出ゾーン内に固定され、前記基質抱合体が、前記第2の受容物質に対して特定の結合親和性を示すことを特徴とする請求項8に記載の診断試験キット。
  10. 前記試験サンプル中の酵素の量が、前記第2の検出信号の強度に反比例することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の診断試験キット。
  11. 前記試験サンプル中の酵素の量が、前記第1の検出信号の強度対前記第2の検出信号の強度の比率に正比例することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の診断試験キット。
  12. 前記試験サンプル中の酵素の量が、前記第1の検出信号の強度に正比例することを特徴とする請求項1−10のいずれか1項に記載の診断試験キット。
  13. 前記試験サンプル中の酵素阻害剤の量が、前記第1の検出信号の強度に反比例することを特徴とする請求項1−10のいずれか1項に記載の診断試験キット。
  14. 前記クロマトグラフ培地が、較正ゾーンを更に形成することを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の診断試験キット。
  15. 前記クロマトグラフ培地が、制御ゾーンを更に形成することを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の診断試験キット。
  16. 請求項1から請求項15のいずれか1項の前記診断試験キットを利用する、試験サンプル中の酵素又は酵素阻害剤を検出するための方法であって、
    培養混合物を形成するように、複数の基質抱合体と試験サンプルを接触させる段階と、
    前記クロマトグラフ培地に前記培養混合物を付加する段階と、
    前記第1の検出ゾーン内の前記検出信号の存在又は強度を求める段階と、
    を含むことを特徴とする方法。
  17. 前記方法が、前記第2の検出ゾーン内の前記検出信号の存在又は強度を求める段階を更に含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
  18. 前記酵素が、加水分解酵素であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
  19. 前記酵素が、転移酵素、リガーゼ、又はポリメラーゼであることを特徴とする請求項16に記載の方法。
  20. 前記転移酵素が、キナーゼ又はメチラーゼであることを特徴とする請求項19に記載の方法。
  21. 前記基質が、タンパク質、糖タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質、エステル、抗体、抗原、又はこれらの誘導体であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
  22. 前記基質が、カゼイン、アルブミン、ヘモグロビン、ミオグロビン、ケラチン、ゼラチン、インスリン、プロテオグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン、エラスチン、又はこれらの誘導体であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
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