JP2009521954A - 濃縮(packed)DNAポリメラーゼを含む核酸複製のための反応緩衝液組成物 - Google Patents

濃縮(packed)DNAポリメラーゼを含む核酸複製のための反応緩衝液組成物 Download PDF

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Abstract

本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び突然変異誘発反応を含む、核酸複製のための組成物、方法及びキットに関する。より高濃度のDNAポリメラーゼを使用することを可能にし、増幅産物のより大きな収量とより迅速な反応速度をもたらす緩衝液組成物が提供される。

Description

本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2006年1月6日出願の米国特許仮出願第60/757,120号の優先権を主張する。
本発明は、核酸配列の複製、増幅又は突然変異誘発のための組成物及び方法に関する。
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの増幅手法の感受性と反応速度は、従来の緩衝液を使用して、DNAポリメラーゼの濃度を上昇させると反応を促進することができない、又は増幅産物の収率を増加させることができないという事実によって制限される。試料物質が限られている又は標的配列が低いコピー数で存在する状況では、この制限は重大な問題である。特に、増幅がバックグラウンド核酸の存在下で実施され、標的が低レベルで存在し得る、すなわち1コピーの場合さえあり得る診断PCR適用においては、より大きな産物収量でより迅速な核酸複製速度を可能にする条件を使用することが有益である。
本発明は、核酸複製、増幅及び突然変異誘発のための新規組成物及び方法に関する。
本発明は、核酸複製のために有用な組成物を提供する。組成物は、硫酸カリウムなどの無機塩と硫酸アンモニウムを含み、5:1〜240:1の無機塩:硫酸アンモニウムモル比を有する。一部の実施形態では、無機塩濃度は50mM〜120mMの範囲であり、及び硫酸アンモニウム濃度は1〜5mMの範囲である。緩衝液混合物中の無機塩成分の総陽イオン濃度は約50mM〜120mMの範囲内であることが好ましい。組成物のある実施形態はまた、硫酸マグネシウム、トリス硫酸及びTriton X−100を含む。一部の実施形態では、組成物は基本的に塩化物及びクエン酸陰イオンを含まない。一部の実施形態では、基本的に組成物中の陰イオンの全てが硫酸イオンである。組成物の一部の実施形態は、1以上のヌクレオチド、1以上の核酸ポリメラーゼ、核酸鋳型又はプライマーのいずれかを含む。
本発明のもう1つの態様は、DNAポリメラーゼ反応溶液を調製するための緩衝液濃縮物である。2倍から20倍の範囲の割合での緩衝液濃縮物の希釈は、無機塩(例えば硫酸カリウム)と硫酸アンモニウムを含み、5:1〜240:1の無機塩:硫酸アンモニウムモル比を有する溶液を生じる。緩衝液濃縮物の一部の実施形態は、1以上のヌクレオチド、1以上の核酸ポリメラーゼ、核酸鋳型又はプライマーのいずれかを含む。
本発明の付加的な態様では、核酸複製のための組成物又はDNAポリメラーゼ反応溶液を調製するための緩衝液濃縮物はキットの一部である。キットは、場合により1以上のDNAポリメラーゼ、ヌクレオシド三リン酸、プライマー又は核酸鋳型などの付加的な試薬と共に、組成物又は緩衝液濃縮物及び包装を提供する。
本発明はまた、PCRを含む、核酸複製反応を実施するための方法を提供する。本方法は、無機塩と硫酸アンモニウムを含み、かつ5:1〜240:1の無機塩:硫酸アンモニウムモル比を有する組成物を使用してDNAポリメラーゼ反応を実施することを含む。
本発明は、核酸の複製を実施するための新規組成物及び方法を提供する。一定範囲の化学組成を有する組成物は、阻害を伴わずに、使用されるDNAポリメラーゼのはるかに高い濃度を可能にし、はるかに大きな産物収量をもたらす。本発明の組成物はまた、PCRを含むDNAポリメラーゼ反応における反応時間を短縮するためにも使用できる。
(一般的定義)
本明細書で使用する、「無機塩」という用語は、明確な、しかし一般には固定されない化学組成と規則正しい原子配置を備えた天然に生じる均質な固体の塩を指す。本発明に従った塩として使用できる無機物は元素周期表で金属と分類されるものであり、無機塩は、従って、本発明に従って金属塩(例えば金属元素の塩形態)とも称され得る。無機物の例は、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、及び当業者に公知であり、一般に元素周期表で金属と分類される他の無機物を含むが、これらに限定されない。「塩」は、生成物が中性であるように陽イオンと陰イオンからなるイオン化合物を指す。本発明において有用な無機塩は、硫酸カリウム、塩化カリウム、硝酸カリウム、塩化マグネシウム、塩化セシウム及び硝酸セシウムを含むが、これらに限定されない。
本明細書で使用する、「ポリヌクレオチド」は、1個のヌクレオチドのペントースの3’位置がホスホジエステル基によって次のペントースの5’位置に連結されているヌクレオチドの共有結合配列(すなわちRNAについてはリボヌクレオチド及びDNAについてはデオキシリボヌクレオチド)を指す。「ポリヌクレオチド」という用語は、限定を伴わずに、一本鎖及び二本鎖ポリヌクレオチドを含む。ここで使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、化学的、酵素的又は代謝的に修飾された形態のポリヌクレオチドを包含する。「ポリヌクレオチド」はまた、しばしばオリゴヌクレオチドと称される短いポリヌクレオチド(例えばプライマー又はプローブ)を包含する。ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドホスホジエステル結合が置換基モノヌクレオチドのペントース環の5’炭素と3’炭素に起こるので、「5’末端」及び「3’末端」を有する。新たな結合が5’炭素に対してであるポリヌクレオチドの末端は、その5’末端ヌクレオチドである。新たな結合が3’炭素に対してであるポリヌクレオチドの末端は、その3’末端ヌクレオチドである。本明細書で使用する末端ヌクレオチドは、3’又は5’末端の末端位置のヌクレオチドである。本明細書で使用する、「ポリヌクレオチド配列」は、より大きなポリヌクレオチドの内部(例えばポリヌクレオチド内の配列領域)である場合も、やはり5’及び3’末端を有すると称される。
本明細書で使用する、「オリゴヌクレオチド」という用語は、短いポリヌクレオチド、典型的には150以下のヌクレオチド長(例えば5〜150の範囲内、好ましくは10〜100の範囲内、より好ましくは15〜50ヌクレオチド長の範囲内)を指す。しかし、ここで使用するこの用語はまた、より長い又はより短いポリヌクレオチド鎖を包含することが意図されている。「オリゴヌクレオチド」は、他のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができ、従ってポリヌクレオチド検出のためのプローブとして又はポリヌクレオチド鎖伸長のためのプライマーとして役立つ。
本明細書で使用する、「相補的」という用語は、2本のポリヌクレオチド鎖の領域の間又は同じポリヌクレオチド鎖の2つの領域の間の配列相補性の概念を指す。第一ポリヌクレオチド領域のアデニン塩基が、第一領域に逆平行である第二ポリヌクレオチド領域の塩基と、その塩基がチミン又はウラシルである場合は、特異的水素結合を形成できる(「塩基対合」)ことは公知である。同様に、第一ポリヌクレオチド鎖のシトシン塩基が、第一鎖に逆平行である第二ポリヌクレオチド鎖の塩基と、その塩基がグアニンである場合は、塩基対合できることは公知である。2つの領域を逆平行に配置したとき、第一領域の少なくとも1つのヌクレオチドが第二領域の塩基と塩基対合できる場合、ポリヌクレオチドの第一領域は同じ又は異なるポリヌクレオチドの第二領域に相補的である。従って、2つの相補的ポリヌクレオチドがあらゆるヌクレオチド位置で塩基対合する必要はない。「相補的」とは、第二ポリヌクレオチドに100%又は「十分に(fully)」相補的であり、従ってあらゆるヌクレオチド位置で塩基対を形成する第一ポリヌクレオチドを指す。「相補的」はまた、100%相補的ではなく(例えば90%又は80%又は70%相補的)、1以上のヌクレオチド位置にミスマッチヌクレオチドを含有する第一ポリヌクレオチドを指す。1つの実施形態では、2つの相補的ポリヌクレオチドは、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下で互いにハイブリダイズすることができる。例えば膜ハイブリダイゼーション(例えばノーザンハイブリダイゼーション)に関しては、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、5×SSC、5×デンハルト溶液、1%SDS中65℃での放射性標識プローブとのインキュベーションと定義される。膜ハイブリダイゼーションのためのストリンジェント洗浄は以下のように実施される。膜を2×SSC/0.1%SDS中室温で及び0.2×SSC/0.1%SDS中65℃で、各洗浄につき10分間、洗浄して、フィルムに暴露する。
本明細書で使用する、「ハイブリダイゼーション」又は「結合」という用語は、相補的(部分的に相補的を含む)ポリヌクレオチド鎖の対合に関して使用される。ハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションの強度(すなわちポリヌクレオチド鎖の間の結合の強さ)は、ポリヌクレオチドの間の相補性の程度、塩の濃度などの条件によって影響される、関与する条件のストリンジェンシー、形成されるハイブリッドの融解温度(Tm)、他の成分の存在(例えばポリエチレングリコールの存在又は不在)、ハイブリダイズする鎖のモル濃度及びポリヌクレオチド鎖のG:C含量を含む、当分野で周知の多くの因子によって影響される。
本明細書で使用するように、1つのポリヌクレオチドがもう1つのポリヌクレオチドに「ハイブリダイズする」と称されるとき、それは、2つのポリヌクレオチドの間にある程度の相補性が存在すること、又は2つのポリヌクレオチドが高ストリンジェンシー条件下でハイブリッドを形成することを意味する。1つのポリヌクレオチドがもう1つのポリヌクレオチドにハイブリダイズしないと称されるとき、それは、2つのポリヌクレオチドの間に配列相補性が存在しないこと、又は高ストリンジェンシー条件下で2つのポリヌクレオチドの間にハイブリッドが形成されないことを意味する。
本明細書で使用する、「鋳型」という用語は、そこから相補的核酸鎖が核酸ポリメラーゼによって合成される核酸分子の鎖を指す。本明細書で使用する、「鋳型依存的に」という用語は、プライマー分子の鋳型依存性伸長を含む過程(たとえばDNAポリメラーゼによるDNA合成)を指すことが意図されている。「鋳型依存的に」という用語は、新たに合成されるポリヌクレオチドの鎖の配列が相補的塩基対合の周知の規則によって決定される、RNA又はDNAのポリヌクレオチド合成を指す(例えばWatson,J.D.et al.,In:Molecular Biology of the Gene.4th Ed.,W.A.Benjamin,Inc.,Menlo Park,Calif.(1987)参照)。
本明細書で使用する、「合成」は、鋳型依存的にポリヌクレオチドの新しい鎖を作製する又は既存のポリヌクレオチド(すなわちDNA又はRNA)を伸長するためのインビトロ法を指す。合成は、本発明によれば、ポリメラーゼの使用によりポリヌクレオチド鋳型配列のコピー数を増加させる増幅を含む。ポリヌクレオチド合成(例えば増幅)は、ポリヌクレオチド(すなわちプライマー)へのヌクレオチドの結合を生じさせ、それによってポリヌクレオチド鋳型に相補的な新しいポリヌクレオチド分子を形成する。形成されるポリヌクレオチド分子及びその鋳型は、さらなるポリヌクレオチド分子を合成するための鋳型として使用され得る。
本明細書で使用する、「核酸ポリメラーゼ」は、ヌクレオチドの重合を触媒する酵素を指す。一般に、酵素は、核酸鋳型配列にアニーリングするプライマーの3’末端で合成を開始させ、鋳型鎖の5’末端方向へと進行する。「DNAポリメラーゼ」はデオキシヌクレオチドの重合を触媒する。公知のDNAポリメラーゼは、例えばパイロコッカス・フリオサス(Pfu)DNAポリメラーゼ(Lundberg et al.,1991,Gene,108:1)、大腸菌DNAポリメラーゼI(Lecomte and Doubleday,1983,Nucleic Acids Res.11:7505)、T7 DNAポリメラーゼ(Nordstrom et al.,1981,J.Biol.Chem.256:3112)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)(Tth)DNAポリメラーゼ(Myers and Gelfand 1991,Biochemistry 30:7661)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)DNAポリメラーゼ(Stenesh and McGowan,1977,Biochim Biophys Acta 475:32)、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis) (Tli)DNAポリメラーゼ(Vent DNAポリメラーゼとも称される、Cariello et al.,1991,Nucleic Acids Res,19:4193)、9°Nm DNAポリメラーゼ(New England Biolabsからの中止された製品)、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)(Tma)DNAポリメラーゼ(Diaz and Sabino,1998 Braz J.Med.Res,31:1239)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼ(Chien et al.,1976,J.Bacteoriol,127:1550)、パイロコッカス・コダカラエンシス(Pyrococcus kodakaraensis)KOD DNAポリメラーゼ(Takagi et al.,1997,Appl.Environ.Microbiol.63:4504)、JDF−3 DNAポリメラーゼ(特許出願第WO0132887号)、 及びパイロコッカスGB−D(PGB−D)DNAポリメラーゼ(Juncosa−Ginesta et al.,1994,Biotechniques,16:820)を含む。本発明に従ったポリメラーゼは、キメラポリメラーゼ又は突然変異型ポリメラーゼであり得る。本発明に従ったキメラポリメラーゼの一例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2004/0214194号に述べられているPfuとDeep Ventポリメラーゼの間のキメラである。キメラDNAポリメラーゼの付加的な例は、キメラポリメラーゼと融合ポリメラーゼ(融合は以下でさらに説明する)の組合せを含み得る。例えばPfuとDeep Ventの間のキメラはまた、配列非特異的DNA結合タンパク質である、スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus sulfataricus)からのSso7d又はSac7dへの1つ又は両方のポリメラーゼの融合物を含み得る。そのような融合物は、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開広報第WO01/92501号に述べられている。
上記酵素のいずれかのポリメラーゼ活性は、当分野で公知の方法によって測定できる。例えばHogrefe et al.(Methods in Enzymol.Vol.334,pp.91−116(2001))のヌクレオチド組込みアッセイが使用できる。簡単に述べると、ポリメラーゼ活性を活性化サケ精子DNA(Pharmaciaより購入した;活性化プロトコールについては、C.C.Richardson,Proceedures in Nucl.Acid Res.(Cantoni and Davies,eds.),p.263−276(1966)at p.264参照)への32P−dCTPの組込みの割合として測定することができる。反応緩衝液は、例えば50mMトリス−HCl(pH8.0)、5mM MgCl、1mMジチオトレイトール(DTT)、50μg/mlウシ血清アルブミン(BSA)及び4%(v/v)グリセロールであり得る。ヌクレオチド基質とDNAを大きく過剰で、典型的には検定するポリメラーゼについてのKの少なくとも10倍で、例えばdATP、dTTP及びdGTPの各々200μM、dCTP195μMプラス標識dCTP 5μM、及び活性化DNA250μg/mlで使用する。反応を氷上でクエンチし、反応混合物のアリコートをイオン交換フィルター(例えばWhatman DE81)にスポットする。組み込まれなかったヌクレオチドを洗い流し、次いで組み込まれた放射能を測定するためにシンチレーション計数する。
DNAポリメラーゼ活性1単位は、本発明によれば、最適温度(例えばPfu DNAポリメラーゼについては72℃)で30分間に全dNTP 10nmoleの重合形態への組込みを触媒する酵素の量と定義される。
本明細書で定義する「DNAポリメラーゼ融合物」は、DNAポリメラーゼの1以上の活性を調節するポリペプチドを定義する第二アミノ酸配列に連結された、野生型又は突然変異型DNAポリメラーゼを含む第一アミノ酸配列(タンパク質)であり、前記DNAポリメラーゼ活性は、プロセッシビティー(合成持続性)、塩耐性、DNA結合、鎖置換活性、ポリメラーゼ活性、ヌクレオチド結合及び認識、3’〜5’又は5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性、プルーフリーディング、忠実度及び/又は室温でのDNA重合低下を含むが、これらに限定されず、第一アミノ酸配列と第二アミノ酸配列は、天然では同じ関係で認められない。本発明に従った「融合物」は、新たな機能性タンパク質を形成するように連結された、無関係なタンパク質からの2以上のアミノ酸配列(例えば野生型又は突然変異型DNAポリメラーゼとプロセッシビティー及び/又は塩耐性を上昇させるポリペプチドをコードする配列)を含む。本発明に従った融合物において使用される供給源配列は、天然ポリペプチド配列、天然ポリペプチド配列の一部、又は天然ポリペプチド配列の全部又は一部の突然変異体であり得る。本発明に従った融合物は、第一ポリメラーゼ種からの第一アミノ酸配列(例えばPfu N末端)及び第二ポリメラーゼ種からの第二アミノ酸配列(例えばKOD C末端)を含み得る。本発明の融合物は、第一ポリメラーゼに由来する第一アミノ酸配列及びポリメラーゼではないポリペプチドに由来する第二アミノ酸配列を含み得る。ポリメラーゼではないポリペプチドに由来するアミノ酸配列は、酵素活性を欠如し得る。DNAポリメラーゼは、DNAトポイソメラーゼVからのへリックス−ヘアピン−へリックスDNA結合モチーフにインフレームで融合され、高いプロセッシビティー、塩耐性及び熱安定性を有することが認められた(Pavlov et al.,2002,Proc.Natl.Acad.Sci USA,99:13510−13515)。T7 DNAポリメラーゼへのチオレドキシン結合ドメインの融合は、国際公開広報第WO97/29209号、米国特許第5,972,603号及びBedford et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:479−484(1997)に述べられているように、チオレドキシンの存在下でDNAポリメラーゼ融合物のプロセッシビティーを増強する。Taq DNAポリメラーゼへの古細菌PCNA結合ドメインの融合は、PCNAの存在下で高いプロセッシビティーを有するDNAポリメラーゼ融合物を生じさせ、より高い収量のPCR増幅DNAを生産する(Motz,M.,et al.,J.Biol.Chem.2002 May 3;277(18);16179−88)。また、Pfu又はTaq DNAポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼへの、配列非特異的DNA結合タンパク質であるスルホロブス・ソルファタリカスからのSso7d又はSac7dの融合は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開広報第WO01/92501 Alに開示されているように、これらのDNAポリメラーゼのプロセッシビティーを大きく上昇させることが示された。Sso7d又はSac7dなどのDNA結合タンパク質の全部又は一部を含む融合物は、本発明に関する使用のために好ましい。天然Sso7d又はSac7d配列又はその一部と90%未満の配列同一性を有するSso7d又はSac7dのいずれかの突然変異体は特に好ましい。DNAポリメラーゼの全部又は一部の、異なるDNAポリメラーゼの対応ドメインによるドメイン置換も記述されている(米国特許出願第2002/0119461号)。DNAポリメラーゼを作製し、使用することのさらなる詳細は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2005/0048530号に認められる。
PCR促進因子はまた、増幅の効率を改善するためにも使用し得る。本明細書で使用する、「PCR促進因子」又は「ポリメラーゼ促進因子」(PEF)は、ポリヌクレオチドポリメラーゼ促進活性を有する複合体又はタンパク質を指す(どちらも参照により本明細書に組み込まれる、Hogrefe et al.,1997,Strategies 10:93−96;及び米国特許第6,183,997号)。Pfu DNAポリメラーゼに関して、PEFは、天然形態(P50とP45の複合体として)又は組換えタンパク質としてのP45を含む。Pfu P50とP45の天然複合体では、P45だけがPCR促進活性を示す。P50タンパク質は、構造に関して細菌フラボタンパク質に類似する。P45タンパク質は、構造的にdCTPデアミナーゼ及びdUTPアーゼに類似するが、dUTPをdUMPとピロリン酸に変換するdUTPアーゼとしてのみ機能する。PEFはまた、本発明によれば、以下からなる群より選択され得る。古細菌供給源(例えばパイロコッカス・フリオサス)から得られる単離又は精製された天然に生じるポリメラーゼ促進タンパク質;Pfu P45と同じアミノ酸配列を有する完全又は部分的合成タンパク質、又はポリメラーゼ促進活性を有するその類似体;前記の天然に生じるあるいは完全又は部分的合成タンパク質の1以上のポリメラーゼ促進混合物;前記の天然に生じるあるいは完全又は部分的合成タンパク質の1以上のポリメラーゼ促進タンパク質複合体;又は前記の天然に生じるタンパク質の1以上を含有するポリメラーゼ促進性部分精製細胞抽出物(米国特許第6,183,997号、前出)。PEFのPCR促進活性は当分野で周知の手段によって定義される。PEFについての単位定義はPEF(P45)のdUTPアーゼ活性に基づき、これは、dUTPからのピロリン酸(PPi)の生産を観測することによって測定される。例えばPEFを、PEFがdUTPをdUMPとPPiに加水分解する間、dUTP(1×クローン化Pfu PCR緩衝液中10mM dUTP)と共にインキュベートする。形成されるPPiの量を、Sigmaから市販されている共役酵素アッセイシステム(No.P7275)を使用して定量する。活性1単位は、1時間当たりに形成される(85℃で)PPi 4.0nmoleと機能的に定義される。DMSOも、本発明に従ったポリメラーゼ反応混合物に添加することができる;DMSOは、特にG−Cに富む鋳型に関して、ポリメラーゼ活性を促進し得る。
本明細書で使用する、「5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性」又は「5’→3’エキソヌクレアーゼ活性」は、鋳型特異的核酸ポリメラーゼの活性、例えばモノヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドをポリヌクレオチドの5’末端から連続的に除去するか(すなわち大腸菌DNAポリメラーゼIはこの活性を有するが、クレノウ(Klenow et al.,1970,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,65:168)フラグメントはこの活性を有さない(Klenow et al.,1971,Eur.J.Biochem.,22:371))、又は5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性に固有に存在し得るエンドヌクレアーゼ分解活性によってポリヌクレオチドを5’末端から除去する、伝統的に一部のDNAポリメラーゼに関連する5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を指す。
FEN−1は、5’一本鎖フラップ鎖の骨格を特異的に認識し、二重鎖DNAの2本の鎖が一本鎖の腕と隣接する接合部に位置する切断部位へと誘導する約40kDaの二価金属イオン依存性エキソ及びエンドヌクレアーゼである。エンド及びエキソヌクレアーゼ分解活性の両方が、フラップ又はニックの最も5’側の位置の塩基に対してほとんど感受性を示さない。FEN−1エンド及びエキソヌクレアーゼ分解性基質結合及び切断は上流のオリゴヌクレオチド(フラップ隣接鎖又はプライマー)によって刺激される。これはまた、大腸菌ポルI型の場合にも当てはまる。酵素のエンドヌクレアーゼ活性は5’フラップの長さに依存せず、1ヌクレオチドの小さな5’フラップも切断する。エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼ活性は基質の化学的性質に対して非感受性であり、DNAとRNAの両方を切断する。
本発明において有用なFEN−1酵素をコードするfen−1遺伝子は、マウスfen−1、ヒトfen−1、ラットfen−1、キセノパス・ラエビス(Xenopus laevis)fen−1、及び4つの古細菌、アーケオグロブス・フルギダス(Archaeglobus fulgidus)、メタノコッカス・ヤナシ(Methanococcus jannaschii)、パイロコッカス・フリオサス及びパイロコッカス・ホリコシ(Pyrococcus horikoshii)に由来するfen−1遺伝子を含む。FEN−1酵素をコードするcDNAクローンは、ヒト(GenBankアクセッション番号:NM.sub.−−004111及びL37374)、マウス(GenBankアクセッション番号:L26320)、ラット(GenBankアクセッション番号:AA819793)、キセノパス・ラエビス(GenBankアクセッション番号:U68141及びU64563)、及びP.フリオサス(GenBankアクセッション番号:AF013497)から単離された。P.ホリコシフラップエンドヌクレアーゼについての完全なヌクレオチド配列も決定されている(GenBankアクセッション番号:AB005215)。FEN−1ファミリーはまた、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)RAD27遺伝子(GenBankアクセッション番号:Z28113 Y13137)及びサッカロミセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)RAD2遺伝子(GenBankアクセッション番号:X77041)を含む。メタノバクテリウム・サーモオートトロフィカム(Methanobacterium thermautotrophiculum)の古細菌ゲノムも配列決定された。FEN−1と原核生物及びウイルス5’〜3’エキソヌクレアーゼの間の配列類似性は低いが、真核生物界の中でのFEN−1はアミノ酸レベルで高度に保存され、ヒトとS.セレビシエタンパク質は60%同一であり、78%類似する。3つの古細菌FEN−1タンパク質も、真核生物FEN−1酵素に高度に相同である(Matsui et al.,1999.,J.Biol.Chem.,274:18297,Hosfield et al.,1998b,J.Biol.Chem.,273:27154及びLieber,1997,BioEssays,19:233)。
本発明に従ったFENヌクレアーゼは、好ましくは熱安定性である。熱安定性FENヌクレアーゼは、4つの古細菌を含む様々な熱安定性生物から単離され、特徴付けされた。P.フリオサスフラップエンドヌクレアーゼについてのcDNA配列(GenBankアクセッション番号:AF013497)及びアミノ酸配列(Hosfield et al.,1998a,前出及びHosfield et al.,1998b)が決定されている。P.ホリコシフラップエンドヌクレアーゼについての完全なヌクレオチド配列(GenBankアクセッション番号:AB005215)及びアミノ酸配列(Matsui etal.,前出)も決定された。M.ヤナシ(Hosfield et al.,1998b及びMatsui et al.,1999、前出)及びA.フルギダス(Hosfield et al.,1998b)フラップエンドヌクレアーゼについてのアミノ酸配列も決定された。
本明細書で使用する、「プライマー」は、上記で定義した「オリゴヌクレオチド」の長さ制限を有する又は含有する、及び標的ポリヌクレオチドに相補的な配列を有する又は含有する、ヌクレオチドをオリゴヌクレオチドプライマーに組み込む伸長(延長)反応を開始させるために塩基対合を通して標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズする、オリゴヌクレオチドの1つの種類を指す。開始及び伸長のための条件は、適切な緩衝液中(「緩衝液」は、補因子であるか又はpH、イオン強度等に影響を及ぼす置換基を含む)及び適切な温度で、4つの異なるデオキシリボヌクレオシド三リン酸及びDNAポリメラーゼ又は逆転写酵素などの重合誘導剤の存在を含む。プライマーは、好ましくは増幅における最大効率のために一本鎖である。本発明において有用な「プライマー」は、一般に約10〜100ヌクレオチド長の範囲内、好ましくは約17〜50ヌクレオチド長の範囲内、最も好ましくは約17〜45ヌクレオチド長の範囲内である。「増幅プライマー」は、プライマー伸長による標的配列の増幅のためのプライマーである。増幅反応を駆動するために特別な配列又は構造は必要ないので、PCRのための増幅プライマーは標的結合配列だけからなり得る。「プライマー領域」は、ヌクレオチドをオリゴヌクレオチドプライマーに組み込む伸長反応を開始させるために塩基対合を通して標的核酸にハイブリダイズする「オリゴヌクレオチドプローブ」又は「架橋オリゴヌクレオチドプローブ」上の領域である。
「プライマー伸長反応」又は「プライマー伸長を合成すること」は、組み込まれたヌクレオチドが標的ポリヌクレオチドの対応するヌクレオチドに相補的であるようにプライマーの3’末端へのヌクレオチドの付加を生じさせる、標的プライマーハイブリッドとヌクレオチドの間の反応を意味する。プライマー伸長試薬は、典型的には(i)ポリメラーゼ酵素;(ii)緩衝液;及び(iii)1以上の伸長可能なヌクレオチドを含む。
本明細書で使用する、「ポリメラーゼ連鎖反応」又は「PCR」は、特定ポリヌクレオチド鋳型配列を増幅するためのインビトロ法を指す。PCR反応は、反復される一連の温度サイクルを含み、典型的には50〜100μlの容量で実施される。反応混合物は、dNTP(4つのデオキシヌクレオチド、dATP、dCTP、dGTP及びdTTPの各々)、プライマー、緩衝液、DNAポリメラーゼ及びポリヌクレオチド鋳型を含む。1つのPCR反応は、ポリヌクレオチド分子の変性と合成の5〜100「サイクル」からなり得る。PCR過程は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,683,195号及び同第4,683,202号に述べられている。
本明細書で使用する、「標的核酸」は、増幅領域を含有する核酸を指す。本明細書で使用する、「増幅領域」は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって合成又は増幅される核酸の領域である。例えば核酸鋳型の増幅領域は、2つのPCRプライマーがそれに対して相補的である2つの配列の間に存する。
本明細書で使用する、「増幅産物」は、PCR増幅反応終了時の二本鎖ポリヌクレオチド集団を指す。増幅産物は、もとのポリヌクレオチド鋳型及びPCR反応の間にポリヌクレオチド鋳型を使用してDNAポリメラーゼによって合成されるポリヌクレオチドを含有する。
「野生型」という用語は、天然に生じる供給源から単離されたとき、その遺伝子又は遺伝子産物の特徴を有する遺伝子又は遺伝子産物を指す。これに対し、「修飾」又は「突然変異型」という用語は、野生型遺伝子又は遺伝子産物と比較したとき変化した特徴を示す遺伝子又は遺伝子産物を指す。例えば本発明における突然変異型DNAポリメラーゼは、低いウラシル検出活性を示すDNAポリメラーゼである。
本明細書で使用する、「試料」という用語は、その天然環境から単離された、ポリヌクレオチドを含有する生物学的物質を指す。本発明に従った「試料」は、精製又は単離されたポリヌクレオチドからなり得るか、又は組織試料、生体液試料又はポリヌクレオチドを含む細胞試料などの生物学的試料を含み得る。生体液は、血液、血漿、痰、尿、脳脊髄液、洗浄液及び白血球泳動法試料を含む。本発明の試料は、標的ポリヌクレオチドを含有する植物、動物、細菌又はウイルス材料であり得る。本発明の有用な試料は、例えば種々の個体、同じか又は異なる個体の種々の発生段階、種々の疾患個体、正常個体、同じか又は異なる個体の種々の病気、種々の疾患治療に供された個体、種々の環境因子に供された個体、疾病に対する素因を有する個体、感染症(例えばHIV)に暴露された個体を含むが、これらに限定されない、種々の供給源から入手し得る。有用な試料はまた、インビトロで培養された組織、細胞、又は他のポリヌクレオチド含有供給源から入手し得る。培養試料は、種々の培地及び条件(例えばpH、圧又は温度)で培養された培養物(例えば組織又は細胞)、種々の長さの期間培養された培養物(例えば組織又は細胞)、種々の因子又は試薬(例えば薬剤候補物質又は調節剤)で処理された培養物(例えば組織又は細胞)、又は種々の型の組織又は細胞の培養物を含むが、これらに限定されない供給源から採取し得る。
本明細書で使用する、試料から「単離された」ポリヌクレオチドは、その正常細胞(例えば染色体)環境から取り出されたその試料中の天然に生じるポリヌクレオチド配列である。従って、「単離された」ポリヌクレオチドは、無細胞溶液中に存在し得るか又は異なる細胞環境に置かれ得る。
本明細書で使用する「量」という用語は、例えばμg、μmol又はコピー数で測定される試料中の標的ポリヌクレオチドの量を指す。本発明におけるポリヌクレオチドの存在率は、そのようなポリヌクレオチドによって放出される蛍光強度によって測定され、標準ポリヌクレオチド、すなわち公知量を有するポリヌクレオチドによって放出される蛍光強度と比較される。
(核酸複製のための組成物及びそれらの使用)
PCRなどの核酸複製のための従来の反応緩衝液は、トリス又はトリシンなどの緩衝液を含有し、通常7.5〜9.5のpH範囲を有する。従来の緩衝液は、1〜10mMの範囲内のMg2+(例えばMgCl又はMgSO)をさらに含有し、しばしば約20mMまでの濃度のKClも含有する。さらに、1%までの濃度の1以上の非イオン界面活性剤(例えばTriton X−100、Tween20又はNP40)を含んでもよく、また時として1〜100μg/mlの範囲内のウシ血清アルブミン(BSA)を含む。
本発明によると、反応物中のDNAポリメラーゼ濃度を生産的に上昇させることを可能にする、新しい緩衝液製剤を使用すれば、産物の収量を増大させ、反応速度をより迅速にすることができる。非常に高い量のDNAポリメラーゼを使用できることは、複製反応からのDNA産物収量の劇的な増加及び/又は通常の反応緩衝液を用いてより少量のDNAポリメラーゼによって達成され得るよりも迅速な反応時間を可能にする。
本発明によれば、DNAポリメラーゼ反応のために使用される緩衝液は、5:1〜240:1の範囲内の無機塩対硫酸アンモニウムのモル比で、無機塩(例えば硫酸カリウム(KSO))及び硫酸アンモニウム(NHSO)の両方を含有する。無機塩対硫酸アンモニウムのモル比はまた、例えば5:1〜80:1、5:1〜50:1、5:1〜45:1又は10:1〜40:1であり得る。塩対硫酸アンモニウムのモル比はまた、約10:1、約15:1、約20:1、約25:1、約30:1、約35:1、約40:1、約45:1、約50:1、約60:1、約65:1、約70:1、約75:1又は約240:1であり得る。無機塩の濃度は、50mM〜120mMの範囲内であり得、好ましくは80mM〜100mMの範囲内である。硫酸アンモニウム濃度は、1mM〜5mMの範囲内であり得る。前記のいずれかの実施形態では、無機塩成分中の総陽イオン濃度は50〜120mMの範囲内であることが好ましい。
本発明に従った緩衝液は、1〜10mMの範囲内、例えば2mMの濃度のMg2+を、好ましくはMgSOの形態で含有し得る。緩衝液は、トリス又はトリシンなどのpH緩衝剤を、好ましくはSO 2−を対イオンとして使用して、好ましくは30mMなどの15〜50mMの範囲内の濃度で、及び好ましくはpH10又はpH9などの8〜11の範囲内のpHで含有し得る。緩衝液はまた、0.1%などの0.01〜1.0%の範囲内の濃度で、Triton X−100などの界面活性剤を含有し得る。
本発明の緩衝液組成物の例は、50mM無機塩、1mM硫酸アンモニウム、pH10.0に調整された30mM(トリス硫酸+トリス塩基)、2mM硫酸マグネシウム及び0.1%Triton X−100を含有する溶液を含む。もう1つの例は、80mM無機塩、1.5mM硫酸アンモニウム、pH10.0に調整された30mM(トリス硫酸+トリス塩基)、2mM硫酸マグネシウム及び0.1%Triton X−100を含む溶液である。さらにもう1つの例は、100mM無機塩、2mM硫酸アンモニウム、pH10.0に調整された30mM(トリス硫酸+トリス塩基)、2mM硫酸マグネシウム及び0.1%Triton X−100を含む溶液である。
本発明の緩衝液組成物は、DNAポリメラーゼ又は逆転写酵素と共に使用できる。好ましくは、それらはDNAポリメラーゼ融合物と共に使用される。例えばDNAポリメラーゼ融合物は、Pfu−Sso7d融合物(野生型Sso7dに90%未満のアミノ酸配列同一性を有するSso7dの突然変異型が好ましい)、例えば、3’〜5’エキソヌクレアーゼを欠き、ウラシル非感受性であるエキソ−Pfu V93R−Sso7dであり得る。本発明の緩衝液組成物との使用に適するDNAポリメラーゼ融合物のさらなる例については、米国特許出願公開第2005/0048530号参照。本発明の緩衝液組成物はまた、ポリメラーゼ促進因子、Fenヌクレアーゼ又はDMSOを含有し得る。
本発明に従った緩衝液組成物は、従来よりも高い濃度のDNAポリメラーゼと共に使用できる。例えば従来のPCR反応は、反応物50μl当たり1単位までのDNAポリメラーゼ融合物、又は反応物50μl当たり5単位までの非融合DNAポリメラーゼを使用できる;より高濃度のポリメラーゼは、従来の緩衝液と共に使用した場合、産物収量又は反応速度を上昇させない。しかし、本発明の緩衝液組成物と共に使用すれば、産物収量の対応する増加を伴って、ポリメラーゼ濃度を2倍から25倍に、例えば3倍、4倍、5倍、6倍又は8倍に、生産的に上昇させることができる。例えばここで述べる緩衝液組成物と共に使用するとき、150単位までのポリメラーゼ濃度が使用できる。好ましくは、ポリメラーゼ濃度は50〜100単位の範囲内であるが、50〜150単位であり得る。反応速度も、同じ範囲の高いポリメラーゼ濃度によってより迅速にすることができる。逆転写酵素は、DNAポリメラーゼの場合と同様の濃度範囲内で本発明に従った緩衝液組成物と組み合わせて使用できる。
本発明に従った緩衝液組成物は、DNAポリメラーゼ反応プロトコールにおいて、例えばPCR(RT−PCR及びQPCRを含む)又は部位指定突然変異誘発のために、反応条件に他の変化を施すことなく使用できる。そのような方法のための反応時間と温度、熱サイクリングプロトコール、プライマーの配列と濃度、ヌクレオチド混合物及び濃度、ハイブリダイゼーションプローブ、及び染料は、一般に変化を加えずに本発明の緩衝液組成物と共に使用できる。本発明の緩衝液組成物又はその濃縮形態は、1以上のヌクレオチド、核酸ポリメラーゼ、プライマー、核酸鋳型、染料、ハイブリダイゼーションプローブ又は重合促進因子を含み得る。
硫酸イオンは、本発明の緩衝液組成物における陰イオン種として好ましい。塩化物又はクエン酸塩による硫酸塩の置換は、例えば硫酸塩に対する多少の量の阻害を生じさせる。一部の実施形態では、本発明の緩衝液組成物は、基本的に塩化物イオン及びクエン酸イオンを含まない;他の実施形態では、塩化物及びクエン酸イオンの濃度は最小限に、例えば5mM未満又は1mM未満に保持される。ある実施形態では、緩衝液組成物中の基本的に全ての陰イオン(核酸、ヌクレオチド基質、染料、酵素、タンパク質、界面活性剤等を除く)が硫酸イオンである。
本発明の緩衝液組成物は、核酸複製反応の分野における一般慣例であるように、酵素及び基質を含む、他の試薬の添加に適合するために濃縮保存溶液として調製され得る。緩衝液組成物は、全ての成分が所望最終濃度よりも2倍から20倍高い濃度で、例えば5倍高い又は10倍高い濃度で存在する濃縮物として調製できる。
本発明の緩衝液濃縮物の例は、250mM無機塩、5mM硫酸アンモニウム、pH10.0に調整された150mM(トリス硫酸+トリス塩基)、10mM硫酸マグネシウム及び0.5%Triton X−100を含む溶液を含む。もう1つの例は、450mM無機塩、10mM硫酸アンモニウム、pH10.0に調整された150mM(トリス硫酸+トリス塩基)、10mM硫酸マグネシウム及び0.5%Triton X−100を含む溶液である。さらにもう1つの例は、500mM無機塩、10mM硫酸アンモニウム、pH10.0に調整された150mM(トリス硫酸+トリス塩基)、10mM硫酸マグネシウム及び0.5%Triton X−100を含む溶液である。
本発明は、核酸複製反応を実施する方法を提供する。この方法は、産物の収量又は反応速度を上昇させるために、核酸増幅、PCR、RT−PCR、QPCR、ランダム突然変異誘発及び部位指定突然変異誘発を含む、DNAポリメラーゼを使用する核酸複製反応に適用できる。そのような反応は、本発明の緩衝液組成物を使用して、例えば反応溶液を調製するために本発明の緩衝液濃縮物を使用することによって実施される。
本発明の緩衝液組成物と共に使用できるより高濃度のDNAポリメラーゼは、より迅速な反応速度を可能にする。従って本発明の方法は、一般にこれまでの方法と比較して反応時間の短縮を可能にする。例えば本発明の緩衝液組成物を使用してPCRを実施するとき、各々のサイクルの伸長期が短縮され得るので、サイクル時間を短縮することができる。
(無機塩)
本発明において有用な無機塩は、明確な、しかし一般には固定されない化学組成と規則正しい原子配置を備え、一般に地質学的過程によって生産される、天然に生じる無機の均質な固体の塩を含む。本発明において有用な典型的金属塩は、周期表からの金属元素の塩を含む。本発明に従って塩形態で使用できる無機物又は金属の例は、カリウム、セシウム、マグネシウム、ナトリウム及びカルシウムを含むが、これらに限定されない。好ましくは、無機塩はカリウム又はセシウムの塩であるが、リチウム、アルミニウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛等の塩を含み得る。無機塩はまた、当業者に公知の金属元素の重炭酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、臭化物、クエン酸塩、酢酸塩、シアン化物、酸化物又はリン酸塩を含み得る。より好ましくは、無機塩は、塩化カリウム(KCl)、硫酸カリウム(KSO)、硝酸カリウム(KNO)、塩化セシウム(CsCl)又は硝酸セシウム(CsNO)である。加えて、本発明において有用な無機塩は、無機塩の混合物又はブレンドを含み得る。本発明において使用できる無機塩のブレンドは、KClとKSO、KClとKNO、KClとCsCl、KClとCsNO、KSOとKNO、KSOとCsCl、KSOとCsNO、KNOとCsCl、KNOとCsNO、及びCsClとCsNOを含む。前記無機塩は、50〜120mMの範囲内、好ましくは80〜100mMの範囲内の濃度で本発明に従って使用し得る。
ここで述べる反応緩衝液において使用される特定無機塩種にかかわりなく、無機塩成分中の総陽イオン濃度は、約50〜120mMの範囲内、好ましくは50〜120mMの範囲内、より好ましくは80〜100mMの範囲内であることが好ましい。
(ポリメラーゼ)
本発明において使用される核酸ポリメラーゼは、中温性又は好熱性であり得、好ましくは好熱性である。好ましい中温性DNAポリメラーゼは、T7 DNAポリメラーゼ、T5 DNAポリメラーゼ、クレノウフラグメントDNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼIII等を含む。本発明の方法において使用し得る好ましい熱安定性DNAポリメラーゼは、Taq、Tne、Tma、Pfu、Tfl、Tth、Stoffelフラグメント、VENT(商標)及びDEEPVENT(商標)DNAポリメラーゼ、及びそれらの突然変異体、変異体及び誘導体を含む(米国特許第5,436,149号;米国特許第4,889,818号;米国特許第4,965,18S号;米国特許第5,079,352号;米国特許第5,614,365号;米国特許第5,374,553号;米国特許第5,270,179号;米国特許第5,047,342号;米国特許第5,512,462号;国際公開広報第WO92/06188号;国際公開広報第WO92/06200号;国際公開広報第WO96/10640号;Barnes,W.M.,Gene 112:29−35(1992);Lawyer,F.C.,et al.,PCR Meth.Appl.2:275−287(1993);Flaman,J.−M,et al.,Nuc.Acids Res.22(15):3259−3260(1994))。長い核酸分子(例えば約3〜5Kb長より長い核酸分子)の増幅のためには、少なくとも2つのDNAポリメラーゼが典型的に使用され、一方は3’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠き、他方は3’エキソヌクレアーゼ活性を有する。それらの開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,436,149号;米国特許第5,512,462号;Fames,W.M.,Gene 112:29−35(1992);及び2000年12月21日出願の同時係属中の米国特許出願第09/741,664号参照。3’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠くDNAポリメラーゼの例は、Taq、Tne(エキソ−)、Tma(エキソ−)、Pfu(エキソ−)、Pwo(エキソ−)及びTth DNAポリメラーゼ、及びそれらの突然変異体、変異体及び誘導体を含む。本発明において有用なDNAポリメラーゼはまた、キメラポリメラーゼ又は突然変異型ポリメラーゼを含む。本発明に従ったキメラポリメラーゼの一例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2004/0214194号に述べられているPfuとDeep Ventポリメラーゼの間のキメラである。
本明細書で使用する、「濃縮(packed)ポリメラーゼ」は、酵素を安定化する又は活性化するために適切な濃縮緩衝液を使用しなければ、ポリメラーゼ活性の損失が生じるような、十分に高い濃度の1以上の核酸ポリメラーゼ酵素を含有する溶液を指す。
本明細書で使用する、「熱安定性」は、例えば類似の活性を有する酵素の非熱安定性形態と比較して、好ましくは約90〜100℃の範囲内、より好ましくは約70〜98℃の範囲内の高い温度で安定であり、活性である酵素を指す。例えばP.フリオサス、M.ヤナシ、A.フルギダス又はP.ホリコシなどの好熱生物に由来する熱安定性核酸ポリメラーゼは、大腸菌からの核酸ポリメラーゼと比較して高温でより安定であり、活性である。P.フリオサス(Pfu)から単離された代表的な熱安定性核酸ポリメラーゼが、Lundberg et al.,1991,Gene.108:1−6に述べられている。さらなる代表的な温度安定性ポリメラーゼは、例えば好熱菌、サーマス・フラバス(Thermus flavus)、サーマス・ルバー(Thermus ruber)、サーマス・サーモフィルス、バチルス・ステアロサーモフィルス(列挙する他の細菌よりも幾分低い最適温度を有する)、サーマス・ラクテウス(Thermus lacteus)、サーマス・ルーベンス(Thermus rubens)、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)から、又は好熱古細菌、サーモコッカス・リトラリス、及びメタノサーマス・フェルビズス(Methanothermus fervidus)から抽出されるポリメラーゼを含む。
PCR増幅のために、本発明において使用される酵素は、好ましくは熱安定性である。本明細書で使用する、「熱安定性」は、熱に対して安定であり、耐熱性であり、及び高温で、例えば50〜90℃で機能する酵素を指す。本発明に従った熱安定性酵素は、増幅反応のために有効であるという1つの判定基準を満たさねばならない。すなわち酵素は、二本鎖ポリヌクレオチドの変性を生じさせるために必要な時間高温に供されたとき、不可逆的に変性(不活性化)してはならない。これに関して使用される「不可逆的変性」により、永続的で完全な酵素活性の喪失をもたらす過程が意味される。変性のために必要な加熱条件は、例えば緩衝液塩濃度及び変性されるポリヌクレオチドの長さとヌクレオチド組成に依存するが、典型的には、短いポリヌクレオチドに関する85℃から105℃までの範囲であり、主として温度とポリヌクレオチド長に依存する時間、典型的には短いポリヌクレオチドに関する0.25分間からより長いDNA断片に関する4.0分間までの時間である。緩衝液塩濃度及び/又はポリヌクレオチドのGC組成が上昇すると共により高い温度が耐容され得る。好ましくは、酵素は90〜100℃で不可逆的に変性しない。不可逆的に変性しない酵素は、本発明によれば、増幅反応の間少なくとも10%、又は少なくとも25%、又は少なくとも50%以上の機能又は活性を保持する。
本明細書で使用する、「古細菌」DNAポリメラーゼは、ファミリーB/ポルI型群(例えばPfu、KOD、Pfx、Vent、Deep Vent、Tgo、Pwo)又はポルII型群(例えばパイロコッカス・フリオサスDP1/DP2 2サブユニットDNAポリメラーゼ)のいずれかに属するDNAポリメラーゼを指す。「古細菌」DNAポリメラーゼは、PCRにおいて有用な熱安定性DNAポリメラーゼを指し、パイロコッカス種(フリオサス、GB−D種、ウーゼイ(woesii)、アビシ(abysii)、ホリコシ)、サーモコッカス種(コダカラエンシスKOD1、リトラリス、9 degrees North−7種、JDF−3種、ゴルゴナリウス(gorgonarius))、ピロディクティウム・オクルタム(Pyrodictium occultum)及びアーケオグロブス・フルギダスから単離されたDNAポリメラーゼを含むが、これらに限定されない。適切な古細菌は、>80〜85℃の最大増殖温度又は>70〜80℃の最適増殖温度を示すと推定される。Pfu(Stratagene)、KOD(Toyobo)、Pfx(Life Technologies,Inc.)、Vent(New England BioLabs)、Deep Vent(New England BioLabs)、Tgo(Roche)及びPwo(Roche)を含む、古細菌ポルI型DNAポリメラーゼ群からの適切なPCR酵素が市販されている。上記に列挙するものに関連する付加的な古細菌は、Archaea:A Laboratory Manual(Robb,F.T.and Place,A.R.,eds.),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1995に述べられている。
本明細書で使用する、有用な「Taq」DNAポリメラーゼは、野生型TaqDNAポリメラーゼ及び低い忠実度を有する突然変異形態のTaqDNAポリメラーゼ(例えば参照により本明細書に組み込まれる、Patel et al.,2001,J.Biol.Chem.276:5044)を含む。
一部の天然に生じる熱安定性DNAポリメラーゼは、酵素的に活性な3’〜5’エキソヌクレアーゼドメインを有し、天然のプルーフリーディング能力を提供し、従ってTaqDNAポリメラーゼよりも高い忠実度を示す。しかし、これらのDNAポリメラーゼはまた、TaqDNAポリメラーゼと比較したとき、より緩慢なDNA伸長速度と全体的に低いプロセッシビティーを示す。
多酵素集合体もPCRにおいて使用でき、例えばTaqポリメラーゼと、Pfuポリメラーゼ又はVent DNAポリメラーゼなどのプルーフリーディング酵素を組み合わせることができる。そのような多酵素混合物は、Taqポリメラーゼ単独と比較したとき、より高いPCR効率と低い誤り率を示す(Barnes,PNAS USA 91:2216−2220(1994))。
Taqポリメラーゼの有用な変異型は、欠失/切断手法を通して開発された。Stoffelフラグメントは、例えば、TaqDNAポリメラーゼの544アミノ酸のC末端切断であり、酵素的に活性な5’〜3’ポリメラーゼドメインを有するが、3’〜5’エキソヌクレアーゼ及び5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を欠く。他の市販の熱安定性ポリメラーゼは突然変異によって開発された。例は、天然に生じるポリメラーゼの点突然変異である、Vent(エキソ−)及びDeep Vent(エキソ−)(New England Biolabs,Beverly,MA)を含む。
DNAポリメラーゼに関して本明細書で使用する、DNAポリメラーゼという用語は、「その機能的フラグメント」を含む。「その機能的フラグメント」は、ポリメラーゼの全アミノ酸配列未満を包含し、少なくとも一組の条件下で、ポリヌクレオチドの重合を触媒する能力を保持する、野生型又は突然変異型DNAポリメラーゼの一部を指す。そのような機能的フラグメントは、別個の実体として存在し得るか、又は融合タンパク質などのより大きなポリペプチドの構成成分であり得る。
本明細書で使用する、「プルーフリーディング」活性は、DNAポリメラーゼの3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を指す。「非プルーフリーディング」酵素は、「3’〜5’エキソヌクレアーゼ欠損」又は「3’〜5’エキソ−」であるDNAポリメラーゼを指す。本明細書で使用する、「3’〜5’エキソヌクレアーゼ欠損」又は「3’〜5’エキソ−」は、組み込まれたヌクレオチドをDNAポリマーの3’末端から除去する能力を実質的に欠く酵素を指す。ファミリーBポリメラーゼのメンバーによって例示される3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性などのDNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性は、突然変異を通して失われることがあり、エキソヌクレアーゼ欠損ポリメラーゼを生じる。本明細書で使用する、3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性欠損であるDNAポリメラーゼは、3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠く。「実質的に欠く」は、親酵素に比べて、例えば0.03%、0.05%、0.1%、1%、5%、10%、20%、50%の活性の欠如、さらにはエキソヌクレアーゼ活性の完全な欠如を包含する。3’〜5’エキソヌクレアーゼDNAポリメラーゼを作製し、特徴付けるために使用される方法並びに3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を低下させる又は排除する突然変異は、係属中の米国特許出願第09/698,341号(Sorge et al;2000年10月27日出願)に開示されている。3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を低下させる又は排除する付加的な突然変異は当分野において公知であり、ここで考慮される。
様々な市販のポルI型DNAポリメラーゼがあり、その一部は5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を低下させる又は排除するように改変されている。ポルI型DNAポリメラーゼの5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を排除するために使用される方法は、突然変異誘発(Xu et al.,1997,J.Mol.Biol.,268:284及びKim et al.,1997,Mol.Cells,7:468に述べられている);タンパク質分解消化によるN末端切断(Klenow et al.,1971,Eur.J.Biochem.,22:371に述べられている);又はクローニングとC末端フラグメントとしての発現によるN−切断(Lawyer et al.,1993,PCR Methods Appl.,2:275に述べられている)を含む。
本発明はまた、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,333,158号及び国際公開広報第WO01/09347 A2号に述べられている、アクセサリー因子と組み合わせたDNAポリメラーゼを考慮する。
(ポリメラーゼ連鎖反応)
PCRの手法は、PCR:A Practical Approach,M.J.McPherson,et al.,IRL Press(1991),PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,by Innis,et al.,Academic Press(1990)及びPCR Technology:Principals and Applications for DNA Amplification,H.A.Erlich,Stockton Press(1989)を含む、数多くの出版物の中で説明されている。PCRはまた、各々が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,683,195号;同第4,683,202号;同第4,800,159号;同第4,965,188号;同第4,889,818号;同第5,075,216号;同第5,079,352号;同第5,104,792号;同第5,023,171号;同第5,091,310号;及び同第5,066,584号を含む、多くの米国特許に記述されている。
核酸増幅は、核酸(例えばDNA)分子又はプライマーへのヌクレオチドの組込みを生じさせ、それによって核酸鋳型に相補的な新しい核酸分子を形成する。形成された核酸分子及びその鋳型は、さらなる核酸分子を合成するための鋳型として使用できる。本明細書で使用する1つの増幅反応は、多くの回数の核酸合成からなり得る。増幅反応は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR;Mullis and Faloona,1987,Methods Enzymol.,155:335)を含む。1つのPCR反応は、核酸分子の変性と合成の5〜100「サイクル」からなり得る。エキソ−DNAポリメラーゼによるPCR増幅は、本質的に、突然変異した増幅産物の生成を生じさせる。
PCR反応は、反復される一連の温度サイクルを含み、典型的には10〜100μlの容量で実施される。反応混合物は、dNTP(4つのデオキシヌクレオチド、dATP、dCTP、dGTP及びdTTPの各々)、プライマー、緩衝液、DNAポリメラーゼ及び核酸鋳型を含む。PCR反応は、第一プライマーが核酸鋳型配列の1本の鎖内の領域に相補的な配列を含み、相補的DNA鎖の合成を開始させ、及び第二プライマーが標的核酸配列の2番目の鎖内の領域に相補的な配列を含み、相補的DNA鎖の合成を開始させる、オリゴヌクレオチドプライマーのセットを提供すること、及び(i)増幅のために必要なプライマーの、鋳型配列内に含有される標的核酸配列へのアニーリング、(ii)核酸ポリメラーゼがプライマー伸長産物を合成する、プライマーの伸長、というPCRサイクリング工程を可能にする条件下で、核酸ポリメラーゼを鋳型依存性重合剤として使用して核酸鋳型配列を増幅することを含む。「オリゴヌクレオチドプライマーのセット」又は「PCRプライマーのセット」は、2、3、4以上のプライマーを含み得る。
PCRプライマーは、核酸鋳型にハイブリダイズして、2番目の核酸鎖の酵素的合成を開始することができる一本鎖DNA又はRNA分子であり得る。本発明に従って有用なPCRプライマーは、10〜100ヌクレオチド長、好ましくは17〜50ヌクレオチド長、より好ましくは17〜45ヌクレオチド長の範囲内である。
プローブ及びプライマーは、典型的には生物学的又は化学合成によって調製されるが、生物学的精製又は分解、例えばエンドヌクレアーゼ消化によっても調製できる。
本発明において使用されるプローブ及びプライマーのような短い配列については、化学合成が生物学的合成と比較してしばしばより経済的である。より長い配列に関しては、Messing,1983,Methods Enzymol.101:20−78によって述べられているような一本鎖DNAのためのM13の使用などの、分子生物学的において用いられる標準的複製方法ができる。ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド合成の化学的方法は、ホスホトリエステル及びホスホジエステル法(Narang,et al.,Meth.Enzymol.(1979)68:90)及び支持体上での合成(Beaucage,et al.,Tetrahedron Letters.(1981)22:1859−1862)並びにホスホルアミデート手法(Caruthers,M.H.,et al.,Methods in Enzymology(1988)154:287−314(1988)、及び「Synthesis and Applications of DNA and RNA」,S.A.Narang,editor,Academic Press,New York,1987及びその中に含まれる引用文献に述べられている他の方法を含む。
一般に標的ポリヌクレオチドの増幅、例えばPCRによる増幅と組み合わせた標識プローブの使用は、その全てが参照により本明細書に組み込まれる、Innis et al.,editors,PCR Protocols(Academic Press,New York,1989);Sambrook et al.,Molecular Cloning,Second Edition(Cold Spring Harbor Laboratory,New York,1989)などの多くの参考文献に述べられている。一部の実施形態では、プローブの結合部位は、標的ポリヌクレオチドを増幅するために使用されるPCRプライマーの間に位置する。他の実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブ複合体がプライマーとして働く。もう1つの実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブ複合体は、アンプリコンに組み込まれたプライマー内に存在する標的核酸に結合する。好ましくは、PCRはTaq DNAポリメラーゼ、例えばAmplitaq(Perkin−Elmer,Norwalk,Conn.)又は等価の熱安定性DNAポリメラーゼを使用して実施され、PCRのアニーリング温度は、使用されるオリゴヌクレオチドプローブの融解温度より低い約5℃〜10℃である。
本明細書で使用する、「1以上の付加的なその後のPCR増幅反応を反復すること」という用語は、核酸鋳型、少なくとも2個のPCRプライマー、誤りがちなDNAポリメラーゼを、核酸鋳型の増幅を可能にする条件下でインキュベートすることを含む、1以上の付加的なPCR増幅反応の後続実施を指す。後続PCR反応は、その前のPCR増幅のPCR増幅された産物を鋳型として使用する、前記インキュベーション工程を含む。その前のPCR増幅反応の増幅産物は、後続PCR反応のための鋳型として使用する前に、当分野で公知の手段によって、例えばフェノール抽出/エタノール沈殿又はカラム精製によって精製し得る。後続PCR増幅反応のための鋳型は、その前のPCR増幅の全増幅産物の一部であり得る。各々の後続PCR増幅について、新鮮な試薬(例えば反応緩衝液、dNTP、DNAポリメラーゼ、プライマー)を反応混合物に添加する。その前のPCR増幅の増幅産物の一部を使用する場合、後続PCR反応の容量は先のPCR反応と同じであり得る。先のPCR反応の全増幅産物を鋳型として使用する場合、後続PCR反応は先のPCR反応よりも大きな容量を有する。
PCR反応は、反復される一連の温度サイクルを含み、典型的には10〜100μlの容量で実施される。反応混合物は、dNTP(4つのデオキシヌクレオチド、dATP、dCTP、dGTP及びdTTPの各々)、プライマー、緩衝液、DNAポリメラーゼ及びポリヌクレオチド鋳型を含む。PCRは、増幅しようとする二本鎖標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズする2個のプライマーを必要とする。PCRでは、この二本鎖標的配列を変性し、1個のプライマーが変性された標的の各々の鎖にアニーリングする。プライマーは、互いから離れた部位で、1個のプライマーの伸長産物が、その相補物から分離されたとき、他方のプライマーにハイブリダイズすることができる方向で、標的ポリヌクレオチドにアニーリングする。ひとたび所与のプライマーが標的配列にハイブリダイズすれば、DNAポリメラーゼの作用によってプライマーが伸長される。次に、伸長産物を標的配列から変性し、この過程を反復する。
この過程の連続的なサイクルにおいて、先のサイクルで生産された伸長産物はDNA合成のための鋳型として役立つ。2番目のサイクルから始まって、増幅の産物は対数的速度で蓄積し始める。増幅産物は、第一プライマーの配列を含有し、場合により2番目のプライマーに相補的な配列が続く第一鎖、及び第一鎖に相補的な第二鎖を含む、別個の二本鎖DNA分子である。
PCR過程によって可能となる膨大な増幅は、高いDNAレベルを有する試料、陽性対照鋳型又は先の増幅からの小さなレベルのDNAキャリーオーバーは、意図的に添加される鋳型DNAがない場合でも、PCR産物を生じ得る。可能な場合は、全ての反応混合物は、PCR産物分析及び試料調製とは別の区域に設置される。RNA/DNA調製、反応物混合及び試料分析のための専用の又は使い捨ての容器、溶液及びピペット(好ましくは容積式ピペット)の使用は交差汚染を最小限に抑える。参照により本明細書に組み込まれる、Higuchi and Kwok,1989,Nature,339:237−238及びKwok and Orrego,in:Innis et al.eds.,1990,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications.Academic Press,Inc.,San Diego,Calif.も参照のこと。
PCR促進因子も、増幅の効率を改善するために使用し得る。本明細書で使用する、「PCR促進因子」又は「ポリメラーゼ促進因子」(PEF)は、ポリヌクレオチドポリメラーゼ促進活性を有する複合体又はタンパク質を指す(どちらも参照により本明細書に組み込まれる、Hogrefe et al.,1997,Strategies 10::93−96;及び米国特許第6,183,997号)。Pfu DNAポリメラーゼに関して、PEFは、天然形態(P50とP45の複合体として)又は組換えタンパク質としてのP45を含む。Pfu P50とP45の天然複合体では、P45だけがPCR促進活性を示す。P50タンパク質は、構造に関して細菌フラボタンパク質に類似する。P45タンパク質は、構造的にdCTPデアミナーゼ及びdUTPアーゼに類似するが、dUTPをdUMPとピロリン酸に変換するdUTPアーゼとしてのみ機能する。PEFはまた、本発明によれば、以下からなる群より選択され得る。古細菌供給源(例えばパイロコッカス・フリオサス)から得られる単離又は精製された天然に生じるポリメラーゼ促進タンパク質;Pfu P45と同じアミノ酸配列を有する完全又は部分的合成タンパク質、又はポリメラーゼ促進活性を有するその類似体;前記の天然に生じるあるいは完全又は部分的合成タンパク質の1以上のポリメラーゼ促進混合物;前記の天然に生じるあるいは完全又は部分的合成タンパク質の1以上のポリメラーゼ促進タンパク質複合体;又は前記の天然に生じるタンパク質の1以上を含むポリメラーゼ促進性部分精製細胞抽出物(米国特許第6,183,997号、前出)。PEFのPCR促進活性は当分野で周知の手段によって定義される。PEFについての単位定義はPEF(P45)のdUTPアーゼ活性に基づき、これは、dUTPからのピロリン酸(PPi)の生産を観測することによって測定される。例えばPEFを、PEFがdUTPをdUMPとPPiに加水分解する間、dUTP(1×クローン化Pfu PCR緩衝液中10mM dUTP)と共にインキュベートする。形成されるPPiの量を、Sigmaから市販されている共役酵素アッセイシステム(No.P7275)を使用して定量する。活性1単位は、1時間当たりに形成される(85℃で)PPi 4.0nmoleと機能的に定義される。
他のPCR添加剤も、PCR反応の精度と特異性に影響を及ぼし得る。0.5mM未満のEDTAが増幅反応混合物中に存在してもよい。Tween20(商標)及びNonidet(商標)P−40などの界面活性剤が酵素希釈緩衝液中に存在する。約0.1%以下の非イオン界面活性剤の最終濃度が適切であるが、0.01〜0.05%が好ましく、ポリメラーゼ活性に干渉しない。同様に、グリセロールがしばしば酵素製剤中に存在し、一般に反応混合物中1〜20%の濃度に希釈される。グリセロール(5〜10%)、ホルムアミド(1〜5%)又はDMSO(2〜10%)が、高いGC含量を有する又は長い(例えば>1kb)鋳型DNAのためにPCRに添加できる。これらの添加剤は、プライマー鋳型のハイブリダイゼーション反応のTm(融解温度)及びポリメラーゼ酵素の熱安定性を変化させる。BSA(0.8μg/μlまで)はPCR反応効率を改善し得る。ベタイン(0.5〜2M)も、DNAの高いGC含量及び長いフラグメントのためにPCRに有用である。塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC、>50mM)、塩化テトラエチルアンモニウム(TEAC)及びトリメチルアミンN−オキシド(TMANO)も使用し得る。上記の各添加剤の最適濃度を決定するために試験PCRを実施し得る。
本発明は、抗体(ホットスタートPCRのため)及びssb(一本鎖DNA結合タンパク質;より高い特異性)を含むが、これらに限定されない添加剤を提供する。本発明はまた、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,333,158号及び国際公開広報第WO01/09347 A2号に述べられている、アクセサリー因子と組み合わせた突然変異型古細菌DNAポリメラーゼを考慮する。
様々な特異的PCR増幅適用が当分野において使用可能である(総説については、例えば、各々が参照により本明細書に組み込まれる、Erlich,1999,Rev Immunogenet,1:127−34;Prediger 2001,Methods Mol.Biol.160:49−63;Jurecic et al.,2000,Curr.Opin.Microbiol.3:316−21;Triglia,2000,Methods Mol.Biol.130:79−83;MaClelland et al.,1994,PCR Methods Appl.4:S66−81;Abramson and Myers,1993,Current Opinion in Biotechnology 4:41−47参照)。
本発明は、以下を含むが、これらに限定されないPCR適用において使用できる。(i)非特異的増幅を低減するホットスタートPCR。(ii)外部セットのプライマーと内部セットのプライマーを使用してより信頼し得る産物を合成する入れ子PCR。(iii)公知の配列に隣接する領域の増幅のための逆PCR。この方法では、DNAを消化し、所望のフラグメントを連結によって環化して、その後外向きに伸長する公知配列に相補的なプライマーを使用したPCRを実施する。(iv)AP−PCR(恣意的開始(arbitrarily primed)/RAPD(ランダム増幅多型DNA)。これらの方法は、恣意的オリゴヌクレオチドを用いて増幅することにより、ほとんど知られていない標的配列を有する種からゲノムフィンガープリントを作製する。(v)RNA指向性DNAポリメラーゼ(例えば逆転写酵素)を使用してcDNAを合成し、次にそれをPCRのために使用する、RT−PCR。この方法は、組織又は細胞における特定配列の発現を検出するために極めて感受性が高い。mRNA転写産物を定量するためにも使用し得る。(vi)RACE(cDNA末端の迅速増幅法)。これは、DNA/タンパク質配列についての情報が限られている場合に使用される。この方法は、cDNAの3’又は5’末端を増幅し、各々1個の特異的プライマー(プラス1個のアダプタープライマー)だけを有するcDNAのフラグメントを生成する。次に、オーバーラップするRACE産物を組み合わせて完全長cDNAを作製することができる。(vii)異なる組織において区別的に発現される遺伝子を同定するために使用されるDD−PCR(ディファレンシャル・ディスプレイPCR)。DD−PCRにおける最初の工程はRT−PCRを含み、次に、短い、故意に非特異的なプライマーを使用して増幅を実施する。(viii)同じ標本中のDNA配列の2以上のユニーク標的を同時に増幅するマルチプレックスPCR。1つのDNA配列を、PCRの質を確認するための対照として使用できる。(ix)同じセットのプライマーに対して標的DNAと競合する(競合的PCR)内部対照DNA配列(しかし異なる大きさの)を使用するQ/C−PCR(定量的比較)。(x)遺伝子を合成するために使用される反復性PCR。この方法で使用されるオリゴヌクレオチドは、一続きの遺伝子(>80塩基)に対して、センス鎖とアンチセンス鎖に交互に相補的であり、重複する(約20塩基)末端を有する。(xi)アシンメトリックPCR。(xii)インサイチューPCR。(xiii)部位指定PCR突然変異誘発。
本発明はいかなる特定増幅システムにも限定されない。他のシステムが開発されるとき、それらのシステムは本発明の実施によって利益を得る可能性がある。
温度安定性ポリメラーゼは、二本鎖核酸がPCRサイクルの間に高温(約95℃)への暴露によって変性する熱サイクリング過程において好ましい。
当業者はまた、合成/増幅反応の忠実度を高めるために他のPCRパラメータを使用し得る。PCRの忠実度は、dNTP濃度の変化、反応当たりに使用される酵素の単位数、pH、及び反応物中に存在するMg2+対dNTPの比率などの因子によって影響され得ることが報告された(Mattila et al.,1991、前出)。
Mg2+濃度は、プライマー鋳型相互作用を安定化することによって鋳型DNAへのオリゴヌクレオチドプライマーのアニーリングに影響を及ぼし、同時に鋳型プライマーとポリメラーゼの複製複合体を安定化する。従って、非特異的アニーリングを上昇させ、望ましくないPCR産物を生産し得る(ゲルにおいて多数のバンドを生じる)。非特異的増幅が起こるときは、増幅の精度と特異性を高めるためにMg2+を低下させる必要があるか又はMg2+をキレート化するためにEDTAを添加することができる。
Mn2+又はCo2+などの他の二価陽イオンもDNA重合に影響を及ぼし得る。各々のDNAポリメラーゼのための適切な陽イオンは当分野において公知である(例えばDNA Replication 2nd edition、前出において)。二価陽イオンは、MgSO又はMnSOなどの塩の形態で供給される。トリス緩衝液中で使用可能な陽イオン濃度は、MnSOについては0.5〜7mM、好ましくは0.5〜2mMの範囲内であり、MgSOについては0.5〜10mMである。
DNAポリメラーゼによって必要とされる一価陽イオンは、カリウム、ナトリウム、アンモニウム又はリチウムによって、好ましくは陰イオンとしての硫酸塩と共に、供給され得る。KSOについては、濃度は1〜200mMの範囲内であり、好ましくは40〜100mMの範囲内であるが、最適濃度は、反応において使用されるポリメラーゼに依存して異なり得る。
デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)は、二ナトリウム又はリチウム塩などの、dATP、dCTP、dGTP、dUTP及びdTTPの塩の溶液として添加される。本発明の方法では、各々1μM〜2mMの範囲内の最終濃度が適切であり、100〜600μMが好ましいが、ヌクレオチドの最適濃度は、PCR反応において、総dNTP及び二価金属イオン濃度、及び緩衝液、塩、特定プライマー及び鋳型に依存して異なり得る。より長い産物、すなわち1500bp超に関しては、トリス緩衝液を使用するとき、各々のdNTP 500μMが好ましいと考えられる。
dNTPは二価陽イオンをキレート化する;従って、使用される二価陽イオンの量は、反応物中のdNTPの濃度に応じて変化させる必要があり得る。過剰量のdNTP(例えば1.5mM超)は誤り率を上昇させ、おそらくDNAポリメラーゼを阻害し得る。dNTPを低下させることは(例えば10〜50μMに)誤り率を低減し得る。より大きなサイズの鋳型を増幅するためのPCR反応は、より多くのdNTPを必要とし得る。
PCRはDNA増幅のための非常に強力なツールであり、従ってごくわずかな鋳型DNAしか必要としない。しかし、一部の実施形態では、誤りの可能性を低減するために、より高いDNA濃度を使用し得る。しかし、あまりに多すぎる鋳型は夾雑物の量を増加させ、効率を低下させ得る。
通常、3μMまでのプライマーを使用し得るが、プライマー対鋳型の高い比率は非特異的増幅及びプライマー二量体形成を生じさせ得る。従って通常は、プライマー二量体形成を回避するためにプライマー配列を確認する必要がある。
変性時間は、鋳型のGC含量が高ければ上昇し得る。高いGC含量を有するプライマー又はより長いプライマーに関しては、より高いアニーリング温度が必要であり得る。勾配PCRはアニーリング温度を決定する有用な方法である。より大きなPCR産物増幅については伸長時間を延長すべきである。しかし、ポリメラーゼへの損傷を制限するために、可能な場合は常に伸長時間を低減することが必要であり得る。鋳型数が非常に少ない場合はサイクル数を増加させ、鋳型数が多い場合はサイクル数を減少させ得る。
本明細書で使用する、「突然変異型」ポリメラーゼは、DNA重合活性、塩基類似体検出活性、逆転写酵素活性、プロセッシビティー、塩耐性、DNA結合、鎖置換活性、ヌクレオチド結合及び認識、3’〜5’又は5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性、プルーフリーディング、忠実度を含むが、これらに限定されないDNAポリメラーゼの1以上の活性を変化させる、又は室温でDNA重合を低下させる、1以上の突然変異を含むDNAポリメラーゼを指す。ここで定義する「突然変異型」ポリメラーゼは、1以上のアミノ酸置換、1以上のアミノ酸挿入、切断、又は内部欠失を含むポリメラーゼを含む。ここで定義する「突然変異型」ポリメラーゼは、非キメラ及びキメラポリメラーゼを含む。
真正細菌DNAポリメラーゼの3つのクラス、ポルI型、II型及びIII型が存在する。ポルI型DNAポリメラーゼファミリーの酵素は5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を有し、一部のメンバーは3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性も示す。ポルII型DNAポリメラーゼは、天然では5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を欠くが、3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を示す。ポルIII型DNAポリメラーゼは、細胞の主要な複製型DNAポリメラーゼであり、多数のサブユニットからなる。ポルIII型触媒サブユニットは5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を欠くが、一部の場合には3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性が同じポリペプチド内に位置する。真正細菌ポルII型及びポルIII型DNAポリメラーゼは市販されていない。ポルI型DNAポリメラーゼは様々なものが市販され、その一部は5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性を低減する又は排除するように改変されている。
ポリメラーゼ突然変異誘発は、新しい有用な核酸ポリメラーゼ変異体を開発するために使用されてきた。例えば、天然に生じるDNAポリメラーゼはヌクレオチド類似体の組込みを強力に判別する。この性質はDNA複製の忠実度と修復に寄与する。しかし、ヌクレオチド類似体の組込みは、多くのDNA合成適用、特にDNA塩基配列決定のために有用である。従って、結合されたエキソヌクレアーゼ活性、5’ヌクレアーゼ活性又は3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性のいずれかを欠くDNAポリメラーセは、DNA配列に好ましい。低いヌクレオチド識別を備える熱安定性DNAポリメラーゼを作製するために、部位指定突然変異誘発試験が開始され、DNA配列決定に適した必要な活性を有する突然変異形態の多くの熱安定性DNAポリメラーゼの同定をもたらした(参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,466,591号)。
DNAポリメラーゼの性質を改変するためのもう1つのアプローチは、必要な活性を有する1以上のタンパク質ドメインがDNAポリメラーゼと結合しているDNAポリメラーゼ融合物を作製することである。DNAポリメラーゼは、Pavlov et al.,2002,Proc.Natl.Acad.Sci USA,99:13510−13515に述べられているように、DNAトポイソメラーゼVからのへリックス−ヘアピン−へリックスDNA結合モチーフにインフレームで融合され、キメラDNAポリメラーゼのプロセッシビティー、塩耐性及び熱安定性を上昇させることが示された。T7 DNAポリメラーゼへのチオレドキシン結合ドメインの融合は、国際公開広報第WO97/29209号、米国特許第5,972,603号及びBedford et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:479−484(1997)に述べられているように、チオレドキシンの存在下でDNAポリメラーゼ融合物のプロセッシビティーを増強する。Taq DNAポリメラーゼへの古細菌PCNA結合ドメインの融合は、PCNAの存在下で高いプロセッシビティーを有し、より高い収量のPCR増幅DNAを生産するDNAポリメラーゼ融合物を生じさせる(Motz,M.,et al.,J.Biol.Chem.2002 May 3;277(18);16179−88)。また、Pfu又はTaq DNAポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼへの、配列非特異的DNA結合タンパク質であるスルホロブス・ソルファタリカスからのSso7d又はSac7dの融合は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開広報第WO01/92501 Alに開示されているように、これらのDNAポリメラーゼのプロセッシビティーを大きく上昇させることが示された。ここで述べる緩衝液組成物と組み合わせて有用なDNAポリメラーゼ融合物は、DNA結合タンパク質Sso7dに融合したPfu(又はそのDNA結合ドメイン;Pfu−Sso7d融合物)、エキソ−Pfu−Sso7d融合物、又はPfuのアミノ酸V93が突然変異しているエキソ−Pfu−Sso7d融合物(エキソ−Pfu−V93R−Sso7d融合物)を含む。他の融合物は、融合物とキメラDNAポリメラーゼの組合せであり得る。例えば好ましいキメラ/融合物は、Pfuと、DNA結合タンパク質Sso7D又はそのDNA結合ドメインに融合したパイロコッカス種GB−Dの間のキメラを含む。DNAポリメラーゼの全部又は一部の、異なるDNAポリメラーゼの対応ドメインによるドメイン置換も記述されている(米国特許出願第2002/0119461号)。
様々な生物からのDNAポリメラーゼの直接比較は、これらの酵素のドメイン構造が高度に保存され、多くの場合、酵素の広く定義されたドメインに特定機能を割り当てることが可能であることを示唆する。例えば約340アミノ酸にわたる6つの最も保存されたC末端領域は、同じ線状配置に位置し、金属とdNTPの結合部位及びDNA鋳型を保持するためのクレフトを形成し、従って重合機能のために必須である高度に保存されたモチーフを含有する。もう1つの例では、金属結合、一本鎖DNA結合及び3’〜5’エキソヌクレアーゼ反応の触媒作用に関与する大腸菌DNAポリメラーゼIにおける決定的に重要な残基を含む3つのアミノ酸領域は、いくつかの原核及び真核生物DNAポリメラーゼにおいてアミノ末端側の半分に同じ線状配置で位置する。これらの保存された領域の位置は、所望機能、例えば鋳型認識を保存しながら、改変された活性を有する突然変異型DNAポリメラーゼを調製するための遺伝子修飾を導く有用なモデルを提供する。
例えば突然変異型DNAポリメラーゼは、遺伝子修飾によって(例えば野生型DNAポリメラーゼのDNA配列を修飾することによって)作製できる。DNA配列のランダム突然変異並びに標的突然変異を可能にする多くの方法が当分野で公知である(例えばAusubel et al.,Short Protocols in Molecular Biology(1995)3rd Ed.John Wiley & Sons,Inc.)。加えて、従来の方法とPCRに基づく方法の両方を含む、部位指定突然変異誘発のための多くのキットが市販されている。例は、Stratageneより入手可能なEXSITE(商標)PCRベースの部位指定突然変異誘発キット(カタログ番号200502)及びStratageneからのQUIKCHANGE(商標)部位指定突然変異誘発キット(カタログ番号200518)、及び同じくStratageneからのCHAMELEON(登録商標)二本鎖部位指定突然変異誘発キット(Catalog No.200509)を含む。
当分野で公知の部位指定突然変異誘発のより古い方法は、一本鎖DNA鋳型の単離を可能にする、M13バクテリオファージベクターなどのベクターへの、突然変異させる配列のサブクローニングに基づく。これらの方法では、突然変異誘発性プライマー(すなわち突然変異させる部位にアニーリングすることができるが、突然変異させる部位に1以上のミスマッチヌクレオチドを担持するプライマー)を一本鎖鋳型にアニーリングし、その後、突然変異誘発性プライマーの3’末端から始まる鋳型の相補物を重合させる。生じる二重鎖を、次に、宿主細菌に形質転換し、プラークを所望突然変異に関してスクリーニングする。
最近では、部位指定突然変異誘発は、一本鎖鋳型を必要としないという利点を有するPCR法が使用されてきた。加えて、サブクローニングを必要としない方法が開発された。PCRに基づく部位指定突然変異誘発を実施するときには、いくつかの問題を考慮しなければならない。第一に、これらの方法では、ポリメラーゼによって導入される望ましくない突然変異の拡大を防ぐためにPCRサイクルの数を抑えることが望ましい。第二に、反応物中に残存する非突然変異親分子の数を低減するために選択を用いなければならない。第三に、単一PCRプライマーセットの使用を可能にするために伸長PCR法が好ましい。そして第四に、一部の熱安定性ポリメラーゼの非鋳型依存性末端伸長活性のために、しばしば、PCRで生成された突然変異産物の平滑末端連結の前に末端ポリッシング工程を手順に組み込むことが必要である。
1以上のランダムに位置する突然変異を担持する突然変異体のパネルを生じさせる、ランダム突然変異誘発の方法が当分野に存在する。そのような突然変異体のパネルを、その後、低いDNA重合活性、3’〜5’エキソヌクレアーゼ欠損、又は野生型ポリメラーゼと比較したプロセッシビティーを含むがこれらに限定されない性質を示すもののような、所望活性に関してスクリーニングし得る(例えばdUTP 200μMの存在下に所与のDNAポリメラーゼについての最適温度で30分後のdNTP 10nmoleの重合形態への組込みを測定することによって)。ランダム突然変異誘発のための方法の一例は、いわゆる「誤りがちなPCR法」である。その名称が示すように、この方法は、DNAポリメラーゼが高い忠実度の組込みを支持しない条件下で所与の配列を増幅する。種々のDNAポリメラーゼに関して誤りがちな組込みを促進する条件は多様であるが、当業者は所与の酵素に関してそのような条件を決定し得る。増幅の忠実度において多くのDNAポリメラーゼにとっての鍵となる変数は、例えば緩衝液中の二価金属イオンの種類と濃度である。マンガンイオンの使用及び/又はマグネシウム又はマンガンイオン濃度の変化は、従って、ポリメラーゼの誤り率に影響を及ぼすために適用され得る。
突然変異誘発によって作製される所望突然変異型DNAポリメラーゼについての遺伝子は、突然変異の部位及び数を同定するために配列決定され得る。2以上の突然変異を含む突然変異体については、所与の突然変異の作用は、特定突然変異体によって担持されるその他の突然変異から単離された部位指定突然変異誘発による野生型遺伝子への同定突然変異の導入によって評価され得る。そのようにして生成された単一突然変異体のスクリーニングアッセイは、その後、その突然変異単独の作用の決定を可能にする。
典型的には、5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性、3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性、識別活性、及び忠実度は、典型的には異なる性質を有するアミノ酸の置換によって影響され得る。例えばAspなどの酸性アミノ酸を、塩基性、中性又は極性であるが無電荷のアミノ酸、例えばLys、Arg、His(塩基性);Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe、Trp(中性);又はGly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn又はGln(極性であるが電荷を有さない)に変更し得る。Gluは、Asp、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe、Trp、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn又はGlnに変更し得る。
DNAポリメラーゼの効率を測定する方法は、PCR Primer:A Laboratory Manual,1995,CSHL Press,Cha and Thilly,pp.37−51に述べられている。鋳型長増幅能力を測定する方法は、Proc Natl.Acad.Sci USA,2002,99:596−601及びJ.Biotechnol.,2001,88:141−149に述べられている。DNAポリメラーゼの特異性を測定する方法は、J.Biochem.(Tokyo),1999,126:762−8に述べられている。DNAポリメラーゼの熱安定性を測定する方法は、FEMS Microbiol.Lett,2002,217:89−94に記述されている。ヌクレオチド結合及び認識を測定する方法は、J.Mol.Biol.,2002,322:719−729及びNucleic Acids Res.,2002,30:605−13に述べられている。
(キット)
本発明は、PCR及び突然変異誘発などの核酸複製反応のための新規組成物及び方法を提供する。本発明はまた、対象組成物の1以上の容器を有し、一部の実施形態では、PCRにおける合成を含む、ポリヌクレオチド合成のために使用される様々な試薬の容器を含む包装単位を含むキット形式を考慮する。キットはまた、以下の品目の1以上を含有し得る。重合酵素、ポリヌクレオチド前駆体(例えばヌクレオチド)、プライマー、鋳型、プローブ、重合促進因子、染料、緩衝液、指示書及び対照。キットは、本発明に従った方法を実施するために適切な比率で混合された試薬の容器を含み得る。試薬容器は、好ましくは本発明の方法を実施するときの計量工程を省く単位量の試薬を含有する。本発明に従った1つのキットはまた、染色ゲルからのPCR産物収量の定量のためのDNA収量標準品を含有する。
以下の実施例は限定ではなく、単に本発明の様々な態様と特徴を代表するものである。ここで言及する全ての特許、特許公報及び他の引用の内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
5×濃縮PCR反応緩衝液を以下の表に従って調製した。
Figure 2009521954
トリス硫酸1M保存溶液は、10.0のpHが得られるように1Mトリス塩基(Sigma、超高純度)の溶液を適量の1Mトリス硫酸溶液(Sigma、超高純度)と混合することによって調製される。
6kb DNA標準品(ヒトβグロビン)の増幅を、1×濃度の最終反応溶液を得るために5×濃縮PCR反応緩衝液を使用して実施した。最終濃度又は反応物50μl当たりの試薬の量は、4つのデオキシリボヌクレオシド三リン酸の各々200μM、ヒトゲノムDNA鋳型100ng、各プライマー0.2μM、PEF 2U及びPhusion DNAポリメラーゼ(Finnzymes OY(Espoo,Finland))2−6Uであった。増幅を以下のように実施した。95℃、2分間、1サイクル;95℃、20秒間、58℃、20秒間、72℃、1分30秒間、30サイクル;72℃、3分間、1サイクル。熱サイクリングは、MJ research PTC−200 DNA Engine又はApplied Biosystems Gene Amp PCR System 9600のいずれかで実施した。増幅産物を1%アガロースゲルで泳動させ、臭化エチジウムを用いて染色した。比較のためにHF緩衝液(Finnzymes product F−518)及びGC緩衝液(Finnzymes product F−519)を使用して平行反応を実施した。HF及びGC緩衝液は、Phusion DNAポリメラーゼとの使用のためにFinnzymesにより市販され、緩衝液組成は特許保護されている。結果は図1に提示され、DNAポリメラーゼ融合物の濃度を反応物50μl当たり2〜6Uの範囲にわたって上昇させると、濃縮緩衝液中の産物収量は増加するが、HF又はGC緩衝液では収量が増加しないことを示す。
反応緩衝液中の塩の最適濃度を決定するため、濃縮DNAポリメラーゼを使用して種々の無機塩に関して実験を行った。反応は、いくつかの点を除いて、実施例1で上述したように実施した。試験した無機塩は、CsCl、KNO及びCsNOであった。実験で使用した各々の無機塩の濃度の範囲は以下の通りであった。CsCl:50〜120mM;KNO:15〜110mM;及びCsNO:30〜100mM。加えて、各々の無機塩を、DNAポリメラーゼ(Pfu−Sso7dポリメラーゼ融合物)20Uを使用して熱サイクリング反応において試験した。結果は、無機塩の濃度を反応当たり50〜120mMの範囲にわたって上昇させると、DNAポリメラーゼ20Uによる反応において産物収量が増加することを明らかにする。結果はまた、濃縮緩衝液組成物における無機塩の最適濃度範囲が80〜100mMの範囲内であることを明らかにする。
PCR実験におけるDNAポリメラーゼ濃度の濃度依存性への種々の緩衝液の作用を示す。臭化エチジウム染色を伴うゲル電気泳動は、各々の条件下での増幅産物の収量を明らかにする。本発明の緩衝液だけが、DNAポリメラーゼ濃度の上昇と共に産物の量を増加させる。詳細については実施例1参照。

Claims (73)

  1. 核酸複製のための組成物であって、無機塩と硫酸アンモニウムを含み、無機塩:硫酸アンモニウムモル比が5:1〜240:1の範囲内である組成物。
  2. 前記無機塩:硫酸アンモニウムのモル比が5:1〜80:1の範囲内である請求項1に記載の組成物。
  3. 前記無機塩濃度が50mM〜120mMの範囲内である請求項1に記載の組成物。
  4. 前記無機塩濃度が80mM〜100mMの範囲内である請求項2に記載の組成物。
  5. 前記硫酸アンモニウム濃度が1mM〜5mMの範囲内である請求項1に記載の組成物。
  6. 前記無機塩濃度が50mM〜120mMの範囲内であり、かつ前記硫酸アンモニウム濃度が1mM〜5mMの範囲内である請求項1に記載の組成物。
  7. 硫酸マグネシウムをさらに含む請求項1に記載の組成物。
  8. 硫酸マグネシウム濃度が1mM〜3mMの範囲内である請求項7に記載の組成物。
  9. 前記硫酸マグネシウム濃度が2mMである請求項8に記載の組成物。
  10. トリス硫酸緩衝液をさらに含む請求項1に記載の組成物。
  11. 前記トリス硫酸濃度が15mM〜50mMの範囲内である請求項10に記載の組成物。
  12. 前記トリス硫酸濃度が30mMである請求項11に記載の組成物。
  13. 前記緩衝液のpHが8〜11の範囲内である請求項10に記載の組成物。
  14. 前記緩衝液のpHが10である請求項13に記載の組成物。
  15. 前記緩衝液のpHが9である請求項13に記載の組成物。
  16. 前記無機塩濃度が50mM〜120mMの範囲内であり、前記硫酸アンモニウム濃度が1mM〜5mMの範囲内であり、1mM〜3mMの範囲内の濃度の硫酸マグネシウムと15mM〜50mMの範囲内の濃度のトリス硫酸緩衝液をさらに含む請求項1に記載の組成物。
  17. 前記無機塩の濃度が50mMであり、前記硫酸アンモニウムの濃度が1mMであり、pH10.0に調整された30mMトリス硫酸と、2mM硫酸マグネシウムと、0.1%Triton X−100とをさらに含む請求項1に記載の組成物。
  18. 前記無機塩の濃度が80mMであり、前記硫酸アンモニウムの濃度が1.5mMであり、pH10.0に調整された30mMトリス硫酸と、2mM硫酸マグネシウムと、0.1%Triton X−100とをさらに含む請求項1に記載の組成物。
  19. 前記無機塩の濃度が100mMであり、前記硫酸アンモニウムの濃度が2mMであり、pH10.0に調整された30mMトリス硫酸と、2mM硫酸マグネシウムと、0.1%Triton X−100とをさらに含む請求項1に記載の組成物。
  20. 基本的に陰イオンの全てが硫酸イオンである請求項19に記載の組成物。
  21. 1つ又は複数のヌクレオチドをさらに含む請求項1に記載の組成物。
  22. 1つ又は複数のDNAポリメラーゼをさらに含む請求項1に記載の組成物。
  23. 前記DNAポリメラーゼがエキソ−Pfu−Sso7d又はエキソ−Pfu V93R−Sso7dである請求項22に記載の組成物。
  24. 前記DNAポリメラーゼを1単位/50μlより高い濃度で含む請求項22に記載の組成物。
  25. 前記DNAポリメラーゼ濃度が少なくとも3単位/50μlである請求項24に記載の組成物。
  26. 前記DNAポリメラーゼ濃度が少なくとも4単位/50μlである請求項24に記載の組成物。
  27. 前記DNAポリメラーゼ濃度が少なくとも5単位/50μlである請求項24に記載の組成物。
  28. 前記DNAポリメラーゼ濃度が少なくとも6単位/50μlである請求項24に記載の組成物。
  29. 前記DNAポリメラーゼ濃度が少なくとも10単位/50μlである請求項24に記載の組成物。
  30. 前記DNAポリメラーゼ濃度が少なくとも20単位/50μlである請求項24に記載の組成物。
  31. 前記DNAポリメラーゼ濃度が3〜25単位/50μlの範囲内である請求項24に記載の組成物。
  32. 核酸鋳型をさらに含む請求項1に記載の組成物。
  33. プライマーをさらに含む請求項1に記載の組成物。
  34. 重合促進因子をさらに含む請求項1に記載の組成物。
  35. 1つ又は複数のヌクレオチドと、1つ又は複数の核酸ポリメラーゼと、核酸鋳型と、プライマーとをさらに含む請求項1に記載の組成物。
  36. DNAポリメラーゼ反応溶液を調製するための緩衝液濃縮物であって、2倍から20倍の範囲の割合で希釈することにより請求項1に記載の組成物を生じる緩衝液濃縮物。
  37. 5倍から10倍の範囲の割合で希釈することにより請求項1に記載の組成物を生じる請求項36に記載の緩衝液濃縮物。
  38. 5倍から10倍の希釈により請求項16に記載の組成物を生じる請求項36に記載の緩衝液濃縮物。
  39. 5倍から10倍の希釈により請求項17に記載の組成物を生じる請求項36に記載の緩衝液濃縮物。
  40. 5倍から10倍の希釈により請求項18に記載の組成物を生じる請求項36に記載の緩衝液濃縮物。
  41. 1つ又は複数のヌクレオチドをさらに含む請求項36に記載の緩衝液濃縮物。
  42. 1つ又は複数の核酸ポリメラーゼをさらに含む請求項36に記載の緩衝液濃縮物。
  43. 前記DNAポリメラーゼがPfu−Sso7d又はエキソ−Pfu V93R−Sso7dである請求項42に記載の緩衝液濃縮物。
  44. 前記DNAポリメラーゼがパイロコッカスGB−D−フリオサス−Sso7dである請求項42に記載の緩衝液濃縮物。
  45. Fenヌクレアーゼをさらに含む請求項36に記載の緩衝液濃縮物。
  46. 核酸鋳型をさらに含む請求項36に記載の緩衝液濃縮物。
  47. プライマーをさらに含む請求項36に記載の緩衝液濃縮物。
  48. 重合促進因子をさらに含む請求項36に記載の緩衝液濃縮物。
  49. 請求項1に記載の組成物を使用してDNAポリメラーゼ反応を実施することを含むDNAを複製する方法。
  50. 請求項36に記載の緩衝液濃縮物の希釈物を使用してDNAポリメラーゼ反応を実施することを含む核酸を複製する方法。
  51. 前記核酸が増幅される請求項49に記載の方法。
  52. PCRが実施される請求項49に記載の方法。
  53. RT−PCRが実施される請求項49に記載の方法。
  54. QPCRが実施される請求項49に記載の方法。
  55. 突然変異誘発が実施される請求項49に記載の方法。
  56. 前記突然変異誘発がランダム突然変異である請求項55に記載の方法。
  57. 前記突然変異誘発が部位指定突然変異である請求項55に記載の方法。
  58. 前記反応における前記DNAポリメラーゼの濃度が少なくとも2単位/100μlである請求項49に記載の方法。
  59. 前記反応における前記DNAポリメラーゼの濃度が少なくとも3単位/100μlである請求項49に記載の方法。
  60. 前記反応における前記DNAポリメラーゼの濃度が少なくとも4単位/100μlである請求項49に記載の方法。
  61. 前記反応における前記DNAポリメラーゼの濃度が少なくとも5単位/100μlである請求項49に記載の方法。
  62. 前記反応における前記DNAポリメラーゼの濃度が少なくとも6単位/100μlである請求項49に記載の方法。
  63. 前記DNAポリメラーゼが熱安定性である請求項49に記載の方法。
  64. 前記反応が少なくとも70℃の温度で実施される請求項63に記載の方法。
  65. 前記反応が少なくとも90℃の温度で実施される請求項63に記載の方法。
  66. 前記DNAポリメラーゼがPfu又はTaqポリメラーゼである請求項49に記載の方法。
  67. 請求項41に記載の緩衝液濃縮物と、そのための包装材料とを含む核酸試料の複製のためのキット。
  68. 1つ又は複数のヌクレオチド、1つ又は複数の核酸ポリメラーゼ、Fenヌクレアーゼ、1又は複数のプライマー、核酸鋳型、又は重合促進因子をさらに含む請求項67に記載のキット。
  69. 前記無機塩が、硫酸カリウム、塩化カリウム、硝酸カリウム、塩化セシウム、及び硝酸セシウムからなる群より選択される請求項1に記載の組成物。
  70. 前記無機塩が硫酸カリウムである請求項69に記載の組成物。
  71. 前記無機塩が、硫酸カリウム、塩化カリウム、硝酸カリウム、塩化セシウム、及び硝酸セシウムからなる群より選択される塩の混合物である請求項1に記載の組成物。
  72. 前記組成物の前記無機塩成分の陽イオン濃度が50mM〜120mMの範囲内である請求項1に記載の組成物。
  73. 前記DNAポリメラーゼがPfu−Deep Vent−Sso7dである請求項22に記載の組成物。
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