JP2009520569A - 感熱性添加物が含まれている歯科用組成物とその使用法 - Google Patents

感熱性添加物が含まれている歯科用組成物とその使用法 Download PDF

Info

Publication number
JP2009520569A
JP2009520569A JP2008547435A JP2008547435A JP2009520569A JP 2009520569 A JP2009520569 A JP 2009520569A JP 2008547435 A JP2008547435 A JP 2008547435A JP 2008547435 A JP2008547435 A JP 2008547435A JP 2009520569 A JP2009520569 A JP 2009520569A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
orthodontic
dental composition
adhesive
poly
curable
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2008547435A
Other languages
English (en)
Inventor
ブイ. ブレナン,ジョアン
エス. カルガトカー,ラジディープ
ディー. オクスマン,ジョエル
マイヤー,アジャイ
エス. ジェイムズ,ダレル
アイ. エバーアーツ,アルバート
エヌ. グエン,ラング
エス. マホニー,ウェイン
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
3M Innovative Properties Co
Original Assignee
3M Innovative Properties Co
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 3M Innovative Properties Co filed Critical 3M Innovative Properties Co
Publication of JP2009520569A publication Critical patent/JP2009520569A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K6/00Preparations for dentistry
    • A61K6/30Compositions for temporarily or permanently fixing teeth or palates, e.g. primers for dental adhesives

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Oral & Maxillofacial Surgery (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Dental Preparations (AREA)
  • Dental Tools And Instruments Or Auxiliary Dental Instruments (AREA)

Abstract

感熱性添加物が含まれている硬化型及び硬化済み歯科用組成物、及びかかる硬化型及び硬化済み歯科用組成物が含まれている物品を提供する。加熱すると、この硬化済み組成物は、その硬化済み組成物によって歯牙構造に付着させた歯科矯正装具の接着強度を低下させるのに有用である。

Description

歯科矯正治療は、位置異常歯を歯科矯正学的に正しい位置に移動させるものである。ブラケットとして知られている小型の歯科矯正装具を患者の歯の外面に接着し、アーチワイヤーを各ブラケットのスロットに配置する。アーチワイヤーは、正しい咬合をもたらすために、歯を所望の位置に移動するように誘導する経路を形成させる。アーチワイヤーの末端区域は、バッカルチューブとして知られている歯科矯正装具内に受容させる場合が多く、このバッカルチューブは患者の臼歯に固定させる。近年は、接着剤を用いて、直接的又は間接的な方法のいずれかによって歯科矯正装具を歯の表面に固着するのが一般的になっている。施術者は、ブラケットを歯の表面に接着する際、さまざまな接着剤を利用でき、また、卓越した接着強度をもたらす接着剤が多い。治療プロセス期間(典型的には2年以上になりうる)にわたって歯の表面に対するブラケットの接着力を維持させるためには、高い接着強度が望ましい。
ただし、接着強度の高い歯科矯正用接着剤は別の問題を導く可能性がある。例えば、歯科矯正治療プロセスの最も困難な局面の1つは、治療終了後にブラケットを取り外すことであろう。当該技術分野では、特定の剛性ブラケットと組み合わせて用いる特定の接着剤は、ある剥離条件の下で、エナメル質の破折を引き起こす可能性があることがよく知られている。このため、市販のセラミックブラケットの多くは、剥離プロセス中に歯の表面を損傷させないように、ブラケットと接着剤の境界面で接着状態が破壊されるように設計されている。しかし、このアプローチでは、ブラケットを取り除いた後、歯の表面の裏側に硬化済み接着剤パッドの大半が残ってしまう。この接着剤パッド(典型的には硬く、高度に架橋されている)の除去は、臨床医にとっては多大な時間を要するものに、患者にとっては不快なものとなる可能性がある。
治療プロセスを通じてブラケットを歯の表面に十分に接着させるとともに、治療終了時の除去作業の利便性を向上させることのできる新たな接着剤と方法が求められている。
ある1つの態様では、本発明は、感熱性添加物(例えば、半結晶性ポリマー、非晶質ポリマー、液晶、及び/又は、ワックス)が含まれている硬化済み歯科用組成物(例えば、硬化済み歯科矯正用接着剤、硬化済み歯科矯正用セメント、及び/又は、硬化済み歯科矯正用プライマー)によって歯牙構造に接着している歯科矯正装具の接着強度を低下させる方法を提供する。ある1つの実施形態では、この方法として、前記硬化済み歯科用組成物を(例えば少なくとも42℃まで)加熱して接着強度を低下させることが挙げられている。加熱するまでは(例えば治療期間にわたって)、硬化済み歯科用組成物では十分な接着強度が保たれるものの、加熱すると接着強度が低下し、歯科矯正装具を歯牙構造から利便的に除去できるようにする(すなわち、歯科矯正装具を剥離させるのに必要な力が小さくなる)のが好ましい。一部の実施形態では、剥離時に境界面(例えば、接着剤と歯の境界面、又は、歯科矯正装具と接着剤の境界面)での破壊(例えば接着破壊)又は剥離時に硬化済み歯科用組成物内での凝集破壊が起きるように、感熱性添加物、及び/又は感熱性添加物が含まれている歯科用組成物を配置することができる。例えば、接着剤と歯の境界面での破壊によって、硬化済み接着剤が除去済みの歯科矯正装具上に実質的に保持され、歯牙構造を利便的に浄化できる。
別の態様では、本発明は、感熱性添加物(例えば、半結晶性ポリマー、及び/又は非晶質ポリマー)が含まれている硬化型歯科用組成物(例えば、歯科矯正用プライマー、歯科矯正用接着剤、歯科矯正用シーラント、及び/又は歯科矯正用バンドセメント)を提供する。かかる硬化型及び/又は硬化済み歯科用組成物を表面に備える物品も提供し、この物品は任意に応じてプレコーティング済み物品として提供し、また、この物品には任意に応じて、別の硬化型及び/又は硬化済み歯科用組成物の層を1つ以上搭載させる。ある1つの実施形態では、硬化型歯科組成物に、エチレン性不飽和化合物と、反応開始剤と、感熱性添加物と、任意に応じて充填剤とが含まれている。任意に応じて、歯科用組成物にはさらに、放射線−熱変換物質が含まれている。一部の実施形態では、硬化型歯科用組成物を硬化させて、剪断剥離試験を用いて測定した場合に室温で少なくとも7MPaである接着強度によって歯科矯正装具を歯牙構造に接着可能である。一部の実施形態では、硬化型歯科用組成物は、酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物が含まれている歯科矯正用セルフエッチングプライマー又は歯科矯正用セルフエッチング接着剤である。かかる硬化型及び/又は硬化済み歯科用組成物、並びにかかる硬化型及び/又は硬化済み歯科用組成物を表面に備える物品を作製及び使用する方法をも提供する。
別の実施形態では、本発明は、少なくとも部分的に容器に包まれている歯科矯正装具(例えばプレコーティング済み歯科矯正装具)が含まれている、包装された物品を提供する。歯科矯正装具には、エチレン性不飽和化合物、反応開始剤、充填剤、感熱性添加物(例えば、半結晶性ポリマー、非晶質ポリマー、液晶、及び/又は、ワックス)を含む硬化型歯科用組成物をそのベース上に備える。任意に応じて、硬化型歯科用組成物にはさらに、放射線−熱変換物質が含まれている。任意に応じて、硬化型組成物が表面に備わっている物品にはさらに、別の硬化型及び/又は硬化済み歯科用組成物の層を1つ以上搭載することができる。
定義
本明細書で使用する時、「歯科用組成物」とは、歯牙構造に付着(例えば接着)することのできる物質(例えば歯科又は歯科矯正用物質)を指す。歯科用組成物としては、例えば接着剤(例えば歯科及び/又は歯科矯正用接着剤)、セメント(例えば、グラスアイオノマー、樹脂変性グラスアイオノマー、及び/又は、歯科矯正用セメント)、プライマー(例えば歯科矯正用プライマー)、修復材、ライナー、シーラント(例えば歯科矯正用シーラント)及びコーティングが挙げられる。歯科用組成物を用いて、歯科用物品を歯牙構造に接着できる場合が多い。
本明細書で使用する時、「歯科用物品」とは、歯牙構造に付着(例えば接着)させることのできる物品を指す。歯科用物品としては例えば、クラウン、ブリッジ、ベニア、インレイ、オンレイ、充填材、歯科矯正装具及び装置、並びに義歯(例えば部分又は総入れ歯)が挙げられる。
本明細書で使用する時、「歯科矯正装具」とは、歯牙構造に接着させるように意図されているいずれかの装置を指し、歯科用ブラケット、バッカルチューブ、リンガルリテーナー、歯科矯正用バンド、咬合オープナー、ボタン、クリートが挙げられるが、これらに限らない。歯科矯正装具は、接着剤を受容するためのベースを備えており、ベースは、金属、プラスチック、セラミック又はこれらの組み合わせで作られているフランジにすることができる。あるいは、ベースは、硬化済み接着剤層(単一又は複数、すなわち単層又は多層接着剤)から形成されているカスタムベースにすることができる。
本明細書で使用する時、「包装された」物品とは、容器内に収められている歯科矯正装具又はカードを指す。容器は、環境条件(例えば湿気や光など)から保護する働きをするのが好ましい。
本明細書で使用する時、「剥離」基材とは、物品と接触している基材のうち、物品の使用前又は使用中に物品から取り外す基材を指す。
本明細書で使用する時、「放射線−熱変換物質」とは、入射光(例えば、可視光線、紫外(UV)放射線、赤外(IR)放射線、近赤外(NIR)放射線、及び/又は高周波(RF)放射線)を吸収して、その入射光のかなりの部分を熱に変換する物質又は組成物を指し、この熱は感熱性添加物を軟質化するのに有用である可能性がある。
本明細書で使用する時、「軟質化」とは、物質の弾性の喪失を指し、この喪失は、この物質の物理変化及び/又は化学変化の結果として引き起こすことができる。物質の軟質化又は変形性の度合いは、物質の「コンプライアンス」と呼ばれる場合があり、この場合、コンプライアンスは物質のヤング率の逆数として定義する。
本明細書で使用する時、「歯牙構造」とは、例えば天然歯及び義歯の表面などの表面、骨、歯型などを指す。
本明細書で使用する時、「多層」接着剤とは、明確に異なる層(すなわち組成物が異なる層、好ましくは化学及び/又は物理特性が異なる層)が2つ以上備わっている接着剤を指す。
本明細書で使用する時、「層」とは、その層と異なる構成要素の全部又は一部に広がっている不連続的(例えばパターン層)又は連続的(例えば非パターン的な)な構成要素を指す。層は、均一な厚み又は変動する厚みから形成させてよい。
本明細書で使用する時、「パターン層」とは、そのパターン層とは異なる構成要素の特定の部分のみに広がっている(及び、任意に応じて付着している)不連続的な構成要素を指す。
本明細書で使用する時、「非パターン層」とは、その非パターン層とは異なる構成要素の全体に広がっている(及び、任意に応じて付着している)任意に連続的な構想要素を指す。
一般に、層とは異なる別の構成要素「〜上の」層、異なる構成要素「〜に広がっている」層、又は別の構成要素「〜に付着している」層には任意に応じて、層とその層とは異なる構成要素の間に1つ以上の追加の層が含まれるものと広く解釈するよう意図している。
本明細書で使用する時、「硬化型」とは、硬化(例えば重合若しくは架橋)又は凝固させることのできる物質又は組成物を指すものであって、例えば溶媒を除去する(例えば、蒸発及び/若しくは加熱によって)ことによって;加熱して重合及び/若しくは架橋を誘発させることによって;照射して重合及び/若しくは架橋を誘発させることによって;並びに/又は1つ以上の組成物を混和させて、重合及び/若しくは架橋を誘発させること、によって硬化又は凝固させることができる。「混和」は、例えば、2つ以上の部分を組み合わせて混和させ均質組成物を形成させることによって行うことができる。あるいは、境界面で(例えば自然発生的に又は剪断応力を加えた場合に)混ざり合って重合を開始させる別個の層として2つ以上の部分を搭載することができる。
本明細書で使用する時、「硬化済み」とは、硬化(例えば重合若しくは架橋)又は凝固した物質又は組成物を指す。
本明細書で使用する時、「硬化剤」とは、樹脂の硬化を開始させる何からの物を指す。硬化剤としては、例えば重合開始剤系、光開始剤系、及び/又はレドックス開始剤系を挙げてよい。
本明細書で使用する時、「光退色型」とは、化学放射線を照射すると退色することを指す。
本明細書で使用する時、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート、メタクリレート、又はこれらの組み合わせの省略表現であり、「(メタ)アクリル」は、アクリル、メタクリル、又はこれらの組み合わせの省略表現である。
本明細書で使用する時、「基」という化学用語は、置換を可能にさせるものである。
本明細書で使用する時、「ある1つの」は1つ以上を意味する。
本発明は、硬化型歯科用組成物と、かかる組成物が含まれており、硬化すると歯牙構造に付着することのできる物品を提供する。さらには、加熱すると、典型的には好都合な条件下で、かかる硬化型組成物の歯牙構造に対する接着性(例えば接着強度)を低下させることができる。接着性の低下は、硬化済み組成物を歯牙構造から取り外すのが望ましい場合に有用である可能性がある。このような硬化型歯科用組成物には、歯牙構造に付着(例えば接着)できる物質(例えば歯科及び/又は歯科矯正用物質)、例えば接着剤(例えば歯科及び/又は歯科矯正用接着剤)、セメント(例えばグラスアイオノマーセメント、樹脂変性グラスアイオノマーセメント)、プライマー、修復材、ライナー、シーラント及びコーティングが含まれる。歯科用組成物を用いて歯科用物品(例えば歯科矯正装具)を歯牙構造に接着できる場合が多い。
一部の実施形態では、このような硬化型歯科用組成物は、硬化すると、歯科矯正治療中に歯科矯正装具を歯牙構造に接着するのに十分な接着強度をもたらすことができ、また、施術者が歯科矯正装具を歯牙構造から取り外す必要がある場合、例えば治療プロセスの終了時に、接着強度を低下させるのにさらに有用である。本発明の組成物、物品及び方法は、好都合な条件下で硬化済み歯科用組成物を加熱すると接着強度を低下させるように設計されている。その結果、接着強度の低下が起きると、歯科矯正装具を利便的に取り外せるのみならず、歯科矯正装具を取り外した後に歯牙構造上に硬化済み歯科用組成物が残らないようにすることができる。
本発明の硬化型及び硬化済み歯科用組成物には感熱性添加物が含まれており、この添加物について本明細書で詳しく説明する。本明細書で使用する時、「感熱性添加物」とは、加熱すると軟質化する添加物を指す。本明細書で使用する時、歯科用組成物の「添加物」とは、歯科用組成物の一部分のうち、別の物質と組み合わさって歯科用組成物を実現させる部分を指す。したがって、添加物そのものは歯科用組成物にはなりえない。
感熱性添加物は、例えば接着剤、セメント(例えばグラスアイオノマーセメント、樹脂変性グラスアイオノマーセメント)、プライマー、修復材、ライナー、シーラント及びコーティングといった多種多様な歯科用組成物(例えば歯科及び歯科矯正用物質)の中に、加熱時に硬化済み組成物の接着強度を低下させるのに効果的であるとともに治療中に歯牙構造に対する十分な接着性(例えば歯科矯正装具の接着性)を維持させる濃度で組み込むことができる。治療としては、1カ月、2年、又は、それ以上続く歯科及び/又は歯科矯正治療プロセスを挙げることができる。
特定の実施形態では、かかる歯科用組成物は、好都合なことに、施術者が歯科矯正装具のベースに適用することができる。あるいは、歯科矯正装具のベース上にかかる歯科用組成物をプレコーティングした形で歯科矯正装具を実現させることができる。典型的には、このようなプレコーティング済み装具は、剥離ライナー又はフォームパッドライナー(例えば米国特許第6,183,249号(ブレナン(Brennan)ら)に記載されているようなもの)の有無にかかわらず、包装された物品として実現させる。代表的な容器は当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許第5,172,809号(ジェイコブス(Jacobs)ら)、及び、同6,089,861号(ケリー(Kelly)ら)に記載されている。
本発明の硬化型歯科用組成物には典型的に、エチレン性不飽和化合物と、反応開始剤と、感熱性添加物とが含まれている。一部の実施形態では、硬化型歯科用組成物には充填剤も含まれている。一部の実施形態では、硬化型歯科用組成物にはさらに、酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物が含まれており、この場合の硬化型歯科用組成物は例えば、歯科矯正用セルフエッチングプライマー又は歯科矯正用セルフエッチング接着剤にすることができる。一部の実施形態では、硬化型歯科用組成物にはさらに、後述されているような放射線−熱変換物質が含まれている。任意に応じて、本発明の硬化型歯科用組成物には、熱不安定成分、及び/又は、後述されているような酸生成成分及び酸反応成分を含めることができる。このような組成物は、硬化すると、室温で少なくとも7MPaである接着強度(本明細書に記載の剪断剥離試験を用いた場合)によって歯科矯正装具を歯牙構造に接着可能であるのが好ましい。
感熱性添加物
本発明の硬化型及び硬化済み歯科用組成物には、感熱性添加物が含まれている。本明細書で使用する時、「感熱性添加物」には、その添加物の熱分解温度よりも低いある温度(例えば200℃以下、好ましくは150℃以下、さらに好ましくは100℃以下、最も好ましくは80℃以下)まで加熱すると軟質化する添加物が含まれることが意図されている。具体的に言うと、高温(すなわち少なくとも42℃)まで加熱すると、その高温における添加物の貯蔵弾性率は、室温(例えば25℃)における添加物の貯蔵弾性率よりも低下する。高温における添加物の貯蔵弾性率は最大でも、室温における添加物の貯蔵弾性率の80%、さらに好ましくは最大でも60%、40%、20%、10%、5%、2%、1%、0.1%、又は、さらには0.01%であるのが好ましい。特定の温度における物質の貯蔵弾性率を測定する方法は当該技術分野において既知であり、かかる方法としては例えば、ルーディン(Rudin)著「ポリマー科学及びエンジニアリングの要素(The Elements of Polymer Science and Engineering)」(第2版、11章、ページ、1999年)に記載されているものが挙げられる。この方法としては例えば、動的機械分析(DMA)などの技法による動的機械測定が挙げられる。
典型的には、かかる感熱性添加物では、貯蔵弾性の低下率が最大になるのは、典型的に42℃〜200℃の範囲内においてである。このような貯蔵弾性の低下率の最大化は、転移点、例えば溶融転移点(T)、ガラス転移点(T)、液晶の固体−スメクチック相又はネマチック相転移点、液晶の等方性溶融転移点などに一致させることができる。
特定の実施形態では、感熱性添加物が含まれている硬化済み歯科用組成物では、添加物の熱分解温度よりも低い温度(例えば200℃以下、好ましくは150℃以下、さらに好ましくは100℃以下、最も好ましくは80℃以下)まで加熱すると、必ずというわけではないが状況に応じて、感熱性添加物が含まれていない硬化済み歯科用組成物を同様の条件下に置いた場合よりも大きい軟質化が見られる。
感熱性添加物が含まれている硬化済み歯科用組成物では、この添加物の熱分解温度よりも低い高温(例えば200℃以下、好ましくは150℃以下、さらに好ましくは100℃以下、最も好ましくは80℃以下)において、接着強度が低下するのが典型的であるとともに好ましい。具体的に言うと、高温(すなわち少なくとも42℃)まで加熱すると、高温における硬化済み歯科用組成物の接着強度は、感熱性添加物が含まれていない硬化済み歯科用組成物の同じ高温における接着強度よりも低くなる。高温(例えば70℃)におけるこの歯科用組成物の接着強度は最大でも、感熱性添加物が含まれていない硬化済み歯科用組成物の同じ高温(例えば70℃)における接着強度の90%、さらに好ましくは最大でも80%、50%、30%、20%、又は、さらには10%であるのが好ましい。さらに、特定の実施形態では、高温における接着強度は十分なレベル(例えば、施術者が圧力を加える前に、ブラケットが患者の口の中に落ちないようにするのに十分なレベル)に保たれるのが好ましい。このような実施形態では、歯科用組成物の高温における(例えば熱い食べ物にさらされた場合の)接着強度は、高温において少なくとも5MPaであるのが好ましい。
感熱性添加物が最大でも充填重量比で50%、さらに好ましくは最大でも30%、30%、10%、5%、又は、さらには1%含まれている歯科用組成物では、高温において、貯蔵弾性率及び/又は接着強度が低下可能であるのが好ましい。さらには、前記と同じ充填量の感熱性添加物において、硬化済み歯科用組成物の室温(例えば25℃)における接着強度が、感熱性添加物が含まれていない硬化済み歯科用組成物の同じ温度における接着強度の少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも70%、90%、100%、又は、さらには100%超であるのが好ましい。
一部の実施形態では、感熱性添加物はポリマーにすることができる。多種多様な形態を備えているポリマーを用いることができる。例えば、感熱性添加物は半結晶性ポリマー、非晶質ポリマー、又は、これらの組み合わせにすることができる。一部の実施形態では、感熱性添加物は液晶(例えば非ポリマー液晶又はポリマー液晶)にすることができる。一部の実施形態では、感熱性添加物は、ワックスにすることができる。
有用な半結晶性ポリマーの溶融転移温度(T)は典型的に、少なくとも42℃である。有用な半結晶性ポリマーの溶融転移温度(T)は典型的に、最大でも200℃、好ましくは最大でも150℃、さらに好ましくは最大でも100℃、最も好ましくは80℃以下である。
有用な非晶質ポリマーのガラス転移温度(T)は典型的に、少なくとも42℃である。有用な非晶質ポリマーのガラス転移温度(T)は典型的に、最大でも200℃、好ましくは最大でも150℃、さらに好ましくは最大でも100℃、最も好ましくは80℃以下である。
感熱性添加物に用いることができるポリマーの部類の例としては、ポリ((メタ)アクリル)、ポリ((メタ)アクリルアミド)、ポリ(アルケン)、ポリ(ジエン)、ポリ(スチレン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルケトン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルチオエーテル)、ポリ(ハロゲン化ビニル)、ポリ(ビニルニトリル)、ポリ(フェニレン)、ポリ(無水物)、ポリ(カーボネート)、ポリ(エステル)、ポリ(ラクトン)、ポリ(エーテルケトン)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ウレタン)、ポリ(シロキサン)、ポリ(スルフィド)、ポリ(スルホン)、ポリ(スルホンアミド)、ポリ(チオエステル)、ポリ(アミド)、ポリ(アニリン)、ポリ(イミド)、ポリ(イミン)、ポリ(尿素)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(シラン)、ポリ(シラザン)、炭水化物、ゼラチン、ポリ(アセタール)、ポリ(ベンゾオキサゾール)、ポリ(カルボラン)、ポリ(オキサジアゾール)、ポリ(ピペラジン)、ポリ(ピペリジン)、ポリ(ピラゾール)、ポリ(ピリジン)、ポリ(ピロリジン)、ポリ(トリアジン)及びこれらの組み合わせが挙げられる。当業者であれば、過度の実験なしに、所望の転移温度を備えている上記の部類からポリマーを選択できるであろう。特定のポリマーの溶融転移温度とガラス転移温度のリストについては、例えばJ.ブランドラップ(Brandrup)ら編「ポリマーハンドブック(Polymer Handbook)」第4版(1999年)を参照されたい。
多種多様な液晶(例えば、デームス(Demus)ら編「液晶ハンドブック(Liquid Crystals Handbook)」第1〜3巻(1998年)に記載されているものなど)を感熱性添加物に用いることができる。適切な液晶の等方性転移温度は典型的に、少なくとも42℃である。適切な液晶の等方性転移温度は典型的に、最大でも200℃、好ましくは最大でも150℃、さらに好ましくは最大でも100℃、最も好ましくは80℃以下である。当業者であれば、過度の実験なしに、所望の転移温度を備えている液晶を選択できるであろう。
有用な部類の液晶としては例えば、ビフェニル(例えばR−Ph−Ph−CN)、テルフェニル(例えばR−Ph−Ph−Ph−CN)、エステル(例えばR−PhC(O)O−Ph−OR’、R−PhC(O)O−Ph−CN、及び、R−PhC(O)O−Ph−Ph−CN)、トラン(例えばR−Ph−C≡C−Ph−OR’)、シッフ塩基(例えばR−Ph−N=CH−Ph−OR’、及び、R−O−Ph−CH=N−Ph−CN)、アゾ化合物(R−Ph−N=N−Ph−OR’)、アゾキシ化合物(例えばR−Ph−N=N(O)−Ph−OR’)、及び、スチルベン(例えばR−Ph−C(Cl)=CH−Ph−OR’)が挙げられる(式中の各R及びR’は独立して、アルキル基を表している)。Rは高級アルキル基であるのが好ましく、典型的には少なくともC7アルキル基であり、場合によっては、少なくともC12アルキル基である。R’は低級アルキル基であるのが好ましく、典型的にはC1又はC2アルキル基である。
感熱性添加物に用いることのできるワックスの例としては、歯科用ワックス(パターンワックス、ベースプレートワックス、シートワックス、印象ワックス、習作ワックス、ポリカプロラクトン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテートコポリマー、ポリエチレングリコール、長鎖アルコールとカルボン酸のエステル(例えばべへニルアクリレート)、長鎖アルコールと長鎖カルボン酸のエステル(例えばビーズワックス、非ポリマーワックス)、石油ワックス、酸化ポリエチレンワックス(例えば、ノースカロライナ州シャーロットのクラリアント社(Clariant Corp.)からセリダスト(CERIDUST)3719の商品名で入手可能なワックス)、微粉状態の極性高密度ポリエチレンワックス(例えば、ノースカロライナ州シャーロットのクラリアント社(Clariant Corp.)からセリダスト(CERIDUST)3731の商品名で入手可能なワックス)、カルナウバワックス(例えば、オハイオ州シンシナティのマイケルマン社(Michelman Incorporated)からミワックス(MIWAX)の商品名で入手可能なワックス)及びこれらの組み合わせ(例えば、マイクロクリスタリン(microcystalline)ワックス、カルナウバワックス、セレシン及びビーズワックスのうちの2つ以上が含まれている混合物)が挙げられる。有用なワックスは、オリゴマー又はポリマーのものである可能性もある。有用なワックスは、マクロクリスタリン又はマイクロクリスタリン、天然又は合成のものである可能性があり、これらには、官能基(例えば、カルボキシル基、アルコール基、エステル基、ケトン基、及び/又は、アミド基)を含めてよい。適切なワックスは、室温(例えば25℃)以上で、典型的には40℃以上で、また、場合によっては約50℃以上で溶解する。適切なワックスの溶解温度は典型的に低い(例えば200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは90℃以下、最も好ましくは80℃以下である)。適切なワックスは、多種多様な物理特性を備えることができる。例えば、室温では、適切なワックスの物理特性は、混練性から硬質又は脆性まで、粗大性から結晶性まで、及び/又は、透明性から不透明性まで(透明にするのが好ましい)、さまざまなものにすることができる。
感熱性添加物は、所望の温度まで加熱して硬化済み組成物の接着強度を低下させるのに効果的な濃度で、本発明の歯科用組成物の中に組み込めるのが好ましい。添加物のかかる濃度によって、処理プロセス中の十分な接着性も実現するのが好ましい。感熱性添加物の濃度は、用いる具体的な歯科用組成物によって決まることになるが、典型的には、硬化型歯科用組成物にはこの添加物を、その歯科用組成物の総重量に対して少なくとも0.01重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、1重量%、5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、又は、さらには50重量%含有させることになる。一部の実施形態では、歯科用組成物にこの添加物を、その歯科用組成物の総重量に対して最大でも85重量%、好ましくは最大でも80重量%、75重量%、70重量%、又は、さらには65重量%含有させることになる。
感熱性添加物は、多種多様な形状(例えば粒子、粉末、繊維、ディスク、プレート、フレーク、チューブ、フィルム、又は、これらの組み合わせ)にすることができる。典型的には、添加物は粉末状であり、その平均粒径は最大でも10マイクロメートルであるのが好ましい。「粒径」は、本明細書で非球形粒子に対して用いる場合には、その粒子の最小寸法を指す。
一部の実施形態では、感熱性添加物は、硬化型及び/又は硬化済み歯科用組成物全体に均一に分布している。別の実施形態、とりわけ硬化型組成物が歯科矯正装具のベース上にプレコーティングされている実施形態では、添加物は、硬化型歯科用組成物の一部に集中させることができる。例えば、添加物は、1つの表面(例えば歯牙構造と接することになる外面)の近くに集中させて、剥離時に歯牙構造の近くで発生する破壊作用に影響を及ぼすことができる。1つの表面の近くに集中している添加物には、硬化型又は硬化済み歯科用組成物のある表面に付着されている添加物も含まれるものとする。
硬化型成分
本発明の硬化型歯科用組成物には典型的に、硬化型(例えば重合可能な)成分が含まれており、それによって硬化型(例えば重合可能な)組成物が形成される。硬化型成分としては、多種多様な化学物質、例えばエチレン性不飽和化合物(酸性官能基を有しているか又は有していないもの)、エポキシ(オキシラン)樹脂、ビニルエーテル、光重合系、レドックス硬化系、グラスアイオノマーセメント、ポリエーテル、ポリシロキサンなどを挙げることができる。一部の実施形態では、組成物は、硬化済み歯科用組成物を適用する前に硬化させる(例えば、従来の光重合及び/又は化学重合技法によって重合させる)ことができる。別の実施形態では、歯科用組成物は、歯科用組成物を適用した後に硬化させる(例えば、従来の光重合及び/又は化学重合技法によって重合させる)ことができる。
特定の実施形態では、組成物は光重合可能であり、すなわち、組成物には、化学放射線を照射すると前記組成物の重合(又は硬化)を開始させる光開始剤(すなわち光開始剤系)が含まれている。このような光重合可能な組成物は、フリーラジカル重合可能で、又は、カチオン重合可能にすることができる。別の実施形態では、組成物は化学硬化型であり、すなわち、組成物には、化学放射線の照射に依存することなく組成物を重合、硬化、又は、別の方法で固めることのできる化学的反応開始剤(すなわち反応開始剤系)が含まれている。このような化学硬化型組成物は、「自己硬化」組成物と呼ばれることもあり、また、この組成物には、グラスアイオノマーセメント(例えば、従来型の樹脂変性ガラスアイオノマーセメント)、レドックス硬化系及びこれらの組み合わせを含有させてよい。
本発明の歯科用組成物内で用いることのできる適切な光重合可能成分としては例えば、エポキシ樹脂(カチオン活性エポキシ基が含まれている)、ビニルエーテル樹脂(カチオン活性エポキシ基が含まれている)、エチレン性不飽和化合物(フリーラジカル活性不飽和基、例えばアクリレート及びメタクリレートが含まれている)及びこれらの組み合わせが挙げられる。また、単一の化合物内にカチオン活性官能基とフリーラジカル活性官能基の双方が含まれている重合可能物質も適切である。例としては、エポキシ官能性アクリレート、エポキシ官能性メタクリレート及びこれらの組み合わせが挙げられる。
エチレン性不飽和化合物
本発明の組成物には、酸性官能基を有しているか又は有していないエチレン性不飽和化合物の形状の硬化型成分を1つ以上含有させ、それによって硬化型組成物を形成させてよい。
適切な硬化型組成物には、エチレン性不飽和化合物(フリーラジカル活性不飽和基が備わっている)が含まれている硬化型成分(例えば光重合可能成分)が含まれていると思われる。有用なエチレン性不飽和化合物の例としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ヒドロキシ官能性アクリル酸エステル、ヒドロキシ官能性メタクリル酸エステル及びこれらの組み合わせが挙げられる。
組成物(例えば光重合可能組成物)には、1つ以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー、オリゴマー及びポリマーが含まれていると思われるフリーラジカル活性官能基を有する化合物を含めてもよい。適切な化合物には、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合が含まれており、適切な化合物は、付加重合を経ることができる。このようなラジカル重合可能化合物としては、モノ−、ジ−又はポリ−(メタ)アクリレート(すなわちアクリレート及びメタクリレート)、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ビス[1−(2−アクリロキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、及び、トリスヒドロキシエチル−イソシアヌレートトリメタクリレート;(メタ)アクリルアミド(すなわちアクリルアミド及びメタクリルアミド)、例えば、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス−(メタ)アクリルアミド、並びに、ジアセトン(メタ)アクリルアミド;ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールのビス−(メタ)アクリレート(好ましくは分子量200〜500)、米国特許第4,652,274号(ボッチャー(Boettcher)ら)に記載されているようなアクリレート化されたモノマーの共重合性混合物、米国特許第4,642,126号(ザドール(Zador)ら)に記載されているようなアクリレート化されたオリゴマー、並びに、米国特許第4,648,843号(ミトラ(Mitra))に開示されているもののようなポリ(エチレン部が不飽和の)カルバモイルイソシアヌレート、並びに、ビニル化合物、例えば、スチレン、ジアリルフタレート、ジビニルサクシネート、ジビニルアジパート、及び、ジビニルフタレートが挙げられる。別の適切なフリーラジカル重合可能化合物としては、例えば、WO00/38619号(グーゲンベーガー(Guggenberger)ら)、WO01/92271号(ウェインマン(Weinmann)ら)、WO01/07444号(グーゲンベーガーら)、WO00/42092号(グーゲンベーガーら)に開示されているようなシロキサン官能(メタ)アクリレート、並びに、例えば、米国特許第5,076,844号(フォック(Fock)ら)、米国特許第4,356,296号(グリフス(Griffith)ら)、EP0373384号(ワゲンネクト(Wagenknecht)ら)、EP0201031号(レイナーズ(Reiners)ら)、及び、EP0201778号(レイナーズ(Reiners)ら)に開示されているようなフルオロポリマー官能(メタ)アクリレートが挙げられる。所望に応じて、2つ以上のフリーラジカル重合性化合物の混合物を用いることができる。
硬化型成分には、単一の分子内にヒドロキシル基とエチレン性不飽和基も含めてよい。こうした物質の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリセロールモノ−又はジ−(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンモノ−又はジ−(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールモノ−、ジ−、及びトリ−(メタ)アクリレート;ソルビトールモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、又はペンタ−(メタ)アクリレート;及び2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−エタアクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン(ビスGMA)が挙げられる。また、適切なエチレン性不飽和化合物は、多種多様な民間の供給元、例えばシグマアルドリッチ社(Sigma-Aldrich)(セントルイス)から入手可能である。所望に応じて、エチレン性不飽和化合物の混合物を用いることができる。
特定の実施形態では、硬化型成分としては、PEGDMA(分子量が約400であるポリエチレングリコージメタクリレート)ビスGMA、UDMA(ウレタンジメタクリレート)、GDMA(グリセロールジメタクリレート)、TEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)、米国特許第6,030,606号(ホームズ(Holmes))に記載されているようなビスEMA6、及び、NPGDMA(ネオペンチルグリコールジメタクリレート)が挙げられる。所望に応じて、さまざまな組み合わせの硬化型成分を用いることができる。
本発明の組成物にはエチレン性不飽和化合物を、無充填組成物の総重量に対して少なくとも5重量%、さらに好ましくは少なくとも10重量%、最も好ましくは少なくとも15重量%含有させるのが好ましい。本発明の組成物にはエチレン性不飽和化合物を、無充填組成物の総重量に対して最大でも95重量%、さらに好ましくは最大でも90重量%、最も好ましくは最大でも80重量%含有させるのが好ましい。
本発明の組成物には、酸性官能基を有していないエチレン性不飽和化合物を含有させるのが好ましい。本発明の組成物には、酸性官能基を有していないエチレン性不飽和化合物を、無充填組成物の総重量に対して少なくとも5重量%(wt%)、さらに好ましくは少なくとも10重量%、最も好ましくは少なくとも15重量%含有させるのが好ましい。本発明の組成物には、酸性官能基を有していないエチレン性不飽和化合物を、無充填組成物の総重量に対して最大でも95重量%、さらに好ましくは最大でも90重量%、最も好ましくは最大でも80重量%含有させるのが好ましい。
酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物
本発明の組成物には、酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物の形状の硬化型成分を1つ以上含有させ、それによって硬化型組成物を形成させてよい。
本明細書で使用する時、酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物には、エチレン性不飽和並びに酸性及び/又は酸前駆体官能基を有するモノマー、オリゴマー及びポリマーが含まれることを意図している。酸前駆体官能基としては、例えば、無水物、酸ハライド及びピロホスフェートが挙げられる。酸性官能基としては、カルボン酸性官能基、リン酸性官能基、ホスホン酸性官能基、スルホン酸性官能基、又は、これらの組み合わせを挙げることができる。
酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物としては例えば、α,β−不飽和酸性化合物、例えば、グリセロールホスフェートモノ(メタ)アクリレート、グリセロールホスフェートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(例えば、HEMA)ホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシエチル)ホスフェート、((メタ)アクリルオキシプロピル)ホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシプロピル)ホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシ)プロピルオキシホスフェート、(メタ)アクリルオキシヘキシルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシヘキシル)ホスフェート、(メタ)アクリルオキシオクチルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシオクチル)ホスフェート、(メタ)アクリルオキシデシルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシデシル)ホスフェート、カプロラクトンメタクリレートホスフェート、クエン酸ジ−又はトリ−メタクリレート、ポリ(メタ)アクリレート化オリゴマレイン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリマレイン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリカルボキシル−ポリホスホン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリクロロリン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリスルホネート、ポリ(メタ)アクリレート化ポリホウ酸などが挙げられ、これらは、硬化型成分系内の成分として用いてよい。また、(メタ)アクリル酸、芳香族(メタ)アクリル化酸(aromatic (meth)acrylated acids)(例えば、メタクリル化トリメリット酸)及びこれらの無水物のような不飽和炭酸のモノマー、オリゴマー及びポリマーも用いることができる。本発明の特定の好ましい組成物としては、少なくとも1つのP−OH部分を備えている酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
これらの化合物の一部は、例えば、イソシアナートアルキル(メタ)アクリレートとカルボン酸の反応生成物として得られる。酸性官能基及びエチレン性不飽和成分の双方を有するこの種のさらなる化合物は、米国特許第4,872,936号(エンゲルブレクト(Engelbrecht))及び同第5,130,347号(ミトラ(Mitra))に記載されている。エチレン性不飽和及び酸部分の双方が含まれている多種多様なこうした化合物を用いることができる。所望に応じて、こうした化合物の混合物を用いることができる。
酸性官能基を有するさらなるエチレン性不飽和化合物としては、例えば、米国公開特許出願番号第2004/0206932号(アブエルヤマン(Abuelyaman)ら)に開示されている重合可能なビスホスホン酸、AA:ITA:IEM(例えば、米国特許第5,130,347号(ミトラ(Mitra))の実施例11に記載されているように、AA:ITAコポリマーと十分な2−イソシアネートエチルメタクリレートを反応させて、コポリマーの一部の酸基をペンダントメタクリレート基に変換させることによって製造させたペンダントメタクリレートを有するアクリル酸とイタコン酸のコポリマー)、並びに、米国特許第4,259,075号(ヤマウチ(Yamauchi)ら)、同第4,499,251号(オムラ(Omura)ら)、同第4,537,940号(オムラ(Omura)ら)、同第4,539,382号(オムラ(Omura)ら)、同第5,530,038号(ヤマモト(Yamamoto)ら)、同第6,458,868号(オカダ(Okada)ら)、及び、欧州公開特許出願EP712,622号(トクヤマ社(Tokuyama Corp.))、EP1,051,961号(クラレイ社(Kuraray Co., Ltd.))に列挙されているものが挙げられる。
また、本発明の組成物には、酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物の混合物が含まれている組成物も含有させることができる。この組成物は自己接着性及び非水性であるのが好ましい。例えば、かかる組成物には、少なくとも1つの(メタ)アクリロキシ基と少なくとも1つの−O−P(O)(OH)基が含まれている化合物であって、式中のxが1又は2であり、少なくとも1つの−O−P(O)(OH)基と少なくとも1つの(メタ)アクリロキシ基がC1〜C4の炭化水素基によって結合し合っている第1の化合物と、少なくとも1つの(メタ)アクリロキシ基と少なくとも1つの−O−P(O)(OH)基が含まれている化合物であって、式中のxが1又は2であり、少なくとも1つの−O−P(O)(OH)基と少なくとも1つの(メタ)アクリロキシ基がC15〜12の炭化水素基によって結合し合っている第2の化合物と、酸性官能基を有していないエチレン性不法飽和化合物と、反応開始剤系と、充填剤を含有させることができる。このような組成物は、例えば、米国仮出願番号第60/600,658号(ラクターハンド(Luchterhandt)ら)(2004年8月11日申請)に記載されている。
本発明の組成物には、酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物を、無充填組成物の総重量に対して少なくとも1重量%、さらに好ましくは少なくとも3重量%、最も好ましくは少なくとも5重量%含有させるのが好ましい。本発明の組成物には、酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物を、無充填組成物の総重量に対して最大でも80重量%、さらに好ましくは最大でも70重量%、最も好ましくは最大でも60重量%含有させるのが好ましい。
エポキシ(オキシラン)又はビニルエーテル化合物
本発明の硬化型組成物には、エポキシ(オキシラン)化合物(カチオン活性エポキシ基が含まれている)又はビニルエーテル化合物(カチオン活性ビニルエーテル基が含まれている)の形状の硬化型成分を1つ以上含有させ、それによって硬化型組成物を形成させてよい。
エポキシ又はビニルエーテルモノマーは、歯科用組成物中の硬化型成分として単独で、又は、その他の部類のモノマー、例えば本明細書に記載されているエチレン性不飽和化合物と組み合わせて用いることができ、また、エポキシ又はビニルエーテルモノマーには、その化学構造の一部として、芳香族基、脂肪族基、環式脂肪族基及びこれらの組み合わせを含有させることができる。
エポキシ(オキシラン)化合物の例としては、開環によって重合可能なオキシラン環を有する有機化合物が挙げられる。これらの物質には、単量体エポキシ化合物とポリマー型のエポキシドが含まれており、また、これらの物質は、脂肪族、環式脂肪族、芳香族、又は、複素環式にすることができる。これらの化合物には一般的に、平均すると、1分子あたりに少なくとも1つの重合可能エポキシ基が備わっており、一部の実施形態では1分子あたりに少なくとも1.5個、別の実施形態では1分子あたりに少なくとも2つの重合可能エポキシ基が備わっいる。ポリマーエポキシドとしては、末端エポキシ基を有する直鎖状ポリマー(例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、骨格にオキシラン単位を有するポリマー(例えば、ポリブタジエンポリエポキシド)、及び、ペンダントエポキシ基を有するポリマー(例えば、グリシジルメタクリレートポリマー又はコポリマー)などが挙げられる。このエポキシドは純粋化合物にしてよく、あるいは、エポキシが1分子あたりに1つ、2つ、又は、3つ以上含まれている化合物の混合物にしてよい。エポキシ基の1分子あたり「平均」数は、エポキシ含有物質中のエポキシ基の総数を、存在しているエポキシ含有分子の総数で除することによって割り出す。
これらのエポキシ含有物質は、低分子量物質から高分子量ポリマーまで多岐にわたると思われ、その骨格及び置換基の性質によって大きく異なると思われる。許容可能な置換基の実例としては、ハロゲン、エステル基、エーテル、スルホネート基、シロキサン基、カルボシラン基、ニトロ基、ホスフェート基などが挙げられる。エポキシ含有物質の分子量は、58〜100,000以上まで幅があると思われる。
本発明における樹脂系反応成分として有用な適切なエポキシ含有物質は、米国特許第6,187,836号(オクスマン(Oxman)ら)及び同6,084,004号(ワインマン(Weinmann)ら)に列挙されている。
樹脂系反応成分として有用なその他の適切なエポキシ樹脂としては、シクロヘキセンオキシド基、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、及び、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−メチル)アジパートに代表されるエポキシシクロヘキセンカルボキシレートが含まれているものが挙げられる。この性質を有する有用なエポキシドのさらに詳細なリストについては、米国特許第6,245,828号(ワインマン(Weinmann)ら)及び同5,037,861号(クリベロ(Crivello)ら)、並びに、米国特許公開番号第2003/035899号(クレットケ(Klettke)ら)を参照されたい。
本発明の組成物中で有用と思われるその他のエポキシ樹脂としては、グリシジルエーテルモノマーが挙げられる。その例は、多価フェノールを過剰のクロロヒドリン、例えばエピクロロヒドリンと反応させることによって得られる、多価フェノールのグリシジルエーテル(例えば2,2−ビス−(2,3−エポキシプロポキシフェノール)プロパンのジグリシジルエーテル)である。このタイプのエポキシドのさらなる例は、米国特許第3,018,262号(シュローダー(Schroeder))、及び、リー(Lee)及びネビル(Neville)著「エポキシ樹脂ハンドブック(Handbook of Epoxy Resins)」(マグロウ−ヒルブック社(McGraw-Hill Book Co.)、ニューヨーク、1967年)に記載されている。
樹脂系反応成分として有用な別の適切なエポキシドはシリコンが含まれているものであり、その有用な例は、国際特許出願番号WO01/51540号(クレットケ(Klettke)ら)に記載されている。
樹脂系反応成分として有用なさらなる適切なエポキシドとしては、オクタデシレンオキシド、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシドール、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAのジフリシジルエーテル、及び、米国特許公開番号第2005/0113477号(オクスマン(Oxman)ら)に記載されているようなその他の市販のエポキシドが挙げられる。
さまざまなエポキシ含有物質の混合物も考えられる。このような混合物の例としては、2つ以上の重量平均分子量分布(例えば低分子量(200未満)、中等分子量(200〜10,000)、及び、高分子量(10,000超)など)のエポキシ含有物質が挙げられる。これに代えて、又は、これに加えて、エポキシ樹脂には、異なる化学的性質(脂肪族及び芳香族など)又は機能性(極性及び非極性など)を備えているエポキシ含有物質の混合物を含有させてよい。
カチオン活性官能基を有する有用な硬化型成分の別のタイプとしては、ビニルエーテル、オキセタン、スピロ−オルトカーボネート、スピロ−オルトエステルなどが挙げられる。
所望に応じて、単一の分子中に、カチオン活性官能基とフリーラジカル活性官能基の双方を含有させてよい。このような分子は、例えばジ−又はポリ−エポキシドをエチレン性不飽和カルボン酸の1つ以上の等価物と反応させることによって得てよい。このような物質の例は、メタクリル酸の1つの等価物とUVR−6105(ユニオンカーバイド(Union Carbide)から入手可能)の反応性生物である。エポキシ及びフリーラジカル活性官能基を有する市販の物質としては、日本のダイセル化学工業から入手可能なCYCLOMERシリーズ(CYCLOMER M−100、M−101、又は、A−200など)、及び、ジョージア州アトランタのラッドキュアースペシャルティズ(Radcure Specialties)、UCBケミカルズ(UCB Chemicals)から入手可能なEBECRYL−3605が挙げられる。
カチオン硬化型成分にはさらに、ヒドロキシル含有有機物質を含有させてよい。適切なヒドロキシル含有物質は、ヒドロキシル官能基を少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ有するいずれかの有機物質であると思われる。ヒドロキシル含有物質には、1級又は2級脂肪族ヒドロキシル基(すなわち、ヒドロキシル基は非芳香族炭素原子に直接結合している)が2つ以上含まれているのが好ましい。ヒドロキシル基は末端に配置することができ、あるいは、ヒドロキシル基は、ポリマー又はコポリマーから懸垂させることができる。ヒドロキシル含有有機物質の分子量は、非常に低い値(例えば32)から非常に高い値(例えば100万以上)までに及ぶことができる。適切なヒドロキシル含有物質は、低分子量(すなわち32〜200)、中等分子量(すなわち200〜10,000)、又は、高分子量(すなわち10,000超)にすることができる。本明細書で使用する時、分子量はすべて重量平均分子量である。
ヒドロキシル含有物質は本質的に非芳香族にしてよく、あるいは、ヒドロキシル含有物質に芳香族官能基を含めてもよい。ヒドロキシル含有物質には任意に応じて、分子の骨格内にへテロ原子(窒素、酸素、イオウなど)を含有させてもよい。ヒドロキシル含有物質は、例えば、天然素材であるか又は人工的に作られたセルローズ系物質から選択してよい。ヒドロキシル含有物質には、熱又は光に対して不安定と思われる基が実質的に含まれていてはならず、すなわち、ヒドロキシル含有物質は、重合可能組成物の所望の光重合条件下で直面する可能性がある100℃未満の温度又は化学光の存在下では、揮発性成分を分解又は遊離させてはならない。
本発明で有用な適切なヒドロキシル含有物質は米国特許第6,187,836号(オクスマン(Oxman)ら)に記載されている。
硬化型成分(1つ又は複数)には、単一分子中にヒドロキシル基とカチオン活性官能基も含めてよい。その例は、ヒドロキシル基とエポキシ基の双方が含まれている単一分子である。
グラスアイオノマー
本発明の硬化型組成物には、グラスアイオノマーセメント(主要成分として典型的にエチレン性不飽和カルボン酸のホモポリマー又はコポリマー(例えばポリアクリル酸、コポリ(アクリル、イタコン酸)など)が用いられている従来型のグラスアイオノマーセメントなど)、フルオロアルミノシリケート(「FAS」)グラス、水及びキレート剤(酒石酸など)を含有させてよい。従来型のグラスアイオノマー(すなわちグラスアイオノマーセメント)は典型的に、使用直前に混和させる粉末/液体製剤で供給されている。この混和作業では、ポリカルボン酸の酸性反復単位とこのグラスから浸出するカチオンのイオン反応によって、暗所での自硬を経ることになる。
グラスアイオノマーセメントとしては、樹脂変性グラスアイオノマー(「RMGI」)も挙げてよい。従来型のグラスアイオノマーと同様に、RMGIセメントでは、FASグラスが用いられている。しかし、RMGIの有機部分は異なっている。ある1つのタイプのRMGIでは、ポリカルボン酸を修飾して、硬化型ペンダント基によって酸性反復単位の一部を置換又はエンドキャップするとともに、光開始剤を添加して、例えば米国特許第5,130,347号(ミトラ(Mitra))に記載されているような第2の硬化機構をもたらす。一般的には、アクリレート又はメタクリレート基を硬化型ベンダント基として用いる。別のタイプのRMGIでは、例えば、マティス(Mathis)ら著「新型グラスアイオノマー/複合樹脂ハイブリッド修復剤の特性(Properties of a New Glass Ionomer/Composite Resin Hybrid Restorative)」(要約番号51、歯科研究学会誌(J. Dent Res.)、66号、113ページ、1987年)、並びに、米国特許第5,063,257号(アカハネ(Akahane)ら)、同5,520,725号(カトウ(Kato)ら)、同5,859,089号(チエン(Qian))、同5,925,715号(ミトラ(Mitra))、及び、同5,962,550号(アカハネ(Akahane)ら)に記載されているように、セメントに、ポリカルボン酸、アクリレート又はメタクリレート官能性モノマー、及び、光開始剤が含まれている。別のタイプのRMGIでは、セメントに、ポリカルボン酸、アクリレート又はメタクリレート官能性モノマー、並びに、レドックス又はその他の化学硬化系、例えば米国特許第5,154,762号(ミトラ(Mitra)ら)、同5,520,725号(カトウ(Kato)ら)、及び、同5,871,360号(カトウ(Kato))に記載されているようなものを含有させてよい。別のタイプのRMGIでは、セメントに、米国特許第4,872,936号(エンゲルブレクト(Engelbrecht))、同5,227,413号(ミトラ(Mitra))、同5,367,002号(ファン(Huang)ら)、及び、同5,965,632号(オーロウスキー(Orlowski))に記載されているようなさまざまなモノマー含有又は樹脂含有成分を含有させてよい。RMGIセメントは、粉末/液体又はペースト/ペースト系として調製するのが好ましく、RMGIセメントには、混和及び適用させる水を含有させる。この組成物は、ポリカルボン酸の酸性反復単位とグラスから浸出するカチオンのイオン反応によって、暗所で硬化することができ、また、市販のRMGI製品は典型的に、歯科用硬化ランプから発せられる光をセメントに照射すると硬化する。レドックス硬化系が含まれているとともに、化学放射線を使用しなくても暗所で硬化することのできるRMGIセメントは、米国特許第6,765,038号(ミトラ(Mitra))に記載されている。
ポリエーテル又はポリシロキサン(すなわちシリコーン)
歯科用印象材は典型的に、ポリエーテル又はポリシロキサン(すなわちシリコーン)の化学的性質をベースとしている。ポリエーテル材は典型的に、ベース成分(例えば末端基としてエチレンイミン環を有するポリエーテル)と触媒(又は促進剤)成分(例えば架橋剤としてのアリールスルホネート)が含まれている2成分系から構成されている。ポリシロキサン材も典型的に、ベース成分(例えば分子量が低いかやや低いポリシロキサン(ジメチルポリシロキサンなど))と触媒(又は促進剤)成分(例えば、付加型シリコーンの場合は、分子量が低いかやや低くビニル末端基を有するポリマーと塩化白金酸触媒、又は、濃縮シリコーンの場合は、オクタン酸第1スズ懸濁液とアルキルシリケートから成る液体)が含まれている2成分系から構成されている。いずれの系にも典型的に、充填剤、可塑剤、増粘剤、着色剤、又は、これらの混合物も含まれている。代表的なポリエーテル印象材としては、例えば米国特許第6,127,449号(ビッシンガー(Bissinger)ら)、米国特許第6,395,801号(ビッシンガー(Bissinger)ら)、及び、米国特許第5,569,691号(グッゲンバーガー(Guggenberger)ら)に記載されているものが挙げられる。代表的なポリシロキサン印象材及びポリシロキサンの関連する化学的性質は、例えば米国特許第6,121,362号(ワネック(Wanek)ら)、及び、同6,566,413号(ワインマン(Weinmann)ら)、並びに、欧州特許公開番号1 475 069A号(ビッシンガー(Bissinger)ら)に記載されている。
市販されているポリエーテル及びポリシロキサン印象材の例としては、ポリエーテル材のインプレガム(IMPREGUM)、ポリエーテル材のパーマダイン(PERMADYNE)、ビニルポリシロキサン材のエクスプレス(EXPRESS)、ビニルポリシロキサン材のディメンション(DIMENSION)、及び、ビニルポリシロキサン材のインプリント(IMPRINT)(すべてミネソタ州セントポールの3M ESPEから入手可能)が挙げられるが、これらに限らない。別の代表的なポリエーテル、ポリシロキサン(シリコーン)、及び、ポリスルフィド印象材は、ロバート・G・クレイグ(Robert G. Craig)及びマーカス・L・ワード(Marcus L. Ward)編「歯科用修復材(Restorative Dental Materials)」第10版(モズビー−イヤーブック社(Mosby-Year Book, Inc.)、ミズーリ州セントルイス)の第11章(印象材(Impression Materials))で論じられている。
光開始剤系
特定の実施形態では、本発明の組成物は光重合可能であり、すなわち、組成物に、光重合可能成分と、化学放射線を照射すると組成物の重合(又は硬化)を開始させる光開始剤(すなわち光開始剤系)が含まれている。このような光重合可能組成物は、フリーラジカル重合可能か、又は、カチオン重合可能にすることができる。
フリーラジカル重合可能組成物を重合するのに適している光開始剤(すなわち、1つ以上の化合物が含まれている光開始剤系)としては、2成分及び3成分系が挙げられる。典型的な3成分光開始剤には、米国特許第5,545,676(パラゾット(Palazzotto)ら)に記載されているように、ヨードニウム塩、光増感剤及び電子供与体化合物が含まれている。好ましいヨードニウム塩は、ジアリールヨードニウム塩、例えば、ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロホウ酸塩、及びトリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩である。好ましい光増感剤は、400nm〜520nm(好ましくは、450nm〜500nm)の範囲内の何らかの光を吸収するモノケトン及びジケトンである。より好ましい化合物は、400nm〜520nm(さらに好ましくは450〜500nm)の範囲内の何らかの光を吸収するα−ジケトンである。好ましい化合物は、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6−テトラメチルシクロヘキサンジオン、フェナントラキノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン及び他の1−アリール−2−アルキル−1,2−エタンジオン、並びに、環状α−ジケトンである。最も好ましいのは、カンファーキノンである。好ましい電子供与体化合物としては、置換アミン、例えば、エチルジメチルアミノベンゾエートが挙げられる。カチオン重合可能な樹脂を光重合させるのに有用な他の適切な3成分光開始剤系は、例えば米国特許第6,765,036号(デデ(Dede)ら)に記載されている。
フリーラジカル光重合可能な組成物を重合するのに適している他の光開始剤としては、典型的に機能的波長範囲が380nm〜1200nmであるホスフィンオキシドの部類が挙げられる。機能的波長範囲が380nm〜450nmである好ましいホスフィンオキシドフリーラジカル反応開始剤は、米国特許第4,298,738号(レッケン(Lechtken)ら)、同4,324,744号(レッケン(Lechtken)ら)、同4,385,109号(レッケン(Lechtken)ら)、同4,710,523号(レッケン(Lechtken)ら)、同4,737,593号(エルリッチ(Ellrich)ら)、同6,251,963号(コーラ−(Kohler)ら)、及び、欧州特許出願0173567A2号(イング(Ying))に記載されているようなアシル及びビスアシルホスフィンオキシドである。
380nm〜450nm超過の波長範囲で照射した場合にフリーラジカル反応を開始させることのできる市販のホスフィンオキシド光反応開始剤としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(イルガキュア(IRGACURE)819、ニューヨーク州タリタウンのチバスペシャリティーケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals))、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド(CGI403、チバスペシャリティーケミカルズ)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの重量比が25:75である混合物(イルガキュア(IRGACURE)1700、チバスペシャリティーケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals))、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの重量比が1:1である混合物(ダロキュア(DAROCUR)4625、チバスペシャリティーケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals))、及び、エチル2,4,6−トリメチルベンジルフェニルホスフィネート(ルシリン(LUCIRIN)LR8893X、ノースカロライナ州シャーロットのBASF社(BASF Corp.))が挙げられる。
典型的に、ホスフィンオキシド反応開始剤は光重合可能な組成物中に、触媒的に有効な量で、例えば組成物の総重量に対して0.1重量%〜5.0重量%の量で存在している。
3級アミン還元剤をアシルホスフィンオキシドと組み合わせて使用してもよい。本発明で有用な実例的な3級アミンとしては、エチル4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエート及びN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。アミン還元剤が存在している場合、アミン還元剤は、光重合可能な組成物中に、組成物の総重量をに対して0.1重量%〜5.0重量%の量で存在する。他の反応開始剤の有用な量は当業者に周知である。
カチオン光重合可能な組成物を重合するのに適している光開始剤としては2成分及び3成分系が挙げられる。典型的な3成分光開始剤には、欧州特許0897710号(ワインマン(Weinmann)ら)、米国特許第5,856,373号(カイサキ(Kaisaki)ら)、同6,084,004号(ワインマン(Weinmann)ら)、同6,187,833号(オクスマン(Oxman)ら)、及び、同6,187,836号(オクスマン(Oxman)ら)、並びに、米国特許第6,765,036号(デデ(Dede)ら)に記載されているように、ヨードニウム塩、光増感剤及び電子供与体化合物が含まれている。本発明の組成物には、電子供与体としてアントラセン系化合物を1つ以上含有させることができる。一部の実施形態では、本組成物には、複数の置換アントラセン化合物、又は、置換アントラセン化合物と非置換アントラセンの混合物が含まれている。光開始剤系の一部として、これらの混合アントラセン電子供与体を組み合わせると、同じマトリックス中の類似の単一供与体光開始剤系と比べて、硬化深度と硬化速度及び温度非感受性が大きく上昇する。アントラセン系電子供与体を有するかかる組成物は、米国特許公開番号第2005/0113477号(オクスマン(Oxman)ら)に記載されている。
適切なヨードニウム塩としては、トリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリルクミルヨードニウムテトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル)ボレート、及び、ジアリールヨードニウム塩、例えば、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムジヘキサフルオロアンチモネート、及び、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート(tetrafluoroboarate)が挙げられる。適切な光増感剤は、450nm〜520nm(好ましくは450nm〜500nm)の範囲内の何らかの光を吸収するモノケトン及びジケトンである。さらに適切な化合物は、450nm〜520nm(さらに好ましくは450〜500nm)の範囲内の何らかの光を吸収するαジケトンである。好ましい化合物は、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6−テトラメチルシクロヘキサンジオン、フェナントラキノン及びその他の環状αジケトンである。最も好ましいのはカンファーキノンである。適切な電子供与体化合物としては、置換アミン、例えばエチル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート及び2−ブトキシエチル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、並びに、重縮合芳香族化合物(例えばアントラセン)が挙げられる。
反応開始剤系は、所望の硬化(例えば重合及び/又は架橋)速度をもたらすのに十分な量で存在させる。光開始剤の場合、この量は部分的には、光源、放射エネルギーにさらされる層の厚み及び光開始剤の吸光係数によって決まることになる。反応開始剤系は、組成物の重量に対して少なくとも0.1重量%、さらに好ましくは少なくとも0.03重量%、最も好ましくは0.05重量%の総量で存在させるのが好ましい。反応開始剤系は、組成物の重量に対して10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、最も好ましくは2.5重量%の総量で存在させるのが好ましい。
レドックス反応開始剤系
特定の実施形態では、本発明の組成物は化学硬化型であり、すなわち、本組成物には、化学硬化型成分、並びに、化学放射線の照射に依存することなく本組成物を重合、硬化、又は、別の方法で硬化させることのできる化学反応開始剤(すなわち反応開始剤系)が含まれている。このような化学硬化型組成物は「自己硬化」組成物と呼ばれることが多く、ガラスアイオノマーセメント、樹脂変性ガラスアイオノマーセメント、レドックス硬化系及びこれらの組み合わせが含まれていると思われる。
化学硬化型組成物には、硬化型成分(例えば、エチレン性不飽和重合可能な成分)、並びに、酸化剤及び還元剤が含まれているレドックス剤が含まれているレドックス硬化系を含めてもよい。本発明で有用である適切な硬化型成分、レドックス剤、任意の酸性官能基成分及び任意の充填剤は、米国特許公開番号第2003/0166740号(ミトラ(Mitra)ら)、及び、同2003/0195273号(ミトラ(Mitra)ら)に記載されている。
樹脂系(例えばエチレン性不飽和成分)の重合を開始させることができるフリーラジカルを作製するには、還元剤及び酸化剤は、反応し合うか、又は、別の方法で協働しなければならない。このタイプの硬化は暗反応、つまり、光の存在に依存せず、光が存在しなくても進行することのできる反応である。還元剤及び酸化剤は、十分に貯蔵安定性があり、望ましくない着色がなく、典型的な歯科条件下における保存及び使用を可能にするものが好ましい。これらは、硬化型組成物の他の成分中に容易に溶解する(及び、硬化型組成物の他の成分からの分離を阻止する)ことを可能にするために、樹脂系(及び好ましくは水溶性樹脂系)と十分に混和性がなければならない。
有用な還元剤としては、米国特許第5,501,727号(ワン(Wang)ら)に記載されているようなアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、及び、金属配位アスコルビン酸化合物、並びに、アミン、とりわけ3級アミン(4−t−ブチルジメチルアニリンなど)、芳香族スルフィン塩(p−トルエンスルフィン塩及びベンゼンスルフィン塩など)、チオ尿素(1−エチル−2−チオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1,1−ジブチルチオ尿素、及び、1,3−ジブチルチオ尿素など)及びこれらの混合物が挙げられる。その他の第2の還元剤としては、塩化コバルト(II)、塩化第1鉄、硫酸第1鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン(酸化剤の選択に左右される)、ジチオン酸又は亜硫酸アニオン塩及びこれらの混合物を挙げてよい。還元剤はアミンであるのが好ましい。
また、適切な酸化剤は当業者に馴染みがあり、過硫酸、並びに、過硫酸塩(ナトリウム、カリウム、アンモニウム、セシウム及びアルキルアンモニウム塩など)が挙げられるが、これらに限らない。さらなる酸化剤としては、過酸化物(過酸化ベンゾイルなど)、ヒドロペルオキシド(クミルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、及び、アミルヒドロペルオキシドなど)、及び、遷移金属塩(塩化コバルト(III)及び塩化第2鉄、硫酸セリウム(IV)、過ホウ酸及びその塩、過マンガン酸及びその塩、過リン酸及びその塩)、並びに、これらの混合物が挙げられる。
1つ超の酸化剤又は1つ超の還元剤を使用することが望ましいと思われる。また、レドックス硬化の速度を加速させるために、少量の遷移金属化合物を添加してもよい。一部の実施形態では、米国特許公開番号第2003/0195273号(ミトラ(Mitra)ら)に記載されているように、重合型組成物の安定性を高めるために、第2のイオン性塩を含有させることが好ましいと思われる。
還元剤及び酸化剤は、適正なフリーラジカル反応速度を可能にするのに十分な量で存在させる。これは、任意の充填剤を除く、硬化型組成物のすべての成分を組み合わせ、硬化済みの塊(mass)が得られるかどうかを観察することによって評価できる。
還元剤は、硬化型組成物の成分の総重量(水も含む)に対して少なくとも0.01重量%、さらに好ましくは少なくとも0.1重量%の量で存在させるのが好ましい。還元剤は、硬化型組成物の成分の総重量(水も含む)に対して10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下の量で存在させるのが好ましい。
酸化剤は、硬化型組成物の成分の総重量(水も含む)に対して少なくとも0.01重量%、さらに好ましくは少なくとも0.10重量%の量で存在させるのが好ましい。酸化剤は、硬化型組成物の成分の総重量(水も含む)に対して10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下の量で存在させるのが好ましい。
還元剤又は酸化剤は、米国特許第5,154,762号(ミトラ(Mitra)ら)に記載されているように、マイクロカプセル化することができる。これは一般に、硬化型組成物の貯蔵安定性を高め、必要に応じて、還元剤又は酸化剤を共に包装できるようにする。例えば、酸化剤及び還元剤は、カプセル化剤(encapsulant)の適切な選択を通して、酸性官能基成分及び任意の充填剤と組み合わせて、保存安定状態を維持させることができる。同様に、還元剤及び酸化剤は、非水溶性カプセル化剤の適切な選択を通して、FASガラス及び水と組み合わせて、保存安定状態を維持させることができる。
レドックス硬化系は、他の硬化系、例えば、米国特許第5,154,762号(ミトラ(Mitra)ら)に記載されているような硬化型組成物と組み合わせることができる。
充填剤
本発明の組成物には任意に応じて充填剤を含有させることができる。充填剤は、歯科修復組成物等において現在使用されている充填剤など、歯科用途で使用されている組成物に組み込むのに適している1つ以上の多種多様な物質から選択してよい。
充填剤は超微粒子状であるのが好ましい。充填剤には、一峰性(unimodial)又は多峰性(polymodial)(例えば二峰性)の粒径分布を持たせることができる。充填剤の最大粒径(粒子の最大寸法、典型的には直径)は、20マイクロメートル未満、さらに好ましくは10マイクロメートル未満、最も好ましくは5マイクロメートル未満であるのが好ましい。充填剤の平均粒径は、0.1マイクロメートル未満、さらに好ましくは0.075マイクロメートル未満であるのが好ましい。
充填剤は無機物質にすることができる。また、充填剤は、樹脂系(すなわち硬化型成分)中に溶けず、任意に応じて無機充填剤で充填されている架橋有機物質にすることもできる。充填剤は、いずれにしても非毒性でなければならず、口内で用いるのに適していなければならない。充填剤は、放射線不透過性又は放射線透過性にすることができる。充填剤は典型的には、実質的に水に溶けない。
適切な無機充填剤の例は、天然又は合成物質であり、石英(すなわち、シリカ、SiO);窒化物(例えば窒化ケイ素);例えばZr、Sr、Ce、Sb、Sn、Ba、Zn、及びAl由来のガラス及び充填剤;長石;ホウケイ酸ガラス;カオリン;タルク;ジルコニア;チタニア;米国特許第4,695,251号(ランドクレブ(Randklev))に記載されているような低モース硬度充填剤;並びに、サブミクロンシリカ粒子(例えばオハイオ州アクロンのデグサ社(Degussa Corp)製シリカの「OX50」、「130」、「150」、及び「200」が含まれているエアロジル(AEROSIL)という商品名で入手可能なもの、及び、イリノイ州タスコラのキャボット社(Cabot Corp.)製シリカのCAB−O−SIL M5のような発熱性シリカ)が挙げられるが、これらに限らない。適切な有機充填剤粒子の例としては、充填又は非充填粉砕ポリカーボネート、ポリエポキシド等が挙げられる。
好ましい非酸反応性充填剤粒子は、石英(すなわちシリカ)、サブミクロンシリカ、ジルコニア、サブミクロンジルコニア、及び、米国特許第4,503,169号(ランドクレブ(Randklev))に記載されているタイプの非ガラス質微粒子である。また、これらの非酸反応性充填剤の混合物及び有機物質及び無機物質から作られている混合充填剤も考えられる。
充填剤は酸反応性充填剤にすることもできる。適切な酸反応性充填剤としては、金属酸化物、ガラス及び金属塩が挙げられる。代表的な金属酸化物としては、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、及び酸化亜鉛が挙げられる。代表的なガラスとしては、ホウ酸ガラス、リン酸ガラス、及びフルオロアルミノシリケート(「FAS」)ガラスが挙げられる。FASガラスが特に好ましい。FASガラスを硬化型組成物の成分と混合させる場合、硬化済み歯科組成物を形成させるように、FASガラスには典型的に十分な溶出性カチオンを含有させる。また、ガラスには典型的に十分な溶出性フッ化物イオンが含まれているので、硬化済み組成物には抗う触性が備わることになる。ガラスは、FASガラス製造分野の当業者に馴染みが深い技術を用いて、フッ化物、アルミナ及びその他のガラス形成成分が含まれている溶融物から作製することができる。FASガラスは通常、他のセメント成分と利便的に混合することができるように十分に超微粒子状の粒子の形態であるため、得られた混合物を口内で用いる場合に、よく機能するであろう。
一般に、FASガラスの平均粒径(典型的には直径)は、例えば沈殿分析器を用いて測定した場合、12ミクロン以下、典型的には10ミクロン以下、さらに典型的には5ミクロン以下である。適切なFASガラスは当業者に馴染み深く、多種多様な商業的供給源から入手可能であり、多くは、ビトレマー(VITREMER)、ビトレボンド(VITREBOND)、リライXルーティングセメント(RELY X LUTING CEMENT)、リライXルーティングプラスセメント(RELY X LUTING PLUS CEMENT)、フォトタック−フィルクイック(PHOTAC-FIL QUICK)、ケタック−モラー(KETAC-MOLAR)、及び、ケタック−フィルプラス(KETAC-FIL PLUS)(ミネソタ州セントポールの3M ESPEデンタルプロダクツ(3M ESPE Dental Products))、フジII LC(FUJI II LC)及びフジIX(FUJI IX)(日本、東京のG−Cデンタルインダストリアル社(G-C Dental Industrial Corp.))、並びに、ケムフィルスーペリア(CHEMFIL Superior)(ペンシルベニア州ヨークのデンツプライインターナショナル(Dentsply International))という商品名で市販されているような、現在入手可能なガラスアイオノマーセメント中に含まれている。所望に応じて、充填剤の混合物を用いることができる。
また、充填剤と樹脂の結合を高めるために、充填剤粒子の表面を結合剤で処理してもよい。適切な結合剤の使用としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。特定の実施形態では、シラン処理ジルコニア−シリカ(ZrO−SiO)充填剤、シラン処理シリカ充填剤、シラン処理ジルコニア充填剤及びこれらの組み合わせが特に好ましい。
その他の適切な充填剤は、米国特許第6,387,981号(チャン(Zhang)ら)及び同6,572,693号(ウー(Wu)ら)、並びに、国際公開出願番号WO01/30305号(チャン(Zhang)ら)、WO01/30306号(ウィンディッシュ(Windisch)ら)、WO01/30307号(チャン(Zhang)ら)、及び、WO03/063804号(WO 03/063804(ウー(Wu)ら)に開示されている。これらの参考文献に記載されている充填剤成分としては、ナノサイズのシリカ粒子、ナノサイズの金属酸化物粒子及びこれらの組み合わせが挙げられる。ナノ充填剤は、米国特許公開番号第2005/0252413号(カンガス(Kangas)ら)、同2005/0256223号(コルブ(Kolb)ら)、米国特許第70907214号(クレイグ(Craig)ら)、及び、米国特許第7090722号(バッド(Budd)ら)にも記載されている。これらの出願には、概要の部分に、下記のような充填剤含有組成物について記載されている。
米国特許公開番号第2005/0252413号(カンガス(Kangas)ら)には、従来のアイオノマー組成物よりも優れた特性を組成物にもたらす安定アイオノマー組成物(例えばグラスアイオノマー)含有ナノ充填剤について記載されている。ある1つの実施形態では、組成物は、ポリ酸(例えば、複数の酸性反復基を有するポリマー);酸反応性充填剤;少なくとも10重量%のナノ充填剤、又はそれぞれ平均粒子径が200ナノメートル以下であるナノ充填剤の組合せ;水;及び、任意に応じて、重合可能成分(例えば、任意に応じて酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物)が含まれている硬化型歯科組成物である。
米国特許公開番号第2005/0256223号(コルブ(Kolb)ら)には、光学的に半透明であるとともに放射線不透過性であるアイオノマー系のように、優れた特性を組成物にもたらす安定アイオノマー(例えばグラスアイオノマー)組成物含有ナノジルコニア充填剤について記載されている。ナノジルコニアは、ナノジルコニアをアイオノマー組成物中に組み込むのを助けるためにシランで表面修飾されており、アイオノマー組成物には一般に、表面修飾しなければナノジルコニアと相互作用して好ましくない視覚的不透明度を生じさせる凝固又は凝集を引き起こす可能性のあるポリ酸が含まれている。ある1つの態様では、組成物は、ポリ酸;酸反応性充填剤;ジルコニア粒子が外表面上に付着する複数のシラン含有分子を有するナノジルコニア充填剤;水;及び、任意に応じて重合可能成分(例えば、任意に応じて酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物)が含まれている硬化型歯科組成物にすることができる。
米国特許第7090721号(クレイグ(Craig)ら)には、光学的な半透明性の向上を組成物にもたらす安定アイオノマー組成物(例えばグラスアイオノマー)含有ナノ充填剤について記載されている。ある1つの実施形態では、組成物は、ポリ酸(例えば、複数の酸性反復基を有するポリマー);酸反応性充填剤;ナノ充填剤;光重合可能成分(例えば、任意に応じて酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物);及び、水が含まれている硬化型歯科組成物である。ポリ酸、ナノ充填剤、水及び任意に応じて重合可能成分を組み合わせた混合物の屈折率(硬化状態又は非硬化状態で測定する)は、一般に酸反応性充填剤の屈折率の4%以内、典型的には3%以内、より典型的には1%以内、さらに典型的には0.5%以内である。
米国特許第7090722号(バッド(Budd)ら)には、酸反応性ナノ充填剤(すなわちナノ構造充填剤)と硬化型樹脂(例えば重合可能なエチレン性不飽和化合物)を含有させることのできる歯科用組成物ついて記載されている。酸反応性ナノ充填剤には、酸反応性、非融合であり、3価金属(例えばアルミナ)、酸素、フッ素、アルカリ土類金属、及び、任意に応じてシリコン及び/又は重金属が含まれているオキシフッ化物(oxyfluoride)材を含有させることができる。
充填剤が含まれている本発明の一部の実施形態(例えば歯科用接着剤組成物)では、組成物には充填剤を、組成物の総重量に対して少なくとも1重量%、さらに好ましくは少なくとも2重量%、最も好ましくは少なくとも5重量%含有させるのが好ましい。このような実施形態では、本発明の組成物には充填剤を、組成物の総重量に対して最大でも40重量%、より好ましくは最大でも20重量%、最も好ましくは最大でも15重量%含有させるのが好ましい。
その他の実施形態(例えば、組成物が歯科修復剤又は歯科矯正用接着剤である実施形態)では、本発明の組成物には充填剤を、組成物の総重量に対して少なくとも40重量%、さらに好ましくは少なくとも45重量%、最も好ましくは少なくとも50重量%含有させるのが好ましい。このような実施形態では、本発明の組成物には充填剤を、組成物の総重量に対して好ましくは最大でも90重量%、より好ましくは最大でも80重量%、さらに好ましくは最大でも70重量%、最も好ましくは最大でも50重量%含有させるのが好ましい。
任意の光退色型及び/又はサーモクロミック色素
一部の実施形態では、本発明の組成物の初期色は、歯系組織とは大きく異なる色にするのが好ましい。光退色型又はサーモクロミック色素を用いて、組成物に色を付与するのが好ましい。組成物には光退色型又はサーモクロミック色素を、組成物の総重量に対して少なくとも0.001重量%、さらに好ましくは少なくとも0.002重量%含有させるのが好ましい。組成物には光退色型又はサーモクロミック色素を、組成物の総重量に対して最大でも1重量%、さらに好ましくは最大でも0.1重量%含有させるのが好ましい。光退色型又はサーモクロミック色素の量は、その吸光係数、ヒトの目が初期色を識別する能力及び所望の変色に応じて変えてよい。適切な光退色型色素は例えば米国特許第6,670,436号(ブルガス(Burgath)ら)に開示されている。
光退色型色素が含まれている実施形態では、光退色型色素の色形成と退色特性は、例えば酸強度、誘電定数、極性、酸素量、大気中の含湿量といったさまざまな要因に応じて変化する。ただし、色素の退色特性は、組成物に照射して光の変化を評価することによって、簡単に割り出すことができる。少なくとも1つの光退色型色素が少なくとも部分的に硬化型樹脂中に溶解可能であるのが好ましい。
代表的な部類の光退色型色素は例えば米国特許第6,331,080号(コール(Cole)ら)、同6,444,725号(トロム(Trom)ら)、及び、同6,528,555号(ニクトウスキー(Nikutowski)ら)に開示されている。好ましい色素としては例えば、ローズベンガル、メチレンバイオレット、メチレンブルー、フルオレセイン、エオシンイエロー、エオシンY、エチルエオシン、エオシンブルイッシュ、エオシンB、エリトロシンB、エリトロシンイエロイッシュブレンド、トルイジンブルー、4’,5’−ジブロモフルオレセイン及びこれらの組み合わせが挙げられる。
本発明の組成物の変色は光によって開始させる。組成物の変色は、例えば可視光又は近赤外(IR)光を十分な時間発する歯科用硬化光を用いた化学放射線を用いて開始させるのが好ましい。本発明の組成物の変色を開始させる機構は、樹脂を硬化させる硬化機構から分離させても、この硬化機構と実質的に同時に存在させてもよい。例えば、組成物は、重合を化学作用(レドックス開始)又は熱によって開始させた時に硬化させてもよく、また、初期色から最終色への変色は、硬化プロセスの後、化学放射線の照射によって発生させてよい。
組成物の色の初期色から最終色への変化は、比色試験によって定量化するのが好ましい。比色試験を用いてΔE*の値を割り出す(この値は、3次元色空間内の総変色を指している)。人間の目は、通常の照明条件において、約3ΔE*単位の変色を検知できる。本発明の歯科用組成物は、少なくとも20ΔE*の色を変化させることができるのが好ましく、ΔE*は少なくとも30であるのがさらに好ましく、ΔE*が少なくとも40であるのが最も好ましい。
任意の酸生成成分及び酸反応成分
任意に応じて、本発明の硬化型歯科用組成物には、例えば2006年12月20日申請の米国特許出願番号第11/275238号(表題「接着強度を低下させる方法、歯科用組成物及びその使用法(METHODS FOR REDUCING BOND STRENGTHS, DENTAL COMPOSITIONS, AND THE USE THEREOF」)に記載されているような酸生成成分と酸反応成分を含有させることができる。
酸生成成分には典型的に、酸生成化合物と、任意に応じて増感剤が含まれている。酸生成成分は、照射すると酸を生成させるのが好ましい(すなわち光酸)。典型的には、この酸は、化学量論的量を上回る量の酸反応基と反応することができる。本発明の歯科用組成物には、生成済みの酸を、生成済みの酸の酸反応成分との所望の反応を阻害するほどの量消耗させる役割を果たすことになる基を含有させないのが好ましい。
代表的な酸生成成分としては、ヨードニウム塩(例えばジアリールヨードニウム塩)、スルホニウム塩(例えばトリアリールスルホニウム塩及びジアルキルフェナシルスルホニウム塩)、セレノニウム塩(例えばトリアリールセレノニウム塩)、スルホキソニウム塩(例えばトリアリールスルホキソニウム塩、アリールオキシジアリールスルホキソニウム塩、及び、ジアルキルフェナシルスルホキソニウム塩)、ジアゾニウム塩(例えばアリールジアゾニウム塩)、有機金属錯体カチオン(例えばフェロセニウム塩)、ハロ−S−トリアゼン、トリハロケトン、α−スルホニルオキシケトン、シリルベンジルエーテル及びこれらの組み合わせが挙げられる。酸生成成分がカチオン種の塩(例えば「オニウム」塩)である場合、その塩の典型的な対イオンとしては例えば、テトラフルオロボレートヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート及びこれらの組み合わせが挙げられる。代表的な酸生成成分としては例えば、クリベロ(Crivello)ら著「フリーラジカル、カチオン及びアニオン光重合用光開始剤(Photoinitiators for Free Radical, Cationic and Anionic Photopolymerization)」(G・ブラッドリー(Bradley)編、第3巻、第6章、1998年)、並びに、米国特許第6,187,833号(オクスマン(Oxman)ら)、同6,395,124号(オクスマン(Oxman)ら)、同6,765,036号(デデ(Dede)ら)、同3,775,113号(ボナム(Bonham)ら)、同3,779,778号(スミス(Smith)ら)、同3,954,475号(ボナム(Bonham)ら)、同4,329,384号(ベスリー(Vesley)ら)、同4,330,570号(ジュリアーニ(Giuliani)ら)、同5,089,374号(サエバ(Saeva))、及び、同5,141,969号(サエバ(Saeva)ら)に開示されているものが挙げられる。
酸生成成分にはスルホニウム塩を含有させるのが好ましい。代表的なスルホニウム塩としては例えば、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(ArSbF 、オクラホマ州カトゥーサのアドバンストリサーチ社(Advanced Research Corporation)からシラキュア(CYRACURE)CPI−6976という商品名で入手可能)、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(ArPF 、50%プロピレンカーボネート溶液、ニューヨーク州レイクサクセスのアセト社(Aceto Corp.)からシラキュア(CYRACURE)CPI−6992という商品名で入手可能)、及び、トリアリールスルホニウムN−(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロメタン−スルホンアミドアニオン(ArN(SOCF、米国特許第5,554,464号(ラマーニャ(Lamanna)ら)に概ね記載されているのに従って作製可能)が挙げられる。
代表的な増感剤としては、アントラセン誘導体(例えば2−メチルアントラセン(2−MA、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich))、及び、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン(EDMOA、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)))、ペリレン、フェノチアゼン、及び、例えば米国特許第6,765,036号(デデ(Dede)ら)と米国特許公開番号第2005/0113477号(オクスマン(Oxman)ら)に記載されているようなその他の多環状芳香族化合物並びにこれらの組み合わせが挙げられる。当業者であれば、過度の実験なしに、例えばクリベロ(Crivello)ら著「フリーラジカル、カチオン、及び、アニオン光重合用光開始剤(Photoinitiators for Free Radical, Cationic and Anionic Photopolymerization)」(G・ブラッドリー(Bradley)編、第3巻、第6章、1998年)に記載されている原理に基づいて特定の酸生成成分(例えばスルホニウム塩)を増感させるのに適している増感剤を選択できるであろう。増感剤は、光開始剤とは異なる波長で吸収するように選択でき、酸生成成分の対応する1重項若しくは3重項状態よりもエネルギーが高い1重項若しくは3重項状態が備わるようにし、及び/又は、酸生成成分の還元がエネルギー的に起こりやすくなるように酸化電位が備わるようにするのが好ましい。例えば2−メチルアントラセンは、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを増感させるのにふさわしい増感剤である。
本明細書で使用する時、「酸反応成分」とは、酸反応基が1つ以上含まれている成分(典型的には化合物)を指す。本明細書で使用する時、「酸反応基」とは、多くの場合高温(すなわち少なくとも42℃)まで加熱すると、酸と反応した後にその基の中の化学結合が実質的に切断されて(例えば分光技術によって観察可能)、2つ以上の別個の基が形成される基を指す。高温は200℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは100℃以下、最も好ましくは80℃以下であるのが好ましい。成分が酸と反応した後に、化学結合が実質的に切断されるか否かを判断するための適切な方法は、当業者には明らかあろう。適切な方法としては例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法(H、13C、及び/又は、その他の適切な原子核など)、並びに、紫外線(UV)、可視線及び赤外線(IR)分光法(近IR(NIR)分光法も含む)といった分光法が挙げられる。例えば、H及び/又は13CのNMRスペクトルは好都合なことに、前記成分を非酸性溶媒(例えばCDCl)中に溶解させ、酸(例えばCFCOOD)を添加し、所望の温度において前記成分から生じるピークの消失、又は、反応生成物から生じるピークの出現を観察することによって、NMRチューブ内に走らせることができる。
本発明の硬化型歯科用組成物中で用いるのに適している酸反応成分は、酸反応基が1つ以上含まれている硬化型成分にするのが好ましい。典型的には、各酸反応基は、複数(すなわち2つ以上)の硬化型基に結合している多価基である。特定の実施形態では、硬化型酸反応成分はエチレン性不飽和化合物である。例えばこのような実施形態では、酸反応基は、2つのエチレン性不飽和基に結合している2価基にすることができる。
酸反応基は当該技術分野においてよく知られている。このような基としては例えば、有機合成の保護手法で典型的に用いられている官能基が挙げられ、この場合、保護基は、酸性条件下で除去される設計にすることができる。例えば、グリーン(Greene)ら著「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」(ワイリー−インターサイエンス(Wiley-Interscience)、1999年)、テイラー(Taylor)ら著「物質化学(Chem. Mater.)」第3巻、1031〜1040ページ、(1991年)、及び、米国特許第6,652,970号(エバラーツ(Everaerts)ら)を参照されたい。
任意の熱不安定成分
任意に応じて、本発明の硬化型歯科用組成物には、例えば2006年12月20日申請の米国特許出願番号第11/275246号(表題「熱不安定成分が含まれている歯科用組成物とその使用法(DENTAL COMPOSITIONS INCLUDING A THERMALLY LABILE COMPONENT, AND THE USE THEREOF)」)に記載されているような熱不安定成分を含有させることができる。
本明細書で使用する時、「熱不安定成分」とは、熱不安定基が1つ以上含まれている成分(典型的には化合物)を指す。本明細書で使用する時、「熱不安定基」とは、高温(すなわち少なくとも42℃)まで加熱すると、その基の中の化学結合が実質的に切断されて(例えば分光技術によって観察可能)、2つ以上の別個の基が形成される基を指す。高温は200℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは100℃以下、最も好ましくは80℃以下であるのが好ましい。成分を高温まで加熱すると、化学結合が実質的に切断されるか否かを判断するための適切な方法は、当業者には明らかあろう。適切な方法としては例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法(H、13C、及び/又は、その他の適切な原子核など)、並びに、紫外線(UV)、可視線及び赤外線(IR)分光法(近IR(NIR)分光法も含む)といった分光法が挙げられる。例えば、H及び/又は13CのNMRスペクトルは好都合なことに、前記成分を溶媒(例えばCDCl)中に溶解させ、高温まで加熱し、所望の温度において前記成分から生じるピークの消失、又は、反応生成物から生じるピークの出現を観察することによって、NMRチューブ内に走らせることができる。
特定の実施形態では、本発明の硬化型歯科用組成物中で用いるのに適している熱不安定成分は、熱不安定基が1つ以上含まれている硬化型成分にするのが好ましい。典型的には、各熱不安定基は、複数(すなわち2つ以上)の硬化型基に結合している多価基である。特定の実施形態では、硬化型熱不安定成分はエチレン性不飽和化合物である。例えばこのような実施形態では、熱不安定基は、2つのエチレン性不飽和基に結合している2価基にすることができる。
熱不安定基は当該技術分野においてよく知られている。例えばこのような基としては、例えば米国特許第6,652,970号(エバラーツ(Everaerts)ら)に開示されているようなオキシムエステル、並びに、例えば米国特許第6,825,315号(オーバート(Aubert)、同6,147,141号(アイヤル(Iyer)ら)及びPCT国際特許出願番号WO98/09913号(ロテロ)に開示されているような、付加環化付加化合物が含まれている基が挙げられる。
任意の放射線−熱変換物質
任意に応じて、本発明の硬化型歯科用組成物には、例えば2006年12月20日申請の米国特許出願番号第11/275243号(表題「放射線−熱変換物質が含まれている歯科用組成物とその使用法(DENTAL COMPOSITIONS INCLUDING RADIATION-TO-HEAT CONVERTERS, AND THE USE THEREOF)」)に記載されているような放射線−熱変換物質を含有させることができる。放射線−熱変換物質が含まれている硬化済み歯科用組成物では、組成物に照射することによって硬化済み歯科用組成物を加熱可能にすることができる。
放射線−熱変換物質は典型的に、入射光を吸収するとともに、その入射光の少なくとも一部(例えば少なくとも50%)を熱に変換する放射線吸収体である。一部の実施形態では、放射線−熱変換物質は、電磁スペクトルの赤外、可視、又は、紫外領域の光を吸収するとともに、吸収済みの放射線を熱に変換することができる。別の実施形態では、放射線−熱変換物質は、高周波(RF)放射線を吸収するとともに、吸収済みの放射線を熱に変換することができる。放射線吸収体(単一又は複数)は典型的に、特定の画像化放射線に対する吸収力が高い。
例えば有機化合物、無機化合物及び金属有機化合物など、多種多様な放射線−熱変換物質を用いることができる。このような放射線−熱変換物質としては例えば、色素(例えば可視色素、紫外色素、蛍光色素及び放射線偏光色素)、顔料、金属、金属化合物、金属フィルム及びその他の適切な吸収材を挙げることができる。多くの部類の有機及び金属有機色素は、「赤外線吸収色素(Infrared Absorbing Dyes)」(マサル・マツオカ(Masaru Matsuoka)編、プレナムプレス(Plenum Press)、ニューヨーク、1990年)に記載されている。これらの部類の色素としては、アゾ色素、ピラゾロンアゾ色素、メチン及びシアニン色素、ポルフィリン色素、フタロシアニン色素、キニーネ色素(アントラキノン及びナフサキノン)、ピリリウム及びスクアリリウム色素、アミニウム及びジイモニウム色素が挙げられる。米国特許第6,759,177号(シマダ(Shimada)ら)も参照されたい。当業者は、例えば、特定の硬化型歯科用組成物又はすなわち溶媒に対する溶解度及び/又は相溶性、並びに、吸収波長範囲などの特性に基づいて、放射線−熱変換物質を所望どおりに選択することができる。典型的には、色素及び/又は顔料は、電磁スペクトルの赤外、可視、又は、紫外領域の光を吸収する放射線−熱変換物質として用いるのが好ましい。
一部の実施形態では、近赤外線(IR)吸収顔料及び/又は色素を、NIR放射線を照射することによって加熱できるようにする放射線−熱変換物質として用いるのが好ましい。このようなNIR吸収材は典型的に、750ナノメートル超の波長で、場合によっては、800、850、又は、さらには900ナノメートル超の波長で吸収する。このようなNIR吸収材は典型的に、2000ナノメートル未満の波長で、場合によっては、1500、1200、又は、さらには1000ナノメートル未満の波長で吸収する。
多種多様な顔料及び/又は色素を、NIR吸収型放射線−熱変換物質として用いることができる。有用な顔料としては例えば、インジウムスズオキシド(ITO)、アンチモンスズオキシド(ATO)、その他のスズオキシド顔料、ランタンヘキサボライド(LAB)、ポルフィリン、及び、フタロシアニ顔料、チオインジゴ顔料、カーボンブラック、アゾ顔料、キナクリドン顔料、ニトロソ顔料、天然顔料、並びに、アジン顔料が挙げられる。有用な色素としては例えば、NIR吸収型シアニン色素、NIR吸収型アゾ色素、NIR吸収型ピラゾロン色素、NIR吸収型フタロシアニン色素、NIR吸収型アントラキノン及びナフサキノン色素、ニッケル又はプラチナジチオレン錯体、スクアリリウム色素、カルボニウム色素、メチン色素、ジイモニウム色素、アミニウム色素、クロコニウム色素、キノンイミン色素、並びに、ピリリウム色素、例えば、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)(ミズーリ州セントルイス)又はエポリン社(Epolin Inc.)(ニュージャージー州ニューアーク)からIR−27及びIR−140という商品名で入手可能なものが挙げられる。
一部の実施形態では、放射線−熱変換物質は、高周波(RF)吸収型磁性セラミックス粉末にして、RF放射線の照射によって加熱できるようにすることができる。代表的なセラミックス粉末としては例えば、ナショナルマグネティクスグループ(National Magnetics Group)(ペンシルベニア州ベスレヘム)からフェライト(FERRITE)N23という商品名で入手可能なNiZnフェライト(公称平均粒径1.0マイクロメートル、公称キュリー温度(T)95℃)及びナショナルマグネティクスグループ(National Magnetics Group)(ペンシルベニア州ベスレヘム)からフェライト(FERRITE)Rという商品名で入手可能なMg−Mn−Zn混合フェライト(公称平均粒径1.0マイクロメートル、公称キュリー温度(T)90℃)が挙げられる。このようなセラミック粉末は、高周波(RF)放射線を吸収することができ、それによって温度を上昇させる。公称キュリー温度では、前記フェライトはRF放射線を吸収せずに、温度を上昇させ続ける。本発明で有用である典型的なRF放射線の強度範囲は10μW/cm〜100μW/cm、周波数は10KHz〜10KHzである。
その他の任意添加物
任意に応じて、本発明の組成物には、溶媒(例えばアルコール(例えばプロパノール、エタノール)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エステル(例えばエチルアセテート)、その他の非水性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1−メチル−2−ピロロリジノン))及び水を含有させてもよい。
所望に応じて、本発明の組成物には、指示薬(indicators)、色素、顔料、阻害剤、促進剤、粘度調整剤、湿潤剤、緩衝剤、安定剤及び当業者であれば明らかであろうその他の類似成分のような添加剤を含有させることができる。粘度調整剤としては、熱感応性粘度調整剤(例えば、ニュージャージー州パーシパニーのBASFワイアンドット社(BASF Wyandotte Corporation)から入手可能なプルロニック(PLURONIC)F−127及びF−108など)が挙げられ、任意に応じて、調整剤上の重合可能部分又は調整剤と異なる重合性成分を含めてもよい。このような熱感応性粘度調整剤は、米国特許第6,669,927号(トロム(Trom)ら)及び米国特許公開番号第2004/0151691号(オクスマン(Oxman)ら)に記載されている。
さらに、歯科用組成物に、任意に応じて薬剤又はその他の治療用物質を添加することができる。例としては、歯科用組成物で用いられることの多い種類のフッ化物源、増白剤、抗う蝕剤(例えばキシリトール)、カルシウム源、リン源、無機成分補給剤(例えばリン酸カルシウム化合物)、酵素、息清涼剤、麻酔剤、凝固剤、酸中和剤、化学療法剤、免疫反応変性剤、チキソトロピー剤、ポリオール、抗炎症剤、抗菌剤(抗菌性脂質成分に加える)、抗真菌剤、口腔乾燥症治療剤、減感剤などが挙げられるが、これらに限らない。また、上記の添加剤のいずれかの組合せを用いてもよい。当業者は、こうした添加剤のいずれか1つの選択及び量を、過度の実験なしに選択して、望ましい結果をもたらすことができる。
方法
本発明の硬化型及び硬化済み歯科用組成物(例えば、特定の実施形態では感熱性添加物が含まれている組成物)は、歯牙構造に付着(例えば接着)可能な物質を利用するさまざまな歯科及び歯科矯正用途で用いることができる。好ましい利用法としては、とある時点において硬化済み歯科用組成物を歯牙構造から取り外すのが望ましい用途が挙げられる。このような硬化型及び硬化済み歯科用組成物の使用法としては例えば、接着剤(例えば歯科用及び/又は歯科矯正用接着剤)、セメント(例えばグラスアイオノマーセメント、樹脂変性グラスアイオノマーセメント及び歯科矯正用セメント)、プライマー(例えば歯科矯正用プライマー)、修復剤、ライナー、シーラント(例えば歯科矯正用シーラント)、コーティング及びこれらの組み合わせとしての使用法が挙げられる。
このような硬化型及び硬化済み歯科用組成物の好ましい使用法の1つとしては、歯科矯正装具を歯牙構造に付着させることが挙げられる。ベース上に本発明の硬化型又は硬化済み歯科用組成物が備わっている歯科矯正装具の代表的な実施形態は、図1〜6に描かれている。このような実施形態では、施術者は、硬化型歯科用組成物を歯科矯正装具のベース上に適用してから、任意に応じてその組成物を硬化させることができる点に留意しなければならない。あるいは、ベース上に本発明の硬化型(又は硬化済み)歯科用組成物が備わっている歯科矯正装具は、例えば製造業者が「プレコーティング済み」歯科矯正装具として供給することができる。さらに別の実施形態では、施術者は、硬化型歯科用組成物(例えば歯科矯正用プライマー)を歯牙構造に適用し、任意に応じてその組成物を硬化させてから、歯科矯正装具(典型的には硬化型歯科矯正用接着剤を備える)を歯牙構造に付着させることができる。
図1及び2では、代表的な歯科矯正装具に10という数字が付されており、歯科矯正装具10はブラケットであるが、その他の装具(バッカルチューブ、ボタン及びその他の付加装置)も可能である。装具10にはベース12が備わっている。装具10には、ベース12から外側に伸びている本体14も備わっている。ベース12は、金属、プラスチック及びこれらの組み合わせでできているフランジにすることができる。ベース12には、メッシュ様構造(細いワイヤースクリーンなど)を搭載することができる。ベース12には、粒子(任意に応じて刻み目が搭載されている破片、グリット、球体、又は、その他の構造体など)を含有させることができる。あるいは、ベース12は、硬化済み歯科用組成物(例えば、本発明の硬化済み歯科用組成物、硬化済み歯科矯正用接着剤、硬化済み歯科矯正用プライマー、又は、これらの組み合わせ)の1つ以上の層から形成されているカスタムベースにすることができる。固定用ウイング16が本体14に接続しており、アーチワイヤースロット18が、固定用ウイング16の間の空間を貫いて伸びている。ベース12、本体14及び固定用ウイング16は、口腔内で用いるのに適しているとともに、治療中に加わる矯正力に耐えられるほど十分な強度のある多くの物質のうちのいずれか1つから作製してよい。適切な物質としては例えば、金属物質(ステンレススチールなど)、セラミック物質(単結晶又は多結晶アルミナなど)及びプラスチック物質(繊維強化ポリカーボネートなど)が挙げられる。任意に応じて、ベース12、本体14及び固定用ウイング16は、単一コンポーネントとして一体化させて作製させる。
図1及び2に描かれている代表的な実施形態では、本発明の硬化型又は硬化済み歯科用組成物の層22(以下では「組成物層22」という)は、典型的に歯科矯正用接着剤、歯科矯正用プライマー、又は、歯科矯正用シーラントであるが、装具10のベース12全体にわたって広がっている。組成物層22は、全体的に又は少なくとも部分的に、意図に反して治療過程中に歯から脱離するのを防ぐほどの十分な強度を有するボンドによって、装具10を患者の歯にしっかり固定させる役割を果たすことができる。ある1つの実施形態では、組成物層22は、製造業者が装具10のベース12に適用する。歯科矯正装具10には任意に応じて、歯科用組成物(例えば、歯科矯正用接着剤、歯科矯正用プライマー、又は、これらの組み合わせ)の追加の層(単一又は複数)(図1及び2には描かれていない)を搭載できるものと理解すべきである。具体的に言うと、このような追加の層(単一又は複数)は、ベース12と組成物層22の間、ベース12の反対側の組成物層22の上、又は、これら双方に置くことができる。このような層は、同じ区域を覆っていても覆っていなくてもよく、また、独立して、接着剤22の全部又は一部に広がっている非連続的(例えばパターン層)、又は、連続的(例えば非パターン)物質にしてよい。このような追加の層(単一又は複数)が備わっている代表的な装具は、図4〜6に描かれている。
本明細書に記載されている硬化型又は硬化済み歯科用組成物層が複数備わっている歯科矯正装具は、当業者に知られている方法によって用意することができる。適切な方法としては例えば、組成物層を装具又は基材の上に適用、投与、又は、プリントするものが挙げられる。複数の層を同時又は順次に適用してよい。
歯科矯正装具又は基材の上に硬化型歯科用組成物(単一又は複数)の層を複数適用するための有用な方法としては例えば、自動流体投与システム(アシムテク(Asymtek)(カリフォルニア州カールズバッド)からオートムーブ(AUTOMOVE)という商品名で入手可能なものなど)を用いるものが挙げられる。このような自動流体投与システムは、パターン層及び非パターン層の双方を投与するのに有用である。その他の有用なシステムとしては例えば、例えば米国特許第6,513,897号(トキー(Tokie))及び米国特許出願番号第2005/0136370A1(ブレナン(Brennan)ら)に記載されているようなピストン投与システム及び多重解像度流体アプリケーターが挙げられる。
硬化型歯科用組成物層(単一又は複数)を歯科矯正装具又は基材に適用すると、その装具又は基材は、好都合なことに、容器内に詰めることができる。代表的な容器は当業界において周知であり、例えば米国特許第5,172,809号(ジェイコブス(Jacobs)ら)及び同6,089,861号(ケリー(Kelly)ら)に開示されている。
図3を参照してみると、ベース上に硬化型歯科用組成物層(単一又は複数)を備えている歯科矯正装具42が含まれている包装された物品40の代表的な実施形態が示されている。パッケージ44には、容器46とカバー48が備わっている。カバー48は、最初に供給される段階では容器46に取り外し可能な状態で連結しており、容器46から剥がし、パッケージを開いて矯正歯科様装具43を取り出す。図3では、カバー48を容器46から剥がして、パッケージ44を部分的に開いている。
好ましい実施形態では、パッケージは、長期間経過後でも、硬化型歯科用組成物(単一又は複数)(例えば光硬化型物質)の劣化に対する優れた保護機能をもたらす。このような容器は、接着剤に変色機能を付与する色素を保護するのにとりわけ有用である。このような容器は、広範なスペクトル範囲の化学放射線の透過を効果的に阻止するのが好ましく、その結果、保管中に組成物が時期尚早に色落ちすることがない。
好ましい実施形態では、パッケージには、ポリマーと金属粒子から成る容器46が備わっている。一例として、容器46は、例えば米国特許出願公開番号2003/0196914A1号(ツォウ(Tzou)ら)に記載されているように、アルミニウム充填剤と化合されているか、又は、アルミニウム粉末コーティングを受容するポリプロピレンで作製してもよい。ポリマーと金属粒子の組み合わせによって、当該変色型色素が感光性の高いことで知られていても、化学放射線がその変色型色素まで透過するのを非常に効果的に阻止する作用をもたらす。このような容器には、優れた防湿特性も備わっている。その結果、硬化型歯科用組成物(単一又は複数)のレオロジー特性は、長期にわたって変化しにくい。例えば、かかる容器の優れた防湿特性によって、接着剤の取扱適性の低下に対するかなりの防護作用が得られるため、組成物が時期尚早に硬化又は乾燥したり、別の事象によって不十分な状態になったりすることはない。このような容器に適しているカバー48は、化学放射線の透過を実質的に通さずに組成物が時期尚早に硬化しないようにするいずれかの材料で作製することができる。カバー48に適している材料の例としては、アルミホイルとポリマーのラミネートが挙げられる。例えば、このラミネートは、ポリエチレンテレフタレート、接着剤、アルミホイル、接着剤、配向ポリプロピレンの層から構成させてよい。
一部の実施形態では、本発明の硬化型歯科用組成物を備える包装された歯科矯正装具に、例えば米国特許第6,183,249号(ブレナン(Brennan)ら)に記載されているように、剥離基材を含有させてよい。
別の実施形態では、本発明の硬化型歯科用組成物を備える包装された歯科矯正装具に、剥離基材を含有させることはできない。ある1つの実施形態では、パッケージに、内面のある凹部が少なくとも1つ備わっている基材が含まれている。そのパッケージには、前記凹部から歯科矯正装具を取り外す際に組成物層(単一又は複数)が歯科矯正装具から分離しないように、前記凹部内に歯科矯正装具を配置する手段が備わっている。パッケージにはさらに、凹部用のカバーと、カバーが前記基材と接触した状態を維持させる手段を搭載するのが好ましく、この場合、歯科矯正装具を配置する手段には、組成物層(単一又は複数)が凹部の内面に接触しないように歯科矯正装具を凹部中に浮かせる手段が備わっている。このようなパッケージは例えば米国特許第5,172,809号(ジェイコブス(Jacobs)ら)に開示されている。
別の実施形態では、歯科矯正装具には、歯科矯正装具を歯牙構造に接着するためのベースと、このベースから伸びている本体と、本体から離れるように伸びている少なくとも2つの対向する固定用ウイングが備わっている。ベースと、固定用ウイングのうちの少なくとも1つは、本体を越えて歯肉方向に伸び、歯肉側凹部を形成している。ベースと、固定用ウイングのうちの別の少なくとも1つは、本体を越えて咬合方向に伸び、咬合側凹部を形成している。パッケージには、それぞれの方に伸びている1対のアームのあるキャリアが備わっている。各アームには外端区域があり、その外端区域は、それぞれから間隙を隔てて配置されているとともに、その間にチャネルを形成している。歯科矯正装具は、前記チャネル内に置くとともに、咬合側凹部の中まで伸びている外端区域の1つと、歯肉側凹部の中まで伸びているもう一方の外端区域を擁する前記アームによって支える。このような歯科矯正装具とパッケージは、例えば米国特許第6,089,861号(ケリー(Kelly)ら)に記載されている。
一部の実施形態では、包装された物品に、一式の歯科矯正装具を含めることができ、この場合、歯科矯正装具の少なくとも1つは、本発明の硬化型歯科用組成物を備える。物品及び一式の歯科矯正装具追加の例は、米国特許公開番号第2005/0133384A1号(シナダー(Cinader)ら)に記載されている。包装された歯科矯正装具は、例えば米国特許公開番号第2003/0196914A1号(ツォウ(Tzou)ら)、並びに、米国特許第4,978,007号(ジェイコブス(Jacobs)ら)、同5,015,180号(ランドクレブ(Randklev)ら)、同5,328,363号(チェスター(Chester)ら)、及び、同6,183,249号(ブレナン(Brennan)ら)に記載されている。
ベースの上に本発明の硬化型歯科用組成物を備える歯科矯正装具は、当該技術分野において周知の方法(例えば直接又は間接接着法)を用いて歯牙構造に接着してよい。歯科矯正装具を歯牙構造に適用したら、本発明の硬化型歯科用組成物を硬化させて、歯科矯正装具を歯牙構造に付着させることができる。組成物を硬化させるのに適しているさまざまな方法が当該技術分野で知られている。例えば、一部の実施形態では、硬化型歯科用組成物は、UV又は可視光の照射によって硬化させることができる。別の実施形態では、硬化型歯科用組成物は、2つ以上の部分を混ぜ合わせると硬化する多部分組成物として提供することができる。
所望に応じて、典型的には歯科矯正治療プロセスの終了時に、施術者は、歯科矯正装具を歯牙構造から取り外さなければならない。本発明の硬化済み歯科用組成物は、加熱すると接着強度が低下して、歯科矯正装具を利便的に取り外せるのみならず、歯科矯正装具を取り外した後に歯牙構造上に残ってしまった硬化済み歯科用組成物も除去できるように設計されている。
硬化済み歯科用組成物は、レーザー、温水、電熱剥離ユニット、熱いゲルトレイによる加熱など(これらに限らない)の利便的な方法及び当該技術分野で既知のその他の方法によって加熱することができる。
あるいは、放射線−熱変換物質が含まれている硬化済み歯科用組成物の場合は、硬化済み歯科用組成物は任意に応じて、放射線−熱変換物質に吸収される放射線を照射することによって、加熱することができる。例えば、レーザー、半導体レーザー、石英−タングステン−ハロゲンランプ、水銀ランプ、ドープ水銀ランプ、ジュウテリウムランプ、プラズマアークランプ、LED源及び当該技術分野において既知のその他の源など、多種多様な放射線源を用いることができる。
硬化済み歯科用組成物は任意に応じて、接着強度を低下させるのに十分な時間、利便的な温度まで加熱することができるとともに、歯牙構造から歯科矯正装具を利便的に取り外せるようにする。前記温度と時間は、例えばザック(Zach)ら著「歯内治療学(Endodontics)」(ベンダー(Bender)編、515〜530ページ、1965年)に記載されているように、歯牙構造の損傷を防ぐように選択するのが好ましい。ラウファー(Laufer)ら著「生体力学的工学会誌(Journal of Biomechanical Engineering)」第107巻、234〜239ページ(1985年)、ローネー(Launay)ら著「外科処置及び内科学上のレーザー(Lasers in Surgery and Medicine)」7号、473〜477ページ(1987年)、アゼー(Azzeh)ら著「米国歯科矯正学及び口腔顎顔面矯正学会誌(American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthopedics)」123号、79〜83ページ(2003年)、及び、ウユサル(Uysal)ら著「アングルオーソドンティスト(Angle Orthodontist)」78号、220〜225ページ(2005年)も参照されたい。典型的には、歯科用組成物を急激に加熱する加熱技術を用いることによって、歯牙構造を損傷させることなく、さらに高い温度をさらに短い時間で用いることができる。
特定の実施形態では、硬化済み歯科用組成物の少なくとも一部、好ましくはすべてを任意に応じて、少なくとも42℃、場合によっては少なくとも50℃、その他の場合には少なくとも70℃まで加熱する。典型的には、硬化済み歯科用組成物は、最大でも200℃、場合によっては最大でも150℃、その他の場合には最大でも100℃、さらに別の場合には最大でも80℃まで加熱する。接着強度の所望どおりの低下を得るのに十分な時間、特定の温度を維持させる。特定の実施形態では、この時間は最大でも10分、場合によっては最大でも10秒、その他の場合には最大でも1秒である。接着強度の低下は典型的に、硬化済み組成物層内の破壊をもたらす。
一部の実施形態では、歯科矯正装具に、追加の歯科用組成物層が備わっている。このような追加の歯科用組成物層には、例えば未硬化又は硬化済み歯科用組成物(例えば、特定の実施形態では、感熱性添加物が含まれていない従来型の歯科用組成物)を含有させることができる。追加の層を搭載することによって、例えば、以下に記載されているように、歯科矯正装具を歯牙構造から剥離させている最中に破壊が発生する場所を操ることができる。
例えば、図4には、歯科矯正装具10に、組成物層22と接触している追加の歯科用組成物層24が1つ備わっている実施形態が示されている。組成物層22は、本発明の未硬化又は硬化済み歯科用組成物のいずれかにしてよい。追加層24は、ベース12と対向している組成物層22の上にある。追加層24は典型的に、未硬化歯科用組成物(例えば、歯科矯正用接着剤、歯科矯正用プライマー、又は、これらの混合物)である。歯科矯正装具10を歯牙構造に適用したら、追加層24(及び、未硬化の場合には組成物層22)を上記のさまざまな方法によって硬化させて、歯科矯正装具10を歯牙構造に付着させることができる。
一部の実施形態では、追加層24は、組成物層22を備える歯科矯正装具を歯の表面に付着させる前に、歯牙構造上にコーティングされる(及び、任意に応じて硬化させる)硬化型歯科矯正用プライマーにすることができる。
歯科矯正治療が終了したら、硬化済み組成物層22の少なくとも一部を加熱して接着強度を低下させることができ、また、歯科矯正装具を取り外す際に、加熱済み組成物層内の破壊を可能にするのが好ましい。加熱済み組成物層22内の破壊は、歯科矯正装具近辺かつ歯牙構造から離れた位置での破壊をもたらす。さらには、加熱済みの硬化済み組成物22(例えば歯科矯正用接着剤)の弾性率は典型的に低く、そのため、組成物22は、硬化済み組成物のすべての残留物をさらに簡単に浄化及び/又は除去可能になるほど軟らかい。したがって、歯科矯正治療の後には、図4のある1つの実施形態は、組成物層22と追加層24の双方が硬化済み歯科矯正用接着剤になるケースと思われる。別の実施形態では、組成物層22は硬化済み歯科矯正用接着剤になり、追加層24は硬化済み歯科矯正用プライマーになると思われる。
図5には、歯科矯正装具10に、組成物層22と接触している追加の歯科用組成物層20が1つ備わっている別の実施形態が示されている。追加層20は、ベース12と組成物層22の間にある。追加層20は典型的に、未硬化又は硬化済み歯科用組成物(例えば、歯科矯正用接着剤、歯科矯正用プライマー、又は、これらの組み合わせ)である。組成物層22は典型的に未硬化である。歯科矯正装具10を歯牙構造に適用すると、組成物層22(及び、未硬化の場合には追加層20)は、上記のさまざまな方法によって硬化させて、歯科矯正装具を歯牙構造に付着させることができる。
一部の実施形態では、組成物層22は、追加層20を備える歯科矯正装具を歯の表面に付着させる前に、歯牙構造上にコーティングされる(及び、任意に応じて硬化させる)硬化型歯科矯正用プライマーにすることができる。
歯科矯正治療が終了したら、硬化済み組成物層22の少なくとも一部を加熱して接着強度を低下させることができ、また、歯科矯正装具を取り外す際に、加熱済み組成物層内の破壊を可能にするのが好ましい。加熱済み組成物層22内の破壊は、歯牙構造近辺の破壊をもたらす。組成物層22が歯科矯正用プライマーであり追加層20が歯科矯正用接着剤である実施形態では、硬化済み歯科矯正用接着剤は、除去済みの歯科矯正装具の上に実質的に留まる。本明細書で使用する時、「除去済みの歯科矯正装具の上に実質的に留まる」とは、歯科矯正用接着剤の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%が除去済みの歯科矯正装具の上に留まることを意味する。硬化済み歯科矯正用接着剤が歯科矯正装具の上に実質的に留まる場合、歯牙構造上に残っている接着剤が減るため、歯牙構造上に残っているすべての接着剤の浄化及び除去がさらに利便的になる。これに加えて、歯牙構造上に残っているすべての組成物は実質的に本発明の硬化済み歯科用組成物であるのが好ましく、この組成物は任意に応じて、加熱して組成物を軟化させ、それによって、接着剤をさらに除去しやすくすることができる。したがって、歯科矯正治療後には、図5のある1つの実施形態は、組成物層22と追加層20の双方が硬化済み歯科矯正用接着剤になるケースと思われる。別の実施形態では、組成物層22は硬化済み歯科矯正用プライマーになり、追加層20は硬化済み歯科矯正用接着剤になると思われる。
別の実施例として、図6には、歯科矯正装具10に、組成物層22と接触している追加の歯科用組成物層が2つ(20及び24)備わっている実施形態が示されている。追加層20は、ベース12と組成物層22の間にある。追加層20は典型的に、未硬化又は硬化済み歯科用組成物(例えば、歯科矯正用接着剤、歯科矯正用プライマー、又は、これらの組み合わせ)である。組成物層22は未硬化又は硬化済みにすることができる。追加層24は、ベース12と対向している組成物層22の上にある。追加層24は典型的に、未硬化歯科用組成物(例えば、歯科矯正用接着剤、歯科矯正用プライマー、又は、これらの組み合わせ)である。歯科矯正装具10を歯牙構造に適用すると、追加層24(及び、未硬化の場合には組成物層22と追加層20)は、上記のさまざまな方法によって硬化させて、歯科矯正装具を歯牙構造に付着させることができる。
一部の実施形態では、追加層24は、組成物層22を備える歯科矯正装具を歯の表面に付着させる前に、歯牙構造上にコーティングさせる(及び、任意に応じて硬化させる)硬化型歯科矯正用プライマーにすることができる。
歯科矯正治療が終了したら、硬化済み組成物層22の少なくとも一部を加熱して接着強度を低下させることができ、また、歯科矯正装具を取り外す際に、加熱済み組成物層内の破壊を可能にするのが好ましい。加熱済み組成物層22内の破壊は、歯科矯正装具と歯牙構造の間であるうえに、歯科矯正装具と歯牙構造から安全な距離を隔てた破壊をもたらす。したがって、歯科矯正治療の後には、図6のある1つの実施形態は、組成物層22と追加層24がすべて硬化済み歯科矯正用接着剤になるケースと思われる。別の実施形態では、組成物層22は硬化済み歯科矯正用接着剤になり、追加層20及び24は硬化済み歯科矯正用プライマーになると思われる。
追加の層又は層の配置が存在している追加の実施形態も考えられると理解すべきである。さらに、各層の厚みは、所望に応じて個別に変えることができる。さらには、本発明の歯科用組成物は、明示的に定義されている層のみに存在させる必要はなく、歯科矯正装具のベース上にある層(単一又は複数)のすべて又は一部にわたって均一又は不均一に分布させて存在させることができる。一部のケースでは、感熱性添加物が含まれている硬化型歯科用組成物に、又は、感熱性添加物が含まれていない従来型の歯科用組成物に、高濃度の感熱性添加物を微粒子層として直接適用してよい。さらに、薄層(例えばプライマー)を任意に応じて微粒子面に適用して、装具の適用時の歯の湿潤性を高めてよい。
本発明の目的及び利点は、下記の実施例によって更に例示されているが、これらの実施例で列挙されている特定の物質及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈すべきではない。指示がない限り、すべての部及びパーセントは重量基準であり、すべての水は脱イオン水であり、すべての分子量は重量平均分子量である。
試験法
ガラス上剪断接着強度試験法A
接着剤でガラスに付着させた歯科矯正用ブラケットの接着強度の試験サンプルを、ロードセルのインストロンモデル(Instron Model)2511−111 500N(マサチューセッツ州カントンのインストロン社(Instron Corp.))に取り付けられている万能試験機インストロン(Instron)R5500で測定した。クロスヘッド速度は0.5cm/分で、毎秒10データポイントを収集した。ウィンドウガラスクーポン(15cm×2.54cm×0.30cm)をメタノールで消毒し、室温で5分間乾燥させた。後掲の実施例の部分に記載されている接着剤を用いて、歯科矯正用ブラケット(3Mユニテック(3M Unitek)のトランセンド(TRANSCEND)6000又はビクトリーシリーズ(VICTORY Series))を前記ウィンドウガラスクーポンに付着させた。(後掲の実施例の部分に記載されているように)、オーブン(ミネソタ州ミネアポリスのデスパッチ(Despatch)のモデルLFD−1−42−3)内で、若しくは、プログラム可能なホットプレート(ペンシルベニア州ウェストチェスターのVWRサイエンティフィック(VWR Scientific)のモデル400)上で熱的に、又は、300nmのロングパス光学フィルターに取り付けられている100W Hg−Xe光ファイバー光源のスーパースポットマックス(Super Spot Max)(カリフォルニア州トランスのレスコ(Lesco))、若しくは、3Mハロゲンランプ(3M社(3M Company)のモデル5560)を用いて光化学的に、硬化を行った。ブラケットが取り付けられているガラスクーポンを、固定モールド内のインストロン(Instron)のクロスヘッドに取り付けた。ロードセルに固定した歯科矯正用の標準的な円形ワイヤー(0.51mm、部品番号211−200、カリフォルニア州モンロビアの3Mユニテック(3M Unitek))をブラケットの底部に通して、クロスヘッドが動いたらブラケットが剪断力で剥離するようにした。ブラケットを剥離させるのに必要な最大応力を単位区域あたりの力(MPa)で記録した。各実験は、典型的に3〜10回記録した。
ガラス上剪断接着強度試験法B
接着剤でガラスに付着させた歯科矯正用ブラケットの接着強度の試験サンプルを、ロードセルのインストロンモデル(Instron Model)2511−111 500N(マサチューセッツ州カントンのインストロン社(Instron Corp.))に取り付けられている万能試験機インストロンモデル(Instron Model)R5500で測定した。クロスヘッド速度は0.5cm/分で、毎秒10データポイントを収集した。ウィンドウガラスクーポン(15cm×2.54cm×0.30cm)をメタノールで消毒し、室温で分間乾燥させた。後掲の実施例の部分に記載されている接着剤を用いて、歯科矯正用ブラケット(3Mユニテック(3M Unitek)のトランセンド(TRANSCEND)6000)を前記ウィンドウガラスクーポンに付着させた。300nmのロングパス光学フィルターに取り付けられている100W Hg−Xe光ファイバー光源のスーパースポットマックス(Super Spot Max)(カリフォルニア州トランスのレスコ(Lesco))を用いて光化学的に硬化を行った。ブラケットが取り付けられているガラススライドを固定モールド内のインストロン(Instron)のクロスヘッドに取り付けた。ロードセルに固定した歯科矯正用の標準的な円形ワイヤー(0.51mm、部品番号211−200、カリフォルニア州モンロビアの3Mユニテック(3M Unitek))をブラケットの底部に通して、クロスヘッドが動いたらブラケットが剪断力で剥離するようにした。剥離の(すなわちガラス表面を削ぎ取る)前に、ブラケットを通じて、75W QTHブルーライトガン(独国バーデンバーデンのリテマアストラルデンタル(Litema Astral Dental))をダイクロイック(dichromic)ミラーを取り除いた状態で用いて硬化済み接着剤を20秒間照射した。照射中、前記ライトガンはブラケットの表面と向かいあうように静かに配置し、ロードフレームが動作中になってから剥離が起きるまで、照射を続けた。ブラケットを剥離させるのに必要な最大応力を単位区域あたりの力(MPa)で記録した。各実験は、典型的に3〜10回記録した。
歯上剪断接着強度試験法A
接着剤で歯に付着させた歯科矯正装具の接着強度の試験サンプルを以下の方法で測定した。約10mgの接着剤の試験サンプルをシリンジによって、歯科矯正用ブラケットのトランセンド(TRANSCEND)6000(3Mユニテック(3M Unitek))、ビクトリー(VICTORY)シリーズ(3Mユニテック(3M Unitek))、又は、クラリティ(CLARITY)(3Mユニテック(3M Unitek)の接着ベースに適用した。ある1つのタイプのブラケットは、ガラス/グリットがコーティングされているクラリティブラケット(CLARITY Bracket)(REF6400−601又は同等物、3Mユニテック(3M Unitek))であると思われる。高速硬化型ポリ(メチルメタクリレート)ベース内にウシの歯を入れた。次に、この歯を軽石水性スラリーで洗浄してすすいだ。やや湿っている歯に、トランスボンドプラスセルフエッチングプライマー(TRANSBOND Plus Self Etching Primer)、REF712−090[又は、トーンP747(TONE P747)(実施例11)が40重量%充填されているトランスボンドプラス(TRANSBOND Plus)「SEP」、実施例1〜9及び12〜15の接着強度評価参照]を適用/エッチングしてから、水分及び油分が含まれていない空気で乾燥させた。続いて、接着剤が備わっているセラミックブラケットを歯の上に置き、しっかり押して余分な接着剤を押し出した。余分な接着剤を取り除いてから、オーソラックスLED硬化ライト(ORTHOLUX LED Curing Light)(3Mユニテック)を3秒間用いて、ブラケットの上から硬化させることによって、接着剤でコーティングされているブラケットを歯に接着させた。歯と接着済みブラケットのサンプルを37℃の水中で1晩保管し、加熱するのが望ましい場合には、2分間、又は、2時間のいずれかの時間、75℃の水浴に移した。試験対象の加熱済みサンプルを用いて、熱損失を回避するために可能な限り早く、以下のように接着強度試験を行った。0.50mmの円形ステンレススチールワイヤーループ(例えば、部品番号211−200、3Mユニテック(3M Unitek))をブラケットの咬合側固定ウイングの下に嵌み合わせた。Qテスト/5試験装置(Qtest/5 Tester)(MTSシステムズ(MTS Systems)を用いて、歯からの剥離が起きるまで、剪断/剥離モードで負荷を加えた。前記試験装置に取り付けられているワイヤーを5mm/分の速度で引張した。最大力(単位:ポンド)を1つのブラケットあたりの接着強度として記録し、歯に取り付けられている10種類の接着剤コーティング付きブラケットを用いて、その記録値は10個の測定値の平均値とした。続いて、この平均値をブラケットの接着ベース面積(平方インチ)で除してから0.06895を乗じることによって、MPa単位に変換した。
歯上剪断接着強度試験法B
接着剤でウシの歯に付着させた歯科矯正用セラミックブラケットの接着強度の試験サンプルをQテスト/5試験装置(Qtest/5 Tester)(MTSシステムズ(MTS Systems)を用いて測定した。歯からの剥離が起きるまで、剪断/剥離モードで負荷を加えた。クロスヘッド速度は0.5cm/分だった。エタノールで希釈したスコッチプライム(SCOTCHPRIME)というセラミックプライマー(3M社(3M Company))(標準的なスコッチプライム(SCOTCHPRIME)には1%のシランが含まれている)を用いて、0.5%のシラン溶液中に浸漬させることによって、クラリティ(CLARITY)(例えばREF6400−601、又はその同等物、3Mユニテック(3M Unitek))というブラケットをシラン処理してから空気乾燥し、続いて、600℃のオーブン内に1時間置いた。室温まで冷却した後、ブラケットを再び、前記と同じように希釈したスコッチプライム(SCOTCHPRIME)セラミックプライマー(シラン0.5%)に浸漬させてから空気乾燥し、続いて、100℃のオーブン内に1時間置いた。ブラケットを室温まで冷却した。約10mgの接着剤の試験サンプルをシリンジによって、シラン処理済みのクラリティ(CLARITY)ブラケットの接着ベースに適用した。高速硬化型ポリ(メチルメタクリレート)ベース内にウシの歯を入れた。次に、この歯を軽石水性スラリーで洗浄してすすいだ。
やや湿ったウシの歯にトランスボンドプラスセルフエッチングプライマー(TRANSBOND PLUS Self Etching Primer)(3Mユニテック(3M Unitek))を適用して、エアジェットで乾燥させた。その後、接着剤をプレコートしたクラリティ(CLARITY)ブラケットを歯の上に配置し、余分な接着剤を取り除いてから、オーソラックスLED硬化ライト(ORTHOLUX LED Curing Light)(3Mユニテック)を用いてブラケットを5秒間硬化させ、ブラケットを歯に付着させた。その試料を37℃で24時間保管してから、上記のようにQテスト/5試験装置(Qtest/5 Tester)(MTSシステムズ)を用いてインストロン(Instron)上で剪断させた。NIR放射線と白色光を発光させるようにIR反射ミラーを取り除いた状態のオーソラックスXT(ORTHOLUX XT)という光源(3Mユニテック)を用いて、試料に剪断負荷をかける直前に試料を照射した。この照射を60秒間行ってから、Qテスト/5試験装置(Qtest/5 Tester)上のロードフレームを作動させ、剥離が起きるまで照射を続けた。最大力(単位:ポンド)を1つのブラケットあたりの接着強度として記録し、記録値は5つの測定値の平均値とした。続いて、この平均値をブラケットの接着ベース面積(平方インチ)で除してから0.06895を乗じることによって、MPa単位に変換した。
歯上剪断接着強度試験法C
接着剤でウシの歯に付着させた歯科矯正用セラミックブラケットの接着強度の試験サンプルをQテスト/5試験装置(Qtest/5 Tester)(MTSシステムズ(MTS Systems)を用いて測定した。歯からの剥離が起きるまで、剪断/剥離モードで負荷を加えた。エタノールで希釈したスコッチプライム(SCOTCHPRIME)というセラミックプライマー(3M社(3M Company))(標準的なスコッチプライム(SCOTCHPRIME)には1%のシランが含まれている)を用いて、0.5%のシラン溶液中に浸漬させることによって、クラリティ(CLARITY)(例えばREF6400−601、又はその同等物、3Mユニテック(3M Unitek))、又は、類似のセラミックブラケットを任意に応じてシラン処理してから空気乾燥し、続いて、600℃のオーブン内に1時間置いた。室温まで冷却した後、ブラケットを再び、前記と同じように希釈したスコッチプライム(SCOTCHPRIME)セラミックプライマー(シラン0.5%)に浸漬させてから空気乾燥し、続いて、100℃のオーブン内に1時間置いた。ブラケットを室温まで冷却した。約10mgの歯科矯正用接着剤(3M社(3M Company))をシリンジによって、任意に応じてシラン処理したクラリティ(CLARITY)ブラケットの接着ベースに適用した。任意に応じて、接着剤をコーティングしたブラケットを湿潤剤に浸し、実施例28A〜B及び29A〜Bの部分で説明されているように、PCL粉末の中に押し込んだ。高速硬化型ポリ(メチルメタクリレート)ベース内にウシの歯を入れた。次に、この歯を軽石水性スラリーで洗浄してすすいだ。
水で洗浄済みのやや湿ったウシの歯にトランスボンドプラスセルフエッチングプライマー(TRANSBOND PLUS Self Etching Primer)(3Mユニテック(3M Unitek))を適用して、エアジェットで乾燥させた。その後、クラリティ(CLARITY)ブラケット(上記のとおり事前処理済みのもの)を歯の上に配置し、余分な接着剤を取り除いてから、オーソラックスLED硬化ライト(ORTHOLUX LED Curing Light)(3Mユニテック)を用いてブラケットを5秒間硬化させ、ブラケットを歯に付着させた。この試料を37℃で24時間保管し、75℃の水浴で1分間加熱してから、上記の歯上剪断接着強度試験法Bに記載されているとおり、Qテスト/5試験装置(Qtest/5 Tester)(MTSシステムズ(MTS Systems)を用いて迅速に剪断剥離させた。最大力(単位:ポンド)を1つのブラケットあたりの接着強度として記録し、記録値は5つの測定値の平均値とした。続いて、この平均値をブラケットの接着ベース面積(平方インチ)で除してから0.06895を乗じることによって、MPa単位に変換した。
溶解温度(T)試験法
熱サイクルを記録する場合に限ってはモデル2920PDSC(Model 2920 PDSC)(光示差走査熱量計(Photo Differential Scanning Calorimeter)、デラウェア州ニューキャッスルのTAインストルメンツ(TA Instruments))を用いて、又は、熱及び冷却サイクルを記録する場合にはTAインストルメンツ製冷却システム(TA Instruments DSC Cooling System)が備わっているTAインストルメンツモデル2920という変調型示差走査熱量計(TA Instruments Model 2920 Modulated DSC)用いて、試験サンプルの溶解温度(T)を測定した。約8〜15mgの試験サンプル(一般的にトーン(TONE)P767が2.5〜5重量%含まれている)をアルミニウムパン(モデルX1056、ニュージャージー州ピスカタウェイのレオメトリックサイエンティフィック(Rheometric Scientific))の中に入れ、420nmのロングパスフィルター(GG420エスコプロダクツ(Esco Products))が備わっているPDSC装置内で光硬化させた。続いて、モデルX1063というアルミニウム製の蓋(レオメトリックサイエンティフィック(Rheometric Scientific))でこのパンを気密密閉した。密閉済みのパンを2℃/分で100℃まで加熱しながら、熱流量を記録した。冷却サイクルを行う場合には、2℃/分で行った。記録したTの値は、積分によって得られた吸熱ピーク最大値と吸熱エネルギーを表している。
Figure 2009520569
Figure 2009520569
出発物質の作製
樹脂A、B、C及びD
表1Aに示されている成分を混ぜ合わせることによって、樹脂A、B、C及びDを作製した。樹脂C及びDは、表1Aに示されている成分を混ぜ合あわせ、得られた混和物を50〜60℃まで10〜15分間加熱することによって作製した。
Figure 2009520569
セルフエッチング接着剤A及びB
表1Bに示されている成分を混ぜ合わせることによって、セルフエッチング接着剤を作製した。
Figure 2009520569
CDMAの作製
機械的攪拌器、コンデンサー、追加の漏斗及び吸気チューブが取り付けられている反応槽内で、400gのクエン酸を2リットルの乾燥THF中に溶解させた。得られた均一溶液に、0.52gのBHT、0.5gのTPS及び0.98gのDBTDLを加えた。吸気チューブを通じて、乾燥した空気を反応混和物に加えた。続いて、追加の漏斗を通じて161.5g(1.04モル)のIEMを液滴状で加え、約40℃の反応温度を維持させるようにした。この反応の後に赤外分光法を行った。すべてのIEMを加え終わったうえに、赤外スペクトルによってイソシアネート基が皆無であることが明らかになった後、ITFを真空下で反応混和物から除去した。得られた粘稠液を乾燥させた。核磁気共鳴分光法によって、追加のメタクリレート基の存在とカルボキシ基の保持が明らかになった。
ポリカプロラクトン(PCL)繊維とポリプロピレンカーボネート(PPC)の作製(AA−1087及びCRML−1094由来)
電界紡糸溶液A.トーン(TONE)P767E(PCL)の20w/v%メチルエチルケトン(MEK)溶液の作製:237mLのガラスジャーに80mLのMEKを加え、ジャーの外側に溶媒の高さの印をフェルトペンで書いた。MEKをジャーから除去し、トーン(TONE)P767E(PCL、16g)を加えた。再度MEKをジャーに、印を付けた位置まで入れた。PTFEの層をジャーの線条の上に配置し、金属張りの金属蓋を手でしっかりねじり留めた。閉鎖済みジャーをシェイカーテーブル(ミシガン州アナーバーのエーベルバッハ(Eberbach))の上に置き、それぞれが80〜85%の設定でレオスタット(オハイオ州デートンのスタコエナジープロダクツ(Staco Energy Products))に接続している2つの250ワットIR加熱ランプ(ゼネラルエレクトリック(General Electric))で加熱した。2時間振盪させた後、PCLをMEK中に溶解させて、下記のように電界紡糸を行うと繊維に変えられる状態の電界紡糸溶液Aをもたらした。加熱中、ボトルの外側で熱電対を用いたところ、80℃の測定値が観測された。
電界紡糸溶液A.QPAC−40(PPC)の20w/v%MEK溶液の調製:473mLのガラスジャーに100mLのMEKを加え、ジャーの外側に溶媒の高さの印をフェルトペンで書いた。MEKをジャーから除去し、QPAC−40(PPC、20g)を加えた。再度MEKをジャーに、印を付けた位置まで入れた。PTFEの層をジャーの線条の上に配置し、金属張りの金属蓋を手でしっかりねじり留めた。閉鎖済みジャーをシェイカーテーブル(エーベルバッハ(Eberbach))の上に置き、それぞれが80〜85%の設定でレオスタット(スタコエナジープロダクツ(Staco Energy Products))に接続している2つの250ワットIR加熱ランプ(ゼネラルエレクトリック(General Electric))で加熱した。3時間振盪させた後、PPCをMEK中に溶解させて、下記のように電界紡糸を行うと繊維に変えられる状態の電界紡糸溶液Bをもたらした。加熱中、ボトルの外側で熱電対を用いたところ、80℃の測定値が観測された。
電界紡糸プロセス:60mLの使い捨てシリンジ(ニュージャージー州ラザーフォード(Rutherforsd)のベックトン−ディッキンソン(Beckton-Dickinson))と、シリンジポンプ(オリオンセージ(Orion Sage)M365、マサチューセッツ州べバリーのサーモエレクトロン社(Thermo Electron Corp.))に取り付けた丸いステンレススチールシリンジチップ(ロードアイランド州イーストプロビデンスのEDF)を用いて電界紡糸装置を作製した。中央に小さな穴(直径1.27mm)のあるアルミニウムパネル(0.6mm×76.2mm×127mm、オハイオ州クリーブランドのQ−パネル社(Q-Panel Co.))をシリンジチップを覆うように滑り込ませ、シリンジチップから約20mmの位置に配置した。接地高圧電源(CZE1000R、ニューヨーク州ハーパーグのスペルマンハイボルテージエレクトロニクス(Spellman High Voltage Electronics))をアルミニウムパネルの前でシリンジチップに接続した。
アルミニウムベーキングシート(長さ30.5cm×幅20.3cm×奥行き2.54cm、イリノイ州レークフォレストのパクティブ社(Pactiv Corp.))を接地面として用いた。両面テープを用いてガラススライド(任意に応じて、ITOでコーティングして約600オーム/スクエアの固有抵抗を付与したもの、ミシガン州ホランドのオペテラ社(Optera Inc.)から入手可能)をアルミニウムパンに取り付け、そのスライドがシリンジチップから20cmの位置に来るように配置した。シリンジポンプを所望の流速に設定するとともに、電源を20kVに設定した後、電源を作動させてポリマー繊維をガラススライド上に堆積させた。各スライドは別々に、特定の実験で定められている適切な時間で、作製した。
これらの条件(90秒間、流速10.2mL/時)を用いて電界紡糸溶液Aから作製したPCL繊維を走査電子顕微鏡(SEM)で検査したところ、大部分はサブミクロンである繊維と、直径が最大で10ミクロンである少量の繊維のランダムマットが見えた。図7に示されているように、繊維の一部には、ビードも存在している。
BHA/HEMA−IEM(ベヘニルアクリレート/HEMA−IEM付加化合物)ポリマーの作製
磁性攪拌器が備わっている250mKの丸底フラスコの中に、BHA(18g)、HEMA(2g)、バゾ(VAZO)67(0.06g)、トルエン(40g)及びエチルアセテート(40g)を加えた。窒素を用いて、約10分間、この20%固溶体を脱気し、密閉して、65℃の熱油浴に20時間浸漬させた。得られたポリマー溶液のアリコート50gを450mLのガラスジャーに加えた。ポリマー中の固形分%及び2−HEMA含有量に基づきヒドロキシル基のモル数を計算し、同等のモル数のIEMを、数滴のDBTDL触媒と合わせて加えた。得られた混合物を室温で12時間撹拌させた。IR分光法によって、イソシアネートが完全に消滅したことを確認した。
溶剤除去後、10mmのジルコニア媒体(トウソー(Tosoh)YTZ、日本、東京の東ソー株式会社)450gを用いて、得られた固体を000サイズの磁器内において100rpmで16時間、70gのイソプロパノール中でボールミル粉砕した。デカンテーションによって前記媒体を分離させて、無色の懸濁液を得た。25℃で回転蒸発させてから、4.7Pa(0.035トール)の真空に2時間、最後に30℃で0.13kPa未満(<1トール)の真空に18時間置くことによって溶媒を除去した。無色の微粉末(BHA/HEMA−IEMポリマーと呼ぶ)を得て、この粉末をさらなる改質なしに用いた。CAPA−700という粒径分析器(カリフォルニア州サニーベールのホリバ社(Horiba Corporation))を用いて粒径分析を行った。5分間の超音波処理(バイブラセル(VibraCell)、コネチカット州ダンベリーのソニックスアンドマテリアルズ社(Sonics and Materials, Inc.))によって、この粉末をイソプロパノール中で再懸濁した。この方法によって、d50(中央)粒径が4.1マイクロメートルであることがわかった。
BHA/HDDA(ベヘニルアクリレート/ヘキサンジオールジアクリレート)ポリマーの作製
磁性攪拌器が備わっているビーカーの中に、脱イオン水(540g)、ルドックス(Ludox)−TM50というコロイダルシリカ(20.7g)、プロモーター(Promoter)A(1.26g)及びHDDA(0.36g)を加えた。得られた混和物を攪拌して、約50〜65℃まで加熱した。熱のビーカーの中で、溶解するまで(約50℃)BHA(360g)を加熱した。前記水性混和物に溶解BHAをゆっくり加え、0.01NのHClを用いてpHを4〜5に調節した。続いて、この混和物を反応槽に移動させ、ホモジナイザーで十分に混和させて、モノマーの平均液滴粒径を1マイクロメートル未満まで縮小させた。反応開始剤のバゾ(VAZO)67(0.54g)を加え、反応槽を窒素で不活性化し、機械的撹拌機で混和物を撹拌し(約300rpm)、7〜8時間、65℃まで加熱した。室温まで冷却した後、ポリマー分散体をチーズクロスでろ過し、存在していると思われるすべての凝塊を除去してから、ろ紙に通して固体を分離させた。水でポリマーを洗浄し、空気乾燥させて、BHA/HDDA(重量比1000:1)と呼ばれる白い流通粉末(平均粒径10〜15マイクロメートル)を得た。
BHA/ODA(ベヘニルアクリレート/オクチルデシルアクリレート)ポリマーの作製
HDDAの代わりにODAをさまざまな重量比で用いる以外は、BHA/HDDAポリマーについて上述したとおりに、BHA/ODAポリマーを作製した。BHA/ODAポリマー(重量比90:10、70:30、及び、50:50)も、白い流通粉末(平均粒径10〜15マイクロメートル)として分離させた。
実施例1〜4及び比較例1
接着剤組成物中に分散しているポリカプロラクトン(PCL)
樹脂A、充填剤A及び熱可塑性接着剤トーン(TONE)P767(PCL)を表2に示した量で混ぜ合わせることによって、図1〜4を作製した。比較例1(CE−1)には、樹脂Aと充填剤Aは含まれているが、トーン(TONE)P767は含まれていない。接着剤が10%以上含まれている組成物は非常に粘度が高く、時間とともに粘度が上昇することがわかった。
Figure 2009520569
実施例5〜10及び比較例2
接着剤組成物
樹脂B、充填剤E及び熱可塑性接着剤のトーン(TONE)P767を図3に示した量で混ぜ合わせてから、スピードミキサー(Speed Mixer)(モデルDAC−150−FVZ、独国ハムのハウシルト社(Hauschild & Co)製、サウスカロライナ州ランドラムのフラックテック社(FlackTek, Inc.)供給)中で3000rpmで30秒間混和するのを4回繰り返すことによって、実施例5〜9を作製した。比較例2(CE−2)には、樹脂Bと充填剤Eは含まれているが、トーン(TONE)P767は含まれていない。
樹脂B、充填剤D及び熱可塑性接着剤のトーン(TONE)P767を図3に示した量で混ぜ合わせてから、スピードミキサー(Speed Mixer)(モデルDAC−150−FVZ)中で混和することによって、実施例10を作製した。モデル2500の歯科用ランプ(ミネソタ州セントポールの3M ESPE)を用いて、得られたペーストを20秒間光硬化させ、硬質ポリマー物質を得た。未硬化サンプルと硬化済みサンプルの双方について温度データを収集し、本明細書に記載の溶解温度(T)試験法によって、溶解温度(T)がそれぞれ61.96℃と64.09℃であることがわかった。
Figure 2009520569
(実施例11)
プライマー組成物
乳鉢と乳棒を用いて熱可塑性接着剤のトーン(TONE)P767を細かく粉砕し、得られた微粉(40重量%)を市販のトランスボンドプラスセルフエッチングプライマー(TRANSBOND PLUS Self Etching Primer)(3Mユニテック(3M Unitek))に加えることによって、実施例11を作製した。
(実施例12〜15及び)
比較例3(CE−3)のプライマー組成物
熱可塑性接着剤のトーン(TONE)P767を市販製品のシングルボンド(SINGLE BOND)/トランスボンドMIPモイスチャーインセンシティブプライマー(TRANSBOND MIP Moisture Insensitive Primer)(3Mユニテック(3M Unitek))に加えることによって、実施例12〜15を作製した。前記接着剤は、前記プライマーに0重量%(比較例3)、5重量%(実施例12)、10重量%(実施例13)、15重量%(実施例14)及び20重量%(実施例15)の割合で加えた。
(実施例16)
接着剤組成物
トーン(TONE)P767(30.5%)を充填剤D(29.7%)と樹脂B(39.8%)と混和させることによって、実施例16を作製した。加熱、液体窒素中での急冷を行ってから再加熱した実施例16の光硬化(3M ESPE製のモデル2500歯科用ハロゲンランプで20秒間)済みサンプルについて温度データを収集した。2つの溶解温度(T)が観察され(54.24℃及び57.70℃)、この結果は、2つの結晶群の形成に起因する可能性が最も高い。再加熱と冷却によって、完全に可逆的な挙動をもたらした。
実施例1〜9及び12〜15の接着強度の評価
(試験面からのブラケットの剥離)
本明細書に記載のガラス上剪断接着強度試験法Aを(ビクトリー(VICTORY)シリーズの金属ブラケットとモデル5560の歯科用ランプによる光硬化とともに)用いて、実施例12〜15(トーン(TONE)767がさまざまな割合で含まれているシングルボンド(SINGLE BOND)/トランスボンドMIPモイスチャーインセンシティブプライマー(TRANSBOND MIP Moisture Insensitive Primer))の剪断接着強度を評価した。サンプルを従来型オーブン内に置くことによって、加熱を行った。得られた結果を、接着剤の含まれていないプライマーの比較例(対照)と比較した。25℃、70℃及び125℃での結果(いずれも24時間)が表4に示されており、一般に、温度が高いほど及び熱可塑性接着剤の濃度が高いほど、剥離が容易になる(すなわち接着強度が低くなる)ことがわかった。25℃の最低温度でのサンプルでは、接着剤の濃度を高めても接着強度効果が小さいか、全くないことがわかった。
Figure 2009520569
本明細書に記載の歯上剪断接着強度試験法Aを(セラミックブラケットのトランセンド(TRANSCEND)6000(3Mユニテック(3M Unitek)とともに)用いて、実施例1〜4(樹脂A、さまざまな濃度の充填剤及びトーン(TONE)P767が含まれている接着剤組成物)のウシの歯上における剪断接着強度を評価した。各接着剤組成物では、各組成物中の総固形分が同じになるように、トーン(Tone)P747を対応するwt%の充填剤Aに置き換えた。得られた結果を比較例1(樹脂Aと充填剤Aのみ)と比較した。37℃で24時間、37℃で24時間の後に75℃で2時間の場合の結果が表5に示されており、一般に、温度が高いほど及び熱可塑性接着剤の濃度が高いほど、剥離が容易になる(すなわち接着強度が低くなる)ことがわかった。37℃の最低温度でのサンプルでは、10%以上の接着剤濃度で接着強度が大きく低下することがわかった。
Figure 2009520569
本明細書に記載の歯上剪断接着強度試験法A(3Mユニテック(3M Unitek)のクラリティ(CLARITY)ブラケット用いるとともに、トーン(TONE)P747が40重量%充填されているトランスボンドプラスSEP(TRANSBOND PLUS SEP)を歯に適用した)を用いて、実施例6〜9(樹脂B、さまざまな濃度の充填剤E及びトーン(TONE)P767が含まれている接着剤組成物)のウシの歯上における剪断接着強度を評価した。各接着剤組成物では、各組成物中の総固形分が同じになるように、トーン(Tone)P767を対応するwt%の充填剤Eに置き換えた。得られた結果を比較例2(樹脂Bと充填剤Eのみ)と比較した。37℃で24時間、37℃で24時間の後に75℃で2時間の場合の結果が表6に示されており、一般に、温度が高いほど及び熱可塑性接着剤の濃度が高いほど、剥離が容易になる(すなわち接着強度が低くなる)ことがわかった。37℃の最低温度でのサンプルでは、5%以上の接着剤濃度で接着強度が大きく低下することがわかった。
Figure 2009520569
本明細書に記載の歯上剪断接着強度試験法Aを(3Mユニテック(3M Unitek)のクラリティ(CLARITY)ブラケットとともに)用いて、実施例5〜6(樹脂B、さまざまな濃度の充填剤E及びトーン(TONE)P767が含まれている接着剤組成物)のウシの歯上における剪断接着強度を評価した。各接着剤組成物では、各組成物中の総固形分が同じになるように、トーン(Tone)P747を対応するwt%の充填剤Eに置き換えた。得られた結果を比較例2(樹脂Bと充填剤Eのみ)と比較した。実施例5〜6のこの評価作業では、ウシの歯を実施例11(トーン(TONE)P747が40重量%充填されているトランスボンドプラスセルフエッチングプライマー(TRANSBOND PLUS Self-Etching Primer))で事前処理した。37℃で24時間、37℃で24時間の後に75℃で2分又は75℃で2時間の場合の結果が表7に示されており、熱可塑性接着剤を加えると、剥離が容易になる(すなわち接着強度が低くなる)が、2.5%〜5.0%というわずかな濃度効果しか得られなかったことがわかった。時間照射を2時間から2分に短縮させた場合に、効果が一番小さかった。
Figure 2009520569
(実施例17)
HEMA中に分散しているインジウムスズオキシド(ITO)
HEMA(70.0g)、分散剤EFKA4400(0.5g)及びITOのNANOTEK0600(10.0g)を混ぜ合わせて、サイズ000の磁器ジャー中で、粉砕媒体のトウソー(Tosoh)5−mm YTZ(450g)を用いて72時間、100rpmでボールミル粉砕することによって、ITOのHEMA中分散体を作製した。得られた黄色の分散体(実施例17)の粒径分析によって、ITOの平均粒径が160nmであることがわかった。
(実施例18)
接着樹脂中に分散しているインジウムスズオキシド(ITO)
樹脂B(97重量%)とTRB SH 7080(3重量%)を混ぜ合わせて、1.2重量%の有効濃度のITOが含まれている分散体(実施例18)をもたらすことによって、ITOの接着樹脂中分散体を作製した。モデル2500の歯科用青色ランプ(3M社(3M Company))で硬化させたところ(直径1cmのディスクとして)、紫色の単量分散体が緑色の透明ポリマーに変化した。
(実施例19)
接着樹脂中に分散しているITO
樹脂B(78.3重量%)とITO−HEMA(実施例1、21.7重量%)を混ぜ合わせて、2.7重量%の有効濃度のITOが含まれている分散体(実施例19)をもたらすことによって、ITOの接着樹脂中分散体を作製した。モデル2500の歯科用青色ランプ(3M社(3M Company))で硬化させたところ(直径1cmのディスクとして)、単量分散体が黄色の不透明ポリマーに変化した。
(実施例20)
接着樹脂中に分散しているポリカプロラクトン(PCL)
樹脂B(95.3重量T)とトーン(TONE)P767(4.7重量%)を混ぜ合わせて、4×30秒間、3000rpmで動作しているスピードミキサー(Speed Mixer)(DAC−150−FYZ)中で混和させることによって、PCLの接着樹脂中分散体(実施例20)を作製した。
(実施例21)
接着樹脂中に分散しているPCL及びITO
樹脂B(92.1重量%)、トーン(TONE)P767(5.0重量%)及びTRB SH 7080(2.9重量%)を混ぜ合わせて、4×30秒間、3060rpmで動作しているスピードミキサー(Speed Mixer)(DAC−150−FYZ)中で混和させて、1.2重量%の有効濃度のITOが含まれている分散体(実施例21)をもたらすことによって、PCL及びITOの接着樹脂中分散体を作製した。
(実施例22)
接着合成物中に分散しているITO
歯科矯正用接着剤のAPCプラス(APC PLUS)(97.5重量%)とTRB SH 7080(2.5重量%)を混ぜ合わせて、4×30秒間、3000rpmで動作しているスピードミキサー(Speed Mixer)(DAC−150−FYZ)中で混和させて、1.0重量%の有効濃度のITOが含まれている分散体(実施例22)をもたらすことによって、ITOの充填接着剤中分散体を作製した。
(実施例23)
接着合成物中に分散しているPCL及びITO
歯科矯正用接着剤のAPCプラス(APC PLUS)(95.0重量%)、トーン(TONE)P767(2.5重量%)及びTRB SH 7080(2.5重量%)を混ぜ合わせて、4×30秒間、3000rpmで動作しているスピードミキサー(Speed Mixer)(DAC−150−FYZ)中で混和させて、1.0重量%の有効濃度のITOが含まれている分散体(実施例23)をもたらすことによって、PCL及びITOの充填接着剤中分散体を作製した。
(実施例24)
接着剤とITOの連続層が備わっているブラケット
評価Dの部分に記載されているように、クラリティ(CLARITY)ブラケット(3Mユニテック(3M Unitek))をシラン処理し、歯科矯正用接着剤のAPCプラス(APC PLUS)(3Mユニテック(3M Unitek))でコーティングした。続いて、この被覆ブラケットの露出接着端部をTRB SH 7080のペーストの中に押し付け、ITO含有物質の層をもたらした。「押し付ける」とは、ブラケットを低粘度ぺーストの中に浸して、接着剤被覆ブラケットの外面上に前記ペーストの薄層を生成させることを意味する。被覆層を上に向けた状態で被覆ブラケットを保管し、即座に接着強度を評価した。
(実施例25)
接着剤、PCL及びITOの連続層が備わっているブラケット
評価Dの部分に記載されているように、クラリティ(CLARITY)ブラケット(3Mユニテック(3M Unitek))をシラン処理し、歯科矯正用接着剤のAPCプラス(APC PLUS)(3Mユニテック(3M Unitek))でコーティングした。続いて、この被覆ブラケットの露出接着端部をトーン(TONE)P76の粉末、TRB SH 7080のペーストの中に順次押し付け(一般には実施例24に記載のとおりに行う)、PCL含有物質とITO含有物質の連続層をもたらした。PCL及びITO層は、APCプラス(APC PLUS)の接着層よりも薄くなるように設計して、ブラケットと接着剤の境界面から離れた位置、かつ、歯の近くでの破壊を制御して、さらに浄化しやすくするようにした。
評価A
ITO含有硬化済み接着剤組成物(実施例18及び19)のサーモグラフィー分析
実施例18及び19の硬化済みディスクサンプル(ITOの接着樹脂中分散体)と、追加成分のない樹脂Bの硬化済みサンプル(対照)を、75W QTHホワイトライトガン(リテマアストラルデンタルライト(Litema Astral Dental Light)ガン)をIR反射フィルターを取り除いた状態で用いて照射した。前記ライトガンは、硬化済みディスクの頂部から5.5mmの位置に保持し、熱探知カメラ(TVS−8502、日本のアビオ(Avio))はディスクから約30cmの位置に保持した。約5秒ごとに画像を記録し、時間に対して見掛け温度をプロットした。硬化済みディスクサンプルの最高温度の測定値はいずれも250℃だったのに対し、対照である樹脂Bの最高温度の測定値は約50℃であった。3つのすべてのサンプルの最高温度には10〜15秒で到達した。したがって、ITOが含まれている硬化済み歯科用接着剤は、NIR放射線によって即座に高温まで加熱できることが立証された。
評価B
セラミックブラケット上のITO含有硬化済み接着剤組成物(実施例18)のサーモグラフィー分析
実施例18(ITOの樹脂B中分散体)のサンプルと、追加成分のない樹脂Bのサンプル(対照)を用いて、歯科矯正用ブラケットを以下の手順に従ってガラススライドに付着させた。
ウィンドウガラススライド(厚み3mm×幅2.5cm×長さ10cm)を使用直前にメタノールで消毒した。約10mgの接着剤試験サンプルを消毒済みスライドの非蛍光側面の上に1滴配置した。セラミックブラケットのトランセンド(TRANSCEND)6000(カリフォルニア州モンロビアの3Mユニテック(3M Unitek))を接着剤調合物の液滴の中に配置し、中圧Hgスポット硬化ランプ(100W、スーパースポットマックス(uper Spot Max)、カリフォルニア州トランスののレスコ(Lesco))を用いて50秒間、ガラススライドを通じて照射することによって接着を行った。
接着直後、ロードセルのインストロンモデル(Instron Model)2511−111 500Nに取り付けられている万能試験機インストロン(Instron)R5500を用いて、双方のブラケットをガラススライドから剪断させた。ブラケットを回収し、ブラケットの角部周辺にある余分な接着剤を慎重に削り落とし、ブラケットのベース部分の硬化済み接着剤のみを残した。続いて、ブラケット/硬化済み接着剤に、以下のようにNIR放射線を照射した。
アルミホイルに覆われている白いカードペーパーフレーム内にブラケットを保持した(前記カードペーパーフレームの片側のブラケットの頂部から1mm離れた位置に75W QTHリテマアストラルデンタルライト(Litema Astral Dental Light)ガン(IR反射フィルターは除去してある)を保持させた)。ブラケットのベースから約7.5cmの位置に、ライトガンからの不慮の直接放射線を回避するために垂直位置から離れた角度で、アビオ(Avio)の熱探知カメラ(クロースフォーカスレンズが備わっているTVS−8502)を保持させた。サンプルの放射率が単一と仮定すると、記録温度は見掛け温度であった。ライトガンを作動させた後、ブラケットのベースにある接着剤の温度上昇をモニタリングした。約5秒ごとに画像を記録した。ブラケットベースの接着剤の温度を時間に対してプロットし、実施例18の硬化済み接着剤(ITO含有)は20秒後に約140℃に到達したのに対し、対照の接着剤(ITOなし)は20秒後に約60℃にしか到達しなかったことがわかった。
これらのデータは、硬化済み接着剤をブラケットを通じて、ITOの存在下で半結晶性ポリマー(PCLなど)のTまで即座に加熱可能であることを示している。この局所加熱によって、半結晶性ポリマーのTよりもわずかに高い温度で、溶解及びそれに続く剥離が起こることになる。さらには、ITOの吸収スペクトルに調整されていないQTH源を用いるということは、NIR受容体の吸収に合わせて調整した他のエネルギー源(NIR LED又はレーザーダイオードなど)を用いることができる可能性があることを示している。
評価C
PCL及びPCL/ITO含有硬化済み接着剤組成物(実施例20及び21)の接着強度評価
(ガラス表面からのブラケットの剥離)
実施例20(PCLの樹脂B中分散体)と実施例21(PCL及びITOの樹脂B中分散体)のサンプルを用いて、評価Bの部分に記載されているように、歯科矯正用ブラケットをガラススライドに付着させた。各接着剤で10個のブラケットを付着させた。
本明細書に記載のガラス上剪断接着強度試験法Bを用いて剪断接着強度を割り出し、75W QTHリテマアストラルデンタルライト(Litema Astral Dental Light)(ダイクロイック(dichromic)ミラーは除去してある)による照射も行った。得られた結果は表8に示されており、一般に、NIR吸収体であるITOの存在によって、剥離が容易になる(すなわち接着強度が低下する)ことがわかった。20秒間NIR放射線を照射したサンプルの推定温度は、実施例20では<60℃、実施例21では>100℃であった。
Figure 2009520569
新たな硬化済み接着剤サンプル1式を用いて上記の評価を繰り返し、接着時の劣化作用を割り出した。上記のように剥離させる前に、ガラスに付着させたブラケットを室温で2.5日間、室内照明下で保持させた。得られた結果は表9に示されており、NIR吸収体であるITOの存在によって、剥離が容易になる(すなわち接着強度が低下する)ことが再びわかった。これらのデータによって、上の評価方法よりも差異が大きいが、平均値は同等であることがわかった。ITOを含有させなかったサンプルとは異なり、ITO含有サンプルの接着強度が低いのは、ブラケットを通じたNIR照射の結果、温度がはるかに高くなるためである。
Figure 2009520569
評価D
ITO及びPCL/ITO含有硬化済み接着剤組成物(実施例22及び23)の接着強度評価
(ウシの歯の表面からのクラリティ(CLARITY)ブラケットの剥離)
実施例22(ITOのAPCプラス(APC PLUS)接着剤中分散体)、実施例23(PCL及びITOのAPCプラス(APC PLUS)接着剤中分散体)及び、無添加のAPCプラス(APC PLUS)(対照)のサンプルを用いて、歯科矯正用ブラケットをウシの歯に付着させた。各接着剤で5つのブラケットを付着させた。
ウシの歯に付着させたシラン処理済みクラリティ(CLARITY)ブラケットを用いた剪断接着強度は、本明細書に記載の歯上剪断接着強度試験法Bを用いて割り出し、オーソラックス(ORTHOLUX)XTという光源(3Mユニテック(3M Unitek)をダイクロイック(dichromic)ミラーを取り除いた状態で用いてNIR放射線照射も行った。これに加えて、放射線照射を省く点以外は同じ試験方法によって、実施例22、実施例23及び対照サンプルの接着強度を室温前後で試験した。得られた結果は表10に示されており、NIR吸収体であるITOの存在によって接着強度が低下する傾向と、さらにPCLが存在することによって接着強度が低下するさらなる傾向がわかった。
Figure 2009520569
評価E
ITO又はPCL/ITO層含有硬化済み接着剤組成物(実施例24及び25)の接着強度評価
(ウシの歯の表面からのクラリティ(CLARITY)ブラケットの剥離)
評価D(及び歯上剪断接着強度試験法B)の部分に記載されているように、シラン処理済みのAPCプラス(APC PLUS)接着剤被覆クラリティ(CLARITY)ブラケットを作製してから、TRB SH 7080のペーストの中に押し付けて(実施例24)ITOの層を形成させるか、又は、トーン(TONE)P767の粉末の後にTRB SH 7080のペーストの中に押し付けて(実施例25)PCL及びITOの層を形成させた。得られた層状ブラケットを37℃で24時間置いてから、評価D(及び歯上剪断接着強度試験法B)の部分に記載されているように剥離させた。PCLによる層化は困難であることがわかり(粒径が比較的大きいためと思われる)、その結果、PCL層付きサンプルの一部は接着プロセス中に機能しなくなった点に留意されたい。
得られた結果は図11に示されており、ITO及び/又はPCL物質で層化させることによって、境界面で選択的機能不全を引き起こす可能性のあることがわかった。余分な熱質量の発生を避けるという観点から、境界面にITOのみを存在させるのが有益であろう。
Figure 2009520569
(実施例26)
接着合成物中に分散しているPCL
歯科矯正用接着剤のAPCプラス(APC PLUS)(95.0重量%)とトーン(TONE)P767(5.0重量%)を混ぜ合わせて、4×30秒間、3000rpmで動作しているスピードミキサー(Speed Mixer)(DAC−150−FYZ)中で混和させることによって、PCLの充填接着剤中分散体を作製した。得られた接着性物質を実施例26とした。
(実施例27)
接着合成物中に分散しているPCL
歯科矯正用接着剤のトランスボンド(TRANSBOND)XT(97.5重量%)とトーン(TONE)P767(2.5重量%)を混ぜ合わせて、4×30秒間、3000rpmで動作しているスピードミキサー(Speed Mixer)(DAC−150−FYZ)中で混和させることによって、PCLの充填接着剤中分散体を作製した。得られた接着性物質を実施例27とした。
評価E
PCL含有硬化済み接着剤組成物(実施例26及び27)の接着強度評価
(ウシの歯の表面からのクラリティ(CLARITY)ブラケットの剥離)
実施例26(歯科用接着剤APCプラス(APC PLUS)中に50重量%含まれているPCL)、実施例27(歯科矯正用接着剤のトランスボンド(TRANSBOND)XT中に2.5重量%含まれているPCL)及び無添加の対応する接着剤(「C」という記号が付されている対照)のサンプルを、シラン処理済み(0.5%シラン)のクラリティ(CLARITY)ブラケットに適用し、続いて、ブラケットを標準的な歯科矯正用接着剤APCプラス(APC PLUS)またはAPC II(3Mユニテック(3M Unitek)で歯に付着させた。実施例26と27の接着剤物質は、接着剤をブラケットベースの形に成形することによってブラケットに適用し、合成物被覆ベースを形成させた。歯科矯正用接着剤のAPCプラス(APC PLUS)またはAPC IIを用いて合成物被覆ブラケットを歯の表面に接着する以外は、本明細書に記載の歯上剪断接着強度試験法Cを用いて、剪断接着強度を割り出した。得られたアセンブリを75℃の水浴で1分、又は、80℃で5分間加熱してから、熱損失を防ぐために可能な限り早く剥離させた。
得られた結果(4〜5個の複製物の平均)は図12に示されており、PCLが2.5〜5.0重量%含まれている接着剤合成物をプレコーティングするとともに剥離中に5分間80℃まで加熱したブラケットを用いることによって、接着強度が大きく低下することがわかった。
Figure 2009520569
(実施例28A及び28B)
接着剤被覆ブラケット上に層化させたPCL
セラミックブラケットを任意に応じてシラン処理し、歯科矯正用接着剤でコーティングし、シラン湿潤剤で覆い、接着剤の外面にPCL粒子の層が備わっているPCL粉末に浸して、接着剤被覆ブラケットを形成させた。PCL粒子層によって、接着剤と歯の表面の間に、潜在的な弱体化(例えば加熱すると弱体化する)境界面をもたらして、ブラケットを剥離しやすくする(すなわち、ブラケットを取り外すための力を小さくする)か、及び/又は、ブラケット後に接着剤を浄化しやすくする効果をもたらす。このようなブラケットを作製することの詳細は、以下に示す。
スコッチプライム(SCOTCHPRIME)(3M社(3M Company))を2.9:1の割合のエタノールとDI水で希釈することによって作製した1杯の0.5%シラン溶液中にクラリティ(CLARITY)セラミックブラケット(商品番号6400−601、3Mユニテック(3M Unitek)を浸漬させることによってシラン処理した。続いて、シラン処理済みのセラミックブラケットを空気乾燥させてから、600℃で1時間熱分解させた。ブラケットを室温まで冷却した後、0.5%シラン溶液の第2の層を第1の層の上にコーティングし、空気乾燥させてから、100℃で1時間焼いた。別のクラリティ(CLARITY)セラミックブラケット10個はシラン処理しなかった。20個のブラケットすべてに、歯科矯正用接着剤APCプラス(APC PLUS)(3M社(3M Company)を手でコーティングしてから、10個のブラケット(シラン処理済みの5個と、シラン処理していない5個)を、ニートシラン(GF31)の溶液に浸した(ニートシランは、次にPCL粒子を追加する際に「湿潤」剤として機能する)。続いて、この作製物を、トーン(TONE)767(PCL)の粉末が含まれている混和パッドの中に軽く押し付けた。したがって、得られた接着面にはPCL粒子の均一層を搭載し、余分な粉末を2〜3秒間空気を当てて飛ばした。PCL層が備わっているシラン処理済み接着剤被覆ブラケットは実施例28A、PCL層が備わっている未処理の接着剤被覆ブラケットは実施例28Bとした。PCL層が備わっていないシラン処理済み及び未処理のブラケットは対照サンプルとした。
(実施例29A及び29B)
接着剤被覆ブラケット上に層化させたPCL
セラミックブラケットを任意に応じてシラン処理し、歯科矯正用接着剤でコーティングし、湿潤剤としてのトランスボンド(TRANSBOND)XTプライマー(TB XT)(3Mユニテック(3M Unitek)で覆い、PCL粉末に浸して、接着剤の外面にPCL粒子の層が備わっている接着剤被覆ブラケットを形成させた。このようなブラケットを作製する詳細は、湿潤剤としてGF−31の代わりにTB XTを用いる点以外は、実施例28A及び28Bの部分で記載した方法と同じである。PCL層が備わっているこのシラン処理済み接着剤被覆ブラケットは実施例29A、PCL層が備わっている未処理の接着剤被覆ブラケットは実施例29Bとした。PCL層が備わっていないシラン処理済み及び未処理のブラケットは対照サンプルとした。
評価F
PCL粒子の外層が備わっている硬化済み接着剤組成物(実施例28A〜B及び29A〜B)の接着強度評価
(ウシの歯の表面からのクラリティ(CLARITY)ブラケットの剥離)
歯科矯正装具アセンブリの実施例28A〜B及び29A〜B、並びに、PCL層が備わっていない対応するアセンブリ(「C」という記号が付された対照)をウシの歯に付着させ、本明細書に記載の歯上剪断接着強度試験法Cに従って剪断接着強度を割り出した。試験の際には、任意に応じてアセンブリを75℃の水浴で1分間加熱してから、熱損失を回避するために可能な限り早く剥離させた。
得られた結果(5つの複製物の平均)は表13に示されており、接着剤の外面にPCL粒子層が備わっている歯科矯正用接着剤をコーティングして剥離直前に75℃まで1分間加熱したブラケットを用いることによって、接着強度が低下することがわかった。
表13には、接着剤残留指数(ARI)のデータも含まれている。ARIは、剥離後にブラケットの接着ベース上に残っている接着剤の量を視覚的に示すために、歯科矯正分野において用いられている用語である。0〜3の尺度のち、「3」は、剥離後に、ブラケットの接着ベース上に0〜25%の接着剤が残っているか、歯の上に75〜100%の接着剤が残っていることを指し、ブラケットと接着剤の間に破壊が発生したことを意味する。「2」は、ブラケットの接着ベース上に25〜50%の接着剤が残っているか、歯の上に50〜75%の接着剤が残っていることを指す。「1」は、接着ベースの50〜75%が接着剤で覆われているか、歯の上に接着剤の25〜50%が残っていることを指し、「0」は、接着ベースの75〜100%が接着剤で覆われているか、歯の上に接着剤の0〜25%が残っていることを指す。0に近いARI値は、浄化しやすい方を好む患者に用いられる。0〜3の間の数字、例えば1.5は、接着剤内での凝集破壊を指す。
Figure 2009520569
(実施例30A及び30B)
セルフエッチング接着剤中に分散しているPCL
クラリティ(CLARITY)セラミックブラケット(参照番号6400−601、3Mユニテック(3M Unitek))及び同様だがグリット又はガラス層のないブラケットを実施例28A〜Bの部分に記載されているようにシラン処理してから、任意に応じてトーン(TONE)P767(PCL)を含有させたセルフエッチング歯科矯正用接着剤(接着剤A)を約10mgコーティングして、以下の対照と実施例の試験装具をもたらした。
対照A:クラリティ(CLARITY)ブラケットに接着剤Aをコーティングした。
実施例30A:クラリティ(CLARITY)ブラケットに接着剤A(PCLを2.5重量%含有させたもの)をコーティングした。
実施例30B:セラミックブラケット(グリット又はガラスが含まれていないもの)に接着剤TB XTを以下のようにプレコーティングした。XTシリンジを用いて、接着剤TB XTの薄層をブラケットベースに適用してから、接着剤を混合パッドに対して押し出し、ベース上に新たな接着剤の滑らかな薄層をもたらし、余分な接着剤を取り除き、オーソラックス(ORTHOLUX)LEDで5秒間、接着剤を硬化させた。続いて、接着剤A(PCLを2.5重量%含有させたもの)を、滑らかな硬化済み有機接着ベースを備えるセラミックブラケットの上にコーティングした。
(実施例31)
セルフエッチング接着剤中に分散しているPCL
クラリティ(CLARITY)セラミックブラケット(参照番号6400−601、3Mユニテック(3M Unitek))及び同様だがグリット又はガラス層のないブラケットを実施例28A〜Bに記載されているようにシラン処理してから、歯科矯正用接着剤TB XT、又は、任意に応じてトーン(TONE)P767(PCL)を含有させたセルフエッチング歯科矯正用接着剤(接着剤B)を約10mgコーティングして、以下の対照と実施例の試験装具アセンブリをもたらした。
対照B:未処理のクラリティ(CLARITY)ブラケットに接着剤TB XTをコーティングした。
対照C:未処理のクラリティ(CLARITY)ブラケットに接着剤Bをコーティングした。
対照D:シラン処理済みのクラリティ(CLARITY)ブラケットに接着剤Bをコーティングした。
対照E:シラン処理済みのセラミックブラケット(グリット又はガラスが含まれていないもの)に接着剤Bをコーティングした。
対照F:シラン処理済みのセラミックブラケット(グリット又はガラスが含まれていないもの)に、接着剤TB XTを以下のようにプレコーティングした。XTシリンジを用いて、接着剤TB XTの薄層をブラケットベースに適用してから、接着剤を混和パッドに対して押し出し、セラミックブラケット上に有機層の滑らかな薄層をもたらし、余分な接着剤を取り除き、オーソラックス(ORTHOLUX)LEDで5秒間、接着剤を硬化させた。続いて、(クラリティ(CLARITY)ブラケットの標準規格であるガラス/グリット付き接着ベースとは対照的に)滑らかな硬化済み有機接着ベースを備えるセラミックブラケットの上に接着剤Bをコーティングした。この目的は、有機接着ベースとPCL含有セルフエッチング接着剤との接着性の向上をもたらして、剥離時に、好ましくは接着剤と歯の境界面が接着剤と接着ベースの境界面の上で破壊されるようにして、歯の上での接着性を低下させて浄化しやすくすることである。
実施例31:シラン処理済みのセラミックブラケット(グリット又はガラスが含まれていないもの)に、対照Fの部分に記載されているように接着剤TB XTをプレコーティングした。続いて、滑らかな硬化済み有機接着ベースを備えるセラミックブラケットの上に接着剤B(PCLを2.5重量%含有させたもの)をコーティングした。
評価G
組成物中に分散しているPCL粒子が備わっている硬化済みセルフエッチング接着剤組成物の接着強度評価(実施例30A〜B及び31)
(ウシの歯の表面からのクラリティ(CLARITY)ブラケットの剥離)
歯科矯正装具アセンブリの実施例30A〜B及び31、並びに、対応する対照A〜Fをウシの歯に付着させ、セルフエッチングプライマーのトランスボンドプラス(TRANSBOND PLUS)SEPでウシの歯を事前処理しない点以外は、本明細書に記載の歯上剪断接着強度試験法Cに従って剪断接着強度を割り出した。得られたアセンブリを任意に応じて75℃の水浴で1分加熱してから、熱損失を防ぐために可能な限り早く剥離させた。
得られた結果(5つの複製物の平均)は表14に示されており、分散PCL粒子が含まれているセルフエッチング歯科矯正用接着剤をコーティングして剥離直前に75℃まで1分間加熱したブラケットを用いることによって、接着強度が低下することがわかった。
Figure 2009520569
実施例32及び比較例4(CE−4)
硬化済み接着剤の上に層化させたPCL繊維
接着剤(樹脂C、HEMA89.6重量%、ビスGMA9.5重量%及びイルガキュア(IRGACURE)819 0.9T)を1滴(約10mg)を、PCL繊維の堆積物が備わっているか又は備わっていない2つのITO被覆ガラススライド(固有抵抗約600オーム/スクエア、ミシガン州ホランドのオペテラ社(Optera Inc.)から入手可能)の各々の上に配置した。(出発物質の作製の部分を参照。)接着剤はビードとして、PCL繊維のないスライドの表面上に残っていたが、堆積PCL繊維で即座にスライドを濡らした。いずれのケースでも、上記の1滴に接着剤をもう1滴加えてから、歯科矯正用ブラケット(トランセンド(TRANSCEND)6000、3Mユニテック(3M Unitek))を各スライド上の接着剤の液滴に配置した。この手順によって、PCL繊維をかなり湿潤させた。
ブラケットから39mmの位置に保持させた100W Hg−Xe光ファイバー光源スーパースポットマックス(Super Spot Max)((カリフォルニア州トランスのレスコ(Lesco))で30秒間照射することによって、ブラケットを硬化させて、スライドに付着させた。得られたブラケットアセンブリは実施例32(PCL繊維が含まれているもの)及び比較例4(CE−4)(PCL船繊維が含まれていないもの)とした。
実施例33及び比較例5(CE−5)
硬化済み接着剤の上に層化させたPCL繊維
接着剤がPCL表面に散在する時間がないように、すなわち、接着剤のさらなる液滴を必要としたり使用したりしないように、樹脂Cを最初に滴下してからすぐにブラケットを配置する点以外は、実施例31及びCE−4の部分に記載されているように、実施例33(PCL繊維が含まれている)と比較例5(CE−5)(PCL繊維が含まれていない)を作製した。実施例32の部分に記載されているようにブラケットを硬化させて、スライドに付着させた。
評価H
PCL繊維上に層化させた硬化済み接着剤組成物(実施例32及び33)の接着強度評価
(ブラケット(トランセンド(TRANSCEND)6000)のITO処理済みガラス表面からの剥離)
100gのおもりをブラケットからぶら下げ、全力で動作している250ワットのIRランプ(ゼネラルエレクトリック(General Electric))でガラススライドの背部を同時に加熱した。破壊までの時間と破壊時の温度を記録した。破壊モードもすべてのブラケットについて記録した。ランプからガラススライドの背部までの距離は5cmだった。得られたデータ(紡糸時間(ガラススライド上のPCL繊維の量を示している)、550nmにおける透過率(%)(HP UV−JVis ChemStationというソフトウェアが作動しているPCとインターフェースさせた分光測光器のヒューレットパッカード(Hewlett Packard)8452A上で測定)、破壊時間、破壊時の温度、破壊モードなど)は表15に示されている。
Figure 2009520569
ブラケットの加熱時に、PCLの可視溶解が明らかであった。PCLは溶解時に、濁った白色から透明に変わったように見えた。ブラケットの破壊は、クリープの可視的兆候なしに突然起こることが観察された。表15に示されている破壊時の温度は、ブラケット上の近くで(ランプに近い方で)測定したこと及びPCLとブラケットの境界面の温度を示しているとは言えないことを指摘しておかなければならない。
実施例32の結果によって、PCLの存在下では予測どおり接着性の低下が明らかである一方で、グラススライド上のPCL繊維濃度を向上させても、破壊までの時間が革新的に短縮することを示す明確なパターンは存在していない。また、データには大きな差異はない。
実施例33(余分な接着剤の利用を回避したもの)の結果から差異が小さいことがわかるとともに、PCL層の溶解時に一貫したパターンで接着性が低下していることが示されている。PCL(トーン(TONE)P767)の溶解点は、物質の熱履歴に応じて57℃〜64℃辺りになることから、破壊時の測定温度は妥当であると思われる。
実施例33のデータは、境界面に熱可塑性物質の繊維(好ましくはナノ繊維)を配置したことによる剥離の概念と一致している。表15から、剥離時間に影響を及ぼすには、PCL繊維の非常に薄い層(例えば実施例33/実行番号12〜13、「5秒」の紡糸時間を参照)でも十分であるように思われる。これらの結果から、接着境界面内のわずかな修正でも、確実かつ効率的な剥離を引き起こせることがうかがえる。歯と接着剤の境界面で熱可塑性物質(例えばPCL繊維)を用いると、要請に応じて、加熱による剥離が可能になるはずである。
実施例34A〜B及び比較例6
ITOナノ粒子が含まれているとともに硬化済み接着剤上に層化されているPCL繊維
ガラスバイアル瓶内に、電界紡糸溶液A(MEK中にトーン(TONE)P767が20%含まれている)のサンプル(10.0g)とTRB SH 7080(0.30g)を配置した。この混合物を木製スティックを使って手で攪拌し、濁った青色の溶液をもたらし、その溶液を60mLの使い捨てシリンジに移して電界紡糸を行った。電界紡糸は、流速を10.2mL/時に設定して、出発物質の作製の部分に記載されているように行った。透過測定を用いて、ガラススライド上の繊維の密度を監視し、ITO粒子が含まれていないものと同じ密度を得られるよう促した。上記の条件を用いて作製した繊維の走査電子顕微鏡検査から、大部分はサブミクロンである繊維と、直径が最大で10ミクロンである少量の繊維のランダムマットがわかる。図8a〜bの顕微鏡写真に示されているように、一部の繊維の上には大きなビードも存在している。ITOが含まれているPCL繊維マットは、実施例34Aとした。対応するPCL(ITOが含まれていない)繊維マットも作製した。
PCL/ITO繊維マット(実施例34A)又はPCLのみの繊維マットが置かれている2つのガラスの各々の上に接着剤(樹脂D、出発物質の作製の部分を参照)を1滴(約10mg)配置した。その後すぐに、各ガラススライド上の各接着剤液滴の上に、歯科矯正用ブラケット(トランセンド(TRANSCEND)6000、3Mユニテック(3M Unitek))を配置した。光ファイバーチップがブラケット上に軽く触れるように配置したキュアリングライト(Curing Light)2500(3M ESPE)で20秒間照射することによって、ブラケットを即座に硬化させ、スライドに付着させた。得られたブラケットアセンブリは実施例34B(PCL/ITO繊維が含まれているもの)及び比較例6(CE−6)(PCLのみの繊維が含まれているもの)とした。
実施例35A〜B及び比較例7
ITOナノ粒子が含まれているとともに硬化済み接着剤上に層化されているPPC繊維
ガラスバイアル瓶内に、電界紡糸溶液B(MEK中にQPAC−40が20%、10g含まれている)のサンプル(10g)、TRB SH 7080(0.60g)及びDBU(0.09g)を配置した。(ポリカーボネートには塩基感受性があることが明らかになったため、分解温度の低下作用をもたらすために、ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン(DBU)を1%の濃度で紡糸調合物に加えた。IOTナノ粒子が含まれている調合物では、QPAC−40溶液とTRB SH 7080をガラスバイアル瓶内で混ぜ合わせて手で混合してから、DBUを加えて手で攪拌した。)
流速を2.0mL/時に設定し、約120秒の持続時間で、上記(出発物質の作製の部分を参照)のように電界紡糸を行った。透過測定を用いてガラススライド上の繊維の密度を監視し、対照スライド(ITO粒子が含まれていないもの)の近くで透過をもたらすためには、多くの場合、追加の電界紡糸が必要であった。電界紡糸プロセス中、液滴は、アルミニウム接地面とガラススライドの上に堆積していたため、電界紡糸溶液B(MEK中にQPAC−40が5g、20%含まれている)、TRB SH 7080(0.30g)及びDBU(0.05g)が含まれている新たな紡糸調合物を作製した。最後の2つのスライド(実施例36/実行番号23〜24)は、この新たな紡糸調合物でコーティングした。上記の条件を用いて作製した繊維の走査電子顕微鏡検査(図9a〜b)から、600nm〜1000nmの間という非常に均一な繊維直径分布を有する繊維のマットがわかる。ITOが含まれているPPC/DBU繊維マットは実施例35Aとした。対応するPPC/DBU(ITOは含まれていない)繊維マットも作製した。
PPC/DBU/ITO繊維マット(実施例35A)又はPPC/DBUのみの繊維マットが置かれている各ガラススライドの上に接着剤(樹脂D、出発物質の作製の部分を参照)を1滴(約10mg)配置した。その後すぐに、各ガラススライド上の各接着剤液滴の上に、歯科矯正用ブラケット(トランセンド(TRANSCEND)6000、3Mユニテック(3M Unitek))を配置した。光ファイバーチップがブラケット上に軽く触れるように配置したキュアリングライト(Curing Light)2500(3M ESPE)で20秒間照射することによって、ブラケットを即座に硬化させ、スライドに付着させた。得られたブラケットアセンブリは実施例35B(PPC/DBU/ITO繊維)及び比較例7(CE−7)(PCL/DBUのみの繊維)とした。
実施例36A〜B及び比較例8
NIR(近赤外線)吸収型色素が含まれているとともに硬化済み接着剤上に層化されているPCL繊維
ガラスバイアル瓶内に、電界紡糸溶液A(MEK中にトーン(TONE)P767が20%含まれている)のサンプル(10.0g)とエポライト(EPOLIGHT)2057色素(0.033g)を配置した。この混合物を木製スティックを使って手で攪拌して緑色の溶液をもたらし、その溶液を60mLの使い捨てシリンジに移して電界紡糸を行った。電界紡糸は、流速を2.0mL/時に設定して、出発物質の作製の部分に記載されているように行った。透過測定を用いて、ガラススライド上の繊維の密度を監視し、色素が含まれていないものと同じ密度を得られるよう促した。上記の条件を用いて作製した繊維の走査電子顕微鏡検査から、大部分はサブミクロンである繊維と、直径が最大で10ミクロンである少量(5%未満)の繊維のランダムマットがわかる。図10a〜bの顕微鏡写真に示されているように、一部の繊維の上には大きなビードも存在している。色素が含まれているPCL繊維マットは、実施例36Aとした。対応するPCL(色素が含まれていない)繊維マットも作製した。
接着剤(樹脂D)を用いて、実施例34Bの部分に記載されているようにブラケットをガラススライドに付着させた。得られたブラケットアセンブリは実施例36B(PCL/色素繊維が含まれているもの)及び比較例8(CE−8)(PCLのみの繊維が含まれているもの)とした。
評価I
PCL/ITO、PPC/DBU/ITO及びPCL/色素繊維マットの上に層化させた硬化済み接着剤組成物の接着強度評価
(実施例34B、35B及び36B)
(ブラケット(トランセンド(TRANSCEND)6000)のガラス表面からの剥離)
1500gのおもりをブラケットからぶら下げ、75W QTHホワイトライトガン(リテマアストラルデンタルライト(Litema Astral Dental Light)ガン)をIR反射フィルターを取り除いた状態で用いてガラススライドの背部を同時に照射した。光ファイバーの端部が、付着済みブラケットの真後ろのガラススライドに接するように、前記ライトガンを配置した。破壊までの時間と破壊時の温度を記録した。破壊モードもすべてのブラケットについて記録した。得られたデータ(550nmにおける透過率(%)(HP UV-JVis ChemStationというソフトウェアが作動しているPCとインターフェースさせた分光測光器のヒューレットパッカード(Hewlett Packard)8452A上で測定)、破壊時間、破壊モードなど)は表16に示されている。
Figure 2009520569
ブラケットを20秒間照射した後は、PCL繊維(実施例34B及びCE−6)の可視溶解が明らかであった。PCLは溶解時に、濁った白色から透明に変わったように見えた。ブラケットの破壊は、クリープの可視的兆候なしに突然起こることが観察された。表16のデータによって、PCL(CE−6)のみの繊維マットが含まれている接着済みブラケットでは、75ワットのQTHバルブで照射した場合の接着強度の変化は小さいか、又は、変化がないのに対し、ITO含有PCLナノ繊維(実施例34B)が含まれているサンプルを照射したところ、接着強度の大きな低下が観察されたことがわかる。
ブラケットを30秒間照射した後は、PPC繊維(実施例35B及びCE−7)の可視溶解及び分解が明らかであった。固定ブラケットの周囲で、濁った繊維マットが透明な環に変化した。ブラケットの破壊は、クリープの可視的兆候なしに突然起こることが観察された。対照サンプルの1つ(実行番号12)では混合破壊モードであるのがわかったが、これは、接着剤とガラスの境界面における完全な接着破壊が、ブラケットの真後ろで観察されたが、接着剤の凝集破壊がブラケット上端で、ブラケット上端での接着剤の鋭い破断とともに観察されたことを意味する。一部の接着剤がブラケット上のガラス基材の上に残ったが、ブラケットの下の接着剤は除去された。表16のデータによって、PPC/DBUのみの繊維マット(CE−7)が含まれている接着済みブラケットでは、75ワットのQTHバルブで照射した場合の接着強度の変化は小さいか、又は、変化がないのに対し、ITO含有PPC/DBUナノ繊維(実施例35B)が含まれているサンプルを照射したところ、接着強度の大きな低下が観察されたことがわかる。
ブラケットを20秒間照射した後は、PCL繊維(実施例36B及びCE−8)の可視溶解が明らかであった。PCLは溶解時に、濁った白色から透明に変わったように見えた。ブラケットの破壊は、クリープの可視的兆候なしに突然起こることが観察された。表16のデータから、エポライト(EPOLIGHT)色素が含まれているPCLナノ繊維を75ワットのQTHバルブで照射したところ、接着強度が(CE−8と比べて)低下したことがわかる。
(実施例37)
接着樹脂中に分散しているBHA/HEMA−IEM粒子及びITO
樹脂A(71.2重量%)、BHA/HEMA−IEM粒子(24.3重量%、出発物質の部分を参照)及びTRB SH 7080(4.5重量%)を混ぜ合わせて、3000rpmで動作しているスピードミキサー(Speed Mixer)(DAC−150−FYZ)中で60秒間混和するのを3回繰り返すことによって、感熱性物質とITOの接着樹脂中分散体を作製し、1.8重量%の有効濃度のITOが含まれている分散体(実施例37)をもたらした。
評価J
BHA/HEMA−IEM粒子含有硬化済み接着組成物(実施例37)の接着強度評価
(ブラケット(トランセンド(TRANSCEND)6000)のウシの歯の表面からの剥離)
実施例37のサンプルを用いて、歯科矯正用ブラケットをウシの歯に付着させた。用いる2つの手順の各々に対して、5つのブラケットを付着させた。
歯科用ハロゲンランプのモデル2500(3M ESPE)20秒間を用いてブラケットを歯に付着させる以外は、本明細書に記載の歯上剪断接着強度試験法Aをおおむね用いて、ウシの歯に付着させたトランセンド(TRANSCEND)6000ブラケットを用いた剪断接着強度を割り出した。手順Aでは、試験法Aの部分に記載されているように、インストロン(Instron)R5500上でブラケットを剪断剥離させた。手順Bでは、金被覆楕円反射体(モデルL6408−G、マサチューセッツ州ウォバーンのギルウェイサイエンティフィック(Gilway Scientific))とNIR透過型光ファイバー(コネチカット州ストラトフォードのニューポートオリエル(Newport Oriel))が備わっている石英−タングステン−ハロゲンランプに取り付けたクーダ(Cuda)光ファイバー光源(モデルI−100、フロリダ州ジャクソンビルのサンオプティックテクノロジーズ(Sunoptic Technologies))を用いて、ブラケットをインストロン(Instron)試験機の上に10秒間充填した。インストロン(Instron)のロードフレームを即座に作動させてから、10秒間NIRを照射した。得られた結果は表17に示されており、NIR照射を行わなかったサンプルに比べて、10秒間のNIR照射後にサンプルの接着強度が大きく低下したことがわかる。
Figure 2009520569
(実施例38)
歯科矯正用接着剤中に分散しているPCL
トーン(TONE)P767(2.5重量%)と歯科矯正用接着剤APCプラス(APC PLUS)を混ぜ合わせて、4×30秒間、3000rpmで動作しているスピードミキサー(Speed Mixer)(DAC−150−FYZ)中で混和させることによって、PCLの歯科矯正用接着剤中分散体を作製し、分散体(実施例38)をもたらした。
(実施例39)
歯科矯正用接着剤中に分散しているBHA/HDDAポリマー
BHA/HDDAポリマー(4.0重量%、重量比1000:1、出発物質の作製の部分を参照)と歯科矯正用接着剤APCプラス(APC PLUS)を混ぜ合わせて、4×30秒間、3000rpmで動作しているスピードミキサー(Speed Mixer)(DAC−150−FYZ)中で混和させることによって、感熱性ポリマーの歯科矯正用接着剤中分散体を作製し、分散体(実施例39)をもたらした。
(実施例40〜42)
歯科矯正用接着剤中に分散しているBHA/ODAポリマー
BHA/ODAポリマー(2.5重量%、種々の重量比、出発物質の作製の部分を参照)と歯科矯正用接着剤APCプラス(APC PLUS)を混ぜ合わせて、4×30秒間、3000rpmで動作しているスピードミキサー(Speed Mixer)(DAC−150−FYZ)中で混和させることによって、別々に歯科矯正用接着剤に加えた感熱性ポリマーの分散体を作製し、分散体をもたらした。指定の重量比で用いたポリマーは、実施例40の場合はBHA/ODA(90:10)、実施例41の場合はBHA/ODA(70:30)及び実施例42の場合はBHA/ODA(50:50)であった。
(実施例43〜45)
歯科矯正用接着剤中に分散しているワックス物質
既知のワックス(2.5重量%)と歯科矯正用接着剤APCプラス(APC PLUS)を混ぜ合わせて、4×30秒間、3000rpmで動作しているスピードミキサー(Speed Mixer)(DAC−150−FYZ)中で混和させることによって、別々に歯科矯正用接着剤に加えた感熱性ワックスの分散体を作製し、分散体をもたらした。用いたワックス物質は、実施例43の場合はセリダスト(CERIDUST)3719、実施例44の場合はセリダスト(CERIDUST)3731及び実施例45の場合はミワックス(MIWAX)411であった。
評価K
感熱性接着剤含有硬化済み歯科矯正用接着剤組成物(実施例38〜45)の接着強度評価
(ウシの歯の表面からのクラリティ(CLARITY)ブラケットの剥離)
本明細書に記載の歯上剪断接着強度試験法Aを(3Mユニテック(3M Unitek)のクラリティ(CLARITY)ブラケットとともに)用いて、実施例38(APCプラス(APC PLUS)中にPCLが2.5重量%含まれている)、実施例39(APCプラス(APC PLUS)中にBHA/HDDAポリマーが4.0重量%含まれている)、実施例40〜42(APCプラス(APC PLUS)中にBHA/ODAポリマーが2.5重量%含まれている)及び実施例43〜45(APCプラス(APC PLUS)中にワックスが2.5重量%含まれている)のサンプル、並びに、無添加の対応する歯科矯正用接着剤APCプラス(APC PLUS)(「C」という記号が付された対照)のウシの歯上での剪断接着強度を評価した。実施例38及び39(データは表18に記録されている)では、GF−31(ニートシラン)を0.5%のセラミックプライマースコッチプライム(SCOTCHPRIME)の代わりに用いる点以外は、歯上剪断接着強度試験法Bの部分に記載されているように、クラリティ(CLARITY)ブラケットをシラン処理した。実施例40〜45及び38(データは表19及び20に記録されている)では、クラリティ(CLARITY)ブラケットはシラン処理しなかった。
得られた結果(4〜5個の複製物の平均)は表18〜20に示されており、室温及び高温における接着強度とARIデータが記載されている。いずれのケースでも、得られた結果から、感熱性添加物が含まれている歯科矯正用接着剤をコーティングするとともに、65℃又は75℃のいずれかに設定した水浴で1分間加熱したブラケットを用いて、熱損失を回避するためにできる限りは早く剥離させたことによって、接着強度が大きく低下したことがわかった。
Figure 2009520569
Figure 2009520569
Figure 2009520569
本発明の範囲及び趣旨を逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べた例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する特許請求の範囲によってのみ限定されることを意図する、本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。
ベース上に本発明の硬化型又は硬化済み歯科用組成物が備わっている歯科矯正装具の斜視図。 図1の歯科矯正装具の側面図。 包装された物品の斜視図であり、ベース上に本発明の硬化型又は硬化済み歯科用組成物が備わっている歯科矯正装具が、部分的にカバーが開いている容器内にある様子が示されている。 ベース上に層が複数備わっている歯科矯正装具の側面図であり、前記複数の層の少なくとも1つの層は本発明の硬化型又は硬化済み歯科用組成物。 ベース上に層が複数備わっている歯科矯正装具の側面図であり、前記複数の層の少なくとも1つの層は本発明の硬化型又は硬化済み歯科用組成物。 ベース上に層が複数備わっている歯科矯正装具の側面図であり、前記複数の層の少なくとも1つの層は本発明の硬化型又は硬化済み歯科用組成物。 ポリ(カプロラクトン)(PCL)ナノ繊維の走査電子顕微鏡写真を示している。 図7aに示したナノ繊維をさらに拡大した図。 インジウムスズオキシド(ITO)粒子が含まれているポリ(カプロラクトン)(PCL)ナノ繊維の走査電子顕微鏡写真を示している。 図8aに示したナノ繊維をさらに拡大した図。 ポリ(プロピレンカーボネート)(PPC)ナノ繊維の走査電子顕微鏡写真を示している。 図9aに示したナノ繊維をさらに拡大した図。 近赤外線(NIR)吸収型色素が含まれているポリ(カプロラクトン)(PCL)ナノ繊維の走査電子顕微鏡写真を示している。 図10aに示したナノ繊維をさらに拡大した図。

Claims (36)

  1. 硬化済み歯科用組成物によって歯牙構造に付着している歯科矯正装具の接着強度を低下させる方法であって、前記硬化済み歯科用組成物を加熱して前記接着強度を低下させることを含み、前記硬化済み歯科用組成物に感熱性添加物が含まれている方法。
  2. 請求項1の方法であって、前記硬化済み歯科用組成物が硬化済みプライマーであり、前記歯科矯正装具がさらに、硬化済み歯科矯正用接着剤によって、プライマー処理済みの歯牙構造に付着している方法。
  3. 請求項2の方法であって、前記歯科矯正装具を前記歯牙構造から除去することがさらに含まれており、その際、前記硬化済み歯科矯正用接着剤が前記除去済み歯科矯正装具の上に実質的に保持される方法。
  4. 請求項1の方法であって、前記感熱性添加物が、半結晶性ポリマー、非晶質ポリマー、液晶、ワックス及びこれらの組み合わせから成る群から選択されている方法。
  5. 請求項4の方法であって、前記感熱性添加物が、ポリ((メタ)アクリル)、ポリ((メタ)アクリルアミド)、ポリ(アルケン)、ポリ(ジエン)、ポリ(スチレン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルケトン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルチオエーテル)、ポリ(ハロゲン化ビニル)、ポリ(ビニルニトリル)、ポリ(フェニレン)、ポリ(無水物)、ポリ(カーボネート)、ポリ(エステル)、ポリ(ラクトン)、ポリ(エーテルケトン)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ウレタン)、ポリ(シロキサン)、ポリ(スルフィド)、ポリ(スルホン)、ポリ(スルホンアミド)、ポリ(チオエステル)、ポリ(アミド)、ポリ(アニリン)、ポリ(イミド)、ポリ(イミン)、ポリ(尿素)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(シラン)、ポリ(シラザン)、炭水化物、ゼラチン、ポリ(アセタール)、ポリ(ベンゾオキサゾール)、ポリ(カルボラン)、ポリ(オキサジアゾール)、ポリ(ピペラジン)、ポリ(ピペリジン)、ポリ(ピラゾール)、ポリ(ピリジン)、ポリ(ピロリジン)、ポリ(トリアジン)及びこれらの組み合わせから成る群から選択したポリマーである方法。
  6. 請求項1の方法であって、前記感熱性添加物がベヘニルアクリレートコポリマーである方法。
  7. 請求項1の方法であって、前記感熱性添加物が、粒子、粉末、繊維、ディスク、プレート、フレーク、チューブ、フィルム、又は、これらの組み合わせの形状である方法。
  8. 請求項1の方法であって、前記感熱性添加物が前記硬化済み歯科用組成物全体に均一に分布している方法。
  9. 請求項1の方法であって、前記感熱性添加物が、前記硬化済み歯科用組成物の一部分に集中している方法。
  10. 請求項9の方法であって、前記部分が、前記歯牙構造に近接する前記硬化済み歯科用組成物の少なくとも1つの表面の近く又はその表面上である方法。
  11. 請求項1の方法であって、前記硬化済み歯科用組成物の少なくとも一部を少なくとも42℃まで加熱する方法。
  12. 請求項1の方法であって、前記硬化済み歯科用組成物にさらに放射線−熱変換物質が含まれており、加熱工程に、前記硬化済み歯科用組成物を照射することが含まれている方法。
  13. 硬化済み歯科用組成物の歯牙構造に対する接着性を低下させる方法であって、前記硬化済み歯科用組成物を加熱して前記接着性を低下させることを含み、前記硬化済み歯科用組成物に感熱性添加物が含まれている方法。
  14. 硬化型歯科用組成物であって、
    エチレン性不飽和化合物と、
    反応開始剤と、
    半結晶性ポリマー、非晶質ポリマー及びこれらの組み合わせから成る群から選択した感熱性添加物が含まれており、
    硬化すると、剪断剥離試験を用いて測定した場合に室温で少なくとも7MPaである接着強度によって歯科矯正装具を歯牙構造に接着する組成物。
  15. 硬化型歯科用組成物であって、
    エチレン性不飽和化合物と、
    反応開始剤と、
    半結晶性ポリマー、非晶質ポリマー及びこれらの組み合わせから成る群から選択した感熱性添加物が含まれており、
    前記組成物が、歯科矯正用接着剤、歯科矯正用プライマー、歯科矯正用シーラント、歯科矯正用バンドセメント及びこれらの組み合わせから成る群から選択されている組成物。
  16. 硬化型歯科用組成物であって、
    エチレン性不飽和化合物と、
    反応開始剤と、
    感熱性添加物と、
    放射線−熱変換物質が含まれている組成物。
  17. 請求項16の硬化型歯科用組成物であって、酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物がさらに含まれており、前記硬化型歯科用組成物が歯科矯正用セルフエッチングプライマー、又は、歯科矯正用セルフエッチング接着剤である組成物。
  18. 包装された物品であって、
    歯科矯正装具を歯牙構造に接着するためのベースを備える歯科矯正装具と、
    前記装具のベース上の硬化型歯科用組成物であって、エチレン性不飽和化合物、反応開始剤、充填剤及び感熱性添加物を含む硬化型歯科用組成物と、
    前記硬化型歯科用組成物を表面に備える前記歯科矯正装具を少なくとも部分的に取り囲んでいる容器を含む物品。
  19. 請求項18の包装された物品であって、前記硬化型歯科用組成物に放射線−熱変換物質がさらに含まれている物品。
  20. 歯科矯正装具を歯牙構造に接着するためのベースを備える歯科矯正装具と、
    前記装具のベース上の硬化済み歯科用組成物を含む物品であって、
    前記硬化済み歯科用組成物に、半結晶性ポリマー、非晶質ポリマー及びこれらの組み合わせから成る群から選択した感熱性添加物が含まれている物品。
  21. 請求項20の物品であって、さらに、別の硬化型及び/又は硬化済み歯科用組成物の層が1つ以上備わっている物品。
  22. 歯科矯正装具を歯牙構造に接着する方法であって、
    歯科矯正装具を歯牙構造に接着するためのベースを備える歯科矯正装具を用意することと、
    エチレン性不飽和化合物と、反応開始剤と、充填剤と、半結晶性ポリマー、非晶質ポリマー及びこれらの組み合わせから成る群から選択した感熱性添加物が含まれている硬化型歯科用組成物を用意することと、
    前記硬化型歯科用組成物を前記歯牙構造と前記歯科矯正装具のベースとに接触させることと、
    前記硬化型歯科用組成物を硬化させることを含む方法。
  23. 請求項22の方法であって、前記硬化型歯科用組成物を前記歯牙構造と前記歯科矯正装具のベースとに接触させる工程が、
    前記硬化型歯科用組成物を前記歯牙構造に適用することと、
    前記歯科矯正装具のベースを前記歯牙構造上の前記硬化型歯科用組成物と接触させることを含む方法。
  24. 請求項22の方法であって、前記硬化型歯科用組成物を前記歯牙構造と前記歯科矯正装具のベースとに接触させる工程が、
    前記硬化型歯科用組成物を前記ベース上に備える歯科矯正装具を用意することと、
    前記硬化型歯科用組成物を備える前記装具のベースを前記歯牙構造に適用することを含む方法。
  25. 請求項24の方法であって、前記硬化型歯科用組成物を前記装具のベース上に備えるプレコーティング済み装具として、前記歯科矯正装具を用意する方法。
  26. 請求項25の方法であって、前記プレコーティング済み装具にさらに、別の硬化型及び/又は硬化済み歯科用組成物の層が1つ以上備わっている方法。
  27. 請求項24の方法であって、前記硬化型歯科用組成物を前記ベース上に備える前記歯科矯正装具を用意する工程にさらに、前記硬化型歯科用組成物を歯科矯正装具のベースに適用することが含まれている方法。
  28. 請求項22の方法であって、前記硬化型歯科矯正用接着剤にさらに、放射線−熱変換物質が含まれている方法。
  29. 歯科矯正装具を歯牙構造に接着する方法であって、
    歯科矯正装具を歯牙構造に接着するためのベースを備える歯科矯正装具を用意することと、ここで、前記装具は、そのベース上に、半結晶性ポリマー、非晶質ポリマー及びこれらの組み合わせから成る群から選択した感熱性添加物が含まれている硬化済み歯科用組成物を備えており、
    硬化型歯科矯正用接着剤を用意することと、
    前記硬化型歯科矯正用接着剤を、前記歯牙構造と、前記硬化済み歯科用組成物を備える前記歯科矯正装具のベースとに接触させることと、
    前記歯科矯正用接着剤を硬化させることを含む方法。
  30. 請求項29の方法であって、前記硬化型歯科矯正用接着剤を、前記歯牙構造と、前記硬化済み歯科用組成物を備える前記歯科矯正装具のベースとに接触させる工程が、
    前記硬化型歯科矯正用接着剤を前記歯牙構造に適用することと、
    前記硬化済み歯科用組成物を備える前記歯科矯正装具のベースを、前記歯牙構造上の前記硬化型歯科矯正用接着剤と接触させることを含む方法。
  31. 請求項29の方法であって、前記硬化型歯科矯正用接着剤を、前記歯牙構造と、前記硬化済み歯科用組成物を備える前記歯科矯正装具のベースとに接触させる工程が、
    前記歯科矯正装具のベース上の前記硬化済み歯科用組成物の上に前記硬化型歯科矯正用接着剤を備える歯科矯正装具を用意することと、
    前記硬化済み歯科用組成物の上に前記硬化型歯科矯正用接着剤を備える前記装具のベースを前記歯牙構造に適用することを含む方法。
  32. 請求項31の方法であって、前記歯科矯正装具のベース上の前記硬化済み歯科用組成物の上に前記硬化型歯科矯正用接着剤を備えるプレコーティング済み装具として、前記歯科矯正装具を用意する方法。
  33. 請求項32の方法であって、前記プレコーティング済み装具にさらに、別の硬化型及び/又は硬化済み歯科用組成物の層が1つ以上備わっている方法。
  34. 請求項31の方法であって、前記歯科矯正装具のベース上の前記硬化済み歯科用組成物の上に前記硬化型歯科矯正用接着剤を備える前記歯科矯正装具を用意する工程にさらに、前記歯科矯正装具のベース上の前記硬化済み歯科用組成物に前記硬化型歯科矯正用接着剤を適用することが含まれている方法。
  35. 歯科矯正装具を歯牙構造に接着する方法であって、
    感熱性添加物を含む硬化済み歯科用組成物を表面に備える歯牙構造を用意することと、
    歯科矯正装具を歯牙構造に接着するためのベースを備える歯科矯正装具を用意することと、
    硬化型歯科矯正用接着剤を用意することと、
    前記硬化型歯科矯正用接着剤を、前記歯科矯正装具のベースと、前記硬化済み歯科用組成物を備える前記歯牙構造とに接触させることと、
    前記歯科矯正用接着剤を硬化させることを含む方法。
  36. 請求項35の方法であって、硬化済み歯科用組成物を表面に備える歯牙構造を用意する工程にさらに、
    感熱性添加物を含む歯科用組成物を前記歯牙構造に適用することと、
    前記歯科用組成物を硬化させることを含む方法。
JP2008547435A 2005-12-20 2006-12-18 感熱性添加物が含まれている歯科用組成物とその使用法 Withdrawn JP2009520569A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US11/275,240 US20070142498A1 (en) 2005-12-20 2005-12-20 Dental compositions including thermally responsive additives, and the use thereof
PCT/US2006/048400 WO2007075666A1 (en) 2005-12-20 2006-12-18 Dental compositions including thermally responsive additives, and the use thereof

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2009520569A true JP2009520569A (ja) 2009-05-28

Family

ID=38174537

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008547435A Withdrawn JP2009520569A (ja) 2005-12-20 2006-12-18 感熱性添加物が含まれている歯科用組成物とその使用法

Country Status (4)

Country Link
US (1) US20070142498A1 (ja)
EP (1) EP1962773A1 (ja)
JP (1) JP2009520569A (ja)
WO (1) WO2007075666A1 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010513297A (ja) * 2006-12-13 2010-04-30 スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー 酸性成分及び光退色性染料を有する歯科用組成物の使用方法
JP2012530152A (ja) * 2009-06-11 2012-11-29 ペントロン クリニカル テクノロジーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー 多重重合機構を利用した硬化性エポキシ含有組成物
CN107427351A (zh) * 2015-03-10 2017-12-01 3M创新有限公司 具有成角度支撑结构的封装正畸组件

Families Citing this family (26)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7452924B2 (en) 2003-08-12 2008-11-18 3M Espe Ag Self-etching emulsion dental compositions and methods
US8026296B2 (en) * 2005-12-20 2011-09-27 3M Innovative Properties Company Dental compositions including a thermally labile component, and the use thereof
WO2008082929A2 (en) 2006-12-28 2008-07-10 3M Innovative Properties Company Adhesive composition for hard tissue
DE102009051593B4 (de) * 2009-11-02 2018-05-09 Xplus3 Gmbh Verfahren zur Herstellung eines Werkstoffverbundes zwischen einer Oxidkeramik und einem auf diese aufzubringenden Verblendwerkstoff, Verwendung des Werkstoffverbundes sowie Kit für den Haftvermittler
US8206789B2 (en) * 2009-11-03 2012-06-26 Wd Media, Inc. Glass substrates and methods of annealing the same
DE102010023394A1 (de) * 2010-06-10 2011-12-15 Stiftung Für Lasertechnologien In Der Medizin Und Messtechnik An Der Universität Ulm Verfahren zur reversiblen Befestigung von zahnärztlichen Restaurationen, Füllungen und Brackets
US8316668B1 (en) 2010-09-23 2012-11-27 Wd Media, Inc. Composite magnetic recording medium
EP2524684A1 (en) * 2011-05-20 2012-11-21 Universitätsklinikum der RWTH Aachen Removable adhesion material
US8834962B2 (en) 2011-06-03 2014-09-16 WD Media, LLC Methods for improving the strength of glass substrates
CN103781456B (zh) 2011-09-08 2017-03-29 义获嘉伟瓦登特公司 基于具有按需脱粘特性的单体的牙科材料
US10945874B2 (en) 2012-05-15 2021-03-16 Akervall Technologies, Inc. Custom-formable night grinding appliance and method of use
US20200030195A1 (en) * 2012-08-16 2020-01-30 Steven D. Jensen Reversible Dental Adhesive
US9597264B2 (en) * 2012-08-16 2017-03-21 Cao Group, Inc. Reversible dental adhesive
TWI499429B (zh) * 2012-11-26 2015-09-11 Univ Nat Taiwan 牙齒黏合劑及塗層劑
KR101549735B1 (ko) * 2013-03-26 2015-09-02 제일모직주식회사 유기발광소자 충전제용 열경화형 조성물 및 이를 포함하는 유기발광소자 디스플레이 장치
EP2965740A1 (de) 2014-07-11 2016-01-13 Ivoclar Vivadent AG Dentalmaterialien mit Debonding-on-Demand-Eigenschaften
ES2905363T3 (es) 2014-09-17 2022-04-08 Garrison Dental Solutions Llc Lámpara de polimerización dental
US20160113746A1 (en) * 2014-10-28 2016-04-28 Joseph F. Bringley Light source, detector and luminescent composite
US10492888B2 (en) 2015-07-07 2019-12-03 Align Technology, Inc. Dental materials using thermoset polymers
ES2759899T3 (es) 2015-10-13 2020-05-12 Ivoclar Vivadent Ag Composiciones polimerizables a base de compuestos térmicamente escindibles
US10292790B2 (en) * 2015-12-28 2019-05-21 N2 Biomedical Llc Ion implantation modification of archwires
WO2017201381A1 (en) * 2016-05-20 2017-11-23 Soundararajan Gopi Reversible cement
DE102017004546B4 (de) * 2017-05-12 2022-01-05 L/N Health And Beauty Aps Kit zur Nagelkorrektur
JP7505982B2 (ja) 2018-05-04 2024-06-25 アライン テクノロジー, インコーポレイテッド 重合可能なモノマー及び其れ等を重合する方法
US11174338B2 (en) 2018-05-04 2021-11-16 Align Technology, Inc. Curable composition for use in a high temperature lithography-based photopolymerization process and method of producing crosslinked polymers therefrom
CN111100425B (zh) * 2020-01-03 2020-12-25 西安交通大学 一种高介电光敏树脂基复合材料及其制备方法和应用

Family Cites Families (96)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US3018262A (en) * 1957-05-01 1962-01-23 Shell Oil Co Curing polyepoxides with certain metal salts of inorganic acids
US3954475A (en) * 1971-09-03 1976-05-04 Minnesota Mining And Manufacturing Company Photosensitive elements containing chromophore-substituted vinyl-halomethyl-s-triazines
DE2534368A1 (de) * 1975-08-01 1977-02-17 Scheu Dental Bracket fuer orthodontisch zu behandelnde zaehne und verfahren zur labormaessigen vorbereitung des anbringens derselben
GB1569021A (en) * 1976-03-17 1980-06-11 Kuraray Co Adhesive cementing agents containing partial phosphonic orphosphonic acid esters
US4180911A (en) * 1977-09-16 1980-01-01 Applied Science Corporation Method for direct bonding of orthodontic structures to teeth using flouride pretreatment
DE2909992A1 (de) * 1979-03-14 1980-10-02 Basf Ag Photopolymerisierbare aufzeichnungsmassen, insbesondere zur herstellung von druckplatten und reliefformen
DE2830927A1 (de) * 1978-07-14 1980-01-31 Basf Ag Acylphosphinoxidverbindungen und ihre verwendung
DE2964564D1 (en) * 1978-12-18 1983-02-24 Ici Plc Dental compositions comprising a selected vinyl urethane prepolymer and processes for their manufacture
US4329384A (en) * 1980-02-14 1982-05-11 Minnesota Mining And Manufacturing Company Pressure-sensitive adhesive tape produced from photoactive mixture of acrylic monomers and polynuclear-chromophore-substituted halomethyl-2-triazine
US4435160A (en) * 1980-07-25 1984-03-06 Minnesota Mining And Manufacturing Company Method and manufacture for applying and removal of orthodontic bracket
US4330570A (en) * 1981-04-24 1982-05-18 The United States Of America As Represented By The Secretary Of The Navy Selective photoinduced condensation technique for producing semiconducting compounds
US4500657A (en) * 1982-08-02 1985-02-19 Johnson & Johnson Dental Products Company Dental restorative compositions having improved mechanical properties and hydrolytic stability
US4455138A (en) * 1982-09-30 1984-06-19 Sheridan John J Dental brace bracket bonding and debracketing tool and method of use
JPS59135272A (ja) * 1983-01-21 1984-08-03 Kuraray Co Ltd 接着剤
US4503169A (en) * 1984-04-19 1985-03-05 Minnesota Mining And Manufacturing Company Radiopaque, low visual opacity dental composites containing non-vitreous microparticles
US4749352A (en) * 1984-07-20 1988-06-07 Nicholson James A Method of bonding orthodontic brackets
US4952142B1 (en) * 1984-07-20 1993-10-12 Nicholson James Method of bonding orthodontic brackets
DE3443221A1 (de) * 1984-11-27 1986-06-05 ESPE Fabrik pharmazeutischer Präparate GmbH, 8031 Seefeld Bisacylphosphinoxide, ihre herstellung und verwendung
US4642126A (en) * 1985-02-11 1987-02-10 Norton Company Coated abrasives with rapidly curable adhesives and controllable curvature
DE3516256A1 (de) * 1985-05-07 1986-11-13 Bayer Ag, 5090 Leverkusen (meth)-acrylsaeureester und ihre verwendung
DE3516257A1 (de) * 1985-05-07 1986-11-13 Bayer Ag, 5090 Leverkusen (meth)-acrylsaeureester und ihre verwendung
US4648843A (en) * 1985-07-19 1987-03-10 Minnesota Mining And Manufacturing Company Method of dental treatment using poly(ethylenically unsaturated) carbamoyl isocyanurates and dental materials made therewith
US4652274A (en) * 1985-08-07 1987-03-24 Minnesota Mining And Manufacturing Company Coated abrasive product having radiation curable binder
DE3532656A1 (de) * 1985-09-13 1987-04-23 Scheu Dental Verfahren und vorrichtung zur entfernung von auf einer zahnoberflaeche aufgeklebten, einer orthodontischen behandlung dienenden brackets
US4673354A (en) * 1985-10-01 1987-06-16 Minnesota Mining And Manufacturing Company Stable silanol priming solution for use in dentistry
JP2543516B2 (ja) * 1987-03-09 1996-10-16 三井石油化学工業株式会社 歯科用硬化性接着剤
US4904183A (en) * 1987-05-08 1990-02-27 Unitek Corporation Orthodontic debonding method and tool
US4948366A (en) * 1987-06-26 1990-08-14 Unitek Corporation Adhesive bond strength control for orthodontic brackets
JPH075680B2 (ja) * 1987-07-03 1995-01-25 三井石油化学工業株式会社 硬化性組成物
AU618772B2 (en) * 1987-12-30 1992-01-09 Minnesota Mining And Manufacturing Company Photocurable ionomer cement systems
US4950157A (en) * 1988-11-14 1990-08-21 Unitek Corporation Debonding instrument for orthodontic brackets
US5141969A (en) * 1988-11-21 1992-08-25 Eastman Kodak Company Onium salts and the use thereof as photoinitiators
US5026902A (en) * 1988-12-10 1991-06-25 Th. Goldschmidt AG & GDF Gesellschaft fur Dentale Forschung u. Innovationen GmbH Dental compsition of perfluoroalkyl group-containing (meth-)acrylate esters
US5015180A (en) * 1989-03-01 1991-05-14 Minnesota Mining And Manufacturing Company Dental article containing light-curable paste
DE3915806A1 (de) * 1989-05-13 1990-11-15 Winkelstroeter Dentaurum Verfahren und handgeraet zum loesen eines brackets von einer klebestelle
US5008304A (en) * 1989-05-17 1991-04-16 Kmentt Bradley A Orthodontic appliance adhesive
US5037861A (en) * 1989-08-09 1991-08-06 General Electric Company Novel highly reactive silicon-containing epoxides
US5190795A (en) * 1989-09-14 1993-03-02 Minnesota Mining And Manufacturing Company Method for improving adhesion to metal
US5011410A (en) * 1989-09-14 1991-04-30 Minnesota Mining And Manufacturing Co. Silane-treated metal dental articles
US5219283A (en) * 1989-09-28 1993-06-15 Ormco Corporation Orthodontic bracket, method of making an orthodontic bracket, and method of applying an orthodontic bracket to the tooth
US5709548A (en) * 1990-02-23 1998-01-20 Minnesota Mining And Manufacturing Company Dental crown liner composition and methods of preparing provisional applications
DK0443269T3 (da) * 1990-02-23 1993-12-27 Minnesota Mining & Mfg Semi-termoplastisk støbemateriale med varmestabil hukommelse af individuelt tilpasset form
US5035612A (en) * 1990-05-02 1991-07-30 Johnson & Johnson Consumer Products, Inc. Debonding tip for electrothermal dental bracket removal
US5098288A (en) * 1990-05-04 1992-03-24 Tp Orthodontics, Inc. Flexible bonding pad for an orthodontic bracket
US5089374A (en) * 1990-08-20 1992-02-18 Eastman Kodak Company Novel bis-onium salts and the use thereof as photoinitiators
US5106302A (en) * 1990-09-26 1992-04-21 Ormco Corporation Method of fracturing interfaces with an ultrasonic tool
US5320532A (en) * 1990-09-26 1994-06-14 Ormco Corporation Method of using ultrasonic dental tool
US5110290A (en) * 1990-11-19 1992-05-05 Ormco Corporation Orthodontic bracket/mesh screen
EP0689803B1 (en) * 1991-08-02 2000-04-05 Minnesota Mining And Manufacturing Company Dental packaging assembly
US5108285A (en) * 1991-09-30 1992-04-28 American Orthodontics Corporation Bonding base and method of making same for a ceramic orthodontic bracket
US5525648A (en) * 1991-12-31 1996-06-11 Minnesota Mining And Manufacturing Company Method for adhering to hard tissue
US5205734A (en) * 1992-01-21 1993-04-27 University Of Pittsburgh Of The Commonwealth System Of Higher Education Apparatus for removing ceramic orthodontic brackets and an associated method
US5227413A (en) * 1992-02-27 1993-07-13 Minnesota Mining And Manufacturing Company Cements from β-dicarbonyl polymers
US6090867A (en) * 1993-02-19 2000-07-18 Georgia Tech Research Corporation Orthodontic adhesive
US6417244B1 (en) * 1993-04-13 2002-07-09 Southwest Research Institute Metal oxide compositions and methods
US5530038A (en) * 1993-08-02 1996-06-25 Sun Medical Co., Ltd. Primer composition and curable composition
US5439379A (en) * 1993-11-29 1995-08-08 Minnesota Mining And Manufacturing Company Ceramic orthodontic bracket with debonding channel
US5501727A (en) * 1994-02-28 1996-03-26 Minnesota Mining And Manufacturing Company Color stability of dental compositions containing metal complexed ascorbic acid
JP3471431B2 (ja) * 1994-07-18 2003-12-02 株式会社ジーシー 歯科用グラスアイオノマーセメント組成物
US5856373A (en) * 1994-10-31 1999-01-05 Minnesota Mining And Manufacturing Company Dental visible light curable epoxy system with enhanced depth of cure
US5722826A (en) * 1996-02-21 1998-03-03 American Orthodontics Corporation Bonding pad
US5746594A (en) * 1996-03-05 1998-05-05 Minnesota Mining & Manufacturing Co. Orthodontic appliance with asymmetric bonding structure
DE19648283A1 (de) * 1996-11-21 1998-05-28 Thera Ges Fuer Patente Polymerisierbare Massen auf der Basis von Epoxiden
US5871360A (en) * 1996-12-31 1999-02-16 Gc Corporation Method for restoration of a cavity of a tooth using a resin reinforced type glass ionomer cement
DE19711514B4 (de) * 1997-03-19 2006-09-14 3M Espe Ag Triglyceride enthaltende Abformmassen
US5998495A (en) * 1997-04-11 1999-12-07 3M Innovative Properties Company Ternary photoinitiator system for curing of epoxy/polyol resin compositions
US5859089A (en) * 1997-07-01 1999-01-12 The Kerr Corporation Dental restorative compositions
US6506816B1 (en) * 1997-07-17 2003-01-14 3M Innovative Properties Company Dental resin cements having improved handling properties
DE19736471A1 (de) * 1997-08-21 1999-02-25 Espe Dental Ag Lichtinduziert kationisch härtende Zusammensetzungen und deren Verwendung
US5827058A (en) * 1997-10-08 1998-10-27 Minnesota Mining & Manufacturing Co. Carrier for supporting orthodontic brackets
US6187836B1 (en) * 1998-06-05 2001-02-13 3M Innovative Properties Company Compositions featuring cationically active and free radically active functional groups, and methods for polymerizing such compositions
US6030606A (en) * 1998-06-22 2000-02-29 3M Innovative Properties Company Dental restoratives comprising Bis-EMA6
US6306926B1 (en) * 1998-10-07 2001-10-23 3M Innovative Properties Company Radiopaque cationically polymerizable compositions comprising a radiopacifying filler, and method for polymerizing same
SE9904080D0 (sv) * 1998-12-03 1999-11-11 Ciba Sc Holding Ag Fotoinitiatorberedning
DE19860364C2 (de) * 1998-12-24 2001-12-13 3M Espe Ag Polymerisierbare Dentalmassen auf der Basis von zur Aushärtung befähigten Siloxanverbindungen, deren Verwendung und Herstellung
US6361721B1 (en) * 1999-05-13 2002-03-26 Alvin L. Stern Method of forming tooth restoration
US6194481B1 (en) * 1999-05-19 2001-02-27 Board Of Regents Of The University Of Texas System Mechanically strong and transparent or translucent composites made using zirconium oxide nanoparticles
US6183249B1 (en) * 1999-07-29 2001-02-06 3M Innovative Properties Company Release substrate for adhesive precoated orthodontic appliances
US6395124B1 (en) * 1999-07-30 2002-05-28 3M Innovative Properties Company Method of producing a laminated structure
US6387981B1 (en) * 1999-10-28 2002-05-14 3M Innovative Properties Company Radiopaque dental materials with nano-sized particles
US6572693B1 (en) * 1999-10-28 2003-06-03 3M Innovative Properties Company Aesthetic dental materials
DE10001228B4 (de) * 2000-01-13 2007-01-04 3M Espe Ag Polymerisierbare Zubereitungen auf der Basis von siliziumhaltigen Epoxiden
US6376585B1 (en) * 2000-06-26 2002-04-23 Apex Advanced Technologies, Llc Binder system and method for particulate material with debind rate control additive
US6528555B1 (en) * 2000-10-12 2003-03-04 3M Innovative Properties Company Adhesive for use in the oral environment having color-changing capabilities
US6513897B2 (en) * 2000-12-29 2003-02-04 3M Innovative Properties Co. Multiple resolution fluid applicator and method
US6759177B2 (en) * 2001-05-17 2004-07-06 Fuji Photo Film Co., Ltd. Photosensitive composition and planographic printing plate precursor
US6765038B2 (en) * 2001-07-27 2004-07-20 3M Innovative Properties Company Glass ionomer cement
EP2275077A3 (en) * 2001-08-15 2014-07-16 3M Innovative Properties Co. Hardenable self-supporting structures and methods
US7157096B2 (en) * 2001-10-12 2007-01-02 Inframat Corporation Coatings, coated articles and methods of manufacture thereof
US20030118970A1 (en) * 2001-12-21 2003-06-26 3M Innovative Properties Company Removable dental models
US6765036B2 (en) * 2002-01-15 2004-07-20 3M Innovative Properties Company Ternary photoinitiator system for cationically polymerizable resins
US7172676B2 (en) * 2002-08-07 2007-02-06 The Penn State Research Corporation System and method for bonding and debonding a workpiece to a manufacturing fixture
US7250452B2 (en) * 2003-09-26 2007-07-31 3M Innovative Properties Company Dental compositions and methods with arylsulfinate salts
US7262228B2 (en) * 2003-11-21 2007-08-28 Curators Of The University Of Missouri Photoinitiator systems with anthracene-based electron donors for curing cationically polymerizable resins
US20050133384A1 (en) * 2003-12-19 2005-06-23 3M Innovative Properties Company Packaged orthodontic assembly with adhesive precoated appliances
US7374420B2 (en) * 2003-12-19 2008-05-20 3M Innovative Properties Company Multi-layer adhesives and methods for bonding orthodontic appliances to tooth structure

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010513297A (ja) * 2006-12-13 2010-04-30 スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー 酸性成分及び光退色性染料を有する歯科用組成物の使用方法
JP2012530152A (ja) * 2009-06-11 2012-11-29 ペントロン クリニカル テクノロジーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー 多重重合機構を利用した硬化性エポキシ含有組成物
JP2015057493A (ja) * 2009-06-11 2015-03-26 ペントロン クリニカル テクノロジーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー 多重重合機構を利用した硬化性エポキシ含有組成物
CN107427351A (zh) * 2015-03-10 2017-12-01 3M创新有限公司 具有成角度支撑结构的封装正畸组件

Also Published As

Publication number Publication date
US20070142498A1 (en) 2007-06-21
WO2007075666A1 (en) 2007-07-05
EP1962773A1 (en) 2008-09-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5237113B2 (ja) 放射線−熱変換体を含む歯科用組成物及びその使用
JP5363115B2 (ja) 硬化可能な歯科用組成物
JP2009520569A (ja) 感熱性添加物が含まれている歯科用組成物とその使用法
JP5307720B2 (ja) 歯科用物品、方法、及び圧縮性材料を含むキット
JP6042850B2 (ja) ポリマー性充填剤を有する歯科矯正用組成物
JP5118093B2 (ja) 口腔環境において使用するための色変化性能を有する接着剤
JP5507256B2 (ja) 酸性成分及び光退色性染料を有する歯科用組成物の使用方法
JP5950936B2 (ja) 圧縮性材料を含む固着可能な歯科用アセンブリ及び方法
US7776940B2 (en) Methods for reducing bond strengths, dental compositions, and the use thereof
US20150017596A1 (en) Thermoplastic-based materials in orthodontic applications
JP2018070627A (ja) コーティングされたポリマー成分を含む歯科用接着材
US20110171591A1 (en) Orthodontic composition with heat modified minerals
JP6942888B2 (ja) 高弾性率の歯科用組成物

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Application deemed to be withdrawn because no request for examination was validly filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20100302