JP2009514895A - 組織因子シグナル伝達の特異性を調節するための組成物及び方法 - Google Patents

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Abstract

哺乳動物対象中の組織因子/第VIIa因子シグナル伝達に依存する疾病を治療するための組成物及び方法が提供される。本方法は、組織因子シグナル伝達の阻害剤を哺乳動物対象に投与することを含む。阻害剤は、哺乳動物対象における疾病の発生を低下させる上で有効である。組織因子/第VIIa因子シグナル伝達の調節物質をスクリーニングする方法も提供される。

Description

本発明は、一般的には、哺乳動物対象中の組織因子/第VIIa因子(TF/VIIa)シグナル伝達に依存する疾病を治療するための組成物及び方法に関する。本方法は、組織因子シグナル伝達の阻害剤を哺乳動物対象に投与することを含む。阻害剤は、哺乳動物対象中の止血を妨害せずに、疾病の発生を低減若しくは除去し、又はその発生若しくは再発を予防する上で有効である。
細胞表面受容体組織因子(TF)の、セリンプロテアーゼ第VIIa因子との酵素的複合体は、生理的な止血及び凝固を活性化し、同時に、炎症、腫瘍進行及び血管新生において、プロテアーゼ活性化受容体シグナル伝達の引き金を引く。Mackman,Arterioscler.Thromb.Vase.Biol.24:1015−1022,2004;Riewald and Ruf,Crit.Care 7:123−129,2003;Belting et al.,Arterioscler.Thromb.Vase.Biol.25:1545−1550,2005)。豊富に生成される下流の凝固プロテアーゼによって凌駕されずに、直接の上流TF−VIIaシグナル伝達が、いかにして病態を決定するかということは、なお、血管生物学おける未解明の基本的な問題となっている。Kawabata et al.,Br J Pharmacol,144:212−219,2005;Namkung,et al.,. Gastroenterology,126:1844−1859,2004;Fiorucci,et al.,Proc Natl Acad Sci USA,98:13936−13941,2001;Cocks et al.,Nature,398:156−160,1999。
TFは、第VIIa因子に結合し、アロステリックに第VIIa因子を活性化して、産物Xaを放出してトロンビンを生成する三元TF−VIIa−X凝固開始複合体の集合を補助する。Norledge et al.,Proteins 53:640−648,2003。TF−VIIa複合体は、プロテアーゼ活性化受容体(PAR)2も直接切断する。Camerer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:5255−5260,2000;Riewald and Ruf,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:7742−7747,2001。止血及び炎症における、PARを通じたトロンビンシグナル伝達の役割は十分に確立されているにも関わらず、インビボでの別のプロテアーゼによるPARの活性化は、ほとんど確定されていないままである。Coughlin,J. Thromb. Haemost. 3:1800−1814,2005。TF細胞質ドメインリン酸化は、PAR2シグナル伝達の下流にあり、TF細胞質ドメインを欠失されたマウスは、増強されたPAR2依存性血管新生を示すので、TF及びPAR2は密接に関連している。Ahamed and Ruf,J Biol.Chem.279:23038−23044,2004;Belting et al.,Nature Med.10:502−509,2004。しかしながら、TF−VIIaシグナル伝達がどのようにして制御され、他の下流の凝固プロテアーゼによるシグナル伝達に依存せずに生理学的役割を果たしているかは、完全には理解されていない。現在、FDAによって承認された、血管新生関連疾患の治療用の血管新生阻害剤は存在しない。血液止血経路を正常に進行させつつ、血管新生、腫瘍細胞増殖、腫瘍転移又は炎症に関連するTFシグナル伝達を制御又は阻害する必要性が、本分野において存在している。
(発明の概要)
本発明は、一般的には、哺乳動物対象中の疾病、例えば、血管新生関連疾患、炎症又は新生物疾患を治療するための組成物及び方法に関する。本組成物は、哺乳動物対象中の止血を妨害しない、組織因子シグナル伝達の阻害剤である。本方法は、組織因子シグナル伝達の阻害剤を哺乳動物対象に投与することを含む。前記阻害剤は、哺乳動物対象における低下された凝固又は増加された出血のリスクを増大させることなく、血管新生関連疾患状態、炎症又は新生物疾患の発生を低下させる上で有効である。
哺乳動物対象中の組織因子/第VIIa因子シグナル伝達に依存する疾病を治療する方法であり、哺乳動物対象中において疾病を低減若しくは除去し、又は疾病の発生若しくは再発を予防するのに有効な量で、組織因子シグナル伝達の阻害剤を哺乳動物対象へ投与することを含み、前記阻害剤が前記哺乳動物対象中の止血を妨害しない、前記方法が提供される。疾病には、血管新生関連疾患、新生物疾患又は炎症が含まれるが、これらに限定されない。新生物疾患又は炎症は、血管新生関連疾患の中に含まれる。一態様において、阻害剤は、抗体又は小化学実体である。詳細な態様において、阻害剤は、ATCC受託番号HB9383を有するハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体10H10(MAb10H10)である。
細胞中の組織因子シグナル伝達を調節する化合物を同定する方法であり、シグナル伝達を可能とする組織因子を発現する細胞を含む細胞ベースのアッセイ系と試験化合物を接触させる工程と(組織因子依存性シグナル伝達は、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼによって制御される。)、組織因子依存性シグナル伝達を活性化させるのに効果的であるように選択された量で、前記アッセイ系に第VIIa因子を与える工程と、及び前記アッセイ系における組織因子依存性シグナル伝達に対する前記試験化合物の有効性を検出する工程を含み、前記アッセイにおける前記試験化合物の有効性が前記調節の指標である、前記方法が提供される。一態様において、方法は、組織因子シグナル伝達に対する、試験化合物の阻害的効果を検出することをさらに含む。さらなる態様において、前記方法は、組織因子によって媒介される止血に対する、試験化合物の無効果を検出することをさらに含む。細胞としては、ケラチン生成細胞、黒色腫又は内皮細胞が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる態様において、細胞ベースのアッセイ系は、プロテアーゼ活性化受容体2を介して、応答性をシグナル伝達する。さらなる態様において、試験化合物は、抗体又は小化学実体である。詳細な態様において、化合物は、MAb10H10の組織因子への結合を阻害する。さらなる詳細な態様において、化合物は、ATCC受託番号HB9382を有するハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体5G9(MAb5G9)による組織因子への結合を阻害しない。
哺乳動物対象中の血管新生を治療するための方法であり、組織因子−第VIIa因子経路を介して、細胞中のシグナル伝達を調節する化合物の治療的有効量を投与することを含み、前記化合物が細胞ベースのアッセイ系における組織因子−第VIIa因子シグナル伝達のアンタゴニストであり、及び前記化合物が、哺乳動物対象中において、血管新生を低減若しくは除去し、又はその発生若しくは再発を予防するのに有効である、前記方法が提供される。さらなる態様において、前記化合物は、哺乳動物対象中の止血を妨害しない。一態様において、組織因子−第VIIa因子シグナル伝達は、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼに依存する。別の態様において、組織因子−第VIIa因子シグナル伝達は、プロテアーゼ活性化受容体2を介して起きる。さらなる態様において、試験化合物は、抗体又は小化学実体である。詳細な態様において、化合物は、MAb10H10の組織因子への結合を阻害する。さらなる詳細な態様において、化合物は、MAb5G9の組織因子への結合を阻害しない。
哺乳動物対象中の新生物疾患を治療するための方法であり、組織因子−第VIIa因子経路を介して、細胞中のシグナル伝達を調節する化合物の治療的有効量を投与することを含み、前記化合物が細胞ベースのアッセイ系における組織因子−第VIIa因子シグナル伝達のアンタゴニストとして作用し、及び前記化合物が、哺乳動物対象中において、新生物疾患を低減若しくは除去し、又はその発生若しくは再発を予防するのに有効である、前記方法が提供される。さらなる態様において、前記化合物は、哺乳動物対象中の止血を妨害しない。一態様において、組織因子−第VIIa因子シグナル伝達は、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼに依存する。別の態様において、組織因子−第VIIa因子シグナル伝達は、プロテアーゼ活性化受容体2を介して起きる。さらなる態様において、試験化合物は、抗体又は小化学実体である。詳細な態様において、化合物は、MAb10H10の組織因子への結合を阻害する。さらなる詳細な態様において、化合物は、MAb5G9の組織因子への結合を阻害しない。
哺乳動物対象中の炎症を治療するための方法であり、組織因子−第VIIa因子経路を介して、細胞中のシグナル伝達を調節する化合物の治療的有効量を投与することを含み、前記化合物が細胞ベースのアッセイ系における組織因子−第VIIa因子シグナル伝達のアンタゴニストとして作用し、及び前記化合物が、哺乳動物対象中において、疾病を低減若しくは除去し、又はその発生若しくは再発を予防するのに有効である、前記方法が提供される。さらなる態様において、前記化合物は、哺乳動物対象中の止血を妨害しない。一態様において、組織因子−第VIIa因子シグナル伝達は、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼに依存する。別の態様において、組織因子−第VIIa因子シグナル伝達は、プロテアーゼ活性化受容体2を介して起きる。さらなる態様において、試験化合物は、抗体又は小化学実体である。詳細な態様において、化合物は、MAb10H10の組織因子への結合を阻害する。さらなる詳細な態様において、化合物は、MAb5G9の組織因子への結合を阻害しない。
哺乳動物対象中における血管新生関連疾病状態の存在又は素因を決定する方法であり、前記哺乳動物対象から得た試料を準備すること、前記試料中の組織因子へ免疫特異的に結合する抗体を導入すること、及び前記試料中の組織因子に結合された抗体の存在又は量を測定することを含み、前記組織因子に結合した抗体の存在が、前記哺乳動物対象中の血管新生関連疾病状態の存在又は素因の指標であり、前記抗体が、組織因子シグナル伝達を阻害し、及び前記哺乳動物対象中の止血を妨害しない、前記方法が提供される。本方法のさらなる態様において、組織因子に結合された抗体の増加されたレベルは、血管新生関連疾病状態の存在又は素因を示唆する。詳細な態様において、抗体はMab10H10である。さらなる詳細な態様において、血管新生関連疾病状態は、新生物疾患又は炎症である。
哺乳動物対象中の新生物疾病状態の存在又は素因を決定する方法であり、前記哺乳動物対象から得た試料を準備すること、前記試料中の組織因子へ免疫特異的に結合する抗体を導入すること、及び前記試料中の組織因子に結合された抗体の存在又は量を測定することを含み、前記組織因子に結合した抗体の存在が、前記哺乳動物対象中における新生物疾病状態の存在又は素因の指標であり、前記抗体が、組織因子シグナル伝達を阻害し、前記哺乳動物対象中の止血を妨害しない、前記方法が提供される。本方法のさらなる態様において、組織因子に結合された抗体の増加されたレベルは、新生物疾病状態の存在又は素因を示唆する。詳細な態様において、抗体はMab10H10である。詳細な態様において、新生物疾病状態は、固形腫瘍、良性若しくは悪性乳癌、黒色腫、神経膠腫、星状細胞腫、血液の悪性腫瘍、白血病、肺癌、結腸直腸癌、子宮癌、子宮筋腫、卵巣癌、子宮内膜癌、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜ポリープ、前立腺癌、前立腺肥大症、下垂体癌、腺筋症、腺癌、髄膜腫、骨癌、多発性骨髄腫又は中枢神経系の癌である。
哺乳動物対象中の炎症性疾患の存在又は素因を決定する方法であり、前記哺乳動物対象から得た試料を準備すること、前記試料中の組織因子へ免疫特異的に結合する抗体を導入すること、及び前記試料中の組織因子に結合された抗体の存在又は量を測定することを含み、前記組織因子に結合した抗体の存在が、前記哺乳動物対象中の炎症性疾患の存在又は素因の指標であり、前記抗体が、組織因子シグナル伝達を阻害し、及び前記哺乳動物対象中の止血を妨害しない、前記方法が提供される。本方法のさらなる態様において、組織因子に結合された抗体の増加したレベルは、炎症性疾病状態の存在又は素因を示唆する。詳細な態様において、抗体はMab10H10である。
(発明の詳細)
一態様において、本発明は、(例えば、過剰なTF/VIIaシグナル伝達を有する対象中の)異常な組織因子/第VIIa因子(TF/VIIa)シグナル伝達活性を治癒し、及びTF/VIIaシグナル伝達に依存する、TF/VIIaシグナル伝達によって媒介される又はTF/VIIaシグナル伝達と関連する疾病又は症状に罹患する対象を治療するための組成物及び方法を提供する。異常なTF/VIIaシグナル伝達とは、健康な対象中の活性に比した、組織因子/第VIIa因子(TF/VIIa)シグナル伝達経路の過剰な活性又は不十分な活性を表す。TF/VIIaシグナル伝達に依存する疾病は、その発症又は発達がTF/VIIa経路の異常なシグナル伝達活性によって媒介され、又はTF/VIIa経路の異常なシグナル伝達活性と関連するあらゆる疾患又は症状を包含する。このような疾病の例としては、炎症、新生物疾患及び血管新生依存性疾患が挙げられる。血管新生依存性疾患は、過剰な血管新生を有する疾病若しくは疾患(例えば、癌、糖尿病性失明、加齢性黄斑変性、関節リウマチ及び乾癬)又は不十分な血管新生を有する疾病若しくは疾患(例えば、冠動脈疾患、卒中及び遅延した創傷治癒)を包含する。典型的には、本発明の組成物は、TFによって媒介される止血(例えば、凝固)経路を妨害しないTF/VIIaシグナル伝達経路の阻害剤を含む。本発明の方法は、治療を必要とする哺乳動物対象へ、このような阻害剤の有効量を投与することを含む。阻害剤は、対象中での出血のリスクを増加させることなく、炎症又は新生物疾患の発生を低下させる上で有効である。
細胞表面受容体組織因子(TF)の、セリンプロテアーゼ第VIIa因子との酵素的複合体は、生理的な止血及び凝固を活性化し、同時に、炎症、腫瘍進行及び血管新生において、プロテアーゼ活性化受容体シグナル伝達の引き金を引く。Mackman,Arterioscler.Thromb.Vase.Biol.24:1015−1022,2004;Riewald and Ruf,Crit.Care 7:123−129,2003;Belting et al.,Arterioscler.Thromb.Vase.Biol.25:15451550,2005)。豊富に生成される下流の凝固プロテアーゼによって凌駕されずに、直接の上流TF−VIIaシグナル伝達が、いかにして病態を決定するかということは、なお、血管生物学おける未解明の基本的な問題となっている。以下の実施例に詳述されているように、本発明は、細胞外タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)がTFと会合して、細胞シグナル伝達を保持しながら凝固を制御することを示す。細胞外TFCys186−Cys209ジスルフィドの切断は、PDIによって制御されるシグナル伝達TFの機能的特性を表現型模写する。従って、ジスルフィド交換経路は、受容体機能の特異性に対する細胞外スイッチとして作用する。シグナル伝達TFの原型立体構造を標的とするモノクローナル抗体は、インビボで細胞応答及び腫瘍増殖(例えば、乳癌又は黒色腫)を阻害した。TFによって誘導される有益な止血を損なわずに、病態生理学的なTFシグナル伝達を中断することは、機能的ジスルフィドスイッチを治療的な利益のために活用できる例を与える。
本発明は、具体的な方法、試薬、化合物、組成物又は生物系に限定されるものではなく、これらは、もちろん変動し得ることを理解すべきである。本明細書で使用されている用語は、具体的な実施形態を記載するためのものであり、限定を意図するものではないことも理解すべきである。また、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されている単数形(「a」、「an」及び「the」)には、文脈から別段の意味であることが明らかである場合を除き、複数表記も含まれる。従って、例えば、「細胞」という表記は、2つ又はそれ以上の細胞の組み合わせなどが含まれる。
以下のような変動は、開示されている方法を実施するのに適切であるので、量、時間的な持続などの測定可能な値を表す場合、本明細書において使用される「約」という用語は、指定されている値から±20%又は±10%、より好ましくは±5%、より好ましくは±1%、さらに好ましくは±0.1%の変動を包含するものとする。
別段の定義がなければ、本明細書に使用されている全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本発明の検査のための実施においては、本明細書に記載されているものと類似又は均等なあらゆる方法及び材料を使用可能であるが、本明細書には、好ましい材料及び方法が記載されている。本発明を記載し、権利を請求する際には、以下の用語が使用される。
「止血」とは、傷害を受けた血管からの出血の停止を表し、傷害領域中への血小板及びフィブリンの蓄積を制限するための制御機構によって相殺される、血管、血小板及び血漿因子の複合活性を必要とする。止血の異常は、血栓症又は過剰な出血を引き起こし得る。
「血管新生」とは、健康な状態又は疾病状態の哺乳動物対象中での新しい血管の増殖を表す。血管新生は、創傷治癒の間に起こり、外傷又は損傷後に組織への血流を回復させるために起こる。雌では、血管新生は、(子宮内膜を再構築し、排卵中に卵を成熟させるために)毎月の生殖周期の間に、及び(胎盤、母と胎児間の循環を構築するために)妊娠中にも起こる。血管新生阻害剤を上回って、血管新生増殖因子が産生される場合に、血管増殖が起こる。刺激物質を上回って阻害剤が存在する場合、血管新生は停止する。
過剰な血管新生は、癌、炎症、糖尿病性失明、加齢性黄斑変性、関節リウマチ又は乾癬などの(但し、これらに限定されない。)疾病中に生じる。これらの症状では、新しい血管は病的組織に栄養を供給し、正常な組織を破壊し、癌の場合には、腫瘍の転移を可能とする。不十分な血管新生は、冠動脈疾患、卒中及び遅延された創傷治癒などの(但し、これらに限定されない。)疾病中に生じる。これらの症状では、血管増殖が不十分であり、循環が適切に回復されず、組織死のリスクをもたらす。
新生物疾患の治療
新生物疾患は、異常な及び調節されない細胞分裂によって引き起こされる癌又はあらゆる悪性増殖若しくは腫瘍を表す。新生物疾患は、リンパ系又は血流を通じて、身体の他の部分に広がり得る。「固形腫瘍」には、肉腫、黒色腫、癌腫又は他の固形腫瘍癌が含まれるが、これらに限定されない。
「肉腫」とは、胚性結合組織のような物質から構成される腫瘍を表し、一般に、繊維状又は均一な物質中に包埋された、緊密に充填された細胞から構成される。肉腫には、軟骨肉腫、繊維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、Abemethyの肉腫、脂肪肉腫(adipose sarcoma)、脂肪肉腫(liposarcoma)、胞状軟部肉腫、エナメル上皮肉腫、ブドウ状肉腫、緑色腫、絨毛癌、胎児性肉腫、ウィルムス腫瘍肉腫、子宮内膜肉腫、子宮内膜間質肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、繊維芽細胞肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球性肉腫、ホジキン肉腫、突発性多発性色素性出血性肉腫、B細胞の免疫芽細胞性肉腫、リンパ腫、T細胞の免疫芽細胞性肉腫、ジェンセン肉腫(Jensen’s sarcoma)、カポジ肉腫、クッパー細胞肉腫、血管肉腫、白血肉腫、悪性間葉性軟骨肉腫、傍骨性肉腫、網状赤血球肉腫、ラウス肉腫、漿液嚢胞性肉腫、滑膜肉腫及び毛細血管拡張性肉腫が含まれるが、これらに限定されない。
「黒色腫」とは、皮膚及び他の臓器のメラニン細胞系から生じる腫瘍を表す。黒色腫には、例えば、末端性黒子性黒色腫、無色素性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91黒色腫、ハーディング−パッセイ(Harding−Passey)黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子黒色腫、悪性黒色腫、結節性黒色腫、爪下黒色腫及び表在拡大型黒色腫が含まれる。
癌腫は、周囲組織に浸潤し、転移を生じる傾向がある上皮細胞から構成される悪性の新たな増殖を表す。典型的な癌腫には、たとえば、腺房癌、腺房細胞癌、腺嚢胞癌、腺様嚢胞癌、腺腫性癌(carcinoma adenomatosum)、副腎皮質の癌腫、肺胞癌、肺胞細胞癌、基底細胞癌、基底細胞癌(carcinoma basocellulare)、類基底細胞癌、基底扁平細胞癌、気管支肺胞上皮癌、細気管支癌、気管支原性肺癌、脳状癌(cerebriform carcinoma)、胆管細胞癌、絨毛癌、膠様癌(colloid carcinoma)、面疱癌、体癌、篩状癌、鎧状癌、皮膚癌、円柱状癌(cylindrical carcinoma)、円柱細胞癌、腺管癌、緻密癌(carcinoma durum)、胚性癌腫、脳様癌(encephaloid carcinoma)、類表皮癌(epiermoid carcinoma)、上皮性腺様癌(carcinoma epitheliale adenoides)、外部増殖性癌(exophytic carcinoma)、潰瘍外癌(carcinoma ex ulcere)、繊維性癌(carcinoma fibrosum)、ゼラチン状癌(gelatiniform carcinoma)、ゼラチン状癌(gelatinous carcinoma)、巨細胞癌、巨細胞癌(carcinoma gigantocellulare)、腺癌、顆粒細胞癌、毛母体癌(hair−matrix carcinoma)、血液様癌(ematoid carcinoma)、肝細胞癌、ヒュルトレ細胞癌、ヒアリン癌(hyaline carcinoma)、hypemephroid癌、乳児性胎児性癌(infantile embryonal carcinoma)、上皮内癌(carcinoma in situ)、表内皮癌、上内皮癌(intraepithelial carcinoma)、クロンペシェール癌(Krompecher’s carcinoma)、クルチトスキー細胞癌(Kulchitzky−cell carcinoma)、大細胞癌、レンズ状癌(lenticular carcinoma)、レンズ状癌(carcinoma lenticulare)、脂肪性癌(lipomatous carcinoma)、リンパ上皮癌、髄様癌(carcinoma medullare)、髄様癌(medullary carcinoma)、黒色癌(melanotic carcinoma)、黒子癌(carcinoma molle)、粘液性癌、粘液腺癌(carcinoma muciparurn)、粘液細胞癌(carcinoma mucocellulare)、粘液性類表皮癌、粘膜癌(carcinoma mucosum)、粘膜癌(mucous carcinoma)、粘液腫癌(carcinoma myxomatodes)、上咽頭癌(naspharyngeal carcinoma)、燕麦細胞癌、骨化性癌(carcinoma ossificans)、類骨癌(osteoid carcinoma)、乳頭癌、門脈周囲癌(periportal carcinoma)、前浸潤癌、有棘細胞癌、糊状癌(pultaceous carcinoma)、腎臓の腎細胞癌、補充細胞癌、肉腫瘍癌(carcinoma sarcomatodes)、シュナイダー癌腫(schneiderian carcinoma)、硬癌腫(scirrhous carcinoma)、陰嚢癌、印環細胞癌、単純癌、小細胞癌、ソラノイド癌(solanoid carcinoma)、楕円状細胞癌(spheroidal cell carcinoma)、紡錘細胞癌、海綿質癌(carcinoma spongiosum)、扁平上皮癌、扁平細胞癌、靭帯癌(string carcinoma)、毛細血管拡張症癌(carcinoma telangiectaticum)、毛細血管拡張症様癌(carcinoma telangiectodes)、移行細胞癌、結節性癌(carcinoma tuberosum)、結節状癌(tuberous carcinoma)、いぼ状癌及びcarcinoma viflosumが含まれる。
「白血病」は、血液形成臓器の進行性悪性疾患を表し、一般に、血液及び骨髄中での白血球及びそれらの前駆体の乱れた増殖及び発達によって特徴付けられる。白血病は、一般に、(1)疾病の期間及び特徴−急性又は慢性、(2)関与する細胞の種類;骨髄(骨髄性)、リンパ球(リンパ性)又は単球及び(3)血液中の異常な細胞の数の増加又は不増加−白血病性または無白血病性(亜白血病性)に基づいて臨床的に分類される。白血病には、例えば、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性顆粒球性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性前骨髄球性白血病、成人T細胞白血病、無白血病性白血病、白血球性白血病(leukocythemic leukemia)、好塩基球性白血病、芽細胞白血病、ウシ白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚白血病、胎児性白血病、好酸球性白血病、グロスの白血病(Gross’leukemia)、毛様細胞白血病、血芽細胞白血病(hemoblastic leukemia)、血球芽細胞白血病(hemocytoblastic leukemia)、組織球性白血病、幹細胞白血病、急性単球性白血病、白血球減少性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、リンパ向性白血病、リンパ系白血病(lymphoid leukemia)、リンパ肉腫細胞白血病、肥満細胞白血病、巨核芽球性白血病、微骨髄芽球性白血病(micromyeloblastic leukemia)、単球性白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄性白血病、骨髄性顆粒球性白血病、骨髄単球性白血病、ネーゲリ白血病(Naegeli leukemia)、形質細胞白血病、形質細胞性白血病、前骨髄球性白血病、リーダー細胞白血病(Rieder cell leukemia)、シリングの白血病(Schilling’s leukemia)、幹細胞白血病(stem cell leukemia)、亜白血性白血病及び未分化細胞白血病が含まれる。
さらなる癌には、例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、乳癌、卵巣癌、肺癌、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、小細胞肺癌、原発性脳腫瘍、胃癌、大腸癌、悪性膵島細胞腺腫、悪性カルチノイド、膀胱癌、前悪性皮膚病変、精巣癌、リンパ腫、甲状腺癌、神経芽細胞腫、食道癌、泌尿生殖路癌、悪性高カルシウム血症、子宮頸癌、子宮内膜癌、副腎皮質癌及び前立腺癌が含まれる。
炎症の治療
「炎症」又は「炎症性疾患」とは、急性応答(すなわち、炎症プロセスが活発である応答)及び慢性応答(すなわち、新たな結合組織の緩やかな進行及び形成を特徴とする応答)の両方を表す。急性及び慢性炎症は、関与する細胞の種類によって区別され得る。急性炎症には、しばしば、多形核好中球が関与するのに対して、慢性炎症は、通常、リンパ組織球性及び/又は肉芽腫応答によって特徴付けられる。炎症には、特異的防御系及び非特異的防御系の両方の反応が含まれる。特異的な防御系反応とは、抗原(おそらく、自己抗原を含む。)に対する特異的な免疫系反応応答である。非特異的防御系反応は、免疫学的な記憶ができない白血球によって媒介される炎症性応答である。このような細胞には、顆粒球、マクロファージ、好中球及び好酸球が含まれる。炎症の特異的な種類の例は、びまん性炎症、局所的炎症、クループ性炎症、間質性炎症、閉塞性炎症、実質性炎症、反応性炎症、特異的炎症、毒性炎症及び外傷性炎症である。
炎症を伴う疾患からの動物の保護とは、炎症性因子(すなわち、炎症性応答を引き起こすことができる因子、例えば、メタコリン、ヒスタミン、アレルゲン、ロイコトリエン、生理的食塩水、過換気、運動、二酸化硫黄、アデノシン、プロプラノロール、冷気、抗原及びブラジキニン)に対する炎症性応答(すなわち、炎症を伴う応答)の可能性を低下させることを表す。好ましくは、炎症性応答に対する可能性は、最適には、動物が、もはや、炎症性因子への曝露に由来する不快感及び/又は変化した機能に苦しまない程度まで低下される。例えば、動物を保護するとは、動物に投与された場合に、疾病の発症を予防し、及び/又は疾病の症候、徴候若しくは原因を治癒若しくは緩和させる化合物の能力を表し得る。特に、動物を保護するとは、過敏性又は有害な炎症性応答を抑圧する(例えば、低下し、阻害し、又は遮断する)ために、炎症性応答を調節することを表す。また、特に、動物を保護することは、細胞媒介性免疫及び/又は液性免疫(すなわち、T細胞活性及び/又はIgE活性)を制御することを表す。疾病は、動物の正常な健康状態からのあらゆる逸脱を表し、疾病症候及び逸脱(例えば、感染、遺伝子突然変異、遺伝的欠陥など)が生じているが、未だ症候が顕在化していない状態が含まれる。
抗体治療薬
幾つかの実施形態において、本発明は、低下された又は下方制御されたTF/VIIaシグナル伝達活性を望む哺乳動物対象(例えば、炎症又は腫瘍に罹患している対象)中で、TF/VIIaシグナル伝達を阻害又は抑制するための方法を提供する。本方法は、TF/VIIaシグナル伝達を阻害又は抑制するのに有効な量で、哺乳動物対象にTF/VIIaシグナル伝達の阻害剤を投与することを含む。幾つかの関連する実施形態において、本発明は、哺乳動物対象中で、組織因子/第VII因子シグナル伝達に関連し、又は組織因子/因子VIIシグナル伝達に依存する疾病の症候を治療又は軽減する方法を提供する。上記のように、このような疾病には、例えば、血管新生関連疾患、新生物疾患又は炎症が含まれる。本方法は、哺乳動物対象中で、血管新生関連疾患、新生物疾患若しくは炎症を低下若しくは除去し、又はその発症若しくは再発を予防するのに有効な量で、哺乳動物対象に組織因子シグナル伝達の阻害剤を投与することを含む。幾つかの実施形態において、本発明は、組織因子シグナル伝達を阻害する組織因子に対する抗体であり、及び哺乳動物対象中での止血(例えば、凝固)を妨害しない阻害剤を使用する。
典型的な抗体は、免疫グロブリン遺伝子からのフレームワーク領域又は抗原を特異的に結合及び認識するその断片を含むポリペプチドを表す。認識された免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、ε及びμ定常領域遺伝子並びに多数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、κ又はλの何れかとして分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ又はεとして分類され、次いで、これらは、それぞれ、免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを規定する。典型的には、抗体の抗原結合領域は、結合の特異性及び親和性において最も重要である。
抗体及び抗体由来の抗原結合分子は、所定のエピトープ(例えば、MAb10H10によって認識される、TF又は特異的TFペプチドエピトープ)への、強力な一価、二価又は多価結合を示すポリペプチド鎖を表す。別段の記載がなければ、本発明の抗体又は抗原結合分子は、あらゆる脊椎動物、ラクダ科の動物、鳥類又は魚種に由来する配列を有し得る。本発明の抗体又は抗原結合分子は、あらゆる適切な技術、例えばハイブリドーマ技術、リボソームディスプレイ、ファージディスプレイ、遺伝子シャッフリングライブラリー、半合成若しくは全合成ライブラリー又はこれらの組み合わせを用いて作製することが可能である。本明細書に詳述されているように、本発明の抗体又は抗原結合分子には、完全な状態の抗体、抗原結合ポリペプチド鎖及び他のデザイナー抗体が含まれる(例えば、Serafini,J Nucl Med. 34:533−6,1993参照)。
抗体又は抗原結合分子には、同族抗原(例えば、MAb10H10によって認識される、TF又は特異的TFペプチドエピトープ)を結合する能力を保持する完全な抗体の抗原結合部分を含有する抗体断片も含まれる。このような抗体断片の例には、(i)Fab断片(VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片)、(ii)F(ab’)断片(ヒンジ領域において、ジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片)、(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.(1989) Nature 341:544−546)及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVL及びVHは別個の遺伝子によってコードされているが、これらは、VL及びVH領域が対合して一価分子を形成している単一のタンパク質鎖として、これらの作製を可能とする合成リンカーによって、組み換え法を用いて連結することが可能である(一本鎖Fv(scFv)として知られている。例えば、Bird et al.(1988) Science 242:423−426;and Huston et al.(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879−5883を参照)。
本発明の抗体又は抗原結合分子には、さらに、他のタンパク質との融合タンパク質へ化学的に連結され、又は他のタンパク質との融合タンパク質として発現される1つ又はそれ以上の免疫グロブリン鎖が含まれる。本発明の抗体又は抗原結合分子には、二重特異性抗体も含まれる。二重特異的又は二機能性抗体は、2つの異なる重/軽鎖対及び2つの異なる結合部位を有する人工のハイブリッド抗体である。本発明の他の抗原結合断片又は抗体部分には、抗体分子が2つの異なるエピトープ、単一結合ドメイン(dAb)及びミニボディを認識する二価のscFV(ダイアボディ)、二重特異的scFv抗体が含まれる。
本明細書に記載されている様々な抗体又は抗原結合断片は、完全な抗体の酵素的若しくは化学的修飾によって作製し、又は組み換えDNA法(例えば、一本鎖Fv)を用いて新規に合成し、又はファージディスプレイライブラリーを用いて同定することが可能である(例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552−554,1990参照)。例えば、ミニボディは、本分野で記載されている方法を用いて作製することが可能である。例えば、Vaughan and Sollazzo,Comb Chem High Throughput Screen. 4:417−30 2001。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合又はFab断片の連結など、様々な方法によって作製することが可能である。例えば、「Songsivilai & Lachmann,Clin.Exp.Immunol.79:315−321(1990);Kostelny et al.,J.Immunol.148,1547−1553(1992)」を参照されたい。一本鎖抗体は、ファージディスプレイライブラリー又はリボソームライブラリー、遺伝子シャッフルされたライブラリーを用いて同定することが可能である。このようなライブラリーは、合成、半合成又はnave及び免疫適格性の源から構築することができる。
上記治療法の実施において使用することができる抗体の1つの具体例は、10H10と称されるマウスモノクローナル抗体である。以下の実施例に示されているように、MAb10H10は、止血を妨害せずに、組織因子シグナル伝達の阻害剤として作用する抗体である。この抗体は、米国特許5,223,427及び6,001,978に、極めて詳しく記載されている。本抗体を分泌するハイブリドーマは、HB9383の受託番号で、1987年3月27日に、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)(Manassas,VA)に、ブダペスト条約の要件に従って寄託されている。このハイブリドーマによって産生された10H10抗体の他に、同一の結合特異性及びMAb10H10の同一の結合親和性又はより優れた結合親和性を有するすべての抗体も、本発明の治療法において使用することができる。さらに、本発明の治療方法は、MAb10H10に由来するすべての抗原結合分子若しくは断片又は同一の結合特異性及びMAb10H10の同一の結合親和性若しくはより優れた結合親和性を有する抗体も使用することが可能である。
本発明の治療方法の幾つかは、ヒト対象を治療することに関する。これらの方法では、ヒト化抗体、ヒト抗体又は(例えば、定常領域中に)ヒト配列を含有するキメラ抗体が好ましい。ヒト以外の動物(例えば、マウス)から単離された抗体と比べて、このような抗体は、ヒト対象に投与された場合に、より少ない抗原性を有し、又は抗原性を有しない。キメラ抗TF抗体(例えば、MAb10H10と同一の結合特異性を有するもの)は、ヒト抗体の領域と一緒に、非ヒト抗TF抗体由来の領域から構成され得る。例えば、キメラH鎖は、ヒト重鎖定常領域の少なくとも一部に連結された、本明細書中に例示されたマウス抗TF抗体の重鎖可変領域の抗原結合領域を含み得る。このキメラ重鎖は、ヒト軽鎖定常領域の少なくとも一部に連結された、マウス抗TF抗体の軽鎖可変領域の抗原結合領域を含むキメラL鎖と組み合わされ得る。
本発明のキメラ抗TF抗体は、本分野で公知の方法に従って作製することが可能である。例えば、Robinson et al..,国際特許公開PCT/US86/02269;Akira,et al..,欧州特許出願184,187;Taniguchi,M.,欧州特許出願171,496;Morrison et al..,欧州特許出願173,494;Neuberger et al..,国際出願WO86/01533;Cabilly et al . 米国特許4,816,567;Cabilly et al.,欧州特許出願125,023;Better et al.,Science 240:1041−1043,1988;Liu et al.;PNAS84:3439−3443,1987;Liu et al.,J. Immunol. 139:3521−3526,1987;Sun et al.,PNAS 84:214−218,1987;Nishimura et al.,Cane. Res. 47:999−1005,1987;Wood et al.,Nature 314:446−449,1985;Shaw et al.,J. Natl. Cancer Inst. 80:1553−1559,1988を参照されたい。
非ヒト抗体由来の完全な可変領域を有するキメラ抗体は、ヒトでの抗体の抗原性を低下させるために、さらにヒト化することが可能である。これは、典型的には、ヒトFv可変領域由来の等価な配列又はアミノ酸残基で、Fv可変領域(フレームワーク領域又は非CDR領域)中の一定の配列又はアミノ酸残基を置換することによって達成される。これらのさらに置換された配列又はアミノ酸残基は、通常、抗原結合に直接関与していない。より頻繁には、非ヒト抗体のヒト化は、非ヒト抗体(例えば、本明細書中に例示されているマウス抗TF抗体)のCDRのみをヒト抗体中のCDRと置換することによって行われる。幾つかの事例では、この後に、ヒトフレームワーク領域中の幾つかのさらなる残基を、非ヒトドナー抗体由来の対応する残基で置換する。しばしば、抗原への結合を改善するために、このようなさらなる移植が必要とされる。これは、非ヒト抗体から移植されたCDRのみを有するヒト化抗体は、非ヒトドナー抗体の結合活性と比べて、完全な結合活性より低い結合活性を有し得るからである。従って、CDRの他に、本発明のヒト化抗hTF抗体(例えば、MAb10H10と同一の結合特異性を有するもの)は、しばしば、非ヒトドナー抗体(例えば、本明細書中に例示されているマウス抗体)由来の対応する残基で置換されたヒトフレームワーク領域中の幾つかのアミノ酸残基を有することができる。置換のためのフレームワーク残基を選択するための基準など、CDR置換によってヒト化抗体を作製する方法は、本分野において周知である。例えば、Winter et al.,英国特許出願GB2188638A(1987),米国特許5,225,539;Jones et al.,Nature 321:552−525,1986;Verhoeyan et al.,Science 239:1534,1988;Beidler et al.,J. Immunol.141:4053−4060,1988;及びWO94/10332を参照されたい。
キメラ又はヒト化抗hPAR1抗体に加えて、ヒト対象を治療するための治療法は、MAb10H10などのマウス抗体に比べて、同一の結合特異性及び同等又はより優れた結合親和性を示す完全なヒト抗体も使用することが可能である。ヒト抗TF抗体は、本分野で周知である方法の何れかを用いて、例えば、ヒト免疫グロブリン配列から得られた抗体ライブラリーを用いるファージディスプレイ法を用いて作製することが可能である。例えば、Lonberg and Huszar,Int.Rev.Immunol.13:65−93(1995),米国特許4,444,887及び4,716,111;並びにPCT公開WO98/46645、WO98/50433、WO98/24893、WO98/16654、WO96/34096、WO96/33735及びWO91/10741を参照されたい。
Mab10H10の同一の結合特異性及び同等又はより優れた結合親和性を有する誘導体抗体又は抗原結合分子は、本分野において周知であり、本明細書中に例示されているような方法によって取得することが可能である。例えば、組織因子抗原に対して作製された候補抗体又は免疫グロブリンは、例えば、組織因子ポリペプチド又はペプチドへの結合に関して、MAb10H10と競合する能力についてスクリーニングすることができる。ヒト組織因子のポリペプチド及びポリヌクレオチド配列は、公知である(例えば、Scarpati et al.,Biochemistry 26:5234−5238,1987;and Fisher et al.,Thromb.Res.48:89−99,1987参照)。スクリーニングに適した組織因子ポリペプチド又はペプチドは、本分野で周知の方法又は本明細書中に記載されている方法を用いて作製することが可能である。さらに、ヒト組織因子由来の特異的な抗原性ペプチドの群は、本分野において、例えば、米国特許5,223,427及び6,001,978に記載されている。これらの特許は、組織因子ペプチドの群へのMAb10H10結合の特性についても開示している。例えば、MAb10H10は、SGTTNTVAAYNLTWKSTNFKTILEWEPKPV(配列番号1)又はECDLTDEIVKDVKQTY(配列番号2)の配列を有する組織因子ペプチドへ、特異的に結合するが、ヒト組織因子由来の他の幾つかの抗原性ペプチドには結合しないことが示された。後者のペプチドには、例えば、TKSGDWKSKCFYTTDTECDLTDEIVKDVKQTY(配列番号3)又はLARVFSYPAGNVESTGSAGEPLYENSPEFTPYLC(配列番号4)が含まれる。従って、候補抗体(例えば、ヒト組織因子ポリペプチドに対して作製された抗体)は、MA1b10H10が配列番号1及び/又は配列番号2の配列を有するペプチドに結合するのを遮断する能力についてスクリーニングすることが可能である。候補抗体は、米国特許5,223,427に記載されているように、ヒト組織因子ペプチドの群への結合に関してMAb10H10の結合特性と同一又は実質的に同一の結合特性についてもスクリーニングすることが可能である。このようなスクリーニングを実施する方法は本分野において周知であり(例えば、米国特許5,223,427及び6,001,978参照)、本明細書中にも記載されている。
インビトロスクリーニングアッセイに加えて、本発明の方法を実施するのに適した抗TF抗体を同定するために、インビボ法を使用することも可能である。例えば、同じ結合特性を維持しながら、又はより優れた結合特性を提供しながら、抗体中のヒト可変領域で、非ヒト抗体可変領域を置換するインビボ法は、米国特許出願逐次番号10/778,726(公開番号20050008625)に開示されている。マウスMAb10H10と同じ結合特異性及び同じ又はより優れた結合親和性を有するヒト抗体を作製するために、この方法は、エピトープで誘導して、非ヒト抗体の可変領域を完全なヒト抗体で置換することに依拠している。得られたヒト抗体は、一般に、基準非ヒト抗体と構造的に無関係であるが、基準抗体と同一の抗原上の同一のエピトープに結合する。
最初の非ヒト抗体(例えば、マウスMAb10H10)より、特異的エピトープに対して同一又はより優れた親和性を有するヒト抗体は、ヒト抗体を日常的に製造している会社から取得することもできる。例えば、所望のヒト抗体を作製するために、KaloBios,Inc.(Mountain View,CA)は、ヒト「アクセプター」抗体ライブラリーを使用する。次いで、異なる親和性を有するが、非ヒト抗体と同一のエピトープに結合するヒト抗体の誘導されたライブラリー又はエピトープに焦点を当てたライブラリーが作製される。次いで、エピトープに焦点を当てたライブラリー中の抗体は、最初の非ヒト抗体と類似の親和性又はより高い親和性に関して選択される。次いで、親和性及び配列の同一性についてのさらなる分析に、同定されたヒト抗体を供する。
MAb10H10及びこれに由来する抗体又は抗原結合分子に加え、本発明の治療方法を実施するための所望の特性を有する他の抗TF抗体も、本分野で一般的に実施されている技術及び方法を用いて容易に作製することができる。本分野において十分理解されているように、生物特異的捕捉試薬には、抗体、例えば、転移性細胞又は炎症細胞上の組織因子に結合する抗体の結合断片(例えば、一本鎖抗体、Fab’断片、F(ab)’断片及びscFvタンパク質及びアフィボディ(Affibody,Teknikringen 30,floor 6,Box 700 04,Stockholm SE−10044,Sweden;米国特許5,831,012参照(参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。))。が含まれる。予定される使用に応じて、それらは、別の生物分子を特異的に結合する受容体及び他のタンパク質も含み得る。
ハイブリッド抗体及びハイブリッド抗体断片には、完全長重鎖及び軽鎖を有する完全な抗体分子又はFab、Fab’、F(ab’)、Fd、scFv、抗体軽鎖及び抗体重鎖などのこれらのあらゆる断片が含まれる。本明細書に記載されているような可変領域及び様々な種に由来する定常領域を有するキメラ抗体も適切である。例えば、米国出願20030022244を参照されたい。
まず、それに対して抗体が産生され得る所定の標的対象が選択される。標的対象に対して誘導されたモノクローナル抗体を作製するための技術は、当業者に周知である。このような技術の例には、ディスプレイライブラリー、xeno又はhumabマウス、ハイブリドーマなどを用いる技術が含まれるが、これらに限定されるものではない。標的対象には、抗原性を示すことができるあらゆる物質が含まれ、通常、タンパク質又はタンパク質多糖である。例には、受容体、酵素、ホルモン、成長因子、ペプチドなどが含まれる。天然に存在する抗体が本発明の開示に従う使用に適しているのみならず、所定の対象に対して誘導された加工された抗体及び抗体断片も適切であることを理解すべきである。
本明細書に記載されている技術に供することが可能な抗体(Ab)には、ファージ又はファジミドディスプレイ技術から得られた、モノクローナル及びポリクローナルAb並びにFab、Fab’、F(ab’)、Fd、scFv、ダイアボディ、抗体軽鎖、抗体重鎖及び/又は抗体断片などの抗体断片が含まれる。まず、始源種から初発抗体を取得する。より具体的には、標的抗原に対して特異性を有する始源種抗体の、軽鎖、重鎖又は両鎖の可変部分の核酸又はアミノ酸配列が必要とされる。始源種は、抗体又は抗体ライブラリーを作製するために使用されたあらゆる種、例えば、ラット、マウス、ウサギ、ニワトリ、サル、ヒトなどである。モノクローナル抗体を作製及びクローニングするための技術は、当業者に周知である。所望の抗体が得られた後、CDRのあらゆる可能な定義(例えば、Kabatのみ、Chothiaのみ、KabatとChothiaの組み合わせ、及び当業者に公知の他のあらゆる定義)を用いて、可変領域(V及びV)を成分部分(すなわち、フレームワーク(FR)及びCDR)へ分離する。一旦、それが取得されたら、適切な標的種フレームワークの選択が必要である。一実施形態は、始源種抗体配列に由来する各個別のフレームワーク領域を、標的種由来の可変アミノ酸配列又は遺伝子配列と並置することを含む。並置のための検索プログラムは、本分野において周知である(例えば、BLASTなど)。例えば、標的種がヒトである場合には、このようなアミノ酸配列又は遺伝子配列の源(生殖系列又は再編成された抗体配列)は、Genbank、NCBIタンパク質データバンク(http://ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)、VBASE、ヒト抗体遺伝子のデータベース(http://www.mrc−cpe.cam.ac.uk/imt−doc)、及び免疫グロブリンのKabatデータベース(http://www.immuno.bme.nwu.edu)などのあらゆる適切な参照データベース又は翻訳されたその産物中に見出され得る。ヌクレオチド配列に基づいて並置が為された場合には、次いで、そのサブセットの何れの遺伝子が、始源種抗体に対して最も近いアミノ酸相同性を有するかを決定するために、選択された遺伝子を分析すべきである。本明細書中に記載されている手順に従って、データベース中の他の配列と比べて、より高い程度の相同性に近づくアミノ酸配列又は遺伝子配列を使用し、操作できることが想定される。さらに、本明細書に記載されている手順に従って操作及び選択されたときに、所定の標的抗原に対して特異性を示す産物をコードする場合には、より低い相同性を有するアミノ酸配列又は遺伝子を使用することが可能である。ある種の実施形態には、相同性の許容される範囲は、約50%より大きい。標的種はヒト以外であり得ることを理解すべきである。
「治療する」とは、寛解、緩解、症候の減弱若しくは患者が病状をより耐容できるようにすること、変性若しくは減退の速度を遅くすること、又は変性の最終点の衰弱度をより低くすることなどの、あらゆる客観的又は主観的パラメータを含む、癌又は炎症の治療又は軽減又は予防における何らかの成功の兆候を表す。症候の治療又は軽減は、医師による検査の結果など、客観的又は主観的パラメータに基づき得る。従って、「治療する」という用語には、眼疾患に関連する症候又は症状の発達を予防し若しくは遅延し、軽減し、又は停止し、又は阻害するために、本発明の化合物又は薬剤を投与することが含まれる。「治療効果」という用語は、対象における疾病、疾病の症候又は疾病の副作用の低減、除去又は予防を表す。
「との組み合わせ」、「組み合わせ療法」及び「組み合わせ製品」とは、ある種の実施形態において、第一の治療剤及び本明細書で使用される化合物を患者に同時投与することを表す。組み合わせて投与される場合、各成分は、同時に投与することが可能であり、又は異なる時点において、任意の順序で順次に投与することが可能である。従って、各成分は、所望の治療効果を与えるために、別個に、但し、時間的に十分に近接して投与することができる。
本発明の方法を用いて癌、転移性癌又は炎症を「治療する」又は本発明の方法を用いたこれらの「治療」には、癌又は炎症のリスクが増大している可能性があるが、感染の症候を未だ経験又は示していない対象において、症候の開始を予防すること、癌又は炎症の症候を阻害すること(その発達を遅らせ、又は停止させること。)、癌又は炎症の症候又は副作用からの軽減を与えること(対症治療を含む。)及び癌又は炎症の症候を緩和させること(退縮を引き起こすこと)が含まれる。「治療する」とは、寛解、緩解、症候の減弱若しくは患者が病状をより耐容できるようにすること、変性若しくは減退の速度を遅くすること、又は変性の最終点の衰弱度をより低くすることなどの、あらゆる客観的又は主観的パラメータを含む、癌又は炎症の治療又は軽減又は予防における何らかの成功の兆候を表す。症候の治療又は軽減は、医師による検査の結果など、客観的又は主観的パラメータに基づき得る。従って、「治療する」という用語には、眼疾患に関連する症候又は症状の発達を予防し若しくは遅延し、軽減し、又は停止し若しくは阻害するために、本発明の化合物又は薬剤を投与することが含まれる。「治療効果」という用語は、対象中の疾病、疾病の症候又は疾病の副作用の低減、除去又は予防を表す。
「投薬単位」とは、治療されるべき個体に対する単位投薬として適した物理的に分離された単位を表す。各単位は、必要とされる医薬担体とともに、所望される治療効果を生じるように計算された活性化合物の所定量を含有することができる。投薬単位形態に対する規格は、(a)活性化合物の特有の特徴及び達成されるべき具体的な治療効果並びに(b)このような活性化合物を配合する分野に固有の制約によって規定され得る。
2つ又はそれ以上の核酸又はポリペプチド配列に関する「同一の」又はパーセント「同一性」という用語は、以下に記載されている初期設定パラメータでBLAT又はBLAST2.0配列比較アルゴリズムを用いて測定され、又は手動アラインメント及び視覚的検査(例えば、NCBIのウェブサイト参照)によって測定された場合に、同一である2つ若しくはそれ以上の核酸若しくはポリペプチド配列、又は同一であるアミノ酸残基若しくはヌクレオチドの指定されたパーセント(すなわち、比較ウィンドウ又は指定された領域にわたって最大の一致度が得られるように比較及び並置された場合に、指定された領域(例えば、本明細書に記載されている組織因子若しくは組織因子に対する抗体をコードするヌクレオチド配列又は本明細書に記載されている組織因子若しくは組織因子に対する抗体のアミノ酸配列)にわたって、約60%の同一性、好ましくは、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の同一性)を有する2つ若しくはそれ以上の配列若しくはサブ配列を表す。このような配列は、次いで、「実質的に同一」であると言われる。本用語は、検査配列の相補物を表し、又は検査配列の相補物に対しても適用することができる。本用語は、欠失及び/又は付加を有する配列並びに置換を有する配列も含む。以下に記載されているように、好ましいアルゴリズムは、ギャップなどを考慮し得る。好ましくは、同一性は、少なくとも約25アミノ酸若しくはヌクレオチド長である領域にわたって、又は、より好ましくは50ないし100アミノ酸若しくはヌクレオチド長である領域にわたって存在する。
配列比較の場合、典型的には、ある配列が基準配列として作用し、該配列に対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び基準配列をコンピュータに入力し、必要であれば、サブ配列座標を指定し、及び配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。好ましくは、初期設定プログラムパラメータを使用することが可能であり、又は別のパラメータを指定することが可能である。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、基準配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
本明細書において使用される「比較ウィンドウ」には、20から600まで、通常は約50から200まで、より一般的には約100から150までからなる群から選択される連続する位置の数の何れか一つのセグメントに対する参照が含まれ、ここで、2つの配列は最適に並置された後に、配列は連続位置の同数の基準配列に対して比較され得る。比較のために配列を並置する方法は、本分野において周知である。例えば、「Smith and Waterman,Adv.Appl.Math,2:482,1981」の局所相同性アルゴリズムによって、「Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol,48:443,1970」の相同性アラインメントアルゴリズムによって、「Pearson and Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,85:2444,1988の類似法のための検索、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WI)における、GAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA)によって、又は手動でのアラインメント及び目視(例えば、Ausubel et al.,eds.,Current Protocols in Molecular Biology.1995補遺を参照されたい。)によって、比較のための配列の最適アラインメントを行うことができる。
パーセント配列同一性及び配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの好ましい例は、それぞれ、「Altschul et al.,Nuc.AcidsRes.25:3389−3402,1977」及び「Altschul et al.,J.Mol.Biol,215:403−410,1990」に記載されているBLAST及びBLAST2.0アルゴリズムである。本発明の核酸及びタンパク質に対するパーセント配列同一性を決定するために、本明細書に記載されているパラメータを用いて、BLAST及びBLAST2.0が使用される。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、「National Center for Biotechnology Information」(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて、公に頒布されている。このアルゴリズムでは、まず、照会配列中の長さWの短い単語を同定することによって、データベース配列中の同じ長さの単語とともに並置された場合に、何らかの正の値の閾値スコアに合致し又は何らかの正の値の閾値スコアを充足する、高スコアリング配列対(HSP;high scoring sequence pair)を同定する。Tは、隣接ワードスコア閾値と称される(Altschul et al.,上記)。これらの初期隣接ワードヒットは、これらを含有するより長いHSPを見出すための検索を開始するための種として機能する。このワードヒットは、累積アラインメントスコアが増加可能である限り、各配列に沿って両方向に伸長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列に対して、パラメータN(合致した残基の対に対するリワードスコア;常に0より大きい)及びN(合致しなかった残基に対するペナルティスコア;常に0未満)を用いて計算される。アミノ酸配列については、累積スコアを計算するために、スコアリングマトリックスが使用される。各方向へのワードヒットの伸長は、累積アラインメントスコアが、その達成された最大値から量Xだけ減少した場合に停止し、スコアが負である1つ若しくはそれ以上の残基アラインメントの蓄積によって、累積スコアは0若しくは0以下となり、又は何れかの配列の末端に到達する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T及びXは、整列の感度と速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、11のワード長(W;wordlength)、10の予測値(E;expectation)、M=5、N=−4及び両鎖の比較を初期設定として使用する。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは、初期設定として、3のワード長、及び10の予測値(E)及び50のBLOSUM62採点マトリクス(Henikoff and Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:10915,1989参照)アラインメント(B)、10の予測値(E)、M=5、N=−4及び両鎖の比較を使用する。
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを表すために、本明細書において互換的に使用される。本用語は、1つ又はそれ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学的模倣体であるアミノ酸ポリマー並びに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーに対して適用される。
「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸及び合成アミノ酸並びに天然に存在するアミノ酸と類似の様式で機能するアミノ酸類縁体及びアミノ酸模倣体を表す。天然に存在するアミノ酸とは、遺伝コードによってコードされるアミノ酸並びに後に修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸及びO−ホスホセリンである。アミノ酸類縁体は、天然に存在するアミノ酸と同一の基本的化学構造(すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基及びR基に結合しているα炭素)を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを表す。このような類縁体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)又は修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同一の基礎的化学構造を保持する。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と類似の様式で機能する化学化合物を表す。
本明細書において、アミノ酸は、IUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨されている、一般的に知られた三文字記号または一文字記号のいずれかによって表され得る。同様に、ヌクレオチドは、一般に受容されている一文字コードによって表され得る。
「保存的に修飾されたバリアント」は、アミノ酸及び核酸配列の両方に対して適用される。ある核酸配列に関して、保存的に修飾されたバリアントは、同一若しくは実質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を表し、又は核酸がアミノ酸配列をコードしていない場合には、実質的に同一の配列を表す。遺伝コードの縮重のため、機能的に同一の多数の核酸が任意の与えられたタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUは全て、アミノ酸アラニンをコードする。従って、アラニンがコドンによって指定されている全ての場所で、該コドンは、コードされているポリペプチドを変化させずに、対応する記載されているコドンの何れかに変化させることができる。このような核酸の変化は、保存的に修飾された変異の一種である「サイレント変異」である。本明細書において、ポリペプチドをコードする全ての核酸配列は、該核酸の全ての可能なサイレント変異も記載する。当業者であれば、核酸中の各コドン(通常、メチオニンに対する唯一のコドンであるAUG、及び通常、トリプトファンに対する唯一のコドンであるTGGを除く。)、機能的に同一の分子を生成するために修飾できることを認識する。従って、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、発現産物に関して記載されているが、実際のプローブ配列に関しては記載されていない各配列に含意される。
アミノ酸配列については、当業者であれば、コードされている配列中の単一アミノ酸又はアミノ酸の僅かなパーセントを変化し、付加し、又は欠失する核酸、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質配列に対する、各置換、欠失又は付加は、変化があるアミノ酸の化学的に類似するアミノ酸での置換をもたらす「保存的に修飾されたバリアント」であることを認識する。機能的に類似のアミノ酸を与える保存的置換の表が、本分野において周知である。このような保存的に修飾されたバリアントは、さらに、本発明の多型バリアント、種間相同体及び対立遺伝子であり、これらを除外するものではない。
以下の8つの群が、それぞれ、互いに保存的な置換であるアミノ酸を含有する。1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);及び8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton,Proteins(1984)参照)。
ポリペプチド構造などの高分子構造は、組織の様々なレベルで記載することが可能である。この組織の一般的な論述については、例えば、「Alberts et al.,Molecular Biology of the Cell,3rd ed.,1994)」及び「Cantor and Schimmel,Biophysical Chemistry Part I:The Conformation of Biological Macromolecules,1980」を参照されたい。「一次構造」は、あるペプチドのアミノ酸配列を表す。「二次構造」は、ポリペプチド内の局所的に秩序化された三次元構造を表す。これらの構造は、ドメイン、例えば、酵素的ドメイン、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、孔ドメイン及び細胞質尾部ドメインとして一般に知られる。ドメインは、ポリペプチドのコンパクトな単位を形成するポリペプチドの一部であり、典型的には、15から350アミノ酸長である。典型的なドメインには、酵素活性を有するドメイン、例えば、キナーゼドメインが含まれる。典型的なドメインは、βシート及びαへリックスの広がりなど、より組織化の程度が低い部分から構成される。「三次構造」は、ポリペプチド単量体の完全な三次元構造を表す。「四次構造」は、独立した三次単位の非共有的会合によって形成された三次元構造を表す。異方性項は、エネルギー項としても知られる。
特定の核酸配列は、「スプライスバリアント」も黙示的に包含する。同様に、核酸によってコードされた特定のタンパク質は、その核酸のスプライスバリアントによってコードされるあらゆるタンパク質を黙示的に包含する。「スプライスバリアント」は、名称が示唆するように、遺伝子の選択的スプライシングの産物である。転写後、初期核酸転写物は、異なる(選択的)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライシングされ得る。スプライスバリアントの生成機序は様々であるが、エキソンの選択的スプライシングを含む。読み過ごし転写(read−through transcription)による同じ核酸由来の別のポリペプチドも、本定義に包含される。スプライス産物の組み換え形態を含む、スプライシング反応のあらゆる産物が、本定義に含まれる。
例えば、細胞又は核酸、タンパク質若しくはベクターに関して使用された場合、「組み換え」とは、細胞、核酸、タンパク質又はベクターが、異種核酸若しくはタンパク質の導入によって、又は固有の核酸若しくはタンパク質の変化によって修飾されていることを示し、又は細胞がこのようにして修飾された細胞に由来することを示す。従って、例えば、組み換え細胞は、細胞の固有(非組み換え)形態内に見出されない遺伝子を発現し、又は、組み換えが行われていなければ、異常に発現され、過少発現され、若しくは全く発現されない固有遺伝子を発現する。
「厳格なハイブリッド形成条件」とは、プローブが、典型的には核酸の複雑な混合物中のその標的亜配列とハイブリッド形成するが、他の配列とはハイブリッド形成しない条件を表す。厳格な条件は配列依存性であり、異なる状況では異なり得る。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリッド形成する。核酸のハイブリッド形成についての詳しい手引きは、Tijssen、「Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridization with Nucleic Probes,」Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays,1993」に見出される。一般的に、厳格な条件は、所定のイオン強度pHで、特異的な配列に対する熱融解点(T)より約5ないし10℃低いように選択される。Tとは、(標的配列は過剰に存在し、Tにおいて、プローブの50%が平衡状態で占有されるので)標的に対して相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列にハイブリッド形成する(所定のイオン強度、pH及び核酸濃度下での)温度である。厳格な条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によっても達成することができる。選択的又は特異的なハイブリダイゼーションの場合、陽性信号は、バックグラウンドの少なくとも2倍、好ましくはバックグラウンドハイブリダイゼーションの10倍である。典型的な厳格なハイブリッド形成条件は、以下のようにすることができる。50%ホルムアミド、5×SSC及び1%SDS、42℃での温置、又は5×SSC、1%SDS、65℃での温置、65℃での0.2×SSC及び0.1%SDS中での洗浄。
厳格な条件下で互いにハイブリッド形成しない核酸は、該核酸がコードするポリペプチドが実質的に同一であれば、なお実質的に同一である。これは、例えば、核酸のコピーが、遺伝子コードによって許容される最大のコドン縮重を用いて生成される場合に起こる。このような場合には、核酸は、典型的には、中程度に厳格なハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する。典型的な「中程度に厳格なハイブリッド形成条件」には、40%ホルムアミド、1MNaCl、1%SDSの緩衝液中、37℃でのハイブリッド形成及び1×SSC中、45℃での洗浄が含まれる。陽性ハイブリッド形成は、少なくともバックグラウンドの2倍である。類似の厳格性条件を与えるために、別のハイブリッド形成及び洗浄条件を使用できることが当業者に自明である。ハイブリッド形成パラメータを決定するためのさらなる指針は、多数の参考文献、例えば、上記のAusubelらに記載されている。
PCRの場合、アニーリング温度は、プライマー長に応じて、約32℃と48℃の間で変動し得るが、低厳格性増幅については、約36℃の温度が典型的である。高厳格性PCR増幅の場合、高厳格性アニーリング温度は、プライマー長及び特異性に応じて、約50℃と約65℃までの範囲であり得るが、約62℃の温度が典型的である。高厳格性増幅及び低厳格性増幅の両方に対する典型的なサイクル条件には、30秒から2分間の90℃から95℃の変性期、30秒から2分間持続するアニーリング期及び約72℃、1から2分間の伸長期が含まれる。低厳格性増幅反応及び高厳格性増幅反応のためのプロトコール及び指針は、例えば、「Innis et al.,PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications,Academic Press,Inc.N. Y.,1990」に記載されている。
「医薬として許容される賦形剤」とは、一般的に安全であり、無毒であり、望ましい医薬組成物を調製する上で有用である賦形剤を意味し、獣医用途及びヒト医薬用途に対して許容され得る賦形剤が含まれる。このような賦形剤は、固体、液体、半固体であり得、又は、エアロゾル組成物の場合には、気体状であり得る。
「医薬として許容される塩及びエステル」は、医薬として許容され、所望の薬理学的特性を有する塩及びエステルを意味する。このような塩には、化合物中に存在する酸性プロトンが無機又は有機塩基と反応することができる場合に形成され得る塩が含まれる。適切な無機塩には、アルカリ金属、例えば、ナトリウム及びカリウム、マグネシウム、カルシウム及びアルミニウムとともに形成される無機塩が含まれる。適切な有機塩には、アミン塩基、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノール、トロメタミン、N−メチルグルカミンなどの有機塩基とともに形成される有機塩が含まれる。このような塩には、無機酸(例えば、塩酸及び臭化水素酸)及び有機酸(例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸並びにメタンスルホン酸及びベンゼンスルホン酸などのアルカン及びアレーンスルホン酸)とともに形成される酸付加塩も含まれる。医薬として許容されるエステルには、化合物中に存在するカルボキシ、スルホニルオキシ及びホスホノオキシ基から形成されたエステル、例えば、C1−6アルキルエステルが含まれる。2つの酸性基が存在する場合には、医薬として許容される塩又はエステルは、一酸一塩若しくはエステル又は二塩若しくはエステルであり得、同様に、3以上の酸性基が存在する場合には、このような基の一部又は全部が、塩又はエステル化することが可能である。本発明において名前が挙げられている化合物は、塩形成されていない形態若しくはエステル化されていない形態で、又は塩形成された形態及び/又はエステル化された形態で存在することが可能であり、このような化合物の名称は、元の(塩形成されておらず、エステル化されていない)化合物並びに医薬として許容されるその塩及びエステルの両方を含むものとする。また、本発明において名前が挙げられているある種の化合物は、2以上の立体異性体形態で存在し得、このような化合物の名称には、全ての単一の立体異性体及び(ラセミ混合物であれ、又はその他の混合物であれ)このような立体異性体の全ての混合物が含まれるものとする。
「医薬として許容される」、「生理的に耐容される」及びこれらの文法的な変形語は、これらが組成物、担体、希釈剤及び試薬を表す場合、互換的に使用され、組成物の投与を禁止する程度まで、望ましくない生理的効果を生じることなく、ヒトへ又はヒトに対して物質を投与可能であることを表す。
「治療的有効量」とは、この量が、疾病を治療するために対象に投与された場合に、当該疾病に対する治療を実施するのに十分であることを意味する。
別段の記載がある場合を除き、「対象」又は「患者」という用語は互換的に使用され、ヒト患者及び非ヒト霊長類ならびにウサギ、ラット及びマウスなどの実験動物並びにその他の動物などの哺乳動物を表す。従って、本明細書において使用される「対象」又は「患者」という用語は、本発明の組成物を投与することができるあらゆる哺乳動物患者又は対象を意味する。本発明の幾つかの実施形態において、患者は、疾病に対する低下した抵抗性を引き起こす症状、例えば、HIVに罹患している。本発明の典型的な実施形態において、本発明の方法に従って、1つ又はそれ以上のコレクチン及び/又は界面活性剤タンパク質を含む医薬組成物で治療するための対象患者を特定するために、一般に認められたスクリーニング法を使用して、対象中に既に存在する疾病若しくは症状の状態又は標的とされる又は疑われる疾病若しくは症状と関連するリスク因子を決定する。これらのスクリーニング法には、例えば、対象が眼疾患に罹患しているかどうかを決定するための眼の検査が含まれる。これら及び他の定型的な方法によって、臨床医は、治療を必要としている対象を選択することが可能となる。本発明のある種の実施形態において、コンタクトレンズを保存し、清浄化し、再度湿潤化させ、及び/又は消毒するための眼用組成物並びに人工涙組成物及び/又はコンタクトレンズは、1つ若しくはそれ以上のコレクチン及び/又は界面活性剤タンパク質を含有することにより、コンタクトレンズ着用者中の眼疾患の発達を阻害する。
本発明の医薬組成物との、公知の癌治療薬又は炎症治療薬の「同時投与」とは、公知の薬物と本発明の組成物がともに治療効果を有する時点で、薬物及び組織因子の阻害剤(例えば、抗体又は小化学実体)である組成物を投与することを意味する。このような同時投与は、本発明の化合物の投与に関して、抗微生物薬を同時(すなわち、同じ時点で)投与、先行投与又は事後投与することを含み得る。当業者は、特定の薬物及び本発明の組成物に対して、適切なタイミング、投与の順序及び投薬量を決定する上で何らの困難も有しない。
同一のファミリー及び/又は同一のファミリーメンバーから適切なフレームワーク領域候補を選択した後、始源種由来のCDRをハイブリッドフレームワーク領域中に移植することによって、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の一方又は両方が作製される。上記態様の何れかに関してハイブリッド可変鎖領域を有するハイブリッド抗体又はハイブリッド抗体断片の集合は、当業者に公知の慣用法を用いて達成することが可能である。例えば、本明細書に記載されているハイブリッド可変ドメインをコードするDNA配列(すなわち、標的種を基礎とするフレームワーク及び始源種に由来するCDR)は、オリゴヌクレオチド合成及び/又はPCRによって作製され得る。CDR領域をコードする核酸は、適切な制限酵素を用いて、始源種抗体から単離され、適切な連結酵素で連結することによって、標的種のフレームワーク中に連結することもできる。あるいは、始源種抗体の可変鎖のフレームワーク領域は、部位指定突然変異導入によって変化させ得る。
ハイブリッドは、各フレームワーク領域に対応する複数の候補からの選択から構築されるので、本明細書中に記載されている原理に従った構築に適した配列の多くの組み合わせが存在する。従って、個別のフレームワーク領域の異なる組み合わせを有するメンバーを有するハイブリッドのライブラリーを構築することができる。このようなライブラリーは、配列の電子的データベースの集合又はハイブリッドの物理的集合であり得る。
物理的な抗体又は抗体断片ライブラリーの集合は、好ましくは、合成オリゴヌクレオチドを用いて実現される。一例において、オリゴヌクレオチドは、アニーリングされ、ポリメラーゼによる充填(ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いるなど)が可能であるように、重複する領域を有するように設計される。V及びV遺伝子挿入物を作製するために、重複伸長の複数段階が実施される。これらの断片は、完全長の軽鎖及びFd重鎖断片を生成するために、重複伸長によって融合できるように、ヒト定常ドメインと重複する領域を用いて設計される。軽及び重Fd鎖領域は、ディスプレイベクター中にクローニングされるべき単一のFabライブラリー挿入物を作製するために、重複伸長によって、一緒に連結され得る。ヒト化されたライブラリー遺伝子の別の構築方法も使用することができる。例えば、リガーゼ連鎖反応(LCR)アプローチを用いて、重複するオリゴヌクレオチドからライブラリーを組み立て得る。Chalmers et al.,Biotechniques,30−2:249−252,2001。
ハイブリッド抗体ライブラリー又はハイブリッド抗体断片ライブラリーを作製するために、抗体断片の様々な形態を作製し、適切なベクター中にクローニングし得る。例えば、可変遺伝子は、必要な定常ドメインの残りの部分を翻訳領域内部に含有するベクター中にクローニングすることが可能である。クローニングすることができる追加断片の例には、完全な軽鎖、重鎖のFd部分又は軽鎖及び重鎖Fdコード配列の両方を含有する断片が含まれる。あるいは、ヒト化のために使用される抗体断片は、一本鎖抗体(scFv)であり得る。
本明細書の開示に従って、ライブラリーと組み合わせて、あらゆる選択ディスプレイ系を使用し得る。巨大なライブラリーの所望されるメンバーを単離するための選択プロトコールは、本分野において公知であり、ファージディスプレイ技術が典型的である。多様なペプチド配列が繊維状バクテリオファージの表面上にディスプレイされているこのような系は、標的抗原を結合する特異的抗体断片のインビトロでの選択及び増幅のために、抗体断片(及びこれらをコードするヌクレオチド配列)のライブラリーを作製するのに有用であることが明らかとなっている。Scott et al.,Science,249:386,1990。VH及びVL領域をコードするヌクレオチド配列は、イー・コリの細胞膜周辺腔にこれらを誘導するリーダーシグナルをコードする遺伝子断片に連結されており、生じた抗体断片の結果、典型的には、バクテリオファージコートタンパク質(例えば、pIII又はpVIII)への融合物として、バクテリオファージの表面上にディスプレイされる。あるいは、抗体断片は、λファージ又はT7キャプシド(ファージボディ)の外部に提示される。ファージをベースとしたディスプレイ系の利点は、それらが生物系であるために、細菌細胞中の選択されたライブラリーメンバーを含有するファージを増殖させることによって、選択されたライブラリーのメンバーを簡易に増幅できることである。さらに、ポリペプチドライブラリーのメンバーをコードするヌクレオチド配列は、ファージ又はファジミドベクター上に含有されているので、配列決定、発現及びその後の遺伝学的操作が、比較的単純である。バクテリオファージ抗体ディスプレイライブラリー及びλファージ発現ライブラリーの構築方法は、本分野において周知である。McCafferty et al.,Nature,348:552,1990;Kang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,88:4363,1991。
本発明は、さらに、本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体及びT細胞抗原受容体(TCR)に関する。本発明の抗体には、IgG(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む。)、IgA(IgA1及びIgA2を含む。)、IgD、IgE又はIgM及びIgYが含まれる。本明細書において使用される「抗体」(Ab)という用語は、一本鎖完全抗体及びその抗原結合断片を含む完全な抗体を含むものとする。最も好ましくは、抗体は、本発明のヒト抗原結合抗体断片であり、Fab、Fab’及びF(ab’)、Fd、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合されたFv(sdFv)及びV又はVドメインの何れかを含む断片が含まれるが、これらに限定されない。抗体は、鳥類及び哺乳動物を含むあらゆる動物起源に由来し得る。好ましくは、抗体は、ヒト、マウス、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ又はニワトリである。
一本鎖抗体を含む抗原結合分子又は断片は、単独で、又は以下のもの:ヒンジ領域、CH、CH及びCHドメインの全部若しくは一部と組み合わせて可変領域を含み得る。可変領域並びにヒンジ領域、CH、CH及びCHドメインのあらゆる組み合わせも本発明に含まれる。本発明は、さらに、本発明のポリペプチドを特異的に結合する、モノクローナル、ポリクローナル、キメラ、ヒト化並びにヒト化及びヒトモノクローナル及びヒトポリクローナル抗体を含む。本発明は、さらに、本発明の抗体に対して抗イディオタイプである抗体を含む。
上述のように、本発明に適した抗体は、単一特異的、二重特異的、三重特異的又はそれ以上の多重特異性であり得る。多重特異的抗体は、本発明のポリペプチドの異なるエピトープに対して特異的であり得、又は本発明のポリペプチド及び異種組成物(異種ポリペプチド又は固相支持材料など)の両方に対して特異的であり得る。例えば、WO93/17715;WO92/08802;WO91/00360;WO92/05793;Tutt et al.,J. Immunol.147:60−69,1991;米国特許5,573,920;4,474,893;5,601,819;4,714,681;4,925,648(それぞれ、参照により、それらの全体が、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。);Kostelny et al.,J.Immunol.148:1547−1553,1992を参照されたい。
本発明に適した抗体は、該抗体によって認識され又は特異的に結合される、本発明のポリペプチドのエピトープ又は部分の観点で記載し、又は特定され得る。エピトープ又はポリペプチドの部分は、例えば、N末端及びC末端位置によって、連続するアミノ酸残基のサイズによって、本明細書に記載されているように特定され得る。また、本発明の何れかのエピトープ又はポリペプチドを特異的に結合する抗体は、除外され得る。従って、本発明は、本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体を含み、及びその除外を可能とする。
本発明の抗体は、それらの交叉反応性の観点からも記載又は特定され得る。本発明のポリペプチドの他の何れの類縁体、相同分子種又は相同体も結合しない抗体が含まれる。(本分野において公知であり、本明細書に記載されている方法を用いて計算された場合に)本発明のポリペプチドに対して95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満及び50%未満の同一性を有するポリペプチドを結合しない抗体も、本発明に含まれる。さらに、本発明には、(本明細書に記載されているような)厳格なハイブリッド形成条件下で、本発明のポリヌクレオチドとハイブリッドを形成するポリヌクレオチドによってコードされるポリヌクレオチドのみを結合する抗体が含まれる。本発明の抗体は、それらの結合親和性の観点からも記載又は特定され得る。好ましい結合親和性には、5×10−6M、10−6M,5×10−7M、10−7M、5×10−8M、10−8M,5×10−9M、10−9M、5×10−10M、10−10M,5×10−11M、10−11M、5×10−12M、10−12M,5×10−13M、10−13M、5×10−14M、10−14M、5×10−15M及び10−15M未満の解離定数又はKを有するものが含まれる。
組織因子シグナル伝達を阻害する抗体は、インビトロ及びインビボの診断及び治療方法の両方を含む、本発明のポリペプチドを精製し、検出し、及び標的化するための本分野で公知の方法を含む用途を有するが、これらに限定されるものではない。例えば、抗体は、生物学的試料中に存在する本発明のポリペプチドのレベルを定性的及び定量的に測定するためのイムノアッセイにおいて用途を有する。例えば、Harlow及びLane、上記(参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書中に組み込まれる。)を参照されたい。
本発明の抗体は、単独で、又は他の組成物と組み合わせて使用され得る。さらに、抗体は、異種ポリペプチドのN末端若しくはC末端へ組み換え的に融合され、又はポリペプチド若しくは他の組成物へ化学的に連結(共有的連結及び非共有的連結を含む。)され得る。例えば、本発明の抗体は、検出アッセイにおける標識として有用な分子及び異種ポリペプチド、薬物又はトキシンなどのエフェクター分子へ組み換え的に融合又は連結され得る。例えば、WO92/08495;WO91/14438;WO89/12624;米国特許5,314,995;及びEP0396387(参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。)を参照されたい。
本発明の抗体は、本分野で公知のあらゆる適切な方法によって調製され得る。例えば、ポリクローナル抗体を含有する血清の産生を誘導するために、本発明のポリペプチド又はその抗原性断片を動物に投与することが可能である。「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術を通じて産生された抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、あらゆる真核、原核又はファージクローンなど、単一のクローンに由来する抗体を表し、産生方法によらない。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組み換え及びファージディスプレイ技術の使用など、本分野で公知の多様な技術を用いて調製することが可能である。
ハイブリドーマ技術には、本分野で公知のものが含まれ、Harlow and Lane、上記;Hammerling et al.,Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas,563−681,1981に教示されている(前記参考文献は、参照により、それらの全体が組み込まれる。)。Fab及びF(ab’)断片は、(Fab断片を作製するための)パパイン又は(F(ab’)断片を作製するための)ペプシンなどの酵素を用いて、タンパク質分解性切断によって作製され得る。
あるいは、組織因子シグナル伝達を阻害する抗体は、組み換えDNA及びファージディスプレイ技術の適用を通じて作製し、又は本分野で公知の方法を使用する合成化学を通じて作製することができる。例えば、本発明の抗体は、本分野で公知の様々なファージディスプレイ法を用いて調製することも可能である。ファージディスプレイ法では、機能的抗体ドメインは、これらをコードしているポリヌクレオチド配列を担持するファージ粒子の表面上にディスプレイされる。所望の結合特性を有するファージは、抗原、典型的には、固体表面又はビーズに結合又は捕捉された抗原を用いて、直接選択することによって、レパートリー又はコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒト又はマウス)から選択される。これらの方法で使用されるファージは、典型的には、ファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIタンパク質の何れかに組み換え的に融合されたFab、Fv又はジスルフィドで安定化されたFv抗体ドメインを有する、fd及びM13を含む糸状ファージである。本発明の抗体を作製するために使用することが可能なファージディスプレイ法の例には、「Brinkman et al.,J. Immunol.Methods 182:41−50,1995;Ames et al.,J.Immunol.Methods 184:177−187,1995;Kettleborough et al.,Eur.J. Immunol.24:952−958,1994;Persic et al.,Gene 187:9−18,1997;Burton et al.,Advances in Immunology57:191−280,1994;PCT/GB91/01134;WO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;並びに米国特許5,698,426;5,223,409;5,403,484;5,580,717;5,427,908;5,750,753;5,821,047;5,571,698;5,427,908;5,516,637;5,780,225;5,658,727及び5,733,743」(各々、参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。)に開示されているものが含まれる。
上記参考文献に記載されているように、ファージ選択後、ファージ由来の抗体コード領域を単離し、ヒト抗体などの完全な抗体又は他の所望される何れかの抗原結合断片を作製するために使用し、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母及び細菌を含む何れかの所望の宿主中で発現され得る。例えば、Fab、Fab’及びF(ab’)断片を組み換え的に作製するための技術は、WO92/22324;Mullinax et al.,BioTechniques12:864−869,1992;及びSawai et al.,AJRI 34:26−34,1995;及びBetter et al.,Science 240:1041−1043,1988に開示されているものなど、本分野において公知の方法を用いて使用することも可能である。
一本鎖Fvs及び抗体を作製するために使用することができる技術の例には、米国特許4,946,778及び5,258,498(それぞれ、参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。);Huston et al.,Methods in Enzymology,203:46−88,1991;Shu,L. et al.,PNAS 90:7995−7999,1993;及びSkerra et al.,Science240:1038−1040,1988に記載されているものが含まれる。ヒトにおける抗体のインビボでの使用及びインビトロでの検出アッセイなど、幾つかの用途では、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体を使用することが好ましい場合があり得る。キメラ抗体を作製する方法は、本分野において公知である。例えば、Morrison,Science 229:1202,1985;Oi et al.,BioTechniques4:214,1986;Gillies et al.,J. Immunol.Methods,125:191−202,1989;及び米国特許5,807,715を参照されたい。抗体は、CDR移植(EP0239400;WO91/09967;及び米国特許5,530,101及び5,585,089)、ベニアリング又はリサーフェシング(EP0592106;EP0519596;Padlan E.A.,Molecular Immunology,28:489−498,1991;Studnicka et al.,Protein Engineering 7:805−814,1994;Roguska et al.,PNAS 91:969−973,1994)及び鎖シャッフリング(米国特許5,565,332).などの様々な技術を用いてヒト化することが可能である。ヒト抗体は、上記ファージディスプレイ法など、本分野で公知の様々な方法によって作製することが可能である。米国特許4,444,887;4,716,111;5,545,806;及び5,814,318;並びにWO98/46645;WO98/50433;WO98/24893;WO98/16654;WO96/34096;WO96/33735;及びWO91/10741も参照されたい(それぞれ、参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。)。
さらに、本発明のポリペプチドに組み換え的に融合され又は化学的に連結された(共有的連結及び非共有的連結の両者を含む。)抗体が、本発明に含まれる。抗体は、本発明のポリペプチド以外の抗原に対して特異的であり得る。例えば、特定の細胞表面受容体に対して特異的な抗体へ、本発明のポリペプチドを融合又は連結することによって、インビトロ又はインビボの何れかにおいて、本発明のポリペプチドを特定の細胞種へ標的化するために、抗体を使用し得る。本発明のポリペプチドへ融合又は連結された抗体は、本分野で公知の方法を用いたインビトロイムノアッセイ及び精製方法においても使用され得る。例えば、Harbor et al、上記及びWO93/21232;EP0439095;Naramura et al.,Immunol.Lett.39:91−99,1994;米国特許5,474,981(参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。);Gillies et al.,PNAS89:1428−1432,1992;Fell et al.,J. Immunol.146:2446−2452,1991を参照されたい。
本発明は、さらに、可変領域以外の抗体ドメインに融合又は連結された本発明のポリペプチドを含む組成物を含む。例えば、本発明のポリペプチドは、抗体Fc領域又はその一部に融合又は連結され得る。本発明のポリペプチドに融合された抗体部分は、ヒンジ領域、CHドメイン、CHドメイン及びCHドメイン又は完全なドメイン若しくはその一部のあらゆる組み合わせを含み得る。本発明のポリペプチドは、ポリペプチドのインビボ半減期を増加させるために、又は本分野で公知の方法を用いるイムノアッセイにおいて使用するために、上記抗体部分へ融合又は連結され得る。また、ポリペプチドは、多量体を形成するために、上記抗体部分へ融合又は連結され得る。例えば、本発明のポリペプチドへ融合されたFc部分は、Fc部分の間のジスルフィド結合を通じて、二量体を形成することができる。IgA及びIgMの一部にポリペプチドを融合させることによって、より高次の多量体形態を作製することが可能である。本発明のポリペプチドを抗体部分に融合又は連結させるための方法は、本分野において公知である。例えば、米国特許5,336,603;5,622,929;5,359,046;5,349,053;5,447,851;5,112,946;EP0307434,EP0367166;WO96/04388;及びWO91/06570(各々、参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。);Ashkenazi et al.,PNAS,88:10535−10539,1991;Zheng et al.,J.Immunol.,154:5590−5600,1995;及びVil et al.,PNAS,89:11337−11341,1992を参照されたい。
本発明は、さらに、本発明において、組織因子シグナル伝達のアンタゴニストとして作用する抗体に関する。例えば、本発明は、本発明のポリペプチドの特有の立体構造との受容体/リガンド相互作用を部分的に又は完全に崩壊させる抗体が含まれる。受容体特異的抗体及びリガンド特異的抗体の両方が含まれる。リガンド結合を妨げないが、受容体シグナル伝達を妨げる受容体特異的抗体が含まれる。受容体シグナル伝達は、本明細書に記載されている技術又はその他本分野で公知の技術によって測定され得る。リガンド結合を妨げ、且つ受容体シグナル伝達を妨げる受容体特異的抗体も含まれる。同様に、リガンドを結合し、受容体へのリガンドの結合を妨げる中和抗体及びリガンドを結合し、これによって、受容体シグナル伝達を妨げるが、リガンドが受容体を結合するのを妨げない抗体が含まれる。さらに、受容体を活性化する抗体が含まれる。これらの抗体は、リガンドによって媒介される受容体シグナル伝達によって影響を受ける全ての生物活性又は全てに満たない生物活性に対するアンタゴニストとして作用し得る。抗体は、本明細書に開示されている特異的活性を含む生物活性に対するアンタゴニストとして特定され得る。上記抗体アンタゴニストは、本分野で公知の方法を用いて作製することが可能である。例えば、WO96/40281;米国特許5,811,097(各々は、参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。);Deng et al.,Blood 92:1981−1988,1998;Chen,et al.,Cancer Res.,58:3668−3678,1998;Harrop et al.,J. Immunol.161:1786−1794,1998;Zhu et al.,Cancer Res.,58:3209−3214,1998;Yoon,et al.,J. Immunol,160:3170−3179,1998;Prat et al.,J. Cell. Sci.,111:237−247,1998;Pitard et al.,J. Immunol Methods,205:177−190,1997;Liautard et al.,Cytokinde,9:233−241,1997;Carlson et al.,J. Biol. Chem.,272:11295−11301,1997;Taryman et al.,Neuron,14:755−762,1995;Muller et al.,Structure,6:1153−1167,1998;Bartunek et al.,Cytokinem,8:14−20,1996を参照されたい。上に論述されているように、新生物細胞又は炎症細胞に対する組織因子シグナル伝達を阻害するものに対する抗体は、次いで、当業者に周知の技術を用いて、本発明のポリペプチドを「模倣する」抗イディオタイプ抗体を作製するために使用することができる。(例えば、Greenspan et al.,FASEB J.7:437−444,1989及びNissinoff,J.Immunol.147:2429−2438,1991を参照されたい)。例えば、ポリペプチドの多量体化及び/又は結合ドメインを「模倣」し、その結果、ポリペプチド及び/又はそのリガンドに結合して、中和する抗イディオタイプを作製するために、ポリペプチドの多量体化に結合し、競合的に阻害する抗体及び/又は本発明のポリペプチドの、リガンドへの結合を競合的に阻害する抗体を使用することができる。このような中和抗イディオタイプ又はこのような抗イディオタイプのFab断片は、ポリペプチドリガンドを中和するために、治療計画において使用することができる。例えば、本発明のポリペプチドを結合し、及び/又はそのリガンド/受容体を結合することにより、その生物活性を遮断するために、このような抗イディオタイプ抗体を使用することができる。
新生物細胞又は炎症細胞に対する組織因子シグナル伝達の「阻害剤」、「活性化因子」及び「調節物質」は、それぞれ、組織因子結合又はシグナル伝達に対するインビトロ及びインビボアッセイを用いて同定された、阻害的、活性化又は調節分子、例えば、リガンド、アゴニスト、アンタゴニスト並びにこれらの相同体及び模倣体を表すために使用される。
「調節物質」には、阻害剤及び活性化因子が含まれる。阻害剤は、例えば、シグナル伝達組織因子に結合し、部分的に若しくは完全に刺激を遮断し、シグナル伝達組織因子の活性を減少させ、妨げ、活性化を遅延させ、不活化し、脱感作し、又は下方制御する因子、例えばアンタゴニストである。活性化因子は、例えば、シグナル伝達組織因子に結合し、シグナル伝達組織因子の活性を刺激し、増加し、開放し、活性化し、促進し、活性化を増強し、感作し、又は上方制御する因子、例えばアゴニストである。調節物質には、例えば、タンパク質、ペプチド、脂質、炭水化物、多糖又は上記の組み合わせ、例えば、リポタンパク質、糖タンパク質など、活性化因子若しくは阻害剤を結合するタンパク質(受容体)との、シグナル伝達組織因子の相互作用を変化させる因子が含まれる。調節物質には、例えば、変化された活性を有する天然に存在するシグナル伝達組織因子の遺伝的に修飾されたバージョン並びに天然に存在する及び合成のリガンド、アンタゴニスト、アゴニスト、小化学分子などが含まれる。阻害剤に対するこのようなアッセイは、例えば、シグナル伝達組織因子を発現する細胞へ、調節物質化合物の候補を適用し、次いで、本明細書に記載されているように、組織因子シグナル伝達に対する機能的効果を測定することを含む。活性化因子、阻害剤又は調節物質の候補で処理された組織因子を含む試料又はアッセイは、阻害の程度を調べるために、阻害剤、活性化因子又は調節物質を含まない対照試料と比較される。(阻害剤で処理されていない)対照試料には、100%の相対組織因子シグナル伝達値を割り当てることができる。対照と比較した組織因子シグナル伝達活性の値が約80%、場合によって50%又は25から0%である場合に、阻害が達成される。
例えば、候補リガンドが細胞上のシグナル伝達組織因子に結合する能力によって、分子がシグナル伝達組織因子に結合する能力を測定することが可能である。結合の特異性は、凝固組織因子のみを有する細胞への結合を比較することによって決定することができる。
一実施形態において、シグナル伝達組織因子へ結合する抗体は、リガンド又は受容体のいずれかを固定化することによってアッセイすることができる。例えば、アッセイは、Ni活性化されたNTA樹脂ビーズ上にHisタグに融合されたシグナル伝達立体構造を模倣するために適切に修飾された組織因子を固定化することを含むことができる。抗体を適切な緩衝液中に添加し、一定の温度で、ある期間にわたって、ビーズを温置することができる。結合していない材料を除去するために洗浄した後、例えば、SDS、高pHを有する緩衝液などを用いて、結合されたタンパク質を放出させ、分析することができる。
融合タンパク質
融合タンパク質を作製するために、シグナル伝達組織因子に対する抗体を使用することができる。例えば、本発明の抗体は、第二のタンパク質に融合されると、抗体の精製用抗原性タグとして使用することができ、又はシグナル伝達組織因子の阻害剤としての治療的処置として、抗体の安定性を増加させるために使用することが可能である。
ポリペプチドに融合することができるドメインの例には、異種シグナル配列のみならず、他の異種の機能的領域も含まれる。融合は、必ずしも直接である必要はなく、リンカー配列を通じて生じ得る。
さらに、ポリペプチドの特性を改善するために、融合タンパク質は加工することもできる。例えば、宿主細胞から精製している間の安定性及び持続性又はその後の取り扱い及び保存を改善するために、ポリペプチドのN末端に、追加のアミノ酸、特に帯電したアミノ酸の領域を付加し得る。また、精製を容易にするために、ペプチド模倣体をポリペプチドに付加し得る。このような領域は、ポリペプチドの最終調製前に除去され得る。ポリペプチドの取り扱いを容易にするためにペプチド部分を付加することは、本分野で周知の、定型的な技術を必要とするに過ぎない。
さらに、抗体組成物及び組織因子シグナル伝達を阻害する組成物(断片、特にエピトープを含む。)は、免疫グロブリン(IgG)の定常ドメインの一部と組み合わせることが可能であり、キメラポリペプチドが得られる。これらの融合タンパク質は精製を容易にし、インビボで増加した半減期を示す。報告された一例は、ヒトCD4ポリペプチドの最初の2つのドメイン及び哺乳動物の免疫グロブリンの重鎖又は軽鎖の定常領域の様々なドメインからなるキメラタンパク質について記載する。EP A 394,827;Traunecker et al.,Nature,331:84−86,1988。(IgGのために)ジスルフィド結合された二量体構造を有する融合タンパク質も、単量体の分泌されたタンパク質又はタンパク質断片単独に比べて、他の分子を結合及び中和する上で、より効率的であり得る。Fountoulakis et al.,J. Biochem. 270:3958−3964,1995。
同様に、EP−A−O 464 533(カナダ対応出願2045869)は、別のヒトタンパク質又はその一部と一緒に、免疫グロブリン分子の定常領域の様々な部分を含む融合タンパク質を開示する。多くの事例において、融合タンパク質中のFc部分は、治療及び診断において有益であり、従って、例えば、改善された薬物動態学的特性をもたらし得る。(EP−A 0232 262)。あるいは、融合タンパク質が発現、検出及び精製された後に、Fc部分を除去することが望ましい。例えば、免疫化のための抗原として融合タンパク質が使用される場合には、Fc部分は、治療及び診断を妨害し得る。創薬において、hIL−5のアンタゴニストを同定する高情報量のスクリーニングアッセイのために、例えば、hIL−5などのヒトタンパク質がFc部分と融合されてきた。Bennett et al.,J. Molecular Recognition 8:52−58,1995;K. Johanson et al.,J. Biol.Chem.,270:9459−9471 1995。
さらに、ポリペプチドは、融合されたポリペプチドの精製を容易にするペプチドなどのマーカー配列に融合することができる。好ましい実施形態において、マーカーアミノ酸配列は、とりわけ、pQEベクター(QIAGEN,Inc.,9259 Eton Avenue,Chatsworth,Calif.,91311)中に与えられるタグなどの六ヒスチジンペプチドであり、それらの多くは市販されている。「Gentz et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 86:821−824,1989」に記載されているように、例えば、六ヒスチジンは、融合タンパク質の便利な精製を与える。精製に有用な別のペプチドタグである「HA」タグは、インフルエンザのヘマグルチニンタンパク質に由来するエピトープに対応する。Wilson et al.,Cell 37:767,1984。
従って、これらの上記融合物の何れも、本発明のポリヌクレオチド又はポリペプチドを用いて加工することが可能である。
SCFVファージライブラリー
血管新生、新生物疾患又は炎症性疾患を治療するために、哺乳動物対象中の組織因子シグナル伝達を阻害し、哺乳動物対象中の止血を妨害しないscFV抗体のライブラリーを使用することができる。シグナル伝達組織因子に特異的に結合し、シグナル伝達組織因子を阻害するが、出血のリスクを増加させない抗体組成物を同定するためのファージディスプレイライブラリーに対する1つのアプローチは、scFVファージライブラリーを使用することである(例えば、Huston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.,85:5879−5883,1988;Chaudhary et al.,Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.,87:1066−1070,1990参照)。バクテリオファージコートタンパク質上にディスプレイされたscFvライブラリーの様々な実施形態が記載されている。例えば、WO96/06213及びWO92/01047(Medical Research Council et al.)並びにWO97/08320(Morphosys)(これらは、参照により、本明細書に組み込まれている。)に記載されているように、ファージディスプレイアプローチの改良も知られている。例えば、WO92/01047(CAT/MRC)及びWO91/17271(Affymax)に記載されているように、Fabライブラリーのディスプレイも知られている。
抗体又は抗体断片はファージ又はファジミド粒子の表面上に存在するので、優れた結合活性を維持したバリアントを同定するために、新生物疾患又は炎症性疾患の治療のために組織因子シグナル伝達を阻害する、ディスプレイベクター中にクローニングされているハイブリッド抗体又はハイブリッド抗体断片を選択することができる。例えば、「BarbasIII,et al.,Phage Display,A Laboratory Manual.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2001))」(参照により、その内容は、本明細書に組み込まれる。)を参照されたい。例えば、Fab断片の場合には、軽鎖及び重鎖Fd産物はlacプロモーターの制御下にあり、細菌宿主の周辺質腔へ誘導するために、各鎖は、各鎖に融合されたリーダーシグナルを有する。抗体断片が適切に集合することができるのは、この腔の中である。重鎖断片は、ファージコートタンパク質ドメインとの融合物として発現され、これは、構築された抗体断片が新たに作製されたファージ又はファミジド粒子のコート中に取り込まれることを可能にする。新たなファミジド粒子の生成には、全ての必要なファージ遺伝子を含有するヘルパーファージの添加が必要である。ファージ又はファジミド表面上に抗体断片のライブラリーが提示されたら、続いて、パニングと呼ばれる工程が行われる。これは、i)ファージ又はファジミド粒子の表面上にディスプレイされた抗体を所望の抗原に結合し、(ii)結合していない抗体を洗浄除去し、(iii)結合された粒子を抗原から溶出し、及び(iv)さらなる選択のラウンドのために濃縮されたプールを増幅するために、溶出された粒子を新鮮な細菌宿主に曝露する方法である。典型的には、特異的結合に対する抗体クローンのスクリーニングの前に、パニングの3又は4ラウンドが行われる、このように、ファージ/ファジミド粒子は、結合表現型(抗体)を遺伝子型(DNA)に関連付けることを可能にし、抗体ディスプレイ技術が極めて首尾よく使用できるようにする。しかしながら、選択及び/又はスクリーニングのために、抗体断片ライブラリーを溶解性ファージベクター(修飾されたT7又はλZap系)中にクローニングするなど、他のベクター様式をこのヒト化工程のために使用することが可能である。
所望のハイブリッド抗体及び/又はハイブリッド抗体断片の選択後、所望のハイブリッド抗体及び/又はハイブリッド抗体断片は、当業者に公知のあらゆる技術(例えば、原核生物又は真核生物細胞発現など)によって、大量に作製できることが想定される。例えば、ハイブリッド抗体又は断片は、(本明細書に記載されている技術に従って加工されている)始源種の抗体結合特異性を保持するのに必要とされるCDR、及び、必要であれば、可変領域フレームワークの最小部分が、始源種の抗体に由来し、抗体の残部が、標的種免疫グロブリン(本明細書に記載されているように操作し得、これにより、ハイブリッド抗体重鎖の発現用ベクターを与え得る。)に由来する抗体重鎖をコードする発現ベクターを構築するための慣用技術を使用することによって作製され得る。
詳細な実施形態において、一本鎖Fv(scFv)抗体ライブラリーは、様々な癌疾患を有する5、10、15若しくは20人又はそれ以上の患者の末梢血リンパ球から調製することができる。次いで、合成シアリルLewis及びLewisBSA抱合体を使用することによって、完全ヒト高親和性scFV抗体を選択することができる。一研究において、ELISA,BIAcore及び膵臓腺癌細胞の細胞表面へのフローサイトメトリー結合によって示されたように、これらのヒトscFv抗体は、シアリルLewis及びLewisBに対して特異的であった。ヌクレオチド配列の決定によって、少なくとも4つの特有のscFV遺伝子が得られることが明らかとなった。Kd値は、二次免疫応答から得られたmAbの親和性に匹敵する1.1から6.2×10−7Mの範囲にわたった。これらの抗体は、炭水化物抗原の構造及び機能を探るための、及びヒト腫瘍疾患の治療における価値ある試薬となり得る。Mao,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96:6953−6958,1999。
さらなる詳細な実施形態において、関連する適切な抗原に対する様々な抗体、例えば、新生物疾患又は炎症性疾患の治療のために組織因子シグナル伝達を阻害する抗体を作製及び選択するために、ファージディスプレイが行われたコンビナトリアル抗体ライブラリーを使用することができる。抗体Fv領域のヘテロ二量体構造をディスプレイするために、ファージコートタンパク質pVII及びpIXを使用することができる。糸状バクテリオファージのpIX上にディスプレイされた4.5×10個のメンバーの巨大な、ヒト一本鎖Fv(scFv)ライブラリーを構築するために、この技術の態様は拡張されている。さらに、6つの異なるタンパク質抗原に対するscFvクローンの選択によって、ライブラリーの多様性、品質及び有用性が実証された。特に、選択されたクローンの90%超が、パニングの僅か3ラウンド後に、それらの各抗原に対して陽性結合を示した。分析されたscFvも、高親和性を有することが明らかとなった。例えば、速度論分析(BIAcore)によって、ブドウ球菌エンテロトキシンB及びコレラトキシンBサブユニットに対するscFvは、それぞれ、nM及びnM以下の解離定数を有しており、免疫化から得られたmAbの親和性と同等の親和性又はそれを上回る親和性を与えることが明らかとなった。極めて異なるタンパク質間だけでなく、より密接に関連したタンパク質の場合にも(2つのタンパク質間の配列相同性が80%を超えるにも関わらず、例えば、リシナス・コミュニス(Ricinus communis(「リシン」)アグルチニン(RCA60及びRCA120))、高い特異性も達成された。この結果は、pIX−ディスプレイライブラリーの性能はpIII−ディスプレイフォーマットの性能を凌駕し得る可能性を秘めていること、及び幅広い標的抗原のパニングに対して、pIX−ディスプレイライブラリーが理想的に適していることを示唆した。Gao et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99:12612−12616,2001。
抗体又は他の結合因子と抗原間の特異的結合は、少なくとも10−6Mの結合親和性を意味する。好ましい結合因子は、少なくとも10−7M、好ましくは、10−8Mから10−9M、10−10M、10−11M又は10−12Mの親和性で結合する。エピトープという用語は、抗体へ特異的に結合することができる抗原性決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、通常、特異的な三次元構造上の特徴及び特異的な電荷特性を有する。立体構造的エピトープ及び非立体構造的エピトープは、前者への結合は、変性溶媒の存在下で失われるが、後者への結合は失われないという点で区別される。
組織因子シグナル伝達及びその調節物質を検出するための免疫学的結合アッセイ
本発明は、組織因子シグナル伝達を検出し、組織因子シグナル伝達の調節物質を同定するための方法を提供する。以下でさらに詳しく記載されているように、本方法の幾つかは、細胞をベースとしたアッセイ系において組織因子シグナル伝達の調節物質を同定することを目的とする。他の幾つかの方法は、無細胞系において組織因子シグナル伝達の調節物質を同定することを目的とする。幾つかの実施形態において、TF/VIIaによって媒介されるシグナル伝達活性を阻害又は抑制するが、インビボでの止血を妨害しない組織因子調節物質を同定するために、試験化合物がスクリーニングされる。このような調節物質(例えば、小分子有機化合物調節物質)は、本明細書に記載されている様々な競合アッセイフォーマットにおいて、このような所望の特性を有する公知の化合物(例えば、MAb10H10)を使用することによって同定することが可能である。従って、本発明のスクリーニング方法の幾つかは、TF/VIIaシグナル伝達を阻害するが、凝固を遮断しない化合物を同定することを目的とする。これらの方法は、(i)抗体又はMAb10H10の結合特異性を有する抗原結合分子と(ii)組織因子ポリペプチド間の結合を、試験化合物の存在下又は不存在下で測定すること、次いで、試験化合物の不存在下での結合に比べて、試験化合物の存在下での結合の阻害を検出することを含む。これらの方法の幾つかは、ATCC受託番号HB9383を有するハイブリドーマによって作製されたマウスMAb10H10を使用する。スクリーニング方法の幾つかは、好ましくは小分子有機化合物、例えば、約5000以下、より好ましくは、約2,500、1,000又は500以下の分子量を有する化学的化合物である試験化合物を使用する。
これらの方法を実施するために、本明細書に記載されている技術及びアッセイフォーマットの何れをも使用することが可能である。組織因子への結合に関して、MAb10H10と競合するそれらの能力を測定することに加えて、このようにして同定された調節物質は、組織因子シグナル伝達を調節する活性(例えば、止血に対して何らの有意な効果も有さずに、TF/VIIaシグナル伝達活性を阻害すること)についてさらに調べることが可能である。化合物は、本明細書に記載されているTF/VIIaによって媒介されるシグナル伝達活性(例えば、MAPキナーゼリン酸化又はプロテアーゼ活性化受容体2との複合体形成及びプロテアーゼ活性化受容体2を介したシグナル伝達)の何れかに対する阻害活性について検査することができる。TF/VIIaによって媒介されるシグナル伝達活性を測定するためのアッセイは、本分野において周知である。以下の実施例8に例示されているように、TF/VIIaによって媒介されるシグナル伝達活性は、MAPキナーゼリン酸化アッセイによって、例えば、第VIIa因子及び第X因子で刺激されたHUVEC細胞又はCHO細胞中で、MAPキナーゼ(例えば、ERKキナーゼ)のウェスタンブロットリン酸化レベルによるアッセイによって、定量的に測定することが可能である。これらのアッセイは、TFシグナル伝達の新規調節化合物(例えば、阻害剤)を同定するために、本明細書に記載されているスクリーニング法において使用することが可能である。これらのアッセイは、使用されたTFシグナル伝達の阻害剤の効果をモニターするために、本発明の治療方法において使用することも可能である。化合物の不存在下でのTFシグナル伝達に比べて、化合物が、TFシグナル伝達活性を少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%又は少なくとも95%阻害することができれば、化合物は、TFシグナル伝達阻害剤と考えられる。定量的な阻害は、本分野で周知のTFシグナル伝達アッセイ(例えば、Ahamed et al.,Blood 105:2384−91,2005参照)又は本明細書に記載されているTFシグナルアッセイ(例えば、以下の実施例8に記載されている条件下で、6日の期間にわたる、HUVEC細胞中でのERKリン酸化レベルの低下)の何れかによって測定することが可能である。
本分野で公知アッセイ又は本明細書に記載されているアッセイのいずれかを用いて、スクリーニング法から同定された化合物(又は本発明の治療方法において使用される阻害剤)は、組織因子によって媒介される止血活性(例えば、凝固)に対して著しい影響を有さないことを確認するためにさらに調べることができる。例えば、TFによって媒介される凝固活性は、以下の実施例に示されているように、ウェスタンブロットによるHaCaT細胞中での第Xa因子の生成を定量することによって測定することができる。これらのアッセイは、本発明のスクリーニング法において使用される試験化合物又は本発明の治療方法において使用される阻害剤化合物を検査するために使用することが可能である。本化合物の不存在下で観察される止血活性に比べて、化合物の存在が、止血活性(例えば、本明細書に記載されている条件下でのXa生成アッセイによって測定された場合の凝固活性)の5%超、10%超、15%超又は25%超の低下を引き起こさなければ、化合物は、TFによって媒介される止血(例えば、凝固)の活性化を妨害せず、又は妨げない(すなわち、TFによって媒介される止血に対して有意な効果を有しない。)。幾つかの実施形態において、凝固に対する化合物の潜在的遮断活性は、組織因子媒介性の凝固を遮断することが知られている抗体による組織因子への結合に対する化合物の効果をアッセイすることによって調べることができる。1つのこのような抗体は、ATCC受託番号HB9382を有するハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体5G9である。凝固に対する本抗体の阻害的活性及び関連するアッセイは、米国特許No.5,223,427中に詳しく開示されている。組織因子へのMAb5G5結合に対して化合物が著しい効果(例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、75%又はそれ以上の低下)を欠如していることは、本化合物が組織因子媒介性凝固を遮断する可能性がないことを示している。
組織因子シグナル伝達は、多数の周知の免疫学的結合アッセイのいずれかを用いて、検出及び/又は定量することも可能である(例えば、米国特許4,366,241;4,376,110;4,517,288;及び4,837,168参照)。免疫学的結合アッセイにおいて有用な抗体は、哺乳動物対象中の止血を妨害せずに、組織因子シグナル伝達の阻害剤として作用することができる。免疫学的結合アッセイは、哺乳動物対象中の変化した組織因子/第VIIa因子シグナル伝達に依存する疾病の診断又は治療において抗体を使用する。例えば、MAb10H10は、哺乳動物対象中の止血を妨害せずに組織因子シグナル伝達の阻害剤として作用する抗体であり、本発明の実施形態のような免疫学的結合アッセイにおいて有用である。一般的なイムノアッセイの概説については、Methods in Cell Biology:Antibodies in Cell Biology,volume 37(Asai,ed.1993);Basic and Clinical Immunology(Stites & Terr,eds.,7th ed.1991)も参照されたい。免疫学的な結合アッセイ(又はイムノアッセイ)は、典型的には、選択したタンパク質又は抗原(本事例では、組織因子又はその抗原性サブ配列)に特異的に結合する抗体を使用する。抗体(例えば、抗組織因子)は、当業者に周知である多数の手段の何れかによって、及び上記のように作製することが可能である。
イムノアッセイは、しばしば、抗体及び抗原によって形成された複合体に特異的に結合し、標識する標識剤も使用する。標識剤は、それ自体、抗体/抗原複合体を含む部分の1つとすることができる。従って、標識剤は、標識された組織因子とすることができる。あるいは、標識剤は、抗体/組織因子複合体へ特異的に結合する二次抗体など第三の部分とすることができる(二次抗体は、典型的には、一次抗体が由来する種の抗体に対して特異的である。)。プロテインA又はプロテインGなど、免疫グロブリン定常領域を特異的に結合することができる他のタンパク質も、標識剤として使用することが可能である。これらのタンパク質は、様々な種から得られる免疫グロブリン定常領域と強い非免疫原性の反応性を示す(例えば、Kronval et al.,J. Immunol.111:1401−1406,1973;Akerstrom er al.,J. Immunol.135:2589−2542,1985参照)。標識剤は、ストレプトアビジンなどの別の分子が特異的に結合することができるビオチンなどの検出可能部分で修飾することができる。様々な検出可能部分が、当業者に周知である。
アッセイを通じて、試薬の各組み合わせ後に、温置及び/又は洗浄工程が必要となり得る。温置工程は、約5秒から数時間まで、場合によって約5分から約24時間までを変動し得る。しかしながら、温置時間は、アッセイフォーマット、抗原、溶液の容積、濃度などに依存する。通常、アッセイは、周囲温度で実施されるが、10℃から40℃など、温度範囲にわたって実施することが可能である。
非競合アッセイフォーマット:試料中の組織因子シグナル伝達を検出するためのイムノアッセイは、競合的又は非競合的の何れかであり得る。非競合イムノアッセイとは、抗原の量が直接測定されるアッセイである。1つの好ましい「サンドイッチ」アッセイにおいて、例えば、抗組織因子抗体は、抗組織因子抗体がその上に固定されている固体基材へ直接結合させることができる。これらの固定化された抗体は、次いで、試験試料中に存在する組織因子を捕捉する。このようにして固定化された組織因子には、次いで、標識を有する、組織因子に対する第二の抗体などの標識剤が結合される。あるいは、第二の抗体は、標識を欠如し得るが、続いて、第二の抗体が得られた種の抗体に対して特異的な標識された第三の抗体によって結合され得る。第二又は第三の抗体は、典型的には、別の分子(例えば、ストレプトアビジン)が特異的に結合して検出可能部分を付与する検出可能部分(ビオチンなど)で修飾される。
競合アッセイフォーマット:競合アッセイでは、試料中に存在する組織因子シグナル伝達の量は、試料中に存在する未知の組織因子による抗組織因子抗体から置換された(競合によって除去された)既知の添加された(外来)組織因子の量を測定することによって、間接的に測定される。1つの競合アッセイでは、組織因子の既知の量が試料に添加され、次いで、組織因子に特異的に結合する抗体と試料を接触させる。抗体に結合された外来組織因子の量は、試料中に存在する組織因子の濃度に反比例する。特に好ましい実施形態において、抗体は、固体基材上に固定される。抗体に結合された組織因子の量は、組織因子/抗体複合体の量を測定することによって、あるいは、残存する複合体化されていないタンパク質の量を測定することによって測定することが可能である。組織因子の量は、標識された組織因子分子を提供することによって検出することが可能である。
ハプテン阻害アッセイは、別の好ましい競合アッセイである。このアッセイでは、既知の組織因子が、固体基材上に固定される。抗組織因子抗体の既知の量が試料に添加され、次いで、固定化された組織因子と試料を接触させる。既知の固定化された組織因子に結合された抗組織因子抗体の量は、試料中に存在する組織因子の量に反比例する。同じく、固定化された抗体の量は、抗体の固定化された割合又は溶液中に残存する抗体の割合を検出することによって検出することができる。検出は、直接であり得(この場合には、抗体は標識されている。)、又は、上記抗体へ特異的に結合する標識された部分をその後添加することによって間接的であり得る。
交叉反応性の測定:競合結合フォーマットのイムノアッセイは、交叉反応性の測定に対しても使用することが可能である。例えば、組織因子は、固体支持体へ固定化することが可能である。固定化された抗原に対する抗血清の結合を競合するアッセイに、タンパク質(例えば、組織因子及び相同体)が添加される。固定化されたタンパク質への抗血清の結合について、添加されたタンパク質が競合する能力を、組織因子がそれ自体と競合する能力と比較する。標準的な計算を用いて、上記タンパク質に対する%交叉反応性を計算する。上に列記されている添加された各タンパク質と10%未満の交叉反応性を有する抗血清を選択し、プールする。検討されている添加されたタンパク質、例えば、関連性が低い相同体を用いた免疫吸収によって、プールされた抗血清から、場合によって、交叉反応する抗体を除去する。
免疫吸収され、プールされた抗血清は、次いで、おそらく組織因子の対立遺伝子又は多型バリアントであると考えられる第二のタンパク質を免疫原タンパク質に対して比較するために、上記競合結合イムノアッセイにおいて使用される。この比較を行うために、濃度の幅広い範囲で、2つのタンパク質の各々をアッセイし、固定化されたタンパク質への抗血清の結合の50%を阻害するために必要とされる各タンパク質の量を求める。結合の50%を阻害するために必要とされる第二のタンパク質の量が、結合の50%を阻害するために必要とされる組織因子の量の10倍未満であれば、第二のタンパク質は、組織因子免疫原に対して生成されたポリクローナル抗体へ、特異的に結合すると称される。
他のアッセイフォーマット:試料中の組織因子の存在を検出及び定量するために、ウェスタンブロット(イムノブロット)分析が使用される。本技術は、一般に、分子量に基づいて、ゲル電気泳動によって試料タンパク質を分離すること、分離されたタンパク質を適切な固体支持体(ニトロセルロースフィルター、ナイロンフィルター又は誘導化されたナイロンフィルターなど)へ転写すること、及び組織因子を特異的に結合する抗体とともに試料を温置することを含む。抗組織因子抗体は、固体支持体上の組織因子へ特異的に結合する。これらの抗体は、直接標識することが可能であり、あるいは、その後、抗組織因子抗体へ特異的に結合する標識された抗体(例えば、標識されたヒツジ抗マウス抗体)を用いて検出することが可能である。
他のアッセイフォーマットとしては、特異的な分子(例えば、抗体)を結合するように設計されたリポソームを使用し、封入された試薬又はマーカーを放出するリポソームイムノアッセイ(LIA)が挙げられる。次いで、標準的な技術に従って、放出された化学物質が検出される(Monroe et al.,Amer.Clin.Prod.Rev.5:34−41,1986参照)。
非特異的な結合の低下:当業者は、しばしば、イムノアッセイにおける非特異的な結合を最小化することが望ましいことを理解する。特に、アッセイが、固体基材上に固定化された抗原又は抗体を含む場合には、基材への非特異的結合の量を最小限に抑えることが望ましい。このような非特異的結合を低下させる手段は、当業者に周知である。典型的には、この技術は、タンパク質性組成物で基材を被覆することを含む。特に、ウシ血清アルブミン(BSA)などのタンパク質組成物、無脂肪の粉末化されたミルク及びゼラチンは広く使用されており、粉末化されたミルクが最も好ましい。
標識:本アッセイにおいて使用される具体的な標識又は検出可能な基は、アッセイにおいて使用される抗体の特異的な結合を著しく妨害しない限り、本発明の重大な態様ではない。検出可能な基は、検出可能な物理的又は化学的特性を有する全ての物質であり得る。このような検出可能な標識は、イムノアッセイの分野において多数開発されており、一般に、このような方法において有用な殆ど全ての標識を、本発明に適用することが可能である。従って、標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的又は化学的手段によって検出可能なあらゆる組成物である。本発明において有用な標識には、磁気ビーズ(例えば、DYNABEADSTM)、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアナート、テキサスレッド、ローダミンなど)、放射性標識(例えば、H、125I、35S、14C又は32P)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ及びELISAで一般的に使用されているその他の酵素)、化学発光標識及びコロイド状金若しくは着色されたガラス又はプラスチックビーズ(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)などの比色分析標識が含まれる。
標識は、本分野で周知の方法に従って、アッセイの所望の成分へ直接又は間接に結合することができる。上記のように、様々な標識を使用することが可能であり、必要とされる感度、化合物との連結の容易さ、安定性要件、利用可能な計測手段及び廃棄設備に応じて標識を選択する。
非放射性標識は、しばしば、間接的な手段によって付着される。一般に、リガンド分子(例えば、ビオチン)は、分子に共有結合される。次いで、リガンドは、本来的に検出可能であり、又は検出可能な酵素、蛍光化合物又は化学発光化合物などのシグナル系に共有結合されている別の分子(例えば、ストレプトアビジン)分子に結合する。リガンド及びそれらの標的は、組織因子を認識する抗体又は抗組織因子抗体を認識する二次抗体とのあらゆる適切な組み合わせで使用することができる。
分子は、例えば、酵素又は蛍光標識試薬との連結によって、シグナル生成化合物へ直接連結することもできる。標識として興味深い酵素は、主に、ヒドロラーゼ、特に、ホスファターゼ、エステラーゼ及びグリコシダーゼ、又はオキシドターゼ、特に、ペルオキシダーゼである。蛍光化合物としては、フルオレセインとその誘導体、ローダミンとその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンなどが挙げられる。化学発光化合物としては、ルシフェリン及び2,3−ジヒドロフタラジンジオン、例えば、ルミノールが挙げられる。使用可能な様々な標識又はシグナル発生系の概説については、米国特許No.4,391,904を参照されたい。
標識を検出する手段は、当業者に周知である。従って、例えば、標識が放射性標識である場合には、検出用手段としては、シンチレーションカウンター又はオートラジオグラフィーにおけるような写真用フィルムが挙げられる。標識が蛍光性標識である場合には、光の適切な波長を用いて蛍光色素を励起し、生じた蛍光を検出することによって標識を検出することができる。蛍光は、電荷結合素子(CCD)及び光電子増倍管などの電気的検出装置を使用することによって、視覚的に検出することができる。同様に、酵素的標識は、酵素に対する適切な基質を与え、生じた部分生成物を検出することによって検出することが可能である。最後に、単純な比色分析標識は、単に、標識に付随する色を観察することによって検出することが可能である。従って、様々な試験紙アッセイにおいて、連結された金は、しばしば、ピンクを呈するのに対して、連結された様々なビーズは、ビーズの色を呈する。
幾つかのアッセイフォーマットは、標識された成分の使用を必要としない。例えば、標的抗体の存在を検出するために、凝集アッセイを使用することができる。この場合には、抗原によって被覆された粒子は、標的抗体を含む試料によって凝集される。このフォーマットでは、何れの成分も標識される必要はなく、標的抗体の存在は、単純な視覚的検査によって検出される。
小分子化学的組成物
「小分子」又は「小化学実体」には、生物学的プロセスに提供を及ぼすように作用することができる全ての化学的部分又はその他の部分が含まれ、小化学実体は、哺乳動物対象中の止血を妨害せずに、組織因子シグナル伝達の阻害剤として作用することができ、哺乳動物対象中の疾病の治療又は診断において有用である。小分子は、現在公知で、使用されている治療剤のあらゆる数を含むことができ、又は、生物機能に対するスクリーニングのために、このような分子のライブラリーにおいて合成される小分子であり得る。小分子は、サイズによって、高分子と区別される。本発明の小分子は、通常、約5,000ダルトン(Da)未満、好ましくは約2,500Da未満、より好ましくは、1,000Da未満、最も好ましくは、約500Da未満の分子量を有する。哺乳動物対象中の組織因子/第VIIa因子シグナル伝達に依存する疾病を治療するための本発明の方法において、小分子有機化合物、ペプチド模倣体又は抗体模倣体は、抗体阻害剤のMAb10H10の模倣体とすることができる。
小分子には、有機化合物、ペプチド模倣体、抗体模倣体及びこれらの連結体が含まれるが、これらに限定されない。本明細書において使用される「有機化合物」又は「小化学実体」という用語は、核酸及びポリペプチドなどの高分子以外の、炭素をベースとするあらゆる化合物を表す。炭素に加えて、有機化合物は、カルシウム、塩素、フッ素、銅、水素、鉄、カリウム、窒素、酸素、硫黄及び他の元素を含有し得る。有機化合物は、芳香族又は脂肪族の形態であり得る。有機化合物の非限定的な例には、アセトン、アルコール、アニリン、炭水化物、単糖、オリゴ糖、多糖、アミノ酸、ヌクレオシド、ヌクレオチド、脂質、レチノイド、ステロイド、プロテオグリカン、ケトン、アルデヒド、飽和、不飽和及び多不飽和脂肪、油及び蝋、アルケン、エステル、エーテル、チオール、スルフィド、環状化合物、複素環式化合物、イミダゾール及びフェノールが含まれる。本発明において使用される有機化合物には、ニトロ化された有機化合物及びハロゲン化された(例えば、塩素化された)有機化合物も含まれる。ペプチド模倣体を調製するための方法は、以下に記載されている。小分子の集まり及び本発明に従って同定された小分子は、加速器質量分析(AMS;Turteltaub et al.,Curr Pharm Des 6(10):991−1007,2000,Bioanalytical applications of accelerator mass spectrometry for pharmaceutical research;and Enjalbal et al.,Mass Spectrom Rev 19(3):139−61,2000,Mass spectrometry in combinatorial chemistry)などの技術によって性質決定される。
好ましい小分子又は小化学実体は、比較的、より容易に及びより安価に製造され、調合され、又はその他調製される。好ましい小分子は、様々な保存条件下で安定である。生物学的に活性であり、及び改善された薬学的特性を有する分子を形成するために、好ましい小分子は、高分子と強固に会合させて配置され得る。改善された薬学的特性には、所望の生物活性に対して好ましい、循環時間、分布、代謝、修飾、排泄、分泌、除去及び安定性の変化が含まれる。改善された医薬特性には、化学実体の毒性学的及び効力特性の変化が含まれる。
組織因子シグナル伝達の調節物質に対する高情報量アッセイ
上述のように、本発明は、調節物質、例えば、組織因子シグナル伝達の阻害剤又は活性化因子を同定する方法であり、阻害剤が(例えば、哺乳動物対象中の)止血を妨害しない、前記方法を提供する。これらの方法で使用されるべき試験化合物は、あらゆる小有機分子、又は、タンパク質、例えば、抗体若しくはペプチド、糖、小化学分子、核酸、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAi若しくはリボザイム若しくは脂質などの生物学的実体であり得る。あるいは、調節物質は、組織因子の遺伝学的に変化されたバージョンであり得る。典型的には、試験化合物は、小有機分子、ペプチド、抗体、脂質及び脂質類縁体である。
実質的にあらゆる化学化合物を、本発明のアッセイにおける調節物質又はリガンドの候補として使用することが可能であるが、化合物は、水溶液又は有機(特に、DMSOをベースとした)溶液中に溶解し、使用されることが最も多い。アッセイは、アッセイ工程を自動化し、アッセイにとって便利な何れかの源から得られた化合物を提供することによって、巨大な化学ライブラリーをスクリーニングするように設計されており、これは、通例、(例えば、ロボットアッセイにおいて、マイクロタイタープレート上のマイクロタイターフォーマットで)平行して実施される。Sigma(St.Louis,MO)、Aldrich(St.Louis,MO)、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)、Fluka Chemika−Biochemica Analytika(Buchs Switzerland)などの、化学化合物の多くの販売業者が存在することが理解される。
好ましい一実施形態において、高情報量スクリーニング法は、治療化合物の候補(調節物質又はリガンド化合物の候補)の多数を含有するコンビナトリアル小有機分子又はペプチドライブラリーを提供することを含む。このような「コンビナトリアル化学ライブラリー」又は「リガンドライブラリー」は、次いで、本明細書中に記載されているように、所望の特徴的活性を示すライブラリー要素(特に、化学種又はサブクラス)を同定するために、1つ又はそれ以上のアッセイにおいてスクリーニングされる。このようにして同定された化合物は、慣例の「リード化合物」としての役割を果たすことが可能であり、又は治療薬の候補若しくは実際の治療薬として使用することが可能である。
コンビナトリアル化学ライブラリーは、試薬などの多数の化学的「構築ブロック」を組み合わせることによって、化学合成又は生物学的合成の何れかによって生成された多様な化学的化合物の集合物である。例えば、所定の化合物長(すなわち、ポリペプチド化合物中のアミノ酸の数)に対して可能な全ての様式で、化学構築ブロック(アミノ酸)のセットを組み合わせることによって、ポリペプチドライブラリーなどの線形コンビナトリアル化学ライブラリーが形成される。化学的構築ブロックのこのようなコンビナトリアル混合を通じて、何百万もの化学化合物を合成することが可能である。
コンビナトリアル化学ライブラリーの調製及びスクリーニングは、当業者に周知である。このようなコンビナトリアル化学ライブラリーには、ペプチドライブラリーが含まれるが、これに限定されるものではない(例えば、米国特許5,010,175,Furka,Int.J.Pept.Prot.Res.37:487−493,1991及びHoughton et al.,Nature 354:84−88,1991参照)。化学多様性ライブラリーを作製するための他の化学も使用することができる。このような化学には、ペプトイド(例えば、PCT公開No.WO91/19735)、コードされたペプチド(例えば、PCT公開No.WO93/20242)、ランダムバイオオリゴマー(例えば、PCT公開No.WO92/00091)、ベンゾジアゼピン(例えば、米国特許5,288,514)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピン及び二ペプチドなどのダイバーソマー(diversomer)(Hobbs et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 90:6909−6913,1993)、ビニログ性(vinilogous)ポリペプチド(IIagihara et al.,J.Amer.Chem.Soc.114:6568,1992)、グルコース骨格を有する非ペプチド性ペプチド模倣体(Hirschmann et al.,J.Amer.Chem.Soc.114:9217−9218,1992)、小化合物ライブラリーの類似的有機合成(Chen et al.,J.Amer.Chem.Soc.116:2661,1994)、オリゴカルバマート(Cho et al.,Science 261:1303,1993)及び/又はペプチジルホスホナート(Campbell et al.,J.Org.Chem.59:658,1994)、核酸ライブラリー(Ausubel,Berger and Sambrook参照、全て上記)、ペプチド核酸ライブラリー(例えば、米国特許5,539,083参照)、抗体ライブラリー(例えば、Vaughn et al.,Nature Biotechnology,14:309−314,1996及びPCT/US96/10287参照)、炭水化物ライブラリー(例えば、Liang et al.,Science 274:1520−1522,1996及び米国特許5,593,853参照)、小有機分子ライブラリー(例えば、ベンゾジアゼピン、Baum C&EN,Jan 18,page33(1993)参照;イソプレノイド、米国特許5,569,588;チアゾリジノン及びメタチアザノン、米国特許5,549,974;ピロリジン、米国特許5,525,735及び5,519,134;モルホリノ化合物、米国特許5,506,337;ベンゾジアゼピン、5,288,514など)が含まれるが、これらに限定されない。
コンビナトリアルライブラリーを調製するための装置は、市販されている(例えば、357MPS,390MPS,Advanced Chem Tech,Louisville KY,Symphony,Rainin,Woburn,MA,A33A Applied Biosystems,Foster City,CA,9050 Plus,Millipore,Bedford,MA参照)。さらに、多数のコンビナトリアルライブラリーそのものが、市販されている(例えば、ComGenex,Princeton,NJ.,Asinex,Moscow,Ru,Tripos,Inc.,St.Louis,MO,ChemStar,Ltd,Moscow,RU,3D Pharmaceuticals,Exton,PA,Martek Biosciences,Columbia,MD,などを参照)。
候補化合物は、新生物疾患又は炎症性疾患の治療用薬物を同定するための戦略の一部として有用であり、この場合、化合物は、組織因子シグナル伝達を阻害し、出血のリスクを増加させない。シグナル伝達組織因子に結合する試験化合物は、候補化合物と考えられる。
組織因子に結合し、又は組織因子タンパク質若しくはポリペプチド若しくは生物学的に活性なこれらの部分の活性を調節する候補又は試験化合物を同定するためのスクリーニングアッセイも、本発明に含まれる。生物学的ライブラリー;空間的に割り付けられた平行固相又は溶液相ライブラリー;逆重畳を必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;及びアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法など(但し、これらに限定されない。)、本分野で公知のコンビナトリアルライブラリー法における多数のアプローチのうちの何れかを用いて、試験化合物を取得することができる。生物学的ライブラリーアプローチは、例えば、ペプチドライブラリーに対して使用することができるが、ペプチド、非ペプチド、オリゴマー又は化合物の小分子ライブラリーに対して、他の4つのアプローチを適用することが可能である(Lam,Anticancer Drug Des. 12:145,1997)。分子ライブラリーの合成のための方法の例は、本分野において、例えば、「DeWitt et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.90:6909,1993;Erb et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:11422,1994;Zuckermann et al.,J.Med.Chem.37:2678,1994;Cho et al.,Science261:1303,1993;Carrell et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2059,1994;Carell et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061,1994;及びGallop et al.,J.Med.Chem.37:1233,1994」中に見出すことができる。幾つかの実施形態において、試験化合物は、組織因子の活性化バリアントである。
化合物のライブラリーは、溶液中(例えば、Houghten,Bio/Techniques13:412−421,1992)、又はビーズ(Lam,Nature 354:82−84,1991)、チップ(Fodor,Nature 364:555−556,1993)、細菌(米国特許5,223,409)、芽胞(米国特許5,571,698,5,403,484及び5,223,409)、プラスミド(Cull et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:1865−1869,1992)又はファージ(Scott et al.,Science 249:386−390,1990;Devlin,Science 249:404−406,1990;Cwirla et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA87:6378−6382,1990;and Felici,J.Mol.Biol.222:301−310,1991)上に提示することができる。
組織因子又は生物学的に活性なその部分のシグナル伝達活性を阻害する試験化合物の能力は、例えば、試験化合物の存在下、凝固活性の不存在下で、組織因子シグナル伝達の阻害をモニターすることによって測定することが可能である。組織因子又は生物学的に活性なその部分の活性の調節は、凝固活性の不存在下で組織因子シグナル伝達を測定することによって測定することが可能である。組織因子シグナル伝達又は生物学的に活性なその部分を調節する試験化合物の能力は、組織因子がタンパク質ジスルフィドイソメラーゼに結合する能力をモニターすることによって測定することも可能である。結合アッセイは、細胞をベースとしたものであり、又は無細胞であり得る。
化合物が、出血のリスクを増加させずに、新生物疾患又は炎症性疾患の治療のために組織因子シグナル伝達を阻害する能力は、直接の結合を測定するための本明細書に記載されている方法又は本分野で公知の方法の1つによって測定することが可能である。一実施形態において、出血のリスクを増加させずに、化合物が組織因子シグナル伝達を阻害する能力は、ケラチン生成細胞又は内皮細胞中での組織因子シグナル伝達をモニターすることによって測定することが可能である。組織因子シグナル伝達の検出は、FLAG配列又はルシフェラーゼなどの検出可能なマーカーもコードする組み換え組織因子の発現を検出することを含み得る。このアッセイは、直接結合のアッセイに付加することができる。一般的に、このようなアッセイは、試験化合物が組織因子シグナル伝達を阻害する能力を決定するために使用される。
一般に、試験化合物が組織因子に結合し、組織因子シグナル伝達を妨害する能力は、試験化合物の不存在下で結合が測定される対照と比較される。幾つかの事例では、予め決定された基準値が使用される。このような基準値は、対照と比較して決定することが可能であり、この場合には、基準と異なる検査試料は、化合物が目的の分子(例えば、組織因子)に結合し、又はタンパク質ジスルフィドイソメラーゼの存在下で組織因子依存性PAR2シグナル伝達を調節することを示唆する。基準値は、標準を用いて観察された結合の量(例えば、シグナル伝達組織因子に対する抗体の親和性)も反映し得る。この場合には、基準に類似する(例えば、基準に等しい、又は基準を下回る)試験化合物は、当該化合物が候補化合物(例えば、基準抗体と等しい、又は基準抗体より大きい程度で、シグナル伝達組織因子に結合する。)であることを示唆する。
本発明は、さらに、上記スクリーニングアッセイによって同定された新規因子及び本明細書に記載されている治療のためのその使用に関する。
一実施形態において、本発明は、組織因子又は組織因子を発現する細胞若しくは組織(天然に存在する又は組み換えの何れかである。)を用いる可溶性アッセイを提供する。別の実施形態において、本発明は、組織因子、細胞シグナル伝達プールを模倣するために適切に修飾された立体構造の組織因子又はそのリガンドが、共有又は非共有相互作用を介して、固相基材に付着される、固相をベースとした高情報量フォーマットのインビトロアッセイを提供する。本明細書に記載されているアッセイの何れの1つも、高情報量スクリーニングに適合するように改変することが可能である。
本発明の高情報量アッセイでは、可溶性又は固体状態の何れにおいても、最大数千の異なる調節物質又はリガンドを1日のうちにスクリーニングすることが可能である。この方法は、インビトロで、組織因子タンパク質に対して使用することが可能であり、又は組織因子遺伝子産物若しくは組織因子タンパク質を含む細胞をベースとしたアッセイ若しくは膜をベースとしたアッセイに対して使用することができる。特に、マクロタイタープレートの各ウェルは、選択された調節物質の候補に対して別個のアッセイを実行するために使用することが可能であり、又は、濃度若しくは温置時間の効果を観察すべき場合には、5から10個のウェル全てが単一の調節物質を検査することができる。従って、単一の標準的マイクロタイタープレートが、約100(例えば、96)の調節物質をアッセイすることが可能である。1536ウェルのプレートが使用される場合には、単一のプレートは、約100から約1500の異なる化合物を容易にアッセイすることができる。1日当り多くのプレートをアッセイすることが可能である。本発明の一体化されたシステムを用いて、最大約6,000、20,000、50,000又は100,000超の異なる化合物に対するアッセイスクリーニングが可能である。
固体状態の反応の場合、共有結合又は非共有結合を介して、例えば、タグを介して、直接又は間接に、目的のタンパク質若しくはその断片、例えば、細胞外ドメイン、又は、融合タンパク質の一部として目的のタンパク質若しくはその断片を含む細胞若しくは膜を固体状態の成分に結合させることが可能である。タグは、様々な成分の何れでもあり得る。一般に、タグを結合する分子(タグ結合剤)を固体支持体に固定し、タグ及びタグ結合剤の相互作用によって、目的のタグ化された分子を固体支持体に結合する。
文献に詳しく記載されている公知の分子相互作用に基づいて、多数のタグ及びタグ結合剤を使用することが可能である。例えば、タグが、天然の結合剤、例えば、ビオチン、プロテインA又はプロテインGを有する場合には、タグは、適切なタグ結合剤(アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラビジン、免疫グロブリンのFc領域など)と組み合わせて使用することが可能である。ビオチンなどの天然の結合剤を有する分子に対する抗体も広く使用可能であり、適切なタグ結合剤である。SIGMA Immunochemicals 1998 catalogue(SIGMA,St. Louis MO)を参照されたい。
同様に、タグ/タグ結合対を形成するために、適切な抗体と組み合わせて、あらゆるハプテン化合物又は抗原性化合物を使用することが可能である。何千もの特異的抗体が市販されており、多くのさらなる抗体が文献に記載されている。例えば、1つの一般的な設定において、タグは、第一の抗体であり、タグ結合剤は、第一の抗体を認識する第二の抗体である。抗体−抗原相互作用に加えて、受容体−リガンド相互作用も、タグ及びタグ結合剤対として適切である。例えば、細胞膜受容体のアゴニスト及びアンタゴニスト(例えば、トール様受容体、トランスフェリン、c−キット、ウイルス受容体リガンド、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、インターロイキン受容体、免疫グロブリン受容体及び抗体、カドヘリンファミリー、インテグリンファミリー、セレクチンファミリーなどの細胞受容体−リガンド相互作用);例えば、「Pigott & Power,The Adhesion Molecule Facts Book I,1993」を参照されたい。同様に、トキシン及び毒液、ウイルスエピトープ、ホルモン(例えば、オピエート、ステロイドなど)、(例えば、ステロイド、甲状腺ホルモン、レチノイド及びビタミンD、ペプチドなど、様々な小リガンドの効果を媒介する)細胞内受容体)、薬物、レクチン、糖、核酸(直鎖及び環状ポリマー立体構造の両方)、オリゴ糖、タンパク質、リン脂質及び抗体は、全て、様々な細胞受容体と相互作用することが可能である。
ポリウレタン、ポリエステル、ポリカルボナート、ポリウレア、ポリアミド、ポリエチレンイミン、ポリアリーレンスルフィド、ポリシロキサン、ポリイミド及びポリアセタートなどの合成ポリマーは、適切なタグ又はタグ結合剤を形成することも可能である。多くの他のタグ/タグ結合剤対は、本開示を参照することにより、当業者に自明であるように、本明細書に記載されているアッセイ系においても有用である。
ペプチド、ポリエーテルなどの一般的なリンカーは、タグとして機能することも可能であり、約5と200アミノ酸の間のポリgly配列などのポリペプチド配列が含まれる。このような柔軟なリンカーは、当業者に公知である。例えば、ポリエチレングリコールリンカーは、「Shearwater Polymers,Inc. Huntsville,Alabama」から入手可能である。これらのリンカーは、場合によって、アミド結合、スルフヒドリル結合又はヘテロ官能性結合を有する。
タグ結合剤は、現在利用可能な様々な方法の何れかを用いて、固体基材に固定される。固体基材は、タグ結合剤の一部と反応性を有する表面に化学基を固定する化学試薬に基材の全て又は一部を曝露することによって、一般的に誘導体化され、又は官能化される。例えば、より長い鎖部分に付着させるのに適した基には、アミン、ヒドロキシル、チオール及びカルボキシル基が含まれる。ガラス表面などの様々な表面を官能化するために、アミノアルキルシラン及びヒドロキシアルキルシランを使用することが可能である。このような固相バイオポリマーアレイの構築は、文献に詳しく記載されている。例えば、Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85:2149−2154,1963(例えば、ペプチドの固相合成を記載する。);Geysen et al.,J.Immun.Meth.102:259−274,1987(ピン上での固相成分の合成を記載する。);Frank & Doring,Tetrahedron 44:6031−6040,1988(セルロースディスク上の様々なペプチド配列の合成を記載する。);Fodor et al.,Science 251:767−777,1991;Sheldon et al.,Clinical Chemistry 39:718−719,1993;及びKozal et al.,Nature Medicine 2:753−759,1996(全て、固体基材に固定されたバイオポリマーのアレイを記載する。)を参照されたい。基材にタグ結合剤を固定するための非化学的アプローチには、熱、UV照射による架橋などの他の一般的な方法が含まれる。
組織因子シグナル伝達の調節物質としての二重特異的化合物
一態様において、非ヒト動物の血清及び/又は循環中の薬剤の濃度を低下させる候補又は試験二重特異的化合物を同定するための方法が提供される。本方法を用いて選択又は最適化された化合物は、このような化合物の投与が有益である対象、例えば、ヒト対象を治療するために使用することが可能である。
本発明の方法の実施形態において検査することが可能な候補化合物は、二重特異的化合物である。本明細書において使用される「二重特異的化合物」という用語は、2つの異なる結合特異性を有する化合物を含む。典型的な二重特異的化合物には、例えば、二重特異的抗体、ヘテロポリマー及び抗原をベースとしたヘテロポリマーが含まれる。
本発明の実施形態において検査することができる二重特異的分子は、好ましくは、組織因子、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ又はPAR2に対して特異的である結合部分、好ましくは、ヒト組織因子、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ又は標的とされる因子(例えば、異なる抗体又は抗原)に対して特異的な第二の結合部分に架橋されたPAR2を含む。組織因子に対して特異的な結合部分の例には、組織因子リガンド、例えば、好ましい実施形態において、組織因子シグナル伝達に対する抗体が含まれるが、これに限定されない。抗体は、哺乳動物対象中の組織因子シグナル伝達の阻害剤であり得、該阻害剤は、哺乳動物対象中の止血を妨害しない。
別の実施形態において、新規組織因子結合分子は、組織因子に結合し、組織因子シグナル伝達を阻害する能力に基づいて同定することが可能である。例えば、化合物又は小分子のライブラリーは、無細胞結合アッセイにおいて検査することが可能である。試験化合物(例えば、ペプチド模倣体、小分子又はその他の薬物)のあらゆる数を検査のために使用することが可能であり、生物学的ライブラリー;空間的に割り付け可能な平行固相又は溶液相ライブラリー;逆重畳を必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;及びアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法など、本分野で公知のコンビナトリアルライブラリー法における多数のアプローチのうちの何れかを用いて、試験化合物のあらゆる数を取得することができる。生物学的ライブラリーアプローチは、ペプチドライブラリーに限定されるが、ペプチド、非ペプチドオリゴマー又は化合物の小分子ライブラリーに対して、他の4つのアプローチを適用することが可能である(Lam,Anticancer Drug Des. 12:145,1997)。
調節剤及び天然の抽出物のライブラリーを検査する多くの薬物スクリーニングプログラムでは、所定の期間中に調査された調節剤の数を最大化するために、高情報量アッセイが望ましい。迅速な開発及び試験調節剤によって媒介される分子標的中の変化の比較的容易な検出を可能とするように作製できる点で、精製又は半精製されたタンパク質を用いて誘導され得るような無細胞系中で行われるアッセイは、しばしば、「一次」スクリーニングとして好ましい。さらに、試験調節剤の細胞毒性及び/又は生物学的利用可能性の効果は、一般に、インビトロ系では無視することが可能であり、代わりに、アッセイは、主として、分子標的に対する薬物の効果(上流又は下流要素との結合親和性の変化に現れ得る。)に焦点が当てられる。
別の実施形態において、本分野で公知のファージディスプレイ技術は、新規組織因子結合分子を同定するために使用することができる。一実施形態において、本発明は、組織因子又はその生物学的活性部分に結合する候補又は試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。本発明の二重特異的化合物において使用するための更なる因子を同定するために、組織因子に結合する分子を同定するための細胞をベースとしたアッセイを使用することが可能である。例えば、スクリーニングアッセイにおいて、組織因子を発現する細胞を使用することができる。例えば、組織因子への結合の統計学的に有意な変化を生じる化合物を同定することができる。
一実施形態において、アッセイは、インビトロで組織因子タンパク質に結合するその能力に基づいて組織因子結合分子が同定される無細胞アッセイである。組織因子タンパク質結合分子を提供することが可能であり、タンパク質がシグナル伝達組織因子タンパク質を結合する能力は、直接的結合を測定するための本分野で認められた方法を用いて検査することが可能である。タンパク質が標的分子に結合する能力の測定は、例えば、リアルタイムBiomolecular Interaction Analysis(BIA)などの技術を用いて実施することができる。Sjolander et al.,Anal.Chem.63:2338−2345,1991,and Szabo et al.,Curr.Opin.Struct.Biol.5:699−705,1995。本明細書において使用される、「BIA」は、相互作用物質(例えば、BIAcore)の何れも標識せずに、二重特異的相互作用をリアルタイムに研究するための技術である。表面プラズモン共鳴(SPR)の光学現象の変化は、生物学的分子間でのリアルタイム反応の指標として使用することが可能である。
本発明の無細胞アッセイは、タンパク質の可溶性形態及び/又は膜結合形態の両者の使用に適している。膜結合形態のタンパク質が使用される無細胞アッセイの場合には、タンパク質の膜結合形態が溶液中に維持されるように、可溶化剤を使用することが望ましい場合があり得る。このような可溶化剤の例には、n−オクチルグルコシド、n−ドデシルグリコシド、n−ドデシルマルトシド、オクタノイル−N−メチルグルカミド、デカノイル−N−メチルグルカミド、Triton(R)X−100、Triton(R)X−114、Thesit(R)イソトリデシポリ(エチレングリコールエーテル)、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアミニオ]−1−プロパンスルホナート(CHAPS)、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアミニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホナート(CHAPSO)又はN−ドデシル=N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホナートなどの非イオン性界面活性剤が含まれる。
タンパク質−タンパク質相互作用の検出を可能とする適切なアッセイ(例えば、免疫沈降、ツーハイブリッドアッセイなど)が、本分野において公知である。試験化合物の存在下及び不存在下でこのようなアッセイを実施することによって、これらのアッセイは、本発明のタンパク質の標的分子との相互作用を調節する(例えば、阻害又は増強する)化合物を同定するために使用することができる。
タンパク質が標的分子に結合し、又は標的分子と相互作用する能力の測定は、例えば、直接的結合によって、達成することが可能である。直接結合アッセイでは、複合体中の標識されたタンパク質を検出することによって標的分子へのタンパク質の結合を測定することができるように、タンパク質は、放射性同位体又は酵素的標識と結合させることができる。例えば、直接的又は間接的に、125 35S、14C又はHでタンパク質を標識することが可能であり、放射性同位体は、放射線放出の直接的カウントによって、又はシンチレーションカウンティングによって検出され得る。あるいは、分子は、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ又はルシフェラーゼで酵素的に標識することが可能であり、酵素的標識は、適切な基質の生成物への転化を測定することによって検出される。
典型的には、タンパク質の一方又は両方の非複合体形態からの、複合体の分離を容易にするために、及びアッセイの自動化に対応するために、本発明のタンパク質又はその結合タンパク質の何れかを固定化することが望ましい。候補因子の存在下及び不存在下での、上流又は下流結合要素への結合は、反応物質を含有するのに適した何れかの容器中で実行することができる。例としては、ミクロタイタープレート、試験管及び微小遠心管が含まれる。一実施形態において、タンパク質をマトリックスに結合させることができるドメインを付加する融合タンパク質を提供することができる。例えば、グルタチオン−S−転移酵素(GST)/組織因子融合タンパク質は、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical.,St.Louis,Mo.)又はグルタチオン誘導化されたマイクロタイタープレート上に吸着させることが可能であり、次いで、これは、例えば、35S標識された細胞可溶化液及び試験調節剤と混合され、複合体を形成させる条件下で、例えば、塩及びpHに対する生理的条件で(但し、若干、より厳格な条件を使用することが可能である。)、この混合物を温置する。温置後、全ての非結合標識を除去するためにビーズを洗浄し、マトリックスを固定化し、放射性標識を直接測定し(例えば、シンチレーション剤(scintilant))中に配置されたビーズ)、又は、その後、複合体が解離された後に上清中において測定する。あるいは、マトリックスから複合体を解離し、SDS−PAGEによって分離し、標準的な電気泳動技術を用いて、ビーズ画分中に見出される組織因子−結合タンパク質のレベルをゲルから定量することができる。
マトリックス上にタンパク質を固定化するための他の技術も、本アッセイでの使用に利用できる。例えば、ビオチン化された分子は、本分野で周知の技術(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals、Rockford、I11)を用いて、ビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から調製し、ストレプトアビジンで被覆された96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェル中に固定化することができる。
相互作用物質の何れも標識せずに、化合物が組織因子とタンパク質ジスルフィドイソメラーゼとの相互作用又は組織因子とPAR2との相互作用を調節する能力を測定することも本発明の範囲に属する。例えば、タンパク質又は標的分子の何れかの標識を行わずに、本発明のタンパク質とその標的分子との相互作用を検出するために、ミクロフィジオメーターを使用することができる。McConnell et al.,Science 257:1906−1912,1992。本明細書で使用される「ミクロフィジオメーター」(例えば、Cytosensor)は、光アドレス電位応答センサー(LAPS;light−addressable potentiometric sensor)を用いて、細胞がその環境を酸性化する速度を測定する分析装置である。化合物と受容体間の相互作用の指標として、この酸性化速度の変化を使用することができる。
本発明において検査することが可能な抗原をベースとするヘテロポリマーは、好ましくは、自己抗体によって認識される抗原に架橋された組織因子、好ましくはヒト組織因子に対して特異的である結合部分を含む。自己抗体によって認識される抗原の例には、第VIII因子(組み換え第VIII因子の置換による血友病の治療に関連する抗体);筋肉アセチルコリン受容体(抗体は、重症筋無力症と関連する。);カルジオリピン(狼瘡と関連する。);血小板関連タンパク質(突発性血小板減少性紫斑病と関連する。);シェーグレン症候群と関連する複数の抗原;組織移植自己免疫反応の症例に関与すると推定される抗原;心筋上に見出される抗原(自己免疫性心筋炎と関連する。);免疫複合体によって媒介される腎臓疾患に関連する抗原;dsDNA及びssDNA抗原(ループス腎炎と関連する。);デスモグレイン及びデスモプラキン(天疱瘡及び類天疱瘡と関連する。);又は特性が詳しく決定されており、疾病の発病と関連する他の全ての抗原のあらゆる1つが含まれるが、これらに限定されない。
本発明における検査のための典型的なヘテロポリマー及び抗原をベースとしたヘテロポリマー並びにこれらを作製する方法は、本分野で周知である。例えば、典型的なヘテロポリマーは、「WO03007971A1;U.S.20020103343A1;米国特許5,879,679;米国特許5,487,890;米国特許5,470,570;WO9522977A1;WO/02075275A3、WO/0246208A2又はA3、WO/0180883A1、WO/0145669A1、WO9205801A1、Lindorfer et al.,J.Immunol.Methods.248:125,2001;Hahn et al.,J.Immnol.166:1057,2001;Nardin et al.,J.Immunol.Methods.211:21,1998;Kuhn et al.,J.Immunol.160:5088,1998;Taylor et al.,Cancer Immunol.Immunother.45:152,1997;Taylor et al.,J.Immunol.159:4035,1997;及びTaylor et al.,J.Immunol.148:2462,1992」中に教示されている。さらに、これらのヘテロポリマーのバリアント形態を作製することができる。例えば、一実施形態において、様々な連結化学を用いて作製された二重特異的分子の形態を使用することが可能である。二重特異的分子の成分を架橋するために使用することができる典型的な試薬には、ポリエチレングリコール、SATA、SMCC並びに本分野において公知であり、例えば、Pierce Biotechnologyから入手可能な他の試薬が含まれる。検査可能な二重特異的分子の典型的な形態は、2002年9月16日に出願されたU.S.逐次番号60/411,731(その内容は、参照により、本明細書中に組み込まれる。)に記載されている。
別の実施形態において、二重特異的分子の異なる多量体形態を作製することが可能である(例えば、二量体、三量体、四量体、五量体又はより高次の多量体形態)。別の実施形態において、二重特異的分子の精製された形態は、例えば、2002年5月13日に出願されたU.S.逐次番号60/380,211(その内容は、参照により、本明細書中に組み込まれる。)に記載されているように検査することができる。
別の実施形態において、ヘテロポリマーの結合部分の1つが抗体である場合には、異なるイソタイプの抗体(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgG(例えば、IgG2a)、IgG、IgG又はIgM)を使用することができる。別の実施形態において、結合部分の1つに対して抗体分子の一部(例えば、Fab断片)を使用することが可能である。好ましい実施形態において、結合部分の少なくとも1つは、Fcドメインを含む抗体である。一実施形態において、抗体はマウス抗体である。
別の実施形態において、抗体に対する修飾の効果を検査することが可能であり、例えば、2003年3月28日に出願されたU.S.逐次番号60/458,869に記載されているように、例えば、抗体の脱免疫化(deimmunization)の効果を検査することが可能である。
本発明に提供されている方法において、非ヒト動物の血清、循環及び/又は組織中の因子、例えば、病原性因子の濃度は、少なくとも、例えば、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又は約100%低下させることができる。
別の実施形態において、対象の血清、循環及び/又は組織中の因子の濃度は、間接的に測定することが可能である。例えば、動物から得た組織試料を調べることによって、例えば、血清及び/又は循環中の因子の存在から生じる病気を測定することができる。非ヒト動物の血清、循環及び/又は組織中の因子の濃度の別の間接的測定は、非ヒト動物中に感染を引き起こす因子の能力の測定である。例えば、臨床的兆候及び感染の症候に対する二重特異的化合物の効果を測定することができる。二重特異的化合物が、例えばある臓器系から別の臓器系への、又はある個体から別の個体への感染の伝播を阻害する能力を検査することも可能である。
別の実施形態において、非ヒト動物中の組織因子を有する細胞に二重特異的化合物が結合する能力が測定される。例えば、一実施形態において、二重特異的化合物が組織因子標的分子に結合する能力の測定は、リアルタイム生物分子相互作用分析(BIA;Biomolecular Interaction Analysis)(Sjolander et al.,Anal.Chem.63:2338−2345,1991及びSzabo et al.,Curr.Opin.Struct.Biol.5:699−705,1995)などの技術を用いて実行することも可能である。本明細書において使用される、「BIA」は、相互作用物質(例えば、BIAcore)の何れも標識せずに、二重特異的相互作用をリアルタイムに研究するための技術である。表面プラズモン共鳴(SPR)の光学現象の変化は、生物学的分子間でのリアルタイム反応の指標として使用することが可能である。
別の実施形態において、非ヒト動物中の細胞による因子の破壊(例えば、マクロファージによる殺害)が測定される。
非ヒト動物の血清及び/又は循環中の因子の濃度を(二重特異的化合物を与えられていない非ヒト動物中に観察される濃度と比べて)低下させる化合物を選択することができる。
本アッセイにおいて検査するための化合物は、検査される化合物の複数の中から選択され得る。別の実施形態において、本アッセイにおいて検査するための二重特異的化合物は、例えば、インビトロアッセイにおいて、組織因子を結合できるものとして既に同定されていてもよく、本アッセイを用いて、さらに評価又は最適化することが可能である。このようなケースでは、二重特異的化合物が血清及び/又は循環中の因子の濃度を低下させる能力は、血清及び/又は循環中の因子の濃度を低下させるその能力を測定するために、別の二重特異的化合物又は同じ化合物の最適化されていない様式と比較することが可能である。
好ましい実施形態において、本発明の二重特異的化合物は、約1μg化合物/kg体重から約100μg化合物/kg体重の範囲の濃度で投与される。本明細書において定義されているように、二重特異的化合物の治療的有効量(すなわち、有効投薬量)は、約0.01から5000μg/kg体重、好ましくは約0.1から500μg/kg体重、より好ましくは約2から80μg/kg体重、さらにより好ましくは約5から70μg/kg、10から60μg/kg、20から50μg/kg、24から41μg/kg、25から40μg/kg、26から39μg/kg、27から38μg/kg、28から37μg/kg、29から36μg/kg、30から35μg/kg、31から34μg/kg又は32から33μg/kg体重の範囲である。当業者は、疾病又は疾患の重篤度、以前の治療、対象の全般的な健康及び/又は年齢及び存在するその他の疾病など(但し、これらに限定されない。)、ある種の因子が、対象を効果的に治療するために必要とされる投薬量に影響を与え得ることを理解する。さらに、タンパク質、ポリペプチド又は抗体の治療的有効量による対象の治療は、単回治療を含むことができ、又は、好ましくは、一連の治療を含むことができる。
好ましい例において、動物は、因子の静脈内(iv)注射後に、約1から500μ/kg体重の間の範囲の二重特異的化合物で治療される。治療に対して使用される二重特異的化合物の有効投薬量は、具体的な治療の期間中に増加又は減少し得ることも理解される。投薬量の変化が生じ得、本明細書に記載されている診断アッセイの結果から明らかとなり得る。
試験化合物及び/又因子の投与経路は、動物の循環中への静脈内(iv)注射であり得る。他の投与経路には、局所、非経口、皮下又は吸入が含まれるが、これらに限定されない。「非経口」という用語には、例えば、皮下、静脈内又は筋肉内経路による注射が含まれ、例えば、疾病又は傷害の部位における局所化された投与も含まれる。インプラントからの化合物の徐放も、本分野において公知である。当業者は、治療されるべき疾患の性質、患者の体重、年齢及び全般的な状態及び投与の経路などの要素に応じて、適切な投薬量が変動することを認識する。動物試験に従って、予備的用量を決定することが可能であり、本分野で認められた慣行に従って、ヒト投与のための投薬量の増量が実施される。
候補化合物及び因子は、用量の広範囲にわたって、動物に投与することができる。因子が動物にも投与される場合、候補化合物は、因子の投与前、投与と同時に又は投与後に投与することが可能である。
自己抗体、感染性因子又はトキシンなど、対象の血清及び/又は循環中における望ましくない因子の存在と関連するヒトの疾患又は疾病を治療するのに有用な候補化合物をスクリーニングし、又は評価するために、本発明の組織因子を発現するトランスジェニック動物(例えば、マウス)を使用することができる。
本発明の二重特異的化合物によって結合され得る、典型的な標的化因子には、以下のもの、すなわちウイルス、腫瘍細胞、炎症性細胞、ポリヌクレオチド、抗体、例えば、自己免疫疾患と関連する自己抗体の何れかを含む(但し、これらに限定されない。)、血液によって運搬される因子が含まれる。
一実施形態において、本発明のアッセイを実施する際には、因子は、例えば、二重特異的化合物の投与の前、投与と当時、又は投与後に、トランスジェニック動物に投与される。
本発明の二重特異的化合物又はそのあらゆる部分は、これらの半減期を増大させるために修飾することが可能である。ペプチド類縁体は、一般に、テンプレートペプチドの特性と類似の特性を有する非ペプチド薬として、製薬産業で使用される。非ペプチド化合物のこれらの種類は、「ペプチド模倣体」と称され(Fauchere,Adv.DrugRes.15:29,1986;Veber et al.,TINSp.392,1985;及びEvans et al.,J.Med.Chem30:1229,1987(これらは、参照により、本明細書に組み込まれる。))、通常、コンピュータ化された分子モデル構築の助けを得て開発される。治療的に有用なペプチドと構造的に類似するペプチド模倣体は、等価な治療効果又は予防効果を生じさせるために使用することができる。一般的に、ペプチド模倣体は、抗原ポリペプチドなどの模範ポリペプチド(すなわち、生物学的又は薬理学的活性を有するポリペプチド)と構造的に類似するが、本分野で公知であり、さらに以下の参考文献:Spatola,A.F.in Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides,and Proteins Weinstein,B.,ed.,Marcel Dekker,New York,p.267,1983;Spatola,A.F.,Vega Data,Vol.1,Issue 3,“Peptide Backbone Modifications,”1983;Morley,Trends.Pharm.Sci.pp.463−468,1980;Hudson et al.,Int.J.Pept.Prot.Res.14:177−185,1979(−−CHNH−−,CHCH−−);Spatola et al.,Life.Sci.38:1243−1249,1986(−−CH−−S);Hann,J.Chem.Soc.Perkin.Trans.1:307−314,1982(−−CH−−CH−−、シス及びトランス);Almquist et al.,J.Med.Chem.23:1392−1398,1980(−−COCH−−);Jennings−White et al.,Tetrahedron Lett.23:2533,1982(−−COCH−−);Szelke et al.,欧州特許出願No.EP45665 CA:97:39405,1982(−−CH(OH)CH−−);Holladay et al.,Tetrahedron.Lett.24:4401−4404,1983(−−C(OH)CH−−);及びHruby,Life Sci.31:189−199,1982(−−CH−−S−−)(これらの各々は、参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている方法によって、−−CHNH−−、−−CHS−−、−−CH――CH−−、−−CH=CH−(シス及びトランス)、−−COCH−−、−−CH(OH)CH−−及び−−CHSO−−からなる群から選択される結合によって場合によって置換された1つ又はそれ以上のペプチド結合を有する。特に好ましい非ペプチド結合は、−−CHNH−−である。このようなペプチド模倣体は、例えば、より経済的な製造、より大きな化学的安定性、増強された薬理学的特性(半減期、吸収、作用強度、効力など)、変化した特異性(例えば、生物活性の幅広いスペクトル)、低下した抗原性及びその他など、ポリペプチド実施形態に比べて著しい利点を有し得る。ペプチド模倣体の標識化は、通常、直接的又はスペーサー(例えば、アミド基)を通じて、定量的な構造活性データ及び/又は分子モデル構築によって予測されたペプチド模倣体上の非妨害位置へ1つ又はそれ以上の標識を共有結合することを含む。このような非妨害位置とは、一般に、治療効果をもたらすためにペプチド模倣体が結合する高分子と直接の接触を形成しない位置である。ペプチド模倣体の誘導体化(例えば、標識化)は、ペプチド模倣体の所望の生物学的活性又は薬理学的活性を大幅に妨害すべきでない。
アミノ酸配列の1つ又はそれ以上のアミノ酸を同種のDアミノ酸で体系的に置換すること(例えば、L−リジンに代えてD−リジン)は、より安定なペプチドを作製するために使用することができる。さらに、拘束されたペプチドは、本分野で公知の方法によって(Rizo et al.,Annu.Rev.Biochem.61:387,1992(参照により、本明細書に組み込まれる。))、例えば、ペプチドを環状化する分子内ジスルフィド架橋を形成することができる内部システイン残基を付加することによって作製され得る。
このような修飾されたポリペプチドは、原核又は真核宿主細胞中で作製することができる。あるいは、このようなペプチドは、化学的方法によって合成することが可能である。組み換え宿主中での異種ポリペプチドの発現、ポリペプチドの化学的合成及びインビトロ翻訳のための方法は、本分野において周知であり、「Maniatis et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual.,2nd Ed.,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989;Berger et al.,Methods in Enzymology,Volume152,Guide to Molecular Cloning Techniques,1987,Academic Press,Inc,San Diego,Calif.;Merrifield,J.Am.Chem.Soc.91:501,1969;Chaiken,CRC Crit.Rev.Biochem.11:255,1981;Kaiser et al.,Science 243:187,1989;Merrifield,Science 232:342,1986;Kent,Annu.Rev.Biochem.57:957,1988;及びOfford,Semisynthetic Proteins,Wiley Publishing,1980(これらは、参照により、本明細書中に組み込まれる。)中にさらに記載されている。
ポリペプチドは、典型的には、直接的な化学合成によって作製することが可能であり、ヘテロポリマーの結合部分として使用することができる。ペプチドは、N末端及び/又はC末端への共有結合によって非ペプチド部分が付着された、修飾されたペプチドとして作製することが可能である。ある種の好ましい実施形態において、カルボキシ末端若しくはアミノ末端の何れか又は両方が化学的に修飾される。末端アミノ及びカルボキシル基の最も一般的な修飾は、それぞれ、アセチル化及びアミド化である。アシル化(例えば、アセチル化)又はアルキル化(例えば、メチル化)などのアミノ末端修飾及びアミド化などのカルボキシ末端修飾並びに環化などの他の末端修飾を、試験化合物の様々な実施形態中に取り込ませることができる。コア配列へのある種のアミノ末端及び/又はカルボキシ末端修飾及び/又はペプチド伸長は、増大された安定性、増加された作用強度及び/又は効力、血清プロテアーゼに対する耐性、望ましい薬物動態学的特性及びその他など、有利な物理的、化学的、生化学的及び薬理学的特性を与えることができる。
検出可能な標識
アッセイにおいて使用される具体的な標識又は検出可能な基は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的又は化学的手段によって検出することが可能であり得る。標識の具体的な種類は、アッセイにおいて使用されるシグナル組織因子に対する抗体(例えば、Mab10H10)の特異的な結合を著しく妨害しない限り、本発明の重大な態様ではない。検出可能な基は、検出可能な物理的又は化学的特性を有する全ての物質であり得る。このような検出可能な標識は、アッセイ又はイムノアッセイの分野において多数開発されており、一般に、このような方法において有用なほぼ全ての標識を、本発明に適用することが可能である。従って、標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的又は化学的手段によって検出可能なあらゆる組成物である。本発明において有用な標識には、磁気ビーズ(例えば、DynabeadsTM)、蛍光色素(例えば、フルオレセイン、イソチオシアナート、テキサスレッド、ローダミンなど)、放射性標識(例えば、H、14C、35S、125I、125I、112In、99mTc)、(超音波画像診断用の)微小気泡などの他の造影剤、18F、11C、15O(陽電子放出断層撮影法)、99mTC、111In(単一光子放射型断層撮影法)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ及びELISAで一般的に使用されているその他の酵素)、及びコロイド状金若しくは着色されたガラスなどの比色分析標識又はプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズが含まれる。このような標識の使用を記載している特許としては、米国特許3,817,837;3,850,752;3,939,350;3,996,345;4,277,437;4,275,149及び4,366,241(それぞれ、参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書中に組み込まれる。)が含まれる。「Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals(6th Ed.,Molecular Probes,Inc.,Eugene OR.)」も参照されたい。
標識は、本分野で周知の方法に従って、アッセイの所望の成分へ直接又は間接に結合することができる。上記のように、様々な標識を使用することが可能であり、必要とされる感度、化合物との連結の容易さ、安定性要件、利用可能な計測手段及び廃棄設備に応じて標識を選択する。
非放射性標識は、しばしば、間接的な手段によって結合される。一般に、リガンド分子(例えば、ビオチン)は、分子に共有結合される。次いで、リガンドは、本来的に検出可能であり、又は検出可能な酵素、蛍光化合物又は化学発光化合物などのシグナル系に共有結合されている抗リガンド(例えば、ストレプトアビジン)分子に結合する。多数のリガンド及び抗リガンドを使用することができる。リガンドが天然の抗リガンド、例えば、ビオチン、チロキシン及びコルチゾールを有する場合、リガンドは、天然に存在する標識された抗リガンドとともに使用することができる。あるいは、抗体と組み合わせて、あらゆるハプテン又は抗原性化合物を使用することができる。
分子は、例えば、酵素又は蛍光標識試薬との連結によって、シグナル生成化合物へ直接連結することもできる。標識として興味深い酵素は、主に、ヒドロラーゼ、特に、ホスファターゼ、エステラーゼ及びグリコシダーゼ、又はオキシドリダクターゼ、特に、ペルオキシダーゼである。蛍光化合物としては、フルオレセインとその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンなどが挙げられる。化学発光化合物としては、ルシフェリン及び2,3−ジヒドロフタラジンジオン、例えば、ルミノールが挙げられる。使用可能な様々な標識又はシグナル発生系の概説については、米国特許4,391,904(参照により、その全体が、あらゆる目的のために、本明細書に組み込まれる。)を参照されたい。
標識を検出する手段は、当業者に周知である。従って、例えば、標識が放射性標識である場合には、検出用手段としては、シンチレーションカウンター又はオートラジオグラフィーにおけるような写真用フィルムが挙げられる。標識が蛍光性標識である場合には、光の適切な波長を用いて蛍光色素を励起し、生じた蛍光を検出することによって標識を検出することができる。蛍光は、電荷結合素子(CCD)又は光電子増倍管などの電気的検出装置を使用することによって、写真用フィルムを用いて視覚的に検出することができる。同様に、酵素的標識は、酵素に対する適切な基質を与え、生じた部分生成物を検出することによって検出することが可能である。最後に、単純な比色分析標識は、単に、標識に付随する色を観察することによって検出することが可能である。従って、様々な試験紙アッセイにおいて、連結された金は、しばしば、ピンクを呈するのに対して、連結された様々なビーズは、ビーズの色を呈する。
幾つかのアッセイフォーマットは、標識された成分の使用を必要としない。例えば、標的抗体の存在を検出するために、凝集アッセイを使用することができる。この場合には、抗原によって被覆された粒子は、標的抗体を含む試料によって凝集される。このフォーマットでは、何れの成分も標識される必要はなく、標的抗体の存在は、単純な視覚的検査によって検出される。
しばしば、細胞マーカー及び細胞マーカーに対する抗体は、検出可能なシグナルを与える物質を、共有的に又は非共有的に連結することによって標識される。
キット
組成物(例えば、モノクローナル抗体、ヒト配列抗体、ヒト抗体、多重特異的及び二重特異的分子、小化学分子、核酸組成物、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、二本鎖RNAオリゴヌクレオチド(RNAi、shRNA、siRNA)又はDNAオリゴヌクレオチド又は本発明のshRNA分子の転写をコードするヌクレオチド配列を含有するベクター)と、及び使用説明書とを含むキットも、本発明の範囲に含まれる。キットは、さらに、少なくとも1つのさらなる試薬、又は1つ若しくはそれ以上の本発明のさらなるヒト抗体(例えば、第一のヒト抗体と異なる抗原中のエピトープに結合する相補的活性を有するヒト抗体)を含有することができる。キットは、典型的には、キットの内容物の予定される使用を示すラベルを含む。ラベルという用語には、キットの上に若しくはキットとともに供給され、又はその他キットに添付される全ての文書又は記録媒体が含まれる。
医薬組成物
治療用組成物(例えば、モノクローナル抗体、ヒト配列抗体、ヒト抗体、多重特異的及び二重特異的分子、小化学分子、核酸組成物、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、二本鎖RNAオリゴヌクレオチド(RNAi、shRNA、siRNA)又はDNAオリゴヌクレオチド又はshRNA分子の転写をコードするヌクレオチド配列を含有するベクター)は、立体異性体、プロドラッグ、医薬として許容される塩、水和物、溶媒和物、酸塩水和物、N−オキシド若しくはこれらの同形結晶形態の形態で、又は化合物が適切な担体若しくは賦形剤とともに混合されている医薬組成物の形態で、治療的有効量で(例えば、癌又は転移性癌)、ヒト患者自体に投与されるべき本発明の組成物及び方法において有用である。
医薬として許容される担体は、1つには投与される具体的な組成物によって、並びに組成物を投与するために使用される具体的な方法によって決定される。したがって、腫瘍細胞標的化又は小分子又はリガンド組成物と組み合わせて治療用抗体を投与するための医薬組成物の多様な適切な製剤が存在する。(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA 18th ed.,1990(参照により、本明細書に組み込まれる。)参照。)。医薬組成物は、一般に、患者への投与に適した形態の、異なって発現されるタンパク質、アゴニスト又はアンタゴニストを含む。医薬組成物は、一般に、米国食品医薬品局の全ての優良医薬品製造基準(GMP)の規定を完全に遵守して、無菌状態で、実質的に等張になるように製剤化される。
治療計画
本発明は、組成物(例えば、モノクローナル抗体、ヒト配列抗体、ヒト抗体、多重特異的及び二重特異的分子、小分子、リガンド模倣体、核酸組成物、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、二本鎖RNAオリゴヌクレオチド(RNAi、shRNA、siRNA)又はDNAオリゴヌクレオチド又は新生物腫瘍細胞又は炎症性細胞中のシグナル伝達組織因子に特異的に結合するshRNAの転写をコードするヌクレオチド配列を含有するベクター)の1つ又は組み合わせを含む医薬組成物を提供し、医薬組成物は、医薬として許容される担体と一緒に製剤化される。幾つかの組成物は、複数(例えば、2つ又はそれ以上の)抗体又は小分子治療薬の組み合わせを含む。
予防的な用途において、医薬組成物又は医薬は、疾病(疾病、その合併症、及び疾病の発症中に現れる中間的な病的表現型の生化学的、組織学的及び/又は行動学的症候など)のリスクを除去若しくは低減し、重篤度を軽減し、又は疾病の開始を遅延させるのに十分な量で、疾病又は症状(すなわち、免疫疾患)に感受性があり、又はその他疾病のリスクがある患者に投与される。治療的な用途では、組成物又は医薬は、その合併症、及び疾病の発症中に現れる中間的な病的表現型などの疾病の症候(生化学的、組織学的及び/又は行動学的)を治癒し、又は少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で、このような疾病が疑われる患者、又はこのような疾病に既に罹患している患者に投与される。治療的又は予防的処置を達成するのに十分な量は、治療的有効用量又は予防的有効用量として定義される。予防的及び治療的計画の両方において、薬剤は、十分な免疫応答が達成されるまで、通常、数回の投薬で投与される。典型的には、免疫応答はモニターされ、免疫応答が低下し始めた場合には、反復投薬が与えられる。
有効投薬量
本明細書に記載されている新生物疾患又は炎症性疾患の治療に対する、組織因子シグナル伝達を阻害する医薬組成物(例えば、モノクローナル抗体、ヒト配列抗体、ヒト抗体、多重特異的及び二重特異的分子、小化学分子、核酸組成物、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、二本鎖RNAオリゴヌクレオチド(RNAi、shRNA、siRNA)又はDNAオリゴヌクレオチド又はshRNA分子の転写をコードするヌクレオチド配列を含有するベクター)又は組織因子の他の阻害剤(例えば、小分子阻害剤)の有効用量は、投与の手段、標的部位、患者の生理的状態、患者がヒト又は動物であるかどうか、投与される他の医薬及び治療が予防的であるか、又は治療的であるかなど、多くの異なる要因に応じて変動する。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物も治療することが可能である。安全性及び効力を最適化するために、治療用量は滴定する必要がある。
治療用抗体又は小分子組成物とともに投与する場合、投薬量は、約0.0001から100mg/kg宿主体重、より一般的には、0.01から5mg/kg宿主体重の範囲である。例えば、投薬量は、1mg/kg体重又は10mg/kg体重であり得、又は1から10mg/kgの範囲内であり得る。典型的な治療計画は、2週毎に1回、又は1月に1回又は3から6ヶ月毎に1回の投与を含む。幾つかの方法において、異なる結合標的特異性を有する2つ若しくはそれ以上の治療用抗体又は小分子組成物は、同時に投与され、この場合には、投与される各治療用抗体又は小分子組成物の投薬量は、標記の範囲内に収まる。治療用抗体又は小分子組成物は、通常、複数の機会に投与される。単回投与間の間隔は、毎週、毎月又は毎年であり得る。患者内の治療用抗体又は小分子組成物の血液レベルを測定することによって示されるところに従って、間隔は不規則的でもあり得る。幾つかの方法では、投薬量は、1から1000μg/mL、幾つかの方法では、25から300μg/mLの血漿抗体又は小分子組成物濃度を達成するために調整される。あるいは、抗体又は小分子組成物は、徐放製剤として投与することが可能であり、この場合には、必要とされる投与頻度はより少なくなる。投薬量及び頻度は、患者中の治療用抗体又は小分子組成物の半減期に応じて変動する。投与の量及び頻度は、治療が予防的であるか、又は治療的であるかどうかに応じて変動し得る。予防的な用途では、長期間にわたって、比較的低頻度の間隔で、比較的低い用量が投与される。幾つかの患者は、生涯にわたって、継続して治療を受ける。治療的用途では、病気の進行が低減又は停止するまで、好ましくは、患者が疾病の症候の部分的な軽減又は完全な軽減を示すまで、比較的短い間隔で比較的高用量が必要とされる場合がある。その後、患者には、予防的計画が施され得る。
治療用抗体又は小分子組成物に対する用量は、約10ngから1g、100ngから100mg、1μgから10mg又は30から300μg/患者の範囲である。
投与の経路
新生物疾患又は炎症性疾患の治療のための治療用組成物(例えば、モノクローナル抗体、ヒト配列抗体、ヒト抗体、多重特異的及び二重特異的分子、小化学分子、核酸組成物、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、二本鎖RNAオリゴヌクレオチド(RNAi、shRNA、siRNA)又はDNAオリゴヌクレオチド又はshRNA分子の転写をコードするヌクレオチド配列を含有するベクター)は、新生物疾患又は炎症性疾患及び/又は治療的処置を標的とする治療用抗体又は小分子調製物に対する吸入剤として、予防のための非経口、局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、脳内、腹腔内、鼻内又は筋肉内手段によって投与され得る。免疫原性因子の最も典型的な投与経路は皮下であるが、他の経路も等しく効果的であり得る。次に最も一般的な経路は、筋肉内注射である。注射のこの種類は、最も典型的には、腕又は足の筋肉中に行われる。幾つかの方法では、因子は、腫瘍が見出される特定の組織中に直接注射される(例えば、脳内注射又は対流増強送達)。抗体又は小分子組成物を投与するためには、筋肉内注射又は静脈内注入が好ましい。幾つかの方法では、特定の治療用抗体又は小分子組成物は、頭蓋中に直接送達される。幾つかの方法では、抗体又は小分子組成物は、徐放性組成物又はMedipadTM装置などの装置として投与される。本発明の因子は、場合によって、様々な免疫関連疾患を含む様々な疾病を治療する上で少なくとも部分的に有効である他の因子と組み合わせて投与することができる。脳内の腫瘍(原発性及び転移性の両方)の場合には、治療用組成物は、本発明の因子の血液脳関門(BBB)の通過を増加させる他の因子と組み合わせて投与することもできる。例えば、治療用抗体又は小分子組成物の鼻内送達は、細胞膜貫通増強物質を含み得る。
製剤
新生物疾患又は炎症性疾患の治療のための組成物(例えば、モノクローナル抗体、ヒト配列抗体、ヒト抗体、多重特異的及び二重特異的分子、小化学分子、核酸組成物、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、二本鎖RNAオリゴヌクレオチド(RNAi、shRNA、siRNA)又はDNAオリゴヌクレオチド又はshRNA分子の転写をコードするヌクレオチド配列を含有するベクター)は、しばしば、活性治療剤、例えば、化学療法剤又は抗炎症剤及び医薬として許容される他の様々な成分を含む医薬組成物として投与される。「Remington’s Pharmaceutical Science(15th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania,1980)」を参照されたい。好ましい形態は、予定される投与の様式及び治療用途に依存する。組成物は、所望される調合に応じて、医薬として許容される無毒の担体又は希釈剤(動物又はヒトに投与するための医薬組成物を調合するために一般的に使用されるビヒクルとして定義される。)を含むことも可能である。希釈剤は、組み合わせの生物活性に影響を与えないように選択される。このような希釈剤の例は、蒸留水、生理的リン酸緩衝食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液及びハンクの溶液である。さらに、医薬組成物又は製剤は、他の担体、アジュバント、又は無毒、非治療的、非免疫原性安定化剤なども含み得る。
医薬組成物は、タンパク質、多糖(キトサンなど)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸及び共重合体(ラテックスによって官能化されたSepharoseTM、アガロース、セルロースなど)、ポリマーアミノ酸、アミノ酸共重合体及び脂質凝集物(油滴又はリポソームなど)のゆっくり代謝される巨大な高分子も含み得る。さらに、これらの担体は、免疫賦活剤(すなわち、アジュバント)として機能し得る。
非経口投与の場合、治療用抗体又は小分子組成物は、水、油、生理的食塩水、グリセロール又はエタノールなどの無菌の液体であり得る医薬担体とともに、生理的に許容される希釈剤中で、物質の溶液又は懸濁液の注射可能な剤形として投与することが可能である。さらに、湿潤剤又は乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物質などの補助物質が、組成物中に存在することも可能である。医薬組成物の他の成分は、石油(動物、植物又は合成起源)の成分、例えば、落花生油、大豆油及び鉱物油である。一般的に、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなどのグリコールは、特に注射可能溶液に対して好ましい液体担体である。治療用抗体又は小分子組成物は、活性成分の徐放を可能とする様式で調合することが可能なデポ注射又はインプラント調製物の形態で投与することも可能である。典型的な組成物は、HClでpH6.0になるように調整された50mML−ヒスチジン、150mMNaClからなる水性緩衝液中に調合された、5mg/mLの治療用抗体又は小分子組成物を含む。
典型的には、組成物は、液体溶液又は懸濁液として、注射可能剤として調製される。注射前に液体ビヒクル中の溶液又は懸濁液に適した固体形態も調製することが可能である。調製物は、上記のように、ポリラクチド、ポリグリコリドなどのリポソーム若しくは微粒子中に、又は増強したアジュバント効果のために共重合体中に乳化又は封入することも可能である。Langer,Science 249,1527(1990) and Hanes,Advanced Drug Delivery Reviews 28,97−119(1997)。本発明の因子は、活性成分の持続的放出又はパルス放出を可能とする様式で調合することが可能なデポ注射又はインプラント調製物の形態で投与することが可能である。
他の投与様式に適したさらなる製剤には、経口、鼻内及び経肺製剤、坐剤及び経皮用途が含まれる。
坐剤の場合、結合剤及び担体は、例えば、ポリアルキレングリコール又はトリグリセリドを含む。このような坐剤は、0.5%から10%の範囲、好ましくは1%から2%の範囲で活性成分を含有する混合物から形成することができる。経口製剤は、マニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース及び炭酸マグネシウムの薬学等級などの賦形剤を含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放製剤又は粉末の形態を採り、活性成分の10%から95%、好ましくは25%から70%を含有する。
局所適用は、経皮又は皮内送達をもたらすことができる。局所投与は、コレラ毒素若しくは無毒化されたその誘導体若しくはサブユニット又は他の類似の細菌毒素とともに前記因子を同時投与することによって促進され得る。Glenn et al.,Nature 391:851,1998。同時投与は、混合物として、化学的架橋若しくは融合タンパク質としての発現によって得られる連結された分子として成分を使用することによって達成することができる。
あるいは、経皮送達は、皮膚パッチを用いて、又はトランスフェロエソーム(transferosome)を用いて達成することが可能である。Paul et al.,Eur.J.Immunol.25:3521−24,1995;Cevc et al.,Biochem.Biophys.Acta 1368:201−15,1998。
医薬組成物は、一般に、米国食品医薬品局の優良医薬品製造基準(GMP)の全ての規定を完全に遵守して、無菌状態で、実質的に等張になるように製剤化される。
毒性
好ましくは、本明細書に記載されている組成物(例えば、モノクローナル抗体、ヒト配列抗体、ヒト抗体、多重特異的及び二重特異的分子、小化学分子、核酸組成物、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、二本鎖RNAオリゴヌクレオチド(RNAi、shRNA、siRNA)又はDNAオリゴヌクレオチド又はshRNA分子の転写をコードするヌクレオチド配列を含有するベクター)の治療的有効量は、実質的な毒性を引き起こさずに治療的な有益性を与える。
本明細書に記載されているタンパク質の毒性は、細胞培養又は実験動物中での標準的な医薬操作によって、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)又はLD100(集団の100%に対して致死的な用量)を測定することによって測定することができる。毒性効果と治療効果の間の用量比が治療係数である。これらの細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトでの使用に対して毒性がない投薬量範囲を処方する上で使用することができる。本明細書に記載されているタンパク質の投薬量は、好ましくは、ほとんど又は全く毒性を持たない有効用量を含む循環濃度の範囲内に存在する。投薬量は、使用される剤形及び使用される投与経路に応じて、この範囲内を変動し得る。正確な処方、投与経路及び投薬量は、患者の症状に照らして、各医師によって選択され得る。(例えば、Fingl et al.,1975,In:The Pharmacological Basis of Therapeutics,Ch.1を参照されたい。
本発明を実施するための具体的な実施形態の以下の実施例は、例示の目的のためにのみ記載されており、いかなる意味においても、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
典型的な実施形態
以下の実施例に示されているように、本発明者らは、TF−VIIaによって媒介される凝固及び細胞シグナル伝達には、TFの異なる細胞プールが関与していることを発見した。TFの接近可能な表面の細胞外Cys186−Cys209ジスルフィド結合が、三元TF−VIIa−Xa複合体中のXaによる凝固活性化及び凝固開始期シグナル伝達に対して必要であるが、二元TF−VIIa複合体による直接のPAR2切断に対しては必要でないことが見出された。このジスルフィドの変異による切断は、TFの恒常的発現を有する細胞上のVIIaに対して低い親和性を有するTF−VIIaシグナル伝達プールの機能的特性を再現する。
さらに、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)は、このジスルフィドを標的とすることによって凝固を不能にすることが観察された。TF凝固活性は、細胞外PDIがTFと会合すると抑制され、このジスルフィド/チオール交換経路は、TF−PAR2複合体形成及びTF−VIIaシグナル伝達のために必要される。乳癌細胞を含む複数の細胞種中でのTF−PDI会合とTF−VIIaシグナル伝達の間には、密接な相関が存在する。特有のモノクローナル抗体(MAb−10H10)は、TFの潜在的な非凝固性立体構造のみを認識する。本抗体は、TF−PAR2複合体の形成及びTF−VIIaシグナル伝達を阻害するが、凝固活性化を妨害しない。MAb−10H10によるこれらの細胞中のTF−VIIaシグナル伝達の封鎖は、腫瘍増殖(例えば、乳癌又は黒色腫)を抑制するためのMAb−5G9による凝固の封鎖に比べて優れており、インビボでのTF−VIIaシグナル伝達経路の妥当性を強調する。重要なことに、MAb10H10は、凝固活性化に対して最小限の効果を有し、TF−VIIaシグナル伝達の阻害が止血を妨げないことを示唆する。
酸化窒素(NO)依存性経路において、PDIはTF凝固活性を抑制することがさらに発見された。血管保護的NO合成は、しばしば、アテローム性動脈硬化症、糖尿病又は炎症において擾乱され、酸化窒素合成の脱共役は、細胞表面TF活性を凝固にシフトし得る。従って、TF凝固活性のNO依存性阻害は、予想できない様式で、心血管疾患及び炎症における酸化的ストレスに血栓形成性の制御を関連付ける。
シグナル伝達TFの特異的阻害
細胞表面に発現されたTFは、様々な親和性でVIIaを結合し、TF凝固活性化は、典型的には、細胞シグナル伝達に比べて、より低いVIIa濃度で飽和される。Le et al.,J. Biol.Chem 267:15447−15454,1992;Hjortoe et al.,Blood103:3029−3037,2004。異なるVIIa結合がTFの立体構造に固有のものであるかどうか、又は脂質環境、シャペロンタンパク質又はカルシウム動員など、TFの凝固活性に影響を与えることが知られている他の因子によるものかどうか明らかでない。Sevinsky et al.,J. Cell Biol.133:293−304,1996;Carson et al.,Blood 84:526−534,1994;Bhattacharjee et al ,Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.25:1737−1743,2005;Bach and Moldow,Blood 89:3270−3276,1997。本発明者らは、一定したアクチンレベルによって実証されたように、増殖停止の間に、ヒトケラチン細胞中で、5%未満のTF発現レベルが徐々に下方制御されたにもかかわらず、TFの凝固活性が不変であることを見出した(図1a)。これに対して、TF−VIIaシグナル伝達は、TFレベルと一致して下方制御されたが(図1b)、PAR応答性は失われなかった(図1e)。
透過化されていない細胞の染色によって、TFの減少した細胞表面発現が確認されたが(図Ic)、予想外のことに、本発明者らは、VIIa会合を阻害せずに、TFカルボキシル末端に結合するMAb10H10に対するエピトープの喪失を見出した。Ruf et al.,Biochem.J.278:729−733,1991。凝固及び基質結合を阻害するMAb−5G9の反応性は保たれ、MAb10H10が凝固を誘導するTFの残存プールとの反応性を喪失したことを示唆する。Huang et al.,J. Mol.Biol.275:873−894,1998。リン脂質によって再構成された精製TF又はTF発現細胞の細胞可溶化液を用いた免疫枯渇実験は、MAb5G9のみが効率的に凝固性TFを結合し、MAb10H10は凝固性TFを効率的に結合しないことを確認した(図1d)。従って、TFの抗原性が異なるプールが、PAR2を通じたTF−VIIa細胞シグナル伝達に比べて、凝固に必要に必要であるように見受けられる(図Ie)。
培養の時間にかかわらず、1nMのVIIaでXaの生成速度が約99%まで飽和されるにつれて、凝固性TFがVIIaに対する高い親和性を有していた。TF−VIIa−X凝固開始複合体では、TF−VIIaではなく新生の産物XaがPARを活性化する。Riewald and Ruf,Proc.Natl.Acad.Sci.USA98:7742−7747,2001。基質Xの存在下のみで、低い(1nM)VIIa濃度はかなりのシグナル伝達を引き起こし、TF−VIIa−Xaのシグナル伝達は、Xa阻害剤であるNAP5によって遮断された(図1f)。10nMVIIaでのTF−VIIaシグナル伝達は、NAP5によって阻害されず、NAP5は、10nMのVIIaと一緒に基質Xを添加したときに、シグナル伝達に対して最小限の効果を有するに過ぎなかった。このことは、TF−VIIaシグナル伝達プールが、基質の存在によって影響を受けないことを示している。凝固及び凝固開始複合体のXa依存性シグナル伝達は、MAb−5G9によって阻害されたが、MAb10H10によって阻害されなかった。重要なことに、凝固性TFに対する反応性が乏しいMAb10H10(図1c、d)は、TF−VIIaシグナル伝達を遮断した。従って、本発明者らは、凝固開始又は三元TF−VIIa−Xa複合体シグナル伝達を妨害しないシグナル伝達TFに対する特異的阻害抗体を同定した。
図1は、シグナル伝達TFの特異的阻害を示している。a凝固活性、TF発現及びb増殖停止されたHaCaT細胞中でのTF−VIIaシグナル伝達、平均±標準偏差(n=3)。挿入図:細胞可溶化液中のアクチン又はTF。FITC連結されたMAb−9C3及びテキサスレッド連結されたMAb−5G9又は10H10を用いた細胞表面TF検出。d対照と比較した、固定化されたMAb−10H10又は5G9によって免疫枯渇された、リン脂質再構成されたTFのXa生成。eHaCaTTF−VIIaシグナル伝達のPAR2依存性。fVIIaに対する異なる親和性は、TF−VIIaを媒介する又はXa依存性三元TF−VIIa−Xa複合体を識別する。MAb−10H10は、特異的に、TF−VIIaシグナル伝達を阻害する。平均±sd((n>3)。
シグナル伝達TFは、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼによって制御される
このモデルにおけるTF機能の制御をさらに検討するために、Ca2+枯渇された培地中に細胞を再度播種して、48時間細胞−細胞接触を妨げた。あるいは、最後の24時間、培地に2mMCa2+(高Ca2+)を補充した。これは、TF発現のレベル又はVIIa結合のレベルに影響を与えずに上皮の異なる形態を誘導した。表面ビオチン化、及びビオチン化後にTFを結合しないMAb−5G9を用いた免疫沈降によって、TFの等しく、顕著な細胞表面発現が確認された(図2a)。しかしながら、TFは、これらの2つの条件下では、顕著な機能的差異を示し(図2b)、凝固活性は、低Ca2+細胞中で、約3から4倍高かった。アゴニストペプチドによる直接のPAR2活性化は同等であったが、TF−VIIaシグナル伝達は、高Ca2+細胞中においてのみ顕著であり、低Ca2+細胞中においては顕著でなかった。このように、高Ca2+への変化は、凝固性TFを消費して、シグナル伝達TFを誘導するように見受けられた。一貫して、Ca2+添加の時点で、シクロヘキシミド(CHX)を用いてタンパク質合成を遮断することによって、より高度にグリコシル化された細胞表面TFの出現を遮断しながら、TF−VIIaシグナル伝達を妨げた(図2c)。
タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)は、接触阻害の間に誘導されるので、本発明者らは、TFの凝固活性が、凝固に必要とされる溶媒曝露されたTFCys186−Cys209ジスルフィド結合を標的とするPDI経路によって抑制されると推論した。Rehemtulla et al.,J. Biol.Chem.266:10294−10299,1991。張り詰めた状態の結合配置のために、このような鎖を交叉するジスルフィドは還元を受けやすい。Hogg,Trends Biochem.Sci.28:210−214,2003;Wouters et al.,BioEssays26:73−79,2004。膜不透過性のチオール反応性3−(N−マレイミド−プロピオニル)ビオシチン(MPB)での標識に基づいて、細胞表面PDIは、TFと会合していることが見出された。MPB標識された約56及び64kDのバンドは、高Ca2+細胞から特異的にTFと共沈殿したが(図2d)、近接するチオールをフェニルアルシンオキシド(PAO)で封鎖することによって、標識が失われた。TFに対して適切な分子量に、様々に標識された微かなバンドが残存し、おそらくは、TFの一過性還元を示唆している。TFと共沈殿するMBP標識された大きなバンドは、免疫沈降されたPDIと併走したが、緊密な相同体ERP57とは併走せず、抗PDIはMPB標識を遮断した(図2e)。siRNAを用いたPDI又はERP57のノックダウンによって、PDIがTFと共沈殿することがさらに確認された(図2f)。
64kDaでのNHS表面ビオチン化されたPDIの共沈殿は、ウェスタンブロッティングによって確認された(図2g)。PDIの阻害剤であるバシトラシンは、PDIのTFとの共沈殿を妨げた。Mandel et al, Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 90:4112−4116,1993。バシトラシンは、TF−VIIaシグナル伝達を阻害したが、直接のPAR2アゴニスト又はトロンビン応答は阻害しなかった(図2h)。バシトラシンの洗浄除去によって、TF−VIIaシグナル伝達が回復され、表面PDIのMPB標識は、同時に、PDIが、これらの実験の時間枠内にTFと迅速に再会合することを示した(図2i)。従って、高Ca2+細胞上のシグナル伝達TFは、PDIとのバシトラシン感受性複合体中に存在する。
バシトラシンの存在は、TFの凝固機能を僅かに増加させたが(図2j)、低Ca2+細胞と高Ca2+細胞上の活性は、著しく異なるままであった。本発明者らは、バシトラシンの添加がTF活性に対して及ぼす部分的な効果が、標識条件に対して、PDIの解離が不十分であることによるものであると推測する(図2g、i)。HgClへの短時間の曝露は、高Ca2+細胞中で、TF凝固活性を大幅に増加させ、TFが還元経路によって負に制御されることを示唆している。HgClは低Ca2+細胞中ではほとんど効果がなく、バシトラシンの存在下で凝固を増加させず、PDIを細胞表面から排除させずに、PDIのTFとの会合を特異的に崩壊させたので、酸化に起因する増加した凝固はTFに影響を与えている(図2k)。さらに、バシトラシンは、HgCl活性化(図2j)の可逆的阻害剤であったが、細胞に対するHgClの非特異的毒性効果を遮断しなかった。従って、シグナル伝達TFは、酸化還元機構によって、凝固活性を失った。MAb−10H10の反応性は、表面酸化時に減弱されたが、他の抗体の反応性は減弱しなかったことは、シグナル伝達TFの酸化還元感受性立体構造をさらに示すものである。
図2は、シグナル伝達TFがPDIによって制御されることを示している。aMAb−5G9免疫沈降を妨げるNHS表面ビオチン化によって証明された、高Ca2+切り替え時の同様のTF細胞表面発現。b高Ca2+細胞中のTFの低凝固活性は、MAb−10H10阻害可能なTF−VIIaと関連している。高Ca2+対照と異なる、p<0.01、t検定、平均±標準偏差(n>4)、cシクロヘキシミド(CHX)TF合成の遮断は、TF−VIIaシグナル伝達を妨げる。dTFと共沈殿するタンパク質のMPB標識化は、2μMPAOによって阻害される。ETF及びPDI免疫沈降物中のMPB標識されたバンドの同時移動。抗PDISPA890は、MPB標識を遮断する。fsiRNAを用いたPDIノックダウンは、TF免疫沈降物中のMPB標識されたバンドを妨げるが、ERP57ノックダウンは妨げない。gPDI阻害剤であるパシトラシン(3mM)は、NHS表面ビオチン化細胞のMAb−9C3免疫沈降物中のTFからPDIを解離させる。hバシトラシンは、TF−VIIaシグナル伝達を可逆的に遮断する。洗浄除去:バシトラシンとともに、10nMVIIaでの刺激前に、10分間事前温置された細胞を洗浄した。対照に比べてp<0.01、t検定、平均±標準偏差(n>4)。iバシトラシンの洗浄除去は、PDI−TFの再会合を促進する。洗浄から10分後に標識。jTF凝固活性に対するバシトラシンの効果。機能的アッセイの前に、100μMHgClで、細胞表面を2分間酸化した。kHgClでの酸化は、MPB又はNHSビオチン化されたPDIを細胞表面から排除せずに、PDIをTFから解離させる。
TFジスルフィドの変異による切断は、シグナル伝達TFの目印であるVIIaに対する低下した親和性を再現した
本発明者らは、切断されたTFCys186−Cys209ジスルフィドが、PDIによって制御されたTFのシグナル伝達特性を再現するかどうかを調べた。類似の表面発現を実現するために、アデノウイルス形質導入によって、ジスルフィドに対する各アラニン置換変異体をTF陰性の臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)中に導入した。各変異体は、95%超減弱されたTF−VIIa媒介性Xa生成を示したが、C209Aを発現するPAR2アゴニスト応答性細胞中では、TF−VIIaシグナル伝達は保存され、C186ATFでは保存されなかった(図3a)。間接的免疫蛍光によるC209ATFへのVIIaの結合は、野生型TFと同等であった。野生型TFを発現する細胞中でのTF−VIIaシグナル伝達は、1nM超のVIIaを必要とし、三元TF凝固開始複合体シグナル伝達は、1nM未満のVIIaで起こった(図3b)。C209ATFで形質導入された細胞では、TF−VIIaシグナル伝達は、野生型TFを発現している細胞に比べて、若干低いVIIaの濃度を必要とした。重要なことに、VIIaとともに基質Xを添加すると、C209ATF媒介性シグナル伝達は変化しなかった。このように、凝固を誘導するのみならず、三元TF−VIIa−Xa複合体シグナル伝達も誘導する高親和性TFを生成するために、Cys186−Cys209ジスルフィドの形成が必要とされた。
本発明者らは、還元されたC209ATFが、タンパク質分解細胞シグナル伝達のために必要であるVIIaの触媒活性をアロステリックに誘導することを確認した。組み換え可溶性単量体C209ATFは、飽和状態で、VIIa活性を最大限に刺激した。しかしながら、還元されたC209ATFは、より低い親和性を有し、酸化された可溶性野生型TFに比べて、VIIaの触媒活性を増強した(図3C)。従って、TFジスルフィドの変異による切断は、シグナル伝達TFの特徴である、VIIaに対する低下した親和性を再現した。MAb−10H10は、C209ATF−VIIaの触媒活性を遮断しなかったので、本抗体が、シグナル伝達TFへのVIIaの特異的結合を阻害することは除外された。従って、MAb10H10は、おそらく、立体的な障害によって、TF−VIIaによって媒介されたPAR2切断を妨げる。
図3は、還元されたTFのシグナル伝達を示している。a変異体C209ATF−VIIaはシグナルを伝達するが、PAR2とともに、野生型、C186A又はC209ATFの類似のレベルを発現しているHUVEC中で凝固活性を喪失している。bC209A又は野生型TFを発現しているHUVECにおける、100nMのXあり及び100nMのXなしでの、VIIaシグナル伝達の用量応答、平均±標準偏差(n>4)。c組み換え可溶性C209ATFは、野生型TFに比べて低下した親和性で、VIIa(40nM)を活性化する;平均±標準偏差(n=3)。挿入図。単量体の可溶性TFの均質な調製物のゲル;発現タグはC209ATFから切除されず、より高い分子量を与えた。下段:MAb10H10は、TF−VIIaアミド分解活性に対して効果を有しない。
腫瘍の進行における凝固性TF及びシグナル伝達TFの役割
血液凝固薬(MAb−5G9)及びシグナル伝達(MAb−10H10)TFに対する特異的抗体は、腫瘍の進行におけるこれらのそれぞれの活性の役割を検討するための機会を与えた。腫瘍細胞TFの特異的な標的化を、異種移植MDA−MB231乳癌モデル中で達成した。抗体は、MAb−5G9の場合には、凝固抑制に対して予測された特異性を示したが、MAb−10H10は、PARシグナル伝達の下流における典型的な初期応答遺伝子である血管新生促進性インターロイキン8及びTR3の誘導を含むシグナル伝達を阻害した(図4a、b)。MAb10H10を移植された腫瘍細胞は、イソタイプを合致させた対照IgG1と比べて、著しく低下した最終腫瘍サイズ及び腫瘍重量を示したが、MAb−5G9を移植された腫瘍細胞は示さなかった(図4c)。抗体で処理された細胞の増殖は、組織培養中の対照とは区別できず、TF発現がインビトロ増殖に対して効果を有しないという以前の結果と一致していた。Yu et al., Blood105:1734−1741,2005;Zhang et al,J.Clin.Invest.94:1320−1327,1994。MAb−5G9は、腫瘍容積を僅かに低下させ、インビトロでのTF−VIIaシグナル伝達に対するMAb−5G9の部分的阻害効果と合致していた。
MAb−5G9は、黒色腫M24metの転移を抑制したが、MAb−10H10は抑制しなかったので、TFは、トロンビン経路を通じて、実験的な黒色腫転移の初期停止期を支える。Mueller et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A89:11832−11836,1992。以前の実験での抗体投与の計画は、転移の腫瘍増殖を評価するには不十分であったので、本発明者らは、この黒色腫モデルの腫瘍増殖におけるTFシグナル伝達の役割を再検討した。MAb−5G9は、黒色腫原発性腫瘍増殖を遅延させたが、MAb10H10は、最終腫瘍容積及び腫瘍重量の両方を、より強力に減少させた(図4d)。凝固によって誘導された血行性転移とは異なり、TF−VIIaシグナル伝達の標的化は、従って、インビボで、2つの独立した腫瘍モデルの原発性増殖を効率的に抑制した。
図4は、TF−VIIaシグナル伝達が腫瘍増殖を促進することを示している。a、bTF−VIIaのシグナル伝達は、MDA−MB231乳癌細胞中において、MAb10H10によって遮断されるが、MAb5G9によっては遮断されない(p<0.01、t検定、平均±標準偏差(n>4))。挿入図:代表的な実験。c、高い局所的抗体濃度を達成するためにMAb−5G9又はMAb−10H10が同時注入された、対照IgG1(TIB115)1mgの存在下でのcMDA−MB231原発性腫瘍の増殖。屠殺時の腫瘍重量(n=6、両側ANOVA、KruskallWallis**p<0.001)。d1mgMAb−5G9若しくは10H10なしで、又は1mgMAb−5G9若しくは10H10ありで移植されたM24met黒色腫細胞の腫瘍増殖(n=8、両側ANOVA、Kruskall Wallis**p<0.001、p<0.01)。
これらの実験は、凝固カスケードの開始補因子から、疾病を誘導する非凝固性シグナル伝達補助受容体へTFをスイッチさせる分子機序を明らかにする。シグナル伝達TF−VIIaは、基質を非効率的に結合するので、シグナル伝達TF−VIIaは、Xa依存性TF経路阻害剤(TFPI)による迅速なフィードバック阻害を免れる。Huang et al, Blood 90:944−951,1997。これにより、病態生理学的上流TF−VIIaシグナル伝達は、凝固活性化の後に起こる典型的な阻害的回路なしに進行する。シグナル伝達TFの標的化は、腫瘍増殖を抑制し、TF−VIIaによって媒介されるPAR2活性化は、インビボでのトロンビンシグナル伝達とは独立に疾病を誘導する中心的シグナル伝達経路であるという直接の証拠を与える。TFの例は、ジスルフィド交換経路が、単一の受容体を2つの異なる生物学的機能の間で切り替える多用途性を有していること、及びこのような制御的切り替えは、潜在的な治療上の利点のために活用され得ることを示している。本研究は、他の病態生理的に関連する細胞表面受容体の同様の標的化を促進させるはずである。
シグナル伝達組織因子に対して特異的な抗体に対するエピトープの割り当て
図5は、シグナル伝達組織因子に特異的に結合するモノクローナル抗体であるMAb−10H10に対するエピトープの割り当てを示している。図5は、表記の抗体による野生型又は変異された可溶性TF1−218の免疫沈降に続く、ウェスタンブロティングによる検出を示している。MAb−10H10は、残基149及び150(A149、A150)で変異されたTFを免疫沈降させるには非効率的であり、これらの残基側鎖に近接する又はこれらの残基側鎖を直接含むTFのカルボキシル末端ドメイン中にエピトープが局在することを示している。
PDIによるTF凝固活性の酸化窒素(NO)依存性抑制
上述のように、変異分析は、Cys186−Cys209ジスルフィドの切断がTF凝固を不活性にすることを示したが、MPB標識は、TFの顕著な遊離チオールが高Ca2+細胞上に存在しないことを示した。細胞表面PDIは、ニトロシル転移及び脱ニトロシル化反応を触媒し、PDIは、隣接チオールにおいてSニトロシル化され得る。TF凝固活性を増強するためには、PDIから酸化窒素(NO)を放出させるための典型的な濃度である50から100μMHg2+が必要とされ(Sliskovic et al. J.Biol.Chem.280,8733−8741,2005)、Hg2+の活性化効果には、PDIの脱ニトロシル化が関与している可能性が浮上した。この可能性を評価するために、ビオチン交換法を使用して、S−ニトロシル化を検出した。細胞の遊離チオールをN−エチルマレイミド(NEM)で封鎖した後、NOを放出させるために、アスコルビン酸の存在下又は不存在下で、細胞をMPB標識した。同様に、1mMヨードアセトアミドで遊離チオールを封鎖した後、アスコルビン酸の存在下でのTF免疫沈降物のMPB標識を測定した。
図6に示されているように、これらの研究から得られた結果は、PDIが、酸化窒素依存性経路中でTF凝固活性を抑制することを示しており、TF血栓形成性の制御を脈管構造中の酸化的ストレスと関連付ける。図6aは、1mMN−エチルマレイミド(NEM)でのチオール封鎖後のビオチン交換法が、アスコルビン酸(AA)によるNO放出の際に、高Ca2+細胞由来のPDI免疫沈降物中において特異的に、PDIの増加した標識を検出することを示している。高Ca2+細胞に対する特異性を有しながら、免疫沈降されたPDIは、アスコルビン酸の存在下で、増加したMPB標識を示した。TFに対する適切な分子量におけるMPB標識されたバンドも、PDI免疫沈降物中に見られるようになった。図6bは、AAあり又はAAなしでのMPB標識の前に、1mMヨードアセトアミドでチオール封鎖を行った後、ビオチン交換法によって検出されたTFのS−ニトロシル化を示す。1mMヨードアセトアミドでの遊離チオールの封鎖後、TF免疫沈降物のMPB標識は、アスコルビン酸の存在下で著しく増加した。
Hg2+によって誘導されたTFの活性化が可逆的であるかどうかをさらに調べた。酸化剤の洗浄除去後に、TFの凝固活性は高いままであった。図6cに示されている結果は、TF凝固活性のHg2+によって誘導された活性化が、NO依存性PDI経路によって可逆的であることを示す。この実験では、Xa生成アッセイの前に、10分間、10μMPAOを加えて又は加えずに、1mMナトリウムニトロプロシド(SNP)、1mM還元型グルタチオン(GSH)又は1mMS−ニトロソグルタチオン(GSNO)の存在下で、HEPES緩衝液、1.5mMCa2+中において、短時間の100μMHg2+曝露後に洗浄された細胞を温置した。データは、還元型グルタチオン(GSH)又はNO供与物質ナトリウムニトロプルシド(SNP)単独の添加では、TF活性に対して効果を有さなかったが、組み合わせると、TF凝固活性が抑制されたことを示している(図6c;対照と異なる(p<0.05、t検定;平均±標準偏差;n=3))。隣接チオール封鎖剤PAOは、TFの不活化を抑制し、TFジスルフィドの切断にPDIが関与していることを示唆する。NOはGSHと反応して、S−ニトロソグルタチオンを与え、TF凝固活性を抑制するには、S−ニトロソグルタチオンの添加が十分であった。
TF−IIaシグナル伝達は、TF.PAR2複合体の形成を必要とする
図7に示されているような追加研究は、TF−VIIaシグナル伝達がTF.PAR2複合体形成を必要とすることを示している。図7aは、高Ca2+細胞からのPAR2のMAb−5G9免疫沈降がHg2+前処理によって消失することを示している。図7bは、MAb10H10がTF−PAR2複合体を擾乱するが、MAb−5G9は擾乱しないことを示している。無血清培地中で、表記抗体でHaCaT細胞を15分間前処理し、PAR2免疫沈降物中にTFを検出した。異なる種由来の適切なPAR2抗体がウェスタンブロッティングに対して使用できなかったので、バックグラウンド故に、対照の搭載は実施できなかった。図7cは、MAb10H10がHaCaT細胞からPAR2を免疫沈降させないことを示している。図7dは、MAb−10H10がPDIを含有する複合体を免疫沈降させないことを示している。MPB標識された細胞はMAb−9C3又はMAb−10H10で免疫沈降され、MPBを用いて、PDI、TF又はチオール−ビオチン化について調べた。
図7に示されているように、MAb−5G9は、TF−VIIaシグナル伝達に対して効果を有していないが、TFの凝固性及び非凝固性プールと強い反応性を示した。この抗体は、HaCaT細胞からTFのPAR2との複合体を免疫沈降させた(図7a)。TFから表面PDIを放出させるためのHg2+処理は、MAb−5G9免疫沈降物中でのTFとのPAR2複合体形成を消失させた。MAb−5G9での細胞の前処理は、PAR2免疫沈降物とのTFの逆会合に対して影響を有していなかったが、シグナル伝達を遮断するMAb−10H10は、TF−PAR2の会合を著しく低下させた(図7b)。従って、TF−VIIaシグナル伝達の抗体封鎖は、低下したTF−PAR2同時免疫沈降と相関していた。MAb−5G9とは異なり、MAb10H10はPAR2(図7c)又はPDI(図7d)を免疫沈降させず、この抗体がTF、PAR2及びPDIを含む複合体の形成を妨げることを示している。総合すると、図7及び図2に記載されているこれらのデータは、TF及びPAR2の生理的レベルを有する細胞モデルにおいて、PDIが、直接的TF−VIIa細胞シグナル伝達と凝固活性化の間の制御的スイッチとして作用することを示している。
材料と方法
試薬
凝固因子、阻害剤及び抗体は、既に記載されており、又は以下の業者から購入した。抗体PDIRL90(Alexis)、SPA−890(Stressgen)、抗ERP57(Upstate)、N’−(3−マレイミジルプロピオニル)ビオシチン(MPB)(Molecular Probes)、バシトラシン、フェニルアルシンオキシド(Sigma)。Riewald and Ruf, Proc.Natl.Acad.Sci.USA98:7742−7747, 2001;Ahamed and Ruf, J.Biol.Chem.279:23038−23044, 2004;Sevinsky et al.,J.Cell Biol.133:293−304,1996;Ruf et al., Biochem.J.278:729−733,1991;Morrissey et al., Thromb.Res.52:247−61,1988;Dorfleutner et al., Mol.Biol.Cell15:4416−4425,2004;及びDorfleutner and Ruf, Blood 102:3998−4005,2003。バシトラシンは、ゲルろ過によって再精製し、PDI分解の不存在について検査した。ウサギ抗PAR2は、KLH結合されたペプチドTIQGTNRSSKGRSLIGKVDGTSHVTGCG(配列番号5)に対して産生された。可溶性TF変異体は、「Stone et al, Biochem.J.310:605−614,1995」に記載されているように、イー.コリ中で発現された。
上記科学文献中の開示内容に加えて、5G9及び10H10抗体も、米国特許5,223,427及び6,001,978に詳しく記載されている。これらの2つの抗体を産生するハイブリドーマは、1987年3月27日に、ATCCに、ブダペスト条約の要求に従って寄託され、それぞれ、受託番号HB9382及びHB9383を授与された。
細胞培養。HUVECは、記載されているように、維持及び形質導入された。Ahamed及びRuf、J.Biol.Chem.279:23038−23044,2004。ヒトHaCaTケラチン生成細胞標準培養物は、DMEM、10%FBS、2mMグルタミンであった。低Ca2+培養の場合、ケラチン生成細胞―SFM(Invitorogen)、10%カルシウム枯渇FBS中に、細胞を48時間分割し、シクロヘキシミド(50μM)あり又はなしで、2mMCa2+を24時間添加することによって切り替えた。siRNAノックダウンについては、2μLLipofectamin2000(Gibco)を用いて、100nMsiRNA(Santa Cruz Biotechnology)により、40%の集密度において、HaCaT細胞を毎日形質移入した。
機能的及びシグナル伝達アッセイ。
シグナル伝達実験のために、M199、2mMグルタミン、10mMHEPES、1.5mMCa2+(HUVEC)中で5時間、又はDMEM、2mMグルタミン、10mMHEPES中で24時間(MDA−MB231)若しくは10から20分(HaCaT)、無血清条件に細胞を平衡化させた。刺激の10分前に阻害剤を添加した。抗TF(50μg/mL)、ウサギ抗PAR2(100μg/mL)、抗TF(ATAP2、20μg/mL、WEDE15、40μg/mL)、バシトラシン(3mM)を添加した。トロンビンシグナル伝達を除去するために、定期的にヒルジン(200nM)を添加した。アゴニスト刺激の10分後におけるMAPキナーゼのリン酸化及びアゴニスト刺激の90分後における遺伝子誘導は、ウェスタンブロッティング又はタイムPCRによって定量した。Ahamed et al., Blood 105:2384−2391, 2005。
細胞表面標識、免疫沈降、共焦点画像化。細胞を洗浄し、100μMMPB又は0.5m/mLNHSビオチンの何れかとともに、1.5mM塩化カルシウムを加えたHEPES緩衝液中、4℃で20分間、標識した。反応停止後(MPBについては、1mM還元型グルタチオン、NHSについてはTris)、50mMn−オクチル−β−D−グルコピラノシド可溶化液からの免疫沈降は、ヤギ抗TF、抗PDI、RL90を用いたウェスタンブロッティングのために、Dynabeadsに直接結合されたMAbを使用し、又はビオチン検出のためにストレプトアビジン連結された西洋ワサビペルオキシダーゼを使用した。NIH Image Scionを用いた濃度測定のために、ブロットをデジタル化した。NikonTE2000−U顕微鏡を用いた共焦点顕微鏡観察のために、直接連結された抗体を用いて、氷上で細胞を染色した。Adobe Photoshopを用いて、各フルオロフォアの光学的切片を合体させた。
腫瘍増殖実験。2×10個のMDA−MB23lmfp細胞又は0.5×10個のM24met細胞を、100μLのPBS中のMAb−10H10、MAb−5G9又はイソタイプを合致させたIgG1(TIB115)1mgと混合し、6週齢の雌のC.B−17SCIDマウス(Taconic)中に皮下注射した。Jessani et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101:13756−13761,2004;Mueller et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:11832−11836,1992。キャリパーを用いて腫瘍容積を測定し、屠殺時に腫瘍重量を測定した。群間の差を確定するためにANOVAを使用し、有意レベルは、非パラメトリックKruskal−Wallis検定によって求めた。
分子量などの物理的特性又は化学式などの化学的特性に対して、本明細書において範囲が使用されている場合には、範囲の全ての組み合わせ及び副組み合わせ並びにその中の具体的な実施形態が含まれるものとする。
本明細書中に引用されている全ての公報、配列、特許及び特許出願は、それぞれの個別の公報又は特許出願が、具体的且つ個別的に、あらゆる目的のために、参照により組み込まれることが示されている場合と同様に、参照により、それらの全体が、あらゆる目的のために本明細書中に組み込まれる。
理解を明確にするために、例示及び実施例によって、幾分詳しく、先述の発明を記載してきたが、本発明の教示に照らせば、添付の特許請求の精神又は範囲から逸脱せずに、本明細書にある種の変化及び修飾を施し得ることが当業者に自明である。
図1は、シグナル伝達組織因子の特異的阻害を示している。 図2は、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼによって、シグナル伝達組織因子が制御されることを示している。 図3は、低下した組織因子のシグナル伝達を示している。 図4は、TF−VIIaシグナル伝達が腫瘍増殖を促進することを示している。 図5は、MAb−10H10に対するエピトープの割り当てを示している。 図6は、TF凝固活性の不活化が酸化窒素に依存していることを示す。 図7は、TF−VIIaシグナル伝達のために、TF−PAR2複合体形成が必要とされることを示している。

Claims (25)

  1. 哺乳動物対象中の組織因子/第VIIa因子(TF/VIIa)シグナル伝達を阻害又は抑制する方法であり、前記哺乳動物対象に組織因子シグナル伝達の阻害剤を投与することを含み、前記阻害剤が前記哺乳動物対象中の止血を妨害しない、前記方法。
  2. 対象が、血管新生関連疾患、新生物疾患又は炎症に罹患している、請求項1に記載の方法。
  3. 阻害剤が凝固活性化を妨げない、請求項1に記載の方法。
  4. TF/VIIaシグナル伝達がタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)に依存する、請求項1に記載の方法。
  5. TF/VIIaシグナル伝達が、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)を介して起こる、請求項1に記載の方法。
  6. 阻害剤が抗体又は小化学実体である、請求項1に記載の方法。
  7. 阻害剤が、ATCC受託番号HB9383を有するハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体10H10の結合特異性を有する抗体又は抗原結合分子である、請求項6に記載の方法。
  8. 阻害剤が、ATCC受託番号HB9383を有するハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体10H10である、請求項6に記載の方法。
  9. 阻害剤が、ATCC受託番号HB9383を有するハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体10H10による組織因子への結合を阻害する、請求項1に記載の方法。
  10. 阻害剤が、ATCC受託番号HB9382を有するハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体5G9による組織因子への結合を阻害しない、請求項1に記載の方法。
  11. 哺乳動物対象中の、組織因子−第VIIa因子(TF/VIIa)シグナル伝達に依存する疾病の症候を治療又は軽減するための方法であり、TF/VIIaシグナル伝達を阻害するが、組織因子によって媒介される止血活性を妨害しない化合物の治療的有効量を前記対象に投与することを含む、前記方法。
  12. 疾病が、新生物疾患、血管新生関連疾患又は炎症である、請求項11に記載の方法。
  13. 疾病が乳癌又は黒色腫である、請求項11に記載の方法。
  14. 止血活性がTFによって媒介される凝固である、請求項11に記載の方法。
  15. TF/VIIaシグナル伝達がタンパク質ジスルフィドイソメラーゼに依存する、請求項11に記載の方法。
  16. TF/VIIaシグナル伝達が、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)を介して起こる、請求項11に記載の方法。
  17. 化合物が抗体又は小化学実体である、請求項11に記載の方法。
  18. 化合物が、ATCC受託番号HB9383を有するハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体10H10の結合特異性を有する抗体又は抗原結合分子である、請求項17に記載の方法。
  19. 化合物が、ATCC受託番号HB9383を有するハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体10H10である、請求項17に記載の方法。
  20. TF/VIIaシグナル伝達を阻害するが、凝固を遮断しない薬剤を同定する方法であり、(1)ATCC受託番号HB9383を有するハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体10H10の結合特異性を有する抗体又は抗原結合分子と、(2)組織因子ポリペプチドとの間の結合を、試験化合物の存在下又は不存在下で測定すること、及び試験化合物の不存在下での結合に比した、試験化合物の存在下での前記結合の阻害を検出することを含み、これにより、TF/VIIaシグナル伝達を阻害するが、凝固を遮断しない因子を同定する、前記方法。
  21. 抗体又は抗原結合分子が、ATCC受託番号HB9383を有するハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体である、請求項20に記載の方法。
  22. 試験化合物が、小分子有機化合物である、請求項20に記載の方法。
  23. 組織因子シグナル伝達に対する、同定された因子の阻害的効果を検出することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
  24. 組織因子によって媒介される凝固に対して、同定された薬剤が効果を有しないことを検出することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
  25. (1)同定された薬剤の存在下又は不存在下で、組織因子ポリペプチドを、ATCC受託番号HB9382を有するハイブリドーマによって産生されたモノクローナル抗体5G9と接触させること、及び(2)ATCC受託番号HB9382を有するハイブリドーマによって産生されたモノクローナル抗体5G9による組織因子への結合に対する、同定された薬剤の無阻害を検出することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
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