本発明は、抗体ポリペプチドライブラリーのスクリーニングにおけるさらなる発展を提供する。本発明はまた、本発明の方法により取得可能な新規な単離された抗体ポリペプチドも提供する。
本出願人に対して割り当てられたWO99/20749は、一般リガンド、例えば、抗体もしくは抗体フラグメント、または抗体に由来する1個以上の特異的結合部位を含む任意の物質を用いて抗体ライブラリー(例えば、抗体重鎖可変ドメインのライブラリー)をスクリーニングする方法を記載している。「抗体」は、そのような抗体の結合(可変)領域を用いる構築物と定義される。WO99/20749の開示、特に、ライブラリーの作製(「本発明のライブラリーの構築」)、ライブラリーからのポリペプチドの選択(「本発明によるポリペプチドの選択」)、リガンド選択(「ポリペプチド選択におけるリガンドとしての使用のための抗体」)および工業用途(「本発明に従って選択されるポリペプチドの使用」)は、参照により本明細書に組み入れられるものとする。これらの小節は全て、本発明において用いることができる特徴の開示を提供するために本出願に明確に組み入れられるものとし、当業者であれば、本出願の特許請求の範囲の文脈において、本発明において用いることができるこれらの特徴を容易に認識するであろう。
従来のものでない抗体のクラス(重鎖抗体)は、文献中に記載されている。これらの抗体は、重鎖疾患を有する患者の血清中、EBVにより形質転換されたB細胞中、およびより重要なことには、ラクダ科動物(ラクダ、ラマ)の血清中に高力価で認められる。これらの重鎖抗体は、軽鎖を含まないが、同一の重鎖の単一の対のみを含む。これらの重鎖は、それらが軽鎖と重鎖の対形成の媒介において役割を果たす定常ドメイン1(CH1)を欠くという点で、従来のIgGのものとは異なる。結果として、得られる重鎖抗体は、軽鎖可変ドメインを含まないが、2個の対形成していない重鎖可変ドメインのみを含む。免疫したラクダ科動物の血清に関する研究により、軽鎖が存在しないにも関わらず、これらの重鎖抗体は中程度から高い親和性で抗原に特異的に結合することが示された。対形成していない重鎖可変ドメイン(すなわち、VHH)は、進化を通して遺伝的適応を受けてきた:通常はVLドメインと相互作用する部分において、いくつかのアミノ酸置換が起こった(生殖系列レベルでも):VH中で保存されたL45はArgにより置換される。他の位置は突然変異されていることが多い:V37はPheに、G44はGluに、およびW47はGlyに突然変異される。最後に、ラクダ(ラマではない)に由来するVHHのCDR3は、マウスおよびヒトのVHS(それぞれ9および12アミノ酸)よりも平均で長く(16〜17アミノ酸)、それにより抗原への結合のためのVLドメインが存在しないことを補っている。ラクダ科動物のVHHドメインの説明については、WO05044858A1、WO04062551A2、WO04041867A2、WO04041865A2、WO04041863A2、WO04041862A2、WO03050531A2およびEP0656946を参照する。
1989年以来、抗体の単一可変ドメインが治療的な潜在能力を有することが認識されてきた。それらのサイズが小さいことにより、それらは従来の抗体の接近性が乏しい抗原部位(クレフト、キャニオン、活性部位)上にドッキングすることができる。これらのドメインを、必要に応じて合わせた範囲の生成物に形式化することもできる:例えば、それらを重合(化学的または遺伝的に)して、比較的小さい全体のサイズを維持しながら、アビディティを増加させることができる。血清中での持続性を、PEG化(水力学的サイズを増加させる)を介して、または長い半減期(ヒトにおいては最大19日)を示す血清アルブミンなどの血清タンパク質への共有もしくは非共有結合を介して調整することができる。最後に、単一可変ドメインを、IgGに再度組み入れて、Fcエフェクター機能から利益を得ることができる。全ての事例において、抗原特異的抗体可変ドメインの遺伝子情報へのアクセスは、上記の戦略全てにとって絶対必要条件である。
抗原特異的抗体の抗体可変ドメインをコードする遺伝子を単離するためのいくつかの方法が開発されている。これらの方法の1つは、その開発中に、それぞれのBリンパ球がその細胞表面上に単一の型の抗体を発現する(結合は膜アンカーペプチドへの遺伝的融合により媒介される)という初期の観察に基づくものである。抗原への結合(およびTヘルパー細胞の関与)は、後の段階で形質細胞に成熟する抗原特異的なBリンパ球の増殖を媒介する。これらの細胞は、表面に結合した抗体を発現しないが、むしろ大量にこれらを分泌する。かくして、その開発の過程において、表現型(抗体)を遺伝子型(抗体遺伝子)に関連付ける遺伝子展示パッケージとしてBリンパ球を見ることができる。従って、抗原特異的抗体をコードする遺伝子を単離するために、(i)Bリンパ球の回収物(免疫した動物から単離されたもの)を、抗原(細胞もしくは固相上に固定するか、または染料により標識することができる)と接触させる、(ii)抗原特異的Bリンパ球が抗原に結合する、(iii)結合した抗原特異的Bリンパ球を未結合のBリンパ球から分離する、(iv)結合した抗原特異的Bリンパ球を、容器、チューブ、ウェルもしくはディッシュ中に回収する、および(v)抗原特異的抗体の可変ドメインをコードする遺伝子を、単離されたBリンパ球(モノクローナルもしくはポリクローナル集団として保存することができる)から回収する方法が開発された。このスキームを用いる方法の例は、以下の文献により記載されたものである:
(i)Babcookら、(1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 7843-7848
SLAMは、in vivoでの免疫応答の間に生成された高親和性の抗体の任意の種からの単離を可能にすることにより、ハイブリドーマ技術および細菌により発現される抗体ライブラリーの両方の限界を克服する。SLAMにより、所望の特異性または機能を有する抗体を産生する単一のリンパ球を、リンパ球細胞の大集団内で同定することが可能になり、抗体の特異性をコードする遺伝子情報を、そのリンパ球からレスキューすることが可能になり、例えば、大量の抗体の発現を可能にする発現ベクター中への遺伝子情報のクローニングが可能になる。一実施形態においては、選択された抗原に結合する抗体を産生する抗体産生細胞を、適合型溶血プラークアッセイ法(JerneおよびNordin(1963) Science 140, 405)を用いて検出する。このアッセイにおいては、赤血球を選択された抗原で被覆し、抗体産生細胞の集団と補体の供給源と共にインキュベートする。単一抗体産生細胞を、溶血プラークの形成により同定する。溶解した赤血球のプラークを、倒立顕微鏡を用いて同定し、プラークの中心にある目的の単一抗体産生細胞を、マイクロマニュピレーション技術を用いて除去した後、これを用いてEL4-B5 T細胞(生体の細胞間相互作用およびB細胞増殖のための可溶性因子を提供する)で被覆した単一のウェルに播種する。ウェルあたり平均で0.3個のB細胞を播種して、クローン分布を確保した。次いで、これらのクローン的に増殖させたB細胞に由来する抗体遺伝子を、逆転写PCRによりクローニングする。所望の機能の単一抗体産生細胞を検出するための他の方法は、国際特許明細書WO 92/02551に既に記載されている。
(ii)de Wildtら(1997) J. Immunol. Methods 2073, 61-67
記載の方法は、以下の工程を含む:(i)ヒトドナーからのBリンパ球の回収、(ii)自動細胞分注ユニットを備えた蛍光活性化フローサイトメーター(FACS装置)中でのCD19+/CD20+細胞の検出、(iii)細胞間相互作用(CD40-CD40L)ならびに可溶性増殖因子を提供するEL4-B5 T細胞で被覆された単一のウェル中にそれぞれのCD19+/CD20+B細胞を分注すること、(iv)mRNAの量を増加させるためのそれぞれの単一B細胞の増殖、および(v)RT-PCRによる抗体遺伝子の回収。工程4(B細胞の増殖)は、単一細胞から抗体遺伝子を効率的にPCR増幅するようにPCR法を設計することができる限りは任意であることに留意すべきである。
(iii)Lawsonら、WO 2004106377
この特許出願においては、著者らは、フローサイトメトリー(de Wildtら(1997) J. Immunol. Methods, 2073, 61-67)またはバイオパンニング(Lagerkvistら(1995) Biotechniques 18, 862-869)によって抗原特異的B細胞を単離している。これらの2つの手法とは対照的に、Lawsonらによる方法は、個々のB細胞の単離を必要としない。ウェルあたりのB細胞数は100〜20,000であり、B細胞の増殖後でも、抗体可変遺伝子のRT-PCRは多くのウェル中でモノクローナル抗体配列を示す。
これらの方法は全て、抗体を提示するB細胞のサブ集団を単離するために抗原を用いる。この手法は、抗原特異的B細胞集団内で、展示された抗体が抗原結合に直接関与しない領域において異なっていてもよいということを考慮に入れていない。例えば、従来の抗体は、κまたはλ軽鎖から作製される。従って、抗原のみに基づく選択によっては、異なるB細胞サブ集団の選別は可能にならない。次いで、それぞれの抗原により選択されたBリンパ球を、軽鎖のアイソタイプについてその後試験しなければならないであろう。より重要な例は、免疫したラクダ科動物に関する観察によって与えられる:ラクダにおいては、約20%のBリンパ球が、重鎖抗体をその表面上で発現し、および/または分泌すると考えられる。残りのBリンパ球は、従来の4鎖抗体を展示/発現する。かくして、抗原に基づく選択によっては、重鎖抗体を発現するB細胞を、従来の抗体を発現するB細胞から識別することができない。この問題を、本発明によって解決することができる。
Celltechの名称で以下の刊行物を参照することもできる:
・WO04051268A1:「抗体産生細胞を同定するためのアッセイ(ASSAY FOR IDENTIFYING ANTIBODY PRODUCING CELLS)」。これは、選択された抗原に結合する抗体を産生する抗体産生細胞を同定するための均質なアッセイであって、抗体産生細胞を、抗原および標識された抗抗体抗体と共にインキュベートすることを含む、前記方法を開示している。
・WO94106377A1:「抗体の製造方法(METHODS FOR PRODUCING ANTIBODIES)」。これは、B細胞を捕捉剤と接触させることによる所望の機能を有する抗体の取得、捕捉されたB細胞の分離および培養ならびに捕捉されたB細胞をスクリーニングして、所望の抗体を取得するために抗体を産生する細胞を同定することを開示している。
・WO05019823A1:「抗体を取得する方法(METHODS FOR OBTAINING ANTIBODIES)」。これは、目的の抗原を認識する抗体を産生する細胞、目的の抗原および抗体粒子複合体を接触させることにより、該細胞についてB細胞集団を富化することを開示している。
・WO05019824A1:「抗体を取得する方法(METHODS FOR OBTAINING ANTIBODIES)」。これは、目的の抗原を認識する抗体を産生する細胞を、B細胞マーカーに特異的な抗体で標識し、二重に標識された細胞を単離することを含む、該細胞中でB細胞集団を富化することを開示している。
抗体の抗原結合ドメインは、2つの別々の領域を含む:重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)(VκまたはVλであってよい)。抗原結合部位自体は、6個のポリペプチドループにより形成される:3個はVHドメインに由来し(遺伝子断片の1つの再編成。VH遺伝子は組換えH1、H2およびH3によって産生される)、3個はVLドメインに由来する(L1、L2およびL3)。VHおよびVLドメインをコードするV遺伝子の様々な初期レパートリーは、3個の遺伝子断片、VH、DおよびJHの組合せにより産生される。ヒトにおいては、ハプロタイプに応じて、約51個の機能的VH断片(CookおよびTomlinson (1995) Immunol Today, 16: 237)、25個の機能的D断片(Corbettら、(1997) J. Mol. Biol., 268: 69)および6個の機能的JH断片(Ravetchら(1981) Cell, 27: 583)が存在する。VH遺伝子は、VHドメインの第1および第2の抗原結合ループ(H1およびH2)を形成するポリペプチド鎖の領域をコードするが、VH、DおよびJH断片は、組み合わさってVHドメインの第3の抗原結合ループ(H3)を形成する。VL遺伝子は、2個の遺伝子断片、VLおよびJLのみの組換えによって産生される。ヒトにおいては、ハプロタイプに応じて、約40個の機能的Vκ断片(SchableおよびZachau (1993) Biol. Chem. Hoppe-Seyler, 374: 1001)、31個の機能的Vλ断片(Williamsら(1996) J. Mol. Biol., 264: 220; Kawasakiら(1997) Genome Res., 7: 250)、5個の機能的Jκ断片(Hieterら(1982) J. Biol. Chem., 257: 1516)および4個の機能的Jλ断片(VasicekおよびLeder (1990) J. Exp. Med., 172: 609)が存在する。VL断片は、VLドメインの第1および第2の抗原結合ループ(L1およびL2)を形成するポリペプチド鎖の領域をコードするが、VLおよびJL断片は組み合わさってVLドメインの第3の抗原結合ループ(L3)を形成する。この初期レパートリーから選択された抗体は、少なくとも中程度の親和性でほとんど全ての抗原に結合するほど十分多様であると考えられる。高親和性抗体は、再編成された遺伝子の「親和性成熟」によって産生され、そこで点突然変異が作製され、改善された結合に基づいて免疫系により選択される。
抗体の構造および配列の分析により、6個の抗原結合ループ(H1、H2、L1、L2、およびL3)のうちの5個が、限定された数の主鎖コンフォメーションまたは標準的な構造を有することが示された(ChothiaおよびLesk (1987) J. Mol. Biol., 196: 901; Chothiaら(1989) Nature, 342: 877)。主鎖コンフォメーションは、(i)抗原結合ループの長さ、および(ii)抗原結合ループおよび抗体フレームワーク中の特定の重要な位置の特定の残基、または残基の型により決定される。ループ長および重要な残基の分析により、ヒト抗体配列の大多数によりコードされるH1、H2、L1、L2およびL3の主鎖コンフォメーションを予測することができるようになった(Chothiaら(1992) J. Mol. Biol., 227: 799; Tomlinsonら(1995) EMBO J., 14: 4628; Williamsら(1996) J. Mol. Biol., 264: 220)。H3領域は、配列、長さおよび構造の点でより多くの多様性を有するが(D断片の使用に起因する)、それは、ループおよび抗体フレームワーク中の重要な位置の特定の残基、または残基の型の長さおよび存在に依存する短いループ長の限定された数の主鎖コンフォメーションも形成する(Martinら(1996) J. Mol. Biol., 263: 800; Shiraiら(1996) FEBS Letters, 399: 1)。
ヒト抗体配列における側鎖多様性に関する同様の分析により、体細胞超変異により作製されたものからの、初期レパートリーにおける配列多様性のパターンの分離が可能になった。2つのパターンは相補的である:初期レパートリーにおける多様性は抗原結合の中心に集中するが、体細胞超変異は初期レパートリーにおいて高度に保存される周辺の領域に多様性を広げることが見出された(Tomlinsonら(1996) J. Mol. Biol., 256: 813; Ignatovichら(1997) J. Mol. Biol, 268: 69)。この相補性は、任意の所与の時間での選択のために利用可能な限定数のB細胞を与えられた配列空間を検索するための効率的な戦略として進化したようである。かくして、第1に結合部位の中心での多様性に基づいて、初期レパートリーから抗体を選択する。次いで、体細胞超変異を放置して、一次応答の間に確立された好ましい相互作用を破壊することなく、周辺部の残基を最適化する。
ファージディスプレイ技術(Smith (1985) Science, 228: 1315; ScottおよびSmith (1990) Science, 249: 386; McCaffertyら(1990) Nature, 348: 552)の出現により、「シングルポット」ライブラリーからの広範囲の標的抗原に対するヒト抗体のin vitroでの選択が可能になった。これらのファージ-抗体ライブラリーを、2つのカテゴリーに分類することができる:ヒトB細胞から収穫された再編成されたV遺伝子を使用する天然ライブラリー(Marksら(1991) J. Mol. Biol., 222: 581; Vaughanら(1996) Nature Biotech., 14: 309)または生殖系列V遺伝子断片をin vitroで「再編成」する合成ライブラリー(Hoogenboom & Winter (1992) J. Mol. Biol., 227: 381; Nissimら(1994) EMBO J., 13: 692; Griffithsら(1994) EMBO J., 13: 3245; De Kruifら(1995) J. Mol. Biol., 248: 97)もしくは合成CDRを単一の再編成されたV遺伝子に組み込む合成ライブラリー(Barbasら(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 4457)。合成ライブラリーは再編成されたV遺伝子から構築されたファージライブラリーの有効なサイズを制限し得る天然のレパートリーの固有の偏りを克服するのに役立つが、それらは集合したV遺伝子に塩基対の欠失を導入することが多い長い縮重PCRプライマーの使用を必要とする。この高い程度の無作為化はまた、正確に折り畳むことができず、従って、非機能的でもある抗体の生成を誘導し得る。さらに、これらのライブラリーから選択された抗体はあまり発現されなくてもよく、多くの場合、ヒト治療において用いた場合、抗体の免疫原性に影響し得るフレームワーク突然変異を含むであろう。
合成ライブラリー手法の延長において、共通フレームワーク配列を有し、折り畳みおよび発現を改善することが示されたアミノ酸置換を含む「マスター遺伝子」のセットを合成することにより、ヒト抗体フレームワークを予め最適化することができると提唱された(WO97/08320、Morphosys)。次いで、CDR中の多様性を、オリゴヌクレオチドを用いて組み込む。ヒト免疫系によって外来物として認識されない人工ヒト抗体を製造するのが望ましいため、多くの場合、任意の天然フレームワークに一致しない共通フレームワークの使用はこの手法の欠点である。さらに、CDRの多様性は折り畳みおよび/または発現に対する影響も有するようであるため、V遺伝子を完全に集合させた後に折り畳みおよび/または発現を最適化する(および任意のフレームシフトもしくは停止コドンを除去する)のが好ましい。この目的のために、標的抗原を用いる選択を実行する前に、ライブラリーの非機能的な、またはあまり折り畳まれない/発現されないメンバーを排除することができる選択系を有するのが望ましいであろう。
従来技術のライブラリーに関するさらなる問題は、主鎖コンフォメーションが異種性であり、好適な高分解能の結晶学的データが利用可能でないため、三次元構造モデリングが困難であることである。これは、天然または合成の抗体ライブラリーから誘導された抗体の大多数が、中程度の長さまたは長いループを有し、従って、モデリングすることができないH3領域にとっては特に問題である。
発明の概要
本発明の第1の態様に従えば、ポリペプチドのレパートリーから、第1の結合部位中の標的リガンドおよび第2の結合部位中の、標的リガンド特異性に関係なく該レパートリーの機能的メンバーに結合することができる一般リガンドに結合する機能的ポリペプチドの集団を選択する方法であって、
a)該レパートリーを、該一般リガンドと接触させ、それに結合した機能的ポリペプチドを選択する工程;および
b)選択された機能的ポリペプチドを、標的リガンドと接触させ、該標的リガンドに結合するポリペプチドの集団を選択する工程、
を含む、前記方法が提供される。
従って、本発明は、ポリペプチドのレパートリーを、一般リガンドに結合する能力により決定された機能性に従って予備選択した後、予備選択の結果として得られたポリペプチドのサブセットを、標的リガンドに結合する能力に従ってさらなる周回の選択に用いる方法を提供する。好ましい実施形態においては、このレパートリーを最初に一般リガンドを用いて選択するが、このレパートリーを、反対の順序で前記リガンドと、すなわち、一般リガンドの前に標的リガンドと接触させてもよいことが当業者には明らかであろう。
本発明により、当業者であれば、選択したポリペプチドのレパートリーから、例えば、実質的にいかなる標的リガンドにも結合することができない、フレームシフト突然変異、停止コドン、折り畳み突然変異体もしくは発現突然変異体の導入の結果として非機能的であるポリペプチドを除去することができる。ポリペプチドレパートリーの構築において用いられる通常の無作為化および変異手順により、そのような非機能的突然変異体を作製する。同時に、本発明により、当業者であれば、機能的であり、うまく折り畳まれ、高度に発現されるポリペプチドについて、ポリペプチドの選択されたレパートリーを富化することができる。
好ましくは、2個以上のサブセットのポリペプチドを、本発明の方法、例えば、前記レパートリーを2個以上の一般リガンドを用いて予備スクリーニングすること、または異なる条件下で該レパートリーを一般リガンドと接触させることにより、該レパートリーから取得する。有利には、かくして得られたポリペプチドのサブセットを混合して、さらなるポリペプチドのレパートリーを形成させ、これを標的および/または一般リガンドと接触させることによりさらにスクリーニングすることができる。
好ましくは、本発明に従うライブラリーは、抗体ポリペプチドまたはT細胞受容体ポリペプチドなどの免疫グロブリンスーパーファミリーのポリペプチドを含む。有利には、このライブラリーは、抗体のVHもしくはVLドメイン、またはT細胞受容体のVβもしくはVαドメインなどの個々の免疫グロブリンドメインを含んでもよい。好ましい実施形態においては、従って、例えば、VHおよびVLポリペプチドのレパートリーを、一般リガンドを用いて個々に予備スクリーニングした後、混合してVHおよびVLポリペプチドの両方を含む機能的レパートリーを製造することができる。次いで、そのようなレパートリーを、標的リガンドを用いてスクリーニングして、VHおよびVLドメインの両方を含み、所望の結合特異性を有するポリペプチドを単離することができる。
有利な実施形態においては、免疫グロブリンレパートリーとの使用のために選択された一般リガンドは、スーパー抗原である。スーパー抗原は、機能的免疫グロブリン分子、または標的リガンド特異性に関係なく特定の主鎖コンフォメーションを含むそのサブセットに結合することができる。あるいは、抗体自身、金属イオンマトリックス、タンパク質もしくはペプチドなどの有機化合物などの任意の所与のレパートリーを作り上げるポリペプチドの一般構造に結合することができる任意のリガンドから、一般リガンドを選択することができる。
第2の態様においては、本発明は、機能的メンバーが一般および標的リガンドの両方の結合部位を有するライブラリーを提供する。例えば、所与のスーパー抗原により認識される主鎖コンフォメーションを有する抗体ライブラリーを構築するか、または実質的に全ての潜在的な機能的メンバーが抗体リガンドにより認識可能な構造を有するライブラリーを構築することにより、ライブラリーをこの目的のために特異的に設計することができる。
第3の態様においては、本発明は、本発明に従って以前に選択されたポリペプチドのレパートリーの1個以上のメンバーを、一般リガンドに結合させることを含む、該メンバーを検出し、固定し、精製するか、または免疫沈降させる方法を提供する。
第4の態様においては、本発明は、免疫グロブリンスーパーファミリーのポリペプチドのレパートリーを含み、該レパートリーのメンバーが公知の主鎖コンフォメーションを有するライブラリーを提供する。
第5の態様においては、本発明は、ポリペプチドのレパートリーから、所望の一般および/または標的リガンド結合部位を有するポリペプチドを選択する方法であって、
a)本発明の第1〜第4の態様に従うライブラリーを発現させる工程;
b)該ポリペプチドを一般および/または標的リガンドと接触させ、一般および/または標的リガンドに結合するものを選択する工程;ならびに
c)必要に応じて、一般および/または標的リガンドに結合する選択されたポリペプチドを増幅させる工程、
d)必要に応じて、工程a)〜c)を繰り返す工程、
を含む、前記方法を提供する。
有利には、ポリペプチドのレパートリーを、核酸ライブラリーの形態で作製し、維持する。従って、第6の態様においては、本発明は、そのようなポリペプチドのレパートリーをコードする核酸ライブラリーを提供する。
第7の態様においては、本発明は、抗体ポリペプチドのレパートリーから、標的リガンドおよび標的リガンド特異性に関係なく該レパートリーの機能的メンバーに結合することができる一般リガンドに結合する機能的可変ドメインの集団を選択する方法であって、
a)該レパートリーを該一般リガンドと接触させ、それに結合した機能的可変ドメインを選択する工程;ならびに
b)選択された機能的可変ドメインを標的リガンドと接触させ、該標的リガンドに結合する可変ドメインの集団を選択する工程、
を含み、(i)該可変ドメインは重鎖可変ドメインであり、該一般リガンドは抗体軽鎖可変ドメインであるか、または(ii)該可変ドメインは軽鎖可変ドメインであり、該一般リガンドは抗体重鎖可変ドメインであり;ならびに
必要に応じて、(i)において、重鎖可変ドメインはラクダ科動物の可変ドメイン(VHH)であるか、もしくはラクダ科動物の重鎖抗体(H2抗体)から誘導されたものであり;または必要に応じて、(i)および(ii)において、それぞれの可変ドメインはヒト可変ドメインであるか、もしくはヒトから誘導されたものである、前記方法を提供する。
好ましくは、抗体ポリペプチドのレパートリーを、最初に標的リガンドと接触させた後、一般リガンドと接触させる。
好ましくは、前記一般リガンドは、可変ドメインのレパートリーのサブセットに結合する。
好ましくは、2個以上のサブセットを、ポリペプチドのレパートリーから選択する。
好ましくは、この選択を、2個以上の一般リガンド、必要に応じて、2個以上の軽鎖可変ドメイン(任意項目(i)について)または2個以上の重鎖可変ドメイン(任意項目(ii)について)を用いて実施する。
好ましくは、2個以上のサブセットを、選択後に混合して、ポリペプチドのさらなるレパートリーを作製する。
好ましくは、2個以上のポリペプチドのレパートリーを一般リガンドと接触させ、次いで、それによって得られたポリペプチドのサブセットを混合する。
第7の態様の一実施形態においては、抗体重鎖可変ドメインの集団を選択し、抗体軽鎖可変ドメインの集団を選択し、次いで、それによって得られた集団を混合する。
第8の態様においては、本発明は、ポリペプチドのレパートリーから、標的リガンドおよび標的リガンド特異性に関係なく該レパートリーの機能的メンバーに結合することができる一般リガンドに結合する機能的T細胞受容体ドメインの集団を選択する方法であって、
a)該レパートリーを該一般リガンドと接触させ、それに結合した機能的T細胞受容体ドメインを選択する工程;および
b)選択された機能的T細胞受容体ドメインを標的リガンドと接触させ、該標的リガンドに結合するT細胞受容体ドメインの集団を選択する工程、
を含み、(i)T細胞受容体ドメインはVαドメインであり、一般リガンドはT細胞受容体Vβドメインであるか、または(ii)T細胞ドメインはT細胞受容体Vβドメインであり、一般リガンドはT細胞受容体Vαドメインであり;ならびに
必要に応じて、(i)において、T細胞受容体Vαドメインはラクダ科動物から誘導されたラクダ科動物のドメインであるか、または必要に応じて、(i)および(ii)において、それぞれのT細胞受容体ドメインはヒトドメインであるか、もしくはヒトから誘導されたものである、前記方法も提供する。
第8の態様の一実施形態においては、T細胞受容体Vαドメインの集団を選択し、T細胞受容体Vβドメインの集団を選択し、次いで、それにより得られた集団を混合する。
第9の態様においては、本発明は、抗体ポリペプチドの集団から少なくとも1種の抗体重鎖可変ドメインを選択する方法であって、
a)該集団を抗体軽鎖可変ドメインと接触させること、および
b)軽鎖可変ドメインに結合する少なくとも1種の抗体重鎖可変ドメインを選択すること、
を含む、前記方法も提供する。
一実施形態においては、標的抗原を用いて、抗体ポリペプチドの出発集団に対してSLAM(選択リンパ球抗体法)を実施して、標的抗原に結合する抗体ポリペプチドの集団を選択し、選択された集団を、軽鎖可変ドメインと接触させた工程a)における抗体ポリペプチドの集団として用いる。
好ましくは、工程a)の前に、抗体ポリペプチドを標的リガンドと接触させ、標的リガンドに結合する抗体ポリペプチドを選択し、それによって工程a)において用いられる抗体ポリペプチドの前記集団を提供する工程を行う。
好ましくは、工程b)の後に、工程b)で選択された抗体重鎖可変ドメインを標的リガンドと接触させ、標的リガンドに結合する重鎖可変ドメインを選択する工程を行う。
好ましくは、工程b)で選択されたそれぞれの重鎖ドメインは、ラクダ科動物から誘導された重鎖可変ドメイン;VHHドメイン;Nanobody(商標);位置44にグリシンを有するVHH;位置45にロイシンを有するVHH;位置47にトリプトファンを有するVHH;位置44にグリシンを有し、位置45にロイシンを有するVHH;位置44にグリシンを有し、位置47にトリプトファンを有するVHH;位置45にロイシンを有し、位置47にトリプトファンを有するVHH;位置44にグリシンを有し、位置45にロイシンを有し、位置47にトリプトファンを有するVHH;位置103にトリプトファンまたはアルギニンを有するVHHからなる群に由来する。
好ましくは、工程b)で選択されたそれぞれの重鎖ドメインは、ヒト化ラクダ科動物もしくはマウス重鎖可変ドメインまたはヒト化Nanobody(商標)である。
好ましくは、工程b)で選択されたそれぞれの重鎖ドメインは、ヒト重鎖可変ドメインである。
好ましくは、軽鎖可変ドメインは、ヒト軽鎖可変ドメインであるか、もしくはヒトから誘導されたものであるか、または生殖系列遺伝子配列DPK9によりコードされるFW2と同一であるFW2配列を有する軽鎖可変ドメインである。
好ましくは、軽鎖可変ドメインは、ラクダ科動物の軽鎖可変ドメインまたはラクダ科動物から誘導されたものである。
好ましくは、工程a)における集団を、B細胞の集団により提供する。
好ましくは、B細胞は、末梢血リンパ球である。
好ましくは、標的抗原で免疫した動物からB細胞を単離する。
好ましくは、標的抗原で免疫していない動物からB細胞を単離する。
好ましくは、工程a)で用いる集団を、合成的に再編成された抗体遺伝子によりコードされる抗体ポリペプチドのレパートリーにより提供する。
好ましくは、工程a)で用いる集団を、前記抗体ポリペプチドを展示するバクテリオファージを含むファージディスプレイライブラリーにより提供する。
好ましくは、工程a)で用いる集団は、(i)それぞれ、軽鎖可変ドメインと対形成しない少なくとも1種の重鎖可変ドメインを含む抗体ポリペプチド;および(ii)それぞれ、軽鎖可変ドメインと対形成する重鎖可変ドメインを含む抗体ポリペプチドを含む。
好ましくは、工程a)で用いる集団は、ラクダ科動物の重鎖単一可変ドメイン(VHH)またはNanobody(商標)を含む。
好ましくは、工程a)で用いる集団は、ヒト重鎖単一可変ドメイン(VH)を含む。
好ましくは、工程b)において、少なくとも1種の選択された抗体重鎖可変ドメインを、タンパク質部分と融合させるか、またはコンジュゲートさせる。好ましくは、このタンパク質部分を、バクテリオファージコートタンパク質、1種以上の抗体ドメイン、抗体Fcドメイン、酵素、毒素、標識およびエフェクター基から選択する。
好ましくは、工程b)において、少なくとも1種の選択された抗体重鎖可変ドメインは、IgG、Fab、Fab'、F(ab)2、F(ab')2、scFv、Fvおよびジスルフィド結合したFvから選択される抗体または抗体フラグメントの一部である。
本発明の第9の態様の特に好ましい実施形態
この実施形態においては、工程a)における集団を、B細胞、好ましくは、標的抗原で免疫されたラクダ科動物(例えば、ラマまたはラクダ)から単離された末梢血リンパ球により提供する。この実施形態においては、好ましくは、標的抗原を、TNFα、血清アルブミン、フォン・ビルブラント因子(vWF)、IgE、インターフェロンγ、EGFR、IgE、MMP12、PDK1およびアミロイドβ(A-β)、または添付物1に列挙された標的のいずれか1つからなる群より選択する。工程b)で用いる軽鎖可変ドメインは、ヒト軽鎖可変ドメイン;ヒトから誘導されたもの;生殖系列遺伝子配列DPK9によりコードされるFW2と同一であるFW2配列を有する軽鎖可変ドメイン;またはラクダ科動物、ウサギもしくはマウスの軽鎖可変ドメインである。かくして、この実施形態は、ヒト軽鎖可変ドメイン(または少なくともヒト境界領域(この領域はKabatに従うアミノ酸44〜47を含む)、すなわち、通常、ヒトVH/VL対においてVHドメインと干渉する領域)を有する軽鎖ドメイン)を用いて選択される免疫されたラクダ科動物から得た、工程a)における末梢血リンパ球集団の使用を包含する。
本発明の一態様は、標的抗原で免疫されたラクダ科動物から単離されたB細胞により提供されるラクダ科動物の抗体ポリペプチドの集団から、少なくとも1個のラクダ科動物の抗体VHHドメインを選択する方法であって、
a)該集団を抗体軽鎖可変ドメインと接触させること、および
b)軽鎖可変ドメインに結合する少なくとも1個のVHHドメインを選択すること、
を含む、前記方法を提供する。
好ましくは、軽鎖可変ドメインは、ヒト軽鎖可変ドメインである。
好ましくは、B細胞を、平均で1個のB細胞型を含む、複数のウェルまたは容器中で提供する。
好ましくは、工程b)において、少なくとも1個の選択された抗体重鎖可変ドメインを、タンパク質部分に融合するか、またはコンジュゲートする。好ましくは、このタンパク質部分を、バクテリオファージコートタンパク質、1個以上の抗体ドメイン、抗体Fcドメイン、酵素、毒素、標識およびエフェクター基より選択する。
好ましくは、工程b)において、少なくとも1個の選択された抗体重鎖可変ドメインは、IgG、Fab、Fab'、F(ab)2、F(ab')2、scFv、Fvおよびジスルフィド結合したFvより選択された抗体の一部または抗体フラグメントである。
第10の態様において、本発明は、抗体重鎖可変ドメインを含むか、またはそれからなる単離された抗体ポリペプチドであって、該ポリペプチドは本発明の第9の態様の方法によって取得可能であり、該方法における軽鎖可変ドメインはヒト軽鎖可変ドメインであり、重鎖可変ドメインは非ヒト哺乳動物に由来するものである、前記ポリペプチドを提供する。好ましくは、抗体ポリペプチドの重鎖可変ドメインは、ラクダ科動物から誘導された重鎖可変ドメイン;VHHドメイン;Nanobody(商標);位置44にグリシンを有するVHH;位置45にロイシンを有するVHH;位置47にトリプトファンを有するVHH;位置44にグリシンを有し、位置45にロイシンを有するVHH;位置44にグリシンを有し、位置47にトリプトファンを有するVHH;位置45にロイシンを有し、位置47にトリプトファンを有するVHH;位置44にグリシンを有し、位置45にロイシンを有し、位置47にトリプトファンを有するVHH;位置103にトリプトファンまたはアルギニンを有するVHHからなる群に由来するものである。好ましくは、抗体ポリペプチドの重鎖可変ドメインを、ラクダ科動物のIgGまたはラクダ科動物から誘導されたIgGの一部として提供する。好ましくは、抗体ポリペプチドの重鎖可変ドメインを、ヒトIgGまたはヒトから誘導されたIgGの一部として提供し、ここで重鎖可変ドメインを、IgG中で、本発明の第9の態様の方法において用いられる軽鎖可変ドメインとは異なる軽鎖可変ドメインと対形成させる。本発明はまた、抗体ポリペプチドの誘導体も提供し、ここで、この誘導体は、第10の態様の抗体ポリペプチドの可変ドメインのCDR3と比較してCDR3突然変異を有する。本発明はまた、第10の態様の抗体ポリペプチドの親和性成熟により産生される誘導体も提供する。
一実施形態における本発明による抗体ポリペプチド(例えば、第10または第12の態様)を、医薬として、またはヒトにおける疾患もしくは症状の治療および/もしくは予防に用いる。
本発明の方法、使用または抗体ポリペプチドの一実施形態においては、重鎖可変ドメインは、TNFα、血清アルブミン、フォン・ビルブラント因子(vWF)、IgE、インターフェロンγ、EGFR、IgE、MMP12、PDK1およびアミロイドβ(A-β)、または添付物1に列挙された標的のいずれか1つからなる群より選択される標的リガンドに結合する。
第11の態様において、本発明は、抗体ポリペプチドの集団から少なくとも1個の抗体軽鎖可変ドメインを選択する方法であって、
a)該集団を抗体重鎖可変ドメインと接触させること、および
b)重鎖可変ドメインに結合する少なくとも1個の抗体軽鎖可変ドメインを選択すること、
を含む、前記方法も提供する。
好ましくは、工程a)の前に、抗体ポリペプチドを標的リガンドと接触させ、標的リガンドに結合する抗体ポリペプチドを選択し、それによって工程a)において用いられる抗体ポリペプチドの前記集団を提供する工程を行う。
好ましくは、工程b)の後に、工程b)で選択された抗体軽鎖可変ドメインを標的リガンドと接触させ、標的リガンドに結合する軽鎖可変ドメインを選択する工程を行う。
好ましくは、工程b)で選択されたそれぞれの軽鎖ドメインは、ラクダ科動物から誘導されたものである。
好ましくは、工程b)で選択されたそれぞれの軽鎖ドメインは、ヒト軽鎖可変ドメインである。
好ましくは、重鎖可変ドメインは、ヒト重鎖可変ドメイン;ヒトから誘導されたもの;生殖系列遺伝子配列DP47によりコードされるFW2と同一であるFW2配列を有する重鎖可変ドメイン;または生殖系列遺伝子配列DP47によりコードされる位置44、45および47と同一である位置44、45および47を有する重鎖可変ドメインである。
好ましくは、重鎖可変ドメインは、ラクダ科動物の重鎖可変ドメイン(VHHもしくはVH)またはラクダ科動物から誘導されたものである。
好ましくは、工程a)における集団を、B細胞の集団により提供する。
好ましくは、B細胞は、末梢血リンパ球である。
好ましくは、標的抗原で免疫された動物からB細胞を単離する。
好ましくは、標的抗原で免疫されていない動物からB細胞を単離する。
好ましくは、工程a)で用いられる集団を、合成的に再編成された抗体遺伝子によりコードされる抗体ポリペプチドのレパートリーにより提供する。
好ましくは、工程a)で用いられる集団を、前記抗体ポリペプチドを展示するバクテリオファージを含むファージディスプレイライブラリーにより提供する。
好ましくは、工程a)で用いられる集団は、(i)それぞれ、重鎖可変ドメインと対形成しない少なくとも1個の軽鎖可変ドメインを含む抗体ポリペプチド;および(ii)それぞれ、重鎖可変ドメインと対形成した軽鎖可変ドメインを含む抗体ポリペプチドを含む。
好ましくは、工程a)で用いられる集団は、ヒト軽鎖単一可変ドメイン(VL)を含む。
好ましくは、工程b)において、少なくとも1個の選択された抗体軽鎖可変ドメインを、タンパク質部分に融合するか、またはコンジュゲートする。好ましくは、このタンパク質部分を、バクテリオファージコートタンパク質、1種以上の抗体ドメイン、抗体Fcドメイン、酵素、毒素、標識およびエフェクター基から選択する。
好ましくは、工程b)において、少なくとも1個の選択された抗体重鎖可変ドメインは、IgG、Fab、Fab'、F(ab)2、F(ab')2、scFv、Fvおよびジスルフィド結合したFvから選択される抗体または抗体フラグメントの一部である。
第11の態様の一実施形態においては、標的抗原を用いて、抗体ポリペプチドの出発集団に対してSLAM(選択リンパ球抗体法)を実施して、標的抗原に結合する抗体ポリペプチドの集団を選択し、選択された集団を、重鎖可変ドメインと接触させた、工程a)における抗体ポリペプチドの集団として用いる。
第12の態様において、本発明は、抗体軽鎖可変ドメインを含むか、またはそれからなる単離された抗体ポリペプチドであって、該ポリペプチドは本発明の第11の態様の方法によって取得可能であり、該方法における重鎖可変ドメインはヒト重鎖可変ドメインであり、軽鎖可変ドメインは非ヒト哺乳動物から誘導されたものである、前記ポリペプチドを提供する。好ましくは、抗体ポリペプチドの軽鎖可変ドメインは、ラクダ科動物に由来するものである。好ましくは、抗体ポリペプチドの軽鎖可変ドメインを、ラクダ科動物のIgGまたはラクダ科動物から誘導されたIgGの一部として提供する。好ましくは、抗体ポリペプチドの軽鎖可変ドメインを、ヒトIgGまたはヒトから誘導されたIgGの一部として提供し、ここで軽鎖可変ドメインは、IgG中で、本発明の第11の態様において用いられる重鎖可変ドメインとは異なる重鎖可変ドメインと対形成する。本発明はまた、第12の態様に従う抗体ポリペプチドの誘導体であって、第12の態様のポリペプチドの可変ドメインのCDR3と比較してCDR3突然変異を有する、前記誘導体も提供する。本発明はまた、第12の態様の抗体ポリペプチドの親和性成熟により産生される誘導体も提供する。
一態様においては、本発明は、第10もしくは第12の態様の抗体ポリペプチドまたはその誘導体に連結された半減期延長部分であって、PEG;抗体定常ドメイン;抗体Fc領域;アルブミンもしくはその断片;アルブミンに結合するペプチドもしくは抗体フラグメント、アルブミン断片;新生児Fc受容体;トランスフェリン;またはトランスフェリン受容体から選択される前記部分を含むポリペプチドを提供する。好ましくは、ポリペプチドは、医薬であるか、またはヒトにおける疾患もしくは症状の治療および/もしくは予防のためのものである。好ましくは、抗体ポリペプチドの可変ドメインは、TNFα、血清アルブミン、フォン・ビルブラント因子(vWF)、IgE、インターフェロンγ、EGFR、IgE、MMP12、PDK1およびアミロイドβ(A-β)、または添付物1に列挙された標的のいずれか1つからなる群より選択される標的リガンドに結合する。
本発明に従う方法の一実施形態においては、前記方法は、選択された可変ドメインの突然変異体または誘導体を製造する工程をさらに含む。
B細胞集団を用いる本発明に従う方法の一実施形態においては、B細胞集団を、それぞれ単一のB細胞型を含む、複数のウェルまたは容器中で提供する。
B細胞集団を用いる本発明に従う方法の一実施形態においては、B細胞集団を、それぞれ平均で1個のB細胞型を含む、複数のウェルまたは容器中で提供する。
本発明の一態様においては、単一可変ドメインを含む抗体ポリペプチドの集団中で抗体単一可変ドメインからIgGを分離する方法であって、
a)該集団を一般リガンドと接触させること、および
b)一般リガンドに結合するサブ集団を選択し、それによって単一可変ドメインからIgGを分離すること、
を含み、該一般リガンドが抗体CH1ドメイン、軽鎖定常ドメイン(CL)、IgGヒンジまたは抗体軽鎖可変ドメインに対する結合特異性を有する、前記方法が提供される。
好ましくは、一般リガンドを、プロテインL、プロテインLドメイン、または軽鎖可変ドメインに結合するプロテインLの誘導体;プロテインG、プロテインGのドメイン、またはCH1に結合するプロテインGの誘導体;抗体および抗体フラグメント、アフィボディ、LDL受容体ドメインならびにEGFドメインから選択する。
好ましくは、一般リガンドを、dAb、Nanobody(商標)、scFv、Fab、Fab'、F(ab)2、F(ab')2、scFv、Fvまたはジスルフィド結合したFvから選択する。
好ましくは、可変ドメインは、ヒト単一可変ドメインであり、IgGはヒトIgGである。
好ましくは、一般リガンドは、1 mM以下の親和性で、抗体CH1ドメイン、軽鎖定常ドメイン(CL)、IgGヒンジまたは抗体軽鎖可変ドメインに結合する。
好ましくは、一般リガンドは、1μM以下の親和性で、抗体CH1ドメイン、軽鎖定常ドメイン(CL)、IgGヒンジまたは抗体軽鎖可変ドメインに結合する。
好ましくは、一般リガンドは、100 nM以下の親和性で、抗体CH1ドメイン、軽鎖定常ドメイン(CL)、IgGヒンジまたは抗体軽鎖可変ドメインに結合する。
第13の態様において、本発明は、抗体ポリペプチドの集団中でIgGからラクダ科動物のVHH単一可変ドメインを分離する方法であって、
a)該集団を一般リガンドと接触させること、および
b)一般リガンドに結合するサブ集団を選択し、それによってIgGから単一可変ドメインを分離すること、
を含む、前記方法を提供する。
好ましくは、一般リガンドを、抗体軽鎖可変ドメイン、抗体および抗体フラグメントから選択する。
好ましくは、一般リガンドを、dAb、Nanobody(商標)、scFv、Fab、Fab'、F(ab)2、F(ab')2、scFv、Fvまたはジスルフィド結合したFvから選択する。
好ましくは、一般リガンドは、1 mM以下の親和性で、VHHまたは重鎖抗体(H2)ヒンジに結合する。
好ましくは、一般リガンドは、1μM以下の親和性で、VHHまたは重鎖抗体(H2)ヒンジに結合する。
好ましくは、一般リガンドは、100 nM以下の親和性で、VHHまたは重鎖抗体(H2)ヒンジに結合する。
好ましくは、抗体ポリペプチド集団を、B細胞により提供する。
好ましくは、可変ドメインは、ラクダ科動物のVHHであり、IgGはラクダ科動物のIgGである。
好ましくは、可変ドメインを、ラクダ科動物の重鎖(H2)抗体により提供する。
好ましくは、一般リガンドを標識するか、またはタグ付けする。
本発明の方法、抗体ポリペプチド、誘導体または使用の一実施形態においては、一般リガンドは、添付物2のa)、c)、d)またはe)から選択される抗体可変ドメインである。
第14の態様においては、本発明は、抗体ポリペプチドのレパートリーから、標的リガンドおよび一般リガンドに結合する単一可変ドメインを選択する方法であって、
a)該レパートリーを標的リガンドと接触させ、それに結合した単一可変ドメインを選択する工程;および
b)選択された可変ドメインを一般リガンドと接触させ、一般リガンドに結合する可変ドメインを選択する工程、
を含み、ここで一般リガンドは添付物2の(c)もしくは(e)から選択される抗体可変ドメインであり、ならびに
(i)選択された可変ドメインが重鎖可変ドメインである場合、一般リガンドは軽鎖可変ドメインであるか、または(ii)選択された可変ドメインが軽鎖可変ドメインである場合、一般リガンドは重鎖可変ドメインである、前記方法を提供する。
好ましくは、抗体ポリペプチドのレパートリーは、重鎖可変ドメインのレパートリーであり、一般リガンドは軽鎖可変ドメインである。
好ましくは、抗体ポリペプチドのレパートリーは、軽鎖可変ドメインのレパートリーであり、一般リガンドは重鎖可変ドメインである。
好ましくは、前記方法は、選択された可変ドメインの突然変異体または誘導体を製造する工程を含む。
好ましくは、一般リガンドは、選択された可変ドメインと同じ標的リガンド種に結合する。
好ましくは、一般リガンドは、選択された可変ドメインと異なる標的リガンドに結合する。
好ましくは、前記方法は、選択された可変ドメインを、一般リガンドと同一である抗体可変ドメインまたはその誘導体と混合して、標的リガンド結合特異性を有する生成物を製造する工程を含む。
第15の態様において、本発明は、標的リガンドに結合する添付物2(c)(i)〜(iv)のいずれかにおける抗体または抗体フラグメントの誘導体を製造する方法であって、
a)第14の態様の方法における一般リガンドとして、該抗体もしくはフラグメントの重鎖可変ドメインまたは同一の可変ドメインであって、工程a)で用いられる標的リガンドが該抗体もしくはフラグメントが結合する標的リガンドである、前記ドメインを使用することによって、標的リガンドおよび重鎖可変ドメインに結合する軽鎖単一可変ドメインを選択すること;ならびに
b)少なくとも1種の抗体もしくはフラグメントの軽鎖可変ドメインを、選択された軽鎖可変ドメイン;同一の軽鎖可変ドメインもしくはその誘導体と置換すること、
を含む、前記方法を提供する。
第16の態様において、本発明は、添付物2(c)(i)〜(iv)のいずれかにおける抗体または抗体フラグメントの多特異的誘導体を製造する方法であって、
a)第14の態様の方法における一般リガンドとして、該抗体もしくはフラグメントの重鎖可変ドメイン(または同一の可変ドメイン)であって、工程a)で用いられる標的リガンドが、該抗体もしくはフラグメントが結合する標的リガンドとは異なる標的リガンドである、前記ドメインを使用することによって、異なる標的リガンドおよび重鎖可変ドメインに結合する軽鎖単一可変ドメインを選択すること;ならびに
b)少なくとも1種の抗体もしくはフラグメントの軽鎖可変ドメインを、選択された軽鎖可変ドメイン;同一の軽鎖可変ドメインまたはその誘導体と置換することによって、多特異的生成物を製造すること、
を含む、前記方法を提供する。
好ましくは、第15および16の態様において、軽鎖可変ドメインを、ヒト軽鎖可変ドメイン;ヒトから誘導された軽鎖可変ドメイン;生殖系列遺伝子配列DPK9によりコードされるFW2と同一であるFW2配列を有する軽鎖可変ドメイン;ラクダ科動物の軽鎖可変ドメイン;ラクダ科動物から誘導された軽鎖可変ドメイン;およびヒト化ラクダ科動物またはマウスの軽鎖可変ドメインから選択する。
第17の態様において、本発明は、標的リガンドに結合する添付物2(c)(i)〜(iv)のいずれかにおける抗体または抗体フラグメントの誘導体を製造する方法であって、
a)第14の態様の方法における一般リガンドとして、該抗体もしくはフラグメントの軽鎖可変ドメイン(または同一の可変ドメイン)であって、工程a)で用いられる標的リガンドが、該抗体もしくはフラグメントが結合する標的リガンドである、前記ドメインを使用することによって、標的リガンドおよび軽鎖可変ドメインに結合する重鎖単一可変ドメインを選択すること;ならびに
b)少なくとも1種の抗体もしくはフラグメントの重鎖可変ドメインを、選択された重鎖可変ドメイン;同一の重鎖可変ドメインまたはその誘導体と置換すること、
を含む、前記方法を提供する。
第18の態様において、本発明は、添付物2(c)(i)〜(iv)のいずれかにおける抗体または抗体フラグメントの多特異的誘導体を製造する方法であって、
a)請求項94に記載の方法における一般リガンドとして、該抗体もしくはフラグメントの軽鎖可変ドメインまたは同一の可変ドメインであって、工程a)で用いられる標的リガンドが、該抗体もしくはフラグメントが結合する標的リガンドとは異なる標的リガンドである、前記ドメインを使用することによって、異なる標的リガンドおよび軽鎖可変ドメインに結合する重鎖単一可変ドメインを選択すること;ならびに
b)少なくとも1種の抗体もしくはフラグメントの重鎖可変ドメインを、選択された重鎖可変ドメイン;同一の重鎖可変ドメインまたはその誘導体と置換することによって、多特異的生成物を製造すること、
を含む、前記方法を提供する。
好ましくは、第17および18の態様において、重鎖可変ドメインを、ラクダ科動物から誘導された重鎖可変ドメイン;VHHドメイン;Nanobody(商標);位置44にグリシンを有するVHH;位置45にロイシンを有するVHH;位置47にトリプトファンを有するVHH;位置44にグリシンを有し、位置45にロイシンを有するVHH;位置44にグリシンを有し、位置47にトリプトファンを有するVHH;位置45にロイシンを有し、位置47にトリプトファンを有するVHH;位置44にグリシンを有し、位置45にロイシンを有し、位置47にトリプトファンを有するVHH;位置103にトリプトファンもしくはアルギニンを有するVHH;ヒト化ラクダ科動物もしくはマウスの重鎖可変ドメイン;ヒト化Nanobody(商標);ヒト重鎖可変ドメイン;ヒトから誘導された重鎖可変ドメイン;生殖系列遺伝子配列DP47によりコードされるFW2と同一であるFW2配列を有する重鎖可変ドメイン;または生殖系列遺伝子配列DP47によりコードされる位置44、45および47と同一である位置44、45および47を有する重鎖可変ドメインからなる群より選択する。
好ましくは、第15〜18の態様においては、a)選択された可変ドメインは重鎖可変ドメインであり、抗体もしくはフラグメントの各重鎖可変ドメインを、選択された重鎖可変ドメインと置換するか、またはb)選択された可変ドメインは軽鎖可変ドメインであり、抗体もしくはフラグメントの各軽鎖可変ドメインを、選択された軽鎖可変ドメイン;同一の軽鎖可変ドメインもしくはその誘導体と置換する。
本発明はまた、第15〜18の態様のいずれか1つに記載の方法により取得可能な誘導体も提供する。
第19の態様において、本発明は、本発明の第15〜18の態様のいずれか1つにより取得可能な、Panorex(商標)、Rituxin(商標)、Zevalin(商標)、Mylotarg(商標)、Campath(商標)、Herceptin(商標)、ReoPro(商標)、Synagis(商標)、Xolair(商標)、Remicade(商標)、Simulect(商標)、OKT3(商標)、Orthoclone(商標)、Zenapax(商標)、Humira(商標)、Bexxar(商標)、Raptiva(商標)、Antegren(商標)、Erbitux(商標)およびAvastin(商標)から選択される抗体または抗体フラグメントの誘導体を提供する。
第20の態様において、本発明は、ヒトにおける疾患または症状の治療および/または予防のための誘導体または生成物の使用を提供する。
第21の態様においては、本発明は、ヒトにおける疾患または症状の治療および/または予防のための誘導体または生成物の使用を提供する。
第22の態様においては、本発明は、症状が添付物2(c)(i)における抗体または抗体フラグメントについて列挙された症状である、ヒトにおける疾患または症状の治療および/または予防のための誘導体または生成物の使用を提供する。
本発明がVLドメインを選択するためのVHまたはVHH一般リガンドの使用またはその逆を含む場合、境界領域を介してそのようなドメインの固有の対形成によって選択を容易にすることができる。例えば、関連する境界領域は、Kabatに従う番号付けにおいて、VHおよびVHHドメイン(およびVLドメインの等価な領域)の位置44、45および47を含んでもよい。かくして、ヒト境界(例えば、44G、45Lおよび47W)を有するVLの使用は、これがヒトVL境界領域と良好に対形成する境界領域を有するVHHドメインを選択することができるため、ライブラリーからラクダ科動物のVHHドメインを選択するのに有用であり得る。従って、これは、VHHドメイン中のヒトに類似する特徴を選択し、かくして、我々にとってヒトにおいて有用なVHH生成物(例えば、疾患の治療のため)および/またはヒトにおける使用と両立できる生成物のさらなる開発のための有用な先導を提供する。
発明の詳細な説明
定義
レパートリー
レパートリーは、多様な変異体、例えば、ヌクレオチド配列において異なる核酸変異体またはアミノ酸配列において異なるポリペプチド変異体の集団である。本発明に従うライブラリーは、ポリペプチドまたは核酸のレパートリーを包含するであろう。本発明に従って、ポリペプチドのレパートリーを、一般リガンドの結合部位および標的リガンドの結合部位を有するように設計する。結合部位は重複してもよく、または分子の同じ領域中に位置してもよいが、その特異性は異なるであろう。
生物
本明細書で用いる用語「生物」とは、原核生物および真核生物などの全ての細胞性生命形態、ならびにバクテリオファージおよびウイルスなどの非細胞性の、核酸を含有する実体を指す。
機能的
本明細書で用いる用語「機能的」とは、その型の天然に産生されるタンパク質の天然の生物活性、または、例えば、以下に定義されるように、リガンド分子に結合するその能力により判定される、任意の特異的な所望の活性を有するポリペプチドを指す。「機能的」ポリペプチドの例としては、その抗原結合部位を介して抗原に特異的に結合する抗体、その特徴的なリガンドに結合する受容体分子(例えば、T細胞受容体)およびその基質に結合する酵素が挙げられる。ポリペプチドを本発明に従って機能的であると分類するためには、これも以下に定義されるように、一般リガンドに結合するその能力により判定されるように、それは最初に適切に加工され、その全体の構造的完全性を保持するように折り畳まれなければならない。
誤解を避けるために、機能性は、標的リガンドに結合する能力と等価ではない。例えば、機能的抗CEAモノクローナル抗体は、細菌のLPSなどの標的リガンドに特異的に結合することができないであろう。しかしながら、それは標的リガンドに結合することはできるため(すなわち、それはCEAが標的リガンドであった場合はCEAに結合することができるであろう)、それは「機能的」抗体分子として分類され、以下に定義される一般リガンドに結合することにより選択することができる。典型的には、非機能的抗体分子は、いかなる標的リガンドにも結合することができない。
一般リガンド
一般リガンドは、所与のレパートリー中の実質的な割合の機能的メンバーに結合するリガンドである。かくして、同じ一般リガンドは、その標的リガンド特異性に関係なく、レパートリーの多くのメンバーに結合することができる(以下を参照)。一般的には、機能的一般リガンド結合部位の存在は、レパートリーのメンバーが発現され、正確に折り畳まれることを示唆する。かくして、一般リガンドのその結合部位への結合は、ポリペプチドのレパートリーから機能的ポリペプチドを予備選択する方法を提供する。
標的リガンド
標的リガンドは、レパートリーの特異的結合メンバーを同定しようとするリガンドである。レパートリーのメンバーが抗体分子である場合、標的リガンドは抗原であってよく、レパートリーのメンバーが酵素である場合、標的リガンドは基質であってよい。標的リガンドへの結合は、一般リガンドの下で、上記のように、機能的であるレパートリーのメンバー、および標的リガンドの結合部位の正確な特異性の両方に依存する。
サブセット
サブセットは、レパートリーの一部である。本発明の用語においては、レパートリーのサブセットのみが機能的であり、従って、機能的一般リガンド結合部位を有する場合が多い。さらに、レパートリーのほんの少数の機能的メンバー(それでも、所与の標的リガンドに結合するものよりも有意に多い)が一般リガンドに結合するということも可能である。これらのサブセットを、本発明に従って選択することができる。
ライブラリーのサブセットを混合するか、またはプールして、所望の基準に従って呼び選択された新規レパートリーを作製することができる。混合またはプールされたレパートリーは、一般リガンド結合により予備選択されたポリペプチドメンバーの単純な混合物であってもよく、または2つのポリペプチドサブセットを混合するために操作することができる。例えば、VHおよびVLポリペプチドを、個別に予備スクリーニングした後、それらがscFvなどの混合VH-VLダイマーとして発現されるような単一のベクター上に遺伝子レベルで混合することができる。
ライブラリー
用語「ライブラリー」とは、異種ポリペプチドまたは核酸の混合物を指す。ライブラリーは、単一のポリペプチドまたは核酸配列を有するメンバーから構成される。この程度まで、ライブラリーはレパートリーと同義である。ライブラリーメンバー間の配列の差異は、ライブラリー中に存在する多様性の原因となる。ライブラリーは、ポリペプチドまたは核酸の単純な混合物の形態を取ってもよく、または、例えば、核酸のライブラリーで形質転換された、細菌、ウイルス、動物もしくは植物細胞などの生物もしくは細胞の形態にあってもよい。好ましくは、それぞれ個々の生物または細胞は、ライブラリーの1個のメンバーのみを含む。有利には、核酸を発現ベクター中に組み込んで、該核酸によりコードされるポリペプチドの発現を可能にする。従って、好ましい態様においては、ライブラリーは、それぞれの生物がその対応するポリペプチドメンバーを産生するように発現させることができる核酸形態のライブラリーの単一のメンバーを含む1以上のコピーの発現ベクターを含む、宿主生物の集団の形態を取ってもよい。かくして、宿主生物の集団は、遺伝的に多様なポリペプチド変異体の大きいレパートリーをコードする潜在能力を有する。
免疫グロブリンスーパーファミリー
これは、2個のβシートと、通常は保存されたジスルフィド結合を含む、免疫グロブリン(抗体)分子の免疫グロブリン折り畳み特性を保持するポリペプチドのファミリーを指す。免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーは、免疫系(例えば、抗体、T細胞受容体分子など)における幅広い役割、細胞接着における関与(例えば、ICAM分子)および細胞内シグナリング(例えば、PDGF受容体などの受容体分子)などの、in vivoでの細胞性および非細胞性相互作用の多くの態様に関与する。全ての免疫グロブリンスーパーファミリー分子内の変異は同様の様式で達成されるため、本発明は全ての免疫グロブリンスーパーファミリー分子に適用可能である。好ましくは、本発明は、免疫グロブリン(抗体)に関する。
主鎖コンフォメーション
主鎖コンフォメーションとは、三次元での構造のC骨格跡を指す。抗体またはTCR分子の個々の超可変ループを考慮する場合、主鎖コンフォメーションは標準構造と同義である。ChothiaおよびLesk (1987) J. Mol. Biol., 196: 901ならびにChothiaら(1989) Nature, 342: 877に記載のように、抗体は、ループ自体にはかなりの側鎖多様性があるにも関わらず、6個の超可変ループのうちの5個(H1、H2、L1、L2およびL3)については、限られた数の標準構造を示す。示される正確な標準構造は、ループの長さおよびそのパッキングに関与する特定の重要残基の同一性に依存する。6番目のループ(H3)は、長さおよび配列の両方においてより多様であり、従って、特定の短いループ長については標準構造を示すに過ぎない(Martinら、(1996) J. Mol. Biol., 263: 800; Shiraiら(1996) FEBS Letters, 399: 1)。本発明においては、6個のループは全部、標準構造を有するのが好ましく、従って、抗体分子全体の主鎖コンフォメーションは公知であろう。
抗体ポリペプチド
抗体は、B細胞により産生され、脊椎動物における宿主免疫防御系の中心的な部分を形成する免疫グロブリンである。本明細書で用いる抗体ポリペプチドは、改変された、または改変されていない、抗体であるか、または抗体の一部であるポリペプチドである。かくして、用語「抗体ポリペプチド」は、重鎖、軽鎖、重鎖-軽鎖ダイマー、Fabフラグメント、F(ab')2フラグメント、Dabフラグメント、または一本鎖Fv(scFv)などのFvフラグメントを含む。そのような抗体分子の構築のための方法は、当業界でよく知られている。
スーパー抗原
スーパー抗原は、多くは細菌中で発現される毒素の形態にある抗原であり、これらの分子の従来のリガンド結合部位の外側で免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーと相互作用する。スタフィロコッカスのエンテロトキシンは、T細胞受容体と相互作用し、CD4+ T細胞を刺激する作用を有する。抗体に関するスーパー抗原としては、IgG定常領域に結合するプロテインG分子(BjorckおよびKronvall (1984) J. Immunol, 133: 969; Reisら(1984) J. Immunol., 132: 3091)、IgG定常領域およびVHドメインに結合するプロテインA(ForsgrenおよびSjoquist (1966) J. Immunol., 97: 822)ならびにVLドメインに結合するプロテインL(Bjorck (1988) J. Immunol., 140: 1994)が挙げられる。
本発明の好ましい実施形態
本発明は、「標的リガンド」に対する特異性に関する選択を実行する前に、機能的な、折り畳まれ、よく発現されるメンバーを富化しながら、ポリペプチドライブラリーの非機能的な、またはあまり折り畳まれない/発現されないメンバーを排除する(またはその割合を有意に低下させる)選択系を提供する。ポリペプチド分子のレパートリーを、全ての機能的な、例えば、完全におよび/または正確に折り畳まれる、関連するクラスのタンパク質にとって共通の構造的特徴に対する親和性を有するタンパク質である「一般リガンド」と接触させる。用語「リガンド」は、本発明において有用な分子を参照して幅広く用いられることに留意されたい。本明細書で用いられる用語「リガンド」とは、ポリペプチドライブラリーのメンバーに結合するか、またはそれにより結合される任意の実体を指す。
最初のレパートリーに存在する有意な数の欠陥のあるタンパク質は一般リガンドに結合するのに失敗し、それによって排除される。ライブラリーからの非機能的ポリペプチドのこの選択的除去は、その実際のサイズの顕著な減少をもたらすが、その機能的サイズは維持され、その品質も対応して増加する。一般リガンドに結合するという点で保持されるポリペプチドは、元のレパートリーの「最初に選択されたプール」または「サブセット」を構成する。結果として、この「サブセット」は、最初のレパートリーの機能的な、よく折り畳まれた、およびよく発現されたメンバーについて富化される。
続いて、最初に選択されたプールまたはサブセットのポリペプチドを、所与の機能的特異性を有するポリペプチドに結合する、少なくとも1種の「標的リガンド」と接触させる。そのような標的リガンドとしては、限定されるものではないが、受容体/リガンド対の半分(例えば、ホルモンもしくは神経伝達因子などの多の細胞シグナリング分子、およびその同族受容体)、細胞接着分子の結合対、酵素の活性部位により結合されたタンパク質基質、タンパク質、ペプチドまたは特定の抗体もしくは抗体自身さえ指向する小さい有機化合物のいずれかが挙げられる。結果として、そのようなライブラリーの使用は、時間および材料の両方の点で、従来のライブラリーよりも労力をあまり使わず、より経済的である。さらに、一般リガンドを用いて選択されなかったレパートリーと比較して、最初に選択されたプールは、より高い比率の、標的リガンドに結合することができる分子と標的リガンドに結合することができない分子を含むため、「標的リガンド」を用いる選択の間にバックグラウンドが有意に低下するであろう。
従来の選択スキームも本発明に従って包含される。同じ最初のポリペプチドレパートリーの複数回の選択を、異なる一般および/または標的リガンドを用いて平行して、または連続的に実施することができる。かくして、このレパートリーを、最初に単一の一般リガンドを用いて選択した後、続いて異なる標的リガンドを用いて平行して選択することができる。次いで、得られたサブセットを別々に、または混合して用いることができるが、その場合、混合したサブセットは広範囲の標的リガンド特異性を有するが、単一の一般リガンド特異性を有するであろう。あるいは、このレパートリーを、最初に単一の標的リガンドを用いて選択した後、続いて異なる一般リガンドを用いて平行して選択することができる。次いで、得られたサブセットを別々に、または混合して用いることができるが、その場合、混合したサブセットは、広範囲の一般リガンド特異性を有するが、単一の標的リガンド特異性を有するであろう。より複雑なスキームの使用も想定される。例えば、最初のレパートリーを、2個の異なる一般リガンドを用いて2ラウンドの選択にかけた後、標的リガンドを用いて選択することができる。これにより、全メンバーが一般リガンドおよび標的リガンドの両方に結合するサブセットが得られる。あるいは、2個の一般リガンドを用いる最初のレパートリーの選択を平行して実施し、得られるサブセットを混合した後、標的リガンドを用いて選択する場合、得られるサブセットは2個の一般リガンドおよび標的リガンドの少なくとも一方に結合する。混合した、またはプールされたレパートリーはサブセットの単純な混合物であってよく、またはサブセットに物理的に結合するように操作することができる。例えば、VHおよびVLポリペプチドを、2個の異なる一般リガンドに結合させることにより平行して個別に選択した後、それらが混合VH-VLとして発現されるような単一のベクター上に遺伝子レベルで混合することができる。次いで、このレパートリーを、選択されたメンバーが一般リガンドおよび標的リガンドの両方に結合することができるように、標的リガンドに対して選択することができる。
本発明は、幅広く上記された方法により選択されるか、または選択可能な機能的ポリペプチドのライブラリー、ならびにこれらの方法に従って実施される選択において用いることができるポリペプチド分子(好ましくは、標的リガンドのための第1の結合部位および一般リガンドのための第2の結合部位を含む分子)をコードする核酸ライブラリーを包含する。さらに、本発明は、本発明に従う一般または標的リガンドを用いて選択された機能的ポリペプチドのレパートリーの1個以上のメンバーを検出し、固定し、精製し、または免疫沈降させる方法を提供する。
本発明は、免疫グロブリンスーパーファミリーの分子のライブラリーの富化に特に適用可能である。これは、機能的であり、所望の特異性を有する抗体およびT細胞受容体の集団を作製する場合には特に真実であり、診断、治療または予防手順における使用にとって必要でもある。この目的のために、本発明は、全てのメンバーが天然のフレームワークおよび公知の主鎖コンフォメーションのループの両方を有する抗体およびT細胞受容体ライブラリー、ならびに出発配列の有用な突然変異誘発およびそのように作製された機能的変異体のその後の選択のための戦略を提供する。そのようなポリペプチドライブラリーは、VHもしくはVβドメインを含むか、またはあるいは、それはVLもしくはVαドメイン、またはさらにはVHもしくはVβとVLもしくはVαドメインの両方を含んでもよい。
当業界においては、抗体またはT細胞受容体分子のライブラリーの改良の有意な必要性が存在する。例えば、「シングルポット」ファージ抗体ライブラリーの作製における進歩にも関わらず、いくつかの問題が依然として残っている。ヒトB細胞から収穫した再編成されたV遺伝子を用いる天然ライブラリー(Marksら(1991) J. Mol. Biol., 222: 581; Vaughanら(1996) Nature Biotech., 14: 309)は、in vivoでのB細胞の陽性および陰性選択に起因して高度に偏っている。これは、再編成されたV遺伝子から構築されたファージライブラリーの有効なサイズを制限し得る。さらに、天然ライブラリーから誘導されたクローンは常に、ヒト治療において用いられる場合、抗体の免疫原性に影響し得るフレームワーク突然変異を含む。合成ライブラリー(Hoogenboom & Winter (1992) J. Mol. Biol., 227: 381; Barbasら(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 4457; Nissimら(1994) EMBO J., 13: 692; Griffithsら(1994) EMBO J., 13: 3245; De Kruifら(1995) J. Mol. Biol., 248: 97)は、偏りの問題を克服することができるが、それらは集合したV遺伝子に塩基対の欠失を導入することが多い長い縮重PCRプライマーの使用を必要とする。また、この高い程度の無作為化は、正確に折り畳むことができず、従って非機能的でもある抗体の作製を誘導し得る。多くの場合、これらの非機能的メンバーはライブラリー中の機能的メンバーより数が多いようである。共通フレームワーク配列を用いて「マスター遺伝子」のセットを合成することにより、ならびに折り畳みおよび発現を改善することが示されたアミノ酸置換を組み込むことにより折り畳みおよび/または発現のためにフレームワークを予め最適化することができる場合でも(WO97/08320, Morphosys)、多くの場合、共通配列は任意の天然フレームワークと一致しないため、依然として免疫原性の問題が残っている。さらに、CDR多様性は折り畳みおよび/または発現の効果も有するため、V遺伝子を完全に集合させた後に折り畳みおよび/発現を最適化する(および任意のフレームシフトもしくは停止コドンを除去する)のが好ましい。
存在するライブラリーに関するさらなる問題は、主鎖コンフォメーションが異種性であり、また好適な高分解能結晶学的データが利用可能ではないため、三次元構造モデリングが困難であることである。これは、天然または合成の抗体ライブラリーから誘導された抗体の大多数が中程度の長さまたは長いループを有し、従ってモデリングすることができないH3領域については特に問題である。
存在するライブラリーに関する別の問題は、発現された抗体フラグメントの検出のためのエピトープタグ(myc、FLAGもしくはHISタグなど)への依存である。これらは通常、抗体フラグメントのNもしくはC末端に位置するので、それらはタンパク質溶解的切断を受けがちである。プロテインAおよびプロテインLなどのスーパー抗原を用いて、折り畳まれたドメイン自体に結合することにより発現された抗体フラグメントを検出することができるが、それらはVHおよびVLファミリーに特異的であるため、比較的小さい割合の存在する抗体ライブラリーのメンバーのみが、これらの試薬の1つに結合し、さらにより小さい割合が両方に結合するであろう。
この目的のために、全て、スーパー抗原であるプロテインAおよびプロテインLなどの一般リガンドに結合することができる、機能的であり、折り畳まれ、よく発現されるメンバーを富化させながら、標的抗原に対する選択を実行する前に、ライブラリーの非機能的またはあまり折り畳まれない/発現されないメンバーを排除する(または少なくともその割合を低下させる)ことができる選択系を有するのが望ましいであろう。さらに、全メンバーが天然フレームワークを有し、公知の主鎖コンフォメーションを有するループを有する抗体ライブラリーを構築するのが有利であろう。
従って、本発明は、ポリペプチドレパートリーを選択して、非機能的メンバーを除去することができる方法を提供する。これは、機能的なライブラリーサイズを低下させることなく、実際のライブラリーサイズの顕著な低下(およびライブラリーの品質の対応する増加)をもたらす。本発明はまた、全ての機能的メンバーが所与の一般リガンドに結合することができる新規ポリペプチドレパートリーを作製する方法も提供する。その後、同じ一般リガンドを、該レパートリーの任意の1個以上のメンバーの検出、固定、精製または免疫沈降に用いることができる。
任意の「ナイーブな」または「免疫」抗体レパートリーを本発明と共に用いて、機能的メンバーを富化し、および/または所与の一般リガンドもしくは複数のリガンドに結合するメンバーを富化することができる。実際、全てのヒト生殖系列VH断片のうち、高い親和性でプロテインAに結合するものはごくわずかな割合に過ぎず、全てのヒト生殖系列VL断片のうち、高い親和性でプロテインLに結合するものはごくわずかな割合に過ぎないため、これらのスーパー抗原を用いる予備選択は非常に有利である。あるいは、エピトープタグを介する予備選択により、非機能的変異体を合成ライブラリーから除去することができる。予備選択の影響を受けやすいライブラリーとしては、限定されるものではないが、Marksら(1991) J. Mol. Biol., 222: 581およびVaughanら(1996) Nature Biotech., 14: 309により記載された型のin vivoで再編成されたV遺伝子から構成されるライブラリー、生殖系列V遺伝子をin vitroで「再編成」させる合成ライブラリー(Hoogenboom & Winter (1992) J. Mol. Biol., 227: 381; Nissimら(1994) EMBO J., 13: 692; Griffithsら(1994) EMBO J., 13: 3245; De Kruifら(1995) J. Mol. Biol., 248: 97)または合成CDRを単一の再編成されたV遺伝子中に(Barbasら(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 4457)、もしくは複数のマスターフレームワーク中に(WO97/08320, Morphosys)組み込む合成ライブラリーが挙げられる。
本発明に従うポリペプチドの選択
ポリペプチドの多様なプールが作製されたら、本発明に従う選択を適用する。2つの広い選択手順は、一般リガンドおよび標的リガンドを適用する順番に基づく;これらのスキーム上での組み合わせの変化は、選択の所与の工程中での複数の一般および/または標的リガンドの使用を含む。組み合わせスキームを用いる場合、ポリペプチド分子のプールを、例えば、いくつかの標的リガンドと、同時に、またはそれぞれ単独に、連続的に接触させる;後者の場合、得られるポリペプチドの選択されたプールを別々に維持するか、または、それ自身をプールしてもよい。これらの選択スキームを、以下のようにまとめることができる。
a.選択手順1:
一般リガンドを用いる最初のポリペプチド選択
ライブラリーの非機能的メンバーを除去するために、一般リガンドが機能的分子によってのみ結合されるように、一般リガンドを選択する。例えば、一般リガンドは、金属イオン、抗体(モノクローナル抗体もしくは抗体のポリクローナル混合物の形態)、酵素/リガンド複合体の半分または有機物質であってよい;これらの型のいずれかのリガンドは、さらに、またはあるいは、本発明に従う標的リガンドとして有用であることに留意されたい。抗体の製造および金属のアフィニティクロマトグラフィーを、以下に詳細に考察する。理想的には、これらのリガンドは、定常構造もしくは配列のものであるライブラリーのメンバー上の部位(例えば、ペプチドタグもしくはスーパー抗原結合部位)に結合し、その構造は非機能的メンバーにおいては存在しないか、または変化している傾向がある。抗体ライブラリーの場合、この方法は、ライブラリーから、所与のスーパー抗原またはモノクローナル抗体の結合部位を有する機能的メンバーのみを選択するのに有用である;そのような手法は、機能的抗体ポリペプチドを、その天然および合成のプールの両方から選択するのに有用である。
スーパー抗原であるプロテインAおよび/またはプロテインLは、それらが、標的リガンドの結合部位の配列および構造に関係なく、それぞれ正確に折り畳まれたVHおよびVLドメイン(特定のVHおよびVLファミリーに属する)に結合するため、抗体レパートリーを選択するための一般リガンドとして本発明において有用である。さらに、プロテインAまたは別のスーパー抗原であるプロテインGは、抗体の重鎖定常ドメインに結合することにより折り畳みおよび/または発現を選択するための一般リガンドとして有用である。抗κおよび抗λ抗体も、軽鎖定常ドメインの選択において有用である。抗体または他の結合タンパク質の小さい有機模倣物質、例えば、プロテインA(Liら(1998) Nature Biotech., 16:190)も有用である。
この選択手順を用いる場合、一般リガンドは、その唯一の性質により、予備選択されたレパートリーの全ての機能的メンバーに結合することができる;従って、この一般リガンド(またはそのいくつかのコンジュゲート)を用いて、該レパートリーに由来する任意のメンバーもしくはメンバーの集団を検出し、固定し、精製するか、または免疫沈降させることができる(以下に考察するように、所与の標的リガンドに結合することにより選択されるかどうか)。免疫アッセイ技術を介するタンパク質の検出ならびに本発明のレパートリーのメンバーポリペプチドの免疫沈降を、本発明において有用な抗体選択リガンドの試験に関して以下に考察される技術により実施することができる(「ポリペプチド選択におけるリガンドとしての使用のための抗体」を参照)。フィルター(例えば、ニトロセルロース製もしくはナイロン製のもの)またはクロマトグラフィー支持体(限定されるものではないが、セルロース、ポリマー、樹脂もしくはシリカ支持体)などの固相支持体もしくは半固相支持体にそれ自身結合した本発明に従う一般もしくは標的リガンドへの、レパートリーのポリペプチドメンバーの特異的結合を介して、固定を実施することができる;一般もしくは標的リガンドへのメンバーポリペプチドの共有結合を、当業者には公知のいくつかの化学的架橋剤のいずれかを用いて実施することができる。金属アフィニティクロマトグラフィー支持体上での固定を、以下に記載する(「ポリペプチドの選択のための使用にとっての金属リガンド」)。精製は、これらの技術のいずれか、または組み合わせ、特に、当業界でよく知られる方法による免疫沈降およびクロマトグラフィーを含んでもよい。
この手法を用いて、複数の一般リガンドを用いる選択を実施して、その後、サブセットを混合することができるように(この場合、予備選択されたレパートリーのメンバーは少なくとも1個の一般リガンドに結合するであろう)、全メンバーが2個以上の一般リガンドに結合するレパートリーを次々と、平行して別々に作製するか、または同じポリペプチド中に別々に組み込んで、それによって全メンバーが予備選択の間に用いられる全ての一般リガンドに結合することができる大きい機能的ライブラリーを作製することができる。例えば、抗体分子の重鎖および軽鎖に結合する様々な一般リガンドを用いて1個以上のライブラリーからサブセットを選択した後(以下を参照)、混合して、重鎖および軽鎖が、例えば、一本鎖Fc内容物中のVHおよびVLドメインを用いることにより、非共有結合するか、または共有結合する、重鎖/軽鎖ライブラリーを形成させることができる。
標的リガンドを用いる2回目のポリペプチド選択
一般リガンドを用いる選択工程の後、ライブラリーをスクリーニングして、標的リガンドに結合するメンバーを同定する。一般リガンドを用いる選択後、機能的ポリペプチドが富化されるため、標的リガンドを用いる選択中に非特異的(「バックグラウンド」)結合の有利な低下が存在するであろう。さらに、一般リガンドを用いる選択は、機能的ライブラリーサイズを低下させることなく、実際のライブラリーサイズの顕著な低下(およびライブラリーの品質における対応する増加)をもたらすため、より小さいレパートリーは、より大きい出発レパートリー(多くの非機能的およびあまり折り畳まれない/発現されないメンバーを含む)と同じ多様性の標的リガンド特異性および親和性を引き出すべきである。
1個以上の標的リガンドを用いて、一般リガンドを用いて作製された最初に選択されたポリペプチドプールから、ポリペプチドを選択することができる。2個以上の標的リガンドを用いて、いくつかの異なるサブセットを作製する事象においては、2個以上のこれらのサブセットを混合して、単一の、より複雑なサブセットを形成させることができる。単一の一般リガンドは、得られる混合サブセットの全てのメンバーに結合することができる;しかしながら、所与の標的リガンドは、ライブラリーメンバーのサブセットにのみ結合する。
b.選択手順2:
標的リガンドを用いるレパートリーメンバーの最初の選択
ここで、標的リガンドを用いる選択を、一般リガンドを用いる選択の前に実施する。明らかに、同じセットのポリペプチドは、そのような結果が望ましい場合、いずれかのスキームから生じ得る。この手法を用いて、複数の標的リガンドを平行して、または選択のために標的リガンドを混合することにより実施することができる。平行して実施する場合、得られるサブセットを、必要に応じて、混合することができる。
一般リガンドを用いる2回目のポリペプチド選択
次いで、標的リガンド結合サブセットのその後の選択を、1個以上の一般リガンドを用いて実施することができる。標的リガンドに結合することができるレパートリーのメンバーは定義によれば機能的であるため、これは機能に関する選択ではないが、異なる一般リガンドに結合するサブセットを単離することができる。かくして、標的リガンドにより選択された集団を、1個の一般リガンドまたは2個以上の一般リガンドによって選択することができる。この場合、一般リガンドを用いて、標的リガンドに結合する異なる(しかしおそらく重複する)サブセットおよび異なる一般リガンドが作製されるように、全メンバーが標的リガンドおよび2個以上の一般リガンドに結合するレパートリーを、次々に作製するか、または平行して、連続的に作製することができる。次いで、これらを混合することができる(この場合、メンバーは少なくとも1個の一般リガンドに結合するであろう)。
免疫グロブリンファミリーポリペプチドライブラリーメンバーの選択
本発明において選択されたレパートリーまたはライブラリーのメンバーは、有利には、免疫グロブリンスーパーファミリーの分子、特に、抗体ポリペプチドまたはT細胞受容体ポリペプチドに属する。抗体については、本発明に従う方法を、当業界で公知の存在する抗体ライブラリーのいずれか(天然であっても合成であってもよい)または一般リガンドを用いて予備選択されるように特異的に設計された抗体ライブラリーに適用することができる(以下を参照)。
本発明のライブラリーの構築
a.主鎖コンフォメーションの選択
免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーは全て、そのポリペプチド鎖について類似する折り畳み特性を有する。例えば、抗体はその一次配列の点で高度に多様性であるが、配列および結晶構造の比較により、予想に反して、抗体の6個の抗原結合ループのうちの5個(H1、H2、L1、L2、およびL3)が限られた数の主鎖コンフォメーション、または標準構造(ChothiaおよびLesk(1987)上掲;Chothiaら(1989)上掲)を採用することが示された。従って、ループ長および重要残基の分析により、ヒト抗体の大部分において認められるH1、H2、L1、L2およびL3の主鎖コンフォメーションの推測が可能になった(Chothiaら(1992) 上掲; Tomlinsonら(1995)上掲; Williamsら(1996)上掲)。H3領域は、配列、長さおよび構造の点でより多様であるが(D断片の使用に起因する)、それも特定の残基の長さおよび存在、またはループ中の重要な位置での残基の型ならびに抗体フレームワークに依存する、短いループ長に関する限られた数の主鎖コンフォメーションを形成する(Marinら(1996)上掲;Shiraiら(1996)上掲)。
本発明に従って、特定のループ長および重要残基を選択して、メンバーの主鎖コンフォメーションが公知であることを確保するように、抗体ポリペプチドのライブラリーを設計する。有利には、これらは、上記で考察されるように、それらが非機能的である機会を最小化するための、天然に見いだされる免疫グロブリンスーパーファミリー分子の現実のコンフォメーションである。生殖系列V遺伝子断片は、抗体またはT細胞受容体ライブラリーを構築するための1つの好適な基礎的フレームワークとして役立つ;他の配列も有用である。少数の機能的メンバーが、その機能に影響しない変化した主鎖コンフォメーションを有してもよいように、変異が低い頻度で起こってもよい。
抗体によりコードされた異なる主鎖コンフォメーションの数を評価し、抗体配列に基づいて主鎖コンフォメーションを予測し、標準構造に影響しない多様性のための残基を選択する標準構造理論も、本発明において有用である。ヒトVκドメインにおいて、L1ループは4個の標準構造のうちの1個を採用することができ、L2ループは単一の標準構造を有し、90%のヒトVκドメインはL3ループの4個もしくは5個の標準構造のうちの1個を採用することが今や公知である(Tomlinsonら(1995)上掲);かくして、Vκドメイン単独においては、異なる標準構造を混合して、様々な異なる主鎖コンフォメーションを作製することができる。VλドメインがL1、L2およびL3ループの異なる範囲の標準構造をコードし、VκおよびVλドメインがH1およびH2ループのいくつかの標準構造をコードすることができる任意のVHドメインと対形成することができるとすれば、これらの5個のループについて観察される標準構造の組み合わせの数は非常に大きい。これは、主鎖コンフォメーションにおける多様性の生成が、広範囲の結合特異性の生成にとって必須であることを暗示している。しかしながら、単一の公知の主鎖コンフォメーションに基づいて抗体ライブラリーを構築することにより、予想に反して、主鎖コンフォメーションにおける多様性は、実質的に全ての抗原を標的化するのに十分な多様性をもたらす必要がないことが判明した。さらにより驚くべきことに、単一の主鎖コンフォメーションは共通構造である必要はなく、単一の天然コンフォメーションを、ライブラリー全体の基礎として用いることができる。かくして、好ましい態様においては、本発明は、メンバーが単一の公知の主鎖コンフォメーションをコードするライブラリーを提供する。しかしながら、少数の機能的メンバーが、未知であってもよい代替的な主鎖コンフォメーションを有してもよいように、偶発的な変異が起こってもよいことが理解されるべきである。
選択される単一の主鎖コンフォメーションは、問題の免疫グロブリンスーパーファミリー型の分子間で一般的であるのが好ましい。有意な数の天然分子がそれを採用することが観察される場合、コンフォメーションは一般的である。従って、本発明の好ましい態様においては、免疫グロブリンスーパーファミリー分子のそれぞれの結合ループについて異なる主鎖コンフォメーションの自然発生率を別々に考慮し、次いで、異なるループについて所望の組み合わせの主鎖コンフォメーションを有する天然の免疫グロブリンスーパーファミリー分子を選択する。利用可能なものがない場合、もっとも近い等価物を選択することができる。従来技術の免疫グロブリンファミリーポリペプチドライブラリーの欠点は、抗体またはT細胞受容体の場合、多くのメンバーが非天然フレームワークを有するか、またはフレームワーク突然変異(上記を参照)を含むことであるため、異なるループについての主鎖コンフォメーションの所望の組み合わせを、所望の主鎖コンフォメーションをコードする生殖系列遺伝子断片を選択することにより作製することが好ましい。選択された生殖系列遺伝子断片を頻繁に発現させることがより好ましく、それらを最も頻繁に発現させることが最も好ましい。
従って、抗体ライブラリーの設計においては、6個の抗原結合ループの各々に関する異なる主鎖コンフォメーションの発生率を、別々に考慮することができる。H1、H2、L1、L2およびL3については、天然分子の抗原結合ループの20%〜100%により採用される所与のコンフォメーションを選択する。典型的には、その観察される発生率は、35%以上(すなわち、35%〜100%)、理想的には、50%以上またはさらには65%以上である。H3ループの大多数は標準構造を有さないため、標準構造を示すこれらのループ間で一般的である主鎖コンフォメーションを選択することが好ましい。従って、それぞれのループに関して、天然のレパートリー中で最も頻繁に観察されるコンフォメーションを選択する。ヒト抗体においては、それぞれのループの最もよくある標準構造(CS)は以下の通りである:H1-CS1(発現されるレパートリーの79%)、H2-CS3(46%)、VκのL1-CS2(39%)、L2-CS1(100%)、VκのL3-CS1(36%)、計算は70:30のκ:λ比と仮定する、Hoodら(1967) Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol., 48: 133。標準構造を有するH3ループについては、残基94〜残基101の塩架橋を有する7個の残基のCDR3長(Kabatら(1991)「免疫学的に興味あるタンパク質の配列(Sequences of proteins of immunological interest)」、U.S. Department of Health and Human Services)が、最も一般的であるようである。このコンフォメーションを形成するのに必要なH3の長さおよび重要残基ならびに抗体モデリングの基礎として用いることができるタンパク質データバンクにおける少なくとも2個の結晶構造(2cgrおよび1tet)を有するEMBLデータライブラリーには少なくとも16個のヒト抗体配列が存在する。標準構造のこの組み合わせを含む最も頻繁に発現される生殖系列遺伝子断片は、VH断片3〜23(DP-47)、JH断片JH4b、Vκ断片O2/O12(DPK9)およびJκ断片Jκ1である。従って、これらの断片を、所望の単一主鎖コンフォメーションを有するライブラリーを構築するための基礎として組み合わせて用いることができる。
あるいは、それぞれの結合ループの異なる主鎖コンフォメーションの自然発生に基づいて単一主鎖コンフォメーションを単独で選択する代わりに、主鎖コンフォメーションの組み合わせの自然発生を、単一主鎖コンフォメーションを選択するための基礎として用いる。抗体の場合、例えば、抗原結合ループの任意の2、3、4、5個または6個全部の標準構造の組み合わせの自然発生を決定することができる。ここで、選択されたコンフォメーションは天然抗体において一般的であるのが好ましく、天然のレパートリーにおいて最も頻繁に観察されるのが最も好ましい。かくして、ヒト抗体においては、例えば、5個の抗原結合ループ、H1、H2、L1、L2およびL3の天然の組み合わせを考慮する場合、標準構造の最も頻繁な組み合わせを決定した後、単一主鎖コンフォメーションを選択するための基礎として、H3ループの最もよくあるコンフォメーションと組み合わせる。
b.標準配列の多様性
いくつかの公知の主鎖コンフォメーション、または好ましくは、単一の公知の主鎖コンフォメーションを選択したら、分子の結合部位を変化させて、構造敵および/または機能的多様性を有するレパートリーを作製することにより、本発明のライブラリーを構築する。これは、変異体が様々な活性を提供することができるように、その構造および/またはその機能において十分な多様性を有するように作製されることを意味する。例えば、問題のポリペプチドが細胞表面受容体である場合、それらは標的リガンド結合特異性の多様性を有してもよい。
典型的には、選択された分子を1個以上の位置で変化させることにより、所望の多様性を作製する。変化させる位置を無作為に選択することができるが、好ましくは選択する。次いで、常在アミノ酸を、天然もしくは合成の任意のアミノ酸もしくはその類似体により置換する間の無作為化により、非常に多数の変異体を作製するか、または常在アミノ酸を1個以上の規定のサブセットのアミノ酸と置換し、より限られた数の変異体を作製することにより、変異を達成することができる。
そのような多様性を導入するために、様々な方法が報告されている。変異性PCR(Hawkinsら(1992) J. Mol. Biol., 226: 889)、化学的突然変異誘発(Dengら(1994) J. Biol. Chem., 269: 9533)または細菌突然変異誘発株(Lowら(1996) J. Mol. Biol., 260: 359)を用いて、前記分子をコードする遺伝子に無作為な突然変異を導入することができる。選択された位置を突然変異させる方法も当業界でよく知られており、PCRを使用するか、または使用しない、不一致のオリゴヌクレオチドまたは縮重オリゴヌクレオチドの使用を含む。例えば、いくつかの合成抗体ライブラリーを、突然変異を抗原結合ループに標的化することにより作製した。ヒト破傷風トキソイドに結合するFabのH3領域を無作為化して、様々な新しい結合特異性を作製した(Barbasら(1992)上掲)。無作為または半無作為のH3およびL3領域を生殖系列V遺伝子断片に付加して、突然変異していないフレームワーク領域を有する大きいライブラリーを作製した(HoogenboomおよびWinter (1992)上掲; Nissimら(1994)上掲; Griffithsら(1994)上掲; De Kruifら(1995)上掲)。そのような多様性を、他の抗原結合ループのいくつか、または全部を含むように拡張した(Crameriら(1996) Nature Med., 2: 100; Riechmannら(1995) Bio/Technology, 13: 475; Morphosys, WO97/08320,上掲)。
ループの無作為化は、H3のみについてはほぼ1015個の構造を作製し、他の5個のループについては同様に多数の変異体を作製する潜在能力を有するため、現在の形質転換技術を用いるか、または無細胞系を用いることにより、全ての可能な組み合わせを代表するライブラリーを製造することは実現可能ではない。例えば、現在まで構築された最も大きいライブラリーの1つにおいては、この設計のライブラリーにとってほんのわずかな潜在的な多様性を有する6 x 1010個の異なる抗体が作製された(Griffithsら(1994)上掲)。
非機能的メンバーの除去および単一の公知の主鎖コンフォメーションの使用に加えて、本発明は、所望の機能の分子の作製または改変に直接関与する残基のみを多様化することにより、これらの制限に対処する。多くの分子については、前記機能は、標的リガンドに結合することであり、従って、分子の全体のパッキングにとって、または選択した主鎖コンフォメーションの維持にとって重要である残基の変化を回避しながら、標的リガンド結合部位に多様性を集中させるべきである;従って、本発明は、変化させる選択された位置が、標的リガンドの結合部位を構成するものであってよいライブラリーを提供する。
抗体に適用される標準配列の多様性
抗体ライブラリーの場合、標的リガンドの結合部位は抗原結合部位であることが最も多い、かくして、高度に好ましい態様においては、本発明は、抗原結合部位中の残基のみが変化した抗体ライブラリーを提供する。これらの残基はヒト抗体レパートリー中で極端に多様性であり、高分解能で抗体/抗原複合体における接触を作ることが知られている。例えば、L2においては、位置50および53は、天然の抗体において異なっており、前記抗原と接触させることが観察されることが知られている。対照的に、従来の手法は、Kabatら(1991、上掲)により定義されるように、対応する相補性決定領域(CDR1)における全ての残基を多様化させたが、いくつかの手法は、本発明に従うライブラリー中で多様化された2つと比較して7残基を多様化させた。これは、様々な抗原結合特異性を作製するのに必要とされる機能的多様性の点での有意な改善を示している。
天然では、抗体の多様性は2つのプロセスの結果:ナイーブな初期レパートリーを作製する生殖系列V、DおよびJ遺伝子断片の体細胞組換え(いわゆる生殖系列と結合多様性)ならびに得られる再編成されたV遺伝子の体細胞超変異である。ヒト抗体配列の分析により、初期レパートリーにおける多様性は抗原結合部位の中心に集中するが、体細胞超変異は初期レパートリー中で高度に保存される抗原結合部位の周辺部の領域に多様性を広げることが示された(Tomlinsonら(1996)上掲)。この相補性はおそらく、配列空間を検索するための有効な戦略として進化し、見かけは抗体にとってユニークであるが、本発明に従う他のポリペプチドレパートリーに容易に適用することができる。本発明に従えば、変化させる残基は、標的リガンドの結合部位を形成するもののサブセットである。標的リガンド結合部位中の残基の異なる(重複するものなど)サブセットを、必要に応じて、選択の間に異なる段階で多様化させる。
抗体レパートリーの場合、本発明の2工程プロセスは、ヒト免疫系における抗体の成熟と類似している。抗原結合部位の全てではないが、いくつかの残基を多様化させる最初の「ナイーブな」レパートリーを作製する。この意味で本明細書で用いられる用語「ナイーブな」とは、所定の標的リガンドを有さない抗体分子を指す。これらの分子は、免疫系が様々な抗原刺激によりまだチャレンジされていない胎児および新生児の個体と同様に、免疫多様化を受けなかった個体の免疫グロブリン遺伝子によりコードされるものに類似する。次いで、このレパートリーを、様々な抗原に対して選択する。必要に応じて、その後、さらなる多様性を、最初のレパートリー中で多様化された領域の外側に導入することができる。この成熟したレパートリーを、改変された機能、特異性または親和性のために選択することができる。
本発明は、抗原結合部位中の残基のいくつか、または全部を変化させた、2つの異なるナイーブな抗体のレパートリーを提供する。「初期」ライブラリーは、生殖系列V遺伝子断片中で多様である(生殖系列多様性)か、または組換えプロセスの間に多様化される(結合多様性)抗原結合部位の中心の残基に限定された多様性を有する天然の初期レパートリーを模倣する。多様化されるこれらの残基としては、限定されるものではないが、H50、H52、H52a、H53、H55、H56、H58、H95、H96、H97、H98、L50、L53、L91、L92、L93、L94およびL96が挙げられる。「体細胞」ライブラリーにおいては、多様性は、組換えプロセスの間に多様化される(結合多様性)か、または高度に体細胞突然変異される残基に限定される。多様化されるこれらの残基としては、限定されるものではないが、H31、H33、H35、H95、H96、H97、H98、L30、L31、L32、L34およびL96が挙げられる。これらのライブラリーにおける多様化にとって好適なものとして上に列挙された残基は全て、1個以上の抗体-抗原複合体中で接触を作ることが知られている。両ライブラリーにおいて、抗原結合部位中の残基は全部変化するわけではないため、そうすることが望ましい場合、残りの残基を変化させることにより、選択の間にさらなる多様性を組み込む。これらの残基(または抗原結合部位を含むさらなる残基)のいずれかの任意のサブセットを、抗原結合部位の最初の、および/またはその後の多様化に用いることができることは当業者には明らかであろう。
本発明に従うライブラリーの構築においては、典型的には、選択された位置の多様化を、いくつかの可能なアミノ酸(20個全部またはそのサブセット)をその位置に組み込むことができるように、ポリペプチドの配列を特定するコード配列を変化させることにより、核酸レベルで達成する。IUPAC命名法を用いれば、最も多用途のコドンは、全てのアミノ酸をコードするNNKならびにTAG停止コドンである。NNKコドンを用いて、必要な多様性を導入するのが好ましい。さらなる停止コドンTGAおよびTAAの産生をもたらすNNNコドンなどの、同じ目的を達成する他のコドンも有用である。
ヒト抗体の抗原結合部位における側鎖多様性の特徴は、特定のアミノ酸残基を好む顕著な偏りである。VH、VκおよびVλ領域のそれぞれにおける10個の最も多様性のある位置のアミノ酸組成を合計する場合、76%を超える側鎖多様性が7個の異なる残基にのみ由来するものであり、これらは、セリン(24%)、チロシン(14%)、アスパラギン(11%)、グリシン(9%)、アラニン(7%)、アスパラギン酸(6%)およびトレオニン(6%)である。主鎖可撓性を提供することができる親水性残基および小さい残基に向かうこの偏りはおそらく、様々な抗原に結合しやすくなる表面の進化を反映するものであり、初期レパートリーにおける抗体の必要な乱雑性を説明するのに役立つかもしれない。
アミノ酸のこの分布を模倣するのが好ましいので、本発明は、変化させる位置でのアミノ酸の分布が、抗体の抗原結合部位において認められるものを模倣するライブラリーを提供する。様々な標的リガンドに対する特定のポリペプチド(抗体ポリペプチドだけではない)の選択を許容するアミノ酸の置換におけるそのような偏りは、本発明に従う任意のポリペプチドレパートリーに容易に適用される。変化させる位置でのアミノ酸分布を偏らせる様々な方法が存在し(トリヌクレオチド突然変異誘発の使用など、WO97/08320, Morphosys,上掲)、好ましい方法は、合成の容易性に起因して、従来の縮重コドンの使用である。縮重コドンの全ての組み合わせ(それぞれの位置で等しい比率での単独、二重、三重および四重の縮重性)によりコードされるアミノ酸プロフィールを、天然のアミノ酸使用と比較することにより、最も代表的なコドンを計算することができる。コドン(AGT)(AGC)T、(AGT)(AGC)Cおよび(AGT)(AGC)(CT)、すなわち、IUPAC命名法を用いる場合、それぞれDVT、DVCおよびDVYは、所望のアミノ酸プロフィールに最も近いものである:それらは、22%のセリンならびに11%のチロシン、アスパラギン、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、トレオニンおよびシステインをコードする。従って、好ましくは、多様化した位置のそれぞれにおいて、DVT、DVCまたはDVYコドンを用いてライブラリーを構築する。
上述のように、本発明に従う抗体ライブラリーを作り上げるポリペプチドは、全抗体またはFab、F(ab')2、FvもしくはscFvフラグメントなどのそのフラグメント、または別々のVHもしくはVLドメインであってもよく、そのいずれも改変されていても、もしくは改変されていなくてもよい。これらのうち、一本鎖Fvフラグメント、またはscFvは、特に有用である。scFvフラグメント、ならびに他の抗体ポリペプチドは、当業界でよく知られた抗体工学法により確実に作製される。scFvは、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)3または等価なリンカーペプチドなどの好適に設計されたリンカーペプチドをコードするオリゴヌクレオチドを用いてVHおよびVL遺伝子を接続することにより形成される。このリンカーは、第1のV領域のC末端と、第2のV領域のN末端とを架橋し、VH-リンカー-VLまたはVL-リンカー-VHとして順番付けられる。原理的には、scFvの結合部位は、対応する全抗体の特異性を忠実に再現し、その逆もまた然りである。
Fv、FabおよびF(ab')2フラグメント、ならびにキメラ抗体分子の構築のための同様の技術は、当業界でよく知られている。Fvフラグメントを発現させる場合、正確な折り畳みおよび結合を確保するために、予防措置を取るべきである。FabおよびF(ab')2フラグメントについては、VHおよびVLポリペプチドを定常領域断片と混合し、これを再編成された遺伝子、生殖系列C遺伝子から単離するか、またはV領域断片についてと同じ抗体配列データから合成することができる。本発明に従うライブラリーはVHまたはVLライブラリーであってよい。かくして、単一のVHおよびVLドメインを含む別々のライブラリーを構築することができ、必要に応じて、それぞれ、CHまたはCLドメインを含み、Dab分子を作製してもよい。
c.本発明に従うライブラリーベクター系
本発明に従うライブラリーを、一般および/もしくは標的リガンドを用いる直接的スクリーニングに用いるか、または遺伝子展示パッケージを含む選択プロトコルにおいて用いることができる。
バクテリオファージλ発現系を、バクテリオファージプラークまたは溶原菌のコロニーとして直接スクリーニングすることができるが、これらは両方とも以前に記載されており(Huseら(1989) Science, 246: 1275; CatonおよびKoprowski (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 87; Mullinaxら(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 87: 8095; Perssonら(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 88: 2432)、本発明において有用である。そのような発現系を用いて、最大106個の異なるメンバーのライブラリーをスクリーニングすることができるが、それらは現実にはより多数(106個を超えるメンバー)のスクリーニングには適していない。他のスクリーニング系は、例えば、ライブラリーメンバーの直接的化学合成に依るものである。1つの初期方法は、WO84/03564に記載のものなどの、ピンまたはロッドのセット上でのペプチドの合成を含む。各ビーズが個々のライブラリーメンバーであるペプチドライブラリーを形成する、ビーズ上でのペプチド合成を含む同様の方法は、米国特許第4,631,211号に記載されており、関連する方法はWO02/00091に記載されている。ビーズに基づく方法の有意な改善は、各ビーズを、オリゴヌクレオチドなどのユニークな識別子タグでタグ付けし、それぞれのライブラリーメンバーのアミノ酸配列の同定を容易にすることを含む。これらの改善されたビーズに基づく方法は、WO93/06121に記載されている。
別の化学合成法は、それぞれ異なるライブラリーメンバー(例えば、ユニークなペプチド配列)を、アレイ中の別の予め定義された位置に置く様式での、表面上でのペプチド(またはペプチド模倣物質)のアレイの合成を含む。各ライブラリーメンバーの同一性を、該アレイ中のその空間的位置により決定する。所定の分子(例えば、受容体)と反応性ライブラリーメンバーの間の結合相互作用が起こる前記アレイ中の位置を決定し、それによって空間的位置に基づいて反応性ライブラリーメンバーの配列を同定する。これらの方法は、米国特許第5,143,854号;WO90/15080およびWO92/10092;Fodorら(1991) Science, 251:767; DowerおよびFodor(1991) Ann. Rep. Med. Chem., 26:271に記載されている。
本発明のライブラリーの構築において特に有用なものは、それが発現するポリペプチドに核酸を連結することができる選択ディスプレイ系である。本明細書で用いられる選択ディスプレイ系は、一般および/または標的リガンドに結合することによりライブラリーの個々のメンバーの、好適な展示手段による選択を許容する系である。
本発明に従うライブラリーと共に、任意の選択ディスプレイ系を用いることができる。ファージディスプレイ技術により典型化されるような、大きいライブラリーの所望のメンバーを単離するための選択プロトコルが当業界で公知である。多様なペプチド配列を線維性バクテリオファージの表面上に展示するそのような系(ScottおよびSmith(1990)上掲)は、標的抗原に結合する特定の抗体フラグメントのin vitroでの選択および増幅のための抗体フラグメント(およびそれをコードするヌクレオチド配列)のライブラリーを作製するのに有用であることが証明された。VHおよびVL領域をコードするヌクレオチド配列を、それらを大腸菌のペリプラズム空間に指向させるリーダー配列をコードする遺伝子断片に連結し、結果として、得られる抗体フラグメントを、典型的には、バクテリオファージコートタンパク質(例えば、pIIIまたはpVIII)との融合物として、バクテリオファージの表面上に展示させる。あるいは、抗体フラグメントを、λファージキャプシド(ファージ体)上で外部的に展示する。ファージに基づくディスプレイ系の利点は、それらが生物系であるため、選択されたライブラリーメンバーを、細菌細胞中で選択されたライブラリーメンバーを含むファージを増殖させることにより簡単に増幅することができることである。さらに、ポリペプチドライブラリーメンバーをコードするヌクレオチド配列はファージまたはファージミドベクター上に含まれるため、配列決定、発現およびその後の遺伝子操作が比較的容易である。
バクテリオファージ抗体ディスプレイライブラリーおよびλファージ発現ライブラリーの構築のための方法は、当業界でよく知られている(McCaffertyら(1990) 上掲; Kangら(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 88: 4363; Clacksonら(1991) Nature, 352: 624; Lowmanら(1991) Biochemistry, 30: 10832; Burtonら(1991) Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A., 88: 10134; Hoogenboomら(1991) Nucleic Acids Res., 19: 4133; Changら(1991) J. Immunol., 147: 3610; Breitlingら(1991) Gene, 104: 147; Marksら(1991) 上掲; Barbasら(1992) 上掲; HawkinsおよびWinter (1992) J. Immunol., 22: 867; Marksら、1992, J. Biol. Chem., 267: 16007; Lernerら(1992) Science, 258: 1313、参照により本明細書に組み入れられるものとする)。
1つの特に有利な手法は、scFvファージライブラリーの使用であった(Hustonら、1988, Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A., 85: 5879-5883; Chaudharyら(1990) Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A., 87: 1066-1070; McCaffertyら(1990)上掲; Clacksonら(1991)上掲; Marksら(1991) 上掲; Chiswellら(1992) Trends Biotech., 10: 80; Marksら(1992)上掲)。バクテリオファージコートタンパク質上に展示されるscFvライブラリーの様々な実施形態が記載されている。ファージディスプレイ手法の改良版も公知であり、例えば、WO96/06213およびWO92/01047 (Medical Research Councilら)ならびにWO97/08320 (Morphosys、上掲)に記載されており、それらは参照により本明細書に組み入れられるものとする。
ポリペプチドまたはヌクレオチドのライブラリーを作製するための他の系は、ライブラリーメンバーのin vitroでの合成のための無細胞酵素機構の使用を含む。1つの方法においては、標的リガンドに対する別のラウンドの選択およびPCR増幅により、RNA分子を選択する(TuerkおよびGold (1990) Science, 249: 505; EllingtonおよびSzostak (1990) Nature, 346: 818)。同様の技術を用いて、所定のヒト転写因子に結合するDNA配列を同定することができる(ThiesenおよびBach (1990) Nucleic Acids Res., 18: 3203; BeaudryおよびJoyce (1992) Science, 257: 635; WO92/05258およびWO92/14843)。同様の様式で、in vitroでの翻訳を用いて、大きいライブラリーを作製する方法としてポリペプチドを合成することができる。一般的に、安定化されたポリソーム複合体を含むこれらの方法は、WO88/08453、WO90/05785、WO90/07003、WO91/02076、WO91/05058、およびWO92/02536にさらに記載されている。WO95/22625およびWO95/11922(Affymax)に開示されたものなどの、ファージに基づかない代替的なディスプレイ系は、選択のためのポリペプチドを展示するポリソームを使用する。これらの、および先述の書類も全て、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
従って、本発明は、ポリペプチドのレパートリーから、所望の一般および/または標的リガンド結合部位を有するポリペプチドを選択する方法であって、
a)本発明の先述の態様に記載のライブラリーを発現させる工程;
b)該ポリペプチドを、一般および/または標的リガンドと接触させ、一般および/または標的リガンドに結合するものを選択する工程;ならびに
c)必要に応じて、一般および/または標的リガンドに結合する選択されたポリペプチドを増幅する工程;
d)必要に応じて、工程a)〜c)を繰り返す工程、
を含む前記方法を提供する。
好ましくは、工程a)〜d)を、ファージディスプレイ系を用いて実施する。
本発明は、一般および標的リガンドの両方のための結合部位を有するポリペプチドのライブラリーを提供するので、上記の選択方法を、一般リガンドまたは標的リガンドを用いる選択に適用することができる。かくして、最初のライブラリーを、一般リガンド、次いで標的リガンドを用いて、または標的リガンド、次いで一般リガンドを用いて選択することができる。本発明はまた、標的リガンドを用いる選択の前後に、異なる一般リガンドを平行して、または連続的に用いる複数の選択も提供する。
好ましくは、本発明に従う方法はさらに、選択されたポリペプチドを、さらなる変異(本明細書に記載されたもの)にかける工程および工程a)〜d)を繰り返す工程を含む。
一般リガンドは、まさにその本質から、一般リガンドを用いて選択された全てのライブラリーメンバーに結合することができるため、本発明に従う方法は、ライブラリーに由来する任意の機能的メンバーもしくはメンバーの集団を検出し、固定し、精製するか、または免疫沈降させる(標的リガンドに結合することにより選択されるかどうかに関わらず)ための一般リガンド(もしくはそのいくつかのコンジュゲート)の使用をさらに含む。
本発明は、メンバーが公知の主鎖コンフォメーションを有するライブラリーを提供するため、本発明に従う方法は、ライブラリーの任意の機能的メンバーの三次元構造モデルの作製(標的リガンドに結合することにより選択されるかどうかに関わらず)をさらに含む。好ましくは、そのようなモデルの構築は、相同性モデリングおよび/または分子置換を含む。主鎖コンフォメーションの準備モデルを、ポリペプチド配列と公知の三次元構造の配列との比較により、二次構造予測により、または構造ライブラリーのスクリーニングにより作製することができる。コンピューターソフトウェアを用いて、ポリペプチドの二次構造を予測することもできる。変化した位置での側鎖のコンフォメーションを予測するために、側鎖回転異性体ライブラリーを用いることができる。
一般的には、本発明の実施に必要とされる核酸分子およびベクター構築物は、当業界で入手可能であり、Sambrookら(1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, USAなどの標準的な実験室マニュアルに記載のように構築および操作することができる。
本発明における核酸の操作を、典型的には、組換えベクター中で実行する。本明細書で用いる、ベクターとは、その発現および/または複製のために異種DNAを細胞中に導入するのに用いられる別個のエレメントを指す。そのようなベクターを選択または構築し、続いて、使用する方法は、当業者にはよく知られている。細菌プラスミド、バクテリオファージ、人工染色体およびエピソームベクターなどの多くのベクターが公共的に利用可能である。そのようなベクターを、単純なクローニングおよび突然変異誘発に用いることができる;あるいは、本発明のレパートリー(または予備レパートリー)メンバーを実行する典型的なベクターと同様、遺伝子発現ベクターを用いる。本発明に従う使用のベクターを選択して、所望のサイズ、典型的には、長さ0.25キロベース(kb)〜40 kbのポリペプチドコード配列を適応させることができる。好適な宿主細胞を、in vitroでクローニング操作を行った後、ベクターで形質転換する。それぞれのベクターは、一般的には、クローニング(または「ポリリンカー」)部位、複製起点および少なくとも1個の選択マーカー遺伝子を含む、種々の機能的成分を含む。所与のベクターが発現ベクターである場合、それはさらに、本発明に従うポリペプチドレパートリーメンバーをコードする遺伝子に機能し得る形で連結されるように、それぞれクローニング部位の近くに位置する以下のもの:エンハンサーエレメント、プロモーター、転写集結配列およびシグナル配列のうちの1個以上を有する。
クローニングおよび発現ベクターは両方とも、一般的には、1種以上の選択された宿主細胞中での該ベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。典型的には、クローニングベクター中で、この配列は宿主の染色体DNAと関係なく該ベクターの複製を可能にするものであり、複製起点または自己複製配列を含む。そのような配列は、様々な細菌、酵母およびウイルスについてよく知られている。プラスミドpBR322に由来する複製起点は、多くのグラム陰性細菌にとって好適であり、2ミクロンプラスミド起点は酵母にとって好適であり、種々のウイルス起点(例えば、SV40、アデノウイルス)は哺乳動物細胞中でのクローニングベクターにとって有用である。一般的には、複製起点は、それらがCOS細胞などの、高レベルのDNAを複製することができる哺乳動物細胞中で用いられる場合を除いて、哺乳動物発現ベクターにとっては必要ない。
有利には、クローニングまたは発現ベクターは、選択マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含んでもよい。この遺伝子は、選択的培養培地中で増殖される形質転換された宿主細胞の生存または増殖にとって必要なタンパク質をコードする。従って、選択遺伝子を含むベクターで形質転換されなかった宿主細胞は、この培養培地中で生存しないであろう。典型的な選択遺伝子は、抗生物質および他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサートもしくはテトラサイクリン、補体栄養要求欠乏に対する耐性を付与するか、または増殖培地中で利用可能でない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
本発明に従うベクターの複製は、大腸菌中で最も都合よく実施されるため、大腸菌選択マーカー、例えば、抗生物質アンピシリンに対する耐性を付与するβ-ラクタマーゼ遺伝子が有用である。これらを、pBR322またはpUC18もしくはpUC19などのpUCプラスミドなどの大腸菌プラスミドから取得することができる。
通常、発現ベクターは、宿主生物によって認識され、目的のコード配列に機能し得る形で連結されたプロモーターを含む。そのようなプロモーターは、誘導性であっても構成的であってもよい。用語「機能し得る形で連結された」とは、記載の成分が、その意図される様式で機能することを許容する関係にある連結を指す。コード配列に「機能し得る形で連結された」制御配列を、該コード配列の発現が該制御配列と適合可能な条件下で達成されるような様式で連結する。
原核宿主と共に用いるのに好適なプロモーターとしては、例えば、β-ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系およびtacプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが挙げられる。また、細菌系における使用のためのプロモーターは、一般的には、コード配列に機能し得る形で連結されたShine-Dalgarno配列を含むであろう。
本発明に従うライブラリーにおいては、好ましいベクターは、ポリペプチドライブラリーメンバーに対応するヌクレオチド配列の発現を可能にする発現ベクターである。かくして、一般および/または標的リガンドを用いる選択を、ポリペプチドライブラリーメンバーを発現する単一クローンの別々の増殖および発現により、または任意の選択ディスプレイ系の使用により実施することができる。上記のように、好ましい選択ディスプレイ系はバクテリオファージディスプレイである。かくして、ファージまたはファージミドベクターを用いることができる。好ましいベクターは、大腸菌の複製起点(二本鎖の複製のため)およびまたファージの複製起点(一本鎖DNAの作製のため)を有するファージミドベクターである。そのようなベクターの操作および発現は当業界でよく知られている(HoogenboomおよびWinter (1992) 上掲; Nissimら(1994) 上掲)。簡単に述べると、このベクターは、ファージミドに選択性を付与するβ-ラクタマーゼ遺伝子と、(N末端からC末端に向かって)pelBリーダー配列(発現されるポリペプチドをペリプラズム空間に指向させる)、マルチクローニング部位(ヌクレオチド型のライブラリーメンバーのクローニングのためのもの)、必要に応じて、1個以上のペプチドタグ(検出のためのもの)、必要に応じて、1個以上のTAG停止コドンおよびファージタンパク質pIIIからなる発現カセットの上流のlacプロモーターを含む。かくして、大腸菌の種々のサプレッサーおよび非サプレッサー株を、グルコース、イソプロピルチオ-β-D-ガラクトシダーゼ(IPTG)またはVCS M13などのヘルパーファージの添加と共に用いれば、このベクターは、発現しないプラスミドとして複製し、大量のポリペプチドライブラリーメンバーのみを産生するか、またはそのいくつかがその表面上に少なくとも1コピーのポリペプチド-pIII融合物を含むファージを産生することができる。
本発明に従うベクターの構築は、従来の連結技術を用いる。単離されたベクターまたはDNA断片を、所望の形態で切断、調整、および再連結して、必要なベクターを作製する。必要に応じて、正確な配列が構築されたベクター中に存在することを確認するための分析を、公知の様式で実施することができる。発現ベクターを構築し、in vitroで転写物を調製し、DNAを宿主細胞に導入し、ならびに発現および機能を評価するための分析を実施する好適な方法は、当業者には公知である。サンプル中の遺伝子配列の存在を検出するか、またはサザンもしくはノーザン分析、ウェスタンブロッティング、DNA、RNAもしくはタンパク質のドットブロッティング、in situハイブリダイゼーション、免疫細胞化学または核酸もしくはタンパク質分子の配列分析により、その増幅および/または発現を定量する。当業者であれば、必要に応じて、これらの方法を改変する方法を容易に思いつくであろう。
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いる突然変異誘発
一度、ベクター系を選択したら、目的のポリペプチドをコードする1個以上の核酸配列をライブラリーベクター中にクローニングし、発現の前に突然変異誘発を行うことによりクローン化された分子内で多様性を生成することができる;あるいは、コードされたタンパク質を、上記のように発現および選択した後、突然変異誘発およびさらなるラウンドの選択を実施する。上述のように、構造的に最適化されたポリペプチドをコードする核酸配列の突然変異誘発を、標準的な分子方法により実行する。特に有用なものは、ポリメラーゼ連鎖反応、またはPCR(MullisおよびFaloona (1987) Methods Enzymol., 155: 335、参照により本明細書に組み入れられるものとする)である。目的の標的配列を増幅するための、熱安定性のDNA依存的DNAポリメラーゼにより触媒される複数サイクルのDNA複製を使用するPCRは、当業界でよく知られている。
本発明に従って有用なオリゴヌクレオチドプライマーは、核酸鋳型にハイブリダイズして第2の核酸鎖の酵素的合成をプライミングする一本鎖DNAまたはRNA分子である。このプライマーは、本発明のアレイのセットの調製において用いられる核酸分子のプールに存在する標的分子の一部と相補的である。そのような分子を、化学的または酵素的な合成方法により調製することが意図される。あるいは、そのような分子またはその断片は天然のものであり、その天然の起源から単離するか、または商業的な供給者から購入する。変異原性オリゴヌクレオチドプライマーは、長さ15〜100ヌクレオチドであり、理想的には、20〜40ヌクレオチドであるが、異なる長さのオリゴヌクレオチドも有用である。
典型的には、2個の核酸配列が実質的に相補的である(少なくとも14〜25ヌクレオチドに渡って、少なくとも約65%相補的、好ましくは、少なくとも約75%、より好ましくは、少なくとも約90%の相補的である)場合、選択的ハイブリダイゼーションが起こる。参照により本明細書に組み入れられるものとする、Kanehisa (1984) Nucleic Acids Res. 12: 203を参照されたい。結果として、プライミング部位での特定の程度の不一致が寛容されると予想される。そのような不一致は、モノ、ジまたはトリヌクレオチドなどの小さいものであってよい。あるいは、それは、本発明者らが、不一致が中断されない一連の4個以上のヌクレオチドを包含する領域として定義するヌクレオチドループを含んでもよい。
全体として、5つの因子が、第2の核酸分子へのプライマーのハイブリダイゼーションの効率および選択性に影響する。これらの因子は、(i)プライマーの長さ、(ii)ヌクレオチド配列および/または組成、(iii)ハイブリダイゼーションの温度、(iv)バッファー化合物および(v)プライマーがハイブリダイズするのに必要な領域における立体障害の可能性であり、非無作為のプライミング配列を設計する場合、重要な検討材料である。
プライマーの長さと、プライマーが標的配列にアニーリングする際の効率および正確性の両方との間には、正の相関がある;より長い配列は、より短いものよりも高い融点(TM)を有し、所与の標的配列内で繰り返される可能性が低く、それによって、乱雑なハイブリダイゼーションを最小化する。高いG-C含量を有するか、またはパリンドローム配列を含むプライマー配列は、2分子よりもむしろ1分子のハイブリダイゼーション反応速度論が一般的には溶液中で好まれるため、その意図される標的部位と同様、自己ハイブリダイズする傾向がある;同時に、標的配列に緊密に結合するのに十分な数のG-Cヌクレオチド対を含むプライマーを設計することが重要であるが、それはそれぞれそのような対が、AとTの塩基対の場合に認められる2個の水素結合よりもむしろ、3個の水素結合により結合するからである。ハイブリダイゼーション温度は、プライマーのアニーリング効率と反比例し、同様に、有機溶媒、例えば、ハイブリダイゼーション混合物中に含まれ得るホルムアミドの濃度も反比例するが、塩濃度の増加は結合を容易にする。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、より長いプローブは、より短いものよりも効率的にハイブリダイズし、これはより許容される条件下で十分なものである。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、典型的には、約1 M未満、より通常は約500 mM未満および好ましくは、約200 mM未満の塩濃度を含む。ハイブリダイゼーション温度は、0℃から22℃以上、約30℃以上、および(最も頻繁には)約37℃を超える。特異的ハイブリダイゼーションのためには、より長い断片は、より高いハイブリダイゼーション温度を必要とし得る。いくつかの因子がハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響するので、パラメーターの組み合わせが、いずれか1つのみの絶対尺度よりも重要である。
これらのことを考慮に入れてプライマーを設計する。多くの配列の相対的なメリットの評価を、当業者であれば精神的に行うことができるが、これらのいくつかのパラメーターおよびプライマー配列の最適化の評価を援助するコンピュータープログラムが設計された。そのようなプラグラムの例は、DNAStar(商標)ソフトウェアパッケージ(DNAStar, Inc.; Madison, WI)およびOLIGO 4.0(National Biosciences, Inc.)の「PrimerSelect」である。一度設計されたら、好適な方法、例えば、BeaucageおよびCarruthers(1981)Tetrahedron Lett., 22:1859により記載されたホルホルアミダイト法もしくはMatteucciおよびCaruthers(1981)J. Am. Chem. Soc., 103:3185に従うトリエステル法(両方とも参照により本明細書に組み入れられるものとする)により、または市販の自動化オリゴヌクレオチド合成装置もしくはVLSIPS(商標)技術を用いる他の化学的方法により、好適なオリゴヌクレオチドを調製する。
PCRを、鋳型DNA(少なくとも1 fg;より通常は、1〜1000 ng)および少なくとも25 pmolのオリゴヌクレオチドプライマーを用いて実施する;各配列がほんの少量の分子のプールにより表され、後の増幅サイクルにおいて量が限定的になるので、プライマープールが重度に異種性である場合には、より大量のプライマーを用いることが有利であろう。典型的な反応混合物は、2μlのDNA、25 pmolのオリゴヌクレオチドプライマー、2.5μlの10X PCRバッファー1(Perkin-Elmer, Foster City, CA)、0.4μlの1.25μM dNTP、0.15μl(もしくは2.5ユニット)のTaq DNAポリメラーゼ(Perkin-Elmer, Foster City, CA)および脱イオン水で総量25μlにしたものを含む。ミネラルオイルを上に載せ、プログラム可能なサーマルサイクラーを用いてPCRを実施する。
PCRサイクルの各工程の長さおよび温度、ならびにサイクル数を、有効なストリンジェンシー要件に従って調整する。アニーリングの温度およびタイミングを、プライマーが鋳型にアニーリングすると予想される効率と、寛容される不一致の程度との両方により決定する;明らかに、核酸分子を同時に増幅し、突然変異誘発する場合、少なくとも最初のラウンドの合成において、不一致が必要である。変異原性プライマーの混合プールを用いて分子の集団を増幅する試みにおいては、ストリンジェントな(高温)アニーリング条件下での、低い融解温度からのみ生じる潜在的な突然変異生成物の損失を、標的部位以外の配列へのプライマーの乱雑なアニーリングに対して計量する。プライマーアニーリング条件のストリンジェンシーを最適化する能力は、当業者の知識の範囲内にある。30℃〜72℃のアニーリング温度を用いる。鋳型分子の最初の変性は通常、92℃〜99℃で4分間行い、次いで変性(94〜99℃で15秒〜1分間)、アニーリング(上記で考察したように決定された温度;1〜2分間)、および伸長(72℃で1〜5分間、増幅産物の長さに依存)からなる20〜40サイクルを行う。最後の伸長は、一般的には72℃で4分間であり、その後4℃で不定期(0〜24時間)工程を行ってもよい。
レパートリーメンバーの構造分析
本発明は公知の主鎖コンフォメーションのポリペプチドのレパートリーを提供するので、任意の数のレパートリーの三次元構造モデルを容易に作製することができる。典型的には、そのようなモデルの構築は、相同性モデリングおよび/または分子置換を含む。主鎖コンフォメーションの準備モデルを、ポリペプチド配列と公知の三次元構造の類似する配列との比較、二次構造予測または構造ライブラリーのスクリーニングにより作製する。分子モデリングのコンピューターソフトウェアパッケージが市販されており、ポリペプチドの二次構造を予測するのに有用である。変化した位置での側鎖のコンフォメーションを予測するために、側鎖回転異性体ライブラリーを用いることができる。
ポリペプチド選択におけるリガンドとして使用するための抗体
本発明に従うポリペプチド選択において用いられる一般または標的リガンドは、それ自身、抗体であってもよい。これは、本発明のレパートリーに含有させるために選択しようとする機能的ポリペプチドにおいて実質的に保存されている構造的特徴に結合する一般リガンドに関しては特に真実である。好適な抗体が公共的に利用可能でない場合、ファージディスプレイ法(上記を参照)により、または以下のようにそれを製造することができる。
組換えタンパク質または天然の起源から誘導されたものを用いて、当業界ではよく知られた標準的な技術を用いて抗体を作製することができる。例えば、サル、ヤギ、ウサギまたはマウスなどの哺乳動物をチャレンジするために、タンパク質(または「免疫原」)を投与する。得られる抗体をポリクローナル血清として回収するか、またはチャレンジした動物に由来する抗体産生細胞を不死化し(例えば、ハイブリドーマを作製するために不死化融合パートナーと融合させることにより)、次いで、細胞にモノクローナル抗体を産生させることができる。
a.ポリクローナル抗体
抗原タンパク質を単独で、または従来の担体にコンジュゲートさせて用いて、その免疫原性を増加させ、上記のように、ペプチド-担体コンジュゲートに対する抗血清を動物中で生じさせる。ペプチドと担体タンパク質とのカップリングおよび免疫を記載のように実施することができる(Dymeckiら(1992) J. Biol. Chem., 267: 4815)。ELISAまたはあるいはドットもしくはスポットブロッティングにより、タンパク質抗原に対して血清を滴定する(BoersmaおよびVan Leeuwen (1994) J. Neurosci. Methods, 51: 317)。この血清は、ELISAにより、例えば、Greenら(1982) Cell, 28: 477の手順に従って、好適なペプチドと強く反応することが示される。
b.モノクローナル抗体
モノクローナル抗体を調製する技術はよく知られており、モノクローナル抗体を、Arheiterら(1981) Nature, 294, 278により記載されたように、好ましくは担体に結合した任意の候補抗原を用いて調製することができる。典型的には、ハイブリドーマ組織培養物から、またはハイブリドーマ組織を導入した動物から得られた腹水から、モノクローナル抗体を取得する。にもかかわらず、モノクローナル抗体を、タンパク質「に対して生じる」またはタンパク質「により誘導される」ものとして記述することができる。
生じさせた後、いくつかの手段のいずれかにより、機能および特異性についてモノクローナル抗体を試験する。また、同様の手順を用いて、ファージディスプレイまたは他のin vitro選択技術により作製された組換え抗体を試験することもできる。同様に、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ(またはポリクローナル血清)を、免疫原に結合する抗体についてスクリーニングする。特に好ましい免疫学的試験としては、酵素結合免疫アッセイ(ELISA)、イムノブロッティングおよび免疫沈降(Voller, (1978) Diagnostic Horizons, 2: 1, Microbiological Associates Quarterly Publication, Walkersville, MD; Vollerら(1978) J. Clin. Pathol., 31: 507; 米国再発行特許第31,006号; 英国特許第2,019,408号; Butler (1981) Methods Enzymol., 73: 482; Maggio, E. (編), (1980) Enzyme Immunoassay, CRC Press, Boca Raton, FLを参照)またはラジオイムノアッセイ(RIA) (Weintraub, B., Principles of radioimmunoassays, Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques, The Endocrine Society, March 1986, pp. 1-5, 46-49および68-78)が挙げられ、それらは全て抗体の、それに対して生じた免疫原への結合を検出するためのものである。抗体分子または免疫原を標識して、そのような検出を容易にしなければならないことは当業者には明らかであろう。抗体分子を標識する技術は当業者にはよく知られている(HarlourおよびLane (1989) Antibodies, Cold Spring Harbor Laboratory, pp. 1-726)。
あるいは、他の技術を用いて免疫原への結合を検出することによって、本発明に従う一般抗原または標的抗原として役立つ抗体の完全性を確認することができる。これらのものとしては、SDS-PAGE、等電点電気泳動、ウェスタンブロッティング、HPLCおよびキャピラリー電気泳動などのクロマトグラフィー法が挙げられる。
本明細書では、「抗体」を、そのような抗体の結合(可変)領域、および他の抗体改変物を用いる構築物と定義する。かくして、本発明において有用な抗体は、全抗体、抗体フラグメント、他機能抗体凝集物、または一般的には、抗体に由来する1個以上の特異的結合部位を含む任意の物質を含んでもよい。抗体フラグメントは、Fv、FabおよびF(ab')2フラグメントなどのフラグメントまたは一本鎖Fvフラグメントなどのその任意の誘導体であってよい。抗体または抗体フラグメントは、非組換え体、組換え体であってもよく、またはヒト化されていてもよい。抗体は、例えば、IgG、IgMなどの任意の免疫グロブリンアイソタイプのものであってよい。さらに、必要に応じて、免疫グロブリンまたはそのフラグメントの凝集物、ポリマー、誘導体およびコンジュゲートを用いることもできる。
本発明を、例示目的のためだけに、以下の実施例においてさらに説明する。
ポリペプチドの選択のためのリガンドとしての金属イオン
上述のように、抗体以外のリガンドは、本発明に従うポリペプチドの選択において有用である。リガンドの1つのそのようなカテゴリーは、金属イオンのものである。例えば、Ni-NTAマトリックスを用いて、機能的ヒスチジン(HIS)タグの存在のためにレパートリーを予備選択することを望んでもよい。固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC; HubertおよびPorath(1980) J. Chromatography, 98: 247)は、多くのタンパク質の曝露された表面上での、ヒスチジンおよびシステインアミノ酸残基、ならびに金属に結合し得る他のものの金属結合特性を利用するものである。それは、複合体化された金属イオンである二座金属キレート剤(例えば、イミノ二酢酸、IDA、ジカルボン酸基)を含む、樹脂、典型的には、アガロースを用いる;本発明に従う金属イオンを担持する樹脂を作製するために、アガロース/IDAを、IDAが二価陽イオンをキレートする金属塩(例えば、CuCl22H2O)と混合する。1つの市販のアガロース/IDA調製物は、「CHELATING SEPHAROSE 6B」(Pharmacia Fine Chemicals; Piscataway, NJ)である。有用である金属イオンとしては、限定されるものではないが、二価陽イオンNi2+、Cu2+、Zn2+およびCo2+が挙げられる。ポリペプチド分子のプールを、0.1〜1.0M濃度の塩(典型的には、NaClまたはKCl)および弱いリガンド(Trisまたはアンモニアなど)から本質的になり、後者は樹脂の金属イオンに対する親和性を有するが、本発明に従って選択しようとするポリペプチドよりも低い程度である結合バッファー中で調製する。弱いリガンドの有用な濃度は、結合バッファー中で0.01〜0.1Mの範囲である。
ポリペプチドプールを、金属結合ドメイン(以下を参照)を有するポリペプチドが結合することができる条件下で樹脂と接触させる;不純物を洗浄除去した後、選択されたポリペプチドを、弱いリガンドが結合バッファー中よりも高い濃度、具体的には、金属イオンに対する結合親和性がより低いにも関わらず、弱いリガンドが選択されたポリペプチドを置換するのに十分な濃度で存在するバッファーを用いて溶出させる。溶出バッファー中の弱いリガンドの有用な濃度は、結合バッファー中よりも10〜50倍高く、典型的には、0.1〜0.3Mである;溶出バッファー中の塩の濃度は、結合バッファー中におけるものと等しいことに留意されたい。本発明に従えば、樹脂の金属イオンは、典型的には、一般リガンドとして働く;しかしながら、それらを標的リガンドとして用いることもできることが意図される。
IMACを、標準的なクロマトグラフィー装置(バッファーを重力により汲み上げ、減圧装置により吸引するか、または圧力により駆動されるカラム)を用いて実行する;あるいは、金属担持樹脂を、スラリー形態で、本発明のレパートリーのメンバーを選択しようとするポリペプチドプールと混合する大量方式手順を用いる。
IMACによる血清T4タンパク質の部分的精製が記載されている(Staplesら、米国特許第5,169,936号);しかしながら、表面に曝露される金属結合ドメインを含む広範囲のタンパク質は、他の可溶性T4タンパク質、ヒト血清タンパク質(例えば、IgG、ハプトグロブリン、ヘモペキシン、Gc-グロブリン、C1q、C3、C4)、ヒトデスモプラスミン、ヒマラヤフジマメ(Dolichos biflorus)レクチン、亜鉛阻害型Tyr(P)ホスファターゼ、フェノラーゼ、カルボキシペプチダーゼイソ酵素、Cu、Znスーパーオキシドジスムターゼ(ヒトおよび他の全ての真核生物のものを含む)、ヌクレオチドジホスファターゼ、白血球インターフェロン、ラクトフェリン、ヒト血漿α2-SH糖タンパク質、β2-マクログロブリン、α1-抗トリプシン、プラスミノゲン活性化因子、胃腸管ポリペプチド、ペプシン、ヒトおよびウシの血清アルブミン、顆粒球由来顆粒タンパク質、ライソザイム、非ヒストンタンパク質、ヒトフィブリノゲン、ヒト血清トランスフェリン、ヒトリンホトキシン、カルモジュリン、プロテインA、アビジン、ミオグロブリン、ソマトメジン、ヒト成長ホルモン、トランスフォーミング増殖因子、血小板由来増殖因子、α-ヒト心房性ナトリウム利尿ポリペプチド、カルジオジラチンなども包含する。さらに、膜結合タンパク質の細胞外ドメイン配列を、IMACを用いて精製することができる。上記タンパク質のいずれか、またはその金属結合変異体を含むレパートリーを、本発明の方法に従って製造することができることに留意されたい。
溶出後、選択されたポリペプチドを金属結合バッファーから除去し、次の使用にとって好適なバッファー中に入れる。金属イオンを用いて本発明に従う最初の選択されたポリペプチドプールを作製した場合、そのプールの分子を、機能的ポリペプチドレパートリーのメンバーの選択に用いられる第2のリガンドとの結合のために最適化されたバッファー中に入れる。その代わりに、金属を第2の選択工程において用いる場合、レパートリーのポリペプチドを、保存にとって好適なバッファー(例えば、0.5%グリシンバッファー)またはそれらを意図する使用にとって好適なバッファーに移す。そのようなバッファーとしては、限定されるものではないが、水、有機溶媒、水と、水混和性有機溶媒との混合物、生理的塩バッファーおよびタンパク質/核酸またはタンパク質/タンパク質結合バッファーが挙げられる。あるいは、ポリペプチド分子を、脱水(すなわち、凍結乾燥による)するか、またはニトロセルロースもしくはナイロン濾過膜もしくはゲルマトリックス(すなわち、アガロースもしくはポリアクリルアミドの)などの固相もしくは半固相支持体上に固定するか、またはクロマトグラフィー樹脂に架橋させることができる。
ポリペプチド分子を、当業界で公知のいくつかの方法のいずれかにより、溶出バッファーから除去することができる。ポリペプチド溶出物を、水または選択した別の溶液に対して透析することができる;ポリペプチドを凍結乾燥する場合、プロテアーゼ阻害剤(例えば、ペプスタチン、アプロチニン、ロイペプチン、または他のもの)を添加した水を用いる。あるいは、サンプルを、当業界でよく知られている硫酸アンモニウム沈降にかけた後、選択した媒体中に再懸濁してもよい。
本発明に従って選択されたポリペプチドの使用
本発明の方法に従って選択されたポリペプチドを、in vivoでの治療および予防適用、in vitroおよびin vivoでの診断適用、in vitroでのアッセイおよび試薬適用などの、リガンド-ポリペプチド結合を含む実質的に任意のプロセスにおいて用いることができる。例えば、抗体の場合、抗体分子を、当業者には公知の方法に従って、ELISA技術などの抗体に基づくアッセイ技術において用いることができる。
上でほのめかしたように、本発明に従って選択された分子は、診断、予防および治療手順において有用である。例えば、これらの方法により作製および選択された酵素変異体を、それらを候補基質分子と共にインキュベートし、基質の生成物への変換を分析する、当業界でよく知られた技術を用いて、in vitroまたはin vivoで活性についてアッセイすることができる。選択された細胞表面受容体または接着分子を、培養細胞中で発現させた後、それぞれ、生化学的刺激に応答するその能力について、または多様化されていない接着分子を結合すると予想される細胞表面分子を発現する他の細胞型とのその親和性について試験する。本発明に従って選択された抗体ポリペプチドは、ウェスタン分析および標準的な免疫組織化学的手順によるin situでのタンパク質検出において診断的に有用である;これらの用途における使用のために、選択されたレパートリーの抗体を、当業界で公知の技術に従って標識することができる。さらに、そのような抗体ポリペプチドを、樹脂などのクロマトグラフィー支持体と複合体化させた場合、アフィニティークロマトグラフィー手順において準備的に用いることができる。
本発明に従って調製されたタンパク質の治療的および予防的使用は、ヒトなどのレシピエント哺乳動物への、本発明に従って選択されたポリペプチドの投与を含む。この点で特に有用なものは、抗体、他の受容体(限定されるものではないが、T細胞受容体など)および抗体または受容体を一般または標的リガンドとして用いた場合、それに結合するタンパク質である。
実質的に純粋な抗体または少なくとも90〜95%の均一性を有するその結合タンパク質が、哺乳動物への投与にとって好ましく、特に、哺乳動物がヒトである場合、98〜99%以上の均一性が、医薬としての使用にとって最も好ましい。一度、部分的に、または所望の均一性まで精製されたら、選択されたポリペプチドを、診断的もしくは治療的(体外を含む)に、またはアッセイ手順、免疫蛍光染色などの開発および実施に用いることができる(LefkoviteおよびPernis, (1979および1981) Immunological Methods, Volumes IおよびII, Academic Press, NY)。
本発明の選択された抗体またはその結合タンパク質は、典型的には、炎症状態、アレルギー性過敏症、癌、細菌またはウイルス感染、および自己免疫障害(限定されるものではないが、I型糖尿病、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、クローン病および重症筋無力症などが挙げられる)の予防、抑制または治療において有用であろう。
本出願においては、用語「予防」は、疾患の誘導の前の保護的組成物の投与を含む。「抑制」とは、誘導事象の後であるが、疾患の臨床的出現の前の前記組成物の投与を指す。「治療」は、疾患徴候が明らかになった後の保護的組成物の投与を含む。
疾患に対する防御または疾患の治療における、抗体または結合タンパク質の有効性をスクリーニングするのに用いることができる動物モデル系が利用可能である。感受性マウスにおける全身性エリテマトーデス(SLE)の試験のための方法は、当業界で公知である(Knightら(1978) J. Exp. Med., 147: 1653; Reinerstenら(1978) New Eng. J. Med., 299: 515)。重症筋無力症(MG)を、別の種に由来する可溶性AchRタンパク質を用いて該疾患を誘導することにより、SJL/J雌マウスにおいて試験する(Lindstromら(1988) Adv. Immunol., 42: 233)。関節炎を、II型コラーゲンの注入により、マウスの感受性株において誘導する(Stuartら(1984) Ann. Rev. Immunol., 42: 233)。マイコバクテリア熱ショックタンパク質の注入により感受性ラットにおいてアジュバント関節炎を誘導するモデルが記載されている(Van Edenら(1988) Nature, 331: 171)。甲状腺炎を、記載のようなチログロブリンの投与によりマウスにおいて誘導する(Maronら(1980) J. Exp. Med., 152: 1115)。インスリン依存的糖尿病(IDDM)は自然発生するか、またはKanasawaら(1984) Diabetologia, 27: 113に記載のものなどの特定の株のマウスにおいて誘導することができる。マウスおよびラットにおけるEAEは、ヒトにおけるMSのモデルとして役立つ。このモデルにおいては、脱髄疾患を、ミエリン塩基性タンパク質の投与により誘導する(Paterson (1986) Textbook of Immunopathology, Mischerら(編)、GruneおよびStratton, New York, pp. 179-213; McFarlinら(1973) Science, 179: 478:ならびにSatohら(1987) J. Immunol., 138: 179)。
本発明の選択された抗体、受容体(限定されるものではないが、T細胞受容体など)またはその結合タンパク質を、他の抗体、具体的には、疾患の原因となるヒト細胞上の他のマーカーと反応するモノクローナル抗体(MAb)と組み合わせて用いることもできる。例えば、好適なT細胞マーカーとしては、First International Leukocyte Differentiation Workshop (Bernhardら(1984) Leukocyte Typing, Springer Verlag, NY)により名付けられた、いわゆる「分化のクラスター」にグループ化されるものが挙げられる。
一般的には、本発明の選択された抗体、受容体または結合タンパク質は、薬理学的に好適な担体と共に精製された形態で用いられるであろう。典型的には、これらの担体としては、いずれも塩水および/もしくは緩衝化媒体を含む、水性もしくはアルコール性/水性溶液、乳液もしくは懸濁液が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウムならびに乳酸加リンゲルが挙げられる。懸濁液中でポリペプチド複合体を維持することが必要である場合、好適な生理学的に許容し得るアジュバントを、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチンおよびアルギン酸などの増粘剤から選択することができる。
静脈内ビヒクルとしては、液体および栄養素補給ならびにリンゲルデキストロースに基づくものなどの電解質補給が挙げられる。抗微生物剤、酸化防止剤、キレート剤および不活性ガスなどの保存剤および他の添加物を存在させてもよい(Mack (1982) Remington's Pharmaceutical Sciences, 第16版)。
本発明の選択されたポリペプチドを、別々に投与される組成物として、または他の薬剤と共に用いることができる。これらのものとしては、シクロスポリン、メトトレキサート、アドリアマイシンまたはシスプラチンなどの種々の免疫治療剤および抗毒素が挙げられる。医薬組成物としては、種々の細胞傷害性薬剤もしくは他の薬剤と、本発明の選択された抗体、受容体もしくはその結合タンパク質との「カクテル」、または投与の前にプールするにしろしないにしろ、異なる標的リガンドを用いて選択されたポリペプチドなどの、異なる特異性を有する本発明に従う選択されたポリペプチドの組み合わせも挙げられる。
本発明に従う医薬組成物の投与経路は、当業者には一般的に知られる任意のものであってよい。免疫治療に限定されるものではないが、治療のためには、本発明の選択された抗体、受容体またはその結合タンパク質を、標準的な技術に従って任意の患者に投与することができる。投与は、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、経肺経路などの任意の好適な様式によるか、または好適には、カテーテルを用いる直接的注入によるものであってよい。投与の用量および頻度は、患者の年齢、性別および状態、他の薬剤との併用投与、医師が考慮すべき反対指示(counterindication)および他のパラメーターに依存するであろう。
本発明の選択されたポリペプチドを、保存のために凍結乾燥し、使用前に好適な担体中で再構成させることができる。この技術は有効であることが示されており、従来の免疫グロブリンならびに当業界で公知の凍結乾燥および再構成技術と共に用いることができる。当業者であれば、凍結乾燥および再構成は様々な程度の抗体活性損失(例えば、従来の免疫グロブリン、IgM抗体はIgG抗体よりも大きい抗体活性損失を有する傾向がある)を誘導し得ること、および使用レベルを上方調整して、補う必要があることを理解できるであろう。
本発明の選択された抗体またはそのカクテルを含む組成物を、予防および/または治療的処理のために投与することができる。特定の治療適用においては、選択された細胞の集団の、少なくとも部分的阻害、抑制、調節、殺傷、または他のいくつかの測定可能なパラメーターを達成するのに十分な量を、「治療上有効量」と定義する。この用量を達成するのに必要な量は、疾患の重篤度および患者自身の免疫系の通常状態に依存するであろうが、一般的には、体重1キログラムあたり、0.005〜5.0 mgの選択された抗体、受容体(例えば、T細胞受容体)またはその結合タンパク質の範囲であり、より一般的には、0.05〜2.0 mg/kg/用量を用いる。予防的適用のためには、本発明の選択されたポリペプチドまたはそのカクテルを含む組成物を、同様の、またはわずかにより低い用量で投与してもよい。
本発明に従う選択されたポリペプチドを含む組成物を、哺乳動物における選択された標的細胞集団の変化、不活性化、殺傷または除去を援助する予防および治療設定において用いることができる。さらに、本明細書に記載の選択されたポリペプチドのレパートリーを、体外またはin vitroで選択的に用いて、細胞の異種性回収物から標的細胞集団を殺傷し、枯渇させるか、またはさもなければ効率的に除去することができる。哺乳動物から得た血液を、選択された抗体、細胞表面受容体またはその結合タンパク質と体外で混合し、望ましくない細胞を殺傷するか、またはさもなければ標準的な技術に従って哺乳動物に戻すために血液から除去する。
本発明を、例示目的のためだけに、以下の実施例においてさらに説明する。
実施例1
抗体ライブラリー設計
A.主鎖コンフォメーション
ヒト抗体の6個の抗原結合ループのうちの5個(L1、L2、L3、H1およびH2)については、主鎖コンフォメーション、または標準構造の数は限られている(Chothiaら(1992) J. Mol. Biol., 227: 799; Tomlinsonら(1995) EMBO J., 14: 4628; Williamsら(1996) J. Mol. Biol., 264: 220)。これらのループのそれぞれについて最もよくある主鎖コンフォメーションを用いて、本発明に従う単一の公知の主鎖コンフォメーションを提供する。H1-CS1(発現されるレパートリーの79%)、H2-CS3(46%)、VκのL1-CS2(39%)、L2-CS1(100%)、VκのL3-CS1(36%)が存在する。H3ループは、限られた数の短いループ長の主鎖コンフォメーションを形成する(Martinら(1996) J. Mol. Biol., 263: 800; Shiraiら(1996) FEBS Letters, 399: 1)。かくして、H3が7個の残基のCDR3長を有し(Kabatら(1991) Sequences of proteins of immunological interest, U.S. Department of Health and Human Servicesにより定義される)、位置H94にリジンもしくはアルギニン残基を有し、位置H101にアスパラギン酸残基を有する場合、これらの2個の残基の間には塩架橋が形成され、多くの場合、単一主鎖コンフォメーションが産生されるようである。このコンフォメーションを形成させるのに必要なH3長および重要残基を含むEMBLデータライブラリー中には、少なくとも16種のヒト抗体配列が存在し、抗体モデリングの基礎として用いることができるタンパク質データバンク中には、少なくとも2種の結晶構造(2cgrおよび1tet)が存在する。
この場合、所望のループ長および重要残基をコードして、標準構造の必要な組み合わせをもたらす最も頻繁に発現される生殖系列遺伝子断片は、VH断片3-23(DP-47)、JH断片JH4b、Vκ断片O2/O12(DPK9)およびJκ断片Jκ1である。従って、これらの断片を、所望の単一主鎖コンフォメーションを有するライブラリーを構築するための基礎として組み合わせて用いることができる。Vκ断片O2/O12(DPK9)は、Vκ1ファミリーのメンバーであり、従って、スーパー抗原プロテインLに結合するであろう。VH断片3-23(DP-47)は、VH3ファミリーのメンバーであり、従って、スーパー抗原プロテインAに結合し、次いで、これを一般リガンドとして用いることができる。
B.変異のための位置の選択
ヒトVHおよびVκ配列の分析により、成熟レパートリー中で最も多様な位置は、抗原と最も多い接触を作るものであることが示される(Tomlinsonら(1996) J. Mol. Biol., 256: 813; 図1を参照)。これらの位置は、機能的抗原結合部位を形成し、従って、側鎖多様性のためにこれを選択する(図2)。H54は重要残基であり、選択されたH2標準構造3(この位置に認められる多様性は、H54が結合部位を指し示す場合、標準構造1、2および4に起因するものである)中の抗原結合部位から離れた点である。この場合、H55(結合部位を指し示す)を代わりに多様化する。これらの位置における多様性を、初期レパートリー中の生殖系列多様性もしくは結合多様性によるか、または体細胞超変異により作製する(Tomlinsonら(1996) J. Mol. Biol., 256: 813; 図1を参照)。従って、抗原結合部位中の残基の2種の異なるサブセットを変化させて、2種の異なるライブラリー形式を作製した。「初期」ライブラリーにおいては、変異のために選択される残基は、H2、H3、L2およびL3に由来するものである(これらのループにおける多様性は、主に生殖系列多様性または結合多様性の結果である)。このライブラリー中で変化させた位置は、H50、H52、H52a、H53、H55、H56、H58、H95、H96、H97、H98、L50、L53、L91、L92、L93、L94およびL96(合計で18残基、図2)である。「体細胞」ライブラリーにおいては、変異のために選択される残基は、H1、H3、L1およびL3の末端に由来するものである(ここでの多様性は、主に体細胞超変異または結合多様性の結果である)。このライブラリー中で変化させた位置は、H31、H33、H35、H95、H96、H97、H98、L30、L31、L32、L34およびL96(合計で12残基、図2)である。
C.変化させる位置でのアミノ酸使用の選択
コドンNNK(TGAおよびTAA停止コドンではなく、TAG停止コドンを含む、20種全部のアミノ酸をコードする)またはコドンDVT(22%のセリンならびに11%のチロシン、アスパラギン、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、トレオニンおよびシステインをコードし、それぞれの位置で等しい比率で単一、二重、三重および四重の縮重性を用いて、天然のヒト抗体の抗原結合部位中でのアミノ酸残基の分布を最も近く模倣する)を組み込むことにより、「初期」および「体細胞」ライブラリー中に側鎖多様性を導入する。
実施例2
ライブラリーの構築および一般リガンドを用いる選択
「初期」および「体細胞」ライブラリーを、表1に列挙されたオリゴヌクレオチドならびに生殖系列V遺伝子断片DPK9(Coxら(1994) Eur. J. Immunol., 24: 827)およびDP-47 (Tomlinsonら(1992) J. Mol. Biol., 227: 7768)を用いてPCRにより集合させた。簡単に述べると、5’(後方)プライマーとNNKまたはDVT3’(前方)プライマーの対と共に、鋳型として対応する生殖系列V遺伝子断片を用いて、第1ラウンドの増幅を実施した(表1を参照)。これにより、NNKおよびDVTライブラリーのそれぞれについて8種の別々のDNA断片が得られる。次いで、表1に示される5’(後方)プライマーと3’(前方)プライマーと共に、第1ラウンドの増幅から得られた2種の精製された断片を用いて、第2ラウンドの増幅を実施した。これにより、NNKおよびDVTライブラリーのそれぞれについて4種の別々の断片が得られる(「初期」VHフラグメント、5A;「初期」Vκフラグメント、6A;「体細胞」VHフラグメント、5B;および「体細胞」Vκフラグメント、6B)。
これらの断片のそれぞれを切断した後、それぞれTAGコドンまたはペプチドタグを含まないpHEN1の変異体中に、ダミーVHおよびVκドメインを含むpCLEANVH(VHフラグメントについて)またはpCLEANVK(Vκフラグメント)に連結した(Hoogenboom & Winter (1992) J. Mol. Biol., 227: 381)。次いで、連結物を非抑制性大腸菌株HB2151中にエレクトロポレーションした。これらのライブラリーのそれぞれに由来するファージを作製し、それぞれ、VHおよびVκライブラリーについて、10μg/mlの一般リガンドプロテインAおよびプロテインLで被覆したイムノチューブを用いて別々に選択した。次いで、選択したファージを感染させた大腸菌からDNAを調製し、ダミーVκ挿入物が対応するVκライブラリーにより置換されるように切断した。これらのライブラリーのエレクトロポレーションにより、以下の挿入物ライブラリーサイズ:9.21 x 108(「初期」NNK)、5.57 x 108(「初期」DVT)、1.00 x 109(「体細胞」NNK)および2.38 x 108(「体細胞」DVT)が得られる。予備選択の対照として、4種の追加のライブラリーを作製したが、一般リガンドプロテインAおよびプロテインLを用いる選択は行わなかった:これらのライブラリーの挿入物ライブラリーサイズは、1.29 x 109(「初期」NNK)、2.40 x 108(「初期」DVT)、1.16 x 109(「体細胞」NNK)および2.17 x 108(「体細胞」DVT)であった。
予備選択工程の成功を検証するために、選択された「初期」NNKライブラリーと選択されなかった「初期」NNKライブラリーに由来するDNAを、pUCに基づく発現ベクター中にクローニングし、HB2151中にエレクトロポレーションした。各再クローニングされたライブラリーから96個のクローンを無作為に拾い、可溶性scFvフラグメントの発現を誘導した。機能的scFvの産生を、scFvを捕捉するためのプロテインL、次いで、結合を検出するためのプロテインA-HRPコンジュゲートを用いるELISAによりアッセイした。機能的VHおよびVκドメインを発現するscFvのみ(フレームシフト、停止コドン、折り畳みまたは発現突然変異を含まない)は、このアッセイを用いてシグナルを与えるであろう。各ライブラリー中の機能的抗体の数(バックグラウンドを超えるELISAシグナル)は、選択されなかった「初期」NNKライブラリーについては5%であり、同じものの選択されたバージョンについては75%であった(図3)。前記アッセイで陰性であったクローンの配列決定により、フレームシフト、停止コドン、重要なフレームワーク残基でのPCR突然変異ならびに折り畳みおよび/または発現を防止しなければならない抗原結合部位中のアミノ酸残基の存在を確認した。
実施例3
標的リガンドに対するライブラリー選択
「初期」および「体細胞」NNKライブラリー(予備選択しない)を、種々の濃度でイムノチューブ上に被覆された5種の抗原(ウシユビキチン、ラットBIP、ウシヒストン、NIP-BSAおよび鶏卵リゾチーム)を用いて別々に選択した。2〜4ラウンドの選択後、鶏卵リゾチーム以外の全ての抗原に対する高度に特異的な抗体を取得した。配列決定のためにクローンを無作為に選択し、各抗原に対する様々な抗体を証明した(図4)。
第2段階において、予備選択されたNNKおよびDVTライブラリーに由来するファージを1:1で混合して、単一の「初期」ライブラリーおよび単一の「体細胞」ライブラリーを作製した。次いで、これらのライブラリーを、種々の濃度でイムノチューブ上に被覆された7種の抗原(FITC-BSA、ヒトレプチン、ヒトチログロブリン、BSA、鶏卵リゾチーム、マウスIgGおよびヒトIgG)を用いて別々に選択した。2〜4ラウンドの選択後、一般リガンドを用いて予備選択されなかったライブラリーを用いる以前の段階の選択において陽性をもたらさなかった鶏卵リゾチームを含む全ての抗原に対する高度に特異的な抗体を取得した。配列決定のためにクローンを無作為に選択し、各抗原に対する様々な抗体を証明した(図4)。
実施例4
scFv発現に対する予備選択およびscFvを担持するファージの産生の効果
予備選択の結果をさらに検証するために、選択されなかった「初期」DVTライブラリーおよび予備選択された「初期」DVTライブラリーから得たDNAを、pUCに基づく発現ベクターにクローニングし、HB2151中にエレクトロポレーションしたところ、両事例において105個のクローンが得られた。各再クローニングされたライブラリーから、96個のクローンを無作為に拾い、可溶性scFvフラグメントの発現を誘導した。再度、機能的scFvの産生を、scFvを捕捉するためにプロテインLを用いて、次いで、結合したscFvを検出するためのプロテインA-HRPの使用によりアッセイする。各ライブラリー中の機能的抗体の割合は、35.4%(選択されなかった)および84.4%(予備選択された)であり、プロテインAおよびプロテインLを用いる予備選択の結果として、機能的メンバーの数が2.4倍増加することを示している(DVTコドンはTAG停止コドンをコードしないため、この増加は等価なNNKライブラリーについてよりもあまり顕著ではない。選択されなかったNNKライブラリーにおいては、HB2151などの非抑制株中のTAG停止コドンの存在は、終結を誘導し、従って、機能的scFv発現を防止するであろう。NNKライブラリーの予備選択により、高い割合のメンバーが可溶性scFvを発現するライブラリーを作製するために、TAG停止コドンを含むクローンを除去する)。
総scFv発現に対する「初期」DVTライブラリーの予備選択の効果を評価するために、再クローニングされた、選択されなかったライブラリーおよび予備選択されたライブラリー(それぞれ、pUCに基づく発現ベクター中に105個のクローンを含む)を、scFvフラグメントのポリクローナル発現について誘導する。次いで、上清中の発現されたscFvの濃度を、プロテインLで被覆されたELISAプレート上で、該上清の2倍希釈液(図5a中のカラム1〜12)をインキュベートした後、プロテインA-HRPを用いて検出し、既知の濃度のscFvを平行してアッセイして、選択されなかった、および予備選択されたDVTライブラリー中でのscFv発現のレベルを定量することにより決定する。これらを用いて、標準曲線をプロットし(図5b)、これから、選択されなかった、および予備選択された「初期」DVTライブラリーの発現レベルは、それぞれ12.9μg/mlおよび67.1μg/mlと算出され、すなわち、プロテインAおよびプロテインLを用いる予備選択によって発現が5.2倍増加する。
scFvを担持するファージの量を評価するために、選択されなかった、および予備選択された「初期」DVTライブラリーを増殖させ、ポリクローナルファージを産生させる。2種のライブラリーに由来する等量のファージを、MES泳動バッファーを用いて、4〜12% Bis-Tris NuPAGE Gel上、変性条件下で泳動する。得られるゲルをウェスタンブロットし、抗pIII抗体を用いてプローブ化し、X線フィルムに曝露する(図6)。それぞれの事例における下側のバンドは、pIIIタンパク質のみに対応するが、上側のバンドはpIII-scFv融合タンパク質を含む。ソフトウェアパッケージNIH画像を用いるバンド強度の定量は、予備選択が、ファージ中に存在する融合タンパク質の量の11.8倍の増加をもたらすことを示している。実際、予備選択されたファージ中の総pIIIの43%が、pIII-scFv融合物として存在し、これは多くのファージ粒子が表面上に展示された少なくとも1種のscFvを有するであろうことを示唆している。
従って、一般リガンドを用いる予備選択は、レパートリーからの機能的メンバーの富化を可能にするだけでなく、よく発現され、(必要に応じて)細菌プロテアーゼにより切断されることなく、ファージの表面上で高レベルの展示を引き出すことができるメンバーの優先的な選択も誘導する。
抗体ポリペプチドの集団から、対形成していないか、または緩く対形成した抗体単一可変ドメインを選択することができるのが有利である。また、T細胞受容体ポリペプチドの集団から、対形成していないか、または緩く対形成したT細胞受容体ドメイン(VαもしくはVβ)を選択することができるのも有用である。本発明は、これらの必要性を満足する。
本明細書に記載の本発明の全ての実施形態および態様においては、標的リガンドに言及する場合、該標的リガンドを、TNFα、血清アルブミン、フォン・ビルブラント因子(vWF)、IgE、インターフェロンγ、EGFR、IgE、MMP12、PDK1およびアミロイドβ(A-β)、または添付物1に列挙された標的のいずれか1つからなる群より選択する。
ラクダ科動物のVHHドメインおよびNanobody(商標)の説明については、WO05044858A1、WO04062551A2、WO04041867A2、WO04041865A2、WO04041863A2、WO04041862A2、WO03050531A2およびEP0656946を参照する。これらの開示ならびにVHHおよびNanobody(商標)の定義、ならびに開示された配列および実施例は、特に参照により本明細書に組み入れられるものとする。
本発明の方法については、一実施形態においては、ポリペプチド(例えば、抗体ポリペプチド)の集団を、B細胞(例えば、末梢血リンパ球)により提供し、ここで、B細胞集団を、単一のB細胞型または平均で1個のB細胞型を含む複数のウェルまたは容器中で提供する。B細胞平均を制御する方法の開示については、de Wildtら(1997) j. Immunol. Methods 2073, 61-67およびBabcookら(1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 7843-7848を参照する。これらの参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする。
例えば、ラクダ科動物からの、B細胞集団の選択に対する本発明の特異的適用
本発明は、一態様において、好ましい抗体型を展示する抗原特異的B細胞(サブ集団として)を富化しながら、好ましい抗体型を展示しない抗原特異的B細胞(サブ集団として)を排除する(またはその割合を有意に低下させる)選択系を提供する。この富化の方法を、一般リガンド、すなわち、好ましい抗体型を展示する全ての抗原特異的B細胞にとって共通であり、好ましい抗体型を展示しない全ての抗原特異的B細胞にとって共通ではない構造的特徴に対する親和性を有するタンパク質または小さい化合物分子を用いて実行する。例えば、一般リガンドは、好ましい抗体型を展示する全ての抗原特異的B細胞にとって共通であり、好ましい抗体型を展示しない全ての抗原特異的B細胞にとって共通ではない抗体ドメインまたは抗体表面パッチに対する親和性を有し得る。明らかに、一般リガンドを用いる選択を、抗原結合活性の選択の前、その間、またはその後に実施することができ、最終的な結果は、所望の型を有する抗体を発現する抗原特異的B細胞のサブ集団である。
従来の抗体または重鎖抗体を展示するラクダ科動物のB細胞の内容においては、2つのサブ集団のうちの1つの富化の2つの方法を想定することができる。
第1の手法においては、スーパー抗原プロテインGが、一般リガンドとして本発明において有用である。プロテインGは、重鎖中のCH1定常ドメインに結合する。有意な割合の重鎖抗体がプロテインGに結合しない(しかし、プロテインAには良好に結合する)ことが示され(Hamers-Castermanら(1993) Nature, 363, 446-448)、この差異を用いて、動物血清を分析する場合、クロマトグラフィー手段により、重鎖ラクダ抗体から従来のラクダ抗体を分離した。明らかに、重鎖抗体中でのCH1ドメインの欠失は、固定化されたプロテインGへの結合の不在の原因となる。本発明においては、プロテインG(好ましくは、固相支持体上に固定したもの)を用いて、従来の抗体を発現するB細胞(これらの細胞はプロテインGに結合するであろう)を富化するか、または重鎖抗体を発現するB細胞(これらの細胞はプロテインGに結合しないであろう)を富化することができる。あるいは、プロテインGを蛍光染料(2〜3の例を挙げると、フルオレセイン、Cy3、Cy5、テキサスレッドなど)を用いて標識し、B細胞集団と共にインキュベートすることができる。次いで、従来の抗体を発現するB細胞を、蛍光活性化細胞選別装置(FACS)上で様々なサブ集団について分類することにより、重鎖抗体を発現するB細胞から分離することができる。明らかに、プロテインGの代わりに、ラクダ科動物の抗体のCH1ドメインに対するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗血清を使用することができる。また、この手法を拡張することにより、抗体軽鎖(軽鎖可変ドメイン、軽鎖定常ドメインまたはその両方)に対するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗血清は、重鎖抗体を発現するB細胞サブ集団から、従来のドメインを発現するB細胞サブ集団を分離させるであろう。
第2の手法においては、軽鎖可変ドメインが、本発明において有用である。本発明の導入部分に記載のように、可変軽鎖ドメインは、重鎖可変ドメインと対形成するものとして従来の抗体中に常に見出される。対照的に、重鎖抗体は軽鎖可変ドメインを有さない。かくして、一方(従来の抗体)で、VHドメイン上のVL結合部位は、VLドメインにより占有されるが、重鎖抗体においては、VHHドメイン上のVL結合部位は未占有のままである。ラクダ科動物の重鎖のVHH可変ドメインは、VL結合を防止すると考えられるVL結合部位上に突然変異を獲得した。しかしながら、VHHドメイン中で、これらの突然変異(Kabatの番号付けによると、位置37、44、45および47)は常に同一であるわけではなく、より重要なことには、同じ時点で全ての位置に常に存在するわけでもないことを指摘することは価値がある。この変動性の程度は、溶液中での可溶性およびモノマー状態などの生物物理的特性にとって、この特質は有益であるかもしれないが、有利には、長いCDR3、位置W103(Kabatの番号付け)での突然変異およびまた、CDR内のアミノ酸組成などの他の特徴により置換することができることを示唆している。そのようなラクダVHH配列の例を、特許に見出すことができる(WO 2004041862、表1,4,5,6; WO 2004041865、表4; WO 2004041863、表4,5,7,8)。かくして、有意な割合のラクダ重鎖可変ドメインは、従来の抗体の重鎖可変ドメインのVL境界と同種の前者のVL境界を提供する。これは、B細胞のそのような集団を、固定化され、単離されたVLドメイン(ラクダ科動物もしくは他の哺乳動物に由来する)または染料により標識されたVLドメインと接触させることにより、従来の抗体を発現するB細胞から分離することができるという結論を誘導する。その組み合わせ特性により、VLおよびVHドメインは乱雑であり、鎖シャッフリングによる従来の抗体の親和性成熟を可能にする(Marksら(1992) Biotechnology (NY) 10, 779-783)。従って、そのような選択のための乱雑な軽鎖可変ドメインを発見する可能性は、比較的良好である。VLドメインと、モノマー重鎖VHHとのモノマー性相互作用が、VLドメインと従来のVHドメインとの相互作用よりも低い場合でも、提唱された選択スキームはこの問題を軽減することにも留意すべきである。実際、VLドメインを固定することにより、およびそれをB細胞と接触させることにより、B細胞の表面上での多くの同一コピーの抗体の展示に起因して、大きいアビディティ作用が起こるであろう。
本発明の1つの興味深い実施形態は、B細胞の表面で様々な型の従来の抗体をも識別するためのVLドメインの使用である。VHドメインに対するVLドメインの親和性は、変化してもよい(10-9 M〜10-6 Mの解離定数- Pluckthun (1992) Immunol. Rev. 130, 151-188により概説されている)。従って、従来の抗体内でも、VLおよびVHドメインの間の様々な程度の対形成強度を有する様々なサブ集団の存在を予想することができる。従来の抗体を展示するB細胞の選択のために固定化されたVLドメインを用いることにより、抗体内のVLおよびVHドメインの間の対形成は弱いが、固定化されたVLドメインが過剰であるため、VHドメインと固定化されたVLドメインとの対形成が促進され、それによって、B細胞の固定をもたらす、従来の抗体を発現するB細胞を単離することができる。この手法は、単一可変ドメインの再フォーマットを考える場合、重要な特性である、高度に乱雑なVHドメインを担持する従来の抗体を発現するB細胞サブ集団を選択するのに役立つため、特に興味深い。
I.抗体軽鎖可変ドメインを用いる選択
一実施形態においては、本発明は、抗体ポリペプチドのレパートリーから、標的リガンドと、標的リガンドの特異性に関係なく該レパートリーの機能的メンバーに結合することができる一般リガンドとに結合する機能的可変ドメインの集団を選択する方法であって、
a)該レパートリーを該一般リガンドと接触させ、それに結合した機能的可変ドメインを選択する工程;および
b)選択された機能的可変ドメインを、標的リガンドと接触させ、標的リガンドに結合する可変ドメインの集団を選択する工程、
を含み、該可変ドメインは重鎖可変ドメインであり、該一般リガンドは抗体軽鎖可変ドメインである、前記方法を提供する。
本発明は、選択された重鎖可変ドメインが、IgG、Fab、Fab'、F(ab)2、F(ab')2、scFv、Fvおよびジスルフィド結合したFv、すなわち、少なくとも1個の重鎖および軽鎖可変ドメイン対を有する抗体または抗体フラグメント上に存在してもよいことを意図する。いかなる理論によっても束縛されることを意図するものではないが、これらの対のいくつかの例においては、ドメインが、主に排他的または優勢的に可変ドメインの1つを有する抗原結合を介して抗原に遭遇し得るという点で、可変ドメイン対は緩く相補的であり、該対においては、任意の優勢な程度でその逆ではない。例えば、いくつかのVH/VL対、例えば、いくつかのヒトまたはラクダ4鎖IgGにおいては、重鎖可変ドメインは、抗原との優勢な/排他的な結合接触を提供し得る。かくして、本出願は、工程a)において用いられる軽鎖可変ドメインは、緩いVH/VL相補性を有する抗体またはフラグメント(IgG、Fab、Fab'、F(ab)2、F(ab')2、scFv、Fvおよびジスルフィド結合したFv)により提供された少なくとも1個のVHに結合するため、抗体ポリペプチド集団から本明細書に記載の抗体または抗体フラグメントを選択するための適用を有する。これは、単一可変ドメイン(dAbもしくはNanobody(商標))、診断、治療および/もしくは予防用生成物、またはこれらの開発のための出発点として用いることができるVHを選択する有用な方法を提供する。選択された抗体または抗体フラグメント自身は、例えば、「通気性」または緩いVH/VL対が利点である抗原を扱うためのそのような生成物としての有用性を有し得る。かくして、例えば、本発明を用いて、IgGの集団、例えば、ラクダもしくはヒトIgGまたはヒト化もしくはキメラIgGの集団に由来するサブセットとしてそのような望ましいIgGのそのような選択を作ることができる。この概念の延長として、第I節および第II節に記載の本発明を用いて、二特異的リガンドが、対中の各可変ドメインが対応する抗原に結合する少なくとも1個のVH/VLまたはVH/VHまたはVL/VL対を有する、WO03002609A2、WO04003019A2およびWO04058821A2のいずれか1つに開示された二特異的リガンドを含む抗体または抗体フラグメント(例えば、IgG、Fab、Fab'、F(ab)2、F(ab')2、ダイアボディ、scFv対形成されたダイマー)を選択することができる。この抗原種は同じであってもよく(例えば、両方ともTNFαに結合するVHおよびVL、vWF、血清アルブミンもしくは本明細書に開示される任意の他の標的抗原)、または可変ドメインは異なる抗原種に結合してもよく、例えば、一方は血清アルブミンに結合し、他方はTNFαもしくは任意の他の標的抗原に結合してもよい。
一実施形態においては、抗体ポリペプチドの集団は、抗体単一可変ドメインの集団である。かくして、該集団は、ラクダ科動物またはヒトの抗体重鎖可変ドメインの集団であってよい。一実施形態においては、それはVHHドメインまたはNanobody(商標)の集団である。
必要に応じて、工程b)における重鎖可変ドメインは、ラクダ科動物の可変ドメイン(VHH)、Nanobody(商標)であり、もしくはラクダ科動物の重鎖抗体(H2抗体)から誘導されたものである;または必要に応じて、それぞれの重鎖可変ドメインは、ヒト可変ドメインであるか、もしくはヒトから誘導されたものである。
好ましくは、抗体ポリペプチドのレパートリーを、最初に標的リガンドと接触させた後、一般リガンドと接触させる。あるいは、抗体ポリペプチドを一般リガンドと接触させた後、標的リガンドと接触させる。
好ましくは、一般リガンドはレパートリー中の可変ドメインのサブセットに結合する。1つの例においては、重鎖可変ドメインの2個以上のサブセットを、ポリペプチドのレパートリーから選択する。この場合の選択を、2個以上の一般リガンド、すなわち、2個以上の異なる軽鎖可変ドメインを用いて実施することができる。好ましくは、2個以上のサブセットを、本発明に従う軽鎖可変ドメインに対して選択することができるポリペプチドのさらなるレパートリーを作製するための選択後に混合する。
一実施形態においては、ポリペプチドの2個以上のレパートリーを、一般リガンド(同じか、または異なってもよい一般リガンド)と接触させた後、それによって得られたポリペプチドのサブセットを混合する。
本発明の別の態様においては、抗体ポリペプチドの集団から少なくとも1個の抗体重鎖可変ドメインを選択する方法であって、
a)該集団を抗体軽鎖可変ドメインと接触させる工程、および
b)軽鎖可変ドメインに結合する少なくとも1個の抗体重鎖可変ドメインを選択する工程、
を含む、前記方法が提供される。
上記の実施形態と同様、選択された重鎖可変ドメインが、IgG、Fab、Fab'、F(ab)2、F(ab')2、scFv、Fvおよびジスルフィド結合したFv、すなわち、少なくとも1個の重鎖および軽鎖可変ドメイン対を有する抗体または抗体フラグメント上に存在してもよいことが意図される。緩いVH/VL対からのVHの選択に関する上記の考察は、ここにも適用される。
好ましくは、工程a)の前に、抗体ポリペプチドを標的リガンドと接触させ、標的リガンドに結合する抗体ポリペプチドを選択し、それによって、工程a)で用いられる抗体ポリペプチドの前記集団を提供する工程を行う。
好ましくは、工程b)の後に、工程b)で選択された抗体重鎖可変ドメインを標的リガンドと接触させ、標的リガンドに結合する重鎖可変ドメインを選択する工程を行う。
好ましくは、工程b)で選択されたそれぞれの重鎖ドメインは、ラクダ科動物から誘導された重鎖可変ドメイン;VHHドメイン;Nanobody(商標);位置44にグリシンを有するVHH;位置45にロイシンを有するVHH;位置47にトリプトファンを有するVHH;位置44にグリシンを有し、位置45にロイシンを有するVHH;位置44にグリシンを有し、位置47にトリプトファンを有するVHH;位置45にロイシンを有し、位置47にトリプトファンを有するVHH;位置44にグリシン、位置45にロイシンおよび位置47にトリプトファンを有するVHH;位置103にトリプトファンまたはアルギニンを有するVHHからなる群に由来するものである。番号付けは、Kabatの番号付け協定(Kabatら、1991, Sequences of Immunological Interest、第5版、U.S. Dept. Health & Human Services, Washington, D.C.)に従う。
好ましくは、工程b)で選択されたそれぞれの重鎖ドメインは、ヒト化ラクダ科動物もしくはマウス重鎖可変ドメインまたはヒト化Nanobody(商標)である。
好ましくは、工程b)で選択されたそれぞれの重鎖ドメインは、ヒト重鎖可変ドメイン;ヒトから誘導された重鎖可変ドメイン;またはヒト化重鎖可変ドメイン(例えば、ヒト化ラクダ科動物もしくはマウス可変ドメイン)である。
好ましくは、軽鎖可変ドメインは、ヒト軽鎖可変ドメイン;ヒトから誘導されたもの;生殖系列遺伝子配列DPK9によりコードされるFW2と同一であるFW2配列を有する軽鎖可変ドメイン;またはヒト境界領域(すなわち、ヒトVH/VL対において通常はVHドメインと適合する領域)を有する軽鎖ドメイン(例えば、ラクダ科動物に由来するVL)である。別の例においては、軽鎖可変ドメインは、ラクダ科動物の軽鎖可変ドメインまたはラクダ科動物から誘導されたものである。
好ましくは、工程a)における集団を、B細胞、例えば、末梢血リンパ球の集団により提供する。1つの例においては、B細胞を、標的抗原で免疫した哺乳動物(例えば、マウスまたはラクダ科動物、例えば、ラマもしくはラクダ)から単離する。別の例においては、B細胞を、標的抗原で免疫されていない哺乳動物(例えば、マウスまたはラクダ科動物、例えば、ラマもしくはラクダ)から単離する。
あるいは、工程a)で用いられる集団を、合成的に再編成された抗体遺伝子によりコードされた抗体ポリペプチドのレパートリーにより提供する。
一実施形態においては、工程a)で用いられる集団を、前記抗体ポリペプチドを展示するバクテリオファージを含むファージディスプレイライブラリーにより提供する。そのようなライブラリーの例は、WO99/20749に開示されている。また、ファージディスプレイライブラリーの例については、WO04003019A2、WO05044858A1、WO04062551A2、WO04041867A2、WO04041865A2、WO04041863A2およびWO04041862A2も参照されたい。
一実施形態においては、工程a)で用いられる集団は、(i)軽鎖可変ドメインと対形成していない少なくとも1個の重鎖可変ドメインをそれぞれ含む抗体ポリペプチド;および(ii)軽鎖可変ドメインと対形成した重鎖可変ドメインをそれぞれ含む抗体ポリペプチドを含む。かくして、例えば、本発明の方法は、例えば、IgGの形態で、対形成したVドメインをも含む混合集団から、抗体単一可変ドメイン(すなわち、対形成していないVドメイン)を選択するのに有用である。かくして、本発明は、ラクダ科動物の4鎖IgG(対形成したVH/VLドメインを有する)をも含む混合集団(例えば、末梢血リンパ球などのB細胞により提供される)からVHH単一可変ドメインを選択するのに有用である。同様に、ヒト4鎖IgGをも含む混合集団からヒトVHを選択するのに有用である。単一可変ドメインを、VH/VL対が上記のように「通気性」であるIgGに沿って選択する場合、工程b)の後に、単一可変ドメインを選択されたIgGから分離する(例えば、サイズに基づいて、または任意の他の従来の技術により)追加の工程が存在してもよい。
本発明の任意の実施形態を用いて選択された単一可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を、B細胞またはファージ(または酵母もしくは表現型と遺伝子型を接続するライブラリー中で用いられる任意の他の系)から単離し、該可変ドメインの発現のために発現ベクター中に挿入することができる。必要に応じて、ヌクレオチド配列を突然変異させ(例えば、CDR3および/もしくはFW中への1個以上の突然変異の導入による)、および/または1個以上の抗体ドメイン(例えば、別の単一可変ドメイン)、抗体Fcドメイン、標識もしくはエフェクター基に機能し得る形で連結した後、発現ベクターから発現させることができる。
好ましくは、工程a)で用いられる集団は、ラクダ科動物の重鎖単一可変ドメイン(VHH)またはNanobody(商標)を含む。
好ましくは、工程a)で用いられる集団は、ヒト重鎖単一可変ドメイン(VH)を含む。
1つの特に好ましい実施形態においては、標的抗原で免疫されたラクダ科動物から単離されたB細胞により提供されるラクダ科動物の抗体ポリペプチドの集団から、少なくとも1種のラクダ科動物の抗体VHHドメインを選択する方法であって、
a)該集団を抗体軽鎖可変ドメインと接触させる工程、および
b)軽鎖可変ドメインに結合する少なくとも1個のVHHドメインを選択する工程、
を含む、前記方法が提供される。
この好ましい実施形態においては、好ましくは、軽鎖可変ドメインは、ヒト軽鎖可変ドメインである。
この好ましい実施形態においては、好ましくは、B細胞を、それぞれ、平均で1個のB細胞型を含む複数のウェルまたは容器中で提供する。
本発明はまた、(i)抗体ポリペプチドの出発集団に対してSLAM(選択リンパ球抗体法)を実施するために標的抗原を使用して、標的抗原に結合する抗体ポリペプチドの集団を選択すること、および(ii)本発明の方法の工程a)において用いられる抗体ポリペプチドの集団として、選択された集団を使用することを含む方法も提供する。
本発明の方法においては、工程b)において、少なくとも1個の選択された抗体重鎖可変ドメインを、タンパク質部分に融合させるか、またはコンジュゲートさせるのが好ましい。好ましくは、このタンパク質部分を、バクテリオファージコートタンパク質、1種以上の抗体ドメイン、抗体Fcドメイン、酵素、毒素、標識およびエフェクター基から選択する。
好ましくは、工程b)において、少なくとも1種の選択された抗体重鎖可変ドメインは、IgG、Fab、Fab'、F(ab)2、F(ab')2、scFv、Fvおよびジスルフィド結合したFvから選択される抗体または抗体フラグメントの一部である。
本発明はまた、ポリペプチドが工程a)およびb)を含む方法により取得可能であり、該方法中の軽鎖可変ドメインがヒト軽鎖可変ドメインであり、重鎖可変ドメインが非ヒト哺乳動物、例えば、ラクダ科動物に由来するものである、抗体重鎖可変ドメインを含むか、またはそれからなる単離された抗体ポリペプチドも提供する。好ましくは、重鎖可変ドメインは、ラクダ科動物から誘導された重鎖可変ドメイン;VHHドメイン;Nanobody(商標);位置44にグリシンを有するVHH;位置45にロイシンを有するVHH;位置47にトリプトファンを有するVHH;位置44にグリシンを有し、位置45にロイシンを有するVHH;位置44にグリシンを有し、位置47にトリプトファンを有するVHH;位置45にロイシンを有し、位置47にトリプトファンを有するVHH;位置44にグリシン、位置45にロイシンおよび位置47にトリプトファンを有するVHH;位置103にトリプトファンまたはアルギニンを有するVHHからなる群に由来するものである。
好ましくは、重鎖可変ドメインを、ラクダ科動物のIgGまたはラクダ科動物から誘導されたIgGの一部として提供する。
好ましくは、重鎖可変ドメインを、ヒトIgGまたはヒトから誘導されたIgGの一部として提供し、ここで重鎖可変ドメインはIgG中で、前記方法の工程a)で用いられる軽鎖可変ドメインとは異なる軽鎖可変ドメインと対形成する。
本発明はまた、医薬としてのそのような抗体ポリペプチドの使用も提供する。
本発明はまた、ヒトにおける疾患または症状の治療および/または予防のためのそのような抗体ポリペプチドの使用も提供する。適用可能な症状および疾患は、送達経路、投与および製剤化と同様、WO04003019A2、WO05044858A1、WO04062551A2、WO04041867A2、WO04041865A2、WO04041863A2およびWO04041862A2に開示されている。これらの特定の開示は全部、本発明に対する適用のための好適な例として、参照により明確に本開示に組み入れられるものとする。
II.抗体重鎖可変ドメインを用いる選択
一実施形態においては、本発明は、抗体ポリペプチドのレパートリーから、標的リガンドと、標的リガンドの特異性に関係なく該レパートリーの機能的メンバーに結合することができる一般リガンドとに結合する機能的可変ドメインの集団を選択する方法であって、
a)該レパートリーを該一般リガンドと接触させ、それに結合した機能的可変ドメインを選択する工程;および
b)選択された機能的可変ドメインを標的リガンドと接触させ、標的リガンドに結合する可変ドメインの集団を選択する工程、
を含み、ここで可変ドメインは軽鎖可変ドメインであり、一般リガンドは抗体重鎖可変ドメインである、前記方法を提供する。
本発明は、選択された軽鎖可変ドメインが、IgG、Fab、Fab'、F(ab)2、F(ab')2、scFv、Fvおよびジスルフィド結合したFv、すなわち、少なくとも1個の重鎖および軽鎖可変ドメイン対を有する抗体または抗体フラグメント上に存在してもよいことを意図する。いかなる理論によっても束縛されることを意図するものではないが、これらの対のいくつかの例においては、ドメインが、主に排他的または優勢的に可変ドメインの1つを有する抗原結合を介して抗原に遭遇し得るという点で、可変ドメイン対は緩く相補的であり、該対においては、任意の優勢な程度でその逆ではない。例えば、いくつかのVH/VL対、例えば、いくつかのヒトまたはラクダ4鎖IgGにおいては、軽鎖可変ドメインは、抗原との優勢な/排他的な結合接触を提供し得る。かくして、本出願は、工程a)において用いられる重鎖可変ドメインは、緩いVH/VL相補性を有する抗体またはフラグメント(IgG、Fab、Fab'、F(ab)2、F(ab')2、scFv、Fvおよびジスルフィド結合したFv)により提供された少なくとも1個のVLに結合するため、抗体ポリペプチド集団から本明細書に記載の抗体または抗体フラグメントを選択するための適用を有する。これは、単一可変ドメイン(dAbもしくはNanobody(商標))、診断、治療および/もしくは予防用生成物、またはこれらの開発のための出発点として用いることができるVLを選択する有用な方法を提供する。選択された抗体または抗体フラグメント自身は、例えば、「通気性」または緩いVH/VL対が利点である抗原を扱うためのそのような生成物としての有用性を有し得る。かくして、例えば、本発明を用いて、IgGの集団、例えば、ラクダもしくはヒトIgGまたはヒト化もしくはキメラIgGの集団に由来するサブセットとしてそのような望ましいIgGのそのような選択を作ることができる。この概念の延長として、第I節および第II節に記載の本発明を用いて、二特異的リガンドが、対中の各可変ドメインが対応する抗原に結合する少なくとも1個のVH/VLまたはVH/VHまたはVL/VL対を有する、WO03002609A2、WO04003019A2およびWO04058821A2のいずれか1つに開示された二特異的リガンドを含む抗体または抗体フラグメント(例えば、IgG、Fab、Fab'、F(ab)2、F(ab')2、ダイアボディ、scFv対形成されたダイマー)を選択することができる。この抗原種は同じであってもよく(例えば、両方ともTNFαに結合するVHおよびVL、vWF、血清アルブミンもしくは本明細書に開示される任意の他の標的抗原)、または可変ドメインは異なる抗原種に結合してもよく、例えば、一方は血清アルブミンに結合し、他方はTNFαもしくは任意の他の標的抗原に結合してもよい。
一実施形態においては、抗体ポリペプチドの集団は、抗体単一可変ドメインの集団である。かくして、該集団は、ラクダ科動物またはヒトの抗体軽鎖可変ドメインの集団であってよい。
必要に応じて、工程b)における軽鎖可変ドメインは、ラクダ科動物の軽鎖ドメイン、もしくはラクダ科動物から誘導されたものである;または必要に応じて、それぞれの軽鎖可変ドメインは、ヒト可変ドメインであるか、もしくはヒトから誘導されたものである。
好ましくは、抗体ポリペプチドのレパートリーを、最初に標的リガンドと接触させた後、一般リガンドと接触させる。あるいは、抗体ポリペプチドを一般リガンドと接触させた後、標的リガンドと接触させる。
好ましくは、一般リガンドはレパートリー中の可変ドメインのサブセットに結合する。1つの例においては、重鎖可変ドメインの2個以上のサブセットを、ポリペプチドのレパートリーから選択する。この場合の選択を、2個以上の一般リガンド、すなわち、2個以上の異なる重鎖可変ドメインを用いて実施することができる。好ましくは、2個以上のサブセットを、本発明に従う重鎖可変ドメインに対して選択することができるポリペプチドのさらなるレパートリーを作製するための選択後に混合する。
一実施形態においては、ポリペプチドの2個以上のレパートリーを、一般リガンド(同じか、または異なってもよい一般リガンド)と接触させた後、それによって得られたポリペプチドのサブセットを混合する。
本発明の別の態様においては、抗体ポリペプチドの集団から少なくとも1個の抗体軽鎖可変ドメインを選択する方法であって、
a)該集団を抗体重鎖可変ドメインと接触させる工程、および
b)重鎖可変ドメインに結合する少なくとも1個の抗体軽鎖可変ドメインを選択する工程、
を含む、前記方法が提供される。
上記の実施形態と同様、選択された軽鎖可変ドメインが、IgG、Fab、Fab'、F(ab)2、F(ab')2、scFv、Fvおよびジスルフィド結合したFv、すなわち、少なくとも1個の重鎖および軽鎖可変ドメイン対を有する抗体または抗体フラグメント上に存在してもよいことが意図される。緩いVH/VL対からのVHの選択に関する上記の考察は、ここにも適用される。
好ましくは、工程a)の前に、抗体ポリペプチドを標的リガンドと接触させ、標的リガンドに結合する抗体ポリペプチドを選択し、それによって、工程a)で用いられる抗体ポリペプチドの前記集団を提供する工程を行う。
好ましくは、工程b)の後に、工程b)で選択された抗体軽鎖可変ドメインを標的リガンドと接触させ、標的リガンドに結合する軽鎖可変ドメインを選択する工程を行う。
好ましくは、工程b)で選択されたそれぞれの軽鎖ドメインは、ヒト化ラクダ科動物またはマウス軽鎖可変ドメインである。
好ましくは、工程b)で選択されたそれぞれの軽鎖ドメインは、ヒト軽鎖可変ドメイン;ヒトから誘導された軽鎖可変ドメイン;またはヒト化軽鎖可変ドメイン(例えば、ヒト化ラクダ科動物もしくはマウス可変ドメイン)である。
好ましくは、重鎖可変ドメインは、ヒト重鎖可変ドメイン;ヒトから誘導されたもの;生殖系列遺伝子配列DP47によりコードされるFW2と同一であるFW2配列を有する軽鎖可変ドメイン;または生殖系列遺伝子配列DP47によりコードされる位置44、45および47と同一である位置44、45および47を有する重鎖可変ドメイン;またはヒト境界領域(すなわち、ヒトVH/VL対において通常はVLドメインと適合する領域)を有する重鎖ドメイン(例えば、ラクダ科動物に由来するVH)である。別の例においては、重鎖可変ドメインは、ラクダ科動物の重鎖可変ドメインまたはラクダ科動物から誘導されたものである。
好ましくは、工程a)における集団を、B細胞、例えば、末梢血リンパ球の集団により提供する。1つの例においては、B細胞を、標的抗原で免疫した哺乳動物(例えば、マウスまたはラクダ科動物、例えば、ラマもしくはラクダ)から単離する。別の例においては、B細胞を、標的抗原で免疫されていない哺乳動物(例えば、マウスまたはラクダ科動物、例えば、ラマもしくはラクダ)から単離する。
あるいは、工程a)で用いられる集団を、合成的に再編成された抗体遺伝子によりコードされる抗体ポリペプチドのレパートリーにより提供する。
一実施形態においては、工程a)で用いられる集団を、該抗体ポリペプチドを展示するバクテリオファージを含むファージディスプレイライブラリーにより提供する。そのようなライブラリーの例は、WO99/20749に開示されている。また、ファージディスプレイライブラリーの例については、WO04003019A2、WO05044858A1、WO04062551A2、WO04041867A2、WO04041865A2、WO04041863A2およびWO04041862A2も参照されたい。
一実施形態においては、工程a)で用いられる集団は、(i)重鎖可変ドメインと対形成していない少なくとも1個の軽鎖可変ドメインをそれぞれ含む抗体ポリペプチド;および(ii)軽鎖可変ドメインと対形成した重鎖可変ドメインをそれぞれ含む抗体ポリペプチドを含む。かくして、例えば、本発明の方法は、例えば、IgGの形態で、対形成したVドメインをも含む混合集団から、抗体単一可変ドメイン(すなわち、対形成していないVドメイン)を選択するのに有用である。かくして、本発明は、ラクダ科動物の4鎖IgG(対形成したVH/VLドメインを有する)をも含む混合集団(例えば、末梢血リンパ球などのB細胞により提供される)からVL単一可変ドメインを選択するのに有用である。単一可変ドメインを、VH/VL対が上記のように「通気性」であるIgGに沿って選択する場合、工程b)の後に、単一可変ドメインを選択されたIgGから分離する(例えば、サイズに基づいて、または任意の他の従来の技術により)追加の工程が存在してもよい。
本発明の任意の実施形態を用いて選択された単一可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を、B細胞またはファージ(または酵母もしくは表現型と遺伝子型を接続するライブラリー中で用いられる任意の他の系)から単離し、該可変ドメインの発現のために発現ベクター中に挿入することができる。必要に応じて、ヌクレオチド配列を突然変異させ(例えば、CDR3および/もしくはFW中への1個以上の突然変異の導入による)、および/または1個以上の抗体ドメイン(例えば、別の単一可変ドメイン)、抗体Fcドメイン、標識もしくはエフェクター基に機能し得る形で連結した後、発現ベクターから発現させることができる。
好ましくは、工程a)で用いられる集団は、ラクダ科動物の軽鎖単一可変ドメインを含む。
好ましくは、工程a)で用いられる集団は、ヒト軽鎖単一可変ドメイン(VL)を含む。
本発明はまた、(i)抗体ポリペプチドの出発集団に対してSLAM(選択リンパ球抗体法)を実施するために標的抗原を使用して、標的抗原に結合する抗体ポリペプチドの集団を選択すること、および(ii)本発明の方法の工程a)において用いられる抗体ポリペプチドの集団として、選択された集団を使用することを含む方法も提供する。
本発明の方法においては、工程b)において、少なくとも1個の選択された抗体軽鎖可変ドメインを、タンパク質部分に融合させるか、またはコンジュゲートさせるのが好ましい。好ましくは、このタンパク質部分を、バクテリオファージコートタンパク質、1種以上の抗体ドメイン、抗体Fcドメイン、酵素、毒素、標識およびエフェクター基から選択する。
好ましくは、工程b)において、少なくとも1種の選択された抗体軽鎖可変ドメインは、IgG、Fab、Fab'、F(ab)2、F(ab')2、scFv、Fvおよびジスルフィド結合したFvから選択される抗体または抗体フラグメントの一部である。
本発明はまた、ポリペプチドが工程a)およびb)を含む方法により取得可能であり、該方法における重鎖可変ドメインがヒト重鎖可変ドメインであり、重鎖可変ドメインが非ヒト哺乳動物、例えば、ラクダ科動物に由来するものである、抗体軽鎖可変ドメインを含むか、またはそれからなる単離された抗体ポリペプチドも提供する。好ましくは、軽鎖可変ドメインはラクダ科動物から誘導されたものである。好ましくは、軽鎖可変ドメインを、ラクダ科動物のIgGまたはラクダ科動物から誘導されたIgGの一部として提供する。
好ましくは、軽鎖可変ドメインを、ヒトIgGまたはヒトから誘導されたIgGの一部として提供し、ここで軽鎖可変ドメインはIgG中で、前記方法の工程a)で用いられる重鎖可変ドメインとは異なる重鎖可変ドメインと対形成する。
本発明はまた、医薬としてそのような抗体ポリペプチドの使用も提供する。
本発明はまた、ヒトにおける疾患または症状の治療および/または予防のためのそのような抗体ポリペプチドの使用も提供する。適用可能な症状および疾患は、送達経路、投与および製剤化と同様、WO04003019A2、WO05044858A1、WO04062551A2、WO04041867A2、WO04041865A2、WO04041863A2およびWO04041862A2に開示されている。これらの特定の開示は全部、本発明に対する適用のための好適な例として、参照により明確に本開示に組み入れられるものとする。
一実施形態においては、抗体重鎖可変ドメインの集団を、I節に記載の方法に従って選択し、抗体軽鎖可変ドメインの集団を、II節に記載の方法に従って選択した後、それによって得られた集団を混合する。
III.T細胞受容体ドメインを用いる選択
本発明は、ポリペプチドのレパートリーから、標的リガンドと、標的リガンドの特異性に関係なく該レパートリーの機能的メンバーに結合することができる一般リガンドとに結合する機能的T細胞受容体ドメインの集団を選択する方法であって、
a)該レパートリーを該一般リガンドと接触させ、それに結合した機能的T細胞受容体ドメインを選択する工程;および
b)選択された機能的T細胞受容体ドメインを標的リガンドと接触させ、標的リガンドに結合するT細胞受容体ドメインの集団を選択する工程、
を含み、a)T細胞受容体ドメインがVαドメインであり、一般リガンドがT細胞受容体Vβドメインであるか、またはb)T細胞ドメインがT細胞受容体Vβドメインであり、一般リガンドがT細胞受容体Vαドメインである、前記方法を提供する。
必要に応じて、a)において、T細胞受容体Vαドメインはラクダ科動物から誘導されたラクダ科動物ドメインであるか、または必要に応じて、a)およびb)において、それぞれのT細胞受容体ドメインはヒトドメインであるか、もしくはヒトから誘導されたものである。
好ましくは、T細胞受容体Vαドメインの集団を、前記方法に従って選択し、T細胞受容体Vβドメインの集団を、前記方法に従って選択した後、それによって得られた集団を混合する。
さらなる実施例
実施例A1:2回のバイオパンニングラウンドにおける、免疫したラマからの抗原特異的重鎖抗体の可変ドメインの単離
1頭の成体ラマに、1 mgのヒト破傷風トキソイド(TT)を0、7、14、21、28、35、42、49および54日目に注入する。血清を回収した後、免疫原に対する免疫応答を追跡するためにそれぞれの注入を行う。抗凝固処理血液(150 ml)を免疫した動物から回収し、末梢血リンパ球(PBL)をUnisep(WAK Chemie, Germany)を用いて調製する。
滅菌ELISAプレートを、プロテインG(10μg/ml、4℃で一晩)で被覆した後、滅菌PBSで洗浄し、滅菌したPBS-10% IgGを枯渇させたFCS(ウシ胎仔血清)でブロックし、次いで、PBSで再度洗浄する。
滅菌ELISAプレートを、TT(10μg/ml、4℃で一晩)で被覆した後、滅菌PBSで洗浄し、滅菌したPBS-10% IgGを枯渇させたFCS(ウシ胎仔血清)でブロックし、次いで、PBSで再度洗浄する。
精製されたPBL(PBS中)を最初にプロテインGで被覆したウェルに添加し、37℃で少なくとも1時間結合させる。上清中の未結合の細胞(主に重鎖抗体を展示するか、または抗体を展示しない)を、それぞれのプロテインGで被覆したウェルから注意深く除去し、混合する。
重鎖を発現するB細胞中で富化された細胞集団を、TTで被覆されたウェルに添加し(ウェルあたり300個の細胞およびウェルあたり1,500個の細胞の密度)、37℃で少なくとも1時間結合させる。上清中の未結合の細胞を、培養培地で10回洗浄することにより除去する。抗原特異的重鎖抗体を発現する残りの細胞を、被覆抗原、T細胞条件化培地(3%)およびEL-4細胞(5 x 104個/ウェル)の存在下で7日間培養する。
抗原特異的抗体を分泌する陽性ウェルを、プロテインA-西洋わさびペルオキシダーゼコンジュゲートおよびTMB基質を用いるELISAによって、新鮮なTT被覆ウェル中で抗体結合について少量の培養上清を分析することにより同定する。
陽性のB細胞ウェルを、さらなる処理のために選択する:B細胞をペレット化し、上清を除去し、細胞ペレットを10μlの新鮮な培地(1〜6%のT細胞条件化培地を含むDMEMまたはRPMI)に再懸濁する。チューブあたり以下の混合物を用いるMJ Research Robus RT-PCRキット(カタログ番号F-580L)を用いるPCRのためにアリコート(それぞれ2μl)を取得して、重鎖可変ドメインを単離する:
DEPC水 35.5μl
10xバッファー 5μl
dNTPS 1μl
10%NP-40 2.5μl
RNAsin 0.5μl
RT 1μl
ポリメラーゼ 2μl
プライマーミックス(*)1μl(それぞれ10μM)
MgCl2 1.5
PCRプログラム:50℃で30分、次いで、94℃で2分、次いで[94℃/1分、55℃/1分、72℃/1分]の40サイクル。最後の伸長反応:72℃/5分
*:ミックスは以下の2個のプライマーを含む:オリゴ-dTプライマーおよび単一の縮重FR1プライマー:PstI制限部位をコードする5’-GAGGTBCARCTGCAGGASTCYGG-3’。
1,300 bpの断片を、PstIおよびBstEIIを用いて切断する。後者の酵素は、重鎖抗体のフレームワーク4をコードするDNA断片を切断することが多い。
消化した産物を、電気泳動およびUV照明の後にアガロースゲルから単離し、クローニングベクターの対応する部位に連結して、増殖のための選択的抗生物質条件下で、大腸菌中で増殖させることができる。
連結されたベクターを用いて、大腸菌細胞を形質転換し、PstI/BstEII挿入物を配列決定して、重鎖可変ドメインのDNA配列を明らかにする。
実施例B:バイオパンニングおよびフローサイトメトリーによる、免疫したラマからの抗原特異的重鎖抗体の可変ドメインの単離
1頭の成体ラマに、1 mgのヒト破傷風トキソイド(TT)を0、7、14、21、28、35、42、49および54日目に注入する。血清を回収した後、免疫原に対する免疫応答を追跡するためにそれぞれの注入を行う。抗凝固処理血液(150 ml)を免疫した動物から回収し、末梢血リンパ球(PBL)をUnisep(WAK Chemie, Germany)を用いて調製する。
滅菌ELISAプレートを、VLドメイン(例えば、Conrathら(2005) J. Mol Biol. 350, 112-25に記載のVLドメイン)(10μg/ml、4℃で一晩)で被覆した後、滅菌PBSで洗浄し、滅菌したPBS-10% IgGを枯渇させたFCS(ウシ胎仔血清)でブロックし、次いで、PBSで再度洗浄する。
破傷風トキソイドを、曝露されたリジン残基のアミノ基に特異的なN-ヒドロスクシンイミジル基(NHS)を用いてテキサスレッドで、またはフルオレセイン-イソチオシアネート(FITC)で標識する。過剰の蛍光標識を、標識されたTTをPD10カラム(Amersham Biosciences)上に通過させることにより除去する。テキサスレッドまたはFITCによる標識の程度を、質量分析法(MALDI-TOF)により評価する。
精製されたPBLを、最初に室温で30分間、標識されたTTと共にインキュベートする(106個の細胞につき1μgの標識されたTT)。任意工程:細胞を200 gで5分間遠心分離することによりペレット化し、0.5 mlのPBSに再懸濁する。次いで、細胞を、自動細胞貯蔵装置を備えたフローサイトメーター(例えば、Coulter, Florida, USA社製Coulter Epics Eliteフローサイトメーター)中、TT陽性細胞に関して分類する。TT結合の全ての陽性細胞を単一の容器中に回収する。
この段階で、抗原特異的B細胞は、細胞表面上に従来の抗体または重鎖抗体を発現する。抗原特異的重鎖抗体を発現するB細胞のサブ集団のさらなる分離を、以下のように実施する。
混合したB細胞集団を、プロテインLで被覆したウェルに添加し、37℃で少なくとも1時間結合させる。上清中の未結合の細胞(主に従来の抗体を展示するか、または抗体を展示しない)を、培養培地で10回洗浄することにより除去する。結合した細胞(抗原特異的重鎖抗体を発現する)を除去し、計数し、これを用いて、ウェルあたり0.3個の細胞の播種率で、T細胞条件化培地(3%)の存在下で新鮮なEL4-B5 T細胞で被覆したウェル(5 x 104個/ウェル)に播種する。この細胞を7日間培養した後、抗原特異的重鎖抗体を分泌する陽性ウェルを、プロテインA-西洋わさびペルオキシダーゼコンジュゲートおよびTMB基質を用いるELISAにより新鮮なTT被覆ウェル中で、抗体結合について少量の培養上清を分析することにより同定する。
陽性のB細胞ウェルをさらなる処理のために選択する:B細胞をペレット化し、上清を除去し、細胞ペレットを10μlの新鮮な培地(1〜6%のT細胞条件化培地を含むDMEMまたはRPMI)中に再懸濁する。チューブあたり以下の混合物を用いるMJ Research Robus RT-PCRキット(カタログ番号F-580L)を用いるPCRのためにアリコート(それぞれ2μl)を取得して、重鎖可変ドメインを単離する:
DEPC水 35.5μl
10xバッファー 5μl
dNTPS 1μl
10%NP-40 2.5μl
RNAsin 0.5μl
RT 1μl
ポリメラーゼ 2μl
プライマーミックス(*)1μl(それぞれ10μM)
MgCl2 1.5
PCRプログラム:50℃で30分、次いで、94℃で2分、次いで[94℃/1分、55℃/1分、72℃/1分]の40サイクル。最後の伸長反応:72℃/5分
*:ミックスは以下の2個のプライマーを含む:オリゴ-dTプライマーおよび単一の縮重FR1プライマー:PstI制限部位をコードする5’-GAGGTBCARCTGCAGGASTCYGG-3’。
1,300 bpの断片を、PstIおよびBstEIIを用いて切断する。後者の酵素は、重鎖抗体のフレームワーク4をコードするDNA断片を切断することが多い。
消化した産物を、電気泳動およびUV照明の後にアガロースゲルから単離し、クローニングベクターの対応する部位に連結して、増殖のための選択的抗生物質条件下で、大腸菌中で増殖させることができる。
連結されたベクターを用いて、大腸菌細胞を形質転換し、PstI/BstEII挿入物を配列決定して、重鎖可変ドメインのDNA配列を明らかにする。
添付物1
a)サイトカイン、サイトカイン受容体、酵素、酵素コファクター、もしくはDNA結合タンパク質などのサイトカイン、サイトカイン受容体、酵素など。好適なサイトカインおよび増殖因子としては、限定されるものではないが、ApoE、Apo-SAA、BDNF、カルジオトロフィン-1、EGF、EGF受容体、ENA-78、エオタキシン、エオタキシン-2、エキソダス-2、FGF-酸性、FGF-塩基性、線維芽細胞増殖因子-10、FLT3リガンド、フラクタルキン(CX3C)、GDNF、G-CSF、GM-CSF、GF-β1、インスリン、IFN-γ、IGF-I、IGF-II、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8(72アミノ酸)、IL-8(77アミノ酸)、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18(IGIF)、インヒビンα、インヒビンβ、IP-10、ケラチノサイト増殖因子-2(KGF-2)、KGF、レプチン、LIF、リンホタクチン、ミュラー管阻害物質、単球コロニー阻害因子、単球誘引タンパク質、M-CSF、MDC(67アミノ酸)、MDC(69アミノ酸)、MCP-1(MCAF)、MCP-2、MCP-3、MCP-4、MDC(67アミノ酸)、MDC (69アミノ酸)、MCP-1 (MCAF)、MCP-2、MCP-3、MCP-4、MDC (67アミノ酸)、MDC (69アミノ酸)、MIG、MIP-lα、MIP-1β、MIP-3α、MIP-3β、MIP-4、骨髄前駆細胞阻害因子-1(MPIF-1)、NAP-2、ニューツリン、神経成長因子、β-NGF、NT-3、NT-4、オンコスタチンM、PDGF-AA、PDGF-AB、PDGF-BB、PF-4、RANTES、SDF1α、SDF1β、SCF、SCGF、幹細胞因子 (SCF)、TARC、TACE認識部位、TGF-α、TGF-β、TGF-β2、TGF-β3、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF-α、TNF-β、TNF受容体I (p55)、TNF受容体II、TNIL-1、TPO、VEGF、VEGF受容体1、VEGF受容体2、VEGF受容体3、GCP-2、GRO/MGSA、GRO-β、GRO-γ、HCC1、1-309、HER 1、HER 2、HER 3およびHER 4が挙げられる。サイトカイン受容体としては、前記サイトカインのそれぞれの受容体、例えば、IL-1R、IL-6R、IL-10R、IL-18Rなどが挙げられる。この一覧は決して包括的なものではないことが理解されるであろう。本発明に従う抗原単一可変ドメインポリペプチドの好ましい標的は、WO04/041867(その内容は全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする)に開示されており、限定されるものではないが、TNFα、IgE、IFNγ、MMP-12、EGFR、CEA、H.pylori、TB、インフルエンザ、PDK-1、GSK-1、Bad、キャスパーゼ、Forkheadおよびフォン・ビルブラント因子(vWF)が挙げられる。標的はまた、上記標的の断片であってもよい。かくして、標的は、完全長の標的に対する抗体単一可変ドメインポリペプチドに結合することができる上記標的の断片でもある。
b)部分の半減期を増加させることができる抗原(後者の部分は、例えば、治療的もしくは画像化タンパク質部分、例えば、抗体もしくは抗体フラグメント、例えば、ヒトVHもしくはVLドメインまたはラクダ科動物VHHなどの抗体可変ドメインである)
α-1 糖タンパク質(オロソムコイド) (AAG)
α-1 抗キモトリプシン (ACT)
α-1 抗トリプシン (AAT)
α-1 ミクログロブリン(HCタンパク質) (AIM)
α-2 マクログロブリン(A2M)
抗トロンビンIII (AT III)
アポリポタンパク質 A-1 (Apo A-1)
アポリポタンパク質 B (Apo B)
β-2-ミクログロブリン (B2M)
セルロプラスミン(Cp)
補体成分(C3)
補体成分(C4)
C1エステラーゼ阻害剤 (C1 INH)
C-反応性タンパク質 (CRP)
シスタチンC (Cys C)
フェリチン(FER)
フィブリノゲン (FIB)
フィブロネクチン (FN)
ハプトグロブリン (Hp)
ヘモペクシン (HPX)
免疫グロブリン A (IgA)
免疫グロブリン D (IgD)
免疫グロブリン E (IgE)
免疫グロブリン G (IgG)
免疫グロブリン M (IgM)
免疫グロブリン軽鎖(κ/λ)
リポタンパク質[Lpa)]
マンノース結合タンパク質(MBP)
ミオグロビン(Myo)
プラスミノーゲン(PSM)
プレアルブミン(トランスサイレチン) (PAL)
レチノール結合タンパク質 (RBP)
リウマチ因子(RF)
血清アミロイドA (SAA)
可溶性トランスフェリン受容体 (sTfR)
トランスフェリン(Tf)。
G:リガンドの半減期を増加させることができる抗原
細胞外マトリックス由来のタンパク質;例えば、コラーゲン、ラミニン、インテグリンおよびフィブロネクチン。コラーゲンは細胞外マトリックスの主要タンパク質である。約15型のコラーゲン分子が現在公知であり、体の様々な部分に認められ、例えば、I型コラーゲン(体内コラーゲンの90%を占める)は骨、皮膚、腱、靱帯、角膜、内部器官に認められ、またはII型コラーゲンは軟骨、椎間板、脊索、眼の硝子体液に認められる。
血液中に認められるタンパク質としては、以下のものが挙げられる:
フィブリン、α-2マクログロブリン、血清アルブミン、フィブリノゲンA、フィブリノゲンB、血清アミロイドタンパク質A、ヘプタグロブリン、タンパク質、ユビキチン、ウテログロブリンおよびp-2ミクログロブリンなどの血漿タンパク質。
プラスミノーゲン、ライソザイム、シスタチンC、α-1抗トリプシンおよび膵臓キプシン阻害剤などの酵素および阻害剤。プラスミノーゲンは、トリプシン様2sセリンプロテアーゼプラスミンの不活性前駆体である。それは通常、血流を通って循環することが認められる。プラスミノーゲンが活性化され、プラスミンに変換される場合、それは血液塊中に血液細胞を絡ませるフィブリノゲン繊維を溶解する強力な酵素ドメインを展開する。これを線維素溶解と呼ぶ。
IgE、IgG、IgMなどの免疫系のタンパク質。
レチノール結合タンパク質、o-1ミクログロブリンなどの輸送タンパク質。
β-デフェンシン1、好中球デフェンシン1、2および3などのデフェンシン。
メラノコルチン受容体、ミエリン、アスコルビン酸輸送因子などの血液脳関門に、または神経組織中に認められるタンパク質。
トランスフェリン受容体特異的リガンド-神経薬剤融合タンパク質(米国特許第5,977,307号を参照)。
脳毛細血管内皮細胞受容体、トランスフェリン、トランスフェリン受容体、インスリン、インスリン様増殖因子1(IGF1)受容体、インスリン様増殖因子2(IGF2)受容体、インスリン受容体。
ポリシスチン、IV型コラーゲン、有機陰イオン輸送因子K1、ハイマン抗原などの、腎臓に局在化するタンパク質。
肝臓に局在化するタンパク質、例えば、アルコールデヒドロゲナーゼ、G250。
血液凝固因子X。
α1抗トリプシン。
HNF1α。
分泌成分(IgAに結合する)などの、肺に局在化するタンパク質。
例えば、HSP27などの心臓に局在化するタンパク質。これは拡張型心筋症と関連する。
皮膚に局在化するタンパク質、例えば、ケラチン。
骨形成活性を示すトランスフォーミング増殖因子βスーパーファミリーのサブセットである、骨形態形成タンパク質(BMP)などの骨特異的タンパク質。その例としては、BMP-2、-4、-5、-6、-7(骨形成タンパク質(OP-1)および-8(OP-2)とも呼ばれる)が挙げられる。
腫瘍特異的タンパク質、例えば、ヒトトロホブラスト抗原、ハーセプチン受容体、エストロゲン受容体、カテプシン、例えば、カテプシンB(肝臓および脾臓に認められる)。
活性化T細胞上でのみ発現される抗原などの疾患特異的タンパク質:例えば、LAG-3(リンパ球活性化遺伝子)、オステオプロテゲリンリガンド(OPGL)(Nature 402, 304-309; 1999を参照)、OX40(活性化T細胞上で発現されるTNF受容体ファミリーのメンバーであり、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)産生細胞中で特異的に上方調節されることが知られる唯一の共刺激T細胞分子である)(J Immunol. 2000 Jul 1; 165(1):263-70を参照);メタロプロテアーゼ(関節炎/癌と関連する)、例えば、CG6512 Drosophila、ヒトパラプレギン、ヒトFtsH、ヒトAFG3L2、マウスftsH;血管新生増殖因子、例えば、酸性線維芽細胞増殖因子(FGF-1)、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-2)、血管内皮増殖因子/血管浸透性因子(VEGF/VPF)、トランスフォーミング増殖因子-a(TGFa)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、アンギオジェニン、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-8(IL-8)、血小板由来内皮増殖因子(PD-ECGF)、胎盤増殖因子(PlGF)、ミッドカイン血小板由来増殖因子-BB(PDGF)、フラクタルキン。
ストレスタンパク質(熱ショックタンパク質)
HSPは通常、細胞内に認められる。それらが細胞外に認められる場合、それは細胞が死んでおり、その内容物があふれ出ていることを示す。このプログラムされていない細胞死(壊死)は、外傷、疾患または損傷の結果として、および従ってin vivoで、細胞外HSPが感染および疾患と闘う免疫系からの応答を誘発する場合にのみ起こる。細胞外HSPに結合する二特異的抗体を、疾患部位に局在化させることができる。
Fc輸送に関与するタンパク質。
ブランベル受容体(FcRBとしても知られる)。
この受容体は2つの機能を有し、両方とも送達にとって潜在的に有用である。
その機能は、
1)胎盤を横断する母親から子供へのIgGの輸送。
2)分解からのIgGの保護、それによるIgGの血清半減期の延長。それは該受容体がエンドソームからIgGを再利用すると考えられる。
Holligerら、Nat Biotechnol 1997 Jul;15(7):632-6を参照。
c)標的抗原は、抗原が以下の表中に対で示されるかどうかに関係なく、以下の表の抗原のいずれか1つであってもよい。
EpCAM
CD20
CD33
CD52
Her-2/neu
GPIIb/IIIa
RSV
CD25
CD3
a4B3
e) a)〜d)における標的リガンドのヒト型。
添付物2
一般リガンドの例
a)公開された単一可変ドメイン
WO030020609、WO2004101790、WO2005035572、WO2004081026、WO2004003019およびWO2004058821に開示された任意の可変ドメイン。これらの可変ドメイン、その配列ならびに製造および選択の方法の開示は、本発明における使用のための一般リガンドの例と共に当業者に提供するために参照により本明細書に明確に組み入れられるものとする。
WO9404678、WO9748905、WO9933221、WO9937681、WO0024884、WO0043507、WO0065057、WO0140310、WO03035694、WO03053531、WO03054015、WO0305527、WO2004015425、WO2004041862、WO2004041863、WO20040401865、WO2004062551、WO2005044858およびEP1134231に開示された任意のVHHドメインまたは任意の他の可変ドメイン。これらの可変ドメイン、その配列ならびに製造および選択の方法の開示は、本発明における使用のための一般リガンドの例と共に当業者に提供するために参照により本明細書に明確に組み入れられるものとする。
b)
(i)図7a)中の3-23遺伝子座もしくは任意の他の遺伝子座の生殖系列VH断片から誘導されたヒトVH。
(ii)図7a)中の3-23遺伝子座もしくは任意の他の遺伝子座の生殖系列VH断片に由来する対応するFWのアミノ酸配列と同じであるか、または該対応するFWと最大で5個のアミノ酸差異を有する、FW1アミノ酸配列を有するヒトVH。
(iii)図7a)中の3-23遺伝子座もしくは任意の他の遺伝子座の生殖系列VH断片に由来する対応するFWのアミノ酸配列と同じであるか、または該対応するFWと最大で5個のアミノ酸差異を有する、FW2アミノ酸配列を有するヒトVH。
(iv)図7a)中の3-23遺伝子座もしくは任意の他の遺伝子座の生殖系列VH断片に由来する対応するFWのアミノ酸配列と同じであるか、または該対応するFWと最大で5個のアミノ酸差異を有する、FW3アミノ酸配列を有するヒトVH。
(v)図7a)中の3-23遺伝子座もしくは任意の他の遺伝子座の生殖系列VH断片に由来する対応するFWのアミノ酸配列と同じであるか、または該対応するFWと最大で5個のアミノ酸差異を有する、FW4アミノ酸配列を有するヒトVH。
(vi)図7a)中の3-23遺伝子座もしくは任意の他の遺伝子座の生殖系列VH断片に由来する対応するFWのアミノ酸配列と同じであるか、または総合的にFW1、2、3および4のアミノ酸配列が該対応するFWと最大で10個のアミノ酸差異を有する、FW1、2、3および4のアミノ酸配列を有するヒトVH。
(vii)DPK9遺伝子座または図7b)中の任意の遺伝子座の生殖系列Vκ断片から誘導されたヒトVκ。
(viii)DPK9遺伝子座もしくは図7b)中の任意の遺伝子座の生殖系列Vκ断片に由来する対応するFWのアミノ酸配列と同じであるか、または該対応するFWと最大で5個のアミノ酸差異を有する、FW1アミノ酸配列を有するヒトVκ。
(ix)DPK9遺伝子座もしくは図7b)中の任意の遺伝子座の生殖系列Vκ断片に由来する対応するFWのアミノ酸配列と同じであるか、または該対応するFWと最大で5個のアミノ酸差異を有する、FW2アミノ酸配列を有するヒトVκ。
(x)DPK9遺伝子座もしくは図7b)中の任意の遺伝子座の生殖系列Vκ断片に由来する対応するFWのアミノ酸配列と同じであるか、または該対応するFWと最大で5個のアミノ酸差異を有する、FW3アミノ酸配列を有するヒトVκ。
(xi)DPK9遺伝子座もしくは図7b)中の任意の遺伝子座の生殖系列Vκ断片に由来する対応するFWのアミノ酸配列と同じであるか、または該対応するFWと最大で5個のアミノ酸差異を有する、FW4アミノ酸配列を有するヒトVκ。
(xii)DPK9遺伝子座もしくは図7b)中の任意の遺伝子座の生殖系列Vκ断片に由来する対応するFWのアミノ酸配列と同じであるか、または総合的にFW1、2、3および4のアミノ酸配列が、該対応するFWと最大で10個のアミノ酸差異を有する、FW1、2、3および4のアミノ酸配列を有するヒトVH。
(xiii)図7c)中の任意の生殖系列Vλ断片から誘導されたヒトVλ。
(xiv)図7c)中の任意の生殖系列Vλ断片に由来する対応するFWのアミノ酸配列と同じであるか、または該対応するFWと最大で5個のアミノ酸差異を有する、FW1アミノ酸配列を有するヒトVλ。
(xv)図7c)中の任意の生殖系列Vλ断片に由来する対応するFWのアミノ酸配列と同じであるか、または該対応するFWと最大で5個のアミノ酸差異を有する、FW2アミノ酸配列を有するヒトVλ。
(xvi)図7c)中の任意の生殖系列Vλ断片に由来する対応するFWのアミノ酸配列と同じであるか、または該対応するFWと最大で5個のアミノ酸差異を有する、FW3アミノ酸配列を有するヒトVλ。
(xvii)図7c)中の任意の生殖系列Vλ断片に由来する対応するFWのアミノ酸配列と同じであるか、または該対応するFWと最大で5個のアミノ酸差異を有する、FW4アミノ酸配列を有するヒトVλ。
(xviii)図7c)中の任意の生殖系列Vλ断片に由来する対応するFWのアミノ酸配列と同じであるか、または総合的にFW1、2、3および4のアミノ酸配列が該対応するFWと最大で10個のアミノ酸差異を有する、FW1、2、3および4のアミノ酸配列を有するヒトVλ。
(xix)図7d)中、またはNguyenら、EMBO J, 2000, Vol 19, No.5, pp921-930(その開示、特に、そこに開示されたVHH生殖系列配列は参照により本明細書に組み入れられるものとする)の図2(924ページ)に開示された任意の生殖系列断片から誘導されたラクダ科動物のVHHまたはNanobody(商標)。
(xx)Nguyenら、EMBO J, 2000, Vol 19, No.5, pp921-930の図2(924ページ)に開示された任意の生殖系列VHH断片に由来する対応するFWのアミノ酸配列と同じであるか、または該対応するFWと最大で5個のアミノ酸差異を有する、FW1アミノ酸配列を有するラクダ科動物のVHHまたはNanobody(商標)。
(xxi)Nguyenら、EMBO J, 2000, Vol 19, No.5, pp921-930の図2(924ページ)に開示された任意の生殖系列VHH断片に由来する対応するFWのアミノ酸配列と同じであるか、または該対応するFWと最大で5個のアミノ酸差異を有する、FW2アミノ酸配列を有するラクダ科動物のVHHまたはNanobody(商標)。
(xxii)Nguyenら、EMBO J, 2000, Vol 19, No.5, pp921-930の図2(924ページ)に開示された任意の生殖系列VHH断片に由来する対応するFWのアミノ酸配列と同じであるか、または該対応するFWと最大で5個のアミノ酸差異を有する、FW3アミノ酸配列を有するラクダ科動物のVHHまたはNanobody(商標)。
(xxiii)Nguyenら、EMBO J, 2000, Vol 19, No.5, pp921-930の図2(924ページ)に開示された任意の生殖系列VHH断片に由来する対応するFWのアミノ酸配列と同じであるか、または該対応するFWと最大で5個のアミノ酸差異を有する、FW4アミノ酸配列を有するラクダ科動物のVHHまたはNanobody(商標)。
(xxiv)Nguyenら、EMBO J, 2000, Vol 19, No.5, pp921-930の図2(924ページ)に開示された任意の生殖系列VHH断片に由来する対応するFWのアミノ酸配列と同じであるか、または総合的にFW1、2、3および4のアミノ酸配列が該対応するFWと最大で10個のアミノ酸差異を有する、FW1、2、3および4のアミノ酸配列を有するラクダ科動物のVHHまたはNanobody(商標)。
c)
(i)以下の抗体産物のいずれかに由来するVHまたはVL:
(ii) US6090382、US20030235585A1、US20040166111A1、EP1500329A2、US20040131613A1、US20030144484A1、US5698195、EP1159003A1、US20020119152A1、EP0871641A4、EP0710121B1、US5702705、EP0487610B1に開示された抗TNF抗体または抗体フラグメントの可変ドメイン(VHもしくはVL)。これらの開示(特に、抗体およびフラグメントの作製、配列および有用性の開示)は、本発明における使用のためのそのような情報を当業者に提供するために参照により本明細書に明確に組み入れられるものとする。
(iii)表面プラスモン共鳴により決定された1 x 10-8 M以下のKdで標的リガンドから解離する抗体重鎖または系鎖可変ドメイン(例えば、VH、VLもしくはVHH)。好ましい実施形態においては、標的リガンドは、添付物1に記載の標的リガンドである。表面プラスモン共鳴のガイダンスについては、米国特許第6,090,382号またはWO04003019A2を参照されたい。
(iv)表面プラスモン共鳴により決定された1 x 10-3 s-1以下のKoff速度定数で標的リガンドから解離する抗体重鎖または系鎖可変ドメイン(例えば、VH、VLもしくはVHH)。好ましい実施形態においては、標的リガンドは、添付物1に記載の標的リガンドである。表面プラスモン共鳴のガイダンスについては、米国特許第6,090,382号またはWO04003019A2を参照されたい。
(v)表面プラスモン共鳴により決定された1 x 10-8 M以下のKdおよび1 x 10-3 s-1以下のKoff速度定数で標的リガンドから解離する抗体重鎖または系鎖可変ドメイン(例えば、VH、VLもしくはVHH)。好ましい実施形態においては、標的リガンドは、添付物1に記載の標的リガンドである。表面プラスモン共鳴のガイダンスについては、米国特許第6,090,382号またはWO04003019A2を参照されたい。
(vi)共に表面プラスモン共鳴により決定された1 x 10-8 M以下のKdまたは1 x 10-3 s-1以下のKoff速度定数で標的リガンドから解離し、1 x 10-7 M以下のIC50で標準的なアッセイにおいて標的リガンド細胞傷害性を中和する抗体重鎖または系鎖可変ドメイン(例えば、VH、VLもしくはVHH)。好ましい実施形態においては、標的リガンドは、添付物1に記載の標的リガンドである。表面プラスモン共鳴のガイダンスについては、米国特許第6,090,382号またはWO04003019A2を参照されたい。一実施形態においては、標的リガンドはTNFαであり、標準的なアッセイは米国特許第6,090,382号に記載のL929アッセイである。
上記の実施形態においては、
好ましくは、一般リガンドは1 x 10-9 M以下、1 x 10-10 M以下、1 x 10-11 M以下、1 x 10-12 M以下のKdで結合する。
好ましくは、Koff速度定数は、1 x 10-4 s-1以下、1 x 10-5 s-1以下、1 x 10-6 s-1以下、1 x 10-7 s-1以下、1 x 10-8 s-1以下である。
好ましくは、IC50は、1 x 10-8 M以下、1 x 10-9 M以下、5 x 10-10 M以下、1 x 10-10 M以下、5 x 10-11 M以下である。
d)添付物2(a)中の配列と少なくとも90%相同である配列を有する抗体可変ドメイン。
e)添付物2(c)中の配列と少なくとも90%相同である配列を有する抗体可変ドメイン。
広範囲の天然の多様性を示し、抗原接触を作るヒト抗体レパートリーのVHおよびVκ領域中の位置を示す棒グラフである(Tomlinsonら(1996) J. Mol. Biol., 256:813)。H3およびL3の末端はこの図では示されていないが、それらも高度に多様性であり、抗原接触を作る。ヒトλ遺伝子中の配列多様性は完全に特性評価されているが(Ignatovichら(1997) J. Mol. Biol, 268:69)、三次元λ構造についての抗原接触に関する現在存在するデータは非常に少ない。
本発明に従うライブラリーに基づいて形成されるscFvの配列を示す。現在、2つの型のライブラリー:18個の位置が変化している「初期」ライブラリーおよび12個の位置が変化している「体細胞」ライブラリーが存在する。6個のループ領域H1、H2、H3、L1、L2およびL3を示す。Kabat(Kabatら(1991) Sequences of proteins of immunological interest, U.S. Department of Health and Human Services)により定義されるCDR領域に下線を付す。
一般リガンドプロテインAおよびプロテインLを用いる選択の前後での、本発明に従うライブラリーにおける機能性の分析を示す。ここで、プロテインLをELISAプレート上に被覆し、scFv上清をそれに結合させ、scFv結合の検出をプロテインA-HRPを用いて行う。従って、プロテインAおよびプロテインLの両方に結合することができるscFvのみがELISAシグナルを与える。
ウシユビキチン、ラットBIP、ウシヒストン、NIP-BSA、FITC-BSA、ヒトレプチン、ヒトチログロブリン、BSA、鶏卵リゾチーム、マウスIgGおよびヒトIgGを用いるパンニングの後の、本発明に従うライブラリーから選択されたクローンの配列を示す。配列中の下線は、それぞれのライブラリー中で変化させた位置を示す。
図4−1の続きである。
5a:宿主細胞中で選択されていない、および予備選択された「初期」DVTライブラリーにより産生されたscFv濃度の比較を示す。5b:既知の標準物から決定されたELISAの標準曲線を示す。
scFvを担持するファージの割合を決定するための抗ファージpIII抗体でプローブ化された、予備選択された、および選択されていないDVT「初期」ライブラリーに由来するファージのウェスタンブロットを示す。
ヒト生殖系列V配列を示す。
図7−1の続きである。
図7−2の続きである。
図7−3の続きである。