本発明は、癌または他の疾患の治療を要する被験者に対して治療手順である量のHDAC阻害剤、或いはその医薬的に許容され得る塩または水和物、及び他の治療手順である量の1つ以上の抗癌剤(例えば、レチノイド剤)を投与することにより、合わせた量が治療有効量を構成し得る前記被験者の癌または他の疾患の治療方法に関する。更に、本発明は、癌または他の疾患の治療を要する被験者に対して治療手順である量のスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、或いはその医薬的に許容され得る塩または水和物、及び他の治療手順である量の1つ以上の抗癌剤(例えば、レチノイド剤)を投与することにより、合わせた量が治療有効量を構成し得る前記被験者の癌または他の疾患の治療方法に関する。レチノイド剤(例えば、ターグレチン)及び場合により別の抗癌剤と併用したSAHAの効果は例えば相加的または相乗的であり得る。
1つの態様で、本発明は、治療を要する患者に対して第1治療手順で第1量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えば、SAHA、或いはその医薬的に許容され得る塩または水和物)、及び第2治療手順で第2量の抗癌剤(例えば、3−メチルTTNEB(“ターグレチン”;ベキサロテン)のようなレチノイド剤、或いはその医薬的に許容され得る塩または水和物)、場合により第3治療手順で第3量の別の抗癌剤、或いはその医薬的に許容され得る塩または水和物を投与することを含む。第1及び第2、及び場合により第3の量が治療有効量を構成し得る。
更に、本発明は、癌または他の疾患の治療に有用な医薬配合剤に関する。1つの態様で、医薬配合剤は、第1量のHDAC阻害剤(例えば、SAHA、或いはその医薬的に許容され得る塩または水和物)、第2量の抗癌剤(例えば、3−メチルTTNEBのようなレチノイド剤、或いはその医薬的に許容され得る塩または水和物)、及び場合により第3量の別の抗癌剤、或いはその医薬的に許容され得る塩または水和物を含む。第1及び第2、及び任意の第3の量が治療有効量を構成し得る。
更に、本発明は、癌または他の疾患の治療用薬剤を製造するためのある量のHDAC阻害剤及びある量の抗癌剤(例えば、3−メチルTTNEBのようなレチノイド剤)、及び場合により別の抗癌剤の使用に関する。1つの態様で、前記薬剤は第1量のHDAC阻害剤(例えば、SAHA、或いはその医薬的に許容され得る塩または水和物)、第2量の抗癌剤(例えば、3−メチルTTNEB)、或いはその医薬的に許容され得る塩または水和物、及び場合により第3量の別の抗癌剤、或いはその医薬的に許容され得る塩または水和物を含む。
定義
本発明に関連したいろいろな文法形の用語「治療する」は、疾患の状態、疾患の進行、疾患の原因物質(例えば、細菌またはウイルス)または他の異常な状態の有害作用を予防(すなわち、化学的予防)、治癒、後退、減弱、緩和、最小限化、抑制または治癒することを指す。例えば、治療は疾患の症状(すなわち、すべての症状である必要はない)の緩和または疾患の進行の減弱を含む。本発明の方法の幾つかは原因物質の物理的除去を含むので、当業者は、本発明の化合物を原因物質に曝される前または同時に投与する状況(予防的治療)及び本発明化合物を原因物質に曝された後(曝されてから十分たってでも)投与する状況のいずれにおいても同等に有効であることを認識している。
本明細書中で使用されている癌の治療は、哺乳動物(例えば、ヒト)における癌転移を含めた癌の進行の部分的または全体的抑制、遅延または予防;癌転移を含めた癌の再発の抑制、遅延または予防;或いは癌の発症または発生の予防(化学的予防)を指す。加えて、本発明の方法は、癌を患っているヒト患者の化学的予防の治療に対して意図している。しかしながら、本発明の方法は他の哺乳動物における癌の治療においても有効であろう。
本発明の「抗癌剤」は、抗癌剤の医薬的に許容され得る塩または水和物、或いは抗癌剤の遊離酸、遊離塩基または他の遊離形態を含めた本明細書中に記載されているものを包含する。その非限定例を以下に挙げる:
A)極性化合物(Marksら(1987);Friend,C.,Scher,W.,Holland,J.W.and Sato,T.(1971)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),68:378−382;Tanaka,M.,Levy,J.,Terada,M.,Breslow,R.,Rifkind,R.A.,and Marks,P.A.(1975)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),72:1003−1006;Reuben,R.C.,Wife,R.L.,Breslow,R.,Rifkind,R.A.,and Marks,P.A.(1976)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),73:862−866);
B)ビタミンD及びレチノイン酸の誘導体(Abe,E.,Miyaura,C.,Sakagami,H.,Takeda,M.,Konno,K.,Yamazaki,T.,Yoshika,S.,and Suda,T.(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),78:4990−4994;Schwartz,E.L.,Snoddy,J.R.,Kreutter,D.,Rasmussen,H.,and Sartorelli,A.C.(1983)Proc.Am.Assoc.Cancer Res.,24:18;Tanenaga,K.,Hozumi,M.,and Sakagami,Y.(1980)Cancer Res.,40:914−919);
C)ステロイドホルモン(Lotem,J.and Sachs,L.(1975)Int.J.Cancer,15:731−740);
D)増殖因子(Sachs,L.(1978)Nature(Lond.)274:535;Metcalf,D.(1985)Science,229:16−22);
E)プロテアーゼ(Scher,W.,Scher,B.M.and Waxman,S.(1983)Exp.Hematol.,11:490−498;Scher,W.,Scher,B.M.,and Waxman,S.(1982)Biochem.& Biophys.Res.Comm.,109:348−354);
F)腫瘍プロモーター(Huberman,E.and Callaham,M.F.(1979)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),76:1293−1297;Lottem,J.and Sachs,L.(1979)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),76:5158−5162);及び
G)DNAまたはRNA合成の抑制剤(Schwartz,E.L.and Sartorelli,A.C.(1982)Cancer Res.,42:2651−2655;Terada,M.,Epner,E.,Nudel,U.,Salmon,J.,Fibach,E.,Rifkind,R.A.and Marks,P.A.(1978)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),75:2795−2799;Morin,M.J.and Sartorelli,A.C.(1984)Cancer Res.,44:2807−2812;Schwartz,E.L.,Brown,B.J.,Nierenberg,M.,Marsh,J.C.,and Sartorelli,A.C.(1983)Cancer Res.,43:2725−2730;Sugano,H.,Furusawa,M.,Kawaguchi,T.,and Ikawa,Y.(1973)Bibl.Hematol.,39:943−954;Ebert,P.S.,Wars,I.,and Buell,D.N.(1976)Cancer Res.,36:1809−1813;Hayashi,M.,Okabe,J.and Hozumi,M.(1979)Gann,70:235−238)。
本明細書中で使用されている用語「治療有効量」は、併用治療における治療の併用量を限定するように意図される。併用量は所望の生物学的応答を達成する。本発明において所望の生物学的応答は、哺乳動物(例えば、ヒト)における癌転移を含めた癌の進行の部分的または全体的抑制、遅延または予防;癌転移を含めた癌の再発の抑制、遅延または予防;或いは癌の発症または発生の予防(化学的予防)を指す。
本明細書中で互換可能に使用されている用語「併用治療」、「併用療法」、「組合せ治療」または「コンビナトリアル治療」は、少なくとも2つの異なる治療薬を用いる個人の治療を指す。本発明の1つの態様によれば、個人を第1の治療薬、例えば本明細書中に記載されているSAHAまたは別のHDAC阻害剤で治療する。第2の治療薬は別のHDAC阻害剤であっても、本明細書に定義されているレチノイド剤のような臨床上確立されている抗癌剤であってもよい。併用治療は第3、第4等の治療薬を含み得る。併用治療は順次または同時に実施され得る。
本明細書中で使用されている「レチノイド」または「レチノイド剤」(例えば、3−メチルTTNEB;当業界で“ターグレチン”及び“ベキサロテン”としても公知である)は、レチノイド剤の医薬的に許容され得る塩または水和物、並びにレチノイド剤の遊離酸、遊離塩基または他の遊離形態を含めた1つ以上のレチノイド受容体に結合する合成、組換えまたは天然に存在する化合物を包含する。レチノイド剤の具体例は本明細書中に挙げられている。
本明細書中で使用されている「HDAC阻害剤」(例えば、SAHA;当業界で“ボリノスタット”としても公知である)は、HDAC阻害剤の医薬的に許容され得る塩または水和物、並びにHDAC阻害剤の遊離酸、遊離塩基または他の遊離形態を含めた合成、組換えまたは天然に存在する阻害剤を包含する。本明細書中で使用されている「ヒドロキサム酸誘導体」は、ヒドロキサム酸誘導体であるヒストンデアセチラーゼ阻害剤のクラスを指す。阻害剤の具体例は本明細書中に挙げられている。
本明細書中で使用される用語としての「患者」または「被験者」は治療のレシピエントを指す。哺乳動物及び非哺乳動物患者が含まれる。具体的実施態様では、患者は哺乳動物、例えばヒト、イヌ、マウス、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタまたはヤギである。特定実施態様では、患者はヒトである。
本明細書中で使用されている用語「断続」または「断続的」は、定期的または非定期的な間隔で中止及び開始することを意味する。
用語「水和物」には半水和物、一水和物、二水和物、三水和物等が含まれるが、これらに限定されない。
ヒストンデアセチラーゼ及びヒストンデアセチラーゼ阻害剤
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)には、ヌクレオソーム核ヒストンのアミノ末端尾中のリシン残基からのアセチル基の除去を触媒する酵素が含まれる。よって、HDACはヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)と一緒にヒストンのアセチル化状態を調節する。ヒストンアセチル化は遺伝子発現に影響を及ぼし、HDAC阻害剤、例えばヒドロキサム酸をベースとするハイブリッド極性化合物のスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)はインビトロで形質転換細胞の増殖停止、分化及び/またはアポトーシスを誘導し、インビボでは腫瘍増殖を抑制する。
HDACは構造相同性に基づいて3つのクラスに分類され得る。クラスIのHDAC(HDAC1、2、3及び8)は酵母RPD3タンパク質に類似しており、核中に局在し、転写補助リプレッサーを伴って複合体中に存在している。クラスIIのHDAC(HDAC4、5、6、7及び9)は酵母HDA1タンパク質に類似しており、核及び細胞質細胞下局在を有している。クラスI及びIIのHDACはいずれもヒドロキサム酸をベースとするHDAC阻害剤(例えば、SAHA)により阻害される。クラスIIIのHDACは、酵母SIR2タンパク質に関連するNAD依存性酵素の構造的に異なるクラスを構成しており、ヒドロキサム酸をベースとするHDAC阻害剤により阻害されない。
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、すなわちHDAC阻害剤は、インビボ及び/またはインビトロでヒストンの脱アセチル化を阻害し得る化合物である。よって、HDAC阻害剤は少なくとも1つのヒストンデアセチラーゼの活性を阻害する。少なくとも1つのヒストンの脱アセチル化が阻害されると、アセチル化ヒストンが増加し、アセチル化ヒストンの蓄積はHDAC阻害剤の活性を評価するための適当な生物学的マーカーである。従って、アセチル化ヒストンの蓄積をアッセイし得る手順は当該化合物のHDAC阻害活性を調べるために使用され得る。ヒストンデアセチラーゼ活性を阻害し得る化合物は他の基質にも結合し得、よって酵素のような他の生物学的に活性な分子を阻害し得ると理解されている。また、本発明の化合物は上記したヒストンデアセチラーゼまたは他のヒストンデアセチラーゼのいずれかを阻害し得ると理解される。
例えば、HDAC阻害剤を投与されている患者では、HDAC阻害剤で処理された組織及び末梢単核細胞中のアセチル化ヒストンの蓄積が適当なコントロールに対して測定される。
特定化合物のHDAC阻害活性は、インビトロでは例えば少なくとも1つのヒストンデアセタラーゼの阻害を示す酵素アッセイを用いて測定され得る。更に、特定組成物で処理した細胞中のアセチル化ヒストンの蓄積を測定すると、化合物のHDAC阻害活性を決定し得る。
アセチル化ヒストンの蓄積についてのアッセイは文献から公知である。例えば、Marks,P.A.ら,J.Natl.Cancer Inst.,92:1210−1215,2000;Butler,L.M.ら,Cancer Res.,60:5165−5170(2000);Richon,V.M.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:3003−3007,1998;及びYoshida,M.ら,J.Biol.Chem,265:17174−17179,1990を参照されたい。
例えば、HDAC阻害剤化合物の活性を測定するための酵素アッセイは以下のように実施され得る。簡単に説明すると、HDAC阻害剤化合物のアフィニティー精製したヒトエピトープ標的(Flag)HDAC1に対する影響は、基質の不在下で氷上で酵素調製物を指定量の阻害剤化合物と約20分間インキュベートすることによりアッセイされ得る。基質([3H]アセチル標的したマウス赤血球白血病細胞由来ヒストン)を添加し得、サンプルを30μLの総容量で37℃で20分間インキュベートし得る。次いで、反応を停止させ得、遊離したアセテートを抽出し、放出した放射能の量をシンチレーション計数により測定し得る。HDAC阻害剤化合物の活性を測定するのに有用な代替アッセイは、BIOMOL(登録商標)Research Laboratories,Inc.,Plymouth Meeting,PAから入手し得る“HDAC Fluorescent Activity Assay;Drug Discovery Kit−AK−500”である。
インビボ研究は以下のように実施され得る。動物(例えば、マウス)にHDAC阻害剤化合物を腹腔内注射し得る。投与からの所定時間に特定組織(例えば、脳、脾臓、肝臓等)を単離し得る。ヒストンは、本質的にYoshidaら,J.Biol.Chem.,265:17174−17179,1990に記載されているように組織から単離され得る。等量(約1μg)のヒストンを15% SDS−ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動にかけ、(Amershamから入手し得る)Hybond Pフィルター上に移動させ得る。フィルターを3% ミルクでブロックし得、家兎精製ポリクローナル抗アセチル化ヒストンH4抗体(αAc−H4)及び抗アセチル化ヒストンH3抗体(αAc−H3)(Upstate Biotechnology,Inc.)を用いてプローブし得る。アセチル化ヒストンのレベルはホースラディッシュペルオキシダーゼをコンジュゲートしたヤギ抗家兎抗体(1:5000)及びSuperSignal化学ルミネセント基質(Pierce)を用いて可視化し得る。ヒストンタンパク質に対する充填コントロールとして、パラレルゲルを流し、クーマシーブルー(CB)で染色し得る。
加えて、ヒドロキサム酸をベースとするHDAC阻害剤がp21WAF1遺伝子の発現をアップレギュレートすることが判明している。p21WAF1タンパク質は、標準方法を用いて各種の形質転換細胞においてHDAC阻害剤との培養の2時間以内に誘導される。p21WAF1遺伝子の誘導はこの遺伝子のクロマチン領域におけるアセチル化ヒストンの蓄積に関連している。従って、p21WAF1の誘導は、形質転換細胞においてHDAC阻害剤により生ずるGl細胞周期停止に関与すると認識され得る。
本発明者らの数人に付与された米国特許5,369,108、5,932,616、5,700,811、6,087,367及び6,511,990は新生細胞の終末分化を選択的に誘導するために有用な化合物を開示しており、前記化合物はメチレン基のフレキシブル鎖によるかまたは強固なフェニル基で分離されている2個の極性末端基を有し、前記極性末端基の一方または両方が大きな疎水性基である。化合物の幾つかは分子中の第1疎水性基と同じ末端に追加の大きな疎水性基を有しており、分化活性を更に酵素アッセイで約100倍、細胞分化アッセイで約50倍上昇させる。本発明の方法及び医薬組成物で使用される化合物の合成方法は、全文を援用により本明細書中に含まれるとする上記特許に詳しく記載されている。
従って、本発明は、広い範囲に、ヒストンデアセチラーゼの阻害、新生細胞における終末分化、細胞増殖停止及び/またはアポトーシスの誘導、及び/または腫瘍中の腫瘍細胞の細胞増殖の分化、細胞増殖停止及び/またはアポトーシスの誘導において使用するための1)ヒドロキサム酸誘導体、2)短鎖脂肪酸(SCFA)、3)環状テトラペプチド、4)ベンズアミド、5)求電子性ケトン誘導体、及び/またはヒストンデアセチラーゼを阻害し得る他のクラスの化合物であるHDAC阻害剤を含む組成物を包含する。
HDAC阻害剤の非限定例を以下に挙げる。本発明は、本明細書中に記載されているHDAC阻害剤の塩、結晶構造物、非晶質構造物、水和物、誘導体、代謝物、立体異性体、構造異性体及びプロドラッグを含むと理解されたい。
A)ヒドロキサム酸誘導体
例えば、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)(Richonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95,3003−3007(1998));m−カルボキシシンナム酸ビスヒドロキサミド(CBHA)(上掲のRichonら);ピロキサミド;トリコスタチンアナログ、例えばトリコスタチンA(TSA)及びトリコスタチンC(Kogheら,1998,Biochem.Pharmacol.,56:1359−1364);サリチルビスヒドロキサム酸(Andrewsら,International J.Parasitology,30,761−768(2000));スベロイルビスヒドロキサム酸(SBHA)(米国特許5,608,108);アゼライックビスヒドロキサム酸(ABHA)(上掲のAndrewsら);アゼライック−1−ヒドロキサメート−9−アニリド(AAHA)(Qiuら,Mol.Biol.Cell,11,2069−2083(2000));6−(3−クロロフェニルウレイド)カプロイックヒドロキサム酸(3Cl−UCHA);オキサムフラチン[(2E)−5−[3−[(フェニルスルホニル)アミノルフェニル]−ペンタ−2−エン−4−イノヒドロキサム酸](Kimら,Oncogene,18:2461−2470(1999));A−161906、スクリプタイド(Suら,2000,Cancer Research,60:3137−3142);PXD−101(Prolifix);LAQ−824;CHAP;MW2796(上掲のAndrewsら);MW2996(上掲のAndrewsら);或いは米国特許5,369,108、5,932,616、5,700,811、6,087,367及び6,511,990に開示されているヒドロキサム酸。
B)環状テトラペプチド
例えば、トラポキシン(TPX)−環状テトラペプチド(シクロ−(L−フェニルアラニル−L−フェニルアラニル−D−ピペコリニル−L−2−アミノ−8−オキソ−9,10−エポキシデカノイル))(Kijimaら,J.Biol.Chem,268,22429−22435(1993));FR901228(FK 228,デプシペプチド)(Nakajimaら,Ex.Cell Res.,241,126−133(1998));FR225497環状テトラペプチド(H.Moriら,PCT出願WO 00/08048(2000年2月17日));アピシジン環状テトラペプチド[シクロ(N−O−メチル−L−トリプトファニル−L−イソロイシニル−D−ピペコニル−L−2−アミノ−8−オキソデカノイル)](Darkin−Rattrayら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93,13143−13147(1996));アピシジンla、アピシジンIb、アピシジンIc、アピシジンIIa及びアピシジンIIb(P.Dulskiら,PCT出願WO 97/11366);CHAP、HC−トキシン環状テトラペプチド(Boschら,Plant Cell,7,1941−1950(1995));WF27082環状テトラペプチド(PCT出願WO 98/48825);及びクラミドシン(上掲のBoschら)。
C)短鎖脂肪酸(SCFA)誘導体
例えば、酪酸ナトリウム(Cousensら,J.Biol.Chem.,254,1716−1723(1979));イソバレート(McBainら,Biochem.Pharm.,53:1357−1368(1997));バレレート(上掲のMcBainら);4−フェニルブチレート(4−PBA)(Lea and Tulsyan,Anticancer Research,15,879−873(1995));フェニルブチレート(PB)(Wangら,Cancer Research,59,2766−2799(1999));プロピオネート(上掲のMcBainら);ブチルアミド(上掲のLea and Tulsyan);イソブチルアミド(上掲のLea and Tulsyan);フェニルアセテート(上掲のLea and Tulsyan);3−ブロモプロピオネート(上掲のLea and Tulsyan);トリブチリン(Guanら,Cancer Research,60,749−755(2000));バルプロ酸、バルプロエート及びピバネックス(商標)。
D)ベンズアミド誘導体
例えば、CI−994、MS−275[N−(2−アミノフェニル)−4−[N−(ピリジン−3−イルメトキシカルボニル)アミノメチル]ベンズアミド](Saitoら,Proc.Natd.Acad.Sci.USA,96,4592−4597(1999))及びMS−275の3’−アミノ誘導体(上掲のSaitoら)。
E)求電子性ケトン誘導体
例えば、トリフルオロメチルケトン(Freyら,Bioorganic & Med.Chem.Lett.(2002),12,3443−3447;U.S.6,511,990)及びα−ケトアミド(例:N−メチル−α−ケトアミド)。
F)他のHDAC阻害剤
例えば、天然産物、プサマプリン及びデプデシン(Kwonら,1998,PNAS,95:3356−3361)。
ヒドロキサム酸をベースとするHDAC阻害剤には、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、m−カルボキシシンナム酸ビスヒドロキサメート(CBHA)及びピロキサミドが含まれる。SAHAはヒストンデアセチラーゼ酵素の触媒ポケットにおいて直接結合することが判明している。SAHAは培養において形質転換細胞の細胞周期停止、分化及び/またはアポトーシスを誘導し、げっ歯類において腫瘍増殖を抑制する。SAHAは固形腫瘍及び血液癌の両方におけるその作用を誘導するのに有効である。SAHAは動物に対して毒性を呈することなく該動物における腫瘍増殖を抑制するのに有効であることが判明している。SAHA誘導の腫瘍増殖抑制は腫瘍中のアセチル化ヒストンの蓄積に関連している。SAHAは、ラットにおいて発癌物質誘導の(N−メチルニトロソ尿素)乳癌の発生及び継続増殖を抑制するのに有効である。SAHAをラットに対してその食餌に混ぜて研究の130日間にわたり投与した。よって、SAHAは非毒性で経口的に活性の抗腫瘍物質であり、その作用メカニズムにはヒストンデアセチラーゼ活性の阻害が含まれる。
HDAC阻害剤には、全文が援用により含まれるとする本発明者らの数人に付与された米国特許5,369,108、5,932,616、5,700,811、6,087,367及び6,511,990に開示されている化合物が含まれ、その非限定例を以下に示す。
具体的なHDAC阻害剤には、構造式:
で表されるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA;N−ヒドロキシ−N’−フェニルオクタンジアミド)が含まれる。
前記化合物及び他のHDAC阻害剤の別の例は、いずれもBreslowらに対して1994年11月29日に付与された米国特許5,369,108、19971年12月23日に付与された米国特許5,700,811、1998年6月30日に付与された米国特許5,773,474、1999年8月3日に付与された米国特許5,932,616及び2003年1月28日に付与された米国特許6,511,990;いずれもMarksらに対して1991年10月8日に付与された米国特許5,055,608、1992年12月29日に付与された米国特許5,175,191及び1997年3月4日に付与された米国特許5,608,108;並びにYoshida,M.ら,Bioassays,17,423−430(1995);Saito,A.ら,PNAS USA,96,4592−4597(1999);Furamai R.ら,PNAS USA,98(1),87−92(2001);Komatsu,Y.ら,Cancer Res.,61(11),4459−4466(2001);Su,G.H.ら,Cancer Res.,60,3137−3142(2000);Lee,B.I.ら,Cancer Res.,61(3),931−934;Suzuki,T.ら,J.Med.Chem.,42(15),3001−3003(1999);2001年3月15日に公開されたSloan−Kettering Institute for Cancer Research and The Trustees of Columbia UniversityのPCT出願WO 01/18171;Hoffmann−La RocheのPCT出願 WO 02/246144;NovartisのPCT出願WO 02/22577;ProlifixのPCT出願WO 02/30879;いずれもMethylgene,Inc.のPCT出願WO 01/38322(2001年5月31日公開)、WO 01/70675(2001年9月27日公開)及びWO 00/71703(2000年11月30日公開);Fujisawa Pharmaceutical Co.,Ltd.の1999年10月8日に公開されたPCT出願WO 00/21979;Beacon Laboratories,L.L.C.の1998年3月11日に公開されたPCT出願WO 98/40080;及びCurtin M.(Current patent status of HDAC inhibitor,Expert Opin.Ther.Patents(2002),12(9):1375−1384及びここに引用されている参考文献)中に見つけることができる。
SAHAまたは他のHDACは、実験の詳細の欄に概説した方法に従って、その内容が参照により本明細書に組み込まれるとする米国特許5,369,108、5,700,811、5,932,616及び6,511,990に記載されている方法に従って、または当業者に公知の他の方法に従って合成され得る。
HDAC阻害剤の具体的な非限定例を下表1に示す。本発明は、以下に示す化合物に構造的に類似であり、ヒストンデアセチラーゼを阻害することができる化合物を包含することを留意すべきである。
レチノイド及び他の治療
癌を治療するために使用されている従来の細胞毒性及びホルモン治療に加えて、癌を治療するために追加の治療法が最近開発された。例えば、多くの形態の遺伝子治療が前臨床または臨床トライアルにかけられている。更に、腫瘍血管新生(血管新生)の抑制に基づくアプローチが現在開発中である。このコンセプトの目的は、新しく構築された腫瘍血管系により与えられる栄養及び酸素供給から腫瘍を隔絶することである。加えて、癌治療は新生細胞の終末分化を誘導することによっても試みられている。適当な分化剤には、その内容が援用より含まれるとする以下の参考文献の1つ以上に開示されている化合物が含まれる:
A)極性化合物(Marksら(1987);Friend,C.,Scher,W.,Holland,J.W.and Sato,T.(1971)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),68:378−382;Tanaka,M.,Levy,J.,Terada,M.,Breslow,R.,Rifkind,R.A.,and Marks,P.A.(1975)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),72:1003−1006;Reuben,R.C.,Wife,R.L.,Breslow,R.,Rifkind,R.A.,and Marks,P.A.(1976)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),73:862−866);
B)ビタミンD及びレチノイン酸の誘導体(Abe,E.,Miyaura,C.,Sakagami,H.,Takeda,M.,Konno,K.,Yamazaki,T.,Yoshika,S.,and Suda,T.(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),78:4990−4994;Schwartz,E.L.,Snoddy,J.R.,Kreutter,D.,Rasmussen,H.,and Sartorelli,A.C.(1983)Proc.Am.Assoc.Cancer Res.,24:18;Tanenaga,K.,Hozumi,M.,and Sakagami,Y.(1980)Cancer Res.,40:914−919);
C)ステロイドホルモン(Lotem,J.and Sachs,L.(1975)Int.J.Cancer,15:731−740);
D)増殖因子(Sachs,L.(1978)Nature(Lond.)274:535;Metcalf,D.(1985)Science,229:16−22);
E)プロテアーゼ(Scher,W.,Scher,B.M.and Waxman,S.(1983)Exp.Hematol.,11:490−498;Scher,W.,Scher,B.M.,and Waxman,S.(1982)Biochem.& Biophys.Res.Comm.,109:348−354);
F)腫瘍プロモーター(Huberman,E.and Callaham,M.F.(1979)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),76:1293−1297;Lottem,J.and Sachs,L.(1979)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),76:5158−5162);及び
G)DNAまたはRNA合成の抑制剤(Schwartz,E.L.and Sartorelli,A.C.(1982)Cancer Res.,42:2651−2655;Terada,M.,Epner,E.,Nudel,U.,Salmon,J.,Fibach,E.,Rifkind,R.A.and Marks,P.A.(1978)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),75:2795−2799;Morin,M.J.and Sartorelli,A.C.(1984)Cancer Res.,44:2807−2812;Schwartz,E.L.,Brown,B.J.,Nierenberg,M.,Marsh,J.C.,and Sartorelli,A.C.(1983)Cancer Res.,43:2725−2730;Sugano,H.,Furusawa,M.,Kawaguchi,T.,and Ikawa,Y.(1973)Bibl.Hematol.,39:943−954;Ebert,P.S.,Wars,I.,and Buell,D.N.(1976)Cancer Res.,36:1809−1813;Hayashi,M.,Okabe,J.and Hozumi,M.(1979)Gann,70:235−238)。
本発明で使用するためのレチノイドまたはレチノイド剤には、ビタミンAのすべての天然、組換え及び合成誘導体またはミメティックス、例えばレチニルパルミテート、レチノイル−ベータ−グルクロニド(ビタミンA1ベータ−グルクロニド)、レチニルホスフェート(ビタミンA1ホスフェート)、レチニルエステル、4−オキソレチノール、4−オキソレチンアルデヒド、3−デヒドロレチノール(ビタミンA2)、11−シス−レチナール(11−シス−レチンアルデヒド,11−シスまたはネオ b ビタミンA1アルデヒド)、5,6−エポキシレチノール(5,6−エポキシビタミンA1アルコール)、アンヒドロレチノール(アンヒドロビタミンA1)及び4−ケトレチノール(4−ケト−ビタミンA1アルコール)、オール−トランスレチノイン酸(ATRA;トレチノイン;ビタミンA酸;3,7−ジメチル−9−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘネン−1−イル)−2,4,6,8−ノナテトラエン酸[CAS番号302−79−4])、オール−トランスレチノイン酸の脂質製剤(例:ATRA−IV)、9−シスレチノイン酸(9−シス−RA;アリトレチノイン;パンレチン(著作権);LGD1057)、(e)−4−[2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフタレニル)−1−プロペニル]−安息香酸、3−メチル−(E)−4−[2−(5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフタレニル)−1−プロペニル]−安息香酸、フェンレチニド(N−(4−ヒドロキシフェニル)レチナミド;4−HPR)、エトレチネート(2,4,6,8−ノナテトラエン酸)、アシトレチン(Ro 10−1670)、タザロテン(エチル6−[2−(4,4−ジメチルチオクロマン−6−イル)−エチニル]ニコチネート)、トコレチナート(9−シス−トレチノイントコフェリル)、アダパレン(6−[3−(1−アダマンチル)−4−メトキシフェニル]−2−ナフトエ酸)、モトレチニド(トリメチルメトキシフェニル−N−エチルレチナミド)及びレチンアルデヒドが含まれる。
レチノイドとして、レチノイド関連分子、例えばCD437(6−[3−(1−アダマンチル)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ナフタレンカルボン酸及びAHPNとも称される)、CD2325、ST1926([E−3−(4’−ヒドロキシ−3’−アダマンチルビフェニル−4−イル)アクリル酸)、ST1878(メチル2−[3−[2−[3−(2−メトキシ−1,1−ジメチル−2−オキソエチル)フェノキシ]エトキシ]フェノキシ]イソブチレート)、ST2307、ST1898、ST2306、ST2474、MM11453、MM002(3−Cl−AHPC)、MX2870−1、MX3350−1、MX84及びMX90−1(Garattiniら,2004,Curr.Pharmaceut.Design,10:433−448;Garattini and Terao,2004,J.Chemother.,16:70−73)も含まれる。1つ以上のRXRに結合するレチノイド剤も本発明で使用するために含まれる。1つ以上のRXRに結合するが1つ以上RARに結合しないレチノイド剤(すなわち、RXRに対して選択的結合;レキシノイド)、例えばドコサヘキサン酸(DHA)、フィタン酸、メトプレン酸、LG100268(LG268)、LG100324、LGD1057、SR11203、SR11217、SR11234、SR11236、SR11246、AGN194204(例えば、Simeone and Tari,2004,Cell Mol.Life Sci.,61:1475−1484;Rigas and Dragnev,2005,The Oncologist,10:22−33;Ahujaら,2001,Mol.Pharmacol.,59:765−773;Gorgun and Foss,2002,Blood,100:1399−1403;Bischoffら,1999,J.Natl.Cancer Inst.,91:2118−2123;Sunら,1999,Clin.Cancer Res.,5:431−437;Crow and Chandraratna,2004,Breast Cancer Res.,6:R546−R555参照)も含まれる。更には、9−シス−RAの誘導体が含まれる。加えて、3−メチルTTNEB及び関連物質、例えばターグレチン(登録商標)、ベキサロテン、LGD1069、構造:
で表される4−[1−(5,6,7,8−テトラヒドロ−3,5,5,8,8−ペンタメチル−2−ナフタレニル)エテニル]安息香酸、或いはその医薬的に許容され得る塩または水和物が含まれる。
立体化学
多くの有機化合物は、平面−偏光の平面の回転能力を有する光学的に活性な形態で存在している。光学活性化合物を記載する際、そのキラル中心の周りの分子の絶対配置を指すために接頭辞D及びL、またはR及びSが使用される。接頭辞d及びl、または(+)及び(−)は化合物による平面−偏光の回転のサインを指すために使用され、(−)は化合物が左旋性であることを意味する。接頭辞として(+)またはdが付けられている化合物は右旋性である。所与の化学構造の場合、立体異性体と称される化合物は、鏡像が相互に重ならない場合を除いて同一である。具体的立体異性体はエナンチオマーとも称され、前記異性体の混合物はしばしばエナンチオマー混合物と称されている。エナンチオマーの50:50混合物はラセミ混合物と称されている。
本明細書中に記載されている化合物の多くは1つ以上のキラル中心を有し得、よって各種エナンチオマー形態として存在し得る。所望により、キラル炭素に星印(*)を付けてもよい。キラル炭素に対する結合が本発明の式中に直線として描かれている場合には、キラル炭素の(R)及び(S)配置の両方、よって両エナオチオマー及びその混合物が式の範囲に包含されると理解される。当業界で使用されているように、キラル炭素の周りの絶対配置を特定したいときにはキラル炭素に対する結合の1つはくさび(平面の上にある原子に対する結合)として、他方は一連のまたはくさびの短い平行線の(平面の下にある原子に対する結合)として描かれ得る。キラル炭素に対する(R)または(S)配置を指すためにはCahn−Inglod−Prelogシステムが使用され得る。
本発明のHDAC阻害剤が1つのキラル中心を含んでいる場合、化合物は2つのエナンチオマー形態で存在し、本発明は両エナンチオマー及びエナンチオマー混合物(例えば、ラセミ混合物と称される特定の50:50混合物)を含む。エナンチオマーは当業者に公知の方法、例えば結晶化により分離され得るジアステレオマー塩の形成(CRC Handbook of Optical Resolutions via Diastereomeric Salt Formation by David Kozma(CRC Press,2001)参照);例えば結晶化、気液または液体クロマトグラフィーにより分離され得るジアステレオマー誘導体または複合体の形成;1つのエナンチオマーとエナンチオマー特異的試薬の選択的反応(例えば、酵素エステル化);または例えば結合キラルリガンドを有するシリカのようなキラル支持体を用いてまたはキラル溶媒の存在下でのキラル環境での気液または液体クロマトグラフィーにより分割され得る。所望のエナンチオマーを上記した分離手順の1つにより別の化学種に変換する場合には所望のエナンチオマー形態を遊離するために別のステップが必要であると認められる。
或いは、特定のエナンチオマーは、光学活性な試薬、基質、触媒または溶媒を用いる不斉合成により、または1つのエナンチオマーを不斉変換により別のエナンチオマーに変換することにより合成され得る。
本発明の化合物のキラル炭素での特定の絶対配置の指定は、化合物の指定エナンチオマー形態がエナンチオマー過剰(ee)にあること、すなわち他のエナンチオマーを実質的に含んでいないことを意味すると理解されたい。例えば、化合物の“R”形態は化合物の“S”形態を実質的に含んでおらず、よって“S”形態のエナンチオマー過剰にある。逆に、化合物の“S”形態は化合物の“R”形態を実質的に含まず、よって“R”形態のエナンチオマー過剰にある。本明細書中で使用されているエナンチオマー過剰率は、特定のエナンチオマーが50%以上で存在していることである。例えば、エナンチオマー過剰率は約60%以上(例:約70%以上)、例えば約80%以上(例:90%以上)である。特定の絶対配置が指定されている特定実施態様では、指定されている化合物のエナンチオマー過剰率は少なくとも約90%である。より特定の実施態様では、化合物のエナンチオマー過剰率は少なくとも約95%、例えば約97.5%(例:少なくとも99%)のエナンチオマー過剰率である。
本発明の化合物が2個以上のキラル炭素を有している場合、2つ以上の光学異性体を有し得、よってジアステレオマー形態で存在し得る。例えば、2個のキラル炭素がある場合、化合物は最高4つの光学異性体及び2対のエナンチオマー((S,S)/(R,R)及び(R,S)/(S,R))を有し得る。エナンチオマーの対(例えば、(S,S)/(R,R))は相互の鏡像立体異性体である。鏡像でない立体異性体(例えば、(S,S)及び(R,S))はジアステレオマーである。ジアステレオマー対は当業者に公知の方法、例えばクロマトグラフィーまたは結晶化により分離され得、各対のうちの個々のエナンチオマーは上記したように分離され得る。本発明は化合物の各ジアステレオマー及びその混合物を包含する。
本明細書中で使用されている“a”、“an”及び“the”は、明確に別段の記載がない限り単数及び複数の言及を含む。よって、例えば「活性化合物」または「医薬的に活性な物質」は単一の活性物質及び2つ以上の異なる物質の組合せを含み、「担体」の言及は2つ以上の担体の混合物、単一の担体、等々である。
本発明は、本明細書中に記載されているHDAC阻害剤のプロドラッグを包含するとも意図される。化合物のプロドラッグは公知の製薬技術を用いて作成され得る。
本発明は、上にリストした化合物に加えて前記化合物のホモログ及びアナログの使用を包含すると意図される。これに関連して、ホモログは上記した化合物に対して実質的な構造類似性を有している分子であり、アナログは構造類似性に関係なく実質的な生物学的類似性を有している化合物である。
アルキル化剤
アルキル化剤の例には、ビスクロロエチルアミン(ナイトロジェンマスタード、例:クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタード)、アジリジン(例:チオテパ)、アルキルアルコンスルホネート(例:ブスルファン)、ニトロソ尿素(例:カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン)、非古典的アルキル化剤(アルトレタミン、ダカルバジン及びプロカルバジン)、白金化合物(カルボプラスチン及びシスプラチン)が含まれるが、これらに限定されない。これらの化合物はホスフェート、アミノ、ヒドロキシル、スルフィヒドリル、カルボキシル及びイミダゾール基と反応する。
生理的条件下で、これらの薬物はイオン化し、感受性核酸及びタンパク質に結合して細胞分裂周期停止及び/または細胞死をもたらす正に荷電したイオンを生ずる。アルキル化剤は、細胞周期の特定相とは無関係にその活性を発揮するので細胞周期相非特異的物質である。ナイトロジェンマスタード及びアルキルアルコンスルホネートはG1またはM相の細胞に対して最も有効である。ニトロソ尿素、ナイトロジェンマスタード及びアジリジンはG1及びS相からM相への進行を傷つける。Chabner and Collins編,(1990)“Cancer Chemotherapy:Principles and Practice”,Philadelphia:JB Lippincott。
アルキル化剤は広い範囲の新生物疾患に対して活性であり、白血病やリンパ腫及び固形腫瘍の治療において有意な活性を有している。臨床上、このグループの薬物は急性及び慢性白血病;ホジキン病;非ホジキンリンパ腫;多発性骨髄腫;原発性脳腫瘍;乳癌、卵巣癌、精巣癌、肺癌、膀胱癌、子宮頸部癌、頭頸部癌及び悪性メラノーマの治療において日常的に使用されている。
抗生物質
抗生物質(例えば、細胞毒性抗生物質)は、DNAまたはRNA合成を直接抑制することにより作用し、細胞周期を通して有効である。抗生物質の例には、アントラサイクリン(例:ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン及びアントラセネジオン)、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、プリカトマイシンが含まれる。これらの抗生物質は各種細胞成分を標的とすることにより細胞増殖を干渉する。例えば、アントラサイクリンは通常転写活性DNAの領域においてDNAトポイソメラーゼIIの作用と干渉してDNA鎖の切断をもたらすと考えられている。
ブレオマイシンは通常イオンをキレート化し、活性化複合体を形成し、この複合体はその後DNAの塩基と結合して鎖切断及び細胞死を引き起こすと考えられている。
抗生物質は、乳癌、肺癌、胃癌及び甲状腺癌、リンパ腫、骨髄性白血病、骨髄腫及び肉腫を含めた広範囲の新生物疾患に対して治療薬として使用されている。
代謝拮抗物質
代謝拮抗物質(すなわち、代謝拮抗剤)は癌細胞の生理及び増殖にとって重要な代謝過程を干渉する薬物群である。癌細胞が活発に増殖するには大量の核酸、タンパク質、脂質及び他の重要な細胞成分が連続的に合成されなければならない。
多くの代謝拮抗剤は、プリンまたはピリミジンヌクレオシドの合成を抑制し、またはDNA複製の酵素を阻害する。幾つかの代謝拮抗剤はリボヌクレオシド及びRNAの合成及び/またはアミノ酸代謝及びタンパク質合成をも干渉する。代謝拮抗剤は、重要な細胞成分の合成を干渉することにより、癌細胞の増殖を遅らせたり停止させる。代謝拮抗物質はこの群に含まれる。代謝拮抗物質の例にはフルオロウラシル(5−FU)、フロクスウリジン(5−FUdR)、メトトレキサート、ロイコボリン、ヒドロキシ尿素、チオグアニン(6−TG)、メルカプトプリン(6−MP)、シタラビン、ペントスタチン、リン酸フルダラビン、クラドリビン(2−CDA)、アスパラギナーゼ及びゲムシタビンが含まれるが、これらに限定されない。
代謝拮抗物質は、結腸癌、直腸癌、乳癌、肝臓癌、胃癌、膵臓癌、悪性メラノーマ、急性及び慢性白血病、並びに毛状細胞白血病を含めた幾つかの一般的な形態の癌を治療するために広く使用されている。
ホルモン物質
ホルモン物質は標的臓器の成長及び発生を調節する薬物群である。ホルモン物質の多くは性ステロイド、その誘導体及びそのアナログ、例えばエステロゲン、プロゲストゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、抗アンドロゲン及びプロゲスチンである。これらのホルモン物質は、重要な遺伝子の受容体発現及び転写をダウンレギュレートするように性ステロイドに対する受容体のアンタゴニストとして役立ち得る。ホルモン物質の例は、合成エストロゲン(例:ジエチルスチベストロール)、抗エストロゲン(例:タモキシフェン、トレミフェン、フルオキシメステロール及びラロキシフェン)、抗アンドロゲン(例:ビカルタミド、ニルタミド及びフルタミド)、アロマターゼ阻害剤(例:アミノグルテチミド、アナストロゾール及びテトラゾール)、黄体ホルモン放出ホルモン(LHRH)アナログ、ケトコナゾール、酢酸ゴセレリン、ロイプロリド、酢酸メゲストロール及びミフェプリストンである。
ホルモン物質は、乳癌、前立腺癌、メラノーマ及び髄膜腫の治療のために使用されている。ホルモンの主要作用はステロイド受容体を介して媒介されるので、受容体陽性乳癌の60%は標準的なホルモン治療に応答したが、受容体陰性腫瘍では10%未満しか応答しなかった。ホルモン物質に関連する主な副作用は発赤である。頻繁な症状は骨痛の突然の増加、皮膚病巣のまわりの紅斑及び誘発された高カルシウム血症である。
具体的には、プロゲストゲンが子宮内膜癌を治療するために使用されている。なぜならば、子宮内膜癌はプロゲストゲンと競合しない高レベルのエストロゲンに曝されている女性で発症しているからである。
抗アンドロゲンはホルモン依存性である前立腺癌を治療するために主に使用されている。抗アンドロゲンはテストステロンレベルを低下させ、よって腫瘍の増殖を抑えるために使用されている。
乳癌のホルモン治療は、新生乳癌細胞のエストロゲン受容体のエストロゲン依存性活性化のレベルの低下を伴う。抗エストロゲンは、エストロゲン受容体に結合することにより作用し、コアクチベーターの補充を防止し、よってエストロゲンシグナルを抑制する。
LHRHアナログは、テトステロンレベルを低下させ、よって腫瘍の増殖を低下させるように前立腺癌の治療に使用されている。
アロマターゼ阻害剤は、ホルモン合成に必要な酵素を阻害することにより作用する。閉経後女性では、エストロゲンの主要ソースはアロマターゼによるアンドロステンジオンの変換を介する。
植物由来物質
植物由来物質は、植物に由来するかまたは物質の分子構造に基づいて修飾させた薬物群である。植物由来物質は、細胞分化に必須の細胞成分の構築を防止することにより細胞複製を抑制する。
植物由来物質の例には、ビンカアルカロイド(例:ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジン及びビノレルビン)、ポドフィロトキシン(例:エトポシド(VP−16)及びテニポシド(VM−26))及びタキサン(例:パクリタキセル及びドセタキセル)が含まれる。これらの植物由来物質は通常チューブリンに結合し、有糸分裂を抑制する有糸分裂抑制剤として作用する。エトポシドのようなポドフィロトキシンは、トポイソメラーゼIIと相互作用することによりDNA合成を干渉して、DNA鎖を切断すると考えられている。
植物由来物質は多くの形態の癌を治療するために使用されている。例えば、ビンクリスチンは白血病、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、並びに小児腫瘍の神経芽細胞腫、横紋筋肉腫及びウイルムス腫瘍を治療するために使用されている。ビンブラスチンはリンパ腫、精巣癌、腎細胞癌、菌状息肉症及びカポジ肉腫に対して使用されている。ドセタキセルは進行性乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)及び卵巣癌に対して有望な活性を発揮している。
エトポシドは広範囲の新生物に対して活性であり、中でも小細胞肺癌、精巣癌及びNSCLCに最も応答する。
生物学的物質
生物学的物質は、単独で使用するかまたは化学療法及び/または放射線療法と併用したとき癌/腫瘍退縮を引き出す生体分子群である。生物学的物質の例には、サイトカインのような免疫調節性タンパク質、腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体、腫瘍抑制遺伝子及び癌ワクチンが含まれる。
サイトカインは顕著な免疫調節活性を有している。インターロイキン−2(IL−2,アルデスロイキン)及びインターロイキン−a(IFN−a)のような幾つかのサイトカインは抗腫瘍活性を示し、転移性腎細胞癌及び転移性悪性メラノーマを患っている患者の治療のために認可されている。IL−2はT細胞媒介免疫応答の中心となるT細胞増殖因子である。幾つかの患者に対するIL−2の選択的抗腫瘍効果は、自己及び非自己を区別する細胞性免疫応答の結果であると考えられる。
インターフェロン−αは重複する活性を有する23個以上の関連サブタイプを含む。IFN−αは多くの固形及び血液悪性疾患に対して活性を示し、後者に対して特に感受性であると見られる。
インターフェロンの例には、インターフェロン−α、インターフェロン−β(線維芽細胞インターフェロン)及びインターフェロン−γ(線維芽細胞インターフェロン)が含まれる。他のサイトカインの例には、エリスロポエチン(エポイエチン−α)、顆粒球−CSF(フィルグラスチン)及び顆粒球マクロファージ−CSF(サルグラモスチム)が含まれる。サイトカイン以外の他の免疫調節剤には、カルメット・ゲラン桿菌、レバミゾール、及び天然に存在するホルモンソマトスタチンの作用に似た長時間作用性オクタペプチドであるオクトレオチドが含まれる。
更に、抗癌治療は、腫瘍ワクチン接種アプローチで使用されている抗体及び試薬を用いる免疫療法による治療を含み得る。この治療クラスでの主な薬物は抗体単独であるか、または例えば癌細胞に対する毒素または化学療法剤/細胞毒を有している抗体である。腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体は腫瘍により発現する抗原、特に腫瘍特異的抗原に対して引き出される抗体である。例えば、モノクローナル抗体ハーセプチンC(トラスツズマブ)は、転移性乳癌を含めた幾つかの乳癌で過剰発現しているヒト上皮増殖因子受容体(HER2)に対して生じている。HER2タンパク質の過剰発現は臨床上より攻撃的な疾患及びより不良な予後に関連している。ハーセプチン(登録商標)は、腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現している転移性乳癌を患っている患者を治療するための単剤として使用されている。
腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体の別の例は、リンパ腫細胞上のCD20に対して生じ、正常及び悪性CD20+pre−B及び成熟B細胞を選択的に枯渇させるリツキサン(登録商標)(リツキシマブ)である。
リツキサンは、再発性または難治性低グレードまたは濾胞状CD20+,B細胞非ホジキンリンパ腫を患っている患者を治療するための単剤として使用されている。マイロターグ(登録商標)(ゲムツスマブ・オゾガマイシン)及びキャンパス(登録商標)(アレムツズマブ)は、使用され得る腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体の別の例である。
エンドスタチンは血管新生を標的とするために使用されるプラスミノーゲンの切断産物である。
癌抑制遺伝子は、細胞増殖及び分裂周期を抑制して新生物の発生を防ぐように働く遺伝子である。癌抑制遺伝子が変異すると、細胞が抑制シグナルのネットワークの1つ以上の成分を無視し、よって細胞周期チェックポイントを克服し、コントロールされた細胞増殖−癌を高率で生ずる。癌抑制遺伝子の例には、Duc−4、NF−1、NF−2、RB、p53、WT1、BRCA1及びBRCA2が含まれる。
DPC4は膵臓癌に関与し、細胞分裂を抑制する細胞質経路に関わっている。NF−1は細胞質抑制タンパク質であるRasを抑制するタンパク質をコード化する。NF−1は神経系の神経線維腫及びクロム親和性細胞腫並びに骨髄性白血病に関与している。NF−2は神経系の骨髄腫、シュワン細胞腫及び上衣腫に関与している核タンパク質をコード化する。RBは細胞周期の腫瘍抑制剤である核タンパク質のpRBタンパク質をコード化する。RBは網膜芽細胞腫、並びに骨癌、膀胱癌、小細肺癌及び乳癌に関与している。P53は細胞分裂を調節し、アポトーシスを誘導し得るp53タンパク質をコード化する。p53の変異及び/または反応低下は広範囲の癌で見られる。WTIは腎臓のウイルムス腫瘍に関与している。BRCA1は乳癌及び卵巣癌に関与し、BRCA2は乳癌に関与している。腫瘍抑制遺伝子は、腫瘍抑制機能を発揮している腫瘍細胞に移動し得る。
癌ワクチンは腫瘍に対する身体の特異的免疫応答を誘導する物質群である。研究・開発中及び治験中の癌ワクチンの多くは腫瘍関連抗原(TAA)である。TAAは、腫瘍細胞上に存在し、正常細胞上に殆ど存在しないかまたは減少している構造物(すなわち、タンパク質、酵素または炭水化物)である。腫瘍細胞に対してかなり独自であるために、TAAは認識し、その破壊を生起させるべく免疫系を遺伝子に対する標的となる。TAAの例には、ガングリオシド(GM2)、前立腺特異抗原(PSA)、α−胎児タンパク質(APP)、(結腸癌及び他の腺腫(例えば、乳癌、肺癌、胃癌及び膵臓癌)により産生される)癌胎児性抗原(CEA)、メラノーマ関連抗原(MART−1、gap 100、MADE 1,3チロシナーゼ)、パピローマウイルスEb及びE7断片、自己由来腫瘍細胞及び同種腫瘍細胞の全細胞または一部/ライゼートが含まれる。
これらの方法をHDAC阻害剤(例えば、SAHA)及びレチノイド剤(例えば、ターグレチン)と併用することは本発明の範囲内である。
HDAC阻害剤の投与
(投与ルート)
HDAC阻害剤(例えば、SAHA)、レチノイド剤(例えば、ターグレチン)及び場合により別の抗癌剤は当業者に公知の投与方法により投与され得る。投与ルートの例には経口、非経口、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、局所、舌下、筋肉内、直腸内、経頬、鼻腔内、リポソーム、吸入により、膣内、眼内、カテーテルまたはステントによる局所デリバリー、皮下、脂肪内、関節内、包膜内または徐放性剤形が含まれるが、これらに限定されない。SAHAまたはHDAC阻害剤の1つは、抗癌剤、例えばターグレチンのようなレチノイド剤及び場合により別の抗癌剤の効果と合わせて疾患を治療するのに有効な用量が得られる用量及び投与スケジュールに従って投与され得る。
勿論、SAHAまたはHDAC阻害剤の1つの投与ルートはレチノイド剤及び任意の抗癌剤の投与ルートと無関係であり得る。SAHAについての特定投与ルートは経口投与である。よって、この実施態様によれば、SAHAを経口投与し、第2の物質(抗癌剤、例えばターグレチンのようなレチノイド剤)及び任意の第3の物質は経口、非経口、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、直腸内、経頬、鼻腔内、リポソーム、吸入により、膣内、眼内、カテーテルまたはステントによる局所デリバリー、皮下、脂肪内、関節内、包膜内または徐放性剤形で投与され得る。
例えば、本発明のHDAC阻害剤、レチノイド剤及び任意の追加抗癌剤は錠剤、カプセル剤(その各々は徐放性または緩効性製剤を含む)、ピル剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁液剤、シロップ剤及びエマルション剤のような経口形態で投与され得る。また、HDAC阻害剤、レチノイド剤及び任意の追加抗癌剤は、静脈内(例えば、ボーラスまたは注入)、腹腔内、皮下、筋肉内または製薬業界の当業者に公知の形態を用いる他のルートにより投与され得る。HDAC阻害剤の特定の投与ルートは経口投与である。
HDAC阻害剤は、1つ以上の活性成分を徐放し得るように製剤化され得るデポ注射剤またはインプラント製剤の形態でも投与され得る。活性成分をペレットまたは小型シリンダーに圧縮し、デポ注射剤またはインプラントとして皮下または筋肉内に移植してもよい。インプラントは不活性材料、例えば生分解性ポリマーまたは合成シリコーン(例:シラスティック)、シリコーンゴム、またはDow−Coming Corporation製の他のポリマーを使用し得る。
HDAC阻害剤、レチノイド剤及び任意の追加抗癌剤はリポソームデリバリーシステム、例えば単ラメラ小胞、大ラメラ小胞及び多重ラメラ小胞の形態でも投与され得る。リポソームは各種リン脂質、例えばコレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンから形成され得る。レチノイド剤のリポソーム製剤も本発明の方法において使用され得る。レチノイド剤のリポソームバージョンは物質に対する耐性を高めるために使用され得る。例えば、リポソームトレチノイン(例:リポソームATRAまたはATRA−IV)を使用し得る。HDAC阻害剤、レチノイド剤及び任意の追加抗癌剤を一緒にリポソーム製剤中に含有させてもよく、または各々を別々のリポソーム製剤中に含有させてもよい。
HDAC阻害剤、レチノイド剤及び任意の追加抗癌剤は、化合物分子をカップリングさせる個々の担体としてモノクローナル抗体を使用することによってもデリバリーされ得る。
HDAC阻害剤、レチノイド剤及び任意の追加抗癌剤は、標的可能な薬物担体として可溶性ポリマーを用いても製造され得る。前記ポリマーにはポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシ−プロピル−メタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシエチル−アスパルタミド−フェノール、またはパルミトイル残基で置換したポリエチレンオキシド−ポリリシンが含まれ得る。更に、HDAC阻害剤、レチノイド剤及び任意の追加抗癌剤は、薬物を制御放出させるのに有用な生分解性ポリマー、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、並びにヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロックコポリマーを用いて製造され得る。
1つの実施態様において、HDAC阻害剤(例えば、SAHA)を賦形剤(例えば、結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム及びステアリン酸マグネシウム)を含み得るゼラチンカプセル剤の形態で経口投与し得る。更なる実施態様は、200mgの固体SAHAを89.5mgの結晶セルロース、9mgのクロスカルメロースナトリウム及び1.5mgのステアリン酸マグネシウムと一緒にゼラチンカプセル中に含んでいるものを含む。
(用量及び投与スケジュール)
HDAC阻害剤、レチノイド剤及び任意の追加抗癌剤を用いる投与レジメンは、タイプ、種、年齢、体重、性別及び治療対象の疾患の種類;治療対象の疾患の重症度(すなわち、ステージ);投与ルート;患者の腎臓及び肝臓機能;及び使用する特定化合物またはその塩を含めた各種要因に従って選択され得る。投与レジメンは、例えば疾患の進行を予防、(完全にまたは部分的に)抑制または停止させるために使用され得る。
本発明によれば、HDAC阻害剤(例えば、SAHA、或いはその医薬的に許容され得る塩または水和物)、レチノイド剤(例えば、ターグレチン、或いはその医薬的に許容され得る塩または水和物)及び任意の追加抗癌剤は連続または断続投与により投与され得る。例えば、HDAC阻害剤のレチノイド剤及び任意の追加抗癌剤と一緒の断続投与は1〜6日/週の投与からなり得、または周期的(例えば、2〜8週間連続毎日投与した後、最高1週間投与なしの休薬期間)な平均投与からなり得、または隔日での平均投与からなり得る。組成物を周期的に投与し、周期の間休薬期間を設けてもよい(例えば、2〜8週間治療し、治療の間最高1週間休薬する)。
例えば、SAHAまたはHDAC阻害剤の1つは最高800mgの1日総用量で投与され得る。HDAC阻害剤を1日1回(QD)投与しても、或いは1日2回(BID)や1日3回(TID)のように1日あたり複数回に分けてもよい。HDAC阻害剤は最高800mg(例えば、200mg、300mg、400mg,600mgまたは800mg)の1日総用量で投与され得、この総用量を1日1回で投与しても、または上記したように1日あたり複数回に分けてもよい。具体的投与では、投与は経口である。
1つの実施態様では、組成物を約200〜600mgの用量で1日1回投与する。別の実施態様では、組成物を約200〜400mgの用量で1日2回投与する。別の実施態様では、組成物を約200〜400mgの用量で1日2回、断続的に(例えば、3〜5日/週)投与する。1つの実施態様では、1日用量は200mgであり、これを1日1回、1日2回または1日3回投与し得る。1つの実施態様では、1日用量は300mgであり、これを1日1回、1日2回または1日3回投与し得る。1つの実施態様では、1日用量は400mgであり、これを1日1回、1日2回または1日3回投与し得る。
SAHAまたはHDAC阻害剤の1つは、レチノイド剤及び任意の追加抗癌剤の効果と合わせて癌を治療するのに有効な用量が得られる用量及び投与スケジュールに従って投与され得る。HDAC阻害剤、レチノイド剤及び任意の追加抗癌剤は、患者毎に異なり得、異なる投与スケジュールで投与され得る1日総用量で投与され得る。例えば、SAHAまたはHDAC阻害剤は25〜4000mg/m2の1日総用量で患者に投与され得る。特に、SAHAまたはHDAC阻害剤の1つは最高800mgの1日総用量で、特に経口投与により1日1〜3回、連続的に(毎日)または断続的に(例えば、3〜5日/週)投与され得る。加えて、投与は連続的(毎日)または断続的であり得る。
特定の治療プロトコルは、約200〜約600mgの範囲の1日総用量で連続的に(すなわち、毎日)、1日1〜3回投与することを含む。別の治療プロトコルは、約200〜約600mgの範囲の1日総用量で1日1〜3回、3〜5日/週で断続的に投与することを含む。
1つの特定実施態様では、HDAC阻害剤を400mgの用量で1日1回または200mgの用量で1日2回連続投与する。
別の特定実施態様では、HDAC阻害剤を400mgの用量で1日1回または200mgの用量で1日2回、3日/週で断続投与する。
別の特定実施態様では、HDAC阻害剤を400mgの用量で1日1回または200mgの用量で1日2回、4日/週で断続投与する。
別の特定実施態様では、HDAC阻害剤を400mgの用量で1日1回または200mgの用量で1日2回、5日/週で断続投与する。
1つの特定実施態様では、HDAC阻害剤を600mgの用量で1日1回、300mgの用量で1日2回または200mgの用量で1日3回連続投与する。
別の特定実施態様では、HDAC阻害剤を600mgの用量で1日1回、300mgの用量で1日2回または200mgの用量で1日3回、3日/週で断続投与する。
別の特定実施態様では、HDAC阻害剤を600mgの用量で1日1回、300mgの用量で1日2回または200mgの用量で1日3回、4日/週で断続投与する。
別の特定実施態様では、HDAC阻害剤を600mgの用量で1日1回、300mgの用量で1日2回、または200mgの用量で1日3回、5日/週で断続投与する。
1つの特定実施態様では、組成物を約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mgまたは約800mgの1日1回用量で連続的に(すなわち、毎日)または断続的に(例えば、少なくとも3日/週)投与する。
別の実施態様では、組成物を約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mgまたは約800mgの用量で1日1回、21日間のうち7日の少なくとも1周期(例えば、21日周期のうち7日間連続、すなわち1日目〜7日目)投与する。
別の実施態様では、組成物を約400mg、約500mgまたは約600mgの用量で1日1回、21日間のうち14日の少なくとも1周期(例えば、21日周期のうち14日間連続、すなわち1日目〜14日目)投与する。
別の実施態様では、組成物を約300mgまたは約400mgの用量で1日1回、28日間のうち14日の少なくとも1周期(例えば、28日周期のうち14日間連続、すなわち1日目〜14日目)投与する。
別の実施態様では、組成物を約400mgの用量で1日1回、例えば28日間のうち21日の少なくとも1周期(例えば、28日周期のうち21日間連続、すなわち1日目〜21日目)投与する。
別の実施態様では、組成物を約200mg、約250mg、約300mgまたは約400mgの1日2回用量で連続的に(すなわち、毎日)または断続的に(例えば、少なくとも3日/週)投与する。
別の実施態様では、組成物を(1投与あたり)約200mg、約250mgまたは約300mgの用量で1日2回、7日間のうち3日の少なくとも1周期投与する(例えば、3日間連続投与した後、4日間連続休薬する)。
別の実施態様では、組成物を(1投与あたり)約200mg、約250mgまたは約300mgの用量で1日2回、7日間のうち4日の少なくとも1周期投与する(例えば、4日間連続投与した後、3日間連続休薬する)。
別の実施態様では、組成物を(1投与あたり)約200mg、約250mgまたは約300mgの用量で1日2回、7日間のうち5日の少なくとも1周期投与する(例えば、5日間連続投与した後、2日間連続休薬する)。
別の実施態様では、組成物を(1投与あたり)約200mg、約250mgまたは約300mgの用量で1日2回、21日周期で7日間のうち3日の少なくとも1周期(例えば、21日周期において最高3週間の間3日間連続、すなわち1日目〜3日目投与する)。
別の実施態様では、組成物を(1投与あたり)約200mg、約250mgまたは約300mgの用量で1日2回、28日周期で7日間のうち3日の少なくとも1周期(例えば、28日周期において最高4週間の間3日間連続、すなわち1日目〜3日目)投与する。
別の実施態様では、組成物を(1投与あたり)約200mg、約250mgまたは約300mgの用量で1日2回、21日周期で7日間のうち4日の少なくとも1周期(例えば、21日周期において最高3週間の間4日間連続、すなわち1日目〜4日目)投与する。
別の実施態様では、組成物を(1投与あたり)約200mg、約250mgまたは約300mgの用量で1日2回、21日周期で7日間のうち5日の少なくとも1周期(例えば、21日周期において最高3週間の間5日間連続、すなわち1日目〜5日目)投与する。
別の実施態様では、組成物を(1投与あたり)約200mg、約250mgまたは約300mgの用量で1日2回、例えば21日周期で7日間のうち3日の少なくとも1周期(例えば、21日周期において3日間連続、すなわち1日目〜3日目)投与する。
別の実施態様では、組成物を(1投与あたり)約200mg、約250mgまたは約300mgの用量で1日2回、例えば21日周期で7日間のうち3日の少なくとも2周期(例えば、3日間連続、すなわち21日周期において第1週の1日目〜3日目及び第2週の8日目〜10日目)投与する。
別の実施態様では、組成物を(1投与あたり)約200mg、約250mgまたは約300mgの用量で1日2回、例えば21日周期で7日間のうち3日の少なくとも3周期(例えば、3日間連続、すなわち21日周期において第1週の1日目〜3日目、第2週の8日目〜10日目及び第3週の15日目〜17日目)投与する。
別の実施態様では、組成物を(1投与あたり)約200mg、約250mgまたは約300mgの用量で1日2回、28日周期で7日間のうち3日の少なくとも4周期(例えば、3日間連続、すなわち28日周期において第1週の1日目〜3日目、第2週の8日目〜10日目、第3週の15日目〜17日目及び第4週の22日目〜24日目)投与する。
別の実施態様では、組成物を(1投与あたり)約300mgの用量で1日2回、例えば14日間のうち7日の少なくとも1周期(例えば、7日間連続、すなわち14日周期の1日目〜7日目)投与する。
別の実施態様では、組成物を(1投与あたり)約200mg、約300mgまたは約400mgの用量で1日2回、例えば21日間のうち11日の少なくとも1周期(例えば、11日間連続、すなわち21日周期の1日目〜11日目)投与する。
別の実施態様では、組成物を(1投与あたり)約200mg、約300mgまたは約400mgの用量で1日1回、例えば21日間のうち10日の少なくとも1周期(例えば、10日間連続、すなわち21日周期の1日目〜10日目)投与する。
別の実施態様では、組成物を(1投与あたり)約200mg、約300mgまたは約400mgの用量で1日2回、例えば21日間のうち10日の少なくとも1周期(例えば、10日間連続、すなわち21日周期の1日目〜10日目)投与する。
別の実施態様では、組成物を(1投与あたり)約200mg、約300mgまたは約400mgの用量で1日2回、例えば21日間のうち14日の少なくとも1周期(例えば、14日間連続、すなわち21日周期の1日目〜14日目)投与する。
加えて、HDAC阻害剤、レチノイド剤及び任意の追加抗癌剤を上記したスケジュールに従って数週間連続投与した後、休薬期間を設けてもよい。例えば、HDAC阻害剤を上記したスケジュールの1つに従って2〜8週間投与した後、1週間の休薬期間を設けても、または300mgの用量で1日2回、3〜5日/週投与してもよい。別の特定実施態様では、HDAC阻害剤を1日3回、2週間連続投与した後、1週間の休薬期間を設けてもよい。
本発明の別の態様において、HDAC阻害剤(例えば、SAHA)、レチノイド剤(例えば、ターグレチン)及び場合により別の抗癌剤の投与を含む治療手順は任意の順序で連続して、任意の順序で交互に、同時にまたはその組合せで実施され得る。特に、HDAC阻害剤の投与及びレチノイド剤の投与は同時、順次、または例えば同時投与と順次投与を交互になされ得る。例えば、1つの実施態様では、HDAC阻害剤(例えば、SAHA)を投与した後、レチノイド剤(例えば、ターグレチン)を投与する。他の実施態様では、HDAC阻害剤及びレチノイド剤を経口投与する。
HDAC阻害剤(例えば、SAHA)を1か月以上の間の1〜4週間のどこかで前投与した後、レチノイド剤(例えば、ターグレチン)及び場合により別の抗癌剤を同時または交互に投与してもよい。
別の実施態様では、HDAC阻害剤(例えば、SAHA)及びレチノイド剤(例えば、ターグレチン)を同時に投与する少なくとも1週間前にHDAC阻害剤を前投与し得、この場合SAHAは400mg/日で前投与または同時投与される。SAHA及びターグレチンの同時投与は6×28日周期の間であり得、或いはSAHAは6×28日周期の間1日1回400mgで投与され得、ターグレチンは第1の28日周期の間は150mg/日で、第2〜第6の28日周期の間は225mg/日で投与され得る。
他の実施態様では、HDAC阻害剤は、特に100mg/日、125mg/日、175mg/日、200mg/日、225mg/日、250mg/日、275mg/日、300mg/日、325mg/日、350mg/日、375mg/日、400mg/日または400mg/日以上で前投与または同時投与され得る。更に、SAHAは任意の用量で1日1〜3回またはそれ以上で投与され得る。ターグレチンは、特に50mg/日、75mg/日、100mg/日、125mg/日、175mg/日、200mg/日、225mg/日、250mg/日、275mg/日、300mg/日、325mg/日、350mg/日、375mg/日、400mg/日、425mg/日,450mg/日、475mg/日、500mg/日または500mg/日以上の用量で投与され得る。
HDAC阻害剤(例えば、SAHA)、レチノイド剤(例えば、ターグレチン)及び場合により別の抗癌剤は1〜12×28日周期、好ましくは1〜6×28日周期で投与され得るが、1〜11×28日周期、1〜10×28日周期、1〜9×28日周期、1〜8×28日周期、1〜7×28日周期、1〜5×28日周期、1〜4×28日周期、1〜3×28日周期または1〜2×28日周期も含まれ得る。SAHA及びターグレチン周期は任意の用量の組合せで投与され得、28日周期の組合せの例は6(または、それ以上)×28日周期の間のSAHAの投与及び第1の28日周期の間は第1用量(すなわち、150mg/日)で、第2〜第6(または、それ以上)の28日周期の間は第2用量(すなわち、225mg/日)でのターグレチンの投与であるが、これに限定されない。ターグレチンはSAHA(及び、場合により別の抗癌剤)と一緒に6(または、それ以上)×28日周期の間1つの用量でも投与され得る。或いは、ターグレチンは第1の28日周期の間は第1用量で、第2の28日周期の間は第2用量で、第3〜第6の28日周期の間は第3用量で投与され得る。ターグレチンは第1の28日周期の間は第1用量で、第2の28日周期の間は第2の用量で、第3の28日周期の間は第3の用量で、第4〜第6の28日周期の間は第4の用量でも投与され得る。更に、ターグレチンは第1の28日周期の間は第1の用量で、第2の28日周期の間は第2の用量で、第3の28日周期の間は第3の用量で、第4の28日周期の間は第4の用量で、第5及び第6の28日周期の間は第5の用量で投与され得る。ターグレチンは、1つ以上(好ましくは6、最高12)×28日周期を通して漸増する用量でも投与され得る。こうした投与スケジュールは患者のコンプライアンス、疾患の進行、年齢、身長、体重、性別、または抗癌剤の用量及び/または投与スケジュールに影響を及ぼすことが当業界で公知の他のパラメーターに基づいて実験的に決定され得る。
他の実施態様では、SAHA及びターグレチンが同時に投与され得、この場合400mgのSAHAが1日1回、6×28日周期の間投与され、ターグレチンは28日の第1周期間は150mg/日で、第2の28日周期の間は225mg/日で、第3〜第6の28日の周期の間は300mg/日で投与される。
他の実施態様では、SAHA及びターグレチンが同時に投与され得、この場合400mgのSAHAが1日1回、6×28日周期の間投与し、ターグレチンは第1の28日周期の間は150mg/日で、第2〜第6の28日周期の間は300mg/日で投与される。
更なる実施態様では、SAHA及びターグレチンが同時に投与され得、この場合400mgのSAHAが1日1回、6×28日周期の間投与され、ターグレチンは第1の28日周期の間は150mg/日で、第2の28日周期の間は300mg/日で、第3〜第6の28日周期の間は375mg/日で投与される。
他の実施態様では、SAHA及びターグレチンが同時に投与され得、この場合400mgのSAHAが1日1回、6×28日周期の間投与され、ターグレチンは第1の28日周期の間は150mg/日で、第2〜第6の28日周期の間は375mg/日で投与される。
他の実施態様では、SAHA及びターグレチンが同時に投与され得、この場合400mgのSAHAが1日1回、6×28日周期の間投与され、ターグレチンは第1の28日周期の間は150mg/日で、第2の28日周期の間は300mg/日で、第3〜第6の28日周期の間は450mg/日で投与される。
他の実施態様では、SAHA及びターグレチンが同時に投与され得、この場合400mgのSAHAが1日1回、6×28日周期の間投与され、ターグレチンは第1の28日周期の間は150mgで、第2〜第6の28日周期の間は450mg/日で投与される。
他の実施態様では、SAHA及びターグレチンが同時に投与され得、この場合400mgのSAHAが1日1回、6×28日周期の間投与され、ターグレチンは150mg/日から300mg/日、375mg/日または450mg/日に用量漸増される。1つの実施態様では、用量漸増は28日の2〜6周期で生ずる。
更なる実施態様では、脂質低下剤を前投与期間の間及び/またはその前に投与してもよい。脂質低下剤は、例えばフェノフィブレートであり得る。或いは、チロキシンを同時投与期間の開始時に投与してもよい。チロキシンにはレボチロキシが含まれるが、これに限定されない。
患者は、約3〜1500mg/m2/日、例えば約3、30、60、90、180、300、600、900、1200または1500mg/m2/日をデリバリーするのに十分な量のHDAC阻害剤を静脈内または皮下投与される。前記量は多くの適当な方法で、例えば大量の低濃度のHDAC阻害剤を長期間にわたりまたは1日数回投与され得る。前記量を1週間(7日間)につき連続1日以上、断続的にまたはその組合せで投与し得る。或いは、低用量の高濃度のHDAC阻害剤を短期間、例えば1週間(7日間)につき1日以上の間1日1回連続的、断続的またはその組合せで投与し得る。例えば、300mg/m2/日の用量を連続5日間、全部で1500mg/m2/治療で投与し得る。別の投与レジメンでは、連続日数は5日であり得、治療を連続2または3週間、全部で3000mg/m2及び4500mg/m2/治療で続けられる。
典型的には、約1.0〜約10mg/mL、例えば2.0mg/mL、3.0mg/mL、4.0mg/mL,5.0mg/mL、6.0mg/mL、7.0mg/mL、8.0mg/mL、9.0mg/mL及び10mg/mLの濃度のHDAC阻害剤を含む静脈内投与用製剤が作成され得、上記した所望用量が得られる量で投与され得る。1つの例では、1日あたりの総用量が約300〜約1500mg/m2であるように1日で十分容量の静脈内投与用製剤を患者に投与し得る。
特定の態様において、HDAC阻害剤(例えば、SAHA;ボリノスタット)は最高400mgの1日総用量で投与され得、レチノイド剤(例えば、ベキサロテン;3−メチルTTNEB;ターグレチン)は最高の300mg/m2の1日総用量で投与され得る。
下記するように適当な緩衝剤及び等張剤を含む皮下投与用製剤は、約5〜約12の範囲のpHで当業界で公知の手順に従って製造され得る。前記製剤は、1日1回以上(例えば、毎日1〜3回)の皮下投与で1日用量のHDAC阻害剤、レチノイド剤及び任意の追加抗癌剤がデリバリーされるように製剤化され得る。
HDAC阻害剤、レチノイド剤及び任意の追加抗癌剤は、適当な鼻腔内ビヒクルを局所使用する鼻腔内形態で、または当業者に公知の経皮パッチの形態を用いて経皮ルートでも投与され得る。経皮デリバリーシステムの形態で投与するためには、用量投与は勿論投与レジメンを通して断続的よりも連続的である。
本明細書に記載されている各種の投与モード、用量及び投与スケジュールは単に具体的実施態様を記載しているにすぎず、本発明の広い範囲を限定するものと解釈されるべきでない。用量及び投与スケジュールの交換、変更及び組合せが本発明の範囲に含まれる。
抗癌剤の投与
SAHAまたは他のHDAC阻害剤のいずれか1つ、及びターグレチンまたは他のレチノイド剤の投与ルートは抗癌剤の投与ルートと無関係であり得る。SAHA及びターグレチンの特別な投与ルートは経口投与である。よって、この実施態様によれば、SAHA及びターグレチンを経口投与し、他の抗癌剤は経口、非経口、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、直腸内、経頬、鼻腔内、リポソームを用いて、吸入により、膣内、眼内、カテーテルまたはステントによる局所デリバリー、皮下、脂肪内、関節内、包膜内または徐放性剤形で投与され得る。
加えて、HDAC阻害剤、レチノイド剤及び任意の追加抗癌剤を同一投与モードで投与してもよい。すなわち、両方の物質を経口的、IV、等々で投与してもよい。しかしながら、HDAC阻害剤を1つの投与モード(例えば、経口)で投与し、レチノイド剤及び任意の別の抗癌剤を別の投与モード(例えば、IVまたは上記した投与モードの1つ)で投与することも本発明の範囲内である。
一般的に使用されている抗癌剤及び通常投与される1日用量は以下の通りであるが、これらに限定されない:
本明細書中に記載されている抗癌剤(或いは、前記抗癌剤の医薬的に許容され得る塩または水和物、または前記抗癌剤の遊離酸、遊離塩基または他の遊離形態)を用いる投与レジメンは、HDAC阻害剤について記載しているものを含めた例示用量に従い得る。用量は、タイプ、種、年齢、体重、性別、治療対象の疾患の種類;治療対象の疾患の重症度(すなわち、ステージ);投与ルート;患者の腎臓及び肝臓機能;及び使用する特定化合物またはその塩を含めた各種要因に従って選択され得る。投与レジメンは、例えば病気の進行を予防、(完全にまたは部分的に)抑制または停止させるために使用され得る。
特定実施態様では、レチノイド剤は約0.05〜約7.5mg/kgまたは約1.5〜約7.5mg/kgの用量で投与される。具体例として、リポソームATRAは約15〜75mg/m2の用量で投与され得る。
併用投与
本発明に従って、HDAC阻害剤、レチノイド剤及び追加の抗癌剤は各種癌の治療において使用され得る。前記癌には固形腫瘍(例えば、頭頸部、肺、乳房、結腸、前立腺、膀胱、直腸、脳、胃組織、骨、卵巣、甲状腺または子宮内膜の腫瘍)、血液学的悪性疾患(例えば、白血病、リンパ腫、骨髄腫)、がん腫(例えば、膀胱癌、腎臓癌、乳癌、大腸癌)、神経芽細胞腫またはメラノーマが含まれるが、これらに限定されない。これらの癌の非限定例にはびらん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、T細胞リンパ腫または白血病、例えば皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢T細胞リンパ腫、ヒトT細胞リンパ増殖性ウイルス(HTLV)に関連するリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、並びに急性リンパ球性白血病、急性非リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄球性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、中皮腫、小児固形腫瘍、神経芽腫、網膜芽腫、グリオーマ、ウイルムス腫瘍、骨癌及び軟部組織肉腫、成人の一般的な固形腫瘍、例えば頭頸部癌(例:口腔、喉頭及び食道癌)、尿生殖器癌(例:前立腺、膀胱、腎臓、子宮、卵巣、精巣、直腸及び結腸)、肺癌(例:扁平上皮癌や腺癌を含めた小細胞肺癌及び非小細胞肺癌)、乳癌、膵臓癌、メラノーマ及び他の皮膚癌、胃癌、脳腫瘍、肝臓癌、副腎癌、腎臓癌、甲状腺癌、基底細胞癌、潰瘍性及び乳頭タイプの扁平上皮癌、転移性皮膚癌、髄様癌、骨肉腫、ユーイング肉腫、veticulum細胞肉腫及びカポジ肉腫が含まれる。本明細書中に記載されている癌の小児形態も含まれる。
皮膚T細胞リンパ腫及び末梢T細胞リンパ腫は非ホジキンリンパ腫の形態である。皮膚T細胞リンパ腫は、提示皮膚に悪性Tリンパ球が局在化していることを特徴とするリンパ球増殖性障害の1つである。CTCLではしばしば皮膚、血流、限局リンパ節及び脾臓が関与している。CTCLの最も一般的で無痛形態の菌状息肉症(MF)は表皮向性CD4+CD45RO+ヘルパー/メモリーT細胞を含むパッチ、プラークまたは腫瘍を特徴とする。MFは白血病性変異体、セザリー症候群(SS)に発展し得、または大細胞リンパ腫に変換し得る。この状態により皮膚掻痒、疼痛及び浮腫が生ずる。
現在、CTCLは局所的にステロイド、光化学治療、化学療法及び放射線療法で治療されている。末梢T細胞リンパ腫は、単一T細胞からのクローン増殖として成熟または末梢(中枢でも胸腺でもない)T細胞リンパ球から派生し、通常主に結節性または結節外腫瘍である。末梢T細胞リンパ腫はT細胞リンパ球細胞表面マーカー及びT細胞受容体遺伝子のクローン配列を有している。米国で約16,000〜20,000人がCTCLまたはPTCLに罹患している。これらの疾患はかなり症候性である。パッチ、プラーク及び腫瘍は各種提示の臨床名である。パッチは通常平らで、多分落屑性であり、“皮疹”のように見える。菌状息肉症が正しく診断されるまで菌状息肉症パッチはしばしば湿疹、乾せんまたは非特異的皮膚炎と間違えられている。プラークは厚く、盛り上がった病巣である。腫瘍は、場合により潰瘍化する恐れがある盛り上がった“隆起”である。多くの患者は掻痒を感じていないが、共通の特徴は掻痒またはかゆみである。これらの3つの相の1つまたはすべてを有する可能性もある。多くの患者の場合、既存の治療は対症的であって、治癒的でない。
国立がん研究所によれば、頭頸部癌が米国のすべての癌の3%を占めている。多くの頭頸部癌は頭頸部中に見られる組織を覆う扁平細胞で生じ、しばしば頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)と称されている。一部の頭頸部癌は腺細胞のように細胞の他のタイプで生じている。腺細胞で生ずる頭頸部癌は腺癌と称されている。頭頸部癌は更にその癌が始まる領域、例えば口腔、鼻腔、喉頭、咽頭、唾液腺及び頸部上部のリンパ節により規定されている。2002年に、米国では38,000人が頭頸部癌を発生させたと推定されている。現患者の約60%が局部的に進行した疾患を呈している。これらの患者のたった30%のみが手術及び/または放射線で治療した後長期間寛解している。再発性及び/または転移性疾患を患っている患者のメジアン生存年数は約6ヶ月である。
本発明で使用するのに適したアルキル化剤にはビスクロロエチルアミン(ナイトロジェンマスタード、例:クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタード)、アジリジン(例:チオテパ)、アルキルアルコンスルホネート(例:ブスルファン)、ニトロソ尿素(例:カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン)、非古典的アルキル化剤(例:アルトレタミン、ダカルバジン及びプロカルバジン)、白金化合物(例:カルボプラスチン及びシスプラチン)が含まれるが、これらに限定されない。
本発明で使用するのに適した抗生物質はアントラサイクリン(例:ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン及びアントラセネジオン)、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ダクチノマイシン及びプリカトマイシンである。
本発明で使用するのに適した代謝拮抗物質にはフロクスウリジン、フルオロウラシル、メトトレキサート、ロイコボリン、ヒドロキシ尿素、チオグアニン、メルカプトプリン、シタラビン、ペントスタチン、リン酸フルダラビン、クラドリビン、アスパラギナーゼ及びジェムシタビンが含まれるが、これらに限定されない。特定実施態様では、代謝拮抗物質はジェムシタビンである。
本発明で使用するのに適したホルモン剤にはエステロゲン、プロゲストゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、抗アンドロゲン、LHRHアナログ、アロマターゼ阻害剤、ジエチルスチルベストロール、タモキシフェン、トレミフェン、フルオキシメステロール、ラロキシフェン、ビカルタミド、ニルタミド、フルタミド、アミノグルテチミド、テトラゾール、ケトコナゾール、酢酸ゴセレリン、ロイプロリド、酢酸メゲストロール及びミフェプリストンが含まれるが、これらに限定されない。
本発明で使用するのに適した植物由来物質にはビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジン、ビノレルビン、エトポシド、テニポシド、パクリタキセル及びドセタキセルが含まれるが、これらに限定されない。
本発明で使用するのに適した生物学的物質には免疫調節タンパク質、腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体、腫瘍抑制遺伝子及び癌ワクチンが含まれるが、これらに限定されない。例えば、免疫調節タンパク質はインターロイキン2(IL−2),インターロイキン4(IL−4)、インターロイキン12(IL−12)、インターフェロンE1(IFN−E1)、インターフェロンD(IFN−D)、インターフェロンアルファ(IFN−α)、インターフェロンベータ(IFN−ベータ)、インターフェロンガンマ(IFN−γ)、エリスロポエチン(EPO)、顆粒球−CSF(G−CSF)、マクロファージ−CSF(M−CSF)、顆粒球−マクロファージ−CSF(GM−CSF)、カルメット・ゲラン桿菌、レバミゾールまたはオクトレオチドであり得る。更に、腫瘍抑制遺伝子はDPC−4、NF−1、NF−2、RB、p53,WT1、BRCAまたはBRCA2であり得る。
本発明の各種態様において、治療手順は任意の順序で順次及び/または同時に実施される。例えば、第1の治療手順(例えば、HDAC阻害剤の投与)を例えばレチノイド剤での第2治療手順の前に、レチノイド剤での第2治療の後に、レチノイド剤での第2治療と同時に、またはその組合せで実施し得る。治療手順に任意の第3の治療手順(例えば、別の抗癌剤の投与)も含まれ得、この第3の治療手順は例えばレチノイド剤での第2治療手順の前に、レチノイド剤での第2治療の後に、レチノイド剤での第2治療と同時に、例えばHDAC阻害剤での第1治療手順の前に、HDAC阻害剤での第1治療手順の後に、第1治療と同時に、第1及び第2治療と同時に、またはその組合せで実施され得る。
本発明の1つの態様において、全治療期間はHDAC阻害剤に対して決定され得る。レチノイド剤及び任意の追加抗癌剤はHDAC阻害剤での治療開始前に、またはHDAC阻害剤での治療後に投与され得る。加えて、レチノイド剤及び任意の追加抗癌剤をHDAC阻害剤投与の期間中に投与してもよいが、HDAC阻害剤の治療の全期間にわたって投与する必要はない。また、HDAC阻害剤をレチノイド剤及び任意の追加抗癌剤での治療開始前に、またはレチノイド剤及び任意の追加抗癌剤での治療後に投与してもよい。加えて、HDAC阻害剤をレチノイド剤及び任意の追加抗癌剤の投与の期間中に投与してもよいが、レチノイド剤及び任意の追加抗癌剤の治療の全期間にわたって投与する必要はない。或いは、治療レジメンはHDAC阻害剤またはレチノイド剤及び/または任意の追加抗癌剤のいずれか1つの物質を前投与した後、治療期間の間中他の物質を加えることを含む。
特定実施態様では、HDAC阻害剤、レチノイド剤及び任意の追加抗癌剤の併用は相加的である。すなわち、併用治療レジメンにより、各成分を単独で使用したときの各成分の相加的効果である結果が生ずる。この実施態様によれば、HDAC阻害剤の量並びにレチノイド剤及び任意の追加抗癌剤の量は合わせて癌を治療するのに有効な量を構成する。
別の実施態様では、HDAC阻害剤、レチノイド剤及び任意の追加抗癌剤の併用は、併用治療レジメンにより各成分を治療用量で単独投与したときの各成分の相加的効果よりも有意により良好な抗癌効果(例えば、細胞増殖停止、アポトーシス及び分化の誘導、細胞死)が生ずるとき治療上相乗的であると見なされる。結果が有意により良好であるかを決定するためには標準の統計分析が使用され得る。例えば、Mann−Whitney検定または幾つかの他の一般的に容認されている統計分析が使用され得る。
本発明の1つの特定実施態様では、HDAC阻害剤を追加のHDAC阻害剤と一緒に投与し得る。本発明の別の特定実施態様では、HDAC阻害剤をレチノイド剤及び場合によりアルキル化剤と一緒に投与し得る。本発明の別の特定実施態様では、HDAC阻害剤及びレチノイド剤を抗生物質と一緒に投与し得る。本発明の別の特定実施態様では、HDAC阻害剤及びレチノイド剤を代謝拮抗物質と一緒に投与し得る。本発明の別の特定実施態様では、HDAC阻害剤及びレチノイド剤をホルモン剤と一緒に投与し得る。本発明の別の特定実施態様では、HDAC阻害剤及びレチノイド剤を植物由来物質と一緒に投与し得る。本発明の別の特定実施態様では、HDAC阻害剤及びレチノイド剤を抗血管形成物質と一緒に投与し得る。本発明の別の特定実施態様では、HDAC阻害剤及びレチノイド剤を分化誘導物質と一緒に投与し得る。
本発明の別の特定実施態様では、HDAC阻害剤及びレチノイド剤を細胞増殖停止誘導物質と一緒に投与し得る。本発明の別の特定実施態様では、HDAC阻害剤及びレチノイド剤をアポトーシス誘導物質と一緒に投与し得る。本発明の別の特定実施態様では、HDAC阻害剤及びレチノイド剤を細胞毒性物質と一緒に投与し得る。本発明の別の特定実施態様では、HDAC阻害剤及びレチノイド剤を別のレチノイド剤と一緒に投与し得る。本発明の別の特定実施態様では、HDAC阻害剤及びレチノイド剤を生物学的物質と一緒に投与し得る。本発明の別の特定実施態様では、HDAC阻害剤及びレチノイド剤を追加のHDAC阻害剤、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗物質、ホルモン剤、植物由来物質、抗血管形成物質、分化誘導物質、細胞増殖停止誘導物質、アポトーシス誘導物質、細胞毒性物質、追加のレチノイド剤または生物学的物質の組合せと一緒に投与し得る。
併用治療は、癌細胞分化、細胞増殖停止及び/またはアポトーシスを誘導することにより作用し得る。全体的抗腫瘍効果を達成しながらも併用治療における各物質の用量を該物質での単独治療に比して減らすことができるので、治療の併用は特に有利である。
医薬組成物
上記したように、HDAC阻害剤、レチノイド剤及び/または追加の抗癌剤を含む組成物は、経口、非経口、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、直腸内、経頬、鼻腔内、リポソーム、吸入により、膣内、眼内投与のために、カテーテルまたはステントによる局所デリバリーの投与のため、皮下、脂肪内、関節内、包膜内投与のため、または徐放性剤形での投与のために適した剤形で製剤化され得る。
HDAC阻害剤、レチノイド剤及び任意の追加抗癌剤は同時投与のために同一製剤中に処方され得、または上記したように同時にまたは順次投与され得る2つの別々の剤形中に存在させ得る。
本発明はまた、HDAC阻害剤、レチノイド剤及び/または任意の追加抗癌剤の医薬的に許容され得る塩を含む医薬組成物をも包含する。
本明細書中に記載されており、本発明の方法において使用するのに適している化合物の適当な医薬的に許容され得る塩は慣用の非毒性塩であり、この中には塩基との塩または酸付加塩、例えばアルカリ金属塩(例:リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例:カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩のような無機塩基との塩;例えば有機アミン塩(例:トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩等)等のような有機塩基との塩;無機酸付加塩(例:塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等);有機カルボン酸またはスルホン酸付加塩(例:ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等);塩基性または酸性アミノ酸(例:アルギン、アスパラギン酸、グルタミン酸等)との塩等が含まれ得る。
本発明はまた、HDAC阻害剤、レチノイド剤及び/または任意の追加抗癌剤の水和物を含む医薬組成物をも包含する。
加えて、本発明は、固体または液体物理的形態のSAHAまたは他のHDAC阻害剤を固体または液体物理的形態のターグレチンまたは他のレチノイド剤(及び、場合により別の抗癌剤)と一緒に含む医薬組成物をも包含する。例えば、HDAC阻害剤及びレチノイド剤(及び、場合により別の抗癌剤)は結晶形態、非晶質形態であり得、任意の粒度を有し得る。HDAC阻害剤及びレチノイド剤粒子(及び、場合により別の抗癌剤)を微粉砕しても、凝集させても、粒状顆粒、粉末、油、油性懸濁液、或いは固体または液体物理的形態の他の形態であり得る。
経口投与するために、医薬組成物は液体または固体であり得る。適当な固体経口製剤には錠剤、カプセル剤、ピル剤、顆粒剤、ペレット剤等が含まれる。適当な液体経口製剤には溶液剤、懸濁液剤、分散液剤、エマルション剤、オイル剤等が含まれる。
担体または希釈剤として慣用されている不活性賦形剤、例えばガム、デンプン、糖、セルロース材料、アクリレートまたはその混合物が本発明の製剤中に使用され得る。組成物は更に崩壊剤及び滑沢剤を含み得、加えて結合剤、緩衝剤、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤、可溶化剤、可塑剤、乳化剤、安定化剤、増粘剤、甘味料、フィルム形成剤またはその組合せから選択される1つ以上の添加剤を含み得る。更に、本発明の組成物は徐放性または即時性製剤の形態をとり得る。
HDAC阻害剤、レチノイド剤及び任意の追加抗癌剤を活性成分として、所期する投与形態に関して適当に選択される適当な医薬用希釈剤、賦形剤または担体(本明細書中ではまとめて「担体」材料または「医薬的に許容され得る担体」と称される)と混合して投与され得る。本明細書中で使用されている「医薬的に許容され得る担体」は、医薬投与に適合性であるすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等を含むと意図される。適当な担体はこの分野の一般的な教書であるRemington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載されており、この内容は援用により本明細書中に含まれるとする。
液体製剤の場合、医薬的に許容され得る担体は水性または非水性の溶液、懸濁液、エマルションまたは油であり得る。非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール及び注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)である。水性担体には食塩液や緩衝媒体を含めた水、アルコール性/水性溶液、エマルションまたは懸濁液が含まれる。油の例は、石油、動物、植物または合成起源の油(例えば、落花生油、大豆油、鉱油、オリーブ油、ヒマワリ油及び魚肝油)である。溶液または懸濁液は以下の成分、すなわち滅菌希釈剤、例えば注射用水、塩類溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート化剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩;及び張性を調節するための物質、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロースをも含み得る。pHは酸または塩基(例えば、塩酸または水酸化ナトリウム)を用いて調節され得る。
リポソーム及び非水性ビヒクル(例えば、固定油)も使用され得る。医薬活性物質に対する前記媒体及び物質の使用は当業界で公知である。慣用されている媒体または物質が活性化合物と不適合性である限りを除いて、このような媒体及び物質の組成物中での使用が考えられる。補助活性化合物も組成物中に配合され得る。
固体担体/希釈剤にはガム、デンプン(例:トウモロコシデンプン、アルファ化デンプン)、糖(例:ラクトース、マンニトール、スクロース、デキストロース)、セルロース材料(例:結晶セルロース)、アクリレート(例:ポリメチルアクリレート)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タルクまたはその混合物が含まれるが、これらに限定されない。
加えて、組成物は更に結合剤(例:アカシア、トウモロコシデンプン、ゼラチン、カルボマー、エチルセルロース、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン)、崩壊剤(例:トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸、ニ酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グアーガム、スターチグリコール酸ナトリウム、プリモゲル)、各種pH及びイオン強度の緩衝剤(例:トリス−HCl、酢酸塩、リン酸塩)、表面への吸収を防止するための添加剤(例:アルブミンまたはゼラチン)、洗浄剤(例:トゥイーン20、トゥイーン80、プルロニックFd8、胆汁酸塩)、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤(例:ラウリル硫酸ナトリウム)、浸透増強剤、可溶化剤(例:グリセロール、ポリエチレングリコール)、流動促進剤(例:コロイド状二酸化ケイ素)、抗酸化剤(例:アスコルビン酸、メタ硫酸水素ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール)、安定化剤(例:ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、増粘剤(例:カルボマー、コロイド状二酸化ケイ素、エチルセルロース、グアーガム)、甘味剤(例:スクロース、アスパルテーム、クエン酸)、着香剤(例:ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジフレーバー)、保存剤(例:チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、滑沢剤(例:ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、流動助剤(例:コロイド状二酸化ケイ素)、可塑剤(例:フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル)、乳化剤(例:カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム)、ポリマーコーティング(例:ポロキサマーまたはポロキサミン)、コーティング及びフィルム形成剤(例:エチルセルロース、アクリレート、ポリメタクリレート)及び/またはアジュバントを含み得る。
1つの実施態様において、活性化合物を該化合物が身体から急速に排出されるのを保護する担体を用いて、例えばインプラントやマイクロカプセル化デリバリーシステムを含めた徐放性製剤に作成される。生分解性で生物適合性のポリマー、例えばエチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸を使用してもよい。前記製剤の作成方法は当業者に自明である。材料はAlza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から市販もされている。(感染細胞にウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を標的化させたリポソームを含めた)リポソーム懸濁液も医薬的に許容され得る担体として使用され得る。これらは、例えば米国特許4,522,811に記載されているように当業者に公知の方法に従って作成され得る。
投与が容易であり、用量が一定であるために投与単位形態の経口組成物を製剤化することが特に有利である。本明細書中で使用されている投与単位形態は、治療対象の被験者に対する単位投与として適している物理的にばらばらな単位を指し、各単位は所望の治療効果が生ずるように計算した所定量の活性化合物を所要の医薬用担体と一緒に含んでいる。本発明の投与単位形態についての仕様書は活性化合物の独自の特性、達成しようとする特定治療効果、個人の治療のために活性化合物をコンパウンドする業界における固有の限定により決定され、直接依存している。
医薬組成物を容器、パックまたはディスペンサー中に投与説明書と一緒に収容してもよい。
活性成分を含有する医薬組成物の製造は当業界で十分理解されており、例えば混合、造粒または錠剤形成方法による。多くの場合、活性治療成分を医薬的に許容され得且つ活性成分と適合性である賦形剤と混合する。経口投与する場合、活性成分をこの目的で慣用されている添加剤(例えば、ビヒクル、安定化剤または不活性希釈剤)と混合し、慣用の方法により投与に適した形態、例えば上に詳記した錠剤、被覆錠剤、硬または軟ゼラチンカプセル剤、水性、アルコール性または油性溶液等に変換する。
患者に投与する化合物の量は、その患者において管理不能な毒性を生じさせる量未満である。ある実施態様において、患者に対して投与される化合物の量は、その患者の血漿中の化合物の濃度が該化合物の毒性レベル以上とする量未満である。特定実施態様では、患者血漿中の化合物の濃度は約10nMで維持される。別の実施態様では、患者血漿中の化合物の濃度は約25nMで維持される。別の実施態様では、患者血漿中の化合物の濃度は約50nMで維持される。別の実施態様では、患者血漿中の化合物の濃度は約100nMで維持される。別の実施態様では、患者血漿中の化合物の濃度は約500nMで維持される。別の実施態様では、患者血漿中の化合物の濃度は約1,000nMで維持される。別の実施態様では、患者血漿中の化合物の濃度は約2,500nMで維持される。別の実施態様では、患者血漿中の化合物の濃度は約5,000nMで維持される。本発明の実施の際に患者に投与すべき化合物の最適量は使用する特定化合物及び治療する癌のタイプに依存している。
製剤中の活性成分及び各種賦形剤の%は変更可能である。例えば、組成物は20〜90重量%、具体的には50〜70重量%の活性成分を含み得る。
IV投与のためには、グルクロン酸、L−乳酸、酢酸、クエン酸、または静脈内投与のために許容され得るpH範囲で妥当な緩衝能を有する医薬的に許容され得る酸/共役塩基が緩衝剤として使用され得る。pHを酸または塩基(例えば、塩酸または水酸化ナトリウム)を用いて所望の範囲に調節した塩化ナトリウム溶液も使用され得る。典型的には、静脈内投与用製剤に対するpH範囲は約5〜約12であり得る。ヒドロキサム酸部分を有するHDAC阻害剤を含む静脈内投与用製剤に対する特定のpH範囲は約9〜約12であり得る。
適当な緩衝剤及び等張剤を含む皮下投与用製剤は、約5〜約12のpHで当業界で公知の手順に従って製造され得る。前記製剤は1日1回またはそれ以上皮下投与して1日用量の活性化合物をデリバリーするように製剤化され得る。投与しようとするHDAC阻害剤及びレチノイド剤(及び、場合により別の抗癌剤)の溶解度に応じた製剤の適切な緩衝剤及びpHの選択は当業者により容易になされる。pHを酸または塩基(例えば、塩酸または水酸化ナトリウム)を用いて所望範囲に調節した塩化ナトリウム溶液も皮下投与用製剤中に使用され得る。典型的には、皮下投与用製剤のpH範囲は約5〜約12の範囲であり得る。ヒドロキサム酸部分を有するHDAC阻害剤を含む皮下投与用製剤に対する特定のpH範囲は約9〜約12であり得る。
本発明の組成物は、適当な鼻腔内ビヒクルを局所使用するかまたは当業者に公知の経皮パッチの形態を用いる経皮ルートにより鼻腔内形態でも投与され得る。経皮デリバリーシステムの形態で投与するためには、投与は勿論投与レジメンを通じて断続的よりむしろ連続的であり得る。
本発明は、新生細胞を第1量のスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、或いはその医薬的に許容され得る塩または水和物、第2量のレチノイド剤、及び場合により第3量の別の抗癌剤と接触させることによる新生細胞の終末分化、細胞増殖停止及び/またはアポトーシスを選択的に誘導し、よって前記細胞の増殖を抑えるためのインビボ方法をも提供し、前記した第1量及び第2量(及び、場合により第3量)は合わせて新生細胞の終末分化、細胞増殖停止及び/またはアポトーシスを誘導するのに有効な量を構成する。
本発明の方法はインビトロでも実施され得るが、新生細胞の終末分化、細胞増殖停止及び/またはアポトーシスを選択的に誘導するための特定実施態様は治療を要する新生細胞または腫瘍細胞を持っている被験者に対して化合物を投与することによりインビボで新生細胞を接触させることを含むと考えられる。
よって、本発明は、被験者に対して第1治療手順において第1量のスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、或いはその医薬的に許容され得る塩または水和物、第2治療手順において第2量のレチノイド剤、及び場合により第3治療手順において第3量の抗癌剤を投与することにより前記被験者における新生細胞の終末分化、細胞増殖停止及び/またはアポトーシスを選択的に誘導し、よって前記細胞の増殖を抑えるための方法をも提供し、前記した第1量及び第2量(及び、場合により第3量)は合わせて新生細胞の終末分化、細胞増殖停止及び/またはアポトーシスを誘導するのに有効な量を構成する。
本発明を下記実施例において例示する。この欄は本発明の理解を助けるための記載であり、請求の範囲に記載されている発明を決して限定するものと意図されておらず、そりように理解されるべきでない。
本発明の各種実施態様をより十分に説明するために実施例を提示する。これらの実施例は請求の範囲に記載されている発明の範囲を限定するものと決して解釈されるべきでない。
実施例1:SAHAの合成
SAHAは、以下に概説する方法に従って、全文を援用により含まれるとする米国特許5,369,108に記載されている方法に従って、または他の方法に従って合成され得る。
SAHAの合成
ステップ1:スベラニリド酸の合成
22L容積のフラスコにスベリン酸(3,500g,20.09モル)を装入し、酸を加熱して溶融させた。温度が175℃に上昇した後、アニリン(2,040g,21.92モル)を添加した。温度は190℃に上昇し、この温度を20分間保持した。溶融物を、水(50L)中に溶解させた水酸化カリウム(4,017g)を収容しているナルゲンタンクに注いだ。混合物を20分間撹拌した後、溶融物を添加した。反応を同一規模で繰り返し、第2の溶融物を水酸化カリウムの同一溶液に注いだ。混合物を十分に撹拌した後、撹拌機を止め、混合物を沈降させた。
次いで、混合物をセライトパッド(4,200g)を介して濾過した。スベリン酸の両端上のアニリンによる攻撃から中性副生成物を除去するために生成物を濾過した。濾液は生成物の塩を含んでおり、未反応のスベリン酸の塩も含んでいた。濾過が非常にゆっくりで数日を要するので、混合物を沈降させた。濾液を濃塩酸(5L)を用いて酸性化した。混合物を1時間撹拌した後、一晩沈降させた。生成物を濾過により集め、漏斗上で脱イオン水(4×5L)で洗浄した。湿った濾過ケーキを脱イオン水(44L)を用いて72L容積のフラスコに装入し、混合物を50℃に加熱し、固体を熱時濾過により単離した(所望の生成物は熱水にかなり溶解するスベリン酸で汚染されていた。スベリン酸を除去するために熱時摩砕を数回実施した。スベリン酸の除去をモニターするために生成物をNMR[D6DMSO]によりチェックした)。熱時摩砕を50℃で水(44L)を用いて繰り返した。生成物を再び濾過により単離し、熱水(4L)で濯いだ。週末の間中真空オーブンにおいて真空源としてナッシュポンプ(ナッシュポンプは液体リングポンプ(水)であり、約29インチ水銀の真空を引く。断続的アルゴンパージを使用して水を除去するのを助ける)を用いて65℃で乾燥した。4,182.8gのスベラニリド酸が得られた。
生成物はなお少量のスベリン酸を含んでいた。従って、約300gの生成物を一度に用いて高温摩砕を65℃で少しずつ実施した。各部分を濾過し、追加の熱水(全部で約6L)で十分に濯いだ。全バッチを精製するためにこれを繰り返した。こうして、生成物からスベリン酸を完全に除去した。固体生成物をフラスコ中で合わせ、1:2 メタノール/水(6L)と撹拌した後、濾過により単離し、漏斗上で週末の間中乾燥した。トレーに置き、真空オーブンにおいてナッシュポンプ及びアルゴンブリードを用いて65℃で45時間乾燥した。最終生成物は3,278.4g(収率32.7%)の重量を有していた。
ステップ2:スベラニリド酸メチルの合成
攪拌機及び冷却器を取り付けた50L容積のフラスコに前ステップからのスベラニド酸(3,229g)、メタノール(20L)及びDowex 50WX2−400樹脂(398.7g)を装入した。混合物を還流加熱し、還流下に18時間保持した。樹脂ビーズを除去するために混合物を濾過し、濾液を回転蒸発器を用いて残渣とした。
回転蒸発器からの残渣を冷却器及び攪拌機を取り付けた50L容積のフラスコに移した。フラスコにメタノール(6L)を添加し、混合物を加熱して溶液を生じさせた。次いで、脱イオン水(2L)を添加し、加熱を止めた。混合物を撹拌しながら冷却した後、フラスコを氷浴に置き、混合物を冷却した。固体生成物を濾過により単離し、濾過ケーキを1:1 冷メタノール/水(4L)で濯いだ。生成物をナッシュポンプを用いて真空オーブンにおいて45℃で全部で64時間乾燥して、2,850.2g(収率84%)のスベラニリド酸メチルを得た。
ステップ3:粗なSAHAの合成
攪拌機、熱電対及び不活性雰囲気用入口を備えた50L容積のフラスコにヒドロキシルアミン塩酸塩(1,451.9g)、無水メタノール(19L)及びメタノール中30% ナトリウムメトキシド溶液(3.93L)を添加した。次いで、フラスコにスベラニド酸メチル(2,748.0g)及びメタノール中30% ナトリウムメトキシド溶液(1.9L)を順次装入した。混合物を16時間10分撹拌した。反応混合物のほぼ半分を反応フラスコ(フラスコ1)から攪拌機を取り付けた50L容積のフラスコ(フラスコ2)に移した。次いで、フラスコ1に脱イオン水(27L)を添加し、混合物を10分間撹拌した。pHをpHメーターを用いて測定したところ、11.56であった。メタノール中30% ナトリウムメトキシド溶液(100ml)を添加することにより混合物のpHを12.02に調節した。こうすると、透明な溶液が生じた(この時点で、反応混合物は少量の固体を含んでいた。pHを調節すると透明な溶液が得られ、沈澱させると生成物が沈澱する)。フラスコ2中の反応混合物を同様に希釈した。脱イオン水(27L)を添加し、混合物に30% ナトリウムメトキシド(100ml)を添加することによりpHを調節して、12.01のpHとした(透明な溶液)。
生成物を沈澱させるために氷酢酸を添加することによリ各フラスコ中の反応混合物を酸性化した。フラスコ1は8.98の最終pH、フラスコ2は8.70の最終pHを有していた。両方のフラスコからの生成物をブフナー漏斗及びフィルタークロスを用いる濾過により単離した。フィルターケーキを脱イオン水(15L)で洗浄し、漏斗にカバーを被せ、生成物を漏斗上で真空下15.5時間部分乾燥した。生成物を除去し、5つのガラストレーに入れた。トレーを真空オーブンに置き、生成物を乾燥して恒量とした。第1の乾燥期間は真空源としてナッシュポンプを用い、アルゴンブリードを用いて60℃で22時間であった。トレーを真空オーブンから外し、秤量した。トレーをオーブンに戻し、生成物を真空源としてオイルポンプを用い、アルゴンブリードは用いずに4時間10分乾燥した。材料を二重4ミリポチエチレンバッグで包装し、プラスチック製外容器に入れた。サンプリング後の最終重量は2633.4g(95.6%)であった。
ステップ4:粗なSAHAの再結晶化
粗なSAHAをメタノール/水から再結晶化した。攪拌機、熱電対、冷却器及び不活性雰囲気用入口を備えた50L容積のフラスコに結晶化しようとする粗なSAHA(2,525.7g)を添加し、次いで脱イオン水(2,625ml)及びメタノール(15,755ml)を添加した。材料を還流加熱して、溶液とした。次いで、反応混合物に脱イオン水(5,250ml)を添加した。加熱を止め、混合物を放冷した。フラスコが安全に取り扱えるように混合物を十分に冷却したら(28℃)、フラスコを加熱マントルから外し、冷却浴として使用するためのチューブ中に置いた。チューブに氷水を添加して、混合物を−5℃に冷却した。混合物をこの温度以下に2時間保持した。生成物を濾過により単離し、濾過ケーキを2:1 冷メタノール/水(1.5L)で洗浄した。漏斗にカバーを被せ、生成物を真空下で1.75時間部分乾燥した。生成物を漏斗から除去し、6個のガラス製トレーに置いた。トレーを真空オーブン中に置き、生成物を真空源としてナッシュポンプを用い、アルゴンブリードを用いて60℃で64.75時間乾燥した。トレーを秤量するために外した後、オーブンに戻し、60℃で更に4時間乾燥して、恒量とした。第2乾燥期間の間の真空源はオイルポンプであり、アルゴンブリードは使用しなかった。材料を二重4ミルポリエチレンバッグに包装し、プラスチック製外部容器に入れた。サンプル後の最終重量は2,540.9g(92.5%)であった。
他の実験で、粗なSAHAを以下の条件を用いて結晶化した。
これらの反応条件のいずれでもSAHA多形Iが生じた。
実施例2:湿式粉砕した小粒子の1:1 エタノール/水中での作成
SAHA多形I結晶を1:1(容量基準)EtOH/水溶媒混合物中に50mg/g〜150mg/g(結晶/溶媒混合物)のスラリー濃度で懸濁させた。温度を室温に維持しながら、スラリーを超精密ブレードを有するIKA−Works Rotor−Stator高剪断ホモジナイザーモデルT50を用いて20〜35m/sでSAHAの平均粒度が50μm未満で95%が100μmとなるまで湿式粉砕した。湿式粉砕したスラリーを濾過し、1:1 EtOH/水溶媒混合物を用いて室温で洗浄した。次いで、湿ったケーキを40℃で乾燥した。湿式粉砕した材料の最終平均粒度は下記するマイクロトラック法により測定して50μm未満であった。
粒度はMicrotrac Inc.製のSRA−150レーザー回折粒度アナライザーを用いて分析した。このアナライザーはASVR(自動小容量循環装置)を備えていた。ISOPAR G中0.25重量%のレシチンを分布流体として使用した。各サンプルについて3つのランを記録し、平均分布を計算した。粒度分布(PSD)を容量分布として分析した。平均粒度及び容量に基づく95%<値を記録した。
実施例2A:湿式粉砕した小粒子の1:1 エタノール/水中での大規模作成
SAHA多形I結晶(56.4kg)を610kg(SAHA 1kgあたり10.8kgの溶媒)の200プルーフ・パンクティリウス・エタノール及び水(50/50 EtOH/水)の50%容量/容量溶液に20〜25℃で装入した。スラリー(〜700L)を定状状態粒度分布に達するまで超精密ジェネレーターをセットしたIKA Works湿式ミル中に再循環させた。条件は、DR3−6、23m/sのローターチップ速度、30〜35Lpm、3つの発生器、〜96ターンオーバー(ターンオーバーは1つの発生器を通過した1バッチ容量である)、〜12時間であった。
湿ったケーキを濾過し、水で2回(全部で6kg/kg、〜340kg)洗浄し、40〜45℃で真空乾燥した。次いで、乾いたケーキを篩い分けし(595μmスクリーン)、微細APIとして包装した。
実施例3:平均粒度150μmの大結晶の1:1 エタノール/水中での成長
SAHA多形I結晶(25g)及び1:1 エタノール/水溶媒混合物(388g)をガラス撹拌装置を備えた500ml容積のジャケット付樹脂ケトルに装入した。スラリーを実施例2のステップに従って室温で50μm未満の粒度まで湿式粉砕した。固体の〜85%を溶解させるために湿式粉砕したスラリーを65℃に加熱した。加熱したスラリーを65℃で1〜3時間エージングして、〜15%種晶ベッドを得た。スラリーを樹脂ケトル中20psigの圧力下、400〜700rpmの攪拌機速度で混合した。
次いで、バッチを5℃にゆっくり冷却した。すなわち、10時間で65℃から55℃に、10時間で55℃から45℃に、8時間で45℃から5℃に冷却した。冷却したバッチを5℃で1時間エージングして、5mg/g未満、特に3mg/g未満の目標上清濃度とした。バッチスラリーを濾過し、1:1 EtOH/水溶媒混合物を用いて5℃で洗浄した。湿ったケーキを真空下40℃で乾燥した。乾いたケーキはマイクロトラック方法によれば〜150μmの最終粒度を有しており、95%粒度は<300μmであった。
実施例4:平均粒度140μmの大結晶の1:1 エタノール/水中での成長
SAHA多形I結晶(7.5g)及び1:1 EtOH/水溶媒混合物(70.7g)を種晶作成容器(500m1容積のジャケット付樹脂ケトル)に装入した。種晶スラリーを上記実施例2のステップに従って室温で50μm未満の粒度まで湿式粉砕した。種晶スラリーを63〜67℃に加熱し、30分〜2時間かけてエージングした。
別の晶析装置(1L容積のジャケット付樹脂ケトル)にSAHA多形I結晶(17.5g)及び1:1 EtOH/水溶媒混合物(317.3g)を装入した。まずすべての固体SAHA結晶を溶解させるために晶析装置を67〜70℃に加熱し、次いで僅かに過飽和な溶液を保つために60〜65℃に冷却した。
種晶作成容器からの種晶スラリーを晶析装置に移した。スラリーを樹脂ケトル中20psigの圧力下、実施例3と同様の攪拌機速度で混合した。バッチスラリーを実施例3の冷却プロフィールに従って5℃にゆっくり冷却した。バッチスラリーを濾過し、1:1 EtOH/水溶媒混合物を用いて5℃で洗浄した。湿ったケーキを真空下40℃で乾燥した。乾いたケーキは約140μmの最終粒度を有しており、95%粒度は<280μmであった。
実施例4A:大結晶の1:1 エタノール/水中での大規模成長
実施例2Aからの微細API乾燥ケーキ(21.9kg)(全体の30%)及び50/50 EtOH/水溶液(201kg)(全SAHA 1kgあたり2.75kgの溶媒)を容器#1の種晶作成タンクに装入した。SAHA多形I結晶(51.1kg;全体の70%)及び50/50 EtOH/水(932kg)(全SAHA 1kgあたり12.77kgの溶媒)を容器#2の晶析装置に装入した。晶析装置を20〜25psigに加圧し、結晶性SAHAを完全に溶解させるために圧力を維持しながら内容物を67〜70℃に加熱した。次いで、溶液を過飽和するために内容物を61〜63℃に冷却した。晶析装置でのエージング過程中、種晶作成タンクを20〜25psigに加圧し、種晶スラリーを64℃(62〜66℃の範囲)に加熱し、種晶固体の〜1/2を溶解させるために圧力を維持しながら30分間エージングした後、61〜63℃に冷却した。
両容器の温度を維持しながら、高温種晶スラリーを種晶作成タンクから晶析装置に迅速に移した(フラッシュなし)。晶析装置における窒素圧力を20〜25psigに再設定し、バッチを61〜63℃で2時間エージングした。バッチを26時間かけて3つの直線的ステップで5℃に冷却した。すなわち(1)10時間かけて62℃から55℃に、(2)6時間かけて55℃から45℃に、(3)10時間かけて45℃から5℃に冷却した。バッチを1時間エージングした後、湿ったケーキを濾過し、水で2回(全部で6kg/kg、〜440kg)洗浄し、40〜45℃で真空乾燥した。この再結晶過程からの乾いたケーキを粗大APIとして包装する。粗大APIと微細APIを70/30比でブレンドした。
実施例5:湿式粉砕した小粒子バッチ288の作成
SAHA多形I結晶をエタノール性水性溶液(100容量% エタノール/水中50容量% エタノール)中に50mg/g〜150mg/50g(結晶/溶媒混合物)のスラリー濃度で懸濁させた。温度を室温で維持しながら、スラリーを超精密ブレードを有するIKA−Works Rotor−Stator高剪断ホモジナイザーモデルT50を用いて20〜35m/sでSAHAの平均粒度が50μm未満で95%が100μmとなるまで湿式粉砕した。湿式粉砕したスラリーを濾過し、EtOH/水溶媒混合物を用いて室温で洗浄した。次いで、湿ったケーキを40℃で乾燥した。湿式粉砕した材料の最終平均粒度は上記したマイクロトラック法により測定して50μm未満であった。
実施例6:大結晶バッチ283の成長
SAHA多形I結晶(24g)及び9:1 エタノール/水溶媒混合物(205ml)をガラス撹拌棒を備えた500ml容積のジャケット付き樹脂ケトルに装入した。スラリーを実施例1のステップに従って室温で50μm未満の粒度まで湿式粉砕した。固体の〜85%を溶解するために湿式粉砕したスラリーを65℃に加熱した。加熱したスラリーを64〜65℃で1〜3時間エージングして、〜15%種晶を得た。スラリーを100〜300rpmの攪拌機スピードで混合した。
次いで、バッチを2時間で65℃から55℃、1時間55℃、〜30分間かけて55℃から65℃、65℃で1時間エージング、5時間で65℃から40℃、4時間で40℃から30℃、6時間かけて30℃から20℃という1つの加熱−冷却サイクルで20℃に冷却した。冷却したバッチを20℃で1時間エージングした。バッチスラリーを濾過し、9:1 EtOH/水溶媒混合物を用いて20℃で洗浄した。湿ったケーキを真空下40℃で乾燥した。乾いたケーキはマイクロトラック方法によれば〜150μmの最終粒度を有しており、95%の粒度は<300μmであった。
30%のバッチ288結晶及び70%のバッチ288結晶を混合して、約100mgのスベロイルアニリドヒドロキサム酸、約44.3mgの結晶セルロース、約4.5mgのクロスカルメロースナトリウム及び約1.2mgのステアリン酸マグネシウムを含むカプセルを得た。
実施例7:SAHA及びターグレチンの併用の効果
アッセイ方法
ボリノスタット(0〜30μM;Merck & Co.,Inc.)及びターグレチン(登録商標)(0〜90μM)で24、48、72及び96時間処理したHH細胞(CTCL細胞;ATCC)における単剤用量曲線を確立するために、ViaLight Plus and Alamar Blueを用いて初期細胞毒性及びカスパラーゼ3/7アッセイを実施した。これらのアッセイからのデータを用いて併用濃度の範囲を決定した。両化合物をIC50値に近い濃度で併用した。その後併用生存度/増殖アッセイをViaLight Plusプロトコルを用いて実施した。
ViaLight Plus生存度/増殖アッセイ
透明底96ウェルプレートを有するCostarホワイト(#3603)に各時間ポイントにつき100μl/ウェルの増殖培地の容量で25,000細胞/ウェルを接種した。HH細胞株増殖培地は10% FBS(GIBCO #SV30014.03)、1% グルタマックス(GIBCO #35050−061)及び1% ペニシリン/ストレプトマイシン(GIBCO #30−002)を含むRPMI(GIBCO #)を含んでいた。このアッセイのために、5×濃度のボリノスタット(SAHA;Merck & Co,Inc,)及びターグレチン(登録商標)を最高化合物濃度に対して調製し、1/3容量の化合物を2/3容量の培地に添加して段階希釈した。固定比方法では、化合物を組み合わせ、順次希釈した。典型的な方法では、固定濃度のターグレチン(登録商標)を増殖培地において作成し、そこにボリノスタットの段階希釈物を加えた。各処置濃度について、25μlの各化合物の適切な希釈物を対応のウェルに添加した。プレートの外周辺のウェルは使用しなかった。各時間ポイントで、プレートをViaLight Plusプロトコルを用いて調べた。ルミネセンスをVictor Vプレートリーダーを用いて読みとった。
Alamar Blue生存度/増殖アッセイ
透明底96ウェルプレートを有するCostarブラック(#3603)に各時間ポイントにつき100μl/ウェルの増殖培地の容量で25,000細胞/ウェルを接種した。このアッセイのために、最高化合物濃度に対して2×濃度のボリノスタット及びターグレチン(登録商標)を調製し、1/3容量の化合物を2/3容量の培地に添加して段階希釈した。各処置濃度について、100μlの各化合物の適切な希釈物を対応のウェルに添加した。プレートの外周辺のウェルは使用しなかった。プレートをAlamar Blueプロトコルに従って処理した。簡単に説明すると、20μlのAlamar Blueを各ウェル中の200μlに添加し、6時間インキュベートした。フルオレセンスを530nmの励起及び590nmの発光でSpectra Maxプレートリーダーを用いて読みとった。
結果
示した濃度での併用の効果を図1A〜1Bに要約する。単剤としてのボリノスタットは細胞生存度を約40%低下させた(図1A)。単剤としてのターグレチン(登録商標)は生存度を約40%低下させた(図1A)。併用したときの細胞生存度は約60%低下し、これは亜相加的効果を示した(図1A)。他の濃度でも亜相加的効果が見られた(図1B)。併用濃度で拮抗効果は見られなかった。
実施例8:進行した皮膚T細胞リンパ腫患者におけるベキサロテンと併用した経口スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)のフェーズI治験
患者研究
進行した皮膚T細胞リンパ腫瘍患者における300mg/m2までの漸増量のベキサロテンと併用して28日間反復周期で投与したときの経口SAHAの最大耐量(MTD)を調べるために患者研究を使用する。この研究を使用して、併用して投与したときのSAHA及びベキサロテンについてこのレジメンの安全性及び耐容性を評価し、応答速度、応答までの時間、応答期間及び進行までの時間を推定する。また。この研究を使用して、MTDで併用して投与したときのSAHA及びベキサロテンの薬物動態を評価する。更なる研究を可能にするのに十分な安全性及び耐性について臨床上適切な用量でベキサロテンと併用したSAHAの投与を評価する。
研究計画及び期間
患者研究は、少なくとも1つの従来の全身治療に対して抵抗性であり且つベキサロテン治療に対して適格である進行した(ステージIB以上)皮膚T細胞リンパ腫患者におけるベキサロテンとSAHAの併用のオープンラベル、非無作為化、漸増用量、多施設のフェーズI治験である。疾患が進行するまで、我慢できない毒性が生ずるまで、または患者のためには退薬させることが最良であると研究者が決定するまで、患者は経口SAHA及び経口ベキサロテンの28日間通院治療を続ける。患者はこのプロトコルで最長6ヶ月間治療される。患者は安全性(臨床試験、有害事象評価及び理学的検査)及び有効性を評価するために定期的に診察を受ける。中止する患者に対しては、試験薬物を最後に投与した後または新しい治療を開始する前の4週間以内治療後経過観察来院を実施する。基準時に、相関性研究のために皮膚生検を得る。患者は相関性サンプルの採取を拒否してもよい。複数の部位で相関性研究のために特定間隔で追加の皮膚生検が得られる。
患者サンプル:約24〜42人の患者を登録する。併用治療の最大耐量を確立するために最低3人の患者をそれぞれの初期用量レベルで登録する。最高5つの用量レベルを計画する。併用についてのMTDが確立されたら、更に安全性、耐容性及び有効性の情報並びに両化合物の薬物動態学的分析のためのサンプルを得るために追加の12人の患者をMTDで登録する。
包含基準:適格な患者は、少なくとも1つの全身治療に対して抵抗性の進行した(ステージIB以上)、進行性、持続性または再発性CTCLを患っている≧18才でなければならない。他の適格基準には登録前1年以内に実施した生検により証明されたCTCLの組織学的診断;平均余命>3ヶ月;0〜2の東部癌共同研究グループ(ECOG)全身状態;以前の化学療法、生物学的療法、放射線療法、大きな手術または他の研究治療から≧4週間;十分な血液学的、肝臓及び腎臓機能が含まれ、患者はベキサロテン治療のための実行可能な候補者でなければならない。
排除基準:過去にHDAC阻害剤の治療を受けた;過去3ヶ月以内にベキサロテン治療を受けた;試験薬物を始める前2週間以内にジェムフィブロジルまたは他の公知のCYP3A4阻害剤(例えば、ケトコナゾール、イトラコナゾール、プロテアーゼ阻害剤、クラリスロマイシン及びエリスロマイシン)、または公知のCYP3A4インデューサー(例えば、リファムピシン、フェニトイン、デキサメタゾンまたはフェノバルビタール)を投与されたかまたは投与されている;同種移植片;活動性感染;試験薬物の開始直前4週間の間に≦10mg/日のプレドニゾンの当量まで安定化しなかった全身ステロイド治療;妊娠しているかまたは授乳中である患者。非メラノーマ皮膚癌以外の“現在活動性の”続発性悪性疾患及び非浸潤性頸部癌を患っている患者は適格でない。治療を完了したならば患者は“現在活動性の”続発性悪性疾患を患っていると見なされず、25年間過去の悪性疾患を患うことなく、再発のリスクは30%未満であると見なされる。
用量/剤形、ルート及び投与レジメン
用量はすべてSAHAカプセルの100mg増分及び約150mg/m2から300mg/m2へのベキサロテンカプセルのベキサロテンの75mg増分で通院で食物と一緒に経口的にq.d.投与する。
フェーズIa:これは、各々の投与レジメンで少なくとも3人の患者での漸増用量研究である。併用に対して達成されるMTDで更に3人の患者を研究する。患者内での用量漸増はない。SAHAの3つの用量レベル(毎日200、300及び400mg)及びベキサロテンの3つの用量レベル(150、225及び300mg/m2)を試験する。150mg/m2のベキサロテン用量を維持しながら、SAHAをまず最大400mg q.d.まで漸増させる。試験した用量レベルの数は用量制限毒性(DLT)が観察されるときに依存する。
用量レベルは次の通りである:
フェーズIIにおけるSAHA単剤治療の目標用量レベルは連続28日間400mg q.d.であり、この治験で試験したSAHAの最大用量である。300mg/m2がベキサロテンの標識用量であるので、この治験で試験した最大用量である。
フェーズIb:12人の患者に併用のMTDでSAHAをq.d.及びベキサロテンをq.d.投与する。薬物動態学的測定のための血液サンプルを第1及び第2の28日周期の3日目及び10日目に採取する。
有効性測定
皮膚病巣のタイプ(パッチ、プラークまたは腫瘍)及び関与体表面(BSA)%を腫瘍量指標(TBI)及び改良重症度加重評価法(mSWAT)を両方用いて評価する。TBIを計算するためには、研究者はグリッドボディマップを用いて皮膚病巣の面積及びタイプを描写する。それぞれの病巣タイプに罹患している全体表面積(TBSA)の%を、ボディマップの正面及び背面上のグリッドの総数で割ったそれぞれの病巣タイプを患っているグリッドの数に従って計算する。改良重症度加重評価法(mSWAT)は、12身体領域の各々内でそれぞれの病巣タイプが関与している面積を直接調べるために1% TBSAに等しい基準として患者の掌マイナス親指の透明度を使用する。両システムを腫瘍に対して4、プラークに対して2、パッチに対して1の重みを割り当てる。基準時及び各定期来院の間に患者が痒疹の重症度及び健康関連クオリティー・オブ・ライフを評価する。
安全性測定及びデータ分析
バイタルサイン、理学的検査、ECOG一般状態、心電図(ECG)及びラボラトリー安全性試験(CBC、総合化学パネル、APTT、PT/INR尿検査、肝機能、甲状腺機能、脂質レベル)を薬物投与前及び研究中指定間隔で得るかまたは評価する。
データ分析:この研究は〜−24−42人の患者を登録する。来院毎に各患者のTBI、mSWATスコア及びBSA関与の測定値を表にする。有効性(応答速度、応答までの時間、応答期間及び進行までの時間)の要約統計量を記録する。各患者についての掻痒スコアも表にする。掻痒が完全回復したかまたは掻痒スコアが≧3ポイント低下した患者を要約する。投与による毒性の期間、程度及び発症までの時間の要約統計量を使用して、併用治療の副作用を評価する。連続及び来院日によるSAHA及びベキサロテンについてのPKパラメーター(AUC、Cmax、Tmax及びt1/2)の要約統計量を記載する。2連続間の差及び連続内の3日目と10日目の差を調べる。薬物動態学的終点の測定値を要約する。安全性、薬物動態学的パラメーター及び薬力学的終点の関係を調べる。
実施例9:進行した皮膚T細胞リンパ腫患者におけるベキサロテンと併用した経口スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)のフェーズI治験
本研究は、少なくとも1つの以前の全身治療に対して抵抗性であり且つベキサロテン治療に対して適格である進行した(ステージIB以上の)皮膚T細胞リンパ腫を患っている患者におけるベキサロテンとボリスタットの併用のオープンラベル、非無作為化、漸増用量、多施設のフェーズI治験である。この研究のフェーズIa部分に2つのパートがある。パートIでは、ボリノスタットの用量をmg基準で、ベキサロテンの用量をmg/m2基準で漸増させる。パートIIでは、ボリノスタット用量を400mg q.d.に固定し、ベキサロテン用量をmg基準で漸増させる。疾患が進行するまで、我慢できない毒性が生ずるまで、同意が取り下げられるまで、または患者のためには退薬させることが最良であると研究者が決定するまで、患者は経口ボリノスタット及び経口ベキサロテンの28日間通院治療周期を続ける。患者にとって有利である可能性(すなわち、患者が許容できる毒性または非進行性の疾患を有しているか、または完全応答(CR)を含めてある程度の応答を有している)があるならば、治験依頼者により与えられるボリノスタットでの本研究の継続アームにおいて治療を継続する可能性で患者はこのプロトコルで6×28日周期まで治療される。
安全性(臨床検査、有害事象評価及び理学的検査)及び有効性を評価するために患者を定期的に診察する。研究者らは治療に対する応答をmSWATスコア、リンパ節測定及び個々の患者にとって適切と見なされる他の評価により評価する。
試験薬物を開始する前に、皮膚生検を求める(患者は相関性サンプルの採取を拒否してもよい)。相関性研究のために追加の皮膚生検が特定間隔で求められる。
用量レベル1でフェーズIaパートIに登録した患者に対して、ボリノスタットを200mg q.d.で投与し、ベキサロテンを150mg/m2 q.d.の用量レベルで投与する。耐えられるならば、追加のコホートに対する用量をI.E.2.a節に概説しているように漸増する。フェーズIaパートIIに登録した患者に対しては、用量レベル6で400mg q.d.のボリノスタット及び150mg q.d.のベキサロテンから投与し始める。この研究に登録した患者に対するボリノスタットの最大用量を400mg q.d.と計画する。パートIに登録した患者に対するベキサロテンの最大用量は300mg/m2と計画し、パートIIに登録した患者に対しては450mg q.d.ベキサロテン(個々の患者では300mg/m2を超えない)と計画する。
患者を第1及び第2周期を含むベキサロテン及びボリノスタットの併用治療を開始してから1、2、4、6及び8週後に安全性について評価する。許容できる毒性を有している患者は追加周期の治療を受け続けてもよい。
研究を完了または中止した後、最後の試験薬物投与後または新しい治療の開始前4週間以内の間治療後追跡来院を実施する。研究から脱退した患者または研究が完了した患者は試験薬物での最後の治療後30日間安全性について追跡し続ける。その後、登録された最後の患者が試験薬物を最初に投与されてから6ヶ月後であろう研究の終了まで生存及び追加治療データを集めるために二ヶ月毎に患者と接触する。
ボリノスタットの継続についての研究計画の要約
本研究の継続アームは、ボリノスタットでの継続治療の恩恵を受ける可能性があるプロトコルに登録した患者における連続投与の安全性及び耐容性を評価するためのオープンラベル、開放型、多施設研究である。
患者は、疾患及び医学状態に対するケア基準に従って完了したばかりの用量レベルについての来院スケジュールに従い続ける。最後の来院は、プロトコルの継続アームにおける最初の来院として処理する。従って、別の症例報告フォームを文書化する。薬物の中断、中止及び用量減少に関する余り重大でない有害事象に加えて重大な有害事象情報を各来院時に得る。有効性のデータは全体的医師評価に基づいて得る。有効性及び(検査を含めた)安全性評価は、臨床提示による研究への患者の継続性を正当化するために所与の疾患状態に対するケアの臨床基準に従って実施する。これらの評価は4週間隔で、ただし6週毎を超えない間隔で実施し得、症例報告フォームで提供する。患者は疾患が進行したかまたは許容できない毒性が発生した理由なら試験薬物を中止しなければならない。
検討試験薬物
各用量レベルで、適切数のボリノスタットの100mgカプセル及びベキサロテンの75mgカプセルを反復28日周期で経口的にq.d.投与する。
投与期間中、カプセルは可能なときにはいつでも食物と一緒に(食後30分以内に)服用しなければならない。1回で消費される全用量は割り当てた用量を超えてはならず、間違えた用量は埋め合わせてはならない。
次の計画された調査来院まで治療のための十分な薬物を各来院時に調剤する。使用しなかった薬物は周期の投与期間が完了したときに返却しなければならない。コンプライアンスをモニターするために各調査来院時にカプセル剤数をカウントする。
パートIに登録した患者に対する投与スケジュール
パートI(オリジナルプロトコル)では、ボリノスタットの最高3つの用量レベル(毎日200、300及び400mg)及びベキサロテンの最高3つの用量レベル(150、225及び300mg/m2)を試験する(表3)。耐えられるならば、ベキサロテンの用量を150mg/m2に維持しながらボリノスタットをまず漸増させる。試験した用量レベルの数は、DLTが観察される用量レベルに依存する。
28日周期の間のボリノスタットの出発用量レベル(用量レベル1)は200mg q.dであり、ベキサロテンの出発用量は150mg/m2 q.d.である。
パートIIに登録した患者に対する投与スケジュール
パートIIでは、すべての用量レベルで400mg ボリノスタットをq.d.投与する。最高5つの用量レベル(150、225、300、375及び450mg q.d.)のベキサロテンを試験する。試験した用量レベルの数はDLTが観察される用量レベルに依存する。
改変されたプロトコルのI.E.2.a.3.a節に記載されているように、ベキサロテン使用に関連する可能性ある脂質及び甲状腺機能の変化を最小限とするような対症療法に対する最近の戦略が意図される。
併用治療の6×28日周期に対して、パートIIの初期用量レベル(用量レベル6)でボリノスタット用量は400mg q.d.であり、ベキサロテンの用量は150mg q.d.である。その後の用量レベルに対して、最初ベキサロテンを150mg q.d.で投与し、患者においてベキサロテン関連毒性の可能性を抑えるために前記用量レベル(表4)に対する目標用量まで28日基準で滴定する。
150mg q.d.ベキサロテンが耐えられないならば、研究者らは75mg q.d.のベキサロテンを投与してもよい。或いは、ボリノスタットのみを投与してもよい。
ボリノスタット及びベキサロテンの併用についてパートIIのMTDが決定されたならは、12人の追加患者を研究のフェーズIb部分に併用のMTDで登録し、PKサンプリングを実施する(I.F.2の薬物力学的測定参照)。
パートII:ベキサロテン治療に対する対症療法ガイドラインの導入
パートIIに登録した患者に対して、ベキサロテンの可能性ある脂質及び甲状腺影響を最小限とするために下記(Assafら,2006)する対症療法ガイドランを設定しなければならない。
第1用量のベキサロテンを投与する前少なくとも1週間、患者を脂質低下レジメン、好ましくはフェノフィブレート(145〜200mg/日の用量が示唆される)で治療する。クレアチンが>1.5mg/dL(0.133μmol/L)であるかまたは患者がネフローゼ症候を有しているならばフェノフィブレート用量を100mg(または、所要により50mg)に低減させなければならない。
活動性アテローム硬化性プラークを有している可能性があるかまたはLDLコレステロールが正常よりも高い冠動脈心疾患を患っている患者に対して、最初にベキサロテンを投与する少なくとも3日前に低用量のスタチン治療を開始してもよい。最適効果のためには、フィブレートを朝投与し、スタチンを夜に投与しなければならない。
ボリノスタットはベキサロテン治療前少なくとも1週間服用しなければならず、脂質低下治療を開始すると同時またはその後に開始する。ボリノスタットと脂質低下レジメンを併用して1週間後、ベキサロテンを投与してもよい。脂質プロフィールはベキサロテンの開始時に得られなければならず、この時に得られる脂質プロフィール測定値(トリグリセリド、HDL、LDLコレステロール)は患者が研究のこの部分でベキサロテンを服用し続けるために正常でなければならない。
第1量ベキサロテンを投与するのと同時に、低用量のチロキシン(例えば、0.05mg レボチロキシンq.d.)治療を予防的に開始しなければならない。
チロキシン及び脂質低下治療は治療を通じて必要に応じて調節しなければならない。
脂質レベル及び甲状腺機能検査(フリーT4レベル)が正常を維持しているならば、ベキサロテンをその後の各周期で目標用量に滴定され得る(150mg以上ならば)。
研究のフェーズIb部分では、脂質低下レジメン及びレボチロキシン治療(0.05mg/日)をベキサロテンまたはボリノスタット治療を開始する少なくとも1週間前に開始しなければならない。レボチロキシをこの1週間の間投与すると、レボチロキシによりPKサンプルを得る前に適切な定常状態に達し得る。
用量制限治療の定義
毒性をCTCAEガイドラインにより等級づける。用量制限毒性(DLT)を以下のように定義する:
■薬物関連CTCAEグレード3または4 脱毛;基準ALTまたはASTレベルがグレード2であり、AST/ALTレベルの上昇が≦2.5×ULNである場合;十分に治療されない下痢、嘔吐または悪心を除いて、対症療法または非禁止治療により管理できない非血液学的事象。
■グレード3〜4 ≧38.5℃の発熱及び/または抗生物質または抗菌剤治療を必要とする感染を有している好中球減少症。
■グレード4 少なくとも5日間続く好中球減少症。
■グレード4 血小板減少OR血小板数<25,000/μL。
用量漸増はDLTの有無に基づいて決定される。用量レベルを上げるかどうかを決定する目的で、患者によりDLTをカウントする(すなわち、1 DLT以上を経験した1人の患者を1とカウントする)。パートIの場合には、最初の治療周期中に観察されたDLTをカウントする。パートIIでは、用量レベルについて最高の組合せの第1周期が完了するまで併用治療の最初の周期の間DLTをカウントする。
最大耐用量の決定
(パートI)
パートIに対する登録のタイミング及び漸量規則は次の通りである:
パートIは、(3人の患者で)DLTが観察されなかったかまたは(6人の患者で)1DLTのみが観察されただけで患者が28日周期の併用治療を完了した後に各用量レベルに段階的に進める。
各用量レベルで、最初3人の患者を1完全周期(28日の併用治療)のために登録し、治療し、観察する。
■最初の周期でDLTが観察されないならば、新しい3人の患者を次により高い用量レベル(用量レベル5まで)で登録する。
■最初の3人の患者のうち1人がDLTを経験したならば、追加の3人の患者を1完全周期(28日)のためにその用量レベルで登録し、治療し、観察する。追加の患者がDLTを経験しないならば(すなわち、6人の患者のうち1人のみがDLTを経験したならば)、3人の新しい患者を次により高い用量レベル(用量レベル5まで)で登録する。
■1人以上の追加の患者がDLT(すなわち、6人の患者のうち全部で≧2)を経験したならば、MTDを超え、全部で6人の患者をMTDで登録したように所要により前の用量レベルで追加の患者を登録する。
■所与の用量レベルで最初の3人の患者のうち2人以上がDLTを経験したなら、MTDを超え、全部で6人の患者をMTDで登録したように所要により前の用量レベルで追加の患者を登録する。
(パートII)
パートIIにおける所与の用量の組合せに対して、当該用量を服用した全患者の≧16%、<33%がDLTを有していたならばその用量レベルで追加の患者を登録する。特定用量を服用した患者の≧33%がDLTを有していたときにはMTDは超えた。
用量レベル6:3人の患者を直ぐに登録する。1 DLTが見られたならば、追加の3人の患者をこのコホートに登録する。2以上のDLTが見られたときにはMTDは超えた。
用量レベル7:用量レベル6で3人の患者がDLTなしで併用治療の1つの28日周期を完了したか、用量レベル6で6人の患者が1 DLTで併用治療の1つの28日周期を完了したならば、3人の患者を登録し得る。周期2において1 DLTが見られたならば、追加の患者を用量レベル7で登録する。周期2において2以上のDLTが見られたならばMTDは超えた。
用量レベル8:用量レベル7で3人の患者が併用治療の1つの28日周期を完了して、400mgのボリノスタット/150mgのベキサロテンの組合せを服用した患者の総数の33%未満しかDLTを有していなかったならば、3人の患者を登録し得る。周期3で1 DLTが見られたならば、追加の患者を用量レベル8で登録する。周期3で2以上のDLTが見られたときにはMTDは超えた。
用量レベル9:用量レベル8での併用治療の第2の28日周期が完了して周期3で≦1 DLTが観察されたら、3人の患者を登録し得る。周期2または3において1 DLTが見られたならば、追加の患者を用量レベル9で登録する。周期2または3において2以上のDLTが見られたときにはMTDは超えた。
用量レベル10:用量レベル9で3人の患者が併用治療の1つの28日周期を完了して、400mgのボリノスタット/150mgのベキサロテンの組合せを服用した患者の総数の33%未満しかDLTを有していなかったならば、3人の患者を登録し得る。周期3で1 DLTが見られたならば、用量レベル10で追加の患者を登録する。周期3において用量レベル10で2以上のDLTが見られたときにはMTDは超えた。
ボリノスタット及びベキサロテンの組合せについてパートIIのMTDを決定したら、12人の追加患者を研究のフェーズIb部分に併用のMTDで登録し、PKサンプリングを実施する(I.F.2の薬物動力学的測定参照)。
用量調節及び治療の遅れ
NCI Common Terminology for Adverse Events(CTCAE,バージョン3.0)ガイドを使用して、有害事象を評価する。グレード3または4の非薬物関連毒性が見られる場合には、医師がボリノスタット及び/またはベキサロテンを投与し続けるには安全でないと感じたならばボリノスタット及び/またはベキサロテンを控えてもよい。
グレード3または4の薬物関連非血液学的毒性が見られる場合には、毒性がグレード1以下に下がるまでボリノスタット及び/またはベキサロテンを控えなければならない。試験薬物の中断は試験薬物の有害事象を起こしそうな原因に基づいて症例毎に評価しなければならない。
グレード3または4の脂質関連有害事象または甲状腺機能有害事象が見られた場合には、ベキサロテンは控えなければならず、ボリノスタットは研究者の裁量で控えてもよい。
グレード3の貧血または血小板減少が見られた場合には、研究者の意見で毒性を管理し得るならばボリノスタット及びベキサロテンを継続させてもよい。
投与の遅れを生ずる薬物関連毒性から回復したら、研究者及び治験依頼者の意見で用量の調節が必要でない限り、当該患者に前に投与した量またはそれ以下の量で投与を再開することにより用量を調節する。用量を調節して毒性から回復した患者は研究者と治験依頼者の間の検討に従って元々割り当てた用量に戻すことができる。
用量レベル6でボリノスタットに関連する恐れがある毒性が生じたならば、ボリノスタットの用量を300mg q.d.に低減させ得る。ボリノスタットの用量を再び低減させなければならないならば、用量は300mg q.d.を5日投与/2日間休薬とし得る。用量レベル1でベキサロテン関連毒性が生じたならば、患者はベキサロテンを中止することができ、その後の周期で300mgまでボリノスタットの用量を患者内漸増させ、その後耐えれるならば400mgまで漸増させることができる。用量レベル6でベキサロテン関連毒性が生じたならば、患者には400mg q.d.ボリノスタットのみまたは400mg q.d.ボリノスタット及び75mg q.d.ベキサロテンが投与され得る。
本発明をその実施態様を参照して具体的に示し、記載してきたが、当業者は記載されている本発明の範囲を逸脱することなく形及び詳細に各種の変化を加え得ることを理解している。本発明の範囲は請求の範囲を包含する。