JP2009300689A - 波長選択フィルタおよび光学機器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】直線偏光状態でテラヘルツ波長帯域の入射光束のうち、所望の狭波長帯域の光を共鳴反射により選択的に反射させる波長選択フィルタであって、第1の平板素子10Aと、第2の平板素子10Bと、平板素子10A、10Bの微小間隔を変化させる間隔可変手段12A、12B、14、16とを有し、平板素子10A、10Bは、入射光束に対して所定の角だけ傾けて配置され、第1の平板素子10Aの片面に、多数の溝を所定ピッチで形成された微細溝構造を有し、第1の平板素子10Aの側から入射光束を入射され、間隔可変手段により平板素子10A、10Bの微小間隔:tを変化させることにより、共鳴反射される狭波長帯域の反射光の波長を選択する。
【選択図】図11
Description
近来、テラヘルツ帯域、特に「0.3〜3テラヘルツ」の電磁波(以下、電磁波と言わずに「光」と呼ぶ。)が、バイオ・医療・セキュリティ分野などにおける新たなイメージング光源として注目され、「テラヘルツ帯域の光」の発生・検出技術の進歩と相俟って応用分野への研究が進みつつある。
テラヘルツ波長帯域の光に対して波長選択性を持つ波長選択フィルタとしては、特許文献1に記載のものが知られているが、そのフィルタリング特性は「かなり広い波長帯域」である。
さらに、この発明は上記波長選択フィルタを用いる光学機器の実現を課題とする。
この明細書において「テラヘルツ波長帯域は、0.3THz〜3.0THz帯域、波長にして100μm〜1000μmの範囲」を指す。
「第1の平板素子」は、テラヘルツ波長帯域の光に対して透明且な平行平板状である。
第1および第2の平板素子を「入射光束に対して所定の角だけ傾け」るのは、これら平板素子の面の法線(微細溝構造を無視して平面と考えた場合の法線)と、微細溝構造における溝配列方向とに平行な面内で行なわれる。
そして「間隔可変手段により第1、第2の平板素子の微小間隔を変化させることにより、共鳴反射される狭波長帯域の反射光の波長を選択」する。ここに「共鳴反射される狭波長帯域の反射光の波長」は、反射光のピーク波長を言う。
「微細溝構造を同一方向に形成する」とは、これらの面に形成される微細溝構造の溝の長手方向が互いに平行であることを意味する。
微細溝構造部分と「微細溝構造が形成される部分」とが異なる材料で形成される場合も同一材料である場合も含めて、第1、第2の平板素子は同一材料であることができる。
「回転傾斜駆動手段」は、この平板素子を、微細溝構造の溝に平行な軸の回りに回転傾斜させる手段である。即ち、回転傾斜駆動手段により、平板素子は回転して入射光束に対して傾斜する。
平板素子は、平行平板状であって全体が「同一材料による均質な構造」をもち、符号GDで示す部分と、符号FSで示す部分とを有している。
符号GDで示す部分は「導波層」であり、図の如く厚さ:t2を有する。
符号FSで示す部分は「微細溝構造」をなす部分で、図の如く「グレーティング層」と呼ばれる。グレーティング層FSは図に示すように厚さ:t1を有する。
導波層GDは上の説明で「微細溝構造を形成される部分」に相当する。
このとき、LとPとの比:L/Pは「フィリングファクタ(FFと略記する。)と呼ばれ、後述する「反射率の計算」にパラメータとして用いられる。
ここでは偏光方向の代表的な2例として、図の左右方向即ち、微細溝構造における「溝のピッチの方向」の偏光をTM偏光、図面に直交する方向の偏光をTE偏光と称する。このとき共鳴反射される反射波長は入射光の偏光方向によって異なる。
回折された回折波が「導波層GD内を伝搬する導波条件」を満たすとき、回折波はグレーティング層FSと再結合し、入射光に対して「鏡面反射の方向」に回折波(反射波)を生じる。
即ち、図1の平板素子は「導波条件を満足する波長の光を選択的に高効率で反射させる波長選択フィルタ」として機能する。
このとき「高効率で反射される光の波長」は、平板素子の材質や形態により平板素子ごとに定まる。
テラヘルツ帯での屈折率1.52、厚さ:20μmの「Zeonorフィルム(商品名:日本ゼオン社製樹脂フィルム)」の片面に、図1に示す如く「断面矩形波状の微細溝構造」を形成して平板素子とした。
フィリングファクタ:FF=0.5
グレーティング層FSの厚さ:t1=10μm
導波層GD厚:t2=10μm 。
図2から明らかなように、反射光は波長:188μmで反射率のピーク値:略1を持ち、半値幅は約1μmである。即ち、半値幅はピーク波長(反射率のピークを与える波長):188μmに対してその0.5%程度と極めて狭く、ピーク波長近傍以外の波長に対する反射率は0.1以下と小さい。
この結果から、平板素子が「狭帯域の波長選択フィルタ」として機能し、非共鳴反射光の反射率が低いことが分かる。
図3は、グレーティング層FSのピッチ:Pを、180μm(これは上に説明した場合である。)、200μm、220μmとした場合の分光反射特性を示している。この図に示すように、ピッチ:Pが異なると「反射光のピーク波長」が異なる。
グレーティング層FSの厚さ:t1を、10μm(これは上に説明した場合である。)、20μm、30μmとしたときの分光反射特性を図5に示す。図5は、グレーティング層の厚さ:t1の変化により反射光のピーク波長と半値幅が変化する様子を示している。
入射角が大きくなると、入射角:0度のときのピーク波長を中心に、長波長側と短波長側それぞれに2本のピークが生じる。
図8は、反射光のピーク波長の入射角に応じた変化を示すものであり「入射角を大きくするにつれてピーク波長が線形に変化する」ことを示している。
この変化において「ピーク波長を与える反射光の半値幅」は一定である。
請求項4にかかる発明では上記の性質を利用する。請求項1〜3にかかる波長選択フィルタにおける波長選択の原理、即ち、ピーク波長を変化させる原理は、請求項4の波長選択フィルタの「波長選択のメカニズム」とは異なる。
このような台形や三角形の断面形状を持つ微細溝構造では「光束入射時の屈折率変化が緩やか」となり、フレネル反射を有効に低減させることができ「非反射波長の反射率」をより抑制可能である。
上に示したパラメータを持つ平板素子に「直線偏光した平行光束」を直交入射させる場合において、グレーティング層の溝方向(入射方向とピッチ:Pの方向とに直交する方向、図1において図面に直交する方向)と入射光束の偏光方向が同一のとき(入射光束がグレーティング層FSに対してTE偏光である状態)を偏光方向:0度とし、偏光方向を反時計回りに15度刻みで90度まで回転させたときの反射分光特性を図9に示す。
図11は、請求項1、2にかかる波長選択フィルタの実施の形態を説明するための図である。この波長選択フィルタは「直線偏光状態でテラヘルツ波長帯域の入射光束のうち、所望の狭波長帯域の光を共鳴反射により選択的に反射させる波長選択フィルタ」である。
第1および第2の平板素子10A、10Bは、入射光束(図の「入射光」)に対して所定の角(この実施の形態において45度)だけ傾けて配置され、直線偏光状態でテラヘルツ波長帯域の入射光束のうち、所望の狭波長帯域の光を共鳴反射により、共鳴反射光として選択的に反射させる。
間隔可変手段は、保持フレーム12A、12Bと、圧電素子14と、駆動回路16とを有する。
保持フレーム12Aは平板状であって、図11(b)、(c)に示すように、第1の平板素子10Aに形成された微細溝構造に合わせた矩形状の開口12A1を形成され、第1の平板素子10Aを、入射光の入射する側と逆の面に、微細溝構造の側を入射光の入射する側にして保持する。
第1の平板素子10A、第2の平板素子10Bは、何れも、素材として前述の「テラヘルツ波長帯での屈折率が1.52の「Zeonorフィルム」を用いた。
このフィルムの厚さは20μmであり、第2の平板素子10Bにはこのフィルムをそのままの状態(厚さ:20μm)で用いた。
フィリングファクタ:FF=0.5
グレーティング層の厚さ:t1=10μm
導波層の厚さ:t2=10μm 。
計算の結果を図12に示す。間隔:t(図12において「空気層」と表示している。)の増加とともに、共鳴反射光のピーク波長が短波長側へずれることが分る。
この波長選択フィルタは「直線偏光状態でテラヘルツ波長帯域の入射光束のうち、所望の狭波長帯域の光を共鳴反射により選択的に反射させる波長選択フィルタ」である。
波長選択フィルタは、図14(a)に示すように、テラヘルツ波長帯域の光に対して透明な平行平板状の第1の平板素子20Aと、テラヘルツ波長帯域の光に対して透明な平行平板状で、第1の平板素子20Aと平行に対向して配置された第2の平板素子20Bとを有する。符号20は第1、第2の平板素子20A、20Bの複合体を示す。
第1、第2の平板素子20A、20Bの微小間隔は、間隔可変手段により変化させられる。
間隔可変手段は図9の実施の形態の場合と同様のものであり、図14(c)〜(e)に示すように、保持フレーム20A、20Bと、圧電素子24と駆動回路26とを有する。
図14(b)に示すように、構造パラメータとして、平板素子20Aに対し、グレーティング層の厚さをt11、導波層の厚さをt12、微細溝構造のピッチをP1、ランド幅をL1とする。このとき、フィリングファクタ:FF1=L1/P1である。
ピッチ:P1=180μm
フィリングファクタ:FF1=L1/P1=0.5
グレーティング層の厚さ:t11=10μm
導波層の厚さ:t12=10μm 。
ピッチ:P2=180μm
フィリングファクタ:FF2=L2/P2=0.5
グレーティング層の厚さ:t21=10μm
導波層の厚さ:t22=10μm 。
図15において、横軸は波長(μm)、縦軸は反射率であり、図中に「空気層」と表示したのが、上記間隔:t30である。
図16は、空気層厚(t30)に対する反射光のピーク波長をプロットした図であり、間隔:t30の増加に伴いピーク波長が略線形に短波長側にシフトすることがわかる。
保持フレーム42Aは、図18(b)、(c)に示すように、平板状であって、矩形状の開口42A0を有し、回転軸42A1、42A2により、図示されない支持体に回転可能に支持され、回転駆動手段44により上記回転軸の回りに回転させることができるようになっている。
ピッチ:P=180μm
フィリングファクタ:FF=0.5
グレーティング層の厚さ:t1=10μm
導波層の厚さ:t2=10μm
を有するものを「テラヘルツ帯での屈折率:1.52、厚さ:20μmのZeonorフィルム」を用いて形成した場合、共鳴反射光のピーク波長は、先に図8に即して説明したように、入射光の入射角の変化に従って変化する。
また、転写ではなく「Zeonorフィルムを直接切削加工する方法」でもよい。
図19は、この発明の波長選択素子を用いる光学機器を説明するための図である。
上に説明した計算は、入射光束を「TE偏光状態」として行ったものである。
10B 第2の平板素子
12A 保持フレーム
12B 保持フレーム
14 圧電素子
16 駆動回路
Claims (5)
- 直線偏光状態でテラヘルツ波長帯域の入射光束のうち、所望の狭波長帯域の光を共鳴反射により選択的に反射させる波長選択フィルタであって、
テラヘルツ波長帯域の光に対して透明な平行平板状の第1の平板素子と、
テラヘルツ波長帯域の光に対して透明な平行平板状で、上記第1の平板素子と平行に対向して配置された第2の平板素子と、
これら第1、第2の平板素子の微小間隔を変化させる間隔可変手段とを有し、
上記第1および第2の平板素子は、入射光束に対して所定の角だけ傾けて配置され、
上記第1、第2の平板素子のうち、少なくとも第1の平板素子の片面に、多数の溝を所定ピッチで形成された微細溝構造を有し、
上記第1の平板素子の側から入射光束を入射され、
上記間隔可変手段により第1、第2の平板素子の微小間隔を変化させることにより、共鳴反射される狭波長帯域の反射光の波長を選択することを特徴とするテラヘルツ波長帯域用の波長選択フィルタ。 - 請求項1記載のテラヘルツ波長帯域用の波長選択フィルタにおいて、
第1の平板素子の、入射光束が入射する側の面のみに微細溝構造を有し、第2の平板素子は両面が平坦な面であることを特徴とするテラヘルツ波長帯域用の波長選択フィルタ。 - 請求項1記載のテラヘルツ波長帯域用の波長選択フィルタにおいて、
第1および第2の平板素子の、互いに対向する面のみに同一方向に形成された微細溝構造を有することを特徴とするテラヘルツ波長帯域用の波長選択フィルタ。 - 直線偏光状態でテラヘルツ波長帯域の入射光束のうち、所望の狭波長帯域の光を共鳴反射により選択的に反射させる波長選択フィルタであって、
テラヘルツ波長帯域の光に対して透明な平行平板状で、入射光束が入射する側の面に、
多数の溝を所定ピッチで形成された微細溝構造を有する平板素子と、
この平板素子を、上記微細溝構造の溝に平行な軸の回りに回転傾斜させる回転傾斜駆動手段と、を有し、
上記回転傾斜駆動手段による上記平板素子の回転傾斜により、上記入射光束の上記微細溝構造への入射角を変化させることにより、共鳴反射される狭波長帯域の反射光の波長を選択することを特徴とするテラヘルツ波長帯域用の波長選択フィルタ。 - 請求項1〜4の任意の1に記載のテラヘルツ波長帯域用の波長選択フィルタを有する光学機器。
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