JP2009299194A - 放電表面処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 クラックのない被膜を得ることを目的とし、その被膜形成のための放電表面処理方法を確立する。
【解決手段】 金属粉末あるいは金属の化合物の粉末、あるいは、セラミックスの粉末を成形した粉末成形体、もしくは、該圧粉体を加熱処理した粉末成形体、或いは金属を電極として加工液中或いは気中において電極とワークをサーボをとりつつ両者が接触しないように間隙を保ちながら、パルス状の放電を発生させ、そのエネルギーにより、ワーク表面に電極材料あるいは電極材料が放電エネルギーにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理において、電極投影面の被膜処理面上にワークの母材表面が露出する母材露出部分と、電極から供給された材料による電極材料被膜部分とを混在させたまだらの被膜を形成し、ワーク表面に放電の熱により発生するクラックがない被膜表面を形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】 金属粉末あるいは金属の化合物の粉末、あるいは、セラミックスの粉末を成形した粉末成形体、もしくは、該圧粉体を加熱処理した粉末成形体、或いは金属を電極として加工液中或いは気中において電極とワークをサーボをとりつつ両者が接触しないように間隙を保ちながら、パルス状の放電を発生させ、そのエネルギーにより、ワーク表面に電極材料あるいは電極材料が放電エネルギーにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理において、電極投影面の被膜処理面上にワークの母材表面が露出する母材露出部分と、電極から供給された材料による電極材料被膜部分とを混在させたまだらの被膜を形成し、ワーク表面に放電の熱により発生するクラックがない被膜表面を形成する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、金属粉末あるいは金属の化合物の粉末、あるいは、セラミックスの粉末を成形した粉末成形体、もしくは、該粉末成形体を加熱処理した粉末成形体を電極として加工液中或いは気中において電極とワークの間にパルス状の放電を発生させ、そのエネルギーにより、ワーク表面に電極材料あるいは電極材料が放電エネルギーにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理に関するものである。
金属の薄い被膜を形成する技術として、化学反応を利用して、水溶液中から金属を被処理物表面に析出させる無電解メッキ、一方の極をイオン化させもう一方の極で電子をやり取りして被処理物に被膜を形成させる電解メッキ、真空中で蒸発した金属のガスをイオン化して負の電圧を印可した基材に叩きつけて被膜を形成するPVD(Physical Vapor Deposition)などがあり、被処理物の全面に処理可能である。
一方、メッキやPVD等の表面処理方法とは異なるが、その他の表面処理技術としては、例えば国際公開WO99/558744号公報に示されるように放電加工による表面処理を確立している。
この放電表面処理は、形成する被膜と同じ大きさの電極を用い、被加工物と電極の間に複数のパルス放電を発生させて被膜を形成させる転写加工方法であり、形成させたい箇所に被膜を形成でき、前処理も不要である。
この放電表面処理は、形成する被膜と同じ大きさの電極を用い、被加工物と電極の間に複数のパルス放電を発生させて被膜を形成させる転写加工方法であり、形成させたい箇所に被膜を形成でき、前処理も不要である。
現在、被処理物に対し表面処理を施す技術として、メッキ、PVC、放電表面処理といった技術が確立しているが、その何れも被処理面に対して所定の被膜を形成するものである。
例えば、国際公開WO99/558744号公報に示されるように放電加工による表面処理で、TiCやCr3C2などの硬質被膜を被加工物面に処理すると、溶融・再凝固を繰り返して被膜を形成させるため、再凝固時に被膜と母材の熱膨張係数の違いで被膜には引っ張りの残留応力が生じる。
被膜に作用する引っ張り力は(残留応力)×(被膜面積)となるため、被膜の形成される面が大きくなると、その力に耐えられなくなり、被膜表面にクラック生じる。
また、メッキ、PVDにより被処理面全面に被膜を形成させると、被膜と被加工物の密着強度が小さいため、大きな引っ張り力が被膜に作用した場合は、被膜が剥離する。
例えば、国際公開WO99/558744号公報に示されるように放電加工による表面処理で、TiCやCr3C2などの硬質被膜を被加工物面に処理すると、溶融・再凝固を繰り返して被膜を形成させるため、再凝固時に被膜と母材の熱膨張係数の違いで被膜には引っ張りの残留応力が生じる。
被膜に作用する引っ張り力は(残留応力)×(被膜面積)となるため、被膜の形成される面が大きくなると、その力に耐えられなくなり、被膜表面にクラック生じる。
また、メッキ、PVDにより被処理面全面に被膜を形成させると、被膜と被加工物の密着強度が小さいため、大きな引っ張り力が被膜に作用した場合は、被膜が剥離する。
被膜上のこのようなクラックは、摩耗や疲労破壊の基点となるため、所望の被膜性能を得ることができない。
本発明は、クラックのない被膜を得ることを目的とし、その被膜形成のための放電表面処理方法を確立するものである。
本発明は、クラックのない被膜を得ることを目的とし、その被膜形成のための放電表面処理方法を確立するものである。
金属粉末あるいは金属の化合物の粉末、あるいは、セラミックスの粉末を成形した粉末成形体、もしくは、該圧粉体を加熱処理した粉末成形体、或いは金属を電極として加工液中或いは気中において電極とワークをサーボをとりつつ両者が接触しないように間隙を保ちながら、パルス状の放電を発生させ、そのエネルギーにより、ワーク表面に電極材料あるいは電極材料が放電エネルギーにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理において、上記電極投影面の被膜処理面上にワークの母材表面が露出する母材露出部分と、電極から供給された材料による電極材料被膜部分とを混在させたまだらの被膜を形成し、ワーク表面に放電の熱により発生するクラックがない被膜表面を形成する。
本発明によれば、被加工物表面に被膜をまばらに形成させることで、クラックのない被膜を形成できる。
また、被加工物表面に被膜をまばらに形成させることで、被膜と被加工物の両方の特性を有する被膜を形成できる。
また、被加工物表面に被膜をまばらに形成させることで、被膜と被加工物の両方の特性を有する被膜を形成できる。
実施の形態1.
まず、放電表面処理の原理を図1に示す。
電極は金属、合金やセラミックスの数μmの粉末を成形したもの、若しくは、成形した後、加熱処理したものを用いる。
電極とワークとを加工液で満たされた加工槽に設置し、電極を陰極、ワークを陽極とし、両者が接触しないよう主軸はサーボをとりつつ両間で放電を発生させる。
放電の熱によりワークおよび電極は溶融・気化され、気化により発生する爆風よって、溶融した電極の一部(溶融粒子)をワーク表面に向かって輸送する。
そして、溶融した電極の一部がワーク表面に到達すると、再凝固し被膜となる。
まず、放電表面処理の原理を図1に示す。
電極は金属、合金やセラミックスの数μmの粉末を成形したもの、若しくは、成形した後、加熱処理したものを用いる。
電極とワークとを加工液で満たされた加工槽に設置し、電極を陰極、ワークを陽極とし、両者が接触しないよう主軸はサーボをとりつつ両間で放電を発生させる。
放電の熱によりワークおよび電極は溶融・気化され、気化により発生する爆風よって、溶融した電極の一部(溶融粒子)をワーク表面に向かって輸送する。
そして、溶融した電極の一部がワーク表面に到達すると、再凝固し被膜となる。
次に、本実施の形態1の放電表面処理用電極製造のためのプロセスを図2に示す。
平均粒径4μm以下の金属粉末、金属合金粉末またはセラミックス粉末を金型に入れてパンチにより圧力をかけてプレスする。
所定のプレス圧を粉末にかけることで、粉末は固まり圧粉体となる。
ここで、プレスの際に粉末内部へのプレス圧の伝わりを良くするために粉末にパラフィンなどのワックスを重量比で1%から10%程度混入すると成形性を改善することができる。
圧縮成形された圧粉体は、圧縮により所定の硬さが得られていればそのまま放電表面処理用の電極として使用することができるが、加熱することで強度を増すことができる。
また、ワックスを使用した場合、ワックスの融点より高い温度に加熱し、ワックスを除去する。このようにして放電表面処理用の電極が得られる。
平均粒径4μm以下の金属粉末、金属合金粉末またはセラミックス粉末を金型に入れてパンチにより圧力をかけてプレスする。
所定のプレス圧を粉末にかけることで、粉末は固まり圧粉体となる。
ここで、プレスの際に粉末内部へのプレス圧の伝わりを良くするために粉末にパラフィンなどのワックスを重量比で1%から10%程度混入すると成形性を改善することができる。
圧縮成形された圧粉体は、圧縮により所定の硬さが得られていればそのまま放電表面処理用の電極として使用することができるが、加熱することで強度を増すことができる。
また、ワックスを使用した場合、ワックスの融点より高い温度に加熱し、ワックスを除去する。このようにして放電表面処理用の電極が得られる。
本実施の形態では、平均粒径1μmのCr3C2粉末にワックスを3重量%混合し、200MPaで圧縮成形した後、約1000℃の真空炉内で一時間保持して、電極のサイズφ18×30の電極を成形した。
その電極を用い、従来の方法で被加工物である炭素鋼(S45C)上に被膜を形成させた。
ここで、放電電流を8A、放電時間を8μs、オープン電圧80Vとし、処理面φ18に15分間加工した。
このとき、形成された被膜表面のSEM写真を図3に示す。
その電極を用い、従来の方法で被加工物である炭素鋼(S45C)上に被膜を形成させた。
ここで、放電電流を8A、放電時間を8μs、オープン電圧80Vとし、処理面φ18に15分間加工した。
このとき、形成された被膜表面のSEM写真を図3に示す。
円形状のものが単発放電痕であり、この放電痕の積み重ねで被膜は形成される。
いくつかの放電痕の内部に線上の亀裂が存在し、これらがクラックである。
溶融・再凝固を繰り返して被膜を形成させるため、再凝固時に被膜と被加工物の熱膨張係数の違いで被膜には引っ張りの残留応力が生じる。
被膜に作用する引っ張り力は(残留応力)×(被膜面積)となるため、被膜の形成される面が大きくなると、その力に耐えられなくなり、被膜表面にクラックが生じる。
そのため、本発明者らは、残留応力を抑えることための放電表面処理について研究を行った。
いくつかの放電痕の内部に線上の亀裂が存在し、これらがクラックである。
溶融・再凝固を繰り返して被膜を形成させるため、再凝固時に被膜と被加工物の熱膨張係数の違いで被膜には引っ張りの残留応力が生じる。
被膜に作用する引っ張り力は(残留応力)×(被膜面積)となるため、被膜の形成される面が大きくなると、その力に耐えられなくなり、被膜表面にクラックが生じる。
そのため、本発明者らは、残留応力を抑えることための放電表面処理について研究を行った。
残留応力は、被膜面積の積分値であるため、所望の性能を失わせない程度に被膜面積を小さくすればよい。
そこで、炭素鋼上に放電痕直径50μm程度の被膜を全表面積に対して20%程度まばらに形成させた。
放電電流を8A、放電時間を8μs、オープン電圧270Vとし、処理面φ18に対し、まだらな被膜を形成するため、1分間という短時間加工した。
ここで、電極と被加工物の距離が小さい場合、放電位置が偏在しやすくなり、被膜形成個所が偏在してしまう。
放電が偏在すると局所的に被膜が形成されるため,その位置でクラックが発生してしまう。
そのため、放電時間を短くするだけでは、クラックを抑制できない。
そこで、加工中の電極と被加工物の距離が大きくし、被処理面全面に対する放電の分散性を高くするためにオープン電圧を大きくした。
このときの被膜の表面のSEM写真を図4に示す。
紙面の上から下に向かう線は,被加工物の研磨痕である。ところどころに直径50μm程度の円形の放電痕が存在する。その被加工物表面にクラックは存在していない。
そこで、炭素鋼上に放電痕直径50μm程度の被膜を全表面積に対して20%程度まばらに形成させた。
放電電流を8A、放電時間を8μs、オープン電圧270Vとし、処理面φ18に対し、まだらな被膜を形成するため、1分間という短時間加工した。
ここで、電極と被加工物の距離が小さい場合、放電位置が偏在しやすくなり、被膜形成個所が偏在してしまう。
放電が偏在すると局所的に被膜が形成されるため,その位置でクラックが発生してしまう。
そのため、放電時間を短くするだけでは、クラックを抑制できない。
そこで、加工中の電極と被加工物の距離が大きくし、被処理面全面に対する放電の分散性を高くするためにオープン電圧を大きくした。
このときの被膜の表面のSEM写真を図4に示す。
紙面の上から下に向かう線は,被加工物の研磨痕である。ところどころに直径50μm程度の円形の放電痕が存在する。その被加工物表面にクラックは存在していない。
また、放電痕の拡大写真を図5に、Cr3C2の構成元素であるCr元素の分布を図6に示す。
図5と図6を比較すると、図5の円形の放電痕部に対応する図6の位置の色が明るくなっている。色が明るくなった位置に分析対象の元素が存在する。
つまり、円形の放電痕には電極から供給されたCrが存在していることがわかる。
従来のようにCr3C2被膜を全面に形成させた炭素鋼製の軸は、耐摩耗性は向上するが、せん断応力による繰り返し荷重の負荷により疲労強度が未処理の炭素鋼と比較して約1/3に低下していた。
本実施の形態でCr3C2の被膜を軸表面の約60%を覆わせた。
その結果、耐摩耗性は全面に被膜形成させた場合と同様で、疲労強度も未処理品と同等になった。なお、全表面積に対して、20〜80%程度被膜を形成させることにより、上述の作用が得られた。
図5と図6を比較すると、図5の円形の放電痕部に対応する図6の位置の色が明るくなっている。色が明るくなった位置に分析対象の元素が存在する。
つまり、円形の放電痕には電極から供給されたCrが存在していることがわかる。
従来のようにCr3C2被膜を全面に形成させた炭素鋼製の軸は、耐摩耗性は向上するが、せん断応力による繰り返し荷重の負荷により疲労強度が未処理の炭素鋼と比較して約1/3に低下していた。
本実施の形態でCr3C2の被膜を軸表面の約60%を覆わせた。
その結果、耐摩耗性は全面に被膜形成させた場合と同様で、疲労強度も未処理品と同等になった。なお、全表面積に対して、20〜80%程度被膜を形成させることにより、上述の作用が得られた。
本実施の形態では、被膜の材料としてCr3C2について説明したが、TiCやWCなどの炭化物の被膜でも被膜をまだらに形成させると同様にクラックを消滅させ、部材の疲労強度の低下を抑制したまま耐摩耗性を向上することができる。
また、被加工物の表面の露出量は、加工時間を制御することで変更できるため、更に被加工物の露出量を低減させたい場合は、加工時間を長くすればよい。
また、被加工物の表面の露出量は、加工時間を制御することで変更できるため、更に被加工物の露出量を低減させたい場合は、加工時間を長くすればよい。
本実施の形態により、被膜を被加工物上にまばらに形成させて、クラックのない被膜を形成することができた。
クラックは、摩耗や疲労破壊の基点となるため、クラックの消滅により、部材の寿命を拡大できる。また、処理時間が短縮され、材料の使用量が減少するため、コストを削減できる。
また、このようなまだらに被膜を形成させたとしても、耐摩耗性などの所望の被膜性能を得ることが出来る。これは、被膜部はわずかに周辺よりも高くなっているため、相手材に接触するのは被膜部となる確率が高いことに考察されるものである。
クラックは、摩耗や疲労破壊の基点となるため、クラックの消滅により、部材の寿命を拡大できる。また、処理時間が短縮され、材料の使用量が減少するため、コストを削減できる。
また、このようなまだらに被膜を形成させたとしても、耐摩耗性などの所望の被膜性能を得ることが出来る。これは、被膜部はわずかに周辺よりも高くなっているため、相手材に接触するのは被膜部となる確率が高いことに考察されるものである。
実施の形態2.
実施の形態1では、被膜のクラックを防止するためにまだらに放電表面処理により被膜を形成する加工方法について説明したが、部材表面がまだらとなることは、母材の被膜特性及び処理により形成した被膜特性の二つの被膜特性を有することに他ならない。
そこで、本実施の形態では、平均粒径1μmのMo粉末からなるφ18×30の電極を用い、従来の方法でCu上にまばらな被膜を形成させた。
加工条件としては、放電電流を11A、放電時間を64μs、オープン電圧270Vとし、処理面φ18に1分間加工した。加工物全面を被膜が覆う前に加工を終了させている。
放電表面処理による部材の表面には、被加工物のCuが露出している。
実施の形態1では、被膜のクラックを防止するためにまだらに放電表面処理により被膜を形成する加工方法について説明したが、部材表面がまだらとなることは、母材の被膜特性及び処理により形成した被膜特性の二つの被膜特性を有することに他ならない。
そこで、本実施の形態では、平均粒径1μmのMo粉末からなるφ18×30の電極を用い、従来の方法でCu上にまばらな被膜を形成させた。
加工条件としては、放電電流を11A、放電時間を64μs、オープン電圧270Vとし、処理面φ18に1分間加工した。加工物全面を被膜が覆う前に加工を終了させている。
放電表面処理による部材の表面には、被加工物のCuが露出している。
本実施の形態は、軟質ではあるが熱伝導率の高いCu(銅)を硬質のMo(モリブデン)で覆ったものである。
外部の熱をCuに素早く逃がしたいが、熱伝導率がCuの1/3程度のMo被膜で大きな温度勾配が形成され、外部の熱を逃がしにくくなってしまう。
ただし、Cuだけでは硬度不足のため、部材が破損する。
そこで本実施の形態により、まだらな被膜面により二つの特性を有することで、ある程度強度を有し、しかも被加工物の特性も損なわない被膜を形成できる。
また、被加工物に対し全面に処理を行わなくてすむことから、処理時間が短縮され、材料の使用量が減少するため、コストを削減できる。
本実施の形態では、Cu製の被加工物上にMo被膜を形成させた場合について説明したが、被加工物はCu合金,Al、Al合金でもよく、被膜はW(タングステン)、TiC,Cr3C2、WCなどでもよい。
外部の熱をCuに素早く逃がしたいが、熱伝導率がCuの1/3程度のMo被膜で大きな温度勾配が形成され、外部の熱を逃がしにくくなってしまう。
ただし、Cuだけでは硬度不足のため、部材が破損する。
そこで本実施の形態により、まだらな被膜面により二つの特性を有することで、ある程度強度を有し、しかも被加工物の特性も損なわない被膜を形成できる。
また、被加工物に対し全面に処理を行わなくてすむことから、処理時間が短縮され、材料の使用量が減少するため、コストを削減できる。
本実施の形態では、Cu製の被加工物上にMo被膜を形成させた場合について説明したが、被加工物はCu合金,Al、Al合金でもよく、被膜はW(タングステン)、TiC,Cr3C2、WCなどでもよい。
実施の形態3.
上述した実施の形態では、まだらな被膜を形成する手法として、処理時間と加工間隙に関係するオープン電圧の関係について説明した。
一方、本実施の形態では、同様にまだらな被膜を形成するための手法について説明する。
上述した実施の形態では、まだらな被膜を形成する手法として、処理時間と加工間隙に関係するオープン電圧の関係について説明した。
一方、本実施の形態では、同様にまだらな被膜を形成するための手法について説明する。
放電表面処理では、アーク柱は中心の温度が最も高く、半径方向に遠くなるほど、温度は低くなる。
一般にアーク柱の中心は、2000K〜8000Kであり、融点が1000K以上ほとんどの金属や金属間化合物は、アーク柱の中心付近では、溶融または気化状態である。
電極粒子が電極から被加工物に移動するとき、このアーク柱中心付近で溶融・気化され、完全に気化しなかったものだけが、被加工物上に堆積する。
また、アーク柱外周部の低温度領域を移動するものは、不完全な溶融状態で被膜となる。
しかし、沸点が1000℃以下の材料の場合、アーク柱中心付近では、完全に蒸発し、外周部の低温領域で溶融し、被膜となることができる。
つまり、沸点が1000℃以下の材質からなる電極を用いると被加工物が露出した被膜を形成できる。
ここで、沸点が1000℃以下の材料は、Znなどがあり、Mgも同様である。
一般にアーク柱の中心は、2000K〜8000Kであり、融点が1000K以上ほとんどの金属や金属間化合物は、アーク柱の中心付近では、溶融または気化状態である。
電極粒子が電極から被加工物に移動するとき、このアーク柱中心付近で溶融・気化され、完全に気化しなかったものだけが、被加工物上に堆積する。
また、アーク柱外周部の低温度領域を移動するものは、不完全な溶融状態で被膜となる。
しかし、沸点が1000℃以下の材料の場合、アーク柱中心付近では、完全に蒸発し、外周部の低温領域で溶融し、被膜となることができる。
つまり、沸点が1000℃以下の材質からなる電極を用いると被加工物が露出した被膜を形成できる。
ここで、沸点が1000℃以下の材料は、Znなどがあり、Mgも同様である。
平均粒径1μmのZn粉末をプレス圧力200MPaで圧縮成形し、φ18×30の電極を製造した。
なお、Zn粉末は成形性が高いため、ワックスは混合していない。
また、プレス成形後の電極は、十分低い電気抵抗を有していたため、加熱処理も行わなかった。
その電極を用い、放電電流を8A、放電時間を8μs、オープン電圧270V、処理面をφ18とし、5分間加工行うことで、Zn被膜を形成させた。
なお、Zn粉末は成形性が高いため、ワックスは混合していない。
また、プレス成形後の電極は、十分低い電気抵抗を有していたため、加熱処理も行わなかった。
その電極を用い、放電電流を8A、放電時間を8μs、オープン電圧270V、処理面をφ18とし、5分間加工行うことで、Zn被膜を形成させた。
このときの被膜表面のSEM写真を図7に示し、Znの元素分布を図8に示す。
図8の明るく見える部分にZnが存在する。
図7と図8を比較すると、図7の円形状の放電痕部にはZnが存在せず、その周囲にZnが存在していることがわかる。
放電痕部は被加工物が露出している。
よって、被加工物表面が露出した被膜を形成できている。
また、本実施の形態では、前記実施の形態より、処理時間を5倍にしている。
前記実施の形態では、被加工物の露出量を処理時間で制御していたが、Zn被膜は、処理時間に関わらず被加工物表面を露出することができる。
なぜなら、Znが堆積している部分に放電が発生すると、アークの熱により放電痕中心付近は、すべて除去され、被加工物表面が再び露出するからである。
つまり、Znのような低沸点物質を電極とした場合、処理時間を制御することなくまだらな被膜を形成できる。
図8の明るく見える部分にZnが存在する。
図7と図8を比較すると、図7の円形状の放電痕部にはZnが存在せず、その周囲にZnが存在していることがわかる。
放電痕部は被加工物が露出している。
よって、被加工物表面が露出した被膜を形成できている。
また、本実施の形態では、前記実施の形態より、処理時間を5倍にしている。
前記実施の形態では、被加工物の露出量を処理時間で制御していたが、Zn被膜は、処理時間に関わらず被加工物表面を露出することができる。
なぜなら、Znが堆積している部分に放電が発生すると、アークの熱により放電痕中心付近は、すべて除去され、被加工物表面が再び露出するからである。
つまり、Znのような低沸点物質を電極とした場合、処理時間を制御することなくまだらな被膜を形成できる。
次に、その他の被膜形成手法について説明する。
一般に、放電開始直後のアーク柱温度は最も高くなり、放電時間を長くするとアークの温度は低下していく。
すなわち、沸点が1000℃以下の材質を用いる場合、放電時間を長くすることにより、アーク柱中心付近の温度が低下するため、アーク柱中心付近でも被膜になりやすくなる。
つまり、アーク柱中心付近に対しても被膜が形成されることから、放電時間を長くするほど、被加工物の露出量を抑えることができる。
そこで、平均粒径1μmのZn粉末からなるφ18×30の電極を用い、放電電流を8A、放電時間を64μs、オープン電圧270V、処理面φ18で5分間加工することにより、Zn被膜を形成させた。
一般に、放電開始直後のアーク柱温度は最も高くなり、放電時間を長くするとアークの温度は低下していく。
すなわち、沸点が1000℃以下の材質を用いる場合、放電時間を長くすることにより、アーク柱中心付近の温度が低下するため、アーク柱中心付近でも被膜になりやすくなる。
つまり、アーク柱中心付近に対しても被膜が形成されることから、放電時間を長くするほど、被加工物の露出量を抑えることができる。
そこで、平均粒径1μmのZn粉末からなるφ18×30の電極を用い、放電電流を8A、放電時間を64μs、オープン電圧270V、処理面φ18で5分間加工することにより、Zn被膜を形成させた。
このときの被膜表面のSEM写真を図9に示す。
円形の放電痕はほとんどなくなっている。
図7と同様に円形状の放電痕部にはZnは存在せず、その周辺にZnが存在する。
その放電痕(被加工物の露出部)は、放電時間が8μsであった図7よりも減少している。
つまり1000℃以下の低沸点の材料を電極として被膜を形成させた場合、放電時間を長くすると被加工物の露出量を制御できる。
円形の放電痕はほとんどなくなっている。
図7と同様に円形状の放電痕部にはZnは存在せず、その周辺にZnが存在する。
その放電痕(被加工物の露出部)は、放電時間が8μsであった図7よりも減少している。
つまり1000℃以下の低沸点の材料を電極として被膜を形成させた場合、放電時間を長くすると被加工物の露出量を制御できる。
本実施の形態により、沸点が1000℃以下の材質を電極として処理することで、被加工物と電極材質がまばらに存在する被膜を形成することができる。
つまり被加工物と被膜の二つの特性を持つ表面状態を形成できる。
また、沸点が1000℃以下の材質では、被加工物の露出量を放電時間で制御することができる。
放電時間を長くするほど、被加工物の露出量は低下する。
また、本実施の形態では粉末からなる電極について説明したが、低沸点材料の場合、金属電極でもまだらな被膜を形成できる。
なぜなら、低沸点であるため、放電の熱により多量の電極材料が蒸発し、被加工物上で再凝固して数μmの被膜となるためである。
つまり被加工物と被膜の二つの特性を持つ表面状態を形成できる。
また、沸点が1000℃以下の材質では、被加工物の露出量を放電時間で制御することができる。
放電時間を長くするほど、被加工物の露出量は低下する。
また、本実施の形態では粉末からなる電極について説明したが、低沸点材料の場合、金属電極でもまだらな被膜を形成できる。
なぜなら、低沸点であるため、放電の熱により多量の電極材料が蒸発し、被加工物上で再凝固して数μmの被膜となるためである。
Claims (4)
- 金属粉末あるいは金属の化合物の粉末、あるいは、セラミックスの粉末を成形した粉末成形体、もしくは、該圧粉体を加熱処理した粉末成形体、或いは金属を電極として加工液中或いは気中において電極とワークをサーボをとりつつ両者が接触しないように間隙を保ちながら、パルス状の放電を発生させ、そのエネルギーにより、ワーク表面に電極材料あるいは電極材料が放電エネルギーにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理において、
上記電極投影面の被膜処理面上にワークの母材表面が露出する母材露出部分と、電極から供給された材料による電極材料被膜部分とを混在させたまだらの被膜を形成し、
ワーク表面に放電の熱により発生するクラックがない被膜表面を形成することを特徴とする放電表面処理方法。 - ワーク母材が熱伝導のよい材料であるCu、Cu合金、あるいはAl、Al合金のいずれかであり、被膜材料はワーク母材より硬さの高い材料であり、ワーク母材の熱伝導を有し表面の硬さをワーク母材より高めた部材を製造することを特徴とする請求項1記載の放電表面処理方法。
- 被膜材料部分の凸部の高さが、ワーク母材表面の高さより高くなっており、他の部品に接触したときに被膜材料部分が接触する状態にある表面を形成することを特徴とする請求項2記載の放電表面処理方法。
- 電極材料が沸点1000K以下であるZnあるいはMgであり、パルス状の放電により電極材料をワーク表面に移行させつつ、ワーク表面に移行した電極材料を放電により蒸発させて、母材表面が露出する母材露出部分と、電極から供給された材料による電極材料被膜部分とを混在させる被膜を形成することを特徴とする請求項1記載の放電表面処理方法。
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