JP2009297893A - 研磨具及び研磨具の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】安定した鏡面加工を能率良く行なうことができる研磨具を提供する。
【解決手段】 研磨具10として、コロイダルシリカ、超微細ジルコニアなどの微細な一次粒子11を凝集して形成された平均粒径が30μmを超え、かつ300μm以下、好ましくは40〜100μmの範囲内の複数の二次粒子12を研磨材とし、該複数の二次粒子12をその一部が結合材18の表面から露出した状態で、基材16上に結合材18で固定することにより、研磨加工時に、二次粒子が常に結合材の表面よりも突き出た状態が維持され、切り屑の除去も良好で、安定した鏡面加工を能率良く行なうことができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、研磨具及び研磨具の製造方法に係り、更に詳しくは、シリコン、ガラスなどの硬質・脆性材料や、鉄鋼、アルミニウムなどの金属材料の仕上げ加工に好適な研磨具及びその製造方法に関する。
シリコンウエハやガラスディスクなどの各種硬質・脆性材料や、鉄鋼、アルミニウムなどの金属材料からなる部品表面の最終仕上げには、研磨加工機などを用いた研磨加工(鏡面加工)が行なわれている。すなわち、例えばダイヤモンドペーストのように微細な遊離砥粒を研磨材として溶媒中に分散させてペースト状あるいはスラリー状とした、いわゆる研磨材スラリーを、研磨加工機の回転テーブルに貼られた研磨クロスと被加工物の加工面(以下、適宜「加工面」と略述する)との間隙に供給しながら回転テーブルを回転させることにより加工面を研磨していた。この加工法では研磨材として微細な遊離砥粒を使用することが容易なため、加工面品位に優れた鏡面状態の加工面を容易に得ることができるとともに、大量の研磨材スラリーを使用することで安定した加工特性(加工能率及び加工面粗さなど)を維持することができるという利点があった。そのため、研磨材スラリーを用いた研磨加工が多くの作業現場で行なわれてきた。
しかしながら、研磨材スラリーを用いた研磨加工では、大量の研磨材スラリーを使用するため、周辺環境を汚染したり、廃液処理による環境への負荷が増大するといった不都合があった。また、加工能率を向上させるには、研磨速度(回転テーブルの回転速度)を上げれば良いが、研磨速度がある程度以上になると、遠心力により加工面への研磨材の供給量が減少し、逆に加工能率が低下するという現象が生じる。すなわち、研磨材スラリーを用いた研磨加工では、加工能率の向上に限界があり、生産性向上に対する1つの障害となっていた。
こうしたことから、研磨材スラリーを用いずに、研磨加工による加工面粗さ(鏡面状態の加工面粗さ)相当の優れた加工面粗さを得ることのできる加工工具への要求が高まってきた。そして、特に砥粒が工具の基材に固定されている、いわゆる固定砥粒加工工具が注目されるようになった。
砥粒を用いた研磨加工において、表面粗さが小さい加工面を得るには、砥粒の切り込み深さを微小化するために、微細な砥粒を使用するほうが通常有利である。しかし、固定砥粒加工工具においては、鏡面状態の加工面粗さを得るために粒径が数μm以下の砥粒を使用すると、加工時に固定砥粒加工工具の基材(又は結合材)と加工面との接触頻度が高くなり、その結果として、加工抵抗の急増、砥粒の脱落などが生じ、最悪の場合には加工不可の状態に陥ってしまう。また、基材(又は結合材)と加工面との接触を抑制するような手段を講じた場合でも、砥粒の粒径が小さいため、時間とともに加工能率が低下してしまうといった不都合がある。すなわち、加工能率の向上と加工面品位の向上とを同時に満足させることは困難であった。
そこで、これらの問題を解決するために、微細な砥粒の集合体を用いた固定砥粒加工工具が開発された(例えば、特許文献1〜7参照)。これは、微細な砥粒の作用により表面粗さが小さい加工面を得るとともに、砥粒の集合体(凝集砥粒)により加工能率の向上を目的としている。
本願出願人は、フィルム状の基材上に研磨層を有する、いわゆる研磨フィルムに関する発明を先に提案した(特開2000−237962号公報参照)。この発明は、0.5μm以下の一次粒子を凝集して形成された平均粒径が1〜30μmの範囲内の造粒粒子が研磨材として基材上にバインダ樹脂で固定化された研磨具(研磨フィルム)である。
前記特開2000−237962号公報に開示された研磨具によると、0.5μm以下の一次粒子を凝集した造粒粒子の平均粒径を1〜30μmの範囲内としているために、確かに良好な加工面を安定して得ることができる。しかしながら、その後の更なる研究により、連続して加工を行なうと、加工能率が低下することが判明した。
本発明は、上述した発明者等の得た新規知見に基づいてなされたものであり、以下の構成を有する。
本発明は、第1の観点からすると、微細な一次粒子を凝集して形成された平均粒径が30μmを超え、かつ300μm以下の範囲内の複数の二次粒子が研磨材として結合材で基材上に固定され、前記複数の二次粒子の一部は前記結合材の表面から露出していることを特徴とする研磨具である。
これによれば、安定した鏡面加工を能率良く行なうことができる。
本発明は、第2の観点からすると、基材上に研磨材が固定されている研磨具の製造方法であって、微細な一次粒子を凝集して形成された平均粒径が30μmを超え、かつ300μm以下の範囲内の複数の二次粒子からなる前記研磨材と結合材とを混練し、混練物とする混練工程と;前記混練物を、前記複数の二次粒子の一部が前記結合材の表面から露出する状態で、基材上に塗布する塗布工程と;基材上に塗布された前記混練物を固化する固化工程と;を含む研磨具の製造方法である。
これによれば、安定した鏡面加工を能率良く行なうことができる研磨具を製造することができる。
図1(A)は、本発明の一実施形態としての研磨具の断面の構成図であり、図1(B)は、図1(A)における二次粒子12の拡大図である。 図2(A)は、スプレードライヤ法で形成されたジルコニアの二次粒子を走査型電子顕微鏡で観察した写真を示す図(図面代用写真)であり、図2(B)は、スプレードライヤ法で形成されたジルコニア二次粒子の外観を光学顕微鏡で観察した写真を示す図(図面代用写真)である。 図3(A)は、研磨加工前のガラスディスクの表面状態を顕微鏡で観察した写真を示す図(図面代用写真)であり、図3(B)は、実施例2の研磨具で研磨加工を行なった後のガラスディスクの表面状態を顕微鏡で観察した写真を示す図(図面代用写真)である。 図4(A)は、実施例1と比較例1との違いを説明するための図であり、図4(B)は、実施例2と比較例2との違いを説明するための図である。 平均粒径50μmのジルコニア単粒子を研磨材とする研磨具を用いて加工したガラスディスクの表面状態を顕微鏡で観察した写真を示す図(図面代用写真)である。 二次粒子の平均粒径と加工面粗さとの関係を説明するための図である。
以下、本発明の実施形態及び実施例について説明する。
図1(A)には、本発明の一実施形態に係る研磨具10の断面の構成図が示されている。この研磨具10は、微細な一次粒子の凝集体である二次粒子12と、添加物14と、基材16及び結合材18とから構成されている。すなわち、基材16上に、二次粒子12と添加物14と結合材18とからなる研磨層20が形成されている。
二次粒子12としては、加工対象物にもよるが、一般には硬質の無機物であって、図1(B)に拡大して示されるように、平均粒径が5μm以下の微細な一次粒子11が凝集した、30μmを超え、かつ300μm以下、好ましくは40〜100μmの範囲内の平均粒径を有する凝集体が適している。通常の二次粒子12に供する材料としては、シリカ(酸化珪素)、セリア(酸化セリウム)、ダイヤモンド、cBN(立方晶窒化硼素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭化珪素などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。研磨材としては通常用いられていないが、フィルタやスペーサといった用途で用いられている凝集体(凝集粉末)を用いることも可能である。なお、研磨層20中の二次粒子12の含有率は、5〜90体積%の範囲内にあることが望ましい。また、二次粒子12の内部には、結合材などの介在物を含まないことが望ましい。そこで、例えば、市販品の凝集粉末を利用する場合には、あらかじめ加熱処理などを行なうのが良い。
二次粒子12は、例えば、一次粒子を含むゾルを加水分解し、一次粒子11を所定の大きさに凝集させる一般的なゾル−ゲル法などで形成される。これにより結合材などの介在物を内部に含まない二次粒子12が得られる。なお、二次粒子12の形状は、球状、粒状及び不定形のいずれでも良い。
また、二次粒子12の形成方法としては、ゾル−ゲル法などの水溶液反応による沈殿を利用した形成方法に限定されるものではなく、材料によって、水溶液からの析出を利用した形成方法(例えば、スプレードライヤ法、凍結乾燥法、溶媒乾燥法)、固体からの形成方法(例えば、固体の熱分解、固相反応)、気体からの形成方法(例えば、蒸発−凝縮、気相分解法、気相反応)などを用いることができる。また、高速気流を用いて一次粒子同士を衝突させる衝撃法を用いても良い。結果として、結合材などの介在物を内部に含まずに、所定の平均粒径を有する二次粒子12が得られれば良いからである。
特に、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ及びコロイダルセリアは超微粒子であるとともに、化学的活性を有し、被加工面に対してメカノケミカル作用を呈するので、二次粒子12を構成する一次粒子11として極めて好ましい材料である。
添加物14としては、金属、無機物及び有機物の粉末あるいは繊維を用いることができる。粉末としては平均粒径が0.3〜300μmの範囲内のものが適しており、繊維としては平均短径が0.1〜15μm、平均長径が0.3〜300μmの範囲内のものが適している。金属粉末としては、例えば銅やアルミニウムなどの粉末を用いることができ、無機物の粉末としては、例えば二硫化モリブデンなどの固体潤滑材やダイヤモンド、cBN、シリカ、アルミナ、炭化珪素、酸化鉄などの粉末を用いることができ、有機物の粉末としては、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂などの粉末を用いることができる。また、金属繊維としては、例えば銅、クロム、ニッケルなどの繊維を用いることができ、無機物の繊維としては、例えばアルミナ、炭化珪素、炭素などの繊維を用いることができ、有機物の繊維としては、例えばアクリル樹脂などの繊維を用いることができる。なお、添加物14としては、1種類に限定されるものではなく複数の材料を用いても良い。
また、研磨層20中の添加物14の含有率は、5〜80体積%の範囲内にあることが望ましく、添加物14の種類や形状、二次粒子12の含有率及び研磨具10に要求される機械的性質などによって、最適の含有率が決定される。なお、本実施形態の研磨具10では、添加物14が含まれているが、研磨具として必要な特性が満たされていれば、必ずしも含まれなくとも良い。
また、二次粒子12及び添加物14は、一例としてカップリング処理(例えば、シラン系カップリング処理やチタネート系カップリング処理)などの表面改質(表面処理)がなされていても良い。これによって、結合材18との結合がより強固となり、フィラーとしての効果が期待できる。ここでは、二次粒子12や添加物14の種類、結合材18の材質及び目的とする改質内容(例えば、剛性の向上や、衝撃強さの向上など)によって、最適な処理の種類、処理の方法などが決定される。
基材16としては、通常はポリエチレンテレフタレート(通称PET)やポリイミドといった高分子フィルムが使用できるが、他に不織布、金属箔、強固で剛性のある金属、セラミックスなどを用いることができる。
結合材18としては、樹脂、セラミックス及び金属を用いることができる。なお、樹脂の場合には、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂だけでなく、光硬化性樹脂なども用いることができる。
次に本発明の研磨具の製造方法について簡単に説明する。
先ず、ゾル−ゲル法などによって微細な一次粒子を凝集し、30μmを超え、かつ300μm以下の範囲内の平均粒径を有する二次粒子を形成する(造粒工程)。そして、この二次粒子と添加物と結合材とをホモジナイザなどを用いて混練し、結合材中に二次粒子及び添加物が均一に分散した混練物を得る(混練工程)。次に、この混練物をワイヤバーコータを用いて基材上に塗布し、これを恒温槽などを用いて所定温度で所定時間加熱することによって結合材を固化させ、二次粒子及び添加物を基材上に固定する(固化工程)。これによって、基材上に二次粒子及び添加物が均一に分散して固定されている研磨具を製造することができる。
また、上記実施形態では、造粒工程において、一次粒子の平均粒径は5μm以下であることが望ましい。なお、市販の凝集粉末を利用する場合は、造粒工程を省略することが可能である。
なお、上記実施形態では、混練工程において、添加物が混練されているが、必ずしも必要なものではない。
さらに、上記実施形態では、ワイヤバーコータを用いて混練物を基材上に塗布しているが、これに限定されるものではなく、グラビアコータ、リバースロールコータ、ナイフコータなどを用いても良い。基材上に混練物を均一な厚さで塗布できれば良いからである。
さらに、上記実施形態では、混練工程に先立って、二次粒子及び添加物の表面に前述した表面改質処理を施しても良い。
次に、本発明の実施例について述べる。
[実施例1]
本実施例1では、一次粒子として平均粒径が50nmの超微細コロイダルシリカ粒子を、結合材としてウレタン樹脂N2301(日本ポリウレタン工業(株)製)を用いた。基材として厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートのフィルムを用いた。なお、本実施例1では、添加物は含まれていない。
超微細コロイダルシリカ粒子をゾル−ゲル法により凝集させ、内部に結合材などの介在物を含まない平均粒径が50μmのシリカの二次粒子を得た。すなわち、本実施例1では、先ず、所定の比率で超微細コロイダルシリカ粒子と、水とアルコールとからなる溶液とを混合し、加水分解によってゲル状にしてシリカ粒子を凝集させた。そして、シリカ粒子の凝集体が所望の大きさに達すると、凝集体を50℃〜65℃の恒温槽に入れて、凝集体に含まれる水分や有機溶媒などを蒸発させた。さらに、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて、凝集体の粒度分布を測定し、頻度積算値が50%のところの粒径(メジアン径)が50μmであることを確認した。このようにして、形成された凝集体を二次粒子とした。
そして、二次粒子とウレタン樹脂とをそれぞれ秤量し混合物とした。ここでは、この混合物中で二次粒子が35体積%を占めるように、それぞれの量を決定した。
次に、攪拌機を用いて、ウレタン樹脂中に二次粒子が均一に分散されるように前記混合物を混練し混練物とした。ここでは、室温で、二次粒子を破壊しない程度の回転数(例えば、50rpm)で、前記混合物を約10分間攪拌しながら混練した。
そして、ワイヤバーコータを用いて、ポリエチレンテレフタレートのフィルム上に前記混練物を均一な厚さで塗布した後、ウレタン樹脂の重合を促進するために、恒温槽を用いて80℃で3時間加熱し、研磨具を得た。この研磨具における研磨層の厚さは二次粒子の最大粒径とほぼ同一であった。
このようにして作成した研磨具をラップ加工機の定盤に取り付け、ラッピング仕上がりのシリコンウエハを加工した結果、15分間の加工時間で、加工面粗さが10nmRy以下の鏡面を得ることができた。また、引き続きシリコンウエハを50枚加工しても、結合材の表面から二次粒子は突き出しており、加工能率や加工面粗さの低下はほとんど認められなかった。なお、加工面粗さはテーラホプソン社製のフォムタリサーフS4Cを用いて測定した。
[実施例2]
本実施例2では、一次粒子として平均粒径が50nmの超微細ジルコニア粒子を、結合材としてウレタン樹脂N2301(日本ポリウレタン工業(株)製)を用いた。基材として厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートのフィルムを用いた。なお、本実施例2では、添加物は含まれていない。
超微細ジルコニア粒子をスプレードライヤ法により凝集させ、内部に結合材などの介在物を含まない平均粒径が50μmのジルコニアの二次粒子を得た。すなわち、本実施例2では、超微細ジルコニア粒子を水系バインダ(PVAなど)で泥しょう化し、スプレードライヤで噴霧させて、所望のサイズを有する凝集体を成形した。そして、その凝集体を電気炉を用いて400℃で1時間加熱し、水系バインダを蒸発させた。一般的に、スプレードライヤ法では、粒径が1μm〜300μmまでの凝集体が得られ、凝集体の粒度分布がシャープでないときは、ふるいを用いた分級プロセスを加えることもある。さらに、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて、凝集体の粒度分布を測定し、頻度積算値が50%のところの粒径(メジアン径)が50μmであることを確認した。このようにして、形成された凝集体を二次粒子とした。図2(A)は、この二次粒子を走査型電子顕微鏡で拡大したものであり、内部に水系バインダが蒸発して形成された細孔が見られる。また、図2(B)は、二次粒子の外観を顕微鏡で拡大したものであり、シャープな粒度分布を示している。
そして、二次粒子とウレタン樹脂とをそれぞれ秤量し混合物とした。ここでは、この混合物中で二次粒子が35体積%を占めるように、それぞれの量を決定した。
次に、攪拌機を用いて、ウレタン樹脂中に二次粒子が均一に分散されるように前記混合物を混練し、混練物とした。ここでは、室温で、二次粒子を破壊しない程度の回転数(例えば、50rpm)で、前記混合物を約10分間攪拌しながら混練した。
そして、ワイヤバーコータを用いて、ポリエチレンテレフタレートのフィルム上に前記混練物を均一な厚さで塗布した後、ウレタン樹脂の重合を促進するために、恒温槽を用いて80℃で3時間加熱し、研磨具を得た。この研磨具における研磨層の厚さは二次粒子の最大粒径とほぼ同一であった。
このようにして作成した研磨具をラップ加工機の定盤に取り付け、図3(A)に示されるように、面粗さが2μmRyのガラスディスク(BK7光学ガラスディスク)を加工した結果、3分間の加工時間で、図3(B)に示されるように、加工面粗さが30nmRy以下の鏡面を得ることができた。また、引き続きガラスディスクを30枚加工しても、加工能率や加工面粗さの低下はほとんど認められなかった。
[比較例1]
本比較例1では、一次粒子として平均粒径が50nmの超微細コロイダルシリカ粒子を、結合材としてウレタン樹脂N2301(日本ポリウレタン工業(株)製)を用いた。基材として厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートのフィルムを用いた。前述した実施例1と同じである。
超微細コロイダルシリカ粒子をゾル−ゲル法により凝集させ、内部に結合材などの介在物を含まない平均粒径が20μmのシリカの二次粒子を得た。前述した実施例1よりも平均粒径が小さい。
そして、二次粒子とウレタン樹脂とをそれぞれ秤量し混合物とした。ここでは、この混合物中で二次粒子が35体積%を占めるように、それぞれの量を決定した。
次に、攪拌機を用いて、ウレタン樹脂中に二次粒子が均一に分散されるように前記混合物を攪拌しながら混練し、混練物とした。
そして、ワイヤバーコータを用いて、ポリエチレンテレフタレートのフィルム上に前記混練物を均一な厚さで塗布した後、ウレタン樹脂の重合を促進するために、恒温槽を用いて80℃で3時間加熱し、研磨具を得た。この研磨具における研磨層の厚さは二次粒子の最大粒径とほぼ同じであった。すなわち、前述した実施例1との相違点は、二次粒子の平均粒径のみである。
このようにして作成した研磨具をラップ加工機の定盤に取り付け、ラッピング仕上がりのシリコンウエハを加工した結果、15分間の加工時間で、加工面粗さが10nmRy以下の鏡面を得ることができたが、引き続き加工を実施したところ、徐々に加工能率が低下し、加工枚数が20枚では、加工開始時と比べて、加工面粗さは同等であるものの、加工能率が30%低下した。
[比較例2]
本比較例2では、一次粒子として平均粒径が50nmの超微細ジルコニア粒子を、結合材としてウレタン樹脂N2301(日本ポリウレタン工業(株)製)を用いた。基材として厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートのフィルムを用いた。前述した実施例2と同じである。
超微細ジルコニア粒子をスプレードライヤ法により凝集させ、内部に結合材などの介在物を含まない平均粒径が15μmのジルコニアの二次粒子を得た。前述した実施例2よりも平均粒径が小さい。
そして、二次粒子とウレタン樹脂とをそれぞれ秤量し混合物とした。ここでは、この混合物中で二次粒子が35体積%を占めるように、それぞれの量を決定した。
次に、攪拌機を用いて、ウレタン樹脂中に二次粒子が均一に分散されるように前記混合物を攪拌しながら混練し、混練物とした。
そして、ワイヤバーコータを用いて、基材すなわちポリエチレンテレフタレートのフィルム上に前記混練物を均一な厚さで塗布した後、ウレタン樹脂の重合を促進するために、恒温槽を用いて80℃で3時間加熱し、研磨具を得た。この研磨具における研磨層の厚さは二次粒子の最大粒径とほぼ同じであった。すなわち、前述した実施例2との相違点は、二次粒子の平均粒径のみである。
このようにして作成した研磨具をラップ加工機の定盤に取り付け、面粗さが2μmRyのガラスディスク(BK7光学ガラスディスク)を加工した結果、10分間の加工時間で、加工面粗さが30nmRy以下の鏡面を得ることができたが、5枚を加工した段階で、研磨層がほとんど磨耗し、引き続き加工を行なうことが不可能となった。
以上、説明したように、上記実施例1の研磨具によると、一次粒子として平均粒径が50nmの超微細シリカ粒子を凝集させて作成した平均粒径が50μmの二次粒子を研磨材として、基材としてのポリエチレンテレフタレートのフィルム上に分散して固定しているため、二次粒子による加工能率の向上、及び一次粒子による加工面品位の向上を図ることができる。すなわち、加工能率の向上と加工面品位の向上とを同時に満足させることが可能となる。また、研磨材が単粒子の場合は、加工時に研磨材の大破砕が発生するため、研磨材の磨耗が急激に進行するが、研磨材が凝集体(二次粒子)の場合は、研磨材の磨耗が徐々に進行するため、研磨具の磨耗を抑制することができる。
また、上記実施例1の研磨具によると、図4(A)に示されるように、二次粒子の平均粒径が50μmであるために、二次粒子の平均粒径が20μmである上記比較例1の研磨具に比べて、二次粒子による削除量が大きく、効率的な研磨を行うことができる。さらに、上記実施例1の研磨具と上記比較例1の研磨具とでは、二次粒子の含有率が同じであるために、基材表面に露出している二次粒子同士の間隔は、上記実施例1の研磨具のほうが上記比較例1の研磨具よりも広くなる。これは、切り屑の排出が上記実施例1の研磨具のほうが円滑に行なわれることを示している。従って、上記実施例1の研磨具によると、加工能率に優れた研磨加工を行なうことが可能となる。
また、上記実施例2の研磨具によると、一次粒子として平均粒径が50nmの超微細ジルコニア粒子を凝集させて作成した平均粒径が50μmの二次粒子を研磨材として、基材としてのポリエチレンテレフタレートのフィルム上に分散して固定しているため、二次粒子による加工能率の向上、及び一次粒子による加工面品位の向上を図ることができる。すなわち、加工能率の向上と加工面品位の向上とを同時に満足させることが可能となる。
例えば、二次粒子の代わりに平均粒径が50μmのジルコニア単粒子を用いて作成した研磨具で、ガラスディスクを3分間研磨加工すると、一例として図5に示されるように、多数のスクラッチが発生し、加工面粗さは、加工前の2μmRyから激しく劣化し、4.3μmRyとなった。
さらに、上記実施例2の研磨具によると、図4(B)に示されるように、二次粒子の平均粒径が50μmであるために、二次粒子の平均粒径が15μmである上記比較例2の研磨具に比べて、研磨加工時に二次粒子が常に結合材表面よりも突き出た状態が維持される。また、結合材表面に露出している二次粒子同士の間隔は、上記実施例2の研磨具のほうが上記比較例2の研磨具よりも広くなり、切り屑の排出が良好である。従って、上記実施例2の研磨具によると、加工能率に優れた研磨加工を行なうことができる。
なお、上記各実施例では、結合材としてウレタン樹脂N2301(日本ポリウレタン工業(株)製)を用いたが、ウレタン樹脂N2304(日本ポリウレタン工業(株)製)であってもほぼ同様な結果を得ることができた。
また、上記各実施例によると、二次粒子は、その内部に結合材などの介在物を含まないために、介在物に起因する切り屑の付着を防止することができ、二次粒子の加工能力を維持することが可能となる。そして、結果として、研磨加工の安定性を向上することができる。
なお、上記各実施例において、一次粒子の平均粒径が5μm以下であれば、同様に優れた加工面を能率良く得ることができる。但し、一次粒子の平均粒径が5μmを超えると、その加工面にスクラッチが発生し、加工面品位を低下させる頻度が高くなる。
また、上記各実施例において、二次粒子についても、平均粒径が30μmを超え、かつ300μm以下であれば、同様に優れた加工面品位を高い加工能率で得ることができる。但し、二次粒子の平均粒径が30μm以下の場合は、加工時に工具が加工面上を上滑りしたり、結合材と加工面が直接接触して加工抵抗が急増するなどにより、図6に示されるように、加工面粗さが急激に大きくなる傾向にある。一方、二次粒子の平均粒径が300μmを超えると、その加工面にスクラッチが発生する頻度が高くなり、図6に示されるように、加工面粗さが大きくなる傾向にある。そこで、図6に示されるように、二次粒子の平均粒径が40〜100μmの範囲内にあれば、より確実に優れた加工面品位を高い加工能率で得ることができる。
また、上記各実施例において、二次粒子の含有率は、研磨層の5〜90体積%の範囲内であれば、同様に優れた加工面品位を能率良く得ることができる。しかしながら、二次粒子の含有率が研磨層の5体積%未満であれば、二次粒子(研磨材)が少ないために加工能率が著しく低下し、一方、90体積%を超えると、結合材の量が少ないために研磨具の剛性が低下し、研磨具の変形や破断などを引き起こす頻度が高くなるとともに、二次粒子を固定する強度が著しく低下する。
なお、上記各実施例では、添加物は含有されていないが、更に添加物を添加することにより、研磨具の基材が1種類の材料のみからなる場合であっても、研磨具の機械的性質を所定の値に調整することができ、研磨具として必要な耐磨耗性などを有することができる。しかも、耐熱性も向上させることができる。また、添加物を含むことにより二次粒子の分散状態が更に均一化し、結合材表面に露出している二次粒子同士の間隔を適正に保つことができ、いわゆる二次粒子の突き出しが確保される。
なお、添加物の形状が粉末の場合は平均粒径が0.3〜300μmの範囲内であれば、上述と同様な効果を得ることができる。しかしながら、粉末の平均粒径が0.3μm未満であると、上述した添加の効果が小さく、平均粒径が300μmを超えると加工面にスクラッチを生じる頻度が高くなる。
また、添加物の形状が繊維の場合は平均短径が0.1〜15μm、平均長径が0.3〜300μmの範囲内であれば、前述と同様な効果を得ることができる。しかしながら、繊維の平均短径が0.1μm未満であると、前述した添加の効果が小さく、平均短径が15μmを超えると加工面にスクラッチを生じる頻度が高くなる。同様に、平均長径が0.3μm未満であると、前述した添加の効果が小さく、平均長径が300μmを超えると加工面にスクラッチを生じる頻度が高くなる。なお、繊維の場合には、添加量が同じであっても、粉末に比べて高い硬度を研磨具に賦与することができる。
さらに、添加物の含有率が研磨層の5〜80体積%の範囲内であれば、前述と同様な効果を得ることができる。しかしながら、添加物の含有率が、研磨層の5体積%未満であると、前述した添加の効果が少なく、80体積%を超えると、結合材の量が少なくなり、研磨具の剛性が低下し、研磨具の変形や破断などを引き起こす頻度が高くなるとともに、二次粒子を固定する強度が著しく低下する。
以上説明したように、本発明の研磨具によれば、安定した鏡面加工を能率良く行なうのに適している。また、本発明の研磨具の製造方法によれば、安定した鏡面加工を能率良く行なうことができる研磨具を製造するのに適している。
10…研磨具、11…一次粒子、12…二次粒子、14…添加物、16…基材、18…結合材。
特公昭60−3557号公報 特開平2−180561号公報 特開平7−164324号公報 特開平8−155840号公報 特表平9−504235号公報 特開2000−198073号公報 特開2000−237962号公報

Claims (14)

  1. 微細な一次粒子を凝集して形成された平均粒径が30μmを超え、かつ300μm以下の範囲内の複数の二次粒子が研磨材として結合材で基材上に固定され、前記複数の二次粒子の一部は前記結合材の表面から露出していることを特徴とする研磨具。
  2. 前記二次粒子の平均粒径が40〜100μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の研磨具。
  3. 前記一次粒子の平均粒径が5μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨具。
  4. 前記結合材と前記二次粒子との全体の体積に対する前記二次粒子の含有率が、5〜90体積%の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨具。
  5. 前記二次粒子は、その内部に結合材を含まないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の研磨具。
  6. 前記基材上に、更に金属、無機物及び有機物の少なくとも一つが添加物として固定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の研磨具。
  7. 前記添加物は、粉末及び繊維の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項6に記載の研磨具。
  8. 前記添加物は粉末を含み、該粉末の平均粒径が0.3〜300μmの範囲内にあることを特徴とする請求項7に記載の研磨具。
  9. 前記添加物は繊維を含み、該繊維の短径が0.1〜15μm、長径が0.3〜300μmの範囲内にそれぞれあることを特徴とする請求項7に記載の研磨具。
  10. 前記結合材と前記二次粒子と前記添加物との全体の体積に対する前記添加物の含有率が、5〜80体積%の範囲内にあることを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載の研磨具。
  11. 前記結合材は、樹脂、セラミックス及び金属の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の研磨具。
  12. 基材上に研磨材が固定されている研磨具の製造方法であって、
    微細な一次粒子を凝集して形成された平均粒径が30μmを超え、かつ300μm以下の範囲内の複数の二次粒子からなる前記研磨材と結合材とを混練し、混練物とする混練工程と;
    前記混練物を、前記複数の二次粒子の一部が前記結合材の表面から露出する状態で、基材上に塗布する塗布工程と;
    基材上に塗布された前記混練物を固化する固化工程と;を含む研磨具の製造方法。
  13. 前記混練工程では、金属、無機物及び有機物の少なくとも一つが更に混練されることを特徴とする請求項12に記載の研磨具の製造方法。
  14. 前記混練工程に先立って、微細な一次粒子を凝集して平均粒径が30μmを超え、かつ300μm以下の範囲内の二次粒子を形成する造粒工程を更に含むことを特徴とする請求項12又は13に記載の研磨具の製造方法。
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