JP2004017165A - 研磨具、研磨具製造装置及び研磨具製造方法 - Google Patents

研磨具、研磨具製造装置及び研磨具製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は硬脆材料や金属材料の仕上げ加工を高品位かつ高能率で行うとともに、長寿命の研磨具、研磨具製造装置及び研磨具製造方法を提供する。
【解決手段】研磨工具製造装置1は、超微細な一次粒子が部分的に、かつ、空隙を有して相互に結合する顆粒からなる砥粒13が、基材11上にバインダ12で固定されて研磨層を形成している研磨フィルム10を製造するに際して、バインダ12を基材11上に塗布する塗布機構部3と、砥粒13をバインダ12の上から振りまいてバインダ12に砥粒13を固着させて研磨層を形成する散布機構部4と、を設けている。したがって、砥粒13を確実に基材11上に固定することができるとともに、砥粒13のバインダ12からの突き出し量も確実に確保することができ、長い工具寿命を有する研磨フィルム10を製造できる。
【選択図】     図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、研磨具、研磨具製造装置及び研磨具製造方法に関し、詳細には、シリコン、ガラス等の硬脆材料や鉄鋼、アルミニウム等の金属材料の仕上げ加工を高品位にかつ高能率で行うとともに、長寿命化した研磨具、研磨具製造装置及び研磨具製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からシリコンウェーハやガラスディスクをはじめとして、各種硬脆材料や金属材料からなる部品の最終仕上げには、研磨剤スラリーを用いた研磨加工が行われている。この研磨加工法は、微細な砥粒を使用しやすいため、優れた仕上げ面粗さを容易に得ることができ、また、大量の研磨剤スラリーを使用することで、安定した加工特性を維持することができ、多くの加工現場で用いられてきている。
【0003】
ところが、研磨加工においては、大量の研磨剤スラリーを必要とするとともに、大量の廃液を排出するため、環境への負荷が極めて高く、また、加工能率の向上にも限界がある。
【0004】
そこで、従来から研磨加工仕上げ相当の優れた仕上げ面粗さを得ることのできる固定砥粒加工工具の開発が各方面で活発に行われている。
【0005】
そして、砥粒加工において良好な加工面粗さを得るためには、通常、微細な砥粒を使用することが有利であり、固定砥粒加工工具においても、同様である。
【0006】
しかし、鏡面という優れた加工面を得るために、固定砥粒加工工具において粒径数μm以下の砥粒を使用すると、加工時に砥粒結合材と工作物との接触が生じやすく、加工抵抗の急増、砥粒の脱落等が生じ、最悪の場合には、加工不可の状態に陥ってしまう。また、砥粒結合材と工作物との接触を抑制するような手段を用いた場合にも、砥粒径が小さいため、加工能率が低下するという問題があった。
【0007】
そこで、本出願人は、先に、微細な砥粒の一次粒子が凝集した凝集体からなる砥粒工具であって、使用時に該凝集体が破壊又は変形して、該凝集体表面が平滑となる固定砥粒加工工具を提案している(特開2000−190228号公報参照)。
【0008】
すなわち、この従来技術は、微細砥粒が適度な結合力で凝集した粉末を砥粒に用いることで、工具表面の凹凸を大きくし、工作物と砥粒工具接触部との押圧を高めて、加工能率を向上させるとともに、工具表面に大きなチップポケットを形成して、砥石目詰まりといった現象の発生を抑制しようとしている。
【0009】
また、本出願人は、先に、0.5μm以下のサイズの1次粒子を、バインダー樹脂を含まぬように2次凝集させることにより形成された平均粒径が1から30μmの範囲の造粒粒子を、研磨材として、基材上にバインダー樹脂で固定化してなる鏡面加工用研磨具を提案している(特開2000−237962号公報参照)。
【0010】
すなわち、この従来技術は、初期研磨で高い研磨レートを獲得するとともに、平坦化された造粒粒子に仕上げ加工を作用させて、短時間で鏡面加工を行えるようにしている。
【0011】
そして、これらの従来技術においては、研磨フィルムの作成方法として、ワイヤバーコータ、グラビアコータ、リバースロールコータあるいはナイフコータ等で、砥粒とバインダを混合あるいは混練してから基材に塗布(コーティング)する方法が用いられている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来技術にあっては、研磨フィルムの作成方法として、ワイヤバーコータ、グラビアコータ、リバースロールコータあるいはナイフコータ等で砥粒とバインダを混合あるいは混練してから基材に塗布する方法が用いられている。
【0013】
ところが、砥粒とバインダの混合において、砥粒の材料として、通常、無機粉末、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、SiC、cBN、ダイヤモンド等が採用されており、これらの材料は、密度が高く、特に、大粒径の砥粒はバインダに分散するときに沈殿してしまうという問題がある。
【0014】
これを解決するために、バインダの粘度を高めると、逆に、砥粒の分散ができなくなる恐れが生じてくる。
【0015】
また、基材の上に塗布するときに、塗布液の粘度が低いと、砥粒を固定するバインダが少なくなって、砥粒を完全に固定できなくなり、研磨加工時に砥粒の脱落が大量に発生して、加工物の表面にスクラッチをもたらすこととなる。逆に、塗布液の粘度を高めると、砥粒の突き出し量が少なくなり、工具としての加工寿命が短くなって、コストが高くなるというおそれがあった。また、基材上に塗布する際に、最悪の場合、バインダが砥粒を全部覆うこととなり、いわゆるオーバーコートが生じてしまい、工具として成り立たなくなる。
【0016】
このように、従来の塗布方法にあっては、砥粒を確実に基材上に固定し、なおかつバインダから突き出し量を保証する上で、改良の必要があった。
【0017】
そこで、本発明は、基材の上に予めバインダを塗布し、形成されたバインダ層の上から砥粒を振りまくことで、砥粒を確実に基材上に固定し、かつ、バインダから突き出し量を確実に調整することのできる研磨具、研磨具製造装置及び研磨具製造方法を提供することを目的としている。
【0018】
具体的には、請求項1記載の発明は、超微細な一次粒子が部分的に、かつ、空隙を有して相互に結合する顆粒からなる砥粒を、基材上にバインダで固定して研磨層を形成させることにより、研磨加工時に、砥粒が常に結合材であるバインダよりも突き出した状態を維持させて、砥粒が常に自生発刃を維持する状態とし、切り屑の除去を適切に行うとともに、安定的にかつ能率良く優れた加工面品位に工作物を仕上げることのできる研磨具を提供することを目的としている。
【0019】
請求項2記載の発明は、バインダの厚みを、砥粒の平均粒径よりも小さくすることにより、研磨加工時に、砥粒が常に結合材であるバインダよりも突き出した状態をより適切に維持させ、より一層確実にかつ安定的に、工作物を高能率、高精度に仕上げ加工することができるとともに、長寿命の研磨具を提供することを目的としている。
【0020】
請求項3記載の発明は、超微細な一次粒子が部分的に、かつ、空隙を有して相互に結合する顆粒からなる砥粒が、基材上にバインダで固定されて研磨層を形成している研磨具を製造するに際して、バインダを基材上に塗布する塗布手段と、砥粒をバインダの上から振りまいて当該バインダに砥粒を固着させて研磨層を形成する砥粒散布手段と、を設けることにより、砥粒を確実に基材上に固定するとともに、砥粒のバインダからの突き出し量も確実に確保し、長い工具寿命を有する研磨具を製造する研磨具製造装置を提供することを目的としている。
【0021】
請求項4記載の発明は、超微細な一次粒子が部分的に、かつ、空隙を有して相互に結合する顆粒からなる砥粒が、基材上にバインダで固定されて研磨層を形成している研磨具を製造するに際して、バインダを基材上に塗布する塗布行程と、砥粒をバインダの上から振りまいて当該バインダに砥粒を固着させて研磨層を形成する砥粒散布行程と、研磨層を基材上に固形化させる固形化行程と、を行うことにより、砥粒を確実に基材上に固定するとともに、長い工具寿命を有する研磨具を製造する研磨具製造方法を提供することを目的としている。
【0022】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明の研磨具は、超微細な一次粒子が部分的に、かつ、空隙を有して相互に結合する顆粒からなる砥粒が、基材上にバインダで固定されて研磨層を形成していることにより、上記目的を達成している。
【0023】
上記構成によれば、超微細な一次粒子が部分的に、かつ、空隙を有して相互に結合する顆粒からなる砥粒を、基材上にバインダで固定されて研磨層を形成させているので、研磨加工時に、砥粒が常に結合材であるバインダよりも突き出した状態を維持させて、砥粒が常に自生発刃を維持する状態とすることができ、切り屑の除去を適切に行うことができるとともに、安定的にかつ能率良く優れた加工面品位に工作物を仕上げることができる。
【0024】
この場合、例えば、請求項2に記載するように、前記バインダは、その厚みが前記砥粒の平均粒径よりも小さいものであってもよい。
【0025】
上記構成によれば、バインダの厚みを、砥粒の平均粒径よりも小さくしているので、研磨加工時に、砥粒が常に結合材であるバインダよりも突き出した状態をより適切に維持させることができ、より一層確実にかつ安定的に、工作物を高能率、高精度に仕上げ加工することができるとともに、長寿命化することができる。
【0026】
請求項3記載の発明の研磨具製造装置は、超微細な一次粒子が部分的に、かつ、空隙を有して相互に結合する顆粒からなる砥粒が、基材上にバインダで固定されて研磨層を形成している研磨具を製造する研磨具製造装置であって、前記バインダを前記基材上に塗布する塗布手段と、前記砥粒を前記バインダの上から振りまいて当該バインダに前記砥粒を固着させて前記研磨層を形成する砥粒散布手段と、を備えることにより、上記目的を達成している。
【0027】
上記構成によれば、超微細な一次粒子が部分的に、かつ、空隙を有して相互に結合する顆粒からなる砥粒が、基材上にバインダで固定されて研磨層を形成している研磨具を製造するに際して、バインダを基材上に塗布する塗布手段と、砥粒をバインダの上から振りまいて当該バインダに砥粒を固着させて研磨層を形成する砥粒散布手段と、を設けているので、砥粒を確実に基材上に固定することができるとともに、砥粒のバインダからの突き出し量も確実に確保することができ、長い工具寿命を有する研磨具を製造することができる。
【0028】
請求項4記載の発明の研磨具製造方法は、超微細な一次粒子が部分的に、かつ、空隙を有して相互に結合する顆粒からなる砥粒が、基材上にバインダで固定されて研磨層を形成している研磨具を製造する研磨具製造方法であって、前記バインダを前記基材上に塗布する塗布行程と、前記砥粒を前記バインダの上から振りまいて当該バインダに前記砥粒を固着させて前記研磨層を形成する砥粒散布行程と、前記研磨層を前記基材上に固形化させる固形化行程と、を行うことにより、上記目的を達成している。
【0029】
上記構成によれば、超微細な一次粒子が部分的に、かつ、空隙を有して相互に結合する顆粒からなる砥粒が、基材上にバインダで固定されて研磨層を形成している研磨具を製造するに際して、バインダを基材上に塗布する塗布行程と、砥粒をバインダの上から振りまいて当該バインダに砥粒を固着させて研磨層を形成する砥粒散布行程と、研磨層を基材上に固形化させる固形化行程と、を行うので、砥粒を確実に基材上に固定することができるとともに、長い工具寿命を有する研磨具を製造することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0031】
図1は、本発明の研磨具、研磨具製造装置及び研磨具製造方法の一実施の形態を適用した研磨工具製造装置1の概略構成斜視図である。
【0032】
図1において、研磨工具製造装置1は、テーブル2、塗布機構部3及び散布機構部4等を備えており、テーブル2上に、研磨工具として製造される研磨フィルム10の基材11が載置される。
【0033】
研磨工具製造装置1は、テーブル2上に基材11が載置されると、塗布機構部(塗布手段)3により、基材11上にバインダ12を塗布し、このバインダ12上に、散布機構部(砥粒散布手段)4により砥粒13を散布する。
【0034】
この砥流13としては、例えば、研磨フィルム10を用いて加工する加工対象物にもよるが、一般には、硬質無機材料であって、平均粒径が5μm以下の一次粒子の微細粉末が凝集して、平均粒径10〜300μm程度、好ましくは、平均粒径40〜100μm程度の二次粒子径を有するものを用いる。
【0035】
砥粒13の材料は、例えば、シリカ、セリア、ダイヤモンド、cBN、アルミナ、炭化珪素、酸化ジルコニウム等を用いることができ、凝集体は、ゾルゲル法、スプレードライヤー等の手段で作成することができる。
【0036】
散布機構部4は、テーブル2の基材11の載置される位置の上に配設されており、基材11上のバインダ12の塗布された面に砥流13を振りまくことで、バインダ12上に砥流13を散布する砥流散布行程処理を行う。
【0037】
また、バインダ12は、その厚さが、散布する砥流13の平均粒径よりも小さく、好ましくは、砥流13の平均粒径の60%以下に形成する。
【0038】
塗布機構部3としては、例えば、ワイヤバーコータ、グラビアコータ、ナイフコータ等を用いることができ、基材11上にバインダ12を塗布する塗布行程処理を行う。
【0039】
このようにして、基材11上にバインダ12を塗布し、バインダ12に砥粒13を散布した基材11を、例えば、恒温槽で、60℃程度で、1時間程度乾燥させる固形化行程処理を行って、研磨フィルム10とする。
【0040】
このように、本実施の形態の研磨工具製造装置1は、超微細な一次粒子が部分的に、かつ、空隙を有して相互に結合する顆粒からなる砥粒13が、基材11上にバインダ12で固定されて研磨層を形成している研磨フィルム10を製造するに際して、バインダ12を基材11上に塗布する塗布機構部3と、砥粒13をバインダ12の上から振りまいてバインダ12に砥粒13を固着させて研磨層を形成する散布機構部4と、を設けている。
【0041】
したがって、砥粒13を確実に基材11上に固定することができるとともに、砥粒13のバインダ12からの突き出し量も確実に確保することができ、長い工具寿命を有する研磨フィルム10を製造することができる。
【0042】
このようにして製造された研磨具である研磨フィルム10は、超微細な一次粒子が部分的に、かつ、空隙を有して相互に結合する顆粒からなる砥粒13を、基材11上にバインダ12で固定されて研磨層が形成されている。
【0043】
したがって、研磨加工時に、砥粒13が常に結合材であるバインダ12よりも突き出した状態を維持させて、砥粒13が常に自生発刃を維持する状態とすることができ、切り屑の除去を適切に行うことができるとともに、安定的にかつ能率良く優れた加工面品位に工作物を仕上げることができる。
【0044】
また、本実施の形態の研磨フィルム10は、バインダ12の厚みを、砥粒13の平均粒径よりも小さくしている。
【0045】
したがって、研磨加工時に、砥粒13が常に結合材であるバインダ12よりも突き出した状態をより適切に維持させることができ、より一層確実にかつ安定的に、工作物を高能率、高精度に仕上げ加工することができるとともに、長寿命化することができる。
【0046】
【実施例】
〈実施例〉
上記研磨工具製造装置1を使用して、以下のように、研磨フィルムを製造した。
【0047】
まず、以下のようにして、砥粒を製造する。すなわち、50〜60nmの超微細ZrO粉末(超微細粒子)を、水あるいは水系バインダ(PVAなど)で泥しょう化し、スプレードライヤーで噴霧させて、所望のサイズ、例えば、平均粒径で50μmを有する2次粒子(顆粒)を作成した。
【0048】
なお、この2次粒子では、一般的に、1μm〜300μmまでのサイズを得ることができ、粒度分布がシャープでないときには、ふるいを用いて、分級プロセスを加える。
【0049】
そして、上記2次粒子を作成するために、東ソー製の平均粒径50μmのZrO顆粒を用い、平均粒径は、堀場製作所製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置 LA−920を用いて、乾式で測定を行った。
【0050】
また、平均粒径の値は、頻度積算50%のところの粒径を用いた(通常、メジアン径ともいう。)。
【0051】
さらに、スプレードライヤーで作製した顆粒の1次粒子同士の結合力は、通常、弱すぎる場合もあるため、必要に応じて、ZrO顆粒を電気炉の中に入れ、焼成を行った。このとき、焼成時間を短縮するために、あるいは、硬さをさらに高めるために、燒成時に、加圧した状態で行ってもよい。
【0052】
次に、研磨工具製造装置1のテーブル2上に基材(例えば、厚さ約75μmのPETフィルム(東レ製ルミラー75T))を載置して、塗布機構部3としてワイヤーバーコータ(テスター産業製PI−1210)を用いて、バインダを塗布した。
【0053】
このバインダとしては、液状のウレタン樹脂(例えば、日本ポリウレタン工業(株)製 ニッポラン2301あるいは2304)にメチルエチルケトンを加え、溶液粘度を調整したものを用い、その膜厚を、ZrO平均粒径50μmに対して、約30μmに調整した。
【0054】
塗布方法については、ワイヤバーコータ以外にグラビアコータやリバースロールコータ、ナイフコータ等を用いてもよい。
【0055】
そして、形成されたウレタン樹脂膜のバインダが乾かないうちに、バインダの膜の上の散布機構部4のノズルから上記ZrO砥粒を噴射させ、ウレタン樹脂膜であるバインダにばらまいた。この砥粒の突き出し量の制御は、バインダであるウレタン樹脂の粘度及び砥粒の落下速度を考慮して調整した。また、砥粒率の調整は、単位時間内の砥粒噴射量と砥粒の噴射時間を制御することにより行った。
【0056】
最後に、砥粒を振り撒いた後に、恒温槽(Yamato科学製)に基材とともに入れ、60℃程度で1時間程度乾燥を施し、図2に示す研磨フィルム20を作製した。
【0057】
図2において、21は、基材であり、基材21上に上記ウレタン樹脂膜のバインダ22が形成されており、バインダ22に埋め込まれた状態で、砥流23が固定されている。
【0058】
上述のようにして作製した研磨フィルム20をラップ定盤に取り付け、面粗さ2μmRyに調整したBK7光学ガラスディスクを、定盤回転数60rpm、加工圧力46kPaの加工条件で加工したところ、2分間でスクラッチフリー、かつ、30nmRy以下の鏡面を得ることができた。
【0059】
この面粗さの評価は、テーラホプソン社製フォームタリサーフS4Cで行った。
【0060】
また、引き続きガラスディスクを20枚加工を行ったところ、加工能率や加工面粗さの低下はほとんど見られなかった。
【0061】
そして、さらに加工を連続して行うと、図3に示すように、加工が進行するに伴って、研磨フィルム20の研磨面の磨耗が徐々に進むが、砥粒23のバインダ12面からの突き出し量が多いため、砥粒全体としてより長く使用することができた。また、砥粒(2次粒子)23における大きな破損や基材21からの脱落は、認められなかった。
【0062】
〈比較例〉
比較例として、上記実施例と同様のZrO顆粒(2次粒子;35体積%)を砥流として用い、液状のウレタン樹脂(例えば、日本ポリウレタン工業(株)製ニッポラン2301あるいは2304)に混入し、さらに、メチルエチルケトンを加え、溶液粘度を調整した後、撹拌機を用いて10分間程度混合攪拌する。撹拌条件としては、室温で、回転数は、50rpmを採用した。そして、混合溶液を基材上(例えば、厚さ約75μmのPETフィルム(東レ製ルミラー75T))にワイヤバーコータ(テスター産業製PI−1210)を用いて塗布し、その後、恒温槽(Yamato科学製)内で60℃程度で1時間程度乾燥を施し、図4に示すような研磨フィルム30を作成した。
【0063】
図3において、31は、基材であり、基材31上に上記ウレタン樹脂膜のバインダ32が形成されており、バインダ32に埋め込まれた状態で、砥流33が固定されている。
【0064】
バインダの塗布方法については、ワイヤバーコータ以外にグラビアコータやリバースロールコータ、ナイフコータ等を用いてもよい。
【0065】
このように作成した研磨フィルム30をラップ定盤に取り付け、面粗さ2μmRyに調整したBK7光学ガラスディスクを、定盤回転数60rpm、加工圧力46kPaの加工条件で加工したところ、2分間でスクラッチフリー、かつ、30nmRy以下の鏡面を得ることができた。
【0066】
この面粗さの評価は、テーラホプソン社製フォームタリサーフS4Cで行った。
【0067】
また、加工枚数5枚では、開始時に比べて、加工面粗さは同等であったが、加工能率が30%ほど低下してしまった。そして10枚目以降は、加工がほとんどできなくなった。
【0068】
そのときのフィルム表面は、図5で示すように、砥粒33の突き出し量がほとんどなくなった。
【0069】
なお、一次粒子である砥粒の種類、造粒凝集方法、添加物の種類、研磨具結合材の種類、加工工具の形状は、上記実施の形態及び実施例の説明で用いたものに限るものではない。
【0070】
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0071】
【発明の効果】
請求項1記載の発明の研磨具によれば、超微細な一次粒子が部分的に、かつ、空隙を有して相互に結合する顆粒からなる砥粒を、基材上にバインダで固定されて研磨層を形成させているので、研磨加工時に、砥粒が常に結合材であるバインダよりも突き出した状態を維持させて、砥粒が常に自生発刃を維持する状態とすることができ、切り屑の除去を適切に行うことができるとともに、安定的にかつ能率良く優れた加工面品位に工作物を仕上げることができる。
【0072】
請求項2記載の発明の研磨具によれば、バインダの厚みを、砥粒の平均粒径よりも小さくしているので、研磨加工時に、砥粒が常に結合材であるバインダよりも突き出した状態をより適切に維持させることができ、より一層確実にかつ安定的に、工作物を高能率、高精度に仕上げ加工することができるとともに、長寿命化することができる。
【0073】
請求項3記載の発明の研磨具製造装置によれば、超微細な一次粒子が部分的に、かつ、空隙を有して相互に結合する顆粒からなる砥粒が、基材上にバインダで固定されて研磨層を形成している研磨具を製造するに際して、バインダを基材上に塗布する塗布手段と、砥粒をバインダの上から振りまいて当該バインダに砥粒を固着させて研磨層を形成する砥粒散布手段と、を設けているので、砥粒を確実に基材上に固定することができるとともに、砥粒のバインダからの突き出し量も確実に確保することができ、長い工具寿命を有する研磨具を製造することができる。
【0074】
請求項4記載の発明の研磨具製造方法によれば、超微細な一次粒子が部分的に、かつ、空隙を有して相互に結合する顆粒からなる砥粒が、基材上にバインダで固定されて研磨層を形成している研磨具を製造するに際して、バインダを基材上に塗布する塗布行程と、砥粒をバインダの上から振りまいて当該バインダに砥粒を固着させて研磨層を形成する砥粒散布行程と、研磨層を基材上に固形化させる固形化行程と、を行うので、砥粒を確実に基材上に固定することができるとともに、長い工具寿命を有する研磨具を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の研磨具、研磨具製造装置及び研磨具製造方法の一実施の形態を適用した研磨具製造装置の概略斜視図。
【図2】本発明の研磨具、研磨具製造装置及び研磨具製造方法の実施例で製造した研磨フィルムの正面拡大断面図。
【図3】図2の研磨フィルムでの加工が進行したときの研磨フィルムの正面拡大断面図。
【図4】本発明の研磨具、研磨具製造装置及び研磨具製造方法の比較例で製造した研磨フィルムの正面拡大断面図。
【図5】図4の研磨フィルムでの加工が進行したときの研磨フィルムの正面拡大断面図。
【符号の説明】
1 研磨工具製造装置
2 テーブル
3 塗布機構部
4 散布機構部
10 研磨フィルム
11 基材
12 バインダ
13 砥粒
21 基材
22 バインダ
23 砥流
31 基材
32 バインダ
33 砥流

Claims (4)

  1. 超微細な一次粒子が部分的に、かつ、空隙を有して相互に結合する顆粒からなる砥粒が、基材上にバインダで固定されて研磨層を形成していることを特徴とする研磨具。
  2. 前記バインダは、その厚みが前記砥粒の平均粒径よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の研磨具。
  3. 超微細な一次粒子が部分的に、かつ、空隙を有して相互に結合する顆粒からなる砥粒が、基材上にバインダで固定されて研磨層を形成している研磨具を製造する研磨具製造装置であって、前記バインダを前記基材上に塗布する塗布手段と、前記砥粒を前記バインダの上から振りまいて当該バインダに前記砥粒を固着させて前記研磨層を形成する砥粒散布手段と、を備えていることを特徴とする研磨具製造装置。
  4. 超微細な一次粒子が部分的に、かつ、空隙を有して相互に結合する顆粒からなる砥粒が、基材上にバインダで固定されて研磨層を形成している研磨具を製造する研磨具製造方法であって、前記バインダを前記基材上に塗布する塗布行程と、前記砥粒を前記バインダの上から振りまいて当該バインダに前記砥粒を固着させて前記研磨層を形成する砥粒散布行程と、前記研磨層を前記基材上に固形化させる固形化行程と、を行うことを特徴とする研磨具製造方法。
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