JP2009292777A - パーフルオロ炭化水素基導入方法 - Google Patents

パーフルオロ炭化水素基導入方法 Download PDF

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Abstract

【課題】温和な条件下で、無保護のフェノール類等の芳香環上にパーフルオロ炭化水素基を直接に導入することができる高収率な方法を提供する。
【解決手段】水酸基、チオール基又はそれらの誘導体基が結合した芳香環を有する芳香族化合物(A)と、パーフルオロ炭化水素基を有するパーフルオロ炭化水素基供与体(B)とを弱塩基の存在下に反応させることにより、前記パーフルオロ炭化水素基を芳香族化合物(A)の前記芳香環上へ直接に導入する、パーフルオロ炭化水素基導入方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、パーフルオロ炭化水素基をフェノール類等の芳香環上に直接に導入するパーフルオロ炭化水素基導入方法に関する。
パーフルオロ炭化水素基を有する化合物群、とりわけパーフルオロアルキル基を有する化合物群は、界面活性剤、潤滑油、農薬、医薬品、防汚剤、離型剤、種々の含フッ素ポリマーの製造原料等の成分としての有用性を認められており、フルオラスケミストリーを基点とする有用な化合物群として、有機合成反応にも頻繁に用いられている。
更に最近では、有機化合物群から含フッ素化合物を分離する技術の提案も増えてきている。遷移金属触媒反応の分野では、含フッ素芳香族化合物は種々の触媒を設計する上での有用なリガンドであると認識されている。これらの触媒がフッ素親和性を持つと、反応物質群と触媒とをフッ素親和性に依存して極めて効率的に分離精製する技術が可能となる。従って、例えば近年注目されているメタセシス触媒のリサイクル化等にも有効に利用できる。
そして、パーフルオロアルキル基を芳香族化合物に高効率かつ容易に導入できる方法が開発されれば、上記のような技術に対して重要な研究手段を提供することができる。とりわけ、標的分子に対するパーフルオロアルキル基の直接導入法は、フッ素化された芳香族化合物を合成するための最も有力な手段である。
従来、種々のパーフルオロアルキル化反応が報告されているが、意外にも、芳香環上のC−H結合部位への直接的なパーフルオロアルキル化反応はほとんど報告されていない。この点に関連する公知文献としては、例えば以下のものを挙げることができる。
Anna Bravo ら、"New Methods of Free-RadicalPerfluoroalkylation of Aromatics and Alkenes. Absolute Rate Constants and Partial Rate Factors for the HomolyticAromatic Substitution by n-Perfluorobutyl Radical", J. Org. Chem. 1997, 62,7128-7136 。 上記非特許文献1には、1)触媒量の Cu(II) もしくは Fe(III) 存在下でベンゾイルパーオキシドを用いる方法、2)触媒量のFe(III) 存在下でt-ブチルヒドロパーオキシドを用いる方法、3)アセトン中、過酸化水素を用いる方法、4)DMSO中、過酸化水素とFe(II) を用いる方法、によりパーフルオロアルキルラジカル種を生成させる方法が記載されている。しかし、1)及び2)では116℃の高温条件が必要であり、位置選択的なパーフルオロアルキル基の導入は不可能である。また、3)及び4)では56℃ 以下で反応を行えるが、上述の1)、2) の条件と同様に位置選択的なパーフルオロアルキル基の導入は不可能である。
Marc Tordeux ら、"Reactions of Trifluoromethyl Bromide andRelated Halides: Panion Precursors", J. CHEM. SOC. PERKIN TRANS.1 1990, 2293-2299。 上記非特許文献2には、次亜硫酸ナトリウムもしくは二酸化硫黄及び亜鉛の存在下でパーフルオロアルキルラジカル種を生成させる方法が記載されている。しかし、この方法では、パーフルオロアルキル化の収率が総じて低い(フェノールを基質として用いた場合の収率は、28〜30%、3-クロロフェノールでは48%である)。
そこで本発明は、温和な条件下で、無保護のフェノール類等の芳香環上にパーフルオロ炭化水素基を直接に導入することができる高収率な方法を提供することを、解決すべき技術的課題とする。
(第1発明)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、水酸基、チオール基又はそれらの誘導体基が結合した芳香環を有する芳香族化合物(A)と、パーフルオロ炭化水素基を有するパーフルオロ炭化水素基供与体(B)とを弱塩基の存在下に反応させることにより、前記パーフルオロ炭化水素基を芳香族化合物(A)の前記芳香環上へ直接に導入する、パーフルオロ炭化水素基導入方法である。
(第2発明)
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に係るパーフルオロ炭化水素基がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルケニル基である、パーフルオロ炭化水素基導入方法である。
(第3発明)
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明に係るパーフルオロ炭化水素基供与体(B)がパーフルオロ炭化水素のヨウ化物、臭化物又は塩化物である、パーフルオロ炭化水素基導入方法である。
(第4発明)
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係るパーフルオロ炭化水素基の芳香環上への導入を位置選択的に行う、パーフルオロ炭化水素基導入方法である。
(第5発明)
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、前記第1発明〜第4発明のいずれかに係る反応をラジカル反応開始剤を用いて室温下で行い、又はラジカル反応開始剤を用いることなく加熱下で行う、パーフルオロ炭化水素基導入方法である。
本発明のパーフルオロ炭化水素基導入方法によれば、第1発明のように、反応系内でラジカル種を発生させるために一般的に必要とされる芳香環上のハロゲン化やスルフェニル化等を必要としない。即ち、単純な試薬類を混合させるだけで、無保護のフェノール類等の芳香環上にパーフルオロアルキル基その他のパーフルオロ炭化水素基を直接に導入できる。「直接に導入する」とは、パーフルオロ炭化水素基を炭素−炭素結合形成反応によって芳香環上のC−H結合部位へ導入することを言う。しかも実施例欄で後述するように、この導入反応は収率が良い。
なお、芳香環上にラジカル種を発生させるための前駆体としてハロゲン化物やスルフェニル化物を用いても、その結合位置に対してこの導入反応を行うことができる。
又、第2発明のように、この方法で導入されるパーフルオロ炭化水素基としては、パーフルオロアルキル基の他に、パーフルオロアルケニル基も用いることができる。但し、アリール基(Aryl group)の構造を持つパーフルオロ炭化水素基は用いることができない。
次に第3発明のように、パーフルオロ炭化水素基供与体(B)としてはパーフルオロ炭化水素のヨウ化物、臭化物又は塩化物を好ましく用いることができる。
更に、第4発明のように、本発明のパーフルオロ炭化水素基導入方法においては、パーフルオロ炭化水素基の芳香環上への導入を位置選択的に行うことができるという大きな特徴点を持つ。より具体的には、パーフルオロ炭化水素基は基本的に芳香環のメタ位には導入されず、オルト位及び/又はパラ位に導入される。一般的に知られるように、パーフルオロ炭化水素基がメタ位に導入された芳香族化合物は精製が困難であるため、メタ位への導入を完全に回避できる本発明のパーフルオロ炭化水素基導入方法は非常に有用である。なお、ここにいう「オルト位」、「メタ位」、「パラ位」とは、芳香族化合物(A)の芳香環上に結合した水酸基、チオール基又はそれらの誘導体基の結合位置を基準とした呼び方である。加えて、本発明では、オルト位及び/又はパラ位へのパーフルオロ炭化水素基の導入においても、後述するように更に細かく位置選択性を制御することができる。
更に、他の特徴点として、本発明のパーフルオロ炭化水素基導入方法における反応は、適宜なラジカル反応開始剤を用いれば室温下で行うことができ、あるいはラジカル反応開始剤を用いることなく加熱下で行うこともできる。
要するに、第1発明〜第5発明として上記した本発明によれば、室温下、弱塩基の存在下という温和な条件下で、無保護のフェノール類等の芳香環上にパーフルオロアルキル基その他のパーフルオロ炭化水素基を直接にかつ高収率に導入することができる。しかも、パーフルオロ炭化水素基を芳香環上に位置選択的に導入できる。
以下に、本発明の実施形態を、その最良の実施形態を含めて説明する。
〔パーフルオロ炭化水素基導入方法〕
本発明のパーフルオロ炭化水素基導入方法は、それぞれ後述する芳香族化合物(A)とパーフルオロ炭化水素基供与体(B)とを弱塩基の存在下に反応させ、パーフルオロ炭化水素基を芳香族化合物(A)の芳香環上へ直接に導入するものである。
この方法において、上記した「弱塩基」の種類は限定されないが、例えば炭酸セシウム(CsCO)、炭酸ルビジウム(RbCO)、炭酸カリウム(KCO)等の炭酸のアルカリ金属塩を好ましく例示することができる。弱塩基としては、他にも、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸リチウム(LiCO)等を例示することができる。パーフルオロ炭化水素基導入方法の実施時におけるこれらの弱塩基の使用量は特段に限定されないが、一般的には、反応基質たる芳香族化合物(A)に対して1〜20当量程度を用いる。
弱塩基の存在下に芳香族化合物(A)とパーフルオロ炭化水素基供与体(B)とを反応させるために、適宜なラジカル反応開始剤を用いることができる。この場合、反応を室温下でも良好に起こさせることができる。ここにおいて、「室温」とは、25℃〜30℃程度の温度をいう。
ラジカル反応開始剤としては、必ずしも限定はされないが、例えば和光純薬工業社製の商品名「V−70L」のような、ビス−アゾ型のラジカル反応開始剤を好ましく例示することができる。パーフルオロ炭化水素基導入方法の実施時におけるラジカル反応開始剤の使用量は、必要に応じて適宜に決定すれば良い。
一方、反応系にラジカル反応開始剤を用いない場合でも、反応系をある程度に加熱すれば、パーフルオロ炭化水素基導入の目的を良好に達することができる。加熱の程度は、芳香族化合物(A)やパーフルオロ炭化水素基供与体(B)の種類、反応時間の設定等の条件に応じて異なるので、一律に規定することは困難であるが、一般的には、50℃以上、特に好ましくは70℃程度以上の温度に加熱すれば良い。但し、100℃以上に加熱すると副反応を無視できなくなる。
〔パーフルオロ炭化水素基導入の位置選択性〕
本発明のパーフルオロ炭化水素基導入方法においては、パーフルオロ炭化水素基のメタ位への導入を回避できるという有益な位置選択性が見られる。更には、オルト位及び/又はパラ位へのパーフルオロ炭化水素基の導入においても、オルト位のみへの導入体を「o」、パラ位のみへの導入体を「p」、オルト位及びパラ位への導入体を「o/p」と表記したとき、次の(a)〜(d)のように、より細かく位置選択性を制御することができる。従って、本発明の実施目的に応じて、これらの位置選択性を任意に利用できるという大きなメリットがある。
(a)実質的に「o」及び「o/p」のみを生成させ、「p」の生成を完全に、ないしほぼ完全に回避する。
(b)上記の(a)とは逆に、実質的に「p」のみを生成させる。
(c)実質的に「o/p」のみを生成させ、「o」及び「p」の生成を完全に、ないしほぼ完全に回避する。
(d)「o」、「p」及び「o/p」を、いずれの対比においても相対的に2〜3倍以内の量的範囲内で、いずれも有意な量だけ生成させる。
〔芳香族化合物(A)〕
本発明において、「芳香族化合物(A)」とは、水酸基、チオール基又はそれらの誘導体基が結合した芳香環を備える芳香族化合物である。その限りにおいては芳香族化合物(A)の種類は限定されず、例えば、単一の芳香環を持つフェノール類、チオフェノール類等の他、ナフタレン構造やアントラセン構造を持つ芳香族化合物も包含する。更に芳香族化合物(A)における上記の芳香環には、例えばオルト位にアルデヒド基が結合しているサリチルアルデヒド等の場合のように、そのオルト位、メタ位、パラ位の内の1以上の置換位置に既に任意の置換基が結合していても良い。このような置換基として、上記のアルデヒド基の他に、アシル基、エステル基、シアノ基、ニトロ基、短鎖アルキル基、短鎖アルコキシ基等を例示することができる。
次に、芳香族化合物(A)における芳香環上に結合した「(水酸基又はチオール基の)誘導体基」としては、少なくともメトキシ基やエトキシ基のようなアルコキシ基や、これらに対応するチオアルコキシ基が包含され、一般的には、Rを炭化水素、Mを金属原子としたとき、−OR、−OM、−SR、−SMとして表される各種の誘導体基が包含される。
〔パーフルオロ炭化水素基供与体(B)〕
本発明において「パーフルオロ炭化水素基供与体(B)」とは、反応系にパーフルオロ炭化水素基を供与することができる化合物である限りにおいて限定されないが、例えば直鎖状の飽和炭化水素基の場合で言えば、「C2n+1I」の一般式で表現されるようなパーフルオロ炭化水素のヨウ化物、あるいはこれに対応するパーフルオロ炭化水素の臭化物又は塩化物を好ましく例示することができる。
又、これらの場合における「パーフルオロ炭化水素基」とは、少なくともパーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルケニル基を包含する。これらのパーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルケニル基は、直鎖構造のものも分岐鎖構造のものも包含する。但し、本発明のパーフルオロ炭化水素基としては、アリール基(Aryl group)の構造を持つものは含まれない。
パーフルオロ炭化水素基の分子量(換言すれば炭素数)は特段に限定されないが、炭素数が過少で気体状であるものや、炭素数が過大なものは、対象となり難い。具体的には、炭素数が3〜15程度のものが好ましく例示される。
更に、パーフルオロ炭化水素基における「パーフルオロ」とは、より好ましくは炭化水素基の水素原子の全てがフッ素原子に置換されたものを言うが、少なくとも芳香族化合物(A)との結合部近傍の炭素原子に結合した水素原子の全てがフッ素原子に置換されたものも、包含される。即ち、炭化水素基において芳香族化合物(A)との結合部とは反対側(遊離端側)の数個程度の炭素原子に結合した水素原子がフッ素に置換されていない場合も、本発明の「パーフルオロ炭化水素基」に該当し得る。
以下に本発明の実施例及び比較例を説明する。本発明の技術的範囲は、これらの実施例及び比較例によって限定されない。
(第1実施例)
図1に「1a」として示すサリチルアルデヒドを基質とするパーフルオロ炭化水素基導入反応を行った。
まず、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)16mLに対して、300mg(2.46mmol)のサリチルアルデヒドと、2.01g(3.68mmol)のヨウ化パーフルオロオクチル(C17I)を溶解させた。ヨウ化パーフルオロオクチルの使用量は基質に対して1.5当量に相当する。
上記DMF溶液に対して、室温(25℃)下、758mg(2.46mmol:基質に対して1当量)の前記ラジカル反応開始剤V−70L(図2に構造式を示す)と、6.41g(19.7mmol:基質に対して8当量)の炭酸セシウム(CsCO)を添加した後、周囲温度(具体的には25℃)で20時間撹拌して反応させた。
次にこの反応液に塩酸水溶液(1.0M)を加えた後、反応液をジエチルエーテルで抽出し、次いでジエチルエーテル層を回収して濃縮してから、この濃縮物をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにかけて酢酸エチル:ヘキサン=1:20で溶出することにより、図1に「2a」として示すパーフルオロオクチル化物の3種類のパーフルオロアルキル化された化合物、即ち、前記したオルト位のみへの導入体「o」、パラ位のみへの導入体「p」、オルト位及びパラ位への導入体「o/p」を得た。各化合物の収量は、「o」が36%、「p」が16%、「o/p」が25%であった。
注目すべきことに、反応直後の粗精製物についてH NMR測定を行ったところ、サリチルアルデヒドの水酸基がパーフルオロオクチル基で修飾されたO−アルキル化物は全く観察されなかった。
(比較例)
上記の第1実施例におけるヨウ化パーフルオロオクチル(C17I)に代えて同量のフッ素化されていないヨウ化オクチル(C17I)を用い、その他の点は実施例1と全く同様にして比較例1を行ったところ、図1に「3」として示すO−オクチル化された化合物のみが92%の収量で得られた。いうまでもなく、この化合物ではアルキル基が「芳香環上へ直接に導入」されてはいない。
(第2実施例)
詳細のデータの提示は省略するが、本発明のパーフルオロ炭化水素基導入方法の最適化を種々に検討する中で次の点が判明した。
まず、生成物の収量を向上させる上では塩基として炭酸セシウム(CsCO)が最適である。
次に、本発明の反応を室温で遂行させるためには、V−70Lのようなラジカル反応開始剤が必要である。70℃あるいはそれ以上の温度で反応させる場合は反応開始剤を用いなくてもパーフルオロ炭化水素基導入反応が進行するが、その場合には、後述の第3実施例における「Entry 5」の試験例に見られるように、オルト位及びパラ位への導入体「o−/p−」のリッチな生成物を得る。
又、反応溶媒としては、基本的に有機溶媒なら使用可能であるが、反応に対する各種溶媒の効果を試験したところ、前記のDMFが最適であった。ジメチルスルホキシド(DMSO)も好適な溶媒であるが、DMFを用いた場合に比較して一般的に所期の生成物の収量が低下する。
更に、本発明のパーフルオロ炭化水素基導入反応をより良好に達成するためには、芳香環上にホルミル基やニトロ基のような電子吸引性基が存在することが好ましい。水酸基又はアルコキシ基以外の置換基を有しないフェノール又はアルキルフェノールを基質とする場合、目的物以外にも複雑な生成物が得られる。次に述べる第3実施例において、最適化検討結果の一部をまとめる。
(第3実施例)
本実施例に属する各試験例はいずれも図3に示す反応を行った試験例群である。図3に示す反応は、「1a−g」として示す基質を用いて「2a−g」として示す生成物を得る点、「RfI」として示すパーフルオロアルキル基供与体を用い、その使用量が基質に対して3当量である点を除いては、第1実施例の場合と同様に行ったものである。
図3に示す基質「1a−g」は共通してフェノールの基本構造を持つが、そのR〜Rの置換位置には、図4において「Entry 」欄の1〜12の番号で区別する各試験例ごとに「1a」ないし「1g」として示すように、所定の置換位置に特定の置換基を持っている。又、「RfI」として示すパーフルオロアルキル基供与体におけるパーフルオロアルキル基「Rf」は、図4の各試験例ごとに示すように、炭素数が異なる。
これらの試験例1〜12で得られた粗精製物(カラム溶出物)のH NMRによる位置選択制の配向性結果を図4の「Orientation」の欄に示す。更に、これらの試験例でカラム溶出物から得られ、又は再結晶化により得られた生成物の収量を「Yield(%)」の欄に示す。
なお、試験例4では粗精製物の溶解性が低いため、配向を決定できなかった。又、試験例5では基質を1.5当量使用した。次に、試験例6ではV−70Lを使用せずに、70℃で反応を行った。試験例8,9ではメタ位にはパーフルオロアルキル基は導入されず、パラ位のみに導入された。試験例11では70℃での反応を10時間行った。
(第3実施例の評価)
全ての試験例において、パーフルオロアルキル基は芳香環上の水酸基に対するオルト位にもパラ位にも直接に導入された。
試験例1〜4から分かるように、フェノールに対してヨウ化パーフルオロアルキルを3当量使用すると、2種類のパーフルオロアルキル化物、即ちパーフルオロアルキル基のオルト位のみへの1分子導入体「o」と、オルト位及びパラ位への2分子導入体「o/p」とを得た。
これに対して、試験例5から分かるように、フェノールに対してヨウ化パーフルオロアルキルを1.5当量使用すると、3種類のパーフルオロアルキル化物、即ちパーフルオロアルキル基のオルト位のみへの1分子導入体「o」と、パラ位のみへの1分子導入体「p」と、オルト位及びパラ位への2分子導入体「o/p」とを得た。
興味深いことに、試験例7のように基質として「1b」を用いると、過剰量のヨウ化パーフルオロアルキルを使用するにもかかわらず、パーフルオロアルキル基の導入について高度のパラ位選択性が認められる。
試験例8、9のように、基質のフェノール基に対する両オルト位の水素原子が置換されていると、パーフルオロアルキル化はパラ位で起こる。
試験例10のように、2−シアノフェノールを基質とした場合、オルト位及びパラ位への2分子導入体「o/p」のみを生成する。即ち、パーフルオロアルキル基のオルト位への置換とパラ位への置換が全く同様に起こる。
試験例11のように、芳香環上オルト位にニトロ基が存在すると基質の反応性が弱まるが、それでも反応時の温度を高くすることで反応は首尾良く進行する。
試験例12のように、芳香環上パラ位にニトロ基が存在すると室温下(具体的には25℃)でも反応は首尾良く進行する。
本発明によれば、フェノール等の基本構造を持った芳香環のSP炭素原子に対する直接のパーフルオロ炭化水素基導入を弱塩基の存在下、室温で行うことができ、しかも、通常は芳香族化合物の酸化的カップリングのために必要とされる試薬を要しない。
第1実施例と比較例とで行った反応を示す化学式である。
ラジカル反応開始剤の構造式を示す。
第3実施例の各試験例で行った反応を示す一般式である。
第3実施例の各試験例の、結果も含めた一覧表である。

Claims (5)

  1. 水酸基、チオール基又はそれらの誘導体基が結合した芳香環を有する芳香族化合物(A)と、パーフルオロ炭化水素基を有するパーフルオロ炭化水素基供与体(B)とを弱塩基の存在下に反応させることにより、前記パーフルオロ炭化水素基を芳香族化合物(A)の前記芳香環上へ直接に導入することを特徴とするパーフルオロ炭化水素基導入方法。
  2. 前記パーフルオロ炭化水素基がパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルケニル基であることを特徴とする請求項1に記載のパーフルオロ炭化水素基導入方法。
  3. 前記パーフルオロ炭化水素基供与体(B)がパーフルオロ炭化水素のヨウ化物、臭化物又は塩化物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパーフルオロ炭化水素基導入方法。
  4. 前記パーフルオロ炭化水素基の芳香環上への導入を位置選択的に行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のパーフルオロ炭化水素基導入方法。
  5. 前記反応を加熱下で行い、又はラジカル反応開始剤を用いて室温下で行うことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のパーフルオロ炭化水素基導入方法。
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