JP2009291379A - パーキンソン病の評価装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】生体信号情報に基づいてパーキンソン病の状態を評価することを特徴とするパーキンソン病の評価装置であって、
人の体の動きを非侵襲的かつ連続的に計測する生体信号検出部11と、
前記生体信号検出部から得られる生体信号情報を記録・保存する情報収集部12とを備える。
【選択図】図1
Description
前記生体信号検出部が、人の随意運動による繰り返しリズム運動時のリズムを前記生体信号情報として計測することが好ましい(請求項3)。
この際、前記情報処理部が、人の随意運動による繰り返しリズム運動から得られるリズム周期を算出し、前記リズム周期を解析してパーキンソン病の状態を評価するものとすることができる(請求項5)。
以下、本発明の評価装置の各構成や、本発明の評価装置を用いた具体的なパーキンソン病の評価方法等について詳しく説明する。
生体信号検出部は体の動きに伴う現象、例えば、力の変化、空間的な身体の位置の変化、身体から発する音、電磁波等の波や微細エネルギーの変化または身体の周りにおける場の変化等を生体信号情報として非侵襲的かつ連続的に測定することが可能な方法であれば特に制限はない。生体信号検出部により生体信号情報を測定する時間としては、通常連続して1時間以上、好ましくは12時間以上、より好ましくは24時間以上である。これにより、パーキンソン病の患者の体の動きの情報を計測し、正確に病態を把握すること等が可能となる。
生体信号検出部から得られた生体信号情報は、情報収集部に記録・保存される。情報収集部としては、例えば図3に示すように、生体信号検出部11からの信号を入力する入力装置20や、入力装置20に接続された中央演算装置22、記憶装置24、出力装置26等を備えるものとすることができるが、これに限定されるものではなく、任意に変更することができる。
このような情報収集部としては、評価装置内に取り外し不可能に格納されているものであってもよいが、例えばメモリーカード等のリムーバブルメディア等、取り外し可能なものであってもよい。
情報処理部にて、情報収集部に記録された生体信号情報をデータ解析し、パーキンソン病の状態、具体的にはパーキンソン病の重症度や病態の変化を評価する。情報処理部としては、例えば入力装置や、入力装置に接続された中央演算装置、記憶装置、出力装置等を備えるものとすることができるが、これらに限定されるものではなく、適宜変更することができる。上記のような構成を有する情報処理部においては、情報収集部から入力されるデータや、情報処理部内の記憶装置に記憶されたデータ等を読み込み、中央演算装置で下記のような処理を行なうもの等とすることができる。ただし、以下の態様に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
以下、繰り返しリズム運動時のリズムとして、歩行時のリズム(加速度)を測定する場合を例に、パーキンソン病を評価する方法について説明する。
(1)リズム波形の特徴点からリズム周期を算出する方法
繰り返しリズム運動のリズム波形の特徴点から周期を算出する場合の、リズム波形の特徴点とは、生体信号検出部により検出されるリズム(ここでは、歩行時の加速度)の経時変化をグラフで表した際の波形のピーク点(極大点あるいは極小点)やゼロ点(信号の値がゼロとなる点)、あるいは波形が急峻に変化する点(もとの波形を微分した波形のピーク点)等をいう。通常、これらの中から1つ、または2つ以上を選んでこれらの時間間隔を抽出し、リズム周期とする。
また、情報処理部が、上記繰り返しリズム運動時のリズムの時系列データを読み込み、この時系列データに対してスペクトル解析法を行い、リズム周期を算出することもできる。スペクトル解析法としては、FFT解析やウェイブレット解析、AR法、最大エントロピー法等、公知の周波数解析法を用いることができる。例えば、所定の時間内に検出されたリズム信号からFFT解析にてパワースペクトルを得る。その後、基本周波数に相当するピークを選択し、その周波数の逆数をとることにより、リズム周期を求めることができる。この方法により得られるリズム周期は、所定の時間内における平均的なリズム周期とすることができる。
日常生活では病態とは無関係に歩行周期が一時的に短くなる場合、たとえば駆け足等があるため、例えば図4のステップ114で示すように、所定の時間内におけるリズム周期の平均値を採用することで、より正確な判定を行うことができる。リズム周期の平均値の算出には、上記(1)の方法で得られるリズム周期を用いてもよく、また(2)の方法で得られるリズム周期を用いてもよい。
リズム周期の平均値を算出するための所定の時間としては、通常5秒以上、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上である。また通常3時間以下、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下である。
上記方法により得られたリズム周期や、リズムの平均値から、情報処理部は、例えば以下のようにパーキンソン病を評価するものとすることができる。例えば歩行リズムから算出されたリズム周期(歩行周期)やその平均値を時系列で比較し、リズム周期やその平均値が減少し始めたら病気が悪化していると判定し、反対に減少していたリズム周期やその平均値が増加して、もとのレベルに戻ったら症状が改善、あるいは落ち着いていると判定する等とする。また例えば、リズム周期等が減少し始めたら、その旨を出力部に出力し、出力部が患者や医師等に報知するものとしてもよい。報知を行うことにより、例えば患者は薬を服用することができる。また、医師による診断や治療を受けていない潜在的なパーキンソン病患者やその家族に、異常の発生の報知がなされることにより、患者は通院する等の適切な行動をとることができる。
また服薬後、さらに生体信号情報を解析して、リズム周期やその平均値が増加し、もとのレベルとなり、安定すれば、薬効があると判断し、同様に出力部に出力してもよい。出力部が患者等に報知を行うことによって、患者は病態が安定したとの安心感を得ることが可能となる。
また、情報処理部はリズム周期とリズムの波形に基づいて、パーキンソン病の状態を評価するものであってもよい。本発明においては特に、リズム周期とリズムの波形に基づいて、繰り返しリズム運動の突然のリズムの異常を検出する機能を備えていることが好ましい。
このような突然のリズムの異常の検出についても、例えば情報処理部における中央演算装置で、情報収集部から入力されるデータや、情報処理部内の記憶装置に記憶されたデータ等について演算・処理することにより行なうことができる。突然のリズム(歩行リズム)の異常を検出する方法について、図5のフローチャートを例に説明する。
M2<M1×α
の関係が成立すれば歩行周期の減少があると判定する。
出力部としては、情報処理部によって評価された結果等を、患者または医師に報知可能なものであれば特に制限はない。例えばアラームや振動等によって、状態の変化や突然の異常について報知するもの等であってもよく、またディスプレイに病態の時間変動や重症度の評価結果を表示するもの等であってもよい。
以上、生体信号検出部、情報収集部、情報処理部、及び出力部を有する評価装置について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、例えば情報処理部や出力部を有しないものであってもよく、また上記各構成の他に適宜異なる構成を有するものであってもよい。例えば薬を服薬したことを入力するための入力部や、この入力データを記憶する記憶部等を備えるもの等とすることもでき、この記憶部に保存されたデータを情報処理部が参照し、例えば上記リズム周期等と併せて患者の状態を評価するもの等とすることもできる。
携帯型の評価装置(105×58×18.5mm)により安定な自立歩行が可能なパーキンソン病患者の1日の体の動きをモニターした。評価装置は3軸の加速度センサー(測定範囲±5G)を生体信号検出部として搭載している。加速度波形は評価装置本体にミニSDカード(情報収集部)を装着して記録する。これを被験者の腰部に装着し、サンプリング周波数100Hzで計測した。得られた3軸の加速度時系列データx(t)、y(t)、z(t)から以下の式により加速度の絶対値時系列r(t)を求めた。
実施例1と同様の手順で安定な自立歩行が可能なパーキンソン病患者の1日の体の動きをモニターした。歩行間隔時系列で1箇所、急激な減少が見られた(図8(a)破線部)。このポイント以降の加速度波形は加速度強度の上昇等の、小刻み歩行に特徴的なパターンが見られ(図8(b))、異常歩行波形との一致度が高かったので、突然な異常であると判断された。実際にこの例では突然の異常の後、数歩で歩行が停止していており、パーキンソン病の重要な症状であるすくみ足の前兆となる症状を鋭敏に捉えていることがわかる。
実施例1と同様の手順で安定な自立歩行が可能なパーキンソン病患者(72歳、女性)の1日の体の動きをモニターした。歩行間隔時系列について1時間毎の平均値を求めた。治療効果を見るため、パーキンソン病の治療薬であるレボドパの投薬前後で歩行周期の比較を行った(図9)。投薬前には歩行周期が1秒以下で低くなっている(□)のに対し、投薬後は増加している(○)。これは投薬により症状が安定したことを示している。実際、パーキンソン病を統一的に評価する基準であるTotal UPDRSによるスコアは、投薬により28から17に改善していた。この結果から、歩行周期の値がパーキンソン病の重症度と薬効を鋭敏に反映する指標であることがわかる。
実施例1と同様の手順で安定な自立歩行が可能なパーキンソン病患者の1日の体の動きをモニターした。歩行間隔時系列について1時間毎の平均値を求めた。薬効の違いを見るため、パーキンソン病の治療薬であるレボドパとドパミンアゴニスト(DA)との比較を行った。レボドパには即効性があり、ドパミンアゴニストは効き目がゆっくりしていることが経験的に知られている。図10は病状の安定期における歩行周期を100%としたときの歩行周期の時間変化を示している。レボドパを投与すると急速に歩行周期が上昇しているのに対し、ドパミンアゴニストの投与後は2、3時間かけてゆっくりと歩行周期が上昇している。このように、歩行周期の値は薬効の違いを鋭敏に反映していることがわかる。
実施例1と同様の手順で安定な自立歩行が可能なパーキンソン病患者の1日の体の動きをモニターした。歩行間隔時系列について1時間毎の平均値を求めた。
歩行障害が顕著でしばしば介助を必要とする重症のパーキンソン病患者2名について1日の体の動きを実施例1と同様の手順で連続的にモニターした。これらの被験者は典型的な動作緩慢症状を呈し、ほとんど自立歩行が困難であった。辛うじて歩くことのできた部分を加速度波形から取り出して平均歩行周期を求めた。UPDRSのスコアと歩行周期との関係について、安定した自立歩行が可能なパーキンソン病患者の結果と比較したプロットが図15である。自立歩行が可能な患者(○)に比べ、UPDRSは増悪し歩行周期も増大している(□)。これは被験者が歩行障害のためにゆっくり歩いていることを反映している。このように、動作緩慢でわずかしか歩行できず、しかも歩行できる時間帯が予測できない患者についても、本発明のパーキンソン病の評価装置によれば連続的なモニターをすることで歩行リズムを捉えることが可能であり、パーキンソン病の状態を正しく評価することができる。
12 情報収集部
13 情報処理部
14 出力装置
Claims (13)
- 生体信号情報に基づいてパーキンソン病の状態を評価するパーキンソン病の評価装置であって、
人の体の動きを非侵襲的かつ連続的に計測する生体信号検出部と、
前記生体信号検出部から得られる生体信号情報を記録・保存する情報収集部とを備える
ことを特徴とするパーキンソン病の評価装置。 - 前記生体信号検出部が、加速度センサーを備え、体の動きの加速度を前記生体信号情報として計測する
ことを特徴とする請求項1に記載のパーキンソン病の評価装置。 - 前記生体信号検出部が、人の随意運動による繰り返しリズム運動時のリズムを前記生体信号情報として計測する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のパーキンソン病の評価装置。 - 前記情報収集部に記録された前記生体信号情報を解析し、パーキンソン病の状態を評価する情報処理部を備える
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のパーキンソン病の評価装置。 - 前記情報処理部が、人の随意運動による繰り返しリズム運動から得られるリズム周期を算出し、前記リズム周期を解析してパーキンソン病の状態を評価する
ことを特徴とする請求項4に記載のパーキンソン病の評価装置。 - 前記情報処理部が、前記繰り返しリズム運動時のリズム波形から複数の特徴点を抽出し、隣接する前記特徴点間の時間間隔を前記リズム周期として処理を行なう
ことを特徴とする請求項5に記載のパーキンソン病の評価装置。 - 前記情報処理部が、前記繰り返しリズム運動時のリズム波形及び前記リズム周期を解析し、パーキンソン病の状態を評価する
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載のパーキンソン病の評価装置。 - 前記情報処理部が前記情報収集部から、所定の時間内の前記繰り返しリズム運動時のリズムの時系列データを読み込み、前記時系列データに対してスペクトル解析法を施して前記リズム周期を算出する
ことを特徴とする請求項5に記載のパーキンソン病の評価装置。 - 前記情報処理部が、所定の時間内の前記リズム周期の平均値を算出し、前記平均値を解析してパーキンソン病の状態を評価する
ことを特徴とする請求項5、6、及び8のいずれか一項に記載のパーキンソン病の評価装置。 - 前記情報処理部が、前記リズム周期の時間変動に基づいて、病態の時間変化を評価する
ことを特徴とする請求項5、6、8、及び9のいずれか一項に記載のパーキンソン病の評価装置。 - 前記情報処理部が、所定の時間内の前記リズム周期の時間変動パターンを解析し、前記時間変動パターンからパーキンソン病の重症度を評価する
ことを特徴とする請求項5、6、及び8〜10のいずれか一項に記載のパーキンソン病の評価装置。 - 前記繰り返しリズム運動が歩行である
ことを特徴とする請求項5〜11に記載のパーキンソン病の評価装置。 - 人の体の動きを非侵襲的かつ連続的に計測して得られる生体信号情報を読み込む生体信号情報読込部と、
読み込んだ生体信号情報を解析し、パーキンソン病の状態を評価する情報処理部と備える
ことを特徴とするパーキンソン病の評価装置。
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