以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は本実施形態のシステム構成図であり、複数台(図示例では6台)の火災警報器TRと1台の中継器RYとで火災警報システムが構成されている。なお、以下の説明では、火災警報器TRを個別に示す場合は火災警報器TR1,TR2,…,TRnと表記し、総括して示す場合は火災警報器TRと表記する。
火災警報器TRは、図2(a)に示すようにアンテナ3から電波を媒体とした無線信号を送信するとともに他の火災警報器TR又は中継器RYが送信した無線信号をアンテナ3で受信する無線送受信部2と、音(ブザー音や音声メッセージなど)による火災警報(以下、「警報音」と呼ぶ。)を報知(スピーカから鳴動)する警報部5と、マイコンを主構成要素とし火災感知部4で火災を感知したときに警報部5に警報音を鳴動させるとともに他の火災警報器TRに対して火災警報を報知させるための火災警報メッセージを含む無線信号を無線送受信部2より送信させる制御部1と、後述するように警報音の鳴動を停止するための操作入力などを受け付ける操作入力受付部6と、乾電池等の電池を電源として各部に動作電源を供給する電池電源部7とを具備している。操作入力受付部6は1乃至複数のスイッチ(例えば、押釦スイッチ)を有しており、スイッチが操作されることで各スイッチに対応した操作入力を受け付けるとともに当該操作入力に対応した操作信号を制御部1に出力する。なお、各火災警報器TR1,TR2,…には製造段階で固有の識別符号が割り当てられて記憶手段(図示しないROMなど)に記憶されている。
無線送受信部2は、電波法施行規則第6条第4項第3号に規定される「小電力セキュリティシステムの無線局」に準拠して電波を媒体とする無線信号を送受信するものである。また火災感知部4は、例えば、火災に伴って発生する煙や熱、炎などを検出することで火災を感知するものである。但し、無線送受信部2並びに火災感知部4の詳細な構成については、従来周知であるから詳細な説明は省略する。
制御部1は、メモリに格納されたプログラムをマイコンで実行することによって後述する各種の機能を実現している。火災感知部4で火災の発生が感知されると、制御部1は警報部5が備えるブザーを駆動して警報音を鳴動させたり、あるいは予めメモリ等に格納されている警報用の音声メッセージ(例えば、「火事です」など)をスピーカに鳴動させることで火災警報を報知するとともに、他の火災警報器TRにおいても火災警報を報知させるため、火災警報メッセージを含む無線信号を無線送受信部2より送信させる。また、他の火災警報器TRから送信された無線信号を無線送受信部2で受信することにより火災警報メッセージを受け取ったときも、制御部1は警報部5を制御して警報音を鳴動させる。つまり、制御部1では火災感知部4が火災を感知したときに警報部5から警報音を鳴動させて火災警報を報知するとともに火災警報メッセージを含む無線信号を無線送受信部2より送信させる機能を有している。
ここで、電波法施行規則の無線設備規則第49条の17「小電力セキュリティシステムの無線局の無線設備」では、無線信号を連続して送信してもよい期間(送信期間)が3秒以下、送信期間と送信期間の間に設けられた、無線信号を送信してはいけない期間(休止期間)が2秒以上と規定されている。このために本実施形態における制御部1では、上記無線設備規則に適合する送信期間に無線信号を送信させるとともに休止期間に送信を停止し且つ受信可能な状態としている。
また電池電源部7の電池寿命をできるだけ長くするため、制御部1ではマイコンに内蔵するタイマで所定の間欠受信間隔を繰り返しカウントするとともに間欠受信間隔のカウントが完了する毎に無線送受信部2を起動して所望の電波(他の火災警報器TR又は中継器RYが送信した無線信号)が受信できるか否かをチェックし、当該電波が捉えられなければ直ちに無線送受信部2を停止して待機状態に移行させることで平均消費電力を大幅に低減している。なお、電波の受信チェックは、無線送受信部2から出力される、受信信号強度の大小に比例した直流電圧信号である受信信号強度表示信号(Receiving Signal Strength Indication:RSSI信号)に基づいて制御部1が行っており、詳細については従来周知であるから省略する。
さらに特定の火災警報器TR1(以下、親局と呼ぶ。)の制御部1では、定期的(例えば、24時間毎)に無線送受信部2を起動して他の火災警報器TR2〜TR6(以下、子局と呼ぶ。)が正常に動作しているか否かの確認(定期監視)を行うために定期監視メッセージを含む無線信号を送信させる。子局TR2,…においては、制御部1が火災感知部4の故障の有無及び電池電源部7の電池切れの有無を一定周期で(例えば、1時間毎に)監視するとともに、その監視結果(故障の有無及び電池切れの有無)を図示しないメモリに記憶しており、親局TR1から定期監視メッセージを受け取ったときに、メモリに記憶している監視結果を通知するための通知メッセージを含む無線信号を親局TR1に返信する。親局TR1の制御部1は、通知メッセージを含む無線信号を送信した後、無線送受信部2を受信状態に切り換えて各火災警報器TR2,…から送信される無線信号を受信し、定期監視メッセージを含む無線信号を送信してから所定時間内に通知メッセージを含む無線信号を送信してこない子局TR2,…があったり、あるいは、何れかの子局TR2,…が送信してきた通知メッセージが故障有り若しくは電池切れ有りの監視結果を通知するものである場合に、警報部5が備えるブザーを駆動して報知音を鳴動させるなどして子局TR2,…に異常(通信不可や故障有り、電池切れなど)が発生したことを知らせる機能も有している。尚、親局TR1及び子局TR2,…の制御部1は、故障若しくは電池切れが生じていると判断した場合、直ちに警報部5から異常(故障若しくは電池切れ)の発生を知らせるための警告音(ブザー音や音声メッセージなど)を警報部5のスピーカから鳴動させるようになっている。
また親局TR1の制御部1は、火災感知部4が火災を感知して警報部5から警報音を鳴動させるとともに各子局TR2,…に火災警報メッセージを送信した後、若しくは何れかの子局TR2,…から火災警報メッセージを受信した後においては、無線送信部2に一定周期で同期信号(第1同期信号)B1を送信させる。この第1同期信号B1は、複数の火災警報器TR同士でTDMA(時分割多元接続)方式の無線通信を行うために必要なタイムスロットを規定する信号であって、その1周期(1サイクル)が複数のタイムスロットTS1,TS2,…,TSnに分割され、全ての子局TR2,…並びに中継器RYにそれぞれ互いに異なるタイムスロットTS1,TS2,…,TSnが1つずつ割り当てられる。そして、親局TR1から子局TR2,…へのメッセージは第1同期信号B1に含めて送信され、子局TR2,…から親局TR1へのメッセージを含む無線信号は、各子局TR2,…及び中継器RYに割り当てられているタイムスロットTSm(m=1〜n)に格納されて送信される。故に、複数台の火災警報器TR(親局TR1並びに子局TR2,…)及び中継器RYから送信される無線信号の衝突を確実に回避することができる。なお、各火災警報器TR並びに中継器RYに対するタイムスロットTSmの割当は、後述する親局TR1への子局TR2,…及び中継器RYの登録時に行われる。
中継器RYは、図2(b)に示すようにアンテナ12から電波を媒体とした無線信号を送信するとともに火災警報器TRが送信した無線信号をアンテナ12で受信する無線送受信部11と、マイコンを主構成要素とする中継器制御部10と、後述するように登録のための操作入力などを受け付ける操作入力受付部13と、商用交流電源ACから給電されて各部の動作電源を作成する電源部14とを具備している。無線送受信部11は、電波法施行規則第6条第4項第3号に規定される「小電力セキュリティシステムの無線局」に準拠して電波を媒体とする無線信号を送受信するものである。操作入力受付部13は1乃至複数のスイッチ(例えば、押釦スイッチ)を有しており、スイッチが操作されることで各スイッチに対応した操作入力を受け付けるとともに当該操作入力に対応した操作信号を中継器制御部10に出力する。なお、中継器RYにも製造段階で固有の識別符号が割り当てられて記憶手段(図示しないROMなど)に記憶されている。
ここで本実施形態においては、図1に示すように5台の子局TR2〜TR6のうちで3台の子局TR2〜TR4は親局TR1と直接無線通信することが可能な場所に設置されており、残り2台の子局TR5,TR6が親局TR1と直接無線通信することができない場所に設置されているため、当該2台の子局TR5,TR6と親局TR1との無線通信を中継器RYで中継している。以下では、親局TR1並びに親局TR1と直接無線通信可能な子局TR2〜TR4が所属するグループをメイングループMGと呼び、中継器RY並びに中継対象の子局TR5,TR6が所属するグループをサブグループSGと呼ぶことにする。中継器RYはメイングループMGとサブグループSGの双方に所属しており、メイングループMG内では子局のように振る舞い、サブグループSG内では親局のように振る舞う。
中継器制御部10は、サブグループSGに所属する子局TR5,TR6から送信される無線信号を無線送受信部11で受信し且つ当該無線信号を無線送受信部11よりメイングループMGに向けて送信させる非同期中継処理と、親局TR1から送信される第1同期信号B1を無線送受信部11で受信すると第1同期信号と同一周期の第2同期信号B2を無線送受信部11からサブグループSGに向けて送信させる同期信号中継処理と、サブグループSGに所属する子局TR5,TR6が第2同期信号B2で規定されるタイムスロットに格納して送信する無線信号を無線送受信部11で受信すると、後述するように当該無線信号を第1同期信号B1で規定されるタイムスロットTS2(又はTS4)に格納して無線送受信部11から親局TR1に送信させ、また親局TR1が第1同期信号B1によって送信したメッセージを第2同期信号B2によってサブグループSGに所属する子局TR5,TR6へ無線送受信部11より送信させる同期中継処理と、サブグループSGに所属する子局TR5,TR6に対して定期監視を行うとともに親局TR1から定期監視メッセージを含む無線信号を受信したときに子局TR5,TR6の定期監視結果を親局TR1に返信する定期監視代行処理とを実行する。
図3は火災警報器TR又は中継器RYが送受信する無線信号のフレームフォーマットを示しており、同期ビット(プリアンブル:PA)、フレーム同期パターン(ユニークワード:UW)、ヘッダHD、データData、CRC符号で1フレームが構成されている。ヘッダHDには、メイングループMGにおいては親局TR1の識別符号(以下、「親局ID」と呼ぶ。)、後述する登録カウンタのカウント値RC、送信元アドレスSA、送信先アドレスDAが含まれ、サブグループSGにおいては中継器RYの識別符号(以下、「中継器ID」と呼ぶ。)、後述する登録カウンタのカウント値RC、送信元アドレスSA、送信先アドレスDAが含まれている。
ここで、送信先アドレスDAとして各火災警報器TRに割り当てられる機器番号(後述する)を指定すれば当該機器番号の火災警報器TRのみが無線信号を受信してデータ(メッセージ)を取得することになるが、送信先アドレスDAとして何れの機器番号とも異なる特殊なビット列(例えば、すべてのビットを1としたビット列)を設定することで無線信号を同報(マルチキャスト)して全ての火災警報器TRにメッセージを取得させることができる。例えば、火災警報メッセージを含む無線信号が親局TR1又は中継器RYから全ての子局TR2,…に同報される。なお、制御部1は、非同期で無線信号を伝送しているときには1フレーム分の無線信号を1回の送信期間内で送信可能な数だけ連続して無線送受信部2から送信させるが、無線信号をTDMA方式で送受信するときは1つのタイムスロットに複数フレーム分の無線信号を格納する必要はない。
次に、図5のタイムチャートを参照して、TDMA方式の無線通信に移行する際の本実施形態の送受信動作を説明する。
例えば、子局TR2において火災感知部4が火災を感知すると、子局TR2の制御部1は警報部5より警報音を鳴動させるとともに無線送受信部2を起動し、火災警報メッセージを含む無線信号を送信(マルチキャスト)する。この際、送信元の子局TR2の制御部1は、送信期間内で送信可能なフレーム数だけ無線信号を連続して送信(以下、「連送」と呼ぶ。)し、送信期間後の休止期間(受信期間)には無線送受信部2を受信状態に切り換える。尚、各火災警報器TRは非同期で間欠受信しているが、ある程度の回数(例えば、2回)の送信(連送)期間を繰り返せば、火災警報メッセージを含む無線信号を受信することができる。
ここで、小電力無線を利用すれば、無線通信距離としては通常の住宅ひとつのエリア内であれば十分カバーできるので、火災元の子局TR2が、他の火災警報器TR(親局TR1及び他の子局TR3,…)に対しメッセージを送信することは通常は十分可能である。しかしながら、上述したように親局TR1はメイングループMGに所属する各子局TR2〜TR4に対して定期監視を行っており、親局TR1と各子局TR3,TR4との間では通信パスの正常性が確認されているが、子局TR2〜TR4間の通信パスは確認されていないため、例えば障害物などの影響によって、ある子局にはメッセージが届いていない可能性もある。
そこで、火災警報メッセージを受信した親局TR1の制御部1は、メイングループMGに所属する全ての子局TR2〜TR4に対して火災警報メッセージを含む無線信号(フレーム)をN回連続して無線送受信部2から送信させるとともに、当該N回の送信後に無線送受信部2を受信状態に切り換えている。子局TR3,TR4の制御部1では、子局TR2又は親局TR1から送信された火災警報メッセージを受け取ると直ちに警報部5より警報音を鳴動させるとともに無線送受信部2より火災警報メッセージの受信を確認する応答メッセージ(ACK)を無線信号によって返信する。尚、このように少なくとも1台の火災警報器TRで火災が感知されることで全ての火災警報器TRが火災警報を報知(警報音を鳴動)することを、以下では「火災連動」と呼ぶ。
ここで、親局TR1から火災警報メッセージを受け取った各子局TR2,…が非同期で応答メッセージを含む無線信号を返信した場合、複数の子局TR2,…が送信した無線信号が衝突して親局TR1に届かず、親局TR1が火災警報メッセージの再送を繰り返すことで電池の消耗が早まったり、後述する非同期通信から同期通信への切り換わりが遅れてしまう虞がある。そこで親局TR1の制御部1では、それぞれの無線信号(フレーム)におけるメッセージMの先頭に当該フレームの順番i(i=1,2,…,N)を格納しており、各子局TR2,…の制御部1においては、受信した無線信号のメッセージMに格納されている順番iに基づいて親局TR1の無線送受信部2が送信状態から受信状態に切り換わるタイミングを推定している。すなわち、1フレームのフレーム長をTf[秒]とすれば、当該受信した無線信号の終わりからTf×(N−i)[秒]が経過した時点で親局TR1の無線送受信部2が送信状態から受信状態に切り換わると推定できる。
そして、親局TR1の無線送受信部2が受信状態に切り換わっている期間をM個のタイムスロットに分割し、各子局TR2,…毎に決められたタイムスロットk(k=1,2,…,M)に応答メッセージを含む無線信号を格納して各子局TR2,…から親局TR1に返信すれば、子局TR2,…から送信される応答メッセージを含む無線信号の衝突を回避することができる。図5においては、各子局TR2,TR3,TR4がそれぞれタイムスロット1,2,3に応答メッセージを含む無線信号を格納して親局TR1に返信している。
親局TR1の制御部1は、メイングループMGに所属する全ての子局TR2〜TR4からACKを受け取れば、中継器RYに対して中継開始メッセージを含む無線信号を送信する。中継器RYは商用交流電源ACから常時電源が供給されているので、サブグループSGに所属する子局TR5,TR6に対して定期監視メッセージを送信しているとき以外は常に受信状態にある。故に、親局TR1から送信された中継開始メッセージを含む無線信号は直ちに中継器RYの無線送受信部11で受信され、当該中継開始メッセージを受け取った中継器制御部10は、親局TR1の制御部1と同様に火災警報メッセージを含み且つメッセージMの先頭に当該フレームの順番i(i=1,2,…,N)を格納した無線信号をN回連続して無線送受信部11から送信させるとともに、当該N回の送信後に無線送受信部11を受信状態に切り換える。
サブグループSGに所属する各子局TR5,TR6の制御部1では、中継器RYの無線送受信部11が受信状態に切り換わっている期間をM個に分割した複数のタイムスロットのうちで自己に割り当てられているタイムスロットk(k=1,2,…,M)に応答メッセージ(ACK)を含む無線信号を格納して中継器RYに返信する。
中継器RYの中継器制御部10は、サブグループSGに所属する全ての子局TR5,TR6からACKを受け取れば、親局TR1に対して中継準備の完了を知らせるための応答メッセージ(ACK)を含む無線信号を無線送受信部11より送信させる。
そして、親局TR1の制御部1は、中継器RYから前記応答メッセージを受け取れば、タイムスロットを規定するための第1同期信号B1を一定の周期で無線送受信部2から送信させる。尚、本実施形態では、後述するように先頭のタイムスロットTS1と2番目のタイムスロットTS2を中継器RYに割り当てている。
ここで、親局TR1(並びに中継器RY)は各子局TR2〜TR6に対して定期監視を行っており、親局TR1(並びに中継器RY)と各子局TR2〜TR6との間では通信パスの正常性が確認されているが、子局TR2〜TR6間の通信パスは確認されていない。したがって、子局TR2,…が多数配置された場合、子局TR2,…間の通信パスの数は非常に多くなる為、子局TR2,…間の通信パスの正常性の確認を行うと電池消耗が激しくなるので、上述のように特定の火災警報器TR1を親局とし、その他の火災警報器TR2,…を子局として親局TR1から各子局TR2,…に火災警報メッセージやその他のメッセージ(後述する)を通知することで相互に通信パスが確立できない子局が存在する場合でも確実に火災連動させることができるものである。
一方、中継器RYの中継器制御部10は、親局TR1から送信される第1同期信号B1を受信すると、図4に示すように第1同期信号B1で規定される先頭のタイムスロットTS1に第2同期信号B2を格納して無線送受信部11より送信させる。ここで、第2同期信号B2は第1同期信号B1と同一周期を有しており、第2同期信号B2で規定される複数のタイムスロットと第1同期信号B1で規定される複数のタイムスロットTSnとが同期している。さらに、メイングループMGに所属する子局TR2〜TR4とサブグループSGに所属する子局TR5,TR6に対して、それぞれ異なるタイムスロットTSが割り当てられており、メイングループMGとサブグループSGを含むシステム全体でTDMA方式の同期通信を行うことができる。
また、全ての火災警報器TRが警報音を鳴動することにより連動が開始されると、上述のように親局TR1から一定周期で第1同期信号B1が送信されてTDMA方式の通信に移行するのであるが、親局TR1の制御部1では、第1同期信号B1に含めることで火災警報メッセージを一定周期で全ての子局TR2,…に繰り返し送信している。そして、各子局TR2,…の制御部1では、親局TR1から送信される火災警報メッセージを受け取る度に警報部5の状態を確認し、仮に警報部5が停止していたとしたら警報部5に再度警報音を鳴動させる。したがって、全ての火災警報器TRで火災警報が報知され始めてからは特定の火災警報器(親局)TR1が送信する第1同期信号B1によって規定される複数のタイムスロットに他の全ての火災警報器(子局)TR2,…を割り当てて時分割多元接続(TDMA)による無線通信を行うことで衝突を回避することができ、さらに、特定の火災警報器(親局)TR1から他の全ての火災警報器(子局)TR2,…に対して火災警報メッセージを第1同期信号B1に含めて周期的に送信することで確実に火災警報を報知することができる。その結果、無線信号の衝突を回避しつつ複数の火災警報器TRを効果的に連動させることができる。
ここで、中継器RYには2つのタイムスロットTS1,TS2が割り当てられており、中継器制御部10は先頭のタイムスロットTS1で第2同期信号B2を無線送受信部11に送信させ、2番目のタイムスロットTS2で親局TR1に対するメッセージを含む無線信号を無線送受信部11に送信させている。そして、中継器制御部10では、親局TR1から繰り返し送信される火災警報メッセージを受信している間、先頭のタイムスロットTS1で送信する第2同期信号B2に火災警報メッセージを含めることでサブグループSGに所属する子局TR5,TR6に前記火災警報メッセージを中継している。従って、メイングループMGに所属する子局TR2〜TR4だけでなく、サブグループSGに所属する子局TR5,TR6にも火災警報メッセージが周期的に送信されることで確実に火災警報を報知することができる。
ところで、本実施形態の火災警報システムは、何れの火災警報器TRにおいても火災が検出されていない状態(待機状態)と、全ての火災警報器TRが警報音を鳴動している状態(連動鳴動状態)と、後述するように火災を検出している(火元の)火災警報器TRのみが警報音を鳴動し、火元以外の火災警報器TRが警報音を停止している状態(連動停止状態)との間で動作状態を遷移させている。すなわち、待機状態において少なくとも何れか1台の火災警報器TRで火災が検出されると、上述したように火元の子局TR2並びに親局TR1から他の全ての子局TR3,…に火災警報メッセージが送信されることで親局TR1と子局TR2,…を含む全ての火災警報器TRで警報音が鳴動されて連動鳴動状態に遷移する。
そして、連動鳴動状態において何れかの火災警報器TRの操作入力受付部6で警報音の鳴動を停止するための操作入力が受け付けられた場合、当該火災警報器TRが親局TR1であれば親局TR1から全ての子局TR2,…に対して警報音の停止を要求するメッセージ(警報停止メッセージ)を送信することにより、あるいは、当該火災警報器TRが子局TR2,…であれば当該子局TR2,…から警報停止メッセージを受け取った親局TR1が他の子局TR2,…に対して警報停止メッセージを送信することにより、火元以外の火災警報器TRで警報音が停止されて連動停止状態に遷移する。但し、火元の火災警報器TRの操作入力受付部6で警報音停止の操作入力が受け付けられた場合、当該火元の火災警報器TRにおいても警報音を停止する。ここで、親局TR1の制御部1は図示しないメモリに親局TR1並びに各子局TR2,…毎の火災検出状況を随時更新しながら保持しており、後述するように全ての火災警報器TRで火災が検出されなくなったときに火災連動状態から待機状態に遷移する。
また、連動鳴動状態から連動停止状態に遷移した場合、親局TR1の制御部1では所定の警報音停止時間(例えば、5分間)の限時を開始する。そして、警報音停止時間が経過したのち、親局TR1の制御部1はメモリに保持している火災検出状況を参照し、全ての火災警報器TRで火災を検出していなければ、第1同期信号B1によって復旧通知のメッセージを送信することで火災連動状態から待機状態に遷移し、仮に少なくとも1台の火災警報器TRで火災を検出していれば、第1同期信号B1によって火災警報メッセージを送信することで連動停止状態から連動鳴動状態へ遷移させる。尚、連動停止状態において何れかの火災警報器TRが新たに火災を検出した場合にも親局TR1の制御部1が第1同期信号B1によって火災警報メッセージを送信することで連動停止状態から連動鳴動状態へ遷移させる。
例えば、図6のタイムチャートに示すように、親局TR1を火元とする火災連動状態(連動鳴動状態)において、火元でない子局TR4の操作入力受付部6で警報音停止の操作入力が受け付けられることで当該子局TR4から警報停止メッセージが送信されると、警報停止メッセージを受け取った親局TR1の制御部1は第1同期信号B1によって警報停止メッセージM2を送信しつつ警報音停止時間の限時を行う。但し、火元である親局TR1では警報部5による警報音の鳴動は継続される。そして、警報音停止時間が経過したのち、親局TR1の制御部1は自らの火災感知部4による火災検出状況並びに子局TR2,…おける火災検出状況を確認し、少なくとも何れか1台の火災警報器TRが火災を検出しているときは再度火災警報メッセージを第1同期信号B1により各子局TR2,…に送信することで連動停止状態から連動鳴動状態へ遷移させる。
一方、図7のタイムチャートに示すように、警報音停止時間内に火災が鎮火して火災感知部4が火災を検出しなくなっていれば、親局TR1の制御部1は警報音停止時間が経過したのちに第1同期信号B1によって各子局TR2,…に復旧通知メッセージを送信し、全ての子局TR2,…から返信されるACKを受け取った時点で連動停止状態から待機状態に遷移し、第1同期信号B1の送信を停止することでTDMA方式による無線通信(同期通信)から間欠送信・間欠受信による無線通信(以下、「非同期通信」と呼ぶ。)に戻る。
また、図8のタイムチャートに示すように、子局TR4を火元とする連動鳴動状態において、火元の火災が鎮火して子局TR4の火災感知部4が火災を検出しなくなれば、子局TR4から親局TR1に宛てて復旧通知メッセージが送信される。当該復旧通知メッセージを受け取った親局TR1の制御部1はメモリに保持している火災検出状況を参照し、全ての火災警報器TRで火災を検出していなければ第1同期信号B1によって復旧通知メッセージM3を各子局TR2,…に送信する。そして、全ての子局TR2,…から返信されるACKを親局TR1の制御部1が受け取れば、連動停止状態から待機状態に遷移し、第1同期信号B1の送信を停止することで同期通信から非同期通信に戻る。
一方、図9のタイムチャートに示すように、新たに別の火災警報器(例えば、子局TR3)で火災が検出された場合、初めの火元である子局TR4から復旧通知メッセージを受け取った親局TR1の制御部1は、メモリに保持している火災検出状況を参照し、子局TR3が火災検出中であることから復旧通知メッセージを送信せず、引き続き火災警報メッセージを送信することで火災連動状態を維持する。
尚、上述した警報停止メッセージや復旧通知メッセージは中継器RYによって親局TR1とサブグループSGに所属する子局TR5,TR6との間で中継される。
ここで、火災連動状態における親局TR1の制御部1が行う処理について、図10のフローチャートを参照して簡単にまとめる。待機状態において何れかの子局TR2,…から火災警報メッセージを受け取ると(ステップS1)、親局TR1の制御部1はメモリに各子局TR2,…毎に保持している火災検出状況を更新(火災非検出から火災検出へ変更)し(ステップS2)、一方、火元の子局TR2,…から復旧通知メッセージを受け取れば(ステップS3)、当該子局TR2,…の火災検出状況を火災検出から火災非検出に更新する(ステップS4)。火災連動状態において何れの子局TR2,…からも復旧通知メッセージを受け取っていないときに何れかの子局TR2,…から警報停止メッセージを受け取った場合(ステップS5)、親局TR1の制御部1は警報を停止することを決定して無線送受信部2から警報停止メッセージを含む同期信号(第1同期信号B1)を送信させる(ステップS6)。また、連動鳴動状態から連動停止状態へ遷移してから警報音停止時間が経過するまでの間は同期信号(第1同期信号B1)によって定期的に警報停止メッセージを送信し(ステップS7,S8,S6)、警報音停止時間が経過したら(ステップS8)、メモリに保持している火災検出状況を参照して火災検出中の火災警報器(親局TR1及び子局TR2,…)が残っているか否かを判断し(ステップS9)、1台でも火災検出中の火災警報器が残っていれば火災連動の継続を決定して無線送受信部2から火災警報メッセージを含む同期信号(第1同期信号B1)を送信させ(ステップS10)、一方、全ての火災警報器が火災非検出になっていれば火災連動状態から待機状態への復旧を決定して無線送受信部2から復旧通知メッセージを含む同期信号を送信させる(ステップS11)。
ここで、何れかの子局TR2,…が復旧通知メッセージに対してACKを返信しなかった場合、親局TR1の制御部1は、再度復旧通知メッセージを含む無線信号を無線送受信部2から送信させ、当該子局TR2,…からACKを受け取った時点、若しくは復旧通知メッセージを所定の複数回数再送してから一定時間が経過した時点で無線送受信部2に同期信号の送信を停止させることが望ましい。また、連動鳴動状態若しくは連動停止状態において親局TR1が故障して同期信号(第1同期信号B1)が送信されなくなった場合、子局TR2,…の無線送受信部2が同期信号(第1同期信号B1)を受信するために受信状態のままとなって電池が著しく消耗してしまう虞があるので、子局TR2,…の制御部1では、同期信号(第1同期信号B1)が受信できない期間が所定時間(例えば、第1同期信号B1の数周期分の時間)以上継続したときに送受信部2を休止させて電池の消耗を抑えることが望ましい。尚、親局TR1から第1同期信号B1が送信されなければ、中継器RYからも第2同期信号B2が送信されなくなるので、サブグループSGに所属する子局TR5,TR6の制御部1でも同期信号(第2同期信号B2)が受信できない期間が所定時間(例えば、第2同期信号B2の数周期分の時間)以上継続したときに送受信部2を休止させて電池の消耗を抑えることが望ましい。
ところで、既に説明したように親局TR1並びに子局TR2,…及び中継器RYには製造段階において親局と子局及び火災警報器TRと中継器RYの区別無くユニークな(固有の)識別符号が割り当てられてメモリに記憶されているが、無線信号の送信元アドレスSA及び送信先アドレスDAとして識別符号を指定した場合、ヘッダHDのビット長が相対的に長くなることで無線信号の送受信時間が増えるために電池の消耗が早くなってしまう。そこで、メイングループMGにおいては親局TR1の識別符号(親局ID)をヘッダHDに含めるとともに、メイングループMGに所属する各子局TR2〜TR4及び中継器RYに対して機器番号を割り当て、送信元アドレスSA及び送信先アドレスDAに指定される機器番号と親局IDとの組み合わせによって、同一システム(メイングループMG)内の各火災警報器TR並びに中継器RYを識別して無線信号を送受信するようにしている。さらに、サブグループSGにおいては中継器RYの識別符号(中継器ID)をヘッダHDに含めるとともに、サブグループSGに所属する各子局TR5,TR6に対して機器番号を割り当て、送信元アドレスSA及び送信先アドレスDAに指定される機器番号と中継器IDとの組み合わせによって、同一システム(サブグループSG)内の各火災警報器TRを識別して無線信号を送受信するようにしている。本実施形態では、親局TR1に「0」、子局TR2〜TR6に「1」〜「5」、中継器RYに「14」の機器番号を割り当てている。また、機器番号はタイムスロットTSの割当にも対応しており、図1に示すように第1同期信号B1直後の先頭のタイムスロットTS1と2番目のタイムスロットTS2が機器番号14の中継器RYに割り当てられ、最後尾のタイムスロットTS16が機器番号1の子局TR2に割り当てられ、さらに先頭に向かって昇順で機器番号2〜5の各子局TR3〜TR6にタイムスロットTS15〜TS12が割り当てられる。
次に、親局TR1に子局TR2,…の識別符号(以下、「子局ID」と呼ぶ。)を記憶させるとともに各子局TR2,…に対して重複の無いように機器番号を割り当てる処理(以下、「登録」と呼ぶ。)について、図11のシーケンス図を参照しながら説明する。
まず、親局TR1の操作入力受付部6で登録を行うためのモード(登録モード)に切り換える操作入力が受け付けられると、操作入力受付部6から登録モードへの切換の操作信号が制御部1に出力され、当該操作信号に応じて、制御部1が登録モードに移行する。一方、登録対象の子局(例えば、TR2)の操作入力受付部6で登録メッセージを送信するための操作入力が受け付けられると、操作入力受付部6から登録メッセージの送信を指示する操作信号が制御部1に出力され、当該操作信号に応じて、制御部1が自己の子局IDを送信元アドレスSAとし、マルチキャストのアドレスを送信先アドレスDAとし、登録メッセージをデータDataとした無線信号を無線送受信部2から送信させる。
親局TR1の制御部1は、子局TR2から登録メッセージを受け取ると、送信元アドレスSAに指定されている子局IDに対して機器番号(例えば、「1」)を割り当てるとともに当該子局IDと機器番号を対応付けてメモリ部1aに記憶する。ここで親局TR1の制御部1は、後述するように登録内容(メモリ部1aに記憶した子局IDと機器番号)を消去する毎にインクリメントされる登録カウンタを有しており、送信元アドレスSAを親局IDとし、送信先アドレスDAを登録メッセージの送信元である子局TR2の子局IDとし、割り当てた機器番号及び登録カウンタのカウント値(初期値は0)からなる登録メッセージをデータDataとする無線信号を子局TR2に対して無線送受信部2より送信させる。但し、データDataの先頭部分には機器番号の割当であることを示す情報(以下、「登録モード情報」と呼ぶ。)が含まれている。
子局TR2の制御部1は、無線送受信部2で受信する無線信号のデータDataの先頭部分に登録モード情報が含まれていれば、当該無線信号の送信元アドレスSAである親局IDと、無線信号で受け取った登録メッセージに含まれている機器番号並びに登録カウンタのカウント値とを対応付けてメモリ部1aに記憶する。その結果、親局TR1の制御部1が子局TR2の子局IDと機器番号並びに登録カウンタのカウント値をメモリ部1aに記憶し、子局TR2の制御部1が親局TR1の親局IDと機器番号並びに登録カウンタのカウント値をメモリ部1aに記憶することで親局TR1に対する子局TR2の登録が完了する。尚、他の子局TR3,…及び中継器RYについても同様の手順で登録すればよい。また、親局TR1の操作入力受付部6で登録モードから通常の動作モードへ復帰するための操作入力が受け付けられて操作入力受付部6から制御部1に操作信号が出力されれば、制御部1は登録モードを終了して通常の動作モードに切り換わる。
ここで、登録モードにおいて親局TR1と子局TR2,…との間で無線信号を送受信する際、送信元アドレスSA及び送信先アドレスDAに子局TR2,…の識別符号(子局ID)を指定しているので、例えば、複数台の子局TR2,…から登録メッセージがほぼ同時に送信された場合においてもこれら複数台の子局TR2,…に対して同一の機器番号が重複して割り当てられるのを防ぐことができる。
ところで、一旦登録された親局IDや子局ID、機器番号、カウント値をメモリ部1aから消去することも可能である。図11に示すように、親局TR1の操作入力受付部6で登録内容を消去するためのモード(消去モード)に切り換える操作入力が受け付けられると、操作入力受付部6から消去モードへの切換の操作信号が制御部1に出力され、当該操作信号に応じて、制御部1が消去モードに移行する。この消去モードにおいて、親局TR1の操作入力受付部6で消去確定の操作入力が受け付けられると、操作入力受付部6から消去確定の操作信号が制御部1に出力され、当該操作信号に応じて、制御部1がメモリ部1aに記憶している子局ID並びに機器番号を消去するとともに登録カウンタのカウント値をインクリメントする。そして、親局TR1の操作入力受付部6で消去モードから通常の動作モードへ復帰するための操作入力が受け付けられて操作入力受付部6から制御部1に操作信号が出力されれば、制御部1は消去モードを終了して通常の動作モードに切り換わる。
一方、子局TR2,…の操作入力受付部6で消去の操作入力が受け付けられると、操作入力受付部6から消去の操作信号が制御部1に出力され、当該操作信号に応じて、制御部1がメモリ部1aに記憶している親局ID並びに機器番号とカウント値を消去する。
而して、親局TR1の登録内容を消去したにも関わらず、登録されていた子局TR2,…の登録内容を消去しなかった場合であっても、新たに登録される子局TR2,…に対しては登録カウンタのカウント値がインクリメントされて変更されているため、異なる子局TR2,…に同一の機器番号が割り当てられたとしても、親局TR1の登録カウンタのカウント値によって現在有効である機器番号を特定することができる。故に、登録内容が消去されずに残っている子局TR2,…は、親局TR1から送信される無線信号のヘッダHDに含まれるカウント値が一致しないために当該無線信号を受信することがないから、複数の子局TR2,…が同時に応答メッセージを含む無線信号を返信して衝突が生じるといった不具合が回避できる。
而して、既に説明した通常の動作モードにおいては、図3に示すようにヘッダHDの親局IDに親局TR1の親局IDを指定するとともにカウント値RCに親局TR1及び子局TR2,…のメモリ部1aに記憶しているカウント値を指定し、送信元アドレスSA及び送信先アドレスDAにはそれぞれ割り当てられた機器番号を指定した無線信号を送受信するので、各火災警報器TRに予め割り当てられている固有の識別符号のみを用いて送信元並びに送信先のアドレスを指定する場合と比較して、識別符号よりも充分に情報量が少なくてもよい機器番号(例えば、識別符号が通常48ビットであるのに対して、機器番号は4〜8ビットでよい)を使用することで1フレームの長さが相対的に短くなり、その結果、無線信号の送信時間が短縮されて電池の消耗を抑えることができる。
また、住宅密集地で複数の住宅に本実施形態の火災警報システムが設置されている場合、通常の動作モードでは隣家の火災警報システムとは親局IDが異なるために無線信号が混信することはないが、登録モードにおいては隣家の火災警報システムから送信された無線信号を受信した子局TR2,…が当該隣家の親局TR1の親局IDを誤って記憶してしまう虞がある。そこで本実施形態では、親局TR1の制御部1が登録メッセージとともに登録モード情報を子局TR2,…に送信し、子局TR2,…の制御部1では、無線送受信部2で受信する無線信号のデータDataの先頭部分に登録モード情報が含まれている場合にのみ、当該無線信号の送信元アドレスSAである親局IDと、無線信号で受け取った登録メッセージに含まれている機器番号並びに登録カウンタのカウント値とを対応付けてメモリ部1aに記憶するようにしている。故に、子局TR2,…において、隣家の火災警報システムから送信される通常の動作モードの無線信号を受信しても、当該無線信号には登録モード情報が含まれていない限りは誤った情報が登録される虞がないものである。
次に、サブグループSGに所属する中継器RY及び子局TR5,TR6の登録について説明する。但し、親局TR1への子局TR5,TR6の登録は既に完了しているものとする。
まず、中継器RYの操作入力受付部13で登録モードに切り換える操作入力が受け付けられると、操作入力受付部13から登録モードへの切換の操作信号が制御部10に出力され、当該操作信号に応じて、制御部10が登録モードに移行する。一方、登録対象の子局(例えば、TR5)の操作入力受付部6で登録メッセージを送信するための操作入力が受け付けられると、操作入力受付部6から登録メッセージの送信を指示する操作信号が制御部1に出力され、当該操作信号に応じて、制御部1が自己の子局IDを送信元アドレスSAとし、マルチキャストのアドレスを送信先アドレスDAとし、親局ID及び登録カウンタのカウント値を含む登録メッセージをデータDataとした無線信号を無線送受信部2から送信させる。
中継器RYの制御部10は、子局TR5から登録メッセージを受け取ると、送信元アドレスSAに指定されている子局IDと登録メッセージに含まれる親局ID及びカウント値を対応付けてメモリ部10aに記憶した後、送信元アドレスSAを中継器IDとし、送信先アドレスDAを登録メッセージの送信元である子局TR5の子局IDとし、当該子局TR5から受け取ったカウント値からなる登録メッセージをデータDataとする無線信号を子局TR5に対して無線送受信部11より送信させる。但し、データDataの先頭部分には登録モード情報が含まれている。
子局TR5の制御部1は、無線送受信部2で受信する無線信号のデータDataの先頭部分に登録モード情報が含まれていれば、自己がサブグループSGに所属したことを示すフラグを立てるとともに、当該無線信号の送信元アドレスSAである中継器IDとカウント値とを対応付けてメモリ部1aに記憶し、さらに送信元アドレスSAを自己の子局IDとし、送信先アドレスDAを中継器IDとし、当該中継器RYから受け取ったカウント値及びメモリ部1aに記憶している機器番号からなる登録応答メッセージをデータDataとする無線信号を中継器RYに対して無線送受信部2より送信させる。
中継器RYの制御部10は、子局TR5から受け取った登録応答メッセージに含まれているカウント値がメモリ部10aに記憶しているカウント値と一致すれば、登録応答メッセージに含まれている機器番号と子局TR5の子局IDとを対応付けてメモリ部10aに記憶する。
続いて、子局TR5,TR6が登録された中継器RYを親局TR1に登録する。中継器RYの操作入力受付部13で登録メッセージを送信するための操作入力が受け付けられると、操作入力受付部13から登録メッセージの送信を指示する操作信号が制御部10に出力され、当該操作信号に応じて、制御部10が自己の中継器IDを送信元アドレスSAとし、メモリ部10aに記憶している親局IDを送信先アドレスDAとし、メモリ部10aに記憶しているカウント値を含む登録メッセージをデータDataとした無線信号を無線送受信部11から送信させる。
親局TR1の制御部1は、中継器RYから受け取った登録メッセージに含まれているカウント値がメモリ部1aに記憶しているカウント値と一致すれば、送信元アドレスSAに指定されている中継器IDに対して機器番号(例えば、「14」)を割り当てるとともに当該中継器IDと機器番号を対応付けてメモリ部1aに記憶し、さらに、割り当てた機器番号及び登録カウンタのカウント値からなる登録メッセージをデータDataとする無線信号を中継器RYに対して無線送受信部2より送信させる。
中継器RYの中継器制御部10は、無線送受信部11で受信する無線信号の送信元アドレスSAである親局IDと、無線信号で受け取った登録メッセージに含まれている機器番号並びに登録カウンタのカウント値とを対応付けてメモリ部10aに記憶し、さらに送信元アドレスSAを自己の中継器IDとし、送信先アドレスDAを親局IDとし、当該親局TR1から受け取ったカウント値及び自己に割り当てられた機器番号、サブグループSGに所属する子局TR5,TR6の機器番号からなる登録応答メッセージをデータDataとする無線信号を親局TR1に対して無線送受信部11より送信させる。
親局TR1の制御部1は、中継器RYから受け取った登録応答メッセージに含まれているカウント値がメモリ部1aに記憶しているカウント値と一致すれば、登録応答メッセージに含まれている中継器RYの機器番号と中継器の中継器IDとを対応付けてメモリ部1aに記憶するとともに、登録応答メッセージに含まれている子局TR5,TR6の機器番号がサブグループSGに所属したことを示すフラグを立ててメモリ部1aに記憶する。
上述のようにしてサブグループSGに所属する子局TR5,TR6の中継器RYへの登録と親局TR1に対するサブグループSGの登録とが完了する。
而して、中継器RYの中継器制御部10は、同期通信において、第1同期信号B1で親局TR1から受け取ったメッセージ(警報停止メッセージなど)を含む第2同期信号B2を先頭のタイムスロットTS1に格納してサブグループSGの子局TR5,TR6へ送信するとともに、サブグループSGの子局TR5,TR6から受け取ったメッセージ(警報停止メッセージや復旧通知メッセージなど)を含む無線信号を2番目のタイムスロットTS2に格納して親局TR1へ送信する。このように中継器RYから無線信号が送信される期間(タイムスロットTS1,TS2)が連続しているので、法規によって規定された送信期間と休止期間の条件を満足させることができる。尚、非同期通信においては、定期監視のとき以外は中継器RYの無線送受信部11が常に受信状態になっているので、サブグループSGに所属する子局TR5又はTR6から送信された火災警報メッセージを直ちにメイングループMGに所属する親局TR1や子局TR2〜TR4へ中継することができる。
ここで、サブグループSGに所属する何れかの子局TR5,TR6で火災が感知された場合、火災を感知した子局(例えば、TR5)から送信された火災警報メッセージを含む無線信号が中継器RYで中継されてメイングループMGに所属する親局TR1や子局TR2〜TR4で受信されることによって待機状態から火災連動状態に移行することになる。しかしながら、メイングループMGに所属する子局TR2〜TR4のなかにはサブグループSGに所属する子局TR5,TR6との間で無線通信が可能なものが存在する場合が有り、その場合にはサブグループSGに所属する子局TR5,TR6から送信された無線信号を直接受信して待機状態から火災連動状態に移行する場合と比べて火災連動が遅れてしまうことになる。
一方、同期通信においてメイングループMGに所属する子局TR2〜TR4に対して親局TR1から送信される第1同期信号B1の送信タイミングと、サブグループSGに所属する子局TR5,TR6に対して中継器RYで中継される第2同期信号B2の送信タイミングとの間にタイムラグが存在しているので、親局TR1と中継器RYにそれぞれの固有の識別符号である親局IDと中継器IDを個別に割り当て、第1同期信号B1の送信元アドレスには親局IDを設定するとともに第2同期信号B2の送信元アドレスには中継器IDを設定することによって、メイングループMGに所属する子局TR2〜TR4が第2同期信号B2を誤って受信してしまったり、あるいはサブグループSGに所属するTR5,TR6が第1同期信号B1を誤って受信してしまうことを防いでいる。しかしながら、非同期通信においては親局IDと中継器IDによって2種類の同期信号B1,B2を区別する必要がないから、中継器IDを親局IDと同一にしても特に支障は生じない。
そこで、非同期通信においてはサブグループSGに所属する子局TR5,TR6の制御部1が中継器IDを親局IDに置き換えて無線信号の送信先アドレスDAに親局IDを含めるようにすれば、サブグループSGに所属する子局TR5,TR6から送信された無線信号をメイングループMGに所属する子局TR2〜TR4が直接受信した際、当該無線信号に火災警報メッセージが含まれているときは、子局TR2〜TR4の制御部1が当該火災警報メッセージを破棄せずに警報部5より警報音を鳴動させることができる。その結果、中継器RYを利用して火災警報器TRの設置範囲を拡大しつつ火災発生時には火災警報器TRを速やかに連動させることができるものである。但し、待機状態から火災連動状態、すなわち、非同期通信から同期通信に移行した後は中継器IDの親局IDへの置き換えを中止する。