JP2009282799A - プラント運転計画立案方法およびそのプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、設備機器の起動停止状態を低コスト化を図って決定し得るプラント運転計画立案方法およびそのプログラムを提供することにある。
【解決手段】本発明に関わるプラント運転計画立案方法は、プラントに対する需要データ値10と当該プラントを構成する設備機器の運転コスト30と設備機器の設備性能40とを用いて、最適化計算手段20が各設備機器の起動停止を決定するプラント運転計画立案方法Pであって、最適化計算手段20は、各設備機器の停止中、稼動状態継続、停止状態から稼動状態に移行を含む稼動状況に応じて各設備機器の運転コストcjの大きさを調整している。
【選択図】図1

Description

本発明は、製造プラント等のプラントの運転計画を立案するためのプラント運転計画立案方法およびそのプログラムに関する。
近年、省エネルギ化のニーズに伴い、製造プラントにおいて、高精度な生産管理をしつつ、運転コストの最小化が求められている。
例えば、製造工程に対して、電力や蒸気を供給する用役プラント(ユーティリティプラント)においては、製造工程からのエネルギ需要を満たしながら、運転コストも低減させる必要がある。また、自家発電設備をもつ製造プラントでは、電力の売り買いを考慮しながら運転コストを最小化させる必要がある。
これまで多くの製造プラントでは、プラント監視制御にあたり運転員の勘と経験に依存するものが多かった。特に、製造製品と異なり、エネルギ供給設備の監視の自動化は、突然、追加需要が入ったりなど需要予測が難しくモデル化が困難なことから、製造工程側に比べて遅れているといわれる。
しかし、近年の計算機性能の向上にともない、プラント監視制御も制御用計算機の導入による自動化範囲拡大が図られ、エネルギ供給設備もその対象となっている。
製造プラントのエネルギ供給設備、すなわちユーティリティプラントにおいては、エネルギ需要を考慮し、設備機器の起動停止を決定する。そのため、予めエネルギ需要が分れば、その需要データを考慮し、設備機器の運転計画を立案することができる。
従って、運転計画立案の自動化も進められ、例えば、特許文献1、特許文献2では、混合整数計画法で解くなど線形計画法の適用が盛んである。
特開2004−317049号公報 特開2004−171548号公報 特開平7−225038号公報 茨木俊秀、福島雅夫:最適化プログラミング:岩波書店(1991)
ところで、前述の線形計画法は、最適化の答えが整数を含む実数値で与えられる。
前述のユーティリティプラントにおいては、省エネルギ運転の観点から、設備機器を待機状態にするのではなく、起動もしくは停止とする計画、例えば、0または1とする計画が必要である。
非特許文献1においては、混合整数計画問題も記載されているが、計算過程が複雑であり、時々刻々変化する需要に対応させるには不向きであると考えられる。
また、特許文献1、特許文献2は、混合整数計画法で解く方法が記載されているが、プログラムが重い、調整係数の設定が難しいなどの問題がある。
本発明は上記実状に鑑み、製造プラント等のプラントの運転計画立案、すなわちプラントの設備機器の起動停止状態を低コスト化を図って決定し得るプラント運転計画立案方法およびそのプログラムの提供を目的とする。
上記目的を達成すべく、第1の本発明に関わるプラント運転計画立案方法は、プラントに対する需要データ値と当該プラントを構成する設備機器の運転コストと設備機器の設備性能とを用いて、最適化計算手段が各設備機器の起動停止を決定するプラント運転計画立案方法であって、最適化計算手段は、各設備機器の停止中、稼動状態継続、停止状態から稼動状態に移行を含む稼動状況に応じて各設備機器の運転コストの大きさを調整している。
第2の本発明に関わるプラント運転計画立案方法のプログラムは、プラントに対する需要データ値と当該プラントを構成する設備機器の運転コストと設備機器の設備性能とを用いて、各設備機器の起動停止を決定するプラント運転計画立案方法のプログラムであって、コンピュータに、各設備機器の停止中、稼動状態継続、停止状態から稼動状態に移行を含む稼動状況に応じて各設備機器の運転コストの大きさを調整させる手順を実行させている。
本発明によれば、プラントの設備機器の起動停止状態を低コスト化を図って決定し得る。
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
<概要>
本発明の実施形態の製造プラント運転計画立案方法Pは、製造プラントなどの設備において、エネルギ需要データと、ユーティリティプラントの運転コストおよび設備機器性能を考慮し、ユーティリティプラントの供給能力が需要を上回りつつ、最小の運転コストとなるように当該設備機器の起動停止を決定し、製造プラントなどの設備の低コスト運転、すなわち省エネルギ運転を実現したものである。
<<全体構成>>
図1は、本発明に係わる実施形態の製造プラント運転計画立案方法Pを実現する構成を示す図である。
実施形態の製造プラント運転計画立案方法Pは、入力データである製造工程のエネルギ需要データ10、運転コストデータ30、および設備性能データ40と、処理部である最適化計算手段20および運転計画立案手段50と、出力である運転計画データ60とを用いて実現される。なお、製造プラント運転計画立案方法Pを実現するハードウェア構成は後記する。
<エネルギ需要データ10>
図1に示す入力データのエネルギ需要データ10は、製造プラントの製造工程の要求を記載したものであり、当日の需要または予測データ等が含まれる。エネルギとしては、例えば工場等で使用される電力、蓄熱槽で温水を作るため等に使用される蒸気等がある。
エネルギ需要データ10には、単位時間毎のエネルギ需要量が記録される。
図2は、実施形態のエネルギ需要データ10の一例を示した図である。
図2の1列目の2行目以降の時刻は、需要変化を取得する単位時間であり、例えば時間単位や日単位などがある。
図2の1行目に示す製造プラントのエネルギ需要項目、すなわち製造プラントの電力(需要)、蒸気(需要)、その他A(需要)、その他B(需要)、その他C(需要)毎に、図2の1列目に示す時刻単位に、2行目以降に時系列順に各データが記載される。
図2においては、1時間間隔のエネルギ需要データ10を記載した例を示している。
例えば、図2に示す時刻3のときの電力需要がw003、蒸気需要がF003である。その他、需要対象に応じて図2の列項目のエネルギ需要項目が追加される。なお、エネルギ需要データ10は予測値の場合もある。
<運転コストデータ30>
図1に示す入力データである運転コストデータ30は、製造プラントの設備機器の運転に要するコストが記載される。設備機器毎に、運転コストとして、例えば、単位時間当りの費用が記録される。運転コストは、金額で表される数値データである。
図3は、実施形態の運転コストデータ30の一例を示した図である。
製造プラントのユーティリティ設備機器毎、すなわち図3に示す1列目の設備機器IDのA、B、C、…のそれぞれのユーティリティ設備機器毎に、運転に要するコスト(図3の2列目の2行目以降)を記載する。運転状態に応じて運転コストを更新する場合は、例えばその他の項目に記載のデータを用いて、更新する。例えば、設備機器IDがAの場合、定常運転時の運転コストが1時間当りp1を示し、その他q1は、Aを停止状態から起動する際にかかる起動コストを示している。設備機器IDがB、C、…の場合も同様である。
例えば、設備機器Bが停止状態の場合、起動に要するコストとしては、その他に記載したq2であり、停止状態の設備機器Bの運転コストは、p2+q2として設定する。
<設備性能データ40>
図1に示す入力データである設備性能データ40は、製造プラントの設備機器のもつエネルギ供給能力が記録される。例えば、単位時間当りに供給可能な発電量や蒸気発生量などであり、設備機器毎にもつ仕様である。
図4は、実施形態の設備性能データ40の一例を示した図である。
製造プラントのユーティリティ設備機器毎に、供給可能な定格量をエネルギ項目毎に記載している。例えば、図4に示す設備機器IDがAの機器は、これ単体で単位時間当りに電力E1、蒸気S1を供給可能である。設備機器IDがB、C、…の場合も同様である。
<最適化計算手段20>
図1に示す処理部の最適化計算手段20は、所定の制約条件を満たし、所定の目的関数を最適化する問題を解く機能を有する。
所定の制約条件とは、第1に、供給能力を超える供給は不可能であることから製造プラントの供給能力の範囲でエネルギを生産すること、第2に、エネルギ生産量はマイナスではあり得ないことからエネルギ生産量がゼロ以上であることである。
所定の目的関数とは、製造プラントの運転コストを表す数式や温暖化ガス排出量を表す数式などである。運転コストや温暖化ガス排出量を最適化、すなわち最小化することを目的とする。
また、設備の起動停止に関する運転計画を作成することから、例えば、設備の起動が「1」、設備の停止が「0」で表されるので、最適化計算手段20では、整数計画問題を解く機能を具備し、設備機器の起動停止状態を決定する。この整数計画問題は様々な手法が提案されており、前記の非特許文献1にも記載がある。
本実施形態では、非特許文献1に記載される359頁から394頁に記載の「ナップサック問題」の求解法を用いる。
<運転計画立案手段50>
図1に示す処理部の運転計画立案手段50は、上記の最適化計算手段20の出力値を運転計画データとして対応付ける機能を有する。最適化計算手段20の出力結果は、設備機器の起動停止状態に対応した「1」か「0」のデータ、若しくはオン/オフデータである。
また、当該設備機器の状態に応じて、前記の運転コストデータ30を更新する場合がある。
例えば、設備機器が停止状態の場合は、起動に要する起動コストを加えて運転コストデータ30を大きな値に修正する。また、稼動している場合は、起動コストがかからないので、その状態を保つように運転コストを小さな値に修正する。停止に要するコストがかかる場合も同様に運転コストを小さく修正する。なお、起動コストが大きいのは、例えば、ボイラの場合、起動に際してホットスタンバイの空回しの状態をとるからである。
この構成により、運転中の設備機器は運転を継続し、停止中の設備機器は停止を継続するようにして、低コスト化、省エネルギ化が図れる。
<運転計画データ60>
図1に示す運転計画データ60は、上記の運転計画立案手段50の出力値である。ただし、運転計画データ60は、製造プラントの起動停止信号の場合もあり、両方とすることも可能である。本実施形態では、起動停止スケジュールの運転員向けに提示するデータとして、後記する。
<<ハードウェア構成>>
次に、実施形態の製造プラント運転計画立案方法Pを具体化するためのハードウェア構成について、図5を用いて説明する。
図5は、製造プラント運転計画立案方法Pを実現するハードウェアを示した概念図である。
実施形態の製造プラント運転計画立案方法Pは、コンピュータ1と該コンピュータ1の出力装置であるプリンタ2を用いて実現される。
コンピュータ1は、演算装置であるCPU(Central Processing Unit)3と、記憶装置である主記憶装置4およびHDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置5とを有しており、これらはシステムバス6により接続されている。
補助記憶装置5には、エネルギ需要データ10が記憶されるエネルギ需要データファイル11と、運転コストデータ30が記憶される運転コストデータベース31と、設備性能データ40が記憶される設備性能データベース41とが格納されている。
エネルギ需要データファイル11は、コンピュータ1の入力装置であるキーボード1kを用いて入力して作成してもよいし、他の例えば、表計算ソフトで作られたテキストデータファイルを使用してもよいし、その作成態様は限定されないことは勿論である。
また、補助記憶装置5には、図1に示す最適化計算手段20を具現化するための最適化計算プログラム21と運転計画立案手段50を実現するための運転計画立案プログラム51とが目的プログラムとして格納されるとともに、これらのアプリケーションプログラムが動作するためのOS(Operating System)が格納されている。
図1に示す最適化計算手段20、運転計画立案手段50はそれぞれ、CPU3が、補助記憶装置5に格納され対応する最適化計算プログラム21、運転計画立案プログラム51を主記憶装置4にロードし実行することにより、具現化される。
図1に示す製造プラント運転計画立案方法Pの出力である運転計画データ60は、図5に示す出力装置のプリンタ2で印刷してもよいし、出力装置のディスプレイ1dに表示してもよいし、或いは、出力ファイルを作成し、CD(Compact Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の磁気記録媒体に記録してもよい。
また、作成した運転計画データ60の出力ファイルを通信ネットワーク(図示せず)を介して、製造プラントの運転員の端末装置(図示せず)に送信することも可能である。
<<製造プラント運転計画立案方法Pの処理>>
次に、製造プラント運転計画立案方法Pの処理について、図6に従って説明する。
図6は、実施形態の製造プラント運転計画立案方法Pの処理の流れを示すフローチャートである。
製造プラント運転計画立案方法Pは、始めに、最適化計算手段20(図1参照)がエネルギ需要データ10をエネルギ需要データファイル11から読み込む(図6のS10)。
エネルギ需要データ10は、図2に示すように、各対象エネルギの需要項目(図2の1行目2列以降)毎に所定の時間間隔で並んだ数値データ(図2の2行2列目以降参照)であり、以下の[表1]の書式をとる。
Figure 2009282799
エネルギ需要データ10(図2参照)は、前記したように、予測値の場合もある。この場合は、需要予測データがエネルギ需要データ10となり、対応する時刻は未来の時刻が記載される。
同様に、最適化計算手段20(図1参照)は、運転コストデータ30(図3参照)を運転コストデータベース31から読み込む(図6のS20)。
図3に示す運転コストデータ30は、前記したように、設備機器毎に運転にかかるコストを金額ベースで記載したものである。主に、燃料費、運転に要する人件費などから決定され、図3に示すように、以下の[表2]の書式をとる。
Figure 2009282799
[表2]において、運転コストは、定常運転のコストであり、追加コストは、図3のその他に記載される起動コストなどが相当する。
続いて、最適化計算手段20(図1参照)は、設備性能データ40(図4参照)を設備性能データベース41から読み込む(図6のS30)。
図4に示す設備性能データ40は、前記したように、各設備機器の生産能力やエネルギ供給能力を示すデータである。各設備機器毎にデータ定義をするが、例えば複数のエネルギ供給が可能な設備機器を考慮し、性能項目を複数設定する。例えば、エネルギ供給能力と定格値を併記した場合を[表3]に示す。
Figure 2009282799
こうして、エネルギ需要データ10、運転コストデータ30、および設備性能データ40を読み込んだ後、最適化計算手段20において、整数計画問題を構築の上、後記する最適化計算を実行する(図6のS40)。
本実施形態の整数計画問題は、非特許文献1の359頁に記載の通り、目的関数と制約条件から構成される。
[式1] 目的関数:Σcj×xj (i=1,...,m , j=1,...,n)
[式2] 制約条件:Σaij×xj ≦ bi (i=1,...,m , j=1,...,n)
なお、変数jは運転計画の対象となる設備機器毎に設定され、変数iは需要項目毎に設定される。例えば、設備が10台ある場合は、j=1,...,10である。また需要項目が電力と蒸気の場合、i=1,2となる。
図2に示すエネルギ需要データ10の各需要量は、[式2]の変数biであり、図3に示す運転コストデータ30は[式1]の変数cjであり、図4に示す設備性能データ40は、[式2]の変数aijに対応する。
例えば、図4に示すように、設備機器Cの電力については、需要項目は1つ目のi=1であり、設備機器Cの設備機器IDが3つ目であるので、j=3であり、
[式3] a13 = E3
となる。
また、変数xjは設備機器が運転しているか停止しているかを示す変数である。すなわち、運転または停止に対応して、0または1の整数値が対応する。
図6のS40の最適化計算(詳細は後記)の後、この最適化計算結果を読み込む最適化計算結果読み込み処理が実行される(図6のS50)。
この最適化計算結果読み込み処理は、図6のS40の最適化計算結果である0または1の整数値を設備機器の状態が運転か停止に対応付けする。対応付けした結果に基づいて、設備機器の起動停止を制御するか、或いは運転計画を立案する。
続いて、図6のS40の最適化計算結果に基づき、運転コストデータ30を更新する(図6のS60)。
図6のS60では、設備機器が運転状態か停止状態かにより、運転コストデータ30を修正する。例えば、停止状態の設備機器jについては、該当する通常の運転中の運転コストに、起動に要するコストを考慮する。以下に更新式を示す。運転コストデータ30の変数cjは
[式4] cj = cj + (起動コスト)
例えば、図3に示すように、設備機器Bが停止状態の場合、起動に要するコストは、その他に記載のq2なので、停止状態の設備機器B全体の運転コストをp2+q2として設定する。
[式4]に従うと、設備機器Bは2つ目の設備機器なので、jは2であり
[式5] c2 = p2 + q2
となる。
[式4]では起動コストを加算したが、[式1]の目的関数によっては減算の場合もある。
同様に、運転状態の設備機器jについては、定格運転中は燃料が少なくて済む場合を考慮し、運転コストを更新する場合もある。
[式6] cj = cj − (定格運転により減少する燃料コスト相当)
となる。
[式4]および[式6]は、次回の最適化計算実行(図6のS40)に反映される。
続いて、運転計画作成(図6のS70)は、最適化計算結果読み込み(図6のS50)から運転計画を作成する。具体的には、時刻毎に設備機器の起動停止パターンを出力する。出力する形式としては、表形式、ガントチャートなどがある。
最終的に、図6のS70までで得た結果を書き出す等して出力する(図6のS80)。なお、設備機器の制御信号として出力する場合もある。
以上の計算を、エネルギ需要データ10が入力される度か、または、定周期で実行する。
定周期とは、エネルギ需要データ10(図2参照)に記載の時刻間隔に従う場合、或いは時刻間隔の整数倍の間隔で実行する場合がある。
例えば、時刻データ10が1時間間隔の場合、[表4]のようになる。
Figure 2009282799
計算実行間隔は1時間毎、あるいはその整数倍である1日の24時間毎となる。
図2に示す(需要項目)の各需要値のエネルギ需要データ10を、[式2]の制約条件の右辺のbiの導出に用いる。
<<最適化計算手段20>>
次に、最適化計算手段20における演算について詳述する。
図7は、実施形態の製造プラント運転計画立案方法Pにおける最適化計算手段20を示した図である。
本実施形態では、整数計画問題の解法として、前記した非特許文献1のナップサック問題を適用する。
まず、図7に示すように、稼動状態の設備機器グループ200と停止状態の設備機器グループ210が与えられる。
これは、前記[式1]および[式2]の変数xjの値に対応する。すなわち、変数xjが0または1何れかの運転状態を示す値の場合は、機器jは稼動状態の設備機器グループ200内にあり、変数xjが0または1何れかの停止状態を示す値の場合は、機器jは停止状態の設備機器グループ210内にある。
例えば、xjとして運転状態が1をとる場合には停止状態は0とし、その反対に運転状態が0をとる場合、停止状態は1とする。
次に、整数計画問題求解処理手段250にて、前記の[式1]と[式2]を解く。
[式1] 目的関数:Σcj×xj (i=1,...,m , j=1,...,n)
[式2] 制約条件:Σaij×xj <= bi (i=1,...,m , j=1,...,n)
目的関数の最適化については、最大化または最小化とするが、本実施形態では、非特許文献1の360頁の記載に従い最大化をとる。すなわち、
[式7] 目的関数:Σcj×xj → 最大化 (i=1,...,m , j=1,...,n)
とする。
そのため、本実施形態では、停止状態の設備機器グループ210に大きな運転コストがかかる、すなわちコスト効率の悪い設備機器を含め、全設備機器の運転コストの合計を最小化することができるか、その組み合せを求める。
次に、[式2]の右辺のbi(需要量)については、停止状態の設備機器による供給量と、図2に示すエネルギ需要データ10の需要量との合計が、設備機器の最大供給能力を超えないようにする。何故なら、全設備機器の供給量は、エネルギ需要データ10の需要量をまかなう稼動中の設備機器の供給量と停止状態の設備機器の供給量との和であり、エネルギ需要データ10の需要量をまかなう稼動中の設備機器の供給量は、エネルギ需要データ10の需要量以上の関係にあるからである。
従って、
(停止状態の機器能力)+(需要量) <= (全機器最大能力)
であり、
(停止状態の機器能力) <= (全機器最大能力)―(需要量)
となるので、
[式8] bi <= (全機器最大能力) ― (需要量i)
である。
[式7]および[式8]により、停止させる設備機器の運転コストを最大化する問題を解くことで、エネルギ需要をまかなう製造プラントの全設備機器の運転コストの最小化を満たすこととする。[式8]の如く制約条件をかけることで、前記の図2に示すエネルギ需要データ10に記載の需要データを下回らないように、停止する設備機器に制約を満たした解を導出する。
<解法>
[式2]および[式8]より、
[式9] Σaij×xj <= bi <= (全機器最大能力) ― (需要量i)
を得る。
非特許文献1の360頁の(13.3)式を用いて、まず、電力(i=1)について、下記の[式10]の関係になるように、添字jの順序を並べ替える。
[式10]c1/a11 >= c2/a12 >= c3/a13 >= c4/a14 >= …
なお、前記したように、cjは、各設備機器(j=1、2、…)の運転コスト(図3参照)であり、aijは、各設備機器(j=1、2、…)の設備性能(i=1(電力))(図4参照)である。
[式10]の順、すなわち、運転コストがかかる、すなわちコスト効率の悪い各設備機器の順(j=1、2、…)に[式8]のΣaij×xjの演算を行い、電力に関して、[式9]の制約条件を満たし、かつ、[式7]を最大化、すなわち、停止した設備機器の総コストが最大となる停止状態の設備機器グループ210をナップサック法により求める。
続いて、蒸気(i=2)について、[式11]のように、添字jの順序を並べ替える。
[式11]c1/a21 >= c2/a22 >= c3/a23 >= c4/a24 >= …
なお、前記したように、cjは、各設備機器(j=1、2、…)のコスト(図3参照)であり、aijは、各設備機器(j=1、2、…)の設備性能(i=2(蒸気))(図4参照)である。
[式11]の順、すなわち、運転コストがかかる、すなわちコスト効率の悪い設備機器の順(j=1、2、…)に[式8]のΣaij×xjの演算を行い、蒸気に関して、[式9]の制約条件を満たし、かつ、[式7]を最大化、すなわち、停止した設備機器の総コストが最大となる停止状態の設備機器グループ210をナップサック法により求める。
この蒸気に関しての計算結果により、電力に関しての停止状態の設備機器グループ210に入った設備機器で、蒸気に関しての稼動状態の設備機器グループ200に入った設備機器があれば、最終的に稼動状態とする。これが、設備機器の制約を満たした解となる。
以上、エネルギが電力および蒸気の場合を説明したが、エネルギが3以上の場合も同様に、各エネルギ項目で、それまでのエネルギ項目の計算で未稼動状態の設備機器で、本エネルギ項目の計算で稼動状態にすべき設備機器が現れた場合には、稼動状態にするという解法で解くことができる。
なお、上記解法は一例を示したものであり、これ以外の解法を適用してもよく、この解法に限定されない。
このように、最適化計算を実行した結果、図7に示すように、設備機器Aが停止、設備機器Bが稼動、設備機器Cが稼動を継続する結果となった場合、すなわち、
設備機器A : 稼動状態 → 停止状態
設備機器B : 停止状態 → 起動状態
設備機器C : 稼動状態継続
の場合、運転コストデータは以下のように更新する。
設備機器Aは、稼動状態から停止状態となるので、運転コスト変数c1は、通常の運転コストp1に起動コストq1が加算され(図3参照)、運転コスト変数c1は、下式のようになる。
c1 = p1 + q1
設備機器Bは、停止状態から起動状態となるので、運転コスト変数c2は、通常の運転コストから燃料節約コストr2が減算され、運転コスト変数c2は、下式のようになる。
c2 = p2 ― r2
なお、r2は機器Bが稼動状態を継続したことによる燃料節約コストを示すものである。
設備機器Cは、稼動状態を継続するので、運転コスト変数c3は、通常の運転コストp3であり、下式のようになる。
c3 = p3
このように、運転コスト変数cjを更新することにより、運転中の設備機器は、出来るだけ運転を継続し、停止中の設備機器は、できるだけ停止を継続することにより、起動コストを削減したり、燃料節約コストを生み出したりして、製造プラントの運転における低コスト化を図ることができる。
<計算結果>
図8は、実施形態の製造プラント運転計画立案方法Pを用いた場合の計算例を示した図である。図8(a)は、発電量の計算例を示した図であり、横軸に経過の時刻(h)をとり、縦軸に発電量(kWh)をとっている。図8(b)は、蒸気発生量の計算例を示した図であり、横軸に経過の時刻(h)をとり、縦軸に蒸気発生量(kWh)をとっている。
図8(a)、図8(b)は、電力と蒸気の需要変化をもとに、設備機器5台(A、B、C、D、E)の起動停止を計算している。この例では、需要変化の単位時間は、1時間(図8の横軸に示す)である。
図8(a)、(b)に示す計算結果より、全ての時刻において供給能力は需要を上回っているか同等である。すなわち、全ての時刻において、供給能力が需要を下回ることはない。
図8(a)に発電量の供給が過剰な時間帯もあるが、これは蒸気需要の立ち上がりが大きい時間帯(図8(b)参照)であり、蒸気需要を確保する結果、発電量も多く供給した結果となっている。このように、複数の制約条件を同時に考慮しているので、特定のエネルギが需要を下回ることが回避できる。
図9は、本実施形態を適用した結果、得られた製造プラントの運転計画をガントチャートで示した図である。
5台の設備機器の起動停止スケジュールを表示することで、ユーティリティ設備の運転計画を製造プラントの運転員に提示することが可能となる。
<<まとめ>>
本実施形態は、製造プラントからユーティリティプラントに対するエネルギ需要データ10(図2参照)と、ユーティリティプラントの運転コストデータ30(図3参照)および設備機器性能データ40(図4参照)を考慮し、ユーティリティプラントの供給能力が需要を上回りつつ、最小の運転コストとなるように、設備機器の起動停止を決定し、得られた結果から運転計画を立案する。起動停止決定のための計算方法は、エネルギ需要データ10の更新頻度より、前記の如く、高速に解ける方法を用いる。
<作用効果>
本実施形態の製造プラントの運転計画立案方法によれば、製造プラントからユーティリティプラントに対するエネルギ需要と、ユーティリティプラントの運転コストおよび設備機器性能(能力)を考慮し、ユーティリティプラントの供給能力が需要を上回りつつ(需要が供給能力を上回ることがなく)、最小の運転コストとなるように、当該設備機器の起動停止を決定し、得られた結果から運転計画を立案するので、省エネルギ運転でありつつ、製造工程に対してエネルギの安定供給が可能となる。
また、起動停止決定のための計算方法は、エネルギ需要データ10の更新頻度より、前記した高速に解ける方法を用いるので、エネルギ需要データ10が急遽変更されても、直ちに運転計画変更に対応可能となる。例えば、従来、数10分かかった計算時間が、本実施形態では、数分以内で計算を完了することができる。
なお、実施形態の図8、図9では、エネルギ項目として電力、蒸気を例示して説明したが、本発明は製造プラントに限定されるものではなく、多くの製造プロセスに幅広く適用可能である。
また、省エネ監視や需要予測にも適用可能であり、たとえば二酸化炭素量の制約条件を考慮することも可能である。
本発明に係わる実施形態の製造プラント運転計画立案方法を実現する構成を示す図である。 実施形態のエネルギ需要データの一例を示した図である。 実施形態の運転コストデータの一例を示した図である。 実施形態の設備性能データの一例を示した図である。 実施形態の製造プラントの運転計画立案方法を実現するハードウェアを示した概念図である。 実施形態の製造プラント運転計画立案方法の処理の流れを示すフローチャートである。 実施形態の製造プラント運転計画立案方法における最適化計算手段を示した図である。 (a)は、実施形態の製造プラント運転計画立案方法を用いた発電量の計算例を示した図であり、(b)は、実施形態の製造プラント運転計画立案方法を用いた蒸気発生量の計算例を示した図である。 実施形態の製造プラントの運転計画をガントチャートで示した図である。
符号の説明
1 コンピュータ
10 エネルギ需要データ(需要データ値)
20 最適化計算手段
21 最適化計算プログラム(プログラム)
30 運転コストデータ(運転コスト)
40 設備性能データ(設備性能)
51 運転計画立案プログラム(プログラム)
60 運転計画データ
Cj 運転コスト
P 製造プラント運転計画立案方法(プラント運転計画立案方法)
q1 起動コスト
r2 燃料節約コスト(燃料低減値)

Claims (12)

  1. プラントに対する需要データ値と当該プラントを構成する設備機器の運転コストと前記設備機器の設備性能とを用いて、最適化計算手段が前記各設備機器の起動停止を決定するプラント運転計画立案方法であって、
    前記最適化計算手段は、前記各設備機器の停止中、稼動状態継続、停止状態から稼動状態に移行を含む稼動状況に応じて前記各設備機器の運転コストの大きさを調整する
    ことを特徴とするプラント運転計画立案方法。
  2. 前記プラントの設備機器の起動停止を、当該プラントの供給能力が当該プラントに対する需要データ値の大きさを下回らないように決定する
    ことを特徴とする請求項1に記載のプラント運転計画立案方法。
  3. 前記プラントの設備機器の起動停止を、当該プラントに対する需要データ値の大きさと前記全設備機器の供給能力との差を制約条件とし、前記設備機器の運転コストを最小化し決定する
    ことを特徴とする請求項1に記載のプラント運転計画立案方法。
  4. 前記プラントの設備機器の起動停止を、当該プラントに対する需要データ値の大きさと前記全設備機器の供給能力との差を制約条件とし、前記設備機器の運転コストを最小化する整数計画問題を解くことで決定する
    ことを特徴とする請求項1に記載のプラント運転計画立案方法。
  5. 前記プラントの設備機器の起動停止を、当該プラントに対する需要データ値の大きさと前記全設備機器の供給能力との差を制約条件とし、前記設備機器の運転コストを最小化する整数計画問題をナップサック問題に帰着させて解くことで決定する
    ことを特徴とする請求項1に記載のプラント運転計画立案方法。
  6. 前記制約条件は、停止状態の前記設備機器の供給能力が前記全設備機器の供給能力からの当該プラントに対する需要データ値の大きさの差以下である
    ことを特徴とする請求項3から請求項5のうちの何れか一項に記載のプラント運転計画立案方法。
  7. 前記プラントの設備機器が起動状態もしくは停止状態かで該設備機器の運転コストを調整する
    ことを特徴とする請求項1に記載のプラント運転計画立案方法。
  8. 前記プラントの設備機器が停止状態の場合、該設備機器の運転コストを該設備機器の通常運転の運転コストに当該設備を起動するのに要する起動コストを加算し決定する
    ことを特徴とする請求項1に記載のプラント運転計画立案方法。
  9. 前記プラントの設備機器が起動状態の場合、該設備機器の運転状態が継続することによる燃料低減値をもって該設備機器の運転コストを調整する
    ことを特徴とする請求項1に記載のプラント運転計画立案方法。
  10. 前記プラントの設備機器の起動停止を決定した結果を、ガントチャートで表示する
    ことを特徴とする請求項1に記載のプラント運転計画立案方法。
  11. 前記プラントの設備機器の起動停止を、当該プラントに対する需要データ値の大きさを制約条件とし、当該設備機器の運転コストを最小化するナップサック問題を解くことで決定する
    ことを特徴とする請求項1に記載のプラント運転計画立案方法。
  12. 請求項1から請求項11のうちの何れか一項に記載のプラント運転計画立案方法を
    コンピュータに実行させるためのプログラム。
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