JP2009282039A - 沸騰水型原子炉用燃料集合体のウラン濃縮度配列決定法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】最高ウラン濃縮度4.9〜5.0wt%の酸化ウランペレットからなる燃料集合体のウラン濃縮度配列法において、有効発熱長の下端より1/3上方まで一断面Sにおいて、ガドリニア燃料棒が最外層以外に配置、最外層ではコーナ部の燃料棒又はコーナ部とその両隣との燃料棒のうち複数本は最高ウラン濃縮度未満、その他の燃料棒の半数以上は最高ウラン濃縮度、内層部領域における内層部の領域毎にガドリニア燃料棒の相対出力比(PFGd/PFU)によって定まる定数Lを定義し、Ei≦Emax/α×{(aG+l)/L−β}式を満たすもの(Eiは燃料棒iのウラン濃縮度、Emaxは集合体内最高ウラン濃縮度、Gは燃料棒iのガドリニア濃度、aは−0.0092、αは0.64、βは0.36)。
【選択図】図7
Description
格子タイプについて、BWRには2種類の格子の炉心がある。一つは,燃料集合体を取り囲むチャンネルボックスの外側に位置するギャップ水の幅が制御棒挿入側と反制御棒挿入側とで等しい対称炉心である(以下、C格子炉心と記す)。もう一つは,制御棒挿入側が反制御棒挿入側より広い非対称炉心である(以下、D格子炉心と記す)。D格子炉心では,中性子の減速は,ギャップ幅が広い制御棒側で大きく,ギャップ幅が狭い反制御棒側で小さくなるため,C格子炉心に比べて,燃料集合体内の燃料棒の出力分布の歪みは自ずと大きくなる。
BWRでは上記の如き格子タイプや燃料タイプに対し経済性を高めるために、
1)プラントの設備利用率の向上による経済効果をねらった運転サイクルの長期化やプラントの出力アップレート化と、
2)燃料集合体の1体当たりの取出燃焼度を大きくして経済性向上をねらった平均取出燃焼度の高い燃料の設計と、
が有力な方法として考えられている。ここで、プラントの出力アップレート化とは、原子炉の定格出力の増強を意味する。
(a) 給水流量測定の不確実さを低減し出力をより正確に計算することで1.5%程度の出力増加を図るパワー・アップレートと、
(b) 計装の設計値の変更により7%程度までの出力増加を図る、通常は発電所の大がかりな設備変更を伴わないストレッチ・アップレートと、
(c) さらに高圧タービンや復水ポンプ、モータ、発電器、変圧器といったバランス・オブ・プラントの大がかりな改修による20%程度の出力増加を図る拡大ストレッチ・アップレートと
に分類される。尚、パワー・アップレートとストレッチアップ・レートとは、拡大ストレッチ・アップレートに比べ比較的容易にできる可能性が高く、この場合、原子炉の定格出力の増強は1.5乃至7%程度となる。
前記1)における運転サイクルの長期化やプラントの出力アップレート化の何れの場合でも、燃料を装荷し原子炉を運転してから所定の運転期間を終えるまでの1サイクルあたりに発生する総エネルギーは大きくなる。換言すれば、所要サイクル燃焼度が大きくなるので、同じ平均取出燃焼度を得るためには燃料の濃縮度を高めておく必要がある。また、前記2)の高燃焼度化燃料の設計に際しても、予め燃料の反応度を高くしておく必要があることから、燃料の高濃縮度化は欠かせない。このように上記1)、2)の方法に対しては、燃料集合体に対して、ウラン235で代表される核分裂性物質の平均濃縮度を高めることが、有効且つ不可欠である。
上記1)による所要サイクル燃焼度の増加に伴い、長期間に亘り反応度を抑制するためには、燃料中に添加するガドリニアで代表される可燃性毒物についても長い期間の毒作用が必要となる。このため、通常は、添加するガドリニアの濃度を予め濃くしておく必要がある。また、一般に、高燃焼度化を目的に平均取出燃焼度を高める場合、運転サイクルの始めに装荷する新燃料の取替体数が少なくなることから、サイクル初期の反応度を適切に制御するためには、新燃料、つまり、未燃焼時の燃料の反応度をより多く抑制しておく必要がある。通常は、ガドリニア入り燃料棒の本数を増加させておく必要がある。
原子炉運転中の熱的制限値には、最小限界出力比(MCPR)と最大線出力密度(MLHGR)とがある。最小限界出力比(MCPR)は、燃料棒表面が冷却不十分となる結果、沸騰遷移を起こし、加熱により損傷を起こさないよう監視するものである。一般に、燃料棒の出力が小さいほど、燃料棒の表面熱流束が小さいほど最小限界出力比に対する運転余裕は大きくできる。これとは別に、冷却水の流動特性を改善することでも沸騰遷移を起こりにくくすることができ、最小限界出力比の運転余裕を大きくできる。これには、例えば、燃料棒を束ねる部材であるスペーサに対し、燃料棒表面に液滴を付着させるよう冷却水に横流れや旋回流もたらす構造とする等の方法がある。このように最小限界出力比については、集合体中の燃料棒の表面積を大きくし表面熱流束を小さくするために燃料棒本数を増やす等といった、燃料集合体の基本構造を変えることなく、スペーサなどの構成部材の変更によっても、ある程度の運転余裕の拡大を図ることができる。
もう一つの熱的制限値は最大線出力密度である。まず、線出力密度(LHGR)は(2)式で示される。
ここで、
LHGRave :定格出力時における燃料集合体の平均線出力密度
PR :炉心内の燃料集合体の出力について、当該燃料集合体と平均値との比
PA :燃料集合体断面の出力について、当該軸方向位置と平均値との比
PF :燃料集合体断面の燃料棒の出力について、当該燃料棒と平均値との比、つまり燃料棒相対出力
である。
ここで、
PBave :定格熱出力運転における燃料集合体1体当たりの平均出力(=定格熱出力/炉内燃料体数)
FRAC:総出力のうち燃料棒中で発生する割合
N :燃料集合体1体当たり燃料棒本数
AFL :燃料有効長
である。
核燃料には、酸化ウランを焼結したペレットが用いられる。安全設計上は、燃料棒が周方向1%の塑性歪みを起こす時点を燃料棒の損傷限界として定めている。燃料棒はプラントの過渡変化により過出力状態となって、燃料棒の出力が上昇しても1%塑性歪みを起こすことがないよう設計される。燃料棒が1%塑性歪みを起こす出力を、1%塑性歪み相当出力と呼ぶ。通常、ウラン燃料棒の場合、1%塑性歪み相当出力は、通常運転時における最大線出力密度の運転制限値に対して、およそ70%の過出力である。これは、通常、最大線出力密度の運転制限値44kW/mに対し、およそ75kW/mに相当する。プラント過渡における表面熱流束の上昇は120%程度であるため、従来から燃料棒は、損傷限界に対し十分な余裕をもって設計されている。
ガドリニアを添加したペレットは、ガドリニアを添加しない場合よりも熱伝導度が悪くなり、この分、ペレットの中心温度は高くなる傾向がある。この結果、プラントの過渡状態で原子炉の出力が上昇し、燃料棒の線出力が高まった場合、ガドリニアを添加したペレットを含む燃料棒(以下、ガドリニア入り燃料)の周方向における歪み量は、ガドリニアを添加しないペレットからなる燃料棒(以下、ウラン燃料棒)よりも大きくなる。1%塑性歪み相当出力の低下は、ガドリニア濃度が高いほど顕著である。従来から核設計においてはガドリニア入り燃料棒の出力をウラン燃料棒よりも、予め小さくなるよう配慮した設計がなされる。つまり、集合体断面での燃料棒の相対出力は、常にウラン棒で最大となるよう設計される。
燃料集合体断面におけるウラン燃料棒の相対出力の最大値をPFUとし、ガドリニア入り燃料棒の相対出力をPFGdとする。このとき、最大線出力密度を与える断面では、ガドリニア入り燃料棒の線出力密度(LHGRGd)は次の(5)式で与えられる。(5)式においてMLHGRは、その制限値(典型的には44kW/m)以下に抑えられて運転される。
本発明者は、以前にも上記問題に着目し、これを解決する手段を示した(例えば、特許文献1参照)。図20はその典型的な実施例の一つである。a図は、燃料集合体断面を示している。一つの升目が燃料棒を表し、b図にある燃料棒タイプの配置を示している。b図の燃料棒タイプには、濃縮度(例えば4.90は4.90wt%の濃縮度を示す)とガドリニア濃度(例えば10.0Gは10.0wt%のガドリニア濃度を示す)を記載してある。本例は燃料棒9本分にあたる領域に水ロッドを配した9×9格子の燃料集合体において、ペレット最高濃縮度5wt%以下の制限下において高濃縮度化を図り、運転サイクル長期化と高燃焼度化を目標としたものである。この技術の手段は、下部領域の大部分に最高濃縮度ペレットを含み、かつ、上部領域の大部分に最高濃縮度より低濃縮度のペレットを含む燃料棒(図中タイプ2の燃料棒で、断面位置1b、1h、2a、2i、8a、8i、9b、及び9hの8本)をコーナロッドと水ギャップの両方に隣接する燃料棒位置に配置し、さらに、少なくとも下部領域の一部もしくは大部分においてガドリニア入りペレットを含む燃料棒(図中タイプG1の燃料棒で、断面位置2b、2h、8b及び8hの4本)を、上述の燃料棒タイプ2に隣接し、しかも水ギャップに横隣接しない位置に配置したものである。
前記燃料集合体の有効発熱長の下端より1/3上方までの軸方向位置にある少なくとも1つの断面Sにおいて、
(a) ガドリニア入り燃料棒は最外層以外に配置し、尚且つ、全てのガドリニア入り燃料棒は縦又は横に互いに隣接しないことと、
(b) 最外層においては、コーナ部に位置する燃料棒又はコーナ部とその両隣とに位置する燃料棒のうち少なくとも複数本は最高ウラン濃縮度未満であり、その他の燃料棒の半数以上は最高ウラン濃縮度とすることと、
(c) 内層部領域においては、最外層を除く内層部を、燃料集合体の基本構造毎に全ての燃料棒を5wt%のウラン燃料棒として調べた出力運転状態における燃料棒の相対出力分布特性に基づいて定めた内層燃料棒の各位置が持つ出力傾向毎に領域を分け、各領域毎にガドリニア入り燃料棒の相対出力比であるPFGd/PFUによって定まる定数Lを、予め、燃焼を通じて評価したウラン燃料棒に対するガドリニア入り燃料棒の相対出力比にウラン燃料棒の設計出力履歴を乗じてなるガドリニア入り燃料棒の線出力履歴とガドリニア濃度とをパラメータとして熱機械設計計算を行った評価結果としてのガドリニア濃度に対するガドリニア燃料棒1%塑性歪み相当出力がウラン燃料棒のそれと等しくなる限界出力密度の相対値の関係に基づいた相関式、
PFGd/PFU≦(aG+1.0)
に基づいて決定したとき、
前記各領域にある燃料棒iのウラン濃縮度Eiが、次の(1)式を満たすものとすることとを特徴とする沸騰水型原子炉用燃料集合体のウラン濃縮度配列決定法。
Ei≦Emax /α×{(aG+l)/L−β} …(1)
ここで、
Ei :断面Sにおける内層部の燃料棒iのウラン濃縮度(wt%)
Emax :集合体内最高ウラン濃縮度(wt%)
G :燃料棒iのガドリニア濃度(wt%)
a、α、β:係数であり、
a=−0.0092、
α=0.64、
β=0.36、
L :内層部の領域ごとに定まる定数
本発明においては、予め定められた複数種のウラン濃縮度の酸化ウランペレットが被覆管内に充填され尚且つ最高ウラン濃縮度として4.9〜5.0wt%の酸化ウランペレットを含む燃料棒が定められた正方格子配列に配置され、前記正方格子配列内の予め定められた燃料棒本数分の領域が1又は複数本の水ロッドに置換えられ、前記燃料棒が10wt%以下のガドリニアを含有するガドリニア入り燃料棒とガドリニアを含有しない燃料棒とを含む燃料集合体のウラン濃縮度配列を決定する方法において、
前記燃料集合体の有効発熱長の下端より1/3上方までの軸方向位置にある少なくとも1つの断面Sにおいて、
(a) ガドリニア入り燃料棒は最外層以外に配置し、尚且つ、全てのガドリニア入り燃料棒は縦又は横に互いに隣接しないことと、
(b) 最外層においては、コーナ部に位置する燃料棒又はコーナ部とその両隣とに位置する燃料棒のうち少なくとも複数本は最高ウラン濃縮度未満であり、その他の燃料棒の半数以上は最高ウラン濃縮度とすることと、
(c) 内層部領域においては、最外層を除く内層部を、燃料集合体の基本構造毎に全ての燃料棒を5wt%のウラン燃料棒として調べた出力運転状態における燃料棒の相対出力分布特性に基づいて定めた内層燃料棒の各位置が持つ出力傾向毎に領域を分け、各領域毎にガドリニア入り燃料棒の相対出力比(PFGd/PFU)によって定まる定数Lを、予め、燃焼を通じて評価したウラン燃料棒に対するガドリニア入り燃料棒の相対出力比にウラン燃料棒の設計出力履歴を乗じてなるガドリニア入り燃料棒の線出力履歴とガドリニア濃度とをパラメータとして熱機械設計計算を行った評価結果としてのガドリニア濃度に対するガドリニア燃料棒1%塑性歪み相当出力がウラン燃料棒のそれと等しくなる限界出力密度の相対値の関係に基づいた相関式、PFGd/PFU≦(aG+1.0)に基づいて決定したとき、前記各領域にある燃料棒iのウラン濃縮度Eiが、次の(1)式を満たすものとすることとを特徴とするものである。
ここで、
Ei :一断面Sにおける内層部の燃料棒iのウラン濃縮度(wt%)
Emax :集合体内最高ウラン濃縮度(wt%)
G :燃料棒iのガドリニア濃度(wt%)
a、α、β:係数(a=−0.0092、α=0.64、β=0.36)
L :領域ごとに定まる定数
既に述べたように、燃料棒の設計では、プラント過渡における表面熱流束の上昇幅に対し、損傷限界に至る出力上昇幅は十分大きくなるよう設計されている。これは、ガドリニア入り燃料棒についても同じである。先の従来例は、ガドリニア入り燃料棒の相対出力を小さくできるので、ガドリニア入り燃料棒の熱機械設計上の健全性を十分満足する。
安全解析上は、ペレットの熱伝導度に係る物性値をガドリニア濃度に依存させることは取り扱いが複雑なので、1%塑性歪み相当出力は、ウラン燃料棒で代表させることが慣例となっている。
この場合、ガドリニア入り燃料棒において運転出力に対する1%塑性歪み相当出力の比が、ウラン燃料棒のそれよりも大きくなってさえいれば、安全解析上も問題は発生しないことになる。
以下、運転出力に対する1%塑性歪み相当出力の比を1%塑性歪み相当出力比という。
また、内層部に対しては、濃縮度とガドリニア濃度の関係を検討し、安全解析上の十分な条件を見出し、これを適用するものである。
ここで、安全解析上の十分な条件とは、前述のとおり、ガドリニア入り燃料棒設計における1%塑性歪み相当出力比が、ウラン燃料棒のそれよりも大きいことである。
この限定により上記解決課題を達成するに好適な核設計の構成を提供できる。
以下にその詳細を示す。
本発明では、最大線出力密度が十分な運転余裕を満たすための、燃料棒相対出力PFの限界値(PFmax )を定めた。まず、(4)式において、LHGRの運転制限値は44kW/m、燃料有効長は典型値である3.7mとする。さらに、FRAC、PR、PAについては、それぞれ典型値である0.95、1.4及び1.4とする。このとき、(6)式が得られる。
PFmax =87.43/1.31×N/PBave =66.74×N/PBave …(7)
集合体断面において、特定の燃料棒の濃縮度を変えた場合、その燃料棒の相対出力がどの程度変化するかを評価した結果を図1に示す。濃縮度は、核分裂性物質の濃度であり、実際には、濃縮度の低下により、その近傍の中性子スペクトルが軟らかくなるため、熱中性子が増える結果、例えば、濃縮度が相対値で10%低減した場合でも、相対出力の低減は10%ではなく、その2/3程度に留まる。本図に基づき、濃縮度と相対出力の変化量との関係として、以下の相関式(8)式を作成した。
ここで、
E :燃料棒の濃縮度(wt%)
α、β:係数(α=0.64、β=0.36)
である。
まず、ウラン燃料棒の熱機械設計における設計出力履歴について説明する。前述のとおり、燃料集合体は、一般に、運転中の最大線出力密度がウラン燃料棒で発生するよう設計する。ウラン燃料棒の設計出力履歴を図2の実線に示す。熱機械設計では、運転制限値に沿って運転したと仮定するため、燃焼初期から中期までは運転制限値が仮定されている。燃焼中期(20〜30GWd/t)以降については、燃焼が進み燃料の反応度が小さくなって、最大線出力密度の運転制限値に対し、十分余裕が出る効果を予め見込み、制限値を小さくしている。実際の運転中においては、設計出力履歴を上回ることなく運転されるが、熱機械設計の安全評価では常に制限値上限で運転、つまり、設計出力履歴に沿って運転されるとの保守的な仮定をとる。このため、ウラン燃料棒が最大線出力に対し十分余裕のある性能を有している燃料集合体であっても、熱機械設計上は、こうした効果は反映されない。
前述の通り、ガドリニア入り燃料棒では、1%塑性歪み相当出力が酸化ウランのみの燃料棒のそれ以上とする必要がある。本発明においては、予めガドリニア入り燃料棒の線出力履歴とガドリニアの濃度をパラメータに熱機械設計計算を実施した。
ここで、
G:燃料棒のガドリニア濃度(wt%)、
a:係数(=−0.0092)
である。
燃料集合体の基本構造に応じて、燃料棒の相対出力分布特性を評価した。この際、全ての燃料棒を5wt%のウラン燃料棒として、出力運転状態における燃料棒の相対出力分布特性を調べた。この評価は、未燃焼時のものであるが、実体的にはガドリニアの毒性がなくなった燃焼中期の状態を模擬している。また、燃焼中期では、燃焼初期と比べてガドリニア入り燃料棒の出力は高く、ウラン燃料棒の出力は低い状態となるため、ガドリニア入り燃料棒の設計限界出力を評価する上で適切である。一般に、出力運転時における燃料棒の最大線出力密度を与えるのは、比較的ボイド率の低い燃料集合体下部側の断面である。ここでは、ボイド率の変化によって相対出力が変化する影響を考慮し0〜70%ボイド率範囲を想定している。
このように全ての燃料棒を5wt%のウラン燃料棒として解析をすると、最外層の燃料棒で出力が高くなる傾向を示す。つまり、最外層の燃料棒は、燃焼を通じて元もと出力が高まり易い領域であることが確認できる。
上述のように、最外層の燃料棒は出力が高まりやすい傾向があるため、ここにガドリニア入り燃料棒を配置しても、燃焼中期の出力が、ウラン燃料棒よりも大きくなってしまう可能性が高く、燃料棒の熱機械設計上好ましくない。これを避けるため、最外層のガドリニア入り燃料棒の濃縮度を下げることは、高濃縮度化の目的にそぐわない。本発明では、ガドリニア入り燃料棒は、最外層以外に配置することを提案する。しかし、この場合でも最外層以外、つまり、内層の燃料棒についても、燃料構造特有の出力分布傾向があるため、ガドリニア入り燃料棒を配置するには燃料棒熱機械設計上の制約がある。
燃料棒位置、濃縮度、燃料棒出力及びガドリニア濃度に関する関係を検討した。図5中「H」で示した燃料棒を最高濃縮度とすれば、これらの燃料棒は燃焼を通じて大きな出力を与える。内層の燃料棒にっいては、図5中「H」に対する内層燃料棒の相対出力比を考える。
内層領域の燃料棒iの濃縮度を最高濃縮度Emax から低減してEi(wt%)とした場合、上記Lと(8)式より、燃料棒iの相対出力比はL×(α×Ei/Emax +β)となる。これを、相対出力比である(9)式の左辺に当てはめると、L×(α×Ei/Emax +β)≦(aG+1)となり、結局、前記(1)式となる。
∴ α×Ei/Emax ≦(aG+1)/L−β
∴ Ei≦Emax /α{(aG+1)/L−β} …(1)
ここで、
Ei:一断面Sにおける内層部の燃料棒iのウラン濃縮度(wt%)
Emax :集合体内最高ウラン濃縮度(wt%)
G :燃料棒iのガドリニア濃度(wt%)
a、α、β:係数(a=−0.0092、α=0.64、β=0.36)
L :領域ごとに定まる定数
である。
C格子向け9×9燃料B型の実施例を図7に示す。本例は図20に示した従来例1に対し、最外層のコ−ナ燃料棒に隣接する最外層燃料棒(図中タイプ2燃料棒)の濃縮度を下部断面で4.9wt%から4.4wt%と低減した。これにより、図5における「H」の位置の燃料棒は全て最高濃縮度、それ以外の最外層燃料棒では、出力が最大値を与えない程度まで濃縮度を低減した。また、ガドリニア入り燃料棒であるタイプG1がある領域Lの値は0.90であるため、4.4wt%に抑える必要はないことから4.9wt%とした。
C格子向け9×9燃料A型の下部断面における実施例を図8に示す。最外層の燃料棒については図5における「H」の位置は、全て最高濃縮度、それ以外の最外層燃料棒は最高濃縮度未満である。内層燃料棒については、全て最高濃縮度とした。2本の水ロッドに共に隣接する燃料棒(図中G1)の領域はL=0.97であるため、2wt%以下のガドリニア濃度であればガドリニア入り燃料棒とすることもできるし、もちろんウラン燃料棒としてもよい。その他の内層燃料棒には、何れの位置であっても10%までのガドリニア濃度のガドリニア入り燃料棒を配置することができる。本例では、燃料棒G1を含めなくても20本もの多数本のガドリニア入り燃料棒を、互いに隣接することなく配置できた。この断面の平均濃縮度は4.66wt%である。本実施例における、高濃縮度化への寄与、最大線出力密度の運転余裕の向上、ガドリニア入り燃料棒の1%塑性歪み相当出力における安全余裕の確保といった作用効果の原理は下記実施例も含め実施例1と同様である。
C格子向け10×10燃料B型の下部断面における実施例を図9に示す。最外層コーナの4本の燃料棒以外は全て最高濃縮度とした。ガドリニア入り燃料棒はガドリニア濃度が10wt%以下であれば、どの内層領域にも配置できる。本例の場合、互いに隣接させることなく28本のガドリニア入り燃料棒を配置できた。もちろん、本数が多すぎる場合には、ガドリニア入り燃料棒の一部を最高濃縮度のウラン燃料棒としても問題はない。この断面の平均濃縮度は4.83wt%であり、最高濃縮度である4.9wt%に極めて近いほど高濃縮度化できた。
C格子向け10×10燃料A型の下部断面における実施例を図10に示す。最外層コーナの4本の燃料棒以外は全て最高濃縮度とした。ガドリニア入り燃料棒はガドリニア濃度が10wt%以下であれば、どの内層領域にも配置できる。以上は、実施例3と同様である。本例の場合、互いに隣接させることなく28本のガドリニア入り燃料棒を配置できた。この断面の平均濃縮度は4.83wt%まで高められる。
D格子向け9×9燃料B型の下部断面における実施例を図11に示す。最外層の燃料棒については図5における「H」の位置は、全て最高濃縮度、それ以外の最外層燃料棒は最高濃縮度未満である。内層燃料棒については、タイプG1以外は全て最高濃縮度とした。G1以外は10%以下の濃度のガドリニア入り燃料棒の配置が可能である。タイプ2及びG1が配置された領域のLは1.02であるため、ウラン燃料棒であっても最高濃縮度は配置できない。本例では、4.4wt%の濃縮度とした。この際、G1のガドリニア濃度は5wt%以下であれば問題ない。本断面のガドリニア本数は17本と多く、また、平均濃縮度は4.68wt%と十分高い。
D格子向け9×9燃料A型の下部断面における実施例を図12に示す。最外層の燃料棒については図5における「H」の位置は、全て最高濃縮度、それ以外の最外層燃料棒は最高濃縮度未満である。内層燃料棒については、タイプ3、G2及びG3以外は全て最高濃縮度とした。内層の最高濃縮度燃料棒は、何れも10wt%以下の濃度のガドリニア燃料棒が配置できる。タイプ3の位置のLは1.12と高いため、ここにはガドリニア入り燃料棒を配置せず、(1)式を満たすよう3.9wt%の濃縮度のウラン燃料棒とした。G2及びG3の位置のLはそれぞれ0.99及び0.93であり、本例では、G2及びG3を濃縮度4.4wt%のガドリニア入り燃料棒とした。この場合、G2では8wt%以下、G3では10wt%以下の高濃度のガドリニア入り燃料棒とすることができる。本断面の平均濃縮度は4.62wt%に留まるものの、D格子炉心で、しかも水ロッドが偏心していない燃料集合体であることから燃料棒出力分布が歪みやすいにも拘わらず、運転余裕を拡大した上で、十分な高濃縮度化が達成できている。
D格子向け10×10燃料B型の下部断面における実施例を図13に示す。最外層の燃料棒については図5における「H」の位置は、全て最高濃縮度、それ以外の最外層燃料棒は最高濃縮度未満である。この中には反制御棒挿入側のコーナ燃料棒をも含まれる。全ての内層領域でLは0.90であるため、内層領域は、全ての燃料棒を最高濃縮度とした。D格子であっても10×10格子であることと本発明の作用とが相まって、本断面の平均濃縮度は4.86wt%とC格子の場合と同程度まで高められた。
D格子向け9×9燃料A型の下部断面における実施例を図14に示す。最外層の燃料棒の配置は実施例7に同じである。また、内層領域の全ての燃料棒を最高濃縮度とした。ここで、ほとんど全ての内層領域でLは0.90であるが、第2層目制御棒挿入側コーナ(位置2b)のLは0.94である。このため、本例では、第2層目制御棒挿入側コーナ燃料棒にはガドリニア燃料棒を配置していない。この位置で最高濃縮度のままガドリニア入り燃料棒を配置する場合には、ガドリニア濃度は、6wt%以下とする必要がある。本断面の平均濃縮度は4.86wt%と実施例7と同様に高濃縮度である。
Claims (1)
- 予め定められた複数種のウラン濃縮度の酸化ウランペレットが被覆管内に充填され尚且つ最高ウラン濃縮度として4.9〜5.0wt%の酸化ウランペレットを含む燃料棒が定められた正方格子配列に配置され、前記正方格子配列内の予め定められた燃料棒本数分の領域が1又は複数本の水ロッドに置換えられ、前記燃料棒が10wt%以下のガドリニアを含有するガドリニア入り燃料棒とガドリニアを含有しない燃料棒とを含む燃料集合体のウラン濃縮度配列を決定する方法において、
前記燃料集合体の有効発熱長の下端より1/3上方までの軸方向位置にある少なくとも1つの断面Sにおいて、
(a) ガドリニア入り燃料棒は最外層以外に配置し、尚且つ、全てのガドリニア入り燃料棒は縦又は横に互いに隣接しないことと、
(b) 最外層においては、コーナ部に位置する燃料棒又はコーナ部とその両隣とに位置する燃料棒のうち少なくとも複数本は最高ウラン濃縮度未満であり、その他の燃料棒の半数以上は最高ウラン濃縮度とすることと、
(c) 内層部領域においては、最外層を除く内層部を、燃料集合体の基本構造毎に全ての燃料棒を5wt%のウラン燃料棒として調べた出力運転状態における燃料棒の相対出力分布特性に基づいて定めた内層燃料棒の各位置が持つ出力傾向毎に領域を分け、各領域毎にガドリニア入り燃料棒の相対出力比であるPFGd/PFUによって定まる定数Lを、予め、燃焼を通じて評価したウラン燃料棒に対するガドリニア入り燃料棒の相対出力比にウラン燃料棒の設計出力履歴を乗じてなるガドリニア入り燃料棒の線出力履歴とガドリニア濃度とをパラメータとして熱機械設計計算を行った評価結果としてのガドリニア濃度に対するガドリニア燃料棒1%塑性歪み相当出力がウラン燃料棒のそれと等しくなる限界出力密度の相対値の関係に基づいた相関式、
PFGd/PFU≦(aG+1.0)
に基づいて決定したとき、
前記各領域にある燃料棒iのウラン濃縮度Eiが、次の(1)式を満たすものとすることとを特徴とする沸騰水型原子炉用燃料集合体のウラン濃縮度配列決定法。
Ei≦Emax /α×{(aG+l)/L−β} …(1)
ここで、
Ei :断面Sにおける内層部の燃料棒iのウラン濃縮度(wt%)
Emax :集合体内最高ウラン濃縮度(wt%)
G :燃料棒iのガドリニア濃度(wt%)
a、α、β:係数であり、
a=−0.0092、
α=0.64、
β=0.36、
L :内層部の領域ごとに定まる定数
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