JP2009275823A - 制振装置及び車両 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】制振装置は、振動発生源100から伝達された制振するべき位置での振動を検出して振動信号として出力する振動検出手段200と、振動を打ち消すための制振力を発生させる加振手段700と、算出位相信号を算出する位相算出手段300と、算出位相信号と基準波とから、加振指令を出力する加振指令発生手段600と、振動信号の位相差である抽出位相信号を出力する位相抽出手段400と、算出位相信号と抽出位相信号とに基づいて、制振状態か過補償状態であるかを判別する過補償判別手段500とを備え、位相算出手段は、過補償判別手段が過補償状態と判別した場合には算出位相信号を減少させて出力させることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明の制振装置は、振動発生源から伝達された制振するべき位置での振動を検出して振動信号として出力する振動検出手段と、前記制振するべき位置と異なる位置に設けられ、前記制振するべき位置での振動を打ち消すための制振力を発生させる加振手段と、前記振動信号と、前記振動発生源が発生する振動の振動周波数を有する基準波との位相差を近似した算出位相信号を算出する位相算出手段と、前記算出位相信号と、前記基準波とから、前記加振手段に前記制振力を発生させるための加振指令を出力する加振指令発生手段と、前記振動信号と、前記基準波との位相差である抽出位相信号を出力する位相抽出手段と、前記位相算出手段の前記算出位相信号と前記位相抽出手段の前記抽出位相信号とに基づいて、制振状態か過補償状態であるかを判別する過補償判別手段とを備え、前記位相算出手段は、該過補償判別手段が過補償状態と判別した場合には前記算出位相信号を減少させて出力させることを特徴としている。
また、過補償状態とは、振動検出手段200で検出され出力される振動信号が、振動発生源100に起因して伝達される振動に対して逆位相を含む位相領域で生成されている状態をいう。すなわち、振動検出手段200による振動信号が、加振手段700により制振されるべき位置に伝達される制振力の位相を基準として、同位相を含み、上記位相領域M”以外となる位相領域N”、すなわち、0≦Δφ”<(180°−q)、(180°+q)<Δφ”≦360°で出力されることをいう。
ここで、制振状態と過補償状態との閾値を決定するqは、以下の関係に基づいて求められる。すなわち、制限状態では、周期(2π/ω)の正弦波sin(ωt)で表される振動に対して、とqだけ位相がずれ、同じ振幅となる正弦波で表される制振力で制振した場合に、合成した結果がもとの振動の振幅以下になる必要がある。このため、sin(ωt)+sin(ωt+q)≦1の関係、及び加法定理に基づいて、qは60°となる。
この構成によれば、加振手段を車体フレーム上の設置可能な任意の場所へ設置できるため,制振装置を車両に後付けで設置することができる。そのため,制振装置が未装着の車両に対しても,制振装置を装着することにより乗員が感じる振動を軽減することができる。また、制振するべき位置において、制振装置による制振が制振状態から過補償状態となったとしても、速やかに制振状態に復帰させることができ、これにより過補償状態が続いて制振することができなくなってしまうことを防止することができる。
この構成によれば、過補償状態が続いて制振することができなくなってしまうことを防止しつつ、制振するべき位置における制振を行うことができ、乗員に快適な乗り心地を提供することが出来る。
制御部3は、振動波の信号を生成する場合に、振動伝達特性の変化に応じて、生成する振動波の位相を補正した信号を生成する。図5は、図3に示す制御部3の詳細な構成を示す制御ブロック図である。
制御部3は、加速度センサ5の出力信号と、エンジン1のエンジンパルス信号を入力し、アンプ4に対して、加振指令を出力するものである。
積分器35,36は、算出位相信号(−A’sinφ’,−A’cosφ’)を位相差ベクトル抽出部60及び乗算器39,40に出力する。
値設定部37は、エンジンパルス信号の周波数fに対する振幅テーブルおよび位相テーブルを備えている。この2つのテーブルには,経年変化や温度変化前における,加振手段から振動検出手段までの振動伝達特性,すなわちアクチュエータの発生力から加速度センサが検出する加速度までの伝達関数Gを予め測定した結果に基づき,その逆特性である振幅成分|1/G(jω)|および位相成分∠1/G(jω)が記録されている。値設定部37は、周波数検出部31が検出したエンジンパルス信号の周波数fを入力し、この周波数fから求めた周波数fに関係付けられた位相成分∠1/G(jω)と振幅成分|1/G(jω)|を2つのテーブルからそれぞれ読み出す。そして、値設定部37は、位相成分をPとして、加算器61へ出力し、振幅成分を(1/G)として、乗算器64,65へ出力する。
α=sinφ・A’cosφ’−cosφ・A’sinφ’=A’sin(Δφ)
β=cosφ・A’cosφ’+sinφ・A’sinφ’=A’cos(Δφ)
ただしΔφ=φ−φ’である。
なお,特性値α,βは,それぞれ正弦,余弦成分を有するので,極座標上でαを縦軸に,βを横軸に取ると,位相差ベクトル(β,α)と横軸との角度がΔφを,位相差ベクトルの半径が振幅A’を表すことになる。図10は,位相差ベクトル(β,α)を極座標で表したものである。
本発明では,図10に示すように,このΔφが0になるように加振指令の位相を位相補正量Δpにより補正する。以下,位相補正量Δpについて説明する。
Δp(f,n)=Δp(f,n−m) (α=0)
Δp(f,n)=Δp(f,n−m)−h (α>0)
Δp(f,n)=Δp(f,n−m)+h (α<0)
なお,n,mはn≧mの整数であり,hは前述した予め設定された固定角度である。すなわち,あるサンプリング周期における位相補正量Δp(f,n)は,そのmサンプリング周期前のΔp(f,m−n)に0またはhを加減算して求める。また,hは,たとえば1°などの小さい値が好ましい。hすなわちΔpによる補正を大きくすると制御が不安定になる可能性があるためである。経年変化による特性の変化は,短い時間で大きく変化するものではないため,一度に補正する値は小さい値にしておき,制御動作を安定に保ったまま徐々に補正を行うことが好ましい。
なお,本実施例ではゼロクロスポイントにおいて補正するものとして説明するが,後述するように,本発明における制御部3は,ゼロクロスポイントだけでなく任意の時点での位相補正が可能である。
正弦波発振器38は,エンジンパルス信号の周波数fに基づいて,内蔵された電気角生成部(不図示)によって基準角度ωtを生成する。そして,加算器61から出力された加算結果(P+Δp)に基づいて,基準波sinωt,cosωtを補正して,この補正した基準波sin(ωt+P+Δp),cos(ωt+P+Δp)を,乗算器64,65にそれぞれ出力する。
乗算器39,40は,信号(1/G)sin(ωt+P+Δp),(1/G)cos(ωt+P+Δp)と,積分器35,36から出力された算出位相信号−A’cosφ’,−A’sinφ’とを乗じて,信号(−A’/G)cosφ’sin(ωt+P+Δp+φ’),(−A’/G)sinφ’cos(ωt+P+Δp+φ’)を加算器41に出力する。
加算器41は,信号(−A’/G)cosφ’sin(ωt+P+Δp+φ’),(−A’/G)sinφ’cos(ωt+P+Δp+φ’)を加算し,加法定理を利用して,信号(−A’/G)sin(ωt+P+Δp+φ’)を算出する。これにより,エンジンパルス信号の周波数近傍の周波数成分の信号(Asin(ωt+φ))に対して,位相を反転するための(−1)と,振動伝達特性Gの逆特性の振幅成分(1/G)とが乗算されるとともに,位相補正量Δpを含む位相差成分(P+Δp)が位相成分に加算された信号が得られることになる。そして,乗算器41は,その加算結果をBPF51に出力する。
制振すべき周波数が変化した場合,過渡状態では,制振力には複数の周波数成分が存在する。そのため,たとえば変化後の周波数近傍に制振対象の共振周波数が存在する場合には,制振力には周波数が共振周波数と一致し,かつ共振振動を低減できる振動の位相とは異なる位相の成分が含まれる場合があるため,共振周波数を加振してしまい,制御が不安定化することがある。
このBPF51により,制振すべき周波数以外の制振力を除去することにより,制振効果を高め,かつ,制御が不安定化するのを防止することができる。
この加振指令をアンプ4へ出力すると、補助質量11が振動して制振力を発生することにより、加速度センサ5によって検出されるエンジン1が発生する振動が抑制されることになる。このとき、アクチュエータ10が補助質量を振動させることにより発生する制振力は、アクチュエータ10の装着位置から加速度センサ5の装着位置までの振動伝達特性Gに基づく位相変化と振幅変化を考慮した制振力であるため、振動を検出する位置(座席6の位置)と制振力を発生する位置が異なっていても、制振するべき座席6の位置において、振動発生源となるエンジン1から発生する振動に対して、制振力が伝達され互いに打ち消しあうことで、図11に示すように、座席6の位置における振動を減衰させることができる。
一方、座席6の位置に伝達される制振力の振幅がエンジン1から伝達される振動の振幅より大きくなってしまうと、加速度センサ5では、制振状態で検出される振動と逆位相の振動が検出されることとなる。
これにより、図10に示すように、制振状態とする位相領域Mは、定数qによって、
−q≦Δφ≦+q
と表わされる。
また、過補償状態とする位相領域Nは、同様に定数qによって、
+q≦Δφ≦360−q
と表わされる。
ここで、Δφは、位相差ベクトル抽出部60で算出される第一の特性値αと第二の特性値βとの比α/βを用いて以下のとおり表わされる。
α/β=tanΔφ
α/β≦tan(+q)(但しα≧0)、α/β≧tan(−q)(但しα≧0)
で表わされる。
一方、過補償状態とする位相領域Nは、
α/β≧tan(+q)(但しα≧0)、α/β≦tan(−q)(但しα≧0)
で表わされる。
なお、制振状態と過補償状態との閾値tan(+q)、tan(−q)を決定する定数qは、上記のとおり60度であり、このことから、tan(+q)=√3、tan(−q)=−√3 を閾値として位相領域M、Nは表わされる。
一方、切替器70、71は、過補償状態と対応する判別信号が入力されると、それぞれの積分器35、36の帰還経路中に乗算器(第二乗算器)73、74を挿入させる。乗算器73、74では、1未満の共通のゲインを乗ずるように設定されており、具体的には例えば0.99を乗ずるように設定されている。
また、図3に示すリニアアクチュエータ10を使用して、制振力を発生するものとして説明したが、補助質量11を振動させることによって振動を抑制することができる反力を発生できる駆動源であれば、補助質量11を振動させる手段は何でもよい。
また、制振装置が車体フレーム2に装着されていることから、車体フレーム2に発生する振動を、制振するべき位置において減衰させることができるため、経年変化や温度変化に基づく制振効果の低減によって生じる違和感を乗員に与えることを防止することができる。
また、位相差ベクトル抽出部60は、位相補正ブロック63に第1の特性値αのみを出力するとしたが、これに限ることはなく、第1及び第2の特性値α、βを出力してもよい。これにより、位相補正ブロック63は、位相差ベクトルの差分Δφを求めることができ、差分Δφの大きさに応じたより効果的な制振制御を行うことができる。
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
3 制御部(位相算出手段、位相抽出手段、位相補正手段、加振指令発生手段)
5 加速度センサ(振動検出手段)
10 アクチュエータ(加振手段)
33,34 乗算器(第一乗算器)
35,36 積分器
38 正弦波発信器
39,40,64,65 乗算器
41 加算器
53,54,55,56 乗算器
60 位相差ベクトル抽出部
61 加算器
70 補償判別手段
71,72 切替器
73,74 乗算器(第二乗算器)
Claims (7)
- 振動発生源から伝達された制振するべき位置での振動を検出して振動信号として出力する振動検出手段と、
前記制振するべき位置と異なる位置に設けられ、前記制振するべき位置での振動を打ち消すための制振力を発生させる加振手段と、
前記振動信号と、前記振動発生源が発生する振動の振動周波数を有する基準波との位相差を近似した算出位相信号を算出する位相算出手段と、
前記算出位相信号と、前記基準波とから、前記加振手段に前記制振力を発生させるための加振指令を出力する加振指令発生手段と、
前記振動信号と、前記基準波との位相差である抽出位相信号を出力する位相抽出手段と、
前記位相算出手段の前記算出位相信号と前記位相抽出手段の前記抽出位相信号とに基づいて、制振状態か過補償状態であるかを判別する過補償判別手段とを備え、
前記位相算出手段は、該過補償判別手段が過補償状態と判別した場合には前記算出位相信号を減少させて出力させることを特徴とする制振装置。 - 前記位相算出手段は、前記算出位相信号として、正弦成分と余弦成分とを算出し、それぞれに1未満の共通のゲインを乗算することで前記算出位相信号を減少させることを特徴とする請求項1に記載の制振装置。
- 前記位相算出手段は、前記算出位相信号として、正弦成分と余弦成分とを算出し、
前記位相抽出手段は、前記抽出位相信号として、正弦成分と余弦成分とを抽出し、
前記過補償判別手段は、前記算出位相信号の正弦成分及び余弦成分、並びに前記抽出位相信号の正弦成分及び余弦成分に基づいて、前記算出位相信号と前記抽出位相信号との差分を算出し、該差分から制振状態か過補償状態かを判別することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の制振装置。 - 前記位相算出手段が前記算出位相信号として正弦成分X1と余弦成分Y1とを算出した結果と、前記位相抽出手段が前記抽出位相信号として正弦成分X2と余弦成分Y2とを抽出した結果から、関係式<α=X2×Y1−Y2×X1>で算出される第一の特性値α及び関係式<β=Y2×X1+X2×Y1>で算出される第二の特性値βとを出力する位相差ベクトル抽出手段を備え、
前記過補償判別手段は、前記第一の特性値と前記第二の特性値との比β/αが予め設定された閾値に対して大小いずかであるかによって制振状態か過補償状態かを判別することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の制振装置。 - 前記位相算出手段は、前記振動信号に収束ゲインおよび前記基準波を乗ずる第一乗算器と、該第一乗算器の出力を積分する積分器と、過補償状態で前記積分器の帰還経路中に挿入されて1未満のゲインを乗算する第二乗算器とを有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の制振装置。
- 前記加振手段を車両の車体フレームに装着したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の制振装置。
- 請求項1から請求項6のいずれかに記載の制振装置を備えることを特徴とする車両。
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