JP5120708B2 - 制振装置及び車両 - Google Patents
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なお,目標位相角度とは,前記振動信号に対する前記加振指令の位相差の目標値のことであり,たとえば0(ゼロ)°である。
また,更新手段は,位相差と目標位相角度とがずれている場合に,振動信号の周波数に対応する位相補正量に更新補正量を付加するとともに,振動信号の周波数の前後の少なくともいずれか一方の周波数に対応する位相補正量に,更新補正量よりも小さい調整補正量を付加して位相補正量記憶手段を更新する。
すなわち,初期状態と経年変化等後との位相差を補正して制振力を生成しているので,経年変化や温度変化等により制振対象機器の振動伝達特性が変化しても期待する制振効果を得ることができる。
さらに,更新手段が,振動信号に対応する周波数だけでなく,その前後の少なくともいずれか一方の周波数に対応する位相補正量に調整補正量を付加するので,振動信号の周波数の前後で位相補正量の変化を緩やかにすることができる。そのため,たとえば振動周波数が共振周波数から非共振周波数へ急激に変化した場合であっても,位相補正量の変化に伴って制振力も緩やかに変化させることができるので,安定した制振制御を行うことができる。
値設定部37は,エンジンパルス信号の周波数fに対する振幅テーブルおよび位相テーブルを備えている。この2つのテーブルには,経年変化や温度変化前における,加振手段から振動検出手段までの振動伝達特性,すなわちアクチュエータの発生力から加速度センサが検出する加速度までの伝達関数Gを予め測定した結果に基づき,その逆特性である振幅成分|1/G(jω)|および位相成分∠1/G(jω)が記録されている。そして値設定部37は,周波数検出部31が検出したエンジンパルス信号の周波数fを入力し,この周波数fに関係付けられた位相成分∠1/G(jω)と振幅成分|1/G(jω)|を2つのテーブルからそれぞれ読み出す。そして,値設定部37は,位相成分をPとして変化量抑制部42へ出力し,振幅成分を(1/G)として正弦波発振器38へ出力する。
正弦波発振器38は,周波数fと,振動伝達特性Gの逆特性の振幅成分(1/G)と,変化勾配抑制部45の出力を入力する。そして,正弦波発振器38は,これらの入力値に基づいて,振動伝達特性Gの逆特性(∠1/G(jω)及び|1/G(jω)|)を乗算した基準正弦波(1/G)sin(ωt+P+Δp)と基準余弦波(1/G)cos(ωt+P+Δp)を出力する。ここで,Δpは振動伝達特性Gの逆特性の位相成分Pを補正するための位相補正量であり,詳細については後述する。
加算器41の出力−(A’/G)sin(ωt+φ’+P+Δp)は,バンドパスフィルタ51に出力される加振指令である。
制振すべき周波数が変化した場合,過渡状態では,制振力には複数の周波数成分が存在する。そのため,たとえば変化後の周波数近傍に制振対象の共振周波数が存在する場合には,制振力には周波数が共振周波数と一致し,かつ共振振動を低減できる振動の位相とは異なる位相の成分が含まれる場合があるため,共振周波数を加振してしまい,制御が不安定化することがある。
このBPF51により,制振すべき周波数以外の制振力を除去することにより,制振効果を高め,かつ,制御が不安定化するのを防止することができる。
ここでΔφは,加速度センサ5で検出した成分φと,制御部3内にて生成した成分φ’との差であり,経年変化等による振動伝達特性の変化を数値化したものである。すなわち,経年変化等によって,実際の車体における振動伝達特性が値設定部37で記憶している振動伝達特性と異なるほど,Δφが0から遠ざかることになる。
本発明では,このΔφが0になるように加振指令の位相を位相補正量Δpにより補正する。以下,位相補正量Δpについて説明する。
Δp(f,n)=Δp(f,n−m) (φ=0)
Δp(f,n)=Δp(f,n−m)−h (0≦Δφ≦π)
Δp(f,n)=Δp(f,n−m)+h (−π≦Δφ≦0)
なお,n,mはn≧mの整数であり,hは前述した予め設定された固定角度である。すなわち,あるサンプリング周期における位相補正量Δp(f,n)は,そのmサンプリング周期前のΔp(f,m−n)に0またはhを加減算して求める。
Δp(40Hz,n)=Δp(40Hz,n−1)+1°=0°
ここで,加算する値を所定の小さい値としているのは,Δφを正確に求めるには演算量が増大すること,一度の補正で大きい補正を行うと制御が不安定になる可能性があることが理由である。経年変化による特性の変化は,短い時間で変化するものではないため,一度に補正する値は小さい値にしておき,制御動作を安定に保ったまま徐々に補正しようとするものである。この動作によって,補正値テーブル44は,常に経年変化等によって振動伝達特性Gが変化した場合の位相補正値が記憶されることになる。
たとえば図8及び以下の式に示すように,f=40Hzの位相補正量Δp=0°に予め設定された値h=1を加えてΔp=1°とする場合に,その近傍の周波数におけるΔpについてもh=1の1/2または1/4の値を加える。
Δp(39.8Hz,n)=Δp(39.8Hz,n−1)+0.25°
Δp(39.9Hz,n)=Δp(39.9Hz,n−1)+0.5°
Δp(40.0Hz,n)=Δp(40.0Hz,n−1)+1°
Δp(40.1Hz,n)=Δp(40.1Hz,n−1)+0.5°
Δp(40.2Hz,n)=Δp(40.2Hz,n−1)+0.25°
このようにすることによって,1つの周波数における位相補正量のみが大きくなってしまうことを防止し,周波数毎の位相補正量の変化を連続的にすることができるため,位相補正を安定的に行うことが可能となる。
なお,前後位相補正は,更新しようとする周波数fを中心に前後対称とならなくても良く,たとえば図12に示すように,Δp(f−k,n)は中心周波数fから遠ざかるごとに一定値(例えば、0.25)を減じていくようにし,Δp(f+k,n)は中心周波数fから遠ざかるごとに指数的に減じていくようにしても良い。また,予め設定した周波数帯域では中心周波数fを中心に前後対称となるようにΔp(f−k,n),Δp(f+k,n)を更新し,それ以外の周波数帯域では前後非対称になるように更新しても良い。このように周波数に対して更新する量を変化させることによって,たとえば車体フレーム2の共振点付近や,ノイズが多い周波数帯域付近での位相補正量の変化を滑らかにすることができるので,位相補正を安定的に行うことが出来る。
変化勾配抑制部45は,mサンプリング周期毎に出力したΔpの値を内部に保持しておき,Δp(f,n−m)からΔp(f,n)への変化勾配が緩やかになるように,その変化分を変化勾配制限値sずつ出力する。すなわち,たとえば図7に示すように,位相補正量をΔp(f,n−1)から1サンプリング周期ごとに変化勾配制限値s={Δp(f,n)−Δp(f,n−1)}/4ずつ増やしてゆき,4サンプリング周期後にΔp(f,n)とする。このように,mサンプリング周期毎に出力されるP+Δpの変化勾配を抑制するようにしたため,制御が発散することなく安定的に制御を実施することができる。
ここで,変化勾配制限値sとは,固定角度hよりも小さな値の制御値をいうものであり,例えば,固定角度hの1/20(0.05)に設定される。
また,図2に示すリニアアクチュエータ10を使用して,制振力を発生するものとして説明したが,補助質量11を振動させることによって振動を抑制することができる反力を発生できる駆動源であれば,補助質量11を振動させる手段は何でもよい。
なお,制御部3は,加振指令発生手段,位相差検出手段,位相補正量記憶手段,位相補正手段及び更新手段として兼用されるものである。具体的には,正弦波発振器32,ゲイン2μ,乗算器33,34,積分器35,36,加算器41が,加振指令発生手段として機能するものであり,テーブル補正部49が,位相差検出手段及び更新手段として機能するものである。また,位相補正部43,正弦波発振器38,乗算器39,40が,位相補正手段として機能するものであり,補正値テーブル44が位相補正量記憶手段として機能するものである。
Claims (4)
- 振動発生源から伝達された制振するべき位置での振動を検出して振動信号として出力する振動検出手段と、
前記制振するべき位置と異なる位置に設けられ、前記制振するべき位置での振動を打ち消すために制振力を発生させる加振手段と、
前記振動信号と、前記振動発生源が発生する振動の周波数成分を有する基準波とから、前記加振手段に前記制振力を発生させるための加振指令を出力する加振指令発生手段と、
前記加振手段から前記振動検出手段までの振動伝達特性の逆特性に基づいて生成された基準加振指令と、前記振動信号との位相差を算出する位相差検出手段と、
振動周波数ごとに振動周波数の関数であって且つ前記振動伝達特性の位相成分を補正する位相補正量が記憶された位相補正量記憶手段と、
前記位相補正量記憶手段に記憶された前記位相補正量を、予め設定された更新補正量を付与することによって更新する更新手段と、
ある周期におけるサンプリング結果による前記位相補正量を、当該周期前のサンプリング結果による位相補正量に0または予め設定された固定角度を加減算して求める前記位相補正量によって、前記基準加振指令と前記振動信号との位相差が目標位相角度と一致するように前記基準加振指令の位相を補正して加振指令を算出する位相補正手段とを具備し、
前記更新手段は、前記振動信号の周波数に対応する位相補正量を更新する場合に、前記更新補正量以下の調整補正量を付与することによって、該周波数より低いまたは高い周波数に対応する位相補正量を更新することを特徴とした制振装置。 - 前記更新手段は、前記更新補正量に1以下の係数を乗算することにより前記調整補正量を算出することを特徴とする請求項1に記載の制振装置。
- 前記係数は、前記振動信号の周波数から遠ざかるほど小さくなるように該周波数より低いまたは高い周波数ごとに複数設定されており、
前記更新手段は、前記更新補正量に該係数を乗算することにより前記調整補正量を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の制振装置。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の制振装置を備えることを特徴とする車両。
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