JP2009275193A - ポリウレタンの製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリ塩化ビニルと接して用いられるポリウレタンを形成させるに際し、ポリウレタン中にポリウレタンよりもポリ塩化ビニルに対する親和性が大である可塑剤を添加したポリウレタンの製造法を提供する。
【解決手段】ポリ塩化ビニルと接して用いられるポリウレタンを形成させるに際し、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との2液混合型ポリウレタン形成材料のポリイソシアネート成分中にポリウレタンよりもポリ塩化ビニルに対する親和性が大である可塑剤を添加して用いるポリウレタンの製造法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリウレタンの製造法に関する。さらに詳しくは、ポリ塩化ビニルと接して用いられるポリウレタンの製造法に関する。
ポリ塩化ビニルは、耐熱性や耐燃性などのすぐれた特性を有することから多くの分野に用いられており、自動車用の電気配線の被覆材等としても広く一般的に使用されている。しかしながら、一般的なポリ塩化ビニルはそれ自体の柔軟性に乏しく、電線被覆のように柔軟性、屈曲性が要求される用途に対しては、可塑剤を添加する必要がある。そして、その可塑剤としては、ジオクチルフタレート(DOP)のような芳香族ジカルボン酸エステルが広く一般的に用いられている。
ところで、ポリウレタンはポリ塩化ビニルとの接着性が良好であり、そのためそれらの複合品を成形することは容易であり、例えば下記特許文献1〜2にみられるようなケーブルや車両用シール材の例がみられるが、ポリ塩化ビニル中に添加されているDOP等の可塑剤がポリウレタン側に移行するといった現象が生じ、特にポリウレタンフォームの場合に、より顕著に可塑剤の移行が促進される傾向がみられる。
実開平5−53046号公報 実開平6−18094号公報
可塑剤がポリウレタン側に移行すると、ポリ塩化ビニルの柔軟性や屈曲性が損なわれ、特性が大きく変化してしまう。例えば、ポリ塩化ビニル中の可塑剤濃度が低下し、硬化してしまったポリ塩化ビニルは、屈曲により亀裂が発生し易くなり、具体的な例としては、電線被覆の場合には被覆に亀裂が生じると素線部(導電部)がむき出しとなり、漏電、ショートなどの重大な事故につながるおそれもある。
その対策として、下記特許文献3に示されるように、特定の可塑化塩化ビニル系樹脂用被覆組成物を塩化ビニル樹脂成形品表面に塗布して、可塑剤移行防止用皮膜を形成させるなど、ポリ塩化ビニル成形品表面に可塑剤の移行を防止し得るコーティングを施したり、あるいはフィルム乃至シートを貼ることなどが挙げられる。これらの方法をとった場合の問題点として、例えば始めからコーティングを施した電線を製造する場合には、ポリ塩化ビニルに対するコーティング層の安定した接着性が必要となるばかりではなく、コーティング膜厚のバラツキによる電線の柔軟性、摩擦係数などの表面特性、耐熱性、耐水性などの様々なことに対する配慮を必要とする。また、電線価格が上昇するのを避けることができない。
特開平6−136184号公報
あるいは、ポリ塩化ビニル中の可塑剤移行による硬化を防ぐための手段として、DOPを予めポリウレタン側にも含有させておき、それによってポリ塩化ビニル中のDOP移行を抑制する方法もあるが、この場合には次のような欠点がみられる。
DOPは、ポリ塩化ビニルよりもポリウレタンと相溶し易いので、ポリウレタン中のDOP濃度がポリ塩化ビニル中のDOP濃度と同程度である場合にも、ポリ塩化ビニル中のDOPがポリウレタン側に移行してしまうため、あまり有効な効果が得られない。そのため、ポリ塩化ビニル中のDOPがポリウレタン側に移行するのを防ぐためには、相当量の高濃度DOPをポリウレタン側に含有させておかなければならないことになる。しかるに、ポリウレタンに大量のDOPを添加した場合には、ポリウレタンの特性が大きく変化してしまうだけではなく、ポリウレタン成形品表面からDOPがブリードし、様々な不具合をひき起こすおそれもある。また、環境的な観点からも、DOPの使用は好意的に受け入れられない背景がみられる。
さらに、下記特許文献4には、可撓導体にエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体被覆絶縁芯線を複数本撚り合わせ、この上に非移行性可塑剤入りポリ塩化ビニルの充実型内部シースを設け、その上にMg(OH)2入りポリウレタン外部シースを設けたケーブルが記載されており、ポリ塩化ビニルはその可塑剤がポリウレタンに取り込まれず、内部シースは長年にわたって可撓性を担保すると述べられ、非移行性可塑剤としてはエポキシ系、エポキシエステル系等を使用し得るとされている。しかしながら、この場合には、長時間にわたる加熱により、可塑剤が酸化し、ひいては酸化劣化して変質するおそれがある。
実開平6−36132号公報
ポリ塩化ビニルの硬化を防止するためには、DOPの移行を抑制させることが一手段として考えられるが、上記のように様々な問題がみられる。一方、DOPがポリ塩化ビニル側からポリウレタン側に移行しても、それを補える分の別の可塑剤をポリウレタン側からポリ塩化ビニル側に与えてやることができれば、ポリ塩化ビニルの硬化を抑制することが可能となる。
本発明の目的は、ポリ塩化ビニルと接して用いられるポリウレタンを形成させるに際し、ポリウレタン中にポリウレタンよりもポリ塩化ビニルに対する親和性が大である可塑剤を添加したポリウレタンの製造法を提供することにある。
かかる本発明の目的は、ポリ塩化ビニルと接して用いられるポリウレタンを形成させるに際し、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との2液混合型ポリウレタン形成材料のポリイソシアネート成分中にポリウレタンよりもポリ塩化ビニルに対する親和性が大である可塑剤を添加して用いるポリウレタンの製造法によって達成される。
本発明方法により製造された、ポリ塩化ビニルと接して用いられるポリウレタンは、ポリウレタン中にポリウレタンよりもポリ塩化ビニルに対する親和力が大である可塑剤が予め添加されているため、例えDOPがポリ塩化ビニル側からポリウレタン側に移行しても、それを補える分の別の可塑剤をポリウレタン側からポリ塩化ビニル側に与えてやることができるので、ポリ塩化ビニルの硬化を抑制することができる。また、ポリウレタンも、ポリ塩化ビニルの可塑剤(DOP等)を受け取るため、その特性に大きな変化はみられない。
実際に、それの経時的な物性変化を引張強さおよび伸びについてみると、ポリウレタンと接して用いられていないポリ塩化ビニルシートと比較して、同程度の変化がみられるにすぎない。このため、ポリ塩化ビニル成形品にポリウレタンを直接成形し、複合化させても、ポリ塩化ビニルの柔軟性や屈曲性を損なわず、しかもポリウレタン自身の特性も大きく変化させないという特徴を有している。
このような特徴を有する本発明のポリウレタンの製造法は、ポリ塩化ビニルと接して用いられるポリウレタン複合品用途、例えばポリ塩化ビニル被覆電線周囲をポリウレタンでシールする用途を始め、電気機器配線関係など、ポリ塩化ビニル成形品にポリウレタンを直接成形して複合化する用途一般に、有効に適用することができる。また、ここで用いられる可塑剤は、一般的に用いられているDOP等の芳香族ジカルボン酸エステルと比較して、環境負荷の面でもすぐれている。
ポリウレタン形成材料としては、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との2液混合型の形成材料が用いられる。
ポリオール成分は、数平均分子量Mnが約500〜5000程度のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等を主成分とし、これに鎖延長剤としての低分子量ポリオール、例えば1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等、アミン系硬化剤、例えば4,4′-メチレンビス-2-クロロアニリン、ジエチルトルエンジアミン、MOCA代替ジアミン類、ピペラジン誘導体等および発泡ポリウレタンを製造する場合には発泡剤、例えば水を添加して形成される。水を発泡剤として添加して用いた場合には、二酸化炭素や空気を内部ガスとする泡を形成させる。
一方、ポリイソシアネート成分としては、トルエンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(モノメリックMDI)、ポリメリックMDI、ポリマージオール両末端にMDIを付加させた1:2付加体、トリジンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素添加MDI、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートのいずれをも用いることができる。
これらのポリオール各成分とポリイソシアネート成分とは、各種用途に応じて一般的に用いられている割合でそれぞれ用いられ、ワンショット法でポリウレタン化反応に供せられる。主鎖を形成するポリウレタンの基本配合については、特に制約のないこと上記の如くであるが、可塑剤を配合したポリウレタンのアスカーC硬度(SRIS 0101準拠)は25〜95の半硬質タイプのものとする。この硬度が95を超えると、ハードセグメントとなるポリウレタン結合が増加するため、ポリウレタンとそこに添加された可塑剤とが相互作用する個所が増えて、ポリウレタン材料中で可塑剤が動き難くなるため、可塑剤がポリウレタン側からポリ塩化ビニル側へ移行し難くなる。一方、この硬度が25よりも小さいと、ポリウレタン材の強度や耐熱性の低下が懸念されるようになる。
この際、ポリイソシアネート成分中には、ポリウレタンよりもポリ塩化ビニルに対する親和性が大である可塑剤、好ましくは炭素数4〜14の脂肪族ジカルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等と炭素数4〜14の脂肪族アルコール、例えばブタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、オクタノール等とのジエステル、好ましくはセバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、セバシン酸ジオクチルが添加されて用いられる。セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、セバシン酸ジオクチル等のような脂肪族ジカルボン酸エステルの場合には、ポリウレタンとの相互作用が弱く、ポリ塩化ビニル側へ移行し易くなるが、ポリウレタン中においても分離することなく、均一に分散される。用いられる脂肪族ジカルボン酸エステルは、分子量が200〜1000であることが望ましい。分子量が200未満の場合には、可塑剤が気化し易くなり、一方分子量が2000よりも大きくなると、可塑剤が液化し難く、ポリ塩化ビニル側に移行し難くなる。
ポリウレタン側に添加される脂肪族ジカルボン酸エステル可塑剤は、この可塑剤がポリウレタン側からポリ塩化ビニル側に効率的に移行すること、つまりポリウレタンに添加する可塑剤量を極力少なく抑え、ポリウレタンの特性ならびにポリ塩化ビニル側に移行した後のポリ塩化ビニル本来の特性を大きく変化させないことが重要であり、かかる観点から、可塑剤は前記ポリオール成分と可塑剤添加ポリイソシアネート成分との合計量中、20重量%以下、好ましくは10〜20重量%を占めるような割合で用いられる。可塑剤添加濃度は、全体の40重量%迄とすることができるが、好ましくは20重量%以下とされる。可塑剤添加濃度が40重量%を超えると、ポリウレタンとしての材料特性、例えば引張強さ、伸びなどが著しく損なわれるようになる。
次に、実施例について本発明を説明する。
実施例
(原料A-1液)
ポリプロピレングリコール(BASF社製品;Mn=1000) 100重量部
1,4-ブタンジオール 20 〃
精製水(正起薬品工業製品) 0.5 〃
1-(2-ジメチルアミノエチル)-4-メチルピペラジン 0.4 〃

(原料B-1液)
モノメリックMDI 36重量部
ポリメリックMDI 53 〃
ポリマージオール両末端にMDIを付加させた1:2 11 〃
付加体(アダクトA)
セバシン酸ジオクチル 50 〃
上記原料A-1液と原料B-1液とを100:150の重量比率(セバシン酸ジオクチル含有率20重量%)で混合、攪拌し、発泡ポリウレタンI(アスカーC硬度75、密度0.54g/cm3)を得た。このとき、ポリウレタンIが発泡・硬化する前に、ポリウレタンIを7号ダンベル形状のポリ塩化ビニルシート(市販電線の最外周部を被覆するポリ塩化ビニルシールを採取して用いた)全面へ塗布し、発泡・硬化させてサンプルIを得た。
比較例
実施例において、セバシン酸ジオクチルを用いない原料B-2液を調製し、原料A-1液と原料B-2液とを100:100の重量比率で混合、攪拌し、発泡ポリウレタンII(アスカーC硬度63、密度0.52g/cm3)を得た。このとき、ポリウレタンIIが発泡・硬化する前に、ポリウレタンIIを前記7号ダンベル形状のポリ塩化ビニルシート全面へ塗布し、発泡・硬化させてサンプルIIを得た。
実施例で得られたサンプルI、比較例で得られたサンプルIIおよびポリウレタンフォームを形成させない前記7号ダンベル形状のポリ塩化ビニルシート(参考例)について、120℃の加熱空気雰囲気中での熱老化試験を24時間毎に経時的引張り試験を行い、引張強さおよび伸びを測定して、その変化を確認した。
得られた結果は、次の表に示される。

測定項目 実施例 比較例 参考例
引張強さ (MPa)
0時間経過後 29.0 29.0 29.0
204 〃 28.8 23.0 30.5
347 〃 30.2 16.0 32.0
540 〃 31.5 5.0 33.6
735 〃 32.9 − 31.7
902 〃 33.2 − 33.5
伸び (%)
0時間経過後 280 280 280
204 〃 253 123 262
347 〃 243 45 250
540 〃 206 7 266
735 〃 192 − 228
902 〃 119 − 226

Claims (6)

  1. ポリ塩化ビニルと接して用いられるポリウレタンを形成させるに際し、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との2液混合型ポリウレタン形成材料のポリイソシアネート成分中にポリウレタンよりもポリ塩化ビニルに対する親和性が大である可塑剤を添加して用いることを特徴とするポリウレタンの製造法。
  2. ポリウレタンよりもポリ塩化ビニルに対する親和性が大である可塑剤が、炭素数4〜14の脂肪族ジカルボン酸と炭素数4〜14の脂肪族アルコールとのジエステルである請求項1記載のポリウレタンの製造法。
  3. 脂肪族ジカルボン酸と脂肪族アルコールとのジエステルが分子量200〜2000のジエステルである請求項2記載のポリウレタンの製造法。
  4. ポリオール成分と可塑剤添加ポリイソシアネート成分との合計量中、可塑剤が20重量%以下の割合で用いられた請求項1記載のポリウレタンの製造法。
  5. アスカーC硬度(SRIS 0101準拠)が25〜95のポリウレタンを形成させる請求項1記載のポリウレタンの製造法。
  6. ポリウレタンフォームを形成させる請求項1または5記載のポリウレタンの製造法。
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