JP2009272500A - 磁性金属粉焼結シートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い透磁率μおよび高い電気抵抗率ρを共に有する特性と柔軟性とを有する厚さが200μm以下の磁性金属粉焼結シートの製造方法を提供する。
【解決手段】調整工程P6で調整されたスラリーからシート化工程P7において所定厚みの生シート38に成形され、焼結工程P8においてその生シート38に熱処理を施すことによりその生シート38中のバインダー( 有機質結合材) Bを焼失させるとともに、その生シート38中の軟磁性金属粉Mを相互に焼結させて多気孔性の磁気シート( 磁性金属粉焼結シート)22とされるので、高い透磁率μおよび高い電気抵抗率ρを共に有する特性と柔軟性とを有する厚さが200μm以下の磁性シート22が得られる。
【選択図】図2
【解決手段】調整工程P6で調整されたスラリーからシート化工程P7において所定厚みの生シート38に成形され、焼結工程P8においてその生シート38に熱処理を施すことによりその生シート38中のバインダー( 有機質結合材) Bを焼失させるとともに、その生シート38中の軟磁性金属粉Mを相互に焼結させて多気孔性の磁気シート( 磁性金属粉焼結シート)22とされるので、高い透磁率μおよび高い電気抵抗率ρを共に有する特性と柔軟性とを有する厚さが200μm以下の磁性シート22が得られる。
【選択図】図2
Description
本発明は、kHz帯の周波数を利用する無線通信に用いられる磁性金属粉焼結シートの製造方法に関する。
例えば、キーレスアンテナ、無接点( ワイヤレス)充電装置等では、kHz帯の周波数を利用する電磁誘導方式の無線通信が行われている。このような電磁誘導方式の無線通信では、アンテナから漏れる磁束を遮蔽すること、通信に寄与させる磁束を効率的に集束させる必要があることから、アンテナの周辺にシート状の磁性体を設けることが知られている。このようなkHz帯の周波数を利用する電磁誘導方式の無線通信に用いられるシート状磁性体は、磁気遮蔽および磁束集束の性能を高めるために高い透磁率を有することが望まれるとともに、渦電流損失の発生を抑制するために高い電気抵抗率を有することが望まれる。
一般に、上記シート状磁性体としては、軟磁性金属を薄膜まで圧延することにより得られる磁性金属箔、フェライトを薄いシート状に成形して焼成することにより得られるフェライト焼結体、磁性金属粉を混入させたゴムをシート状に成形した磁性シートから構成することが考えられる。しかし、上記磁性金属箔では、高い透磁率を得ることができるものの、電気抵抗率が低いという欠点があり、上記フェライト焼結体では、高い透磁率および高い電気抵抗値が得られるものの、柔軟性がなく脆いことから薄板への加工が困難であるという欠点があり、上記磁性シートでは、高い電気抵抗率を得ることができるものの、透磁率が低いという欠点があった。
これに対し、特許文献1に記載されているように、扁平な軟磁性合金粉末をバインダや溶媒と混合してスラリー状とし、これを基板上に塗布し焼結させることで軟磁性合金圧膜を形成することが提案されている。
しかし、上記引用文献1に記載の軟磁性合金圧膜は、厚みが極めて薄く形成され、フェライト焼結体よりも高い透磁率が得られるものの、基板の一面に焼結によって固着される構成であるため、フェライト焼結体と同様に柔軟性がなく脆いことから、形状などの加工に制約があるとともに、落下などの衝撃が加えられることが予測される機器への利用が困難であるという欠点があった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、高い透磁率および高い電気抵抗率を共に有する特性と柔軟性とを有する厚さが200μm以下の磁性金属粉焼結シートの製造方法を提供することにある。
斯かる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、厚さが200μm以下の磁性金属粉焼結シートの製造方法であって、( 1)軟磁性金属粉と有機質結合材とを所定の割合で混合して所定粘度のスラリーを調整する調整工程と、( 2)その調整工程で調整されたスラリーから所定厚みの生シートを成形するシート化工程と、( 3)そのシート化工程で成形された生シートに熱処理を施すことによりその生シート中の有機質結合材を焼失させるとともに、該生シート中の軟磁性金属粉を相互に焼結させ、多気孔性の磁性金属粉焼結シートとする焼結工程とを、含むことにある。
このようにすれば、スラリーから所定厚みに成形された生シートに熱処理を施すことによりその生シート中の有機質結合材を焼失させるとともに、その生シート中の軟磁性金属粉を相互に焼結させて多気孔性の磁性金属粉焼結シートとされるので、高い透磁率および高い電気抵抗率を共に有する特性と柔軟性とを有する厚さが200μm以下の磁性金属粉焼結シートが得られる。
ここで、好適には、前記軟磁性金属粉は、扁平形状および/または球形状の粒子を含むものである。このようにすれば、扁平形状および球形状の軟磁性金属粉の一方および両方を、高い透磁率を維持しつつ高い電気抵抗率を得るために選択することができる。
また、好適には、前記軟磁性金属粉は、焼結温度の異なる少なくとも2種類の軟磁性金属粉末が混合されたものである。このようにすれば、焼結温度の異なる少なくとも2種類の軟磁性金属粉末の割合を調整することにより、軟磁性金属粉の焼結性金属粉の焼結の程度を適切に調節することができる。
また、好適には、前記磁性金属粉焼結シートは、150以上の透磁率と、500μΩcm以上の体積抵抗率と、可撓性とを備えるものである。このようにすれば、キーレスアンテナ、無接点充電装置等のkHz帯の周波数を利用する電磁誘導方式の無線通信において、アンテナから漏れる磁束を遮蔽したり、通信に寄与させる磁束を効率的に集束させたりすることができるとともに、耐衝撃性の高い部品として、好適に用いられる。
また、好適には、前記磁性金属粉焼結シートは、kHz帯の周波数の無線通信に用いられるアンテナの周辺において、磁束の集束のために配置されるものである。このようにすれば、磁束の漏れが少なくなってアンテナの性能が高められる。
また、好適には、前記アンテナは、無線電力伝送に用いられるものである。このようにすれば、非接触の充電装置等における無線電力伝送において電力の伝送効率が高められる。
また、好適には、前記磁性金属粉焼結シートは、電気抵抗を高めるための溝又は割れ目を有するものである。このようにすれば、一層高い電気抵抗が得られ、渦電流損が抑制される。
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例の説明に用いる図は簡略化されており、各部の寸法等は必ずしも正確には描かれていない。
図1は、周波数がkHz帯の電磁誘導方式の無線通信の一種である無線電力伝送を利用した無接点( ワイヤレス)充電機能或いは高速電力線通信( PLC)機能を有する携帯機器10と、その携帯機器10の充電および/または電力線通信のためにそれが載置される載置台12とを、それぞれ示している。載置台12には、その載置面13に面一に位置する薄型のコイル電極すなわち通信用アンテナコイル14と、電磁波を発生させるためにその通信用アンテナコイル14をkHz帯の周波数で駆動制御する駆動制御回路16と、通信用アンテナコイル14の裏面側に密着して重ねられて配置された本発明の一例の製造方法により製造された磁性金属粉焼結シート( 以下、磁気シートという) 22とが設けられている。
携帯機器10には、たとえばリチウムイオンバッテリを収容した金属製の箱である薄型の電池セル20と、載置台12に設けられたものと同様の磁気シート22と、薄型のコイル電極すなわち通信用アンテナコイル24とが相互に密着して重ねられた状態で、合成樹脂製のケース18の裏蓋26内に収容されている。また、そのケース18内の上記電池セル20に隣接した位置には、無接点( ワイヤレス)充電および/または高速電力線通信( PLC)を制御するための制御回路29が設けられている。
上記磁気シート22は、軟磁性粉末が相互の接触点において結合させられた多気孔性の焼結体であり、200μm以下の厚みのシート状(平板状)に形成されると共に、必要に応じて補強シートに積層されたり、補強樹脂により含浸される。この磁気シート22は、150乃至400程度の比較的高い透磁率( μ’) と、500乃至900程度の比較的高い抵抗率(μΩ・cm)を備えるとともに、金属と同様の柔軟性を有していることから、高い耐割れ性や耐衝撃性を備えている。
上記磁気シート22は、上記のように比較的高い透磁率μ’( 透磁率μの実数部) および電気抵抗率ρ(μΩ・cm)を備えているので、電池セル20と通信用アンテナコイル24との間に介在させられた状態でその通信用アンテナコイル24に重ねられる結果、その通信用アンテナコイル24の感度を高めるとともに磁気シート22の渦電流損を低下させ、充電効率や通信感度を好適に高める機能を有している。また、上記磁気シート22は、軟磁性粉末が相互の接触点において結合させられた多気孔性の焼結体であって、高い耐割れ性や耐衝撃性を備えているため、携帯機器10の落下等に対する耐衝撃性能が高められる。
図2は、上記磁気シート22の製造工程を説明する図である。図2において、溶融工程P1では、軟磁性金属であるFe−Si−Cr合金等を得るための所定のFe原料、Si原料、及びCr原料等が坩堝に投入されて溶融され、溶湯が生成される。金属粉末生成工程P2では、よく知られた方法により上記溶湯から軟磁性金属粉末が生成される。例えば、ガスアトマイザー或いはガス水アトマイザーを用いて環状ノズルから噴射されたガス又は噴射水中に溶湯が落下させられることにより粒子化される。図3はその水アトマイザーの要部を説明する図である。図3において、タンデシュ30の底に設けられた5mm以下の注湯ノズル径から1700℃以下の温度の溶融合金MMが流されて細い流れが形成される。そして、その細い流れが通過する環状のノズル32が設けられ、その細い流れの周囲から溶融合金MMに向かって水が所定の圧力及び水量で吹きつけられ、その水のジェット噴射のエネルギで溶湯MMが粉粒化されて凝固させられ、容器34内に受けられる。
上記軟磁性金属粉末Mとしては、Fe基であって、例えばFe−Ni合金、Fe−Ni−Mo合金、Fe−Si−Cr合金、Fe−Si−Al合金等が好適に用いられる。
続いて、扁平化処理工程P3では、金属粉末生成工程P2で粉末化された軟磁性金属粉Mを、アトライタまたはボールミルによる扁平化処理を行って、上記軟磁性金属粉末の扁平度(=長径/厚み)が平均値で15以上、好適には28乃至35の範囲内となるまで扁平粒子化され、例えば体積平均粒径D50が20〜40μmのものに適宜分級される。そして、必要に応じて焼鈍工程P4及び被膜処理工程P5が行われる。焼鈍工程P4では所定の特性を得るための焼鈍処理が行われる。被膜処理工程P5では、必要に応じて例えば酸化膜、燐酸化合物膜等に代表される非良導性被膜が上記軟磁性金属粉末の表面に施される。
次いで、調整工程P6では、生シート38を構成する材料が所定の配合割合となるように秤量された後に混合される。たとえば、塩素化ポリエチレンなどの焼失可能なバインダー(ポリマ等の合成樹脂や油脂等の有機質結合剤)Bを9から19重量部と、ジクミルパーオキサイド等の少量の架橋剤を1乃至2重量部とが秤量された後に、それらを有機溶媒( たとえばトルエン)中で溶解して、それに上記軟磁性金属粉末Mを80乃至90重量部( たとえば46容積%)を混合して粘度を調整するとで、図4の生シート38の原料となるスラリーができる。
シート化工程P7では、たとえばドクターブレード法を用いて、上記スラリーから200乃至250μm程度の厚みとなるようにPETフィルム上に塗工されるとともに、乾燥されることにより有機溶媒が除去されてロール状に巻回され、190μm程度の厚みを有する生シート38が得られる。次いで、160℃程度の温度で20分間の熱プレスを行って、生シート38を100μm程度の厚みとする。この熱プレスを用いて圧縮され且つ加熱されることにより、生シート38に含まれるバインダーBの架橋処理が行われる。この状態における生シート38は、図4に示すように、軟磁性金属粉末MがバインダーBによって結合された可撓性のシートとなる。
次に、焼結工程P8では、上記熱プレスされた生シート38が、真空炉内において、200℃/hr程度の昇温速度で900乃至1200℃、好ましくは1100乃至1150℃程度の最高温度まで加熱されるとともにその最高温度で2時間程度保持された後、500℃まで炉内冷却され、さらに室温まで冷却される。この過程では、500℃までの昇温区間においてバインダーBが焼失させられた後、軟磁性金属粉末Mが相互に焼結させられて図5に示すたとえば100μm程度の厚みの薄いシート状の磁気シート22が得られる。図5に示すように、軟磁性金属粉末Mは相互の接触点で結合されることにより多孔質の組織から構成されており、比較的高い透磁率μおよび電気抵抗率ρを有するとともに、金属板と同様の柔軟性や曲げ変形能を備えるので、高い耐衝撃性を有する。
そして、必要に応じて、磁気シート22に加えて、他の工程で得られた裏面シート、基体シート、及び表面シートの少なくとも1つが所定の順序で積層され、且つ必要に応じて加圧装置により相互に圧着或いは接着され、適当な長さのシート状に切断される。また、必要に応じて、打抜装置を用いてカード状となるように打抜き用金型を用いて所定の寸法に打ち抜かれ、さらに種々の項目の性能検査が行われる。図6は、上記打抜き用金型を用いて所定の寸法に打ち抜かれると同時に、全体としての電気抵抗率を高めるための溝或いは割れ目40が設けられた磁気シート22を示している。
以下、本発明者が磁気シート22について行った実験を説明する。先ず、図7の表に示すように、3種類の軟磁性金属粉末、Fe−9.5Si−5.4Al合金、Fe−80Ni合金、Fe−8Si−2Cr合金のそれぞれについて、前記金属粉末生成工程P2および扁平化処理工程P3のように、球状粉および扁平粉を用意した。なお、図7に示す各粉末の平均粒径D50はレーザ回折式粒度分布計を用い、厚みtは透過電子顕微鏡を用いて、それぞれ測定した。扁平度は、平均粒径D50を厚みtで割り算することにより得た。次いで、調整工程P6のように、46容積%のFe−8Si−2Cr合金の扁平状粉と54容積%のバインダーとからスラリー1を調整し、46容積%のFe−80Ni合金の扁平状粉と54容積%のバインダーとからスラリー2を調整し、Fe−9.5Si−5.4Al合金の11容積%の扁平状粉および35容積%の球状粉の混合粉と54容積%のバインダーとからスラリー3を調整し、焼結温度が相互に異なるFe−9.5Si−5.4Al合金の扁平状粉とFe−8Si−2Cr合金の扁平状粉との混合粉50容積%とバインダー50容積%とからスラリー4を調整し、それら4種類のスラリー1乃至4を用いて、シート化工程P7と同様にシート化して4種類の生シート38を作成し、それら4種類の生シート38から焼結工程P8と同様に焼結を施してシート状の磁気シート22に相当する開発材1乃至4を作成した。
次いで、上記開発材1乃至4のそれぞれについて、外径7mm、内径3mm、の円環状試験片に打ち抜き、得られた試験片の周波数100kHzにおけるインダクタンスLを、アジレントテクノロジー社製のインピーダンスアナライザーHP4294Aを用いて測定した。また、上記開発材1乃至4のそれぞれについて、縦30mm×横30mmの正方形に加工した試験片について、抵抗率計を用いて体積当たりの電気抵抗率( 体積抵抗率) ρ(μΩ・cm)を測定した。そして、各開発材1乃至4について、得られたインダクタンスLおよび電気抵抗率ρ(μΩ・cm)から各試験片の比透磁率μの実数部μ’および虚数部μ”をそれぞれ算出した。図8の図表は、上記開発材1乃至4のそれぞれについての測定値を示している。
また、50容積%のFe−9.5Si−5.4Al合金の扁平状粉を含むゴム磁性シートと、シート状のMn−Zn系フェライト焼結体と、シート状のFe−78Ni−4Mo合金からなる金属箔とを、比較材1、2、3として作成し、上記と同様にして、周波数100kHzにおけるインダクタンスLと電気抵抗率( 体積抵抗率) ρ(μΩ・cm)をそれぞれ測定し、比較材1乃至3について、得られたインダクタンスLおよび電気抵抗率ρ(μΩ・cm)から各試験片の比透磁率μの実数部μ’および虚数部μ”をそれぞれ算出した。図8の図表は、上記比較材1乃至3、上記開発材1乃至4のそれぞれについての測定値を示している。
また、上記開発材1乃至4および比較材1乃至3について、90°の曲げ試験を行って、割れの発生の有無に基づいて柔軟性を評価した。○印は割れなしを示し、×印は割れの発生を示している。
図8から明らかなように、比較材1( ゴム磁性シート) は、柔軟性は良好であるため耐衝撃性能が得られ且つ体積抵抗率ρは低いため渦電流損の発生が抑制されるものの、透磁率μ’が低いためアンテナコイルの感度を十分に高めることができない。また、比較材3は、柔軟性は良好であるため耐衝撃性能が得られ且つ透磁率μ’が高いためアンテナコイルの感度を十分に高められるものの、体積抵抗率ρが高いため渦電流損の発生が大きくなる。また、比較材2は、透磁率μ’が比較的高いためアンテナコイルの感度を十分に高められ且つ体積抵抗率ρが高いため渦電流損の発生が抑制されるものの、柔軟性が低く割れが発生しやすいので、十分な耐衝撃性が得られない。これらに対して、開発材1乃至4によれば、いずれも、透磁率μ’が比較的高いためアンテナコイルの感度を十分に高められ且つ体積抵抗率ρが高いため渦電流損の発生が抑制され、しかも、柔軟性が良好で割れが発生がないので、十分な耐衝撃性が得られる。上記開発材1乃至4においては、150以上の透磁率μ’と、500μΩ・cm以上の体積抵抗率ρとを備えている点が共通している。
上記開発材1は、軟磁性金属粉として1種類のFe−8Si−2Cr合金の扁平状粉を含み、開発材2は、軟磁性金属粉として1種類のFe−80Ni合金の扁平状粉を含むものであったが、開発材3は、軟磁性金属粉としてFe−9.5Si−5.4Al合金の扁平状粉と球状粉との混合粉を含むものであり、開発材4は、軟磁性金属粉として、焼結温度が相互に異なるFe−9.5Si−5.4Al合金の扁平状粉とFe−8Si−2Cr合金の扁平状粉とを含むものである。したがって、軟磁性金属粉として、粉末の成分、形状、粉末の充填量、異型状粉末の混合割合、焼結温度の異なる種類の混合粉を変化させることにより、透磁率μ’と体積抵抗率ρとを、所望の範囲内の値に設定することが可能となる。
図9および図10は他の実験に用いた測定方法を説明する図であり、図11はその測定結果を示す図表である。図9は、線径0.4mmφのワイヤから内径8mm、外径16mmの10ターンの平面コイル46を作成し、その平面コイル46を、台座48上の1mm厚みの金属台50の上に、50μmのPETフィルム絶縁層52、前記シート状の比較材1、比較材2、開発材2のいずれかの磁気シート、100μmのPETフィルム絶縁層54を介して載置した状態で、アジレントテクノロジー社製のインピーダンスアナライザ4194Aを用い、平面コイル46のインダクタンスLcおよび抵抗値Rc( Ω) を、100kHzの測定周波数を用いて比較材1、比較材2、開発材2毎にそれぞれ測定した。
図11に示すように、平面コイル46のインダクタンスLcは、比較材1、比較材2、開発材2のいずれにおいてもそれほど差がなく、磁気シートの影響は見られないが、平面コイル46の抵抗値Rc( Ω) については、開発材2の場合は、比較材1の場合と同様に、比較材2の場合よりも1/5となり、平面コイル48での出力が大きく得られる。
上記図8、図11の実験結果によれば、本実施例の磁気シート22に対応する開発材1乃至4は、ゴム磁性シートである比較材1および磁性金属箔である比較材3に比較して、周波数fおよび透磁率μ’に関しては図12に示すように位置づけられ、電気抵抗率ρおよび透磁率μ’に関しては図13に示すように位置づけられる。すなわち、本実施例の磁気シート22に対応する開発材1乃至4は、kHz帯において比較材1および比較材3よりも高い透磁率μ’が得られるとともに、比較材1および比較材3の中間的な電気抵抗率ρが得られる。したがって、kHz帯において用いられる無線電力伝送を利用した非接触の充電装置や、kHz帯の周波数を利用する電磁誘導方式の無線通信において、渦電流損失の発生を抑制しつつ磁気遮蔽および磁束集束の性能を高めることができ、通信効率や通信距離が大幅に改善されるという効果が得られる。
上述のように、本実施例の製造方法により得られた磁気シート22によれば、調整工程P6で調整されたスラリーからシート化工程P7において所定厚みの生シート38に成形され、焼結工程P8においてその生シート38に熱処理を施すことによりその生シート38中のバインダー( 有機質結合材) Bを焼失させるとともに、その生シート38中の軟磁性金属粉Mを相互に焼結させて多気孔性の磁気シート( 磁性金属粉焼結シート)22とされるので、高い透磁率μおよび高い電気抵抗率ρを共に有する特性と柔軟性とを有する厚さが200μm以下の磁気シート22が得られる。
また、本実施例によれば、軟磁性金属粉Mは、扁平形状および/または球形状の粒子を含むものであることから、扁平形状および球形状の軟磁性金属粉の一方および両方を、高い透磁率μを維持しつつ高い電気抵抗率ρを得るために選択することができる。
また、本実施例によれば、軟磁性金属粉Mは、焼結温度の異なる少なくとも2種類の軟磁性金属粉末が混合されたものであるので、焼結温度の異なる少なくとも2種類の軟磁性金属粉末Mの割合を調整することにより、軟磁性金属粉Mの焼結性金属粉の焼結の程度を適切に調節することができる。
また、本実施例によれば、磁気シート( 磁性金属粉焼結シート)22は、150以上の透磁率μと、500μΩcm以上の体積抵抗率ρと、柔軟性すなわち可撓性とを備えるものであることから、キーレスアンテナ、無接点充電装置等のkHz帯の周波数を利用する電磁誘導方式の無線通信において、アンテナから漏れる磁束を遮蔽したり、通信に寄与させる磁束を効率的に集束させたりすることができるとともに、耐衝撃性の高い部品として、好適に用いられる。
また、本実施例によれば、磁気シート( 磁性金属粉焼結シート)22は、体積抵抗率ρを高めるための溝又は割れ目40を設けることができ、そのようにすれば、一層高い体積抵抗率ρが得られる。
また、本実施例によれば、磁気シート( 磁性金属粉焼結シート)22は、kHz帯の周波数の無線通信に用いられる通信用アンテナコイル24の周辺において、磁束の集束のために配置されるものであるので、磁束の漏れが少なくなって通信用アンテナコイル24の性能が高められる。
また、本実施例によれば、通信用アンテナコイル24が無線電力伝送に用いられるものであるので、非接触の充電装置等における無線電力伝送において電力の伝送効率が高められる。
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
たとえば、前述の実施例において、有機質結合剤として塩素化ポリエチレン樹脂( バインダー)が用いられていたが、焼結工程において焼失可能なポリマ等の合成樹脂や油脂、たとえばゴム或いはエラストマーが用いられていたが、ナイロン、ポリフェニレン、サイファイド、エポキシ樹脂などが用いられてもよい。
また、前述の金属粉末生成工程P2において、水アトマイザーが用いられていたが、必ずしも水が用いられなくてもよく、空気又は空気及び水等の冷却流体が用いられてもよい。
また、前述のシート化工程P7では、生シート38に含まれるバインダーBの架橋処理のために熱プレスが用いられていたが、熱間の分出圧延およびカレンダー圧延が用いられてもよい。
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
22:磁気シート( 磁性金属粉焼結シート)
24:通信用アンテナコイル( アンテナ)
38:生シート
40:溝又は割れ目
P6:調整工程
P7:シート化工程
P8:焼結工程
24:通信用アンテナコイル( アンテナ)
38:生シート
40:溝又は割れ目
P6:調整工程
P7:シート化工程
P8:焼結工程
Claims (5)
- 厚さが200μm以下の磁性金属粉焼結シートの製造方法であって、
軟磁性金属粉と有機質結合材とを所定の割合で混合して所定粘度のスラリーを調整する調整工程と、
該調整工程で調整されたスラリーから所定厚みの生シートを成形するシート化工程と、
該シート化工程で成形された生シートに熱処理を施すことにより該生シート中の有機質結合材を焼失させるとともに、該生シート中の軟磁性金属粉を相互に焼結させ、多気孔性の磁性金属粉焼結シートとする焼結工程と
を、含むことを特徴とする磁性金属粉焼結シートの製造方法。 - 前記軟磁性金属粉は、扁平形状および/または球形状の粒子を含むものである請求項1の磁性金属粉焼結シートの製造方法。
- 前記軟磁性金属粉は、焼結温度の異なる少なくとも2種類の軟磁性金属粉末が混合されたものである請求項1または2の磁性金属粉焼結シートの製造方法。
- 前記磁性金属粉焼結シートは、150以上の透磁率と、500μΩcm以上の体積抵抗率と、可撓性とを備えるものである請求項1乃至3のいずれか1の磁性金属粉焼結シートの製造方法。
- 前記磁性金属粉焼結シートは、kHz帯の周波数の無線通信に用いられるアンテナの周辺において、磁束の集束のために配置されるものである請求項1乃至4のいずれか1の磁性金属粉焼結シートの製造方法。
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