JP2009270065A - セルロースアシレートフィルム、光学補償フィルム、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】1分子中に3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールを含有するセルロースアシレートフィルム。該セルロースアシレートフィルムを用いた光学補償フィルム、偏光板および液晶表示装置。
【選択図】なし
Description
1. 1分子中に3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールを含有するセルロースアシレートフィルム。
2. 前記ポリエステルポリオールの数平均分子量が500以上3000以下である上記1に記載のセルロースアシレートフィルム。
3. 前記ポリエステルポリオールの含有量がセルロースアシレートに対して5質量%以上20質量%以下である上記1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
4. 下記式(I)および下記式(II)で定義されるRe(nm)およびRth(nm)が、波長590nmにおいて下記式(III)および式(IV)を満たす上記1〜3のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
式(I) Re=(nx―ny)×d(nm)
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d(nm)
式(III) Re<10(nm)
式(IV) |Rth|<10(nm)
〔式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。〕
5. 上記1〜4のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学補償フィルム。
6. 上記1〜4のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム、または上記5に記載の光学補償フィルムを少なくとも1枚用いた偏光板。
7. 上記6の偏光板を少なくとも1枚用いた液晶表示装置。
[セルロースアシレート原料綿]
本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えばプラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、本発明のセルロースアシレートフィルムに対しては特に限定されるものではない。
本発明のセルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換基はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでをいずれも好ましく用いることができる。炭素原子数が2から6のものがより好ましく、炭素原子数が2から4のものがさらに好ましい。本発明のセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。測定方法としては、ASTMのD−817−91に準拠した方法や、NMRによる方法が使用出来る。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であり、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が高すぎるとセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になる。重合度が低すぎると作製したフィルムの強度が低下してしまう。粘度平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。また、特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
本発明で使用されるポリエステルポリオール添加剤について述べる。
該ポリエステルポリオールは、セルロースアシレートドープおよびセルロースアシレートフィルムと相溶するものを、所望の光学特性を満たすよう、その構造や分子量、添加量を選択することができる。特に添加量を、セルロースアシレートに対して3質量%以上とすることが好ましく、5〜30質量%とすることが更に好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。
本発明で使用されるポリエステルポリオールは、1分子中に3個以上の水酸基を有する。1分子中に末端アルコール性の水酸基を3個以上有していること好ましく、1つの水酸基あたりの分子量は150以上、1000以下が好ましい。
ポリエステルポリオールは1分子中の水酸基が3個未満であると、揮散性と光学特性の両立する分子量の範囲が狭くなるため好ましくない。
水酸基が多いほうが、ポリエステルポリオールの分子量が小さくても、揮散することなく、セルロースアシレートドープ中およびセルロースアシレートフィルムとの相溶性と光学特性制御の両立の点から好ましいが、水酸基が多くなるとポリエステルオリゴマーの作製時にゲル化する可能性が大きくなり、水酸基は、1分子中に3〜5個存在するのがさらに好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムには、先述のポリエステルポリオールだけでなく、可塑剤、ブリードアウト抑制剤、波長分散調整剤、耐光性改良剤、マット剤、光学異方性調整剤などを目的に応じて加えることができる。
これら添加剤の例として、光学異方性調整剤について説明する。本発明のセルロースアシレートフィルムの光学異方性は、先述のポリエステルポリオールによって制御することができるが、さらに異なる光学異方性調整剤を加えてもよい。例えば、特開2006−30937号公報にRthを低減させる化合物の例が挙げられている。
また、これら添加剤の例として、本発明のセルロースアシレートフィルムを光学的により等方にするための、波長分散を低下させる化合物(波長分散調整剤ともいう)を加えることができる。以下、波長分散調整剤について説明する。
波長分散調整剤は、200〜400nmの紫外領域に吸収を持つ化合物であり、添加することで、フィルムの|Re(450)−Re(630)|および|Rth(450)−Rth(630)|を小さくすることができる。(ここで、Re(λ)、Rth(λ)は、波長λnmにおけるRe、Rthの値である。)
|Re(450)−Re(630)|は10nm以下が好ましく、更に5nm以下が好ましい。
|Rth(450)−Rth(630)|は20nm以下が好ましく、更に15nm以下が、液晶表示装置の斜め方向の色味変化を小さくできるため、より好ましい。
上述した本発明で好ましく用いられる波長分散調整剤の添加量は、セルロースアシレートの0.01ないし30質量%であることが好ましく、0.1ないし20質量%であることがより好ましく、0.2ないし10質量%であることが特に好ましい。波長分散調整剤は単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
本発明のセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
上記の光学異方性調製剤、波長分散調整剤の他に、本発明のセルロースアシレートフィルムには、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
本発明では、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造することが好ましく、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムが製造されることが好ましい。本発明において、主溶媒としての有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、炭素原子数が1〜4のアルコールおよび炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−COO−、−CO−および−O−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する化合物の炭素原子数も、前記の官能基を有する化合物同等の1〜12の範囲内のものが好ましい。
[溶解工程]
本発明のセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。本発明におけるセルロースアシレート溶液の調製、さらには溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延させ、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて得られたフィルムを乾燥装置のロール群で機械的に搬送し乾燥を終了して巻き取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。別の態様としては、先述の金属支持体を0℃以下に冷却したドラムとし、ドラム上にダイから流延したドープをゲル化してから約1周した時点で剥ぎ取り、ピン状のテンターで延伸しながら搬送し、乾燥する方法など、ソルベントキャスト法で製膜する様々な方法をとることが可能である。本発明のセルロースアシレートフィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載されており、流延(共流延を含む),金属支持体,乾燥,剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムに対する残留溶剤量が、1.5質量%以下となる条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは1.0質量%以下である。
また、セルロースアシレートフィルムの厚さは20〜120μmが好ましく、30〜90μmがさらに好ましく、35〜80μmが特に好ましい。また、液晶パネルに貼合する偏光子保護フィルムとして用いる場合は、30〜65μmであると温湿度変化に伴うパネルの反りが小さく特に好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムのヘイズは0.01〜2.0%であることが好ましい。光学フィルムとしてフィルムの透明性は重要であり、より好ましくは1.5%以下であり、1.0%以下であることがさらに好ましい。ヘイズの測定は、本発明のセルロースアシレートフィルム試料40mm×80mmを、25℃,60%RHでヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)でJIS K−6714に従って測定できる。
本発明のセルロースアシレートフィルムの評価は以下の方法で測定して実施できる。
試料30mm×40mmを、25℃、60%RHで2時間調湿し、Re(λ)は自動複屈折計KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定する。また、Rth(λ)は前記Re(λ)、面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基に、平均屈折率の仮定値1.48および膜厚を入力し算出する。
式(I) Re=(nx―ny)×d(nm)
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d(nm)
式(III) Re<10(nm)
式(IV) |Rth|<10(nm)
〔式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。〕
試料30mm×40mmを、25℃、60%RHで2時間調湿し、エリプソメーターM−150(日本分光(株)製)において波長780nmから380nmの光をフィルム法線方向に入射させることにより各波長でのReをもとめ、Reの波長分散を測定する。また、Rthの波長分散については、前記Re、面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から780〜380nmの波長の光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長780〜380nmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基に、平均屈折率の仮定値1.48および膜厚を入力して算出する。
本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光板の保護フィルムとして用いる場合の表面処理の有効な手段の1つとしてアルカリ鹸化処理が挙げられる。この場合、アルカリ鹸化処理後のフィルム表面の接触角が55°以下であることが好ましい。50°以下がより好ましく、45°以下であることがさらに好ましい。
セルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月1
5日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
光学用途に本発明のセルロースアシレートフィルムを用いるに際し、各種の機能層を付与することが実施される。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶層などである。本発明のセルロースアシレートフィルムを用いることができるこれらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムの用途について説明する。
本発明のセルロースアシレートフィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号の各公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。
保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶セルへ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶セルへ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶セルへ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む液晶セルが配置されているが、本発明のセルロースアシレートフィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが特に好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いると特に効果がある。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フィルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムはReおよびRthが0≦Re<10nmかつ|Rth|<10nmと光学的異方性が小さく、複屈折を持つ光学異方性層を併用すると光学異方性層の光学性能のみを主に発現することができ、好適に用いることができる。
セルロースアシレートフィルムを光学補償フィルムとして用いる場合は、偏光子の透過軸と、セルロースアシレートフィルムからなる光学補償フィルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光子、および該液晶セルと該偏光子との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成を有している。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に50μm〜2mmの厚さを有する。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードや、上記表示モードを配向分割した表示モードの液晶表示装置に使用することができる。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置に使用できる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、IPSモードおよびECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、または偏光板の保護フィルムとしても特に有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板は色味の改善、視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。この態様においては、液晶セルの上下の前記偏光板の保護フィルムのうち、液晶セルと偏光板との間に配置された保護フィルム(セル側の保護フィルム)に本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板を少なくとも片側一方に用いることが好ましく、セルの両側の保護フィルムに用いることが更に好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、またハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへの適用が好ましく実施できる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明のセルロースアシレートフィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明のセルロースアシレートフィルムを好ましく用いることができる。
本発明にかかるポリエステルポリオールを用いれば、セルロースアシレートフィルムの光学的異方性をゼロに近く作ることができ、優れた透明性を持っていることから、液晶表示装置の液晶セルガラス基板の代替、すなわち駆動液晶を封入する透明基板としても用いることができる。
液晶を封入する透明基板はガスバリアー性に優れる必要があることから、必要に応じて本発明のセルロースアシレートフィルムの表面にガスバリアー層を設けてもよい。ガスバリアー層の形態や材質は特に限定されないが、本発明のセルロースアシレートフィルムの少なくとも片面にSiO2等を蒸着したり、あるいは塩化ビニリデン系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーなど相対的にガスバリアー性の高いポリマーのコート層を設ける方法が考えられ、これらを適宜使用できる。
また液晶を封入する透明基板として用いるには、電圧印加によって液晶を駆動するための透明電極を設けてもよい。透明電極としては特に限定されないが、本発明のセルロースアシレートフィルムの少なくとも片面に、金属膜、金属酸化物膜などを積層することによって透明電極を設けることができる。中でも透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましく、なかでも酸化スズを主として酸化亜鉛を2〜15%含む酸化インジウムの薄膜が好ましく使用できる。これら技術の詳細は例えば、特開2001−125079や特開2000−227603号の各公報などに公開されている。
三あるいは四価アルコールにそれぞれの二塩基酸無水物を反応させた多塩基酸エステルにさらにエチレングリコールを脱水縮合させ、表1に記載のポリエステルポリオール(P−1〜5、Q−1〜4)を作製した。水酸基価は前記方法で測定し、数平均分子量は、ポリエステルポリオールの水酸基価の測定値から計算した。各ポリエステルポリオールの1分子中の水酸基の個数は、P−1〜P−4が3個、P−5が4個、Q−1〜Q−4が2個であった。
メチレンクロライド 100質量部
メタノール 19質量部
1−ブタノール 1質量部
表2の組成の各セルロースアシレート溶液D−1〜D−13を調整し、セルロースアシレート溶液を試験製膜機の流延口から−5℃に冷却したドラム上に流延した。溶媒含有率70質量%の場外で剥ぎ取り、フィルムの巾方向の両端をピンテンター(特開平4−1009号公報の図3に記載のピンテンター)で固定し、溶媒含有率が3乃至5質量%の状態で、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が約3%となるように保持しつつ乾燥した。その後、乾燥部でロール搬送することにより、さらに乾燥し、厚み約60μmのセルロースアシレートフィルム試料F−1〜F−13をそれぞれ作製した。
表3にセルロースアシレートフィルムF−1〜F−13の特性を示す。
上記実施例で得た本発明のセルロースアセテートフィルム試料F−2〜F−6を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬し鹸化し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05規定の硫酸を用いて中和、再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥し、鹸化フィルムを作製した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して偏光子を得た。ポリビニルアルコール(PVA−117H;(株)クラレ製)3%水溶液を接着剤として、アルカリ鹸化処理したフィルムF−2〜F−6と、同様にアルカリ鹸化処理した市販のセルロースアセテートフィルム(フジタック TD60UL;富士フイルム(株)製)を用意して、偏光子を間にして貼り合わせ、両面がセルロースアシレートフィルムよって保護された偏光板を得た。本発明のセルロースアシレートフィルム試料はいずれも延伸したポリビニルアルコールとの貼合性は十分であり、優れた偏光板加工適性を有していた。また、前述のセルロースアシレートフィルム(フジタック TD60UL;富士フイルム(株)製)を両面に用いた偏光板を同様にして作製した。
上記の偏光板を用いて、液晶表示装置へ実装してその光学性能が十分であるか確認した。なお本実施例では市販のIPS型液晶装置から偏光板を剥がし取り出したセルを用いた。本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板または光学補償フィルムの用途は液晶表示装置の動作モードに限定されることはない。
作製した液晶表示装置を、正面からの極角方向60度において360度一周で黒表示の色味変化を観察した結果、本発明の偏光板を張り合わせたものは、市販のTD60ULのみで作製した偏光板をセルの両面に用いたものに対して、黒色味の変化が小さいことがはっきりと視認出来た。
Claims (7)
- 1分子中に3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールを含有するセルロースアシレートフィルム。
- 前記ポリエステルポリオールの数平均分子量が500以上3000以下である請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 前記ポリエステルポリオールの含有量がセルロースアシレートに対して5質量%以上20質量%以下である請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 下記式(I)および下記式(II)で定義されるRe(nm)およびRth(nm)が、波長590nmにおいて下記式(III)および式(IV)を満たす請求項1〜3のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
式(I) Re=(nx―ny)×d(nm)
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d(nm)
式(III) Re<10(nm)
式(IV) |Rth|<10(nm)
〔式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。〕 - 請求項1〜4のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学補償フィルム。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム、または請求項5に記載の光学補償フィルムを少なくとも1枚用いた偏光板。
- 請求項6に記載の偏光板を少なくとも1枚用いた液晶表示装置。
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