JP2009269903A - 電位依存性カチオンチャネル阻害剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】感覚の抑制又は調整、あるいは日常感じる過敏な感覚又は不快な感覚の低減に利用することができる、電位依存性カチオンチャネル阻害剤の提供。
【解決手段】ジヒドロミルセノール、β−フェニルエチルアルコール、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、シトラール、cis−3−ヘキセノール、ジヒドロジャスモン酸メチル、ベンズアルデヒド、ゲラニオール、酢酸ベンジル、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、アニスアルデヒド、n−ノナナール、テトラヒドロリナロール、4−イソプロピルシクロヘキシルメタノール、4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキシルメタノール、3−メチル−5−フェニルペンタノールフェニルヘキサノール、β−ベータイオノン、ヘキサノール、ミルセノール、サリチル酸ベンジル、及びl−メントンから選択される一種以上の化合物を有効成分とする、電位依存性カチオンチャネル阻害剤。
【選択図】なし
【解決手段】ジヒドロミルセノール、β−フェニルエチルアルコール、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、シトラール、cis−3−ヘキセノール、ジヒドロジャスモン酸メチル、ベンズアルデヒド、ゲラニオール、酢酸ベンジル、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、アニスアルデヒド、n−ノナナール、テトラヒドロリナロール、4−イソプロピルシクロヘキシルメタノール、4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキシルメタノール、3−メチル−5−フェニルペンタノールフェニルヘキサノール、β−ベータイオノン、ヘキサノール、ミルセノール、サリチル酸ベンジル、及びl−メントンから選択される一種以上の化合物を有効成分とする、電位依存性カチオンチャネル阻害剤。
【選択図】なし
Description
本発明は、電位依存性カチオンチャネル阻害剤に関する。
近年、生活環境の変化に起因する化学物質やハウスダスト等の外来刺激物質の増加によるアレルギーなどの過敏症の増加や、自己の体臭や家庭における種々の生活臭を初めとする生活環境の臭気を嫌悪する傾向の高まりなど、過敏な感覚に起因する日常の不快感が問題となっている。
感覚は、皮膚感覚や深部感覚等の体性感覚、内臓痛等の内臓感覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚等の特殊感覚に分類することができる。感覚の情報は、例えば皮膚の各種受容器、筋紡錘、網膜、嗅粘膜、味蕾、蝸牛の有毛細胞等の末梢の感覚受容器によって受容され、知覚神経において神経インパルスに変換された後、電気信号として中枢まで伝達される。
例えば、痛覚は、皮膚の自由神経終末で受容される侵害刺激(温度刺激、化学刺激、機械刺激)によって惹起される。自由神経終末には、各々の刺激に感受性のイオンチャネルが存在しており、刺激を受けた場合、これらのイオンチャネルが開口することでカチオンチャネルが細胞内に流入し、結果として電位依存性カチオンチャネルが活性化されて、神経の活動電位(インパルス)が発生する(非特許文献1)。また、かゆみを起こす刺激としては、機械刺激、熱刺激、電気刺激等の物理的刺激と、起痒物質等の化学的刺激とが知られている。これらの刺激は、主として真皮内のマスト細胞からヒスタミンを放出させ、放出されたヒスタミンは自由神経終末上の受容体と結合してカルシウムイオンの流入を引き起こし、最終的に神経の活動電位を発生させると考えられている(非特許文献2)。
同様に、他のいずれの感覚の場合にも、情報は、最終的には、神経細胞の電位依存性カチオンチャネルの活性化によって発生する活動電位の形態で中枢に伝達される。電位依存性カチオンチャネルはさらに、こうした活動電位の発生や伝導だけでなく、シナプス間隙や神経筋終末への神経伝達物質の放出にも関与している。したがって、電位依存性カチオンチャネルの活性化を阻害すれば、感覚を抑制することが可能である。実際、電位依存性カチオンチャネル阻害剤を利用して感覚を抑制させる方法は、従来から医療現場等で使用されている。例えば、局所麻酔剤や抗不整脈薬として使用されるリドカイン(例えば、キシロカイン(登録商標))は、電位依存性ナトリウムチャネル阻害剤である。電位依存性カルシウムチャネル阻害剤であるガバペンチン(例えば、ガバペン(登録商標)、ニューロンチン(登録商標))は、抗痙攣剤あるいは鎮痛補助薬として使用されている。また、電位依存性カルシウムチャネル又はナトリウムチャネルのインヒビター(例えば、ベラパミル)が、外的攻撃に対する皮膚の耐性域値を増加させ、皮膚の過敏症に適用できることが報告されている(特許文献1)。
知覚神経の電位依存性カチオンチャネルを阻害することによって、医療目的での感覚抑制効果が得られるだけでなく、日常感じる過敏な感覚又は不快な感覚を抑制又は調整することにより、生活の質を改善することができる可能性がある。
特表2002-505268号公報
富永真琴, (2006), 実験医学, vol.24, No.15: 54−59
豊田雅彦, (2004), 綜合臨床、Vo.53, No.5: 1629−1636
本発明は、感覚の抑制又は調整、あるいは日常感じる過敏な感覚又は不快な感覚の低減に利用することができる、電位依存性カチオンチャネル阻害剤に関する。
本発明者らは、電位依存性カチオンチャネルを効果的に阻害し、感覚の抑制又は調整に利用し得る物質を探索した。その結果、特定の化合物が、有効な電位依存性カチオンチャネル阻害効果を有することを見出した。
すなわち、本発明は、ジヒドロミルセノール、β−フェニルエチルアルコール、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、シトラール、cis−3−ヘキセノール、ジヒドロジャスモン酸メチル、ベンズアルデヒド、ゲラニオール、酢酸ベンジル、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、アニスアルデヒド、n−ノナナール、テトラヒドロリナロール、4−イソプロピルシクロヘキシルメタノール、4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキシルメタノール、3−メチル−5−フェニルペンタノール、β−イオノン、ヘキサノール、ミルセノール、サリチル酸ベンジル、及びl−メントンから選択される一種以上の化合物を有効成分とする、電位依存性カチオンチャネル阻害剤を提供する。
本発明の電位依存性カチオンチャネル阻害剤は、種々の感覚を効果的に抑制又は調整することで、医療分野において有用であるだけでなく、日常感じる過敏な感覚又は不快な感覚を低減させることができる。
本発明の電位依存性カチオンチャネル阻害剤の有効成分は、以下に示す化合物(以下、本発明化合物)から選択されるものである:ジヒドロミルセノール(2,6-dimethyl-7 -octen-2-ol);β−フェニルエチルアルコール(2-phenylethane-1-ol);ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド(例えば、2,4-dimethyl-3-cyclohexene-1-carboxaldehyde、3,5-dimethyl-3-cyclohexene-1-carboxaldehyde、3,6-dimethyl-3-cyclohexene-1-carboxaldehyde、3,4-dimethyl-3-cyclohexene-1-carboxaldehyde、トリプラール(登録商標):IFF社(International Flavors & Fragrances Inc.)、リグストラール(登録商標):ジボダン社、及びシクロベルタール(登録商標):花王株式会社);シトラール(3,7-dimethyl -2,6-octadienal);cis−3−ヘキセノール((Z)-3-hexen-1-ol);ジヒドロジャスモン酸メチル(methyl 2-(3-oxo-2-pentylcyclopentyl)acetate);ベンズアルデヒド(benzaldehyde);ゲラニオール((E)-3,7-dimethyl-2,6-octadien-1-ol);酢酸ベンジル(benzyl acetate);2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール(2-methyl-4-(2,2,3-trimethyl-3- cyclopeneten-1-yl)-2-buten-1-ol)(サンダルマイソールコア(登録商標):花王株式会社); アニスアルデヒド(4-methoxy benzaldehyde);n−ノナナール(1-nonanal又はn-nonyl aldehyde);テトラヒドロリナロール(tetrahydrolinalool)、4−イソプロピルシクロヘキシルメタノール(4-isopropyl cyclohexylmethanol)(Mayol)(マイヨール:フィルメニッヒ社)、4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキシルメタノール(4-isopropyl-1-methylcyclohexylmethanol)、3−メチル−5−フェニルペンタノール (Phenyl hexanol) (フェニルヘキサノール:花王株式会社、フィルメニッヒ社、フェノキサノール:IFF社)、β−イオノン(β-ionone)、ヘキサノール(Hexanol)、ミルセノール(Myrcenol)、サリチル酸ベンジル(benzyl salicylate)、及びl−メントン(l-Menthone)。上記、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒドは、4種類の異性体があり、複数の異性体の混合物として市販されている。具体的には、トリプラール(登録商標)は、70〜90%が2,4-dimethyl-3-cyclohexene-1-carboxaldehyde で構成され、残りが3,5-dimethyl-3-cyclohexene-1-carboxaldehyde で構成されており、リグストラール(登録商標)は、2,4-dimethyl-3-cyclohexene-1-carboxaldehyde と 3,5-dimethyl-3-cyclohexene-1-carboxaldehyde で構成されており、シクロベルタール(登録商標)は、3,6-dimethyl-3-cyclohexene-1-carboxaldehyde を主体とした混合体である。
本発明による電位依存性カチオンチャネル阻害剤は、本発明化合物のうちの1種のみを含有するものでもよく、2種以上を組み合わせて含有していてもよい。
本発明による電位依存性カチオンチャネル阻害剤は、本発明化合物のうちの1種のみを含有するものでもよく、2種以上を組み合わせて含有していてもよい。
本発明における、電位依存性カチオンチャネルの阻害とは、電位依存性カチオンチャネルからの細胞内へのイオンの流入を阻害することをいう。本発明において阻害される電位依存性カチオンチャネルとしては、電位依存性Na+チャネル、電位依存性K+チャネル、電位依存性Ca2+チャネルが挙げられる。このうち、電位依存性Ca2+チャネルはさらに、電気生理学的・薬理学的性質から、L-Type、N-Type、P-Type、Q-Type、R-Type及びT-Typeに分類することができるが、これらはいずれも本発明の電位依存性カチオンチャネル阻害剤の標的である。
後述の実施例に示すように、本発明化合物は、生体由来受容器細胞の電位依存性カチオンチャネルにより生じる電気的活動を抑制することができることから、電位依存性カチオンチャネル阻害剤として有用である。このように、本発明化合物は、電位依存性カチオンチャネル阻害剤として作用して、神経の活動電位の発生や伝達を抑制することができることから、生物の種々の感覚を抑制又は調整するために用いることができる。あるいは、本発明化合物は、電位依存性カチオンチャネル阻害剤として、神経活動の亢進に起因する疾患の予防・治療に利用できる。したがって、本発明化合物は、電位依存性カチオンチャネル阻害剤として、又はその製造のために使用できる他に、感覚を抑制若しくは調整、又は神経活動を抑制するための、医薬品、医薬部外品、その他の組成物等として、あるいはそれらの製造のために使用することができる。
上記抑制又は調整される感覚としては、皮膚や粘膜で受容される触覚、圧覚、温覚、冷覚、痛覚、及び筋、腱や関節からの感覚を含む、体性感覚;臓器感覚及び内臓痛を含む内臓感覚;視覚、聴覚、味覚、嗅覚及び平衡感覚を含む特殊感覚;ならびに、その他の感覚(例えば、掻痒感、しびれ、神経痛、疼痛、その他不快感等)が挙げられる。あるいは、本発明化合物により抑制又は調整される感覚としては、任意の外来及び内部由来の刺激に惹起され得る感覚、及び任意の状況下で惹起され得る感覚が挙げられる。これらのあらゆる感覚は、本発明化合物により抑制、軽減又は改善され得る。
医薬品、医薬部外品、その他の組成物等として使用する場合、本発明の電位依存性カチオンチャネル阻害剤の具体的用途としては、例えば、医学または獣医学分野で使用される麻酔剤、鎮静剤、鎮痛剤、鎮咳剤、抗炎症剤、過敏症やアレルギー反応などの過剰な感覚の抑制剤、痒み止め、ペインクリニック用医薬などの医薬品及び医薬部外品;消臭剤等のハウスケア製品;皮膚過敏症抑制作用を有する入浴剤や化粧料、知覚過敏抑制作用を有する歯磨き粉やマウスウォッシュ等のボディケア製品等が挙げられる。
本発明の電位依存性カチオンチャネル阻害剤は、必要に応じて、任意の他の成分と組み合わせて使用されてもよい。好ましい他の成分としては、薬学的に許容される担体が挙げられる。薬学的に許容される担体の具体的な例としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、光沢剤、活性増強剤、矯味剤、矯臭剤等が挙げられる。本発明の電位依存性カチオンチャネル阻害剤は、さらに、公知の他の薬効成分(例えば、他のイオンチャネル阻害剤、感覚抑制若しくは調整剤、抗炎症剤、殺菌剤等)と組み合わせて使用してもよい。
本発明の電位依存性カチオンチャネル阻害剤は、標的とする感覚、又は標的とする対象や身体部位等に応じて、任意の投与形態で投与することができる。標的とする感覚としては上述のとおりであり、標的とする対象や身体部位としては、例えば、生体、ならびに生体由来の組織、器官及び細胞が挙げられる。投与形態としては、経口投与及び非経口投与が挙げられる。経口投与のための剤型としては、錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤のような固形投薬形態、あるいはエリキシル、シロップおよび懸濁液のような液体投薬形態が挙げられる。非経口投与のための経路としては、注射、輸液、経皮、経粘膜、経鼻、経腸、吸入、坐剤、ボーラス等が挙げられ、剤型としては、錠剤、カプセル、液体、粉末、顆粒、軟膏、スプレー、ミスト、クリーム、乳液、ジェル、ペースト、ローション、パップ、プラスター、スティック、シート等が挙げられる。
医薬品、医薬部外品、その他の組成物等における本発明の電位依存性カチオンチャネル阻害剤の配合量は、その使用形態や目的により異なるが、例えば感覚抑制に使用する場合、通常、0.01から50質量%、好ましくは0.1から10質量%、より好ましくは0.1から5質量%である。
以下の実施例において、本発明をより詳細に説明する。
(実施例1:本発明化合物の電位依存性カチオンチャネル阻害効果)
(1.試料の調製)
アカハライモリより公知の方法(Kurahashiら, J. Physiol. (1989), 419: 177-192)に従って嗅細胞を単離し、正常リンガー液に浸した。単離方法を簡単に示すと、氷水中で冬眠状態にしたイモリにダブルピスを施し、頭蓋を切開し嗅粘膜を取り出す。取り出した嗅粘膜を0.1%コラゲナーゼ溶液中で37℃にて5分間インキュベートし、コラゲナーゼを洗い流したあと、ガラスピペットにて組織を粉砕し細胞を単離した。正常リンガー液としては、NaCl 110 mM、KCl 3.7 mM、CaCl2 3 mM、MgCl2 1 mM、グルコース 15 mM、ピルビン酸ナトリウム 1 mM、HEPES 2 mM、フェノールレッド 0.001%(w/v)、pH 7.4(NaOHで調整)を用い、電極内溶液としては、KCl 120 mM、HEPES 2 mM、フェノールレッド 0.001%(w/v)、pH7.4(KOHで調整)を用いた。
(1.試料の調製)
アカハライモリより公知の方法(Kurahashiら, J. Physiol. (1989), 419: 177-192)に従って嗅細胞を単離し、正常リンガー液に浸した。単離方法を簡単に示すと、氷水中で冬眠状態にしたイモリにダブルピスを施し、頭蓋を切開し嗅粘膜を取り出す。取り出した嗅粘膜を0.1%コラゲナーゼ溶液中で37℃にて5分間インキュベートし、コラゲナーゼを洗い流したあと、ガラスピペットにて組織を粉砕し細胞を単離した。正常リンガー液としては、NaCl 110 mM、KCl 3.7 mM、CaCl2 3 mM、MgCl2 1 mM、グルコース 15 mM、ピルビン酸ナトリウム 1 mM、HEPES 2 mM、フェノールレッド 0.001%(w/v)、pH 7.4(NaOHで調整)を用い、電極内溶液としては、KCl 120 mM、HEPES 2 mM、フェノールレッド 0.001%(w/v)、pH7.4(KOHで調整)を用いた。
(2.チャネル活性の測定)
(A.設定) 単離した嗅細胞を全細胞記録法により膜電位を固定し、膜電流の計測を行った(Kawaiら, J. Gen. Physiol. (1997), vol.109: 265-272)。電極は、ホウケイ酸ガラスキャピラリー(直径1.2mm)を用い、電極作成用プラー(PP-830, 成茂科学器械)にて作製した(電極抵抗10-30MΩ)。電極内には、電極内溶液と銀塩化銀線を挿入し、銀塩化銀線はパッチクランプアンプ(Axopatch 1D, 200B, Axon Instrument)と接続し、膜電位の固定、脱分極刺激を行った。膜電流の記録は、パッチクランプアンプとA/D変換装置(Digidata 1320,Axon Instrument)を介して接続されたコンピューターを用いて行った。本発明化合物の細胞への刺激(吹きかけ)には、圧力制御装置を用いた。圧力制御装置とは、エアーコンプレッサーより送り込まれた圧縮空気を、コンピューター制御にて任意の圧力まで減圧し、設定した時間、その圧縮空気を、本発明化合物を充填したガラスピペット尾部へ送り込む装置である(Itoら、日本生理学雑誌, 1995,vol.57,127-133)。
(A.設定) 単離した嗅細胞を全細胞記録法により膜電位を固定し、膜電流の計測を行った(Kawaiら, J. Gen. Physiol. (1997), vol.109: 265-272)。電極は、ホウケイ酸ガラスキャピラリー(直径1.2mm)を用い、電極作成用プラー(PP-830, 成茂科学器械)にて作製した(電極抵抗10-30MΩ)。電極内には、電極内溶液と銀塩化銀線を挿入し、銀塩化銀線はパッチクランプアンプ(Axopatch 1D, 200B, Axon Instrument)と接続し、膜電位の固定、脱分極刺激を行った。膜電流の記録は、パッチクランプアンプとA/D変換装置(Digidata 1320,Axon Instrument)を介して接続されたコンピューターを用いて行った。本発明化合物の細胞への刺激(吹きかけ)には、圧力制御装置を用いた。圧力制御装置とは、エアーコンプレッサーより送り込まれた圧縮空気を、コンピューター制御にて任意の圧力まで減圧し、設定した時間、その圧縮空気を、本発明化合物を充填したガラスピペット尾部へ送り込む装置である(Itoら、日本生理学雑誌, 1995,vol.57,127-133)。
(B.手順) 本発明化合物による電位依存性カチオンチャネル活性への影響を調べるため、単離した嗅細胞の膜電位を-100 mVに固定し、200ミリ秒間隔で20ミリ秒間、膜電位を-20 mVへ脱分極させ、脱分極直後に生じる内向き電流のピーク強度を測定した。脱分極刺激を繰り返し続けながら、表1に記載の本発明化合物の各々を、正常リンガー液1 mlあたり1 μlの量で混合した0.1%濃度の試験溶液を、嗅細胞近傍(20 μm以内)に先端が来るようにセットしたガラスピペット(先端口径1 μm)を通じて吹きかけることにより(720ミリ秒間、圧力50 kPa)嗅細胞に添加し、それに伴う内向き電流の変化を調べた。本発明化合物による刺激は、1つの嗅細胞あたり3回繰り返して行い、その平均値を算出した。また、本発明化合物1種類あたり3細胞で測定し、平均値を算出した。試験中、稀に刺激に伴い嗅覚受容体が応答し、環状ヌクレオチドゲート(CNG)チャネルに由来する内向き電流が観察される場合が起きたが、このようなケースは除外した。CNGチャネル電流は、その強度、ピーク形状、持続時間などから電位依存性チャネル電流と容易に区別することができる。本実験で測定された電流データの一例を図1に示す。
(C.結果) 本発明化合物の添加によって得られた内向き電流の変化(図1, b)の平均値を、化合物添加前の5回の脱分極によって生じた内向き電流のピーク強度(図1, a)の平均値(対照)と比較し、内向き電流抑制率を計算することで、本発明化合物の電位依存性カチオンチャンネル活性阻害効果を評価した。評価は、以下の式で表される内向き電流抑制率に基づいて行われた。
内向き電流抑制率 =(1−b/a)×100(%)
本発明化合物の各々の内向き電流抑制率を表1に併せて示す。一部の化合物では、嗅細胞における脱分極に伴う内向き電流の発生が完全に抑制されていた。
内向き電流抑制率 =(1−b/a)×100(%)
本発明化合物の各々の内向き電流抑制率を表1に併せて示す。一部の化合物では、嗅細胞における脱分極に伴う内向き電流の発生が完全に抑制されていた。
(実施例2)
化合物による嗅覚のマスキング(本発明においては、化合物によって匂いへの感度が低下することを指す)は一時的な知覚神経の麻痺であると考えられている。マスキングを嗅覚(知覚)への抑制効果の官能的指標と考え、本発明化合物のマスキング効果(匂いの感度)を知覚神経抑制効果の指標にして評価を行った。なお、悪臭に対する嗅覚感度低下効果が知られている1,8−シネオールを対照として用いて評価を行った。
(A.手順) 官能評価の嗅覚マスキング試験をパネラー20名に対して実施した。悪臭物質として1 %イソ吉草酸を用いた。悪臭2 μlと、表2に示す0.1%濃度の評価化合物の試験溶液4 μlを別々の綿球(直径1 cm)にしみこませ、別々の50 ml注射筒内で12時間、室温で揮発させた。注射筒内で気化したイソ吉草酸と評価化合物をフタ付きのPP容器(容積500 ml)内へ注入し、混和させた。評価は、パネラー自身がPP容器のフタをわずかに開け、容器内の匂いを嗅ぎ、イソ吉草酸の匂いに対するマスキング強度を判定した。マスキング強度の評価は、気化したイソ吉草酸のみを注入したPP容器内の臭気強度と比較し、以下の6段階のマスキングスコアにより行った。
0:マスキングされていない
1:マスキング効果がごくわずかに認められる
2:マスキング効果がやや認められる
3:マスキング効果が十分認められる
4:ほとんどマスキングされている
5:完全にマスキングされている
化合物による嗅覚のマスキング(本発明においては、化合物によって匂いへの感度が低下することを指す)は一時的な知覚神経の麻痺であると考えられている。マスキングを嗅覚(知覚)への抑制効果の官能的指標と考え、本発明化合物のマスキング効果(匂いの感度)を知覚神経抑制効果の指標にして評価を行った。なお、悪臭に対する嗅覚感度低下効果が知られている1,8−シネオールを対照として用いて評価を行った。
(A.手順) 官能評価の嗅覚マスキング試験をパネラー20名に対して実施した。悪臭物質として1 %イソ吉草酸を用いた。悪臭2 μlと、表2に示す0.1%濃度の評価化合物の試験溶液4 μlを別々の綿球(直径1 cm)にしみこませ、別々の50 ml注射筒内で12時間、室温で揮発させた。注射筒内で気化したイソ吉草酸と評価化合物をフタ付きのPP容器(容積500 ml)内へ注入し、混和させた。評価は、パネラー自身がPP容器のフタをわずかに開け、容器内の匂いを嗅ぎ、イソ吉草酸の匂いに対するマスキング強度を判定した。マスキング強度の評価は、気化したイソ吉草酸のみを注入したPP容器内の臭気強度と比較し、以下の6段階のマスキングスコアにより行った。
0:マスキングされていない
1:マスキング効果がごくわずかに認められる
2:マスキング効果がやや認められる
3:マスキング効果が十分認められる
4:ほとんどマスキングされている
5:完全にマスキングされている
Claims (1)
- ジヒドロミルセノール、β−フェニルエチルアルコール、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、シトラール、cis−3−ヘキセノール、ジヒドロジャスモン酸メチル、ベンズアルデヒド、ゲラニオール、酢酸ベンジル、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、アニスアルデヒド、n−ノナナール、テトラヒドロリナロール、4−イソプロピルシクロヘキシルメタノール、4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキシルメタノール、3−メチル−5−フェニルペンタノール、β−イオノン、ヘキサノール、ミルセノール、サリチル酸ベンジル、及びl−メントンから選択される一種以上の化合物を有効成分とする、電位依存性カチオンチャネル阻害剤。
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2008
- 2008-12-01 JP JP2008306097A patent/JP2009269903A/ja active Pending
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