図1は本発明の実施の形態に係わる電圧補償装置を単相ダイオード整流回路に外付けした場合の構成図である。交流電源12の交流電圧Vsは、単相ダイオード整流回路11の4個のダイオードDのブリッジ回路で構成された整流器13に印加され、整流器13で整流され平滑コンデンサ14で平滑された直流電圧Vdが直流機器15に印加される。その際に、直流機器15の負荷抵抗に応じて単相ダイオード整流回路11に交流電源12から交流電流Isが供給される。
電圧補償装置16は、既存の単相ダイオード整流回路11に外付けで接続される。電圧補償装置16は、昇圧用コンデンサ17、接続切替スイッチ18、双方向スイッチ19を有している。
昇圧用コンデンサ17は、2個のコンデンサを直列接続して1組とし、これら複数組の直列接続された2個のコンデンサを平滑コンデンサ14に並列接続して構成される。図1では、4組の直列接続された2個のコンデンサ17a1、17a2〜17d1、17d2を平滑コンデンサ14に並列接続した場合を示している。また、各々のコンデンサ17a1、17a2〜17d1、17d2の容量をC11、C21〜C14、C24で示している。
接続切替スイッチ18は複数組の直列接続された2個のコンデンサの接続を切り替えて、昇圧整流する際の昇圧用コンデンサ17の合計容量を所望の容量とするものである。接続切替スイッチ18は直列接続された2個のコンデンサの組数と同じ個数のスイッチM1〜M4を有し、スイッチM1〜M4の開閉により昇圧用コンデンサの合計容量を所望の容量とする。いま、同じ組のコンデンサ容量は同じであり、以下の容量であるとする。すなわち、C11=C21=10μF、C12=C22=20μF、C13=C23=40μF、C14=C24=80μFであるとする。この場合のスイッチM1〜M4の開閉状態と昇圧用コンデンサ17の合計容量との関係は表1に示すようになる。
表1では、×はスイッチの開状態を示し、○はスイッチの閉状態を示している。双方向スイッチ19側から見た昇圧用コンデンサ17の容量(昇圧整流する際の容量)は、表1から分かるように、すべてのスイッチM1〜M4が開いているときは昇圧用コンデンサ17の容量は0である。スイッチM1のみが閉じているときは昇圧用コンデンサ17の容量は10μF、スイッチM2のみが閉じているときは昇圧用コンデンサ17の容量は20μF、スイッチM1、M2が閉じているときは昇圧用コンデンサ17の容量は30μF、スイッチM3のみが閉じているときは昇圧用コンデンサ17の容量は40μF、スイッチM1、M3が閉じているときは昇圧用コンデンサ17の容量は500μF、以下同様に、スイッチM1〜M4の開閉の組み合わせにより、昇圧整流時の昇圧用コンデンサ17の容量を0μF〜150μFのいずれかに設定できる。接続切替スイッチ18の開閉により容量が決定された昇圧用コンデンサ17は組込用スイッチ20を閉じることにより、単相ダイオード整流回路11の平滑コンデンサ14に並列に接続される。
双方向スイッチ19は単相ダイオード整流回路11の整流器13のいずれか一方の交流端子と昇圧用コンデンサ17の中点との間に接続される。双方向スイッチ19は2個のスイッチング素子S1、S2を逆並列に接続して形成されている。なお、トライアックのように一つの双方向スイッチング素子で形成するようにしてもよい。双方向スイッチ19は、組込用スイッチ20により昇圧用コンデンサ17が平滑コンデンサ14に並列接続され、その後の単相ダイオード整流回路11の動作中に、直流電圧Vdが所定範囲を逸脱したときに導通し、昇圧用コンデンサ17による昇圧整流を行う。すなわち、単相ダイオード整流回路11の動作は、制御部21は直流電圧検出器22で検出された直流電圧Vdを入力し、直流電圧Vdが所定範囲にあるかどうかを判定し、所定範囲を逸脱したときに双方向スイッチ19を導通させる。
次に、演算部23は、昇圧用コンデンサ17を単相ダイオード整流回路11の平滑コンデンサ14に並列接続する前、すなわち組込用スイッチ20を閉じる前に、単相ダイオード整流回路11が必要とする昇圧用コンデンサ17の容量を演算するものである。演算部23は、交流電圧検出器24で検出された交流電圧Vs及び交流電流検出器25で検出された交流電流Isを入力し、交流電圧Vs及び交流電流Isに基づいて、直流機器15の負荷抵抗R及び平滑コンデンサ14の容量Cを推定する。そして、直流機器15の負荷抵抗R及び平滑コンデンサ14の容量Cに基づいて、交流電圧Vsの低下の際に直流機器15の耐量を満たす直流電圧Vdを維持するために必要となる昇圧用コンデンサの容量Caを演算する。
演算部23で演算された昇圧用コンデンサの容量Caは表示部26に表示出力される。また、スイッチ操作部27にも出力され、スイッチ操作部27は昇圧用コンデンサ17の容量が演算部23が求めた容量Caとなるように、スイッチM1〜M4を開閉操作する。なお、表示部26及びスイッチ操作部27は、いずれか一方を設けるようにしてもよい。例えば、表示部26のみを設けた場合には、作業員は表示部26に表示された昇圧用コンデンサの容量Caを見て、手動でスイッチM1〜M4を開閉操作し、昇圧用コンデンサ17の容量を設定することになる。スイッチ操作部27のみを設けた場合には、スイッチ操作部27で昇圧用コンデンサ17の容量が自動設定される。その場合、作業員はスイッチM1〜M4の開閉状態を判断して昇圧用コンデンサ17の容量を確認することになる。
次に、演算部23での昇圧用コンデンサ17の容量Caの演算の仕方について説明する。昇圧用コンデンサ17の容量Caを演算するにあたっては、まず、単相ダイオード整流回路11の直流機器15の負荷抵抗R及び平滑コンデンサ14の容量Cを推定する。そして、直流機器15の負荷抵抗R及び平滑コンデンサ14の容量Cから、単相ダイオード整流回路11が交流電圧低下時に必要とする昇圧用コンデンサ17の容量を演算することになる。
まず、直流機器15の負荷抵抗R及び平滑コンデンサ14の容量Cの推定の仕方について検討する。この推定は、昇圧用コンデンサ17が単相ダイオード整流回路11の平滑コンデンサ14に並列接続される前の単相ダイオード整流回路11の動作状態において推定されるので、単相ダイオード整流回路11の動作状態について検討する。
図2は単相ダイオード整流回路の説明図であり、図2(a)は単相ダイオード整流回路の回路図、図2(b)は単相ダイオード整流回路11の動作波形図である。昇圧用コンデンサ17が単相ダイオード整流回路11の平滑コンデンサ14に並列接続される前の状態においては、単相ダイオード整流回路11は、図2(a)に示すように、交流電源12の交流電圧Vsが単相ダイオード整流回路11の4個のダイオードDのブリッジ回路で構成された整流器13に印加され、整流器13で整流され平滑コンデンサ14で平滑されて直流電圧Vdが直流機器15に印加されている。また、直流機器15の負荷抵抗に応じて交流電源12から交流電流Isが直流機器15に供給されている。
この場合、直流機器15の負荷抵抗Rは、交流電源12から供給した電力Pと、負荷抵抗Rに電流が流れているときの直流電圧Vdとの関係式(P=Vd2/R)から求めることができる。従って、直流機器15の負荷抵抗Rを求めるには、交流電源12から供給した電力Pと、負荷抵抗Rに電流が供給されている導通幅、その導通幅での直流電圧Vdの値が必要となる。
ここで、図2(b)に示すように、交流電圧Vsの全波整流電圧が平滑コンデンサ14の電圧より大きい期間(θ1〜θ2、π+θ1〜π+θ2、2π+θ1〜2π+θ2、…)において、交流電流Isが流れることになる。そこで、交流電流Isが流れる導通幅(θ2−θ1)の導通開始時(ωt=θ1)の直流電圧V1と、導通終了時(ωt=θ2)の直流電圧V2を求め、(V1+V2)/2を導通幅(θ2−θ1)での直流電圧Vdの値とする。また、交流電源12から供給した電力Pは交流電圧Vsの1周期における交流電圧Vsと交流電流Isとの積の積分で求める。
一方、平滑コンデンサ14の容量Cは、以下のようにして推定する。図2(b)において、位相角θの期間(θ2〜π+θ1)においては、平滑コンデンサ14の電圧が交流電圧Vsの全波整流電圧より大きいので、平滑コンデンサの容量Cと負荷抵抗Rとの放電回路が形成される。この放電回路による直流電圧Vdは(1)式で示される。(1)式で、Vd0は定数、ωは角周波数(ωt=θ)である。
放電期間(θ2≦θ≦π+θ1)での初期値(θ=θ2、Vd=V2)を(1)式に代入して定数Vd0を求めると、定数Vd0は(2)式で示される。
(2)式で求めた定数Vd0を(1)式に代入すると、直流電圧Vdは(3)式で示される。
次に、放電期間(θ2≦θ≦π+θ1)での最終値(θ=π+θ1、Vd=V1)を(3)式に代入して整理すると(4)式が得られる。
直流電圧の平滑という目的上、放電回路の時定数ωCRは放電期間幅(π+θ1−θ2)に比べ十分長いので、(π+θ1−θ2)/(ωCR)≪1が満たされる。一般に、Padeの近似式より、x≪1のときには(5)式が成り立つ。
従って、(4)式において、Padeの近似式を適用すると(6)式が成り立つ。
そして、(6)式を平滑コンデンサの容量Cについて整理すると(7)式が得られる。
図3は、演算部23の詳細ブロック図である。図3において、演算部23には、交流電圧検出器24で検出された交流電圧Vs及び交流電流検出器25で検出された交流電流Isが入力される。交流電流Isは演算部23の電流絶対値演算器28に入力され、電流絶対値|Is|が求められる。電流絶対値演算器28で求められた電流絶対値|Is|は、比較器29及び比較器30に入力される。
比較器29は交流電流Isが導通開始したかどうかを判定するものであり、電流絶対値|Is|は導通開始判定値Ismin1と比較され、電流絶対値|Is|が導通開始判定値Ismin1を超えたときは、比較器29は、積分器31にリセット信号rを出力するとともに、RSフリップフロップ32のセット端子Sに論理値「1」を出力する。これにより、RSフリップフロップ32の出力端子Qからの論理値「1」の出力信号が積分器31に積分される。
一方、比較器30は交流電流Isが導通終了したかどうかを判定するものであり、電流絶対値|Is|は導通終了判定値Ismin2と比較され、電流絶対値|Is|が導通終了判定値Ismin2未満となったときは、比較器30は、サンプルホールド回路33にホールド信号hを出力するとともに、RSフリップフロップ32のリセット端子Rに論理値「1」を出力する。これにより、RSフリップフロップ32の出力端子Qからの出力信号が零となり積分器31への積分も停止する。従って、サンプルホールド回路33にホールドされた値は、図2(b)で示す導通幅(θ2−θ1)となる。
次に、交流電圧Vsは演算部23の電圧絶対値演算器34に入力され、電圧絶対値|Vs|が求められる。電圧絶対値演算器34で求められた電圧絶対値|Vs|は、サンプルホールド回路35及びサンプルホールド回路36に入力される。
サンプルホールド回路35は交流電流Isが導通開始時点の直流電圧値V1を求めるものであり、比較器29からの論理値「1」信号があったときの電圧絶対値|Vs|を導通開始時点の直流電圧値V1としてホールドする。サンプルホールド回路36は交流電流Isが導通終了時点の直流電圧値V2を求めるものであり、比較器30からの論理値「1」信号があったときの電圧絶対値|Vs|を導通終了時点の直流電圧値V2としてホールドする。従って、サンプルホールド回路35にホールドされた値は、図2(b)で示す導通開始時点の直流電圧値V1であり、サンプルホールド回路36にホールドされた値は、図2(b)で示す導通終了時点の直流電圧値V2である。
また、演算部23の電力算出部37には、交流電圧Vs及び交流電流Isが入力される。交流電圧Vs及び交流電流Isは電力算出部37の乗算器38に入力されて乗算され乗算値Is・Vsが求められる。そして、その乗算値Is・Vsは積分器39で積分され、積分器39での積分値がサンプルホールド回路40でホールドされる。積分器39は電源周波数発振器41からの交流電源周波数の1周期毎のリセット信号rによりリセットされる。従って、交流電源周波数の1周期分の乗算値Is・Vsを積分することになる。同様に、サンプルホールド回路40は電源周波数発振器41からの交流電源周波数の1周期毎のホールド信号hにより、積分器39の積分値をホールドする。サンプルホールド回路40でホールドされた交流電源周波数の1周期毎の積分値は、係数器42で1/T(T:交流電源の周期)が乗算されて電力Pとして出力される。
前述したように、直流機器15の負荷抵抗Rは、交流電源12から供給した電力Pと、負荷抵抗Rに電流が流れているときの直流電圧Vdとの関係式(P=Vd2/R)から求める。また、負荷抵抗Rに電流が流れているときの直流電圧Vdは、導通開始時(ωt=θ1)の直流電圧の値をV1、導通終了時(ωt=θ2)の直流電圧の値をV2としたとき、(V1+V2)/2で近似する。
そこで、直流機器15の負荷抵抗Rは、以下のようにして求める。まず、加算器43で、サンプルホールド回路35からの交流電流Isの導通開始時点の直流電圧値V1と、サンプルホールド回路36からの交流電流Isの導通終了時点の直流電圧値V2とを加算し、係数器44で係数(1/2)を乗算する。そして、得られた(V1+V2)/2を自乗器45で自乗し、除算器46で{(V1+V2)/2}2を電力算出部37で得られた電力Pで除算して直流機器15の負荷抵抗Rを求める。
また、平滑コンデンサ14の容量Cは、(7)式で示されるので、演算部23では、(7)式の右辺が成り立つように演算を行い平滑コンデンサ14の容量Cを求める。すなわち、加算器47で{π−(θ2−θ1)}=(π+θ1−θ2)を求め、加算器48で(V2−V1)を求める。そして、除算器50で加算器47で求めた(π+θ1−θ2)を加算器48で求めた(V2−V1)で除算して、(π+θ1−θ2)/(V2−V1)を求める。また、加算器51で(V1+V2)を求め、係数器52で係数(1/2)を乗算して、(V1+V2)/2を求める。そして、乗算器53で、(π+θ1−θ2)/(V2−V1)と(V1+V2)/2とを乗算し、さらに係数器54にて1/ωを掛け算して、(V1+V2)・(π+θ1−θ2)/{2ω(V2−V1)}を求め、除算器55でこれを負荷抵抗Rで除算して、(7)式に示す平滑コンデンサ14の容量Cを求める。
このようにして求められた直流機器15の負荷抵抗R及び平滑コンデンサ14の容量Cは相関関数テーブル56に入力され、相関関数テーブル56に基づいて、交流電圧Vsの低下の際に直流機器15の耐量を満たす直流電圧Vdを維持するために必要となる昇圧用コンデンサの容量Caを求める。
図4は相関関数テーブル56の一例の説明図である。図4に示すように、平滑コンデンサ容量Cに対して、交流電圧Vsの低下の際に必要となる昇圧用コンデンサの容量Caが負荷抵抗Rをパラメータとして関数で示されている。例えば、負荷抵抗RがR2、コンデンサ容量CがC1であるときは、必要となる昇圧用コンデンサの容量Caは(R=R2)の関数曲線からCa1として求められ、負荷抵抗RがR3、コンデンサ容量CがC2であるときは、必要となる昇圧用コンデンサの容量Caは(R=R3)の関数曲線からCa2として求められる。
演算部23で求められた昇圧用コンデンサの容量Caは、表示部26に出力される。表示部26では、例えば、4個の発光ダイオードを有し、表2に示す判定基準で2進数表示を行う。
演算部23で求められた昇圧用コンデンサの容量Caが10μFであるときは、出力モード1として1桁目の発光ダイオードのみを点灯する。昇圧用コンデンサの容量Caが20μFであるときは、出力モード2として2桁目の発光ダイオードのみを点灯し、30μFであるときは出力モード3として1桁目及び2桁目の発光ダイオードを点灯し、以下同様に、40μF〜150μFを表示する。なお、演算部23で求められた昇圧用コンデンサの容量Caの値が10μF刻みの中間の値であるとき、例えば43μFであるときは、1桁目の数値を四捨五入して40μFを選択する。
これにより、交流電圧Vsの低下の際に必要となる昇圧用コンデンサの容量Caが表示部26に表示されるので、作業員は昇圧用コンデンサの容量Caを容易に確認できる。また、スイッチ操作部27を有しない場合には、作業員はスイッチM1〜M4を手動操作して表示部26に表示された昇圧用コンデンサの容量Caを手動で設定することができる。
一方、スイッチ操作部27を有する場合には、演算部23で求められた昇圧用コンデンサの容量Caはスイッチ操作部27に出力される。スイッチ操作部27においても表示部26と同様に、演算部23で求められた昇圧用コンデンサの容量Caが10μFであるときは、出力モード1として10μFのコンデンサC11、C21のみが双方向スイッチ19に接続されるようにスイッチM1のみを閉じる。昇圧用コンデンサの容量Caが20μFであるときは、出力モード2として20μFのコンデンサC12、C22のみが双方向スイッチ19に接続されるようにスイッチM2のみを閉じ、昇圧用コンデンサの容量Caが30μFであるときは出力モード3として10μFのコンデンサC11、C21及び20μFのコンデンサC12、C22が双方向スイッチ19に接続されるようにスイッチM1、M2を閉じる。以下同様に、40μF〜150μFについてスイッチM1〜M4の開閉状態を組み合わせて双方向スイッチ19に接続する。この場合においても、演算部23で求められた昇圧用コンデンサの容量Caの値が10μF刻みの中間の値であるとき、例えば43μFであるときは、1桁目の数値を四捨五入して40μFを選択することになる。
これにより、交流電圧Vsの低下の際に必要となる昇圧用コンデンサの容量Caが自動的に設定できるので、負荷抵抗Rや平滑コンデンサが未知の単相ダイオード整流回路に対しても容易に適用可能となり、負荷抵抗Rに応じた直流電圧の低下の補償が適切に行える。
昇圧用コンデンサ17の合計容量が演算部23で求めた昇圧用コンデンサの容量Caとなるように設定されると、組込用スイッチ20を閉じる。これにより、昇圧用コンデンサ17が単相ダイオード整流回路11に組み込まれ、昇圧用コンデンサ17は平滑用コンデンサ14に並列に接続される。この状態で、制御部21は直流電圧検出器22で検出された直流電圧Vdを入力し、直流電圧Vdが所定範囲にあるかどうかを判定し、所定範囲を逸脱したときに双方向スイッチ19を導通させ、昇圧整流を行うことになる。
図5は、制御部21の一例を示す構成図である。制御部21は下限値比較器57及び上限値比較器58を有し、下限値比較器57は直流電圧Vdと下限値VdLとを比較し、直流電圧Vdが下限値VdL以下のときに論理値「1」をRSフリップフロップ59のセット端子Sに出力する。これにより、RSフリップフロップ59の出力端子Qから論理値「1」の出力信号が双方向スイッチ19のゲート信号gとして出力され、双方向スイッチ19が導通する。一方、上限値比較器58は直流電圧Vdと上限値VdUとを比較し、直流電圧Vdが上限値VdU以上のときに論理値「1」をRSフリップフロップ59のリセット端子Rに出力する。これにより、RSフリップフロップ59の出力端子Qからのゲート信号gが零となり、双方向スイッチ19が非導通となる。
図6は単相ダイオード整流回路の直流電圧Vdと制御部21から出力されるゲート信号gとの説明図である。図6に示すように、単相ダイオード整流回路の直流電圧Vdが下限値VdLと上限値VdUとを逸脱しつつ変動したとする。時点t1において、直流電圧Vdが下限値VdLを下回ったとすると、下限値比較器57が論理値「1」をRSフリップフロップ59のセット端子Sに出力するので、出力端子Qからオンのゲート信号gが出力される。そして、時点t2において、直流電圧Vdが上限値VdUを上回ったとすると、上限値比較器58が論理値「1」をRSフリップフロップ59のリセット端子Rに出力するので、出力端子Qからのオフのゲート信号gが出力される。以下同様に、時点t3、t5で、直流電圧Vdが下限値VdLを下回ると、出力端子Qからオンのゲート信号gが出力され、時点t4、t6で、直流電圧Vdが上限値VdUを上回ると、出力端子Qからオフのゲート信号gが出力される。
このように、双方向スイッチ19は、制御部21により、直流電圧Vdが所定の下限値VdLを下回ったとき(電圧低下となったとき)に導通し、所定の上限値VdUを上回ったとき(電圧が回復したとき)に非導通となるように制御される。
図7は、単相ダイオード整流回路11に昇圧用コンデンサ17が組み込まれた状態で直流電圧Vdに電圧低下が発生していないときの単相ダイオード整流回路11の説明図であり、図7(a)は直流電圧Vdに電圧低下が発生していないときの単相ダイオード整流回路11の等価回路図、図7(b)は直流電圧Vdに電圧低下が発生していないときの単相ダイオード整流回路11の直流電圧波形図である。
直流電圧Vdに電圧低下が発生していないときは、双方向スイッチ19は非導通であるので、そのときの単相ダイオード整流回路11の等価回路は図7(a)で示される。図7(a)に示すように、単相ダイオード整流回路11に昇圧用コンデンサ17が組み込まれた状態となっており、双方向スイッチ19は非導通であることから、整流器13の一方の交流端子と昇圧用コンデンサ17の中点との間は非接続となっている。なお、図7(a)では、接続切替スイッチ18で接続切り替えされた結果の昇圧用コンデンサ17の中点を挟んだ一方側のコンデンサC11〜C14の合計容量をC1、他方側のコンデンサC21〜C24の合計容量をC2で表している。
また、図7(b)に示すように、直流電圧Vdは、交流電圧Vsの全波整流電圧と、平滑コンデンサ14及び昇圧用コンデンサ17の電圧との大きい方の電圧である。交流電圧Vsの1周期においては、交流電圧Vsの全波整流電圧が平滑コンデンサ14及び昇圧用コンデンサ17の電圧と等しい期間(モード1、モード3)と、平滑コンデンサ14及び昇圧用コンデンサ17の電圧が交流電圧Vsの全波整流電圧より大きい期間(モード2、モード4)とがある。
図8は、図7(a)に示した直流電圧Vdに電圧低下が発生していないときの単相ダイオード整流回路11の動作説明図である。図8に示すように、モード1は、正の交流電圧Vsの整流電圧が平滑コンデンサ14及び昇圧用コンデンサ17の電圧と等しいときである。このモード1のときは、正の交流電圧Vsの整流電圧により、平滑コンデンサ14及び昇圧用コンデンサ17が充電され、また直流負荷15の負荷抵抗Rには交流電源12から電力が供給される。従って、直流電圧Vdは上昇する。
モード2は、平滑コンデンサ14及び昇圧用コンデンサ17の電圧が正の交流電圧Vsまたは負の交流電圧Vsの整流電圧より大きいときである。このモード2のときは、平滑コンデンサ14及び昇圧用コンデンサ17からの放電により、直流負荷15の負荷抵抗Rに電力が供給される。従って、直流電圧Vdは下降する。
モード3は、負の交流電圧Vsの整流電圧が平滑コンデンサ14及び昇圧用コンデンサ17の電圧と等しいときである。このモード3のときは、負の交流電圧Vsの整流電圧により、平滑コンデンサ14及び昇圧用コンデンサ17が充電され、また直流負荷15の負荷抵抗Rには交流電源12から電力が供給される。従って、直流電圧Vdは上昇する。
モード4は、平滑コンデンサ14及び昇圧用コンデンサ17の電圧が負の交流電圧Vsまたは正の交流電圧Vsの整流電圧より大きいときである。このモード4のときは、平滑コンデンサ14及び昇圧用コンデンサ17からの放電により、直流負荷15の負荷抵抗Rに電力が供給される。従って、直流電圧Vdは下降する。
このように、単相ダイオード整流回路11は、直流電圧Vdに電圧低下が発生していないときは、モード1〜モード4を繰り返して直流機器15に電力を供給する。
次に、図9は、単相ダイオード整流回路11に昇圧用コンデンサ17が組み込まれた状態で直流電圧Vdに電圧低下が発生し双方向スイッチ19が閉じたときの単相ダイオード整流回路11の説明図であり、図9(a)は直流電圧Vdに電圧低下が発生し双方向スイッチ19が閉じたときの単相ダイオード整流回路11の等価回路図、図9(b)は直流電圧Vdに電圧低下が発生し双方向スイッチ19が閉じたときの単相ダイオード整流回路11の直流電圧波形図である。
直流電圧Vdに電圧低下が発生し双方向スイッチ19が閉じたときは、双方向スイッチ19は導通であるので、そのときの単相ダイオード整流回路11の等価回路は図9(a)で示される。図9(a)に示すように、単相ダイオード整流回路11に昇圧用コンデンサ17が組み込まれた状態となっており、双方向スイッチ19は導通であることから、整流器13の一方の交流端子と昇圧用コンデンサ17の中点(昇圧用コンデンサC1と昇圧用コンデンサC2との中点)との間が接続された状態となっている。なお、C1は、接続切替スイッチ18で接続切り替えされた結果の昇圧用コンデンサ17の中点を挟んだ一方側のコンデンサC11〜C14の合計容量であり、C2は、他方側のコンデンサC21〜C24の合計容量である。
また、図9(b)に示すように、直流電圧Vdは平滑コンデンサ17の電圧であり、昇圧用コンデンサC1の電圧Vd1と昇圧用コンデンサC2の電圧Vd2との和である。交流電圧Vsの1周期においては、交流電圧Vsの正の整流電圧が昇圧用コンデンサC1と等しい期間(モード1’)、昇圧用コンデンサC1の電圧が交流電圧Vsの正の整流電圧及び交流電圧Vsの負の整流電圧より大きい期間(モード2’)、交流電圧Vsの負の整流電圧が昇圧用コンデンサC2と等しい期間(モード3’)、昇圧用コンデンサC2の電圧が交流電圧Vsの負の整流電圧及び交流電圧Vsの正の整流電圧より大きい期間(モード4’)がある。
図10は、図9(a)に示した直流電圧Vdに電圧低下が発生し双方向スイッチ19が閉じたときの単相ダイオード整流回路11の動作説明図である。図10に示すように、モード1’は、正の交流電圧Vsの整流電圧が昇圧用コンデンサC1の電圧と等しいときである。このモード1’のときは、昇圧用コンデンサC1には、正の交流電圧Vsの整流電圧が直接的に印加されて電荷が充電され、負荷抵抗Rには交流電源12から電力が供給される。従って、電圧Vd1は上昇する。この場合、昇圧用コンデンサC2には、正の交流電圧Vsの整流電圧は直接的には印加されず、平滑コンデンサCと負荷抵抗Rとの並列回路に直列接続された状態で正の交流電圧Vsの整流電圧が印加される。従って、昇圧用コンデンサC2の電荷が放電されるので電圧Vd2は下降する。
ここで、昇圧用コンデンサC2はモード1’の2つ前のモードであるモード3’で予め充電されているため、電圧Vd2は下降するものの、Vd2>0からVd2<0にまで下降することはない。また、平滑コンデンサCの電圧Vdは、昇圧用コンデンサC1、C2それぞれの電圧Vd1、Vd2の和に等しい(Vd=Vd1+Vd2)。正の交流電圧Vsの整流電圧による直接的な充電による昇圧用コンデンサC1の電圧Vd1の上昇のほうが、放電による昇圧用コンデンサC2の電圧Vd2の下降に比べて大きいので、結果として、電圧Vd1、Vd2の和である平滑コンデンサCの直流電圧Vdは、モード1’では上昇する。
モード2’は昇圧用コンデンサC1の電圧Vd1が正の交流電圧Vsの整流電圧より大きく、また、昇圧用コンデンサC2の電圧Vd2が負の交流電圧Vsの整流電圧より大きいときである。このモード2’のときは、昇圧用コンデンサC1及び昇圧用コンデンサC2には、交流電圧Vsを整流した電圧は印加されない。従って、昇圧用コンデンサC1と昇圧用コンデンサC2とが直列接続された状態で電荷が放電されて負荷抵抗Rに電力が供給される。これにより、それぞれの電圧Vd1、Vd2は下降する。平滑用コンデンサCの電圧Vdは、このモード2’でも昇圧用コンデンサC1、C2それぞれの電圧Vd1、Vd2の和に等しい(Vd=Vd1+Vd2)。電圧Vd1、Vd2とも下降することから、平滑コンデンサCの電圧Vdはモード2’では下降する。
モード3’は、負の交流電圧Vsの整流電圧が昇圧用コンデンサC2の電圧と等しいときである。このモード3’のときは、昇圧用コンデンサC2には、負の交流電圧Vsの整流電圧が直接的に印加されて電荷が充電され、負荷抵抗Rには交流電源12から電力が供給される。従って、電圧Vd2は上昇する。この場合、昇圧用コンデンサC1には、負の交流電圧Vsの整流電圧は直接的には印加されず、平滑コンデンサCと負荷抵抗Rとの並列回路に直列接続された状態で負の交流電圧Vsの整流電圧が印加される。従って、昇圧用コンデンサC1の電荷が放電されるので電圧Vd1は下降する。
ここで、昇圧用コンデンサC1はモード3’の2つ前のモードであるモード1’で予め充電されているため、電圧Vd1は下降するものの、Vd1>0からVd1<0にまで下降することはない。また、平滑コンデンサCの電圧Vdは、昇圧用コンデンサC1、C2それぞれの電圧Vd1、Vd2の和に等しい(Vd=Vd1+Vd2)。負の交流電圧Vsの整流電圧による直接的な充電による昇圧用コンデンサC2の電圧Vd2の上昇のほうが、放電による昇圧用コンデンサC1の電圧Vd1の下降に比べて大きいので、結果として、電圧Vd1、Vd2の和である平滑コンデンサCの電圧Vdはモード3’では上昇する。
モード4’は、昇圧用コンデンサC2の電圧Vd2が負の交流電圧Vsの整流電圧より大きく、また、昇圧用コンデンサC1の電圧Vd1が正の交流電圧Vsの整流電圧より大きいときである。このモード4’のときは、昇圧用コンデンサC1及び昇圧用コンデンサC2には、交流電圧Vsを整流した電圧は印加されない。従って、昇圧用コンデンサC1と昇圧用コンデンサC2とが直列接続された状態で電荷が放電されて負荷抵抗Rに電力が供給される。これにより、それぞれの電圧Vd1、Vd2は下降する。平滑用コンデンサCの電圧Vdは、このモード4’でも昇圧用コンデンサC1、C2それぞれの電圧Vd1、Vd2の和に等しい(Vd=Vd1+Vd2)。電圧Vd1、Vd2とも下降することから、平滑コンデンサCの電圧Vdはモード4’では下降する。
図11は本発明の実施の形態に係わる電圧補償装置を単相ダイオード整流回路11に接続した場合の単相ダイオード整流回路11の動作波形図である。いま、時点taで交流電圧Vsが低下し、時点tbで電圧低下が回復したとする。時点taで交流電圧Vsの低下に伴い直流電圧Vdも低下するので、制御部21は双方向スイッチ19にゲート信号gを出力する。これに伴い、双方向スイッチ19が導通し、昇圧用コンデンサC1、C2に交互に、整流器13で整流された交流電圧Vsが直接的に印加される。直流電圧Vdは、昇圧用コンデンサC1、C2の電圧Vd1、Vd2の和となるので、双方向スイッチ19が導通により昇圧整流となる。従って、直流電圧Vdの低下を抑制することができる。そして、時点tbで交流電圧Vsが回復すると、制御部21は双方向スイッチ19を非導通にする。これにより、昇圧整流が停止され、単相ダイオード整流回路11は通常の整流となり通常の動作に復帰する。
以上の説明では、昇圧用コンデンサ17の合計容量が演算部23で求めた昇圧用コンデンサの容量Caとなるように設定されると、組込用スイッチ20を閉じて、昇圧用コンデンサ17を単相ダイオード整流回路11の平滑コンデンサに並列接続して単相ダイオード整流回路11を動作させるようにしたが、単相ダイオード整流回路11の動作中に、定期的に直流機器15の負荷抵抗R及び平滑コンデンサ容量Cを推定し、さらに、昇圧用コンデンサ容量Caを演算するようにしてもよい。そして、単相ダイオード整流回路11の動作中に演算した昇圧用コンデンサ容量を表示部26またはスイッチ操作部27に更新出力するようにすると、負荷抵抗Rの変化に追従して直流電圧Vdの低下を補償できる。
また、図12に示すように、図1に示した実施の形態に係わる電圧補償装置16に対し、双方向スイッチ19と整流器13の一方の交流端子との間に交流電流ピークを抑制するためのリアクトル60を接続するようにしてもよい。これにより、交流電流Isのピーク値を抑制できるので、整流器13のダイオードDの電流責務を緩和でき、また、交流電流Isの波形の尖鋭度を緩和できるので、交流電流Isの高調波含有量を減少できる。
また、図13に示すように、図1に示した実施の形態に係わる電圧補償装置16に対し、昇圧用コンデンサ17を形成する直列接続された2個のコンデンサC11〜C14、C21〜C24にそれぞれ並列に、直流電圧をバランスさせるためのバランサ抵抗R11〜R14、R21〜R24を接続するようにしてもよい。バランサ抵抗R11〜R14、R21〜R24を接続することによって、昇圧用コンデンサC11〜C14〜C21〜C24の電圧を初期状態に戻すことができ、繰り返し行う昇圧整流動作を安定させることができる。
また、図14に示すように、複数個の昇圧用コンデンサ17を多段に設けるようにしてもよい。図14では2個の昇圧用コンデンサ17A、17Bを2段に設けた場合を示している。演算部23で、交流電圧Vsの低下の際に直流機器15の耐量を満たす直流電圧Vdを維持するために必要となる昇圧用コンデンサの容量Caが演算されたときは、昇圧用コンデンサ17A、17Bの合計容量が昇圧用コンデンサの容量Caとなるように、接続切替スイッチ18AでコンデンサC11〜C14、C21〜C24を接続切り替えするとともに、接続切替スイッチ18BでコンデンサC31〜C34、C41〜C44を接続切り替えする。そして、各々の昇圧用コンデンサ17A、17Bに対応して双方向スイッチ19A、19Bを設け、制御部21は各々の双方向スイッチ19A、19Bに対して異なるゲート信号g1、g2を出力する。すなわち、各々の双方向スイッチ19A、19Bが導通する所定の下限値や、各々の双方向スイッチ19A、19Bが非導通となる所定の上限値を異ならせる。
図15は、図14に示した2段の昇圧用コンデンサ17A、17Bを設けた一例の場合の制御装置21の構成図である。制御部21は、昇圧用コンデンサ17Aに接続される双方向スイッチ19Aを開閉制御するための下限値比較器57A、上限値比較器58A、RSフリップフロップ59Aと、昇圧用コンデンサ17Bに接続される双方向スイッチ19Bを開閉制御するための下限値比較器57B、上限値比較器58B、RSフリップフロップ59Bとを有する。
下限値比較器57Aは直流電圧Vdと下限値VdLAとを比較し、直流電圧Vdが下限値VdLA以下のときに論理値「1」をRSフリップフロップ59Aのセット端子Sに出力する。これにより、RSフリップフロップ59Aの出力端子Qから論理値「1」の出力信号が双方向スイッチ19Aのゲート信号g1(S1、S2)として出力され、双方向スイッチ19Aが導通する。一方、上限値比較器58Aは直流電圧Vdと上限値VdUAとを比較し、直流電圧Vdが上限値VdUA以上のときに論理値「1」をRSフリップフロップ59Aのリセット端子Rに出力する。これにより、RSフリップフロップ59Aの出力端子Qからのゲート信号g1(S1、S2)が零となり、双方向スイッチ19Aが非導通となる。
同様に、下限値比較器57Bは直流電圧Vdと下限値VdLBとを比較し、直流電圧Vdが下限値VdLB以下のときに論理値「1」をRSフリップフロップ59Bのセット端子Sに出力する。これにより、RSフリップフロップ59Bの出力端子Qから論理値「1」の出力信号が双方向スイッチ19Bのゲート信号g2(S3、S4)として出力され、双方向スイッチ19Bが導通する。一方、上限値比較器58Bは直流電圧Vdと上限値VdUBとを比較し、直流電圧Vdが上限値VdUB以上のときに論理値「1」をRSフリップフロップ59Bのリセット端子Rに出力する。これにより、RSフリップフロップ59Bの出力端子Qからのゲート信号g2(S3、S4)が零となり、双方向スイッチ19Bが非導通となる。
図16は2段の昇圧用コンデンサ17A、17Bを設けた場合の単相ダイオード整流回路の直流電圧Vdと制御部21から出力されるゲート信号g1、g2との説明図である。
図16では、VdLA>VdLB、VdUA<VdUBである場合を示している。図16に示すように、単相ダイオード整流回路の直流電圧Vdが下限値VdLA、VdLBと、上限値VdUA、VdUBとを逸脱しつつ変動したとする。
時点t1において、直流電圧Vdが下限値VdLAを下回ったとすると、下限値比較器57Aが論理値「1」をRSフリップフロップ59Aのセット端子Sに出力するので、出力端子Qからオンのゲート信号g1が出力される。この状態ではゲート信号g1がオンでゲート信号g2はオフである。
時点t2において、直流電圧Vdがさらに下限値VdLBを下回ったとすると、下限値比較器57Bが論理値「1」をRSフリップフロップ59Bのセット端子Sに出力するので、出力端子Qからオンのゲート信号g2が出力される。従って、ゲート信号g1、g2ともにオンである。
そして、時点t3において、直流電圧Vdが上限値VdUAを上回ったとすると、上限値比較器58Aが論理値「1」をRSフリップフロップ59Aのリセット端子Rに出力するので、出力端子Qからのオフのゲート信号g1が出力される。従って、ゲート信号g1はオフで、ゲート信号g2はオンである。
時点t4において、直流電圧Vdが下限値VdLAを下回ったとすると、下限値比較器57Aが論理値「1」をRSフリップフロップ59Aのセット端子Sに出力するので、出力端子Qからオンのゲート信号g1が出力される。従って、ゲート信号g1、g2ともにオンである。
時点t5において、直流電圧Vdが上限値VdUAを上回ったとすると、上限値比較器58Aが論理値「1」をRSフリップフロップ59Aのリセット端子Rに出力するので、出力端子Qからのオフのゲート信号g1が出力される。従って、ゲート信号g1はオフで、ゲート信号g2はオンである。
次に、時点t6において、直流電圧Vdが上限値VdUBを上回ったとすると、上限値比較器58Bが論理値「1」をRSフリップフロップ59Bのリセット端子Rに出力するので、出力端子Qからのオフのゲート信号g2が出力される。従って、ゲート信号g1、g2ともにオフである。
以下同様に、時点t7において、直流電圧Vdが下限値VdLAを下回ったとすると、下限値比較器57Aが論理値「1」をRSフリップフロップ59Aのセット端子Sに出力するので、出力端子Qからオンのゲート信号g1が出力される。この状態ではゲート信号g1がオンでゲート信号g2はオフである。
時点t8において、直流電圧Vdがさらに下限値VdLBを下回ったとすると、下限値比較器57Bが論理値「1」をRSフリップフロップ59Bのセット端子Sに出力するので、出力端子Qからオンのゲート信号g2が出力される。従って、ゲート信号g1、g2ともにオンである。
時点t9において、直流電圧Vdが上限値VdUAを上回ったとすると、上限値比較器58Aが論理値「1」をRSフリップフロップ59Aのリセット端子Rに出力するので、出力端子Qからのオフのゲート信号g1が出力される。従って、ゲート信号g1はオフで、ゲート信号g2はオンである。
このように、双方向スイッチ19A、19Bは、制御部21により、直流電圧Vdが所定の下限値VdLA、VdLBを下回ったとき(電圧低下となったとき)に導通し、所定の上限値VdUA、VdUBを上回ったとき(電圧が回復したとき)に非導通となるように制御される。これにより、2段階で追加する昇圧用コンデンサを変化させることができる。つまり、直流電圧の昇圧幅を小刻みに変化させることができるので直流電圧の変動幅を抑制できる。
以上の説明では、単相ダイオード整流回路11に本発明の実施の形態に係わる電圧補償装置16を外付けした場合について説明したが、三相ダイオード整流回路に適用することも可能である。図17は、本発明の実施の形態に係わる電圧補償装置を三相ダイオード整流回路に外付けした場合の構成図である。図1に示した単相ダイオード整流回路11に外付けされる電圧補償回路16と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
三相交流電源61の三相交流線間電圧Vrs、Vst、Vtrは、三相ダイオード整流回路62の6個のダイオードDで構成された整流器63に印加され、整流器63で整流され平滑コンデンサ14で平滑された直流電圧Vdが直流機器15に印加される。その際に、直流機器15の負荷抵抗に応じて三相交流電源61から三相ダイオード整流回路62に交流電流Ir、Is、Itが供給される。
電圧補償装置16Aは、このような6個のダイオードDで構成された整流器63及び平滑コンデンサ14を有した既存の三相ダイオード整流回路62に外付けで接続される。電圧補償装置16Aは、図1に示した電圧補償装置16に対して、単相交流電圧Vsを検出する交流検出器24に代えて、三相交流線間電圧Vrs、Vst、Vtrをそれぞれ検出する交流電圧検出器24r、24s、24tを有し、同様に、単相交流電流Isを検出する交流電流検出器25に代えて、三相交流電流Ir、Is、Itをそれぞれ検出する交流電流検出器25r、25s、25tを有している。また、三相各相に対応して双方向スイッチ19r、19s、19tを有している。その他の構成は、図1に示した単相ダイオード整流回路11に外付けされる電圧補償回路16と同一である。このように、図17に示す電圧補償回路16Aにより、三相ダイオード整流回路62にも適用可能となる。
11…単相ダイオード整流回路、12…交流電源、13…整流器、14…平滑コンデンサ、15…直流機器、16…電圧補償装置、17…昇圧用コンデンサ、18…接続切替スイッチ、19…双方向スイッチ、20…組込用スイッチ、21…制御部、22…直流電圧検出器、23…演算部、24…交流電圧検出器、25…交流電流検出器、26…表示部、27…スイッチ操作部、28…電流絶対値演算器、29…比較器、30…比較器、31…積分器、32…RSフリップフロップ、33…サンプルホールド回路、34…電圧絶対値演算器、35…サンプルホールド回路、36…サンプルホールド回路、37…電力算出部、38…乗算器、39…積分器、40…サンプルホールド回路、41…電源周波数発振器、42…係数器、43…加算器、44…係数器、45…自乗器、46…除算器、47…加算器、48…加算器、50…除算器、51…加算器、52…係数器、53…乗算器、54…係数器、55…除算器、56…相関関数テーブル、57…下限値比較器、58…上限値比較器、59…RSフリップフロップ、60…リアクトル、61…三相交流電源、62…三相ダイオード整流回路、63…整流器