家庭用や値段の比較的安いファクシミリ装置では、画像の読み取りを行う素子としての1次元イメージセンサを1組だけ使用することが多い。このようなファクシミリ装置で、原稿の片面だけではなく両面を自動で読み取ることができる機能を備えることは、商品の差別化を図る大きなポイントとなる。このため、片面の読み取りが終了した原稿を反転させて、先に画像の読み取りを行った1次元イメージセンサまで搬送し、もう1面の読み取りを行わせるようにすることが、本発明の関連技術として提案されている(たとえば特許文献1参照)。
図15は、この関連技術と同様の原理で原稿を反転させてその両面の読み取りを行う両面読取装置の構成の要部を表わしたものである。両面読取装置100は、装置本体101の原稿供給トレイ102上にセットされた任意の枚数の原稿103を1枚ずつ分離して搬送する分離ローラ104を備えている。分離ローラ104はゴム板105と転接しており、この転接箇所よりもわずか上流側には原稿103の有無を検出するための原稿有無センサ106が配置されている。
分離ローラ104のわずか下流側には、分離後の原稿103をそのまま直進させる水平搬送路107の始点と、反転後の原稿を搬送する反転用搬送路108の終点が合流する第1の合流個所109が存在している。この第1の合流個所109のわずか下方には、原稿103の先端や後端を検出する第1の原稿先端・後端検出センサ111が配置されている。また、水平搬送路107と装置本体101の間には、押圧バネ112とこれによって押圧されたCIS(Contact Image Sensor)を使用した読み取りデバイス113が配置されている。読み取りデバイス113は水平搬送路107を挟んでフィードローラ114に圧接しており、ここで原稿103の画像が1ラインずつ読み取られるようになっている。CISを使用した読み取りデバイス113は、光源、読み取りセンサ、入出力の回路をひとつの筐体内に納めて読み取りデバイスとして製品化されており、原稿の読取幅と同等の長さのフィードローラが必要になる。この点で、原稿の読取幅よりも短い幅のCCDにミラーやレンズを用いた縮小光学系で画像を結像させる読み取りデバイスとは異なる。
水平搬送路107の終点は、反転用搬送路108の始点と第2の合流個所115で合流している。反転用搬送路108は、片面の画像情報を読み取られた後の原稿を反転させて第1の合流個所109を経由して読み取りデバイス113による読み取りを行わせるための搬送路である。この反転用搬送路108には、反転用搬送ローラ116と、これに転接するピンチローラ117が原稿の搬送のために配置されている。また、第2の合流個所115のわずか下流側には、排出ローラ118とこれに転接するピンチローラ119が配置されている。
図16は、この両面読取装置の分離ローラの近傍における2つのセンサの動きを具体的に示したものである。分離ローラ104の上流側に配置された原稿有無センサ106は、機械式のアクチュエータを備えたセンサであり、マイクロスイッチあるいはこのアクチュエータに連動して光線の通過をオン・オフする光センサで構成することができる。分離ローラ104の下流側に配置された第1の原稿先端・後端検出センサ111についても同様である。
図15に示した原稿103が分離ローラ104とゴム板105の間を通過していないとき、すなわち原稿103が検出されていないとき、原稿有無センサ106のアクチュエータは実線で示した位置にある。これに対して、原稿103が分離ローラ104とゴム板105の間を通過しているときには、原稿有無センサ106のアクチュエータは破線で示した位置に移動して、原稿103が存在しないことを検出する。
第1の原稿先端・後端検出センサ111については、原稿103を検出していないときにそのアクチュエータは実線で示した位置にある。また、原稿103を検出しているときには、そのアクチュエータが破線で示した位置まで移動している。
図17は、原稿供給トレイに積層された原稿が送り出される様子を表わしたものである。図16に示すように、原稿供給トレイ102上に複数枚の原稿103がセットされているものとする。ゴム板105は、その面がこれらの原稿103に対して所定の鋭角をなすように配置されている。したがって、原稿供給トレイ102上にセットされた複数枚の原稿103は、その下層に配置されているものほど、これらの先端がゴム板105のより下流側に一段ずつずれて配置されている。また、原稿有無センサ106はそのアクチュエータがこれらの原稿103によって押されて、「原稿あり」の検出を行っている。
この状態で分離ローラ104が矢印121方向に回転すると、原稿供給トレイ102に接触している最下層の原稿103Lのみが、残りの原稿から分離されて矢印122で示す下流方向に送り出される。送り出された原稿103Lは、第1の原稿先端・後端検出センサ111のアクチュエータを図示のように所定角度回転させて、その先端を検出される。この状態で原稿103は読み取りデバイス113とフィードローラ114の間を矢印122方向に搬送されて、主走査方向に配置された1次元イメージセンサ123による画像の読み取りがライン単位で行われることになる。画像の読み取りが終了した原稿103は、図15に示したように水平搬送路107を下流方向に搬送される。そして、原稿は排出ローラ118とピンチローラ119の間を通過し、矢印122方向に搬送されることになる。
以上のようにして、原稿103の片面について画像の読み取りが行われる。原稿103の両面についての読み取りを行う場合を次に説明する。この場合には、原稿103の後端が排出ローラ118とピンチローラ119の間を通過する直前のタイミングで、排出ローラ118とピンチローラ119の回転方向を反転させる。すると、今まで原稿103の後端となっていた場所が先端に変化して、今度は反転用搬送路108に送り込まれる。そして、反転用搬送ローラ116およびピンチローラ117による搬送力によって第1の合流個所109から再度、水平搬送路107に入り、1次元イメージセンサ123による残りの面の画像の読み取りが行われることになる。この両面読取装置100の分離ローラ104には、ワンウェイ機構が設けられている。
図18は、ワンウェイ機構を示したものである。ワンウェイ機構は、図示しない駆動源から回転力の伝達を受ける伝達ギヤ131と、この伝達ギヤ131を構成する円筒部分131Aに一端部を嵌入するワンウェイスプリング132と、ローラ軸104Aをこのワンウェイスプリング132の他端側に挿入した分離ローラ104とによって構成されている。伝達ギヤの円筒部分131Aには、スリット131Bが刻まれている。ワンウェイスプリング132の一端側の末端は、スプリングの軸方向とほぼ90度方向に折り曲げられており、曲げ部132Aを構成している。円筒部分131Aにワンウェイスプリング132を装着する際には、この曲げ部132Aをスリット131Bに差し込んでワンウェイスプリング132の一端側から挿入する。
このようなワンウェイ機構では、伝達ギヤ131が矢印133方向に回転すると、曲げ部132Aがワンウェイスプリング132の内径が細くなる方向に回転する。これにより、ローラ軸104Aが伝達ギヤ131の回転に伴って、この矢印133方向に回転する。
一方、伝達ギヤ131が回転していない状態で分離ローラ104のみが矢印133方向に回転力を与えられた場合、ワンウェイスプリング132の内径が太くなる。これにより、分離ローラ104は伝達ギヤ131の回転が停止した状態でも、これと無関係に回転することができる。
以上のような構成の両面読取装置100の動作を次に説明する。まず、図17を使用して説明する。
装置本体101の原稿供給トレイ102に原稿103をセットしたものとする。原稿103がセットされると、原稿有無センサ106のアクチュエータが図16に実線で示した状態から図17に示すような角度にまで回転する。これにより、原稿103の検出が行われる。これにより、前記した駆動源が図17に示した伝達ギヤ131に回転力の伝達を開始し、ワンウェイ機構によって分離ローラ104が矢印121方向に回転を開始する。
分離ローラ104が回転を開始すると、原稿103が図17に示したように複数枚であるとすると、ゴム板105と分離ローラ104の摩擦力の関係により、原稿103が1枚ずつ最下層側から分離ローラ104によって1枚ずつ分離して送り出される。今、1枚の原稿103に着目してみる。この1枚の原稿103の先端が、読み取りデバイス113上に配置された1次元イメージセンサ123とフィードローラ114の間を通過するまでの間、分離ローラ104がこれを搬送する。なお、この時点で原稿供給トレイ102にセットされているこれ以外の原稿103は、ゴム板105にこれらの先端部が押し付けられており、停止状態にある。
ところで、1枚目の原稿103の後端が分離ローラ104とゴム板105のニップ領域を離れると、2枚目の原稿103がフィードローラ114に直接接触するようになり、この時点でゴム板105の摩擦力に打ち勝ってその搬送が開始される。この両面読取装置100では、分離ローラ104の周速度がフィードローラ114のそれよりも遅くなるように設定されている。したがって、1枚目の原稿103はすでにフィードローラ114によって搬送されているので、この2枚目の原稿103が読み取りデバイス113上に到達する前に両者の間隔が離れる。すなわち、1枚目の原稿103の後端と2枚目の原稿103の先端の間には、原稿が存在しない領域が発生する。第1の原稿先端・後端検出センサ111はこの領域をそのアクチュエータで検出して、1枚目の原稿103の後端と2枚目の原稿103の先端の判別を行うことになる。
ところで、原稿103がフィードローラ114によって捕捉されると、分離ローラ104の搬送速度がフィードローラ114のそれよりも遅いので、原稿103がこれらのローラによって引っ張り合う現象が生じることになる。これを防止するのが図18で説明したワンウェイ機構である。すなわち、分離ローラ104は伝達ギヤ131の駆動による回転速度よりも早い回転速度で、原稿103の移動に伴って連れ周りすることになる。
ところで、1次元イメージセンサ123とフィードローラ114の間を通過する際に、原稿103上の画像情報が平面走査されてライン単位で読み取られる。このようにして画像の走査が行われ、原稿103の後端が第1の原稿先端・後端検出センサ111によって検出されると、両面読取装置100は画像の走査の終了時期を検知する。装置によっては、原稿先端・後端検出センサ111の検出情報が確かな動作によるものか判断する為、所定時間経過後まで原稿103の後端の検知判断のタイミングを遅延させることができる。このようにして画像の読取領域の後端が検知されたら、フィードローラ114はその回転を速めて矢印122方向に原稿103を排出する。図15では、この原稿103が排出ローラ118とピンチローラ119によって装置外に排出される様子を示している。
次に、この両面読取装置100で原稿の両面を読み取る場合を説明する。この場合には、以上説明したよりも、装置各部の駆動の制御が複雑となる。たとえば、分離ローラ104は原稿103の最初の片面の読み取りを行う場合にのみ、独立して駆動する機構となる。図15で、これを説明する。
最初の片面を1次元イメージセンサ123で読み取った後、その原稿103は前記したように排出ローラ118とピンチローラ119によって装置外に排出されていく。原稿103の両面の読み取りが指示されている場合、その後端が第2の合流個所115に到達した時点で図示しない第2の原稿先端・後端検出センサがこれを検知する。そして、原稿103の後端が排出ローラ118とピンチローラ119のニップ領域を通過する前の所定のタイミングで、排出ローラ118を逆回転させる。これにより、原稿103はこれまでの搬送時の後端部分を先端部分として、図示しない弁等の方向切替手段の作用によって反転用搬送路108に送り込まれる。
この反転用搬送路108を用いた原稿103の搬送が行われる状態で、分離ローラ104やフィードローラ114は回転しない。また、反転用搬送ローラ116も原稿103が反転用搬送路108の搬送を開始した時点ではその駆動が停止している。
原稿103は、反転用搬送路108を搬送されて、その先端(原稿103の最初の片面の読み取りを行うときの後端)が反転用搬送ローラ116と、これに転接するピンチローラ117までたどり着く。図示しない第3の原稿先端・後端検出センサがこれを検知して、原稿103の搬送を停止させる。このとき、原稿103の先端は、反転用搬送ローラ116とピンチローラ117の転接部分に突き当たっている。
この状態で、図示していないソレノイド等の動力が作用して、排出ローラ118の回転軸がピンチローラ119の回転軸との間の距離を広める方向に移動する。ピンチローラ119の回転軸側が移動してもよい。これにより、原稿103を装置本体101から排出する方向に回転中の排出ローラ118とピンチローラ119の間に隙間が生じる。
このようにして反転用搬送路108を進行中の原稿103が排出ローラ118とピンチローラ119によってその進行を阻止されない状態となると、反転用搬送ローラ116が図で示した矢印方向に回転を開始する。これにより、原稿103の先端は反転用搬送ローラ116とピンチローラ117によって第1の合流個所109まで搬送され、ここで第1の原稿先端・後端検出センサ111によって検知される。そして、原稿103の先端は、読み取りデバイス113の上を搬送されて、矢印方向に回転中のフィードローラ114に捕捉される。フィードローラ114と反転用搬送ローラ116の周速度は同じである。この時点でも排出ローラ118は回転しているが、ピンチローラ119と離間している。このため、原稿103がフィードローラ114によって搬送される際に悪影響を与えることはない。このようにして原稿103の他方の面に対する1次元イメージセンサ123による画像の読み取りがライン単位で行われることになる。
図19は、反転された原稿の長さが比較的長い場合の画像の読み取りが行われている状態を示したものである。原稿103が図示のように長いと、その先端が排出ローラ118とピンチローラ119の間を通過する時点で後端部分も同様に排出ローラ118とピンチローラ119の間を通過する場合が出現する。このような場合でも、原稿103はフィードローラ114と、反転用搬送ローラ116によって搬送されている。したがって、排出ローラ118がピンチローラ119と離間していることは原稿103の画像の読み取りや排出に影響を及ぼさず、紙詰まり(ジャム)が発生することもない。
この図19に示した状態から更に搬送が進行して、原稿103の後端が反転用搬送路108をすべて通過し、第1の原稿先端・後端検出センサ111によって検知されたとする。この時点で排出ローラ118に対する前記したソレノイド等の動力の印加が停止される。この結果、これ以後は原稿103の読み取りの終了した部分が排出ローラ118によって装置本体101外に排出されることになる。
以上説明した両面読取装置100では、原稿103について片面のみの読み取りを行った場合と、両面の読み取りを行った場合とで、排出ローラ118によって排出されたときの面の向きが反転する。すなわち、図示しない排出トレイに収容される原稿103の上面が両面の読み取りを行った場合に表裏逆となり、ページの連続した複数枚の原稿の読み取りを行った場合、ページの順序が入れ替わり、そのままではステープラで綴じることができなくなる。そこで、このような不具合を解消するために、両面の読み取りを行った原稿103を再度、反転用搬送路108を通過させて反転させた後に排出トレイに排出することも行われている。
特開昭61−192634号公報(明細書第2ページ左下欄第12行目〜第3ページ左上欄第7行目、第1図)
次に本発明を一実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態における両面読取装置の構成の要部を表わしたものである。本実施の形態の両面読取装置200は、装置本体201の原稿供給トレイ202上にセットされた図示しない原稿を1枚ずつ分離して搬送する分離ローラ204を備えている。分離ローラ204はゴム板205と転接しており、この転接箇所よりもわずか上流側には原稿の有無を検出するための原稿有無センサ206が配置されている。
分離ローラ204のわずか下流側には、分離後の原稿をそのまま直進させて読み取りデバイス208の読取部209とフィードローラ211の間を通過させる第1の水平搬送路212の一端が配置されている。第1の水平搬送路212の他端は原稿排出口213となっており、図示しない排出トレイに読み取り終了後の原稿が収容されるようになっている。また、第1の水平搬送路212の前記した一端側には、わずかの段差を経て第2の水平搬送路214の一端が接続されている。第2の水平搬送路214の他端側は、分離ローラ204とこれに接近して配置された第1のピンチローラ2161の間に原稿を送り込むように開口されている。第2の水平搬送路214は、原稿供給トレイ202の下端部をフィードローラ211の存在する方向と逆方向に所定長だけ折り曲げた形状の上ガイド部202Aと、これと所定の間隔を置いて下側に配置した下ガイド板215により構成されている。
ところで、分離ローラ204は所定のタイミングで、矢印221方向に回転するようになっている。この分離ローラ204におけるゴム板205と転接している箇所の反対側に位置するローラ表面には、第1のピンチローラ2161の他に、ローラ表面の移動方向に沿って第2および第3のピンチローラ2162、2163が配置されている。これら第1〜第3のピンチローラ2161〜2163には、無端のガイドベルト217がローラ周面に所定の区間だけ転接するように架け渡されている。第3のピンチローラ2163の近傍には、原稿供給トレイ202の分離ローラ204用の開口部の上端位置からこの分離ローラ204の表面に沿って円弧を描くように湾曲させた形状のガイド部202Bがローラ表面とわずかの間隔を保って配置されている。
本実施の形態でも、読み取りデバイス208の底面と装置本体201の対向する部位の間には押圧バネ219が配置されている。また、ゴム板205とフィードローラ211の間の搬送路上には、原稿先端・後端検出センサ220のアクチュエータが配置されている。
このような本実施の形態の両面読取装置200で分離ローラ204は、矢印221方向にのみ回転するか停止する制御を受けるようになっている。これに対してフィードローラ211は、矢印222方向の正転と、この逆の矢印223方向の逆転を選択して行えるようになっている。
図2は、分離ローラおよびフィードローラへ駆動力を伝達する駆動力伝達機構を表わしたものである。この駆動力伝達機構230は、図示しない駆動源としてのモータに連結した駆動ギヤ231を備えている。駆動ギヤ231は、モータの回転方向の制御によって、矢印232で示す正転方向と、この逆となる逆転方向の双方の回転のいずれかを選択できるようになっている。駆動ギヤ231は、図1に示したフィードローラ211に駆動力を伝達するフィードローラギヤ233と歯合している。したがって、駆動ギヤ231が正転すると、フィードローラギヤ233は矢印234で示す正転方向に回転する。また、駆動ギヤ231が逆転すると、フィードローラギヤ233は矢印234で示す正転方向とは逆に回転する。
一方、駆動ギヤ231は、その回転軸を支点として揺動自在に配置された棒状の部材としての遊星アーム235を備えている。遊星アーム235の他端には、駆動ギヤ231と遊星歯車236の回転軸が回動自在に取り付けられている。また、この駆動力伝達機構230の駆動ギヤ231およびフィードローラギヤ233の回転軸をそれぞれ回動自在に配置した図示しない不動部材上には、分離ローラギヤ237と、大径の外側ギヤ238Sをこれと歯合した二段ギヤ238がそれぞれの回転軸を回動自在に配置されている。
ここで、二段ギヤの外側ギヤ238Sは遊星ギヤ236とは図上の奥行き方向で離れており、接触はしていない。二段ギヤ238の内側ギヤ238Uと遊星ギヤ236はギヤは同一平面上にある。
このような配置構造の駆動力伝達機構230では、駆動ギヤ231が矢印232で示す正転方向に回転すると、遊星歯車236が矢印241で示す正転方向に回転する。遊星歯車236内には図示しないコイルバネが入っており、遊星アーム235に対して一定の荷重をかけている。これにより、遊星歯車236が矢印241で示す正転方向に回転するとき、遊星アーム235は矢印242方向に回転する力を与えられる。この結果、駆動ギヤ231が正転しているとき、遊星歯車236は、この図2に示しているように分離ローラギヤ237と歯合する。
この状態では、分離ローラギヤ237と遊星歯車236が歯合する結果、この遊星歯車236が内側ギヤ238Uと歯合すると仮定した場合よりも低速で、分離ローラギヤ237が矢印221で示す正転方向に回転することになる。二段ギヤ238はこれに伴い矢印244で示す正転方向に回転する。
図3は、図2に示した駆動力伝達機構のモータが逆転した場合の各部品の配置関係を示したものである。駆動ギヤ231に駆動力を伝達するモータの回転方向が変更されて、駆動ギヤ231が矢印251で示すように逆転方向に回転したとする。この場合には、フィードローラギヤ233も連動して矢印252で示すように逆転方向に回転する。
遊星アーム235によって駆動ギヤ231と歯合した遊星歯車236も、矢印253で示すように逆転方向に回転する。また、遊星歯車236の中に入ったコイルバネの負荷により、駆動ギヤ231の回転方向の変更に合わせて遊星アーム235が矢印254方向に回転する。これにより、遊星歯車236は分離ローラギヤ237との歯合を解除して、今度は二段ギヤ238の内側ギヤ238Uと歯合する。すると、遊星歯車236は矢印253で示すように逆転方向に回転しているので、二段ギヤ238はこれに伴い矢印244で示す方向に回転する。この二段ギヤ238の回転方向は、図2における方向と同じ正転方向となる。
ただし、遊星歯車236が分離ローラギヤ237から歯合の相手先を変えたことにより、二段ギヤ238の回転速度は外側ギヤ238S÷内側ギヤ238Uの比率分だけ速くなる。分離ローラギヤ237は大径の外側ギヤ238Sと歯合しているので、同様に矢印221で示す正転方向に回転する。分離ローラギヤ237の回転速度は二段ギヤ238と同様に前記した変化分だけ速くなる。これにより、図3に示すように駆動ギヤ231が反転したときの分離ローラ204(図1)の周速度はフィードローラ211(図1)の周速度とほぼ同じになるように設定されている。これは、この両面読取装置200で原稿を搬送するときに、送り速度の差によって装置本体201(図1)内で紙詰まりが生じるのを防止するためである。
以上、駆動力伝達機構230の説明を行ったが、これはフィードローラギヤ233とフィードローラ211、および分離ローラギヤ237と分離ローラ204がそれぞれの回転軸を直結していることを前提としたものである。これらの間に他のギア等の伝達系が介在する場合、フィードローラギヤ233と分離ローラギヤ237および二段ギヤ238の歯数については、以上説明した関係と異なる場合があることは当然である。
また、図2および図3に示した駆動力伝達機構230では、モータに連結した駆動ギヤ231が回転するとフィードローラギヤ233および分離ローラギヤ237が常に回転するので、図1に示したフィードローラ211と分離ローラ204も常に回転するように思われる。しかしながら、分離ローラギヤ237と分離ローラ204の間に図示しない電磁クラッチ等の伝達系をオン・オフする手段を配置介在させることで、分離ローラ204の駆動のオン・オフを制御することができる。図2および図3に示した遊星アーム235をこれらの図の中間地点に位置させる工夫を行うことで、分離ローラギヤ237の回転を停止させることもできる。
次に、以上のような構成の両面読取装置200で画像の読み取りが行われる様子を順に説明する。
図4は、原稿供給トレイに積層された原稿が送り出される様子を表わしたものである。図4に示すように、原稿供給トレイ202上に複数枚の原稿203がセットされているものとする。ゴム板205は、その面がこれらの原稿203に対して所定の鋭角をなすように配置されている。したがって、原稿供給トレイ202上にセットされた複数枚の原稿203は、その下層に配置されているものほど、これらの先端がゴム板205のより下流側に一段ずつずれて配置されている。また、原稿有無センサ206はそのアクチュエータがこれらの原稿203によって押されて、「原稿あり」の検出を行っている。
この状態で分離ローラ204が矢印221方向に回転すると、原稿供給トレイ202に接触している最下層の原稿203Lのみが、残りの原稿から分離されて矢印224で示す下流方向に送り出される。送り出された原稿203は、原稿先端・後端検出センサ220のアクチュエータを図示のように所定角度回転させて、その先端を検出される。この状態で原稿203は読み取りデバイス208とフィードローラ211の間を矢印224方向に搬送されて、主走査方向に配置された読取部209による画像の読み取りがライン単位で行われることになる。画像の読み取りが終了した原稿203は、第1の水平搬送路212を下流方向に搬送される。そして、原稿排出口213から装置本体201外の図示しない排出トレイに排出されることになる。以上のようにして、原稿203の片面について画像の読み取りが行われる。
図5は、搬送方向の長さが比較的短い原稿について読み取りが開始して時間があまり経っていない状態を表わしたものであり、図6は原稿の後端がフィードローラの近傍まで到達した状態を表わしている。これら図5および図6では、説明を分かりやすくするために該当する1枚の原稿203のみを図示している。
図5に示した状態では、読み取り中の最下層の原稿203Lが搬送されており、分離ローラ204とフィードローラ211が共に矢印221、234で示すように正転(原稿203Lを矢印224で示す下流方向に搬送する方向。)方向に回転している。このとき、原稿有無センサ206および原稿先端・後端検出センサ220は共に原稿203Lの検出を行っている。原稿203Lの送り出しが進行してその後端が原稿有無センサ206を抜けたとき、原稿供給トレイ202に残りの原稿がセットされていなければ分離ローラ204の駆動は停止される。次に説明するように原稿先端・後端検出センサ220が原稿203Lの後端を検出した時点で分離ローラ204の駆動が停止されてもよい。
図6に示した搬送状態は、最下層の原稿203Lについて画像の読み取りが終了した時点を表わしている。原稿203Lの読み取りが終了した時点は、原稿203Lの後端が原稿先端・後端検出センサ220で検知された時点、あるいはこの時点から予め定めた一定時間が経過した時点として判別することができる。画像の読み取りが終了したこの時点で両面読取装置200はフィードローラ211の駆動を一時的に停止させる。図示しない制御部は原稿203Lのもう1面の読み取りが続行されるのか、片面の読み取りが終了したこの時点で読取動作をすべて終了させるのかを判別する。
読取動作をすべて終了させるのであれば、再びフィードローラ211を図5の矢印234で示す正転方向に所定時間だけ駆動して、原稿203Lを前記した排出トレイ上に排出する。原稿203Lの片面の読み取りのみを行うことを制御部が画像の読み取り終了前に判別していた場合には、フィードローラ211の駆動を一時停止することなく、排出を完了させるまで搬送を継続して行うようにしてもよい。このような制御は、たとえば両面読取装置200の図示しない制御部に備えたCPU(Central Processing Unit)を所定の制御プログラムを用いて実行することで実現することができる。
なお、このように原稿203Lの片面の読み取りのみが行われる場合で原稿供給トレイ202に他の原稿がセットされているときには、次の原稿203が分離ローラ204によって捌かれた状態で、画像の読み取りのためにフィードローラ211に送られることはもちろんである。また、次に送り出す原稿が原稿供給トレイ202にセットされているかいないかで原稿有無センサ206のアクチュエータの向きが異なる。そこで図6では原稿有無センサ206のアクチュエータについて、これら2つの状態を示している。
次に、原稿203Lの他の面の画像の読み取りが行われる場合を説明する。このように原稿203Lの両面についての読み取りが行われる場合、図6に示した片面の読み取りが終了した時点で制御部はフィードローラ211の逆転を開始させる。ここで、原稿203Lが次に説明する搬送経路を経て逆転するのに必要な長さを有しているかが問題となる。この点に関しては、原稿203Lは原稿先端・後端検出センサ220によってその先端と後端の通過する時間を検出可能である。そこで、前記した制御部がこれらの検出時刻の差と原稿203Lの搬送速度を用いて、原稿203Lが反転に必要な長さを有するかを簡単に判別することができる。また、原稿203L以外に原稿がセットされていないことも条件となる。原稿有無センサ206が他の原稿を検出している場合は、両面読み取り動作は行えない。
図7は、フィードローラの逆転により原稿が今までと逆方向に搬送されている状態を示したものである。フィードローラ211が矢印252で示すように逆転方向に回転すると、図3で説明したように分離ローラ204もこれと同一の搬送速度で矢印221で示す方向に回転する。この状態で、原稿203Lは矢印256で示すように第1の水平搬送路212を上流側に搬送される。そして、その先端が原稿供給トレイ202の下端部近傍に到達すると、ここから上ガイド部202Aと下ガイド板215によって挟まれた第2の水平搬送路214に進入する。そして、原稿203Lは矢印221方向に回転する分離ローラ204と、これと摺接するガイドベルト217の間を導かれて搬送されその先端がゴム板205と接触する。
このとき、原稿供給トレイ202には原稿がセットされていない。原稿供給トレイ202に原稿がセットされていたとすると、ガイドベルト217によって分離ローラ204が逆方向に原稿203Lを搬送するときに、原稿供給トレイ202にセットされた原稿が2枚目としてゴム板205と分離ローラ204のニップ領域を通過する不具合が発生するからである。
図8は、以上のようにして分離ローラで反転された原稿が画像の読み取り位置まで搬送された状態を示したものである。フィードローラ211は、原稿203Lの先端が原稿先端・後端検出センサ220によって検出された後で、先端がフィードローラ211と読取部209の接触点に到達するまでの間に、矢印234で示すように正転方向に回転方向を切り替える。ただし、原稿先端が原稿先端・後端検出センサ220によって検出された時に、まだ原稿後端がフィードローラと読取部209の接触点にあった場合は原稿後端が抜けるまでの間、正転方向への切り替えを遅らせる。この切り替え制御の判断は、片面を読み取った際の搬送長から判断する。また原稿先端・後端検出センサ220で先端を検出後に正転に切り替える時期は原稿先端がフィードローラ211と読取部209の接触点に到達する前であれば、任意の時期に設定することが可能である。原稿長による制御の区分としては、反転時に読み取り可能な最小原稿長以上で最大原稿長以下の原稿だけ反転読み取りが可能である。この読み取りの区分の中に読み取りは可能だが、フィードローラ211の反転時期を遅らせる必要のある原稿長の区分が入っている。制御部の制御を簡素化したい場合は、フィードローラ211の反転時期のデフォルトを最大原稿長で設定しておけば、原稿長による反転切り替え時期の区分は必要なくなる。
フィードローラ211の正転によって、反転された原稿203Lは読取部209の上を通過して、その画像の読み取りが行われることになる。この後は、図6で説明した通り、フィードローラ211の正転によって、両面の読み取りの終了した原稿203Lが装置本体201外の排出トレイに排出されることになる。原稿203Lの排出面を反転させて排出した方がよい場合には、両面の読み取りの終了した原稿203Lを再度、フィードローラ211および分離ローラ204を用いて反転させ、その後に排出トレイに排出させることも可能である。
また、以上の説明より明らかなように、本実施の形態の両面読取装置200では、両面を自動的に読み取るようにした場合、原稿203Lの搬送方向の長さに上限が存在する。より長い原稿について自動で反転させて両面の読み取りを可能にするためには、フィードローラ211と分離ローラ204の間隔を広げて、折り返しの距離の増大を図ったり、図15で示したようにフィードローラ211の更に下流側に排出ローラを設けて、この位置から原稿203Lの反転のための逆走を行うようにすればよい。
以上説明した本実施の形態の両面読取装置200によれば、フィードローラ211と分離ローラ204という2本の駆動ローラを用いて両面読み取り機能を実現することができる。これにより、安価でコンパクトな両面読取装置200を実現することができる。しかも、本実施の形態によれば、従来の高機能な両面読取装置が搬送ローラ間の距離が長いことにより実現が困難とされた小サイズの原稿の両面読み取りが可能になる。
<発明の第1の変形例>
図9は、以上説明した実施の形態の第1の変形例を示したものである。図9で図1と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。
この第1の変形例の両面読取装置200Aでは、原稿203の反転用の経路を形成するために、第1〜第3のピンチローラ2161〜2163を分離ローラ204の周方向に間隔を置いて配置している。また、第1〜第3のピンチローラ2161〜2163の間には、分離ローラ204よりもやや大径の円筒の一部をそれぞれ構成する第1および第2の原稿ガイド3011、3012を配置している。
この変形例で、フィードローラ211が矢印252で示す逆転方向に回転を開始して、原稿203を第1の水平搬送路212に沿って上流側に搬送する場合の様子を説明する。原稿203の先端が第1の水平搬送路212から第2の水平搬送路214に進入する点は先の実施の形態と同様である。その後、原稿203は矢印221方向に回転する分離ローラ204とこれに転接する第1のピンチローラ2161の間を通過して搬送力を得て、第1の原稿ガイド3011に案内されて第2のピンチローラ2162の位置まで搬送される。そして、分離ローラ204とこれに転接する第2のピンチローラ2162の間を通過して同様に搬送力を得て、第2の原稿ガイド3012に案内されて第3のピンチローラ2163の位置まで搬送される。第3のピンチローラ2163の近傍にはガイド部202Bの一端が配置されている。そこで原稿203の先端はこのガイド部202Bに案内されてゴム板205と分離ローラ204のニップ領域に到達し、これを通過することで図9に示したような反転した搬送状態となる。これ以後は、先の実施の形態と同様の搬送が行われるので、説明を省略する。
この第1の変形例によれば、第1および第2の原稿ガイド3011、3012を着脱可能な構成としておくことで、原稿203の反転時の紙詰まりに容易に対処することができる。また、分離ローラ204が比較的小径であっても、反転のための経路を簡易に構成することができる。
<発明の第2の変形例>
図10は、先の実施の形態の第2の変形例を示したものである。図10で図1あるいは図9と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。
この第2の変形例の両面読取装置200Bでは、原稿203の反転用の経路を第1のピンチローラ2161とガイド部202Cで構成している。ここでガイド部202Cは、原稿供給トレイ202の分離ローラ204用の開口部の上端位置からこの分離ローラ204の表面に沿って半円を描くように湾曲させた形状のガイド部202Cがローラ表面とわずかの間隔を保って配置されており、その終点に第1のピンチローラ2161が位置している。
この第2の変形例では、図9に示した第1の変形例の両面読取装置200Aと比較すると、ピンチローラ216の数が減少している。このため、原稿203の搬送方向の最低限必要な長さは、第1の変形例よりも長くするか、分離ローラ204とフィードローラ211の間隔をより短くするといった工夫が必要になる。
しかしながら、ピンチローラ216の数が減少するので、この分だけ両面読取装置200Aのコストダウンならびにピンチローラ216に起因する紙詰まりの発生の確率の減少を図ることができる。
なお、原稿203の反転用の経路を構成するピンチローラ216は、以上の第1あるいは第2の変形例と異なり2か所に設けられていてもよいし、4か所以上に設けられていてもよい。また、第2の変形例では原稿203の反転用のガイドを、ガイド部202Cと下ガイド板215で構成したが、これらを一体的に形成してもよい。
<発明の第3の変形例>
図11は、先の実施の形態の第3の変形例を示したものである。図11で図1あるいは図9と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。
この第3の変形例の両面読取装置200Cでは、図10に示した第2の変形例の両面読取装置200Bによる原稿203の搬送方向の最低限必要な長さの制限を緩和するものである。このため、第3の変形例の両面読取装置200Cでは、第1のピンチローラ2161の他に分離ローラ204における原稿供給トレイ202に最も近接した箇所に、ローラ表面と転接する第4のピンチローラ2164を新たに配置している。そして、これら第1および第4のピンチローラ2161、2164の間を、互いに所定の間隔を保った第1および第2のU字状のガイド板311、312で連結している。
この両面読取装置200Cでは、第1および第2のU字状のガイド板311、312により形成されるU字状搬送路313の長さ、すなわち第1および第4のピンチローラ2161、2164の間の道のりが、原稿203の搬送方向の最低限必要な長さと一致する。また、原稿203の搬送方向の最大長は、このU字状搬送路313の長さから第1および第4のピンチローラ2161、2164の間における分離ローラ204の円弧の長さを差し引いた増加分だけ、第2の変形例の両面読取装置200Bよりも延長される。
<発明の第4の変形例>
図12は、先の実施の形態の第4の変形例を示したものである。図12で図1と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。
第4の変形例の両面読取装置200Dでは、読み取りデバイス208Dを、先のCISを使用した読み取りデバイスと異なり、CCDを使用した読み取りデバイスとしている。読み取りデバイス208Dを構成する筐体321の内部には、フィードローラ211と対向する位置にこれと転接するピンチローラ322が配置されている。また、筐体321上部の開口部にはプラスチック等の透光板323が嵌め込まれており、内部に配置された光源324から出た光を原稿203の読み取り位置325に照射するようになっている。
読み取り位置325から得られた原稿203の反射光326は、筐体321内の底部に配置された第1のミラー327で反射される。筐体321内の2つの側面には、第2および第3のミラー328、329が互いに対向するように配置されている。第1のミラー327によって反射された原稿203からの反射光326は、光路長を稼ぐために第2および第3のミラー328、329で複数回折り返して反射される。そして、筐体321の側面近傍に配置された光学レンズ331に入射して、1次元イメージセンサ332上に光学像を結ぶようになっている。1次元イメージセンサ332は、原稿203の搬送方向(副走査方向)と直交する主走査方向に1ラインずつ画像を読み取り、図示しない画像処理回路で光学的な画像情報の補正が行われる。
このような本発明の第4の変形例によれば、読み取りデバイス208D側にピンチローラ322を内蔵しているため、フィードローラ211を回す時の負荷が軽くなる。また、読み取り位置に原稿を押さえつける必要が無いので、読み取り原稿に対して、ローラの幅を狭くすることができる。これらは原稿を搬送する時の負荷を減らすことになるため、両面読取装置200D全体の駆動負荷低減に貢献することができる。
<発明の第5の変形例>
図13は、先の実施の形態の第5の変形例を示したものである。図13で図1と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。
第5の変形例の両面読取装置200Eでは、原稿供給トレイ202の原稿有無センサ206のすぐ下流側に、原稿供給ローラ341と、これに転接するピンチローラ342が配置されている。原稿供給ローラ341は、先の実施の形態における分離ローラ204と実質的に同一であり、その周囲に第1〜第3のピンチローラ2161〜2163およびガイドベルト217が配置されている点も同一である。原稿供給ローラ341は、ピンチローラ342と協働して、原稿供給トレイ202に1枚ずつセットされた原稿を原稿有無センサ206の検出によって搬送するためのものであり、原稿を1枚ずつ分離する機能を備えていないために、その名称を変更している。
両面読取装置200Eでは、このように原稿を1枚ずつ自動で画像の読み取り箇所に送り出す自動供給機能を備えていない点で実施の形態の両面読取装置200と異なるが、それ以外の変更点はない。したがって、1枚の原稿について両面の読み取りが指示されている場合には、先の実施の形態で説明した通り、片面の読み取りが終了した原稿は第2の水平搬送路214に進入し、原稿給紙ローラ341とガイドベルト217の間を通過して反転する。そして、読み取りデバイス208とフィードローラ211の間を通過して、もう一方の面の読み取りが行われることになる。
なお、原稿供給ローラ341と転接するピンチローラ342を、原稿の送り出しを行うとき以外は原稿を上流側に押し戻す方向に回転し、あるいは原稿供給ローラ341の駆動に逆らって停止するローラに変更することで、原稿の自動供給機能を持たせることができることは当然である。
以上説明した実施の形態および各変形例では、読み取りデバイス208を押圧バネ219によってフィードローラ211に押し付ける構造としたが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば装置本体201内の所定の水平位置にプラテンガラス(図示せず)を配置し、これにフィードローラ211を自重で転接させるようにしてもよい。この場合、原稿203はプラテンガラスとフィードローラ211の間を通過し、プラテンガラスの下方に配置された図示しない光学系と読取素子で画像の読み取りが行われることになる。
また、本発明の実施の形態および各変形例では、分離ローラ204あるいは原稿供給ローラ341といった円筒状のローラを用いて原稿の反転を行ったが、たとえばエンドレスのベルトで原稿の送り出しを行ったり、反転を行うようにしてもよいことは当然である。
なお、先の実施の形態では、図7を用いた説明で原稿供給トレイ202に原稿203が1枚だけセットされている状況で説明を行った。しかしながら、状況によっては、原稿供給トレイ202に次の原稿203が残っている状態で先に送り出された原稿203Lを分離ローラ204が反転させて送り出すことが可能である。これを次に、第6の変形例として示す。
<発明の第6の変形例>
図14は本発明の第6の変形例による両面読取装置の構成の要部を表わしたものである。この第6の変形例の両面読取装置200Fで、図10と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。
この両面読取装置200Fでは、図10に示した第2の変形例の両面読取装置200Bにおける上ガイド部202Aが、分離ローラ204の上部近傍までローラ表面と非接触の状態で延長した形状の第1のペーパガイド部202Eが配置されている。また、図10のガイド部202Cと下ガイド板215を一体化して、図10の両面読取装置200Bから第1のピンチローラ2161を撤去した形状の第2のペーパガイド部202Fが、第1のペーパガイド部202Eと所定の間隔を置いて、その外側に配置されている。また、先に駆動力伝達機構230に関して説明した箇所で言及した電磁クラッチ等の伝達系をオン・オフする手段を使用して、両面読取装置200Fでは分離ローラ204の回転とフィードローラ211の回転は独立して制御できるようになっている。
このような構成の両面読取装置200Fでは、フィードローラ211が矢印252で示すように逆転方向に回転すると、原稿203Lが第1および第2のペーパガイド部202E、202Fの間を通過して分離ローラ204とゴム板205の接触場所に向けて搬送されてくる。このとき、分離ローラ204は回転を停止している。原稿203Lは第1のペーパガイド部202Eの存在によって、分離ローラ204が停止しているこの状態でも、円滑に分離ローラ204とゴム板205の接触場所の手前まで到達することができる。
このとき、原稿供給トレイ202には1枚以上の原稿203が積層されており、これらの先端は傾斜したゴム板205の下面に、1枚ずつ段差を生じさせるようにして接触している。分離ローラ204とゴム板205の接触場所の手前まで進行してきた原稿203Lは、原稿供給トレイ202に積層された原稿203の下側から、これらを突き上げるように進行する。この結果、分離ローラ204とゴム板205の接触場所に最も接近した場所に到達する。
この前提として、第6の変形例の両面読取装置200Fで、原稿203Lの搬送方向の長さの下限は、分離ローラ204とゴム板205の接触場所からフィードローラ211と読み取りデバイス208の接触場所までの搬送路の長さ以上であることが必要となる。ここで搬送路とは、第1および第2のペーパガイド部202E、202Fを経由するものである。また、原稿203Lの搬送方向の長さは、フィードローラ211と読み取りデバイス208の接触場所からこの搬送路を経由して再びフィードローラ211と読み取りデバイス208の接触場所に返るまでの長さ未満であることが必要となる。
フィードローラ211と読み取りデバイス208の接触場所から第1および第2のペーパガイド部202E、202Fを経由して送られてきた原稿203Lが分離ローラ204とゴム板205の接触場所まで搬送された時点で、分離ローラ204は矢印221方向に回転を開始する。この結果、原稿203Lが分離ローラ204によってフィードローラ211の方向に搬送される。この時点の動作としては、フィードローラ211が逆回転している場合の分離ローラ204の原稿搬送速度はフィードローラ211と同一の速度であるため、ローラの搬送速度の違いによる原稿づまりは発生しない。続いて原稿203Lの先端が原稿先端・後端検出センサ220によって検出された時点では、フィードローラ211と原稿読み取りから原稿203Lの後端が抜けている場合と、まだ抜けていない場合があり得る。これらは図8を用いた先の実施例での説明と同様に、フィードローラ211の回転の切り替え時期を原稿の片面読み取り時の搬送長で判断して、変更する。すなわち搬送長がフィードローラ211と読み取りデバイス208の接触場所から第1および第2のペーパガイド部202E、202Fを経由し、原稿先端・後端検出センサ220まで到達する長さ以上の場合は、先端検出後、フィードローラ211から原稿203Lの後端が抜けきるまで、フィードローラの正転方向への切り替え時期を遅くし、搬送長が短い場合は、予め定めてある所定の時間で切り替える。原稿203Lがフィードローラ211と読み取りデバイス208の接触場所まで送られた後、原稿203Lに対して2面目の画像情報の読み取りが行われる。読み取りの終了した原稿203Lは、原稿排出口213から排出を開始される。
この原稿203Lの後端が分離ローラ204とゴム板205の接触場所から離れると、原稿供給トレイ202に積層された一番下の原稿203が分離ローラ204の回転に伴ってフィードローラ211の方向に搬送される。これにより、この原稿203に対する1面目の画像情報の読み取りが行われることになる。以下、同様にしてこの原稿203についても、フィードローラ211の逆転制御によって2面目の画像情報の読み取りが行われることになる。
このように第6の変形例の両面読取装置200Fでは、原稿供給トレイ202にセットした原稿203の枚数の如何に係わらず、これらの両面の読み取りを連続して行うことができる。