JP2009265625A - 揺動体装置、及びそれを用いる光偏向装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】共振周波数が変化したとしても、効率良く駆動するための駆動周波数を決定することができる揺動体装置、それを用いる光偏向装置を提供する。
【解決手段】揺動体装置は、振動系200と、揺動体の振動状態を検出するための振動検出手段120、260、240と、駆動信号で振動系を駆動する駆動手段220と、駆動手段に供給する駆動信号を制御する制御手段250を有する。振動系200は、共振周波数を持ち、揺動可能に支持された少なくとも1つの揺動体を含む。制御手段250は、振動系200を所定周波数で振動させるときの、駆動信号の駆動位相と振動検出手段の検出結果による振動系200の揺動位相との遅延位相差を所定の値に保つ様に、駆動信号の駆動周波数を変更する。
【選択図】図1

Description

本発明は、揺動可能に支持された揺動体を有する揺動体装置の技術に関する。より詳しくは、共振型揺動体装置などの揺動体装置、それを用いる光偏向装置などに関する。この光偏向装置は、走査型ディスプレイやレーザビームプリンタやデジタル複写機等の画像形成装置などの光学機器に好適に用いられる。
近年、光ビームを走査する光走査装置は、光ディスク、レーザビームプリンタなどで光ビームを走査するために用いられている。また、シリコンマイクロマシンニング技術を利用して、極小ミラーが共振駆動される光偏向装置を用いた光走査装置が提案されている。この様な共振型光偏向装置は、ポリゴンミラー等の回転多面鏡を使用したものに比べ、大幅に小型化することが可能である。また、消費電力が少ないこと、ミラー面の面倒れが理論的に存在しないこと、特に半導体プロセスによって製造されるSi単結晶からなる光偏向装置は理論上金属疲労が無く耐久性にも優れていること等の特徴がある。
しかしながら、共振型光偏向装置は、原理的にミラーの偏向角(変位角)が正弦波的に変化するため、角速度が一定でない。この角速度が一定でない特性を補正するための方法は、幾つか提案されている(特許文献1参照)。なお、本明細書では、ミラーの偏向角と、ミラーで偏向・走査される走査光の走査角は一定の関係にあって同等に扱えるので、偏向角(変位角)と走査角は同等な意味で用いる。
特許文献1では、複数のねじりバネと複数の揺動体からなる系が、分離した複数の固有振動モードを有するマイクロ揺動体が開示されている。このマイクロ揺動体では、分離した複数の固有振動モードの中に、基本周波数の固有振動モードである基本振動モードと、基本周波数の略偶数倍の周波数の固有振動モードである偶数倍振動モードが存在する。特許文献1では、これらの振動モードでマイクロ揺動体を振動させることで、略等角速度の範囲を持つ鋸歯状波駆動などを実現している。この鋸歯状波駆動とは、図22に示す様に、往復運動する可動子の1周期の振動変位のうち、往路における変位時間が復路における変位時間と異なる駆動である。この鋸歯状波駆動で振動する極小ミラーで偏向された光を、補正系などで補正することにより、光スポット径を変えることなく、光スポットの走査面上での略等速化が実現できる。
一方、共振型光偏向装置は、その共振周波数が温度などの環境変化により変化するという性質がある(特許文献2参照)。特許文献2では、揺動体の回動運動の検知手段の出力信号を振動入力部にフィードバック入力して駆動周波数を制御し、温度の変化に対応して常に共振周波数で振動させるという自励振動を実現している。
特開2005−208578号公報 特開平7−181415号公報
しかし、上記特許文献1で開示される様な、複数のねじりバネと複数の揺動体からなる系で、特許文献2の技術を実施しようとすると、次の様なことが起こる。まず、特許文献2の技術では、目標となる駆動信号とねじりバネとの遅延位相差が固定値である。駆動信号とねじりバネとの位相遅延の要因が複数ある場合、正確な遅延位相差を求めることは容易ではない。
また、特許文献2の技術では1つの振動モード(曲げ変形モード又は捩り変形モード)での駆動である。よって、複数のねじりバネを共通の軸回りの同種の複数の振動モードで、共振周波数に合わせて駆動しようとすると、以下の様なことになる。例えば、図2で示す様な振動系200は、2つの揺動体201、202を含み、各揺動体を連結するねじりバネ211と、揺動体202と支持部221を連結するねじりバネ212が設けられている。この揺動体を図22の様に駆動するためには、図19に示す様に、基本振動モードである共振周波数近傍の駆動基本波と、該駆動基本波の2倍の周波数を持つ駆動倍波との合成波での駆動が必要となる。同種の振動モードにおける2つの周波数成分を持った合成波で2振動子を駆動するとき、駆動信号の各周波数成分の位相を制御せずにいると、振動変位の各周波数成分を把握することが容易ではなくなる。
更に、特許文献2の技術では、共振周波数から意図的に外した周波数で揺動体を振動させるといった駆動を実現するのが容易ではない。
上記課題に鑑み、本発明の揺動体装置は次の特徴を有する。すなわち、共振周波数を持ち、揺動可能に支持された少なくとも1つの揺動体を含む振動系と、前記揺動体の振動状態を検出するための振動検出手段と、駆動信号で前記振動系を駆動する駆動手段と、前記駆動手段に供給する前記駆動信号を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記振動系を所定周波数で振動させるときの、前記駆動信号の駆動位相と前記振動検出手段の検出結果による前記振動系の揺動位相との遅延位相差を目標遅延位相差として記憶し、駆動中に測定される、前記駆動信号の駆動位相と前記振動検出手段の検出結果による揺動位相との遅延位相差を、前記目標遅延位相差に略一致させる様に、前記駆動信号の駆動周波数を変更する。
また、上記課題に鑑み、本発明の光偏向装置は次の特徴を有する。上記揺動体装置を有し、揺動体は反射ミラーを持ち、光源からの光ビームを反射ミラーで反射・偏向する。振動検出手段は、偏向された光ビームを所定の偏向角の位置で検出する様に配置された受光素子を含み、受光素子による光ビーム検出時間の間隔に基づいて揺動体の振動状態を検出する。
また、上記課題に鑑み、本発明の画像形成装置などの光学機器は、上記光偏向装置と光照射対象物とを有し、光偏向装置は、光源からの光ビームを偏向し、該光ビームの少なくとも一部を光照射対象物に入射させることを特徴とする。
本発明によれば、1つの揺動体を持つ振動系は勿論のこと、複数の揺動体を持つ振動系でも、共振周波数が温度などの環境変化により変化したとしても、効率良く駆動するための駆動周波数を決定することが可能となる。
本発明の揺動体装置を用いた光偏向装置に係る実施例1の構成例を示すブロック図である。 2つの揺動体を有する光偏向装置のブロック図である。 光偏向装置の偏向角を説明する図である。 (a)は光偏向装置の振動系の具体例を示す平面図、(b)は光偏向装置の駆動部の具体例を示す断面図である。 光偏向装置の偏向角の時間変化を説明するグラフである。 (a)は波形発生器であるNCOの構成図、(b)はNCOの出力波形を示す図である。 駆動周波数−振幅/位相特性を説明する図である。 温度変化による駆動周波数−振幅/位相特性の変化を説明する図である。 駆動周波数−振幅/位相特性の変化に対応した駆動周波数変更を説明する図である。 Δω=0の2振動子の系の駆動周波数−振幅/位相特性を説明する図である。 Δω>0の2振動子の系の駆動周波数−振幅/位相特性を説明する図である。 Δω<0の2振動子の系の駆動周波数−振幅/位相特性を説明する図である。 揺動体装置を光偏向器に用いた画像形成装置を説明する図である。 実施例1のフローチャートである。 実施例2における閾値を用いた駆動周波数変更を説明する図である。 実施例3における非描画領域を説明する図である。 実施例3の制御部を説明するための図1と同様な図である。 実施例3のフローチャートである。 駆動信号の各成分の波形と振動変位の関係を説明する図である。 1つの揺動体を有する揺動体装置に係る実施例4の駆動信号の波形と振動変位の関係を説明する図である。 実施例4のフローチャートである。 揺動体の鋸歯状波の振動変位を示す図である。
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明による揺動体装置の基本的な実施形態は、振動系と、振動系の揺動体の振動状態を検出するための振動検出手段と、駆動信号で振動系を駆動する駆動手段と、駆動手段に供給する駆動信号を制御する制御手段を有する。振動系は、共振周波数を持ち、揺動可能に支持された少なくとも1つの揺動体を含む。制御手段は、振動系を所定周波数で振動させるときの、駆動信号の駆動位相と振動検出手段の検出結果による振動系の揺動位相との遅延位相差を目標遅延位相差として記憶し、駆動中に測定される遅延位相差を前記目標遅延位相差に略一致させる様に、駆動信号の駆動周波数を変更する。
振動系の揺動体が1つの場合、振動系は1つの共振周波数を持ち、駆動信号は1つの周波数の信号成分で生成でき、揺動体の振動は1つの周波数成分を持つので、複数の周波数成分間の位相差の調整は必要ない。従って、駆動信号の1つの駆動位相と振動検出手段の検出結果による揺動体の揺動位相との遅延位相差は容易に把握できる。この場合、所定周波数で振動させるときの遅延位相差を目標遅延位相差としてあらかじめ測定して記憶しておき、実際の駆動中に測定される遅延位相差を前記目標遅延位相差に略一致させる様に、駆動信号の1つの駆動周波数を変更すればよい。
振動系の揺動体が複数の場合は、振動系は複数の共振周波数を持ち、駆動信号は複数の周波数の信号成分で生成する必要があり、揺動体の振動も複数の周波数成分を持つ。従って、制御手段によって、揺動体の振動に含まれる複数の周波数成分間の位相差が所定の値になる様に、駆動信号の複数の周波数の信号成分間の位相差を制御する必要がある。このとき、制御手段は、複数の信号成分の周波数の整数比を保ったまま周波数を変更し、揺動体の振動の周波数成分に対応する駆動信号の信号成分の周波数と該振動の周波数成分の振幅との関係を測定し、該測定結果に基づいて複数の駆動周波数を決定する。更に、決定した駆動周波数で揺動体を駆動するときの遅延位相差(揺動体の振動の複数の周波数成分の何れか1つに対応する駆動信号の信号成分の駆動位相と揺動体の揺動位相との遅延位相差)を目標遅延位相差としてあらかじめ測定して記憶しておく。そして、実際の駆動中に測定される遅延位相差(揺動体の振動の複数の周波数成分の何れか1つに対応する駆動信号の信号成分の駆動位相と揺動体の揺動位相との遅延位相差)を前記目標遅延位相差に略一致させる様に、駆動信号の複数の駆動周波数を変更する。尚、本明細書において「略一致させる」とは、駆動手段が可能な周波数変更精度で制御して、目標遅延位相差に一番近い位相差を得ることをいう。
以上の様にすれば、1つの揺動体を持つ振動系は勿論のこと、複数の揺動体を持つ振動系でも、共振周波数が変化したとしても、効率良く駆動するための駆動周波数を決定することができる。
以下、具体的な実施例を図に沿って説明する。
(実施例1)
図1は、本発明の揺動体装置を用いた光偏向装置に係る実施例1の構成例を示すブロック図である。図2は、本光偏向装置の振動系の構成を示すブロック図である。
図2に示す様に、振動系200は、揺動可能に支持された第1の揺動体201と第2の揺動体202を有する。揺動体201と揺動体202は、ねじりばね211で直列に連結され、第2の揺動体202と支持部221は、ねじりばね212で連結されている。
駆動手段である駆動部220は、電磁式、静電式、圧電式などの方式により振動系200の複数の固有振動モード(ここでは、捩り変形モードにおける複数の振動モード)を同時に励振する駆動力を第1の揺動体201に加える。例えば、電磁式駆動手段は、コイルと永久磁石で構成される。揺動体201は表面に反射ミラー230を有し、光源231から入射する光ビーム232を反射して偏向・走査する。走査光233は、1周期内で振動検出手段である第1、第2の受光素子240、260をそれぞれ2回通過する。制御手段である制御部250は、走査光233が第1、第2の受光素子240、260をそれぞれ2回通過する時間により、駆動部220への駆動信号を生成する。
走査光233と受光素子240、260の関係は次の様になっている。
図3は、振動系200の揺動体201による光の偏向角を示す。振動系200の揺動体201はθmaxの揺動角(偏向角)で揺動し、第1、第2の受光素子240、260は、θmaxよりも小さな角度θ1で偏向される走査光233が通る所に配置されている。走査光233の最大偏向角θmaxがθ1より十分大きければ、図19に示す様に、走査光233は1周期に第1、第2の受光素子240、260をそれぞれ2回通過する。
図4は、本実施例で使用する光偏向装置の振動系200と駆動部220の部分の具体的な構成図である。図4(a)は光偏向装置の振動系の上面図である。プレート部材400はシリコンウェハをエッチング加工して作製される。平板状の揺動体401は、ねじりバネ411で支持されている。揺動体401の上面には、光反射膜431が成膜されている。ねじりバネ411を支持する揺動体402は、ねじりバネ412で支持枠421に支持されている。揺動体401、402及びねじりバネ411、412は、2つの振動モードを有する。2つの振動モードの共振周波数が基本共振周波数とそれの略整数倍(ここでは略2倍)の倍波共振周波数を含む様に、振動系200の調整が施されている。すなわち、基本共振周波数と倍波共振周波数は略整数比の関係になっている。尚、本明細書において略整数倍とは基本周波数の0.98n〜1.02n倍程度(nは任意の整数)の数値範囲をいう。
図4(b)は、光偏向装置の駆動部220を説明するための模式図であり、図4(a)の切断線490で切断した断面を示している。揺動体402の下面には、永久磁石441が接着されている。プレート部材400は、透磁率の高い材料で作成されたヨーク444に接着されている。ヨーク444の、永久磁石441に相対する部位には、透磁率の高い材料で作成されたコア443が配置され、コア443の周囲にはコイル442が周回されている。永久磁石441、コイル442、コア443、ヨーク444は、駆動手段である電磁アクチュエータを構成しており、コイル442に電流を流すと永久磁石441にトルクが作用し、揺動体402が駆動される。
駆動手段である駆動部220による振動系200の通常の駆動は次の様に行われる。
上記構成において、光偏向装置の偏向角θは、時間tの関数により次式(1)の様に表すことができる。
θ(t)=A1・sin(ω1・t)+A2・sin(ω2・t+φ) (1)
ここで、一方の振動モードに係る第1の振動運動の振幅、角周波数をそれぞれA1、ω1、他方の振動モードに係る第2の振動運動の振幅、角周波数をそれぞれA2、ω2、2つの周波数成分の位相差をφとする。
上で触れた図19は、駆動信号の各周波数成分と振動変位(偏向角)の時間波形を示す。駆動信号については、振動変位が(1)式の中でφ=0となる様に、駆動基本波と駆動倍波の信号成分間の位相をφdにしている。すなわち、第1の揺動体の振動に含まれる複数の周波数成分間の位相差は所定の値にする必要があるが、ここではゼロにしている。このとき、振動変位のゼロクロス点は、走査光が第1、第2の受光素子240、260を通過した時間の中間で概算可能である。しかし、φ≠0の場合、振動変位の各周波数成分のゼロクロス点と合成波のゼロクロス点が異なってくるため、算出が複雑で且つ正確な値が求め難い。このため、制御部250において、φ=0となる様に駆動信号を調整して振動系200を駆動する。
ここで、駆動信号の各周波数信号成分のゼロクロス点から振動変位のゼロクロス点までの時間を各周波数に換算することにより、駆動信号の駆動位相と振動系の揺動位相との遅延位相差が求まる。図19に示す様に、駆動基本波の駆動位相と揺動位相の遅延位相差はΦ1、駆動倍波の駆動位相と揺動位相の遅延位相差はΦ2である。
本実施例の駆動部220への駆動信号を生成する制御部250を図1に沿って更に説明する。
図1において、コントローラ100により、第1の振動運動に係る角周波数ω1が波形発生器20に設定される。波形発生器20はω1と2×ω1の角周波数を持つ正弦波を出力する。ω1と2×ω1の正弦波の位相差φdは、演算部30により演算され、積分器40を通って出力される。生成された2つの正弦波は、それぞれの振幅A1及びA2を乗算器によりかけられ加算器で足し合わされた合成波が駆動部220に印加される。本明細書では、光偏向装置の偏向角θを発生させる駆動信号も上記A1、ω1、A2、ω2、φに対応するファクターで表されるので、これらをA1、ω1、A2、ω2、φdで表す。A1、ω1、A2、ω2は共通の記号を用いるが、偏向角θのものか駆動信号のものかは、前後関係から明らかなときは説明を省く。
図2に示す様に、制御部250から発せられた合成波の駆動信号は駆動部220に供給されて振動系200に駆動力を与え、揺動体201を揺動させる。ミラー230を有する揺動体201の振動により光ビーム232が走査され、各受光素子240、260に走査光233が受光される。受光されるタイミングは図5で示す様にt1、t2、t3、t4となる。制御部250では、前記t1、t2、t3、t4から差分(光ビーム検出時間の間隔)をとり、振動検出手段である時間測定部120の部分121にt2−t1、部分122にt3−t2、部分123にt4−t3が設定される。所望の振動変位を得るための目標時間110、111、112に対する、測定した時間121、122、123の差分が求められ、演算部30はこれらの差分を駆動信号の操作量Δφd、ΔA1、ΔA2に変換する。
演算部30での具体的演算方法例を以下に示す。A1、A2、φdのいずれかを含む制御パラメータXが目標値から微小に変化した場合の、第1、第2の受光素子240、260を走査光233が通過する検出相対時間t2−t1、t3−t1、t4−t1の変化を表す係数、及び行列Mを予め求めておく。これらは次の式(2)、式(3)で表される。
Figure 2009265625
Figure 2009265625
従って、駆動信号の各周波数成分の振幅と位相の操作量ΔA1、ΔA2、Δφdは、検出相対時間t2−t1、t3−t1、t4−t1と目標時間t20−t10、t30−t10、t40−t10との時間差Δt2、Δt3、Δt4により、次の式(4)で求まる。こうして、駆動部220への駆動信号が制御部250により生成される
Figure 2009265625
更に、制御部250の部分の構成と機能を説明する。
コントローラ100では、部分101に駆動開始周波数が記憶され、起動時には部分101の駆動開始周波数を波形発生器20に設定し駆動を開始させる。また、コントローラ100は、波形発生器20から発生する駆動信号の2つの信号成分の駆動位相と時間測定部120の信号から求まる揺動体201の振動変位の揺動位相との遅延位相差を部分102に記憶する(図19参照)。
波形発生器20は、例えば、NCO(Numerical-Controlled-Oscillator)で構成できる。NCO60の例を、図6(a)の構成図に示す。デジタルの入力は、加算器61において、サンプル遅延素子62による1サンプル前の信号と加算され、正弦波テーブル63にアドレスとして入力される。この正弦波テーブル63からは、デジタルの正弦波成分が導出される様になっている。この構成において、入力として或る一定レベルを有するデジタル信号が入力し続けると、加算器61の出力には、図6(b)に示す様な入力レベルに応じた一定の正の傾きを有する信号が得られる。そして、所定の最大値になるとゼロにリセットされるとすると、入力レベルに応じた周期(周波数)を有する鋸歯状波64が得られるので、これを正弦波テーブル63に入力することより、正弦波成分65が導出される。これの周波数は、上記入力レベルを変化させることで変えられる。
制御部250では、次の様な動作も行われる。
図7は、(a)揺動体の共振周波数近傍の感度、(b)制御時の駆動信号振幅、(c)駆動位相と揺動位相との遅延位相差の周波数特性を示している。なお、ここでは、駆動信号の各信号成分と、それに対応する振動変位の周波数成分と関係について示している。感度特性は共振周波数で最も高くなる。そのため、制御により目標の振動変位を保つためには、駆動周波数と共振周波数のずれ量に応じて駆動信号強度を変更する必要がある。駆動位相と揺動位相との位相差は、駆動周波数が共振周波数よりも小さいときには小さく(すなわち、遅れは小さくなり)、駆動周波数が共振周波数よりも大きいときには大きくなる(すなわち、遅れは大きくなる)。また、遅延位相差が変化する割合は共振周波数で一番大きくなる。
各共振周波数は、制御部250から振動系200の駆動部220に単一の正弦波状の駆動信号を、想定される共振周波数の付近の駆動周波数でスイープしながら印加して、駆動周波数−振幅特性を測定し、検出することができる。このとき、同時に、駆動振幅を検出するか(この場合は、振動変位の振幅を一定に保つ様にする)、揺動体の振幅を検出するか(この場合は、駆動振幅を一定に保つ様にする)して、駆動周波数−振幅特性を測定する。前者の場合、駆動振幅が最小になる駆動周波数が共振周波数となり、後者の場合、振動変位の振幅が最大になる駆動周波数が共振周波数となる。
また、揺動体を駆動した後、駆動を停止して、揺動体の振動の減衰から求めてもよい。この場合、例えば駆動コイルの逆起電力から共振周波数を測定することができる。
図8は、温度上昇時の駆動周波数−振幅/位相特性の変化を示しており、揺動体の共振周波数が温度上昇により下がる特性を持っていることを示している。温度変化前の共振周波数で駆動している場合、温度変化により駆動信号振幅は増大し、駆動位相と揺動位相との位相差も遅れが増大する。温度変化しても常に共振周波数で駆動するためには、図9に示す如く、温度変化しても駆動位相と揺動位相との遅延位相差を保つ様にする必要がある。
上記遅延位相差を保つ様にする動作について説明する。
この動作において、駆動周波数が第1の振動モードの共振周波数に近い場合は、目標遅延位相差を、図19に示す駆動基本波位相と揺動位相の位相差Φ1にした方が、駆動倍波位相と揺動位相の位相差Φ2にするよりも、共振周波数への追従精度が高くなる。逆に第2の振動モードの共振周波数に近い場合は、目標遅延位相差を、Φ2にした方がΦ1のときよりも共振周波数への追従精度が高くなる。従って、遅延位相差は、基本波信号成分と倍波信号成分のうち、その周波数が共振周波数に近い方の信号成分の駆動位相と揺動体の揺動位相との遅延位相差とするのが良い。本実施例でも、こうした考え方に基づく。
図2で示した様な2振動子では、2つの振動モードを有し、各振動モードの共振周波数が略1:2になる様に調整が施されていることは前述した通りである。しかし、実際には共振周波数には、1:2の関係から若干のずれが生じる。基本の共振周波数をω1とし、倍の共振周波数をω2とすると、この差はΔωとして次の様に定義される。
Δω=ω2−(2×ω1) (5)
図10は、Δωが0のデバイスの駆動信号振幅−周波数特性と位相差−周波数特性を示している。このとき、駆動信号の基本波成分の駆動周波数をωd1、倍波成分の駆動周波数をωd2とすれば、次の関係は常に保たれる。
ωd2=2×ωd1 (6)
従って、次の様にすることで、共振周波数での駆動が実現できる。
ωd1=ω1 (7−a)
ωd2=ω2 (7−b)
図11は、Δω>0のデバイスの駆動信号振幅−周波数特性と位相差−周波数特性を示している。このとき、駆動信号の基本波成分の駆動周波数を基本の共振周波数に合わせるなら、駆動信号の基本波成分の駆動周波数ωd1と倍波成分の駆動周波数ωd2は次の様になる。
ωd1=ω1 (8−a)
ωd2=2×ω1=ω2−Δω (8−b)
この場合、駆動周波数ωd2を共振周波数ω2で駆動する場合よりも、駆動倍波位相と揺動位相との遅延位相差が小さくなる。また、遅延位相差の変化率は基本周波数側であるΦ1の方が大きい。そのため、式(8)の様に、駆動信号の基本波成分の駆動周波数を基本の共振周波数に合わせて2つの駆動周波数を変更する場合、基本周波数側のΦ1の遅延位相差値を目標遅延位相差として、2つの駆動周波数を変更する方が、精度が高くなる。
逆に、次の様にしたとき、基本波成分の駆動周波数ωd1を共振周波数ω1で駆動する場合よりも、駆動倍波位相と振動位相との遅延位相差が大きくなる。
ωd1=ω2/2=ω1+(Δω/2) (9−a)
ωd2=ω2 (9−b)
また、遅延位相差の変化率は倍波周波数側であるΦ2の方が大きい。そのため、式(9)の様に、駆動信号の倍波成分の駆動周波数を倍波の共振周波数に合わせて2つの駆動周波数を変更する場合は、倍波周波数側のΦ2の遅延位相差値を目標遅延位相差として、2つの駆動周波数を変更する方が、精度が高くなる。
また、各駆動周波数を2つの共振周波数の間にして駆動する場合は、駆動周波数が基本と倍の共振周波数のどちらに近いかを基に、Φ1とΦ2のどちらの遅延位相差値を目標遅延位相差として2つの駆動周波数を変更するかを決定することができる。
図12は、Δω<0のデバイスの駆動信号振幅−周波数特性と遅延位相差−周波数特性を示す。この場合も、Δω>0の場合と同じ様に、駆動周波数を基本の共振周波数ω1と倍の共振周波数ω2のどちらに合わせるかで、Φ1とΦ2のどちらの遅延位相差値を目標遅延位相差とするかを決定することができる。
上述した構成・機能の説明に基づき、図14のフローチャートに沿って本実施例の周波数追従の具体的な実施手順を述べる。後述の画像形成装置に適用した例で説明する。まず、画像形成装置の電源がONになる(S101)。
コントローラ100から、信号生成部20に開始駆動周波数が設定され、積分器40に初期の駆動振幅A1が設定され、基本波のみの駆動信号で駆動が行われる(S102)。開始駆動周波数は、取り得る共振周波数の平均値、前回停止時の共振周波数などを設定する。A1は、受光素子240、260に走査光233が入るのに十分な初期値を設定する。
駆動部220への駆動信号印加により揺動体201が振動する。揺動体201の振動振幅が大きくなり、受光素子240、260に信号が入って来るまで待機する
(S103) 。
続いて、倍波の駆動信号成分を印加する(S104)。コントローラ100は、積分器40に初期の倍波成分の振動振幅A2と初期の位相差φdを設定する(図19参照)。倍波を加えた後に、所望の振動変位になる様にコントローラ100は制御を開始する(S105)。この制御は、例えば、上述した行列を用いた演算により行なわれる。制御して揺動体が所望の振動変位に収束したら、一方の駆動周波数を想定される共振周波数付近でスイープして1:2の関係を保ちつつ2つの駆動周波数を変更し(S106)、そのときの駆動振幅を測定する(S107)。駆動周波数−振幅特性が測定できるまで、駆動周波数の変更と駆動振幅の測定を繰り返す(S108)。これは、2つの共振周波数に対応する駆動周波数について、それぞれ行われる。
次に、測定した駆動周波数−振幅特性を基に駆動周波数を決定する(S109)。ここでは、駆動周波数ωd2を倍波モードの共振周波数ω2に合わせた時の例を説明する。該駆動周波数で駆動したときの、駆動倍波位相と揺動位相との遅延位相差Φ2を測定し(S110)、該遅延位相差を目標遅延位相差としてコントローラ100が持つ記憶部分102に記憶する(S111)。勿論、駆動周波数ωd1を基本の共振周波数ω1に合わせる駆動も可能であり、更には、各駆動周波数を2つの共振周波数の間にして駆動する様なことも可能である。
準備が終了したら、実際に印刷を開始する(S112)。開始後、印刷を継続するか終了するかを判定する(S113)。印刷を継続(駆動を継続)するときは、駆動中の駆動倍波位相と揺動位相との遅延位相差Φ2を測定し(S114)、記憶部分102に記憶されたデータ(前記目標遅延位相差)と比較する(S115)。比較の結果、差がなかったときはそのまま印刷を継続し、差があったときは、記憶部分102に記憶した目標遅延位相差と測定された遅延位相差Φ2が略一致する様に、1:2の関係を保ちつつ2つの駆動周波数を変更する(S116)。また、条件部分(S113)で印刷終了の要求があれば、印刷を終了し待機する(S117)。
上述した本実施例の画像形成装置における印刷処理を図13を用いて説明する。図13において、(a)が側面図で、(b)が上面図である。
印刷処理要求が来ると、振動系200を含んだ光偏向装置は前述の工程を経て定常駆動状態に至り、走査光233を出力する。走査光233は、光照射対象物である感光体ドラム1302の長軸方向に沿って走査される。
図13(a)の矢印で示す方向に感光体ドラム1302は回転を開始し、帯電器1305により高電位に帯電される。帯電した部分が回転により走査光233の走査線上に来て、所望の位置に走査光233が当てられる様に、光源231は点灯と消灯を所望のタイミングで繰り返す。光源231(図1参照)から出て光偏向装置で偏向された走査光233が照射された部分は低電位になる。これを静電潜像と呼ぶ。現像装置1304が、例えば、正に帯電した黒色の一成分の磁性トナーを用いて、静電潜像化された部分を現像する。現像されたトナーを転写装置1303により紙などに転写して印刷処理が完了する。
本実施例によれば、駆動中に測定される遅延位相差を目標遅延位相差に略一致させることで、複数の揺動体を持つ振動系でも、効率良く駆動するための駆動周波数を決定することができる。こうして、共振周波数が温度などの環境変化により変化しても、変化に対応して常に効率良く振動系を駆動することができる。
(実施例2)
実施例2を説明する。実施例2では、実施例1において駆動周波数を変更するときの条件を変える。実施例1では、駆動中に測定される遅延位相差と記憶部分102に記憶された目標遅延位相差のデータとの差が少しでもあれば、駆動周波数の変更を実施していた。これに対して、実施例2では、前記差が所定閾値以上開いて、初めて、駆動周波数を変更する様にする。
すなわち、前記所定閾値をコントローラ100の記憶部分103で記憶し、図14のステップ(S115)の条件分岐において、駆動中に測定される遅延位相差と目標遅延位相差の差が閾値Φth以上開いているかどうかをコントローラ100が判断する。開いている場合は駆動周波数を変更し、そうでないときは印刷を継続する。図15に実施例2の動作を実行したときの、駆動周波数−位相特性の変化と駆動周波数の変更を示す。本実施例では、駆動周波数変更の頻度が減るので、その分、制御部における負担が軽減される。その他の点は、実施例1と同じである。
(実施例3)
実施例3を説明する。実施例3では、実施例1のステップ(S116)で駆動周波数を変更するタイミングに制限を加える。画像形成装置では、例えば、図16に示す様な描画領域161、164と非描画領域162、163がある。描画領域に走査光があるときに駆動周波数を変更すると、走査光による画像の精度に影響が出る場合がある。そのため、非描画領域での駆動周波数変更が望ましいこともある。
本実施例では、図17に示す様に、制御部250は、画像メモリ1700から画像情報を得ることにより、非描画領域を認知する。実施例3のフローチャートを図18に示す。図14との差異点は、駆動周波数の変更が必要なときに、非描画領域かどうかを確認し(S301)、描画領域であるときは、現在の駆動位相と揺動位相の遅延位相差を測定し直す。再び測定した結果、やはり駆動周波数の変更が必要であり、光ビームが光照射対象物の非描画領域にあるときは、駆動周波数を変更する(S116)。その他の点は、実施例1と同じである。
(実施例4)
実施例4は、1つの揺動体で構成される振動系を持つ実施例に係る。図20に駆動信号と振動変位の関係を示す。駆動信号も振動変位も1つの周波数成分のみを持つ。駆動位相と揺動位相の位相差はΦである。
図21に実施例4のフローチャートを示す。1周波数の駆動では、2振動子の様な倍波の駆動信号成分の印加(S104)と振動変位における2周波成分間の位相制御(S105)が必要でなくなる。従って、制御部の各部も簡単になる。図21のフローチャートに示す様に、本実施例の動作原理は実施例1と同様である。
20 制御手段(波形発生器)
30 制御手段(演算器)
40 制御手段(積分器)
100 制御手段(コントローラ)
120 振動検出手段(時間測定部)
200 振動系
201、202、401、402 揺動体
220 駆動手段(駆動部)
230、431 反射ミラー(光反射膜)
231 光源
240、260 振動検出手段(受光素子)
250 制御手段(制御部)
441 駆動手段(永久磁石)
442 駆動手段(コイル)
1300 光偏向装置
1302 光照射対象物(感光ドラム)
1303 現像装置
1700 画像メモリ

Claims (10)

  1. 共振周波数を持ち、揺動可能に支持された少なくとも1つの揺動体を含む振動系と、
    前記揺動体の振動状態を検出するための振動検出手段と、
    駆動信号で
    前記振動系を駆動する駆動手段と、
    前記駆動手段に供給する前記駆動信号を制御する制御手段と、
    を有し、
    前記制御手段は、
    前記振動系を所定周波数で振動させるときの、前記駆動信号の駆動位相と前記振動検出手段の検出結果による前記振動系の揺動位相との遅延位相差を目標遅延位相差として記憶し、
    駆動中に測定される、前記駆動信号の駆動位相と前記振動検出手段の検出結果による揺動位相との遅延位相差を、前記目標遅延位相差に略一致させる様に、前記駆動信号の駆動周波数を変更することを特徴とする揺動体装置。
  2. 前記制御手段は、
    前記揺動体の振動に含まれる周波数成分に対応する前記駆動信号の信号成分の周波数と該周波数成分の振幅との関係を測定し、該測定結果に基づいて前記所定周波数を決定することを特徴とする請求項1記載の揺動体装置。
  3. 前記振動系は、揺動可能に支持された第1の揺動体と第2の揺動体を少なくとも有し、略整数比の関係の基本共振周波数と倍波共振周波数を持ち、
    前記振動検出手段は、前記第1の揺動体の振動状態を検出し、
    前記駆動手段は、前記基本共振周波数又はその近傍の基本周波数の基本波信号成分と該基本周波数の整数倍の倍波周波数の倍波信号成分との合成波の駆動信号で前記振動系を駆動し、
    前記目標遅延位相差は、前記基本波信号成分と前記倍波信号成分の何れか一方の駆動位相と前記第1の揺動体の揺動位相との遅延位相差であることを特徴とする請求項1記載の揺動体装置。
  4. 前記目標遅延位相差は、前記基本波信号成分と前記倍波信号成分のうち、その周波数が前記共振周波数に近い方の信号成分の駆動位相と前記第1の揺動体の揺動位相との遅延位相差であることを特徴とする請求項3記載の揺動体装置。
  5. 前記制御手段は、
    前記第1の揺動体の振動に含まれる複数の周波数成分間の位相差が所定の値になる様に、前記基本波信号成分と前記倍波信号成分との間の位相差を制御し、前記基本波信号成分と前記倍波信号成分の2つの周波数の整数比を保ったまま周波数を変更し、
    前記第1の揺動体の振動に含まれる周波数成分に対応する前記駆動信号の信号成分の周波数と該周波数成分の振幅との関係を測定し、該測定結果に基づいて前記所定周波数を決定し、
    前記所定周波数で前記第1の揺動体を駆動するときの前記目標遅延位相差を検出して記憶手段に記憶させ、前記駆動中に測定される遅延位相差を、前記目標遅延位相差に略一致させる様に前記駆動信号の駆動周波数を変更することを特徴とする請求項3又は4記載の揺動体装置。
  6. 前記第1の揺動体の振動に含まれる複数の周波数成分間の位相差の前記所定の値はゼロであることを特徴とする請求項5記載の揺動体装置。
  7. 前記制御手段は、前記目標遅延位相差と、前記駆動中に測定される遅延位相差との差が所定閾値以上になるタイミングで、前記駆動信号の駆動周波数を変更することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の揺動体装置。
  8. 請求項1乃至7のいずれかに記載の揺動体装置を有し、前記揺動体は反射ミラーを持ち、光源からの光ビームを前記反射ミラーで偏向し、
    前記振動検出手段は、前記偏向された光ビームを所定の偏向角の位置で検出する様に配置された受光素子を含み、前記受光素子による光ビーム検出時間の間隔に基づいて前記揺動体の振動状態を検出することを特徴とする光偏向装置。
  9. 請求項8に記載の光偏向装置と光照射対象物とを有し、
    前記光偏向装置は、光源からの光ビームを偏向し、該光ビームを前記光照射対象物に入射させることを特徴とする光学機器。
  10. 前記制御手段は、前記光ビームを前記光照射対象物の非描画領域に入射させるときに、前記駆動信号の駆動周波数を変更することを特徴とする光学機器。
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