JP2009263753A - 高内部硬度レール - Google Patents

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Abstract

【課題】レール頭部表面から20mm内部に入った点でHB370以上の硬度を有し、かつ、レール頭部と柱部の境界領域内部における微小なマルテンサイト金属組織の生成を抑制し、内部まで硬度を高めたレールを提供する。
【解決手段】C:0.60〜0.86%、Si:0.10〜1.20%、Mn:0.40〜1.50%、Cr:0.05〜2.00%を含み、かつ、式Ceq=C+Si/10+Mn/4.75+Cr/5.0で定義されるCeqが1.00以上、式QP=(0.06+0.4C)×(1+0.64×Si)×(1+4.1×Mn)×(1+2.33×Cr)で定義されるQPが7.0以下をそれぞれ満たす鋼よりなり、レール頭部全面がパーライトの金属組織を呈し、レール頭頂表面を起点として20mm内部に入った点までの硬度がHB370以上であり、レール頭頂表面と該表面を起点として20mm内部に入った点の硬度差がHB30以下である高内部硬度レールとする。
【選択図】図4

Description

本発明は、重荷重鉄道で使用されるレールであって、特に、レール頭部の内部まで硬度を高めたパーライト系レールに関するものである。
海外の重荷重鉄道では、鉄道輸送の高効率化の手段として、列車速度の向上や列車積載重量の増加が図られており、このようなレール使用環境の過酷化に対応するレールとして、共析炭素鋼を用いたパーライト組織を呈した高強度(高硬度)レールが用いられている。
しかし、近年のより一層の高軸重化や高速輸送化のため、レールの磨耗速度も速くなっており、レールの交換頻度を増加させないようにするには、より大きな磨耗量まで使用可能なレールが望まれており、そのために、より内部まで均質で高硬度の頭部を有するレール、例えば、表面から20mm以上の高深度までHB370以上に高硬度化したレールの開発が必要となっている。
一般にパーライト系のレールでは、レール頭部を熱処理して高硬度化させ、耐摩耗性を向上させている。熱処理の際、Ac1点以上の温度から一定の冷却速度でレールを冷却した場合、頭部内部の冷却速度が頭部表面の冷却速度よりも遅くなるため、レール頭部表面からレール頭部内部にいくに従って硬度は低下していき、内部まで均質に高硬度化することはできない。
このような問題を解決して、内部まで高硬度化するための方法として、例えば、特許文献1には、Ar1点以上の温度からレール頭部の表面を起点として表面下5mm以内の領域がパーライト変態を開始するまで頭表面の冷却速度が1〜10℃/sで冷却した後、表面を起点として表面下20mm以上の領域がパーライト変態終了まで頭表面の冷却速度が2〜20℃/sで冷却する高深度高強度レールの製造法が開示されている。
また、特許文献2には、オーステナイト域温度以上の熱を保有する高温度レールの頭部を、冷却時間の経過とともに冷却媒体量を増加させながら、またはノズル距離を近づけながら、あるいは前記両者を同時に作動させながら、制御冷却するレールの熱処理方法が開示されている。
特許文献1の製造方法では、レール頭頂表面でのベイナイトやマルテンサイト金属組織の生成を抑制して、レール頭部全面をパーライト金属組織とし、レール頭頂表面から20mm以内における硬度差がHB30以下となるレールを製造している。また、特許文献2の製造方法でも、冷却媒体量を変化させることで頭部表層から少なくとも20mm以内の硬度差がHB30以下となるレールを製造している。
しかし、これらの技術では、高深度までHB370以上に高硬度化するために550℃以下の温度まで加速冷却する必要があるが、その際に、レール頭部と柱部の付け根にあたる両者の境界領域内部に微小なマルテンサイト金属組織(ミクロマルテンサイト)が生成するといった問題が発生することが、本発明者の研究によってわかった。
このミクロマルテンサイトは、パーライト組織と不整合で割れの起点となる可能性が高く、そのようなレールでは、内部まで高い硬度が得られていても、安全性の問題から実際の使用に供することはできない。
特開平9−241747号公報 特開昭64−87720号公報
そこで、本発明は、レール頭部表面から少なくとも20mm内部に入った点までHB370以上の硬度を有し、かつ、レール頭部と柱部の付け根にあたる両者の境界領域内部におけるミクロマルテンサイトの生成を抑制し、内部まで硬度を高めた高内部硬度レールを提供することを目的とする。
本発明らは、従来技術を用いて20mm以上の高深度までHB370以上に高硬度化するために550℃以下まで加速冷却する場合、レール頭部と柱部の付け根部分は、厚みが薄くなっており冷却速度が上がりやすいこと、そのため、加速冷却の終了温度が低下すると冷却過多となり、上記の付け根にあたるレール頭部と柱部の境界領域にミクロマルテンサイトが生成することを見出した。
そして、レール頭部内部及び頭部と柱部の境界領域におけるミクロマルテンサイトの生成を抑制したレールを得るためには、冷却終了時の頭部表面温度を下げすぎないことが重要であり、成分元素の含有量を特定範囲に調整することで、冷却終了温度を上げた場合でも深部まで十分に硬度を確保することができることを知見した。
本発明は、そのような知見に基づいてなされたもので、以下のようなレールとすることにより、上記課題を達成するものである。
質量%で、C:0.60〜0.86%、Si:0.10〜1.20%、Mn:0.40〜1.50%、Cr:0.05〜2.00%を含有し、下記式(1)で定義されるCeqが1.00以上、下記式(2)で定義されるQPが7.0以下をそれぞれ満足し、残部がFeおよび不可避的不純物である鋼よりなり、レール頭部全面がパーライトの金属組織を呈し、レール頭頂表面を起点として20mm内部に入った点までの硬度がHB370以上であり、レール頭頂表面と該表面を起点として少なくとも20mm内部に入った点の硬度差がHB30以下であり、かつ、レール頭部とレール柱部の境界領域がパーライト金属組織であることを特徴とする高内部硬度レール。
Ceq=C+Si/10+Mn/4.75+Cr/5.0 ・・・ 式(1)
QP=(0.06+0.4×C)×(1+0.64×Si)×(1+4.1×Mn)×(1+2.33×Cr) ・・・ 式(2)
ここで、C、Si、Mn、Crは、各元素の含有量の質量%の値である。
なお、本発明でレール頭部1とは、図1、2に示すように頭側部3の下面を延長した場合に互いに交わる点Aを通る水平線より上部に位置する部分をいい、レール頭部1とレール柱部2の境界領域4は、前記Aを含む前後15mmの領域をいう。
本発明によれば、レール頭部表層およびレール頭部内部のベイナイト金属組織およびミクロマルテンサイトを抑制した、高深度高強度レールを提供することが可能となる。
本発明らは、従来技術を用いて20mm以上の高深度までHB370以上に高硬度化するために550℃以下の温度まで加速冷却する場合、レール頭部と柱部の付け根部分は、厚みが薄くなっており冷却速度が上がりやすいこと、そのため、冷却終了温度が低下すると冷却過多となり、上記の付け根にあたる頭部と柱部の境界領域の内部にミクロマルテンサイトが生成することを見出した。
そして、レール頭部内部及び頭部と柱部の境界領域におけるミクロマルテンサイトの生成を抑制するため、冷却終了時の頭部表面温度が重要であることを知見した。
図3は、質量%でC:0.85%、Si:0.55%、Mn:1.15%、Cr:0.22%からなる鋼(Ceq=1.19、QP=4.7)を用いて形成したレールを、770℃から630℃の温度範囲を2.9℃/sの冷却速度で冷却し、次いで、その温度から550〜500℃の終了温度まで5.5℃/sの冷却速度で冷却し、以後放冷した場合について、レール頭部と柱部の境界領域におけるミクロマルテンサイトの生成の有無を調べたものである。図に示されるように、冷却終了時間が520℃未満になるとミクロマルテンサイトが生成していた。
次に、ミクロマルテンサイトが生成しないで、かつ、レール頭頂表面を起点として20mm内部に入った点での硬度がHB370以上であるような成分元素の含有量の条件について検討した。
その結果、20mm内部に入った点での硬度は、式Ceq=C+Si/10+Mn/4.75+Cr/5.0(C、Si、Mn、Crは、各元素の含有量の質量%の値である)で定義されるCeqの値で整理できることを見出した。
なお、この式の係数は、実験的に求めた20mm内部の点における各元素の硬度への寄与率に基づいている。
図4に、種々のCeqを有する鋼レールを530℃で冷却を終了した場合におけるCeqと20mm内部の点における硬度との関係を示す。図に示されるように、Ceqが1.00以上においてHB370以上が得られている。
以上の知見に基づく本発明について以下順次説明する。
本発明に係るレールに使用する鋼の化学成分について説明する。
本発明では、冷却速度の制御によって、頭部表面から20mm内部に入った点までの硬度がHB370以上となるようにするために、質量%でC :0.60〜0.86%、Si:0.10〜1.20%、Mn:0.40〜1.50%、Cr:0.05〜2.00%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を基本組成の鋼として用いる。
各元素の限定理由は以下のとおりである。
C:高炭素でパーライトの金属組織を呈した鋼は強度が強く、耐摩耗性が良好なことからレールに多く使用されている。このパーライト組織を得るためにCは0.60%以上含有させる必要がある。しかし、0.86%を超える量を含有させることはセメンタイト金属組織が多く析出して延性や靭性を低下させる問題がある。そこで、Cの含有範囲を0.60〜0.86%に限定した。
また、レール鋼として必要な強度を得るためにS、Mn、Crの含有範囲を以下のように限定した。
Si:Siはパーライト組織中のフェライトを強化するのに有効な成分として、0.1%以上を含有させる。しかし、含有量が1.20%を超えるとマルテンサイト組織を生成して鋼を脆化させる問題がある。従って、Siの含有範囲を0.10〜1.20%とした。
Mn:Mnはパーライト組織の強化に有効な元素であるが、0.40%より少ない含有量ではその効果が小さく、反対に、1.50%を超えるとマルテンサイト組織を生成させ、鋼を脆化させる。従って、Mnの含有範囲を0.40〜1.50%とした。
Cr:Crはパーライトの平衡変態点を上昇させ、結果としてパーライト組織を微細にする元素であり、その含有量が0.05%未満ではその効果が小さく、2.0%を超える過剰な添加では,マルテンサイト組織を生成させ鋼を脆化させる。従って,Crの含有範囲を0.05〜2.00%とした。
本発明では、以上の成分よりなる鋼を基本として用いるものであるが、以上の元素に加え、さらに種々の目的で次のような元素を次のような範囲で添加しても、基本的に本発明の効果を損なうことなく、それぞれの添加元素の効果を得ることができる。
Mo:0.01〜0.50%、V:0.005〜0.5000%、Nb:0.002〜0.050、B:0.0001〜0.0050%、Co:0.003〜2.00%、Cu:0.01〜1.00%、Ni:0.01〜1.00%、Ti:0.0050〜0.0500%、Mg:0.0005〜0.0200%、Ca:0.0005〜0.0150、Al:0.010〜1.00%、Zr:0.0001〜0.2000%、N:0.0060〜0.0200%。
各元素の添加量を上記の範囲とした理由は、以下の通りである。
Mo:Moはパーライト組織を微細にすることにより高硬度(高強度)化に寄与し、パーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素である。しかし、Mo量が0.01%未満ではその効果が小さく、また、Mo量が0.50%を超えると、延性に有害なマルテンサイト組織が生成するので、Mo添加量は0.01〜0.50%が望ましい。
V:Vは窒化物や炭窒化物を形成し、延性を向上させ、同時に、硬度(強度)を向上させるのに有効な元素である。しかし、V量が0.005%未満ではその効果が十分に期待できず、また、V量が0.500%を超えると、疲労損傷の起点となる粗大な析出物が生成するので、V添加量は0.005〜0.500%が望ましい。
Nb:Nbは窒化物や炭窒化物を形成し、延性を向上させ、同時に、硬度(強度)を向上させるのに有効な元素である。また、オーステナイトの未再結晶の温度域を上昇させ、未再結晶オーステナイト組織を安定化させる元素である。しかし、Nb量が0.002%未満ではその効果が期待できず、また、Nb量が0.050%を超えると、疲労損傷の起点となる粗大な析出物が生成するので、Nb添加量は0.002〜0.050%が望ましい。
B:Bは初析セメンタイト組織の生成を微細化し、頭部の硬度分布を均一化することにより、レールの延性低下を防止し、高寿命化を図る元素である。しかし、B量が0.0001%未満ではその効果は十分でなく、また、B量が0.0050%を超えると粗大な析出物が生成するので、B添加量は0.0001〜0.0050%が望ましい。
Co:Coはパーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素であり、さらに、レール頭部の摩耗面において、車輪との接触により形成されるころがり面直下のパーライト組織の微細なラメラ構造をより一層微細化し、耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、Co量が0.003%未満ではその効果が期待できない。また、Co量が2.00%を超えると、ころがり面にスポーリング損傷が発生するので、Co添加量は0.003〜2.00%が望ましい。
Cu:Cuはパーライト組織の硬度(強度)を向上させる元素である。しかし、Cu量が0.01%未満ではその効果が期待できない。また、Cu量が1.00%を超えると、耐摩耗性に有害なマルテンサイト組織が生成することから、Cu添加量は0.01〜1.00%が望ましい。
Ni:Niはパーライト鋼の高硬度(高強度)化を図る元素である。しかし、Ni量が0.01%未満ではその効果が著しく小さい。また、Ni量が1.00%を超えると、ころがり面にスポーリング損傷が発生する。このため、Ni添加量は0.01〜1.00%が望ましい。
Ti:Tiは窒化物や炭窒化物を形成し、延性を向上させ、同時に、硬度(強度)を向上させるのに有効な成分である。また、オーステナイトの未再結晶の温度域を上昇させ、未再結晶オーステナイト組織を安定化させる元素である。しかし、Ti量が0.0050%未満ではその効果が少ない。また、Ti量が0.0500%を超えると、粗大な析出物が生成してレールの延性が大きく低下するので、Ti添加量は0.0050〜0.0500%が望ましい。
Mg:Mgはオーステナイト粒やパーライト組織の微細化を図り、パーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、Mg量が0.0005%未満ではその効果は弱い。また、Mg量が0.0200%を超えると、Mgの粗大酸化物が生成し、レールの延性低下させるため、Mg添加量は0.0005〜0.0200%が望ましい。
Ca:Caは、パーライト変態の生成に寄与し、その結果、パーライト組織の延性を向上させるのに有効な元素である。しかし、Ca量が0.0005%未満ではその効果は弱い。また、Ca量が0.0150%を超えると、Caの粗大酸化物が生成し、レールの延性を低下させるので、Ca添加量は0.0005〜0.0150%が望ましい。
Al:0.010〜1.00%
Alはパーライト組織の高強度化と初析セメンタイト組織の生成抑制に有効な元素である。しかし、Al量が0.010%未満ではその効果が弱い。また、Al量が1.00%を超えると、粗大なアルミナ系介在物が生成し、レールの延性が低下するため、Al添加量は0.010〜1.00%が望ましい。
Zr:Zrは偏析部に生成する初析セメンタイト組織の生成を抑制する元素である。しかし、Zr量が0.0001%以下では、初析セメンタイト組織が生成し、レールの延性を低下させる。また、Zr量が0.2000%を超えると、粗大なZr系介在物が多量に生成し、レールの延性が低下するため、Zr添加量は0.0001〜0.2000%が望ましい。
N:Nはパーライト組織の延性を高めると同時に、硬度(強度)を向上させるのに有効な元素である。しかし、N量が0.0060%未満ではその効果は弱い。また、N量が0.0200%を超えると、鋼中に固溶させることが困難となり、疲労損傷の起点となる気泡が生成することから、N添加量は0.0060〜0.0200%が望ましい。なお、レール鋼においては、Nは不純物として最大0.0050%程度含まれる。したがって、N量を上記の範囲にするためには、Nを意図的に添加する必要がある。
次に、レール頭部に必要な硬度と金属組織、及び、それらを得るための条件について説明する。
高強度レールの頭部表面に求められる硬度はHB370以上であり、特に重荷重鉄道で用いられるレールに求められる硬度はHB370(AREMA:アメリカレール規格)となっている。そのため、必要な硬度をHB370以上とした。
レールを長期間安定的に使用するためには、頭部表面から摩耗限界となる深さまで均一な硬度のであることが必要である。頭部表面から内部にいたる程、硬度の低下が大きい場合には、レールを使用するにつれて摩耗の進展が速くなり好ましくない。摩耗進展の差を考慮し、頭頂表面と頭部内部の少なくとも20mm入った点の硬度差の最大はHB30とした。
以上のような硬度の条件は、図2で斜線で示すように、頭頂部及び頭部コーナ部の表面を基点として深さ20mmの範囲で少なくとも満たされるようにする。
そのために、本発明では、前記のように、下記式(1)で定義されるCeqの値が1.00以上になるようにC、Si、Mn、Crの含有量を制限して、上記硬度の条件を満たすようにする。
Ceq=C+Si/10+Mn/4.75+Cr/5.0 ・・・ 式(1)
ここで、C、Si、Mn、Crは、各元素の含有量の質量%の値である。
本発明では、さらに、レール頭部全面がパーライトの金属組織を呈し、かつ、レール頭部とレール柱部の境界領域の金属組織もパーライトとする。
高炭素でパーライトの金属組織を呈した鋼は強度が強く、耐摩耗性が良好なことから鉄道車両の重量増加に伴う、高軸重化や高速輸送化に対応することができる。一方で、頭部表面の冷却速度が過多になると、ベイナイト金属組織が生じるが、その組織は、パーライト組織と比較して硬度が低く、耐摩耗性にも劣っている。そのため、ベイナイト組織が生じると摩耗速度が速くなり、レール寿命が短くなるという問題が生じる。
また、従来技術では、レール頭部とレール柱部の境界領域にミクロマルテンサイトが生成する場合があった。このミクロマルテンサイトは、パーライト組織との不整合からレールの破壊の起点となる可能性があり、安全上その生成は抑制されなければならない。
そのために、本発明では、焼き入れ性の観点から、さらに下記式(2)で定義されるQPの値が7.0以下、好ましくは5.0以下になるように、C、Si、Mn、Crの含有量を制限する。
QP=(0.06+0.4×C)×(1+0.64×Si)×(1+4.1×Mn)×(1+2.33×Cr) ・・・ 式(2)
ここで、C、Si、Mn、Crは、各元素の含有量の質量%の値である。
これにより、レール頭部と柱部の境界領域におけるミクロマルテンサイトの生成を抑制し、レール頭部及び頭部と柱部の境界領域の全面の組織をパーライト金属組織とすることができる。
本発明に係るレールの製造方法について説明する。
転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉で溶製を行い、この溶鋼を造塊・分塊あるいは連続鋳造によって上記の化学組成を有する圧延用鋼片とする。この綱片をレールの形状に熱間圧延した後、引き続いてAr1点以上の温度から加速冷却されてレール頭部全面がパーライトの金属組織にされる。あるいは、熱間圧延した後に一旦冷却され、再度Ac1点以上に加熱された後に同様に加速冷却される。
加速冷却は、最初は、表層部と内部とで冷却速度の差が大きくならないように遅めの冷却速度で冷却して、表層をパーライト変態させ、続いて、内部を抜熱するために急冷する2段階で行うことにより、上記のような硬度の条件を満たすようにする。
その際の、各段階での加速冷却の温度範囲や冷却速度などは次のような条件が好ましい。
レール頭部の表層および内部において高硬度を得るためには、加速冷却の開始温度はオーステナイト温度域温度であるAc1点以上とする必要がある。第一段目の冷却速度は、表層部と内部とで冷却速度の差が大きくならないように、表層をパーライト変態させるために1℃/s〜5℃/sとするのがよい。この冷却速度が1℃/s未満では、パーライト変態までに非常に時間がかかり、オーステナイト粒が粗大化するなどのため好ましくなく、一方5℃/sを超えると表層にパーライト以外の異組織(ベイナイトなど)が生成するため好ましくない。
また、この速度で冷却する温度範囲は、Ac1点以上から600〜650℃の間の温度とするのがよい。頭部表面温度がこの温度範囲より下の温度になるまでこの冷却速度で冷却すると、表層からパーライト変態が開始する範囲が深くなって、内部の抜熱が困難になり好ましくない。
なお、熱間圧延終了後、加速冷却を開始するまでの冷却方法については適宜実施できるが、自然放冷で十分である。
以上のようにして、表層がパーライト変態を開始した後、つづいて内部を抜熱して頭部全体をパーライト組織とするために、2〜20℃/sのより速い冷却速度で冷却するのがよい。この冷却速度が2℃/s未満では内部の抜熱量を大きくすることはできず、また、20℃/sを超えた冷却速度では、表層と内部との冷却速度の差が大きくなるとともに、内部にパーライト以外の金属組織を呈するようになり好ましくない。
また、この冷却速度での冷却の終了温度は、レール頭部内部にミクロマルテンサイトやベイナイト組織を生成させないために、頭部表面温度で520℃以上とするのがよい。しかし、頭部表面温度が550℃以上の温度で冷却を終了させると高深度においてパーライト変態が終了する前に冷却を止めることとなり、十分な高深度硬度が得られなくなる。そのため、冷却終了温度は520℃〜550℃未満の間がよいが、より好ましい温度は520℃〜530℃である。
以上のような加速冷却の終了後は、そのまま室温まで放冷すればよい。
以下、本発明の実施例について説明する。なお、実施例で用いた条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するための一条件例であり、本発明はこの例に限定されない。
[実施例1]
種々の化学成分を有する圧延素材を熱間圧延によりレールに成形した後、または、熱間圧延後に一旦Ar1点未満の温度まで冷却したレールをAc1点以上の温度に再加然した後、レール頭部表面の温度がAr1点以上の温度から600℃〜650℃になるまでの間を冷却速度1〜5℃/sで冷却し、ついで520℃〜550℃未満の温度に到達するまでを冷却速度2℃〜20℃/sで冷却し、その後放冷し、評価に供した。
表1に供試レール鋼の化学成分を示す(なお、残部はFe及び不可避不純物である。)とともに、上記条件で製造されたレールにおけるレール頭部及び境界領域のミクロ組織、レール頭表面及び表面下20mm位置の硬さを示した。
表1に示されるように、本発明の条件を満たすものは、いずれも本発明で規定する硬さ及び組織の条件を満たしていた。
Figure 2009263753
[実施例2]
表1のA9鋼を用いて製造されたレールを、表2に示される種々の冷却条件で冷却した。
冷却後のレールにおけるレール頭部及び境界領域のミクロ組織、レール頭表面及び表面下20mm位置の硬さを、同じく表2に示した。
表2に示されるように、適切な冷却条件を採用することにより、本発明で規定する硬さ及び組織の条件を満たすレールが得られた。
Figure 2009263753
本発明の実施の態様に係るレールの断面を示す図である。 本発明の実施の態様に係る高硬度領域を示す図である。 加速冷却の終了温度と、レール頭部と柱部の境界領域におけるミクロマルテンサイトの生成の有無との関係を示す図である。 鋼のCeqと20mm内部の点における硬度との関係を示す図である。
符号の説明
1 レール頭部
2 レール柱部
3 レール頭側部
4 頭部と柱部の境界領域

Claims (1)

  1. 質量%で、C:0.60〜0.86%、Si:0.10〜1.20%、Mn:0.40〜1.50%、Cr:0.05〜2.00%を含有し、下記式(1)で定義されるCeqが1.00以上、下記式(2)で定義されるQPが7.0以下をそれぞれ満足し、残部がFeおよび不可避的不純物である鋼よりなり、レール頭部全面がパーライトの金属組織を呈し、レール頭頂表面を起点として20mm内部に入った点までの硬度がHB370以上であり、レール頭頂表面と該表面を起点として少なくとも20mm内部に入った点の硬度差がHB30以下であり、かつ、レール頭部とレール柱部の境界領域がパーライト金属組織であることを特徴とする高内部硬度レール。
    Ceq=C+Si/10+Mn/4.75+Cr/5.0 ・・・ 式(1)
    QP=(0.06+0.4×C)×(1+0.64×Si)×(1+4.1×Mn)×(1+2.33×Cr) ・・・ 式(2)
    ここで、C、Si、Mn、Crは、各元素の含有量の質量%の値である。
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