JP2009263540A - オレフィン系プラスチック製品 - Google Patents

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誠二郎 佐藤
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Abstract

【課題】ポリオレフィン系樹脂は極性基を持たないため塗装適性、印刷適性が低く、多材料との接着性も劣るため、これら改善するためのプライマー層を形成する方法が提案されているが、環境負荷の少ない水系エマルジョンを用いてプライマー層を形成した場合、プライマー層の耐水性、耐薬品性が低下したりプライマー層中から乳化剤がブリードして製品外観を低下させる等の問題があった。従来の課題を解決し、塗装適性、印刷適性、他材との接着性等に優れたオレフィン系プラスチック製品を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系基材表面に、非結晶性ポリオレフィンの水系エマルジョンを付着させ、加熱工程を経て形成した被膜を有するオレフィン系プラスチック製品。
【選択図】なし

Description

本発明は接着適性、印刷適性等に優れたオレフィン系プラスチック製品に関する。
ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体等のオレフィン系樹脂は、その優れた特性からフィルムやシート、繊維、種々の形状の成形物等の形態で、衣料、建築資材、自動車部品、家電部品、産業資材等の広範な分野で利用されている。しかしながらオレフィン系樹脂は極性基を持たないため、オレフィン系樹脂のシートやフィルム等のオレフィン系プラスチック製品は塗装適性や印刷適性、他の部材との接着性が低いという問題があった。このためオレフィン系プラスチック製品表面に化学処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等を施して、表面の塗装適性、印刷適性、接着適性等を高める方法が試みられているが、表面処理を行うための特殊な装置が必要となるばかりでなく、塗装適性、印刷適性、接着適性等の改良効果は必ずしも十分なものではなかった。このため近年、オレフィン系プラスチック基材表面に、オレフィン系樹脂組成物やイソシアネート系化合物によるプライマー層を形成することにより塗装適性、印刷適性、接着適性等を向上させる方法が提案されている。プライマー層形成用組成物として、不飽和ポリカルボン酸及び/又は酸無水物で変性された塩素化ポリオレフィンと、水酸化ナトリウム等の塩基性物質とからなる水性変性塩素化ポリオレフィン樹脂組成物(特許文献1)、ポリアルキレンオキサイド構造を有する特定溶解パラメータの物質を特定割合で含む水性ポリオレフィン樹脂組成物(特許文献2)、重量平均分子量2000のポリオレフィンセグメントと、重量平均分子量が500以上の官能性セグメントとが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合等で結合された特定のオレフィン系ブロック共重合体が水に分散された水性樹脂分散体(特許文献3)等のオレフィン系樹脂組成物が提案されている。イソシアネート系化合物としては(特許文献4)に提案されている。
特開平3−182534号公報 特開平6−256592号公報 特開2001−288372号公報 特開平7-195632号公報
オレフィン系樹脂組成物によるプライマー層を形成する場合、オレフィン系樹脂を有機溶媒に溶解させて塗布するよりも、水に分散させたエマルジョンとして塗布する方が安全衛生面、環境汚染の低減の面から好ましい。しかしながら特許文献1に記載のポリオレフィン系樹脂は、水系エマルジョンとして用いた場合でも、樹脂中に塩素を含むためダイオキシンによる環境問題を引き起こす虞がある。また特許文献1〜3のいずれも、分散粒子の粒径が十分に小さい安定なエマルジョンを形成するためには、多量の乳化剤を使用する必要があり、多量の乳化剤を含むエマルジョンを用いてプライマー層を形成した場合、プライマー層の耐水性や耐薬品性が低下したり、プライマー層中から乳化剤がブリードしてプラスチック製品の外観を低下させるという問題があった。更に従来の、オレフィン系樹脂の水系エマルジョンを塗布して形成したプライマー層は、オレフィン系プラスチック基材表面との密着強度に問題があり、プライマー層がオレフィン系プラスチック基材から剥離し易いという欠点があるため、塗装適性、印刷適性、接着適性等の物性が十分に優れたオレフィン系プラスチック製品が得られ難かった。また、イソシアネート系化合物の場合は水性にすることは困難であった。本発明は上記従来技術の欠点を解決するためになされたもので、特定のオレフィンの水系エマルジョンにより形成したプライマー層を有する接着適性、印刷適性等に優れたオレフィン系プラスチック製品を提供することを目的とするものである。
即ち本発明は、
(1)ポリオレフィン系基材表面に、非結晶性ポリオレフィンの水系エマルジョンを付着させ、加熱工程を経て形成した被膜を有することを特徴とするオレフィン系プラスチック製品、
(2)加熱工程における加熱温度が80〜200℃である上記(1)のオレフィン系プラスチック製品、
(3)ポリオレフィン系基材がフィルム状又はシート状である上記(1)又は(2)のオレフィン系プラスチック製品、
(4)ポリオレフィン系基材が不織布であり、非結晶性ポリオレフィンの水系エマルジョンを付着させた後、加熱工程を経て形成した被膜を有する上記(1)又は(2)のオレフィン系プラスチック製品、
を要旨とするものである。
本発明のオレフィン系プラスチック製品は、オレフィン系樹脂基材表面に非結晶性ポリオレフィンのエマルジョンを付着させ、加熱工程を経て形成したオレフィン系樹脂基材への密着性に優れた被膜を有することにより、表面への塗装適性、印刷適性に優れ、他のプラスチック材料等と接着する際の接着性にも優れ、容易に感熱、感圧接着することができる。またオレフィン系樹脂基材が不織布の場合、不織布に非結晶性ポリオレフィンの水系エマルジョンを付着させた後、加熱工程を経て被膜が形成されていると、不織布を構成する繊維間の接着強度が大幅に向上させることができ、不織布の引き裂き強度も向上させることができる等の効果を有する。
本発明において、オレフィン系樹脂基材としてはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体や、エチレン、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体等よりなるものが挙げられる。オレフィン系樹脂基材は、フィルム、シート、繊維、織布、不織布、編布、成形体等の何れの形態であっても良い。オレフィン系樹脂基材が不織布の場合、繊維長1〜30mmの繊維よりなるものが好ましい。
オレフィン系樹脂基材表面における被膜を形成するために用いる非結晶性ポリオレフィンのエマルジョンは、非結晶性ポリオレフィンを水に分散させたものである。非結晶性ポリオレフィンは、立体的な規則性がランダムな分子構造を有し、チーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒等の均一系触媒の存在下で、溶液法またはバルク法等の重合法によって製造される、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン3元共重合体等である。非結晶性ポリオレフィンの結晶化度は10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。本発明において用いる非結晶性ポリオレフィンは、プロピレン成分含有量が30重量%以上、好ましくは50〜90重量%のものがより好ましい。50%未満ではポリマー内部凝集力の低下があり、90%を超えると結晶性が出て柔軟性低下の恐れがある。また、数平均分子量15000〜50000であるものが好ましい。非結晶性オレフィン系樹脂の数平均分子量が15000未満であると、被膜の伸びが大きくなる傾向にあり、機械的強度が低下する。50000を超えるとエマルジョンの造膜性が低下する虞れがある。また非結晶性ポリオレフィンは、190℃における溶融粘度が0.4〜9Pa・s、環球法軟化点が80〜160℃、針入度計による針入度が10〜45dmm、動的粘弾性の測定によるガラス転移温度(Tg)が−40〜0℃のものが好ましい。
市販されている非結晶性ポリオレフィンとしては、米国HUNTSMAN社製の、RT2115、RT2180、RT2215、RT2280、RT2315、RT2330、RT2385、RT2535、RT2585、RT2715、RT2730、RT2732、RT2780、RT2830等のREXtac2000シリーズのオレフィン系樹脂、RT3180、RT3280、RT3315、RT3360、RT3385、RT3445、RT3460、RT3485、RT34105、RT3535、RT3585等のREXtac3000シリーズのオレフィン系樹脂、米国Eastman Chemical社製のEastoflex E1003等のEシリーズ、M1010等のMシリーズの樹脂、ドイツDegussa社製のVestplast700番シリーズ、800番シリーズ(エチレン・プロピレン・ブテン3元共重合体)等の樹脂が挙げられる。
非結晶性ポリオレフィンの水系エマルジョンは、加熱溶融した非結晶性ポリオレフィンを水に添加し、攪拌乳化することにより得られるが、乳化は60℃以上、より好ましくは70℃以上に加熱して行うことが好ましい。また非結晶性ポリオレフィンの安定なエマルジョンを得るために、乳化工程中で有機溶媒を用いても良い。例えば非結晶性ポリオレフィンを有機溶媒に溶解させて乳化する等の方法も採用することができるが、エマルジョン中における有機溶媒の含有量が1000ppm以下となるように使用することが好ましい。
非結晶性ポリオレフィンの水系エマルジョンを得る際に、必ずしも乳化剤を必要としないが、必要に応じて乳化剤を添加しても良い。乳化剤としては、カチオン系、アニオン系、ノニオン系の各界面活性剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロースや水性アクリル樹脂等の高分子分散剤が挙げられる。その中でもアニオン系界面活性剤であるアルキル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸カリウムなどのアルキル硫酸塩類、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸カリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸エステルカリウムなどのアルキルスルホコハク酸エステル塩類などが好ましい。これら乳化剤におけるアルキル基としては、炭素数が10〜30の直鎖状或いは分岐状のものが好ましく、炭素数が12〜18のものが特に好ましい。特にドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム塩が乳化剤として好適である。尚、乳化剤としては、2種以上の化合物を併用することもできる。乳化剤を用いる場合、乳化剤の添加量はエマルジョンの保存安定性及びプライマー等としての粘度等の面から、エマルジョン中の含有量が0.05重量%〜30%、より好ましくは0.1重量%〜10重量%となるように配合する。
非結晶性ポリオレフィンの水系エマルジョンには、本発明の効果を損なわない範囲で、被膜の乾燥速度を速めるための溶媒、粘度・粘性調整剤、防錆剤、消泡剤、濡れ改良剤、防カビ剤等の添加剤を必要量配合しても良い。また必要に応じて他の水性樹脂、例えば水性アクリル樹脂、水性ラテックス、水性ウレタン樹脂、水性ブロックイソシアネート、水性エポキシ樹脂、水性フェノール樹脂、水性アミノ樹脂、水性アルキド樹脂、水性塩化ゴム、水性シリコン樹脂等を配合することができる。これらの水性樹脂をベースにした水系粘着剤に非結晶性ポリオレフィンのエマルジョンを配合すると、被膜の粘着性をより安定化したり、品質を向上することができる。
本発明のプラスチック製品は、オレフィン系樹脂基材に非結晶性ポリオレフィンの水系エマルジョンを付着させた後、加熱工程を経て非結晶性ポリオレフィン系の被膜を形成させることで得ることができる。オレフィン系樹脂基材に非結晶性ポリオレフィンのエマルジョンを付着させる方法としては、非結晶性ポリオレフィンのエマルジョンを、オレフィン系樹脂基材に塗布、噴霧、含浸等の任意の方法を採用することができる。非結晶性ポリオレフィンをオレフィン系樹脂基材へ付着させる割合は、オレフィン系樹脂基材の形態等によっても異なるが、オレフィン系樹脂基材がフィルム状やシート状の場合、非結晶性ポリオレフィンの付着量(固形分換算値)が1g/m〜20g/mが好ましい。またオレフィン系樹脂基材が不織布の場合、非結晶性ポリオレフィンの付着量(固形分換算値)が繊維重量の3〜40重量%が好ましく、7〜20重量%がより好ましい。加熱工程はオレフィン系樹脂基材に付着させた非結晶性ポリオレフィンのエマルジョンを乾燥させる工程において同時に行っても良く、エマルジョンを乾燥させた後に行っても良い。加熱工程における加熱温度は80℃〜200℃が良いが、120℃〜150℃がより好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
非結晶性ポリオレフィンとしてプロピレンとブテン−1共重合体(Huntsman社製REXtac RT2780A)を加熱溶融した後、水に添加して機械攪拌してエマルジョンを得た。このエマルジョンをポリプロピレンフィルム表面に塗工した後、120℃で加熱処理して乾燥させ被膜を形成した。この被膜表面にセロハンテープを貼着した後、セロハンテープをフィルムに対して水平方向に引きはがし、被膜とフィルムとの剥離状態を試験したところ、被膜とフィルムとの間の界面での剥離は認められず、被膜の密着性は良好であった。
比較例1
塩素化ポリオレフィンのエマルジョンを実施例1と同様のポリプロピレンフィルム表面に塗工し、乾燥させて被膜を形成した。被膜の密着性を実施例1と同様に試験したところ、被膜とフィルムとの界面で一部剥離が認められた。
実施例2
実施例1で用いたと同様の非結晶性ポリオレフィンのエマルジョンを、ポリエチレンフィルム表面に塗工した後、120℃で加熱処理して乾燥させ被膜を形成した。この被膜の表面にセロハンテープを貼着して実施例1と同様の試験を行ったところ、被膜とフィルムとの間の界面での剥離は認められず、被膜の密着性は良好であった。
比較例2
比較例1で用いた塩素化ポリオレフィンのエマルジョンを、実施例2と同様のポリエチレンフィルム表面に塗工し、乾燥させ被膜を形成させた。被膜の密着性を実施例1と同様に試験したところ、被膜とフィルムとの界面で一部剥離が認められた。
実施例3
実施例1で用いたと同様の非結晶性ポリオレフィンのエマルジョンを、ポリプロピレンパネル表面に塗工した後、120℃で加熱処理して乾燥させ被膜を形成した。この被膜の密着性をクロスカットテストにより調べたところ、100箇所全てにおいて剥離は認められなかった。
比較例3
比較例1で用いた塩素化ポリオレフィンのエマルジョンを用い、実施例3と同様のポリプロピレンパネル表面に被膜を形成し、被膜の密着性をクロスカットテストにより調べた。100箇所中20箇所の剥離が認められた。
実施例4
実施例1で用いたと同様の非結晶性ポリオレフィンのエマルジョンを、ポリエチレンパネル表面に塗工した後、120℃で加熱処理して乾燥させ被膜を形成した。この被膜の密着性をクロスカットテストにより調べたところ、100箇所全てにおいて剥離は認められなかった。
比較例4
比較例1で用いた塩素化ポリオレフィンのエマルジョンを用い、実施例4と同様のポリエチレンパネル表面に被膜を形成し、被膜の密着性をクロスカットテストにより調べた。100箇所中25箇所の剥離が認められた。
実施例5
実施例1で用いたと同様の非結晶性ポリオレフィンのエマルジョンを加水により10%濃度に調整し、ポリプロピレン繊維(平均繊維長20mm)を使用した不織布原反に含浸させて、非結晶性ポリオレフィンのエマルジョンの付着量(固形分換算値)が繊維重量の10重量%になるように調整した。次に120℃で3分間乾燥させたのち室温に戻し計量した。この不織布を、流水中に10時間浸漬させた後、100℃で3分間乾燥後、計量したところ、流水中に浸漬する前の重量の98重量%であり、不織布を構成する繊維間の接着強度が高く、流水による不織布中の繊維の流出が少ないことが認められた。
比較例5
比較例1で用いた塩素化ポリオレフィンのエマルジョンを用い、実施例5と同様のテストを行ったところ、流水中に浸漬した後の不織布重量は、流水に浸漬前の75重量%であり、流水による不織布中の繊維の流出が多かった。

Claims (4)

  1. ポリオレフィン系基材表面に、非結晶性ポリオレフィンの水系エマルジョンを付着させ、加熱工程を経て形成した被膜を有すること特徴とするオレフィン系プラスチック製品。
  2. 加熱工程における加熱温度が80〜200℃である請求項1記載のオレフィン系プラスチック製品。
  3. ポリオレフィン系基材がフィルム状又はシート状である請求項1又は2記載のオレフィン系プラスチック製品。
  4. ポリオレフィン系基材が不織布であり、非結晶性ポリオレフィンの水系エマルジョンを付着させた後、加熱工程を経て形成した被膜を有する請求項1又は2記載のオレフィン系プラスチック製品。
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