以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
図1は、本実施形態に係るベルト式無段変速機を備えた車両の動力伝達部分における全体の構成を示す模式図である。図2は、本実施形態に係る内燃機関を示す断面図である。図1に示すように、車両100の動力伝達機構は、ベルト式無段変速機110と、動力発生手段としての内燃機関120と、トルクコンバータ140と、前後進切換機構150と、減速装置160と、差動装置170と、を備える。
図2に示すように、本実施形態に係る内燃機関120は、乗用車やトラック等の図1に示す車両100に搭載されて動力発生源となる。動力発生手段としての内燃機関120は、例えば、図2に示すように、円筒形状に形成されるシリンダ121の中心軸であるシリンダ軸線SL方向に往復運動するピストン122と、を備えるいわゆるレシプロ式の内燃機関である。
内燃機関120は、シリンダ121と、ピストン122と、燃料が燃焼する筒内燃焼空間123と、クランクシャフト124と、コネクティングロッド125と、吸気ポート126と、排気ポート127と、インジェクタ128と、点火プラグ129と、ECU(Electronic Control Unit)40と、を備える。
筒内燃焼空間123は、シリンダ121の内壁面とピストン122の端面と、シリンダ121に連結されるシリンダヘッドに形成される筒内天井部123aとによって囲まれる空間である。筒内燃焼空間123には、吸気ポート126と排気ポート127とが筒内天井部123aに開口として形成される。
吸気ポート126には、吸気通路130が連結される。吸気通路130は吸気ポート126とは反対側の端部が大気に開口する。これにより、吸気通路130と吸気ポート126とを介して、空気が筒内燃焼空間123に導かれる。
吸気通路130上には、空気の流れの上流側、つまり大気に開口する側の端部から順に、エアクリーナ131と、電子スロットル弁132と、エアフロセンサD01とが設けられる。エアクリーナ131は、大気から取り込んだ空気から塵を取り除く。電子スロットル弁132は、筒内燃焼空間123へ導く空気の量を調節する。エアフロセンサD01は、筒内燃焼空間123へ導かれる空気の量を検出する。
インジェクタ128は、例えば、吸気ポート126に燃料を噴射する噴射口が突出して設けられる。なお、インジェクタ128は、例えば、筒内燃焼空間123に燃料を噴射する噴射口が突出して設けられてもよい。インジェクタ128は、吸気通路130及び吸気ポート126を介して筒内燃焼空間123に供給される空気に対して燃料を噴射する。
点火プラグ129は、筒内燃焼空間123に、点火部が突出して設けられる。点火プラグ129は、筒内燃焼空間123内の燃料に対して点火する。これにより、ピストン122が、シリンダ121内でシリンダ軸線SL方向に移動する。
排気ポート127には、排気通路133が連結される。排気通路133は排気ポート127とは反対側の端部が大気に開口する。これにより、排気通路133と排気ポート127とを介して、筒内燃焼空間123内の排気ガスが筒内燃焼空間123から排出される。排気通路133上には、排気ガス浄化装置134が設けられる。これにより、排気ガスは大気に排出される前に、排気ガス浄化装置134によって浄化される。
コネクティングロッド125は、一方の端部がピストン122に連結され、他方の端部がクランクシャフト124に連結される。これにより、ピストン122の往復運動は、コネクティングロッド125を介してクランクシャフト124に回転運動として伝えられる。
ECU40は、内燃機関120や、図1に示すベルト式無段変速機110等を制御する。ECU40は、エアフロセンサD01や、その他の検出手段に電気的に接続されて、筒内燃焼空間123に導かれる空気の量や、その他の検出結果を取得する。なお、以下、筒内燃焼空間123に導かれる空気の量を吸入空気量という。
また、ECU40は、図2に示す電子スロットル弁132の開度を調節するアクチュエータ132aと、インジェクタ128と、点火プラグ129と、に電気的に接続されてこれらの動作を制御して内燃機関120の出力を制御する。
例えば、ECU40は、電子スロットル弁132の開度を開いて筒内燃焼空間123へ導く空気の量を増やし、エアフロセンサD01から取得した吸入空気量に基づいて、インジェクタ128から噴射する燃料量を現在噴射している量よりも増加させることにより、クランクシャフト124から取り出される回転のトルクを増加させる。
なお、本実施形態では、内燃機関120をレシプロ式の内燃機関として説明したが、内燃機関120はこれに限定されない。内燃機関120は、例えば、ロータリー式の内燃機関でもよい。また、内燃機関120は、燃焼形態も限定されず、例えば、ピストン122が2往復する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行う、いわゆる4ストロークエンジンでもよいし、ピストン122が1往復する間に一連の4行程を行う2ストロークエンジンでもよい。
次に、図1を用いて、車両100の全体の構成を説明する。トルクコンバータ140は、流体クラッチの一種であり、内燃機関120から取り出された回転を作動油を介して前後進切換機構150に伝える。また、トルクコンバータ140は内燃機関120から取り出されたトルクを増幅する。
前後進切換機構150は、トルクコンバータ140からの回転の回転方向を切り替えてベルト式無段変速機110へ前記回転を伝える。
ベルト式無段変速機110は、前後進切換機構150から入力される回転の回転速度を所望の回転速度に変更して出力する。なお、ベルト式無段変速機110の詳細な説明は後述する。
減速装置160は、ベルト式無段変速機110からの回転の回転速度を減速して差動装置170に前記回転を伝える。
差動装置170は、車両100が旋回する際に生じる旋回の中心側、つまり内側の車輪190と、外側の車輪190との回転速度の差を吸収する。
上記構成要素によって車両100の動力伝達機構は形成される。内燃機関120から取り出された回転は、クランクシャフト124を介してトルクコンバータ140に伝えられる。トルクコンバータ140によってトルクが増幅された回転は、ベルト式無段変速機110の入力軸としてのインプットシャフト141を介して前後進切換機構150に伝えられる。
前後進切換機構150によって回転方向が切り替えられた回転は、入力側のシャフトとしてのプライマリシャフト51を介してベルト式無段変速機110に伝えられる。ベルト式無段変速機110によって、回転速度を変更された回転は、減速装置160に伝えられる。
減速装置160によって減速された回転は、減速装置160のファイナルドライブピニオン161と、ファイナルドライブピニオン161に噛み合う差動装置170のリングギア171とを介して差動装置170に伝えられる。
差動装置170に伝えられた回転は、ドライブシャフト180に伝達される。差動装置170側とは反対側のドライブシャフト180には、車輪190が取り付けられる。ドライブシャフト180に伝えられた回転は車輪190に伝達される。これにより、車輪190は回転し、車輪190が路面に前記回転を伝達することにより車両100は走行する。
ベルト式無段変速機110は、プライマリプーリ50と、セカンダリプーリ60と、ベルト80とを含んで構成される。ベルト式無段変速機110は、プライマリプーリ50に回転が入力される。プライマリプーリ50に入力された回転は、セカンダリプーリ60に伝えられる。この時、前記回転は、その回転速度を調整される。
セカンダリプーリ60に伝えられた回転は、減速装置150に伝えられる。なお、入力軸であるプライマリシャフト51の回転速度を出力側のシャフトとしてのセカンダリシャフト61の回転速度で除算した値を変速比という。また、変速比を変更することを、以下、変速という。
図3は、本実施形態に係るプライマリプーリを示す断面図である。ベルト式無段変速機110は、プライマリプーリ50とセカンダリプーリ60とが、ほぼ同様に構成される。よって、本実施形態では、プライマリプーリ50を主に説明する。
プライマリプーリ50は、プライマリシャフト51と、プライマリ固定シーブ52と、プライマリ可動シーブ53と、プライマリプーリ油圧室54と、スプライン55と、プライマリ隔壁56とを備える。プライマリシャフト51は、図1及び図3に示すように、軸受81、軸受82によってインプットシャフト141の回転軸と同軸上に回転可能に支持される。ここで、セカンダリシャフト61は、図1に示すように、軸受83、軸受84によってプライマリシャフト51に対して平行に回転可能に支持される。
プライマリシャフト51は、筒状に形成される。図3に示すように、プライマリシャフト51は、回転軸RLを軸として回転する。プライマリ固定シーブ52は、通常は、プライマリシャフト51と一体に形成される。なお、プライマリ固定シーブ52は、プライマリシャフト51と別個に形成され、プライマリシャフト51に固定して設けられてもよい。このように構成されて、プライマリ固定シーブ52は、回転軸RLを軸にプライマリシャフト51と一体に回転する。ここで、回転軸RLと直交する方向を径方向という。プライマリ固定シーブ52は、プライマリシャフト51の外周から径方向に突出して形成される。
プライマリ可動シーブ53は、プライマリシャフト51とは別個に形成される。プライマリ可動シーブ53は、プライマリシャフト51が嵌め込まれる貫通孔を有して形成される。前記貫通孔の内周面には、スプライン55が形成される。プライマリ可動シーブ53は、スプライン55を介してプライマリシャフト51に嵌め込まれて取り付けられる。プライマリ可動シーブ53は、プライマリ固定シーブ52と対向してプライマリシャフト51に嵌め込まれる。
スプライン55は、プライマリ可動シーブ53がプライマリシャフト51上をプライマリシャフト51の回転軸RLに沿って摺動できるようにプライマリ可動シーブ53を支持する。加えて、スプライン55は、回転軸RLを軸とする回転をプライマリシャフト51からプライマリ可動シーブ53へ伝える。よって、プライマリ可動シーブ53は、スプライン55により、プライマリシャフト51上をスライドして移動すると共に、プライマリシャフト51と一体に回転する。
プライマリ固定シーブ52とプライマリ可動シーブ53との間には、略V字形状のプライマリ溝80aが形成される。また、プライマリ可動シーブ53がプライマリシャフト51上を摺動することにより、プライマリ固定シーブ52とプライマリ可動シーブ53との距離が変化する。ここで、セカンダリプーリ60にも、図1に示すように、プライマリ溝80aと同様のセカンダリ溝80bが形成される。
プライマリ溝80aとセカンダリ溝80bとの間には、金属製の無端ベルトであるベルト80が巻き掛けられている。ベルト80は、プライマリプーリ50の回転をセカンダリプーリ60へ伝える。
図3に示すように、プライマリプーリ油圧室54は、プライマリシャフト51と、プライマリ可動シーブ53と、プライマリ隔壁56とによって囲まれて形成される空間である。プライマリ隔壁56は、貫通孔を有して形成される。プライマリ隔壁56は、前記貫通孔にプライマリシャフト51が嵌め込まれてプライマリシャフト51に設けられる。プライマリ隔壁56は、プライマリ可動シーブ53を境にして、プライマリ固定シーブ52側とは反対側に設けられる。
プライマリプーリ油圧室54は、プライマリプーリ油圧室54に供給される作動油により、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ52側へ押す。これにより、プライマリシャフト51に沿って、プライマリ可動シーブ53がプライマリ固定シーブ52側へ押される。これにより、プライマリプーリ油圧室54は、プライマリ溝80aに巻き掛けられるベルト80に対して挟圧力を発生させる。
前記挟圧力により、プライマリ可動シーブ53とプライマリ固定シーブ52との距離が変化すると、セカンダリプーリ60が備えるセカンダリ固定シーブ62とセカンダリ可動シーブ63との距離もベルト80の張力を一定に保つように変化する。これにより、プライマリプーリ50に対するベルト80の接触半径と、セカンダリプーリ60に対するベルト80の接触半径とが変化する。このようにして、ベルト式無段変速機110は、内燃機関120から取り出された回転を変速する。
プライマリシャフト51は、第1油路OL01を有する。第1油路OL01は、一方の端部が作動油の供給元であるオイルタンクOTに接続され、他方の端部がプライマリプーリ油圧室54に開口する。これにより、第1油路OL01は、オイルタンクOTとプライマリプーリ油圧室54との間で作動油を流す。第1油路OL01は、プライマリシャフト51の回転軸RLに沿う方向に形成される複数の軸方向油路OL01aと、回転軸RLと直交する方向に形成される複数の径方向油路OL01bとを含んで形成される。
第1油路OL01の経路上には、オイルタンクOTからプライマリプーリ油圧室54に向かって順に、オイルポンプOPと、変速比制御側レギュレータORaと、作動油閉じ込み手段としての作動油閉じ込み装置10とが設けられる。オイルポンプOPは、オイルタンクOTからプライマリプーリ油圧室54に向けて作動油を送る。ここで、本実施形態では、オイルポンプの動力源は、内燃機関120から取り出された回転力である。
よって、オイルポンプOPが消費する動力が増加すると、クランクシャフト124の有するエネルギーが消費される。このエネルギーの消費を補うために、内燃機関120は、燃料の噴射量が増加する。このように、オイルポンプOPが消費する動力が増加すると、内燃機関120の燃料の消費量が増加する。
本実施形態では、このオイルポンプOPが消費する動力の増加を抑制して、内燃機関120の燃料の消費量の増加を抑制することを目的とする。なお、内燃機関120の燃料の消費量の増加とは、燃費の悪化と同意である。つまり、ベルト式無段変速機110は、オイルポンプOPが消費する動力の増加を抑制することにより、燃費の悪化を抑制する。
変速比制御側レギュレータORaは、プライマリプーリ油圧室54へ供給する作動油の圧力を調節する。また、変速比制御側レギュレータORaは、ECU40と電気的に接続される。なお、変速比制御側レギュレータORaは、プライマリプーリ油圧室54から作動油を排出する際に、オイルタンクOTに作動油を戻す。
作動油閉じ込み装置10は、プライマリプーリ油圧室54からの作動油の排出を制御する装置である。作動油閉じ込み装置10は、所定の期間、プライマリプーリ油圧室54からの作動油の排出を禁止する。なお、プライマリプーリ油圧室54からの作動油の排出が禁止されている状態を閉じ込み状態という。また、プライマリプーリ油圧室54からの作動油の排出が許可されている状態を開放状態という。
図4は、プライマリプーリ油圧室が閉じ込み状態での作動油閉じ込み装置を拡大して示す断面図である。図5は、プライマリプーリ油圧室が開放状態での作動油閉じ込み装置を拡大して示す断面図である。以下に、作動油閉じ込み装置10の一例を説明する。
作動油閉じ込み装置10は、ピストン動作用油圧室11と、シール部12と、弁体13と、ピストン14と、スプリング15とを備える。ピストン動作用油圧室11は、ピストン動作用油圧室11内の作動油の圧力によって、ピストン14に対して押圧力を与える。シール部12は、第1油路OL01内にテーパ面12aを有して形成される。テーパ面12aは、プライマリプーリ油圧室54に近づくほど向かい合うテーパ面同士の距離が大きくなる。
シール部12は、開口12bを有する。この開口12bを介して作動油がシール部12を行き来する。弁体13は、球状に形成される。弁体13の直径は、開口12bの直径よりも大きい。弁体13は、シール部12のテーパ面12aとプライマリプーリ油圧室54側から接触する。これにより、弁体13は、開口12bをプライマリプーリ油圧室54側から塞ぐ。
ピストン14は、受圧面14aと、棒状部14bとを備える。受圧面14aは、ピストン動作用油圧室11内に配置される。棒状部14bは、第1油路OL01内に配置される。棒状部14bは、一方の端部が、受圧面14aと連結される。また、棒状部14bは、他方の端部が、開口12bを貫通して弁体13と接触する、または連結される。これにより、ピストン14がピストン動作用油圧室11内の作動油の圧力によって、弁体13に近づく方向へ移動すると、ピストン14は、弁体13をシール部12から離れる方向へ押す。
スプリング15は、ピストン14に対して弁体13から離れる方向の力を与える。なお、前記力は、ピストン14が、弁体13に近づく方向に動いた後に、その前の状態、つまり、図4に示す閉じ込み状態に戻るために必要な最低限の力である。
ピストン動作用油圧室11には、作動油が供給される。以下に、前記作動油の供給経路を説明する。図2に示すように、プライマリシャフト51には、第1油路OL01と別の第2油路OL02が形成される。第2油路OL02は、一方の端部が作動油の供給元であるオイルタンクOTに接続され、他方の端部がピストン動作用油圧室11に開口する。これにより、第2油路OL02は、オイルタンクOTとピストン動作用油圧室11との間で作動油を流す。第2油路OL02は、プライマリシャフト51の回転軸RLに沿う方向に形成される複数の軸方向油路OL02aと、回転軸RLと直交する方向に形成される複数の径方向油路OL02bとを含んで形成される。
第1油路OL01の経路上には、オイルタンクOTからプライマリプーリ油圧室54に向かって順に、オイルポンプOPと、閉じ込み制御側レギュレータORbと、作動油閉じ込み装置10とが設けられる。オイルポンプOPは、オイルタンクOTからピストン動作用油圧室11に向けて作動油を送る。
閉じ込み制御側レギュレータORbは、ピストン動作用油圧室11に供給する作動油の圧力を調節する。また、閉じ込み制御側レギュレータORbは、後述するECU40と電気的に接続される。なお、閉じ込み制御側レギュレータORbは、ピストン動作用油圧室11から作動油を排出する際に、オイルタンクOTに作動油を戻す。
ここで、図4に示すように、受圧面14aの作動油の圧力を受ける面積を受圧面積Apとする。また、シール部12の弁体13と接触する部分は円形であり、前記円形の面積をシール部面積Acvとする。また、ピストン動作用油圧室11内の作動油の圧力を油圧Pcvとし、プライマリプーリ油圧室54内の作動油の圧力を油圧Psとする。また、スプリング15が発生させる力をスプリング力Fspとする。以下に、プライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態での各油圧室内の油圧の関係と、プライマリプーリ油圧室54が開放状態での各油圧室内の油圧の関係とを説明する。
閉じ込み状態の場合、弁体13は、図4に示すように、シール部12と接触する。これにより、油圧Psの大きさに関係なく、プライマリプーリ油圧室54からの作動油の排出は、作動油閉じ込み装置10により禁止される。
プライマリプーリ油圧室54を開放状態にする場合、油圧Pcvと受圧面積Apとの積が油圧Psとシール部面積Acvとの積にスプリング力Fを加えた値よりも大きくなるように、閉じ込み制御側レギュレータORbによって油圧Pcvが調節される。これにより、弁体13は、図4に示すように、ピストン14によってシール部12から離れる方向に移動する。弁体13がシール部12から離れると、プライマリプーリ油圧室54内の作動油は、開口12bを介してプライマリプーリ油圧室54内から排出される。
なお、プライマリプーリ油圧室54が開放状態の場合、作動油は、プライマリプーリ油圧室54内に向かって弁体13とシール部12のテーパ面12aとの間の隙間を流れる。この作動油の流れにより、弁体13がシール部12から離れれば、ピストン14が弁体13から離れても、プライマリプーリ油圧室54の開放状態は保たれる。つまり、ベルト式無段変速機110は、プライマリプーリ油圧室54を開放状態に保つのに油圧Pcvを必要としない。
また、ベルト式無段変速機110は、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にする場合、油圧Pcvと受圧面積Apとの積が、油圧Psとシール部面積Acvとの積にスプリング力Fを加えた値以下になるように、閉じ込み制御側レギュレータORbによって油圧Psを調節される。
ここで、弁体13は、シール部12の開口12bに嵌り込んでいる。よって、ベルト式無段変速機110は、プライマリプーリ油圧室54を開放状態に保つのに油圧Pcvを必要としない。つまり、ベルト式無段変速機110は、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態から開放状態へ切り替える際、及びプライマリプーリ油圧室54を開放状態から閉じ込み状態に切り替える際に油圧を必要とする。
なお、作動油閉じ込み装置10は、上述の構成に限定されない。作動油閉じ込み装置10は、所定の期間、プライマリプーリ油圧室54からの作動油の排出を禁止できる構成であればよい。例えば、図3に示す作動油閉じ込み装置10は、プライマリ隔壁56に設けられているが、第1油路OL01の経路上であれば設置場所は限定されない。作動油閉じ込み装置10は、例えば、プライマリシャフト51に設けられてもよい。
ここで、作動油閉じ込み装置10を備えないベルト式無段変速機110の場合、ベルト式無段変速機110の変速比を一定に保つ際は、プライマリプーリ油圧室54内の作動油の圧力を一定に保つためにオイルポンプOPを作動させる。しかしながら、本実施形態の場合、閉じ込み状態の際は、オイルポンプOPを作動させることなく、プライマリプーリ油圧室54内の圧力が一定に保たれる。つまり、オイルポンプOPを作動させることなく、ベルト式無段変速機110の変速比が一定に保たれる。
これにより、閉じ込み状態の間、ベルト式無段変速機110は、オイルポンプOPが消費する動力が減少する。結果として、ベルト式無段変速機110は、内燃機関120の燃料の消費量の増加が抑制される。
しかしながら、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にする条件によっては、ベルト式無段変速機110の閉じ込み状態と開放状態との切り替えが頻繁に発生するおそれがある。ベルト式無段変速機110の閉じ込み状態と開放状態との切り替えが頻繁に発生すると、閉じ込み状態と開放状態との切り替えに必要な油圧の分、オイルポンプOPを動作させるために必要な動力が増加する。結果として、ベルト式無段変速機110は、内燃機関120の燃料の消費量が十分に抑制できないおそれがある。
また、ベルト式無段変速機110の閉じ込み状態と開放状態との切り替えが頻繁に発生すると、ピストン14の移動回数が増える。すると、棒状部14bと弁体13との衝突回数も増加し、弁体13が摩耗して変形するおそれがある。また、弁体13とシール部12との衝突により、弁体13とシール部12とが摩耗して弁体13とシール部12とが変形するおそれがある。
これにより、ベルト式無段変速機110は、弁体13とシール部12との間に予期しない隙間ができるおそれがある。この隙間を作動油が流れて、ベルト式無段変速機110は、閉じ込み状態が正しく保たれないおそれがある。これによって、ベルト式無段変速機110は、実際の変速比とベルト式無段変速機110が目標とする変速比とのずれ量が増大し、余分にオイルポンプOPが動作する。結果として、ベルト式無段変速機110は、内燃機関120の燃料の消費量が十分に抑制できないおそれがある。
なお、ベルト式無段変速機110が目標とする変速比とは、車両100の走行条件からECU40が算出した変速比であって、ここでは、内燃機関120の燃料の消費量を抑制することを目的とした変速比である。
ここで、ベルト式無段変速機110は、プライマリシャフト51及びセカンダリシャフト61が回転しながら、プライマリ可動シーブ53及びセカンダリ可動シーブ63がそれぞれ移動することによって変速する。よって、ベルト式無段変速機110は、その構造上、プライマリシャフト51及びセカンダリシャフト61が回転していないと変速できない。よって、車輪190が回転していない場合、ベルト式無段変速機110は変速できない。
このため、例えば、ベルト式無段変速機110は、変速比が最小値の状態で車両100が停止すると、次に車両100が走行しはじめるときに、変速比を最小値であるため、車両100の発進が困難となる。また、車両100が走行し、車輪190が回転しないと、ベルト式無段変速機110は変速比を最大値側へ変更できない。このように、ベルト式無段変速機110は、変速比が最小値の状態で車両100が停止すると、ベルト式無段変速機110の変速比が最小値に設定されているために車両100の走行に不具合が生じるおそれがある。
よって、車両100が停止する際は、ベルト式無段変速機110は通常、車両100が停止する前に変速比を最大値に設定しておく必要がある。しかしながら、車両100が停止する直前にプライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態である場合、ベルト式無段変速機110は、まずプライマリプーリ油圧室54を開放状態としてからプライマリ可動シーブ53が移動される必要がある。
よって、ベルト式無段変速機110は、車両100が停止するまでに実行する手順が増えて、車両100が停止する前に変速比を最大値に設定することが困難になるおそれがある。よって、ベルト式無段変速機110は、次に車両100が走行しはじめるときに、ベルト式無段変速機110の変速比が最小値に設定されているため車両100の走行に不具合が生じるおそれがある。
そこで、ベルト式無段変速機110は上記の問題点に鑑みて、以下に記す構成と制御手順とを備える。ベルト式無段変速機110は、図1に示すように、車速センサD02と、変速比センサD03と、ECU40に組み込まれて構成される変速機制御装置20とを備える。
車速センサD02は、内燃機関120及びベルト式無段変速機110が搭載される車両100が走行する速度を検出する。なお、以下、車両100が走行する速度を、車速という。車速センサD02は、例えば、ドライブシャフト180に設けられる。車速センサD02は、ECU40と電気的に接続される。これにより、ECU40は、車速センサD02から車両100の現在の車速を取得する。
なお、車速センサD02は、ドライブシャフト180に設けられるものとして説明したが、本実施形態ではこれに限定されない。ベルト式無段変速機110は、ECU40が車両100の車速を取得できる形態であればよく、例えば、ECU40がクランクシャフト124の回転速度と、ベルト式無段変速機110の変速比、車輪190の径、等に基づいて車速を推定してもよい。
変速比センサD03は、入力側回転速度センサD03aと、出力側回転速度センサD03bとを含んで構成される。入力側回転速度センサD03aは、プライマリシャフト51に設けられて、プライマリシャフト51の回転速度を検出する。出力側回転速度センサD03bは、セカンダリシャフト61に設けられて、セカンダリシャフト61の回転速度を検出する。入力側回転速度センサD03a及び出力側回転速度センサD03bは、ECU40と電気的に接続される。これにより、ECU40は、変速比センサD03からベルト式無段変速機110の現在の変速比を取得する。
また、ベルト式無段変速機110は、上述のように、図2に示すエアフロセンサD01を備える。エアフロセンサD01は、吸入空気量を検出する。エアフロセンサD01は、ECU40と電気的に接続される。これにより、ECU40は、エアフロセンサD01から吸入空気量を取得し、前記吸入空気量に基づいて内燃機関120から取り出されるトルクを算出する。
以下、内燃機関120から取り出されるトルクを機関トルクという。ECU40は、具体的には、エアフロセンサD01から取得した吸入空気量に基づいて、内燃機関120が目標とする目標機関トルクを達成できる分の燃料量を、インジェクタ128から噴射させる。
ここで、ECU40は、車両100が目標とする目標駆動力に車両100の駆動力が達するように、目標機関トルクを設定する。ここで、前記目標機関トルクは、内燃機関120から車輪190に回転が伝わる間の動力損失分を考慮し、前記動力損失分を加えた機関トルクに設定されている。
このように、車両100の駆動力は、吸入空気量と相関関係にある。具体的には、車両100の駆動力は、エアフロセンサD01からECU40が取得した吸入空気量と、変速比センサD03からECU40が取得した変速比と、車輪190の径とを含むパラメータからECU40が算出する。
図6は、本実施形態に係る変速機制御装置の構成を示す概念図である。ECU40は、図1に示す内燃機関120、図3に示す変速比制御側レギュレータORa、閉じ込み制御側レギュレータORb等と電気的に接続され、これら内燃機関120、変速比制御側レギュレータORa、閉じ込み制御側レギュレータORb等の制御対象の動作を制御する。
ECU40は、例えば、図2に示す内燃機関120のインジェクタ128、点火プラグ129、電子スロットル弁132の開度を調節するアクチュエータ132a等とも電気的に接続される。これにより、ECU40は、インジェクタ128の燃料噴射量及び燃料噴射時期、点火プラグ129の点火時期、電子スロットル弁132の開度等を制御する。つまり、ECU40は、インジェクタ128、点火プラグ129、電子スロットル弁132等を制御することにより、機関トルクを制御する。
また、ECU40は、図2に示すエアフロセンサD01、図1に示す車速センサD02、入力側回転速度センサD03a、出力側回転速度センサD03b、その他にも内燃機関120の各検出手段類に電気的に接続され、これらの検出手段から各種の情報を取得する。
図6に示すように、変速機制御装置20は、ECU40の中央演算装置Epに組み込まれて構成されている。ECU40は、中央演算装置Epと、記憶部Emと、入力ポートINp及び出力ポートOUTpと、入力インターフェースIFin及び出力インターフェースIFoutとから構成される。なお、ECU40とは別個に、変速機制御装置20を用意し、これをECU40に接続してもよい。
変速機制御装置20は、情報取得部21と、比較判定部22と、演算部23と、変速比制御部24と、閉じ込み制御部25と、を含んで構成される。情報取得部21は、図2に示すエアフロセンサD01、図1に示す車速センサD02、入力側回転速度センサD03a、出力側回転速度センサD03b等の検出手段が検出した結果、後述する記憶部Emに格納された情報、機関制御部26が有する情報、等を取得する。
比較判定部22は、情報取得部21が各検出手段から得た数値や記憶部Emから取得した数値を比較する。演算部23は、情報取得部21が取得した数値に対して演算を行う。変速比制御部24は、プライマリシャフト51の回転速度が、目標とする回転速度になるように、ベルト式無段変速機110の変速比を制御する。閉じ込み制御部25は、図3に示す作動油閉じ込み装置10の動作を制御する。
中央演算装置Epは、変速機制御装置20に加えて、機関制御部26を有する。機関制御部26は、内燃機関120の運転制御を行う。中央演算装置Epと記憶部Emとは、バスBcとにより接続される。中央演算装置Epと入力ポートINpとは、バスBaとにより接続される。中央演算装置Epと出力ポートOUTpとは、バスBbとにより接続される。
変速機制御装置20の情報取得部21は、機関制御部26が有する内燃機関120の運転制御データを取得し、これを利用する。また、変速機制御装置20は、ベルト式無段変速機110の変速比を制御する手順を、機関制御部26があらかじめ備えている内燃機関120の運転制御ルーチンに割り込ませてもよい。
入力ポートINpには、入力インターフェースIFinが接続されている。入力インターフェースIFinには、図1に示す入力側回転速度センサD03a、出力側回転速度センサD03b、車速センサD02、エアフロセンサD01、その他各種検出手段が接続されている。
これらの各種検出手段から出力される信号は、入力インターフェースIFin内のアナログ/デジタルコンバータADCやディジタル入力バッファDIBにより、中央演算装置Epが利用できる信号に変換されて入力ポートINpへ送られる。これにより、中央演算装置Epは、ベルト式無段変速機110の変速比の制御や、内燃機関120の制御に必要な情報を取得できる。
出力ポートOUTpには、出力インターフェースIFoutが接続されている。出力インターフェースIFoutには、変速比制御側レギュレータORa、閉じ込み制御側レギュレータORb、インジェクタ128、点火プラグ129、電子スロットル弁132のアクチュエータ132a、その他内燃機関120における制御対象が接続されている。
出力インターフェースIFoutは、制御回路IFouta、制御回路IFoutb、制御回路IFoutc、制御回路IFoutd、制御回路IFoute等を備えており、中央演算装置Epで演算された制御信号に基づき、前記制御対象を動作させる。このような構成により、前記検出手段からの出力信号に基づき、ECU40の中央演算装置Epは、変速比制御側レギュレータORa、閉じ込み制御側レギュレータORb、インジェクタ128、点火プラグ129、電子スロットル弁132を制御して、ベルト式無段変速機110の変速比及び内燃機関120の出力を制御する。
記憶部Emには、ベルト式無段変速機110の変速比を制御する手順を含むコンピュータプログラムや制御データマップが格納されている。記憶部Emは、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成できる。
上記コンピュータプログラムは、中央演算装置Epへ既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、ベルト式無段変速機110の変速比を制御する手順を実現できるものであってもよい。また、この変速機制御装置20は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、同等の機能を実現するものであってもよい。
図7は、本実施形態に係るベルト式無段変速機の作動油閉じ込み装置を制御する手順を示すフローチャートである。図8は、プライマリプーリ油圧室を閉じ込み状態とする領域を示すマップである。
上述したように、ベルト式無段変速機110では、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にする条件によっては、ベルト式無段変速機110の閉じ込み状態と開放状態との切り替えが頻繁に発生したり、実際の変速比とベルト式無段変速機110が目標とする変速比とのずれ量が増大したりするおそれがある。結果として、ベルト式無段変速機110は、内燃機関120の燃料の消費量が増大するおそれがある。
そこで、ベルト式無段変速機110は、以下に記す手順で作動油閉じ込み装置10を制御することにより、内燃機関120の燃料の消費量が増大するおそれを抑制する。
ステップST101で、情報取得部21は、エアフロセンサD01から吸入空気量Qを取得する。また、情報取得部21は、変速比センサD03からベルト式無段変速機110の変速比γを取得する。また、情報取得部21は、記憶部Emから、あらかじめ記憶部Emに記憶されている車輪190の径Rを取得する。また、演算部23は、吸入空気量Qと変速比γと径Rとに基づいて駆動力Fを算出する。
次に、ステップST102で、情報取得部21は、車速センサD02から車速Cvを取得する。次に、ステップST103で、情報取得部21は、記憶部Emにあらかじめ記憶されている図8に示すマップM01から、領域A01を取得する。ここで、領域A01は、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態とする場合の車両100の駆動力Fと、車両100の車速Cvとを示す領域である。
具体的には、変速機制御装置20は、車両100の現在の駆動力Fと、車両100の現在の車速Cvとの交点が、領域A01内である場合に、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にする。なお、以下、車両100の駆動力Fと、車両100の現在の車速Cvとの交点を機関動作点とする。つまり、領域A01は、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にする場合の機関動作点の集合である。以下、領域A01の一例を詳細に説明する。
マップM01の縦軸は、車両100の駆動力Fを示す。また、マップM01の横軸は、車両100の車速Cvを示す。また、マップM01に示す最大駆動力Fmaxは、各車速Cvで車両100が出力できる最大の駆動力Fを示す。
動作線L01は、変速比γが最小値で車両100が0%の勾配を走行する場合の機関動作点を示す。動作線L02は、変速比γが最小値で車両100が所定値t%の勾配を走行する場合の機関動作点を示す。なお、所定値t%とは、例えば、5%〜7%程度の値である。ここで、勾配とは、車両100が走行する路面の斜度である。具体的には、水平方向の単位距離あたりの前記路面の高度の変化である。
まず、領域A01は、駆動力Fが0以上の範囲に設定される。駆動力Fが負の値の場合、車両100は主に制動中である。これにより、車両100は車速Cvが減少して減速する。この場合、ベルト式無段変速機110は、変速比制御部24が変速比γをベルト式無段変速機110が目標とする変速比に変更しようと変速比制御側レギュレータORaを制御する。なお、以下、変速比制御部24が変速比γをベルト式無段変速機110が目標とする変速比に変更しようと要求することを、変速を要求するという。
具体的には、変速比制御部24は、変速比制御側レギュレータORaを制御してプライマリプーリ油圧室54へ作動油を供給し、プライマリプーリ油圧室54内の油圧を現在の油圧よりも上昇させる。これにより、変速比制御部24は、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ52に近づく方向に移動させて、変速比γを現在の変速比よりも増加させる。
このように、現在の駆動力Fが0より小さい場合、変速比制御部24がベルト式無段変速機110に対して頻繁に変速を要求する。よって、車両100の駆動力Fが負の値の場合、変速機制御装置20は、ベルト式無段変速機110のプライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にすべきではない。これにより、領域A01は、駆動力Fが0以上の範囲に設定される。
次に、領域A01は、車速Cvが、上限側の所定値としての所定値a以下の範囲に設定される。所定値aは、車両100の現在の車速で車両100が出力できる最大の駆動力と、車両の現在の駆動力との差である余力の大きさに基づいて設定される。
例えば、車両100が動作線L01が示す0%勾配を走行するとする。このとき、マップM01に示す動作線L01と、最大駆動力Fmaxとの差が、車両100が有する余力となる。つまり、前記余力が0になったとき、車両100は、変速比γが最小値ではそれ以上走行できない。
つまり、所定値aは、車両100が、前記余力を十分に確保できるような大きさに設定される。ここで、前記余力が小さくなるほど、変速比制御部24のベルト式無段変速機110に対する変速の要求が頻繁に発生する。よって、所定値aは、変速比制御部24のベルト式無段変速機110に対する変速の要求が頻繁に発生することを抑制できる範囲に設定される。
ここで、所定値aの設定方法の一例を説明する。まず、試験やシミュレーション等により、前記余力の大きさ毎に、変速比制御部24のベルト式無段変速機110に対する変速の要求の平均回数を調べる。この試験結果から、変速比制御部24のベルト式無段変速機110に対する変速の要求が、例えば、一分間に所定回数以下になるような前記余力を決定する。所定値aは、このようにして求められる前記余力に基づいて決定される。
また、所定値aは、車両100が内燃機関120の出力によって走行できる車速のうち、比較的大きい車速になる。つまり、所定値aは、車両100がいわゆる高速で走行中であると判定できる車速である。なお、高速とは、車両100の仕様によってそれぞれ異なるが、例えば、毎時70キロメートル程度である。
図8に示すように、現在の車速Cvが所定値aよりも大きい場合、動作線L01と最大駆動力Fmaxとの差は、車速Cvが所定値a以下の場合よりも小さくなる。つまり、車両100は、車速Cvが所定値aよりも大きくなると、前記余力は減少する。前記余力が比較的小さくなると、変速比制御部24はベルト式無段変速機110に変速比を増加させるように変速を要求する可能性が高くなる。
このように、現在の車速Cvが所定値aよりも大きい場合、変速比制御部24がベルト式無段変速機110に対して頻繁に変速を要求する。一方、現在の車速Cvが所定値a以下であれば、変速比制御部24がベルト式無段変速機110に対して変速を要求する可能性は低下する。よって、車両100の車速Cvが所定値a以下の場合、変速機制御装置20は、ベルト式無段変速機110のプライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にすると好ましい。よって、領域A01は、車両100の車速Cvが所定値a以下の範囲に設定される。
次に、領域A01は、車速Cvが下限側の所定値としての所定値b以上の範囲に設定される。ここで、所定値bは、所定値aよりも小さい値である。所定値bは、例えば、以下に記す方法によって設定される。
まず、車両100が最も大きな制動力で急制動した際に、車両100が停止するのに要する時間を停止必要時間とする。ここで、前記停止必要時間は、制動を開始した時点での車両100の車速によって異なる。次に、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態から開放状態へと切り替えて、変速比を最小値から最大値に最も速く変更するのに要する時間を変速比変更必要時間とする。所定値bは、前記停止必要時間と、前記変速比変更必要時間とが等しくなるときの、車両100の車速以上の範囲である。
つまり、所定値bは、車両100が所定値b以上の車速で走行していれば、仮に車両100が急制動したとしても、車速が0になるよりも前に変速比を最大値に設定できる範囲の車速である。これにより、変速機制御装置20は、ベルト式無段変速機110の変速比が最小値に設定されているために車両100の走行に不具合が生じるおそれを抑制できる。
なお、所定値bは、少なくとも前記停止必要時間と、前記変速比変更必要時間とが等しくなる車速以上であればよい。例えば、前記停止必要時間と、前記変速比変更必要時間とが等しくなる車速が仮に毎時10キロメートルの場合、所定値bは、毎時30キロメートルに設定されてもよい。これにより、車両100が急制動したとしても、変速機制御装置20は、余裕を持って車速が0になるよりも前に変速比を最大値に設定できる。
また、所定値bは、車両100が内燃機関120の出力によって走行できる車速のうち、比較的小さい車速になる。つまり、所定値bは、車両100がいわゆる低速で走行中であると判定できる車速となる。
ここで、車両100が停止状態から発進し、いわゆる低速域から中速域に加速する場合、変速比制御部24は、ベルト式無段変速機110に対して頻繁に変速を要求する。逆に、車両100が中速域以上であれば、変速比制御部24がベルト式無段変速機110に対して変速を要求する可能性は減少する。
よって、車両100の車速Cvが所定値bより小さい場合、変速機制御装置20は、ベルト式無段変速機110のプライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にすると好ましい。これにより、領域A01は、車両100の車速Cvが所定値b以上の範囲に設定される。
次に、領域A01は、駆動力Fが、所定値c以下の範囲に設定される。所定値cは、最大駆動力Fmaxが動作線L02と交わるときの駆動力である。つまり、所定値cは、車両100が所定値t%の勾配を変速比γが最大値の状態で最も大きい車速Cvで走行する際の駆動力である。
上述したように、現在の駆動力Fと最大駆動力Fmaxとの差である余力が小さくなるほど、変速比制御部24は、ベルト式無段変速機110に対して変速を要求する可能性が高くなる。よって、領域A01は、最大駆動力Fmaxよりも小さい値であって、十分な前記余力を確保できる範囲に設定される。ここで、十分な前記余力とは、変速比制御部24がベルト式無段変速機110に対して変速を要求する可能性が比較的低いと判定できる余力である。
そこで、本実施形態では、領域A01は、例えば、駆動力Fが所定値c以下の範囲に設定される。所定値c、つまり、車両100が所定値t%の勾配を変速比γが最大値の状態で最も大きい車速Cvで走行する際の駆動力以下の範囲であれば、ベルト式無段変速機110は、現在の駆動力Fと最大駆動力Fmaxとの差を十分に確保できる。
なお、領域A01は、最大駆動力Fmaxよりも小さい値であればよい。但し、現在の駆動力Fと最大駆動力Fmaxとの差が大きいほど、変速比制御部24のベルト式無段変速機110に対する変速の要求の頻度は低下する。よって、領域A01は、現在の駆動力Fと最大駆動力Fmaxとの差を十分に確保できる範囲に設定される方が好ましい。
図9は、内燃機関の機関回転速度と、機関トルクとの関係を示すグラフである。ここで、図8に示す点P01は、図9に示す点P01と対応する。図9に示す最大機関トルクTmaxは、図2に示す電子スロットル弁132の開度が最も大きい時の各機関回転速度での機関トルクを示す。
ここで、機関回転速度が上昇すると最大機関トルクTmaxは、点P01までは上昇する。しかしながら、点P01以降は、機関回転速度が増加しても最大機関トルクTmaxは、それ以上上昇しない。つまり、図9に示す、点P01は、内燃機関120の機関回転速度に関係なく、内燃機関120から取り出される機関トルクのうち最も大きい機関トルクとなる。よって、所定値cは、内燃機関120から取り出せる最も大きい機関トルクを内燃機関120が出力するときの、車両100の駆動力Fである。
図10は、プライマリプーリ油圧室を閉じ込み状態とする他の領域を示すマップである。なお、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態とする場合の車両100の駆動力Fと、車両100の車速Cvとを示す領域は、領域A01に限定されない。プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態とする場合の車両100の駆動力Fと、車両100の車速Cvとを示す領域は、例えば、図10に示すマップM02の領域A02でもよい。
領域A02では、各車速Cvでの駆動力Fの上限が一定に設定されていない。領域A02では、各車速Cvでの駆動力Fの上限と、最大駆動力Fmaxとの差が、略一定になるように各車速Cvでの駆動力Fの上限が変動して設定される。
この場合、領域A02は、最大駆動力Fmax以下であって、十分な前記余力を確保できる。よって、現在の機関動作点が領域A02の範囲内であれば、変速機制御装置20は、変速比制御部24が頻繁にベルト式無段変速機110に対して変速を要求するおそれが低減される。
ここで、領域A01の詳細な説明に戻る。図8に示す最大駆動力Fmaxと、動作線L02との交点を点P01とする。また、車速Cvが所定値aのときの動作線L01上の点を点P02とする。本実施形態では、領域A01は、点P01と点P02とを、例えば直線で結んだ範囲に設定される。
これにより、領域A01は、最大駆動力Fmax以下であって、十分な前記余力を確保できる範囲に設定される。これにより、現在の機関動作点が領域A01の範囲内であれば、変速機制御装置20は、変速比制御部24が頻繁にベルト式無段変速機110に対して変速を要求するおそれが低減される。なお、点P01と点P02とは、例えば、曲線で結ばれてもよい。この場合、前記曲線は、最大駆動力Fmax以下であって、十分な前記余力を確保できる範囲に設定される。
このようにして、領域A01は設定される。次に、図7を用いて、ステップST104以降を説明する。ステップST104で、比較判定部22は、現在の機関動作点が領域A01内であるか否かを判定する。ステップST104で、現在の機関動作点が領域A01内である場合(ステップST104、Yes)、変速機制御装置20は、ステップST105の内容を実行する。
ステップST105で、閉じ込み制御部25は、図3に示すプライマリプーリ油圧室54が開放状態の場合は、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にする。具体的には、閉じ込み制御部25は、閉じ込み制御側レギュレータORbを制御して、油圧Pcvと受圧面積Apとの積が、油圧Psとシール部面積Acvとの積にスプリング力Fspを加えた値以下になるように、油圧Psを調節する。なお、このとき、プライマリプーリ油圧室54がすでに閉じ込み状態の場合は、閉じ込み制御部25は、プライマリプーリ油圧室54の閉じ込み状態を保つ。
これにより、ベルト式無段変速機110は、プライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態の間、プライマリプーリ油圧室54にオイルポンプOPによって圧力を与えなくても、変速比を固定できる。よって、ベルト式無段変速機110は、オイルポンプOPが消費する動力を低減できる。結果として、ベルト式無段変速機110は、内燃機関120の燃料の消費量の増加を抑制できる。
変速機制御装置20は、ステップST104で比較判定部22によって現在の機関動作点が領域A01内ではない(ステップST104、No)と判定されるまで、上記のステップST101−ステップST105を繰り返す。ステップST104で比較判定部22によって現在の機関動作点が領域A01内ではない(ステップST104、No)と判定されると、変速機制御装置20は、ステップST106の内容を実行する。
ステップST106で、閉じ込み制御部25は、図3に示すプライマリプーリ油圧室54を開放状態にする。具体的には、閉じ込み制御部25は、閉じ込み制御側レギュレータORbを制御して、油圧Pcvと受圧面積Apとの積が、油圧Psとシール部面積Acvとの積にスプリング力Fspを加えた値よりも大きくなるように、油圧Pcvを調節する。
上記構成により、変速機制御装置20は、機関動作点が図8に示すマップM01の領域A01からはずれた場合にプライマリプーリ油圧室54を開放状態にする。これにより、変速機制御装置20は、変速比制御部24がベルト式無段変速機110に対して変速を頻繁に要求する範囲で、プライマリプーリ油圧室54を開放状態にする。
よって、変速機制御装置20は、閉じ込み状態と開放状態との切り替えが頻繁に発生することを抑制できる。結果として、変速機制御装置20は、オイルポンプOPの動力が低減される分、内燃機関120の燃料の消費量の増加を抑制できる。また、変速機制御装置20は、作動油閉じ込み装置10の不具合の発生を抑制して内燃機関120の燃料の消費量の増加をさらに抑制できる。
なお、変速機制御装置20は、例えば、ステップST101、ステップST102、ステップST103の順に作動油閉じ込み装置10を制御する手順を実行するが、変速機制御装置20は、ステップST101、ステップST102、ステップST103の手順を実行する順番を限定されない。
図11は、本実施形態に係るベルト式無段変速機の作動油閉じ込み装置を制御する他の手順を示すフローチャートである。図11に示す作動油閉じ込み装置10の制御手順は、前記マップや前記マップに相当する演算式を用いない点に特徴がある。ベルト式無段変速機110の作動油閉じ込み装置10を制御する手順は、図7に示す手順に限定されない。変速機制御装置20は、図8に示すマップM01や、図10に示すマップM02に代えて、前記マップに相当する演算式を備えてもよい。また、変速機制御装置20は、前記マップや前記演算式に相当する判定手順によって、作動油閉じ込み装置10を制御してもよい。
なお、ステップST201は、図7に示すステップST101と内容が同一である。また、ステップST203は、図7に示すステップST102と内容が同一である。また、ステップST207は、図7に示すステップST105と内容が同一である。また、ステップST208は、図7に示すステップST106と内容が同一である。よって、ステップST201、ステップST203、ステップST207、ステップST208は、説明を省略する。
まず、変速機制御装置20は、ステップST201の手順を実行する。次に、ステップST202で、比較判定部22は、駆動力Fが0以上であるか否かを判定する。駆動力Fが0より小さい場合(ステップST202、No)、上述のように車両100は減速中であるため、変速機制御装置20は、ベルト式無段変速機110のプライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にすべきではない。
よって、ステップST208で、閉じ込み制御部25は、プライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態のときは、プライマリプーリ油圧室54を開放状態にする。また、閉じ込み制御部25は、プライマリプーリ油圧室54がすでに開放状態のときは、プライマリプーリ油圧室54の開放状態を保つ。
これにより、変速機制御装置20は、不適切な時期にプライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態となることを抑制できる。また、これによって、変速機制御装置20は、閉じ込み状態と開放状態との切り替えが頻繁に発生することを抑制できる。結果として、変速機制御装置20は、内燃機関120の燃料の消費量の増加を抑制できる。
また、変速機制御装置20は、作動油閉じ込み装置10の不具合の発生を抑制して内燃機関120の燃料の消費量の増加をさらに抑制できる。なお、ここでいう不適切な時期とは、変速機制御装置20がベルト式無段変速機110に対して頻繁に変速を要求する可能性がある時期である。
駆動力Fが0以上である場合(ステップST202、Yes)、変速機制御装置20は、ステップST203の手順を実行する。次に、ステップST204で、比較判定部22は、車速Cvが所定値a以下であるか否かを判定する。車速Cvが所定値aより大きい場合(ステップST204、No)、車両100はいわゆる高速で走行中である。よって、変速比制御部24は、ベルト式無段変速機110に対して頻繁に変速を要求する可能性がある。
よって、変速機制御装置20は、ベルト式無段変速機110のプライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にすべきではない。これにより、ステップST208で、閉じ込み制御部25は、プライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態のときは、プライマリプーリ油圧室54を開放状態にする。また、閉じ込み制御部25は、プライマリプーリ油圧室54がすでに開放状態のときは、プライマリプーリ油圧室54の開放状態を保つ。
これにより変速機制御装置20は、不適切な時期にプライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態となることを抑制できる。また、これによって、変速機制御装置20は、閉じ込み状態と開放状態との切り替えが頻繁に発生することを抑制できる。結果として、変速機制御装置20は、オイルポンプOPの動力が低減される分、内燃機関120の燃料の消費量の増加を抑制できる。また、変速機制御装置20は、作動油閉じ込み装置10の不具合の発生を抑制して内燃機関120の燃料の消費量の増加をさらに抑制できる。
車速Cvが所定値a以下である場合(ステップST204、Yes)、ステップST205で、比較判定部22は、車速Cvが所定値b以上であるか否かを判定する。車速Cvが所定値bより小さい場合(ステップST205、No)、車両100はいわゆる低速で走行中である。よって、変速比制御部24は、ベルト式無段変速機110に対して頻繁に変速を要求する可能性がある。
よって、変速機制御装置20は、ベルト式無段変速機110のプライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にすべきではない。これにより、ステップST208で、閉じ込み制御部25は、プライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態のときは、プライマリプーリ油圧室54を開放状態にする。また、閉じ込み制御部25は、プライマリプーリ油圧室54がすでに開放状態のときは、プライマリプーリ油圧室54の開放状態を保つ。
これにより変速機制御装置20は、不適切な時期にプライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態となることを抑制できる。また、これによって、変速機制御装置20は、閉じ込み状態と開放状態との切り替えが頻繁に発生することを抑制できる。結果として、変速機制御装置20は、オイルポンプOPの動力が低減される分、内燃機関120の燃料の消費量の増加を抑制できる。また、変速機制御装置20は、作動油閉じ込み装置10の不具合の発生を抑制して内燃機関120の燃料の消費量の増加をさらに抑制できる。
また、車両100の車速Cvが小さくなるほど、車両100が停止する可能性は高くなる。よって、変速機制御装置20は、車速Cvが所定値bより小さい場合にプライマリプーリ油圧室54を開放状態にすることで、車両100が停止する前に確実にプライマリプーリ油圧室54を開放状態にできる。
これにより、変速機制御装置20は、車両100が停止する直前にベルト式無段変速機110が実行する手順の増加を低減できる。よって、変速機制御装置20は、車両100が停止する前に変速比を最大値に設定することが困難になるおそれを低減できる。結果として、変速機制御装置20は、次に車両100が走行しはじめるときに、ベルト式無段変速機110の変速比が最大値に設定されているために車両100の走行に不具合が生じるおそれを抑制できる。
車速Cvが所定値b以上である場合(ステップST204、Yes)、ステップST206で、比較判定部22は、駆動力Fが所定値c以下であるか否かを判定する。駆動力Fが所定値cより大きい場合(ステップST206、No)、車両100は現在の駆動力Fと最大駆動力Fmaxとの差が比較的小さい。つまり、車両100は、前記余力が比較的小さい。よって、変速比制御部24は、ベルト式無段変速機110に対して頻繁に変速を要求する可能性がある。
よって、変速機制御装置20は、ベルト式無段変速機110のプライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にすべきではない。これにより、ステップST208で、閉じ込み制御部25は、プライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態のときは、プライマリプーリ油圧室54を開放状態にする。また、閉じ込み制御部25は、プライマリプーリ油圧室54がすでに開放状態のときは、プライマリプーリ油圧室54の開放状態を保つ。
これにより変速機制御装置20は、不適切な時期にプライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態となることを抑制できる。また、これによって、変速機制御装置20は、閉じ込み状態と開放状態との切り替えが頻繁に発生することを抑制できる。結果として、変速機制御装置20は、オイルポンプOPの動力が低減される分、内燃機関120の燃料の消費量の増加を抑制できる。また、変速機制御装置20は、作動油閉じ込み装置10の不具合の発生を抑制して内燃機関120の燃料の消費量の増加をさらに抑制できる。
なお、所定値cは、上述のように、最大駆動力Fmaxが動作線L02と交わるときの駆動力に限定されない。所定値cは、例えば、現在の車速Cvでの最大駆動力Fmaxから所定値dを減算したものでもよい。
ここで、所定値dは、変速比制御部24がベルト式無段変速機110に対して頻繁に変速を要求しないと判断できる前記余力に等しい。つまり、比較判定部22は、現在の駆動力が、変速比制御部24が十分に前記余力を確保できる範囲であるか否かをステップST206で判定すればよい。
駆動力Fが所定値c以下である場合(ステップST206、Yes)、ステップST207で、閉じ込み制御部25は、プライマリプーリ油圧室54が開放状態の場合は、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にする。また、閉じ込み制御部25は、プライマリプーリ油圧室54がすでに閉じ込み状態の場合は、閉じ込み制御部25は、プライマリプーリ油圧室54の閉じ込み状態を保つ。
これにより、変速機制御装置20は、プライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態の間、プライマリプーリ油圧室54にオイルポンプOPによって圧力を与えなくても、変速比を固定できる。よって、変速機制御装置20は、オイルポンプOPが消費する動力を低減できる。結果として、ベルト式無段変速機110は、内燃機関120の燃料の消費量の増加を抑制できる。
なお、変速機制御装置20が実行する手順であって、図11に示す手順は、所定値aと現在の車速とを比較する手順(ステップST204)と、所定値bと現在の車速とを比較する手順(ステップST205)と、所定値cと現在の駆動力とを比較する手順(ステップST206)とを含んで構成されるが、変速機制御装置20が実行する手順はこれに限定されない。
変速機制御装置20は、少なくとも、現在の駆動力Fが0以上の場合にプライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にすればよい。これにより、変速機制御装置20は、変速比制御部24が頻繁にベルト式無段変速機110に対して変速を要求するおそれがある不適切な時期にプライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態となることを抑制できる。
ここで、変速機制御装置20は、現在の駆動力Fが0以上であるかを判定する手順(ステップST202)に加えて、所定値aと現在の車速とを比較する手順(ステップST204)、所定値bと現在の車速とを比較する手順(ステップST205)、所定値cと現在の駆動力とを比較する手順(ステップST206)、を実行することにより、さらに以下に示す効果を奏する。
なお、変速機制御装置20は、ステップST202に加えて実行する手順を、ステップST204、ステップST205、ステップST206のうちから1つ選択して実行してもよいし、組み合わせて実行してもよい。変速機制御装置20は、ステップST202に加えて実行する手順を、前記手順の中から複数選択し組み合わせて実行する場合、その組み合わせは限定されない。
また、変速機制御装置20は、前記手順の中から1つ選択して実行するよりも、前記手順の中から複数選択し組み合わせて実行する方が、変速機制御装置20はより良好に以下に記す効果を奏する。また、変速機制御装置20は、前記手順を全て実行する方が最も好ましい。以下、変速機制御装置20がステップST204、ステップST205、ステップST206を実行することによって付加される効果を説明する。
変速機制御装置20は、ステップST204を実行し、車速Cvが所定値a以下である場合に、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にすると好ましい。これにより、変速機制御装置20は、変速比制御部24が頻繁にベルト式無段変速機110に対して変速を要求するおそれがある不適切な時期にプライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態となることを抑制できる。
これによって、変速機制御装置20は、閉じ込み状態と開放状態との切り替えが頻繁に発生することを抑制できる。結果として、変速機制御装置20は、オイルポンプOPの動力が低減される分、内燃機関120の燃料の消費量の増加を抑制できる。また、変速機制御装置20は、作動油閉じ込み装置10の不具合の発生を抑制して内燃機関120の燃料の消費量の増加をさらに抑制できる。
また、変速機制御装置20は、ステップST205を実行し、車速Cvが所定値b以上である場合に、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にするとより好ましい。これにより、変速機制御装置20は、変速比制御部24が頻繁にベルト式無段変速機110に対して変速を要求するおそれがある不適切な時期にプライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態となることを良好に抑制できる。結果として、変速機制御装置20は、ベルト式無段変速機110は、内燃機関120の燃料の消費量の増加を良好に抑制できる。また、変速機制御装置20は、車両100が停止する前に変速比を最大値に設定することが困難になるおそれも低減できる。
また、変速機制御装置20は、ステップST206を実行し、現在の駆動力Fが所定値c以下である場合に、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にするとより好ましい。これにより、変速機制御装置20は、変速比制御部24が頻繁にベルト式無段変速機110に対して変速を要求するおそれがある不適切な時期にプライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態となることをさらに抑制できる。また、結果として、変速機制御装置20は、ベルト式無段変速機110は、内燃機関120の燃料の消費量の増加をさらに抑制できる。