以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
第1図は実施の形態に係る和風便器の施工方法により和風便器が設置されたトイレルームの縦断面図、第2図はこのトイレルームの和風便器付近の拡大断面図、第3図は第2図のIII−III線に沿う断面図、第4図は和風便器とプレートとの一体物の製造方法を示す分解斜視図、第5図はプレートの嵌合口に和風便器を嵌合させた状態を示す斜視図、第6図は和風便器と嵌合口との間に接着剤を充填した後の斜視図、第7図は和風便器とプレートとの一体物の設置手順を示す分解斜視図、第8図は耐火カバー取付後の第3図と同様部分の断面図である。
なお、第2,3図においては、耐火カバーの図示は省略されている。
以下の説明において、前後方向及び左右方向は、それぞれトイレルーム内に設置された和風便器の使用者にとっての前後方向及び左右方向と合致する。
建物の床スラブ1のトイレルーム中央付近に、和風便器10を差し込みうる大きさの開口3が設置されている。第7図に示すように、この実施の形態では、該開口3は、和風便器3の前後方向に長い略長方形の平面視形状となっている。この開口3の前後方向の幅W1(第3図)は、通常、700mm程度とされ、左右方向の幅W2(第2図)は、通常、300mm程度とされている。
第1図の通り、床スラブ1の下側(階下)には排水管9が引き回されている。この排水管9の末端(上流端)は、該開口3内の所定位置(後述の和風便器10とプレート20との一体物Uを該開口3に設置したときに、この和風便器10の下面の排水口15と対面する位置)に上向きに配置されている。
この開口3の周囲の床スラブ1上に防水層4が形成され、この防水層4の上に、所定レベルまでコンクリートが打設されてコンクリート層5が形成されている。該防水層4及びコンクリート層5は、開口3を除くトイレルームの床スラブ1の上面の略全面にわたって形成されている。該防水層4は、アスファルトや防水シート等により構成されている。コンクリート層5を構成するコンクリートとしては、シンダーコンクリート等が挙げられるが、これに限定されない。コンクリートの代わりにモルタルを打設してモルタル層を形成してもよい。
防水層4の厚みは、通常、2〜10mmとされ、コンクリート層5の厚みは、通常、40〜70mmとされる。
第2,3図の通り、コンクリート層5の開口3に臨む面は、床スラブ1の開口3の内壁面と略一面に連なる略鉛直面となっている。
この開口3の周囲において、該コンクリート層5の上面には、周囲よりも一段低くなった低所6が形成されている。この低所6は、開口3の全周にわたって形成されている。この開口3を取り囲む低所6の全体の平面視形状は、該開口3の各辺に沿って延在した、該開口3と略相似形の長方形枠状となっている。
この低所6の深さD(第2図)は、10〜40mm、特に20〜30mmであることが好ましい。また、この低所6の開口3からの接離方向の幅W3(第2図)は、50〜100mmであることが好ましい。なお、この実施の形態では、該幅W3は、低所6の全周にわたって略一定となっているが、部分的に異なっていてもよい。
この低所6の形成方法は特定の方法に限定されない。例えば、床スラブ1上にコンクリートを打設してコンクリート層5を形成する際に、開口3の周囲の型枠に低所6を形成するための雄型を設けておくことにより、コンクリート層5に初めから低所6が形成されていてもよい。あるいは、コンクリート層5を開口3の周囲まで同一レベルにて形成した後、開口3の周囲においてコンクリート層5の上面を所定幅W3にて所定深さDまで切除することにより低所6を形成してもよい。
この実施の形態では、第2,3図のように、防水層4は、コンクリート層5の開口3に臨む端面を回り込んで低所6の底面にまで延在している。
第7図の通り、この開口3を覆う大きさのプレート20と和風便器10とが一体化された一体物Uが該開口3に上方から設置される。
該和風便器10は、陶器製のものであり、便鉢部11と、該便鉢部11の上縁から略水平に側方へ張り出したフランジ12と、該便鉢部11の前部から立設された前立部13と、該便鉢部11の底面に連通した排水トラップ14と、該排水トラップ14の下流端に設けられた排水口15とを備えている。
該便鉢部11は、前後方向に長い略楕円形の平面視形状を有している。フランジ12は、この便鉢部11の全周にわたって設けられている。排水トラップ14は、この便鉢部11の底面の前端部に連なっている。詳しい図示は省略するが、該排水トラップ14は、便鉢部11の下側において上下にジグザグに蛇行しつつ便鉢部11の前部側から後部側に延在しており、この排水トラップ14の下流側は、便鉢部11の後部下面から下方に向かって突出した管状部となっている。この管状部の下端に前記排水口15が設けられている。
なお、和風便器10の形状はこれに限定されない。例えば、和風便器10は、排水トラップ14が便鉢部11の底面の後部に連なっており、該排水トラップ14が便鉢部11の下側において便鉢部11の後部側から前部側に延在したタイプのものであってもよい。
この便鉢部11の前後方向の幅W4(第4図)は、通常、600〜700mmとされ、左右方向の幅W5(第4図)は、通常、260〜280mmとされている。また、この便鉢部11の外周面からのフランジ12の張り出し幅W6(第4図)は、通常、10〜20mm、好ましくは12〜15mmとされている。
この実施の形態では、第3図の通り、便鉢部11の前端部に、便鉢部11に便器洗浄水を供給するための給水部16が設けられている。この給水部16は、前立部13の前面から前方へ張り出した凸部よりなり、その上面に給水管接続口16a(第7図)が設けられている。
該給水管接続口16aに接続された給水管16b(第3,8図)から給水部16に供給された便器洗浄水は、便鉢部11の上縁に沿って設けられたリム給水路(図示略)を通って便鉢部11内に導入される。このリム給水路は、便鉢部11の略全周にわたって延設されており、該便鉢部11の内面に万遍なく便器洗浄水が供給されるようになっている。
この給水部16の下面は、第3,8図の通り、フランジ12の下面と略面一となっている。
この実施の形態では、前記プレート20は、コンクリート製であり、内部に補強材としてスチールワイヤ繊維等が埋め込まれた超高強度繊維強化コンクリート板状のものとなっている。なお、プレート20の材質及び構成はこれに限定されないが、腐食劣化しにくく、難燃性で且つ十分な強度を有するものであることが好ましい。
この実施の形態では、該プレート20は、開口3と略相似形の略長方形の平面視形状を有している。このプレート20の長辺方向(前後方向)の幅W7(第4図)は、開口3の前後方向の幅W1よりも大きく、且つこの幅W1に開口3の前後の低所6の幅2W3を合わせた寸法W1+2W3よりも小さなものとなっている。また、このプレート20の短辺方向(左右方向)の幅W8(第4図)は、開口の左右方向の幅W2よりも大きく、且つこの幅W2に開口3の左右の低所6の幅2W3を合わせた寸法W2+2W3よりも小さなものとなっている。この幅W7は、W1+100〜200mmであることが好ましく、幅W8は、W2+100〜200mmであることが好ましい。
この実施の形態では、プレート20の厚みT(第4図)は、このプレート20を開口3の周囲の低所6に載荷したときに、その上面がコンクリート層5の上面と略面一となる寸法となっている。即ち、このプレート20の厚みTは、低所6の深さDから防水層4の厚み及び後述の接着剤30の厚みを引いた寸法とほぼ等しいものとされている。具体的には、このプレート20の厚みTは、好ましくは10〜40mm、特に20〜30mmとされている。
なお、このプレート20の厚みTは、コンクリート層5の厚みや、和風便器10及びプレート20自体の強度を勘案して決定される。
このプレート20の中央付近に、和風便器10の便鉢部11が上方から嵌合可能な嵌合口21が設けられている。この嵌合口21は、該便鉢部11と略相似形の略楕円形の平面視形状を有している。また、この嵌合口21は、該便鉢部11は通過しうるが、フランジ12は通過しえない大きさとなっている。具体的には、この嵌合口21の前後方向の幅W9は、便鉢部11の前後方向の幅W4+0〜15mm、特にW4+5〜10mm(ただし、W9<W4+W6)であることが好ましく、嵌合口21の左右方向の幅W10は、便鉢部11の左右方向の幅W5+0〜15mm、特にW5+5〜10mm(ただし、W10<W5+W6)であることが好ましい。
この嵌合口21は、その長手方向をプレート20の長辺方向として形成されている。
次に、この和風便器10とプレート20との一体物Uの製造方法の一例について説明する。
第4図に示すように、地面や作業台などの上に、和風便器10を上下裏返しにして載置する。次いで、プレート20も上下裏返しにし、このプレート20を、和風便器10の上方(和風便器10を床に設置した状態における下部側。)から、嵌合口21に便鉢部11が入り込むように降下させ、フランジ12の下面(和風便器10を床に設置した状態における下面。以下、同様。)に載荷させる。この際、フランジ12の該下面に、シリコンコーキング等の弾性系のシーリング材23を塗布してもよい。第5図はこのようにプレート20をフランジ12の下面に載荷させた状態を示している。
次に、第6図に示すように、該嵌合口21の内周面と便鉢部11の外周面との間に接着剤22を充填する。この際、接着剤22を、該嵌合口21及び便鉢部11の全周にわたって、両者の間に隙間なく充填する。
このフランジ12とプレート20との間の接着剤及び嵌合口21と便鉢部11との間の接着剤22が硬化することにより、和風便器10とプレート20とが結合され、これらの一体物Uが完成する。
このように和風便器10及びプレート20を上下裏返しにしてこれらの一体物Uの製造作業を行うことにより、フランジ12の下面へのシーリング材23の塗付作業及び嵌合口21と便鉢部11との間への接着剤22の充填作業を容易に行うことができるため、一体物Uを容易に製造することができる。また、このように和風便器10及びプレートの下面側から嵌合口21と一体物11との間の隙間に接着剤22を充填することにより、これらを強固に結合することができると共に、フランジ12とプレート20との間を十分にシールすることができる。該シーリング材23は、フランジ12とプレート20との間の緩衝材としての役割も果たす。
さらに、仮に、和風便器10及びプレート20を裏返さずに上方からこれらの間に接着剤22を充填する場合には、これらの間を下から押さえ板で塞いでおき、上方からこれらの間に接着剤22を充填し、該接着剤22が硬化した後、押さえ板を取り外す作業が必要であるが、和風便器10及びプレート20を上下裏返してこれらの間に接着剤22を充填するようにすれば、フランジ12がこれらの間を下から塞いでいるため、このような押さえ板が不要である。
なお、和風便器10とプレート20との一体物Uの製造は、例えば、これらの施工現場への搬入前に、これらの製造工場等において行われてもよく、あるいは、和風便器10とプレート20とが別々の状態で施工現場に搬入され、施工現場にてこれらの一体物Uの製造が行われてもよい。
この一体物Uを設置するに当っては、開口3の周囲の低所6の底面及びその周囲の床スラブ1上面との段差面に接着剤30を塗付し、該開口3及び低所6に一体物Uを上方から嵌め込むように降下させ、プレート20の周縁部を該低所6の底面上に載荷させる。この際、和風便器10の下面の排水口15を該開口3内の前記排水管9に接続する。その後、必要に応じ、プレート20と低所6の周囲の段差面との間に接着剤30を充填し、これらの間を接着及びシールする。この接着剤30が硬化することにより、プレート20がコンクリート層5に接着され、このプレート20を介して和風便器10がトイレルームの床上に固定設置される。
なお、上記の接着剤22,30として、非透水性を有するものを用いることにより、和風便器10とプレート20との間、並びにプレート20と床スラブ1との間のシール性を高めることができる。これに対し、例えば接着剤22,30の代わりにコンクリートを用いた場合には、コンクリートが透水性を有することから、これらの間で水漏れを起こす可能性がある。
前述の通り、この実施の形態では、プレート20を低所6に載荷させた状態にあっては、このプレート20の上面とコンクリート層5の上面とが略面一状となる。
その後、和風便器10の給水管接続口16aに給水管16bを接続する。また、和風便器10の周囲のプレート20の上面及びコンクリート層5の上面に仕上げ層7を形成する。なお、この実施の形態では、該仕上げ層7はタイル(符号略)張りにより形成されている。ただし、仕上げ層7は、タイル以外の仕上げ材により形成されてもよい。
さらに、床スラブ1の下側から、和風便器10の下面側を覆うように、開口3に耐火カバー8を装着する。第8図の通り、排水管9は、耐火カバー8の下面の配管引出口8aを通して和風便器10の排水口15に接続されている。なお、この耐火カバー8の設置は、一体物Uの設置作業より前に行われてもよい。
これにより、和風便器10の設置が完了する。
この和風便器の施工方法にあっては、床スラブ1の開口3を覆う大きさのプレート20と和風便器10とを一体化させた一体物Uを該開口3に上方から設置するので、これらのプレート20と和風便器10との設置が一工程で済む。また、和風便器10の設置後に、該和風便器10とプレート20との間に床スラブ1の下側(階下)から接着剤22を充填するような煩わしい作業が不要である。さらに、仮に、プレート20と和風便器10とを別々に設置し、床スラブ1の上側からこれらの間に接着剤22を充填する場合には、これらの間又は開口3を階下から押さえ板で塞いでおき、床スラブ1の上方からこれらの間に接着剤22を充填し、該接着剤22が硬化した後、押さえ板を取り外す作業が必要であるが、和風便器10及びプレート20が予め一体物Uとされているので、このような作業は不要である。そのため、施工作業が簡単である。また、接着剤22の量も少なくて済む。
また、このように和風便器10とプレート20とを一体化させて一体物Uとすることにより、和風便器10の下面側からも嵌合口21と便鉢部11との間に接着剤22を充填することができるので、これらの間の接着性も良好なものとすることができる。
また、和風便器10とプレート20とを一体物Uとすることにより、この実施の形態のように、床スラブ1の上に防水層4を設け、その上にコンクリートを打設してコンクリート層5を形成した後でも、このコンクリート層5の上に該一体物Uのプレート20を載荷させるようにして和風便器10を設置することができる。即ち、この和風便器の施工方法によれば、トイレルームの内装工事や床仕上げ工事と同時期まで、和風便器10の施工工程を後回しにすることができる。そのため、施工スケジュールを立てる際の自由度が高い。
なお、プレート20は、非透水性の材料にて構成されていることが好ましい。このように構成することにより、床スラブ1上に防水層4を設けなくても、モップ等での水拭き清掃程度では階下への漏水に耐えうる床構造を容易に構築することができる。
この実施の形態では、床スラブ1の開口3の周囲においてコンクリート層5に段落し状の低所6が設けられており、この低所6にプレート20を載荷するようにしているので、一体物Uが容易に且つ確実に位置決めされる。また、プレート20の上面を容易にコンクリート層5の上面と略同レベルとすることができる。
また、床スラブ1の開口3の範囲内でプレート20の位置を前後左右に微調整することができるので、和風便器10の位置を微調整することも可能となる。
上記の和風便器の施工方法は一例であり、床躯体の構成やプレート20の設置構造、給水管16bの取り回し、排水構造などは上記以外とすることができる。
以下に、第9〜17図を参照して別の実施の形態について説明する。第9〜14図は、それぞれ、別の実施の形態に係る和風便器の施工方法により和風便器が設置されたトイレルームの床の該和風便器付近の断面図である。第15図は別の排水構造を示すトイレルームの縦断面図である。第16図はプレートの別の構成例を示す、和風便器とプレートとの一体物の縦断面図である。第17図は別の給水管接続構造を示すトイレルームの縦断面図である。なお、第9〜15図及び第17図においては、耐火カバー8及びシーリング材23の図示が省略されている。
[第9図の実施の形態について]
第9図の実施の形態では、床スラブ1の上面に直接的にプレート20が載荷され、このプレート20の周囲の床スラブ1上に、該プレート20の上面と略同レベルまでコンクリートが打設されてコンクリート層5が形成されている。
この第9図の実施の形態における和風便器10の設置手順は次の通りである。
まず、開口3の周囲の床スラブ1の上面に接着剤30を塗付し、次いで和風便器10とプレート20との一体物Uを、開口3の上方から、該和風便器10の下部が該開口3に差し込まれるように降下させ、プレート20の周縁部を該開口3の周囲の床スラブ1の上面に載荷させる。このプレート20と床スラブ1の上面との間の接着剤30が硬化することにより、プレート20が床スラブ1に接着され、このプレート20を介して和風便器10が床スラブ1上に固定設置される。
その後、このプレート20の周囲の床スラブ1上に、該プレート20の上面と略同レベルまでコンクリートを打設してコンクリート層5を形成する。この際、床スラブ1上に防水層4を形成してもよい。このコンクリート層5の硬化後、和風便器10の周囲のプレート20上及びコンクリート層5上に仕上げ層7を形成する。また、和風便器10の給水管接続口16aに給水管16bを接続する。
これにより、第9図に示す和風便器設置構造が構築される。
この実施の形態のその他の構成は第1〜8図の実施の形態と同様であり、第9図において第1〜8図と同一符号は同一部分を示している。
なお、床スラブ1の上面のうち、開口3の周囲のプレート20が重なる部分を除いた領域上に、先にコンクリート層5を該プレート20と略同厚みにて形成しておき、その後、このコンクリート層5が形成されていない開口3の周縁部にプレート20を上方から嵌め込むようにして和風便器10とプレート20との一体物Uを設置するようにしてもよい。
[第10図の実施の形態について]
第10図の実施の形態でも、床スラブ1上に直接的にプレート20が載荷されている。この実施の形態では、開口3の周囲において床スラブ1の上面に段落し状の低所6が設けられ、この低所6にプレート20が嵌合している。この低所6の構成及び形成方法は、前述の第1〜8図の実施の形態と同様である。この実施の形態では、床スラブ1上に、直接的に仕上げ層7が形成されている。
この実施の形態における和風便器10の設置手順は次の通りである。
まず、開口3の周囲の低所6の底面及びその周囲の段差面に接着剤30を塗付し、和風便器10とプレート20との一体物Uを該開口3及び低所6に上方から嵌め込むように降下させ、プレート20の周縁部を低所6の底面上に載荷させる。この際、プレート20と床スラブ1(低所6)との間に防水層4が形成されてもよい。この防水層4は、床スラブ1の上面にまで連続して形成されてもよい。プレート20の設置後、床スラブ1の上面からプレート20の上面にかけて防水層4が形成されてもよい。なお、この実施の形態でも、プレート20を低所6に載荷した状態にあっては、プレート20の上面と床スラブ1の上面とが略面一状となる。その後、接着剤30が硬化することにより、プレート20が床スラブ1に接着され、このプレート20を介して和風便器10が床スラブ1上に固定設置される。
その後、和風便器10の周囲のプレート20上及び床スラブ1上に仕上げ層7を形成する。また、和風便器10の給水管接続口16aに給水管16bを接続する。
これにより、第10図に示す和風便器設置構造が構築される。
この実施の形態のその他の構成は第1〜8図の実施の形態と同様であり、第10図において第1〜8図と同一符号は同一部分を示している。
[第11図の実施の形態について]
第11図の実施の形態では、プレート20の下面に、上下方向に螺進可能なレベル調整用ボルト40が設けられている。詳しい図示は省略するが、この実施の形態では、プレート20の四隅付近に、それぞれ該プレート20を上下方向に貫通するボルト挿通孔23が設けられており、これらのボルト挿通孔23にそれぞれプレート20の下面側からレベル調整用ボルト40の上端側が挿入されている。符号40aは、各レベル調整用ボルト40の下端に回転可能に取り付けられた、床スラブ1の上面に接地する足部を示している。
この実施の形態では、第11図の通り、プレート20の下面に各ボルト挿通孔23と同心状にそれぞれ凹部(符号略)が設けられており、これらの凹部にそれぞれナット40bが嵌合している。各レベル調整用ボルト40は、それぞれこのナット40bに螺合している。なお、該凹部は略六角形の平面視形状を有しており、この凹部に嵌合したナット40bは、レベル調整用ボルト40と共回りしないようになっている。
また、この実施の形態では、各レベル調整用ボルト40の上端面にすり割り状のドライバ係合溝(符号略)が設けられており、プレート20の上面側から各ボルト挿通孔23にドライバ(図示略)を差し込んでこのドライバ係合溝に係合させ、該ドライバを回すことにより、各レベル調整用ボルト40を上下に螺進させてプレート20のレベル調整を行うことができるようになっている。
なお、レベル調整用ボルト40の構成や配置、並びにレベル調整方法はこれに限定されない。
この実施の形態における和風便器10の設置手順は次の通りである。
まず、床スラブ1の開口3の周縁部に、各レベル調整用ボルト40を介して和風便器10とプレート20との一体物Uを載荷させる。次いで、各レベル調整用ボルト40の高さを調整し、プレート20の上面が所定高さにて略水平となるようにレベル調整する。
この際、プレート20の下面と床スラブ1の上面との間に、これらの間の隙間を塞ぐ閉鎖部材41を介在させる。この閉鎖部材41は、開口3の全周を取り囲むように設置される。
その後、このプレート20と床スラブ1の上面との間及びプレート20の周囲の床スラブ1上に、該プレート20の上面と略同レベルまでコンクリートを打設してコンクリート層5を形成する。このコンクリート層5が硬化した後、和風便器10の周囲のプレート20上及びコンクリート層5上に仕上げ層7を形成する。なお、この際、必要に応じ各ボルト挿通孔23をプレート20の上面側からモルタルや接着剤等で埋める。また、和風便器10の給水管接続口16a(第7図参照)に給水管16bを接続する。
これにより、第11図に示す和風便器設置構造が構築される。
この実施の形態のその他の構成は第1〜8図の実施の形態と同様であり、第11図において第1〜8図と同一符号は同一部分を示している。
この実施の形態によれば、プレート20の水平出し及び高さ調整を容易に且つ正確に行うことができる。
[第12図の実施の形態について]
前述の各実施の形態では、プレート20の上面は凹凸のない平坦面であり、和風便器10のフランジ12の下面と仕上げ層7(タイル)の下面とが同一レベルとなっているが、本発明では、フランジ12の下面が仕上げ層7の下面よりも高位となるように構成してもよい。
第12図の実施の形態では、プレート20の上面のうち嵌合口21の周縁部に、周囲よりも一段高くなった凸段部24が形成されており、この凸段部24上に和風便器10のフランジ12が載荷されている。この凸段部24は、嵌合口21の全周にわたって設けられている。この実施の形態では、該凸段部24のプレート20上面からの突出高さは、第12図の通り、仕上げ層7を構成するタイルの厚さと略同一寸法となっている。なお、凸段部24の突出高さはこれに限定されない。
この実施の形態のその他の構成は第10図の実施の形態と同様であり、第12図において第10図と同一符号は同一部分を示している。
この実施の形態における和風便器10の設置手順も第10図の実施の形態と同様である。
この実施の形態によれば、和風便器10の設置レベルが仕上げ層7の上面と略同一レベルとなっている和風便器設置構造が構築される。
なお、第1〜8図の実施の形態、並びに第9〜11図の各実施の形態においても、プレート20の上面に凸段部24を設けて和風便器10の設置レベルが仕上げ層7の上面と同一レベルになるように構成してもよい。
[第13図の実施の形態について]
上記の実施の形態では、和風便器10の周囲のプレート20の上面とコンクリート層5又は床スラブ1の上面とを略面一状とし、該プレート20の上面からコンクリート層5又は床スラブ1の上面にかけて仕上げ層7を形成しているが、本発明においては、和風便器10の周囲のプレート20の上面がコンクリート層5又は床スラブ1の上面よりも仕上げ層7の厚み分だけ高くなるようにプレート20を設置し、このプレート20の周囲のコンクリート層5又は床スラブ1の上面にのみ仕上げ層7を形成するようにしてもよい。
第13図は、第9図の実施の形態をこのように変更した例を示しているが、第1〜8図の実施の形態、並びに第10〜12図の各実施の形態においても、この実施の形態と同様に構成してもよい。
なお、このように構成した場合、和風便器10の周囲のプレート20の上面に、仕上げ層7と連続するようなタイル張り調などの模様や色彩等が設けられてもよい。
[第14図の実施の形態について]
上記の各実施の形態では、和風便器10のフランジ12の下面よりも上側に給水部16が設けられており、トイレルームの室内側からこの給水部16の給水管接続口16aに給水管16bが接続されているが、本発明は、給水管が床下で接続されるタイプの和風便器の施工方法にも適用可能である。
第14図はこのように給水管が床下で接続されるタイプの和風便器の施工方法の一例を示すものである。
第14図の実施の形態における和風便器10Aは、その前端部のフランジ12の下面よりも下位に給水部16が設けられている。この給水部16の上端はフランジ12の下面と同一レベルとなっている。この給水部16の前端面は、フランジ12の前端縁よりも和風便器10Aの後端側に後退している。この給水部16の前端面に給水管接続口(図示略)が設けられている。この給水管接続口の上縁とフランジ12の下面との間には、プレート20の厚みよりも大きな間隔があいている。この和風便器10Aとプレート20とを一体化させて一体物Uとした場合には、該給水管接続口はプレート20の下面よりも下側に配置される。また、給水管16bが該給水管接続口と接続可能となるように、プレート20を部分的にテーパ状に薄くしたり、該プレート20に開口部を形成するなどの加工を施してもよい。
この実施の形態では、床スラブ1の下側に給水管16bが引き回されており、開口3を介してこの給水管16bが和風便器10Aの給水部16に接続される。なお、給水管16bの配置はこれに限定されるものではなく、例えば、給水管16bはコンクリート層5に埋設され、このコンクリート層5中から開口3内に引き出された構成であってもよい。
この実施の形態のその他の構成は第1〜8図の実施の形態と同様であり、第14図において第1〜8図と同一符号は同一部分を示している。
この実施の形態における和風便器10Aの設置手順は、プレート20の下側において給水部16の給水管接続口に給水管16bを接続すること以外は、第1〜8図の実施の形態と同様である。
[第15図の実施の形態について]
高速道路のサービスエリア等では、床に排水溝を形成すると共に、この排水溝を覆蓋するようにコンクリートスラブを設け、この排水溝へ汚水を排出するように便器を設置することが行われている。
第15図は、このような排水構造を有するトイレルームへの和風便器の施工例を示している。
第15図に示すように、トイレルームの床に排水溝2が設けられており、この床のうち排水溝2の両側はそれぞれ床スラブ1となっている。
この実施の形態では、該排水溝2は、Uバートと称されるU字形のコンクリート製品をトイレルーム下の地盤に設置することにより構築されている。また、この排水溝2の両側の床スラブ1は、それぞれ、トイレルーム下の地盤上にコンクリートを打設することにより構築されている。この排水溝2の両側の床スラブ1の上面同士は略同一レベルとなっている。
この実施の形態では、該排水溝2の両側の床スラブ1,1同士の間が和風便器設置用の開口3となっている。この開口3は、排水溝2内に連通している。
この実施の形態でも、第1〜8図の実施の形態と同様に、開口3の周囲の床スラブ1上に防水層(図示略)を介してコンクリート層5が形成されている。また、開口3の周囲において、該コンクリート層5の上面には、周囲よりも一段低い低所6が形成されている。この実施の形態でも、和風便器10とプレート20との一体物Uは、開口3の上方から、プレート20の周縁部を該低所6に載荷させるようにして設置されている。この一体物Uの設置後、プレート20の上面からコンクリート層5の上面にかけて仕上げ層7が形成されている。
この実施の形態の排水構造以外の構成及び和風便器10の施工方法は、第1〜8図の実施の形態と同様であり、第15図において第1〜8図と同一符号は同一部分を示している。
なお、床躯体の構成やプレート20の設置構造等は、第9〜14図の各実施の形態と同様とされてもよい。
[第16図の実施の形態について]
第16図は、プレートの別の構成例を示している。
この第16図のプレート20Aは、嵌合口21の内周縁から下方(トイレルームの床に設置された状態における下方。)へ向って垂設された垂下部24を備えている。また、この実施の形態では、該垂下部24の下端側に、嵌合口21の中央側へ張り出す内向きの鍔部25が形成されている。第16図の通り、この垂下部24は、嵌合口21に和風便器10の便鉢部11を嵌合させたときに、この便鉢部11の外周面に対面するようになっている。また、鍔部25は、このとき、該便鉢部11の下面に対面するようになっている。
なお、この実施の形態では、垂下部24は、嵌合口21の全周にわたって周壁状に形成されているが、該嵌合口21の周方向において部分的に存在したものであってもよい。また、この実施の形態では、該垂下部24はプレート20Aと一体に構成されているが、これらを別体に構成し、接着やボルト留めなどの結合手段により、該垂下部24をプレート20Aに取り付けるようにしてもよい。
この実施の形態では、鍔部25は、垂下部24の下端から嵌合口21の中央側ほど下位となるように斜めに張り出しているが、鍔部25の張り出し方向はこれに限定されない。即ち、鍔部25は、例えば垂下部24から嵌合口21の中央側へ略直角(略水平)に張り出していてもよい。
この垂下部24の上下方向の幅Vは、70〜100mmであることが好ましく、この垂下部24からの鍔部25の水平方向における張り出し幅Pは、20〜30mmであることが好ましい。
このプレート20Aと和風便器10との一体物Uを製造する場合、嵌合口21に和風便器10の便鉢部11を嵌合させた後、該嵌合口21と便鉢部11の外周面との間に加え、垂下部24と便鉢部11の外周面との間、並びに鍔部25と便鉢部11の下面との間にも接着剤22を充填し、これらの垂下部24及び鍔部25も便鉢部11に接着してもよい。
なお、このプレート20Aと和風便器10との一体物Uの製造方法は、前述の第1〜8図の実施の形態と同様に、プレート20Aと和風便器10とをそれぞれ上下裏返しにして行うことが望ましい。ただし、プレート20Aと和風便器10との一体物Uの製造方法はこれに限定されない。
このプレート20Aにあっては、垂下部24及び鍔部25をそれぞれ便鉢部11の外周面及び下面に接着することにより、該プレート20Aと和風便器10とをより強固に接着することができる。また、この実施の形態では、該垂下部24から便鉢部11の下側へ張り出す鍔部25が設けられているので、仮に接着剤22が剥がれても、この鍔部25によって便鉢部11が下から支えられるため、和風便器10の落下が防止される。
[第17図の実施の形態について]
本発明においては、床下に引き回された給水管16bを床上に引き出して和風便器10の給水部16に接続するように構成してもよい。
第17図はこのような給水管接続構造を示している。
第17図の実施の形態では、給水管16bは床スラブ1の下側に配設されている。また、この実施の形態では、和風便器10は、床上に給水部16が配置され、トイレルームの室内側からこの給水部16の上面の給水管接続口(図示略)に給水管16bが接続されるタイプのものである。
この実施の形態では、プレート20に給水管挿通孔26が設けられている。この給水管挿通孔26は、床スラブ1の開口3と重なる位置に配置されている。この実施の形態では、給水管16bは、該開口3を介してプレート20の給水管挿通孔26に挿通され、この給水管挿通孔26を通ってトイレルーム内に引き出され、和風便器10の給水部16に接続されている。この給水管16bと給水管挿通孔26との間は、シール材27によってシールされている。
なお、この実施の形態では、給水管16bの途中部に、フラッシュレバー(符号略)を有するフラッシュ弁装置16cが接続されている。使用者がこのフラッシュレバーを操作することにより、給水管16bから給水部16に便器洗浄水が供給され、便鉢部11が洗浄される。なお、リモコン(図示略)等によりフラッシュ動作するように構成されている場合には、このフラッシュ弁装置16cは省略されてもよい。
この実施の形態のその他の構成は第9図の実施の形態と同様であり、第17図において第9図と同一符号は同一部分を示している。
この実施の形態における和風便器10の設置手順は、プレート20の給水管挿通孔26を通してトイレルームの床下から該トイレルーム内に給水管16bを引き出し、フラッシュ弁装置16cを介して給水管16bを和風便器10の給水部16に接続すること以外は、第9図の実施の形態と同様である。
なお、床躯体の構成やプレート20の設置構造等は、第1〜8,10〜13,16図の各実施の形態と同様とされてもよい。
上記の実施の形態では、給水管挿通孔26は、床スラブ1の開口3と重なる位置に配置され、給水管16bは、床スラブ1の下側からこの開口3を介して給水管挿通孔26に引き通されているが、給水管16bがコンクリート層5又は床スラブ1に埋設されている場合には、給水管挿通孔26をコンクリート層5又は床スラブ1と重なる位置に配置し、該コンクリート層5中又は床スラブ1中から給水管挿通孔26を通して給水管16bをトイレルーム内に引き出すように構成してもよい。
本発明においては、この実施の形態とは逆に、トイレルーム内に引き回された給水管16bを床下で和風便器の給水部に接続するように構成することも可能である。
即ち、図示は省略するが、例えば、給水管16bがトイレルーム内に引き回されている場合において、第14図の実施の形態のように床下で給水管16bを接続するタイプの和風便器10Aを用いる場合には、プレート20の給水管挿通孔26を通して給水管16bをトイレルームの床下に引き回し、この床下において給水管16bを和風便器10Aの給水部16に接続するようにしてもよい。
この場合、給水管挿通孔26が床スラブ1の開口3と重なる位置に配置され、給水管16bは、該給水管挿通孔26を通って直接的に開口3内に引き込まれて給水部16に接続された構成としてもよい。また、給水管挿通孔26がコンクリート層5又は床スラブ1と重なる位置に配置され、給水管16bは、該給水管挿通孔26を通ってコンクリート層5中又は床スラブ1中に埋設され、このコンクリート層5中又は床スラブ1中を通って開口3内に引き出され、給水部16に接続された構成としてもよい。
上記の各実施の形態はいずれも本発明の一例を示すものであり、本発明は上記の各実施の形態に限定されない。
例えば、床スラブは図示の構成に限定されない。本発明は、例えば、波形プレート状の鉄骨材、いわゆるデッキプレートの上にコンクリートを打設してなる床への和風便器の施工方法にも適用可能である。