JP2009256738A - 真空浸炭熱処理用耐熱鋳鋼ジグ材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】真空浸炭用ジグ鋳鋼材の化学成分組成が、Cが0.15〜0.60質量%、Mnが2.00質量%以下、Crが15〜29質量%であり、Niが10〜40質量%、Si:1.8質量%以下、Nb+Ti+(W/Mo)が総量で1.8〜2.8質量%であり、残部がFe及び不可避の不純物からなる真空浸炭用ジグである。
【選択図】なし
Description
本発明に係る真空浸炭用ジグは、該真空浸炭用ジグ鋳鋼材の化学成分組成(質量%)がC:0.15〜0.60、Mn:2.00以下、Cr:15〜29、Ni:10〜40、Si:1.8以下、Nb+Ti+(W/Mo):1.8〜2.8であることを特徴とする。なお上記真空浸炭用ジグ鋳鋼材の化学成分組成の残部はFeおよび不可避の不純物からなるものである。本発明の真空浸炭用ジグを形成(構成)する鋳鋼材は、Feと以下に説明するいくつかの添加成分とから構成される鋼材であるが、これら以外の成分(元素)の存在・混入を否定するものではない。したがって、上述した耐真空浸炭性や耐熱性や実用性等の性能・品質・コスト等に影響を与えない限りにおいて、種々の金属・非金属、例えば、Cu、As、Sb、Sn、P、S、B、N、H、O等を微量成分として含有していてもよい。例えば、種々の鋼材にP、S等の不可避の不純物(不可避的不純物とも称されている)が微量ながら含まれ得ることは当該分野における周知事項である。
本発明の真空浸炭用ジグ鋳鋼材においては、溶湯の湯流れを良好にして鋳造性を確保する為、Siを最低限添加量に抑えて、耐浸炭のために添加した元素の粒界の高温強度を確保し、クリープラプチャー強度を高くしたものである。
Cは、基地であるFeに固溶するほか、Cr、W、Mo、Nb、Ti等と炭化物を形成し得る主要成分であり、鋼の高温強度、例えば後述する実施例に示すようなクリープ破壊強度を向上させ得る成分である。而して、Cは、0.15%未満ではNb又はNb、Tiによる炭化物形成に消費されて熱間強度の低下とフェライト相の増加による高温長期間使用中の脆化が著しい。一方、0.60%を超えると使用中のCrの二次炭化物の析出が著しく、熱衝撃割れに敏感になるので0.15〜0.60%に限定したものである。フェライト面積率、二次炭化物の析出量を考慮すると、より望ましくは0.20〜0.50%である。
Mnは鋳造性を高め、脱酸剤として有効であるが、耐酸化性、高温強度を低下させるために2.00%以下に限定したものである。Mnの下限量については、特に制限されるものではない。ただし、溶湯の湯流れを良好にして鋳造性を確保して真空浸炭用ジグ鋳鋼材の生産性(製造性)を高め、尚且つ脱酸剤として有効に寄与することができる観点から、0.5%以上が望ましい。したがって、Mn含有量は、2.00%以下、より望ましくは0.5%以上2.00%以下である。
Crは、基地に固溶するほか、Cと結合して炭化物を形成する主要成分である。而して、その炭化物が結晶粒界に析出して粒界を強化することにより、鋼の高温強度が向上する。よって、Cr含有量が15%未満では高温強度が不足し、29%を超えると靭性の低下が著しくなるので、15〜29%に限定したものである。高温強度とオーステナィトの安定性、炭化物の析出、成長の抑制から、より望ましくは20〜28%の範囲である。
Niは10%未満では組織が不安定となりフェライトの晶出面積が大きくなり、組織の安定化・靭性の維持には多い程有効である。しかしながら、40%を超えても、経済上のデメリット(国内での実用性に乏しい点)を解消し得る程の更なる効果はなく40%を限度とし、10〜40%に限定したものである。経済性(実用性)の面から、より望ましくは10〜35%の範囲である。
Nbはクリープ破断強度、耐浸炭性を高める。0.3%未満ではその効果が不足するが、多量に添加すると、生成するNbC炭化物の粗大化、および合金中のC量の減少に起因して、高温強度が低下するので、2.8%を限度としたものである。生成するNbC炭化物の粗大化及び高温強度の低下の抑制から望ましくは1.5%以下とするのがよい。
Tiは炭化物等を形成して高温強度、耐熱衝撃性等、耐浸炭性を高める。このために0.04%以上を必要とするが、多量の添加はTiC(チタンカーバイド)析出物の粗大化を招き、かえって強度低下をみるので、0.5%を上限としたものである。特に0.2%を超えると大気溶解鋳造の場合、鋳込時に溶湯中のTiが鋳型表面と反応を起こしTi酸化物を生じ、表面欠陥となる場合がある。従って、大気溶解鋳造の場合には、0.15%以下とするのがよい。
Wはマトリックスに固溶すると共に、Cr−W系炭化物を形成してクリープ破断強度(高温引張強度)の向上に寄与する。また、耐浸炭性を高める。Wが0.5%に満たないと、その効果が不足する。一方、多量に含むと合金の延靱性の低下を招くので、2.8%を上限とし、好ましくは、2.0%以下である。
Moは、オーステナイト基地の固溶強化と、Cr−Mo系炭化物の形成による粒界強化の作用によりクリープ破断強度(高温引張強度)を高める。また、耐浸炭性を高める。その効果を確保するために、少なくとも0.2%を要するが、多量の添加は合金の延靱性を損なうので、2.8%を上限とし、好ましくは、1.5%以下である。
本発明の真空浸炭用ジグ鋳鋼材及び本発明の耐真空浸炭性耐熱鋳鋼材の化学成分組成は、ジグ形成(鋳造)時から浸炭処理に繰り返し使用するにつれ、その炭素含有率が経時的に変化していく。そのため、上述した真空浸炭用ジグ鋳鋼材及び本発明の耐真空浸炭性耐熱鋳鋼材の化学成分組成は、あくまでジグ形成(鋳造)時あるいはジグ形成時と実質的に同じ鋳造ままの炭素比率を維持している部位の化学成分組成をいうものとする。言い換えれば、浸炭処理に繰り返し使用して炭素含有率がジグ形成(鋳造)時とは異なってしまった部位を除く趣旨である。ジグ形成時と実質的に同じ鋳造ままの炭素比率を維持している部位としては、例えば、度重なる真空浸炭処理によっても鋳造ままの炭素比率が実質的に変動しないジグ壁面の深層部分が該当し得る。
本発明の真空浸炭用ジグは、耐真空浸炭性耐熱鋳鋼材の原料を下の実施例に説明するような鋳造(鋳鋼生産)技術を用いて製造してもよいし、耐真空浸炭性耐熱鋳鋼の鋼材を切削加工(切断・溶接など)による組立技術などを用いて製造してもよい。あるいはこれらを組み合わせてもよいなど、特に制限されるものではなく、従来公知のジグ製造技術を適用し得るものである。鋳造技術を用いた大量生産方法としては、例えば、「高圧高速自動造型機による砂型鋳造法」、「ロストワックス法」、「シェルモールド法」など模型に金型を使用した製造法がよい。
本発明の真空浸炭用ジグは、種々の鋼材に真空浸炭処理を施す場合に用いられるジグであればよく、例えば、歯車やデファレンシャルギア等の被処理材を真空浸炭炉内で保持するための形状複雑なスケルトンタイプ・フィクスチャーやトレイなどが挙げられる。
本発明の真空浸炭用ジグは、真空浸炭熱処理において、長期間安定して使用できるものである。真空浸炭熱処理としては、特に制限されるものではないが、1000℃以上の温度水準、典型的には1000〜1100℃(例えば、ターゲット温度1050℃)で、アセチレン等の炭化水素によるガス浸炭雰囲気(真空・減圧状態でかつ強還元性或いは超還元性)で行われるものが挙げられる。ただし、本発明は、これらに何ら制限されるものではなく、各種の改良・改善が施された真空浸炭熱処理法に幅広く適用可能なばかりではなく、後述するようなプラズマ浸炭処理法などにも十分に適用可能である。
本発明に係る耐真空浸炭性耐熱鋳鋼は、化学成分組成(質量%)が、C:0.15〜0.60、Mn:2.00以下、Cr:15〜29、Ni:10〜40、Si:1.8以下、Nb+Ti+(W/Mo):1.8〜2.8であることを特徴とする。なお上記耐真空浸炭性耐熱鋳鋼材の化学成分組成の残部はFeおよび不可避の不純物からなるものである。耐真空浸炭性耐熱鋳鋼の化学成分組成を上記範囲とすることで、上記真空浸炭用ジグで説明したと同様の使用環境下で優れた耐真空浸炭性及び耐熱性を発現することができる(詳しくは、後述する実施例の表1の真空下での浸炭深さ及びクリープ破断強度参照)。
本発明の耐真空浸炭性耐熱鋳鋼の各合金化学成分の含有量の説明に関しては、上記した本発明の真空浸炭用ジグ鋳鋼材の各合金化学成分の含有量の説明と同様である為、ここでは重複説明を避けるため省略する。
本発明の耐真空浸炭性耐熱鋳鋼は、真空浸炭用ジグ鋳鋼材として有効に利用することができるほか、同様の環境下(1000℃以上の温度水準でアセチレンなどの炭化水素によるガス浸炭雰囲気)で使用されている各種用途に利用することができる。例えば、上記真空浸炭熱処理に用いられる真空浸炭炉の内張り材や該真空浸炭熱処理に供せられる製品のワーク材などに有効に活用できる。さらに、これよりも比較的温度条件が低いプラズマ浸炭に用いられるプラズマ浸炭用ジグ、プラズマ浸炭炉の内張り材や該プラズマ浸炭処理に供せられる製品のワーク材などにも有効に利用できる。ただし、本発明の耐真空浸炭性耐熱鋳鋼の利用用途は、これらに何ら制限されるものではなく、当該耐真空浸炭性耐熱鋳鋼の持つ優れた耐真空浸炭性ないし耐熱性を有効に利用できる技術分野で幅広く活用できることはいうまでもない。
本発明の耐真空浸炭性耐熱鋳鋼は、各種造型プロセスの砂型、シェルモールド、ロストワックス等で鋳造した鋳鋼製品が挙げられるが、特に製造プロセスに制限されるものではない。
(実験方法)
先ず、実施例1〜2及び比較例1〜4のそれぞれについて、表1に示す合金化学成分組成となるように所定の原料を配合し、高周波誘導加熱炉にてかかる配合物を加熱・溶解した。次いで、かかる溶融物を所定の鋳型に注入することによって、各合金化学成分組成のJIS G 0307A号試験材(いわゆるYブロック)を鋳造した。
上記実験結果(表1参照)に基づく、実施例1〜2及び比較例1〜4それぞれの考察を以下に示す。
本実施例の合金化学成分組成は、Si=1.34%(1.0%以上1.6%の範囲)、Nb+Ti+W=2.57%(1.8%以上、2.8%以下の範囲)であり、真空浸炭性、クリープ破断強度(高温強度、耐熱性)とも良好であることが確認できた。
本実施例の合金化学成分組成は、Si=1.38%(1.0%以上1.6%の範囲)、Nb+Ti+Mo=2.62%(1.8%以上、2.8%以下の範囲)であり、耐真空浸炭性、クリープ破断強度(高温強度、耐熱性)とも良好であることが確認できた。
本比較例の合金化学成分組成は、Si=2.1%>1.6%のためにSiが偏析し、この周辺の融点が低下するため、クリープ破断強度(高温強度、耐熱性)が悪化することが確認できた。また、耐真空浸炭性についても実施例1、2に比して3割程度低くなることが確認できた。
本比較例の合金化学成分組成は、Nb+Ti+Mo=3.02%>2.8%のために、γ粒界炭化物が析出することにより耐真空浸炭性は向上するが、γマトリックス中の固溶炭素量が枯渇によりクリープ破断強度(高温強度、耐熱性)が悪化することが確認できた。
本比較例の鋼材には開発ベース材(SCH24=従来鋼と同様の合金化学成分組成)を作製したものである。その合金化学成分組成は、Nb+Ti+(W/Mo)=0%<18%のために、浸炭深さが800μmとなり耐真空浸炭性が大幅に低下し、またクリープ破断強度(高温強度、耐熱性)も実施例1、2に比して低く十分でないことが確認できた。
本比較例の鋼材にはSCH24改良材と同様の合金化学成分組成としたものである。その合金化学成分組成は、Nb+Ti=0%のままであるが、W=1.5%添加により、比較例3に比して若干耐真空浸炭性・クリープ破断強度向上する。しかしながら、浸炭深さは520μmもあり、実施例1、2に比して、耐真空浸炭性が大幅に低く十分でないことが確認できた。また、クリープ破断強度(高温強度、耐熱性)も実施例1、2に比して1割程度低いことも確認できた。
Claims (4)
- 真空浸炭用ジグ鋳鋼材において、該鋼材の化学成分組成が質量パーセントで、
C:0.15〜0.60%、
Mn:2.00%以下、
Cr:15〜29%、
Ni:10〜40%、
Si:1.8%以下で、更に
Nbかつ、Tiかつ、Wおよび/またはMoの総量が1.8〜2.8%であり、
残部がFeおよび不可避の不純物からなることを特徴とする真空浸炭用ジグ。 - 前記Nbかつ、Tiかつ、Wおよび/またはMoの総量が、2.4〜2.8質量%である請求項1に記載の真空浸炭用ジグ。
- 前記Siが、1.0質量%以上であり、前記Mnが、0.5質量%以上である請求項1または2に記載の真空浸炭用ジグ。
- 鋼材の化学成分組成が質量パーセントで、
C:0.15〜0.60%、
Mn:2.00%以下、
Cr:15〜29%、
Ni:10〜40%、
Si:1.8%以下で、更に
Nbかつ、Tiかつ、Wおよび/またはMoの総量が1.8〜2.8%であり、
残部がFeおよび不可避の不純物からなることを特徴とする耐真空浸炭性耐熱鋳鋼。
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