JP2009256723A - 複雑形状焼結機械部品の成形金型 - Google Patents
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Abstract
【課題】プラネタリキャリアを粉末冶金法で製造するにあたって、圧粉体を複数のパーツに分割して成形するのではなく全体を一体に型出し成形可能とする金型を提供する。
【解決手段】プラネタリキャリア1のフランジ部3を形成する下パンチ30が挿入される下ダイス孔11を有する下ダイス10と、プラネタリキャリア1のギヤ部4およびボス部5を形成する上パンチ60が挿入される上ダイス孔55を有する上ダイス50との間に、柱部7および柱部7間の窓部8を形成する中ダイス40を、径方向に分割可能に組み込み、一体成形可能とした。
【選択図】図3
【解決手段】プラネタリキャリア1のフランジ部3を形成する下パンチ30が挿入される下ダイス孔11を有する下ダイス10と、プラネタリキャリア1のギヤ部4およびボス部5を形成する上パンチ60が挿入される上ダイス孔55を有する上ダイス50との間に、柱部7および柱部7間の窓部8を形成する中ダイス40を、径方向に分割可能に組み込み、一体成形可能とした。
【選択図】図3
Description
本発明は、自動車の自動変速機に組み込まれるプラネタリギア機構のキャリア(以下、プラネタリキャリアと称する)等の複雑な形状を呈する焼結機械部品を粉末冶金法によって製造する技術に係り、原料の粉末を圧縮成形して該機械部品に近似する形状の圧粉体を成形するための金型に関するものである。
上記プラネタリキャリアは、変速機の機種に応じた設計上の違いはあるものの、概ね図17および図18に示すような形態を有している。これら図に示すプラネタリキャリア1は、円筒状の胴部2の一端(図で下端)に円板状のフランジ部3が形成されており、胴部2の他端には、ギヤ部4とボス部5とが、同じく同心状に形成されており、中心に、フランジ部3からギヤ部4にわたって貫通する軸孔6が形成されている。胴部2は、互いに平行で周方向に等間隔を空けて配列された複数(この場合、3つ)の柱部7から構成されており、柱部7間には、図示せぬ遊星歯車(プラネタリギア)が回転自在に装着される窓部8が形成されている。これら窓部8に装着された遊星歯車は、胴部2の内側においては軸孔6に挿入される図示せぬシャフトの太陽歯車と噛み合い、胴部2の外側においては図示せぬリングギヤと噛み合うように組み合わせられる。
軸孔6は各柱部7に囲繞されており、柱部7の断面形状は扇状であって軸孔6を中心として放射状に形成されている。フランジ部3、ギヤ部4およびボス部5は、胴部2に対して同心状である。ギヤ部4の外周面には、回転力を伝達するためのギヤ歯4aが形成されている。ボス部5は、ギヤ部4の端面から突出して環状に形成されており、その外周面には、図示せぬクラッチ機構と係合するためのスプライン歯5aが形成されている。ボス部5の内径は軸孔6よりも大きく、ボス部5の内側には、ギヤ部4の内側端面4bが露出する凹所9が形成されており、ボス部5の周囲に、ギヤ歯4aを含むギヤ部4の外側端面4cが形成されている。
このようにプラネタリキャリアは極めて複雑な形状であるため、切削などの機械加工で量産するには多大の加工工数を要し、経済性や形状・寸法精度などに問題がある。そこで均一な製品の量産に好適な粉末冶金法によって製造されることが多いが、胴部2に設けられている窓部8などがいわゆるアンダーカットに該当し、この形状のままでは一体に型出し成形することが困難であるという課題がある。
この課題を克服する技術としてまず考えられたのは、得るべき形状のものを、型出し成形可能な幾つかのパーツに分割して個々に圧粉体を成形して焼結した後、これらをろう接等の接合手段で接合して所要の形状に仕上げる方法である。ところがろう接では、接合部位で生成する液相のために、同軸にならない心ずれや周方向にずれる位相ずれが起こり、寸法精度が低下する場合があった。また、接合部位の強度不足により、必要レベルの強度を得にくいという問題もあった。そこで、これら問題を克服する方法として、型出し成形可能な幾つかのパーツに分割して個々に圧粉体を成形した後、それら圧粉体を組み合わせて得るべき部品形状に組み立て、この組み立てた圧粉体を焼結して一体に接合するといった方法が提案された(特許文献1〜3等参照)。
上記従来技術においては、組み合わせる圧粉体パーツの一方に形成した孔に他方を嵌め込んで部品形状に組み立てており、このようにして接合部位の接触面積をなるべく大きくすることで、拡散接合しやすくしている。しかしながらこれら従来技術では、接合される2つの圧粉体パーツの焼結時における熱膨張量の違いによって生じる問題を解決するために、嵌め合い寸法差を精巧に設定したり、粉末中の添加成分に工夫を凝らしたりといったように、製造する上で厳密な管理が必要となっているのは、各文献に記載の通りである。また、パーツを組み合わせるには手間がかかり、生産性の面では不利である。さらに、寸法精度に関しては、焼結体パーツどうしをろう接等で接合した場合と比べれば向上するであろうが、パーツを組み合わせるといった手法ゆえに限度があり、全体を一体に型出し成形した場合と比べれば劣るものである。
よって本発明は、上記プラネタリキャリア等の複雑形状焼結機械部品を粉末冶金法で製造するにあたって、圧粉体を複数のパーツに分割して成形するのではなく全体を一体に型出し成形可能とし、結果として寸法精度および強度を大幅に向上させることができる成形金型を提供することを目的としている。
本発明は、断面扇状の複数の柱部が、互いに平行に、かつ、間に窓部を空けて周方向に配列されてなる円筒状の胴部と、この胴部の一端に、該胴部と同心状に形成された円板状のフランジ部と、胴部の他端に、該胴部と同心状に形成され、外周面にギヤ歯が形成された円板状のギヤ部と、このギヤ部の端面に、胴部と同心状に形成され、外周面にスプライン歯が形成された環状のボス部とを有し、中心に、フランジ部からギヤ部にわたって貫通し、かつ、柱部に囲繞される軸孔が形成され、ボス部の内径はその軸孔よりも大径とされた複雑形状焼結機械部品を得るにあたり、粉末を圧縮成形して該機械部品に近似する形状の圧粉体を成形するための金型であって、フランジ部の外径に対応する内径の断面円形状の下ダイス孔を有する下ダイスと、この下ダイスの下ダイス孔に同心状に挿入され、軸孔を形成する円柱状のコアロッドと、下ダイスの上面に、下ダイス孔の中心に対して該下ダイス孔の略径方向に進退自在に支持され、進出時に先端がコアロッドに当接して、柱部間の窓部および柱部の側面を形成する複数の窓部形成ダイスと、下ダイスの上面の窓部形成ダイスの間に配されるとともに、下ダイス孔の中心に対して該下ダイス孔の略径方向に進退自在に支持され、進出時に各窓部形成ダイスと合体状態となって柱部の外周面を形成し、かつ、柱部に対応する柱部キャビティを、コアロッドおよび窓部形成ダイスとともに形成する複数の柱部外周面形成ダイスと、下ダイスの下ダイス孔に挿入され、柱部キャビティに連通するフランジ部に対応するフランジ部キャビティを形成する下パンチと、窓部形成ダイスおよび柱部外周面形成ダイスの上面に設けられ、ギヤ部のギヤ歯の形状に対応する内周面を有する断面円形状の上ダイス孔を有する上ダイスと、この上ダイスの上ダイス孔に挿入され、ギヤ部およびボス部を形成する上パンチとを具備することを特徴とする。
本発明に係る上記形状の焼結機械部品は、窓部が、軸方向に型抜きする際のアンダーカットになっており、従来ではこの窓部を軸方向に開放して型抜き可能とするために、柱部とフランジ部とを一体としたパーツと、ギヤ部およびボス部とからなるパーツに分割して圧粉体を成形していた。しかしながら本発明では、窓部を形成する窓部形成ダイスと柱部の外周面を形成する柱部外周面形成ダイスを、いずれも径方向に脱型可能に組み込むことにより、窓部および柱部を、柱部の一端側のフランジ部と、他端側のギヤ部およびボス部と一体に型出し成形可能となった。このようにして得られた圧粉体を焼結して得られる機械部品は、一体成形されたことにより寸法精度および強度が大幅に向上したものとなる。
本発明では、上記下パンチが、少なくとも、柱部に対応して配され、該柱部、およびフランジ部の該柱部に対応する部分を圧縮する複数の第1の下パンチと、フランジ部の柱部以外の部分に対応して配され、フランジ部の該柱部以外の部分を圧縮する第2の下パンチとを有する形態を好ましいものとしている。この形態では、第1の下パンチを第2の下パンチよりも下げ、柱部に対応する部分のフランジ部のキャビティの軸方向長さを大きくとることにより、軸方向がフランジ部よりも長い柱部の圧粉密度を、フランジ部と同等に調整することができる。
本発明によれば、上記プラネタリキャリア等の複雑形状焼結機械部品を粉末冶金法で製造するにあたって、圧粉体を複数のパーツに分割して成形する必要がなく、全体を一体に型出し成形することが可能となる。その結果、得られる製品の寸法精度および強度を大幅に向上させることができるといった効果を奏する。
以下に図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
本実施形態は、図17および図18に示したプラネタリキャリア1を粉末冶金法で製造するにあたって、原料の粉末を圧縮成形してプラネタリキャリア1に近似する形状の圧粉体を成形するための金型である。図1〜図13はその金型によって該圧粉体を成形する過程を示しており、図14〜図16は金型の一部の構成を示している。まず、これら図を参照して金型の構成を説明する。
本実施形態は、図17および図18に示したプラネタリキャリア1を粉末冶金法で製造するにあたって、原料の粉末を圧縮成形してプラネタリキャリア1に近似する形状の圧粉体を成形するための金型である。図1〜図13はその金型によって該圧粉体を成形する過程を示しており、図14〜図16は金型の一部の構成を示している。まず、これら図を参照して金型の構成を説明する。
[1]金型の構成
図1(a)は圧粉体成形の待機状態を示しており、符号10は下ダイスである。この下ダイス10は水平な上面を有し、中心には、内周面が円筒状すなわち断面円形状の下ダイス孔11が形成されている。この下ダイス孔11は鉛直方向を軸心としており、その内径は、プラネタリキャリア1のフランジ部3の外径に対応する寸法に設定されている。この下ダイス孔11の中心には、下方から円柱状のコアロッド20が同心状に挿入されるようになっている。このコアロッド20はプラネタリキャリア1の軸孔6を形成するものであって、その直径は軸孔6の内径に対応する寸法に設定されている。圧粉体を成形する時、コアロッド20は下ダイス10の上面からプラネタリキャリア1の高さに相当する高さが突出するようにセットされる。
図1(a)は圧粉体成形の待機状態を示しており、符号10は下ダイスである。この下ダイス10は水平な上面を有し、中心には、内周面が円筒状すなわち断面円形状の下ダイス孔11が形成されている。この下ダイス孔11は鉛直方向を軸心としており、その内径は、プラネタリキャリア1のフランジ部3の外径に対応する寸法に設定されている。この下ダイス孔11の中心には、下方から円柱状のコアロッド20が同心状に挿入されるようになっている。このコアロッド20はプラネタリキャリア1の軸孔6を形成するものであって、その直径は軸孔6の内径に対応する寸法に設定されている。圧粉体を成形する時、コアロッド20は下ダイス10の上面からプラネタリキャリア1の高さに相当する高さが突出するようにセットされる。
下ダイス孔11には、コアロッド20を囲繞してフランジ部キャビティ71を形成する下パンチ30が下方から挿入される。下パンチ30は、プラネタリキャリア1の柱部7に対応する位置に位置付けられる棒状の複数(この場合、柱部7の数である3つ)の柱部対応下パンチ(第1の下パンチ)31と、フランジ部3の柱部7以外の部分に対応する形状のフランジ部対応下パンチ32(第2の下パンチ)との組み合わせで構成されている。
図1(b)および図14に示すように、フランジ部対応下パンチ32は、外径がフランジ部3の内径に対応した円筒状で、コアロッド20が摺動自在に挿通するコアロッド挿通孔32aが中心に形成されている。また、フランジ部対応下パンチ32の内周部には、柱部7の断面に対応し、コアロッド挿通孔32aに連通する断面扇状の溝32bが形成されている。フランジ部対応下パンチ32は下ダイス孔11に摺動自在に挿入され、フランジ部対応下パンチ32の溝32bに、柱部対応下パンチ31が摺動自在に挿入される。柱部対応下パンチ31の内周面はコアロッド20の外周面に沿って弧状に形成され、この内周面はコアロッド20の外周面に摺動するようになっている。
下ダイス10の水平な上面には、中ダイス40がセットされる。この中ダイス40は、図3(b)および図15に示すように、プラネタリキャリア1の窓部8を形成する複数の窓部形成ダイス41と、これら窓部形成ダイス41の間に配され、柱部7の外周面を形成する複数の柱部外周面形成ダイス42との組み合わせで構成されている。中ダイス40を構成するこれら窓部形成ダイス41および柱部外周面形成ダイス42は、いずれも3つ備えられている。
窓部形成ダイス41は、窓部8の高さ(柱部7の高さとも言える)と同等の高さを有する断面矩形状の横に伸びる細長いブロック状のもので、下ダイス10の上面に、下ダイス孔11を中心として、周方向に等間隔をおいた放射状に配列されている。窓部形成ダイス41は、自身の長手方向に延びるストレート側面41aを有しており、その長手方向に沿って、すなわち下ダイス孔11の中心に対して該下ダイス孔11の径方向に沿って進退するよう摺動自在に支持されている。
これら窓部形成ダイス41は、下ダイス孔11の中心に向かって進出すると先端部が互いに近接し、その近接する先端部は、左右対称の台形状に形成されている。この先端部の両側の側面は互いに近付き合うテーパ状に形成され、このテーパ側面41bが、プラネタリキャリア1の柱部7の側面7b(図17および図18参照)を形成する面となっている。そして先端部の幅が狭くなった先端面には、コアロッド20の外周面に沿った円弧面41cが形成されている。窓部形成ダイス41は、コアロッド20が下ダイス孔11の上面から突出したセット状態でコアロッド20方向に進出すると、先端の円弧面41cがコアロッド20の外周面に密接するようになっている。
中ダイス40の柱部外周面形成ダイス42は、窓部形成ダイス41の先端の円弧面41cがコアロッド20に当接した状態でこれら窓部形成ダイス41間のスペースを埋める三角形状を呈するものであり、高さは窓部形成ダイス41と同じである。柱部外周面形成ダイス42も窓部形成ダイス41と同様に、下ダイス10の上面に、下ダイス孔11の中心に対して該下ダイス孔11の径方向に沿って進退するよう摺動自在に支持されている。これら柱部外周面形成ダイス42が下ダイス孔11の中心に向かって進出すると、両側の側面42aが窓部形成ダイス41のストレート側面41aに密接する。そして、柱部外周面形成ダイス42の互いに近接する先端面は、柱部7の外周面に対応した円弧面42bに形成されており、その円弧面42bと、両側の窓部形成ダイス41のテーパ側面41bとコアロッド20とにより、各柱部(すなわち胴部2)7を形成する柱部キャビティ72が形成されるようになっている。
図1(a)に示すように、複数の柱部外周面形成ダイス42のうちの1つには、下方に開口する内部空間である粉末フィーダ部43が形成されている。この粉末フィーダ部43内には、図示せぬホッパから原料の粉末が充填されるようになっている。他の2つの柱部外周面形成ダイス42が後退して下ダイス孔11から退避した状態で、粉末フィーダ部43が形成された柱部外周面形成ダイス42が下ダイス孔11方向に進出すると、粉末フィーダ部43が下ダイス孔11を覆い、粉末フィーダ部43から、下ダイス孔11内に下ダイス10とコアロッド20とで形成されるフランジ部キャビティ71に粉末が落下して充填されるようになっている。粉末充填後、該柱部外周面形成ダイス42を後退させると、フランジ部キャビティ71に充填された粉末の上面が下ダイス10の上面と同一平面になるようにすり切りがなされる。
上記中ダイス40の窓部形成ダイス41および柱部外周面形成ダイス42の上面は水平面であり、この上面に、上ダイス50が設けられる。上ダイス50は、内周面にプラネタリキャリア1のギヤ部4のギヤ歯4aに対応する内歯51a(図5(b)参照)が形成された環状の昇降ダイス51と、中ダイス40の上面に設けられ、昇降ダイス51が間に嵌合する固定プレート52および可動プレート53から構成されている。これら昇降ダイス51、固定プレート52および可動プレート53の高さは同一となっている。昇降ダイス51は下ダイス孔11と同心状に配されており、円筒状の昇降ピストン54の下端部に固定されている。この昇降ダイス51の内側が、ギヤ部4のギヤ歯4aの形状に対応する内周面を有する断面円形状の上ダイス孔55とされている。
可動プレート53は、中ダイス40の上面に、該上面を摺動して固定プレート52に対し進退自在に設けられており、離間した状態で、両プレート52,53の間に柱部キャビティ72が上方に開くようになっている。可動プレート53には、下方に開口し、図示せぬホッパから原料の粉末が充填される粉末フィーダ部56が形成されている。昇降ダイス51が上昇して退避した状態で可動プレート53が固定プレート52に近接するように進出可能とされ、その時、粉末フィーダ部56から柱部キャビティ72に粉末が落下して充填されるようになっている。粉末充填後、可動プレート53を後退させると、柱部キャビティ72に充填された粉末の上面が中ダイス40の上面と同一平面になるようにすり切りがなされる。
可動プレート53上には、下降した昇降ダイス51内に形成されるギヤ部キャビティとボス部キャビティの併合キャビティ(以下、ギヤ部/ボス部キャビティ)73に原料の粉末を充填するための粉末フィーダ59が、進退自在に配置されている。この粉末フィーダ59内には、図示せぬホッパから原料の粉末が充填されるようになっており、粉末フィーダ59が、下降した昇降ダイス51内に形成されるギヤ部/ボス部キャビティ73の上方を覆うまで可動プレート53上を摺動して進出した時、粉末フィーダ59内からギヤ部/ボス部キャビティ73に粉末が落下して充填されるようになっている。粉末充填後、該粉末フィーダ59を後退させると、ギヤ部/ボス部キャビティ73に充填された粉末の上面が各プレート52,53の上面と同一平面になるようにすり切りがなされる。
昇降ダイス51を昇降させる昇降ピストン54の内部には、3つの筒状パンチ61,62,63が同心状に組み込まれてなる上パンチ60が、昇降自在に収容されている。上パンチ60を構成する3つの筒状パンチは、プラネタリキャリア1のボス部5の周囲の、ギヤ歯4aを含むギヤ部4の外側端面4cを形成するギヤ部形成上パンチ61と、このギヤ部形成上パンチ61の内側に摺動自在に収容され、プラネタリキャリア1のスプライン歯5aを含むボス部5の端面を形成するボス部形成上パンチ62と、このボス部形成上パンチ62の内側に摺動自在に収容され、ボス部5で囲繞されたギヤ部4の内側端面4bおよび凹所9を形成する凹所形成上パンチ63とから構成されている。これら上パンチ61,62,63は、それぞれが単独で昇降するようになっている。
ギヤ部形成上パンチ61の外周面には、昇降ダイス51の内面の内歯51aに噛み合う外歯が形成されており、また内周面には、ボス部5のスプライン歯5aに対応する内歯が形成されている。凹所形成上パンチ63の内部には、コアロッド20が摺動して挿入されることが可能となっている。
[2]圧粉体の成形
以上の構成からなる金型を用いて、プラネタリキャリア1の形状に近似する形状の圧粉体を成形する手順を説明する。
以上の構成からなる金型を用いて、プラネタリキャリア1の形状に近似する形状の圧粉体を成形する手順を説明する。
(1)フランジ部キャビティへの粉末の充填
図1は、金型の待機状態を示している。この待機状態での下パンチ30(柱部対応下パンチ31とフランジ部対応下パンチ32)およびコアロッド20は、いずれも上端面が下ダイス10の上面と同一平面になる位置に、高さ位置が調整される。また、中ダイス40の各窓部形成ダイス41および各柱部外周面形成ダイス42は、下ダイス孔11の周囲に退避している。また、上ダイス50の可動プレート53も中ダイス40と同様に下ダイス孔11の周囲に退避している。さらに、上ダイス50の昇降ダイス51と、上パンチ(ギヤ部形成上パンチ61、ボス部形成上パンチ62、凹所形成上パンチ63)60は、上方に退避している。
図1は、金型の待機状態を示している。この待機状態での下パンチ30(柱部対応下パンチ31とフランジ部対応下パンチ32)およびコアロッド20は、いずれも上端面が下ダイス10の上面と同一平面になる位置に、高さ位置が調整される。また、中ダイス40の各窓部形成ダイス41および各柱部外周面形成ダイス42は、下ダイス孔11の周囲に退避している。また、上ダイス50の可動プレート53も中ダイス40と同様に下ダイス孔11の周囲に退避している。さらに、上ダイス50の昇降ダイス51と、上パンチ(ギヤ部形成上パンチ61、ボス部形成上パンチ62、凹所形成上パンチ63)60は、上方に退避している。
この待機状態から、図2に示すように、下パンチ30のフランジ部対応下パンチ32を所定量下降させ、さらに柱部対応下パンチ31をフランジ部対応下パンチ32よりもさらに下方に下降させ、下ダイス孔11内に、下パンチ30およびコアロッド20によりフランジ部キャビティ71を形成する。そして、図2〜図3に示すように、フィーダ部43を有する柱部外周面形成ダイス42を下ダイス孔11方向に進出、後退させて、粉末フィーダ部からフランジ部キャビティ71に粉末を落下させて充填し、すり切りを行う。
(2)柱部キャビティへの粉末の充填
次に、図3に示すようにコアロッド20を上端面が中ダイス40の上面と同一平面になる位置まで上昇させる。この後、中ダイス40の窓部形成ダイス41を進出させて先端の円弧面41cをコアロッド20の外周面に密接させるとともに、各柱部外周面形成ダイス42を進出させて、これら柱部外周面形成ダイス42の側面42aを、隣の窓部形成ダイス41のストレート側面41aに密接させ、各ダイス41,42を合体させる(図15(a)に示すの状態)。これにより、図3に示すように、中ダイス40とコアロッド20との間に3つの柱部キャビティ72を形成する。これら3つの柱部キャビティ72を形成したら、図4に示すように、上ダイス50の可動プレート53を固定プレート52方向に進出させ、粉末フィーダ部56から柱部キャビティ72に粉末を落下させ充填する。
次に、図3に示すようにコアロッド20を上端面が中ダイス40の上面と同一平面になる位置まで上昇させる。この後、中ダイス40の窓部形成ダイス41を進出させて先端の円弧面41cをコアロッド20の外周面に密接させるとともに、各柱部外周面形成ダイス42を進出させて、これら柱部外周面形成ダイス42の側面42aを、隣の窓部形成ダイス41のストレート側面41aに密接させ、各ダイス41,42を合体させる(図15(a)に示すの状態)。これにより、図3に示すように、中ダイス40とコアロッド20との間に3つの柱部キャビティ72を形成する。これら3つの柱部キャビティ72を形成したら、図4に示すように、上ダイス50の可動プレート53を固定プレート52方向に進出させ、粉末フィーダ部56から柱部キャビティ72に粉末を落下させ充填する。
(3)ギヤ部/ボス部キャビティへの粉末の充填
次に、図5に示すように、柱部キャビティ72に粉末を充填した可動プレート53を後退させてすり切りを完了し、続いて、上ダイス50の昇降ダイス51を、中ダイス40の上面に当接するまで下降させてギヤ部/ボス部キャビティ73を形成する。そして図6〜図7に示すように、粉末フィーダ59をギヤ部/ボス部キャビティ73上に進出、後退させ、ギヤ部/ボス部キャビティ73に粉末を落下させて充填する。
次に、図5に示すように、柱部キャビティ72に粉末を充填した可動プレート53を後退させてすり切りを完了し、続いて、上ダイス50の昇降ダイス51を、中ダイス40の上面に当接するまで下降させてギヤ部/ボス部キャビティ73を形成する。そして図6〜図7に示すように、粉末フィーダ59をギヤ部/ボス部キャビティ73上に進出、後退させ、ギヤ部/ボス部キャビティ73に粉末を落下させて充填する。
(4)圧縮成形
以上で粉末の充填は完了し、続いて、図7に示すように、上パンチ60の全てを下降させて下端面を粉末の上面に当接させてから、図8に示すように、上パンチ60のうちのギヤ部形成上パンチ61と凹所形成上パンチ63を下降させながら、これら上パンチ61,63の間のボス部形成上パンチ62を所定量上昇させる。ここで凹所形成パンチ63の内部には、コアロッド20の上端部が摺動して挿入する。この動作により、ギヤ部/ボス部キャビティ73内の粉末は、ギヤ部形成上パンチ61と凹所形成上パンチ63により圧縮され、また、塑性流動してこれら上パンチ61,63の間の空間をボス部形成上パンチ62に向かって上昇する。
以上で粉末の充填は完了し、続いて、図7に示すように、上パンチ60の全てを下降させて下端面を粉末の上面に当接させてから、図8に示すように、上パンチ60のうちのギヤ部形成上パンチ61と凹所形成上パンチ63を下降させながら、これら上パンチ61,63の間のボス部形成上パンチ62を所定量上昇させる。ここで凹所形成パンチ63の内部には、コアロッド20の上端部が摺動して挿入する。この動作により、ギヤ部/ボス部キャビティ73内の粉末は、ギヤ部形成上パンチ61と凹所形成上パンチ63により圧縮され、また、塑性流動してこれら上パンチ61,63の間の空間をボス部形成上パンチ62に向かって上昇する。
次いで、図9に示すように、下パンチ60の各下パンチ31,32を、上端面が下ダイス10の上面のやや下方位置に揃う位置まで上昇させるとともに、上パンチ60の各上パンチ61,62,63を所定量下降させて粉末全体を軸方向に圧縮し、プラネタリキャリア1の圧粉体1Aに成形する。
(5)脱型
以上で粉末の圧縮成形は完了し、次いで金型を分解して圧粉体1Aを抜き出す脱型を行う。それには、まず図10に示すように、上ダイス50の昇降ダイス51を上昇させて固定プレート52および可動プレート53から抜き出す。次に、図11および図16に示すように、中ダイス40の各窓部形成ダイス41と各柱部外周面形成ダイス42を外側に移動させて圧粉体1Aから離間させる。中ダイス40の退避により、柱部7ならびに柱部7間の窓部8が現れる。
以上で粉末の圧縮成形は完了し、次いで金型を分解して圧粉体1Aを抜き出す脱型を行う。それには、まず図10に示すように、上ダイス50の昇降ダイス51を上昇させて固定プレート52および可動プレート53から抜き出す。次に、図11および図16に示すように、中ダイス40の各窓部形成ダイス41と各柱部外周面形成ダイス42を外側に移動させて圧粉体1Aから離間させる。中ダイス40の退避により、柱部7ならびに柱部7間の窓部8が現れる。
次に、図12に示すように、上パンチ60全体と下パンチ30全体とを、下パンチ30の上端面が下ダイス10の上面と同一平面になる位置まで同期させて上昇させ、続いて図13に示すようにコアロッド20を下ダイス孔11内に入るまで下降させ、また、上パンチ60全体を上昇させて圧粉体1Aから離間させる。これにより圧粉体1Aは下パンチ30の上に載っただけの状態となり、引き続き下パンチ30を上昇させればその圧粉体1Aを取り出すことができる。
[3]本実施形態の作用効果
上記本実施形態によれば、窓部8を形成する窓部形成ダイス41と柱部7の外周面を形成する柱部外周面形成ダイス42とを、いずれも径方向に脱型可能に組み込むことにより、従来では困難であったプラネタリキャリアの圧粉体の一体成形ができるようになった。このようにして得られた圧粉体を焼結して得られるプラネタリキャリアは、一体成形されたことにより寸法精度および強度が大幅に向上したものとなる。
上記本実施形態によれば、窓部8を形成する窓部形成ダイス41と柱部7の外周面を形成する柱部外周面形成ダイス42とを、いずれも径方向に脱型可能に組み込むことにより、従来では困難であったプラネタリキャリアの圧粉体の一体成形ができるようになった。このようにして得られた圧粉体を焼結して得られるプラネタリキャリアは、一体成形されたことにより寸法精度および強度が大幅に向上したものとなる。
また、本実施形態では、図2で示したフランジ部キャビティ71の形成工程で、下パンチ30の柱部対応下パンチ31をフランジ部対応下パンチ32よりも下降させて、柱部7に対応する箇所の粉末充填高さ、すなわち軸方向長さを大きくとることにより、軸方向がフランジ部3よりも長い柱部7の圧粉密度をフランジ部3と同等に調整することができる。このため、柱部7の強度を他の部分と同等とすることができ、強度面での欠陥の発生を防ぐことができる。
なお、本実施形態では、上ダイス50の可動プレート53にフィーダ部56を設けているが、このフィーダ部56を省略し、図6に示したギヤ部/ボス部キャビティ73への粉末の充填工程の時に、粉末フィーダ59から柱部キャビティ72にも粉末を充填することができる。このような簡素な構成にすることにより、粉末充填の工程数を減らすことができ、生産性が向上するという利点がある。
1…プラネタリキャリア(複雑形状焼結機械部品)、1A…圧粉体、2…胴部、3…フランジ部、4…ギヤ部、4a…ギヤ歯、5…ボス部、5a…スプライン歯、6…軸孔、7…柱部、7b…柱部の側面、8…窓部、10…下ダイス、11…下ダイス孔、20…コアロッド、30…下パンチ、31…柱部対応下パンチ(第1の下パンチ)、32…フランジ部対応下パンチ(第2の下パンチ)、41…窓部形成ダイス、42…柱部外周面形成ダイス、50…上ダイス、55…上ダイス孔、60…上パンチ、71…フランジ部キャビティ、72…柱部キャビティ、73…ギヤ部/ボス部キャビティ。
Claims (2)
- 断面扇状の複数の柱部が、互いに平行に、かつ、間に窓部を空けて周方向に配列されてなる円筒状の胴部と、
この胴部の一端に、該胴部と同心状に形成された円板状のフランジ部と、
前記胴部の他端に、該胴部と同心状に形成され、外周面にギヤ歯が形成された円板状のギヤ部と、
このギヤ部の端面に、前記胴部と同心状に形成され、外周面にスプライン歯が形成された環状のボス部とを有し、
中心に、前記フランジ部から前記ギヤ部にわたって貫通し、かつ、前記柱部に囲繞される軸孔が形成され、前記ボス部の内径はその軸孔よりも大径とされた複雑形状焼結機械部品を得るにあたり、粉末を圧縮成形して該機械部品に近似する形状の圧粉体を成形するための金型であって、
前記フランジ部の外径に対応する内径の断面円形状の下ダイス孔を有する下ダイスと、
この下ダイスの前記下ダイス孔に同心状に挿入され、前記軸孔を形成する円柱状のコアロッドと、
前記下ダイスの上面に、下ダイス孔の中心に対して該下ダイス孔の略径方向に進退自在に支持され、進出時に先端がコアロッドに当接して、前記柱部間の窓部および前記柱部の側面を形成する複数の窓部形成ダイスと、
前記下ダイスの上面の前記窓部形成ダイスの間に配されるとともに、前記下ダイス孔の中心に対して該下ダイス孔の略径方向に進退自在に支持され、進出時に各窓部形成ダイスと合体状態となって前記柱部の外周面を形成し、かつ、前記柱部に対応する柱部キャビティを、コアロッドおよび窓部形成ダイスとともに形成する複数の柱部外周面形成ダイスと、
前記下ダイスの前記下ダイス孔に挿入され、前記柱部キャビティに連通する前記フランジ部に対応するフランジ部キャビティを形成する下パンチと、
前記窓部形成ダイスおよび前記柱部外周面形成ダイスの上面に設けられ、前記ギヤ部のギヤ歯の形状に対応する内周面を有する断面円形状の上ダイス孔を有する上ダイスと、
この上ダイスの前記上ダイス孔に挿入され、前記ギヤ部および前記ボス部を形成する上パンチと
を具備することを特徴とする複雑形状焼結機械部品の成形金型。 - 前記下パンチは、少なくとも、前記柱部に対応して配され、該柱部、および前記フランジ部の該柱部に対応する部分を圧縮する複数の第1の下パンチと、
前記フランジ部の前記柱部以外の部分に対応して配され、フランジ部の該柱部以外の部分を圧縮する第2の下パンチとを有することを特徴とする請求項1に記載の複雑形状焼結機械部品の成形金型。
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