JP2009250212A - 内燃機関のノック判定装置およびノック判定方法 - Google Patents

内燃機関のノック判定装置およびノック判定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ノックの誤判定を抑制する。
【解決手段】エンジンECUは、各気筒の振動強度を取得するステップ(S100)と、ゲインを設定するステップ(S102)と、補正値を演算するステップ(S104)と、標準偏差を演算するステップ(S106)と、係数uを演算するステップと(S108)と、各気筒の頻度分布中央値の平均値を演算するステップ(S110)と、エンジンが過渡状態であると(S112にてYES)、更新制限を弱めるステップ(S114)と、そうでないと(S112にてNO)、更新制限を強めるステップ(S116)と、ノック判定値を演算するステップ(S118)と、演算されたノック判定値が補正値よりも小さいか否かを判定するステップ(S120)とを含む、プログラムを実行する。
【選択図】図6

Description

本発明は、内燃機関においてノックが発生したか否かを判定するノック判定装置に関し、特に、ノックの誤判定を抑制する技術に関する。
従来より、内燃機関において発生するノックを精度よく検出する様々な方法が提案されている。たとえば、内燃機関の振動の強度がしきい値よりも高いとノックが発生したと判定する技術がある。しかしながら、運転状態の急変や、機械ノイズなどによる振動強度の上昇により、ノックを誤判定する可能性がある。
このような問題に鑑みて、特開2007−77968号公報(特許文献1)は、ノック発生によるノック判定値の上昇を抑制しつつ、運転条件の急変やノイズ等による振動強度のステップ的なレベル上昇に対しては、これに追従させてノック判定値を上昇させる内燃機関のノック判定装置を開示する。この内燃機関のノック判定装置は、内燃機関のノック振動を検出するノックセンサと、内燃機関の運転中に所定のサンプル周期でノックセンサの出力信号から振動強度を算出する振動強度算出手段と、振動強度のデータを統計的に処理して振動強度分布の統計的指標を算出する分布判定手段と、振動強度分布の統計的指標に基づいてノック判定値を設定するノック判定値設定手段と、振動強度を前記ノック判定値と比較してノックの有無を判定するノック判定手段とを備える。分布判定手段は、ノック判定値を超える大きな振動強度のデータを統計的指標の算出に使用しないようにする手段と、振動強度が連続的にノック判定値を超える回数又は頻度が所定値以上となったときにノック判定値を超える大きな振動強度のデータも統計的指標の算出に使用する手段とを備えていることを特徴とする。
上述した公報に開示された内燃機関のノック判定装置によると、振動強度が連続的にノック判定値を超える回数又は頻度が所定値未満であれば、ノックによる振動強度の上昇と判断して、ノック判定値を超える大きな振動強度のデータを統計的指標の算出に使用しないようにすることで、ノック判定値の更新を禁止して、ノック発生によるノック判定値の上昇を抑制し、ノック発生時にノックを検出しにくくなる現象を回避する。
特開2007−77968号公報
ところで、複数の気筒を有する内燃機関において、過渡状態であるか定常状態であるかの判定は、各気筒の振動強度の頻度分布の中央値の平均値の変化量を用いて行なわれる。しかしながら、特定の気筒における特定のノイズが重畳する運転領域においては、平均値を不要に上昇させる場合がある。そのため、内燃機関の出力が上昇するなどして、過渡状態になったときに特定の気筒において特定のノイズが重畳する運転領域からノイズの重畳の程度が減少する運転領域に移行するなどした場合には、全気筒において振動強度のレベルが上昇しているにも関わらず、平均値の変化量が小さくなる場合がある。その結果、内燃機関の状態の変化を精度よく判定することができず、内燃機関の状態の変化に追従してノック判定値を変化させることができないという問題がある。特に、内燃機関が過渡状態になったときにノック判定値を追従させることができないとノックの誤判定が多発する可能性がある。そのため、過度の点火時期の遅角や、過度の遅角による燃費および耐久性の悪化、出力の低下あるいは排気温度の過上昇等の問題が生じる。
上述した公報に開示されたノック判定装置においては、このような問題について何ら考慮されていないため、解決することができない。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ノックの誤判定を抑制する内燃機関のノック判定装置およびノック判定方法を提供することである。
第1の発明に係る内燃機関のノック判定装置は、内燃機関においてノックが発生したか否かを判定するノック判定装置である。内燃機関は、複数の気筒を含む。このノック判定装置は、内燃機関の作動時において、複数の気筒のうちのいずれかの気筒に対応する予め定められたクランク角度範囲内の振動強度を検出するための検出手段と、検出された振動強度に、他の気筒とのノイズレベルの差を縮小するゲインを乗じた値を振動強度の補正値として演算するための手段と、振動強度の補正値に基づいて振動強度の頻度分布の中央値を演算するための手段と、複数の気筒の各々に対応する振動強度の頻度分布の中央値の平均値を演算するための手段と、振動強度の頻度分布に基づいて、演算された平均値の変化量に基づく内燃機関の作動状態に対応したノック判定値を演算するための演算手段と、補正値とノック判定値とに基づいて内燃機関においてノックが発生したか否かを判定するための手段とを含む。第5の発明に係る内燃機関のノック判定方法は、第1の発明に係る内燃機関のノック判定装置と同様の構成を有する。
第1の発明によると、検出された振動強度にゲインを乗じて補正値を演算することにより、複数の気筒の間においてバックグランドレベルの差を縮小することができる。そのため、複数の気筒の各々に対応する振動強度の頻度分布の中央値の平均値の変化量に基づいて内燃機関の状態の変化を精度よく判定することができる。すなわち、内燃機関が過渡状態であるか定常状態であるかを精度よく判定することができる。その結果、内燃機関が定常状態から過渡状態に移行するなどした場合においても、ノック判定値を内燃機関の状態の変化に精度よく追従させることができるため、ノックの誤判定を抑制することができる。したがって、ノックの誤判定を抑制する内燃機関のノック判定装置およびノック判定方法を提供することができる。
第2の発明に係る内燃機関のノック判定装置は、第1の発明の構成に加えて、内燃機関の負荷を検出するための手段と、検出された負荷に基づく内燃機関の作動状態が、ノイズを発生する予め定められた作動状態になると補正値が前記検出された振動強度よりも小さくなるようにゲインを設定するためのゲイン設定手段とをさらに含む。第6の発明に係るの内燃機関のノック判定方法は、第2の発明に係る内燃機関のノック判定装置と同様の構成を有する。
第2の発明によると、検出された負荷に基づく内燃機関の作動状態が、ノイズを発生する予め定められた状態になると補正値が検出された振動強度よりも小さくなるようにゲインを設定することにより、たとえば、特定のノイズ(たとえば、内燃機関の構成部品の作動時に生ずる音)が重畳する内燃機関の作動状態において検出された振動強度よりも小さくなるように補正値が演算されるため、各気筒における頻度分布の中央値の平均値の不要な引き上げを抑制することができる。そのため、内燃機関の作動状態を精度よく判定することができる。
第3の発明に係る内燃機関のノック判定装置においては、第2の発明の構成に加えて、予め定められた作動状態は、気筒内のピストンの首振り音が発生する状態、フューエルポンプの作動音が発生する状態、燃料噴射装置の作動音が発生する状態および吸気バルブおよび排気バルブのうちの少なくともいずれか一方の着座音が発生する状態のうちの少なくともいずれかの状態である。第7の発明に係る内燃機関のノック判定方法は、第3の発明に係る内燃機関のノック判定装置と同様の構成を有する。
第3の発明によると、ピストンの首振り音が発生する状態、フューエルポンプの作動音が発生する状態、燃料噴射装置の作動音が発生する状態および吸気バルブおよび排気バルブのうちの少なくともいずれか一方の着座音が発生する状態のうちの少なくともいずれかの状態に対応してゲインを設定することにより、各気筒における頻度分布の中央値の平均値が不要に引き上げられることを抑制することができる。そのため、内燃機関の作動状態を精度よく判定することができる。
第4の発明に係る内燃機関のノック判定装置は、第1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、演算された平均値の変化量に基づいて内燃機関が過渡状態および定常状態のうちのいずれの状態であるかを判定するための手段をさらに含む。演算手段は、定常状態であることが判定されるとノック判定値の変化の制限を強めるようにしてノック判定値を演算するための手段と、過渡状態であることが判定されるとノック判定値の変化の制限を弱めるようにしてノック判定値を演算するための手段とを含む。第9の発明に係る内燃機関のノック判定方法は、第4の発明に係る内燃機関のノック判定装置と同様の構成を有する。
第4の発明によると、定常状態であることが判定されるとノック判定値の変化の制限を強めることにより、定常状態においてノック判定値が大きく変化することが抑制されるため、ノックが発生しているか否かを精度よく判定することができる。一方、過渡状態であることが判定されるとノック判定値の変化の制限を弱めることにより、内燃機関の状態の変化にノック判定値を追従させることができる。そのため、内燃機関の過渡状態におけるノックの誤判定を抑制することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る内燃機関のノック判定装置を搭載した車両は、エンジン300と、エンジンECU100と、車速センサ104とを含む。エンジン300は複数の気筒を含む。本実施の形態において、エンジン300は、V型8気筒エンジンを一例として説明するが、特にエンジンの形式、気筒数は、これに限定されるものではない。また、本実施の形態に係る内燃機関のノック判定装置は、エンジンECU(Electronic Control Unit)100が実行するプログラムにより実現される。
エンジン300は、複数のバンクを有する。本実施の形態においてエンジン300は、2つのバンク302,304を有する。
バンク302は、シリンダブロック358と、シリンダブロック358に形成される気筒310と、気筒310内に摺動可能に設けられるピストン314と、気筒310の上部に接続される吸気通路368と、吸気通路368と気筒310とを連通状態にしたり遮断状態にしたりする吸気バルブ322と、気筒310の上部に接続される排気通路400と、排気通路400と気筒310とを連通状態にしたり遮断状態にしたりする排気バルブ338と、気筒310の上部に設けられる点火プラグ330と、吸気バルブ322および排気バルブ338の開閉タイミングを可変とするバルブタイミング可変機構326と、吸気通路368の途中に設けられるインジェクタ318とを含む。
バンク304は、シリンダブロック360と、シリンダブロック360に形成される気筒312と、気筒312内に摺動可能に設けられるピストン316と、気筒312の上部に接続される吸気通路370と、吸気通路370と気筒312とを連通状態にしたり遮断状態にしたりする吸気バルブ324と、気筒312の上部に接続される排気通路402と、排気通路402と気筒312とを連通状態にしたり遮断状態にしたりする排気バルブ340と、気筒312の上部に設けられる点火プラグ332と、吸気バルブ324および排気バルブ340の開閉タイミングを可変とするバルブタイミング可変機構328と、吸気通路370の途中に設けられるインジェクタ320とを含む。
点火プラグ330,332は、エンジンECU100の制御信号を受信したイグナイター362,364により制御信号に対応した点火時期において点火される。
インジェクタ318,320は、エンジンECU100から受信する制御信号に基づいて吸気通路368,370内に燃料を噴射する燃料噴射装置である。
吸気通路368,370は、吸気通路202に接続される。吸気通路202の途中には、エアクリーナ200と、吸気温度センサ208と、エアフローメータ210と、スロットルバルブ204とが設けられる。スロットルバルブ204は、スロットルモータ206により開度が調整される。スロットルモータ206により調整されたスロットルバルブ204の開度は、スロットル開度センサ212により検出される。スロットル開度センサ212は、検出されたスロットルバルブ204の開度を示す信号をエンジンECU100に送信する。
エアフローメータ210は、吸気通路202内を流通する空気の流量(以下、吸入空気量という)を検出する、エアフローメータ210は、検出された空気の流量を示す信号をエンジンECU100に送信する。なお、エアフローメータ210に代えて吸気通路202の途中に圧力センサを設けて、吸気通路202内の圧力に基づいて吸入空気量を推定するようにしてもよい。
吸気温度センサ208は、吸気通路202内を流通する空気の温度を検出する。吸気温度センサ208は、検出された空気の温度を示す信号をエンジンECU100に送信する。
エアクリーナ200から吸入された空気は、インジェクタ318,320から噴射される燃料と混合される。混合された混合気は、気筒310または気筒312の燃焼室内で点火プラグ330,332により点火される。
点火プラグ330,332による点火時期は、出力トルクが最大になるMBT(Minimum advance for Best Torque)になるように制御されるが、ノックが発生した場合など、エンジン300の運転状態に応じて遅角されたり、進角されたりする。
点火により混合気が燃焼すると、燃焼圧によりピストン314またはピストン316が押し下げられ、クランクシャフト366が回転する。燃焼後の混合気(排気ガス)は、三元触媒404,406,408により浄化された後、車外に排出される。エンジン300に吸入される空気の量は、スロットルバルブ204により調整される。
エンジン300の動作は、エンジンECU100により制御される。エンジンECU100は、電源である補機バッテリ(図示せず)から供給された電力により作動する。エンジンECU100は、各センサから送信された信号、ROM(Read Only Memory)等のメモリ(図示せず)に記憶されたマップおよびプログラムに基づいて演算処理を行ない、エンジン300が所望の運転状態となるように、機器類を制御する。
エンジンECU100には、タイミングロータ346に対向して設けられたクランクポジションセンサ102と、スロットル開度センサ212と、車速センサ104と、エアフローメータ210とが接続されている。
タイミングロータ346は、クランクシャフト366に設けられており、クランクシャフト366とともに回転する。タイミングロータ346の外周には、予め定められた間隔で複数の突起が設けられている。クランクポジションセンサ102は、タイミングロータ346の突起に対向して設けられている。タイミングロータ346が回転すると、タイミングロータ346の突起と、クランクポジションセンサ102とのエアギャップが変化するため、クランクポジションセンサ102のコイル部を通過する磁束が増減し、コイル部に起電力が発生する。クランクポジションセンサ102は、起電力を表す信号を、エンジンECU100に送信する。エンジンECU100は、クランクポジションセンサ102から受信した信号に基づいて、クランク角度およびクランクシャフト366の回転数を演算する。
スロットル開度センサ212は、スロットル開度を検出し、検出結果を表す信号をエンジンECU100に送信する。車速センサ104は、車輪(図示せず)の回転数を検出し、検出結果を表す信号をエンジンECU100に送信する。エンジンECU100は、車輪の回転数から車速を演算する。エアフローメータ210は、エンジン300に吸入される空気量を検出し、検出結果を表す信号をエンジンECU100に送信する。
図2に示すように、エンジンECU100には、さらに、ノックセンサ350,352,354,356が接続される。
バンク302には、気筒310が車両の前後方向に沿って4個直列に形成される。以下の説明において、バンク302の4個の気筒310を車両の前方側から気筒(1)、気筒(3)、気筒(5)および気筒(7)と記載する。ノックセンサ350は、気筒(1)および気筒(3)の間に位置するようにシリンダブロック358に取付けられる。また、ノックセンサ354は、気筒(5)および気筒(7)の間に位置するようにシリンダブロック358に取付けられる。
同様に、バンク304には、気筒312が車両の前後方向に沿って4個直列に形成される。以下の説明において、バンク304の4個の気筒312を車両の前方側から気筒(2)、気筒(4)、気筒(6)および気筒(8)と記載する。ノックセンサ352は、気筒(2)および気筒(4)の間に位置するようにシリンダブロック360に取付けられる。また、ノックセンサ356は、気筒(6)および気筒(8)の間に位置するようにシリンダブロック360に取付けられる。
ノックセンサ350,352,354,356は、圧電素子により構成されている。ノックセンサ350,352,354,356は、エンジン300の振動(具体的には、気筒(1)〜(8)の各々における燃料による振動)により電圧を発生する。電圧の大きさは、振動の大きさと対応した大きさとなる。ノックセンサ350,352,354,356は、電圧を表す信号をエンジンECU100に送信する。
各気筒(1)〜(8)の行程は、クランクポジションセンサ102により検出されるクランク角度により特定される。V型8気筒のエンジン300においては、クランクシャフト366が2回転(720度回転)する間に気筒(1)〜気筒(8)において燃焼が行なわれる。気筒の点火順序は、気筒(1)→気筒(8)→気筒(7)→気筒(3)→気筒(6)→気筒(5)→気筒(4)→気筒(2)である。したがって、クランクシャフト366のクランク角度が120度回転する毎に上記順序で燃焼が行なわれる。
以下の説明において各気筒の上死点に対応するクランク角度から予め定められたクランク角度だけ進めたクランク角度までの範囲(クランク角度範囲)をゲートという。
エンジンECU100は、クランクポジションセンサ102により検出されるクランク角度に基づいて気筒(1)〜気筒(8)のそれぞれに対応するゲートを特定する。エンジンECU100は、ノックセンサ350,352,354,356のうちの対応するノックセンサから受信する振動検出信号に基づいて各気筒に対応するゲートにおける振動強度を検出する。エンジンECU100は、検出された振動強度をノック判定値と比較して、ノック判定値よりも大きいとノックが発生していることを判定し、ノック判定値以下であるとノックが発生していないことを判定する。エンジンECU100は、ノックが発生していることを判定すると点火時期を遅角補正してノックの発生を抑制する。エンジンECU100は、ノックが発生していないことを判定すると点火時期を進角補正してエンジンの出力および燃費を向上させる。
以上のような構成を有する車両において、本発明は、エンジンECU100が、複数の気筒のうちのいずれかの気筒に対応するゲートにおいて検出された振動強度に、他の気筒とのノイズレベルの差を縮小するゲインを乗じた値を振動強度の補正値として演算して、演算された補正値に基づいてエンジン300のにノックが発生したか否かを判定する点を特徴とする。
具体的には、エンジンECU100は、ノックセンサ350,352,354,356の出力信号に基づいて各気筒に対応するゲートにおける出力信号のピーク値を対数変換した値を振動強度として検出する。
たとえば、エンジンECU100は、クランク角度が気筒(1)に対応するゲートであるとき、気筒(1)に最も近いノックセンサ350の出力信号に基づいて振動強度を検出する。同様に、エンジンECU100は、気筒(2)〜気筒(8)に対応するゲートについても各気筒に対応するノックセンサ350,352,354,356のいずれかの出力信号に基づいて振動強度を検出する。
エンジンECU100は、各気筒に対応するゲート内における出力信号のピーク値を対数変換した値を振動強度として演算する。なお、ゲート内の出力信号の積算値を対数変換した値を振動強度として演算するようにしてもよい。
エンジンECU100は、演算された振動強度にエンジン300の負荷に応じて設定されるゲインを乗じて補正値を演算する。エンジンECU100は、演算された補正値に基づいて振動強度の頻度分布の中央値を演算する。エンジンECU100は、気筒(1)〜(8)の各々に対応する振動強度の頻度分布の中央値の平均値を演算する。
エンジンECU100は、演算された平均値の変化量に基づいてエンジン300の状態が定常状態であるかあるいは過渡状態であるかを判定する。また、エンジンECU100は、振動強度の頻度分布に基づいて、判定されたエンジン300の状態に対応したノック判定値を演算する。エンジンECU100は、補正値とノック判定値とに基づいてエンジン300においてノックが発生したか否かを判定する。
エンジンECU100は、エンジン300の負荷に基づくエンジン300の作動状態が、ノイズを発生する予め定められた作動状態になるとゲインが小さくなるように設定する。
図3に、本実施の形態に係る内燃機関のノック判定装置であるエンジンECU100の機能ブロック図を示す。
エンジンECU100は、入力インターフェース(以下、入力I/Fと記載する)500と、演算処理部510と、記憶部540と、出力インターフェース(以下、出力I/Fと記載する)550とを含む。
入力I/F500は、エアフローメータ210からの吸入空気量信号と、スロットル開度センサ212からのスロットル開度信号と、クランクポジションセンサ102からのクランクポジション信号と、ノックセンサ350,352,354,356からの振動検出信号(1)〜(4)とを受信して演算処理部510に送信する。
演算処理部510は、振動強度検出部512と、ゲイン設定部514と、補正値演算部516と、標準偏差演算部518と、係数演算部520と、平均値演算部522と、状態判定部524と、ノック判定値演算部526と、ノック判定部528と、点火時期制御部530とを含む。
振動強度検出部512は、気筒(1)〜(8)のそれぞれに対応するゲート内の出力信号のピーク値を検出する。振動強度検出部512は、取得した出力信号のピーク値を対数変換した値を振動強度として検出する。このようにして、振動強度検出部512は、気筒(1)〜(8)のそれぞれに対応する振動強度を検出する。なお、振動強度検出部512は、気筒(1)〜(8)のそれぞれに対応するゲートをクランクポジション信号に基づいて特定すればよい。また、振動強度検出部512は、取得した出力信号のうちのノックが重畳しやすい予め定められた周波数帯の振動を抽出して、抽出された振動のピーク値を対数変換した値を振動強度として検出するようにしてもよい。
振動強度検出部512は、たとえば、クランクポジション信号に基づいてクランク角度が気筒(1)〜(8)のいずれかに対応するゲート内である場合は、気筒(1)〜(8)のいずれかのゲート内であることを示すフラグをオンする。振動強度検出部512は、フラグの状態に基づいてゲートを特定し、対応するノックセンサの出力信号に基づいて振動強度を検出する。振動強度検出部512は、演算された振動強度を気筒(1)〜気筒(8)に対応づけて記憶部540に記憶する。
ゲイン設定部514は、受信した吸入空気量とエンジン300の回転数とに基づいて他の気筒とのノイズレベルの差を縮小するゲインを設定する。ゲイン設定部514は、エンジン300の負荷に基づくエンジン300の作動状態が、ノイズを発生する予め定められた作動状態になると補正値が検出された振動強度よりも小さくなるようにゲインを設定する。
ノイズを発生する予め定められた作動状態は、ピストン312,314の首振り音が発生する状態、フューエルポンプ(図示せず)の作動音が発生する状態、インジェクタ318,320の作動音が発生する状態および吸気バルブ322,324および排気バルブ338,340のうちの少なくともいずれか一方の着座音が発生する状態のうちの少なくともいずれかの状態である。
ゲイン設定部514は、クランクポジションセンサ102から受信するクランクポジション信号に基づいてエンジン300の回転数を演算する。ゲイン設定部514は、検出された吸入空気量と演算されたエンジン300の回転数と予め定められたマップとに基づいてゲインを設定する。
予め定められたマップは、吸入空気量とエンジン300の回転数とゲインとの関係を示すマップであって、実験等により適合される。たとえば、マップは、吸入空気量およびエンジン300の回転数の全域に対してゲインを設定するようにしてもよいし、図4に示すエンジン300の特定の運転領域(図4の斜線領域)に対してゲインを設定するようにしてもよい。図4のマップにおいて、縦軸はエンジン300の負荷を示し、横軸は、エンジン300の回転数を示す。マップ上に設定されるゲインは、ノイズを発生する予め定められた作動状態に対応した値が設定される。マップにおいて、ゲインは、ノイズが発生すると想定される特定の運転領域において補正値が検出された振動強度よりも小さくなる値(すなわち、1.0よりも小さい値)が設定される。また、マップは、特定の運転領域以外の領域においてゲインを1.0とするマップであってもよい。また、各気筒ごとに異なるマップを設定しておくようにしてもよいし、全気筒に対して共通して用いられるマップを設定しておくようにしてもよい。なお、マップに代えて関数等の数式、表等を用いてゲインを設定するようにしてもよい。
補正値演算部516は、振動強度検出部512において演算された振動強度に、ゲイン設定部514において設定されたゲインを乗じて振動強度の補正値を気筒毎に演算する。
標準偏差演算部518は、演算された補正値に基づいて振動強度の頻度分布における標準偏差σと中央値VMEDとを気筒毎に演算する。標準偏差演算部518は、図5に示すように、振動強度の頻度分布の特徴を表す統計的指標である中央値VMEDと、この中央値VMEDより振動強度が小さい領域の標準偏差σ(ばらつき指標)を算出する。
係数演算部520は、演算された標準偏差σを係数u倍してノック判定値を算出する際の係数uをエンジン300の作動状態(たとえば、エンジン300の負荷)に応じて演算する。なお、たとえば、係数uを定数(たとえば、3前後の値)としてもよい。また、係数uは、気筒毎に異なる値を設定するようにしてもよいし、全気筒において共通の係数uを設定するようにしてもよい。
平均値演算部522は、各気筒の振動強度の頻度分布の中央値VMEDの平均値を算出する。平均値演算部522は、気筒(1)〜気筒(8)の振動強度が演算された時点(すなわち、クランクシャフト366が2回転した時点)で気筒(1)〜気筒(8)の各々における振動強度の頻度分布を更新して中央値VMEDを算出し、気筒(1)〜気筒(8)に対応する中央値VMED(1)〜(8)の平均値を算出する。なお、検出された振動強度がノック判定値よりも大きいノックである場合は、その振動強度を用いて頻度分布を更新しないようにすることが望ましい。
状態判定部524は、算出された平均値の変化量に基づいてエンジン300の状態が定常状態であるか、あるいは過渡状態であるかを判定する。たとえば、状態判定部は、算出された平均値の変化量が予め定められた量以上であるとエンジン300が過渡状態であることを判定する。状態判定部524は、算出された平均値の変化量が予め定められた量よりも低いとエンジン300が定常状態であることを判定する。なお、状態設定部524は、たとえば、エンジン300が過渡状態であることを判定すると、過渡判定フラグをオンするようにしてもよい。なお、状態判定部524は、今回算出された平均値と前回算出された平均値との差により平均値の変化量を演算するようにしてもよいし、あるいは、今回算出された平均値以前の平均値の時間変化量を演算するようにしてもよい。
ノック判定値演算部526は、振動強度の頻度分布の中央値VMEDに標準偏差σに係数uを乗じた値を加算してノック判定値を気筒毎に算出する。すなわち、ノック判定値は、ノック判定値=VMED+u×σの式により算出される。
なお、ノック判定値演算部526は、エンジン300の状態に応じて上述の式により算出されたノック判定値の更新量(前回演算されたノック判定値からの変化量)を制限する。ノック判定値演算部526は、エンジン300が定常状態であることが判定されるとノック判定値の変化の制限を強めるようにしてノック判定値を演算する。すなわち、ノック判定値演算部526は、定常状態であることが判定されると更新量を予め定められた値に制限する。予め定められた値は、過渡状態であることが判定された場合の更新量よりも小さい値である。
さらに、ノック判定値演算部526は、エンジン300が過渡状態であることが判定されるとノック判定値の変化の制限を弱めるようにしてノック判定値を演算する。すなわち、ノック判定値演算部526は、過渡状態であることが判定されると定常状態であることが判定される場合の更新量よりも大きい予め定められた値に更新量を制限する。ノック判定値演算部526は、たとえば、過渡判定フラグの状態に応じて更新量を演算するようにしてもよい。
ノック判定部528は、演算されたノック判定値と、演算された補正値とに基づいてエンジン300にノックが発生したか否かを判定する。すなわち、ノック判定部528は、演算された補正値がノック判定値よりも大きいと、エンジン300にノックが発生したことを判定する。ノック判定部528は、演算された補正値がノック判定値以下であると、エンジン300にノックが発生していないことを判定する。
点火時期制御部530は、ノックが発生したことを判定すると点火時期を遅角補正してノックを抑制する。さらに、点火時期制御部530は、ノックが発生していないことを判定すると点火時期を進角補正してエンジンの出力および燃費を向上させる。なお、点火時期制御部530は、ノックが発生していないことを予め定められた期間あるいは回数判定されると点火時期を進角補正するようにしてもよい。
以下、図6を用いて本実施の形態に係る内燃機関のノック判定装置であるエンジンECU100で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、エンジンECU100は、ノックセンサ350,352,354,356の出力信号のピーク値を対数変換して気筒(1)〜(8)の各々に対応する振動強度を取得する。S102にて、エンジンECU100は、吸入空気量とエンジン300の回転数とマップとに基づいてゲインを設定する。
S104にて、エンジンECU100は、取得された振動強度に設定されたゲインを乗じて補正値を演算する。S106にて、エンジンECU100は、各気筒に対応する振動強度の頻度分布における標準偏差σを演算する。
S108にて、エンジンECU100は、エンジン300の回転負荷に応じて係数uを演算する。S110にて、エンジンECU100は、各気筒に対応する振動強度の頻度分布における中央値VMED(1)〜(8)の平均値を演算する。S112にて、エンジンECU100は、エンジン300の状態が過渡状態であるか否かを判定する。エンジン300の状態が過渡状態であると(S112にてYES)、処理はS114に移される。もしそうでないと(S112にてNO)、処理はS116に移される。
S114にて、エンジンECU100は、ノック判定値の更新量の制限を弱める。S116にて、エンジンECU100は、ノック判定値の更新量の制限を強める。S118にて、エンジンECU100は、気筒(1)〜気筒(8)の各々に対応するノック判定値を演算する。
S120にて、エンジンECU100は、気筒(1)〜気筒(8)の各々において演算されたノック判定値が補正値よりも小さいか否かを判定する。気筒(1)〜気筒(8)のいずれかにおいてノック判定値が補正値よりも小さいと(S120にてYES)、処理はS122に移される。もしそうでないと(S120にてNO)、処理はS126に移される。
S122にて、エンジンECU100は、ノックが発生していることを判定する。S124にて、エンジンECU100は、点火時期を遅角補正する遅角制御を実行する。一方、S126にて、エンジンECU100は、ノックが発生していないことを判定する。S128にて、エンジンECU100は、点火時期を進角補正する進角制御を実行する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る内燃機関のノック判定装置であるエンジンECU100の動作について説明する。
エンジン300のクランクシャフト366が2回転する毎に、ノックセンサ350,352,354,356の振動出力信号(1)〜(4)に基づいて気筒(1)〜気筒(8)のゲート内の振動強度が演算される(S100)。
吸入空気量とエンジン300の回転数とに基づいてゲインが設定される(S102)。演算された振動強度にゲインを乗じて補正値が演算される(S104)。演算された補正値に基づいて振動強度の頻度分布が更新されて、更新された頻度分布に基づいて標準偏差σが演算される(S106)。
さらに、エンジン300の負荷に基づいて係数uが演算される(S108)。また、各気筒の頻度分布の中央値VMED(1)〜(8)に基づく平均値が演算されて、演算された平均値の変化量が予め定められた値以上であるとエンジン300が過渡状態であることが判定される(S112にてYES)。
このとき、更新制限が弱められるため、過渡状態におけるエンジン300の状態の変化に追従したノック判定値が演算される(S118)。一方、過渡状態でない、すなわち、定常状態であることが判定されると(S112にてNO)、更新制限が強められるためノック判定値として、前回のノック判定値に対して大きく変化しない値が演算される。
気筒(1)〜(8)のいずれかにおいてノック判定値が振動強度の補正値よりも小さいことが判定されると(S120にてYES)、ノックが発生していることが判定されて(S122)、遅角制御が実行される(S124)。
一方、気筒(1)〜(8)のいずれにおいてもノック判定値が補正値以上であるとノックが発生していないことが判定されて(S126)、進角制御が実行される(S128)。
このように動作するノック判定装置において、仮にゲインが設定されない場合を想定すると、図7に示すように、特定の気筒に特定のノイズが発生する領域においてノックセンサ350,352,354,356の振動出力信号(1)〜(4)に基づく気筒(1)〜(8)の振動強度を示す信号出力値にはバラツキが発生する。
特に、気筒(2)、気筒(3)および気筒(5)は、ノイズを発生する作動状態になるため、他の気筒よりも程度の大きいノイズが重畳して、気筒(1)〜(8)の頻度分布における中央値VMED(1)〜(8)の平均値は、引き上げられた状態となる。
このような状態において、時間T(1)にて、運転者がアクセルペダルを踏み込むなどしてアクセル開度が上昇すると、スロットル開度および吸入空気量が増加する。吸入空気量の増加に伴なって燃料噴射量が増量されてエンジン300の回転数が上昇し、エンジン回転数の上昇に伴なってエンジン300の負荷率が上昇する。
エンジン300の運転状態が変化することにより、気筒(2)、気筒(3)および気筒(5)において、ノイズの発生の程度が低下すると、気筒(1)〜気筒(8)のそれぞれに対応する振動強度を示す信号出力値は、同程度になるように変化する。
このとき、エンジン300の運転状態の変化にともなって、気筒(1)、(4)、(6)〜(8)における振動強度のレベルが上昇しているにもかかわらず、気筒(2)、(3)および(5)において振動強度のレベルが低下するため、中央値VMED(1)〜(8)の平均値は、変化しない。そのため、エンジン300が過渡状態であることが判定されず、定常状態であることが判定されるため、ノック判定値の更新量の制限は強められる。したがって、エンジン300の過渡状態における振動強度のレベルの上昇に対してノック判定値が追従して設定されないため、ノック判定が多発することとなり、点火時期は過度に遅角補正されることとなる。
時間T(3)において、アクセルペダル開度が緩められると、スロットル開度および吸入空気量が減少する。吸入空気量の減少に伴なって燃料噴射量が減量されてエンジン300の回転数が減少し、エンジン回転数の減少に伴なって、エンジン300の負荷率が低下する。このとき、気筒(2)、気筒(3)および気筒(5)が、再びノイズを発生する作動状態になると、時間T(4)以降において、気筒(1)〜気筒(8)の振動強度を示す信号出力値にはバラツキが発生する。
一方、ゲインを設定する場合においては、図8に示すように、特定の気筒に特定のノイズが発生する領域においてノックセンサ350,352,354,356の振動出力信号(1)〜(4)に基づく気筒(1)〜(8)の振動強度を示す信号出力値は、他の気筒のノイズレベルの差が縮小するようにゲインにより補正されることとなる。そのため、気筒(1)〜気筒(8)のそれぞれに対応する振動強度を示す信号出力値は、同程度になるように変化する。
また、時間T’(1)にて、運転者がアクセルペダルを踏み込むなどしてアクセル開度が上昇して、エンジン300が過渡状態になると、気筒(2)、気筒(3)および気筒(5)において、ノイズの発生の程度の低下とともに設定されたゲインの影響の程度も低下するため、気筒(1)〜気筒(8)のそれぞれに対応する振動強度を示す信号出力値は、同程度になるように変化する。
このため、中央値VMED(1)〜(8)の平均値は、大きく変化することにより、過渡状態であることが判定される。このとき、ノック判定値の更新量の制限が弱められるため、エンジン300の過渡状態における振動強度のレベルの上昇に対してノック判定値が追従して設定されるため、ノックの誤判定が抑制される。そのため、点火時期が過度に遅角補正されることが抑制されることとなる。
さらに、時間T’(2)において、アクセルペダル開度が緩められて、気筒(2)、気筒(3)および気筒(5)が、再びノイズを発生する作動状態になると、気筒(1)〜(8)の振動強度を示す信号出力値は、他の気筒のノイズレベルの差が縮小するようにゲインにより補正される。そのため、気筒(1)〜気筒(8)のそれぞれに対応する振動強度を示す信号出力値は、同程度になるように変化する。
以上のようにして、本実施の形態に係る内燃機関のノック判定装置によると、検出された振動強度にゲインを乗じて補正値を演算することにより、複数の気筒の間においてバックグランドレベルの差を縮小することができる。そのため、中央値VMED(1)〜(8)の平均値の変化量に基づいてエンジンの状態の変化を精度よく判定することができる。すなわち、エンジンが過渡状態であるか定常状態であるかを精度よく判定することができる。その結果、エンジンが定常状態から過渡状態に移行するなどした場合においても、ノック判定値をエンジンの状態の変化に精度よく追従させることができるため、ノックの誤判定を抑制することができる。したがって、ノックの誤判定を抑制する内燃機関のノック判定装置およびノック判定方法を提供することができる。
また、負荷に基づくエンジンの作動状態がノイズが発生する状態になるとゲインが小さくなるように設定することにより、たとえば、ノイズレベルが比較的大きいエンジンの作動状態においてゲインが小さくなるように設定されるため、特定の気筒へのノイズ重畳により中央値VMED(1)〜(8)平均値が引き上げられることを抑制することができる。そのため、エンジンの作動状態を精度よく判定することができる。
さらに、ピストンの首振り音が発生する状態、フューエルポンプの作動音が発生する状態、燃料噴射装置の作動音が発生する状態および吸気バルブおよび排気バルブのうちの少なくともいずれか一方の着座音が発生する状態のうちの少なくともいずれかの状態に対応してゲインを設定することにより、特定の気筒へのノイズ重畳により中央値VMED(1)〜(8)の平均値が引き上げられることを抑制することができる。そのため、エンジンの作動状態を精度よく判定することができる。
そして、定常状態であることが判定されるとノック判定値の変化の制限を強めることにより、定常状態においてノックが発生しているか否かを精度よく判定することができる。一方、過渡状態であることが判定されるとノック判定値の変化の制限を弱めることにより、エンジンの状態に変化に対応したノック判定値を速やかに設定することができる。そのため、過渡状態においてノックが発生しているか否かを精度よく判定することができる。これにより、ノックの誤判定を抑制することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本実施の形態におけるエンジンの構成を示す図(その1)である。 本実施の形態におけるエンジンの構成を示す図(その2)である。 本実施の形態に係る内燃機関の制御装置であるエンジンECUの機能ブロック図である。 エンジンの負荷と回転数とに対応づけて設定されるゲインを示すマップである。 振動強度の頻度分布を示す図である。 本実施の形態に係る内燃機関の制御装置であるエンジンECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。 ゲインが設定されない場合の信号出力値の変化を示すタイミングチャートである。 ゲインが設定される場合の信号出力値の変化を示すタイミングチャートである。
符号の説明
100 エンジンECU、102 クランクポジションセンサ、104 車速センサ、200 エアクリーナ、202,368,370 吸気通路、204 スロットルバルブ、206 スロットルモータ、208 吸気温度センサ、210 エアフローメータ、212 スロットル開度センサ、300 エンジン、302,304 バンク、310,312 気筒、314 ピストン、316 ピストン、318,320 インジェクタ、322,324 吸気バルブ、326,328 バルブタイミング可変機構、330,332 点火プラグ、338,340 排気バルブ、346 タイミングロータ、350,352,354,356 ノックセンサ、358,360 シリンダブロック、362,364 イグナイター、366 クランクシャフト、400,402 排気通路、404,406,408 三元触媒、500 入力I/F、510 演算処理部、512 振動強度検出部、514 ゲイン設定部、516 補正値演算部、518 標準偏差演算部、520 係数演算部、522 平均値演算部、524 状態判定部、526 ノック判定値演算部、528 ノック判定部、530 点火時期制御部、540 記憶部、550 出力I/F。

Claims (8)

  1. 内燃機関においてノックが発生したか否かを判定するノック判定装置であって、前記内燃機関は、複数の気筒を含み、
    前記内燃機関の作動時において、前記複数の気筒のうちのいずれかの気筒に対応する予め定められたクランク角度範囲内の振動強度を検出するための検出手段と、
    前記検出された振動強度に、他の気筒とのノイズレベルの差を縮小するゲインを乗じた値を前記振動強度の補正値として演算するための手段と、
    前記振動強度の補正値に基づいて前記振動強度の頻度分布の中央値を演算するための手段と、
    前記複数の気筒の各々に対応する振動強度の頻度分布の中央値の平均値を演算するための手段と、
    前記振動強度の頻度分布に基づいて、前記演算された平均値の変化量に基づく前記内燃機関の作動状態に対応したノック判定値を演算するための演算手段と、
    前記補正値と前記ノック判定値とに基づいて前記内燃機関においてノックが発生したか否かを判定するための手段とを含む、内燃機関のノック判定装置。
  2. 前記ノック判定装置は、
    前記内燃機関の負荷を検出するための手段と、
    前記検出された負荷に基づく前記内燃機関の作動状態が、ノイズを発生する予め定められた作動状態になると前記補正値が前記検出された振動強度よりも小さくなるようにゲインを設定するためのゲイン設定手段とをさらに含む、請求項1に記載の内燃機関のノック判定装置。
  3. 前記予め定められた作動状態は、前記気筒内のピストンの首振り音が発生する状態、フューエルポンプの作動音が発生する状態、燃料噴射装置の作動音が発生する状態および吸気バルブおよび排気バルブのうちの少なくともいずれか一方の着座音が発生する状態のうちの少なくともいずれかの状態である、請求項2に記載の内燃機関のノック判定装置。
  4. 前記制御装置は、前記演算された平均値の変化量に基づいて前記内燃機関が過渡状態および定常状態のうちのいずれの状態であるかを判定するための手段をさらに含み、
    前記演算手段は、
    前記定常状態であることが判定されると前記ノック判定値の変化の制限を強めるようにして前記ノック判定値を演算するための手段と、
    前記過渡状態であることが判定されると前記ノック判定値の変化の制限を弱めるようにして前記ノック判定値を演算するための手段とを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関のノック判定装置。
  5. 内燃機関においてノックが発生したか否かを判定するノック判定方法であって、前記内燃機関は、複数の気筒を含み、
    前記内燃機関の作動時において、前記複数の気筒のうちのいずれかの気筒に対応する予め定められたクランク角度範囲内の振動強度を検出する検出ステップと、
    前記検出された振動強度に、他の気筒とのノイズレベルの差を縮小するゲインを乗じた値を前記振動強度の補正値として演算するステップと、
    前記振動強度の補正値に基づいて前記振動強度の頻度分布の中央値を演算するステップと、
    前記複数の気筒の各々に対応する振動強度の頻度分布の中央値の平均値を演算するステップと、
    前記振動強度の頻度分布に基づいて、前記演算された平均値の変化量に基づく前記内燃機関の作動状態に対応したノック判定値を演算する演算ステップと、
    前記補正値と前記ノック判定値とに基づいて前記内燃機関においてノックが発生したか否かを判定するステップとを含む、内燃機関のノック判定方法。
  6. 前記ノック判定方法は、
    前記内燃機関の負荷を検出するステップと、
    前記検出された負荷に基づく前記内燃機関の作動状態が、ノイズを発生する予め定められた作動状態になると前記補正値が前記検出された振動強度よりも小さくなるようにゲインを設定するゲイン設定ステップとをさらに含む、請求項5に記載の内燃機関のノック判定方法。
  7. 前記予め定められた作動状態は、前記気筒内のピストンの首振り音が発生する状態、フューエルポンプの作動音が発生する状態、燃料噴射装置の作動音が発生する状態および吸気バルブおよび排気バルブのうちの少なくともいずれか一方の着座音が発生する状態のうちの少なくともいずれかの状態である、請求項6に記載の内燃機関のノック判定方法。
  8. 前記ノック判定方法は、前記演算された平均値の変化量に基づいて前記内燃機関が過渡状態および定常状態のうちのいずれの状態であるかを判定するステップをさらに含み、
    前記演算ステップは、
    前記定常状態であることが判定されると前記ノック判定値の変化の制限を強めるようにして前記ノック判定値を演算するステップと、
    前記過渡状態であることが判定されると前記ノック判定値の変化の制限を弱めるようにして前記ノック判定値を演算するステップとを含む、請求項5〜7のいずれかに記載の内燃機関のノック判定方法。
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