JP2009250065A - 多気筒内燃機関 - Google Patents

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Abstract

【課題】排気の圧力が過度に高くなることに起因して排気バルブの着座不良が生じることを抑制することのできる多気筒内燃機関を提供する。
【解決手段】エンジン10は、バルブスプリング312、油圧式のラッシュアジャスタ320、これらスプリング312及びラッシュアジャスタ320との協働により排気バルブ31を開閉駆動するカム314、及び排気バルブ31の開閉駆動にともない燃焼室11との連通状態が切り替えられる排気ポート32を気筒#1〜#4毎に備える。また、電子制御装置は、機関運転状態に基づいて算出される排気バルブ31の目標開弁タイミングに応じて排気バルブ31の開弁タイミングを可変とする可変動弁機構40を制御し、排気マニホルドの内圧PEが所定圧PEA以上である旨推定されるときに排気バルブ31の開弁タイミングを目標開弁タイミングよりも遅角側に補正する。
【選択図】図2

Description

本発明は、排気バルブを閉じ方向に付勢するバルブスプリングと、排気バルブを開き方向に押圧して同バルブの位置を調節するラッシュアジャスタと、これらバルブスプリング及びラッシュアジャスタとの協働により排気バルブを開閉駆動するカムとを気筒毎に備える多気筒内燃機関に関する。
この種の多気筒内燃機関としては、例えば特許文献1に記載のものがある。特許文献1に記載のものも含め、こうした多気筒内燃機関においては、各気筒の排気ポートの排気下流側に排気マニホルドが接続されており、各気筒から排出される排気は排気ポート及び排気マニホルドを通じてその下流側に接続される排気管に集められる。このため、ある気筒から排気が排出されると、これにともない排気マニホルドや排気ポートにおける排気の圧力が一時的に上昇し、各気筒から順次排気が排出されることによって排気の圧力の変動、すなわち排気の脈動が生じる。
特開2006―226266号公報
ところで、例えば過給機を備える内燃機関においては排気の圧力が過度に高くなることがあり、この場合には、以下の問題が生じる。すなわち、排気バルブには同バルブを開く方向に排気の圧力に基づく力が作用し、同じく同バルブを開く方向にラッシュアジャスタの押圧力が作用する。排気バルブには同バルブを閉じる方向にバルブスプリングの付勢力が作用する。ここで、排気の圧力が過度に高くなることで、排気バルブに対して作用する力のうち、排気の圧力に基づく力とラッシュアジャスタの押圧力との合力が、バルブスプリングの付勢力よりも大きくなり、油圧式ラッシュアジャスタのポンプアップが生じる結果、排気バルブをバルブシートに安定して着座させることができないといった着座不良が生じる。
また、機関回転速度が高い場合には、バルブサージングが生じやすくなり、こうしたバルブサージングが発生すると排気バルブに作用するバルブスプリングの付勢力が一時的に減少することとなる。このためこうした場合においても、上述したような着座不良が生じるおそれがある。
こうした問題に対して、バルブスプリングの付勢力を増大させるべくばね係数のより大きなバルブスプリングを採用することも考えられるが、この場合には、排気バルブの開閉駆動にともなう機関抵抗が増大するといった新たな問題が生じることとなる。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、排気バルブの開閉駆動にともなう機関抵抗の増大を抑制しつつも、排気の圧力が過度に高くなることに起因して排気バルブの着座不良が生じることを抑制することのできる多気筒内燃機関を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、排気バルブの閉じる方向に同バルブを付勢するバルブスプリングと、前記排気バルブの開く方向に同バルブを押圧して同バルブの位置を調節する油圧式ラッシュアジャスタと、これらバルブスプリング及び油圧式ラッシュアジャスタとの協働により前記排気バルブを開閉駆動するカムと、前記排気バルブの開閉駆動にともない燃焼室との連通状態が切り替えられる排気ポートとを気筒毎に備え、これら排気ポートの排気下流側に接続される排気マニホルドを備える多気筒内燃機関において、前記排気バルブの開弁タイミングを可変とする可変動弁機構と、機関運転状態に基づいて算出される排気バルブの目標開弁タイミングに応じて前記可変動弁機構を制御する制御手段と、前記排気マニホルドの内圧が所定圧以上である旨推定されるときに前記排気バルブの開弁タイミングを前記目標開弁タイミングよりも遅角側に補正する補正手段とを備えることをその要旨としている。
上記構成によれば、目標開弁タイミングに応じて可変動弁機構を制御した場合に排気の圧力が過度に高くなるときには、排気バルブの開弁タイミングを目標開弁タイミングよりも遅角側に補正するようにしているため、こうした遅角補正をしない場合と比較して、当該気筒内の圧力が低くなった後に排気バルブが開弁されるようになる。これにより、当該気筒から排出される排気の圧力が低くなり、排気の圧力が過度に高くなることを抑制することができるようになる。その結果、他の気筒の排気バルブに対して同バルブを開く方向に作用する排気の圧力に基づく力と、排気バルブに対して同バルブを開く方向に作用する油圧式ラッシュアジャスタの押圧力との合力が、排気バルブに対して同バルブを閉じる方向に作用するバルブスプリングの付勢力よりも大きくなることを抑制することができ、油圧式ラッシュアジャスタのポンプアップの発生を抑制することができるようになる。従って、排気バルブの開閉駆動にともなう機関抵抗の増大を抑制しつつも、排気の圧力が過度に高くなることに起因して排気バルブの着座不良が生じることを抑制することができるようになる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の多気筒内燃機関において、前記補正手段は、内燃機関の吸気の圧力を検出する圧力検出手段を含み、該圧力検出手段により検出される吸気の圧力が所定圧力以上のときに排気マニホルドの内圧が所定圧以上である旨推定することをその要旨としている。
吸気の圧力を把握することにより排気マニホルドの内圧を推定することができることから、上記構成によるように、吸気の圧力が所定圧力以上のときに排気マニホルドの内圧が所定圧以上である旨推定するようにすれば、排気マニホルドの内圧を直接検出することなく、排気バルブの開弁タイミングを目標開弁タイミングよりも遅角側に補正するか否かを判断することができるようになる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の多気筒内燃機関において、前記補正手段は、前記排気マニホルドの内圧が高いときには低いときに比べて前記排気バルブの開弁タイミングの遅角補正量を大きな値に設定することをその要旨としている。
上記構成によれば、目標開弁タイミングに応じて可変動弁機構を制御した場合に排気の圧力が高くなる場合であっても、その程度に応じて遅角補正量が設定されるため、当該気筒内の圧力が十分に低くなった後に排気バルブが開弁されるようになる。これにより、当該気筒から排出される排気の圧力を的確に低くすることができるようになる。従って、油圧式ラッシュアジャスタのポンプアップの発生を的確に抑制することができるようになる。
請求項4に記載の発明は、排気バルブを閉じる方向に付勢するバルブスプリングと、前記排気バルブを開く方向に押圧して同バルブの位置を調節するラッシュアジャスタと、これらバルブスプリング及び油圧式ラッシュアジャスタとの協働により前記排気バルブを開閉駆動するカムと、前記排気バルブの開閉駆動にともない燃焼室との連通状態が切り替えられる排気ポートとを気筒毎に備え、これら排気ポートの排気下流側に接続される排気マニホルドを備える多気筒内燃機関において、前記排気バルブの開弁タイミングを可変とする可変動弁機構と、機関運転状態に基づいて算出される排気バルブの目標開弁タイミングに応じて前記可変動弁機構を制御する制御手段と、機関回転速度が所定速度以上であるときに前記排気バルブの開弁タイミングを前記目標開弁タイミングよりも遅角側に補正する補正手段とを備えることをその要旨としている。
上記構成によれば、排気バルブのバルブサージングが生じるときには、排気バルブの開弁タイミングを目標開弁タイミングよりも遅角側に補正するようにしているため、こうした遅角補正をしない場合と比較して、当該気筒内の圧力が低くなった後に排気バルブが開弁されるようになる。これにより、当該気筒から排出される排気の圧力が低くなり、排気の圧力が過度に高くなることを抑制することができるようになる。その結果、他の気筒の排気バルブに対して同バルブを閉じる方向に作用するバルブスプリングの付勢力がバルブサージングの発生にともない一時的に減少することとなっても、このバルブスプリングの付勢力が、排気バルブに対して同バルブを開く方向に作用する排気の圧力に基づく力と、排気バルブに対して同バルブを開く方向に作用する油圧式ラッシュアジャスタの押圧力との合力よりも小さくなることを抑制することができ、油圧式ラッシュアジャスタのポンプアップの発生を抑制することができるようになる。従って、排気バルブの開閉駆動にともなう機関抵抗の増大を抑制しつつも、排気の圧力が過度に高くなることに起因して排気バルブの着座不良が生じることを抑制することができるようになる。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の多気筒内燃機関において、前記補正手段は、前記機関回転速度が高いときには低いときに比べて前記排気バルブの開弁タイミングの遅角補正量を大きな値に設定することをその要旨としている。
上記構成によれば、排気バルブのバルブサージングが発生する場合であっても、その程度に応じて遅角補正量が設定されるため、当該気筒内の圧力が十分に低くなった後に排気バルブが開弁されるようになる。これにより、当該気筒から排出される排気の圧力を的確に低くすることができるようになる。従って、油圧式ラッシュアジャスタのポンプアップの発生を的確に抑制することができるようになる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多気筒内燃機関において、前記油圧式ラッシュアジャスタは機関駆動式のオイルポンプから供給されるオイルの圧力により駆動されるものであり、前記補正手段は、機関回転速度が高いときには低いときに比べて前記所定圧を小さな値に設定することをその要旨としている。
排気バルブの開弁タイミングを目標開弁タイミングよりも遅角側に補正するか否かを判断するための上記所定圧を一定値とすると、例えば油圧式ラッシュアジャスタの押圧力が予め想定したものよりも大きい場合には、排気マニホルドの内圧が上記所定圧よりも小さいにも拘わらず、油圧式ラッシュアジャスタのポンプアップが発生し、排気バルブの着座不良が生じる。一方、機関駆動式のオイルポンプから供給されるオイルの圧力により駆動される油圧式ラッシュアジャスタにおいては、機関回転速度が高いときには低いときに比べてオイルの圧力が高くなり、これにともない油圧式ラッシュアジャスタの押圧力が大きくなる。これらのことに鑑みて、上記構成によるように、機関回転速度が高いときには低いときに比べて上記所定圧を小さな値に設定するようにすれば、油圧式ラッシュアジャスタの押圧力が大きいときには小さいときに比べて上記所定圧を小さな値に設定することができ、油圧式ラッシュアジャスタの押圧力に応じて上記所定圧を的確に設定することができるようになる。従って、排気マニホルドの内圧が上記所定圧よりも小さいにも拘わらず、油圧式ラッシュアジャスタのポンプアップが発生することを抑制することができ、排気バルブの着座不良が生じることを抑制することができるようになる。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多気筒内燃機関において、前記油圧式ラッシュアジャスタは機関駆動式のオイルポンプから供給されるオイルの圧力により駆動されるものであり、前記オイルの温度を検出する油温検出手段を備え、前記補正手段は、前記油温検出手段により検出されるオイルの温度が高いときには低いときに比べて前記所定圧を大きな値に設定することをその要旨としている。
排気バルブの開弁タイミングを目標開弁タイミングよりも遅角側に補正するか否かを判断するための上記所定圧を一定値とすると、例えば油圧式ラッシュアジャスタの押圧力が予め想定したものよりも大きい場合には、排気マニホルドの内圧が上記所定圧よりも小さいにも拘わらず、油圧式ラッシュアジャスタのポンプアップが発生し、排気バルブの着座不良が生じる。一方、機関駆動式のオイルポンプから供給されるオイルの圧力により駆動される油圧式ラッシュアジャスタにおいては、オイルの温度が高いときには低いときに比べてオイルの粘度粘性が低くなり、これにともない駆動部分からのオイルの漏れ量が多くなることから、ラッシュアジャスタの押圧力が小さくなる。これらのことに鑑みて、上記構成によるように、オイルの温度が高いときには低いときに比べて上記所定圧を大きな値に設定するようにすれば、油圧式ラッシュアジャスタの押圧力が小さいときには大きいときに比べて上記所定圧を大きな値に設定することができ、油圧式ラッシュアジャスタの押圧力に応じて上記所定圧を的確に設定することができるようになる。従って、排気マニホルドの内圧が上記所定圧よりも小さいにも拘わらず、油圧式ラッシュアジャスタのポンプアップが発生することを抑制することができ、排気バルブの着座不良が生じることを抑制することができるようになる。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多気筒内燃機関において、前記油圧式ラッシュアジャスタは機関駆動式のオイルポンプから供給されるオイルの圧力により駆動されるものであり、機関冷却水の温度を検出する水温検出手段を備え、前記補正手段は、前記水温検出手段により検出される機関冷却水の温度が高いときには低いときに比べて前記所定圧力を大きな値に設定することをその要旨としている。
排気バルブの開弁タイミングを目標開弁タイミングよりも遅角側に補正するか否かを判断するための上記所定圧を一定値とすると、例えば油圧式ラッシュアジャスタの押圧力が予め想定したものよりも大きい場合には、排気マニホルドの内圧が上記所定圧よりも小さいにも拘わらず、油圧式ラッシュアジャスタのポンプアップが発生し、排気バルブの着座不良が生じる。一方、機関駆動式のオイルポンプから供給されるオイルの圧力により駆動される油圧式ラッシュアジャスタにおいては、オイルの温度が高いときには低いときに比べてオイルの粘度粘性が低くなり、これにともない駆動部分からのオイルの漏れ量が多くなることから、ラッシュアジャスタの押圧力が小さくなる。他方、機関冷却水の温度を把握することによりオイルの温度を推定することができる。これらのことに鑑みて、上記構成によるように、機関冷却水の温度が高いときには低いときに比べて上記所定圧を大きな値に設定するようにすれば、油圧式ラッシュアジャスタの押圧力が小さいときには大きいときに比べて上記所定圧を大きな値に設定することができ、油圧式ラッシュアジャスタの押圧力に応じて上記所定圧を的確に設定することができるようになる。従って、排気マニホルドの内圧が上記所定圧よりも小さいにも拘わらず、油圧式ラッシュアジャスタのポンプアップが発生することを抑制することができ、排気バルブの着座不良が生じることを抑制することができるようになる。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の多気筒内燃機関において、燃焼室に吸入される空気を排気圧によって過給する過給機を備えることをその要旨としている。
燃焼室に吸入される空気を排気圧によって過給する過給機を備える多気筒内燃機関にあっては、これを備えないものに比べて排気の圧力が過度に高くなることに起因する排気バルブの着座不良の発生が無視できないものとなる。
この点、上記構成によれば、気筒から排出される排気の圧力が低くなり、排気の圧力が過度に高くなることを抑制することができるようになる。従って、排気バルブの開閉駆動にともなう機関抵抗の増大を抑制しつつも、排気の圧力に起因する排気バルブの着座不良の発生を抑制することができるようになる。
<第1実施形態>
図1〜図8を参照して、本発明にかかる多気筒内燃機関を車載用筒内噴射式ガソリンエンジン(以下、「エンジン10」)として具体化した第1実施形態について説明する。
図1に、エンジン10の概略構成を示す。
エンジン10の各気筒#1〜#4には、燃焼室11がそれぞれ形成され、各燃焼室11内に燃料を直接噴射するインジェクタ12、及びこれらインジェクタ12により噴射された燃料と空気との混合気に点火する点火プラグ13がそれぞれ設けられている。また、エンジン10の各燃焼室11には、吸気通路20及び排気通路30が接続されている。また、エンジン10の各気筒#1〜#4には、各燃焼室11と吸気通路20との連通状態を切り替えるための吸気バルブ21及び各燃焼室11と排気通路30との連通状態を切り替えるための排気バルブ31がそれぞれ設けられている。
吸気通路20は、各気筒#1〜#4の燃焼室11に接続される吸気ポート22、これら吸気ポート22の吸気上流側に接続される吸気マニホルド23、及びこの吸気マニホルド23の吸気上流側に接続される吸気管24を備えている。吸気管24には、スロットルバルブ25a及びこれを開閉駆動するスロットルモータ25bが設けられており、吸気通路20を通じて燃焼室11に供給される吸気の流量は、このスロットルバルブ25aの開度に応じて制御される。
排気通路30は、各気筒#1〜#4の燃焼室11に接続される排気ポート32、これら排気ポート32の排気下流側に接続される排気マニホルド33、及びこの排気マニホルド33の排気下流側に接続される排気管34を備えている。
ここで、図2を参照して、排気バルブ31及びこれを開閉駆動する動弁機構の具体的な構成について詳細に説明する。
排気バルブ31にはリテーナ311が取り付けられており、このリテーナ311とエンジン10のシリンダヘッド14との間にはバルブスプリング312が設けられている。このバルブスプリング312によって排気バルブ31は同バルブ31を閉じる方向に常時付勢されている。
排気バルブ31を開閉駆動する動弁機構は、ピボット式の動弁機構であり、エンジン10のクランクシャフト(図示略)の回転が伝達されるカムシャフト313と、このカムシャフト313に固定されているカム314と、このカム314の回転にともなって駆動されるロッカアーム315とを備えている。これらのうちロッカアーム315は、その一端部(図中右端部)がシリンダヘッド14に設けられた油圧式のラッシュアジャスタ(以下、単に「ラッシュアジャスタ320」)により支持され、その他端部(図中左端部)が排気バルブ31の基端部31aに当接している。すなわち、ラッシュアジャスタ320は排気バルブ31の開く方向に同バルブ31を押圧して同バルブ31の位置を調節するようにしている。また、ロッカアーム315は、カム314に当接するローラ316により回転可能に支持されている。そして、回転するカム314によりローラ316が押圧されると、これによりラッシュアジャスタ320によって支持された他端部を支点としてロッカアーム315が揺動し、この揺動によって排気バルブ31の基端部31aが押圧されるようになる。このように排気バルブ31はその軸線方向に往復動することにより開閉駆動される。なお、排気バルブ31がシリンダヘッド14に設けられたバルブシート17に当接することにより排気バルブ31は閉弁状態とされる。
また、エンジン10には、クランクシャフトの回転が伝達されることにより駆動されるオイルポンプ15が設けられており、このオイルポンプ15から吐出されたオイルはオイル通路16を通じてラッシュアジャスタ320に供給される。
また、エンジン10には、クランクシャフトの回転位相に対するカムシャフト313の回転位相を変更して排気バルブ31のバルブタイミングを連続的に可変とする可変動弁機構40が設けられている。
次に、図3を参照して、ラッシュアジャスタ320の具体的な構成について詳細に説明する。
ラッシュアジャスタ320は、有底筒状のボディ321を備え、このボディ321の内部には、プランジャ322、プランジャスプリング323、チェックボール324、チェックボールスプリング325、及びボールリテーナ326が設けられている。ボディ321の内側底面とこれに対向するプランジャ322の基端部との間は高圧室327として区画され、プランジャ322の内部は低圧室328として区画されている。これら高圧室327と低圧室328とはプランジャ322の基端部に形成された連通路329を介して連通されている。また、ボディ321及びプランジャ322にはオイル孔330,331がそれぞれ形成されており、オイルポンプ15からオイル通路16を通じて供給されるオイルは、これらオイル孔330,331を通じて低圧室328に供給される。また、高圧室327にもオイルが満たされている。
高圧室327には、プランジャスプリング323及びボールリテーナ326が設けられ、このプランジャスプリング323の付勢力がボールリテーナ326を介してプランジャ322に作用することで、プランジャ322はボディ321から突出する方向(図中上方向)に常時付勢されている。また、高圧室327において、プランジャ322の基端部とこれに対向するボールリテーナ326との間には、チェックボール324及びチェックボールスプリング325が設けられ、このチェックボールスプリング325の付勢力がチェックボール324に作用することで、チェックボール324が連通路329を遮断する位置に保持されている。
従って、排気バルブ31の閉弁開始後に、カム314がロッカアーム315から離れようとすると、より正確には、カム314がローラ316から離れようとすると、プランジャスプリング323が伸びてプランジャ322がボディ321から進出し、そのプランジャ322によってロッカアーム315が上記カム314側に押し付けられるようになる。このようにして、ロッカアーム315がカム314に追従して変位することにより、これらロッカアーム315とカム314との間にクリアランスが生じることが抑制されるようになる。
なお、このようにプランジャ322がボディ321から進出するときには、高圧室327の容積が拡大しようとしてその圧力が低下し、高圧室327と低圧室328との圧力差に基づく力がチェックボール324に作用するようになる。そして、こうした圧力差に基づく力によってチェックボール324がチェックボールスプリング325の付勢力に抗して連通路329の遮断を解除する位置まで変位すると、低圧室328から高圧室327へとオイルが流れるようになる。そしてその後、上記圧力差に基づく力の大きさがチェックボールスプリング325の付勢力を下回るようになると、チェックボール324が連通路329を遮断する位置へと戻されるようになる。
一方、排気バルブ31の開弁開始後に、カム314がロッカアーム315を押そうとすると、その際の力がロッカアーム315を介してプランジャ322に伝達され、プランジャ322がボディ321内に進入しようとする。ただしこのときには、連通路329がチェックボール324により遮断されているため、高圧室327から低圧室328へのオイルの流出が禁止されるようになる。そして、高圧室327に満たされているオイルにより、同高圧室327の容積を縮小する方向へのプランジャ322の移動、すなわち、プランジャ322のボディ321内への進入が禁止されるようになる。
なお、このようにプランジャ322がボディ321内に進入しようとするとき、高圧室327のオイルがわずかながらボディ321の内周面とプランジャ322の外周面との間に存在する隙間を通じてラッシュアジャスタ320の外部に漏出することから、こうした漏出によってプランジャ322がボディ321内にわずかに沈み込むようになる。しかしながら、プランジャ322はこのようにボディ321内へ進入しても、上述した排気バルブ31の閉弁開始後におけるラッシュアジャスタ320の動作を通じて元の状態に復帰するようになる。このように、ラッシュアジャスタ320にあっては、排気バルブ31の開閉駆動にともなってボディ321内にオイルが供給され、そのオイルによって排気バルブ31の開弁開始後におけるプランジャ322のボディ321内への進入が禁止されるようになっている。
また、吸気バルブ21及びその動弁機構は、排気バルブ31及びその動弁機構と基本的には同様の構成であるため、それらの説明を割愛する。
先の図1に示すように、エンジン10には燃焼室11から排出される排気の圧力によって駆動される過給機50が設けられている。過給機50は、排気管34に設けられるタービン51と、吸気管24に設けられてタービン51に軸連結されるコンプレッサ52とを備えている。排気の圧力によってタービン51が回転すると、これにともないタービン51に軸連結されるコンプレッサ52が回転し、これにより燃焼室11に吸入される空気が過給されるようになっている。
更にエンジン10には、その運転状態を検出するための各種センサが設けられている。すなわち、エンジン10の回転速度(以下、「機関回転速度NE」)を算出するためにクランクシャフトの回転位相を検出するクランク角センサ61、スロットルバルブ25aの開度(以下、「スロットル開度TA」)を検出するスロットルセンサ62、及び吸気管24を通過する吸気の流量(以下、「吸気量GA」)を検出するエアフローメータ63が設けられている。また、機関冷却水の温度(以下、「機関冷却水温THW」)を検出する水温センサ64、コンプレッサ52の吸気下流側における吸気の圧力(以下、「過給圧PM」)を検出する過給圧センサ65、及びカムシャフト313の回転位相を検出するカム角センサ66が設けられている。これら各センサ61〜66の検出信号は、エンジン10の各種制御を実行する電子制御装置70に入力される。
電子制御装置60は、各種制御を実行するためのプログラム及び演算用マップ、並びに制御の実行に際して算出される各種データ等を記憶するメモリ等を備えて構成されており、上記各センサ61〜66をはじめとする各種センサの出力値により把握される機関運転状態等に基づいて、例えば次の各制御を実行する。すなわち、機関運転状態に基づいて目標噴射量や目標噴射時期を算出し、これら目標噴射量や目標噴射時期に応じてインジェクタ12を制御する燃料噴射制御や、機関運転状態に基づいて目標点火時期を算出し、同目標点火時期に応じて点火プラグ13を制御する点火時期制御を実行する。ちなみに、本実施形態では、第1気筒#1、第3気筒#3、第4気筒、そして第2気筒の順に点火を行うようにしている。また、機関運転状態に基づいて目標スロットル開度を算出し、同目標スロットル開度に応じてスロットルモータ25bを制御する吸気量制御や、機関運転状態に基づいて排気バルブ31の目標バルブタイミングを算出し、同目標バルブタイミングに応じて可変動弁機構40を制御するバルブタイミング制御などの各種制御を実行する。
<バルブタイミング制御>
図5を参照して排気バルブ31のバルブタイミング制御について説明する。なお同図は、排気バルブ31のリフト量の推移であるリフト曲線を示したものである。また、図中における一点鎖線は、吸気バルブ21のリフト曲線を示している。
まず、電子制御装置70は、機関運転状態に基づいて排気バルブ31のバルブタイミングの制御目標値である目標バルブタイミングVTBexを算出する。そして、上記カム角センサ66によって検出される排気バルブ31の実バルブタイミングVTexが、上記算出された目標バルブタイミングVTBexとなるように可変動弁機構40を駆動する。なお、本実施形態では、排気バルブ31のバルブタイミングを、遅角量VTexを用いて表されているしている。すなわち、排気バルブ31のバルブタイミングVTexは、可変動弁機構40によるバルブタイミングの変更範囲のうちで、排気バルブ31の開閉が最も早くなる最進角位置を基準として、その最進角位置からの遅角量[°CA]を用いて表されている表されている。
ところで、本実施形態のように過給機50を備えるエンジン10においては排気の圧力が過度に高くなることがあり、この場合には、以下の問題が生じる。すなわち、上述したように、排気バルブ31には、同バルブ31を開く方向に排気の圧力に基づく力が作用し、同じく同バルブ31を開く方向にラッシュアジャスタ320の押圧力が作用する。また、排気バルブ31には、同バルブ31を閉じる方向にバルブスプリング312の付勢力が作用する。ここで、排気の圧力が過度に大きくなることで、排気の圧力に基づく力とラッシュアジャスタ320の押圧力との合力が、バルブスプリング312の付勢力よりも大きくなると、図4に示すように、ラッシュアジャスタ320のプランジャ322がボディ321から進出し、上述したように、高圧室327の容積の拡大にともなって低圧室328から高圧室327へのオイルの流入が生じる(図3参照)、いわゆるラッシュアジャスタ320のポンプアップが生じることとなる。そしてその結果、排気バルブ31をバルブシート17に安定して着座させることができないといった着座不良が生じる。
こうした問題に対して、バルブスプリング312の付勢力を増大させるべくばね係数のより大きなバルブスプリング312を採用することも考えられるが、この場合には、排気バルブ31の開閉駆動にともなう機関抵抗が増大するといった新たな問題が生じることとなる。
そこで、排気マニホルド33の内圧PEが所定圧PEA以上である旨推定されるときに、機関運転状態に基づいて算出される排気バルブ31の目標バルブタイミングVTBexの開弁タイミング(以下、「目標開弁タイミング」)よりも排気バルブ31のバルブタイミングの開弁タイミング、すなわち排気バルブ31の開弁タイミングを遅角側に補正する遅角遅角補正制御を実行することにより上述した問題の発生の抑制を図るようにしている。
ここで、排気マニホルド33の内圧PEが所定圧PEA以上である旨推定されるときに、上記遅角補正制御を実行して排気バルブ31の開弁タイミングを上記目標バルブタイミングの開弁タイミング(以下、「目標開弁タイミング」)よりも遅角側に補正こうした遅角補正制御を実行する理由について説明する。すなわち、目標開弁タイミングに応じて可変動弁機構40を制御した場合に排気の圧力が過度に高くなるときには、排気バルブ31の開弁タイミングを目標開弁タイミングよりも遅角側に補正すると、こうした遅角補正制御をしない場合と比較して、当該気筒内の圧力が低くなった後に排気バルブ31が開弁されるようになる。これにより、当該気筒から排出される排気の圧力が低くなり、排気の圧力が過度に高くなることが抑制されるようになる。その結果、他の気筒の排気バルブ31に対して同バルブ31を開く方向に作用する排気の圧力に基づく力と、排気バルブ31に対して同バルブ31を開く方向に作用するラッシュアジャスタ320の押圧力との合力が、排気バルブ31に対して同バルブ31を閉じる方向に作用するバルブスプリング312の付勢力よりも大きくなることが抑制されるようになる。
またなお、本実施形態の遅角補正制御では、過給圧PMが所定圧力PMA以上であることをもって排気マニホルド33の内圧PEが所定圧PEA以上である旨推定するようにしている。
<遅角補正制御>
図6及び図7を参照して、排気バルブ31の遅角補正制御について説明する。なお図6は、遅角補正制御の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、エンジン10の運転中に電子制御装置70によって繰り返し実行される。また、図7は、過給圧PMと遅角補正量ΔVTexとの関係を規定したマップである。
この処理では、まず、そのときの機関運転状態として機関回転速度NE及び機関負荷KLを読み込み、これらに基づいて基本遅角量VTBexを算出する(ステップS101)。ここでは例えば、機関回転速度NEが低く且つ機関負荷KLが低いときや、機関回転速度NEが高く且つ機関負荷KLが高いときには基本遅角量VTBexを小さな値に設定するようにしている。また、機関負荷KLが中程度であるときや、機関負荷は高いものの機関回転速度NEが低いときあるいは中程度であるときには基本遅角量VTBexを大きな値に設定するようにしている。なお、本実施形態では、機関負荷KLとして、そのときの吸気量GAと、そのときの機関回転速度NEにおいて得られる吸気量の最大値である最大吸気量GAmaxとの比「GA/GAmax」を用いている。
そして、次に、そのときの過給圧PMを読み込み、図7に示すマップを参照して遅角補正量ΔVTexを導出する(ステップS102)。このマップでは、過給圧PMが所定圧力PMAよりも低いときには遅角補正量ΔVTexが「0」とされ、過給圧PMが所定圧力PMA以上のときには同過給圧PMが高くなるほど遅角補正量ΔVTexが大きくなるように設定されている。
こうして基本遅角量VTBex及び遅角補正量ΔVTexを導出すると、次に、以下の式(1)に基づいて最終遅角量VTTexを算出し(ステップS103)、この処理を一旦終了する。

VTTex ← VTBex −+ ΔVTex ・・・(1)

次に、図8のタイミングチャートの上側部分を参照して、上記遅角補正制御を実行しない場合における、(a)第1気筒#1の排気バルブ31のリフト量の推移、(b)第3気筒#3の排気バルブ31のリフト量の推移、(c)排気マニホルド33の内圧PEの推移の一例について説明する。なお、図中における一点鎖線は、対応する気筒における吸気バルブ21のリフト曲線を示している。
過給圧PMが所定圧力PMA以上であるとき、上記遅角補正制御が実行されない場合には、第1気筒#1の排気バルブ31は、基本遅角量VTBexに基づき、タイミングt1において開弁され、タイミングt5において閉弁される(図8(a))。一方、タイミングt5において、基本遅角量VTBexに基づくバルブタイミングにより第3気筒#3の排気バルブ31は、基本遅角量VTBexに基づき、タイミングt5においてが開弁される(図8(b))。そして、第3気筒#3から排気が排出されることにともない、タイミングt6において、排気マニホルド33の内圧PEは、それまでのベース値PE1からピーク値PE2まで一時的に上昇するようになる(図8(c))。このとき、タイミングt5以降において閉弁状態とされるべき第1気筒#1の排気バルブ31では、排気マニホルド33の内圧PEが所定圧PEA以上となることで、排気の圧力に基づく力とラッシュアジャスタ320の押圧力との合力が、バルブスプリング312の付勢力よりも大きくなる。その結果、ラッシュアジャスタ320のポンプアップが生じ、排気バルブ31の着座不良が生じることとなる。
次に、図8のタイミングチャートの下側部分を参照して、上記遅角補正制御を実行する場合における、(d)第1気筒#1の排気バルブ31のリフト量の推移、(e)第3気筒#3の排気バルブ31のリフト量の推移、(f)排気マニホルド33の内圧PEの推移の一例について説明する。なお、図中における一点鎖線は、対応する気筒における吸気バルブ21のリフト曲線を示している。
過給圧PMが所定圧力PMA以上であるとき、上記遅角補正制御が実行される場合には、第1気筒#1の排気バルブ31は、最終遅角量VTTexに基づき、タイミングt2において開弁され、タイミングt6において閉弁される(図8(a))。一方、第3気筒#3の排気バルブ31は、最終遅角量VTTexに基づき、タイミングt6において開弁される(図8(b))。そして、第3気筒#3から排気が排出されることにともない、タイミングt7において、排気マニホルド33の内圧PEは、それまでのベース値PE3からピーク値PE4まで上昇するようになる(図8(f))。このとき、第3気筒#3に着目すると、上記遅角補正制御を実行しない場合と比較して、筒内の圧力が低くなった後に排気バルブ31が開弁されるようになることから、タイミングt7における排気マニホルド33の内圧PEMのピーク値PE4は所定圧PEA未満となる。このため、タイミングt6以降において閉弁されるべき第1気筒#1の排気バルブ31では、タイミングt6において、基本遅角量VTBexよりも遅角側の最終遅角量VTTexに基づくバルブタイミングにより第3気筒#3の排気バルブ31が開弁される(図8(e))。そして、第3気筒#3から排気が排出されることにともない、タイミングt7において、排気マニホルド33の内圧PEがそれまでのベース値PE3からピーク値PE4まで一時的に上昇するようになる(図8(f))。このとき、上記遅角補正制御を実行しない場合と比較して、第3気筒#3内の圧力が低くなった後に排気バルブ31が開弁されるようになることから、タイミングt7における排気マニホルド33の内圧PEMのピーク値PE4は所定圧PEA未満となる。このため、タイミングt6以降において閉弁されるべき第1気筒#1の排気バルブ31では、排気の圧力に基づく力とラッシュアジャスタ320の押圧力との合力が、バルブスプリング312の付勢力よりも大きくなることはない。その結果、ラッシュアジャスタ320のポンプアップが生じることはなく、排気バルブ31の着座不良が生じることはない。
以上説明した本実施形態にかかる多気筒内燃機関によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(1)排気バルブ31の開弁タイミングを可変とする可変動弁機構40を備え、排気マニホルド33の内圧PEが所定圧PEA以上である旨推定されるときに、排気バルブ31の開弁タイミングを、機関運転状態に基づいて算出される目標開弁タイミングよりも遅角側に補正する遅角補正制御を実行することとした。従って、排気バルブ31の開閉駆動にともなう機関抵抗の増大を抑制しつつも、排気の圧力が過度に高くなることに起因して排気バルブ31の着座不良が生じることを抑制することができるようになる。
(2)過給圧センサ65により検出される過給圧PMが所定圧力PMA以上のときに排気マニホルド33の内圧PEが所定圧PEA以上である旨推定することとした。これにより、排気マニホルド33の内圧PEを直接検出することなく、排気バルブ31の開弁タイミングを目標開弁タイミングよりも遅角側に補正するか否かを判断することができるようになる。
(3)過給圧PMが高いときには低いときに比べて排気バルブ31の開弁タイミングの遅角補正量ΔVTexを大きな値に設定することとした。これにより、目標開弁タイミングに応じて可変動弁機構40を制御した場合に排気の圧力が高くなる場合であっても、その程度に応じて遅角補正量ΔVTexが設定されるため、当該気筒内の圧力が十分に低くなった後に排気バルブ31が開弁されるようになる。これにより、当該気筒から排出される排気の圧力を的確に低くすることができるようになる。従って、ラッシュアジャスタ320のポンプアップの発生を的確に抑制することができるようになる。
<第2実施形態>
図9を参照して、本発明にかかる多気筒内燃機関の第2実施形態について説明する。
先の第1実施形態では、上記遅角補正制御を実行するか否かを判断するための所定圧力PMAを一定値としているに対して、本実施形態では、機関回転速度NEが高いときには低いときに比べて上記所定圧力PMXを小さな値に設定するようにしている。また、機関冷却水温THWが高いときには低いときに比べて上記所定圧力PMXを大きな値に設定するようにしている。
以下、その理由について説明する。
上記所定圧力PMAを過給圧PMにかかわらず拘わらず一定値とすると、すなわち排気マニホルド33の内圧PEに拘わらず一定値とすると、例えばラッシュアジャスタ320の押圧力が予め想定したものよりも大きい場合には、過給圧PMが所定圧力PMAよりも小さいにも拘わらず、すなわち排気マニホルド33の内圧PEが上記所定圧PEAよりも小さいにも拘わらず、ラッシュアジャスタ320のポンプアップが発生し、排気バルブ31の着座不良が生じる。
一方、機関駆動式のオイルポンプ15から供給されるオイルの圧力により駆動されるラッシュアジャスタ320においては、機関回転速度NEが高いときには低いときに比べてオイルの圧力が高くなり、これにともないラッシュアジャスタ320の押圧力が大きくなる。これらのことに鑑みて、機関回転速度NEが高いときには低いときに比べて上記所定圧力PMXを小さな値に設定するようにすれば、ラッシュアジャスタ320の押圧力が大きいときには小さいときに比べて上記所定圧力PMXが小さな値に設定されるようになり、ラッシュアジャスタ320の押圧力に応じた上記所定圧力PMXの的確な設定が図られるようになるなされるようになる。
他方、オイルの温度が高いときには低いときに比べてオイルの粘度粘性が低くなり、これにともない駆動部分からのオイルの漏れ量が多くなることから、ラッシュアジャスタ320の押圧力が小さくなる。また、機関冷却水温THWを把握することによりラッシュアジャスタ320のオイルの温度を推定することができる。これらのことに鑑みて、機関冷却水温THWが高いときには低いときに比べて上記所定圧力PMXを大きな値に設定するようにすれば、ラッシュアジャスタ320の押圧力が小さいときには大きいときに比べて上記所定圧力PMXが大きな値に設定されるようになり、ラッシュアジャスタ320の押圧力に応じた上記所定圧力PMXの的確な設定が図られるなされるようになる。
図9は、機関回転速度NE及び機関冷却水温THWと所定圧力PMXとの関係を規定したマップである。
機関回転速度NEが高いときには低いときに比べて所定圧力PMXは大きな値とされている。また、機関冷却水温THWが高いときには低いときに比べて所定圧力PMXは小さな値とされている。
以上説明した本実施形態にかかる多気筒内燃機関によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(1)ラッシュアジャスタ320はエンジン10により駆動されるオイルポンプ15から供給されるオイルの圧力により駆動されるものであり、機関回転速度NEが高いときには低いときに比べて上記所定圧力PMXを小さな値に設定することとした。これにより、ラッシュアジャスタ320の押圧力が大きいときには小さいときに比べて上記所定圧力PMXを小さな値に設定することができ、ラッシュアジャスタ320の押圧力に応じて上記所定圧力PMXを的確に設定することができるようになる。従って、排気マニホルド33の内圧PEが上記所定圧PEXよりも小さいにも拘わらず、ラッシュアジャスタ320のポンプアップが発生することを抑制することができ、排気バルブ31の着座不良が生じることを抑制することができるようになる。
(2)ラッシュアジャスタ320はエンジン10により駆動されるオイルポンプ15から供給されるオイルの圧力により駆動されるものであり、機関冷却水温THWが高いときには低いときに比べて上記所定圧力PMXを大きな値に設定することとした。これにより、ラッシュアジャスタ320の押圧力が小さいときには大きいときに比べて上記所定圧力PMXを大きな値に設定することができ、ラッシュアジャスタ320の押圧力に応じて上記所定圧力PMXを的確に設定することができるようになる。従って、排気マニホルド33の内圧が上記所定圧PEAよりも小さいにも拘わらず、ラッシュアジャスタ320のポンプアップが発生することを抑制することができ、排気バルブ31の着座不良が生じることを抑制することができるようになる。
なお、本発明にかかる多気筒内燃機関は、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、これを適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
・上記第2実施形態では、機関回転速度NEが高いときには低いときに比べて上記所定圧力PMXを小さな値に設定するとともに、機関冷却水温THWが高いときには低いときに比べて上記所定圧力PMXを大きな値に設定するようにしている。しかし、例えばラッシュアジャスタ320の押圧力に対して機関冷却水温THWの与える影響が無視できる場合には機関冷却水温THWに拘わらず所定圧力PMXを一定値とするようにしてもよい。また、ラッシュアジャスタ320の押圧力に対して機関回転速度NEの与える影響が無視できる場合には機関回転速度NEに拘わらず所定圧力PMXを一定値とするようにしてもよい。
・上記第2実施形態では、機関冷却水温THWに基づいてラッシュアジャスタ320のオイルの温度を推定するようにしているが、ラッシュアジャスタ320のオイルを直接検出する油温検出手段を設け、同油温検出手段により検出されるオイルの温度が高いときには低いときに比べて上記所定圧力PMXを大きな値に設定するようにしてもよい。この場合であっても上記第2実施形態と同様の効果を奏することができるようになる。
・上記各実施形態では、過給圧センサ65により検出される過給圧PMが所定圧力PMA,MAX以上のときに排気マニホルド33の内圧PEが所定圧PEA以上である旨推定するようにしているが、これに代えて、排気マニホルド33の内圧PEを直接検出する排気圧センサを設け、このセンサの検出結果に基づいて上記遅角補正制御を実行するようにしてもよい。
・上記各実施形態では、過給機50を備えるエンジン10について例示したが、本発明の適用されるエンジンはこれに限られるものではない。こうした過給機を備えないエンジンに対してエンジンであっても、本発明を適用すれば、排気の圧力が過度に高くなる状況となるものであればのもと、本発明の効果を奏することはできる。この場合には、過給圧PMに代えて吸気の圧力を検出するようにすればよい。
・上記各実施形態では、過給圧センサ65により検出される過給圧PMが所定圧力PMA,MAX以上のときに排気マニホルド33の内圧PEが所定圧PEA以上である旨推定するようにしているが、これに代えて、排気マニホルド33の内圧PEを直接検出する排気圧センサを設け、このセンサの検出結果に基づいて上記遅角補正制御を実行するようにしてもよい。
・上記各実施形態のように、過給圧PMが高いときには低いときに比べて排気バルブ31の開弁タイミングの遅角補正量ΔVTexを大きな値に設定することが、当該気筒内の圧力が十分に低くなった後に排気バルブ31を開弁してラッシュアジャスタ320のポンプアップの発生を的確に抑制する上では望ましい。しかし、ラッシュアジャスタ320のポンプアップの発生を抑制することができるのであれば、このように遅角補正量ΔVTexを可変設定しなくともラッシュアジャスタ320のポンプアップの発生をある程度は抑制することができる。よい。要するに、排気マニホルド33の内圧PEが所定圧PEA以上である旨推定されるときに排気バルブ31の開弁タイミングを目標開弁タイミングよりも遅角側に補正するものであればよい。
・上記各実施形態では、排気マニホルド33の内圧PEが所定圧PEA以上である旨推定されるときに排気バルブ31の開弁タイミングを機関運転状態に基づいて算出される目標開弁タイミングよりも遅角側に補正するものについて例示したが、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、機関回転速度NEが高い場合には、バルブサージングが生じやすくなり、こうしたバルブサージングが発生すると排気バルブ31に作用するバルブスプリング312の付勢力が一時的に減少することとなる。このためこうした場合においても、上述したような着座不良が生じるおそれがある。そこで、機関回転速度NEが所定速度NEA以上であるときに排気バルブ31の開弁タイミングを上記目標開弁タイミングよりも遅角側に補正する遅角補正制御を実行するようにしてもよい。このように、排気バルブ31のバルブサージングが生じるときには、排気バルブ31の開弁タイミングを目標開弁タイミングよりも遅角側に補正するよう遅角補正制御を実行にすれば、こうした遅角補正制御をしない実行しない場合と比較して、当該気筒内の圧力が低くなった後に排気バルブ31が開弁されるようになる。これにより、当該気筒から排出される排気の圧力が低くなり、排気の圧力が過度に高くなることを抑制することができるようになる。その結果、ラッシュアジャスタ320のポンプアップの発生を抑制することができるようになる。従って、排気バルブ31の開閉駆動にともなう機関抵抗の増大を抑制しつつも、排気の圧力が過度に高くなることに起因して排気バルブ31の着座不良が生じることを抑制することができるようになる。またこの場合、機関回転速度NEが高いときには低いときに比べて上記遅角補正量ΔVTexを大きな値に設定するようにすれば、排気バルブ31のバルブサージングが発生する場合であっても、その程度に応じて遅角補正量が設定されるため、当該気筒内の圧力が十分に低くなった後に排気バルブ31が開弁されるようになる。これにより、当該気筒から排出される排気の圧力を的確に低くすることができるようになる。従って、ラッシュアジャスタ320のポンプアップの発生を的確に抑制することができるようになる。
・上記各実施形態では、車載用筒内噴射式ガソリンエンジンについて例示したが、本発明の多気筒内燃機関はこれに限られるものではなく、他に例えば吸気ポート22から燃料を噴射するポート噴射式ガソリンエンジンに対して本発明を適用することもできる。また、ディーゼルエンジンに対して本発明を適用することもできる。
本発明の第1実施形態にかかる多気筒内燃機関について、その概略構成を模式的に示す模式図。 同実施形態における排気バルブ及びその動弁機構を模式的に示す模式図。 同実施形態におけるラッシュアジャスタの断面構造を示す断面図。 同実施形態における排気バルブ及びその動弁機構の作用を模式的に示す模式図。 同実施形態における排気バルブのリフト曲線を示したグラフ。 同実施形態における遅角補正制御の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態における過給圧と遅角補正量との関係を規定したマップ。 同実施形態の遅角補正制御を実行しない場合における、(a)第1気筒の排気バルブのリフト量の推移、(b)第3気筒の排気バルブのリフト量の推移、(c)排気マニホルドの内圧の推移、上記遅角補正制御を実行する場合における、(d)第1気筒の排気バルブのリフト量の推移、(e)第3気筒の排気バルブのリフト量の推移、(f)排気マニホルドの内圧の推移の一例を示すタイミングチャート。 同実施形態における遅角補正制御の変形例について、機関回転速度及び機関冷却水温と所定圧力との関係を規定したマップ。
符号の説明
10…エンジン、11…燃焼室、12…インジェクタ、13…点火プラグ、14…シリンダヘッド、15…オイルポンプ、16…オイル通路、17…バルブシート、20…吸気通路、21…吸気弁、22…吸気ポート、23…吸気マニホルド、24…吸気管、25a…スロットルバルブ、25b…スロットルモータ、30…排気通路、31…排気バルブ、32…排気ポート、33…排気マニホルド、34…排気管、40…可変動弁機構、50…過給機、51…タービン、52…コンプレッサ、61…クランク角センサ、62…スロットルセンサ、63…エアフローメータ、64…水温センサ(水温検出手段)、65…過給圧センサ(圧力検出手段)、66…カム各センサ、70…電子制御装置(制御手段、補正手段)、311…リテーナ、312…バルブスプリング、313…カムシャフト、314…カム、315…ロッカアーム、316…ローラ、320…ラッシュアジャスタ、321…ボディ、322…プランジャ、323…プランジャスプリング、324…チェックボール、325…チェックボールスプリング、326…ボールリテーナ、327…高圧室、328…低圧室、329…連通孔、330…オイル孔、331…オイル孔。

Claims (9)

  1. 排気バルブの閉じる方向に同バルブを付勢するバルブスプリングと、前記排気バルブの開く方向に同バルブを押圧して同バルブの位置を調節する油圧式ラッシュアジャスタと、これらバルブスプリング及び油圧式ラッシュアジャスタとの協働により前記排気バルブを開閉駆動するカムと、前記排気バルブの開閉駆動にともない燃焼室との連通状態が切り替えられる排気ポートとを気筒毎に備え、これら排気ポートの排気下流側に接続される排気マニホルドを備える多気筒内燃機関において、
    前記排気バルブの開弁タイミングを可変とする可変動弁機構と、
    機関運転状態に基づいて算出される排気バルブの目標開弁タイミングに応じて前記可変動弁機構を制御する制御手段と、
    前記排気マニホルドの内圧が所定圧以上である旨推定されるときに前記排気バルブの開弁タイミングを前記目標開弁タイミングよりも遅角側に補正する補正手段とを備える
    ことを特徴とする多気筒内燃機関。
  2. 請求項1に記載の多気筒内燃機関において、
    前記補正手段は、内燃機関の吸気の圧力を検出する圧力検出手段を含み、該圧力検出手段により検出される吸気の圧力が所定圧力以上のときに排気マニホルドの内圧が所定圧以上である旨推定する
    ことを特徴とする多気筒内燃機関。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の多気筒内燃機関において、
    前記補正手段は、前記排気マニホルドの内圧が高いときには低いときに比べて前記排気バルブの開弁タイミングの遅角補正量を大きな値に設定する
    ことを特徴とする多気筒内燃機関。
  4. 排気バルブを閉じる方向に付勢するバルブスプリングと、前記排気バルブを開く方向に押圧して同バルブの位置を調節するラッシュアジャスタと、これらバルブスプリング及び油圧式ラッシュアジャスタとの協働により前記排気バルブを開閉駆動するカムと、前記排気バルブの開閉駆動にともない燃焼室との連通状態が切り替えられる排気ポートとを気筒毎に備え、これら排気ポートの排気下流側に接続される排気マニホルドを備える多気筒内燃機関において、
    前記排気バルブの開弁タイミングを可変とする可変動弁機構と、
    機関運転状態に基づいて算出される排気バルブの目標開弁タイミングに応じて前記可変動弁機構を制御する制御手段と、
    機関回転速度が所定速度以上であるときに前記排気バルブの開弁タイミングを前記目標開弁タイミングよりも遅角側に補正する補正手段とを備える
    ことを特徴とする多気筒内燃機関。
  5. 請求項4に記載の多気筒内燃機関において、
    前記補正手段は、前記機関回転速度が高いときには低いときに比べて前記排気バルブの開弁タイミングの遅角補正量を大きな値に設定する
    ことを特徴とする多気筒内燃機関。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の多気筒内燃機関において、
    前記油圧式ラッシュアジャスタは機関駆動式のオイルポンプから供給されるオイルの圧力により駆動されるものであり、
    前記補正手段は、機関回転速度が高いときには低いときに比べて前記所定圧を小さな値に設定する
    ことを特徴とする多気筒内燃機関。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の多気筒内燃機関において、
    前記油圧式ラッシュアジャスタは機関駆動式のオイルポンプから供給されるオイルの圧力により駆動されるものであり、
    前記オイルの温度を検出する油温検出手段を備え、
    前記補正手段は、前記油温検出手段により検出されるオイルの温度が高いときには低いときに比べて前記所定圧を大きな値に設定する
    ことを特徴とする多気筒内燃機関。
  8. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の多気筒内燃機関において、
    前記油圧式ラッシュアジャスタは機関駆動式のオイルポンプから供給されるオイルの圧力により駆動されるものであり、
    機関冷却水の温度を検出する水温検出手段を備え、
    前記補正手段は、前記水温検出手段により検出される機関冷却水の温度が高いときには低いときに比べて前記所定圧を大きな値に設定する
    ことを特徴とする多気筒内燃機関。
  9. 請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の多気筒内燃機関において、
    燃焼室に吸入される空気を排気圧によって過給する過給機を備える
    ことを特徴とする多気筒内燃機関。
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