本発明の偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂が、カルボキシル基および/またはその無水物基を有する不飽和カルボン酸をモノマーユニットとして含有するカルボン酸含有ポリマーにより架橋されている架橋物、並びに二色性物質(代表的には、ヨウ素、二色性染料)を含有してなる延伸フィルムからなる。
前記フィルムの材料に用いるポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコールまたはその誘導体が用いられる。ポリビニルアルコールの誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等があげられる他、エチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸そのアルキルエステル、アクリルアミド等で変性したものがあげられる。ポリビニルアルコール系フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、1000〜10000程度、好ましくは1000〜5000、さらに好ましくは1400〜4000である。重合度が低すぎると、所定の延伸を行う際に延伸切れしやすく、また重合度が高すぎると、延伸する際に張力が異常に必要となり、機械的に延伸できなくなるおそれがある。ケン化度は80〜100モル%程度のものが一般に用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は粘度方により測定したものである。
前記カルボン酸含有ポリマーは、カルボキシル基を少なくとも2つ有する多価カルボン酸である。また、前記カルボン酸含有ポリマーは、前記不飽和カルボン酸をモノマーユニットとして含有するが、カルボン酸含有ポリマーは当該不飽和カルボン酸の単独重合体であってもよく、当該不飽和カルボン酸と、不飽和カルボン酸以外の他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとの共重合体であってもよい。
前記不飽和カルボン酸は、カルボキシル基および/またはその無水物を有し、かつ、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーであり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸や、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のカルボキシアルキル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を1つ有するモノマー;マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などのカルボキシル基を2つ有するモノマー;無水マレイン酸などの酸無水物基含有モノマー等があげられる。なお、上記、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸および/またはメタクリル酸をいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
一方、上記不飽和カルボン酸と共重合することができる、他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとしては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニル−t−ブチルエーテル等のビニルアルキル(炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖)エーテル;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数2〜10の直鎖または分岐鎖のαオレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル等があげられる。その他、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとしては、スチレン等のビニル基含有モノマー、アリルアルコール等のアリル基含有モノマーを例示できる。なお、ビニルエステルは、加水分解することで、カルボン酸含有ポリマー中にビニルアルコール単位を導入することができる。
前記カルボン酸含有ポリマーは、モノマーユニットの重合度が1000〜40000であることが、水への溶解性の点から好ましく、さらに前記重合度は、1000〜20000であること、さらには1500〜10000であるのが好ましい。また、カルボン酸含有ポリマーには、不飽和カルボン酸に由来する少なくとも2つのカルボキシル基が導入されていればよいが、不飽和カルボン酸のモノマーユニットは、カルボン酸含有ポリマーにおける全重合度の割合{(不飽和カルボン酸のモノマーユニット/全モノマーユニット)×100}は、不飽和カルボン酸との共重合モノマーが電子供与性モノマー(例えば、スチレン、ビニルアルキルエーテル、ビニルエステル等のビニル基を有するモノマー)の場合には、50%になる。一方、前記共重合モノマーが電子供与性でないモノマーの場合には特に制限はないが、前記割合は1〜80%、さらには20〜80%、さらには40〜80%であるのが好ましい。なお、重合度の測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、ポリエチレンオキサイド換算により行った。装置:HLC‐8220GPC(東ソー(株)製)、カラム:G6000PWXL/G3000PWXL(東ソー(株)製)、検出器:RI‐8020。
前記カルボン酸含有ポリマーとしては、不飽和カルボン酸のモノマーユニットとしてマレイン酸および/またはその無水物のモノマーユニットを含有するマレイン酸系重合体であることが好ましい。マレイン酸系重合体は、マレイン酸および/またはその無水物をモノマーユニットとする、共重合体が好ましいが、単独重合体でもよい。マレイン酸の単独重合体としては、比較的低分子量のものが用いられる。前記マレイン酸系重合体において、マレイン酸および/またはその無水物と共重合する共重合モノマーとしては、上記例示の各種の共重合モノマーを用いることができるが、水溶性の確保の点から、ビニルアルキルエーテルおよび/またはαオレフィンを用いるのが好ましい。マレイン酸系重合体としては、無水マレイン酸−ビニルアルキルエーテル共重合体および/または無水マレイン酸−αオレフィン共重合体が、好ましい。
無水マレイン酸−ビニルアルキルエーテル共重合体および/または無水マレイン酸−αオレフィン共重合体は、例えば、下記一般式(1)および一般式(2):
(式中、R1は、−CH3、−CH2CH3、−CH(CH3)2、−C(CH3)3、−OCH3、−OCH2CH3、−OCH(CH3)2、または−OC(CH3)3であり、R2は−Hまたは−CH3である。m、nは重合度であり、m+n=1000〜40000である。)で表されるモノマー単位を有するものが好ましい。
mは無水マレイン酸のモノマーユニットの重合度であり、nはビニルアルキルエーテルまたはαオレフィンのモノマーユニットの重合度である。なお、m、nは、共重合体中における、各モノマー単位重合度であり、前記一般式(1)、(2)のモノマーユニットがブロック体であることを示すものではない。m+nは、前記同様に、1000〜40000であり、1000〜30000、さらには1500〜15000であるのが好ましい。また、無水マレイン酸のモノマーユニットは、上記共重合体における全重合度の割合{(m/m+n)×100(%)}は、20〜80%、さらには40〜60%、さらには45〜50%であるのが好ましい。
前記カルボン酸含有ポリマーは、ポリビニルアルコール系樹脂と混合溶液を調製して、当該混合溶液からフィルム化するため、前記カルボン酸含有ポリマーとして水溶性の良好なものを用いるのが好ましい。マレイン酸−ビニルアルキルエーテル共重合体とマレイン酸−αオレフィン共重合体を比較した場合には、マレイン酸−αオレフィン共重合体に比べて、マレイン酸−ビニルアルキルエーテル共重合体の方が、極性が高く水溶性が高いため好ましい。
前記ポリビニルアルコール系樹脂と、カルボン酸含有ポリマーの割合は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、カルボン酸含有ポリマー0.5〜30重量部、さらには1〜20重量部であることが好ましい。カルボン酸含有ポリマーの割合が多くなりすぎると、フィルム中のポリビニルアルコール系樹脂の割合が少なくなり、前記フィルムを延伸することが困難になり、偏光子の製造の点で好ましくない。一方、カルボン酸含有ポリマーの割合が少なすぎると、カルボン酸含有ポリマーを配合する効果を得難い場合がある。
また、カルボン酸含有ポリマーの割合は、ポリビニルアルコール系樹脂の全モノマーユニットを100モル部とした場合には、カルボン酸含有ポリマー中の不飽和カルボン酸のモノマーユニットの割合が0.1〜10モル部、さらには0.1〜8モル部、さらには0.3〜6モル部となる割合になるように、カルボン酸含有ポリマーを用いるのが好ましい。
前記ポリビニルアルコール樹脂から形成されるフィルムには、前記のようにカルボン酸含有ポリマーを含有する他、可塑剤等の添加剤を含有することもできる。可塑剤としては、ポリオールおよびその縮合物等があげられ、たとえばグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等があげられる。可塑剤の使用量は、特に制限されないがポリビニルアルコール系フィルム中20重量%以下とするのが好適である。
本発明の偏光子の作成にあたり、ポリビニルアルコール系フィルムは、例えば、前記ポリビニルアルコール系樹脂とカルボン酸含有ポリマーを水または有機溶剤から、それぞれ調製した後に混合し、または同時に混合して調製した混合溶液から、任意の適切な方法で成形され得る。前記溶液の調製にあたっては、適宜に、水酸化ナトリウム等のアルカリ等によりpHを制御することができる。前記混合溶液は、通常、1〜20重量%の溶液として調製される。例えば、フィルム成形は、混合溶液を溶解した溶液を流延製膜する流延法、キャスト法、押出法により行うことができる。フィルムを形成した後には、60〜140℃、好ましくは100〜120℃で、5〜60分間、好ましくは5〜20分間の熱処理を行う。前記ポリビニルアルコール系フィルムは、例えば、支持基材上に形成することができる(ここで形成された、支持基材上にポリビニルアルコール系フィルムを有するものを積層フィルムという)。支持基材上に形成されるポリビニルアルコール系フィルムの厚みは、通常、3〜100μmである。当該ポリビニルアルコール系フィルムに対しては、後述の染色処理工程、延伸処理工程等が施される。当該各処理工程において、当該ポリビニルアルコール系フィルムは、当該フィルムを支持基材から剥離して、独立フィルムとして用いてもよく、積層フィルムのままで用いてもよい。前記ポリビニルアルコール系フィルムの厚みは、染色処理工程、延伸処理工程等において、ポリビニルアルコール系フィルを独立フィルムとして用いるか、または積層フィルムとして用いるかによって、適宜に設計することができる。例えば、独立フィルムとして用いる場合には、独立フィルムとして自立性を確保するため、フィルム厚みは10〜100μmであるのが好ましい。一方、積層フィルムとして用いる場合には、フィルム厚みの薄型化が可能であり、フィルム厚みは3〜20μmにすることができる。なお、ポリビニルアルコール系フィルムの厚みは、偏光子の厚みに応じて適宜に制御される。偏光子の厚みは、LCDや目的とする用途に応じて、適宜設定されるが、通常、2〜80μm程度、好ましくは5〜80μm程度である。なお、上記では、偏光子の作成にあたり、ポリビニルアルコール系樹脂並びにカルボン酸含有ポリマーを含有するポリビニルアルコール系フィルムの調製を、染色処理工程および延伸処理工程より前に施す場合について記載したが、ポリビニルアルコール系フィルムへのカルボン酸含有ポリマーの含有は、染色処理工程および延伸処理工程等の工程において処理浴中にカルボン酸含有ポリマーを含有させておくことにより前記処理とともに行うこともできる。また、ポリビニルアルコール系フィルムへのカルボン酸含有ポリマーの含有は、ポリビニルアルコール系フィルムにカルボン酸含有ポリマーを塗布する工程、ポリビニルアルコール系フィルムをカルボン酸含有ポリマーを含有する処理液に浸漬する工程等により行うこともできる。
前記支持基材の材料としては、後述の透明保護フィルムに用いる材料と同様の材料を例示できる。支持基材(延伸前)の厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。
また前記積層フィルムは、例えば、支持基材の形成材と、ポリビニルアルコール系フィルムの形成材の共押出により形成することができる。かかる共押出により支持基材とポリビニルアルコール系フィルムが一体化した状態の積層フィルムが得られる。共押出にあたっては、支持基材の材料およびポリビニルアルコール系フィルムの材料を、それぞれ各層の形成材として共押出機に仕込み、共押出される支持基材およびポリビニルアルコール系フィルムの厚さが、前記範囲になるように制御することが好ましい。
本発明で用いる偏光子は、例えば、前記ポリビニルアルコール系フィルムに、少なくとも、二色性物質による染色処理および延伸処理を施すことにより得られる。
染色工程は、代表的には、上記ポリビニルアルコール系フィルムを、ヨウ素等の二色性物質を含む処理浴中に浸漬することにより行われる。染色浴の溶液に用いられる溶媒は、水が一般的に使用されるが、水と相溶性を有する有機溶媒が適量添加されていてもよい。二色性物質は、溶媒100重量部に対して、通常、0.1〜1重量部の割合で用いられる。二色性物質としてヨウ素を用いる場合は、染色浴の溶液はヨウ化物等の助剤をさらに含有することが好ましい。染色効率が改善されるからである。助剤は、溶媒100重量部に対して、好ましくは0.02〜20重量部、さらに好ましくは2〜10重量部の割合で用いられる。ヨウ化物の具体例としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンなどがあげられる。染色浴の温度は、通常、20〜70℃程度であり、染色浴への浸漬時間は、通常、1〜20分間程度である。なお、染色処理工程は、上述の通り、ポリビニルアルコール系フィルムに係る積層フィルムまたは独立フィルムのいずれについてもことができるが、ポリビニルアルコール系フィルムが薄層の場合には、染色処理工程は積層フィルムに対して行なうのが好ましい。
延伸工程は、いずれの段階で行ってもよい。具体的には、染色処理の後に行ってもよく、染色処理の前に行ってもよく、膨潤処理、染色処理、架橋処理と同時に行ってもよく、架橋処理の後に行ってもよい。ポリビニルアルコール系フィルムの累積延伸倍率は、通常、5倍以上にする。好ましくは5〜7倍、さらに好ましくは5〜6.5倍である。累積延伸倍率が5倍未満の場合には、高偏光度の偏光板を得ることが困難となる。累積延伸倍率が7倍を超える場合はポリビニルアルコール系フィルムが破断しやすくなる場合がある。
延伸処理は、通常、一軸延伸を施すことにより行う。一軸延伸は、前記ポリビニルアルコール系フィルムの長手方向に対して行う縦延伸、前記積層体の幅方向に対して行う横延伸のいずれも採用することができる。横延伸では、幅方向に延伸を行いながら、長手方向に収縮させることもできる。横延伸方式としては、例えば、テンターを介して一端を固定した固定端一軸延伸方法や、一端を固定しない自由端一軸延伸方法等があげられる。縦延伸方式としては、ロール間延伸方法、圧縮延伸方法、テンターを用いた延伸方法等があげられる。延伸処理は多段で行うこともできる。また、延伸処理は、二軸延伸、斜め延伸などを施すことにより行うことができる。また、延伸の具体的な方法としては、湿潤延伸法、乾式延伸法のいずれも採用でき、任意の適切な方法が採用される。例えば、湿式延伸法を採用した場合には、ポリビニルアルコール系フィルムを処理浴中で所定の倍率に延伸する。延伸浴の溶液としては、水または有機溶媒(例えばエタノール)などの溶媒中に、各種処理に応じて、ヨウ素、ホウ素または亜鉛等の金属塩を添加した溶液が好適に用いられる。なお、延伸処理工程は、上述の通り、ポリビニルアルコール系フィルムに係る積層フィルムまたは独立フィルムのいずれについてもことができるが、ポリビニルアルコール系フィルムが薄層の場合には、延伸処理工程は積層フィルムに対して行なうのが好ましい。積層フィルムに対する延伸処理により、ポリビニルアルコール系フィルムとともに支持基材についても延伸される。
本発明の偏光子の製造にあたっては、前記延伸処理および染色処理に加えて、各種処理を施すことができる。偏光子の製造方法では、例えば、上記ポリビニルアルコール系フィルムを、通常、膨潤、染色、架橋、延伸、水洗および乾燥工程を含む一連の製造工程に供する方式が採用されるが、本発明の偏光子の製造方法においても、上記工程を採用することができる。乾燥工程を除く各処理工程においては、それぞれの工程に用いられる溶液を含む液中にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬することにより処理を行うことができる。膨潤、染色、架橋、延伸、水洗および乾燥の各処理の順番、回数および実施の有無は、目的、使用材料および条件などに応じて適亘設定されえる。例えば、いくつかの処理を1つの工程で同時に行ってもよく、膨潤処理、染色処理および架橋処理を同時に行ってもよい。また例えば、架橋処理を延伸処理の前後に行うことが、好適に採用され得る。また例えば、水洗処理は、全ての処理の後に行ってもよく、特定の処理の後のみに行ってもよい。
膨潤工程は、代表的には、上記ポリビニルアルコール系フィルムを水で満たした処理浴中に浸漬することより行われる。この処理により、ポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄すると共に、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色ムラ等の不均一性を防止できる。膨潤浴には、グリセリンやヨウ化カリウム等が適宜に添加される。膨潤浴の温度は、通常20〜60℃程度であり、膨潤浴への浸漬時間は、通常0.1〜10分間程度である。
架橋工程は、代表的には、上記染色されたポリビニルアルコール系フィルムを、架橋剤を含む処理欲中に浸漬することによって行われる。架橋割としては任意の適切な架橋剤が採用される。架橋剤の具体例としては、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等があげられる。これらは、単独で、または組み合わせて使用される。架橋浴の溶液に用いられる溶媒は、水が一般的に使用されるが、水と相溶性を有する有機溶媒が適量添加されていてもよい。架橋剤は、溶媒100重量部に対して、通常、1〜10重量部の割合で用いられる。架橋剤の濃度が1重量部未満の場合は、十分な光学特性を得ることができない。架橋剤の濃度が10重量部を超える場合は、延伸時にフィルムに発生する応力が大きくなり、得られる偏光板が収縮してしまう可能性がある。架橋浴の溶液は、ヨウ化物等の助剤をさらに含有することが望ましい。面内に均一な特性が得られやすいからである。助剤の濃度は好ましくは0.05〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜8重量%である。ヨウ化物の具体例は、染色工程の場合と同様である。架橋浴の温度は、通常、20〜70℃程度、好ましく40〜60℃である。架橋浴への浸漬時間は、通常、1秒間〜15分間程度、好ましくは5秒間〜10分間である。
前記処理の他に、金属イオン処理を施すことができる。金属イオン処理は、金属塩を含む水溶液に、前記積層体を浸漬することにより行う。金属イオン処理により、種々の金属イオンを前記積層体の親水性高分子層中に含有させることができる。
金属イオンとしては、特に色調調整や耐久性付与の点からコバルト、ニッケル、亜鉛、クロム、アルミニウム、銅、マンガン、鉄などの遷移金属の金属イオンが好ましく用いられる。これら金属イオンのなかでも、色調調整や耐熱性付与などの点から亜鉛イオンが好ましい。亜鉛塩としては、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛などのハロゲン化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛などがあげられる。
金属イオン含浸処理には、金属塩溶液が用いられる。金属塩溶液中の亜鉛イオンの濃度は、0.1〜10重量%程度、好ましくは0.3〜7重量%の範囲である。また、金属円溶液はヨウ化カリウム等のヨウ化物を含有させた水溶液を用いるのが金属イオンを含浸させやすく好ましい。金属塩溶液中のヨウ化物濃度は0.1〜10重量%程度、さらには0.2〜5重量%とするのが好ましい。
金属イオン含浸処理にあたり、金属塩溶液の温度は、通常15〜85℃程度、好ましくは25〜70℃である。浸漬時間は通常1〜120秒程度、好ましくは3〜90秒間の範囲である。金属イオン含浸処理の段階は特に制限されず、染色溶液および/または架橋溶液中に亜鉛塩を共存させておいて、染色処理および/または架橋処理と同時に行ってもよい。また延伸処理と同時に行うこともできる。
水洗工程は、代表的には、上記各種処理を施されたポリビニルアルコール系フィルムを処理浴中に浸漬することによって行われる。水洗工程によりポリビニルアルコール系フィルムの不要残存物を洗い流すことができる。水洗浴は、純水であってもよく、ヨウ化物(例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等)の水溶液であってもよい。ヨウ化物水溶液の濃度は、好ましくは0.1〜10重量%である。ヨウ化物水溶液には硫酸亜鉛、塩化亜鉛などの助剤を添加してもよい。水洗浴の温度は好ましくは10〜60℃、さらに好ましくは30〜40℃である。浸漬時間は1秒間〜1分間である。水洗工程は1回だけでもよく、必要に応じて複数回行ってもよい。複数回実施される場合は、各処理に用いられる水洗浴に含まれる添加剤の種類や濃度は適宜に調整される。例えば、水洗工程は上記各種処理を施されたポリビニルアルコール系フィルムをヨウ化カリウム水溶液(0.1〜10重量%、10〜60℃)に1秒間〜1分間程度浸漬する工程と、純水ですすぐ工程とを含む。また、水洗工程において、偏光子の表面改質や、偏光子の乾燥効率を上げるために、水と相溶性を有する有機溶媒(例えば、エタノ−ルなど)を適宜添加してもよい。
乾燥工程は、任意の適切な方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)が採用されうる。例えば、加熱乾燥の場合の乾燥温度は、通常、20〜80℃程度であり、乾燥時間は、通常、1〜10分間程度である。以上のようにして偏光子が得られる。
本発明の偏光板は、上記本発明の偏光子の片面または両面に接着剤層を介して透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。なお、積層フィルムに各処理工程を施して偏光子を製造する場合には、積層フィルムにおける支持基材は、得られた偏光子の透明保護フィルムとして用いることができる。かかる態様の場合には、支持基材の材料としては、延伸処理工程を施した後にも位相差が小さい材料を用いることが好ましい。なお、この場合には、偏光子における支持基材のない側には、透明保護フィルムを貼り合わせることができる。また、偏光子を支持基材から剥離した後に、当該偏光子の片面または両面に透明保護フィルムを貼り合わせることができる。
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物があげられる。なお、偏光子の片側には、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされるが、他の片側には、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などがあげられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
また、透明保護フィルムとしては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、例えば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。これらのフィルムは位相差が小さく、光弾性係数が小さいため偏光板の歪みによるムラなどの不具合を解消することができ、また透湿度が小さいため、加湿耐久性に優れる。
透明保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、1〜100μmがより好ましい。透明保護フィルムは、1〜90μm、さらには1〜50μmの場合に特に好適である。
なお、偏光子の両側に透明保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。
本発明の透明保護フィルムとしては、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂および(メタ)アクリル樹脂から選ばれるいずれか少なくとも1つを用いるのが好ましい。
セルロース樹脂は、セルロースと脂肪酸のエステルである。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としでは、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリプロピオニルセルロース、ジプロピオニルセルロース等があげられる。これらのなかでも、トリアセチルセルロースが特に好ましい。トリアセチルセルロースは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。トリアセチルセルロースの市販品の例としては、富士フイルム社製の商品名「UV−50」、「UV−80」、「SH−80」、「TD−80U」、「TD−TAC」、「UZ−TAC」や、コニカ社製の「KCシリーズ」等があげられる。一般的にこれらトリアセチルセルロースは、面内位相差(Re)はほぼゼロであるが、厚み方向位相差(Rth)は、〜60nm程度を有している。
なお、厚み方向位相差が小さいセルロース樹脂フィルムは、例えば、上記セルロース樹脂を処理することにより得られる。例えばシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤を塗工したポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ステンレスなどの基材フィルムを、一般的なセルロース系フィルムに貼り合わせ、加熱乾燥(例えば80〜150℃で3〜10分間程度)した後、基材フィルムを剥離する方法;ノルボルネン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂などをシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤に溶解した溶液を一般的なセルロース樹脂フィルムに塗工し加熱乾燥(例えば80〜150℃で3〜10分間程度)した後、塗工フィルムを剥離する方法などがあげられる。
また、厚み方向位相差が小さいセルロース樹脂フィルムとしては、脂肪置換度を制御した脂肪酸セルロース系樹脂フィルムを用いることができる。一般的に用いられるトリアセチルセルロースでは酢酸置換度が2.8程度であるが、好ましくは酢酸置換度を1.8〜2.7に制御することによってRthを小さくすることができる。上記脂肪酸置換セルロース系樹脂に、ジブチルフタレート、p−トルエンスルホンアニリド、クエン酸アセチルトリエチル等の可塑剤を添加することにより、Rthを小さく制御することができる。可塑剤の添加量は、脂肪酸セルロース系樹脂100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。
環状ポリオレフィン樹脂の具体的としては、好ましくはノルボルネン系樹脂である。環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂があげられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびに、それらの水素化物などがあげられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーがあげられる。
環状ポリオレフィン樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学株式会社製の商品名「APEL」があげられる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、Tg(ガラス転移温度)が好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。Tgが115℃以上であることにより、偏光板の耐久性に優れたものとなりうる。上記(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定きれないが、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。(メタ)アクリル系樹脂からは、面内位相差(Re)、厚み方向位相差(Rth)がほぼゼロのフィルムを得ることができる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)があげられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルがあげられる。より好ましくはメタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂があげられる。
(メタ)アクリル系樹脂の具体例として、例えば、三菱レイヨン株式会社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル樹脂系があげられる。
(メタ)アクリル系樹脂として、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いることもできる。高い耐熱性、高い透明性、二軸延伸することにより高い機械的強度を有するからである。
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂があげられる。
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、好ましくは下記一般式(化3)で表される環構造を有する。
式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜20の有機残基を示す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(化3)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(化3)で表されるラクトン環構造の含有割合が5重量%よりも少ないと、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が不十分になるおそれがある。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(化3)で表されるラクトン環構造の含有割合が90重量%より多いと、成形加工性に乏しくなるおそれがある。
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、質量平均分子量(重量平均分子量と称することも有る)が、好ましくは1000〜2000000、より好ましくは5000〜1000000、さらに好ましくは10000〜500000、特に好ましくは50000〜500000である。質量平均分子量が上記範囲から外れると、成型加工性の点から好ましくない。
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、Tgが好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。Tgが115℃以上であることから、例えば、透明保護フィルムとして偏光板に組み入れた場合に、耐久性に優れたものとなる。上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性などの観点から、好ましくは170℃以下である。
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、射出成形により得られる成形品の、ASTM−D−1003に準じた方法で測定される全光線透過率が、高ければ高いほど好ましく、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率は透明性の目安であり、全光線透過率が85%未満であると、透明性が低下するおそれがある。
前記透明保護フィルムは、正面位相差が40nm未満、かつ、厚み方向位相差が80nm未満であるものが、通常、用いられる。正面位相差Reは、Re=(nx−ny)×d、で表わされる。厚み方向位相差Rthは、Rth=(nx−nz)×d、で表される。また、Nz係数は、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)、で表される。[ただし、フィルムの遅相軸方向、進相軸方向及び厚さ方向の屈折率をそれぞれnx、ny、nzとし、d(nm)はフィルムの厚みとする。遅相軸方向は、フィルム面内の屈折率の最大となる方向とする。]。なお、透明保護フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、透明保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向位相差値(Rth)は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
一方、前記透明保護フィルムとして、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有する位相差板を用いることができる。正面位相差は、通常、40〜200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80〜300nmの範囲に制御される。透明保護フィルムとして位相差板を用いる場合には、当該位相差板が透明保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
位相差板としては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板の厚さも特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。
高分子素材としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これらの高分子素材は延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
液晶ポリマーとしては、例えば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどをあげられる。主鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサー部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマーなどがあげられる。側鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサー部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどがあげられる。これらの液晶ポリマーは、例えば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化ケイ素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであって良く、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであっても良い。
位相差板は、nx=ny>nz、nx>ny>nz、nx>ny=nz、nx>nz>ny、nz=nx>ny、nz>nx>ny、nz>nx=ny、の関係を満足するものが、各種用途に応じて選択して用いられる。なお、ny=nzとは、nyとnzが完全に同一である場合だけでなく、実質的にnyとnzが同じ場合も含む。
例えば、nx>ny>nz、を満足する位相差板では、正面位相差は40〜100nm、厚み方向位相差は100〜320nm、Nz係数は1.8〜4.5を満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nx>ny=nz、を満足する位相差板(ポジティブAプレート)では、正面位相差は100〜200nmを満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nz=nx>ny、を満足する位相差板(ネガティブAプレート)では、正面位相差は100〜200nmを満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nx>nz>ny、を満足する位相差板では、正面位相差は150〜300nm、Nz係数は0を超え〜0.7を満足するものを用いるのが好ましい。また、上記の通り、例えば、nx=ny>nz、nz>nx>ny、またはnz>nx=ny、を満足するものを用いることができる。
透明保護フィルムは、適用される液晶表示装置に応じて適宜に選択できる。例えば、VA(VerticalAlignment,MVA,PVA含む)の場合は、偏光板の少なくとも片方(セル側)の透明保護フィルムが位相差を有している方が望ましい。具体的な位相差として、Re=0〜240nm、Rth=0〜500nmの範囲である事が望ましい。三次元屈折率で言うと、nx>ny=nz、nx>ny>nz、nx>nz>ny、nx=ny>nz(ポジティブAプレート,二軸,ネガティブCプレート)の場合が望ましい。VA型では、ポジティブAプレートとネガティブCプレートの組み合わせ、または二軸フィルム1枚で用いるのが好ましい。液晶セルの上下に偏光板を使用する際、液晶セルの上下共に、位相差を有している、または上下いずれかの透明保護フィルムが位相差を有していてもよい。
例えば、IPS(In−Plane Switching,FFS含む)の場合、偏光板の片方の透明保護フィルムが位相差を有している場合、有していない場合のいずれも使用できる。例えば、位相差を有していない場合は、液晶セルの上下(セル側)ともに位相差を有していない場合が望ましい。位相差を有している場合は、液晶セルの上下ともに位相差を有している場合、上下のいずれかが位相差を有している場合が望ましい(例えば、上側にnx>nz>nyの関係を満足する二軸フィルム、下側に位相差なしの場合や、上側にポジティブAプレート、下側にポジティブCプレートの場合)。位相差を有している場合、Re=−500〜500nm、Rth=−500〜500nmの範囲が望ましい。三次元屈折率で言うと、nx>ny=nz、nx>nz>ny、nz>nx=ny、nz>nx>ny(ポジティブAプレート,二軸,ポジティブCプレート)が望ましい。
なお、前記位相差を有するフィルムは、位相差を有しない透明保護フィルムに、別途、貼り合せて上記機能を付与することができる。
前記透明保護フィルムは、接着剤を塗工する前に、偏光子との接着性を向上させるために、表面改質処理を行ってもよい。具体的な処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、ケン化処理、カップリング剤による処理などがあげられる。また適宜に帯電防止層を形成することができる。
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を透明保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層(例えば、バックライト側の拡散板)との密着防止を目的に施される。
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて透明保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜70重量部程度であり、5〜50重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
前記偏光子と透明保護フィルムとの接着処理には、接着剤が用いられる。接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等を例示できる。前記接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5〜60重量%の固形分を含有してなる。上記の他、偏光子と透明保護フィルムとの接着剤としては、紫外硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等があげられる。電子線硬化型偏光板用接着剤は、上記各種の透明保護フィルムに対して、好適な接着性を示す。また本発明で用いる接着剤には、金属化合物フィラーを含有させることができる。
本発明の偏光板は、実用に際して他の光学層と積層した光学フィルムとして用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、本発明の偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
反射型偏光板の具体例としては、必要に応じマット処理した透明保護フィルムの片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設して反射層を形成したものなどがあげられる。また前記透明保護フィルムに微粒子を含有させて表面微細凹凸構造とし、その上に微細凹凸構造の反射層を有するものなどもあげられる。前記した微細凹凸構造の反射層は、入射光を乱反射により拡散させて指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制しうる利点などを有する。また微粒子含有の透明保護フィルムは、入射光及びその反射光がそれを透過する際に拡散されて明暗ムラをより抑制しうる利点なども有している。透明保護フィルムの表面微細凹凸構造を反映させた微細凹凸構造の反射層の形成は、例えば真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式などの適宜な方式で金属を透明保護層の表面に直接付設する方法などにより行うことができる。
反射板は前記の偏光板の透明保護フィルムに直接付与する方式に代えて、その透明フィルムに準じた適宜なフィルムに反射層を設けてなる反射シートなどとして用いることもできる。なお反射層は、通常、金属からなるので、その反射面が透明保護フィルムや偏光板等で被覆された状態の使用形態が、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続の点や、保護層の別途付設の回避の点などより好ましい。
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
楕円偏光板はスーパーツイストネマチック(STN)型液晶表示装置の液晶層の複屈折により生じた着色(青又は黄)を補償(防止)して、前記着色のない白黒表示する場合などに有効に用いられる。更に、三次元の屈折率を制御したものは、液晶表示装置の画面を斜め方向から見た際に生じる着色も補償(防止)することができて好ましい。円偏光板は、例えば画像がカラー表示になる反射型液晶表示装置の画像の色調を整える場合などに有効に用いられ、また、反射防止の機能も有する。上記した位相差板の具体例としては、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミドの如き適宜なポリマーからなるフィルムを延伸処理してなる複屈折性フィルムや液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであってもよい。
また上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組み合わせで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組み合わせとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差フィルム、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視認角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
また良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は、通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。すなわち、輝度向上フィルムを使用せずに、バックライトなどで液晶セルの裏側から偏光子を通して光を入射した場合には、偏光子の偏光軸に一致していない偏光方向を有する光は、ほとんど偏光子に吸収されてしまい、偏光子を透過してこない。すなわち、用いた偏光子の特性によっても異なるが、およそ50%の光が偏光子に吸収されてしまい、その分、液晶画像表示等に利用しうる光量が減少し、画像が暗くなる。輝度向上フィルムは、偏光子に吸収されるような偏光方向を有する光を偏光子に入射させずに輝度向上フィルムで一旦反射させ、更にその後ろ側に設けられた反射層等を介して反転させて輝度向上フィルムに再入射させることを繰り返し、この両者間で反射、反転している光の偏光方向が偏光子を通過し得るような偏光方向になった偏光のみを、輝度向上フィルムは透過させて偏光子に供給するので、バックライトなどの光を効率的に液晶表示装置の画像の表示に使用でき、画面を明るくすることができる。
輝度向上フィルムと上記反射層等の間に拡散板を設けることもできる。輝度向上フィルムによって反射した偏光状態の光は上記反射層等に向かうが、設置された拡散板は通過する光を均一に拡散すると同時に偏光状態を解消し、非偏光状態となる。すなわち、拡散板は偏光を元の自然光状態にもどす。この非偏光状態、すなわち自然光状態の光が反射層等に向かい、反射層等を介して反射し、再び拡散板を通過して輝度向上フィルムに再入射することを繰り返す。このように輝度向上フィルムと上記反射層等の間に、偏光を元の自然光状態にもどす拡散板を設けることにより表示画面の明るさを維持しつつ、同時に表示画面の明るさのむらを少なくし、均一で明るい画面を提供することができる。かかる拡散板を設けることにより、初回の入射光は反射の繰り返し回数が程よく増加し、拡散板の拡散機能と相俟って均一の明るい表示画面を提供することができたものと考えられる。
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
従って、前記した所定偏光軸の直線偏光を透過させるタイプの輝度向上フィルムでは、その透過光をそのまま偏光板に偏光軸を揃えて入射させることにより、偏光板による吸収ロスを抑制しつつ効率よく透過させることができる。一方、コレステリック液晶層の如く円偏光を透過するタイプの輝度向上フィルムでは、そのまま偏光子に入射させることもできるが、吸収ロスを抑制する点よりその円偏光を位相差板を介し直線偏光化して偏光板に入射させることが好ましい。なお、その位相差板として1/4波長板を用いることにより、円偏光を直線偏光に変換することができる。
可視光域等の広い波長範囲で1/4波長板として機能する位相差板は、例えば波長550nmの淡色光に対して1/4波長板として機能する位相差層と他の位相差特性を示す位相差層、例えば1/2波長板として機能する位相差層とを重畳する方式などにより得ることができる。従って、偏光板と輝度向上フィルムの間に配置する位相差板は、1層又は2層以上の位相差層からなるものであってよい。
なお、コレステリック液晶層についても、反射波長が相違するものの組み合わせにして2層又は3層以上重畳した配置構造とすることにより、可視光領域等の広い波長範囲で円偏光を反射するものを得ることができ、それに基づいて広い波長範囲の透過円偏光を得ることができる。
また、偏光板は、上記の偏光分離型偏光板の如く、偏光板と2層又は3層以上の光学層とを積層したものからなっていてもよい。従って、上記の反射型偏光板や半透過型偏光板と位相差板を組み合わせた反射型楕円偏光板や半透過型楕円偏光板などであってもよい。
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板やその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
前述した偏光板や、偏光板を少なくとも1層積層されている光学フィルムには、液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
また上記に加えて、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。
粘着層は、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着層に添加されることの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層などであってもよい。
偏光板や光学フィルムの片面又は両面への粘着層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で偏光板上または光学フィルム上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを偏光板上または光学フィルム上に移着する方式などがあげられる。
粘着層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層として偏光板や光学フィルムの片面又は両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、偏光板や光学フィルムの表裏において異なる組成や種類や厚さ等の粘着層とすることもできる。粘着層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜40μmであり、5〜30μmが好ましく、特に10〜25μmが好ましい。1μmより薄いと耐久性が悪くなり、また40μmより厚いと発泡などによる浮きや剥がれが生じやすく外観不良となる、
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚さ条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
偏光板と粘着剤層との間の密着性を向上させるために、その層間にアンカー層を設けることもできる。
上記アンカー層の形成材としては、好ましくは、ポリウレタン、ポリエステル、分子中にアミノ基を含むポリマー類から選ばれるアンカー剤が用いられ、特に好ましくは、分子中にアミノ基を含んだポリマー類である。分子中にアミノ基を含むポリマー類は、分子中のアミノ基が粘着剤中のカルボキシル基等と反応またはイオン性相互作用などの相互作用を示すため、良好な密着性が確保される。
分子中にアミノ基を含むポリマー類としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリジン、ジメチルアミノエチルアクリレート等の含アミノ基含有モノマーの重合体などをあげることができる。
上記アンカー層には、帯電防止性を付与するために、帯電防止剤を添加することもできる。帯電防止性付与のための帯電防止剤としては、イオン性界面活性剤系、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリキノキサリン等の導電性ポリマー系、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム等の金属酸化物系などがあげられるが、特に光学特性、外観、帯電防止効果、および帯電防止効果の加熱、加湿時での安定性という観点から、導電性ポリマー系が好ましく使用される。この中でも、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの水溶性導電性ポリマー、もしくは水分散性導電性ポリマーが特に好ましく使用される。帯電防止層の形成材料として水溶性導電性ポリマーや水分散性導電性ポリマーを用いた場合、塗工に際して有機溶剤による光学フィルム基材への変質を抑えることができる。
なお本発明において、上記した偏光板を形成する偏光子や透明保護フィルムや光学フィルム等、また粘着層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
本発明の偏光板または光学フィルムは液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光板または光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による偏光板または光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型、などの任意なタイプのものを用いうる。
液晶セルの片側又は両側に偏光板または光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による偏光板または光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に偏光板または光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1/4波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1/4波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明の実施形態はこれらに限定されない。
実施例1
(ポリビニルアルコール系樹脂)
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%のポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール(株)製,商品名JC25)を、95℃の熱水中で2時間撹拌し、12重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。ポリビニルアルコール水溶液には、ポリビニルアルコール100重量部に対して、グリセリン10重量部を加えた。
(カルボン酸含有ポリマー)
カルボン酸含有ポリマーとして、無水マレイン酸−ビニルエチルエーテル共重合体(ISP社製の商品名Gantrez,重合度1700,型番AN−119)を、80℃の熱水中で撹拌し、10重量%の前記共重合体水溶液を調製した。なお、前記共重合体の全重合度の割合{(m/m+n)×100}は、m:n=1:1であり、50%である。
(混合溶液)
前記ポリビニルアルコール水溶液と前記共重合体水溶液を、固形分の重量比で、前者:後者=100:1となるように混合した後、80℃で5分間撹拌して、混合溶液を調製した。ポリビニルアルコールの全モノマーユニット100モル部に対する、前記共重合体中の無水マレイン酸のモノマーユニットの割合は0.3モル部であった。
(ポリビニルアルコール系フィルム)
前記混合溶液を、厚さ75μmのポリエステルフィルム上にキャストし、常温(23℃)にて24時間放置して、厚さ65μm±10μmのポリビニルアルコール系フィルムを得た。次いで、当該フィルムを120℃のオーブン中で10分間保持して、熱処理を行った。ポリビニルアルコール系フィルムはポリエステルフィルムから剥離して独立フィルムとして用いた。
(偏光子)
上記で得られたポリビニルアルコール系フィルムを、30℃の水中に浸漬して膨潤させ、さらに水中で一軸延伸した(延伸倍率3.5倍)。次いで、濃度0.3重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=0.5/8)の30℃のヨウ素溶液中で60秒間染色した。その後、30℃の第一ホウ酸水溶液中(ホウ酸濃度3重量%、ヨウ化カリウム濃度3重量%)に45秒間浸漬し、次いで、60℃の第二ホウ酸水溶液中(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬しながら総合延伸倍率が6倍まで延伸した。その後、30℃のヨウ化カリウム水溶液(ヨウ化カリウム濃度4重量%)に10秒間浸漬した。延伸後、60℃のオーブンで3分間乾燥を行い、厚さ26μm±5μmの偏光子を得た。
実施例2
実施例1において、混合溶液の調製にあたり、前記ポリビニルアルコール水溶液と前記共重合体水溶液の固形分の重量比を前者:後者=100:4に変えたこと以外は実施例1と同様にして、偏光子を作成した。ポリビニルアルコールの全モノマーユニット100モル部に対する、前記共重合体中の無水マレイン酸のモノマーユニットの割合は1.1モル部であった。
実施例3
実施例1において、混合溶液の調製にあたり、前記ポリビニルアルコール水溶液と前記共重合体水溶液の固形分の重量比を前者:後者=100:8に変えたこと以外は実施例1と同様にして、偏光子を作成した。ポリビニルアルコールの全モノマーユニット100モル部に対する、前記共重合体中の無水マレイン酸のモノマーユニットの割合は2.3モル部であった。
実施例4
実施例1において、混合溶液の調製にあたり、前記ポリビニルアルコール水溶液と前記共重合体水溶液の固形分の重量比を前者:後者=100:20に変えたこと以外は実施例1と同様にして、偏光子を作成した。ポリビニルアルコールの全モノマーユニット100モル部に対する、前記共重合体中の無水マレイン酸のモノマーユニットの割合は5.6モル部であった。
実施例5
実施例1において、カルボン酸含有ポリマーとして、無水マレイン酸−ビニルエチルエーテル共重合体(ISP社製の商品名Gantrez,重合度9000,型番AN−139)を用いて共重合体水溶液を調製したこと、また、混合溶液の調製にあたり、前記ポリビニルアルコール水溶液と当該共重合体水溶液の固形分の重量比を前者:後者=100:10に変えたこと以外は実施例1と同様にして、偏光子を作成した。なお、前記共重合体の全重合度の割合{(m/m+n)×100}は、m:n=1:1であり、50%である。ポリビニルアルコールの全モノマーユニット100モル部に対する、前記共重合体中の無水マレイン酸のモノマーユニットの割合は2.8モル部であった。
実施例6
実施例1において、カルボン酸含有ポリマーとして、無水マレイン酸−ビニルエチルエーテル共重合体(ISP社製の商品名Gantrez,重合度16000,型番AN−149)を用いて共重合体水溶液を調製したこと、また、混合溶液の調製にあたり、前記ポリビニルアルコール水溶液と当該共重合体水溶液の固形分の重量比を前者:後者=100:10に変えたこと以外は実施例1と同様にして、偏光子を作成した。なお、前記共重合体の全重合度の割合{(m/m+n)×100}は、m:n=1:1であり、50%である。ポリビニルアルコールの全モノマーユニット100モル部に対する、前記共重合体中の無水マレイン酸のモノマーユニットの割合は2.8モル部であった。
比較例1
実施例1において、カルボン酸含有ポリマーを用いなかったこと、即ち、混合溶液の代わりに、ポリビニルアルコール水溶液を用いたポリビニルアルコール系フィルムを作成したこと以外は実施例1と同様にして、偏光子を作成した。
比較例2
実施例1において、ポリビニルアルコール系樹脂として、マレイン酸変性のポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール(株)製,商品名Aポリマー,マレイン酸モノマーユニット濃度3モル%)を用い、混合溶液の調製にあたりカルボン酸含有ポリマーを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、偏光子を作成しようとしたが、延伸中に破断が生じて偏光子を作成することができなかった。マレイン酸変性のポリビニルアルコールは、マレイン酸変性基が導入されているためポリビニルアルコール系樹脂の結晶性が低下して、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶性が上がるためではないかと推察される。
[評価]
実施例および比較例で得られた偏光子について下記評価を行った。結果を表1に示す。
<不溶化度の測定>
偏光子を3cm×5cmの小片に切り出し、重量(W1)を測定した。当該小片を、SUS#25の金属メッシュに挟み、95℃の熱水中に60分間保持した。その後、120℃で1時間の乾燥を施して残った小片の重量(W2)を測定した。
上記結果から、不溶化度(%)=(W2/W1)×100%、を求めた。
<耐熱性>
光学測定器(日本分光(株)製のV−7100)を用いて、偏光子の光学特性を測定し、単体透過率(Ts)を求めた。単体透過率(Ts)の測定は、偏光子を120℃のオーブンに1時間保持する前(Ts1)と後(Ts2)について行い、これらの単体透過率の値から、単体透過率の変化:ΔTs=Ts2−Ts1、を求めた。
<カルボキシル基の定量>
FT−IRにより、偏光子を定量することで、偏光子中に含まれるカルボキシル基の含有量を求めた。測定条件は、測定法:反射(ATR)、測定波長:650−4000cm‐1、積算回数:16回、により行った。カルボニル基に由来する吸収は1715cm‐1に吸収が認められ、ポリビニルアルコールのCHに由来する吸収は2940cm‐1に吸収が認められる。そこで、1715cm‐1の強度と2940cm‐1の強度を比較し、カルボン酸含有ポリマー中の不飽和カルボン酸の価数(マレイン酸では2)で割った値を求めた。偏光子中に含まれるカルボキシル基の含有量を定量の指標(A)を算出した。この際、吸収の強度のベースラインは、吸収の認められない1800cm‐1とした。
カルボキシル基の含有量の指標(A)={(1715cm‐1の強度−1800cm‐1の強度)/(2940cm‐1の強度−1800cm‐1の強度)}/不飽和カルボン酸のカルボン酸の価数
さらに、カルボン酸含有ポリマーを一定量仕込んだポリビニルアルコールに係る標準サンプルを用いて、(式1)の検量線を得た。(式1)を用いて、偏光子中のカルボン酸化合物(カルボン酸含有ポリマー中の不飽和カルボン酸)の濃度を求めた。なお、検量線は、カルボン酸含有ポリマーとして、無水マレイン酸−ビニルエチルエーテル共重合体(共重合体1,2)を用いた標準サンプルについて、カルボン酸化合物濃度を0.2〜14モル%の範囲で数点測定して、上記同様の強度から求めた。
(式1):[カルボン酸化合物濃度(モル%)]=9.74×(A)−0.15
表1中、
共重合体1:無水マレイン酸−ビニルエチルエーテル共重合体(ISP社製の商品名Gantrez,重合度1700,型番AN−119)、
共重合体2:無水マレイン酸−ビニルエチルエーテル共重合体(ISP社製の商品名Gantrez,重合度9000,型番AN−139)、
共重合体3:無水マレイン酸−ビニルエチルエーテル共重合体(ISP社製の商品名Gantrez,重合度16000,型番AN−149)
実施例および比較例が示すように、ΔTsと不溶化度には相関があり、不溶化度が高いほど、ΔTsが小さくなり、耐熱性の効果において有効であることが分かる。例えば、比較例1(従来のカルボン酸含有ポリマーを配合していない例)に比べて、約2割の耐熱性向上(ΔTs<1)を実現するには、不溶化度は15%以上であることが好ましいといえる。また、カルボン酸含有ポリマーの配合割合が多くなるほど、カルボキシル基の定量の指標(A)が大きいほど、不溶化度も大きくなり有効で、耐熱性向上に有効であることが分かる。