JP2009242867A - 超高純度アルミニウム高圧延材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】純度99.9999%以上の超高純度アルミニウム鋳塊材に熱間圧延処理を施して熱間圧延材を得、この熱間圧延材に冷間圧延処理を施すことにより、加工率40%超で、十分な表面硬度の超高純度アルミニウム高圧延材を製造しうる方法を提供する。
【解決手段】本発明の製造方法は、上記熱間圧延材に、1パス加工率30%超40%未満で加工温度110℃以上260℃未満の冷間圧延処理を3時間以内の処理間隔で繰り返し施すことを特徴とする。得られた高純度アルミニウムの圧延材に400〜600℃の温度で1時間以上保持する焼鈍処理を施して高電気伝導・高熱伝導性超高純度アルミニウム材を製造できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、超高純度アルミニウム高圧延材の製造方法に関し、詳しくは純度99.9999%以上の超高純度アルミニウム鋳塊材に熱間圧延処理を施して熱間圧延材を得、この熱間圧延材に冷間圧延処理を施すことにより、加工率40%超で、十分な硬度の高圧延材を製造する方法に関する。
純度99.99%未満の普通アルミニウム鋳塊材から圧延材を製造する方法としては、この鋳塊材に熱間圧延処理を施して熱間圧延材を得、この熱間圧延材に冷間圧延処理を施す方法が広く用いられている。〔特許文献1:特開平8−302450号公報〕。
特開平8−302450号公報
しかし、かかる従来の製造方法を純度99.9999%以上の超高純度アルミニウム鋳塊材に適用して、この熱間圧延材に対する加工率が40%超の高圧延材を得ようとすると、その硬度が不十分なものとなり易いことが分かった。硬度が不十分な高圧延材は、これに冷間圧延処理、矯正処理、洗浄処理などを施すと、表面の平滑度が低くなり、また極低温での電気伝導度、熱伝導度が不十分なものとなる。
そこで本発明者は、純度99.9999%以上の超高純度アルミニウム鋳塊材に熱間圧延処理を施して熱間圧延材を得、この熱間圧延材に冷間圧延処理を施すことにより、加工率40%超で、十分な硬度の高圧延材を製造しうる方法を開発するべく鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、純度99.9999%以上の超高純度アルミニウム鋳塊材に加工温度260℃以上の熱間圧延処理を施すことにより熱間圧延材を得、
得られた熱間圧延材に圧延処理を施して、該熱間圧延材に対する加工率が40%超の超高純度アルミニウム高圧延材を製造する方法であり、
前記熱間圧延材に、1パス加工率30%超40%未満で加工温度110℃以上260℃未満の冷間圧延処理を3時間以内の処理間隔で繰り返し施すことを特徴とする前記高純度アルミニウム高圧延材の製造方法を提供するものである。
本発明の製造方法によれば、純度99.9999%以上の超高純度アルミニウム鋳塊材に熱間圧延処理を施して得られた熱間圧延材から、冷間圧延処理により、加工率40%超で、表面に荒れのない圧延材を製造することができる。
〔超高純度アルミニウム鋳塊材〕
本発明の製造方法に適用される超高純度アルミニウム鋳塊材は、純度99.9999%以上、通常は99.99999%未満であり、例えば超高純度アルミニウムを加熱溶融して溶湯とし、得られた超高純度アルミニウム溶湯を冷却固化させる通常の方法で得ることができる。溶湯の温度は超高純度アルミニウムの溶融温度以上であり、通常は700℃〜800℃である。超高純度アルミニウムの加熱溶融は、通常、真空中あるいは窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下に、黒鉛製ルツボ内で行われる。超高純度アルミニウム溶湯の冷却固化は通常、例えば鋳鉄製鋳型内、黒鉛製鋳型内などで行われる。
超高純度アルミニウム鋳塊材の純度は質量百分率で表わされ、通常、
Fe、Si、Cu、B 、Mg、Ti、V、Cr、Ni、Zn、
Ga、As、Zr、Ce、Nd、Li、Be、Na、K、Ca、
Mn、Co、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ba、La、
La、Pt、Hg、Pb、Bi、ThおよびUについて、それぞれ元素の含有量を求め、その合計量を100%から差し引くことにより求めることができる。これらの元素の含有量は、それぞれグロー放電質量分析法により定量することができる。超高純度アルミニウム鋳塊材は、上記37元素以外の不可避不純物を含んでいてもよい。
超高純度アルミニウム鋳塊材は、Si、CuおよびMgの含有量がそれぞれ1ppm以下であることが好ましい。Fe、Ti、V、CrおよびZrの含有量がそれぞれ0.1ppm以下であることが好ましい。
〔熱間圧延処理〕
かかる超高純度アルミニウム鋳塊材に熱間圧延処理を施して熱間圧延材を得る。熱間圧延処理は、通常の方法、例えば加熱した鋳塊材を一対のロールの間に挟み込むことにより圧力を加えながら、これらのロール間を通過させる方法などにより施される。熱間圧延処理温度は、通常260℃以上600℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下である。
熱間圧延処理を施す前の超高純度アルミニウム鋳塊材の断面積(SH0)と、熱間圧延処理を施した後の熱間圧延材の断面積(SH)とから式(1)
熱間圧延加工率(%)=[(SH0−SH)/SH0]×100・・・(1)
により求められる熱間圧延加工率は、通常50%〜90%、好ましくは60%〜80%である。
熱間圧延処理は、1回で行われてもよいし、複数回に分けて繰り返し施されてもよい。
〔冷間圧延処理〕
熱間圧延処理により得られた熱間圧延材に、冷間圧延処理を繰り返し施す。冷間圧延処理は、通常の方法、例えば熱間圧延処理により得られた熱間圧延材を一対のロールの間に挟み込むことより圧力を加えながら、これらのロール間を通過させる方法などにより施される。
冷間圧延処理における1パス加工率は30%超40%未満である。1パス加工率は、1回の圧延処理で圧延材に施される加工率であって、冷間圧延処理の1パス加工率は、冷間圧延処理を施す前の圧延材の断面積(S10)と、冷間圧延処理を施した後の圧延材の断面積(S1)とのから式(2)
冷間圧延加工率(%)=[(S10−S1)/S10]×100・・・(2)
により求められる。1パス加工率は、30%超であり、40%未満である。
冷間圧延処理の加工温度は60℃以上、好ましくは65℃以上であり、260℃未満、好ましくは200℃以下である。冷間圧延処理中、大気中などへの放熱により上記加工温度を保てなくなることがあるが、このような場合には、圧延処理を一旦中断し、再度加熱してから圧延処理を再開してもよいし、外部から加熱しながら圧延処理を施してもよい。
〔冷間圧延処理の繰り返し〕
本発明の製造方法では、上記の冷間圧延処理を繰り返し施すことにより、超高純度アルミニウム高圧延材を得る。繰り返し回数は、冷間圧延処理の1パス加工率により異なり、熱間圧延材に対する加工率が40%超となるまで行われる。
超高純度アルミニウム高圧延材の熱間圧延材に対する加工率は、熱間圧延材の断面積(SH)と、得られた超高純度アルミニウム高圧延材の断面積(S)とから、式(4)
加工率(%)=[(SH−S)/SH]×100・・・(4)
により求められる。
繰り返し施される冷間圧延処理の処理間隔は、3時間以内であり、好ましくは1時間以内である。処理間隔が3時間を越えると、得られる超高純度アルミニウム高圧延材は硬度が不十分なものとなり易い。
〔焼鈍〕
かくして目的の超高純度アルミニウム高圧延材を得るが、得られた超高純度アルミニウム高圧延材に焼鈍処理を施してもよい。焼鈍処理は、例えば超高純度アルミニウム高圧延材を400℃〜600℃の温度で、1時間以上、好ましくは3時間以上、通常は24時間以下保持することにより行われる。焼鈍処理を施すことにより、電気伝導率および熱伝導率がより高い高電気伝導・高熱伝導性超高純度アルミニウム材を得ることができる。
〔用途〕
本発明の製造方法により得られる超高純度アルミニウム高圧延材は、例えば冷凍機、クライオポンプ、超電導マグネットなどにおいて20K以下の極低温で使用される電気伝導体や熱伝導体などに好適に用いられる。
以下、実施例によって本発明の製造方法をより詳細に説明するが、本発明の製造方法は、かかる実施例によって限定されるものではない。
なお、各実施例において得られた高純度アルミニウム高圧延材の表面のビッカース硬度は、島津製作所社製「マイクロビッカース硬度計」を用いて荷重100gの条件で測定した。
実施例1
〔超高純度アルミニウム鋳塊材の鋳造〕
第1表に示す元素組成の超高純度アルミニウム〔純度99.99992%〕を黒鉛ルツボ中、真空下に780℃に加熱し、得られた高純度アルミニウム溶湯を鋳鉄製鋳型〔150℃〕に流し込んで、板状〔縦150mm×横200mm×厚み22mm〕とし、全表面を1mm深さまで研削し、縦50mm×横50mmに切り出して厚み20mmの高純度アルミニウム鋳塊材を得た。なお、用いた高純度アルミニウム中の元素含有量は、それぞれグロー放電質量分析機〔サーモエレクトロン社製「VG9000」〕を用いてグロー放電質量分析法により測定した。










第 1 表
(単位:ppm)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
元素 含有量 元素 含有量 元素 含有量 元素 含有量
────────────────────────────────────────
Si 0.37 Cu 0.11 Mg 0.12
────────────────────────────────────────
Fe 0.064 Ti 0.035 V 0.033 Cr 0.040
Zr 0.020
────────────────────────────────────────
B 0.002 Ni 0.003 Zn 0.002 Ga<0.001
As<0.001 Ce<0.001 Li 0.001 Be<0.001
Na<0.001 K 0.008 Ca 0.009 Mn 0.006
Co<0.001 Mo 0.003 Ag<0.001 Cd 0.002
In<0.001 Sn 0.002 Sb<0.001 Ba<0.001
La<0.001 Pt<0.001 Hg 0.002 Pb<0.001
Bi<0.001 Th<0.0003 U <0.0003
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
表中、Ga、As、Ce、Be、Na、Co、Ag、In、Sb、Ba、La、Pt、PbおよびBiの含有量は、それぞれ検出下限(0.001ppm)未満であったことを示す。ThおよびUの含有量は検出下限(0.0003ppm)以下であったことを示す。
〔熱間圧延処理〕
得られた高純度アルミニウム鋳塊材に、加工温度500℃、1パス加工率20%の熱間圧延処理を4回繰り返し施して、熱間圧延材〔縦52mm×横120mm×厚み8mm〕を得た。
〔冷間圧延処理〕
得られた熱間圧延材に、室温(25℃)雰囲気下、120℃〜250℃の温度範囲に維持しながら1パス加工率37%の冷間圧延処理を6回施して、超高純度アルミニウム高圧延材(厚み0.5mm)を得た。冷間圧延処理の間、圧延材は、250℃まで加熱してから圧延処理を施し、圧延処理中に120℃になった時点で、直ちに圧延処理を中断し、再び250℃に加熱する操作を繰り返した。得られた超高純度アルミニウム高圧延材の表面のビッカース硬度を測定したところ、25.9であった。
比較例1
冷間圧延処理の1パス加工率を60%とし、第二冷間圧延処理の回数を3回とした以外は実施例3と同様に操作して超高純度アルミニウム高圧延材(厚み0.5mm)を得た。この超高純度アルミニウム高圧延材の表面のビッカース硬度は17.3であった。

Claims (2)

  1. 純度99.9999%以上の超高純度アルミニウム鋳塊材に加工温度260℃以上の熱間圧延処理を施すことにより熱間圧延材を得、
    得られた熱間圧延材に圧延処理を施して、該熱間圧延材に対する加工率が40%超の超高純度アルミニウム高圧延材を製造する方法であり、
    前記熱間圧延材に、
    1パス加工率30%超40%未満で加工温度110℃以上260℃未満の冷間圧延処理
    を3時間以内の処理間隔で
    繰り返し施す
    ことを特徴とする前記高純度アルミニウム高圧延材の製造方法。
  2. 請求項1に記載の製造方法で前記超高純度アルミニウム高圧延材を得、得られた高圧延材に400℃〜600℃の温度で1時間以上保持する焼鈍処理を施すことを特徴とする高電気伝導・高熱伝導性超高純度アルミニウム材の製造方法。
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