JP2009242293A - 金属錯体、発光素子、発光装置及び電子機器 - Google Patents

金属錯体、発光素子、発光装置及び電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】発光素子の材料として用いることができる新規な低分子系材料である金属錯体を提供する事を課題とする。特に、発光素子を作製する際、反応することなく蒸着することが容易な新規金属錯体を提供する。
【解決手段】下記一般式(G1)で表される金属錯体のうち、式中Arが炭素数1乃至10のアリール基である金属錯体を提供することで上記課題を解決した。

(但し、式中R乃至Rはそれぞれ独立に水素、ハロゲン、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメトキシ基のいずれか一を表す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、発光素子の材料として用いることが可能な金属錯体、特にイミダゾピリジン誘導体を配位子とする亜鉛錯体に関する。
有機化合物を含む薄膜に電流を流すことで発光を得ることができる発光素子、いわゆる有機EL素子及びそれを用いた表示装置などの開発が盛んに進められている。
一般的に、有機EL素子は高分子系と低分子系の2種類に大別されているが、高分子系の素子はインクジェット法等の溶液プロセスによる素子の作製に向いていることから大画面化や材料効率的に有利ではあるものの、積層構造を作製することが困難であることから、低分子系の素子及び材料の開発の方が進んでいるのが現状であり、多くの低分子系材料が提案されている。
例えば、特許文献1では、イミダゾピリジン骨格を有する配位子からなる金属錯体を含む発光素子を提案している。
特開2001−57292号公報
ところで、このような低分子系の材料は、抵抗加熱やレーザなど加熱方法に違いはあるものの、蒸着により成膜されることが多いが、特許文献1に記載の2−(2’−ヒドロキシフェニル)−イミダゾ[1,2−a]ピリジンの亜鉛錯体は反応しやすく、Taボートで蒸着を行うと黒色の残留物がボートに付着してしまい、材料効率が非常に悪いことが本発明者らによって確認された。また、蒸着時に反応し、生成した物質が発光素子に付着することで、発光素子の発光効率や寿命に悪影響を及ぼす恐れもある。
そこで、本発明では、発光素子の材料として用いることができる新規な低分子系材料である金属錯体を提供する事を課題とする。特に、発光素子を作製する際、反応することなく蒸着することが容易な新規金属錯体を提供することを課題とする。
本発明では、下記一般式(G1)で表される金属錯体のうち、式中Arが炭素数1乃至10のアリール基である金属錯体を提供することで上記課題を解決した。
但し、式中R乃至Rはそれぞれ独立に水素、ハロゲン、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメトキシ基のいずれか一を表す。
すなわち、本発明は下記一般式(G1)で表される金属錯体である。
但し、式中R乃至Rはそれぞれ独立に水素、ハロゲン、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメトキシ基のいずれか一を表し、Arはフェニル基又はナフチル基を表す。
また、本発明は、下記一般式(G1)で表される金属錯体である。
但し、式中R乃至Rはそれぞれ独立に水素、ハロゲン、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメトキシ基のいずれか一を表し、Arは下記構造式(s1−1)乃至(s1−13)で表される基のいずれか一を表す。
また、本発明は、下記一般式(G2)で表される金属錯体である。
但し、式中Arは下記構造式(s1−1)乃至(s1−13)で表される基のいずれか一を表し、式中Aは下記構造式(s2−1)乃至(s2−25)で表される基のいずれか一を表す。なお、下記構造式(s2−1)乃至(s2−25)と一般式(G2)におけるα及びβは互いに対応しているものとする。
以上のような構成を有する本発明の金属錯体は、発光素子の材料(特に、発光材料、電子輸送材料、ホスト材料)として利用することができ、且つ蒸着を行う際、反応による材料効率の低下を引き起こし難い材料である。また、反応した成分の付着による発光素子の特性の劣化の恐れが小さい材料と言うこともできる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
本発明者らは、下記一般式(G1)で表される金属錯体のうち、式中Arが炭素数6乃至10のアリール基、すなわち、フェニル基、ナフチル基である金属錯体が発光素子の材料として使用でき、且つ蒸着時に反応しにくく、蒸着が容易であることを見いだした。なお、下記一般式(G1)で表される金属錯体は、緑色の発光を呈し、発光材料として用いることができる。また、電子輸送性を有することから電子輸送層や、ホスト材料としての利用も可能である。
但し、式中R乃至Rはそれぞれ独立に水素、ハロゲン、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメトキシ基のいずれか一を表す。
Arで表されるフェニル基またはナフチル基は、置換基を有していても良く、置換基を有する場合当該置換基としては炭素数1乃至4のアルキル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。すなわち、上記一般式Arとしては、例えば、下記構造式(s1−1)乃至(s1−13)のようなものも該当する。
また、本実施の形態における金属錯体は下記一般式(G2)のようにも表すことができる。
但し、式中Ar置換又は無置換のフェニル基又はナフチル基を表し、フェニル基又はナフチル基が置換基を有する場合、当該置換基としては炭素数1乃至4のアルキル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。Arとしては例えば下記構造式(s1−1)乃至(s1−13)で表される基等を挙げることができる。
また、式中Aは下記構造式(s2−1)乃至(s2−25)で表される基のいずれか一を表す。なお、下記構造式(s2−1)乃至(s2−25)と一般式(G2)におけるα及びβは互いに対応しているものとする。
続いて、上記一般式(G1)又は一般式(G2)で表される金属錯体の合成方法を説明する。
≪ステップ1:2−アミノ−5−アリールピリジンの合成≫
2−アミノ−5−ハロゲン化ピリジン誘導体(化合物1)と、アリールボロン酸またはアリールホウ素化合物(化合物2)とを、パラジウム触媒を用いた鈴木・宮浦反応によりカップリングすることで、2−アミノ−5−アリールピリジン(化合物3)を得ることができる。ステップ1の合成スキームを反応式(a1)に示す。
この反応式(a1)において、Arはフェニル基またはナフチル基を表し、Arは置換基を有していても良い。また、Xはハロゲン、又は、トリフラート基を示し、Xがハロゲンである場合は、塩素、臭素、ヨウ素のいずれかが好ましく、より好ましくは、臭素又はヨウ素である。また、RとRは、水素、又は、炭素数1乃至6のアルキル基を示し、RとRは互いに結合して環を形成していても良い。
また、この反応において、用いることができるパラジウム触媒としては、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等が挙げられるが、用いることができる触媒はこれらに限られるものでは無い。この反応において、用いることができるパラジウム触媒の配位子としては、トリ(オルトートリル)ホスフィンや、トリフェニルホスフィンや、トリシクロヘキシルホスフィン等が挙げられる。用いることができるパラジウム触媒の配位子はこれらに限られるものでは無い。この反応において、用いることができる塩基としては、ナトリウム t−ブトキシド等の有機塩基や、炭酸カリウム等の無機塩基等が挙げられるが、用いることができる塩基はこれらに限られるものでは無い。この反応において、用いることができる溶媒としては、トルエンと水の混合溶媒、トルエンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、キシレンと水の混合溶媒、キシレンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、ベンゼンと水の混合溶媒、ベンゼンとエタノール等のアルコールと水の混合溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類と水の混合溶媒などが挙げられる。ただし、用いることができる溶媒はこれらに限られるものでは無い。
≪ステップ2:2−(5−アリールイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)フェノール誘導体の合成≫
ステップ1で合成した2−アミノ−5−アリールピリジン誘導体(化合物3)と、2−ハロゲン化−2’−ヒドロキシアセトフェノン誘導体(化合物4)を溶媒中で、炭酸水素ナトリウム存在下にて環化させることで、2−(5−アリールイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)フェノール誘導体(化合物5)を得ることができる。ステップ2の合成スキームを反応式(a2)に示す。
この反応式(a2)において、Arはフェニル基またはナフチル基を表し、Arは置換基を有していても良い。また、R〜Rは、水素、炭素数1乃至3のアルキル基、ハロゲン基、アルコキシ基のいずれかを表す。
この反応において、用いることができる溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert−ブタノール、等のアルコール類や、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素や、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン等のアルカン類、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化アルキル類、水等が挙げられる。ただし、用いることができる溶媒は、これらに限られるものではない。また、原料の溶解度を考慮するとアルコール類を用いることが好ましく、更に好ましくは、エタノールを用いる。
≪ステップ3:亜鉛錯体の合成≫
ステップ2で合成した2−(5−アリールイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)フェノール誘導体(化合物5)と、亜鉛化合物を、溶媒中で錯形成すると、イミダソピリジン誘導体を配位子とした亜鉛錯体(化合物6)を得ることができる。ステップ3の合成スキームを反応式(a3)に示す。
この反応式(a3)において、Arはフェニル基またはナフチル基を表し、Arは置換基を有していても良い。また、R〜Rは、水素、炭素数1乃至3のアルキル基、ハロゲン基、アルコキシ基のいずれかを表す。
この反応において用いることができる亜鉛化合物は、酢酸亜鉛(II)等が挙げられる。用いることができる亜鉛化合物は、これに限られるものではない。
この反応において、用いることができる溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert−ブタノール、等のアルコール類や、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素や、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン等のアルカン類、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化アルキル類、水等が挙げられる。ただし、用いることができる溶媒は、これらに限られるものではない。また、アルコール類を用いることが好ましく、更に好ましくは、エタノールを用いる。
以上のように上記一般式(G1)又は(G2)で表される金属錯体を合成することができる。
続いて、本実施の形態における金属錯体の具体的な構造を下記構造式(1)〜(37)に例示す。なお、構造式(1)〜(37)は例示である本実施の形態における金属錯体はこれらに限られることはない。
(実施の形態1)
本実施の形態では、実施の形態1に記載の金属錯体を含む発光素子について、作製方法を交えながら説明する。
まず、絶縁表面を有する支持体上に陽極を形成する。陽極としては、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す)、または珪素もしくは酸化珪素を含有したインジウム錫酸化物、酸化亜鉛(ZnO)を含む酸化インジウム、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタにより成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。例えば、酸化亜鉛(ZnO)を含む酸化インジウムは、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。その他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等を用いることも可能である。
続いて、有機化合物を含む層103を形成する。有機化合物を含む層103は実施の形態1に記載の金属錯体を含んでおり、その他の材料としては、低分子系材料および高分子系材料のいずれを用いることもできる。なお、有機化合物を含む層103を構成する材料には、有機化合物材料のみから成るものだけでなく、無機化合物を一部に含む構成も含めるものとする。また、有機化合物を含む層103は、通常、正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層(正孔ブロッキング層)、発光層、電子輸送層、電子注入層等、各々の機能を有する機能層を適宜組み合わせて構成される。それぞれの層の有する機能を2つ以上同時に有する層を含んでいる層が形成されていても良く、また、上記したいずれかの層が形成されていなくとも良い。もちろん、上記した機能層以外の層が設けられていても良い。実施の形態1に記載の金属錯体はいずれの機能層に含まれていても良いが、電子輸送性を有するため、電子輸送層に用いることができる。また、発光層において発光中心となる材料(以下発光中心物質という)としても用いることができる。また、発光層において他の発光材料を分散するためのホスト材料としても用いることができる。
本実施の形態では有機化合物を含む層103として、図1(A)のように陽極100側から順に正孔注入層104、正孔輸送層105、発光層102、電子輸送層106、電子注入層107の積層構造を有する発光素子を例に説明を行うこととする。
正孔注入層104を設ける場合、材料としては、酸化バナジウムや酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウムなどの金属酸化物等が挙げられる。あるいは、有機化合物であればポルフィリン系の化合物が有効であり、フタロシアニン(略称:HPc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)等を用いることができる。また、正孔注入層104としては、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物が挙げられる。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物を用いることができる。正孔注入層は陽極に接して形成され、正孔注入層104を用いることによって、キャリアの注入障壁が低減し、効率よくキャリアが発光素子に注入され、その結果、駆動電圧の低減を図ることができる。
また、正孔注入層104として、正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させた材料(以下、複合材料という)を用いることもできる。なお、正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させたものを用いることにより、電極とのオーム接触が可能となり、仕事関数に依らず電極を形成する材料を選ぶことができるようになる。つまり、陽極として仕事関数の大きい材料だけでなく、仕事関数のあまり大きくない材料や、小さい材料も用いることができるようになる。アクセプター性物質としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)、クロラニル等の有機化合物や遷移金属酸化物を挙げることができる。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウム等が電子受容性が高いため好ましい材料である。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい材料である。
なお、本明細書中において、複合とは、単に2つの材料を混合させるだけでなく、複数の材料を混合することによって材料間での電荷の授受が行われ得る状態になることを言う。
複合材料に用いる正孔輸送性の高い物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる正孔輸送性の高い物質としては、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、複合材料に用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
例えば、複合材料に用いることのできる芳香族アミン化合物としては、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα―NPD)、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。
複合材料に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、具体的には、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。
また、複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素としては、例えば、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチル−アントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14〜42である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
なお、複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
また、正孔注入層の材料として上述したPVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPD等の高分子化合物と、上述したアクセプター性物質を用いて複合材料を形成し、正孔注入層として用いてもよい。
このような、複合材料を正孔注入層104として用いた場合、陽極100には仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。そのため、陽極としては前述した材料の他、例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、アルミニウムを含む合金(AlSi)等を用いることができる。また、仕事関数の小さい材料である、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等を用いることもできる。アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金の膜は、真空蒸着法を用いて形成することができる。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む合金はスパッタリング法により形成することも可能である。また、銀ペーストなどをインクジェット法などにより成膜することも可能である。
正孔輸送層105は、N,N’−ビス(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(略称:BSPB)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα―NPD)、4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス{N−[4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル]−N−フェニルアミノ}ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N,N−ジ(m−トリル)アミノ]ベンゼン(略称:m−MTDAB)、4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、フタロシアニン(略称:HPc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)等の適当な材料を用いることができる。正孔輸送層としては10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質を用いることが好ましいが、電子より正孔の輸送性の高い物質であれば正孔輸送層として用いることができる。また、正孔輸送層は単層構造のものだけではなく、上述した条件に当てはまる物質から成る層を二層以上組み合わせた多層構造の層であってもよい。正孔輸送層は真空蒸着法等を用いて形成することができる。
また、正孔輸送層105として、正孔注入層104の材料として上述したPVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPDなどの高分子化合物を用いることもできる。この場合は、インクジェット法やスピンコートなど溶液プロセスを使用することができる。
発光層102は、発光物質単独の膜で構成されていても、ホスト材料中に発光中心物質を分散された膜で構成されていても良い。
発光層102において、上記発光物質、若しくは発光中心物質として用いることが可能な材料としては特に限定は無く、これら材料が発する光は蛍光であっても燐光であっても良い。上記発光物質又は発光中心物質としては例えば、以下のようなものが挙げられる。青色の発光(発光波長400nm〜480nm)を呈する物質の例としては、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(略称:TBP)などが挙げられる。また、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)のような燐光を発する材料も用いることができる。青緑色の発光(発光波長480nm〜520nm)を呈する物質の例としては、N,N’’−(2−tert−ブチルアントラセン−9,10−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビス[N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPPA)、N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン−2,7,10,15−テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30などが挙げられる。また、ビス[2−(3’,5’−ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)のような燐光を発する材料も用いることができる。黄色の発光(発光波長540nm〜600nm)を呈する物質の例としては、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2−(2−{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2−{2−メチル−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)などが挙げられる。また、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))のような燐光を発する材料も用いることができる。赤色の発光(発光波長600nm〜700nm)を呈する物質の例としては、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,13−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)、2−{2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2−{2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2−(2,6−ビス{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2−{2,6−ビス[2−(8−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)などが挙げられる。また、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)のような燐光を発する材料も用いることができる。実施の形態1に記載の金属錯体も発光物質又は発光中心物質としてもちいることができる。
また、上記ホスト材料として用いることが可能な材料としては、特に限定はないが、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CO11)などの複素環化合物、NPB(またはα−NPD)、TPD、BSPBなどの芳香族アミン化合物が挙げられる。また、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ジベンゾ[g,p]クリセン誘導体等の縮合多環芳香族化合物が挙げられ、具体的には、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、N,N−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:CzA1PA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、N,9−ジフェニル−N−{4−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]フェニル}−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPBA)、N,9−ジフェニル−N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、6,12−ジメトキシ−5,11−ジフェニルクリセン、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン−2,7,10,15−テトラアミン(略称:DBC1)、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、3,6−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:DPCzPA)、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9,9’−ビアントリル(略称:BANT)、9,9’−(スチルベン−3,3’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’−(スチルベン−4,4’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、3,3’,3’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリピレン(略称:TPB3)などを挙げることができる。また、実施の形態1に記載の金属錯体もホスト材料として用いることが出来る。これら及び公知の物質の中から、発光物質又は発光中心物質のエネルギーギャップより大きなエネルギーギャップを有する物質を選択すればよい。また、発光物質又は発光中心物質が燐光を発する物質である場合、ホスト材料は該発光物質又は発光中心物質の三重項エネルギー(基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差)よりも大きい三重項エネルギーを有する物質を選択すれば良い。
なお、発光層102は2層以上の複数層でもって構成することもできる。例えば、第1の発光層と第2の発光層を正孔輸送層側から順に積層して発光層102とする場合、第1の発光層のホスト材料として正孔輸送性を有する物質を用い、第2の発光層として電子輸送性を有する物質を用いる構成などがある。
以上のような構成を有する発光層は真空蒸着法などを用いて作製することができる。
電子輸送層106を用いる場合、発光層102と電子注入層107又は陰極との間に設置される。相応しい材料としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−(4−ヒドロキシ−ビフェニリル)−アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体などを用いることができる。また、この他に、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。また、実施の形態1に記載の金属錯体は電子輸送性を有することから、電子輸送層106を構成する材料として好適に用いることができる。また、電子輸送層としては10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質を用いることが好ましいが、正孔より電子の輸送性の高い物質であれば電子輸送層として用いることができる。また、電子輸送層は単層構造のものだけではなく、上述した条件に当てはまる物質から成る層を二層以上組み合わせた多層構造の層であってもよい。電子輸送層は真空蒸着法などを用いて作製することができる。
また、電子輸送層として、高分子化合物を用いることもできる。例えば、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF−Py)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)などを用いることができる。この場合、インクジェット法やスピンコートなどの溶液プロセスを適用することができる。
なお、発光層102と接する電子輸送層106には、発光層102の発光中心物質よりも大きいエネルギーギャップ(又は三重項エネルギー)を有する物質を用いることが好ましい。このような構成にすることにより、発光層102から電子輸送層106へのエネルギー移動を抑制することができ、高い発光効率を実現することができる。
電子注入層107用いる場合、電子注入層は陰極に接して形成される。電子注入層を用いることによって、キャリアの注入障壁が低減し、効率よくキャリアが発光素子に注入され、その結果、駆動電圧の低減を図ることができる。電子注入層を構成するのにふさわしい材料としては、フッ化カルシウムやフッ化リチウム、酸化リチウムや塩化リチウムなどのアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などが好適である。あるいは、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)やバソキュプロイン(略称:BCP)などの、いわゆる電子輸送性の材料にリチウムやマグネシウムなどアルカリ金属またはアルカリ土類金属を組み合わせた層も使用できる。なお、電子注入層として、電子輸送性を有する物質とアルカリ金属又はアルカリ土類金属を組み合わせた層を用いることは、陰極からの電子注入が効率良く起こるためより好ましい構成である。電子注入層は真空蒸着法などを用いて作製することができる。電子注入層107を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様々な導電性材料を用いることができる。
なお、有機化合物を含む層103の形成には、上述した作製方法の他に蒸着法、インクジェット法、スピンコート法、ディップコート法など、湿式、乾式を問わず、用いることができる。
この後、陰極101を形成して発光素子110が完成する。陰極101としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、元素周期表の1族または2族に属する金属、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLiなど)、ユウロピウム(Er)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金の膜は、真空蒸着法を用いて形成することができる。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む合金はスパッタリング法により形成することも可能である。また、銀ペーストなどをインクジェット法などにより成膜することも可能である。また、陰極101と電子輸送層106との間に、電子注入層107を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様々な導電性材料を用いることができる。
なお、陽極100または陰極101として導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いることもできる。導電性組成物は、陽極100又は陰極101として形成する場合、薄膜におけるシート抵抗が10000Ω/□以下、波長550nmにおける透光率が70%以上であることが好ましい。また、含まれる導電性高分子の抵抗率が0.1Ω・cm以下であることが好ましい。
導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子が用いることができる。例えば、ポリアニリン及びまたはその誘導体、ポリピロール及びまたはその誘導体、ポリチオフェン及びまたはその誘導体、これらの2種以上の共重合体などがあげられる。
共役導電性高分子の具体例としては、ポリピロ−ル、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−オクトキシピロール)、ポリ(3−カルボキシルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシルピロール)、ポリN−メチルピロール、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−オクトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシルチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(2−オクチルアニリン)、ポリ(2−イソブチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
上記導電性高分子は、単独で陽極100又は陰極101に使用してもよいし、膜特性を調整するために有機樹脂を添加して導電性組成物として使用することができる。
有機樹脂としては、導電性高分子と相溶または混合分散可能であれば熱硬化性樹脂であってもよく、熱可塑性樹脂であってもよく、光硬化性樹脂であってもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、アラミド樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、メラミン樹脂、フェノール系樹脂、ポリエーテル、アクリル系樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。
さらに、上記導電性高分子又は導電性組成物の電気伝導度を調整するために、アクセプタ性またはドナー性ドーパントをドーピングすることにより、共役導電性高分子の共役電子の酸化還元電位を変化させてもよい。
アクセプタ性ドーパントとしては、ハロゲン化合物、有機シアノ化合物、有機金属化合物等を使用することができる。ハロゲン化合物としては、塩素、臭素、ヨウ素、塩化ヨウ素、臭化ヨウ素、フッ化ヨウ素等が挙げられる。有機シアノ化合物としては、共役結合に二つ以上のシアノ基を含む化合物が使用できる。また、五フッ化燐、五フッ化ヒ素、五フッ化アンチモン、三フッ化硼素、三塩化硼素、三臭化硼素等や、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等の無機酸、有機カルボン酸、有機スルホン酸等の有機酸も用いることができる。有機カルボン酸及び有機スルホン酸としては、前記カルボン酸化合物及びスルホン酸化合物を使用することができる。例えば、テトラシアノエチレン、テトラシアノエチレンオキサイド、テトラシアノベンゼン、テトラシアノキノジメタン、テトラシアノアザナフタレン等を挙げられる。
ドナー性ドーパントとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、4級アミン化合物等を挙げることができる。
上記導電性高分子又は導電性組成物を、水または有機溶剤(アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤など)に溶解させて、湿式法により陽極100又は陰極101となる薄膜を形成することができる。
上記導電性高分子又は導電性組成物を溶解する溶媒としては、特に限定することはなく、上記した導電性高分子及び有機樹脂などの高分子樹脂化合物を溶解するものを用いればよい。例えば、水、メタノール、エタノール、プロピレンカーボネート、N‐メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエンなどの単独もしくは混合溶剤に溶解すればよい。
導電性組成物の成膜は上述のように溶媒に溶解した後、塗布法、コーティング法、液滴吐出法(インクジェット法ともいう)、印刷法等の湿式法を用いて成膜することができる。溶媒の乾燥は、熱処理を行ってもよいし、減圧下で行ってもよい。また、有機樹脂が熱硬化性の場合は、さらに加熱処理を行い、光硬化性の場合は、光照射処理を行えばよい。
なお、陽極100や陰極101の材料を変えることで、本実施の形態の発光素子は様々なバリエーションを提供することができる。例えば、陽極100を光透過性とすることで、陽極100側から光を射出する構成となり、また、陽極100を遮光性(特に反射性)とし、陰極101を光透過性とすることで、陰極101の側から光を射出する構成となる。さらに、陽極100、陰極101の両方を光透過性とすることで、陽極側、陰極側の両方に光を射出する構成も可能となる。
以上で説明した本実施の形態における発光素子は実施の形態1に記載の金属錯体を用いていることから、反応した成分の付着による発光素子の特性の劣化の恐れが小さい発光素子と言うことができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態2の発光素子とは異なる構成を有する発光素子について図1(B)を参照しながら説明する。
発光素子において、その発光効率を向上させることは、当該発光素子を搭載する電子機器の消費電力を削減することに繋がることから、常に意識すべき課題である。
本実施の形態における発光素子は、正孔輸送層105と正孔注入層104との間に、正孔の移動を制御する層111を有する。正孔の移動を制御する層は、正孔の移動速度を抑制することによって、発光層において電子と正孔のバランスをとり、発光効率や寿命の向上を実現するものである。正孔の移動を抑制する層は上述の正孔輸送層の材料として用いる正孔輸送性を有する材料中に、電子輸送性の材料を少量成分として添加することによって形成する。実施の形態1に記載の金属錯体は電子輸送性を有することから、正孔輸送性を有する材料中に添加する材料として好適に用いることができる。また、正孔の移動を制御する層111の膜厚は、5nm以上20nm以下であることが好ましい。膜厚が厚すぎると、キャリアの移動速度が過度に低下してしまい、駆動電圧が高くなってしまい、膜厚が薄すぎると、キャリアの移動を制御する機能を実現しなくなってしまうからである。
なお、本実施の形態における発光素子の、正孔の移動を制御する層111以外の構成については、実施の形態2に記載の発光素子と同様である。
正孔の移動を制御する層を備え、その層に添加する電子輸送性の材料として実施の形態1に記載の金属錯体を用いた発光素子は、当該層を備えない通常の構造を有する発光素子と比較して、発光効率、パワー効率の向上した発光素子とすることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態は、複数の発光ユニットを積層した構成の発光素子(以下、積層型素子ともいう)の態様について、図1(C)を参照して説明する。この発光素子は、第1の電極と第2の電極との間に、複数の発光ユニットを有する発光素子である。発光ユニットとしては、実施の形態2又は実施の形態3で示した有機化合物を含む層103と同様な構成を用いることができる。つまり、実施の形態2又は実施の形態3で示した発光素子は、1つの発光ユニットを有する発光素子であり、本実施の形態で説明する発光素子は、複数の発光ユニットを有する発光素子ということができる。
図1(C)において、第1の電極501と第2の電極502との間には、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512が積層されており、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512との間には電荷発生層513が設けられている。第1の電極501と第2の電極502はそれぞれ実施の形態2における陽極100と陰極101に相当し、実施の形態2で説明したものと同様なものを適用することができる。また、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512は同じ構成であっても異なる構成であってもよい。
電荷発生層513には、有機化合物と金属酸化物の複合材料が含まれている。この有機化合物と金属酸化物の複合材料は、実施の形態2で示した複合材料であり、有機化合物とバナジウム酸化物やモリブデン酸化物やタングステン酸化物等の金属酸化物を含む。有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、有機化合物としては、正孔輸送性有機化合物として正孔移動度が10−6cm/Vs以上であるものを適用することが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。有機化合物と金属酸化物の複合体は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実現することができる。
なお、電荷発生層513は、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含む層と他の材料により構成される層を組み合わせて形成してもよい。例えば、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含む層と、電子供与性物質の中から選ばれた一の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含む層とを組み合わせて形成してもよい。また、有機化合物と金属酸化物の複合材料を含む層と、透明導電膜とを組み合わせて形成してもよい。
いずれにしても、第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512に挟まれる電荷発生層513は、第1の電極501と第2の電極502に電圧を印加したときに、一方の発光ユニットに電子を注入し、他方の発光ユニットに正孔を注入するものであれば良い。例えば、図1(C)において、第1の電極の電位の方が第2の電極の電位よりも高くなるように電圧を印加した場合、電荷発生層513は、第1の発光ユニット511に電子を注入し、第2の発光ユニット512に正孔を注入するものであればよい。
本実施の形態では、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、同様に、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子についても、同様に適用することが可能である。本実施の形態に係る発光素子のように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度領域での素子寿命の向上を実現できる。また、照明を応用例とした場合は、電極材料の抵抗による電圧降下を小さくできるので、大面積での均一発光が可能となる。また、低電圧駆動が可能で消費電力が低くい発光装置を実現することができる。
また、それぞれの発光ユニットの発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つの発光ユニットを有する発光素子において、第1の発光ユニットの発光色と第2の発光ユニットの発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係にある色を発光する物質から得られた光を混合すると、白色発光を得ることができる。また、3つの発光ユニットを有する発光素子の場合でも同様であり、例えば、第1の発光ユニットの発光色が赤色であり、第2の発光ユニットの発光色が緑色であり、第3の発光ユニットの発光色が青色である場合、発光素子全体としては、白色発光を得ることができる。
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1に記載の金属錯体を有機半導体素子の一種である縦型トランジスタ(SIT)の活性層として用いる形態を例示する。
素子の構造としては、図2に示すように、本発明の金属錯体を含む薄膜状の活性層1202をソース電極1201およびドレイン電極1203で挟み、ゲート電極1204が活性層1202に埋め込まれた構造を有する。ゲート電極1204は、ゲート電圧を印加するための手段に電気的に接続されており、ソース電極1201およびドレイン電極1203は、ソース−ドレイン間の電圧を制御するための手段に電気的に接続されている。
このような素子構造において、ゲート電圧を印加しない状態においてソース−ドレイン間に電圧を印加すると、電流が流れる(ON状態となる)。そして、その状態でゲート電圧を印加するとゲート電極1204周辺に空乏層が発生し、電流が流れなくなる(OFF状態となる)。以上の機構により、トランジスタとして動作する。
縦型トランジスタにおいては、発光素子と同様、キャリア輸送性と良好な膜質を兼ね備えた材料が活性層に求められるが、本発明の金属錯体はその条件を十分に満たしており、有用である。
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかを用いて作製された発光装置の一例について説明する。なお、本発明の発光装置は以下に説明する構成を有する発光装置のみに限定されず、その表示を担う部分(本実施の形態では画素部602)に実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかが含まれているもの全てを含むものとする。
本実施の形態では、実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかを用いて作製された発光装置の一例について図3を用いて説明する。なお、図3(A)は、発光装置を示す上面図、図3(B)は図3(A)をA−A’およびB−B’で切断した断面図である。この発光装置は、発光素子の発光を制御するものとして、点線で示された駆動回路部(ソース側駆動回路)601、画素部602、駆動回路部(ゲート側駆動回路)603を含んでいる。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
なお、引き回し配線608はソース側駆動回路601及びゲート側駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
次に、断面構造について図3(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路601と、画素部602中の一つの画素が示されている。
なお、ソース側駆動回路601はnチャネル型TFT623とpチャネル型TFT624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路は、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
また、画素部602はスイッチング用TFT611と、電流制御用TFT612と、そのドレインに電気的に接続された第1の電極613と、当該第1の電極613、有機化合物を含む層616、第2の電極617よりなる発光素子とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、光の照射によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光の照射によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。
第1の電極613上には、有機化合物を含む層616、および第2の電極617が積層され、発光素子が構成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極613に用いる材料としては、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す)、または珪素もしくは酸化珪素を含有したインジウム錫酸化物、酸化亜鉛(ZnO)を含む酸化インジウム、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)の単層膜の他、積層構造も適用でき、例えば、窒化チタンとアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させることができるようになる。また、正孔注入層として実施の形態1で説明したような複合層を用いることによって仕事関数に関係なく第1の電極の材料を選択することができる。
有機化合物を含む層616は、実施の形態1に記載した有機化合物を含む層103と同様の構成を有している。また、有機化合物を含む層616を構成する材料としては、低分子化合物、または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)のいずれを用いてもよい。また、有機化合物を含む層616に用いる材料としては、有機化合物だけでなく、無機化合物をその一部に用いてもよい。有機化合物を含む層616は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート法等の種々の方法によって形成される。
さらに、有機化合物を含む層616上に形成され、陰極として機能する第2の電極617に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Mg、Li、Ca、またはこれらの合金や化合物、MgAg、MgIn、AlLi、LiF、CaF等)を用いることが好ましい。なお、有機化合物を含む層616で生じた光を第2の電極617を透過させる場合には、第2の電極617として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが好ましい。また、実施の形態2で説明したように電子注入層を用いることによって仕事関数に関係なく第2の電極の材料を選択することができる。
上述のように、第1の電極613、有機化合物を含む層616、第2の電極617によって発光素子が構成されるが、発光素子の詳しい構造及び材料については実施の形態2において説明したため、繰り返しとなる説明を省略する。実施の形態2を参照されたい。なお、本実施の形態における第1の電極613、有機化合物を含む層616、第2の電極617はそれぞれ実施の形態1における陽極100、有機化合物を含む層103、陰極101に相当する。
以上のような発光素子と駆動回路、画素部のTFTが形成された素子基板610と、封止基板604とをシール材605によって貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に、実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかの構成を有する発光素子618が備えられた構造の発光装置が提供される。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填される場合もある。
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
以上のようにして、実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかを用いて作製された本発明の発光装置を得ることができる。
以上では、トランジスタによって発光素子の駆動を制御するアクティブマトリクス型の発光装置について説明したが、この他、パッシブマトリクス型の発光装置であってもよい。図4には実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかを用いて作製したパッシブマトリクス型の発光装置の斜視図を示す。なお、図4(A)は、発光装置を示す斜視図、図4(B)は図4(A)をX−Yで切断した断面図である。図4において、基板951上には、電極952と電極956との間には有機化合物を含む層955が設けられている。電極952の端部は絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が設けられている。隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層954の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接する辺)の方が上辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、静電気等に起因した発光素子の不良を防ぐことが出来る。パッシブマトリクス型の発光装置においても、実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかを含むことによって、発光装置を作製することができる。
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態3に示す発光装置をその一部に含む電子機器について説明する。これら電子機器は、実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかを含んだ表示部を有する。
実施の形態1に示した金属錯体を含む実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかを有する電子機器の一例として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を図5に示す。
図5(A)はテレビ装置であり、筐体9101、支持台9102、表示部9103、スピーカー部9104、ビデオ入力端子9105等を含む。このテレビ装置は、表示部9103は、実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかを表示素子として用いることによって作製される。特に、発光効率の向上した実施の形態3に記載の発光素子を用いて作製されたテレビ装置は、表示部9103の消費電力を低減させることができ、この表示部9103を備えた当該テレビ装置は低消費電力化したテレビ装置とすることができる。
図5(B)はコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部9203、キーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングデバイス9206等を含む。このコンピュータは、表示部9203は、実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかを表示素子として用いることによって作製される。特に、発光効率の向上した実施の形態3に記載の発光素子を用いて作製された表示部9203は消費電力を低減させることができ、この表示部9203を備えた当該コンピュータは低消費電力化したコンピュータとなっている。
図5(C)は携帯電話であり、本体9401、筐体9402、表示部9403、音声入力部9404、音声出力部9405、操作キー9406、外部接続ポート9407、アンテナ9408等を含む。この携帯電話は、表示部9403は、実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかを表示素子として用いることによって作製されている。特に、発光効率の向上した実施の形態3に記載の発光素子を用いて作製された表示部9403は消費電力を低減させることができ、この表示部9403を備えた当該携帯電話は低消費電力化した携帯電話とすることができる。これは、携帯することを前提とする携帯電話にとっては非常に有利である。
図5(D)はカメラであり、本体9501、表示部9502、筐体9503、外部接続ポート9504、リモコン受信部9505、受像部9506、バッテリー9507、音声入力部9508、操作キー9509、接眼部9510等を含む。このカメラは、表示部9502は、実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかを表示素子として用いることによって作製されている。特に発光効率の向上した実施の形態3に記載の発光素子を用いて作製された表示部9502は消費電力を低減させることができ、この表示部9502を備えた当該カメラは低消費電力化したカメラとすることができる。これは、携帯することが多いカメラにとっては非常に有利な構成となる。
以上の様に、実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかを用いて作製された発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
また、本発明の発光装置として、照明装置を挙げることもできる。実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかを照明装置に適用する一態様を、図6を用いて説明する。
図6は、実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかをバックライトとして適用した液晶表示装置の一例である。図6に示した液晶表示装置は、筐体901、液晶層902、バックライトユニット903、筐体904を有し、液晶層902は、ドライバIC905と接続されている。また、バックライトユニット903は、実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかを用いて形成されており、端子906により、電流が供給されている。
なお、バックライトユニット903は実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかを1つのみ用いていても良いし、当該発光素子を複数用いていても良い。
このように、実施の形態1に記載の金属錯体を含む実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかを液晶表示装置のバックライトに適用することができる。当該バックライトは大面積化も可能であるため、液晶表示装置の大面積化も可能になる。また、特に、発光効率の向上した実施の形態3に記載の発光素子を用いて作製されたバックライトは、低消費電力化を実現したバックライトとすることができる。さらに、当該バックライトは厚みのある部品を必要としないため、液晶表示装置全面において薄型化することも可能となる。
図7は、実施の形態1に記載の金属錯体を含む実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかを、照明装置である電気スタンドに用いた例である。図7に示す電気スタンドは、筐体2001と、光源2002を有し、光源2002として、実施の形態1に記載の金属錯体を含む実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかが形成されている。光源2002は当該発光素子1つで構成されていても良いし、複数の当該発光素子によって構成されていても良い。また、実施の形態1に記載の金属錯体を含む実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかとそれ以外の発光素子とで構成されていても良い。また、異なる発光色を呈する複数種の発光素子によって構成されていても良い。このように、実施の形態1に記載の金属錯体を含む実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかを用いて光源2002を作製することができる。特に、発光効率の向上した実施の形態3に記載の発光素子を用いて作製された電気スタンドは、低消費電力化を実現した電気スタンドとすることができる。
図8は、実施の形態1に記載の金属錯体を含む実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかを、室内の照明装置3001に適用した例である。照明装置3001は当該発光素子1つで構成されていても良いし、複数の当該発光素子によって構成されていても良い。また、実施の形態1に記載の金属錯体を含む実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかとそれ以外の発光素子とで構成されていても良い。また、異なる発光色を呈する複数種の発光素子によって構成されていても良い。このように、実施の形態1に記載の金属錯体を含む実施の形態2乃至実施の形態4に示した発光素子のいずれかを用いて照明装置3001を作製することができる。当該発光素子を適用して作製された照明装置3001は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。また、特に、発光効率の向上した実施の形態3に記載の発光素子を用いて作製された照明装置3001は、低消費電力化を実現した照明装置とすることができる。
本実施例では、実施の形態1に記載の金属錯体であるビス[2−(5−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:Zn(5P−PIMP))の合成方法について説明する。
<合成例>
≪ステップ1:2−アミノ−5−フェニルピリジンの合成≫
10g(58mmol)の2−アミノ−5−ブロモピリジンと、7.2g(60mmol)のフェニルボロン酸と、1.3g(1.2mmol)のテトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0)と、100mLのエチレングリコールジメチルエーテル(DME)と、90mLの炭酸水素ナトリウム水溶液(2.0mol/L)を500mLの三口フラスコへ入れた。この混合物を減圧脱気した後、6時間還流した。還流後、混合物を室温まで冷ましてから、ろ過し、得られたろ液の有機層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。この混合物をろ過し、得られたろ液をアルミナ、セライト(和光純薬工業株式会社、カタログ番号:531−16855)を通してろ過し、ろ液を得た。このろ液を濃縮したところ、目的物を9.4g、収率99%で得た。ステップ1の合成スキームを反応式(a1−1)に示す。
≪ステップ2:2−(5−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)フェノールの合成≫
7.9g(47mmol)の2−アミノ−5−フェニルピリジンと、10g(47mmol)の2−ブロモ−2’−ヒドロキシアセトフェノンと、7.8g(93mmol)の炭酸水素ナトリウムと、100mLのエタノールを300mLの三口フラスコへ入れた。この混合物を6時間還流した。還流後、混合物を室温まで冷ましてから、ろ過し、得られた固体をエタノールと水で洗浄したところ、目的物を5.6g、収率42%で得た。ステップ2の合成スキームを反応式(a2−1)に示す。
得られた固体を核磁気共鳴法(NMR)によってH NMRを測定し、この固体が目的物である2−(5−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)フェノールであることを確認した。以下に測定データを示す。
H NMR(CDCl,300MHz):δ=6.89(dt、J1=0.9Hz、J2=7.8Hz、1H)、7.05(dd、J1=1.0Hz、J2=8.2Hz、1H)、7.19−7.23(m、1H)、7.40−7.65(m、8H)、7.70(d、J=9.9Hz、1H)、7.95(s、1H)、8.34−8.35(m、1H)
また、図9(A)、(B)にH NMRチャートを示す。図9(B)は図9(A)における6.5ppm〜8.5ppmの範囲を拡大して表したチャートである。
得られた物質の熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を行った。測定には高真空差動型示差熱天秤(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、TG−DTA2410SA)を用いた。常圧、昇温速度10℃/min、窒素気流下(流速200mL/min)の条件で測定したところ、重量と温度の関係(熱重量測定)から、5%重量減少温度は292℃であった。
また、2−(5−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)フェノールのジクロロメタン溶液の吸収スペクトルを図10、発光スペクトルを図11に示す。測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れ、石英とジクロロメタンの吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図示した。図10において、横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表し、2−(5−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)フェノールのジクロロメタン溶液は266nm、297nm及び388nm付近に吸収が見られた。また、図11において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。2−(5−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)フェノールのジクロロメタン溶液は最大発光波長が423nmであった。
≪ステップ3:ビス(2−[5−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル]フェノラト)亜鉛(II)(略称:Zn(5P−PIMP))の合成≫
5.4g(20mmol)の2−(5−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)フェノールと、2.2g(10mmol)の酢酸亜鉛(II)と、約30mLのエタノールを200mLの三口フラスコへ入れた。この混合物を4時間還流した。還流後、混合物を室温まで冷ましてから、ろ過し、得られた固体を水で洗浄したところ、目的物の乳白色固体を5.7g、収率92%で得た。得られた固体をトレインサブリメーション法により、昇華精製した。昇華精製は、材料を260℃で加熱した。ステップ3の合成スキームを反応式(a3−1)に示す。
得られた物質の熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)を行った。測定には高真空差動型示差熱天秤(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、TG−DTA2410SA)を用いた。常圧、昇温速度10℃/min、窒素気流下(流速200mL/min)の条件で測定したところ、重量と温度の関係(熱重量測定)から、5%重量減少温度は500℃、融点は414℃で高い熱安定性を示した。
また、Zn(5P−PIMP)のジクロロメタン溶液の吸収スペクトルを図12、発光スペクトルを図13に示す。測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れ、石英とジクロロメタンの吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図示した。図12において、横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表し、Zn(5P−PIMP)のジクロロメタン溶液は265nm、339nm付近に吸収が見られた。また、図11において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。Zn(5P−PIMP)のジクロロメタン溶液は最大発光波長が513nm付近であった。
また、Zn(5P−PIMP)の薄膜の吸収スペクトルを図14に、薄膜の発光スペクトルを図15に示す。測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。石英基板に蒸着してサンプルを作製し、石英の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図示した。図14において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。また、図15において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。薄膜の場合では350nm付近に吸収が見られた。また、最大発光波長は薄膜の場合では493nmであった。
実施例1で合成した下記構造式(1)で表されるビス(2−[5−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル]フェノラト)亜鉛(II)(略称:Zn(5P−PIMP))(実施例)と、特許文献1に記載の下記構造式(c1)で表される2−(2’−ヒドロキシフェニル)−イミダゾ[1,2a]ピリジンの亜鉛錯体(比較例)を、タンタルボートを用い、10―4Pa以下で真空蒸着を行った後のタンタルボートの写真を図16に示す。図中、(A)がZn(5P−PIMP)の、(B)が2−(2’−ヒドロキシフェニル)−イミダゾ[1,2a]ピリジンの亜鉛錯体の結果である。
図からもわかるように、実施の形態1に記載のZn(5P−PIMP)を蒸着した後のタンタルボート(写真(A))には残留物は殆ど見られず、仕込んだ材料がほぼ全て気化していることがわかる。また、僅かに残留している物質も、Zn(5P−PIMP)の粉末と同様に乳白色を呈している。一方、比較例である2−(2’−ヒドロキシフェニル)−イミダゾ[1,2a]ピリジンの亜鉛錯体を蒸着した後のタンタルボート(写真(B))は色の濃い(実際は黒色の)残留物が多く残り、蒸着時に反応してしまっていることがわかる。
本実施例では実施の形態1に記載の金属錯体であるビス(2−[5−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル]フェノラト)亜鉛(II)(略称:Zn(5P−PIMP))を発光中心物質を分散する為のホスト材料として用いた発光素子について説明する。
なお、本実施例で用いた有機化合物の分子構造を下記構造式(i)〜(iv)及び(1)に示す。素子構造は図1(A)と同様である。
≪発光素子1の作製≫
まず、陽極100として110nmの膜厚でケイ素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)が成膜されたガラス基板を用意した。ITSO表面は、周辺をポリイミド膜で覆い、電極面積は2mm×2mmとした。この基板上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度放冷した。
次に、ITSOが形成された面が下方となるように、基板を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。
真空装置内を10−4Paに減圧した後、上記構造式(i)で表される4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)と酸化モリブデン(VI)とを、NPB:酸化モリブデン(VI)=4:1(質量比)となるように共蒸着することにより、正孔注入層104を形成した。膜厚は50nmとした。なお、共蒸着とは、異なる複数の物質をそれぞれ異なる蒸発源から同時に蒸発させる蒸着法である。次に、NPBを10nm蒸着することにより、正孔輸送層105を形成した。
さらに正孔輸送層105上に、上記構造式(1)で表されるZn(5P−PIMP)と上記構造式(ii)で表される(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))をZn(5P−PIMP):Ir(Fdpq)(acac)=1:0.06(質量比)となるように共蒸着することによって発光層102を形成した。膜厚は30nmとした。
次に、上記構造式(iii)で表される ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)を10nm蒸着することにより、電子輸送層106を形成した。さらに電子輸送層106上に、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)とリチウムをAlq:リチウム=1:0.01(質量比)となるように共蒸着することによって電子注入層107を形成した。膜厚は50nmとした。最後に、陰極として機能する陰極101としてアルミニウムを200nm成膜し、発光素子1を完成させた。上述した蒸着過程においては、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
≪発光素子1の動作特性≫
以上により得られた発光素子1を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、これらの発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
発光素子1の電流密度−輝度特性を図17に、電圧−輝度特性を図18に、輝度−電流効率特性を図19に示す。
また、作製した発光素子1に1mAの電流を流したときの発光スペクトルを図20に示す。図20より発光材料であるIr(Fdpq)(acac)由来の赤色発光(燐光)が得られたことがわかる。
このように、実施の形態1に記載の金属錯体であるZn(5P−PIMP)は発光素子1において、赤色の燐光を発する発光材料を分散するホスト材料として、問題なく動作することがわかった。
本実施例では、実施の形態1に記載の金属錯体であるビス(2−[5−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル]フェノラト)亜鉛(II)(略称:Zn(5P−PIMP))を正孔の移動を制御する層111における少量成分として用いた発光素子について説明する。
なお、本実施例で用いた有機化合物(実施例3で示した物質を除く)の分子構造を下記構造式(v)、(vi)に示す。素子構造は図1(B)と同様である。
≪発光素子2の作製≫
まず、陽極100として110nmの膜厚でケイ素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)が成膜されたガラス基を用意した。ITSO表面は、2mm角の大きさで表面が露出するよう周辺をポリイミド膜で覆い、電極面積は2mm×2mmとした。この基板上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度放冷した。
次に、ITSOが形成された面が下方となるように、基板を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。
真空装置内を10−4Paに減圧した後、NPBと酸化モリブデン(VI)とを、NPB:酸化モリブデン(VI)=4:1(質量比)となるように共蒸着することにより、正孔注入層104を形成した。膜厚は30nmとした。なお、共蒸着とは、異なる複数の物質をそれぞれ異なる蒸発源から同時に蒸発させる蒸着法である。次に、正孔の移動を制御する層111として、NPBとZn(5P−PIMP)をNPB:Zn(5P−PIMP)=1:0.1となるように共蒸着した。膜厚は10nmとした。続いて、NPBを20nm蒸着することにより、正孔輸送層105を形成した。
さらに正孔輸送層105上に、上記構造式(v)で表される9−[4−(10−フェニル−9ーアントラセニル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)と上記構造式(vi)で表されるN,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)をCzPA:YGA2S=1:0.05(質量比)となるように共蒸着することによって発光層102を形成した。膜厚は30nmとした。
次に、Alqを20nm、続いて上記構造式(vii)で表されるバソフェナントロリン(略称:Bphen)を10nm蒸着し、積層することにより、電子輸送層106を形成した。さらに電子輸送層106上に、フッ化リチウムを1nm蒸着することによって電子注入層107を形成した。最後に、陰極として機能する陰極101としてアルミニウムを200nm成膜し、発光素子2を完成させた。上述した蒸着過程においては、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
≪発光素子3の作製≫
発光素子3は発光素子2における正孔の移動を制御する層111のNPBとZn(5P−PIMP)の割合をNPB:Zn(5P−PIMP)=1:0.2とした他は、発光素子2と同様に作製した。
≪比較発光素子1の作製≫
比較発光素子1は発光素子2及び3における正孔の移動を制御する層111のNPBとZn(5P−PIMP)の割合をNPB:Zn(5P−PIMP)=1:0(すなわち正孔輸送層105が30nmであるものと同義)とした他は、発光素子2及び3と同様に作製した。
≪発光素子2、3、比較発光素子1の動作特性≫
以上により得られた発光素子2、3、比較発光素子1を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、これらの発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
各発光素子の電流密度−輝度特性を図21、電圧−輝度特性を図22、輝度−電流効率特性を図23、輝度−パワー効率特性を図24に示す。また、1000cd/m付近での各素子の電流効率及びパワー効率をまとめた表を表1に示す。
以上のように、実施の形態1に記載の金属錯体であるZn(5P−PIMP)を正孔の移動を制御する層111に用いた本実施例の発光素子2及び発光素子3は、電流効率、パワー効率共に良好な値を示すことがわかった。
発光素子の概念図。 有機半導体素子の概念図。 アクティブマトリクス型発光装置の概念図。 パッシブマトリクス型発光装置の概念図。 電子機器を表す図。 電子機器を表す図。 照明装置を表す図。 照明装置を表す図。 2−(5−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)フェノールのH NMRチャート。 2−(5−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)フェノールのジクロロメタン中の吸収スペクトル。 2−(5−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル)フェノールのジクロロメタン中の発光スペクトル。 ビス(2−[5−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−2−イル]フェノラト)亜鉛(II)(略称:Zn(5P−PIMP))のジクロロメタン中の吸収スペクトル。 Zn(5P−PIMP)のジクロロメタン中の発光スペクトル。 Zn(5P−PIMP)の薄膜状態での吸収スペクトル。 Zn(5P−PIMP)の薄膜状態での発光スペクトル。 Zn(5P−PIMP)及び比較例の蒸着後の蒸着ボートの写真。 実施例3で作製した発光素子の電流密度―輝度特性 実施例3で作製した発光素子の電圧―輝度特性 実施例3で作製した発光素子の輝度−電流効率特性 実施例3で作製した発光素子の発光スペクトル。 実施例4で作製した発光素子の電流密度―輝度特性。 実施例4で作製した発光素子の電圧−輝度特性。 実施例4で作製した発光素子の輝度−電流効率特性。 実施例4で作製した発光素子の輝度−パワー効率特性。
符号の説明
100 陽極
101 陰極
102 発光層
103 有機化合物を含む層
104 正孔注入層
105 正孔輸送層
106 電子輸送層
107 電子注入層
110 発光素子
111 正孔の移動を制御する層
501 第1の電極
502 第2の電極
511 第1の発光ユニット
512 第2の発光ユニット
513 電荷発生層
601 駆動回路部(ソース側駆動回路)
602 画素部
603 駆動回路部(ゲート側駆動回路)
604 封止基板
605 シール材
607 空間
608 配線
609 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
610 素子基板
611 スイッチング用TFT
612 電流制御用TFT
613 第1の電極
614 絶縁物
616 有機化合物を含む層
617 第2の電極
618 発光素子
623 nチャネル型TFT
624 pチャネル型TFT
901 筐体
902 液晶層
903 バックライトユニット
904 筐体
905 ドライバIC
906 端子
951 基板
952 電極
953 絶縁層
954 隔壁層
955 有機化合物を含む層
956 電極
1201 ソース電極
1202 活性層
1203 ドレイン電極
1204 ゲート電極
2001 筐体
2002 光源
3001 照明装置
9101 筐体
9102 支持台
9103 表示部
9104 スピーカー部
9105 ビデオ入力端子
9201 本体
9202 筐体
9203 表示部
9204 キーボード
9205 外部接続ポート
9206 ポインティングデバイス
9401 本体
9402 筐体
9403 表示部
9404 音声入力部
9405 音声出力部
9406 操作キー
9407 外部接続ポート
9408 アンテナ
9501 本体
9502 表示部
9503 筐体
9504 外部接続ポート
9505 リモコン受信部
9506 受像部
9507 バッテリー
9508 音声入力部
9509 操作キー
9510 接眼部

Claims (8)

  1. 下記一般式(G1)で表される有機金属錯体。
    但し、式中R乃至Rはそれぞれ独立に水素、ハロゲン、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメトキシ基のいずれか一を表し、Arはフェニル基又はナフチル基を表す。
  2. 下記一般式(G1)で表される有機金属錯体。
    但し、式中R乃至Rはそれぞれ独立に水素、ハロゲン、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメトキシ基のいずれか一を表し、Arは下記構造式(s1−1)乃至(s1−13)で表される基のいずれか一を表す。
  3. 下記一般式(G2)で表される有機金属錯体。
    但し、式中Arは下記構造式(s1−1)乃至(s1−13)で表される基のいずれか一を表し、式中Aは下記構造式(s2−1)乃至(s2−25)で表される基のいずれか一を表す。なお、下記構造式(s2−1)乃至(s2−25)と一般式(G2)におけるα及びβは互いに対応しているものとする。
  4. 下記構造式(1)で表される有機金属錯体。
  5. 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の有機金属錯体を含む発光素子用材料。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の有機金属錯体を含む発光素子。
  7. 請求項6に記載の発光素子と前記発光素子を制御する手段とを備えた発光装置。
  8. 請求項7に記載の発光装置を搭載した電子機器。
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