以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1を参照して、デジタルパワーアンプ(D級電力増幅器)1について説明する。図1は、デジタルパワーアンプ1の構成を示す回路図である。
なお、デジタルパワーアンプ1は、アナログ信号に含まれる低周波信号(特に、周波数20Hz以下の信号)が入力端子Aに入力され、電源バスパンピングが発生し、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が上昇して所定値を超えた場合に、その上昇した電源電圧の電圧値を電源電圧検出回路7で検出してハイパスフィルター5を動作させ、入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号を減衰させてアンプ回路3へ出力する。
一方で、デジタルパワーアンプ1は、電源バスパンピングが発生していない場合には(電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下の場合には)、ハイパスフィルター5を動作させずに、入力端子Aに入力されたアナログ信号をアンプ回路3へそのまま出力する(入力端子Aに入力されたアナログ信号をハイパスフィルター5で減衰させずに、アンプ回路3へそのまま出力する)。
デジタルパワーアンプ1は、電源回路2と、アンプ回路3と、ハイパスフィルター5と、出力フィルター4とから構成されており、出力フィルター4から出力されたアナログ信号によりスピーカである負荷6を駆動して音を出力する。
電源回路2は、負荷6を駆動させるアンプ回路3のための正電源電圧+Vおよび負電源電圧−Vを供給する回路であり、トランスTと、整流ダイオードDi1,Di2と、平滑コンデンサC1,C2とから構成されている。トランスTの一端は、整流ダイオードDi1のアノード端子と接続されており、整流ダイオードDi1のカソード端子は、平滑コンデンサC1の一端とアンプ回路3のスイッチングFET1のドレイン端子D1と接続されている。そして、平滑コンデンサC1の他端はグランドされている。この接続により、トランスT、整流ダイオードDi1および平滑コンデンサC1は、正電源電圧+Vを出力する正電源を構成している。なお、正電源電圧+Vとは、スイッチングFET1のドレイン端子D1に印加される電圧を示している。
また、トランスTの他端は、整流ダイオードDi2のカソード端子と接続されており、整流ダイオードDi2のアノード端子は、平滑コンデンサC2の一端とアンプ回路3のスイッチングFET2のソース端子S2と接続されている。そして、平滑コンデンサC2の他端はグランドされている。この接続により、トランスT、整流ダイオードDi2および平滑コンデンサC2は、負電源電圧−Vを出力する負電源を構成している。なお、負電源電圧−Vとは、スイッチングFET2のソース端子S2に印加される電圧を示している。
アンプ回路3は、電源回路2から供給される正電源電圧+Vおよび負電源電圧−Vを交互に出力フィルター4へ出力する回路であり、ドライバー回路P1とスイッチングFET1,FET2とから構成されている。ドライバー回路P1は、入力されたアナログ信号をパルス幅変調信号に変調する変調器である。
ドライバー回路P1の一方の出力端子は、スイッチングFET1のゲート端子G1と接続されており、このスイッチングFET1のドレイン端子D1は、電源回路2の平滑コンデンサC1の一端および整流ダイオードDi1のカソード端子と接続されている。そして、このスイッチングFET1のソース端子S1は、出力フィルター4の入力端子と接続されている。
また、ドライバー回路P1の他方の出力端子は、スイッチングFET2のゲート端子G2と接続されており、このスイッチングFET2のソース端子S2は、電源回路2の平滑コンデンサC2の一端および整流ダイオードDi2のアノード端子と接続されている。そして、このスイッチングFET2のドレイン端子D2は、出力フィルター4の入力端子と接続されている。
ドライバー回路P1は、入力されたアナログ信号をパルス幅変調信号に変換し、そのパルス幅変調信号に応じて電源回路2から供給される正電源電圧+Vおよび負電源電圧−Vを、スイッチングFET1およびスイッチングFET2により交互にスイッチしてフィルター4へ出力する。
出力フィルター4は、パルス幅変調信号に応じてスイッチングFET1およびスイッチングFET2によりスイッチされた正電源電圧+Vおよび負電源電圧−Vを、アナログ信号に復調するローパスフィルターである。出力フィルター4は、コイルL1とコンデンサC3とから構成されている。コイルL1の一端は、スイッチングFET1のソース端子S1およびスイッチングFET2のドレイン端子D2と接続されており、コイルL1の他端は、コンデンサC3の一端と接続されると共に、スピーカである負荷6に接続されている。なお、コンデンサC3の他端はグランドされている。この接続により、コイルL1およびコンデンサC3でローパスフィルターが形成される。
この出力フィルター(ローパスフィルター)4により復調されたアナログ信号は、負荷6へ出力される。負荷6は、出力フィルター4から出力されたアナログ信号により駆動され(出力フィルター4で復調されたアナログ信号により駆動され)、音を出力する。
ハイパスフィルター5は、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇に応じて、動作または不動作を切り換える可変式のハイパスフィルターである。
ハイパスフィルター5は、コンデンサC4と抵抗R1とスイッチSW1とから構成されている。コンデンサC4の一端は、デジタルパワーアンプ1の入力端子Aと接続され、コンデンサC4の他端は、抵抗R1の一端およびドライバー回路P1の入力端子に接続されている。抵抗R1の他端は、スイッチSW1の一端と接続され、このスイッチSW1の他端は、グランドされている。そして、スイッチSW1の導通、遮断を制御する制御端子SC1は、その制御端子SC1を駆動させる駆動回路(図示せず)を介して、電源電圧検出回路7のトランジスタTR1のコレクタ端子cと接続されている。
ハイパスフィルター5の動作について説明する。アナログ信号に含まれる低周波信号(特に、周波数20Hz以下の信号)がデジタルパワーアンプ1の入力端子Aに入力され、電源バスパンピングが発生し、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が上昇して所定値を超えると、電源電圧検出回路7のトランジスタTR1が導通する。すると、スイッチSW1が導通し、抵抗R1の他端がグランドされる。これにより、ハイパスフィルター5は動作状態となり、入力端子Aから入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号(特に、周波数20Hz以下の信号)を減衰して、ドライバー回路P1の入力端子へ出力する。つまり、入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号をハイパスフィルター5で減衰させてアンプ回路3(ドライバー回路P1の入力端子)へ出力する。これにより、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が抑制される。よって、電源回路2に設けられた平滑コンデンサC1および平滑コンデンサC2の容量を大容量化することなく、電源バスパンピングの発生を抑制することができる。なお、トランジスタTR1の導通とは、トランジスタTR1のコレクタ端子cとエミッタ端子eとが導通している状態を示している。
一方、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下であれば、電源電圧検出回路7のトランジスタTR1が遮断する。すると、スイッチSW1が遮断されるので、抵抗R1の他端がグランドされず、ハイパスフィルター5は不動作状態となる。これにより、入力端子Aから入力されたアナログ信号は、全周波数帯で減衰されず、ドライバー回路P1の入力端子へそのまま出力される。つまり、電源バスパンピングが発生していない場合には、ハイパスフィルター5を動作させずに、入力端子Aに入力されたアナログ信号をアンプ回路3へそのまま出力する(入力端子Aに入力されたアナログ信号をハイパスフィルター5で減衰させずに、アンプ回路3へそのまま出力する)。よって、デジタルパワーアンプ1により増幅されたアナログ信号の劣化を抑制することができる。なお、トランジスタTR1の遮断とは、トランジスタTR1のコレクタ端子cとエミッタ端子eとが遮断している状態を示している。
なお、ハイパスフィルター5は、ハイパスフィルター5の動作、不動作を、スイッチSW1の導通、遮断によって切り換える構成としている。よって、ハイパスフィルター5の制御を簡素化することができる。
電源電圧検出回路7は、電源バスパンピングが発生し、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が上昇した場合に、その上昇を、正電源電圧+Vと負電源電圧−Vとの電位差に基づいて検出する回路である。電源電圧検出回路7は、抵抗Rx,R2,R3とNPN型のトランジスタTR1とスイッチSW2から構成されている。
抵抗Rxの一端は、スイッチングFET1のドレイン端子D1、平滑コンデンサC1の一端、整流ダイオードDi1のカソード端子およびスイッチSW2の一端と接続されており、抵抗Rxの他端は、抵抗R2の一端およびスイッチSW2の他端と接続されている。
抵抗R2の他端は、抵抗R3の一端およびトランジスタTR1のベース端子bと接続されている。また、抵抗R3の他端は、スイッチングFET2のソース端子S2、平滑コンデンサC2の一端および整流ダイオードDi2のアノード端子と接続されている。
トランジスタTR1のエミッタ端子eは、スイッチングFET2のソース端子S2、平滑コンデンサC2の一端および整流ダイオードDi2のアノード端子と接続されており、トランジスタTR1のコレクタ端子cは、ハイパスフィルター5に設けられたスイッチSW1の制御端子SC1およびヒステリシス制御回路8の入力端子と接続されている。
ヒステリシス制御回路8は、トランジスタTR1のコレクタ端子cの電圧を検出し、電源電圧検出回路7のスイッチSW2の導通、遮断を切り換えて、トランジスタTR1のバイアス電圧を切り換える回路である。ヒステリシス制御回路8の入力端子は、トランジスタTR1のコレクタ端子cと接続されており、ヒステリシス制御回路8の出力端子は、スイッチSW2の制御端子SC2と、その制御端子SC2を駆動させる駆動回路(図示せず)を介して接続されている。
ここで、ヒステリシス制御回路8と電源電圧検出回路7との動作について、ハイパスフィルター5の動作に合わせながら説明する。正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下である場合には、ヒステリシス制御回路8によりスイッチSW2が遮断状態にされているので、正電源電圧+Vと負電源電圧−Vとの電位差は、電源電圧検出回路7に設けられた抵抗Rx,R2,R3によって分圧される。このとき、正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下である場合には、抵抗R3に発生する電圧、即ちトランジスタTR1のバイアス電圧は、抵抗Rx,R2,R3の分圧比から、トランジスタTR1が導通状態となる電圧(以下、「トランジスタTR1の導通電圧」と称す)未満に設定されているので、トランジスタTR1は遮断状態となる。よって、トランジスタTR1のコレクタ端子cの電圧は不定となり、トランジスタTR1のコレクタ端子cに接続されたハイパスフィルター5のスイッチSW1が遮断する。よって、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下である場合には、ハイパスフィルター5は不動作状態を保つ。このとき、ヒステリシス制御回路8は、スイッチSW2を遮断させた状態を保つ。
次に、アナログ信号に含まれる低周波信号(特に、周波数20Hz以下の信号)がデジタルパワーアンプ1の入力端子Aに入力され、電源バスパンピングが発生し、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が上昇すると、正電源電圧+Vと負電源電圧−Vとの電位差が大きくなり、抵抗R3に発生する電圧、即ちトランジスタTR1のバイアス電圧が上昇する。そして、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が上昇して所定値を超えると、トランジスタTR1のバイアス電圧がトランジスタTR1の導通電圧以上となり、トランジスタTR1が導通する。これにより、トランジスタTR1のコレクタ端子cの電圧は、負電源電圧−Vと略同じ電圧となる。すると、トランジスタTR1のコレクタ端子cに接続されたハイパスフィルター5のスイッチSW1が導通する。よって、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が上昇して所定値を超えると、ハイパスフィルター5は動作状態となる。このとき、ヒステリシス制御回路8は、スイッチSW2を遮断状態から導通状態へ切り換える。
次に、ハイパスフィルター5が動作状態となることで、デジタルパワーアンプ1の入力端子Aに入力される低周波信号が抑制される。この低周波信号の抑制により、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が抑制されて、抵抗R3に発生した電圧が、即ちトランジスタTR1のバイアス電圧が、トランジスタTR1の導通電圧未満となると、トランジスタTR1が遮断される。これにより、トランジスタTR1のコレクタ端子cの電圧は不定となり、トランジスタTR1のコレクタ端子cに接続されたハイパスフィルター5のスイッチSW1が遮断する。よって、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が抑制されると、ハイパスフィルター5は不動作状態となる。このとき、ヒステリシス制御回路8は、スイッチSW2を導通状態から遮断状態へ切り換える。
このように、トランジスタTR1が不動作状態である場合には(電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下である場合には)、ヒステリシス制御回路8によりスイッチSW2が遮断状態となるので、トランジスタTR1のバイアス電圧は、正電源電圧+Vと負電源電圧−Vとの電位差を抵抗Rx,R2,R3の3つの抵抗で分圧した後、抵抗R3に発生する電圧となる。一方、トランジスタTR1が動作状態である場合には(電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が上昇して所定値を超えた場合には)、ヒステリシス制御回路8によりスイッチSW2が導通状態となるので、トランジスタTR1のバイアス電圧は、正電源電圧+Vと負電源電圧−Vとの電位差を抵抗R2,R3の2つの抵抗で分圧した後、抵抗R3に発生する電圧となる。
つまり、ハイパスフィルター5が不動作状態であるよりも、ハイパスフィルター5が動作状態である方が、分圧抵抗の数が少ないので、正電源電圧+Vと負電源電圧−Vとの電位差が同じであっても、抵抗R3に発生する電圧が高くなる。よって、ハイパスフィルター5が不動作状態であるよりも、ハイパスフィルター5が動作状態である方が、正電源電圧+Vと負電源電圧−Vとの電位差が同じであっても、トランジスタTR1のバイアス電圧が高くなる。ここで、トランジスタTR1の導通電圧は、固定値である。従って、ハイパスフィルター5が動作状態であるときは、ハイパスフィルター5が不動作状態であるときよりも正電源電圧+Vと負電源電圧−Vとの電位差が小さくなっても、トランジスタTR1の導通を安定して維持しておくことができる。
このように、ハイパスフィルター5が動作状態となった場合には、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が十分抑制されて、正電源電圧+Vと負電源電圧−Vとの電位差が十分に小さくなるまでは、ハイパスフィルター5を安定して動作状態にしておくことができる。よって、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が十分に抑制されず、正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が不安定に変動しても(正電源電圧+Vと負電源電圧−Vとの電位差が不安定に変動しても)、ハイパスフィルター5が動作状態と不動作状態を繰り返すことを防止することができる。
本実施形態によれば、アナログ信号に含まれる低周波信号(特に、周波数20Hz以下の信号)がデジタルパワーアンプ1の入力端子Aに入力され、電源バスパンピングが発生し、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が上昇して所定値を超えると、ハイパスフィルター5を動作状態にして、入力端子Aから入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号(特に、周波数20Hz以下の信号)を減衰して、ドライバー回路P1の入力端子へ出力する。つまり、入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号をハイパスフィルター5で減衰させてアンプ回路3(ドライバー回路P1の入力端子)へ出力する。これにより、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が抑制される。よって、電源回路2に設けられた平滑コンデンサC1および平滑コンデンサC2の容量を大容量化することなく、電源バスパンピングの発生を抑制することができる。
一方、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下の場合には、ハイパスフィルター5を不動作状態にする。これにより、入力端子Aから入力されたアナログ信号は全周波数帯で減衰されず、ドライバー回路P1の入力端子へそのまま出力される。つまり、電源バスパンピングが発生していない場合には、ハイパスフィルター5を動作させずに、入力端子Aに入力されたアナログ信号をアンプ回路3へそのまま出力する(入力端子Aに入力されたアナログ信号をハイパスフィルター5で減衰させずに、アンプ回路3へそのまま出力する)。よって、デジタルパワーアンプ1により増幅されたアナログ信号の劣化を抑制することができる。
次に、図2を参照して、第2実施形態のデジタルパワーアンプ10について説明する。図2は、デジタルパワーアンプ10の構成を示す回路図である。第2実施形態のデジタルパワーアンプ10は、第1実施形態のデジタルパワーアンプ1に設けられたハイパスフィルター5を、低域遮断周波数を変化させることが可能なハイパスフィルターである周波数可変型ハイパスフィルター19に換えたものである。よって、第2実施形態のデジタルパワーアンプ10では、第1実施形態のデジタルパワーアンプ1と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
デジタルパワーアンプ10は、アナログ信号に含まれる低周波信号(特に、周波数20Hz以下の信号)が入力端子Aに入力され、電源バスパンピングが発生し、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が上昇して所定値を超えた場合に、その上昇の程度に応じて、周波数可変型ハイパスフィルター19の低域遮断周波数を高くして、入力端子Aから入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号(特に、周波数20Hz以下の信号)の減衰量を増加させる。そして、その増加した減衰量に基づいて、入力端子Aから入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号を減衰して、アンプ回路3へ出力する。
一方で、デジタルパワーアンプ10は、電源バスパンピングが発生していない場合には(電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下の場合には)、周波数可変型ハイパスフィルター19の低域遮断周波数を最小にして、入力端子Aから入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号(特に、周波数20Hz以下の信号)の減衰量を最小にする。これにより、入力端子Aに入力されたアナログ信号を周波数可変型ハイパスフィルター19でほとんど減衰させずに、アンプ回路3へ出力する。
周波数可変型ハイパスフィルター19は、電源電圧検出回路7に設けられたトランジスタTR1のコレクタ端子cの電圧に応じて、低域遮断周波数を変化させる周波数可変型のハイパスフィルターである。周波数可変型ハイパスフィルター19は、コンデンサC5、抵抗R4、および抵抗値を可変できる可変抵抗RLとから構成されている。コンデンサC5の一端は、デジタルパワーアンプ10の入力端子Aと接続され、コンデンサC5の他端は、抵抗R4の一端およびドライバー回路P1の入力端子に接続されている。抵抗R4の他端は、可変抵抗RLの一端と接続され、この可変抵抗RLの他端はグランドされている。そして、可変抵抗RLの抵抗値を変化させる制御端子SLは、その制御端子SLを駆動させる駆動回路(図示せず)を介して、電源電圧検出回路7に設けられたトランジスタTR1のコレクタ端子cと接続されている。
なお、可変抵抗RLは、トランジスタTR1のコレクタ端子cの電圧が大きくなると抵抗値を小さくする一方、トランジスタTR1のコレクタ端子cの電圧が小さくなると抵抗値を大きくする抵抗であるが、この構成としては、次のものが例示される。可変抵抗RLとしては、例えば、抵抗値が異なる複数の抵抗回路と、トランジスタTR1のコレクタ端子cの電圧に応じてスイッチングを行うスイッチング素子とを有し、トランジスタTR1のコレクタ端子cの電圧に応じて、スイッチング素子のスイッチングを切り換え、複数の抵抗回路の内から1の抵抗回路と接続を行って抵抗値を切り換えるものが例示される。
周波数可変型ハイパスフィルター19の動作について説明する。アナログ信号に含まれる低周波信号(特に、周波数20Hz以下の信号)がデジタルパワーアンプ1の入力端子Aに入力され、電源バスパンピングが発生し、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が上昇して所定値を超えると、電源電圧検出回路7のトランジスタTR1のバイアス電圧(抵抗R3に発生する電圧)がトランジスタTR1の導通電圧以上となり、トランジスタTR1が導通する。すると、トランジスタTR1のコレクタ端子cに電圧が印加され(可変抵抗RLの制御端子SLに電圧が印加され)、可変抵抗RLの抵抗値が決定される。これにより、周波数可変型ハイパスフィルター19の低域遮断周波数が決定される。また、入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号の減衰量が決定される。
次に、トランジスタTR1の導通時よりも、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が上昇すると、トランジスタTR1のバイアス電圧(抵抗R3に発生する電圧)が上昇する。すると、トランジスタTR1のコレクタ端子cの電圧も上昇し(可変抵抗RLの制御端子SLに印加される電圧も上昇し)、可変抵抗RLの抵抗値が小さくなる。これにより、周波数可変型ハイパスフィルター19の低域遮断周波数が高くなる。そして、入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号の減衰量が増加する。よって、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が所定値を超えて上昇している場合には、入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号の減衰量を増加して、正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値を急激に低下させることができる(正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇を急激に抑制することができる)。
そして、入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号の減衰量が増加して、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が低下すると、トランジスタTR1のバイアス電圧(抵抗R3に発生する電圧)が低下する。すると、トランジスタTR1のコレクタ端子cの電圧も低下し(可変抵抗RLの制御端子SLに印加される電圧も低下し)、可変抵抗RLの抵抗値が大きくなる。これにより、周波数可変型ハイパスフィルター19の低域遮断周波数が低くなる。そして、入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号の減衰量が減少する。よって、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が低下すると(正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が抑制されると)、入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号の減衰量を減少して、正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値を緩やかに低下させることができる(正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇を緩やかに抑制することができる)。
このように、デジタルパワーアンプ10では、アナログ信号に含まれる低周波信号を適正且つ円滑に減衰した上で、正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇を適正且つ円滑に抑制することができる。
次に、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が抑制され、正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が低下して所定値以下となると、電源電圧検出回路7のトランジスタTR1のバイアス電圧(抵抗R3に発生する電圧)がトランジスタTR1の導通電圧未満となり、トランジスタTR1が遮断する。すると、トランジスタTR1のコレクタ端子cの電圧は不定となり、可変抵抗RLの抵抗値は最大となる。これにより、周波数可変型ハイパスフィルター19の低域遮断周波数は最小となる。このとき、入力端子Aに入力されたアナログ信号は周波数可変型ハイパスフィルター19でほとんど減衰させずに、アンプ回路3へ出力される。よって、デジタルパワーアンプ10により増幅されたアナログ信号の劣化を抑制することができる。
上述した通り、第2実施形態のデジタルパワーアンプ10は、アナログ信号に含まれる低周波信号(特に、周波数20Hz以下の信号)が入力端子Aに入力され、電源バスパンピングが発生し、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が上昇して所定値を超えた場合に、その上昇の程度に応じて、周波数可変型ハイパスフィルター19の低域遮断周波数を高くして、入力端子Aから入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号(特に、周波数20Hz以下の信号)の減衰量を増加させる。そして、その増加した減衰量に基づいて、入力端子Aから入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号を減衰して、アンプ回路3へ出力する。これにより、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が抑制される。よって、電源回路2に設けられた平滑コンデンサC1および平滑コンデンサC2の容量を大容量化することなく、電源バスパンピングの発生を抑制することができる。
一方で、デジタルパワーアンプ10は、電源バスパンピングが発生していない場合には(電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下の場合には)、周波数可変型ハイパスフィルター19の低域遮断周波数を最小にして、入力端子Aから入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号(特に、周波数20Hz以下の信号)の減衰量を最小にする。これにより、入力端子Aに入力されたアナログ信号を周波数可変型ハイパスフィルター19でほとんど減衰させずに、アンプ回路3へ出力する。よって、デジタルパワーアンプ10により増幅されたアナログ信号の劣化を抑制することができる。
次に、図3を参照して、第3実施形態のデジタルパワーアンプ30について説明する。図3(a)は、デジタルパワーアンプ30の構成を示す回路図である。また、図3(b)は、リミッタフィルター20によって電圧の一部が所定電圧値に制限された低周波信号の電圧波形を示した図である。
第3実施形態のデジタルパワーアンプ30は、第1実施形態のデジタルパワーアンプ1に設けられたハイパスフィルター5を、入力されたアナログ信号から低周波信号を取り出し、その取り出した低周波信号の電圧の一部を所定電圧値に制限するリミッタフィルター20に変えたものである。よって、第3実施形態のデジタルパワーアンプ30では、第1実施形態のデジタルパワーアンプ1と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
デジタルパワーアンプ30は、入力端子Aに入力されたアナログ信号をリミッタフィルター20で低周波信号とその低周波信号以外の信号(以下、「高周波信号」と称す)とに分配する。そして、電源バスパンピングが発生し、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が上昇して所定値を超えていれば、リミッタフィルター20で分配した低周波信号の電圧の一部を所定電圧値に制限する。そして、電圧の一部が所定電圧値に制限された低周波信号を、リミッタフィルター20で高周波信号と合成して、アンプ回路3へ出力する。つまり、デジタルパワーアンプ30は、入力端子Aから入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号(特に、周波数20Hz以下の信号)の強度を弱めて(アナログ信号に含まれる低周波信号を減衰させて)、アンプ回路3へ出力する。
一方で、デジタルパワーアンプ30は、電源バスパンピングが発生していない場合には(電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下の場合には)、リミッタフィルター20で分配した低周波信号の電圧の一部を所定電圧値に制限することなく、リミッタフィルター20で高周波信号と合成して、アンプ回路3へ出力する。これにより、入力端子Aに入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号をリミッタフィルター20で減衰させずに、アンプ回路3へ出力する。
リミッタフィルター20は、入力されたアナログ信号を低周波信号と高周波信号とに分配した後、電源電圧検出回路7のトランジスタTR1の導通、遮断に応じて、低周波信号の電圧の一部を所定電圧値に制限する切換式のリミッタ機能を有するフィルターである。リミッタフィルター20は、コンデンサC6,C7と抵抗R5,R6,R7,R8とダイオードDi3,Di4とスイッチSW3とから構成されている。コンデンサC6の一端は、デジタルパワーアンプ30の入力端子Aおよび抵抗R7の一端と接続され、コンデンサC6の他端は、抵抗R5の一端および抵抗R6の一端と接続されている。抵抗R5の他端は、グランドされており、抵抗R6の他端は、抵抗R8の他端と接続されると共に、ドライバー回路P1の入力端子に接続されている。なお、コンデンサC6と抵抗R5により形成されるハイパスフィルターが分配用ハイパスフィルター21となる。この分配用ハイパスフィルター21によって、入力されたアナログ信号から高周波信号を取り出すことができる。
抵抗R7の一端は、コンデンサC6の一端およびデジタルパワーアンプ30の入力端子Aに接続されており、抵抗R7の他端は、コンデンサC7の一端、ダイオードDi3のアノード端子、ダイオードDi4のカソード端子および抵抗R8の一端と接続されている。コンデンサC7の他端は、グランドされており、ダイオードDi3のカソード端子およびダイオードDi4のアノード端子は、スイッチSW3の一端と接続されている。また、スイッチSW3の他端は、グランドされており、スイッチSW3の制御端子SC3は、その制御端子SC3を駆動させる駆動回路(図示せず)を介して、電源電圧検出回路7のトランジスタTR1のコレクタ端子cと接続されている。また、抵抗R8の他端は、抵抗R6の一端およびドライバー回路P1の入力端子に接続されている。
なお、抵抗R7とコンデンサC7により形成されるローパスフィルターが分配用ローパスフィルター22となる。この分配用ローパスフィルター22によって、入力されたアナログ信号から低周波信号を取り出すことができる。また、ダイオードDi3とダイオードDi4とにより、分配用ローパスフィルター22により取り出された低周波信号の電圧の一部を所定電圧値に制限する電圧制限回路23が形成されている。更に、分配用ローパスフィルター22の高域遮断周波数は、分配用ハイパスフィルター21の低域遮断周波数と一致している。
リミッタフィルター20の動作について説明する。まず、リミッタフィルター20は、デジタルパワーアンプ30の入力端子Aにアナログ信号が入力されると、分配用ハイパスフィルター21で、入力されたアナログ信号から高周波信号を取り出す。一方、リミッタフィルター20は、分配用ローパスフィルター22で、入力されたアナログ信号から低周波信号を取り出す。
次に、電源バスパンピングが発生し、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が上昇して所定値を超えていれば、電源電圧検出回路7のトランジスタTR1が導通されるので、リミッタフィルター20は、スイッチSW3を導通させる。すると、リミッタフィルター20は、分配用ローパスフィルター22で取り出した低周波信号の電圧の一部を、電圧制限回路23で所定電圧値に制限する。
ここで、図3(b)を参照して、電圧制限回路23によって電圧の一部が所定電圧値に制限された低周波信号の電圧波形について説明する。電圧制限回路23によって低周波信号の電圧が所定電圧値に制限されると、低周波信号の電圧が所定電圧値を越えた部分は、所定電圧値に制限される。一方、低周波信号の電圧が所定電圧値以下の部分は、電圧波形が維持される。このように、低周波信号の電圧の一部を所定電圧値に制限することで、リミッタフィルター20は、入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号を所定量残すことができる。よって、入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号をハイパスフィルターで一律に減衰させる場合と比較して、リミッタフィルター20は、アナログ信号に含まれる低周波信号の劣化を抑制することができる。
図3(a)の説明に戻る。電圧制限回路23によって、電圧の一部が所定電圧値に制限された低周波信号は、抵抗R8に入力される。一方で、分配用ハイパスフィルター21で取り出した高周波信号は、スイッチSW3の状態に関係なく、そのまま抵抗R6に入力される。そして、この高周波信号と、電圧制限回路23によって電圧の一部が所定電圧値に制限された低周波信号とが合成されて、ドライバー回路P1の入力端子に入力される。
一方、電源バスパンピングが発生しなければ(電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下の場合には)、電源電圧検出回路7のトランジスタTR1が遮断されるので、リミッタフィルター20は、スイッチSW3を遮断させる。すると、電圧制限回路23が不動作となり、分配用ローパスフィルター22で取り出された低周波信号は、電圧が制限されることなく、抵抗R8へ出力される。そして、この低周波信号と、分配用ハイパスフィルター21で取り出された高周波信号とが合成されて、ドライバー回路P1の入力端子へ出力される。ここで、前述の通り、分配用ローパスフィルター22の高域遮断周波数は、分配用ハイパスフィルター21の低域遮断周波数と一致している。よって、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下の場合には、リミッタフィルター20は、入力端子Aに入力されたアナログ信号をほとんど減衰させることなくドライバー回路P1へ出力する。従って、デジタルパワーアンプ30により増幅されたアナログ信号の劣化を抑制することができる。
前述した通り、デジタルパワーアンプ30は、電源バスパンピングが発生し、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が上昇して所定値を超えていれば、入力端子Aから入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号(特に、周波数20Hz以下の信号)の強度をリミッタフィルター20で弱めて(アナログ信号に含まれる低周波信号を減衰させて)、ドライバー回路P1へ出力する。これにより、デジタルパワーアンプ30は、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇を抑制することができる。よって、電源回路2に設けられた平滑コンデンサC1および平滑コンデンサC2の容量を大容量化することなく、電源バスパンピングの発生を抑制することができる。
更に、デジタルパワーアンプ30は、入力端子Aから入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号(特に、周波数20Hz以下の信号)の電圧の一部をリミッタフィルター20で所定電圧値に制限するので、入力されたアナログ信号の低周波信号を所定量残した上で、ドライバー回路P1へ出力することができる。従って、デジタルパワーアンプ30は、入力されたアナログ信号の低周波信号をハイパスフィルターで一律に減衰させてドライバー回路P1へ出力する場合と比較して、デジタルパワーアンプ30により増幅されたアナログ信号の劣化を抑制することができる。
一方で、デジタルパワーアンプ30は、電源バスパンピングが発生していない場合には(電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下の場合には)、リミッタフィルター20で分配した低周波信号の電圧の一部を所定電圧値に制限することなく、リミッタフィルター20で高周波信号と合成して、ドライバー回路P1へ出力する。これにより、入力端子Aに入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号をリミッタフィルター20でほとんど減衰させずに、ドライバー回路P1へ出力する。従って、デジタルパワーアンプ30により増幅されたアナログ信号の劣化を抑制することができる。
次に、図4を参照して、第4実施形態のデジタルパワーアンプ40について説明する。図4は、デジタルパワーアンプ40の構成を示す回路図である。第4実施形態のデジタルパワーアンプ40は、第1実施形態のデジタルパワーアンプ1に設けられた電源電圧検出回路7を、正電源電圧+Vの電圧値の上昇を検出する正電源電圧検出回路41と、負電源電圧−Vの電圧値の上昇を検出する負電源電圧検出回路42とに分けたものである。よって、第4実施形態のデジタルパワーアンプ40では、第1実施形態のデジタルパワーアンプ1と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
デジタルパワーアンプ40は、正電源電圧検出回路41で電源回路2から供給される正電源電圧+Vの電圧値の上昇を検出し、負電源電圧検出回路42で電源回路2から供給される負電源電圧−Vの電圧値の上昇を検出しているので、正電源電圧+Vの電圧値と負電源電圧−Vの電圧値との両方が上昇した場合に加え、正電源電圧+Vの電圧値だけや、負電源電圧−Vの電圧値だけが上昇した場合でも、その電圧値の上昇を検出することができる。
正電源電圧検出回路41は、電源バスパンピングが発生し、電源回路2から供給される正電源電圧+Vの電圧値が上昇した場合に、その上昇を検出する回路である。正電源電圧検出回路41は、抵抗Rx2,R9,R10とNPN型のトランジスタTR2とスイッチSW4から構成されている。
抵抗Rx2の一端は、スイッチングFET1のドレイン端子D1、平滑コンデンサC1の一端、整流ダイオードDi1のカソード端子およびスイッチSW4の一端と接続されており、抵抗Rx2の他端は、抵抗R9の一端およびスイッチSW4の他端と接続されている。
抵抗R9の他端は、抵抗R10の一端およびトランジスタTR2のベース端子bと接続されている。また、抵抗R10の他端は、グランドされており、トランジスタTR2のエミッタ端子eも、グランドされている。トランジスタTR2のコレクタ端子cは、ハイパスフィルター5に設けられたスイッチSW1の制御端子SC1、負電源電圧検出回路42のトランジスタTR3のコレクタ端子cおよびヒステリシス制御回路8の入力端子と接続されている。そして、ヒステリシス制御回路8の出力端子は、スイッチSW4の制御端子SC4と、その制御端子SC4を駆動させる駆動回路(図示せず)を介して接続されている。
正電源電圧検出回路41の動作について説明する。正電源電圧検出回路41では、電源回路2から供給される正電源電圧+Vの電圧値の上昇が所定値以下であれば、(電源バスパンピングが発生しなければ)、ヒステリシス制御回路8によりスイッチSW4が遮断された状態となる。これにより、電源回路2から供給される正電源電圧+Vの電圧値が、抵抗Rx2,R9,R10で分圧される。このとき、抵抗R10に発生する電圧、即ちトランジスタTR2のバイアス電圧は、抵抗Rx2,R9,R10の分圧比により、トランジスタTR2の導通電圧未満に設定されているので、トランジスタTR2は遮断された状態となる。トランジスタTR2が遮断されていれば、トランジスタTR2のコレクタ端子cの電圧は不定となり、トランジスタTR2のコレクタ端子cに接続されたハイパスフィルター5のスイッチSW1が遮断する。よって、電源回路2から供給される正電源電圧+Vの電圧値の上昇が所定値以下であれば、正電源電圧検出回路41は、ハイパスフィルター5を不動作状態にする。
次に、アナログ信号に含まれる低周波信号(特に、周波数20Hz以下の信号)がデジタルパワーアンプ40の入力端子Aに入力され、電源バスパンピングが発生し、電源回路2から供給される正電源電圧+Vの電圧値が上昇すると、抵抗R10に発生する電圧、即ちトランジスタTR2のバイアス電圧が上昇する。そして、電源回路2から供給される正電源電圧+Vの電圧値が上昇して所定値を超えると、トランジスタTR2のバイアス電圧がトランジスタTR2の導通電圧以上となり、トランジスタTR2が導通する。これにより、トランジスタTR2のコレクタ端子cの電圧は動作電圧となり、トランジスタTR2のコレクタ端子cに接続されたハイパスフィルター5のスイッチSW1が導通する。よって、電源回路2から供給される正電源電圧+Vの電圧値が上昇して所定値を超えると、正電源電圧検出回路41は、ハイパスフィルター5を動作状態にする。なお、このとき、ヒステリシス制御回路8は、第1実施形態のデジタルパワーアンプ1と同様、スイッチSW4を導通させて(抵抗Rx2の一端と他端とをショートして)、電源回路2から供給される正電源電圧+Vを抵抗R9,R10で分圧する。
負電源電圧検出回路42は、電源バスパンピングが発生し、電源回路2から供給される負電源電圧−Vの電圧値が上昇した場合に、その上昇を検出する回路である。負電源電圧検出回路42は、抵抗Rx3,R11,R12とPNP型のトランジスタTR3とスイッチSW5から構成されている。
抵抗Rx3の一端は、スイッチングFET2のソース端子S2、平滑コンデンサC2の一端、整流ダイオードDi2のアノード端子およびスイッチSW5の一端と接続されており、抵抗Rx3の他端は、抵抗R11の一端およびスイッチSW5の他端と接続されている。
抵抗R11の他端は、抵抗R12の一端およびトランジスタTR3のベース端子bと接続されている。また、抵抗R12の他端は、グランドされており、トランジスタTR3のエミッタ端子eも、グランドされている。トランジスタTR3のコレクタ端子cは、ハイパスフィルター5に設けられたスイッチSW1の制御端子SC1、正電源電圧検出回路41のトランジスタTR2のコレクタ端子cおよびヒステリシス制御回路8の入力端子と接続されている。そして、ヒステリシス制御回路8の出力端子は、スイッチSW5の制御端子SC5と、その制御端子SC5を駆動させる駆動回路(図示せず)を介して接続されている。
負電源電圧検出回路42の動作について説明する。負電源電圧検出回路42では、電源回路2から供給される負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下であれば、(電源バスパンピングが発生しなければ)、ヒステリシス制御回路8によりスイッチSW5が遮断された状態となる。これにより、電源回路2から供給される負電源電圧−Vの電圧値が、抵抗Rx3,R11,R12で分圧される。このとき、抵抗R12に発生する電圧、即ちトランジスタTR3のバイアス電圧は、抵抗Rx3,R11,R12の分圧比により、トランジスタTR3の導通電圧未満に設定されているので、トランジスタTR3は遮断された状態となる。トランジスタTR3が遮断されていれば、トランジスタTR3のコレクタ端子cの電圧は不定となり、トランジスタTR3のコレクタ端子cに接続されたハイパスフィルター5のスイッチSW1が遮断する。よって、電源回路2から供給される負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下であれば、負電源電圧検出回路42は、ハイパスフィルター5を不動作状態にする。
次に、アナログ信号に含まれる低周波信号(特に、周波数20Hz以下の信号)がデジタルパワーアンプ40の入力端子Aに入力され、電源バスパンピングが発生し、電源回路2から供給される負電源電圧−Vの電圧値が上昇すると、抵抗R12に発生する電圧、即ちトランジスタTR3へのバイアス電圧が上昇する。そして、電源回路2から供給される負電源電圧−Vの電圧値が上昇して所定値を超えると、トランジスタTR3のバイアス電圧がトランジスタTR3の導通電圧以上となり、トランジスタTR3が導通する。これにより、トランジスタTR3のコレクタ端子cの電圧は動作電圧となり、トランジスタTR3のコレクタ端子cに接続されたハイパスフィルター5のスイッチSW1が導通する。よって、電源回路2から供給される負電源電圧−Vの電圧値が上昇して所定値を超えると、負電源電圧検出回路42は、ハイパスフィルター5を動作状態にする。なお、このとき、ヒステリシス制御回路8は、第1実施形態のデジタルパワーアンプ1と同様、スイッチSW5を導通させて(抵抗Rx3の一端と他端とをショートして)、電源回路2から供給される負電源電圧−Vを抵抗R11,R12で分圧する。
上述した通り、正電源電圧+Vの電圧値の上昇を正電源電圧検出回路41で検出し、負電源電圧−Vの電圧値の上昇を負電源電圧検出回路42で検出することで、正電源電圧+Vの電圧値だけや、負電源電圧−Vの電圧値だけが上昇して所定値を超えた場合でも、その電圧値の上昇を検出し、ハイパスフィルター5を動作状態にすることができる。なお、正電源電圧検出回路41のトランジスタTR2のコレクタ端子cと、負電源電圧検出回路42のトランジスタTR3のコレクタ端子cとは、並列接続されて、ハイパスフィルター5のスイッチSW1の制御端子SC1に接続されているので、電源バスパンピングが発生し、電源回路2から供給される正電源電圧+Vの電圧値と負電源電圧−Vの電圧値との両方が上昇して所定値を超えた場合にも、その電圧値の上昇を検出し、ハイパスフィルター5を動作状態にすることができる。
次に、図5を参照して、第5実施形態のデジタルパワーアンプ50について説明する。図5は、デジタルパワーアンプ50の構成を示す回路図である。第5実施形態のデジタルパワーアンプ50は、第1実施形態のデジタルパワーアンプ1に設けられた電源電圧検出回路7からスイッチSW2および抵抗Rxを削除して、ヒステリシス制御回路8を削除し、コントロール回路51を追加したものである。よって、第5実施形態のデジタルパワーアンプ50では、第1実施形態のデジタルパワーアンプ1と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
デジタルパワーアンプ50は、電源バスパンピングが発生し、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が上昇して所定値を超え、スイッチSW1が導通した後に、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下となっても、所定時間が経過するまでは、スイッチSW1を遮断せず、スイッチSW1を継続して導通させておき(ハイパスフィルター5を継続して動作させておき)、入力端子Aから入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号の減衰を継続させるものである。
固定式電源電圧検出回路53は、電源バスパンピングが発生し、電源回路2から供給される正電源電圧+Vの電圧値が上昇した場合に、その上昇を検出する回路である。なお、固定式電源電圧検出回路53は、電源電圧検出回路7からスイッチSW2および抵抗Rxを削除したものであり、正電源電圧+Vと負電源電圧−Vとの電位差の分圧比を調整できないことを除いては、電源電圧検出回路7と同一の回路構成(回路動作)であるので、その説明を書略する。なお、固定式電源電圧検出回路53のトランジスタTR1のコレクタ端子cは、コントロール回路51の入力端子と接続されている。
コントロール回路51は、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下となり、固定式電源電圧検出回路53のトランジスタTR1が遮断状態となっても、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下となってから所定時間が経過するまでは(本実施形態では、10秒間が経過するまでは)、スイッチSW1を継続して導通させ、ハイパスフィルター5を継続して動作状態にする回路である。コントロール回路51の入力端子は、固定式電源電圧検出回路53のトランジスタTR1のコレクタ端子cと接続され、コントロール回路51の出力端子は、スイッチSW1の制御端子SC1と、その制御端子SC1を駆動させる駆動回路(図示せず)を介して接続されている。
なお、コントロール回路51は、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が上昇して所定値を超え、固定式電源電圧検出回路53のトランジスタTR1が導通状態となった場合には、即座に、スイッチSW1を導通させ、ハイパスフィルター5を動作状態にする。
計時回路52は、コントロール回路51に内蔵される内部時計である。計時回路52は、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下となり、固定式電源電圧検出回路53のトランジスタTR1が遮断状態となると、計時を開始する。そして、計時回路52は、正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下となってからの経過時間が所定時間となると(本実施形態では、10秒間となると)、コントロール回路51へ所定時間が経過したことを示す信号を出力する。コントロール回路51は、この信号を受信すると、スイッチSW1を遮断して、ハイパスフィルター5を不動作状態にする。
上述した通り、デジタルパワーアンプ50によれば、電源バスパンピングが発生し、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が上昇して所定値を超え、スイッチSW1が導通した後に(ハイパスフィルター5が動作した後に)、正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下となっても、コントロール回路51は、正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下となってから所定時間が経過するまでは、スイッチSW1を継続して導通させておき(ハイパスフィルター5を継続して動作させておき)、入力端子Aから入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号の減衰を継続させる。
このように、デジタルパワーアンプ50によれば、ハイパスフィルター5が一旦動作状態となった場合には、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が所定値以下となっても、所定時間が経過するまでは、即ち、正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が十分抑制されるまでは、ハイパスフィルター5を継続して動作状態にしておくことができる。よって、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が十分に抑制されず、正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が不安定に変動しても(正電源電圧+Vと負電源電圧−Vとの電位差が不安定に変動しても)、ハイパスフィルター5が動作状態と不動作状態を繰り返すことを防止することができる。
以上、本実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
第3実施形態のデジタルパワーアンプ30においては、電源バスパンピングが発生し、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が上昇して所定値を超えていれば、分配用ローパスフィルター22で取り出した低周波信号の電圧の一部を、電圧制限回路23で所定電圧値に制限したが、これに限られるものではない。
電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が所定値を超えた場合に、正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が上昇していれば、電圧制限回路23は、分配用ローパスフィルター22で取り出した低周波信号の電圧の一部を制限する電圧を低くして、入力端子Aから入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号(特に、周波数20Hz以下の信号)の減衰量を増加させる。一方で、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が所定値を超えた場合に、正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が低下していれば、電圧制限回路23は、分配用ローパスフィルター22で取り出した低周波信号の電圧の一部を制限する電圧を高くして、入力端子Aから入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号の減衰量を減少させても良い。
この場合には、2つのダイオードが互いに逆方向に並列接続されて構成され、制限する電圧がそれぞれ異なる複数の電圧制限回路と、電源電圧検出回路7に設けられたトランジスタTR1のコレクタ端子cの電圧に応じてスイッチングを行うスイッチング素子とを電圧制限回路23に新たに設け、トランジスタTR1のコレクタ端子cの電圧に応じて(正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇に応じて)、スイッチング素子のスイッチングを切り換え、複数の電圧制限回路の内から1の電圧制限回路と接続を行って、低周波信号の電圧の一部を制限する電圧を切り換えれば良い。
このように構成することで、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が低下すると(正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇が抑制されると)、入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号の減衰量を減少して、正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値を緩やかに低下させることができる(正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値の上昇を緩やかに抑制することができる)。
また、第3実施形態のデジタルパワーアンプ30においては、電源バスパンピングが発生し、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が上昇して所定値を超えていれば、分配用ローパスフィルター22で取り出した低周波信号の電圧の一部を電圧制限回路23で所定電圧値に制限したが、これに限られるものではない。
即ち、第3実施形態のデジタルパワーアンプ30においては、電圧制限回路23に代えて、電源回路2から供給される正電源電圧+Vや負電源電圧−Vの電圧値が所定値を超えた場合には、分配用ローパスフィルター22で取り出した低周波信号の電圧の振幅を一律に減衰させる減衰回路を用いても良い。
第4実施形態のデジタルパワーアンプ40においては、入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号を減衰させるものとして、ハイパスフィルター5を用いたが、これに限られるものではない。即ち、第4実施形態のデジタルパワーアンプ40においては、ハイパスフィルター5に代えて、可変型ハイパスフィルター19やリミッタフィルター20を用いても良い。
同様に、第5実施形態のデジタルパワーアンプ50においては、入力されたアナログ信号に含まれる低周波信号を減衰させるものとして、ハイパスフィルター5を用いたが、これに限られるものではない。即ち、第5実施形態のデジタルパワーアンプ50においては、ハイパスフィルター5に代えて、可変型ハイパスフィルター19やリミッタフィルター20を用いても良い。