JP2009238576A - 全固体電池、全固体電池の製造方法及び電子伝導性付与方法 - Google Patents

全固体電池、全固体電池の製造方法及び電子伝導性付与方法 Download PDF

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Abstract

【課題】多孔質固体電解質の孔内に電極活物質が充填された電極部に電子伝導性を付与することができ、電池としての性能(放電容量)を向上させる。
【解決手段】多孔質固体電解質14を有する固体電解質構成体10を作製する。その後、多孔質固体電解質14の孔内に電極活物質16を充填して電極部18を形成する。その後、電極部18に溶液を供給(滴下)し、乾燥するという処理を数回〜10数回ほど繰り返して、多孔質固体電解質14中の固体電解質12と電極活物質16との界面に溶液を染み込ませる。その後、電極部18を熱処理して、固体電解質12と電極活物質16との界面に電子伝導層22を析出させて、電極部18に電子伝導性を付与する。
【選択図】図4

Description

本発明は、多孔質固体電解質の孔内に電極活物質が充填された電極部を有する全固体電池、その製造方法及び電子伝導性付与方法に関する。
近年、パーソナルコンピュータ、携帯電話等のポータブル機器の開発に伴い、その電源としての電池の需要が大幅に拡大している。このような用途に用いられる電池においては、イオンを移動させる媒体として、希釈溶媒に可燃性の有機溶媒を用いた液体の電解質(電解液)が従来使用されている。このような電解液を用いた電池においては、電解液の漏液等、発火、爆発等の問題を生ずる可能性がある。
このような問題を解消すべく、本質的な安全性確保のために液体の電解質に代えて固体電解質を使用するとともに、その他の要素の全てを固体で構成した全固体電池の開発が進められている。このような全固体電池は、電解質が固体である焼結したセラミックスにより形成されることから、漏液および発火の心配がない上、腐食による電池性能の劣化等の問題も生じ難いものである。なかでも、全固体リチウム二次電池は、容易に高エネルギー密度とすることが可能な二次電池として各方面で盛んに研究が行われている。
従来、全固体電池を試作する場合には、固体電解質の表面に電極活物質を平面に塗工し、これを焼成して電極を形成する方法を用いていたが、その場合の固体電解質と電極活物質の接合面積は、電極が形成される領域の平面積を超えるものではない。実際には、電極と固体電解質の粒子が接触する面積の合計となるため、上記した電極の表面の面積よりもさらに小さくなることが一般的であり、そのため、固体電解質と電極活物質との電荷移動抵抗は大きくなってしまう。
固体電解質と電極活物質の接触する面積を大きくして、固体電解質と電極活物質との電荷移動抵抗を小さくするために、全固体リチウム二次電池として、例えば多孔質固体電解質の孔内部に電極活物質を充填した以下のような電池が開示されている(例えば特許文献1及び2参照)。
このような電池では、固体電解質と電極活物質との接触面積は電極活物質の多孔体の表面積となるため、平面上に塗工する場合と比較すると、その電荷移動抵抗を小さくすることができる。
特開2000−311710号公報 特開2006−260887号公報
ところで、全固体電池の電池としての放電容量を向上させるには、電極部に電子伝導性を付与することが有効である。しかし、上述した特許文献1及び2には、電極表面での集電方法は記載されているが、多孔質固体電解質の孔内に電子伝導性を付与する方法について何ら明記されていない。
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、多孔質固体電解質の孔内に電極活物質が充填された電極部に電子伝導性を付与することができ、電池としての放電容量を向上させることができる全固体電池、全固体電池の製造方法及び電子伝導性付与方法を提供することを目的とする。
第1の本発明に係る全固体電池は、多孔質固体電解質の孔内に電極活物質が充填された電極部を有する全固体電池において、前記多孔質固体電解質の孔内部に電子伝導層が形成されていることを特徴とする。
そして、第1の本発明において、前記電子伝導層は、前記電極部に有機化合物を含む溶液を供給し、乾燥させ、その後、熱処理するという処理を少なくとも1回以上繰り返すことで形成されてもよい。この場合、前記有機化合物として、糖類を使用することができる。
また、第1の本発明において、前記多孔質固体電解質は、
LAGP:Li1+xAlxGe2-x(PO43
[但し、xは0≦x≦1である。]
又は
LATP:Li1+xAlxTi2-x(PO43
[但し、xは0≦x≦1である。]
であってもよい。
また、第1の本発明において、前記電極活物質は、
LVP:Lim2(PO43
[但し、1≦m≦5である。]
であってもよい。
次に、第2の本発明に係る全固体電池の製造方法は、多孔質固体電解質の孔内に電極活物質が充填された電極部を有する全固体電池の製造方法において、前記電極部に、有機化合物を含む溶液を供給し、乾燥させる第1工程と、前記第1工程を終えた前記電極部を不活性雰囲気又は還元雰囲気で熱処理する第2工程とを有することを特徴とする。
次に、第3の本発明に係る電子伝導性付与方法は、多孔質固体電解質の孔内に電極活物質が充填された電極部を有する全固体電池への電子伝導性付与方法において、前記電極部に、有機化合物を含む溶液を供給し、乾燥させるという第1工程と、前記第1工程を終えた前記電極部を不活性雰囲気又は還元雰囲気で熱処理する第2工程とを有することを特徴とする。
上述した第2及び第3の本発明において、前記有機化合物として、糖類を使用することができる。
また、第2及び第3の本発明において、前記多孔質固体電解質として、
LAGP:Li1+xAlxGe2-x(PO43
[但し、xは0≦x≦1である。]
又は
LATP:Li1+xAlxTi2-x(PO43
[但し、xは0≦x≦1である。]
を使用することができる。
また、第1の本発明において、前記電極活物質として、
LVP:Lim2(PO43
[但し、1≦m≦5である。]
を使用することができる。
以上説明したように、本発明に係る全固体電池、全固体電池の製造方法及び電子伝導性付与方法によれば、多孔質固体電解質の孔内に電極活物質が充填された電極部に電子伝導性を付与することができ、電池としての放電容量を向上させることができる。
以下、本発明に係る全固体電池、全固体電池の製造方法及び電子伝導性付与方法の実施の形態例を図1〜図8を参照しながら説明する。
先ず、多孔質固体電解質の孔内に電極活物質が充填された電極部を有する全固体電池において、電極部に電子伝導性を付与する方法として、以下の2種類の方法(第1方法及び第2方法)が考えられる。
第1方法は、上述した特許文献1に記載された固体電解質電池の電極(正極及び負極)に電子伝導性を付与するというものである。
特許文献1に記載された固体電解質電池は、正極活物質と無機酸化物との混合物、無機酸化物、及び負極活物質と無機酸化物との混合物をそれぞれシート状に成形して積層した後、相対密度が80%以上になるように焼成して、正極、固体電解質及び負極を形成するようにしている。
具体的に、正極は、特許文献1の段落[0023]にもあるように、先ず、正極活物質と無機固体電解質を混合してシート状電極を作製し、このシート状電極を450℃で20時間焼成した後、600℃で100kgf/cm2の加圧下で1時間焼成するようにしている。
通常、電極に電子伝導性を付与するためには、電子伝導助剤を用いることが考えられる。電子伝導助剤としては、アセチレンブラックやカーボンブラック等のカーボンが用いられる。
従って、特許文献1に記載された固体電解質電池の電極に電子伝導性を付与するためには、例えば正極活物質と無機酸化物との混合物を調合する際に、カーボンを添加する必要がある。しかし、その後の450℃での20時間の焼成、100kgf/cm2の加圧下での600℃の焼成によって、カーボンが分解してしまうという問題がある。仮に、不活性雰囲気で上述の熱処理を行うことで熱分解を回避したとしても、混合物の調合時にカーボンを添加することから、カーボンも均一に分散されてしまい、電子伝導性を得るにはかなりの量のカーボンを添加する必要があるという問題がある。
第2方法は、上述した特許文献2に記載された多孔質固体電極に電子伝導性を付与するというものである。
特許文献2に記載された多孔質固体電極は、特許文献2の段落[0038]〜[0041]にもあるように、ポリスチレン粒子堆積物に固体電解質のゾルを充填し、その後、ゾルをゲル化して、ポリスチレン粒子堆積物と固体電解質のゲルからなる複合体を作製する。その後、複合体を空気中450℃で1時間熱処理して、ポリスチレン粒子を除去し、さらに、1000℃で1時間熱処理することによって多孔質固体電解質を得る。そして、電極活物質のゾルを多孔質固体電解質に充填し、ゾルをゲル化した後、空気中700℃で1時間焼成して多孔質固体電極を得るようにしている。
従って、特許文献2に記載された多孔質固体電極に電子伝導性を付与するためには、多孔質固体電解質の孔内に電子伝導助剤(カーボン)を添加する必要があるが、多孔質固体電解質の孔径が小さかったり、カーボンが凝集粒を形成する等から、カーボンが入り込まない孔が点在する等、多孔質固体電解質に均一にカーボンを添加することは困難である。
そこで、本発明者らは、多孔質固体電解質の孔内に電極活物質が充填された電極部に電子伝導性を付与する方法として以下の方法を見い出した。
最初に、多孔質固体電解質を有する固体電解質構成体を作製する。多孔質固体電解質を有する固体電解質構成体の作製方法としては、固体電解質の結晶粉末を含むペーストをスクリーン印刷して作製する方法や多孔質固体電解質をポリスチレン粒子を用いたコロイド結晶鋳型法等、様々な方法があるが、代表的に1つの手法を以下に説明する。本発明はこの手法に限定されるものではない。
先ず、図1のステップS1において、例えばLAGP:Li1+xAlxGe2-x(PO43[但し、xは0≦x≦1である。]の結晶粉末を調製する。
その後、ステップS2において、LAGP結晶粉末を金型プレス成形によって圧粉ペレットに成形し、この圧粉ペレットを焼成して、LAGPの固体電解質焼成体を得る。
続いて、ステップS3において、LAGP結晶粉末を用いてスクリーン印刷用ペーストを調製する。多孔層に形成する細孔の設計に合わせて、LAGP結晶粉末に、バインダ成分、有機溶剤、造孔剤を混合してスクリーン印刷用ペーストを調製する。
その後、ステップS4において、得られたスクリーン印刷用ペーストを、固体電解質焼成体の表面にスクリーン印刷により塗工する。
その後、ステップS5において、スクリーン印刷用ペーストが塗工された固体電解質焼成体を熱処理して、図2に示すように、固体電解質構成体10を得る。このとき、固体電解質構成体10のうち、固体電解質焼成体に対応する部分が緻密性の固体電解質12となり、ペーストに対応する部分が多孔層、すなわち、多孔質固体電解質14となる。
上述の例では、固体電解質材料として、特に限定されず、今回はLAGPを用いたが、その他、LAMP:Li1+xAlx2-x(PO43[但し、xは0≦x≦1であり、MはGeのほかTiなど4価の遷移金属からなる]やLLT:Li3xLa2/3-xTiO3[但し、xは0≦x≦2/3である。]を用いてもよい。
その後、ステップS6において、図2に示すように、固体電解質構成体10の多孔質固体電解質14に電極活物質16を充填して電極部18(正極又は負極)を形成する。電極活物質16としては、例えばLVP:Lim2(PO43[但し、mは1≦m≦5である。]を使用することができる。また、電極活物質16の充填方法としては、例えば固体電解質構成体10の多孔質固体電解質14の孔内に電極活物質前駆体材料を含むゾルを充填し、その後、熱処理することで、多孔質固体電解質14の孔内に電極活物質16を充填することができる。電極活物質16の充填方法のその他の例としては、多孔質固体電解質14の孔内に該孔の径よりも小径の電極活物質材料の微粒子溶液を充填することが挙げられる。
そして、ステップS7以降において、電極部18への電子伝導性付与を行う。この電子伝導性付与は例えば2種類の方法があり、第1の方法(図1において(1)で示すルートを参照)は、先ず、ステップS7において、多糖類などの有機化合物を、該有機化合物を溶解することができる溶媒に溶かして、有機化合物を含む溶液を調製する。例えばグラニュー糖をイオン交換水に溶かして、グラニュー糖1wt%を含む溶液や、グラニュー糖10wt%を含む溶液等を調製する。
その後、ステップS8において、電極部18に溶液を供給(滴下)する。溶液を例えば5μリットルほど滴下する。
その後、ステップS9において、電極部18を乾燥する。例えば80℃で10分ほど乾燥する。
上述したステップS8及びステップS9の処理を数回〜数10回ほど繰り返す。例えば10回ほど繰り返す。ステップS8及びステップS9の処理を繰り返すことで、図3に示すように、多孔質固体電解質14中の固体電解質12と電極活物質16との界面に溶液20が染み込むことになる。
その後、ステップS10において、電極部18を熱処理する。例えば不活性雰囲気(例えばアルゴンガス中)又は還元雰囲気(例えば大気中)で600℃2時間の熱処理を行う。この熱処理を行うことで、図4に示すように、固体電解質12と電極活物質16との界面に電子伝導層22が形成され、電極部18(電極活物質16が充填された多孔質固体電解質14)に電子伝導性を付与させることができる。
一方、第2の方法(図1において(2)で示すルートを参照)は、先ず、ステップS7において、多糖類などの有機化合物を、該有機化合物を溶解することができる溶媒に溶かして、有機化合物を含む溶液を調製する。
その後、ステップS8において、電極部18に溶液を供給(滴下)する。溶液を例えば5μリットルほど滴下する。
その後、ステップS9において、電極部18を乾燥する。例えば80℃で10分ほど乾燥する。
その後、ステップS10において、電極部18を熱処理する。例えば不活性雰囲気(例えばアルゴンガス中)又は還元雰囲気(例えば大気中)で600℃2時間の熱処理を行う。
上述したステップS8〜ステップS10の処理を数回〜数10回ほど繰り返す。例えば10回ほど繰り返す。ステップS8〜ステップS10の処理を繰り返すことで、図3に示すように、多孔質固体電解質14中の固体電解質12と電極活物質16との界面に溶液20が染み込み、図4に示すように、固体電解質12と電極活物質16との界面に電子伝導層22が形成され、電極部18(電極活物質16が充填された多孔質固体電解質14)に電子伝導性を付与させることができる。
その後、ステップS11において、図5に示すように、固体電解質構成体10の多孔質固体電解質14とは反対側の面に、例えば金属膜24(例えば金属リチウム膜)による対極を形成する。または、電極活物質16をコーティングすることにより対極を形成してもよい。なお、「対極」とは、多孔質固体電解質14側の電極部18が負極であれば、正極を示し、多孔質固体電解質14側の電極部18が正極であれば、負極を示す。金属膜24として、例えば金属リチウム膜を形成する場合は、固体電解質12と金属膜24間の反応を防止するために、例えば電解液(1M LiClO4/EC+DEC)を含んだPMMAゲルを挟むようにしてもよい。
そして、ステップS12において、図5に示すように、電極部18の表面に第1集電部26を電気的に接続し、金属膜24の表面に第2集電部28を電気的に接続することによって、この段階で、全固体電池30が完成する。
このように、本実施の形態に係る全固体電池30においては、電極部18に染み込んだ有機化合物が熱処理されることにより電子伝導性が発現する。特に、本実施の形態では、固体電解質12と電極活物質16との界面に溶液20が染み込んで電子伝導層22が形成することから、電子伝導層22の連続性が引き起こされ、予め原料として電子伝導助剤を添加した場合よりも、電子伝導層の連続性が保たれ易いという特徴がある。これは、全固体電池30を作製した際に、その放電容量を向上できることにつながる。
[第1実験例]
次に、比較例1、2、実施例1〜5について、多孔質固体電解質14の抵抗率を測定した第1実験例を説明する。すなわち、この第1実験例では、比較例1、2と、実施例1〜5との効果を違いをより明確にするために、比較例1、2、実施例1〜5では、電極活物質16を充填しない状態の多孔質固体電解質14を用いて実験を行った。
先ず、上述した図1のステップS1〜ステップS5での処理を経ることによって、比較例1、2、実施例1〜5に係る固体電解質構成体10を作製した。多孔質固体電解質14の厚み、長さ、幅、面積、測定点間の距離は、比較例1、2、実施例1〜5共に同じとした。すなわち、多孔質固体電解質14の厚みは10μm、長さは1.05cm、幅は0.001cm、面積は0.00105cm2、測定点間の距離は0.8cmとした。
そして、比較例1及び2は、多孔質固体電解質14に対して電子伝導性付与を行わなかった。
実施例1及び2は、多孔質固体電解質14に対してグラニュー糖1wt%を含む水溶液を5μリットル滴下した後、80℃で10分ほど乾燥するという処理を10回繰り返し、その後、アルゴンガス中で600℃2時間の熱処理を行って電子伝導性付与を行った。
実施例3〜5は、多孔質固体電解質14に対してグラニュー糖10wt%を含む水溶液を5μリットル滴下した後、80℃で10分ほど乾燥するという処理を10回繰り返し、その後、アルゴンガス中で600℃2時間の熱処理を行って電子伝導性付与を行った。
また、比較例1は、測定点間に電圧1Vを60秒間印加し、電圧印加期間における電流値の変化を測定した。比較例2は、測定点間に電圧2Vを60秒間印加し、電圧印加期間における電流値の変化を測定した。
同様に、実施例1は電圧1V、実施例2は電圧0.5V、実施例3は電圧0.1V、実施例4は電圧0.2V、実施例5は電圧0.4Vを60秒間印加し、電圧印加期間における電流値の変化を測定した。
そして、比較例1、2、実施例1〜5共に、60秒経過時における電流値に基づいて抵抗(オーム)と抵抗率(オーム・cm)を求めた。
測定結果を以下の表1に示す。
Figure 2009238576
また、電圧印加期間(60秒)の電流値の変化を図6に示す。この図6において、実線Aが比較例1、実線Bが比較例2、実線Cが実施例1、実線Dが実施例2、実線Eが実施例3、実線Fが実施例4、実線Gが実施例5をそれぞれ示す。
測定結果(表1)から実施例1〜5は、抵抗率が比較例1及び2よりも大幅に低く、電子伝導性が向上していることがわかる。しかも、図6から比較例1及び2は、測定開始から電流値が急激に低下しているが、実施例1〜5は、60秒間にわたって一定の電流値であることがわかる。これは、安定した電力供給を望めることがわかる。
[第2実験例]
次に、比較例10と実施例10について、全固体電池の充放電特性を評価した第2実験例を説明する。
先ず、上述したステップS1〜ステップS5での処理を経ることによって、比較例10及び実施例10に係る固体電解質構成体10を作製した。その後、上述したステップS6を経ることによって、固体電解質構成体10の多孔質固体電解質14に電極活物質16を充填して電極部18(正極又は負極)を形成した。
その後、比較例10は、固体電解質構成体10の多孔質固体電解質14とは反対側の面に、(1M LiClO4/EC+DEC)溶液を含んだPMMAゲルを挟んだ後、金属膜24(例えば金属リチウム膜)による対極を形成し、さらに、電極部18と金属膜24にそれぞれ集電部を設置して全固体電池とした。
一方、実施例10は、電極部18を形成した後、ステップS8及びステップS9に示すように、電極部18にグラニュー糖5wt%を含む水溶液を5μリットル滴下した後、80℃で10分ほど乾燥するという処理を10回繰り返し、その後、アルゴンガス中で600℃2時間の熱処理を行って電子伝導性付与を行った。その後、固体電解質構成体10の多孔質固体電解質14とは反対側の面に、(1M LiClO4/EC+DEC)溶液を含んだPMMAゲルを挟んだ後、金属膜24(例えば金属リチウム膜)による対極を形成し、さらに、電極部18と金属膜24にそれぞれ集電部を設置して全固体電池とした。
そして、得られた比較例10に係る全固体電池及び実施例10に係る全固体電池に、CCCV(Constant Current Constant Voltage)方式にて充電(4.3V0.01/0.001mA)を行い、CCCV方式で放電(3.0V0.01/0.001mA)放電を行って、各全固体電池の充放電評価を行った。比較例10の評価結果を図7に示し、実施例10の評価結果を図8に示す。これら図7及び図8において、実線Hが第1回充電特性曲線を示し、実線Bが第1回放電特性曲線を示す。同様に、破線Cが第2回充電特性曲線を示し、破線Dが第2回放電特性曲線を示す。
図7に示すように、電子伝導性付与を行っていない比較例10は、容量が約40mAh/gであったが、電子伝導性付与を行った実施例10は、図8に示すように、容量が約80mAh/gで、2倍に増加していることがわかる。
なお、本発明に係る全固体電池、全固体電池の製造方法及び電子伝導性付与方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
本実施の形態に係る電子伝導性付与方法及び全固体電池の製造方法を示す工程ブロック図である。 固体電解質構成体の多孔質固体電解質に電極活物質を充填して電極部を形成した状態を示す説明図である。 電極部の固体電解質と電極活物質との界面に溶液が染み込んでいる状態を示す説明図である。 電極部の固体電解質と電極活物質との界面に電子伝導層が析出している状態を示す説明図である。 本実施の形態に係る全固体電池を一部省略して示す断面図である。 比較例1、2、実施例1〜5の電圧印加期間における電流値の変化を示すグラフである。 比較例10の充放電特性を示すグラフである。 実施例10の充放電特性を示すグラフである。
符号の説明
10…固体電解質構成体
12…固体電解質
14…多孔質固体電解質
16…電極活物質
18…電極部
20…溶液
22…電子伝導層
24…金属膜

Claims (8)

  1. 多孔質固体電解質の孔内に電極活物質が充填された電極部を有する全固体電池において、
    前記多孔質固体電解質の孔内部に電子伝導層が形成されていることを特徴とする全固体電池。
  2. 請求項1記載の全固体電池において、
    前記電子伝導層は、前記電極部に有機化合物を含む溶液を供給し、乾燥させ、その後、熱処理するという処理を少なくとも1回以上繰り返すことで形成されることを特徴とする全固体電池。
  3. 請求項2記載の全固体電池において、
    前記有機化合物は糖類であることを特徴とする全固体電池。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の全固体電池において、
    前記多孔質固体電解質は、
    LAGP:Li1+xAlxGe2-x(PO43
    [但し、xは0≦x≦1である。]
    又は
    LATP:Li1+xAlxTi2-x(PO43
    [但し、xは0≦x≦1である。]
    であることを特徴とする全固体電池。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の全固体電池において、
    前記電極活物質が、
    LVP:Lim2(PO43
    [但し、1≦m≦5である。]
    であることを特徴とする全固体電池。
  6. 多孔質固体電解質の孔内に電極活物質が充填された電極部を有する全固体電池の製造方法において、
    前記電極部に、有機化合物を含む溶液を供給し、乾燥させる第1工程と、
    前記第1工程を終えた前記電極部を不活性雰囲気又は還元雰囲気で熱処理する第2工程とを有することを特徴とする全固体電池の製造方法。
  7. 請求項6記載の全固体電池の製造方法において、
    前記有機化合物を含む溶液は糖類であることを特徴とする全固体電池の製造方法。
  8. 多孔質固体電解質の孔内に電極活物質が充填された電極部を有する全固体電池への電子伝導性付与方法において、
    前記電極部に、有機化合物を含む溶液を供給し、乾燥させる第1工程と、
    前記第1工程を終えた前記電極部を不活性雰囲気又は還元雰囲気で熱処理する第2工程とを有することを特徴とする電子伝導性付与方法。
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