JP2009237186A - ベルト定着装置および画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ベルト端部の破損を防止する構成としたベルト定着装置および画像形成装置の提供。
【解決手段】ベルト定着装置は、定着ローラ(図示しない)と、加熱ローラ35と、定着ローラおよび加熱ローラ間に張架される定着ベルト34と、定着ベルト34を介して定着ローラに押圧する加圧ローラ(図示しない)とを有する。加熱ローラ35の軸方向の少なくとも一端側に、定着ベルト34の斜行防止用のガイドリング40を設け、加熱ローラ35は、ガイドリング40の方向に斜行するように予め取り付け部に固定されており、所定のタイミングで逆回転制御される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ベルト端部の破損を防止する構成としたベルト定着装置および画像形成装置に関するものである。
電子写真方式の画像形成装置においては、記録材に対する定着装置としてベルト定着装置が用いられる場合がある。このようなベルト定着装置のベルトは、例えばステンレス鋼、ニッケルなどの基材にシリコンゴムを被着し、トナーに対する耐熱性と離型性が良好な耐熱離型層を形成して薄肉のエンドレスベルトとして作成されている。
ベルト定着装置では、ベルトの破損対策が課題となっている。その例として、特許文献1には、ベルト定着装置のベルト斜行によるベルト破損対策が記載されている。具体的には、加熱ローラの両端にガイドリングを設けると共に、ガイドリングの形状を改良し、ベルトが斜行してガイドリングに接触しても乗り上げ等による突発的な破損に至らない構成を提案している。
特許第3711717号公報
特許文献1の構成では、ベルトのガイドリングへの乗り上げ等による破損は生じないが、ベルトが斜行によりガイドリングに接触した状態で電源を遮断した際、熱収縮によるベルト端部の破損が発生する、という問題があった。このようなベルト破損の原因として、部材の線膨張係数が、加熱ローラ>定着ベルトの関係にある定着装置においては、冷却時に部材の熱収縮差分が応力として定着ベルト端部に繰り返し付与されるために、ベルトのせん断破損に至るものと考えられる。
本発明は従来技術のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ベルト端部の破損を防止する構成としたベルト定着装置および画像形成装置を提供することにある。
上記目的を達成する本発明のベルト定着装置は、定着ローラと、加熱ローラと、前記定着ローラおよび加熱ローラ間に張架される定着ベルトと、前記定着ベルトを介して前記定着ローラに押圧する加圧ローラとを有するベルト定着装置であって、前記定着ローラまたは加熱ローラの少なくとも一方のローラの軸方向の少なくとも一端側に前記定着ベルトの斜行防止用のガイドリングを設け、前記斜行防止用のガイドリングを備えた前記ローラは、前記ガイドリングの方向に斜行するように予め取り付け部に固定されており、前記斜行して固定されたローラは所定のタイミングで逆回転制御されることを特徴とする。
また、本発明のベルト定着装置は、前記所定のタイミングは、前記斜行して固定されたローラの回転終了後(ウォームアップ終了後または印字終了後)、電源投入後、節電モードからの復帰後のいずれかであることを特徴とする。
また、本発明のベルト定着装置は、前記斜行して固定されたローラの前記逆回転制御される時間を予め記憶部に記憶された逆回転時間に基づき前記ローラを逆回転制御することを特徴とする。
また、本発明のベルト定着装置は、前記定着ベルトと前記加熱ローラの軸方向長さと、前記定着ベルトの検出温度と、前記ローラの逆回転速度とが記憶部に記憶され、前記長さと前記検出温度と前記逆回転速度に基づいて前記ローラの逆回転時間が演算手段で演算されることを特徴とする。
また、本発明のベルト定着装置は、前記定着ベルトと前記ガイドリング間の前記定着ベルトが熱収縮時に破損しないための必要な間隙長と前記ローラの逆回転速度が記憶部に記憶され、前記間隙長と前記逆回転速度に基づいて前記ローラの逆回転時間が演算手段で演算されることを特徴とする。
また、本発明のベルト定着装置は、前記斜行して固定されるローラは、
加熱ローラであることを特徴とする。
また、本発明のベルト定着装置は、前記加熱ローラは、前記回転動作終了後に加熱して逆回転制御することを特徴とする。
本発明の画像形成装置は、感光体の周囲に帯電手段と、露光手段と、現像手段と、転写手段との各画像形成用ユニットを配した画像形成ステーション、および前記いずれか1項に記載のベルト定着装置を設け、転写媒体が前記ステーションを通過することにより、タンデム方式で画像形成を行うことを特徴とする。
本発明は、定着ベルト張架ローラ(定着ローラまたは加熱ローラ)のうち少なくとも1つのローラの、少なくとも一方の軸方向の少なくとも一端側に斜行防止用ガイドリングを有するベルト定着装置において、定着装置が回転動作する際に必ず一定の軸方向に斜行する様に組立調整すると共に、定着ベルト張架ローラの回転動作終了後、一定時間逆回転制御を行なうものである。
本発明の実施形態につき、図により説明する。図2において、ベルト張架ローラとして機能する定着ローラ31および加熱ローラ35間に、定着ベルト34が張架されている。加熱ローラ35内には、定着ヒータ36が設けられており、サーミスタ等の温度検出装置37により定着ベルト34の温度検出がなされている。定着ヒータ36は、例えばハロゲンランプが用いられている。加熱ローラ35の近傍には、過昇温防止装置38が設けられている。また、加熱ローラ35には、ベルトテンションバネ33aによりFtの押圧力が付与されており、定着ベルト34にテンションをかけている。加圧ローラ32は、加圧バネ33によりFpの押圧力が付与されている。
図1は、ベルト定着装置における加熱ローラ35と定着ベルト34の定着ユニットへの固定方法を示した説明図である。図1において、加熱ローラ35を固定するベアリング44はテンション板42に挿入されており、このテンション板42は定着フレーム41に対して一方向に移動可能に固定されている。テンション板42は、一端を定着フレーム41に固定されたテンションバネ46により一方向に付勢されている。このような構成により、定着ベルト34は加熱ローラ35と定着ローラの間で略一定のテンションで張架される。
ベアリング44は、耐熱性を考慮したグリスを封入した仕様を選択しているが、加熱ローラ35の表面温度は非常な高温に達するため、断熱ブッシュ43を介して加熱ローラ35の回転軸(フランジ部)に挿入されている。ガイドリング40は、加熱ローラ35の回転軸方向の少なくとも一端部側に回転及びスラスト方向への移動が可能な状態、すなわち、加熱ローラ35の回転軸との間に隙間が形成されるように設計されている。
これらのベルト定着装置の各部材について、更に詳細に説明する。図2で説明したように、定着ベルト34は定着ユニットに位置決めされた定着ローラ31と、テンションバネ33aにより一定方向に移動可能に付勢された加熱ローラ35間に張架されている。ベルトレイアウトの関係上、定着ローラ31と加熱ローラ35の間に中間ローラを設け、3本以上のローラに定着ベルト34が張架される構造をとる場合もある。
定着ローラ31は、ニップ幅を確保するために熱容量の大きな構造をとっている。熱容量の小さな加熱ローラ35に熱源を有し、定着ベルト34を介して定着ローラ31に伝熱させることで、ウォームアップ時間の短縮を図っている。加熱ローラ35は、図2の例では熱源である定着ヒータ36を内蔵しているが、加熱ローラ35の内外部に電磁誘導加熱(IH)方式の熱源を有する場合もある。
加熱ローラ35に巻き掛けられた定着ベルト34の表面に接触あるいは近接させて、表面温度を検出するサーミスタ等の温度検出装置37を配置している。この温度検出装置37の検出結果に基づいて熱源である定着ヒータ36をオン/オフし、所望の温度に維持すべく加熱ローラ35の温度制御を行なっている。加熱ローラ35の近傍には、異常発生時に火災等を防止する過昇温防止装置38が設けられている。
加圧ローラ32は、加圧バネ33により定着ベルト34を挟みながら定着ローラ31に押圧されている。加圧ローラ32と定着ローラ31はそれぞれ弾性体で形成されており、ニツプが形成される。図2の例では部材の硬度の大小は、加圧ローラ硬度>定着ローラ硬度、となっており、図2の様に下向きのニツプが形成される。高速機などにおいては、定着ローラ31や加圧ローラ32にも熱源を有する場合がある。駆動入力については、定着ローラ31が外部より歯車等で接続され駆動ローラとなる場合が多いが、加圧ローラ32に接続され駆動する場合もある。
次に、ベルト定着装置に使用される部材の材料などについて説明する。本発明の実施形態においては、定着ベルト34は、Ni電鋳基材にシリコンゴム弾性層を有し、更にフッ素樹脂離型層を有する3層ベルトを採用している。ウォームアップ時間短縮のため、定着ローラ31とは別に加熱ローラ35を有している。このため、加熱ローラ35からニツプ部に定着ベルト34を介して熱を伝達する必要があり、定着ベルト34の基材として比較的熱容量の大きな金属ベルトを採用している。これは、ポリイミドなどの樹脂ベルトでは熱容量が小さくニツプ部までに放熱してしまい、熱損失が大きいことによる。
定着ベルト34は、シームレス金属ベルトとして構成されており、前記のようにNi電鋳が使用されている。また同じ金属ベルトでもステンレスベルトを採用する場合、その硬さから曲率を小さくする必要があり、ローラの大径化および定着装置の大型化を必要とする。定着ベルトの弾性層は、画像面への密着性が高く画像品質を確保するために必要であり、また耐熱性に優れることからシリコンゴムを採用している。
定着ベルト34のフッ素樹脂離型層は、ニップ部で溶融したトナーをベルト表面から剥離するために必要であり、使用されている材料としてパーフルオロアルコキシアルカン樹脂(PFA)が採用されている。以前には、特許文献1に記載されているように、シリコンゴム弾性層にシリコンオイルを塗布して離型性を確保する方法があったが、シリコンオイルが用紙に付着し加筆性を損ねる事から最近では採用するケースは少なくなっている。
加熱ローラ35は、ウォームアップ時間の短縮のために、熱容量の小さな薄肉金属ローラを採用している。この薄肉金属ローラとして、軸方向の温度分布を均一にするために、熱伝導率の大きなアルミを採用している。定着ローラ31は、画像面の用紙剥離性を向上
する目的で、ニップ形状を図2に示されているように下向きに、または水平にする。そして、定着ローラ31の硬度を加圧ローラ32の硬度より小さくするため、スポンジローラなどが採用されている。加圧ローラ32としては、ゴムローラが採用される場合が多く、耐熱性の観点からシリコンゴムが使用されている。また、用紙裏面の汚れ対策が必要であり表面離型性を向上させるため、加圧ローラ32の表面にフッ素樹脂層を形成している。
定着ベルト34は、正規の状態では定着ローラ31と加熱ローラ35間で、ローラの軸方向に傾くことなく移送されている。しかしながら、例えば定着ベルト34を張架する2本のローラ(定着ローラ31と加熱ローラ35)の平行度が損なわれた場合には、定着ベルト34のローラの軸方向への斜行が発生する。このように斜行する定着ベルト34は、定着ローラ31と加熱ローラ35の少なくとも一方の張架ローラを逆回転させる事により、正回転時とは逆方向に定着ベルト34が移動する。
このことについて、図により説明する。図11(a)は、図2のベルト定着装置の一部を示す概略の側面図、図11(b)は、図11(a)の矢視Q方向からみた概略の正面図である。図11(b)では、定着ローラ31と加熱ローラ35の軸方向中心線の方向が水平(平行)に保たれて、アラインメントが取れた状態を示している。
図12(a)、図12(b)は、定着ローラ31と加熱ローラ35の軸方向中心線の方向がずれた状態、すなわち、両ローラのアライメントがずれた状態を示している。この例では、図12(b)に示されているように、加熱ローラ35のアライメントがずれている。図12(a)において、定着ローラ31が矢視Ra方向(時計回り方向)に回転する場合には、図12(b)に示されるように、定着ベルト34の内周面が加熱ローラ35を回転させようとする力Fが作用する。この力Fは、定着ローラ31の軸心に垂直方向に作用するため、アライメントのずれた加熱ローラ35の表面では、図12(b)に示されるように分力Fvが作用するため、加熱ローラ35は図中右方向に移動する。この時、反力が定着ベルト34に作用するため、定着ベルト34は図視左方向に移動する。
図13(a)、図13(b)は、図12(a)、図12(b)とは逆に、定着ローラ31が矢視Rb方向(反時計回り方向)に回転する例である。この場合には、図13(b)に示されるように定着ベルト34の内周面が加熱ローラ35を回転させようとする力F′が作用する。図12(b)で説明したと同様に、分力Fv’が作用し、加熱ローラ35は図視左方向に、定着ベルト34は右方向に移動する。このように、アライメントのずれにより、定着ベルト34が定着ローラ31と加熱ローラ35の少なくとも一方の張架ローラの軸方向一方端部に斜行する場合、駆動ローラの駆動回転方向を正逆反転することで、定着ベルト34の寄り方向(斜行方向)を正逆反転させることができる。
定着ベルト34の端部に印加される応力について、図3〜図6の説明図により説明する。図3は、冷熱時の加熱ローラ35の長さL(hr)と、定着ベルト34の長さL(fb)を示している。また、図4は、加熱時の加熱ローラ35の長さL’(hr)を示している。図3、図4の構成では、小サイズの記録材を通紙する際に、加熱ローラ35の軸方向の温度分布が均一になるように、熱伝導率の高いアルミを採用している。また、定着ベルト34には、加熱部からニツプ部まで温度維持可能なNi電鋳ベルトを採用している。
ヒータオンにより、加熱ローラ35は膨張を始める。図4のHa、Haは、加熱ローラ35の軸方向両端に向けての熱膨張を示している。加熱ローラ35が目的温度に到達した時点で、ΔL(hr)伸長するので、加熱ローラ35の全長は、
L’(hr)=L(hr)+ΔL(hr)
となる。以下、加熱ローラ35と定着ベルト34の線膨張係数の差による伸び量の関係について説明する。本発明の実施形態においては、問題となる熱収縮による応力が発生する
には、線膨張係数が、
加熱ローラ>定着ベルト
の関係となる場合である。
加熱ローラ35の昇温に伴い、これに巻き掛けられた定着ベルト34にも伝熱され、定着ベルト34も熱膨張が始まる。図4のBa、Baは、
ローラ両端方向への定着ベルト34の熱膨張を示している。定着ベルト34は、熱膨張により目的温度に到達した時点でΔL(fb)伸長するので、定着ベルト34の全長は、
L’(fb)=L(fb)+ΔL(fb)
となる。図4の構成で、加熱ローラ35にアルミを採用した場合のΔL(hr)の例について説明する。アルミの線膨張係数αaは、表1から24×10−6/℃である。加熱ローラ35の冷却時から加熱時までの温度差をΔtとする。このときに、ΔL(hr)は、
ΔL(hr)=L(hr)×Δt×αa
となる。
Figure 2009237186
したがって、加熱ローラ35を20℃から180℃まで加熱する例では、
ΔL(hr)=L(hr)×(180−20)×24×10−6
となる。定着ベルト34の伸長分のΔL(fb)は、線膨張係数をαb、加熱ローラ35の冷却時から加熱時までの温度差をΔtとすると、ΔL(fb)は、
ΔdL(fb)=L(fb)×Δt×αb
となる。定着ベルト34の材料としてNi電鋳を用いた場合には、表1からαb=15×10−6/℃であるから、この場合のΔL(fb)は、
ΔL(fb)=L(fb)×(180−20)×15×10−6
となる。このように、L(hr)とL(fb)が同じ長さの場合、加熱ローラの伸び量の方が大きくなる。
以上説明したように、ベルト定着装置は、例えば定着フレーム41の部品精度バラツキ等で定着ベルト34を張架するローラ対(この例では張架ローラとして用いる定着ローラ31と加熱ローラ35)の平行度がずれるために、張架ローラを回転させる際に、定着ベルト34のローラ軸方向への片寄り(斜行)が発生する。図5では、ベルト定着装置、あるいはこれを搭載する画像形成装置の組立工程において、ベルト定着装置が回転動作する際に予め定着ベルト34は加熱ローラ35の軸方向の図示右方向に片寄るように、定着ローラ31と加熱ローラ35の軸方向のアライメントを調整して組み立てられている。この際に、定着ベルト34の内面と接する加熱ローラ35にはネジの法則と同様の力が作用し、加熱ローラ35は軸方向の図示左方向に片寄る。Saは加熱ローラ35の移動方向、Sbは定着ベルト34の移動方向である。加熱ローラ35は、図1で説明したようにベアリング44によって定着ユニットに設置されており、軸方向には脱落しない構造になっている。
加熱ローラ35は、図5の右端に設けられている止め輪45がベアリング44に接するとそれ以上は軸方向に移動する事が出来なくなる構造である。このため、加熱ローラ35の回転時に、定着ベルト34が移動しようとする応力Fdが図示右側に設けられているガイドリング40に付与される。ガイドリング40は、強度、耐熱性、摺動性を兼ね備えた材料を選択することで、ガイドリング40、および定着ベルト34の破壊強度を高めると共に、定着ベルト34の巻き掛け端部でのそれぞれの磨耗を最小限に留める効果が得られる。
印字動作終了後、加熱ローラ35の回転駆動オフ、加熱ヒータオフとなった直後から、加熱状態にあった定着ベルト34、加熱ローラ35は熱収縮を開始する。加熱ローラ35の回転駆動オフと加熱ヒータ36をオフにするタイミングや、順序は適宜選定することができる。この際の熱収縮について、図6により説明する。加熱ローラ35は、図6の図示右側の止め輪45とベアリング44が拘束状態にあり、加熱ローラ35の熱収縮はこの拘束部に向けて作用する。定着ベルト34の内面と加熱ローラ35の外周面は、Fx=ベルトテンション力×相互間の静摩擦力、の力により強固に保持される。この状態で加熱ローラ35が拘束部に向けて熱収縮すると、定着ベルト34もこれと同じ様に拘束部に向け移動する。
前述の加熱ローラ35の熱膨張と熱収縮は可逆動作である。このため、同じ長さの加熱ローラ35と定着ベルト34が熱収縮した場合、加熱ローラ35の収縮量は定着ベルト34の収縮量より大きくなる。両者の収縮量の差分が、図6の図示右側の応力Ftとして、ガイドリング40に定着ベルト34が食い込むように付与される事になる。この応力Ftが繰り返し付与されると、定着ベルト34端部でのせん断破壊が生じることになる。
図7は、定着ベルト34が張架ローラの軸方向一方端部に斜行する寄り応力の測定例を示す説明図である。ベルトの寄り応力を測定するための測定治具53は、ガイドリング40に固定されている。この測定治具53は、リニアブッシュ等によりベルト定着装置(加熱ローラ35)と略平行に負荷無く移動可能に設置されている。また測定治具53には、測定治具53に掛かる水平方向の応力Fyを測定するためのフォースゲージ52が接続されている。Feは定着ベルト34の寄り応力である。
図8は、定着ベルト34の寄り速度と定着ベルト34の寄り応力を測定した結果のグラフの例を示す特性図である。ベルト定着装置のアライメントを操作し、ベルトの寄り速度を変化させ、8点でのベルトの寄り応力の測定を実施した。横軸がベルトの寄り速度(V)であり、縦軸がベルトの寄り応力(P)である。特性Exは実測値を示し、特性Eyは実測値の傾向を示している。全体的には、ベルトの寄り応力は、ベルトの寄り速度の一次関数で示されることがわかる。
本発明の実施形態においては、前記したようにベルト定着装置、あるいはこれを搭載する画像形成装置の組立工程において、ベルト定着装置が回転動作する際に必ず張架ローラの軸方向の一定の方向に斜行する様に組立(アライメント)調整を行なう。すなわち、通常は定着ローラと張架ローラの軸方向を揃えてアライメントがずれないように組み立てているが、本発明の実施形態においては、予め定着ローラ31と加熱ローラ35の軸方向のアライメントをずらして取り付け部に組み立てる点に特徴がある。ここで、定着ローラ31と加熱ローラ35はいずれも定着ベルト34の張架ローラとして機能しているが、本発明の実施形態においては、これらの張架ローラの少なくとも一方の軸方向を一方端部方向に傾斜して取り付け部に固定する。
そして、定着ベルト34が回転動作終了後、張架ローラの軸方向への斜行によりガイドリング40に接触した状態から逆回転動作を行なう事で、定着ベルト34は正回転時とは
逆方向に張架ローラの軸方向へ移動する。これにより定着ベルト34はガイドリング40に接触した状態から開放され、定着ベルト34とガイドリング40の間に隙間が生じることになる。このため、定着ベルト34の破損を防止することができる。
また本発明では、前述の組立調整修了後に定着ベルト34が張架ローラの軸方向へ移動するベルトの寄り速度を測定する事で、逆回転時間を決定する。ここで、べルトの寄り速度は、ベルト端部を拡大表示可能なCCDカメラ等で確認し、一定の距離をベルトが移動する時間を測定してべルトの寄り速度として割り出すことができる。図3〜図6で説明したように加熱ローラ35と定着ベルト34の材料(熱膨張係数)及び軸方向の寸法から、熱収縮時に破損が生じないようにする定着ベルト34とガイドリング40の必要隙間量は算出できる。したがって、ベルトの寄り速度をv、必要隙間量をdとすれば、この必要隙間量の分だけ移動させるのに必要な逆回転駆動時間tは、t=d/v、で求めることができる。
このように、定着ベルト34が張架ローラの一方の軸方向に斜行する様に組立調整を行ない、張架ローラの回転動作終了後に逆回転制御を実施すれば、定着ベルト34とガイドリング40の間に一定の隙間が生じる。張架ローラ及び定着ベルト34の形状と寸法から熱収縮時に生じる収縮差分寸法が算出可能であり、前述のベルトの寄り速度の測定結果から逆回転に必要な時間が算出でき、その時間張架ローラを逆回転制御する事により熱収縮によるベルト端部の破損を防止する事ができる。
本発明の実施形態においては、張架ローラの回転動作終了後、電源投入後、節電モードからの復帰後のいずれかに逆回転制御を行っているが、ここで、「回転動作終了後」の意義について説明する。画像形成装置の動作においては、種々の態様が想定される。例えば、電源投入後、ウォームアップ動作終了後、節電モード(待機モード)からの復帰後、印字動作終了後などである。印字動作終了後、通常は張架ローラが回転状態のまま、定着ベルト34が所定の安定温度に達するまで加熱させ、安定温度に達すると加熱を終了すると共に回転を停止する。これは加圧部材の温度を保持する目的や、定着ベルト全周での温度分布を均一化する目的などで実施されている。
本発明の実施形態においては、印字動作終了後すぐに回転動作を終了させた状態で加熱ヒータ36による加熱を実施させる。これにより、加熱するΔt時間だけ加熱ローラ35と定着ベルト34の熱膨張差が生じる事で、定着ベルト34とガイドリング40の間に隙間が生じることになる。仮に回転状態のまま加熱させて安定温度に達する場合には、定着ベルト34の斜行により定着ベルト34とガイドリング40の間に隙間はない事になる。このため、回転動作を終了後の加熱と、回転状態のままの加熱との両者では、熱収縮に対して必要な逆回転時間に差が生じ、本発明の実施形態の方が逆回転時間を短い時間とすることができる。
ベルト定着装置においては、寿命は定着ローラ等の回転時間に比例する。このため、本発明においても逆転を含め、回転時間が短いほど寿命に対して有利となる。また、逆回転時間を短くするにはベルトの寄り速度を大きくする必要がある。しかしながら、ベルトの寄り速度を大きくすると、回転時のベルトの寄り応力が大きくなる事から、定着ベルト端部に波打ちやクラックが生じる可能性がある。そのため、ベルト定着装置の想定寿命内で定着ベルト34の強度の許容範囲を満足できるような、ベルトの寄り応力の最大値を規定し、その応力以下となるベルトの寄り速度に合わせてアライメント調整を実施する。
図9は、本発明の実施形態を示すブロック図である。図9において、ベルト定着装置の制御装置50には、記憶部52、判断処理部53、駆動部54を有している。入力装置55は、例えば定着ベルト34と加熱ローラ35の軸方向長さや定着ベルト34とガイドリ
ング40間の定着ベルト40が熱収縮時に破損しないための必要な間隙長、張架ローラの逆回転速度または逆回転時間などのパラメータを入力する。入力装置55からの入力情報と温度検出装置37による定着ベルト34の温度の検出結果は、記憶部52に記憶される。
判断処理部53は、記憶部52に記憶されている定着ベルト34と加熱ローラ35の軸方向長さや定着ベルト34とガイドリング40間の定着ベルト40が熱収縮時に破損しないための必要な間隙長、温度検出装置37の検出温度、張架ローラの逆回転速度などのパラメータから、定着ベルト34の張架ローラ(定着ローラ31または加熱ローラ35)の逆回転時間を演算し、駆動部54に制御信号を出力する。記憶部52に逆回転時間が記憶されている場合は、駆動部54に逆回転時間の制御信号を出力する。駆動部54は、この制御信号により所定時間張架ローラを所定速度で駆動する駆動モータ56を逆回転制御する。なお、記憶部52、判断処理部53、駆動部54は、ベルト定着装置または画像形成装置に備えられていればよい。また、入力装置55は、ベルト定着装置または画像形成装置に入力情報を入力するときに接続可能なものでもよい。
図10は、本発明の実施形態であるタンデム式画像形成装置の一例を示す縦断側面図である。この画像形成装置1は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するか、または、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成する。この画像形成装置1は、ローラ82,83に掛け渡されて所定の方向D2に周回移動する中間転写ベルト81に沿って、4組の
画像形成ステーション10Y,10M,10Cおよび10Kが配列されて、タンデム方式のカラー画像形成装置を構成している。各画像形成ステーション10Y,10M,10Cおよび10Kは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラック色のトナーを内部に貯留して当該トナー色の単色トナー像を形成する。
カラー画像形成時において、各画像形成ステーションにより形成された各色の単色トナー像は、中間転写ベルト81上で互いに重ね合わされ、これにより中間転写ベルト81上にカラー画像が形成される。紙、透明シートなどの記録材が、給紙カセット77から給紙ローラ79の回転により1枚ずつ取り出されて、二次転写ローラ841と中間転写ベルト81とのニップ部である二次転写領域TR2に搬送される。前記のようにして中間転写ベ
ルト81上に形成されたカラー画像は、二次転写領域TR2で記録媒体上に転写される。
画像を転写された記録媒体は、定着ユニット13を通過して、画像形成装置上部の排紙トレイ4に排出される。
二次転写ローラ841は、ローラ支持アーム84に回転自在に装着されており、必要に応じ該アーム84が所定の遥動軸中心に遥動することにより、中間転写ベルト81表面に対し離当接移動する。また、ローラ83の近傍には、中間転写ベルト81の回転位相を検出するための垂直同期センサ26が設けられている。垂直同期センサ26は、例えばフォトインタラプタからなり、中間転写ベルト81の周縁部の一部に設けられた、図示を省略する突起部または切り欠き部の通過を検出する。すなわち、垂直同期センサ26は、中間転写ベルト81の回転周期に同期した垂直同期信号Vsyncを出力する。
また、ローラ83に巻き掛けられた中間転写ベルト81の表面に向けて、2つの位置検出センサ25L,25Rがローラ83の軸方向(紙面に垂直な方向)に互いに位置を異ならせて配置されている。位置検出センサ25は例えば反射型フォトセンサからなり、中間転写ベルト81との対向位置において、中間転写ベルト81表面の反射率の変化から、中間転写ベルト81上に担持されたトナー像の通過の有無を検出する。さらに、中間転写ベルト81の移動方向において位置検出センサ25L,25Rの下流側には、クリーナ71が設けられており、中間転写ベルト81上に残留付着するトナーがクリーナ71により清
掃除去される。なお、本発明の実施形態であるタンデム式画像形成装置の一例を示したが、ロータリー式画像形成装置にも用いてもよい。
以上、本発明のベルト定着装置および画像形成装置をその原理と実施例に基づいて説明してきたが、本発明はこれら実施例に限定されず種々の変形が可能である。
本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す説明図である。 本発明の実施形態を示す特性図である。 本発明の実施形態を示すブロック図である。 本発明の電子写真プロセスを用いた画像形成装置の1実施例の全体構成を示す模式的断面図である。 本発明の関連技術を示す説明図である。 本発明の関連技術を示す説明図である。 本発明の関連技術を示す説明図である。
符号の説明
10Y、10M、10C、10K・・・画像形成ステーション、30・・・ベルト定着装置、31・・・定着ローラ、32・・・加圧ローラ、34・・・定着ベルト、35・・・加熱ローラ、37・・・温度検出装置、40・・・ガイドリング、41・・・定着フレーム、42・・・テンション板、43・・・断熱ブッシュ、44・・・ベアリング、45・・・止め輪、50・・・制御装置、52・・・記憶部、53・・・判断処理部、54・・・駆動部、56・・・駆動モータ

Claims (8)

  1. 定着ローラと、加熱ローラと、前記定着ローラおよび加熱ローラ間に張架される定着ベルトと、前記定着ベルトを前記定着ローラに押圧する加圧ローラとを有するベルト定着装置であって、
    前記定着ローラまたは加熱ローラの少なくとも一方のローラの軸方向の一端側に前記定着ベルトの斜行防止用のガイドリングを設け、前記斜行防止用のガイドリングを備えた前記ローラは、前記ガイドリングの方向に斜行するように予め取り付け部に固定されており、前記斜行して固定されたローラは所定のタイミングで逆回転制御されることを特徴とする、ベルト定着装置。
  2. 前記所定のタイミングは、前記斜行して固定されたローラの回転終了後(ウォームアップ終了後または印字終了後)、電源投入後、節電モードからの復帰後のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載のベルト定着装置。
  3. 前記斜行して固定されたローラの前記逆回転制御される時間を予め記憶部に記憶された逆回転時間に基づき前記ローラを逆回転制御することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のベルト定着装置。
  4. 前記定着ベルトと前記加熱ローラの軸方向長さと、前記定着ベルトの検出温度と、前記ローラの逆回転速度とが記憶部に記憶され、前記長さと前記検出温度と前記逆回転速度に基づいて前記ローラの逆回転時間が演算手段で演算されることを特徴とする、請求項2に記載のベルト定着装置。
  5. 前記定着ベルトと前記ガイドリング間の前記定着ベルトが熱収縮時に破損しないための必要な間隙長と前記ローラの逆回転速度が記憶部に記憶され、前記間隙長と前記逆回転速度に基づいて前記ローラの逆回転時間が演算手段で演算されることを特徴とする、請求項2に記載のベルト定着装置。
  6. 前記斜行して固定されるローラは、加熱ローラであることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のベルト定着装置。
  7. 前記加熱ローラは、前記回転動作終了後に加熱して逆回転制御することを特徴とする、請求項2〜請求項6のいずれか1項に記載のベルト定着装置。
  8. 感光体の周囲に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段のうち少なくとも1つ以上を備えた各画像形成用ユニットとおよび前記請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のベルト定着装置とを設け、前記画像形成用ユニットで形成された画像を記録媒体に転写することにより、画像形成を行うことを特徴とする、画像形成装置。
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