JP2009236958A - 液晶配向剤、液晶配向膜の形成方法および液晶表示素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上記液晶配向剤は、(A)X−Si(CH3)3−n−Yn(式(1)中、Xは桂皮酸骨格を有する1価の有機基であり、複数のYは、それぞれ、塩素原子または炭素数1〜20のアルコキシル基であり、nは1〜3の整数である。)で表される化合物を含むシラン化合物を加水分解・縮合して得られるポリオルガノシロキサンならびに(B)下記式(S−1)
(式(S−1)中、X1水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基または炭素数6〜20のアリール基であり、Y1は水酸基または炭素数1〜10のアルコキシル基である。)
で表されるポリシロキサン、その加水分解物および加水分解物の縮合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【選択図】なし
Description
このような液晶セルにおいては、液晶分子を基板面に対し所定の方向に配向させるため、基板表面に液晶配向膜を設ける必要がある。この液晶配向膜は、通常、基板表面に形成された有機膜表面をレーヨン等の布材で一方向にこする方法(ラビング法)により形成されている。しかし、液晶配向膜の形成をラビング処理により行うと、工程内でほこりや静電気が発生し易いため、配向膜表面にほこりが付着して表示不良発生の原因となるという問題があった。特にTFT(Thin Film Transistor)素子を有する基板の場合には、発生した静電気によってTFT素子の回路破壊が起こり、歩留まり低下の原因となるという問題もあった。さらに、今後ますます高精細化される液晶表示素子においては、画素の高密度化に伴い基板表面に凹凸が生じるために、均一にラビング処理を行うことが困難となりつつある。
液晶セルにおける液晶を配向させる別の手段として、基板表面に形成したポリビニルシンナメート、ポリイミド、アゾベンゼン誘導体等の感光性薄膜に偏光または非偏光の放射線を照射することにより、液晶配向能を付与する光配向法が知られている。この方法によれば、静電気やほこりを発生することなく、均一な液晶配向を実現することができる(特許文献3〜13参照)。
ところで、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型等の液晶セルにおいては、液晶配向膜は、液晶分子を基板面に対して所定の角度で傾斜配向させる、プレチルト角特性を有する必要がある。光配向法により液晶配向膜を形成する場合においては、プレチルト角は、通常、照射する放射線の基板面への入射方向を基板法線から傾斜させることにより付与される。
前記光配向法は、垂直配向モードの液晶セルにおいて液晶分子の傾き方向を制御する方法としても有用であることが知られている。すなわち、光配向法により配向規制能およびプレチルト角発現性を付与した垂直配向膜を用いることにより、電圧印加時の液晶分子の傾き方向を均一に制御できることが知られている(特許文献11〜12および14〜16参照)。
このように、光配向法により製造した液晶配向膜は、各種の液晶表示素子に有効に適用されうるものである。しかしながら、従来の光配向膜には、大きなプレチルト角を得るのに必要な放射線照射量が多いという問題があった。例えば、アゾベンゼン誘導体を含有する薄膜に光配向法によって液晶配向能を付与する場合、十分なプレチルト角を得るためにはその光軸が基板法線から傾斜された放射線を10,000J/m2以上照射しなければならないことが報告されている(特許文献13〜14および非特許文献1参照)。
(A)下記式(1)
で表される化合物を含むシラン化合物を加水分解・縮合して得られるポリオルガノシロキサン、ならびに
(B)下記式(S−1)
で表されるポリシロキサン、その加水分解物および加水分解物の縮合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する液晶配向剤によって達成される。
本発明の上記目的は、第2に、
基板上に、上記の液晶配向剤を塗布して塗膜を形成し、該塗膜に放射線を照射する液晶配向膜の形成方法によって達成される。
本発明の上記目的は、第3に、
上記の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備する液晶表示素子によって達成される。
本発明の液晶配向膜は、
(A)上記式(1)で表される化合物を含むシラン化合物を加水分解・縮合して得られるポリオルガノシロキサン(以下、「桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサン」という。)、ならびに
(B)上記式(S−1)で表されるポリシロキサン、その加水分解物および加水分解物の縮合物よりなる群から選択される少なくとも1種(以下、「他のポリシロキサン」という。)を含有する。
<(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサン>
本発明で使用される(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンは、上記式(1)で表される化合物を含むシラン化合物を加水分解・縮合することにより得ることができる。
[上記式(1)で表される化合物]
上記式(1)におけるYとしては、メトキシル基またはエトキシル基が好ましい。
nとしては、2または3が好ましく、3が特に好ましい。
上記式(1)で表される化合物は、好ましくは下記式(2)〜(5)
のいずれかで表される化合物である。
上記式(2)におけるR1の炭素数1〜40のアルキル基としては、例えば炭素数1〜20のアルキル基、ただしこのアルキル基の水素原子の一部または全部はフッ素原子により置換されていてもよい、であることが好ましい。かかるアルキル基の例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ラウリル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、4,4,4−トリフロロブチル基、4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンチル、4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2−(パーフルオロブチル)エチル基、2−(パーフルオロオクチル)エチル基、2−(パーフルオロデシル)エチル基等を挙げることができる。R1の脂環式基を含む炭素数3〜40の1価の有機基としては、例えばコレステニル基、コレスタニル基、アダマンチル基、下記式(α−1)または(α−2)
で表される基等を挙げることができる。
R3の2価の芳香族基としては、例えば1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン基等を;R3の2価の脂環式基としては、例えばトランス1,4−シクロヘキシレン、トランス−トランス−1,4−ビシクロヘキシレン等を;R3の2価の複素環式基としては、例えば1,4−ピリジレン基、2,5−ピリジレン基、1,4−フラニレン基等を;R3の2価の縮合環式基としては、例えばナフチレン基等を、それぞれ挙げることができる。R3としては、1,4−フェニレン基またはトランス−1,4−シクロヘキシレン基が好ましい。
R4としては−COO−または−OCO−が好ましい。
R5の2価の有機基としては、例えば下記式(a−1)〜(a−5)
のそれぞれで表される基等を、好ましいものとして例示することができる。
R7としてはフッ素原子が好ましい。
aは0または1が好ましい。
bは0または1が好ましい。
上記式(2)で表される化合物のうち、例えば下記式(2−1)〜(2−48)
のそれぞれで表される化合物等を、好ましいものとして例示することができる。
上記式(3)におけるR8は、上記式(2)におけるR1について上記したところと同様である。R12の2価のアルキレン基としては、炭素数2〜10のアルキレン基を挙げることができる。
上記式(3)で表される化合物のうち、例えば下記式(3−1)および(3−2)
のそれぞれで表される化合物を挙げることができる。
上記式(4)におけるR15およびR16が互いに結合して環を形成する場合、形成される環としては、シクロヘキシル環またはベンゼン環が好ましい、R17はフッ素原子が好ましい、R18としては、上記式(a−1)〜(a−5)のいずれかで表される基が好ましい、eは0または1が好ましい。
上記式(4)で表される好ましい化合物の例として、例えば下記式(4−1)〜(4−30)
のそれぞれで表される化合物を挙げることができる。
上記式(5)で表される化合物としては、例えば下記式(5−1)〜(5−18)
のそれぞれで表される化合物を挙げることができる。
[上記式(1)で表される化合物の合成方法]
上記式(1)で表される化合物は、それぞれ有機化学の定法を組み合わせて利用することにより、合成することができる。
例えば上記式(2−1)で表される化合物は、例えば以下の方法により合成することができる。先ず、4−ヒドロキシ桂皮酸をハロゲン化アルカン(ハロゲン原子としては、臭素原子またはヨウ素原子が好ましい。)とを、好ましくは炭酸カリウム等の適当な塩基の存在下で反応させ、次いでアルカリ水で加水分解を行うことにより、中間体4−アルコキシ桂皮酸を得る。次いでこの4−アルコキシ桂皮酸と末端にビニル基を有するハロゲン化物(例えば4−ブロモ−1−ブテン等)とを、好ましくは炭酸カリウム存在下で反応させて得た生成物を、続いて好ましくはヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物、白金カルボニルビニルメチル錯体等の適当な触媒を用いてトリアルコキシシランと反応させることにより、上記式(2−1)で表される化合物を合成することができる。
これに準じた方法により、上記式(2−2)〜(2−6)、(2−31)〜(2−33)、(2−46)〜(2−48)、(3−1)、(4−1)〜(4−5)、(4−26)、(5−1)〜(5−4)、(5−9)および(5−14)〜(5−16)のそれぞれで表される化合物を合成することができる。
これに準じた方法により、上記式(2−8)〜(2−12)、(2−34)〜(2−36)、(4−6)〜(4−10)、(4−27)、(5−5)および(5−10)のそれぞれで表される化合物を合成することができる。
上記式(2−13)で表される化合物は、例えば上記中間体4−アルコキシ桂皮酸に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシランを付加することにより合成することができる。このとき、イミダゾールやテトラブチルアンモニウムブロミド等の適当な触媒を加えてもよい。
これに準じた方法により、上記式(2−14)〜(2−18)、(2−37)〜(2−39)、(4−11)〜(4−15)、(4−28)、(5−6)および(5−11)のそれぞれで表される化合物を合成することができる。
上記式(2−19)で表される化合物は、例えば上記中間体4−アルコキシ桂皮酸に炭酸カリウム存在下でビニルブロミドを反応させて得た生成物に、例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなチオールを有するアルコキシシランをマイケル付加することにより合成することができる。このとき触媒として、トリエチルアミンのような塩基を存在させてもよい。
これに準じた方法により、上記式(2−20)〜(2−24)、(2−40)〜(2−42)、(3−2)、(4−16)〜(4−20)、(4−29)、(5−8)および(5−13)のそれぞれで表される化合物を合成することができる。
これに準じた方法により、上記式(2−26)〜(2−30)、(2−43)〜(2−45)、(4−21)、(4−25)、(4−30)、(5−7)および(5−12)のそれぞれで表される化合物を合成することができる。
上記式(5−17)で表される化合物は、例えば以下の方法により合成することができる。先ず、4−エチニルフタル酸無水物と4−アミノ桂皮酸とを、例えばトリエチルアミン存在下において、ジエチルベンゼン中で脱水しながら反応させた後、好ましくは炭酸カリウム下でさらにハロゲン化アルカンを反応させることにより、下記式(5c)
で表される化合物を中間体として得る。次いでこの中間体を、例えばヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物、白金カルボニルビニルメチル錯体などの適宜の触媒の存在下でトリアルコキシシランと反応させることにより、合成することができる。
上記式(5−18)で表される化合物は、例えば上記式(5c)で表される中間体に、例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなチオールを有するアルコキシシランをマイケル付加することにより、合成することができる。このとき触媒としてトリエチルアミンのような塩基を存在させてもよい。
本発明で使用される(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンは、上記式(1)で表される化合物を含むシラン化合物を加水分解・縮合することにより、合成することができる。
(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜100,000であることが好ましく、1,000〜10,000であることがより好ましく、さらに1,000〜5,000であることが好ましい。
このような(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンは、好ましくは上記式(1)で表される化合物と他のシラン化合物の混合物を、好ましくは適当な有機溶媒、水および触媒の存在下において加水分解または加水分解・縮合することにより合成することができる。
ここで使用することのできる他のシラン化合物としては、例えば3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、テトラクロロシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、トリクロロシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリ−n−プロポキシシラン、トリ−i−プロポキシシラン、トリ−n−ブトキシシラン、トリ−sec−ブトキシシラン、フルオロトリクロロシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、フルオロトリ−n−プロポキシシラン、フルオロトリ−i−プロポキシシラン、フルオロトリ−n−ブトキシシラン、フルオロトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−i−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリクロロシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリメトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリエトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、
(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンを合成するにあたって使用される他のシラン化合物の使用割合は、好ましくは上記式(1)で表される化合物の1モルに対し0〜100モルであり、より好ましくは1〜20モルであり、さらに好ましくは2〜10モルである。
上記炭化水素としては、例えばトルエン、キシレン等;上記ケトンとしては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等;上記エステルとしては、例えば酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチル等;上記エーテルとしては、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等;上記アルコールとしては、例えば1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等を、それぞれ挙げることができる。これらのうち非水溶性のものが好ましい。
これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
有機溶媒の使用割合としては、全シラン化合物の100重量部に対して、好ましくは10〜10,000重量部であり、より好ましくは50〜1,000重量部である。
(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンを製造する際の水の使用量は、全シラン化合物に対して、好ましくは0.5〜100倍モル、より好ましくは1〜30倍モルである。
上記アルカリ金属化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等を挙げることができる。
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロールの如き1〜2級有機アミン;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンの如き3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミン等を、それぞれ挙げることができる。これらの有機塩基のうち、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンの如き3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンが好ましい。
(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンを製造する際の触媒としては、アルカリ金属化合物または有機塩基が好ましい。アルカリ金属化合物または有機塩基を触媒として用いることにより、好ましくない副反応を生じることなく、高い加水分解・縮合速度で目的とするポリオルガノシロキサンを得ることができるため、生産安定性に優れることとなり好ましい。触媒としては、特に有機塩基が好ましい。
有機塩基の使用量は、有機塩基の種類、温度等の反応条件等により異なり、適宜に設定されるべきであるが、例えば全シラン化合物に対して好ましくは0.01〜3倍モルであり、より好ましくは0.05〜1倍モルである。
(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンを製造する際の触媒としてアルカリ金属化合物または有機塩基を用いて合成された桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンを含有する本発明の液晶配向剤は、保存安定性が極めて優れるため好都合である。その理由は、非特許文献2(Chemical Reviews、95巻、p1409(1995年))に指摘されているように、加水分解、縮合反応において触媒としてアルカリ金属化合物または有機塩基を用いると、ランダム構造、はしご型構造またはかご型構造が形成され、シラノール基の含有割合が少ないポリオルガノシロキサンが得られるためではないかと推察される。シラノール基の含有割合が少ないため、シラノール基同士の縮合反応が抑えられ、本発明の液晶配向剤が後述の他の重合体を含有するものである場合には、シラノール基と他の重合体との縮合反応が抑えられるため、保存安定性に優れる結果になるものと推察される。
加水分解・縮合反応時には、加熱温度を好ましくは130℃以下、より好ましくは40〜100℃として、好ましくは0.5〜12時間、より好ましくは1〜8時間加熱するのが望ましい。加熱中は、混合液を撹拌してもよいし、還流下に置いてもよい。
反応終了後、反応液から分取した有機溶媒層を水で洗浄することが好ましい。この洗浄に際しては、少量の塩を含む水、例えば0.2重量%程度の硝酸アンモニウム水溶液等で洗浄することにより、洗浄操作が容易になる点で好ましい。洗浄は洗浄後の水層が中性になるまで行い、その後有機溶媒層を、必要に応じて無水硫酸カルシウム、モレキュラーシーブス等の乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、目的とする桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンを得ることができる。
本発明で使用される他のポリシロキサンとしては、上記式(S−1)においてX1が炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基であるポリオルガノシロキサンであることが好ましい。
かかる他のポリシロキサンは、例えばアルコキシシラン化合物およびハロゲン化シラン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物(以下、「原料シラン化合物」ともいう。)を、好ましくは適当な有機溶媒中で、水および触媒の存在下において加水分解または加水分解・縮合することにより合成することができる。
上記アルコール化合物としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、ヘプタノール−3、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチルヘプタノール−4、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール化合物;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンタンジオール−2,4、2−メチルペンタンジオール−2,4、ヘキサンジオール−2,5、ヘプタンジオール−2,4、2−エチルヘキサンジオール−1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール化合物;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール化合物の部分エーテル等を、それぞれ挙げることができる。これらのアルコール化合物は、1種であるいは2種以上を組合せて使用してもよい。
アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、3,5−オクタンジオン、2,4−ノナンジオン、3,5−ノナンジオン、5−メチル−2,4−ヘキサンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ヘプタンジオン等のβ−ジケトン化合物等を、それぞれ挙げることができる。これらのケトン化合物は、1種であるいは2種以上を組合せて使用してもよい。
上記アミド化合物としては、例えばホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルモルホリン、N−アセチルピペリジン、N−アセチルピロリジン等を挙げることができる。これらアミド化合物は、1種であるいは2種以上を組合せて使用してもよい。
これら溶媒のうち、多価アルコール化合物、多価アルコール化合物の部分エーテルまたはエステル化合物が特に好ましい。
有機溶媒の使用割合としては、全原料シラン化合物の100重量部に対して、好ましくは10〜10,000重量部であり、より好ましくは50〜1,000重量部である。
他のポリシロキサンの合成に際して使用する水の量としては、原料シラン化合物の有するアルコキシル基およびハロゲン原子の総量の1モルに対して、好ましくは0.5〜100モルであり、より好ましくは1〜30モルであり、さらに1〜1.5モルであることが好ましい。
上記金属キレート化合物としては、例えばトリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン等のチタンキレート化合物;
トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等を挙げることができる。
上記無機酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等を挙げることができる。
上記有機塩基としては、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等を挙げることができる。
上記アルカリ金属化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等を挙げることができる。
これら触媒は、1種をあるいは2種以上を一緒に使用してもよい。
これら触媒のうち、金属キレート化合物、有機酸または無機酸が好ましく、より好ましくはチタンキレート化合物または有機酸である。
触媒の使用量は、原料シラン化合物100重量部に対して好ましくは0.001〜10重量部であり、より好ましくは0.001〜1重量である。
他のポリシロキサンの合成に際して添加される水は、原料であるシラン化合物中またはシラン化合物を有機溶媒に溶解した溶液中に、断続的または連続的に添加することができる。
触媒は、原料であるシラン化合物中またはシラン化合物を有機溶媒に溶解した溶液中に予め添加しておいてもよく、あるいは添加される水中に溶解または分散させておいてもよい。
他のポリシロキサンの合成の際の反応温度としては、好ましくは0〜100℃であり、より好ましくは15〜80℃である。反応時間は好ましくは0.5〜24時間であり、より好ましくは1〜8時間である。
上記の如き(B)他のポリシロキサンの使用割合は、(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサン100重量部に対して、好ましくは10〜100,000重量部であり、より好ましくは100〜10,000重量部であり、さらに好ましくは400〜5,000重量部である。
本発明の液晶配向剤は、上記の如き(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンおよび(B)他のポリシロキサンを必須の成分として含有するが、本発明の効果を損なわない限り、さらに他の成分を含有していてもよい。このような他の成分としては、例えば分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下「エポキシ化合物」という。)、官能性シラン化合物、界面活性剤等を挙げることができる。
上記エポキシ化合物は、形成される液晶配向膜の基板表面に対する接着性をより向上するとの観点から使用することができる。かかるエポキシ有化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサンなどを、好ましいものとして挙げることができる。これらエポキシ基含有化合物の配合割合は、重合体の合計(上記(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンと(B)他のポリシロキサンとの合計をいう。以下同じ。)100重量部に対して、好ましくは40重量部以下であり、より好ましくは0.1〜30重量部である。本発明の液晶配向剤がエポキシ化合物を含有するものである場合、エポキシ基の架橋反応を効率良く起こす目的で、さらに1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等の塩基触媒を併用してもよい。
本発明の液晶配向剤が官能性シラン化合物を含有する場合、その含有割合としては、上記の重合体の合計100重量部に対して、好ましくは50重量部以下であり、より好ましくは20重量部以下である。
本発明の液晶配向剤が界面活性剤を含有する場合、その含有割合としては、液晶配向剤の全体100重量部に対して、好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは1重量部以下である。
本発明の液晶配向剤は、上述の通り、(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンおよび(B)他のポリシロキサンを必須成分として含有し、そのほかに必要に応じて他の成分を含有するものであるが、好ましくは各成分が有機溶媒に溶解された溶液状の組成物として調製される。
本発明の液晶配向剤を調製するために使用することのできる有機溶媒としては、液晶配向剤に含有される各成分を溶解し、これらと反応しないものが好ましい。
本発明の液晶配向剤に使用することのできる有機溶剤の好ましい具体例としては、例えば1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレンブリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコール、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセルソルブアセテート、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸n−ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸オクチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル 等が挙げられる。この中で好ましくは、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル等を挙げることができる。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明の液晶配向剤の固形分濃度、すなわち液晶配向剤中の溶媒以外の全成分の重量が液晶配向剤の全重量に占める割合は、粘性、揮発性等を考慮して選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。本発明の液晶配向剤は、基板表面に塗布され、液晶配向膜となる塗膜を形成するが、固形分濃度が1重量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得難い場合がある。一方、固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得難く、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が不足する場合がある。特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に採用する方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合には1.5〜4.5重量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それによって溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とするのが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それによって溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とするのが特に好ましい。
本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは、0℃〜200℃、より好ましくは20℃〜60℃である。
本発明の液晶配向剤は、光配向法により液晶配向膜を形成するために好適に使用することができる。
液晶配向膜を形成する方法としては、例えば基板上に本発明の液晶配向膜の塗膜を形成し、次いで該塗膜に光配向法により液晶配向能を付与する方法を挙げることができる。
まず、パターン状の透明導電膜が設けられた基板の透明導電膜側に、本発明の液晶配向剤を、例えばロールコーター法、スピンナー法、印刷法、インクジェット法等の適宜の塗布方法により塗布し、例えば40〜250℃の温度で0.1〜120分間加熱して塗膜を形成する。塗膜の膜厚は、溶媒除去後の厚さとして、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
前記基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスの如きガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートの如きプラスチックからなる透明基板等を用いることができる。
前記透明導電膜としては、SnO2からなるNESA膜、In2O3−SnO2からなるITO膜等を用いることができる。これらの透明導電膜のパターニングには、フォト・エッチング法や透明導電膜を形成する際にマスクを用いる方法等が用いられる。
液晶配向剤の塗布に際しては、基板または透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板および透明導電膜上に、予め官能性シラン化合物、チタネート等を塗布しておいてもよい。
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザー等を使用することができる。前記の好ましい波長領域の紫外線は、前記光源を、例えばフィルター、回折格子等と併用する手段等により得ることができる。
放射線の照射量としては、好ましくは1J/m2以上10,000J/m2未満であり、より好ましくは10〜3,000J/m2である。なお、従来知られている液晶配向剤から形成された塗膜に光配向法により液晶配向能を付与する場合、10,000J/m2以上の放射線照射量が必要であった。しかし本発明の液晶配向剤を用いると、光配向法の際の放射線照射量が3,000J/m2以下、さらに1,000J/m2以下であっても良好な液晶配向性を付与することができ、液晶表示素子の製造コストの削減に資する。
なお、本発明における「プレチルト角」とは、基板面と平行な方向からの液晶分子の傾きの角度を表す。
本発明の液晶配向剤を用いて形成される液晶表示素子は、例えば以下のようにして製造することができる。
上述のようにして液晶配向膜が形成された基板を1対(2枚)準備し、これらの有する液晶配向膜を、照射した直線偏光放射線の偏光方向が所定の角度となるように対向させ、基板の間の周辺部をシール剤でシールし、液晶を注入、充填し、液晶注入口を封止して液晶セルを構成する。次いで、液晶セルを、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで冷却して、注入時の流動配向を除去することが望ましい。
そして、その両面に、偏光板をその偏光方向がそれぞれ基板の液晶配向膜の配向容易軸と所定の角度をなすように貼り合わせることにより、液晶表示素子とする。液晶配向膜が水平配向性である場合、液晶配向膜が形成された2枚の基板における、照射した直線偏光放射線の偏光方向のなす角度およびそれぞれの基板と偏光板との角度を調整することにより、TN型またはSTN型液晶セルを有する液晶表示素子を得ることができる。一方、液晶配向膜が垂直配向性である場合には、液晶配向膜が形成された2枚の基板における配向容易軸の方向が平行となるようにセルを構成し、これに、偏光板を、その偏光方向が配向容易軸と45°の角度をなすように貼り合わせることにより、垂直配向型液晶セルを有する液晶表示素子とすることができる。
前記シール剤としては、例えばスペーサーとしての酸化アルミニウム球および硬化剤を含有するエポキシ樹脂等を用いることができる。
一方、垂直配向型液晶セルの場合には、ネマティック型液晶を形成する負の誘電異方性を有するものが好ましく、例えばジシアノベンゼン系液晶、ピリダジン系液晶、シッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶等が用いられる。
液晶セルの外側に使用される偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、またはH膜そのものからなる偏光板等を挙げることができる。
かくして製造された本発明の液晶表示素子は、表示特性、信頼性等の諸性能に優れるものである。
以下の実施例において重量平均分子量は、以下の条件におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGRCXLII
溶剤:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:68kgf/cm2
エポキシ当量は、JIS C2105の“塩酸−メチルエチルケトン法”に準じて測定した。
<上記式(1)で表される化合物の合成>
合成例1(化合物(2−1−1)の合成)
下記スキーム1
(化合物(2−1−1a)の合成)
1Lのナス型フラスコにp−ヒドロキシ桂皮酸82g、炭酸カリウム304gおよびN−メチル−2−ピロリドン400mLを仕込み、室温で1時間撹拌を行った後、1−ブロモペンタン166gを加えて100℃で5時間撹拌した。その後、減圧にて溶媒を留去した。ここに、水酸化ナトリウム48gおよび水400mLを加えて3時間還流して加水分解反応を行った。反応終了後、反応系を塩酸で中和し、生じた沈殿を回収してエタノールで再結晶することにより、化合物(2−1−1a)の白色結晶を80g得た。
(化合物(2−1−1b)の合成)
撹拌機、窒素導入管および温度計を備えた100mL三口フラスコに上記で得た化合物(2−1−1a)の7.0g、炭酸カリウム8.3g、ヨウ化カリウム1.0g、4−ブロモ−1−ブテン4.5gおよび1−メチル−2−ピロリドン70mLを仕込み、窒素下、90℃で3時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応系にトルエンおよび水を加え、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した後、メタノールで再結晶することにより、化合物(2−1−1b)を7.5g得た。
(化合物(2−1−1)の合成)
還流管および窒素導入管を備えた100mLの三口フラスコに上記で得た化合物(2−1−1b)7.2g、トリメトキシシラン15gおよび0.2Mの塩化白金酸6水和物のイソプロパノール溶液を40μLを仕込み、脱気を行った後、窒素下で10時間還流下に反応を行った。反応混合物をシリカゲルのショートカラムに通した後、シリカカラムで精製を行い、さらに溶媒を除去することにより、化合物(2−1−1)を3.5g得た。
合成例2(化合物(2−7−1)の合成)
下記スキーム2
還流管を備えた100mLの三口フラスコに、上記で得た化合物(2−1−1a)7.0g、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン4.8g、テトラブチルアンモニウムブロミド0.48gおよびメチルイソブチルケトン50mLを仕込み、6時間還流下に反応を行った。反応終了後、反応混合物につき、シリカカラムにて精製を行い、さらに溶媒を除去することにより、化合物(2−7−1)を3.2g得た。
合成例3(化合物(2−13−1)の合成)
下記スキーム3
還流管を備えた100mLの三口フラスコに上記で得た化合物(2−1−1a)7.0g、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン8.8g、テトラブチルアンモニウムブロミド0.48gおよびメチルイソブチルケトン50mLを加え、6時間還流下に反応を行った。反応終了後、反応混合物につき、シリカカラムにて精製を行い、さらに溶媒を除去することにより、化合物(2−13−1)を4.1g得た。
合成例4
下記スキーム4
(化合物(2−25−1a)の合成)
還流管を備えた200mLのナスフラスコに、上記で得た化合物(2−1−1a)7.0g、塩化チオニル50mLおよびN,N−ジメチルホルムアミド50μLを仕込み、80℃で1時間反応を行った。反応終了後、減圧下で塩化チオニルを留去し、残存物を塩化メチレンに溶解して水で洗浄を行い、硫酸マグネシウムで乾燥した後、30mLのテトラヒドロフランに溶かした。
上記とは別に、滴下ロート、窒素導入管および温度計を備えた200mLの三口フラスコに2−ヒドロキシエチルアクリレート3.5g、トリエチルアミン3.3gおよびテトラヒドロフラン14mLを仕込んだ。滴下ロートに、上記の化合物(2−1−1a)と塩化チオニルとの反応物のテトラヒドロフラン溶液を仕込み、氷冷下で1時間以上かけて滴下し、そのままさらに3時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、酢酸エチルを加え、有機層を水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した後にシリカカラムで精製し、さらに溶媒を除去することにより、化合物(2−25−1a)を5.0g得た。
(化合物(2−25−1)の合成)
温度計、窒素導入管を備えた100mLの三口フラスコに化合物上記で得た(2−25−1a)5.0g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.4gおよびトリエチルアミン0.15gを仕込み、50℃で8時間反応を行った。反応終了後、反応混合物に酢酸エチル20mLを加えて得た有機層をシリカカラムにて精製し、さらに溶媒を除去することにより、化合物(2−25−1)を4.8g得た。
合成例5(化合物(4−1−1)の合成)
下記スキーム5
(化合物(4−1a)の合成)
還流管、窒素導入管およびディーンスターク管を備えた1Lのナスフラスコに、デシルこはく酸無水物72g、4−アミノ桂皮酸49g、トリエチルアミン70mL、トルエン500mLおよびテトラヒドロフラン200mLを仕込んで36時間還流下に反応を行った。反応終了後、有機層を、希塩酸水溶液、水で順次に洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥してさらに濃縮した後、エタノールとテトラヒドロフランの混合溶媒で再結晶を行うことにより、化合物(4−1a)の白色結晶を72g得た。
(化合物(4−1b)の合成)
撹拌機、窒素導入管および温度計を備えた500mL三口フラスコに、上記で得た化合物(4−1a)58g、炭酸カリウム42g、ヨウ化カリウム5.0g、4−ブロモ−1−ブテン23gおよび1−メチル−2−ピロリドン350mLを仕込み、窒素下、90℃で3時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、トルエンと水を加えて、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した後、メタノールで再結晶することにより、化合物(4−1b)を60g得た。
(化合物(4−1−1)の合成)
還流管および窒素導入管を備えた100mLの三口フラスコに上記で得た化合物(4−1b)11g、トリメトキシシラン15gおよび0.2M塩化白金酸6水和物のイソプロパノール溶液を40μLを仕込み、脱気を行った後、窒素下で10時間還流下に反応を行った。反応混合物をシリカゲルのショートカラムに通した後、濃縮し,次いでシリカカラムで精製を行い、さらに溶媒を除去することにより、化合物(4−1−1)を5.2g得た。
合成例6(化合物(4−4−1)の合成)
下記スキーム6
(化合物(4−4−1a)の合成)
還流管を備えた2Lのナスフラスコに1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸無水物198g、塩化チオニル500mLおよびN,N−ジメチルホルムアミド2mLを仕込み、80℃で1時間還流下に反応を行った。反応終了後、減圧で塩化チオニルを除去し、残存物に塩化メチレンを加え、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および水で順次に洗浄を行った後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮、乾固した後、テトラヒドロフラン500mLを加えた。
一方、滴下ロート、温度計および窒素導入管を備えた3Lの三口フラスコに4,4−5,5,5−ペンタフルオロペンタノール178g、ピリジン160mLおよびテトラヒドロフラン1.5Lを仕込み、氷浴で冷却した。滴下ロートに上記の1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸無水物と塩化チオニルとの反応物を含有するテトラヒドロフラン溶液を仕込み、これをゆっくり滴下した後、室温でさらに4時間撹拌して反応を行なった。反応終了後、酢酸エチルにより抽出を行なった。有機層を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、シリカカラムで精製し、さらに溶媒を除去することにより、化合物(4−4−1a)を268g得た。
(化合物(4−4−1b)の合成)
ディーンスターク管を備えた200mLのナスフラスコに上記で得た化合物(4−4−1a)241g、4−アミノ桂皮酸109g、トリエチルアミン190mL、4−ジメチルアミノピリジン16g、トルエン1Lおよびテトラヒドロフラン2Lを仕込み、24時間還流下に反応を行った。反応終了後、反応混合物を希塩酸および水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、メタノールで再結晶することにより、化合物(4−4−1b)を78g得た。
撹拌機、窒素導入管および温度計を備えた1L三口フラスコに上記で得た化合物(4−4−1b)50g、炭酸カリウム28g、ヨウ化カリウム3.3g、4−ブロモ−1−ブテン15gおよび1−メチル−2−ピロリドン600mLを仕込み、窒素下、90℃で3時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物にトルエンおよび水を加えた。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した後、メタノールで再結晶することにより、化合物(4−4−1c)を52g得た。
(化合物(4−4−1)の合成)
還流管および窒素導入管を備えた100mLの三口フラスコに、上記で得た化合物(4−4−1c)14g、トリメトキシシラン15gおよび0.2M塩化白金酸6水和物のイソプロパノール溶液を40μL加え、脱気を行った後、窒素下で10時間還流下に反応を行った次に、反応液をシリカゲルのショートカラムに通した後、溶媒を除去して粘調の液体を得た。この粘調液につき、シリカカラムで精製を行い、さらに溶媒を除去することにより、化合物(4−4−1)を6.2g得た。
合成例7(化合物4−26−1)の合成)
下記スキーム7
(化合物(4−26−1a)の合成
還流管、ディーンスターク管および窒素導入管を備えた300mLの三口フラスコに、4−ヒドロキシフタル酸18gおよびジエチルベンゼン100mLを仕込んで、1時間還流を行った。続いて、ここに4−アミノ桂皮酸16gおよびテトラヒドロフラン100mLを加えて12時間還流下に反応を行った。反応終了後、希塩酸および水で順次に分液洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した後、酢酸エチルとテトラヒドロフランの混合溶剤で再結晶することにより化合物(4−26−1a)を19g得た。
(化合物(4−26−1b)の合成)
500mLのナス型フラスコに、上記で得た化合物(4−26−1a)を15g、炭酸カリウム14gおよびN−メチル−2−ピロリドン150mLを仕込み、室温で1時間撹拌を行った後、4−ブロモ−1−ブテン6.8gを加えて室温で24時間撹拌した。反応終了後、水を1L加えた後、沈殿を回収し、シリカカラムで精製し、さらに溶媒を除去することにより、化合物(4−26−1b)を10g得た。
化合物(4−26−1c)の合成)
窒素導入管および温度計を備えた200mLの三口フラスコに上記で得た化合物(4−26−1b)9.1g、1−ブロモデカン5.5g、炭酸カリウム6.9gおよび1−メチル−2−ピロリドン100mLを仕込んで100℃で6時間反応を行った。反応終了後、トルエン500mLを加えて水で3回洗浄を行った後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮を行い、さらにエタノールで再結晶を行うことにより、化合物(4−26−1c)を11gを得た。
(化合物(4−26−1)の合成)
還流管および窒素導入管を備えた100mLの三口フラスコに上記で得た化合物(4−26−1c)10g、トリメトキシシラン12gおよび0.2M塩化白金酸6水和物のイソプロパノール溶液を40μLを仕込み、脱気を行った後、窒素下で10時間還流下に反応を行った。次に、反応混合物をシリカゲルのショートカラムに通した後、シリカカラムで精製を行い、さらに溶媒を除去することにより、化合物(4−26−1)を6.0g得た。
合成例8
(化合物(5−1−1)の合成)
下記スキーム8
(化合物(5−1−1a)の合成
還流管、窒素導入管、ディーンスターク管を備えた1Lのナスフラスコに、アリルこはく酸無水物42g、4−アミノ桂皮酸49g、トリエチルアミン70mL、トルエン500mLおよびテトラヒドロフラン200mLを仕込み、36時間還流下に反応を行った。反応終了後、反応混合物を希塩酸水溶液、水で順次に洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、エタノールおよびテトラヒドロフランの混合溶剤で再結晶を行うことにより、化合物(5−1−1a)の白色結晶を46g得た。
(化合物(5−1−1b)の合成)
窒素導入管および温度計を備えた200mLの三口フラスコに、上記で得た化合物(5−1−1a)29g、1−ブロモデカン22g、炭酸カリウム28gおよび1−メチル−2−ピロリドン300mLを仕込み、100℃で6時間反応を行った。反応終了後、反応混合物にトルエン1.5Lを加えた。有機層を水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮を行い、エタノールで再結晶を行うことにより、化合物(5−1−1b)31gを得た。
(化合物(5−1−1)の合成)
還流管および窒素導入管を備えた100mLの三口フラスコに、上記で得た化合物(5−1−1b)8.5g、トリメトキシシラン12gおよび0.2M塩化白金酸6水和物のイソプロパノール溶液40μLを仕込み、脱気した後、窒素下で10時間還流下に反応を行った。次に、反応混合物をシリカゲルのショートカラムに通した後、シリカカラムで精製を行い、さらに溶媒を除去することにより、化合物(5−1−1)を5.8g得た。
合成例9
撹拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた反応容器に、上記で合成した化合物(2−1−1)3.0g、メチルトリメトキシシラン3.0g、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン4.0g、メチルイソブチルケトン50gおよびトリエチルアミン1.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水10gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で混合しつつ、80℃で6時間反応を行った。反応終了後、有機層を取り出し、0.2重量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄したのち、減圧下で溶媒および水を留去することにより、桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサン(S−1)を得た。このポリオルガノシロキサン(S−1)の重量平均分子量Mwを表1に示した。
合成例10〜17
仕込み原料を表1に示すとおりとした以外は、上記合成例9と同様にして桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサン(S−2)〜(S−9)をそれぞれ得た。
これらの桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンの重量平均分子量Mwを表1に示した。
なお、表1において、他のシラン化合物の略称はそれぞれ以下の意味である。
ECETS:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
MTMS:メチルトリメトキシシラン
MATMS:3−(メタアクリロキシ)プロピルトリメトキシシラン
合成例18
冷却管を備えた200mLの三口フラスコにテトラエトキシシラン20.8gおよび1−エトキシ−2−プロパノール28.2gを仕込み、60℃に加熱し攪拌した。ここに、容量20mLの別のフラスコに調製した、無水マレイン酸0.26gおよび水10.8gからなる無水マレイン酸水溶液を加え、60℃でさらに4時間加熱、攪拌して反応を行った。得られた反応混合物から溶剤を留去し、1−エトキシ−2−プロパノールを加えて、再度濃縮することにより、ポリオルガノシロキサンPS−1を10重量%含有する重合体溶液を得た。PS−1の重量平均分子量Mwは5,100であった。
実施例1
上記実施例5で得た桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンS−1の100重量部と、他のポリシロキサンとして上記合成例18で得たポリシロキサンPS−1を含有する溶液のこれに含有されるポリシロキサンPS−1の重量に換算して1,000重量部に相当する量とを合わせ、ここに1−エトキシ−2−プロパノールを加え、固形分濃度が3.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤L−1を調製した。
この液晶配向剤L−1を−15℃で6か月間保管した。保管の前および後に25℃においてE型粘度計により測定した粘度を測定した。溶液粘度の保管前後の変化率が10%未満のものを保存安定性「良」、10%以上のものを保存安定性「不良」として評価したところ、液晶配向剤L−1の保存安定性は「良」であった。
実施例2〜12
上記実施例1において、桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンの種類ならびに他のポリシロキサンの種類および量を表2に記載のとおりとしたほかは実施例1と同様にして液晶配向剤をL−2〜L−12をそれぞれ調製し、保存安定性を評価した。評価結果は表2に示した。
なお、実施例10および11においては、桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンおよび他の重合体のほか、さらにエポキシ化合物としてそれぞれ表2に記載のものを、重合体の合計100重量部に対してそれぞれ20重量部添加した。
表2におけるエポキシ化合物の略称は、それぞれ下記式で表される化合物を表す。
<液晶配向膜の形成および垂直配向型液晶表示素子の製造>
ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上に、上記実施例1で調製した液晶配向剤L−1をスピンナーを用いて塗布し、庫内を窒素置換したオーブン中で200℃で1時間加熱して膜厚0.1μmの塗膜を形成した。次いでてこの塗膜表面に、Hg−Xeランプおよびグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線1,000J/m2を、基板法線から40°傾いた方向から照射して液晶配向膜とした。同じ操作を繰り返して、液晶配向膜を有する基板を1対(2枚)作成した。
上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、1対の基板の液晶配向膜面を対向させ、各基板の紫外線の光軸の基板面への投影方向が逆平行となるように圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間の間隙に、ネガ型液晶(メルク社製MLC−6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で加熱してから室温まで徐冷した。次に基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交し、かつ、液晶配向膜に照射した紫外線の光軸の基板面への射影方向と45°の角度をなすように貼り合わせることにより垂直配向型液晶表示素子を製造した。
この液晶表示素子につき、以下の方法により評価した。評価結果は表3に示した。
(1)液晶配向性の評価
上記で製造した液晶表示素子につき、5Vの電圧をON・OFF(印加・解除)したときの明暗の変化における異常ドメインの有無を偏光顕微鏡により観察し、異常ドメインのない場合を「良」とした。
(2)プレチルト角の評価
上記で製造した液晶表示素子につき、非特許文献3(T. J. Scheffer et. al. J. Appl. Phys. vo. 19, p2013(1980))に記載の方法に準拠し、He−Neレーザー光を用いる結晶回転法によりプレチルト角を測定した。
(3)電圧保持率の評価
上記で製造した液晶表示素子に、5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置は(株)東陽テクニカ製VHR−1を使用した。
(4)焼き付きの評価
上記で製造した液晶表示素子に、直流5Vを重畳した30Hz、3Vの矩形波を60℃の環境温度で2時間印加し、直流電圧を切った直後の液晶セル内に残留した電圧(残留DC電圧)をフリッカ−消去法により求めた。
使用した液晶配向剤の種類を表3に記載の通りとしたほかは実施例12と同様にして液晶配向膜を形成し、垂直配向型液晶表示素子を製造して評価した。結果を表3に示した。
実施例18
<液晶配向膜の形成およびTN配向型液晶表示素子の製造>
上記実施例5で調製した液晶配向剤L−5を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上にスピンナーを用いて塗布し、180℃にて1時間加熱することにより、膜厚0.1μmの塗膜を形成した。この塗膜の表面に、Hg−Xeランプおよびグランテーラープリズムを用いて、313nmの輝線を含む偏光紫外線1,000J/m2を基板法線から40°傾いた方向から照射することにより、液晶配向能を付与して液晶配向膜を形成した。
上記と同じ操作を繰り返し、液晶配向膜を透明導電膜面上に有するガラス基板を1対(2枚)作製した。
この1対の基板のそれぞれ液晶配向膜を形成した面の周囲部に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、偏光紫外線照射方向が直交となるように基板を重ね合わせて圧着し、150℃で1時間加熱して接着剤を熱硬化した。次いで、基板の間隙に液晶注入口よりポジ型のネマティック型液晶(メルク社製、MLC−6221、カイラル剤入り)を注入して充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で10分加熱してから室温まで徐冷した。次に、基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交し、かつ、液晶配向膜に照射した紫外線の偏光方向と平行となるように貼り合わせることにより、TN配向型液晶表示素子を製造した。
この液晶表示素子の液晶配向性、電圧保持率および焼き付きにつき、実施例13と同様にして評価した。評価結果を表3に示した。
実施例19〜24
使用した液晶配向剤の種類を表3に記載の通りとしたほかは実施例17と同様にして液晶配向膜を形成し、TN配向型液晶表示素子を製造して評価した。結果を表3に示した。
Claims (10)
- (A)下記式(1)
で表される化合物を含むシラン化合物を加水分解・縮合して得られるポリオルガノシロキサン、ならびに
(B)下記式(S−1)
で表されるポリシロキサン、その加水分解物および加水分解物の縮合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする、液晶配向剤。 - 上記式(1)で表される化合物が、下記式(2)
で表される化合物である、請求項1に記載の液晶配向剤。 - 上記式(1)で表される化合物が、下記式(3)
で表される化合物である、請求項1に記載の液晶配向剤。 - (A)ポリオルガノシロキサンが、塩基性触媒、非水溶性の有機溶剤および水の存在下で加水分解・縮合することにより得られたものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
- 基板上に、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶配向剤を塗布して塗膜を形成し、該塗膜に放射線を照射することを特徴とする、液晶配向膜の形成方法。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備することを特徴とする、液晶表示素子。
- 上記式(4)で表される化合物。
- 上記式(5)で表される化合物。
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