JP2009235557A - 高強度高電導性銅合金及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来品であるBeCu鋳造品並みの引張強さ及び伸びを有するとともに、機械加工ができない又は加工に手間のかかる複雑な形状の機械部品などに使用可能なBeフリーの高強度高電導性銅合金鋳造品を得る。
【解決手段】Ni6.0〜9.0wt%、Si1.4〜2.4wt%、Cr0.2〜1.3wt%、Zn0.5〜10.0wt%を含有し、且つ残部が不可避的な不純物を除くCuよりなる鋳造品であるとともに、引張強さが600MPa以上、伸びが2%以上、硬さがHRCで25以上又はHBW(10/3000)で250以上、導電率がIACSで20%以上である。
【選択図】 図1
【解決手段】Ni6.0〜9.0wt%、Si1.4〜2.4wt%、Cr0.2〜1.3wt%、Zn0.5〜10.0wt%を含有し、且つ残部が不可避的な不純物を除くCuよりなる鋳造品であるとともに、引張強さが600MPa以上、伸びが2%以上、硬さがHRCで25以上又はHBW(10/3000)で250以上、導電率がIACSで20%以上である。
【選択図】 図1
Description
本発明は、公害の懸念があるBeを用いることなく、Beフリーで高強度高電導性の銅合金を、鋳造にて製造可能な高強度高電導性銅合金及びその製造方法に係るものである。
従来より、高強度高電導性の銅合金として、BeCuがある。このBeCuの中でも高強度なものとして、Beを1.5%以上含有している165C、25C、275Cが使用されている。これらの鋳造品は、通常の銅合金鋳造品としては高強度高電導性を維持しており、抵抗溶接の治具や、絶対安全性が要求される航空機の部品、ノンスパーキングの安全工具などに使用されている。
しかしながら、近年、地域環境及び職場環境への影響を考慮して、BeCuをできるだけ使用を差し控える企業が世界的に多くなり、Beフリーで高強度高電導性が要求され始めた。そのため、特許文献1及び非特許文献1に示された成分の高強度高電導性の銅合金が使用され、その需要が増加している。そして、これらBeフリーで高強度高電導性の銅合金は、抵抗溶接関連治具や、プラスチック金型関連材、また、耐熱性、熱伝導性を必要とした機械部品、等に使用されている。その中でも、プラスチック金型関連材に関してはほとんどBeフリーの特許文献1及び非特許文献1の成分の熱間鍛造品や、熱間押出品に切り替わっている。
特開平4−247839号公報
日本金属学会2008年春期大会講演概要集P415(645)
しかしながら、特許文献1及び非特許文献1に示す銅合金は、鋳塊を製造し、それに塑性加工を行って素材を作り、その後熱処理及び機械加工を施すものであって加工できる形状が限定されていた。従って、機械加工ができない、又は複雑な形状の機械部品などには使用することができないものであった。
また特許文献1及び非特許文献1の合金配合により鋳造品を製作した場合、硬さは上述のBeCu鋳造品の165Cや20Cに多少下回るものの、銅合金の鋳造品としては高硬度であるとともに、導電率に関しては上記の165Cや20Cより良好である。
しかしながら、特許文献1及び非特許文献1の合金配合の鋳造品は、引張強さと伸びについては上記BeCu鋳造品より低く、同等の材質として使用できなかった。すなわち特許文献1及び非特許文献1の合金配合により製造した鋳造品では図3に示す如く、マトリックスにNiケイ化物、Crケイ化物が粒界に形成され、その化合物及び析出物が全面に繋がるものであった。従って、応力がかかれば粒界に沿って破断するため引張強さと伸びは低くなるものであった。
但し、特許文献1及び非特許文献1に記載の組成では、熱間塑性加工を加えることにより組織の粒界が練られ、晶出物及び析出物はマトリックス中に分散されるため、結晶粒が細かくなって機械的性質は向上する。
本願の第1〜第4発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって、従来品である上記BeCu鋳造品並みの引張強さ及び伸びを有するとともに、機械加工ができないか又は加工に手間のかかる複雑な形状の機械部品などに、鋳造品として使用可能なBeフリーの高強度高電導性銅合金を得ようとするものである。
上述の如き課題を解決するため、本願の第1発明は、Ni6.0〜9.0wt%、Si1.4〜2.4wt%、Cr0.2〜1.3wt%、Zn0.5〜10.0wt%を含有し、且つ残部が不可避的な不純物を除くCuよりなる鋳造品であるとともに、引張強さが600MPa以上、伸びが2%以上、硬さがHRCで25以上又はHBW(10/3000)で250以上、導電率がIACSで20%以上のものである。
また、本願の第2発明は、Ni6.0〜9.0wt%、Si1.4〜2.4wt%、Cr0.2〜1.3wt%、Zn0.5〜10.0wt%を含有し、且つ、Sn、Mn、Mg、B、Feのうち1種又は2種以上を0.05wt%〜0.8wt%含有し、更にNi/Si比が3.5〜4.5であり、且つ残部が不可避的な不純物を除くCuよりなる鋳造品であるとともに、引張強さが600MPa以上、伸びが2%以上、硬さがHRCで25以上又はHBW(10/3000)で250以上、導電率がIACSで20%以上のものである。
また、本願の第3発明は、Ni6.0〜9.0wt%、Si1.4〜2.4wt%、Cr0.2〜1.3wt%、Zn0.5〜10.0wt%を含有し、且つ残部が不可避的な不純物を除くCuよりなる鋳造品を、溶体化処理温度850℃〜960℃の範囲で固溶化処理を行った後、時効処理温度400℃〜550℃の範囲で時効処理し、引張強さが600MPa以上、伸びが2%以上、硬さがHRCで25以上又はHBW(10/3000)で250以上、導電率がIACSで20%以上としたものである。
また、本願の第4発明は、Ni6.0〜9.0wt%、Si1.4〜2.4wt%、Cr0.2〜1.3wt%、Zn0.5〜10.0wt%を含有し、且つ、Sn、Mn、Mg、B、Feのうち1種又は2種以上を0.05wt%〜0.8wt%含有し、更にNi/Si比が3.5〜4.5であり、且つ残部が不可避的な不純物を除くCuよりなる鋳造品を、溶体化処理温度850℃〜960℃の範囲で固溶化処理を行った後、時効処理温度400℃〜550℃の範囲で時効処理し、引張強さが600MPa以上、伸びが2%以上、硬さがHRCで25以上又はHBW(10/3000)で250以上、導電率がIACSで20%以上としたものである。
また、金属組織を光学顕微鏡で観察した際に、α固溶体相中の第2相の体積率が、12%以下でなければならない。
また、金属組織を光学顕微鏡で観察した際に、α固溶体相中の第2相の直径サイズが0.5μm〜2.0μm、アスペクト比が1.5〜12でなければならない。
本願の第1〜第4発明は上述の如く構成したものであって、塑性加工などを必要としない鋳造品の形成に使用できるため、形状が限定されることなく様々な形状に容易に加工することができる。そのため、機械加工ができない又は加工に手間のかかる複雑な形状の機械部品などに使用することができる。また、Ni、Si、Crに加えてZnを添加することにより、従来品であるBeCu鋳造品並みの引張強さ及び伸びを得ることができる。従って、環境に有害な懸念のあるBeを使用せずに、高強度高電導性の銅合金鋳造品を容易に製造することが可能となる。また、部分的又は全体において機械加工を行った場合には、特許文献1及び非特許文献1に示す素材を機械加工した場合と比較して、本発明品は加工後の鏡面性を良好なものとすることが可能となる。
本願の第1発明〜第4発明において、Niの含有量を6.0〜9.0wt%としている。Niが6.0wt%よりも少ないと硬さが低くなり、9.0wt%よりも多いと、導電率が20%を下回りやすくなり、且つ経済的でないからである。
また、Siの含有量を1.4wt%〜2.4wt%としている。1.4wt%よりも少ない場合はNiの含有量と相まって硬さ及び強さが低くなり、2.4wt%よりも多い場合は、伸びが極めて低く脆くなり、強度の増加が認められないからである。
また、Crの含有量を0.2〜1.3wt%としている。0.2wt%よりも少ない場合は引張強さ及び導電率増加への寄与が小さく効果が現れにくく、結晶粒成長を抑える効果も少ない。また、1.3wt%よりも多い場合は、引張強さの更なる増加が認められないとともに、伸びに対して脆くなるからである。
また、Znの含有量を0.5〜10wt%としている。0.5wt%よりも低い場合は伸び増加に伴う引張強さの増加の効果がほとんどなく、10wt%よりも多くした場合は導電率が著しく低下するからである。
また、本願の第2及び第4発明では、Sn,Mn,Mg,B,Feのうち1種又は2種以上を0.05wt%〜0.8wt%を含有している。0.05wt%よりも低い場合は、Snについては固溶強化が望めず、またMn,Mgについては酸化物発生抑止効果が充分得られず、B,Feについては組織の微細効果が少なく機械的性質の上昇は望めない。また、前記元素が、0.8wt%より多い場合は、Bを除き導電率が低下するとともに、Bも含めて伸びが低くなり脆くなる。但しこれらの元素は副次的効果を狙ったものである。
また、本願の第2及び第4発明では、Ni/Si比を3.5〜4.5としているが、Ni/Si比が3.5よりも低い場合はSiが多くなって脆くなり、4.5よりも多い場合は、引張強度が得られなるとともに導電率も低下する。
また、本願の第1発明〜第4発明において、引張強さを600MPa以上、伸びを2%以上、硬さをHRCで25以上又はHBW(10/3000)で250以上、導電率をIACSで20%以上としている。これは、JIS Z3234 第4種鋳造品規格を目標としているためである。
また、上記第2発明及び第4発明において、金属組織を光学顕微鏡で観察した際に、α固溶体相中の第2相の体積率が12%以下であることが望ましい。体積率が12%を越えた場合には、引張強さと伸びが低下するからである。
また、上記第2及び第4発明において、金属組織のα固溶体相中の第2相の体積率が12%以下であり、且つ第2相の直径サイズが0.5μm〜2.0μmであるとともに、アスペクト比が1.5〜12であることが望ましい。このことは、鋳造品で且つ、機械強度に関係している。即ち、本願の第2発明及び第4発明の含有成分において、α固溶体相内の第2相析出物の体積率、直径サイズ、及びアスペクト比が上記範囲内でない場合には(特に体積率が重要)、形状が円形に近くなることにより、体積率が増加して粒界に析出物及び化合物が集まりやすくなり、機械的性質が低下するものとなる。そして、このような機械的性質の低下を防いでいるのがZnである。また、アスペクト比が1.5より低い場合は、体積率が増加し、12よりも多い場合は、粒界に析出物が広がりやすくなる。
本願の第1〜第4発明における実施例1〜16について以下に詳細に説明する。尚、実施例1〜16及び比較例1〜8の成分分析値については下記の表1に示している。まず、本願の第1発明及び第3発明を示す実施例1〜3は、表1より、含有元素をNi、Si、Cr、Zn、Cuのみとし、各実施例において、Ni、Si、Crの含有量をほぼ同量とするとともにZnの含有量を異なるものとしている。また、本願の第2発明及び第4発明を示す実施例4〜実施例6では、Znの量を変えると共に、更に実施例4ではSn,Mn、Mgを、実施例5及び6ではSn,Mnを含有したものである。また、実施例7〜実施例14はBを0.1%前後含有させるとともに、更に実施例11〜実施例14はFeを含有させている。尚、実施例14は、実施例13のZnの含有量を更に約1%増やしたものである。
次に、比較例1〜7について以下に説明すると、まず、比較例1〜6は、本願の第1発明〜第4発明の必須元素であるZnを含有しないものである。そして、比較例1〜4は、非特許文献1に記載の如く、Ni、Si、Cr、Cuのみを含有した銅合金であるとともに、比較例5及び6は更にBを含有したものである。また、比較例7は実施例13の含有成分において、Feの含有量を増やした例である。
そして、表1に示した実施例1〜14及び比較例1〜7の各元素の含有比率に基づき、原料を用意してJIS B号供試材砂型鋳型に鋳造し、鋳造品を得た。尚、溶解は各々適量のフラックス及び木炭を用意して大気溶解にて鋳造した。そして、上記の如く製造した鋳造品について、以下の表2に示す条件にて加工処理を行った。
まず、各々の鋳造品の押し湯部分を切断して、表2に示す温度にて溶体化処理を行った。尚、表2の溶体化温度は、比較例1〜比較例4の展伸材で実績のある標準的な920℃で処理した。また、時効処理は430℃〜490℃の範囲で3時間〜6時間、490℃において3時間/25mmを基本として行った。そして、上記の如く熱処理を行った各試料を、JIS4号試験片が採取できる寸法に長手方向に切断した。また、残りの材料(約5mm×24mm×L)より硬さ測定及び接触式導電率測定器(温度補正付)にて導電率を測定した。そして、上記の如く硬さ測定を行った試験片の一部を採取し、第2相中の体積率、直径、アスペクト比をミクロ組織より観察測定した。
上記測定により得られた引張強さ、伸び、硬さにて表される機械的性質、導電率、及びミクロ組織観察の結果を表2に示す。尚、表2において、機械的性質の「伸び」の数値の前に「C」を付しているものについては、JIS Z2241により、点外又は標点印の箇所で破断したものであることを示している。また、実施例8及び9の「第2層体積率」、「第2相直径」、「アスペクト比」を「−」としているが、これは、実施例8及び9の含有成分を実施例7とほぼ同じものにしているため、ミクロ組織観察結果も実施例7とほぼ同様のものとなることは明らかであることから、実施例8及び9については、ミクロ組織観察を省略している。
尚、実施例8及び9の時効処理温度それぞれ460℃、及び430℃であって、実施例7の時効処理温度の490℃とは異なるが、ミクロ組織に関しては、時効処理温度はほとんど影響しない。また、比較例3及び4についても、含有成分を比較例2とほぼ同じものとしているため、上記と同様の理由によりミクロ組織観察を省略している。また、実施例15及び16、比較例8については、機械的性質及び導電率の測定結果のみを表2に示している。また、表2の「第2相直径」及び「アスペクト比」において、「mx」は最大値を、「mi」は最小値を表したものである。
実施例1〜3は、上記のNi、Si、Crの含有量をほぼ同量とするとともにZnの含有量を変化させたものであるが、表2の結果より、Znの含有量を増やすに従って、引張強さは上昇しているが導電率は低下傾向にある。一方、ミクロ組織観察においては、ミクロ組織α固溶体相内の第2相中の体積率は低下傾向にあり、第2相直径は収縮傾向にある。またアスペクト比は広がる傾向にある。このことは、引張強さの低下に深く関係するものである。但し本願の第1発明及び第2発明の目標値は満たしている。尚、実施例2の1000倍のミクロ組織写真を図1に示す。図1の一目盛りは5μmである。
本願の第2発明及び第4発明である実施例4及び実施例5について以下に説明すると、実施例4は、Sn,Mn,Mgを合計で0.717%、実施例5は、Sn、Mnを合計で0.66%含有させたものである。そして実施例4及び実施例5について測定した結果、Sn、Mn、Mgの含有量が少し多いため、機械的性質の伸びが点外及び標点印箇所で破断したが、全ての項目において目標値を満足している。尚、実施例5の300倍のミクロ組織写真を図2に示す。
次に、比較例1〜6の結果について以下に説明する。いずれも溶体化処理については、実施例1〜14と同様の処理を施した。まず比較例1〜4の結果について説明すると、比較例1では、時効処理を実施例1〜7とほぼ同じ条件で行ったが、引張強さ及び伸びにおいて目標値には到達しなかった。尚、比較例1の1000倍のミクロ組織写真を図3に示す。図3の一目盛りは5μmである。また、比較例2〜4についても、時効時間と時効処理温度を変更しながら実施したが、いずれも引張強さ及び伸びにおいて目標値には到達しなかった。特に比較例4については時効不足になるようにして伸びが出るように実施したが、上述の如く伸びは1.4%であり目標値に到達しなかった。尚、比較例2の300倍のミクロ組織写真を図4に示す。
また、比較例5と比較例6について以下に説明すると、比較例5と比較例6は、Ni、Si、Crの含有量を上記比較例1〜4とほぼ同量とするとともに、新たにBを含有させたものである。その結果、比較例5はBの含有量を0.05%以下にしたため、Bを含有させたことによる効果は見られなかった。また、比較例6は、比較例5よりもBの含有量を増加させて0.11%とするとともに、上記実施例と同様の熱処理を施したところ、引張強さが向上した。但し伸びは目標値に達しなかった。以上より、Bを含有させることにより、引張強さを向上させる効果があることが判明したが、靭性を良くする効果は無いものと考えられる。
次に、実施例6及び実施例7の結果について説明すると、実施例6はNi、Si、Cr、Znの他に、Sn,Mnを微量添加したものであり、実施例7は上記の如く比較例6で効果のあったBを新たに含有させたものである。その結果、実施例6及び実施例7のいずれも全ての目標値を満足している。そして、実施例8〜実施例10の結果について説明すると、実施例8〜実施例10は、上記実施例7の結果を考慮して時効処理温度と時効時間を変更しながら、即ち490℃において3時間/25mmを基本として実施した例である。その結果、どの実施例も全ての目標値を満足している。
次に実施例11〜実施例14の結果について以下に説明する。まず、実施例11〜実施例13は、上記の如く、Ni、Si、Cr、Znの他に、Bの含有量とFeの含有量を加減しながら含有させたものであり、実施例14は実施例13のZnの含有量を約1%増やすとともに、Bの含有量を多少増加させたものである。
そして、上記実施例11〜14のミクロ組織を観察した結果、上記実施例1〜3と同じようにα固溶体相内の体積率が低下し、第2相の直径は収縮するとともにアスペクト比も広がっていた。また、引張強さ、伸び、硬さ、及び導電率はいずれも目標値を満足しているが、本願の第2発明及び第4発明におけるSn、Mn、Mg、B、Feの含有元素は、2種類以内に抑えた方がより効果がある。なぜなら、本願の鋳造品においては、多種類の元素を微量に含有させた場合に、各々融点が異なるためα固溶体相の第2相析出物、化合物、酸化物が多くなり、体積率が増える懸念があることが判明したからである。但し、Zn、Sn、Mgのように、低温で固溶するものについては除外される。従って、Fe、Mn、Bを同時に含有させるべきではなく、また、Sn、Mgについても、同時に多種類の元素と含有させることにより、導電率の低下に影響を与えるものとなる。また、実施例4のように、第3の含有元素として、Mgを微量追加している例外もあるが、Ni、Si、Cr、Zn、Cuの基本元素以外の含有元素は、合計で0.8%以内の含有量で且つ2種類以内に抑えることが望ましい。
最後に比較例7について以下に説明すると、比較例7は、上記実施例13における含有元素Feの含有量を1.01%に増やして実施した例である。その結果、熱処理は実施例13と同じ処理をしたのにもかかわらず、引張強さ及び伸びは目標値に達していない。そこでミクロ組織を観察するとα固溶体相中の第2相体積率が12%より高くなっていることが判明した。そのためマトリックスの強度が落ちたものと考えられる。
以上の実施例1〜14及び比較例1〜7は鋳造品によるものであるが、本願の第1発明〜第4発明の成分で鋳塊を製作し、それを熱間塑性加工した後、第3発明及び第4発明の溶体化処理を施し、場合によっては冷間塑性加工を行い、その後第3発明及び第4発明の時効処理を行うことにより、機械的性質を飛躍的に向上させることが出来る。
即ち、実施例15及び16では、上記実施例1〜14の鋳造品と同様に、大気溶解にてダービル鋳造法により、24kgのΦ145鋳塊を作り、外周をΦ140に面削した後、熱間鍛造にて40×110×Lに加工した。そして、この加工品を表2の条件にて熱処理した後、機械的性質及び導電率を測定したものである。また、比較例8は、大気溶解による800kgの鋳塊を作り、それを熱間鍛造したものから40×40×220Lに切り出し、これについて実施例15及び16と同様に表2に示す熱処理を施し、機械的性質と導電率を測定したものである。
その結果、実施例15、16、及び比較例8は、引張強さと伸びについては実施例1〜14の鋳造品と比較して大幅に向上している。これは、熱間塑性加工を加えることにより組織の粒界が練られ、晶出物及び析出物がマトリックス中に分散されるため、結晶粒が細かくなって機械的性質が向上したためである。但し、比較例8については、Znを添加していないため実施例15及び16よりも伸びがやや低くなっている。従って、靭性を要求されるものについては、Znを含有させるとともに微量のBを含有させて熱間塑性加工を施し、溶体化処理した後、冷間加工を施した上で時効処理を施すことにより、更に機械的性質の向上が見込まれるものと考えられる。
Claims (8)
- Ni6.0〜9.0wt%、Si1.4〜2.4wt%、Cr0.2〜1.3wt%、Zn0.5〜10.0wt%を含有し、且つ残部が不可避的な不純物を除くCuよりなる鋳造品であるとともに、引張強さが600MPa以上、伸びが2%以上、硬さがHRCで25以上又はHBW(10/3000)で250以上、導電率がIACSで20%以上であることを特徴とする高強度高電導性銅合金。
- Ni6.0〜9.0wt%、Si1.4〜2.4wt%、Cr0.2〜1.3wt%、Zn0.5〜10.0wt%を含有し、且つ、Sn、Mn、Mg、B、Feのうち1種又は2種以上を0.05wt%〜0.8wt%含有し、更にNi/Si比が3.5〜4.5であり、且つ残部が不可避的な不純物を除くCuよりなる鋳造品であるとともに、引張強さが600MPa以上、伸びが2%以上、硬さがHRCで25以上又はHBW(10/3000)で250以上、導電率がIACSで20%以上であることを特徴とする高強度高電導性銅合金。
- Ni6.0〜9.0wt%、Si1.4〜2.4wt%、Cr0.2〜1.3wt%、Zn0.5〜10.0wt%を含有し、且つ残部が不可避的な不純物を除くCuよりなる鋳造品を、溶体化処理温度850℃〜960℃の範囲で固溶化処理を行った後、時効処理温度400℃〜550℃の範囲で時効処理し、引張強さが600MPa以上、伸びが2%以上、硬さがHRCで25以上又はHBW(10/3000)で250以上、導電率がIACSで20%以上としたことを特徴とする高強度高電導性銅合金の製造方法。
- Ni6.0〜9.0wt%、Si1.4〜2.4wt%、Cr0.2〜1.3wt%、Zn0.5〜10.0wt%を含有し、且つ、Sn、Mn、Mg、B、Feのうち1種又は2種以上を0.05wt%〜0.8wt%含有し、更にNi/Si比が3.5〜4.5であり、且つ残部が不可避的な不純物を除くCuよりなる鋳造品を、溶体化処理温度850℃〜960℃の範囲で固溶化処理を行った後、時効処理温度400℃〜550℃の範囲で時効処理し、引張強さが600MPa以上、伸びが2%以上、硬さがHRCで25以上又はHBW(10/3000)で250以上、導電率がIACSで20%以上としたことを特徴とする高強度高電導性銅合金の製造方法。
- 金属組織を光学顕微鏡で観察した際に、α固溶体相中の第2相の体積率が、12%以下であることを特徴とする請求項2の高強度高導電性銅合金。
- 金属組織を光学顕微鏡で観察した際に、α固溶体相中の第2相の体積率が、12%以下であることを特徴とする請求項4の高強度高導電性銅合金の製造方法。
- 金属組織を光学顕微鏡で観察した際に、α固溶体相中の第2相の直径サイズが0.5μm〜2.0μm、アスペクト比が1.5〜12であることを特徴とする請求項5の高強度高導電性銅合金。
- 金属組織を光学顕微鏡で観察した際に、α固溶体相中の第2相の直径サイズが0.5μm〜2.0μm、アスペクト比が1.5〜12であることを特徴とする請求項6の高強度高導電性銅合金の製造方法。
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