JP2009235350A - カチオン電着塗料組成物 - Google Patents

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輝三 東井
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Abstract

【課題】硬化電着塗膜の塗膜平滑性および端面被覆性に優れたカチオン電着塗料組成物を提供すること。
【解決手段】カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、架橋樹脂粒子、非架橋アクリル樹脂、およびカチオン電着塗料組成物の塗料固形分に対して10重量%以下の無機顔料を含む、カチオン電着塗料組成物であって、
架橋樹脂粒子は、平均粒子径1.0〜3.0μmであり、
非架橋アクリル樹脂は、溶解性パラメータが10.4〜10.8、ガラス転移温度が20〜40℃、および数平均分子量が2500〜3500である、カチオン電着塗料組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、特定の架橋樹脂粒子および特定の非架橋アクリル樹脂を含む、塗膜平滑性および端面被覆性に優れたカチオン電着塗料組成物、およびそれを用いる硬化電着塗膜の塗膜平滑性および端面被覆性を両立させる方法に関する。
電着塗装は、電着塗料組成物中に被塗物を浸漬させ電圧を印加することにより行なわれる塗装方法である。この方法は、複雑な形状を有する被塗物であっても細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるので特に自動車車体などの大型で複雑な形状を有する被塗物の下塗り塗装方法として広く実用化されている。
電着塗装は、物品上への被覆塗装であるので、塗装面が平滑であることが当然望まれる。一方、金属の打ち抜き部分などの端面は鋭角的な端面を有しており、その部分にも塗膜が充分被覆されなければ防食性能が劣化する。従って、塗膜表面平滑性と端面被覆性とは共に電着塗装において必要とされる性能である。塗膜表面平滑性は焼付硬化時に未硬化塗膜の粘度が下ることにより流動化して得られるものであるのに対して、端面被覆性は未硬化塗膜の粘度が下がらないようにすることにより得られるもの、つまり端面被覆性は塗膜硬化時における塗膜のタレを抑制して、鋭角的な端面にも塗膜を残すことにより得られるものである。即ち、塗膜平滑性と端面被覆性とは相反する性質である。
ところで、近年、電着塗料組成物においては低灰分化が推し進められている。低灰分化は、比重の高い固体成分である無機顔料の配合量を削減することである。電着塗料組成物を低灰分化することによって、沈殿し易い比重の高い無機顔料の含有量が少なくなる。そのため、電着塗装時における沈降発生を低減することができる。このように電着塗料組成物において低灰分化することにより、沈降防止のためにこれまで電着浴を撹拌していたエネルギーおよび労力を削減することができる。そこで、上記の低灰分化の要求に応えるべく、無機顔料の含有量を減少させると、塗料中の樹脂の量が相対的に高まることとなる。そして塗料中の樹脂の量が相対的に高まることによって、電着塗装して得られた未硬化析出塗膜の粘度を適切な範囲に増大させることができず、その結果端面部分でのタレ制御を適切に調整することができず、端面被覆性が低下することとなる。
特開2002−212488号公報(特許文献1)には、エッジ部の防錆性向上を目的として、アンモニウム基を有するアクリル樹脂を乳化剤としてα,β−エチレン性不飽和モノマー混合物を乳化重合することにより得られた架橋樹脂粒子を配合したカチオン電着塗料組成物が開示されている。ここで得られる樹脂粒子は粒子径が0.05〜0.3μmと小さいものである。ところが、特許文献1に記載される平均粒子径が1.0μm以下の架橋樹脂粒子を電着塗料組成物に配合すると、例えば自動車のような高度な外観が求められる際、十分な平滑性を得ることができない場合がある。
特開2002−212488号公報
本発明では、上述のように、塗料の固形分濃度を低下させると共に、低灰分化を目的として、塗料の沈降防止を図り、しかもカチオン電着塗料組成物において塗膜表面平滑性および端面被覆性という相反する性能を両立させる方法、特に端面被覆性をより向上させる方法、を提供することを目的とする。
本発明者らは、低灰分化を目指すカチオン電着塗料組成物の塗膜表面平滑性と端面被覆性とを両立させる方法を検討した結果、特定の架橋樹脂粒子および特定の非架橋アクリル樹脂をカチオン電着塗料組成物中に配合することにより、塗膜表面平滑性と端面被覆性とが向上すること、特に端面被覆性が向上すること、を見いだし、本発明を完成するに到った。
すなわち本発明は、
カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、架橋樹脂粒子、非架橋アクリル樹脂、およびカチオン電着塗料組成物の塗料固形分に対して10重量%以下の無機顔料を含む、カチオン電着塗料組成物であって、
この架橋樹脂粒子は、平均粒子径1.0〜3.0μmであり、
この非架橋アクリル樹脂は、溶解性パラメータが10.4〜10.8、ガラス転移温度が20〜40℃、および数平均分子量が2500〜3500である、
カチオン電着塗料組成物、を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
上記カチオン電着塗料組成物を電着塗装して得られた未硬化の析出塗膜の140℃における貯蔵弾性率(G’)が80〜500dyn/cmであり、80℃における損失弾性率(G”)が10〜150dyn/cmであるのが好ましい。
また上記非架橋アクリル樹脂の含有量は、カチオン電着塗料組成物の樹脂固形分に対して5〜15重量%であるのが好ましい。
また、上記ブロックイソシアネート硬化剤は、イソシアネート基含量29.0〜31.0であるポリフェニレンポリイソシアネートをブロックしたブロックイソシアネートを含むのが好ましい。
上記架橋樹脂粒子の含有量は、カチオン電着塗料組成物の樹脂固形分に対して3〜15重量%であるのが好ましい。
上記架橋樹脂粒子の熱軟化温度が120〜180℃であるのが好ましい。
本発明はまた、カチオン電着塗料組成物中に被塗物を浸漬して電圧を印加し、焼き付け硬化させることによる硬化電着塗膜の形成方法において、このカチオン電着塗料組成物が、平均粒子径1.0〜3.0μmである架橋樹脂粒子と、溶解性パラメータが10.4〜10.8、ガラス転移温度が20〜40℃、および数平均分子量が2500〜3500である非架橋アクリル樹脂とを含有するカチオン電着塗料組成物であることを特徴とする、硬化電着塗膜の塗膜平滑性および端面被覆性を両立させる方法、も提供する。
本発明はさらに、カチオン電着塗料組成物中に被塗物を浸漬し、電圧を印加することにより未硬化の析出塗膜を形成し、次いで焼き付け硬化させることによる硬化電着塗膜の形成方法において、
この析出塗膜の140℃における貯蔵弾性率(G’)が80〜500dyn/cm2であり、80℃における損失弾性率(G”)が10〜150dyn/cm2である、塗膜平滑性および端面被覆性を向上させた硬化電着塗膜の形成方法、も提供する。
本発明によれば、平均粒子径が1.0〜3.0μmである架橋樹脂粒子と、溶解性パラメータが10.4〜10.8、ガラス転移温度が20〜40℃、および数平均分子量が2500〜3500である非架橋アクリル樹脂とを、カチオン電着塗料組成物中に含めることによって、塗膜表面平滑性と端面被覆性の両立、特に端面被覆性の向上が可能になる。防食性能発揮が求められる電着塗料組成物において、端面被覆性は重要な性質である。特に低灰分型のカチオン電着塗料組成物の場合は、無機顔料による塗膜の粘度上昇を得ることができないため、端面被覆性が悪化することが予想される。これに対して本発明においては、特定の架橋樹脂粒子および特定の非架橋アクリル樹脂をカチオン電着塗料組成物中に配合することによって、相反する性能である塗膜表面平滑性と端面被覆性との両立が達成され、特に端面被覆性のさらなる向上が達成されることとなる。本発明は、特に低灰分型カチオン電着塗料組成物において塗膜性能を維持もしくは改善する手段として有効である。
カチオン電着塗料組成物
本発明のカチオン電着塗料組成物は、特定の架橋樹脂粒子、特定の非架橋アクリル樹脂、そしてカチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、そして中和酸、有機溶媒を含む。
架橋樹脂粒子
本発明において用いられる架橋樹脂粒子は、平均粒子径が1.0〜3.0μmである。従来技術でも、架橋した樹脂粒子をカチオン電着塗料組成物に配合する提案がなされているが、そのような架橋樹脂粒子は平均粒子径が1.0μm未満のものが殆どである。従来技術では、単に粘性をコントロールするために架橋樹脂粒子を配合しているので、平均粒子径が1.0μm未満の架橋樹脂粒子が必要となってくるのである。これに対して本発明においては、塗膜表面平滑性と端面被覆性との両立を果たすために、従来技術よりも平均粒子径が大きい架橋樹脂粒子が用いられる。
本発明に用いる架橋樹脂粒子の平均粒子径は、前述のように1.0〜3.0μmであるが、その下限値としては好ましくは1.2μm、更に好ましくは1.5μmである。一方、その上限値としては、好ましくは2.5μm、更に好ましくは2.2μmである。前述のように、1.0μmより小さい場合は、従来技術の樹脂粒子の平均粒子径の範囲となり、塗膜表面平滑性が悪化するため好ましくない。平均粒子径が3.0μmより大きな架橋樹脂粒子は、電着塗料組成物の無撹拌時の沈降や電着塗装時における水平面への粒子の降り積もりによる塗膜平滑性の低下が起こる。ここでの平均粒子径は、以下の方法により測定することができる。
本発明における架橋樹脂粒子の平均粒子径は、粒状粒子透過測定法によって測定することができる。架橋樹脂粒子の平均粒子径の測定に用いることができる機器として、例えば日機装(株)社製、MICROTRAC9340UPAなどが挙げられる。平均粒子径の測定は、溶媒(水)の屈折率1.33、樹脂分の屈折率(樹脂の種類により異なる。例えばアクリル樹脂では1.59)を用いて、架橋樹脂粒子の粒度分布を測定し、その測定値から累積相対度数F(x)=0.5における平均粒子径を算出することによって測定することができる。
本発明に用いる架橋樹脂粒子は、熱軟化温度120℃以上であるのが好ましく、120〜180℃であるのがより好ましい。熱軟化温度の下限値は好ましくは140℃であり、更に好ましくは160℃である。熱軟化温度が120℃より低いと、端面の被覆性を確保できない。一方、架橋樹脂粒子の熱軟化温度が180℃を超える材料の合成は現時点の技術においては実質的に不可能である。
熱軟化温度は、架橋樹脂粒子が軟化を開始する温度である。即ち、対象とする架橋樹脂粒子の各温度における貯蔵弾性率G’を求め、その温度変化に対する貯蔵弾性率G’の変化が急激に変化する点の温度を言う。ここで貯蔵弾性率G’とは、材料の弾性的な振る舞いを示すパラメータであり、
貯蔵弾性率G’ (弾性項) G’=(σ/γ)cosδ(dyn/cm
より求めることができる。
上記貯蔵弾性率G’は、動的粘弾性パラメータである。動的粘弾性とは、線形粘弾性体に振動的(周期的)な歪みまたは力を与えた場合に観測される弾性率であり、振動数および温度に関係する。以下の動的粘弾性に関する記載は、講座レオロジー(日本レオロジー学会編)、第2章高分子液体のレオロジー、p31−39および高分子化学序論(岡村誠三、中島章夫、小野木重治、西島安則、東村敏延、伊勢典夫共著)、第4章高分子物質の諸性能 粘弾性、p149−155に記載されている内容を参考にしたものである。
角速度ω(2π×周波数f)における応力および歪みは下記式にて与えられる。
歪み γ(t)=γiωt (dyn/cm
応力 σ(t)=σi(ωt+δ) (dyn/cm
(ここでγ(t)は時間tにおける歪み、σ(t)は時間tにおける応力であり、γはt=0における歪み、σはt=0における応力、δは位相差を示す。)
このときの複素弾性率Gは、
=(σ/γ)eiδ=(σ/γ)(cosδ+i sinδ)
で表される。一般的に塗料の粘度制御因子として用いられている複素粘性率η=G/ω(Pa・s)は、塗料の粘性と弾性、双方の性質を併せ持つ粘弾性を定量化したものである。
本発明に用いる架橋樹脂粒子の熱軟化温度の測定は、以下の通り行うことができる。架橋樹脂粒子の固形分濃度を30重量%に調整して得られた試料を、回転型動的粘弾性測定装置であるRhesol−G3000(株式会社ユービーエム製)を用い、温度依存性測定にて、歪み0.5度、周波数0.02Hz、昇温速度4.0℃/分の測定条件で90℃からの貯蔵弾性率G’の測定を行う。測定結果は、図1のグラフのようになる。図1から明らかなように、架橋樹脂粒子の貯蔵弾性率G’は、初期温度領域(図1では90〜140℃付近)で一定粘度を保持するものの、ある温度(図1では140℃を超えた温度)を境に貯蔵弾性率G’の低下が起こり始める。一定粘度で推移する領域の接線と粘度低下が起こっている領域の接線を引き、その交点(変曲点)の温度を熱軟化温度と定義する。
樹脂粒子の熱軟化温度を高くするためには、樹脂粒子の架橋度を高くする必要がある。そして本発明における熱軟化温度領域を確保するためには、樹脂粒子は架橋樹脂粒子である必要がある。ガラス転移温度も樹脂の軟化を示す指標であるが、架橋樹脂粒子においてガラス転移温度(Tg)を測定すると数百度(℃)のレベルに達するので、この温度では樹脂の熱分解が大きくなり、粒子自体の軟化特性を測定できない。そのため本発明においては、架橋樹脂粒子の架橋度合いを示す指標として熱軟化温度を利用する。
架橋樹脂粒子は、平均粒子径が1.0〜3.0μmの大きさであることを考慮すると、懸濁重合により製造されることが好ましい。架橋樹脂粒子の調製方法として、乳化重合などその他の方法で製造することも、平均粒子径が上記範囲を満足することを条件として可能であるが、平均粒子径を所望の範囲にそろえる観点から懸濁重合が好適である。
上記架橋樹脂粒子としては、特に限定されず、例えば、エチレン性不飽和モノマーを主体として得られた架橋構造を有する樹脂からなる樹脂粒子、内部架橋したウレタン樹脂からなる樹脂粒子、内部架橋したメラミン樹脂からなる架橋樹脂粒子などを挙げることができる。
上記エチレン性不飽和モノマーを主体として得られた架橋構造を有する樹脂としては特に限定されず、例えば、架橋性モノマーを必須成分として含む、エチレン性不飽和モノマーを含有するモノマー組成物を、水性媒体中で懸濁重合させて水分散体を調製し、得られた水分散体を溶媒置換などすることにより得られる、内部架橋した樹脂粒子;脂肪族炭化水素などの低SP有機溶媒またはエステル、ケトン、アルコールなどの高SPである有機溶媒のようにモノマーは溶解するが重合体は溶解しない非水性有機溶媒中で、架橋性モノマーを必須成分として含むエチレン性不飽和モノマーを含有するモノマー組成物を共重合させて得られる(NAD法)、内部架橋した樹脂粒子;または沈澱析出法などの方法によって得られる内部架橋した樹脂粒子;などを挙げることができる。
上記エチレン性不飽和モノマーとしては特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルなどを挙げることができる。上記エチレン性不飽和モノマーは、二種類以上を併用して使用するものであってもよい。
上記架橋性モノマーとしては特に限定されず、例えば、分子内に2個以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有するモノマー、相互に反応し得る基をそれぞれ有する2種のエチレン性不飽和基含有モノマーの組み合わせなどを挙げることができる。
上記内部架橋樹脂粒子の製造に使用することができる架橋性モノマーの一種である、分子内に2個以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては特に限定されず、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールアリロキシジメタクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジメタクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリメタクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパンジアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパンジメタクリレートなどの多価アルコールの重合性不飽和モノカルボン酸エステル;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレートなどの多塩基酸の重合性不飽和アルコールエステル;ジビニルベンゼンなどの2個以上のビニル基で置換された芳香族化合物などを挙げることができる。
上記相互に反応し得る基をそれぞれ有する、2種のエチレン性不飽和基を有するモノマーに存在する相互に反応する官能基の組合せとしては特に限定されず、例えば、エポキシ基とカルボキシル基、アミノ基とカルボニル基、エポキシ基とカルボン酸無水物基、アミノ基とカルボン酸塩化物基、アルキレンイミノ基とカルボニル基、オルガノアルコキシシラン基とカルボキシル基、ヒドロキシル基とイソシアネートグリシジルアクリレート基などの組合せを挙げることができる。なかでも、エポキシ基とカルボキシル基の組合せがより好ましい。
上記内部架橋したウレタン樹脂からなる樹脂粒子は、ポリイソシアネート成分と末端に水酸基を有するジオールおよびカルボキシル基を有するジオール若しくはトリオールを有する活性水素含有成分とを反応させることにより形成されたカルボン酸塩を側鎖に有するイソシアネート末端基含有ポリウレタンプレポリマーを、続いて活性水素含有連鎖延長剤と反応させることによって得られるポリウレタンポリマーからなる樹脂粒子である。
上記プレポリマーに使用するポリイソシアネート成分は、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;1−シクロヘキサンジイソシアネート、1−イソシアネート−3−イソシアネートメチル−3,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;などを挙げることができる。上記ポリイソシアネート成分は、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートがより好ましい。
上記末端に水酸基を有するジオールは特に限定されず、例えば、分子量100〜5000のポリエーテルジオール、ポリエステルジオールまたはポリカーボネートジオールなどを挙げることができる。上記末端に水酸基を有するジオールとしては特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリカプロラクトンジオール、ポリ−3−メチルバレロラクトンジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートなどを挙げることができる。
上記カルボキシル基を含有するジオールとしては特に限定されず、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸などを挙げることができる。なかでも、ジメチロールプロピオン酸が好ましい。
上記トリオールとしては特に限定されず、例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリンポリカプロラクトントリオールなどが挙げられる。トリオールを使用することによって、ウレタン樹脂粒子の内部が架橋構造をとる。
上記内部架橋したメラミン樹脂からなる架橋樹脂粒子としては特に限定されず、例えば、メラミン樹脂とポリオールを乳化剤の存在下で水中に分散させた後、分散により形成された粒子内でポリオールとメラミン樹脂の架橋反応を行うことによって得られる内部架橋したメラミン樹脂粒子などを挙げることができる。
上記メラミン樹脂としては、特に限定されず、例えば、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−メチロールメラミンおよびそれらのアルキルエーテル化物(アルキルはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル)などを挙げることができる。市販されている上記メラミン樹脂としては、例えば、三井サイテック社製サイメル303、サイメル325、サイメル1156などを挙げることができる。
上記ポリオールとしては特に限定されず、例えば、分子量500〜3000のトリオール、テトロールなどを挙げることができる。上記ポリオールは、ポリプロピレンエーテルトリオール、ポリエチレンエーテルトリオールがより好ましい。
上記架橋樹脂粒子は、ろ過、スプレー乾燥、凍結乾燥などの方法で内部架橋した樹脂粒子を単離し、そのまま若しくはミルなどを用いて適当な平均粒子径に粉砕して粉体の状態で用いるものであっても、得られた水分散体をそのまま、または、溶媒置換により媒体を置換して使用するものであってもよい。
本発明における架橋樹脂粒子の含有量は、カチオン電着塗料組成物中の樹脂固形分に対して好ましくは3〜15重量%である。その下限値としては好ましくは4重量%、更に好ましくは5重量%である。一方、その上限値としては好ましくは12重量%であり、更に好ましくは10重量%である。架橋樹脂粒子含有量が3重量%より少ないと、塗膜表面平滑性と端面被覆性の両立が難しくなるおそれがある。15重量%を超えると、耐食性など塗膜性能の低下を引き起こすおそれがある。本明細書中において「樹脂固形分」とは、カチオン電着塗料組成物中に含まれる樹脂成分(架橋樹脂粒子も含む)全ての固形分重量を意味する。
非架橋アクリル樹脂
本発明で用いられる非架橋アクリル樹脂は、溶解性パラメータが10.4〜10.8、ガラス転移温度が20〜40℃、および数平均分子量が2500〜3500であるという特徴を有する。ここで「非架橋アクリル樹脂」は、架橋樹脂粒子の説明に記載されるような内部架橋を提供する上記架橋性モノマーを用いることなく調製された樹脂を意味する。
本発明で用いられる非架橋アクリル樹脂は、溶解性パラメータ10.4〜10.8、ガラス転移温度20〜40℃、および数平均分子量2500〜3500と、溶解性パラメータ、ガラス転移温度および数平均分子量の全てのパラメータが上記範囲内にあることが必要とされる。本発明においては、このような特定の非架橋アクリル樹脂と、上記架橋樹脂粒子とを併用することによって、特に低灰分型カチオン電着塗料組成物において、塗膜平滑性と端面被覆性という相反する性質の両立、とりわけ端面被覆性の向上が達成されることとなる。
溶解性パラメータ(solubility parameter:SP値とも示される。)は、溶解性の尺度となるものである。溶解性パラメータは数値が大きいほど極性が高く、数値が小さいほど極性が低いことを示す。非架橋アクリル樹脂の溶解性パラメータが10.8を超える場合は、端面被覆性が劣ることとなる。また非架橋アクリル樹脂の溶解性パラメータが10.4未満である場合は、疎水性が強く塗膜のハジキ原因となる恐れがあるため、カチオン電着塗料組成物において使用することは困難である。
本発明における非架橋アクリル樹脂は、溶解性パラメータ10.4〜10.8という範囲である。そして本発明における非架橋アクリル樹脂の溶解性パラメータは、従来のカチオン電着塗料組成物に含まれるカチオン変性アクリル樹脂と比較して、低い値であるということができる。例えば、従来のカチオン電着塗料組成物に含まれるカチオン変性アクリル樹脂(例えばアミノ基含有アクリル樹脂など)の一般的なアクリル成分の溶解性パラメータは10.9〜11.4程度であり、本発明における非架橋アクリル樹脂と比較すると溶解性パラメータはより高いということができる。本発明における非架橋アクリル樹脂はこのようにより疎水性であることから、疎水性相互作用が発現しやすくなるため、粘度を上昇させ端面被覆性を向上させることができる。
溶解性パラメータの測定は、例えば次の方法によって実測することができる[参考文献:SUH、CLARKE、J.P.S.A−1、5、1671〜1681(1967)]。
測定温度:20℃
サンプル:樹脂0.5gを100mlビーカーに秤量し、良溶媒10mlをホールピペットを用いて加え、マグネティックスターラーにより溶解する。
溶媒:
良溶媒…テトラヒドロフラン
貧溶媒…n−ヘキサン、イオン交換水など
濁点測定:50mlビュレットを用いて貧溶媒を滴下し、濁りが生じた点を滴下量とする。
樹脂の溶解性パラメータδは次式によって与えられる。
Figure 2009235350
Figure 2009235350
Figure 2009235350
i:溶媒の分子容(ml/mol)
φi:濁点における各溶媒の体積分率
δi:溶媒のSP値
ml:低SP貧溶媒混合系
mh:高SP貧溶媒混合系
非架橋アクリル樹脂の数平均分子量はポリスチレンを標準として用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定結果から算出することができる。非架橋アクリル樹脂の数平均分子量が2500未満である場合は端面被覆性が劣ることとなり、非架橋アクリル樹脂の数平均分子量が3500を超える場合は塗膜平滑性が劣ることとなる。非架橋アクリル樹脂の数平均分子量を2500〜3500の範囲に調整する手法として、例えば合成温度の制御により調整する手法、またラジカル発生開始剤の配合量調整により制御する手法など、が挙げられる。
非架橋アクリル樹脂のガラス転移温度の測定は、示差走査熱量計を用いて樹脂のガラス転移に伴う熱変化を検出することにより測定することができる。使用できる示差走査熱量計としては、例えば、セイコー電子工業社製DSC220Cなどを挙げることができる。非架橋アクリル樹脂のガラス転移温度が20℃未満である場合は、塗膜平滑性が劣ることとなる。非架橋アクリル樹脂のガラス転移温度が40℃を超える場合は、塗膜平滑性および端面被覆性が劣ることとなる。
非架橋アクリル樹脂のガラス転移温度を20〜40℃の範囲に調整する手法として、例えば任意のモノマー組み合わせによる調整が挙げられる。
上記非架橋アクリル樹脂の熱軟化温度は非架橋であるためガラス転移温度同等である。なお非架橋アクリル樹脂の熱軟化温度の測定は、上記した架橋樹脂粒子の熱軟化温度の測定と同様の方法によって行うことができる。
本発明における非架橋アクリル樹脂は、例えば水酸基含有エチレン性不飽和モノマー(i)、酸性基含有エチレン性不飽和モノマー(ii)、その他のエチレン性不飽和モノマー(iii)を任意に選択し、共重合して調製することができる。
水酸基含有エチレン性不飽和モノマー(i)の例として、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアルコール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの付加物などが挙げられる。
酸性基含有エチレン性不飽和モノマー(ii)の例として、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、フマール酸などなどのカルボン酸基含有エチレン性不飽和モノマー;t−ブチルアクリルアミドスルホン酸などのスルホン酸基含有エチレン性不飽和モノマーなどが挙げられる。
その他のエチレン性不飽和モノマー(iii)として、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、メタクリル酸トリデシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
油脂肪酸とオキシラン構造を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマーとの付加反応物(例えば、ステアリン酸とグリシジルメタクリレートの付加反応物など);
以上のアルキル基を含むオキシラン化合物とアクリル酸またはメタクリル酸との付加反応物;
スチレン、α−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、(メタ)アクリル酸ベンジル、ビニルピリジンなどのアリール基含有エチレン性不飽和モノマー;
イタコン酸エステル(イタコン酸ジメチル)、マレイン酸エステル(マイレン酸ジメチルなど)、フマール酸エステル(フマール酸ジメチルなど)など;その他に、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチルイソプロペニルケトン、酢酸ビニル、ベオバモノマー(シェル化学社製、商品名)、ビニルプロピオネート、ビニルピバレート、プロピオン酸ビニル、エチレン、プロピレン、ブタジエン、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリルアミド;
などが挙げられる。
非架橋アクリル樹脂を製造する場合の各モノマーの量は、モノマー合計量を100重量%として、
スチレン20〜30重量%、
メタクリル酸イソブチル15〜50重量%、
アクリル酸エチルヘキシル5〜40重量%、
アクリル酸エチル0〜40重量%、
メタクリル酸ヒドロキシエチル5〜20重量%、
であるのがより好ましい。各モノマーを上記重量範囲で用いて非架橋アクリル樹脂を製造することによって、非架橋アクリル樹脂の溶解性パラメータを10.4〜10.8の範囲に好適に調整することができる。
非架橋アクリル樹脂の重合は、溶液重合法のような常法により行うことができ、例えばラジカル重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系開始剤またはベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオクトエートなどが挙げられる。必要に応じて、ドデシルメルカプタンまたはチオグリコ−ル酸2−エチルヘキシルのような連鎖移動剤を用いてもよい。重合反応は、一般に60〜160℃程度の温度範囲で約1〜15時間行うことが好ましい。
非架橋アクリル樹脂は、30〜50mgKOH/gの水酸基価を有することが好ましい。なお水酸基価30〜50mgKOH/gの非架橋アクリル樹脂は、水酸基含有エチレン性不飽和モノマーの量を当量者に周知の手法で調整することによって、得ることができる。
本発明における非架橋アクリル樹脂の含有量は、カチオン電着塗料組成物中の樹脂固形分に対して5〜15重量%であるのが好ましく、8〜10重量%であるのがより好ましい。非架橋アクリル樹脂の含有量が5重量%より少ないと、塗膜表面平滑性と端面被覆性の両立が難しくなるおそれがある。また非架橋アクリル樹脂の含有量が15重量%を超えると、耐食性など塗膜性能の低下を引き起こすおそれがある。
本発明において、特定の架橋樹脂粒子および特定の非架橋アクリル樹脂をカチオン電着塗料組成物中に配合することによって、特に低灰分型カチオン電着塗料組成物において達成が困難であった、相反する性能である塗膜表面平滑性と端面被覆性との両立が達成され、とりわけ端面被覆性のさらなる向上が達成されることとなる。ここで低灰分型のカチオン電着塗料組成物とは、カチオン電着塗料組成物の固形分中における無機顔料の含量が10重量%以下であることをいう。
本発明において、特定の架橋樹脂粒子および特定の非架橋アクリル樹脂を用いることによって、低灰分型のカチオン電着塗料組成物において塗膜表面平滑性および端面被覆性という相反する性能の両立が達成される理由は以下の通りである。
カチオン電着塗料組成物中に被塗物を浸漬して電圧を印加することによって被塗物に析出する析出塗膜(未硬化の電着塗膜)は、一般に120〜260℃で10〜30分間焼き付けることにより硬化し、硬化電着塗膜が得られることとなる。この焼き付け過程において、被塗物上の析出塗膜は環境温度から硬化温度まで徐々に昇温していくこととなる。
本発明者らは、カチオン電着塗料組成物中に上記特定の架橋樹脂粒子を添加することによって、80℃付近の比較的低温域そして100〜140℃付近の比較的高温域において粘度低下が生じる粘弾性挙動が生じること、より詳しくは40〜80℃にかけて粘度が下がり始め、また80〜100℃ぐらいの間では少し粘度が上昇して、100℃を超えると大きく粘度が減少してフローし、このフロー後に硬化反応が開始し始めて粘度が再び上昇し始め150℃前後まで徐々に上がり始め、その後急激に粘度が上昇して硬化が完結することを、実験により見いだしている。
この析出塗膜の焼き付け硬化の粘弾性挙動において、80℃付近の比較的低温域において粘度低下が生じることによって、いわゆる塗膜表面のフローが生じ、これにより塗膜平滑性が向上することとなる。一方で100〜140℃付近の比較的高温域において大きな粘度低下が生じると、被塗物に析出した塗膜が流れ落ちてしまうこととなる。この析出塗膜の流れ落ちは、被塗物の端面において特に顕著に生じ、これにより端面被覆性が低下してしまう。
今回、本発明者らは、上記特定の架橋樹脂粒子に加えて、溶解性パラメータ、ガラス転移温度および数平均分子量が上記特定範囲である非架橋アクリル樹脂をさらに用いることによって、80℃付近の比較的低温域において粘度低下を生じさせ、かつ、140℃付近の比較的高温域においては大きな粘度低下を生じさせないという粘弾性挙動を発現させることができることを、実験によって見いだした。特定の架橋樹脂粒子および特定の非架橋アクリル樹脂を用いることによって、塗膜表面平滑性および端面被覆性という相反する性能の両立が達成される理由としては、理論に拘束されるものではないが次のように考えられる。
本発明においては、上記特定の架橋樹脂粒子と、溶解性パラメータ、ガラス転移温度および数平均分子量が上記特定範囲である非架橋アクリル樹脂とを用いることによって、これらの架橋樹脂粒子および非架橋アクリル樹脂が、焼き付け硬化における比較的高温域において相互作用が生じると考えられる。そしてこの相互作用は、塗装温度および焼き付け硬化における比較的低温域ではほとんど生じないと考えられる。そしてこれによって、80℃付近の比較的低温域において粘度低下を生じさせ、かつ、140℃付近の比較的高温域においては大きな粘度低下を生じさせないという粘弾性挙動の発現が達成され、塗膜表面平滑性および端面被覆性という相反する性能の両立が達成される。本発明において、このように温度に従って限定的に相互作用が発生する理由は以下のように考えられる。一般的に低温域において、架橋樹脂粒子および非架橋アクリル樹脂は塗膜に含まれる溶媒によってそれぞれ塗料組成物中で相溶化し、均一分散しているため相互作用を生じない。一方、高温域に移行するに従って塗膜に含まれる溶媒が揮散し粘度が上昇する傾向にあるが、樹脂の分子運動が激しくなるため、全体として粘度は低下する。しかし、架橋樹脂粒子および溶解性パラメータの低い非架橋アクリル樹脂が含まれている場合、架橋樹脂粒子および非架橋アクリル樹脂は塗膜内部で引き付けあい(相互作用)、擬似的に高分子量化する。これにより、温度上昇により激しくなった分子運動が抑制され、高粘度を発現することとなる。
そしてこの温度に依存した相互作用の発現においては、非架橋アクリル樹脂の溶解性パラメータ、ガラス転移温度および数平均分子量という物性範囲全てが重要となる。例えば非架橋アクリル樹脂のガラス転移温度が20℃未満である場合は、塗膜平滑性が劣ることとなる。これは、非架橋アクリル樹脂のガラス転移温度が低いことによって、低温域においても析出した樹脂同士の融着が促進され粘度が上昇する。これにより塗膜表面のフロー性が低下し、塗膜平滑性が劣ることとなると考えられる。
また、例えば非架橋アクリル樹脂のガラス転移温度が40℃を超える場合は、端面被覆性が劣ることとなる。これはガラス転移温度が高いことによって、高温域において相互作用が生じ難くなり、端面被覆性が劣ることとなると考えられる。
他にも、例えば非架橋アクリル樹脂の溶解性パラメータが10.8を超える場合は、端面被覆性が劣ることとなる。これは、非架橋アクリル樹脂の溶解性パラメータが高くなることによって、カチオン性エポキシ樹脂の溶解性パラメータに近くなってしまい、その結果、高温域において相互作用が生じ難くなり、端面被覆性が劣ることとなると考えられる。
このように、本発明においては、非架橋アクリル樹脂は、溶解性パラメータ10.4〜10.8、ガラス転移温度20〜40℃、および数平均分子量2500〜3500と、溶解性パラメータ、ガラス転移温度および数平均分子量の全てのパラメータが上記範囲内にあることが必要とされる。
上記カチオン電着塗料組成物において、カチオン電着塗料組成物を電着塗装して得られた未硬化の析出塗膜の140℃における貯蔵弾性率(G’)が80〜500dyn/cmであり、80℃における損失弾性率(G”)が10〜150dyn/cmであるのがより好ましい。ここで貯蔵弾性率G’は析出塗膜の弾性的な挙動を示す物性パラメータであり、損失弾性率G”は析出塗膜の粘性的な挙動を示す物性パラメータであると考えられる。80℃における損失弾性率G”と140℃における貯蔵弾性率G’が上記所定範囲であることによって、塗膜表面平滑性および断面被覆性のより良好な両立が成り立つこととなると考えられる。
カチオン電着塗料組成物を含む一般的な塗料の場合、焼き付け初期段階で未硬化塗膜は粘性項支配となり、損失弾性率G”の影響を大きく受ける。後期段階では未硬化塗膜が融着や擬似架橋によりゲル化点(見かけ上、端から端まで繋がった状態)を迎え、それ以降は弾性項支配となり、貯蔵弾性率G’の影響を大きく受ける。ゲル化点とは、焼付過程における粘弾性挙動の損失弾性率G”(粘性項)と貯蔵弾性率G’(弾性項)の関係が損失弾性率G”<貯蔵弾性率G’となる温度のことである。即ち、粘性項支配から弾性項支配へと変化する点を意味する。そしてゲル化点以下の温度(80℃)の損失弾性率G”およびゲル化点以上の温度(140℃)の貯蔵弾性率G’が上記範囲にあることによって、塗膜平滑性と端面被覆性のより良好な両立が達成されることとなる。
析出塗膜の粘性的な挙動を示す物性パラメータである損失弾性率G”は、下記式より求めることができる。
損失弾性率(粘性)G”=(σ/γ)sinδ(dyn/cm
また析出塗膜の弾性的な挙動を示す物性パラメータである貯蔵弾性率G’は、下記式より求めることができる。
貯蔵弾性率(弾性)G’=(σ/γ)cosδ(dyn/cm
この貯蔵弾性率(弾性)G’は、焼き付け過程においてその場に留まろうとする力であり、端面被覆性の確保に関与するパラメータである。
貯蔵弾性率G’が望ましい下限を下回ると、得られる硬化電着塗膜の端面被覆性が悪化するおそれがあり、望ましい上限を上回ると塗膜平滑性が低下するおそれがある。損失弾性率G”の望ましい加減を下回ると、塗膜平滑性は向上するものの得られる硬化電着塗膜の端面被覆性が悪化するおそれがあり、望ましい上限を上回ると塗膜平滑性が低下するおそれがある。
カチオン性エポキシ樹脂
本発明で用いるカチオン性エポキシ樹脂には、アミンで変性されたエポキシ樹脂が含まれる。カチオン性エポキシ樹脂は、典型的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環の全部をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環するか、または一部のエポキシ環を他の活性水素化合物で開環し、残りのエポキシ環をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環して製造される。
ビスフェノール型エポキシ樹脂の典型例はビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。前者の市販品としてはYD−7011R(東都化成(株)社製、エポキシ当量460〜490)、エピコート828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量180〜190)、エピコート1001(同、エポキシ当量450〜500)、エピコート1010(同、エポキシ当量3000〜4000)などがあり、後者の市販品としてはエピコート807(同、エポキシ当量170)などがある。
特開平5−306327号公報に記載される、下記式
Figure 2009235350
[式中、Rはジグリシジルエポキシ化合物のグリシジルオキシ基を除いた残基、R’はジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基、nは正の整数を意味する。]で示されるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂をカチオン性エポキシ樹脂に用いてもよい。
エポキシ樹脂にオキサゾリドン環を導入する方法としては、例えば、メタノールのような低級アルコールでブロックされたブロックイソシアネート硬化剤とポリエポキシドを塩基性触媒の存在下で加熱保温し、副生する低級アルコールを系内より留去することで得られる。
二官能エポキシ樹脂とモノアルコールでブロックしたジイソシアネート(すなわち、ビスウレタン)とを反応させるとオキサゾリドン環を含有するエポキシ樹脂が得られることは公知である。このオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂の具体例および製造方法は、例えば、特開2000−128959号公報第0012〜0047段落に記載されており、公知である。
これらのエポキシ樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、および単官能性のアルキルフェノールのような適当な樹脂で変性しても良い。また、エポキシ樹脂はエポキシ基とジオールまたはジカルボン酸との反応を利用して鎖延長することができる。
これらのエポキシ樹脂は、開環後0.3〜4.0meq/gのアミン当量となるように、より好ましくはそのうちの5〜50%が1級アミノ基が占めるように活性水素化合物で開環するのが望ましい。
カチオン性基を導入し得る活性水素化合物としては1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩、スルフィドおよび酸混合物がある。1級、2級または/および3級アミノ基含有エポキシ樹脂を調製するためには1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物として用いる。
具体例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、ジエチルジスルフィド・酢酸混合物などのほか、アミノエチルエタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミンのジケチミンなどの1級アミンをブロックした2級アミンがある。アミン類は複数の種類を併用してもよい。
本発明で用いるカチオン性エポキシ樹脂は、溶解性パラメータが11.2〜11.8であるのが好ましく、11.2〜11.6であるのがより好ましい。カチオン性エポキシ樹脂の溶解性パラメータが上記範囲であることによって、架橋樹脂粒子および非架橋アクリル樹脂の高温域における相互作用を良好に発現することができるという利点がある。
ブロックイソシアネート硬化剤
本発明のブロックイソシアネート硬化剤を得るためのポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系などのうちのいずれであってもよい。
ポリイソシアネートの具体例には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、およびナフタレンジイソシアネートなどのような芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、およびリジンジイソシアネートなどのような炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、および1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)などのような炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、およびテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などのような芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトンイミン、ビューレットおよび/またはイソシアヌレート変性物);などがあげられる。これらは単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネートをエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの多価アルコールとNCO/OH比2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリマーもブロックイソシアネート硬化剤に使用してよい。
ポリイソシアネートをブロックするブロック剤は、ポリイソシアネートのイソシアネート基に付加し、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると遊離のイソシアネート基を再生し得るものである。ブロック剤として、通常使用されるアルコール類、フェニール類、ε−カプロラクタム、オキシム類、活性メチレン化合物類などを用いることができ、特にε−カプロラクタムやブチルセロソルブなどを用いることができる。ポリイソシアネートのイソシアネート基のブロック化は、当業者に知られた一般的な方法によって行うことができる。
本発明で用いられるブロックイソシアネート硬化剤は、イソシアネート基含量29.0〜31.0であるポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートをブロックしたブロックイソシアネートを含むものであることがより好ましい。ここでポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートとは、一般に「ポリメリックMDI」といわれるものであり、1分子中にベンゼン環を2個有する純粋なMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)世比較して、より多核化および多官能化したMDIオリゴマーの混合物である。本発明において、イソシアネート基含量29.0〜31.0であるポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートをブロックしたブロックイソシアネートを含むブロックイソシアネート硬化剤を用いることによって、端面被覆性をさらに向上することができるという利点がある。
イソシアネート基含量とは、イソシアネート成分100重量部中におけるイソシアネート基の重量部(平均値)である。この「イソシアネート基含量29.0〜31.0であるポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート」を構成する個々のポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートについて、構造式を用いると以下のように示すことができる。なお、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)は混合物であり、下記式1中の「n」は整数である。イソシアネート基の含有量29.0〜31.0である混合物の平均核体数は3.5である。平均核体数とは、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート1分子が含有するイソシアネート基の平均数である。
Figure 2009235350
[式中、nは整数である。]
電着塗料組成物において一般に用いられているポリメリックMDI(クルードMDIともいわれる)は、平均核体数が2.8(イソシアネート基含量31.0〜32.5)となる。このように、本発明で好ましく用いることができるポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートは、一般に用いられるポリメリックMDIと比較して、より重合度が高いものであるということができる。
本発明で好ましく用いることができるポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートの重合度は、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートおよびジフェニルメタンジイソシアネートの原料となる、ジアミノジフェニルメタン混合物の調製におけるアニリンとホルムアルデヒドの重合反応において重合度を当業者に知られた方法によって調整することによって、特定範囲の重合度とすることができる。
ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートを用いる場合における、ブロックイソシアネート硬化剤の調製に用いるポリイソシアネート中におけるポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートの含有量は、60〜100重量%であるのが好ましく、70〜100重量%であるのがより好ましく、80〜100重量%であるのがさらに好ましい。
無機顔料
本発明のカチオン電着塗料組成物は無機顔料を含んでもよい。但し無機顔料の含有量は、カチオン電着塗料組成物の塗料固形分に対して10重量%以下であることを条件とする。このように本発明のカチオン電着塗料組成物は、無機顔料の含有量が少ない、低灰分型のカチオン電着塗料組成物である。無機顔料の例としては、通常使用される無機顔料、例えば、チタンホワイトおよびベンガラのような着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレーのような体質顔料;リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウムおよびリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、硫酸ビスマスのような防錆顔料など、が挙げられる。
無機顔料の含有量は、カチオン電着塗料組成物の塗料固形分に対して0.5〜10重量%であるのが好ましく、0.5〜7重量%であるのがより好ましく、0.5〜5重量%であるのがさらに好ましい。この無機顔料の含有量はPWC(カチオン電着塗料組成物の塗料固形分における無機顔料の濃度(重量%))ともいわれる。無機顔料の含有量が10重量%を超えると、低灰分化を十分に達成することができないため、沈降防止のためのエネルギー負担が増大することになる。
顔料を電着塗料組成物の成分として用いる場合、一般に顔料を予め高濃度で水性媒体に分散させてペースト状(顔料分散ペースト)にする。顔料は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。
顔料分散ペーストは、顔料を顔料分散樹脂と共に水性媒体中に分散させて調製する。顔料分散樹脂としては、一般に、カチオン性またはノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基および/または3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂などのようなカチオン性重合体を用いる。水性媒体としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水などを用いる。
一般に、顔料分散樹脂は、顔料100重量部に対して固形分比20〜100重量部の量で用いる。顔料分散樹脂と無機顔料とを混合した後、その混合物中の無機顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミルなどの通常の分散装置を用いて分散させて、顔料分散ペーストを得る。
本発明で使用されるカチオン電着塗料組成物は、上記成分の他に、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫オキシドなどの有機錫化合物、N−メチルモルホリンなどのアミン類、ストロンチウム、コバルト、銅などの金属塩を触媒として含んでもよい。これらは、硬化剤のブロック剤解離のための触媒として作用し得る。触媒の濃度は、電着塗料組成物中のカチオン性エポキシ樹脂と硬化剤合計の100固形分重量部に対して0.1〜6重量部であるのが好ましい。
カチオン電着塗料組成物の調製
本発明のカチオン電着塗料組成物は、上に述べた架橋樹脂粒子、非架橋アクリル樹脂、カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、顔料分散ペーストおよび必要に応じた触媒を、水性媒体中に分散させることによって調製することができる。また、通常、水性媒体にはカチオン性エポキシ樹脂を中和して分散性を向上させるために中和酸を含有させる。中和酸は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸、スルファミン酸、アセチルグリシンなどの無機酸または有機酸である。本明細書中における水性媒体とは、水か、水と有機溶剤との混合物である。水としてイオン交換水を用いるのが好ましい。使用しうる有機溶剤の例としては炭化水素類(例えば、キシレンまたはトルエン)、アルコール類(例えば、メチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール)、エーテル類(例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、ケトン類(例えば、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセチルアセトン)、エステル類(例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート)またはそれらの混合物が挙げられる。
本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれる架橋樹脂粒子の添加方法は、その電着塗料組成物の製造段階のいずれの段階において添加することができる。なかでも、製造されたカチオン電着塗料組成物に直接添加する方法が好ましい。
ブロックイソシアネート硬化剤の量は、硬化時にカチオン性エポキシ樹脂中の1級、2級アミノ基、水酸基、などの活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与えるのに十分でなければならず、一般にブロックイソシアネート硬化剤の含有量は、全樹脂固形分中の10〜50重量%であるのが好ましく、20〜40重量%であるのがより好ましい。10重量%以下である場合、硬化が不十分となり塗膜性能が低下するおそれがある。50重量%以上である場合、未硬化塗膜の粘弾性が低下し、十分な端面被覆性が得られないおそれがある。中和酸の量はカチオン性エポキシ樹脂のカチオン性基の少なくとも20%、好ましくは30〜60%を中和するのに足りる量である。
有機溶媒はカチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤などの樹脂成分を調製する際に溶剤として使用されたものが持ち込まれたものである。これは調製の際完全に除去するには煩雑な操作を必要とする。また、バインダー樹脂成分となるカチオン性エポキシ樹脂に有機溶媒が含まれていると造膜時の塗膜の流動性が改良され、塗膜の塗膜平滑性が向上する。
塗料組成物に通常含まれる有機溶媒としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
カチオン電着塗料組成物は、上記成分のほかに、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、および紫外線吸収剤など、通常使用される塗料用添加剤を含むことができる。
カチオン電着塗料組成物の塗装方法
上記カチオン電着塗料組成物は被塗物に電着塗装され、硬化電着塗膜を形成する。被塗物としては導電性のあるものであれば特に限定されず、例えば、鉄板、鋼板、アルミニウム板およびこれらを表面処理したもの、これらの成型物などを挙げることができる。
カチオン電着塗料組成物の電着塗装は、被塗物を陰極として陽極との間に、通常、50〜450Vの電圧を印加して行う。印加電圧が50V未満であると電着が不充分となり、450Vを超えると、塗膜が破壊され異常外観となる。電着塗装時、塗料組成物の浴液温度は、通常10〜45℃に調節される。
電着塗装過程は、カチオン電着塗料組成物に被塗物を浸漬する過程、および、上記被塗物を陰極として陽極との間に電圧を印加し、被膜を析出させる過程、から構成される。また、電圧を印加する時間は、電着条件によって異なるが、一般には、2〜4分とすることができる。
電着塗膜の膜厚は、一般に5〜25μmの範囲で形成することができる。膜厚が5μm未満であると、防錆性が不充分となるおそれがある。また、膜厚が25μmを超える場合は、塗膜性能を得るために必要とされる膜厚以上の膜厚となる。
上述のようにして得られる電着塗膜を、電着塗装過程の終了後、そのまままたは水洗した後、120〜260℃、好ましくは140〜220℃で、10〜30分間焼き付けることにより硬化し、硬化電着塗膜が得られる。
本発明の硬化電着塗膜は、塗膜表面平滑性が高く、塗膜表面平滑性の評価として用いられるRa値は好ましくは0.25μm以下である。Ra値は、JIS−B0601に準拠し、例えば評価型表面粗さ測定機(株式会社ミツトヨ製、SURFTEST SJ−201P)を用いて測定することができる。Ra値が小さい程、凹凸が少なく、塗膜外観が良好である。
本発明では、また、カチオン電着塗料組成物中に被塗物を浸漬して電圧を印加し、焼き付け硬化させることによる硬化電着塗膜の形成方法において、カチオン電着塗料組成物が、平均粒子径1.0〜3.0μmである架橋樹脂粒子と、溶解性パラメータが10.4〜10.8、ガラス転移温度が20〜40℃、および数平均分子量が2500〜3500である非架橋アクリル樹脂とを含有することを特徴とする、硬化電着塗膜の塗膜平滑性および端面被覆性を両立させる方法を提供する。そして本発明は、低灰分型のカチオン電着塗料組成物にあっても、前述の特定の架橋樹脂粒子および特定の非架橋アクリル樹脂を、カチオン電着塗料組成物中に添加剤的に配合することによって、電着塗料組成物の固形分の沈降防止能を向上させると共に、塗膜表面平滑性と端面被覆性の両立が可能となり、特に端面被覆性が向上するという特徴がある。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、重量基準による。
製造例1 ブロックイソシアネート硬化剤の製造
攪拌機、冷却器、窒素注入管、温度計および滴下ロートを取り付けたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(コロネートHX:日本ポリウレタン(株)製)199部とメチルイソブチルケトン32部、およびジブチルスズジラウレート0.03部を秤りとり、攪拌、窒素をバブリングしながら、メチルエチルケトオキシム87.0部を滴下ロートより1時間かけて滴下した。温度は50℃からはじめ70℃まで昇温した。そのあと1時間反応を継続し、赤外線分光計によりNCO基の吸収が消失するまで反応させた。その後n−ブタノール0.74部、メチルイソブチルケトン39.93部を加え、不揮発分80%とした。
製造例2 アミン変性エポキシ樹脂の製造
攪拌機、冷却器、窒素注入管および滴下ロートを取り付けたフラスコに、2,4/2,6−トリレンジイソシアネート(80/20wt%)71.34部と、メチルイソブチルケトン111.98部と、ジブチルスズジラウレート0.02部を秤り取り、攪拌、窒素バブリングしながらメタノール14.24部を滴下ロートより30分かけて滴下した。温度は室温から発熱により60℃まで昇温した。その後30分間反応を継続した後、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル46.98部を滴下ロートより30分かけて滴下した。発熱により70〜75℃へ昇温した。30分間反応を継続した後、ビスフェノールAプロピレンオキシド(5モル)付加体(三洋化成工業(株)製BP−5P)41.25部を加え、90℃まで昇温し、IRスペクトルを測定しながらNCO基が消失するまで反応を継続した。
続いてエポキシ当量475のビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成(株)製YD−7011R)475.0部を加え、均一に溶解した後、130℃から142℃まで昇温し、MIBKとの共沸により反応系から水を除去した。125℃まで冷却した後、ベンジルジメチルアミン1.107部を加え、脱メタノール反応によるオキサゾリドン環形成反応を行った。反応はエポキシ当量1140になるまで継続した。
その後100℃まで冷却し、N−メチルエタノールアミン24.56部,ジエタノールアミン11.46部およびアミノエチルエタノールアミンケチミン(78.8%メチルイソブチルケトン溶液)26.08部を加え、110℃で2時間反応させた。その後エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル20.74部とメチルイソブチルケトン12.85部を加えて希釈し、不揮発物82%に調節した。数平均分子量(GPC法)1380、アミン当量94.5meq/100gのアミン変性エポキシ樹脂を得た。得られたアミン変性エポキシ樹脂の溶解性パラメータは11.7であった。
製造例3 顔料分散樹脂の製造
攪拌機、冷却器、窒素注入管、温度計および滴下ロートを取り付けたフラスコに、エポキシ当量188のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER−331J)382.20部と、ビスフェノールA111.98部を秤り取り、80℃まで昇温し、均一に溶解した後、2−エチル−4−メチルイミダゾール1%溶液1.53部を加え、170℃で2時間反応させた。140℃まで冷却した後、これに2−エチルヘキサノールハーフブロック化イソホロンジイソシアネート(不揮発分90%)196.50部を加え、NCO基が消失するまで反応させた。これにジプロピレングリコールモノブチルエーテル205.00部を加え、続いて1−(2−ヒドロキシエチルチオ)−2−プロパノール408.00部、ジメチロールプロピオン酸134.00部を添加し、イオン交換水144.00部を加え、70℃で反応させた。反応は酸価が5以下になるまで継続した。得られた顔料分散樹脂はイオン交換1150.50部で不揮発分35%に希釈した。
製造例4 顔料分散ペーストの製造
サンドグラインドミルに製造例3で得た顔料分散樹脂を120部、二酸化チタン192.0部、ジブチルスズオキシド8.0部およびイオン交換水184部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分48%)。
製造例5 非架橋アクリル樹脂(1)の製造
還流冷却器、撹拌機、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた5つ口フラスコに、酢酸n−ブチル300.0部を仕込み、窒素雰囲気下120℃に加熱保持した。これへ、スチレン200.0部、イソブチルメタクリレート325.6部、2−エチルヘキシルアクリレート150.2部、エチルアクリレート138.6部、ヒドロキシエチルメタクリレート185.6部、酢酸n−ブチル60.0部、およびt−ブチルパーオクトエート180.0部の混合物を滴下ロートから3時間かけて滴下した。滴下終了後120℃に約1時間保持した後、酢酸n−ブチル30.0部、およびt−ブチルパーオクトエート10.0部の混合物を滴下し、120℃で約30分保持し、固形分70%のアクリル樹脂の溶液を得た。
得られた非架橋アクリル樹脂(1)の溶解性パラメータは10.6、ガラス転移温度は20℃、数平均分子量は2500であった。
製造例6 非架橋アクリル樹脂(2)の製造
還流冷却器、撹拌機、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた5つ口フラスコに、酢酸n−ブチル300.0部を仕込み、窒素雰囲気下120℃に加熱保持した。これへ、スチレン200.0部、イソブチルメタクリレート478.4部、2−エチルヘキシルアクリレート62.0部、エチルアクリレート74.0部、ヒドロキシエチルメタクリレート185.6部、酢酸n−ブチル60.0部、およびt−ブチルパーオクトエート180.0部の混合物を滴下ロートから3時間かけて滴下した。滴下終了後120℃に約1時間保持した後、酢酸n−ブチル30.0部、およびt−ブチルパーオクトエート10.0部の混合物を滴下し、120℃で約30分保持し、固形分70%のアクリル樹脂の溶液を得た。
得られた非架橋アクリル樹脂(2)の溶解性パラメータ10.6は、ガラス転移温度は40℃、数平均分子量は2500であった。
製造例7 非架橋アクリル樹脂(3)の製造
還流冷却器、撹拌機、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた5つ口フラスコに、酢酸n−ブチル300.0部を仕込み、窒素雰囲気下120℃に加熱保持した。これへ、スチレン200.0部、イソブチルメタクリレート478.4部、2−エチルヘキシルアクリレート62.0部、エチルアクリレート74.0部、ヒドロキシエチルメタクリレート185.6部、酢酸n−ブチル60.0部、およびt−ブチルパーオクトエート140.0部の混合物を滴下ロートから3時間かけて滴下した。滴下終了後120℃に約1時間保持した後、酢酸n−ブチル30.0部、およびt−ブチルパーオクトエート10.0部の混合物を滴下し、120℃で約30分保持し、固形分69%のアクリル樹脂の溶液を得た。
得られた非架橋アクリル樹脂(3)の溶解性パラメータは10.6、ガラス転移温度は20℃、数平均分子量は3500であった。
製造例8 非架橋アクリル樹脂(4)の製造
還流冷却器、撹拌機、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた5つ口フラスコに、酢酸n−ブチル300.0部を仕込み、窒素雰囲気下120℃に加熱保持した。これへ、スチレン200.0部、イソブチルメタクリレート395.2部、2−エチルヘキシルアクリレート219.2部、ヒドロキシエチルメタクリレート185.6部、酢酸n−ブチル60.0部、およびt−ブチルパーオクトエート180.0部の混合物を滴下ロートから3時間かけて滴下した。滴下終了後120℃に約1時間保持した後、酢酸n−ブチル30.0部、およびt−ブチルパーオクトエート10.0部の混合物を滴下し、120℃で約30分保持し、固形分70%のアクリル樹脂の溶液を得た。
得られた非架橋アクリル樹脂(4)の溶解性パラメータは10.4、ガラス転移温度は20℃、数平均分子量は2500であった。
製造例9 ブロックイソシアネート硬化剤(2)の製造
攪拌機、冷却器、窒素注入管、温度計および滴下ロートを取り付けたフラスコにポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI、イソシアネート基含量(NCO含量)30.2)432.7部とメチルイソブチルケトン89部、およびジブチルスズジラウレート0.3部を秤りとり、攪拌、窒素をバブリングしながら、ブチルセロソルブ367.3部を滴下ロートより1時間かけて滴下した。温度は50℃からはじめ70℃まで昇温した。そのあと1時間反応を継続し、赤外線分光計によりNCO基の吸収が消失するまで反応させた。その後メチルイソブチルケトン111部を加え、不揮発分80%とし、ブロックイソシアネート硬化剤(2)を得た。
比較製造例1 比較例用非架橋アクリル樹脂(5)の製造
還流冷却器、撹拌機、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた5つ口フラスコに、酢酸n−ブチル300.0部を仕込み、窒素雰囲気下120℃に加熱保持した。これへ、スチレン200.0部、イソブチルメタクリレート89.0部、2−エチルヘキシルアクリレート50部、エチルアクリレート534.0部、ヒドロキシエチルメタクリレート186.0部、酢酸n−ブチル60.0部、およびt−ブチルパーオクトエート200.0部の混合物を滴下ロートから3時間かけて滴下した。滴下終了後120℃に約1時間保持した後、酢酸n−ブチル30.0部、およびt−ブチルパーオクトエート10.0部の混合物を滴下し、120℃で約30分保持し、固形分70%のアクリル樹脂の溶液を得た。
得られた非架橋アクリル樹脂(5)の溶解性パラメータは11.2、ガラス転移温度は20℃、数平均分子量は2000であった。
比較製造例2 比較例用非架橋アクリル樹脂(6)の製造
還流冷却器、撹拌機、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた5つ口フラスコに、酢酸n−ブチル300.0部を仕込み、窒素雰囲気下120℃に加熱保持した。これへ、スチレン250.0部、イソブチルメタクリレート451.7部、2−エチルヘキシルアクリレート12.2部、ヒドロキシエチルメタクリレート278.4部、メタクリル酸7.7部、酢酸n−ブチル60.0部、およびt−ブチルパーオクトエート140.0部の混合物を滴下ロートから3時間かけて滴下した。滴下終了後120℃に約1時間保持した後、酢酸n−ブチル30.0部、およびt−ブチルパーオクトエート10.0部の混合物を滴下し、120℃で約30分保持し、固形分70%のアクリル樹脂の溶液を得た。
得られた非架橋アクリル樹脂(6)の溶解性パラメータは11.0、ガラス転移温度は60℃、数平均分子量は3080であった。
比較製造例3 比較例用非架橋アクリル樹脂(7)の製造
還流冷却器、撹拌機、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた5つ口フラスコに、酢酸n−ブチル300.0部を仕込み、窒素雰囲気下120℃に加熱保持した。これへ、スチレン200.0部、イソブチルメタクリレート150.3部、2−エチルヘキシルアクリレート251.5部、ヒドロキシエチルメタクリレート185.6部、エチルアクリレート212.6部、酢酸n−ブチル60.0部、およびt−ブチルパーオクトエート180.0部の混合物を滴下ロートから3時間かけて滴下した。滴下終了後120℃に約1時間保持した後、酢酸n−ブチル30.0部、およびt−ブチルパーオクトエート10.0部の混合物を滴下し、120℃で約30分保持し、固形分70%のアクリル樹脂の溶液を得た。
得られた非架橋アクリル樹脂(7)の溶解性パラメータは10.6、ガラス転移温度は0℃、数平均分子量は2500であった。
比較製造例4 比較例用非架橋アクリル樹脂(8)の製造
還流冷却器、撹拌機、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた5つ口フラスコに、酢酸n−ブチル300.0部を仕込み、窒素雰囲気下120℃に加熱保持した。これへ、スチレン250.0部、イソブチルメタクリレート401.7部、2−エチルヘキシルアクリレート155.0部、ヒドロキシエチルメタクリレート185.6部、メタクリル酸7.7部、酢酸n−ブチル60.0部、およびt−ブチルパーオクトエート140.0部の混合物を滴下ロートから3時間かけて滴下した。滴下終了後120℃に約1時間保持した後、酢酸n−ブチル30.0部、およびt−ブチルパーオクトエート10.0部の混合物を滴下し、120℃で約30分保持し、固形分70%のアクリル樹脂の溶液を得た。
得られた非架橋アクリル樹脂(8)の溶解性パラメータは10.6、ガラス転移温度は60℃、数平均分子量は3030であった。
比較製造例5 比較例用非架橋アクリル樹脂(9)の製造
還流冷却器、撹拌機、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた5つ口フラスコに、酢酸n−ブチル300.0部を仕込み、窒素雰囲気下120℃に加熱保持した。これへ、スチレン200.0部、イソブチルメタクリレート325.6部、2−エチルヘキシルアクリレート150.2部、ヒドロキシエチルメタクリレート185.6部、エチルアクリレート138.6部、酢酸n−ブチル60.0部、およびt−ブチルパーオクトエート130.0部の混合物を滴下ロートから3時間かけて滴下した。滴下終了後120℃に約1時間保持した後、酢酸n−ブチル30.0部、およびt−ブチルパーオクトエート10.0部の混合物を滴下し、120℃で約30分保持し、固形分70%のアクリル樹脂の溶液を得た。
得られた非架橋アクリル樹脂(9)の溶解性パラメータは10.4、ガラス転移温度は40℃、数平均分子量は3720であった。
比較製造例6 比較例用架橋樹脂粒子の製造
反応容器にブチルセロソルブ120部を入れ120℃に加熱攪拌した。ここにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2部およびブチルセロソルブ10部を混合した溶液と、グリシジルメタクリレート15部、2−エチルヘキシルメタクリレート50部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート20部およびn−ブチルメタクリレート15部からなるモノマー混合物とを3時間で滴下した。30分間エージングした後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5部およびブチルセルソルブ5部を混合した溶液を30分で滴下し、2時間のエージングを行った後、冷却した。ここにN,N−ジメチルアミノエタノール7部および50%乳酸水溶液15部を加えて80℃で加熱攪拌した。酸価が1以下になり、粘度上昇が止まった時点で加熱を停止し、アンモニウム基を有するアクリル樹脂を得た。このアンモニウム基を有するアクリル樹脂の1分子あたりのアンモニウム基の個数は6.0個であった。
反応容器に、アンモニウム基を有するアクリル樹脂120部と脱イオン水270部とを加え、75℃で加熱攪拌した。ここに2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)1.5部の酢酸100%中和水溶液を5分かけて滴下した。5分間エージングした後、メチルメタクリレート30部を5分かけて滴下した。さらに5分間エージングした後、アンモニウム基を有するアクリル樹脂170部と脱イオン水250部とを混合した溶液にメチルメタクリレート170部、スチレン40部、n−ブチルメタクリレート30部、グリシジルメタクリレート5部およびネオペンチルグリコールジメタクリレート30部からなるエチレン性不飽和モノマー混合物を加え攪拌して得られたプレエマルションを40分かけて滴下した。60分間エージングした後、冷却し、架橋樹脂粒子1の分散液を得た。得られた架橋樹脂粒子の分散液の不揮発分は35%、pHは5.0、平均粒子径は0.1μmであった。ここで、架橋樹脂粒子の平均粒子径は、以下の要領で測定した。
樹脂粒子の平均粒子径を、日機装(株)社製、MICROTRAC9340UPAを用いて、粒状粒子透過測定法にて測定した。また、この測定器において、架橋樹脂粒子の粒度分布を測定し、その測定値から累積相対度数F(x)=0.5における平均粒子径を算出した。これらの測定および算出においては、溶媒(水)の屈折率1.33、樹脂分の屈折率1.59を用いた。
実施例1
イオン交換水310部と酢酸16部を秤り取り、70℃まで加温した製造例2のアミン変性エポキシ樹脂223部、製造例5の非架橋アクリル樹脂(1)45部および製造例1のブロックイソシアネート硬化剤140部の混合物を徐々に滴下し、攪拌して均一に分散させた。そのあとイオン交換水を加え固形分36%に調整した。
こうして得られたエマルション775部、架橋樹脂粒子(メタクリル酸メチルを主成分とする架橋樹脂粒子;東洋紡績(株)社製、タフチック(登録商標)F−200、固形分濃度31重量%)100部、製造例4の顔料分散ペースト34部およびイオン交換水3754部とを混合して、無機顔料の含有量(PWC)5重量%、架橋樹脂粒子10重量%、非架橋アクリル樹脂9重量%、固形分7.0重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
実施例2
非架橋アクリル樹脂(1)45部の代わりに、製造例6の非架橋アクリル樹脂(2)45部を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてカチオン電着塗料組成物を得た。
実施例3
非架橋アクリル樹脂(1)45部の代わりに、製造例7の非架橋アクリル樹脂(3)46部を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてカチオン電着塗料組成物を得た。
実施例4
非架橋アクリル樹脂(1)45部の代わりに、製造例8の非架橋アクリル樹脂(4)45部を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてカチオン電着塗料組成物を得た。
実施例5
イオン交換水310部と酢酸16部を秤り取り、70℃まで加温した製造例2のアミン変性エポキシ樹脂223部、製造例5の非架橋アクリル樹脂(1)45部および製造例9のブロックイソシアネート硬化剤(2)140部の混合物を徐々に滴下し、攪拌して均一に分散させた。そのあとイオン交換水を加え固形分36%に調整した。
こうして得られたエマルション775部、架橋樹脂粒子(メタクリル酸メチルを主成分とする架橋樹脂粒子;東洋紡績(株)社製、タフチック(登録商標)F−200、固形分濃度31重量%)100部、製造例4の顔料分散ペースト34部およびイオン交換水3754部とを混合して、無機顔料の含有量(PWC)5重量%、架橋樹脂粒子10重量%、非架橋アクリル樹脂9重量%、固形分7.0重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
比較例1
イオン交換水310部と酢酸16部を秤り取り、70℃まで加温した製造例2のアミン変性エポキシ樹脂248部および製造例1のブロックイソシアネート硬化剤155部の混合物を徐々に滴下し、攪拌して均一に分散させた。そのあとイオン交換水を加え固形分36%に調整した。
こうして得られたエマルション775部、架橋樹脂粒子(メタクリル酸メチルを主成分とする架橋樹脂粒子;東洋紡績(株)社製、タフチック(登録商標)F−200、固形分濃度31重量%)100部、製造例4の顔料分散ペースト34部およびイオン交換水3754部とを混合して、無機顔料の含有量(PWC)5重量%、架橋樹脂粒子10重量%、固形分7.0重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
比較例2
イオン交換水310部と酢酸16部を秤り取り、70℃まで加温した製造例2のアミン変性エポキシ樹脂223部、比較製造例1の非架橋アクリル樹脂(5)45部および製造例1のブロックイソシアネート硬化剤140部の混合物を徐々に滴下し、攪拌して均一に分散させた。そのあとイオン交換水を加え固形分36%に調整した。
こうして得られたエマルション775部、架橋樹脂粒子(メタクリル酸メチルを主成分とする架橋樹脂粒子;東洋紡績(株)社製、タフチック(登録商標)F−200、固形分濃度31重量%)100部、製造例4の顔料分散ペースト34部およびイオン交換水3754部とを混合して、無機顔料の含有量(PWC)5重量%、架橋樹脂粒子10重量%、非架橋アクリル樹脂9重量%、固形分7.0重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
比較例3
イオン交換水310部と酢酸16部を秤り取り、70℃まで加温した製造例2のアミン変性エポキシ樹脂223部、比較製造例2の非架橋アクリル樹脂(6)45部および製造例1のブロックイソシアネート硬化剤140部の混合物を徐々に滴下し、攪拌して均一に分散させた。そのあとイオン交換水を加え固形分36%に調整した。
こうして得られたエマルション775部、架橋樹脂粒子(メタクリル酸メチルを主成分とする架橋樹脂粒子;東洋紡績(株)社製、タフチック(登録商標)F−200、固形分濃度31重量%)100部、製造例4の顔料分散ペースト34部およびイオン交換水3754部とを混合して、無機顔料の含有量(PWC)5重量%、架橋樹脂粒子10重量%、非架橋アクリル樹脂9重量%、固形分7.0重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
比較例4
イオン交換水310部と酢酸16部を秤り取り、70℃まで加温した製造例2のアミン変性エポキシ樹脂223部、比較製造例3の非架橋アクリル樹脂(7)45部および製造例1のブロックイソシアネート硬化剤140部の混合物を徐々に滴下し、攪拌して均一に分散させた。そのあとイオン交換水を加え固形分36%に調整した。
こうして得られたエマルション775部、架橋樹脂粒子(メタクリル酸メチルを主成分とする架橋樹脂粒子;東洋紡績(株)社製、タフチック(登録商標)F−200、固形分濃度31重量%)100部、製造例4の顔料分散ペースト34部およびイオン交換水3754部とを混合して、無機顔料の含有量(PWC)5重量%、架橋樹脂粒子10重量%、非架橋アクリル樹脂9重量%、固形分7.0重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
比較例5
イオン交換水310部と酢酸16部を秤り取り、70℃まで加温した製造例2のアミン変性エポキシ樹脂223部、比較製造例4の非架橋アクリル樹脂(8)45部および製造例1のブロックイソシアネート硬化剤140部の混合物を徐々に滴下し、攪拌して均一に分散させた。そのあとイオン交換水を加え固形分36%に調整した。
こうして得られたエマルション775部、架橋樹脂粒子(メタクリル酸メチルを主成分とする架橋樹脂粒子;東洋紡績(株)社製、タフチック(登録商標)F−200、固形分濃度31重量%)100部、製造例4の顔料分散ペースト34部およびイオン交換水3754部とを混合して、無機顔料の含有量(PWC)5重量%、架橋樹脂粒子10重量%、非架橋アクリル樹脂9重量%、固形分7.0重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
比較例6
イオン交換水310部と酢酸16部を秤り取り、70℃まで加温した製造例2のアミン変性エポキシ樹脂223部、比較製造例5の非架橋アクリル樹脂(9)45部および製造例1のブロックイソシアネート硬化剤140部の混合物を徐々に滴下し、攪拌して均一に分散させた。そのあとイオン交換水を加え固形分36%に調整した。
こうして得られたエマルション775部、架橋樹脂粒子(メタクリル酸メチルを主成分とする架橋樹脂粒子;東洋紡績(株)社製、タフチック(登録商標)F−200、固形分濃度31重量%)100部、製造例4の顔料分散ペースト34部およびイオン交換水3754部とを混合して、無機顔料の含有量(PWC)5重量%、架橋樹脂粒子10重量%、非架橋アクリル樹脂9重量%、固形分7.0重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
比較例7
イオン交換水310部と酢酸16部を秤り取り、70℃まで加温した製造例2のアミン変性エポキシ樹脂223部、製造例5の非架橋アクリル樹脂(1)45部および製造例1のブロックイソシアネート硬化剤140部の混合物を徐々に滴下し、攪拌して均一に分散させた。そのあとイオン交換水を加え固形分36%に調整した。
こうして得られたエマルション861部、製造例4の顔料分散ペースト34部およびイオン交換水3768部とを混合して、無機顔料の含有量(PWC)5重量%、非架橋アクリル樹脂9重量%、固形分7.0重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
比較例8
イオン交換水310部と酢酸16部を秤り取り、70℃まで加温した製造例2のアミン変性エポキシ樹脂223部、製造例5の非架橋アクリル樹脂(1)45部および製造例1のブロックイソシアネート硬化剤140部の混合物を徐々に滴下し、攪拌して均一に分散させた。そのあとイオン交換水を加え固形分36%に調整した。
こうして得られたエマルション775部、比較製造例6の比較例用架橋樹脂粒子89部、製造例4の顔料分散ペースト34部およびイオン交換水3767部とを混合して、無機顔料の含有量(PWC)5重量%、架橋樹脂粒子10重量%、非架橋アクリル樹脂9重量%、固形分7.0重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
比較例9
イオン交換水310部と酢酸16部を秤り取り、70℃まで加温した製造例1のアミン変性エポキシ樹脂248部、および比較製造例1のブロックイソシアネート硬化剤155部の混合物を徐々に滴下し、攪拌して均一に分散させた。そのあとイオン交換水を加え固形分36%に調整した。
こうして得られたエマルション861部および製造例4で得られた顔料分散ペースト192部と、イオン交換水958部とを混合して、無機顔料の含有量(PWC)23重量%、固形分20重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
上記実施例および比較例により得られたカチオン電着塗料組成物について、塗膜平滑性および端面被覆性などの評価、および動的粘弾性における80℃での損失弾性率および140℃での貯蔵弾性率の測定を、以下の方法により行った。
電着塗膜の外観(塗膜平滑性)評価
電着塗膜の外観評価は、粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)を測定することにより行った。リン酸亜鉛処理した冷間圧延鋼板を、垂直方向で、製造例および比較例で得られたカチオン電着塗料組成物に浸漬し、焼付後の膜厚が15μmとなるような塗装電圧で塗装して得られた未硬化の電着塗膜を160℃10分間焼付した。その後、その未硬化の電着塗膜のRa値を、JIS−B0601に準拠し、評価型表面粗さ測定機(株式会社ミツトヨ製、SURFTEST SJ−201P)を用いて測定した。2.5mm幅カットオフ(区画数5)を入れたサンプルを用いて7回測定し、上下消去平均によりRa値を得た。結果を表1および表2に示す。このRa値が小さい程、凹凸が少なく、塗膜外観が良好であるといえる。具体的には、Ra値が0.25μm以下の場合、合格である。
端面被覆性評価
カチオン電着塗料組成物にリン酸亜鉛処理を施したカッターナイフ(OLFA製:LB−50K)の被塗物を浸漬し、上記被塗物を陰極として陽極との間に電圧を印加し、被膜を析出させる。また上記電着条件はカッターナイフに析出膜厚が15μmとなる様に調整した印加電圧および時間とした。得られた電着塗膜を水洗した後、160℃にて10分焼き付ける事により、硬化電着塗膜を得た。
硬化電着塗膜が被覆したカッターナイフの中心を折り、カッターナイフ先端(鋭角部)から30ミクロン部位に被覆した硬化電着塗膜の膜厚をデジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス社製:VH−8000)にて測定した。図2には、カッターナイフの先端から30ミクロン部位を模式的に示した。この膜厚が8μm以上の場合、合格となる。
沈降性評価(水平外観)
製造例、比較例で得られたカチオン電着塗料組成物に、リン酸亜鉛処理した冷間圧延鋼板を水平方向に浸漬したこと以外は、電着塗膜の外観(塗膜平滑性)評価と同様の操作を行った。その後、上記塗膜平滑性評価と同様の基準で評価した。
電着塗膜の損失弾性率および貯蔵弾性率の測定
上記で得られたカチオン電着塗料組成物にブリキ板を浸漬し、焼付後の膜厚が15μmとなるような塗装電圧で塗装して電着塗膜を形成し、これを水洗して余分な電着塗料組成物を取り除いた。次いで水分を取り除いた後、乾燥させることなくすぐにその未硬化状態の塗膜片を取り出して、試料を調製した。こうして得られた試料を、回転型動的粘弾性測定装置であるRheosol−G3000(株式会社ユービーエム製)を用いて、動的粘弾性における温度依存測定を、設定条件:歪み0.5deg、周波数0.02Hz、昇温速度2.0℃/minで貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)の測定を行った。
架橋樹脂粒子の平均粒子径の測定
上記実施例および比較例で用いた架橋樹脂粒子の平均粒子径は以下の要領で測定した。架橋樹脂粒子の平均粒子径を、日機装(株)社製、MICROTRAC9340UPAを用いて、粒状粒子透過測定法にて測定した。また、この測定器において、架橋樹脂粒子の粒度分布を測定し、その測定値から累積相対度数F(x)=0.5における平均粒子径を算出した。これらの測定および算出においては、溶媒(水)の屈折率1.33、樹脂分の屈折率1.59を用いた。
架橋樹脂粒子の熱軟化温度の測定
架橋樹脂粒子を固形分濃度30重量%に調整して得られた試料を、回転型動的粘弾性測定装置であるRheosol−G3000(株式会社ユービーエム製)を用い、温度依存性測定にて、歪み0.5deg.、周波数0.02Hz、昇温速度4.0℃/minの測定条件で、90℃からの貯蔵弾性率G’の測定を行った。測定結果を図1のようなグラフとし、一定粘度で推移する領域の接線と粘度低下が起こっている領域の接線を引き、その交点の温度を熱軟化温度とした。
Figure 2009235350
実施例5:ブロックイソシアネート硬化剤として、イソシアネート基含量29.0〜31.0であるポリフェニレンポリイソシアネートをブロックしたブロックイソシアネートである、製造例9のブロックイソシアネート硬化剤(2)を使用。
Figure 2009235350
Figure 2009235350
架橋度は熱軟化温度測定より、熱軟化温度別に表記した。
架橋度 大;熱軟化温度140℃以上
架橋度 中;熱軟化温度120℃以上、140℃未満
架橋度 小;熱軟化温度120℃以下
架橋樹脂粒子#1:東洋紡社製F−200(商品名)
架橋樹脂粒子#2:比較製造例6で得られた比較例用架橋樹脂粒子
上記表の実施例1〜5から明らかなように、低灰分型のカチオン電着塗料組成物であっても、平均粒子径1.0〜3.0μmの架橋樹脂粒子および溶解性パラメータが10.4〜10.8、ガラス転移温度が20〜40℃、および数平均分子量が2500〜3500である非架橋アクリル樹脂を含むことによって、従来の塗料の例である比較例9と同様に、塗膜平滑性および端面被覆性において優れた性能を示すことがわかった。また、ブロックイソシアネート硬化剤としてイソシアネート基含量29.0〜31.0であるポリフェニレンポリイソシアネートをブロックしたブロックイソシアネートを用いた実施例5においては、端面被覆性がさらに向上することが確認された。比較例9は樹脂粒子を含まない従来の無機顔料を含むもので、塗膜表面平滑性はよいが、無機顔料量(灰分量)が高く、そのため沈降性評価は悪い。
低灰分型のカチオン電着塗料組成物である比較例1〜8について、非架橋アクリル樹脂を含まない比較例1は、端面被覆性が劣ることが確認された。
非架橋アクリル樹脂を含むものの、含まれる非架橋アクリル樹脂の溶解性パラメータ、ガラス転移温度および数平均分子量の何れかが本発明の範囲から外れる比較例2〜6は、塗膜平滑性および端面被覆性の何れか一方または両方が劣ることが確認された。
本発明における非架橋アクリル樹脂を含む一方で架橋樹脂粒子を含まない比較例7は、端面被覆性が劣ることが確認された。
本発明における非架橋アクリル樹脂を含む一方で架橋樹脂粒子の平均粒子径が本発明の範囲を超える比較例8は、塗膜表面平滑性の低下が確認された。
本発明によれば、平均粒子径が1.0〜3.0μmである架橋樹脂粒子と、溶解性パラメータが10.4〜10.8、ガラス転移温度が20〜40℃、および数平均分子量が2500〜3500である非架橋アクリル樹脂とを、カチオン電着塗料組成物中に含めることによって、省エネルギーおよび塗装工程短縮化に適した低灰分型カチオン電着塗料組成物において、塗膜表面平滑性と端面被覆性の両立が可能になる。これにより、低灰分型カチオン電着塗料組成物における防食性向上および塗膜外観向上を図ることができる。本発明は、省エネルギーおよび塗装工程短縮化に適した低灰分型カチオン電着塗料組成物において塗膜性能を維持もしくは改善する手段として有効である。
熱軟化温度を説明するための温度と貯蔵弾性率G’とのグラフである。 カッターナイフの先端から30ミクロン部位を模式的に示す図である。

Claims (8)

  1. カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、架橋樹脂粒子、非架橋アクリル樹脂、およびカチオン電着塗料組成物の塗料固形分に対して10重量%以下の無機顔料を含む、カチオン電着塗料組成物であって、
    該架橋樹脂粒子は、平均粒子径1.0〜3.0μmであり、
    該非架橋アクリル樹脂は、溶解性パラメータが10.4〜10.8、ガラス転移温度が20〜40℃、および数平均分子量が2500〜3500である、
    カチオン電着塗料組成物。
  2. 前記カチオン電着塗料組成物を電着塗装して得られた未硬化の析出塗膜の140℃における貯蔵弾性率(G’)が80〜500dyn/cmであり、80℃における損失弾性率(G”)が10〜150dyn/cmである、請求項1記載のカチオン電着塗料組成物。
  3. 前記非架橋アクリル樹脂の含有量は、カチオン電着塗料組成物の樹脂固形分に対して5〜15重量%である、請求項1または2記載のカチオン電着塗料組成物。
  4. 前記ブロックイソシアネート硬化剤は、イソシアネート基含量29.0〜31.0であるポリフェニレンポリイソシアネートをブロックしたブロックイソシアネートを含む、請求項1〜3いずれかに記載のカチオン電着塗料組成物。
  5. 前記架橋樹脂粒子の含有量は、カチオン電着塗料組成物の樹脂固形分に対して3〜15重量%である、請求項1〜4いずれかに記載のカチオン電着塗料組成物。
  6. 前記架橋樹脂粒子の熱軟化温度が120〜180℃である、請求項1〜5いずれかに記載のカチオン電着塗料組成物。
  7. カチオン電着塗料組成物中に被塗物を浸漬して電圧を印加し、焼き付け硬化させることによる硬化電着塗膜の形成方法において、該カチオン電着塗料組成物が、平均粒子径1.0〜3.0μmである架橋樹脂粒子と、溶解性パラメータが10.4〜10.8、ガラス転移温度が20〜40℃、および数平均分子量が2500〜3500である非架橋アクリル樹脂とを含有する請求項1〜6いずれかに記載のカチオン電着塗料組成物であることを特徴とする、硬化電着塗膜の塗膜平滑性および端面被覆性を両立させる方法。
  8. 請求項1〜6いずれかに記載のカチオン電着塗料組成物中に被塗物を浸漬し、電圧を印加することにより未硬化の析出塗膜を形成し、次いで焼き付け硬化させることによる硬化電着塗膜の形成方法において、
    該析出塗膜の140℃における貯蔵弾性率(G’)が80〜500dyn/cmであり、80℃における損失弾性率(G”)が10〜150dyn/cmである、塗膜平滑性および端面被覆性を向上させた硬化電着塗膜の形成方法。
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