JP2009235209A - 植物由来組成物とその硬化物 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い耐熱性と機械的特性を有する硬化物を形成することができ、しかも高い反応性を有する植物由来組成物とその硬化物を提供する。
【解決手段】少なくとも1つのフェノール核を有するフェノール性成分を含む、160〜400℃、0.8〜30MPaの加圧熱水で処理した植物の抽出成分と、植物油脂のエポキシ化合物とを含有し、植物油脂のエポキシ化合物のエポキシ当量が100〜400であり、少なくとも1つのフェノール核を有するフェノール性成分を含む植物の抽出成分と植物油脂のエポキシ化合物との合計量に対して植物油脂のエポキシ化合物を1〜20質量%含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】少なくとも1つのフェノール核を有するフェノール性成分を含む、160〜400℃、0.8〜30MPaの加圧熱水で処理した植物の抽出成分と、植物油脂のエポキシ化合物とを含有し、植物油脂のエポキシ化合物のエポキシ当量が100〜400であり、少なくとも1つのフェノール核を有するフェノール性成分を含む植物の抽出成分と植物油脂のエポキシ化合物との合計量に対して植物油脂のエポキシ化合物を1〜20質量%含有することを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、植物由来組成物とその硬化物に関するものである。
近年、地球温暖化などの環境問題に対する関心が高まるにつれ、プラスチック分野においては、石油由来の材料に代替するものとして、低エミッションかつカーボンニュートラルな植物由来の分解物を重合して得られる樹脂に注目が集まってきている。
中でも、植物由来の分解物の一種である乳酸を重合して得られたポリ乳酸は、結晶性を有し、他の植物由来樹脂と比較して物性の高い樹脂の一つであり、大量生産も可能で生産コストも比較的低い。
しかし、ポリ乳酸は熱可塑性樹脂であり、汎用の石油由来の熱可塑性樹脂(PE、PP、ABSなど)に比較すると、耐熱性と機械的特性が低いために、広く普及するには至っていない。また、ポリ乳酸は耐熱性の高いエンジニアリングプラスチックや熱硬化性樹脂に代替できるような物性を有していない。
一方、木材などに多く含まれるポリフェノール類であるリグニンは、植物由来の物質としてはセルロースに次ぐ存在量がある。リグニンはパルプ製造の際に廃棄物となるため、これを有効利用しようという試みが古くからなされてきた。
たとえば、リグニンは化学構造がフェノール樹脂に類似していることから、フェノール樹脂と同様にリグニンをホルムアルデヒドと反応させ縮合させて接着剤として用いることが検討されてきた。また、樹皮などに含まれるタンニンもリグニンと同様にホルムアルデヒドと反応させ縮合させて接着剤として用いることが検討されてきた。さらに、フェノール樹脂のメチロール基とリグニンのフェノール性水酸基との反応を期待して、フェノール樹脂にリグニンを添加し、リグニンをフェノール樹脂の高分子骨格の中に取り込む検討もなされてきた。
しかしながら、リグニン等をホルムアルデヒドを用いて反応させる場合、残留したホルムアルデヒドや加水分解によって発生したホルムアルデヒドが放散されるという問題があった。また、リグニンの反応性が従来のフェノール樹脂よりも低いため、物性と生産性が劣り、上記の技術は広く実用化されていないのが現状である。
リグニンを有効利用しようという他の試みとして、リグニンのフェノール性水酸基とポリイソシアナートを反応させてウレタン樹脂とすること(非特許文献1参照)、リグニンのフェノール性水酸基をエポキシ化し、他のエポキシ樹脂と反応させること(非特許文献2参照)、ロジン系成分等およびそれと反応する成分をリグニンに加えること(特許文献1参照)などが検討されている。
特開2003−277615号公報
「木材新素材ハンドブック」技報堂出版 p. 685
「植物由来リグノフェノールを原料とする新規エポキシ樹脂」 ネットワークポリマー、27 (2)、118 (2006)
しかしながら、これらの従来技術では石油由来成分を多く使用しているため、植物由来成分の比率を高くできず、さらに反応性が低いため物性と生産性が劣るという問題があり、広く実用化されていないのが現状である。また特許文献1では、ロジン系成分を加えずにリグニンとエポキシ化合物を混合した配合は物性が低くなっている。これはリグニンの反応性の低さが原因と考えられる。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、高い耐熱性と機械的特性を有する硬化物を形成することができ、しかも高い反応性を有する植物由来組成物とその硬化物を提供することを課題としている。
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
第1に、本発明の植物由来組成物は、少なくとも1つのフェノール核を有するフェノール性成分を含む、160〜400℃、0.8〜30MPaの加圧熱水で処理した植物の抽出成分と、植物油脂のエポキシ化合物とを含有し、植物油脂のエポキシ化合物のエポキシ当量が100〜400であり、少なくとも1つのフェノール核を有するフェノール性成分を含む植物の抽出成分と植物油脂のエポキシ化合物との合計量に対して植物油脂のエポキシ化合物を1〜20質量%含有することを特徴とする。
第2に、本発明の硬化物は、上記第1の植物由来組成物を硬化してなることを特徴とする。
上記第1の発明によれば、植物を特定条件の加圧熱水で処理し抽出することで、植物油脂のエポキシ化合物との反応性が高いフェノール性成分が抽出物として植物から取り出される。当該フェノール性成分を含む抽出成分は、パルプ製造時に副生されるクラフトリグニン、リグニンスルホン酸、硫酸を用いて抽出されるリグノフェノール等とは異なり、植物油脂のエポキシ化合物との反応性が高い。さらに、高い耐熱性と機械的特性を有する硬化物を形成することができ、成形材料や接着剤等として利用することができる。
また、上記の抽出成分と植物油脂のエポキシ化合物との合計量に対して植物油脂のエポキシ化合物の含有量を特定範囲内としているので、植物油脂のエポキシ化合物におけるエポキシ基と、上記の抽出成分におけるフェノール性成分の水酸基とが反応し易くなり、その結果として、耐熱性を向上させるフェノール核が反応物中に含有される割合が高くなるので、硬化物の耐熱性が向上する。
上記第2の発明によれば、上記第1の発明の植物由来組成物を反応させることで硬化物としており、当該組成物は、従来の硬化性樹脂と同様に加熱、光照射、硬化促進剤の添加などにより反応して三次元網状構造の硬化物となるため、熱可塑性樹脂などと比較してより高い耐熱性と機械的強度が得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、抽出成分の原料としての植物は、特に制限はないが、その具体例としては木本植物(マツ科、スギ科、ヒノキ科などの針葉樹、広葉樹)および草本植物の幹、茎、枝、樹皮、葉などの、リグニンやタンニンと呼ばれるポリフェノール類が含まれているものが挙げられる。植物の種類、部位などによって、含まれるポリフェノール類の構造は異なり、現在、これらの構造を特定するための研究が行われている。
上記の植物は、これを粉砕して植物材料とした後に、加圧熱水で処理され、そして抽出によって植物油脂のエポキシ化合物との反応性が高いフェノール性成分が抽出成分として取り出される。
加圧熱水による処理は、160〜400℃、0.8〜30MPaの条件で行われる。当該処理には、いわゆる蒸煮処理、爆砕処理、亜臨界処理、超臨界処理が含まれる。ここで、「亜臨界処理」とは、亜臨界水中における処理のことであり、亜臨界水とは、水の温度および圧力が水の臨界点(臨界温度374.4℃、臨界圧力22.1MPa)以下であって、かつ、温度が140℃以上、その時の圧力が0.36MPa(140℃の飽和蒸気圧)以上の範囲にある状態の水をいう。また「超臨界処理」とは、超臨界水中における処理のことであり、超臨界水とは、温度および圧力が臨界点を超える水のことをいう。
粉砕した植物材料を上記の条件下で処理することによって、加圧熱水による有機物の溶解作用と強い加水分解作用により高分子であるリグニンやタンニンなどが低分子化され、反応性が高いフェノール性成分となる。
加圧熱水による処理が160℃未満または0.8MPa未満の条件で行われると、粉砕した植物材料に含まれるリグニンやタンニンなどの有機物の水への溶解性が低下し、さらに加水分解する能力が低下する。そのため、低分子化が不十分となり、抽出されたフェノール性成分の反応性が低下する。
加圧熱水による処理が400℃を超えるか、または30MPaを超える条件で行われると、粉砕した植物材料に含まれるリグニンやタンニンなどの有機物に対する加水分解作用が強過ぎて、過剰に低分子化され、さらに縮合反応も同時に起こるため、反応性が高いフェノール性成分が得られなくなる。
加圧熱水処理による生成物の抽出条件は、特に制限はなく、生成物の溶解性に応じて水、有機溶媒などの適宜の溶媒が選択され、抽出温度、圧力、時間なども適宜に設定される。抽出操作により、反応性が高いフェノール性成分を含む抽出成分が得られる。
以上のようにして植物から抽出された、少なくとも1つのフェノール核を有するフェノール性成分を含む抽出成分は、その要因は明らかではないが、パルプ製造時に副生されるクラフトリグニン、リグニンスルホン酸、硫酸を用いて抽出されるリグノフェノールなどと異なり、植物油脂のエポキシ化合物との反応性が高くなる。なお、「少なくとも1つのフェノール核を有するフェノール性成分」には、少なくとも1つのフェノール性水酸基を有する芳香族環、特にベンゼン環からなる化合物、当該芳香族環を構造内に少なくとも1つ有する化合物が含まれる。当該芳香族環は、フェノール性水酸基以外の置換基を有していてもよい。
本発明の植物由来組成物に含有される植物油脂のエポキシ化合物は、特に制限はないが、たとえば、市販されている大豆、亜麻、桐、ごま、やしの種子などの植物油脂のエポキシ化合物を用いることができる。これらは脂肪酸のグリセリンエステルのエポキシ化物であり、工業的に生産され市販されている植物油脂のエポキシ化合物のエポキシ当量は、通常は100〜400である。
また、植物油脂のエポキシ化合物の含有量は、少なくとも1つのフェノール核を有するフェノール性成分を含む植物の抽出成分と植物油脂のエポキシ化合物との合計量に対して1〜20質量%である。植物油脂のエポキシ化合物の含有量を当該範囲内とすることで、植物油脂のエポキシ化合物におけるエポキシ基と、少なくとも1つのフェノール核を有するフェノール性成分を含む植物の抽出成分における水酸基とが反応し易くなり、その結果として、耐熱性を向上させるフェノール核が反応物中に含有される割合が高くなるので、硬化物の耐熱性が向上する。
エポキシ当量が100〜400である植物油脂のエポキシ化合物を用いた場合に植物油脂のエポキシ化合物の含有量が20質量%を超えると、植物油脂のエポキシ化合物におけるエポキシ基が、少なくとも1つのフェノール核を有するフェノール性成分を含む植物の抽出成分における水酸基に比べて過剰になり、エポキシ基同士の自重合が起こり易くなる。そうすると耐熱性を向上させるフェノール核が反応物中に含有される割合が低くなるので、硬化物の耐熱性が低下する。一方、植物油脂のエポキシ化合物の含有量が1質量%未満であると、植物油脂のエポキシ化合物におけるエポキシ基の数が不足するため、反応性が低下し、硬化物の形成が困難になる。
本発明の植物由来組成物には、上記の抽出成分と植物油脂のエポキシ化合物に加えて、他の添加成分を配合してもよい。このような添加成分の具体例としては、パラトルエンスルホン酸一水和物、トリフェニルホスフィン、イミダゾール、ジアザビシクロウンデセン等の硬化性樹脂に一般に用いられている硬化促進剤、充填材、増量材などが挙げられる。また、本発明の植物由来組成物は、溶媒で希釈したものとしてもよい。
本発明の植物由来組成物に、硬化促進剤としてパラトルエンスルホン酸一水和物を添加すると、上記の抽出成分と植物油脂のエポキシ化合物との反応を特に促進し、反応性を向上させることができるので好適である。
本発明の植物由来組成物は、高い耐熱性と機械的特性を有する硬化物を形成することができるため、成形材料として好適に用いることができる。また、紙やガラス繊維などに含浸し、あるいは単板に塗布して積層板として好適に用いることができ、接着剤としても好適に用いることができる。
本発明の植物由来組成物は、適宜の条件にて反応させることによって硬化物とされる。硬化反応の反応機構は明らかではないが、主反応としてフェノール性水酸基とエポキシ基との反応が進行し、副反応としてエポキシ基同士の反応が進行することで、三次元網状構造の硬化物となるものと考えられる。硬化反応の条件は、特に制限はなく、従来の硬化性樹脂と同様の条件が適用できる。具体的には、たとえば加熱、光照射、硬化促進剤の添加などにより硬化反応を進行させることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
スギの木粉(平均粒径0.7mm)300gおよび水5Lを耐圧釜に入れ、180℃、1MPa、10分間の条件で、加圧熱水で処理を行った。処理残渣を乾燥後、メチルエチルケトン(ナカライテスク(株)製)で常温、常圧下にて2時間抽出し、可溶部を減圧により濃縮して、植物の抽出成分を得た。
<実施例1>
スギの木粉(平均粒径0.7mm)300gおよび水5Lを耐圧釜に入れ、180℃、1MPa、10分間の条件で、加圧熱水で処理を行った。処理残渣を乾燥後、メチルエチルケトン(ナカライテスク(株)製)で常温、常圧下にて2時間抽出し、可溶部を減圧により濃縮して、植物の抽出成分を得た。
得られた抽出成分をGC-MS分析したところ、当該抽出成分は多種類の化合物からなる混合物であり、2−メトキシフェノールやバニリンなどの、少なくとも1つのフェノール核を有するフェノール性成分を含んでいることが確認された。
この抽出成分と、植物油脂のエポキシ化合物(エポキシ化亜麻仁油、アデカサイザーO−180A、アデカ(株)製、エポキシ当量 176)と、硬化促進剤のパラトルエンスルホン酸一水和物(ナカライテスク(株)製)を溶媒のメチルエチルケトン中で混合して植物由来組成物とした。混合比は抽出成分:植物油脂のエポキシ化合物:硬化促進剤:溶媒=98:2:2:200とした。
この植物由来組成物について、130℃で乾燥した後、150℃、30分、4MPa加圧の条件でプレスを行い、厚さ2mmの硬化物を得た。この硬化物についてTMA(熱機械的分析装置、TMA320、セイコー電子工業(株)製)により0.5g荷重、5℃/min昇温の条件で膨張率を測定し、その変曲点からガラス転移温度を求めた。その結果を表1に示す。
<実施例2>
実施例1と同様にして得た植物の抽出成分と、植物油脂のエポキシ化合物(エポキシ化大豆油、ニューサイザーO−510R、日本油脂(株)製、エポキシ当量 238)と、硬化促進剤のパラトルエンスルホン酸一水和物(ナカライテスク(株)製)を溶媒のメチルエチルケトン中で混合して植物由来組成物とした。混合比は抽出成分:植物油脂のエポキシ化合物:硬化促進剤:溶媒=90:10:2:200とした。
<実施例2>
実施例1と同様にして得た植物の抽出成分と、植物油脂のエポキシ化合物(エポキシ化大豆油、ニューサイザーO−510R、日本油脂(株)製、エポキシ当量 238)と、硬化促進剤のパラトルエンスルホン酸一水和物(ナカライテスク(株)製)を溶媒のメチルエチルケトン中で混合して植物由来組成物とした。混合比は抽出成分:植物油脂のエポキシ化合物:硬化促進剤:溶媒=90:10:2:200とした。
この植物由来組成物について、実施例1と同様に硬化物を得て、TMAによりガラス転移温度を求めた。その結果を表1に示す。
<実施例3>
実施例1と同様にして得た植物の抽出成分と、植物油脂のエポキシ化合物(エポキシ化大豆油、ニューサイザーO−510R、日本油脂(株)製、エポキシ当量238)と、硬化促進剤のパラトルエンスルホン酸一水和物(ナカライテスク(株)製)を溶媒のメチルエチルケトン中で混合して植物由来組成物とした。混合比は抽出成分:植物油脂のエポキシ化合物:硬化促進剤:溶媒=85:15:2:200とした。
<実施例3>
実施例1と同様にして得た植物の抽出成分と、植物油脂のエポキシ化合物(エポキシ化大豆油、ニューサイザーO−510R、日本油脂(株)製、エポキシ当量238)と、硬化促進剤のパラトルエンスルホン酸一水和物(ナカライテスク(株)製)を溶媒のメチルエチルケトン中で混合して植物由来組成物とした。混合比は抽出成分:植物油脂のエポキシ化合物:硬化促進剤:溶媒=85:15:2:200とした。
この植物由来組成物について、実施例1と同様に硬化物を得て、TMAによりガラス転移温度を求めた。その結果を表1に示す。
<比較例1>
実施例1と同様にして得た植物の抽出成分と、植物油脂のエポキシ化合物(エポキシ化亜麻仁油、アデカサイザーO−180A、アデカ(株)製、エポキシ当量 176)と、硬化促進剤のパラトルエンスルホン酸一水和物(ナカライテスク(株)製)を溶媒のメチルエチルケトン中で混合して植物由来組成物とした。混合比は抽出成分:植物油脂のエポキシ化合物:硬化促進剤:溶媒=75:25:2:200とした。
<比較例1>
実施例1と同様にして得た植物の抽出成分と、植物油脂のエポキシ化合物(エポキシ化亜麻仁油、アデカサイザーO−180A、アデカ(株)製、エポキシ当量 176)と、硬化促進剤のパラトルエンスルホン酸一水和物(ナカライテスク(株)製)を溶媒のメチルエチルケトン中で混合して植物由来組成物とした。混合比は抽出成分:植物油脂のエポキシ化合物:硬化促進剤:溶媒=75:25:2:200とした。
この植物由来組成物について、実施例1と同様に硬化物を得て、TMAによりガラス転移温度を求めた。その結果を表1に示す。
<比較例2>
実施例1と同様にして得た植物の抽出成分と、植物油脂のエポキシ化合物(エポキシ化大豆油、ニューサイザーO−510R、日本油脂(株)製、エポキシ当量 238)と、硬化促進剤のパラトルエンスルホン酸一水和物(ナカライテスク(株)製)を溶媒のメチルエチルケトン中で混合して植物由来組成物とした。混合比は抽出成分:植物油脂のエポキシ化合物:硬化促進剤:溶媒=60:40:2:200とした。
<比較例2>
実施例1と同様にして得た植物の抽出成分と、植物油脂のエポキシ化合物(エポキシ化大豆油、ニューサイザーO−510R、日本油脂(株)製、エポキシ当量 238)と、硬化促進剤のパラトルエンスルホン酸一水和物(ナカライテスク(株)製)を溶媒のメチルエチルケトン中で混合して植物由来組成物とした。混合比は抽出成分:植物油脂のエポキシ化合物:硬化促進剤:溶媒=60:40:2:200とした。
この植物由来組成物について、実施例1と同様に硬化物を得て、TMAによりガラス転移温度を求めた。その結果を表1に示す。
<比較例3>
実施例1と同様にして得た植物の抽出成分と、植物由来のエポキシ化合物(エポキシ化大豆油、ニューサイザーO−510R、日本油脂(株)製、エポキシ当量 238)と、硬化促進剤のパラトルエンスルホン酸一水和物(ナカライテスク(株)製)を溶媒のメチルエチルケトン中で混合して植物由来組成物とした。混合比は抽出成分:植物油脂のエポキシ化合物:硬化促進剤:溶媒=99.5:0.5:2:200とした。
<比較例3>
実施例1と同様にして得た植物の抽出成分と、植物由来のエポキシ化合物(エポキシ化大豆油、ニューサイザーO−510R、日本油脂(株)製、エポキシ当量 238)と、硬化促進剤のパラトルエンスルホン酸一水和物(ナカライテスク(株)製)を溶媒のメチルエチルケトン中で混合して植物由来組成物とした。混合比は抽出成分:植物油脂のエポキシ化合物:硬化促進剤:溶媒=99.5:0.5:2:200とした。
この植物由来組成物について、実施例1と同様にプレスを行ったが硬化物を得ることができなかった。
表1に示されるように、実施例1〜3の植物由来組成物は、加熱によって硬化し、その硬化物のガラス転移温度は高いものとなり、特に実施例1、2では100℃以上となった。実施例1〜3では、植物油脂のエポキシ化合物の含有量が、少なくとも1つのフェノール核を有するフェノール性成分を含む植物の抽出成分と植物油脂のエポキシ化合物との合計量に対して1〜20質量%の範囲内と適切であるため、植物油脂のエポキシ化合物におけるエポキシ基と、少なくとも1つのフェノール核を有するフェノール性成分を含む植物の抽出成分における水酸基が反応し易くなり、その結果として、耐熱性を向上させるフェノール核が反応物中に含有される割合が高くなり、硬化物の耐熱性が高いものとなったと考えられる。
これに対して、比較例1、2の植物由来組成物は、加熱によって硬化したものの、その硬化物のガラス転移温度は70℃以下と低くなった。比較例1、2では、植物油脂のエポキシ化合物の含有量が、少なくとも1つのフェノール核を有するフェノール性成分を含む植物の抽出成分と植物油脂のエポキシ化合物との合計量に対して20質量%を超えており、植物油脂のエポキシ化合物におけるエポキシ基が、少なくとも1つのフェノール核を有するフェノール性成分を含む植物の抽出成分の水酸基よりも過剰となって、エポキシ基同士の自重合が起こり易くなり、その結果として、耐熱性を向上させるフェノール核が反応物中に含有される割合が低くなり、硬化物の耐熱性が低下したと考えられる。
比較例3は、植物油脂のエポキシ化合物の含有量が、少なくとも1つのフェノール核を有するフェノール性成分を含む植物の抽出成分と植物油脂のエポキシ化合物との合計量に対して1質量%未満であり、植物油脂のエポキシ化合物におけるエポキシ基の数が不足するため、反応性が低下し、硬化物の形成が困難になったと考えられる。
Claims (2)
- 少なくとも1つのフェノール核を有するフェノール性成分を含む、160〜400℃、0.8〜30MPaの加圧熱水で処理した植物の抽出成分と、植物油脂のエポキシ化合物とを含有し、植物油脂のエポキシ化合物のエポキシ当量が100〜400であり、少なくとも1つのフェノール核を有するフェノール性成分を含む植物の抽出成分と植物油脂のエポキシ化合物との合計量に対して植物油脂のエポキシ化合物を1〜20質量%含有することを特徴とする植物由来組成物。
- 請求項1に記載の植物由来組成物を硬化してなることを特徴とする硬化物。
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