JP2009235006A - α−アシロキシアクリル酸および/またはそのエステルの製造方法 - Google Patents

α−アシロキシアクリル酸および/またはそのエステルの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2009235006A
JP2009235006A JP2008084661A JP2008084661A JP2009235006A JP 2009235006 A JP2009235006 A JP 2009235006A JP 2008084661 A JP2008084661 A JP 2008084661A JP 2008084661 A JP2008084661 A JP 2008084661A JP 2009235006 A JP2009235006 A JP 2009235006A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
acid
ester
reaction
acyloxyacrylic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2008084661A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5090989B2 (ja
Inventor
Ko Ninomiya
航 二宮
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Rayon Co Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Rayon Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Rayon Co Ltd filed Critical Mitsubishi Rayon Co Ltd
Priority to JP2008084661A priority Critical patent/JP5090989B2/ja
Publication of JP2009235006A publication Critical patent/JP2009235006A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5090989B2 publication Critical patent/JP5090989B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Abstract

【課題】 α−アシロキシアクリル酸および/またはそのエステルを、高効率かつ低コストで製造する方法を提供する。
【解決手段】 強酸性陽イオン交換樹脂の存在下、ピルビン酸および/またはピルビン酸エステルとアシル化剤を反応させてα−アシロキシアクリル酸および/またはα−アシロキシアクリル酸エステルを製造する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、α−アシロキシアクリル酸および/またはそのエステルの製造方法に関する。
近年、再生可能な資源であるバイオマスからのエネルギーおよび化学品製造技術として、バイオリファイナリー技術が注目を集めている。バイオリファイナリーとは、各種バイオマスのガス化、糖化および抽出などにより、合成ガス、グルコースなどの糖類およびリグニンなどの芳香族化合物などを製造し、それらを多様に変換することでエネルギーおよび化学品を製造しようというものである。したがって、バイオリファイナリー技術は、従来のオイルリファイナリー(石油精製)依存の大量生産、大量消費の社会から持続可能な社会へのパラダイムシフトを実現するための、非常に重要な技術として位置づけられている。
ポリマー材料においても、植物由来原料から製造されるバイオベースプラスチックのようなカーボンニュートラルな材料は、今後需要が益々拡大することが見込まれている。なかでも、ポリ乳酸(以下、PLA)はバイオベースプラスチックとして産業界での利用が進みつつある有望な材料である。PLAは乳酸を原料として、ラクチド法などにより製造されている。PLAの原料である乳酸は、主にデンプンやセルロースの糖化によって得られるグルコースの発酵法により製造されるが、アセトアルデヒドに青酸を作用させて生じたシアンヒドリンの加水分解、1,2−プロパンジオールにおける末端アルコール基のカルボキシル基への酸化などの化学合成法によっても得ることができる。
現在乳酸は、PLA原料としての利用が中心であるが、将来的にPLA市場がさらに拡大すれば、それに伴って乳酸の生産量も増大し、PLA用途以外に種々の化学品製造用の安価な出発原料になることも期待できる。
これまでに、乳酸およびそのエステルを原料として種々の化学品を製造する試みは、種々なされている。例えば、ピルビン酸および/またはそのエステルの製造方法として、乳酸エステルを、錫−モリブデン系複合酸化物存在下(特許文献1)あるいはテルル−モリブデン系複合酸化物の存在下(特許文献2)で分子状酸素により酸化する方法、モリブデン、バナジウム、テルルおよび/またはアンチモンを含む複合金属酸化物触媒の存在下で分子状酸素により気相接触酸化する方法(特許文献3)、乳酸およびそのエステルを白金または/およびパラジウムに鉛、錫、テルルおよびインジウムからなる群から選ばれた1種以上の元素を含有する触媒存在下で含酸素ガスにより酸化する方法(特許文献4)、さらに、乳酸をリン酸鉄とパラジウムを含む触媒の存在下で分子状酸素により気相接触酸化する方法(特許文献5)などが挙げられる。
あるいは、アクリル酸の製造方法として、乳酸および乳酸アンモニウムをリン酸アルミニウムにより気相接触転化する方法(特許文献6)、乳酸を超臨界条件下(非特許文献1)あるいは亜臨界条件下(非特許文献2)で転化する方法などが挙げられる。
このように、乳酸およびそのエステルから製造可能な有用化合物は多岐にわたる。乳酸は、主にセルロースやデンプンの糖化により得られるグルコースを原料として製造される植物由来の化合物であることから、バイオリファイナリーにより種々の化学品を製造するためのプラットフォーム化合物としても期待できる。
乳酸およびそのエステルから、ピルビン酸およびそのエステルを製造する方法は、前述のとおりである。一方でピルビン酸は、生物における糖の代謝経路である解糖に深く関与する重要な化合物であり、工業的にもグルコースを原料として発酵法によりそのナトリウム塩が製造されている。
ピルビン酸およびそのエステルもまた、各種化学合成の中間体として有用であり、例えば、L−トリプトファン、L−システイン、L−チロシンなどのアミノ酸を合成するための原料として用いられている。
本願発明者は、特に、式(1)で表されるα−アシロキシアクリル酸およびそのエステルに着目した。ピルビン酸メチルからα−アシロキシアクリル酸エステルを製造する方法として、ピルビン酸メチルをパラトルエンスルホン酸存在下、加熱還流条件で無水酢酸によりアシル化する方法(非特許文献3)がある。あるいは、ピリジン存在下、80℃で加熱攪拌して無水酢酸によりアシル化する方法(非特許文献4)もある。
Figure 2009235006
式(1)において、Rは水素原子、無置換または置換アルキル基、無置換または置換アリール基である。アルキル基およびアリール基は不飽和結合を有していてもよい。Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、3−メチルプロピル基、n−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、4−メチルブチル基、2,2−ジメチルペンチル基、シクロヘプチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−ウンデカニル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、フェニル基、ベンジル基が挙げられる。Rは、RCOのアシル基として、飽和脂肪酸、不飽和カルボン酸、オキソカルボン酸、芳香族カルボン酸由来の骨格を有する基であり、カルボキシル基の数に制限はなく、他の置換基や不飽和結合を同一骨格に有していてもよい。RCOのアシル基としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、2−メチルプロパノイル基、n−ペンタノイル基、2−メチルブタノイル基、2,2−ジメチルプロパノイル基、3−メチルブタノイル基、n−ヘキサノイル基、2−メチルペンタノイル基、3−メチルペンタノイル基、4−メチルペンタノイル基、2,2−ジメチルブタノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、cis−9−オクタデセノイル基、cis,cis−9,12−オクタデカジエノイル基、9,12,15−オクタデカトリエノイル基、6,9,12−オクタデカトリエノイル基、ベンゾイル基、2−ヒドロキシベンゾイル基、4−カルボキシベンゾイル基、2−カルボキシベンゾイル基、3−カルボキシベンゾイル基、1−カルボキシプロパノイル基、カルボキシエタノイル基、cis−1−カルボキシアクリロイル基、trans−1−カルボキシアクリロイル基、β−フェニルアクリロイル基、クロトノイル基、アクリロイル基、メタクロイル基が挙げられる。
得られたα−アシロキシアクリル酸およびそのエステルは、二重結合を有するモノマーとして、特にエステルの重合により、高い耐熱性、高い透明性および高い機械的強度を有するポリマーとしての利用が期待されている(特許文献7)。さらに、デンプンやセルロースなどから製造された植物由来のピルビン酸およびそのエステルから製造されたポリマーであれば、バイオベースポリマーとしての利用も可能である(非特許文献5)。
特開平6−56743号公報 特開平6−234704号公報 特開2002−212139号公報 特公昭61−15863号公報 特開2003−146935号公報 特開昭61−115049号公報 特開2005−255991号公報 Journal of Organic Chemistry,54,4596−4602(1989) Industrial Engineering & Chemistry Research,32,2608−2613(1993) Journal of Organic Chemistry,29,3596−3598(1964) Polymer International,54,1557−1563(2005) 高分子先端材料 One Point 第5巻 天然素材プラスチックス,p104,高分子学会編集,共立出版(2006)
α−アシロキシアクリル酸およびそのエステルについての製造方法は、非特許文献3および4に記載されたとおりである。しかしながら、該製造法においては、高温条件、脱水条件および長い反応時間といった厳しい反応条件が必要である上、多種多様な副生物が生成するため、目的物の収率は芳しくない。さらに、触媒としてパラトルエンスルホン酸やピリジンを用いるため、触媒の回収再利用が困難という欠点がある。また、このモノマーを重合しポリマーとするには、蒸留や抽出などの精製によりモノマー純度を高める必要がある。しかしながら、非特許文献3および4における製造方法で得られるモノマーは不純物を多く含むため、大規模で複雑な精製工程が必要になり、プロセスの高コスト化は避けられず、高効率かつ低コストでα−アシロキシアクリル酸およびそのエステルを製造する方法が求められている。
したがって、本発明の目的は、α−アシロキシアクリル酸および/またはそのエステルを、高効率かつ低コストで製造する方法を提供することにある。
本発明は、強酸性陽イオン交換樹脂の存在下、ピルビン酸および/またはピルビン酸エステルとアシル化剤を反応させるα−アシロキシアクリル酸および/またはα−アシロキシアクリル酸エステルの製造方法である。
本発明により、α−アシロキシアクリル酸および/またはそのエステルを、従来の方法よりも高効率かつ低コストで製造可能である。
本発明では、強酸性陽イオン交換樹脂の存在下、ピルビン酸および/またはピルビン酸エステルとアシル化剤を反応させることでα−アシロキシアクリル酸および/またはα−アシロキシアクリル酸エステルを製造する。強酸性陽イオン交換樹脂は、不均一触媒としての利用が容易で、工業的にも有用である。強酸性陽イオン交換樹脂としては、例えば、アンバーライト、アンバーリスト、ダイヤイオン(以上、何れも商品名)などが挙げられる。イオン交換容量、母体樹脂の種類、樹脂の架橋度などが製品あるいはグレードによって異なるが、適宜選択することができる。スルホン酸基に結合している陽イオンはプロトン(H)が好ましいが、Na、Ca2+、Mg2+、K、NH 、Cu2+、Zn2+などの他の陽イオンをHに変換した樹脂を用いることもできる。
なお、α−アシロキシアクリル酸は、ピルビン酸のアシル化反応より製造される。また、α−アシロキシアクリル酸エステルは、ピルビン酸エステルのアシル化反応により製造される。ピルビン酸エステル、α−アシロキシアクリル酸エステルにおけるエステル基の種類には特に制限はなく、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基およびそれらの置換体から、適宜選択することができる。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、3−メチルプロピル基、n−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、4−メチルブチル基、2,2−ジメチルペンチル基、シクロヘプチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−ウンデカニル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、フェニル基、ベンジル基などが挙げられる。
アシル化剤としては、カルボン酸、酸無水物、酸クロライドが挙げられ、中でも酸無水物が好ましい。脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、不飽和カルボン酸、モノカルボン酸、ジカルボン酸などの酸無水物として、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸(酪酸)、イソ酪酸、ペンタン酸(n−吉草酸)、イソ吉草酸、ピバル酸、ヒドロアンゲリカ酸、n−ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、リノール酸、(9,12,15)−リノレン酸、(6,9,12)−リノレン酸、安息香酸、サリチル酸、テレフタル酸、o−フタル酸、m−フタル酸、コハク酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸などの酸無水物が挙げられる。また、異なる2種のカルボン酸からなる混合酸無水物であっても差し支えない。
反応は無溶媒で行ってもよいし、基質やアシル化剤を溶解できるような溶媒を用いてもよい。溶媒の種類には特に制限はないが、多量の水が存在する場合には、エステルの加水分解や酸無水物の加水分解が支配的になるので、溶媒中の水分は少ない方が好ましい。
本発明における反応の機構については、非特許文献5において、ケト−エノール互変異性経由の機構が提唱されている。即ち、まず、酸触媒によるピルビン酸および/またはピルビン酸エステルのα−ケト位のカルボニル酸素へのプロトン付加によりエノール体が生成する。そして、生じたエノール体がアシル化剤のカルボニル炭素へ求核攻撃することにより、α−アシロキシアクリル酸および/またはα−アシロキシアクリル酸エステルが生成される。しかしながら、本願発明者が反応機構について詳細な検討を行ったところ、アシル化剤としてカルボン酸無水物を用いた場合においては、2,2−ジアシロキシ化合物を経由して、α−アシロキシアクリル酸および/またはα−アシロキシアクリル酸エステルが生成していることが分かった。ピルビン酸および/またはピルビン酸エステルへアシル化剤であるカルボン酸無水物が攻撃することで、式(2)で表される2,2−ジアシロキシプロピオン酸および/またはそのエステルが生成する。さらに、この2,2−ジアシロキシプロピオン酸および/またはそのエステルからカルボン酸1分子が脱離することにより、α−アシロキシアクリル酸および/またはα−アシロキシアクリル酸エステルが生成する。RとRは同一でもよいし、異なっても差し支えない。例えば、同一のカルボン酸からなる酸無水物ではRとRは同一となるが、異なるカルボン酸からなる混合酸無水物ではRとRが異なる化合物が得られる。
Figure 2009235006
式(2)において、Rは水素原子、無置換または置換アルキル基、無置換または置換アリール基である。アルキル基およびアリール基は不飽和結合を有していてもよい。Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、3−メチルプロピル基、n−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、4−メチルブチル基、2,2−ジメチルペンチル基、シクロヘプチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−ウンデカニル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、フェニル基、ベンジル基が挙げられる。RおよびRは、RCOおよびRCOのアシル基として、飽和脂肪酸、不飽和カルボン酸、オキソカルボン酸、芳香族カルボン酸由来の骨格を有する基であり、カルボキシル基の数に制限はなく、他の置換基や不飽和結合を同一骨格に有していてもよい。RCOおよびRCOのアシル基としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、2−メチルプロパノイル基、n−ペンタノイル基、2−メチルブタノイル基、2,2−ジメチルプロパノイル基、3−メチルブタノイル基、n−ヘキサノイル基、2−メチルペンタノイル基、3−メチルペンタノイル基、4−メチルペンタノイル基、2,2−ジメチルブタノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、cis−9−オクタデセノイル基、cis,cis−9,12−オクタデカジエノイル基、9,12,15−オクタデカトリエノイル基、6,9,12−オクタデカトリエノイル基、ベンゾイル基、2−ヒドロキシベンゾイル基、4−カルボキシベンゾイル基、2−カルボキシベンゾイル基、3−カルボキシベンゾイル基、1−カルボキシプロパノイル基、カルボキシエタノイル基、cis−1−カルボキシアクリロイル基、trans−1−カルボキシアクリロイル基、β−フェニルアクリロイル基、クロトノイル基、アクリロイル基、メタクロイル基が挙げられる。
本発明は、不均一系反応で行なわれ、液相での反応の方がより一般的である。
原料の濃度には制限はなく、所望の反応速度が得られる量を適宜選択でき、例えば、0.1〜80質量%から選択することができる。
アシル化剤は、原料に対して当量を用いればよいが、反応を円滑に進行させるために、原料に対する当量よりも過剰に用いてもよい。例えば、原料に対して1.0〜100当量を用いることができる。
反応圧力にも制限はなく、常圧下および加圧下のいずれにおいても行うことができる。加圧下での反応では、オートクレーブを用いることができる。系内に導入するあるいは存在するガスの種類にも、特に制限はない。
反応温度にも制限はないが、反応が円滑に進行し、イオン交換樹脂が熱的な劣化を受けにくい条件で行うことが好ましい。そのような反応温度としては、10℃〜150℃が好ましく、40℃〜100℃がより好ましい。また、原料の転化率を同じにしようとすれば、反応時間は反応温度が高いほど短く、逆に反応温度が低いほど長くなる。反応時間は、転化率や反応温度を考慮して適宜選択することができる。
反応形式は、攪拌混合式反応器、流通接触式反応器のいずれもが使用できる。また、バッチ式、連続式のいずれも用いることができるが、生産性を考慮すれば連続式の方が有利である。
以下、本発明において、実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(原料および生成物の分析)
原料および生成物の分析には、水素炎イオン化検出器、キャピラリーカラム、スプリット/スプリットレス注入口を備え付けたガスクロマトグラフィー(GC)を用いた。また、α−アシロキシアクリル酸および/またはα−アシロキシアクリル酸エステル、2,2−ジアシロキシプロピオン酸および/またはそのエステルの同定は、質量分析計を備え付けたガスクロマトグラフィー(GC/MS)およびエレクトロスプレーイオン化高分解能質量分析(ESI−HRMS)により行った。
仕込みの原料量をA(モル)、反応評価後の反応液から検出された原料量をB(モル)とした場合、原料の転化率C(%)は以下のように表される。
C(%)=100×(A−B)/A
また、ガスクロマトグラフィーにより定量された生成物のモル数をD(モル)とした場合、生成物の選択率S(%)は以下のように表される。
S(%)=100×D/(A−B)
さらに、生成物の収率Y(%)は以下のように表される。
Y(%)=100×D/A
[実施例1]
(イオン交換樹脂の前処理)
強酸性イオン交換樹脂であるアンバーリスト15H(MP Biomiedicals, Inc.製)3.5gを100mlねじ口三角フラスコに採り、酢酸(和光純薬工業株式会社製)25gを添加して、マグネチックスターラー上で室温において1時間攪拌した。
(反応評価)
このフラスコに、ピルビン酸エチル(和光純薬工業株式会社製)2.4g、無水酢酸(和光純薬工業株式会社)20gを添加して密栓し、ホットスターラーで70℃に加熱して攪拌を3時間行った。その間、反応開始から15分、30分、1時間、2時間および3時間において反応液を採取し、放冷後、生成物分析を行った。反応時間に対するα−アセトキシアクリル酸エチルの収率の変化を図1に示した。また、反応開始から3時間後のピルビン酸エチルの転化率、α−アセトキシアクリル酸エチル選択率および収率を表1に示した。
[実施例2]
反応温度を90℃、反応時間を1時間(5分、10分、15分、30分、45分、1時間で反応液を採取し分析)としたこと以外は、実施例1と同様にして反応評価を行った。反応時間に対するα−アセトキシアクリル酸エチルの収率の変化を図1に示した。また、反応開始から1時間後のピルビン酸エチルの転化率、α−アセトキシアクリル酸エチルの選択率および収率を表1に示した。
[実施例3]
反応温度を50℃、反応時間を5時間(30分、1時間、2時間、3時間、4時間および5時間で反応液を採取し分析)としたこと以外は、実施例1と同様にして反応評価を行った。反応時間に対するα−アセトキシアクリル酸エチルの収率の変化を図1に示した。また、反応開始から5時間後のピルビン酸エチルの転化率、α−アセトキシアクリル酸エチルの選択率および収率を表1に示した。
(反応液の精製)
反応終了後の液から強酸性イオン交換樹脂をろ過した。ろ液をロータリーエバポレーターにより濃縮して、褐色溶液を得た。この溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、ジエチルエーテルを添加して分液漏斗によりジエチルエーテル相を回収した。無水硫酸ナトリウムを加えて1晩乾燥後、ジエチルエーテルをロータリーエバポレーターにより留去して、黄褐色の反応精製液を得た。
(反応精製液の分析)
以下の手順で反応精製液中のα−アセトキシアクリル酸エチルと2,2−ジアセトキシプロピオン酸エチルの同定を行った。すなわち、この反応精製液をGC−MSにより分析し、得られたフラグメントパターンを図2および図3に示した。図2ではm/z=158の親イオン(M)が観測され、α−アセトキシアクリル酸エチルの分子量とよく一致した。また、図3では親イオン(M,m/z=218)からエトキシ基(CHCHO,m/z=45)脱離したm/z=173のフラグメントが観測され、他のフラグメントも2,2−ジアセトキシプロピオン酸エチルの構造とよく一致した。さらに、この溶液をESI−HRMSにより分析した。ヨウ化ナトリウム(NaI)を添加して測定したESI−HRMSスペクトルを図4および図5に示した。α−アセトキシアクリル酸エチル(図4)は、m/z=181.04690にC10Na([M+Na])として、2,2−ジアセトキシプロピオン酸エチル(図5)は、m/z=241.06974にC14Na([M+Na])として観測された。
[比較例1]
(反応評価)
パラトルエンスルホン酸一水和物(和光純薬工業株式会社製)0.03gをねじ口試験管(日電理化硝子株式会社製、品番:ST−16.5S、内容積:10ml)に採り、酢酸1.2gに溶解した。ピルビン酸エチル0.25g、無水酢酸2.1gを添加して密栓した後、メタルバス(小池精密機器製作所製、形式:MB−1H−UII)にセットし70℃で1時間加熱した。この間、ボルテックスミキサーにより10秒ほどの試験管振とうを15分毎に繰り返した。1時間でのピルビン酸エチルの転化率、α−アセトキシアクリル酸エチルの選択率および収率を表1に示した。
Figure 2009235006
反応時間とα−アセトキシアクリル酸エチル収率との関係である。 α−アセトキシアクリル酸エチルの質量分析結果(GC−MS)である。 2,2−ジアセトキシアクリル酸エチルの質量分析結果(GC−MS)である。 α−アセトキシアクリル酸エチルの高分解能質量分析結果(ESI−HRMS)である。 2,2−ジアセトキシアクリル酸エチルの高分解能質量分析結果(ESI−HRMS)である。

Claims (1)

  1. 強酸性陽イオン交換樹脂の存在下、ピルビン酸および/またはピルビン酸エステルとアシル化剤を反応させるα−アシロキシアクリル酸および/またはα−アシロキシアクリル酸エステルの製造方法。
JP2008084661A 2008-03-27 2008-03-27 α−アシロキシアクリル酸および/またはそのエステルの製造方法 Active JP5090989B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008084661A JP5090989B2 (ja) 2008-03-27 2008-03-27 α−アシロキシアクリル酸および/またはそのエステルの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008084661A JP5090989B2 (ja) 2008-03-27 2008-03-27 α−アシロキシアクリル酸および/またはそのエステルの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009235006A true JP2009235006A (ja) 2009-10-15
JP5090989B2 JP5090989B2 (ja) 2012-12-05

Family

ID=41249427

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008084661A Active JP5090989B2 (ja) 2008-03-27 2008-03-27 α−アシロキシアクリル酸および/またはそのエステルの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5090989B2 (ja)

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001517229A (ja) * 1997-03-27 2001-10-02 イーストマン ケミカル カンパニー カルボン酸ビニルエステルの製造方法
JP2009255023A (ja) * 2007-05-16 2009-11-05 Mitsubishi Rayon Co Ltd α−アシロキシアクリル酸および/またはそのエステルを製造するための触媒およびα−アシロキシアクリル酸および/またはそのエステルの製造方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001517229A (ja) * 1997-03-27 2001-10-02 イーストマン ケミカル カンパニー カルボン酸ビニルエステルの製造方法
JP2009255023A (ja) * 2007-05-16 2009-11-05 Mitsubishi Rayon Co Ltd α−アシロキシアクリル酸および/またはそのエステルを製造するための触媒およびα−アシロキシアクリル酸および/またはそのエステルの製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP5090989B2 (ja) 2012-12-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6092935B2 (ja) β−ヒドロキシカルボン酸の誘導体の製造方法
JP5365824B2 (ja) コハク酸ジアルキルの製造方法および1,4−ブタンジオールの製造方法
BRPI0610011B1 (pt) processo para preparação de (met)acrilatos de alquila
US11034641B2 (en) Methods of making acrylic acid from lactic acid or its derivatives in liquid phase
US10882034B2 (en) Catalysts for making acrylic acid from lactic acid or its derivatives in liquid phase
EP2614152A2 (en) Catalytic dehydration of lactic acid and lactic acid esters
JPH03167157A (ja) 不飽和カルボン酸エステルの製造法
US20120309911A1 (en) Method of producing arcylic and methacrylic acid
US20180133705A1 (en) Catalysts For Making Acrylic Acid From Lactic Acid Or Its Derivatives In Liquid Phase
US10723687B2 (en) Methods of making acrylic acid from lactic acid or its derivatives in liquid phase
Koh et al. Stereoselective SN2 Reactions of the (R)-Pantolactone Ester of Racemic. alpha.-Halo Carboxylic Acids with Aryl Oxides. A Synthesis of (S)-2-Aryloxy and (S)-2-Hydroxy Acids
CA2845666A1 (en) Method for producing alpha-hydroxycarboxylic acid esters
JP5090989B2 (ja) α−アシロキシアクリル酸および/またはそのエステルの製造方法
CA2861603C (en) Methods for preparing acrylic acid from biobased starting materials
JP5017173B2 (ja) α−アシロキシアクリル酸および/またはそのエステルを製造するための触媒およびα−アシロキシアクリル酸および/またはそのエステルの製造方法
JP2006289157A (ja) カーボネート合成触媒及びカーボネート製造方法
TWI529159B (zh) Method for continuously preparing carboxylic acid esters
CN105916865B (zh) 环丁烷四羧酸衍生物的制造方法
JP5439133B2 (ja) フェニルエステルの製造方法
Khusnutdinov et al. Methylation of mono-and dicarboxylic acids with dimethyl carbonate catalyzed with binder-free zeolite NaY
JP2014218446A (ja) α−アシロキシアクリル酸および/またはそのエステルを分離精製する方法
JP2005132790A (ja) 2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピル(メタ)アクリレートの製造方法
JP2009046415A (ja) エステルの製造法
JP2014185096A (ja) α−アシロキシアクリル酸および/またはそのエステルの製造方法
WO2021014988A1 (ja) α-アシロキシカルボン酸エステルの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20101006

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110905

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120817

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120906

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120913

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150921

Year of fee payment: 3

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5090989

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150921

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250