JP2009234952A - 枇杷種子由来エキス、およびその製造方法 - Google Patents

枇杷種子由来エキス、およびその製造方法 Download PDF

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豊 西岡
Yoshifumi Takao
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Abstract

【課題】美容健康剤や化粧剤の原材料として好適な枇杷種子由来エキス、およびその製造方法を得る。
【解決手段】抽出工程に先立って、枇杷種子を種子の形態のままで天日にて3日間以上天日干しする。かかる3日以上の天日干しにより、枇杷種子に含まれるアミグダリンをエムルシンにより分解することができる。つまり、3日間以上天日干しすることにより、アミグダリンの分解酵素であるエルムシンを失活させずに機能させることができるので、当該エムルシンによりアミグダリンをベンズアルデヒドとシアン化水素に分解させて、これらを揮発・除去することができる。エキス中に含まれるシアンの総量は、550ppm以上、2000ppm以下の範囲にあることが好適である。
【選択図】図1

Description

本発明は、枇杷種子由来エキスとその製造方法に関する。
この種の枇杷種子由来エキス(以下、適宜に「エキス」と略す。)が、リノール酸、リノレン酸、β−シトステロール、β−シトステロール−3−0−モノグリコシド等の各種有効成分を含有することは、例えば特許文献1ないし4に記載されており公知である。
特許文献1ないし3は、本出願の発明者の一人である西岡豊氏によってなされたものであり、特許文献1では当該エキスを用いて細胞線維化を抑制する組成物を作製している。特許文献2では、当該エキスを用いて体液中の脂肪量を調整するための医薬組成物を作製している。特許文献3では、当該エキスを用いて健康飲食品を作製している。特許文献4では、当該エキスを用いて血糖値上昇抑制等組成物、健康食品、抗糖尿剤を作製している。
特開2001−240553号公報 特開2002−173437号公報 特開2003−245056号公報 特開2005−325029号公報
枇杷種子由来エキスを美容健康剤に応用する際には、加水分解されると猛毒のシアン化水素を発生するアミグダリンの存在が危惧される。当該アミグダリンの毒性については、Cater.J.Hによる報告があり、ラットにおけるアミグダリンの致死量は600mgであると報告されている(Carter.J.H.,Mclefferty,M.A.,Goldeman,F.,Biochem.Pharamacol.29、301(1980))。また、エキス内におけるアミダリンの含量より、異常とも言える程の大量のエキスを摂取しなければ、青酸中毒などの症状を引き起こすことは無いと考える(特許文献1の段落[0026]参照)。
しかし、シアンを摂取すると体質等によっては下痢症状などの不具合を引き起こすおそれがあること、およびエキスの応用対象が毎日のように食する美容健康剤であることなどに鑑みると、残留する総シアン量を可及的に低く抑えることが、枇杷種子由来エキスを美容健康剤に応用する際の解決すべき重大な課題となる。
一方、アミグダリンには、遺伝子を傷つけるなど、発ガンのイニシエーターとなり得るハイドロキシラジカル(−OH)やスーパーオキサイド(O2 - )などの生体内ラジカルに対する消去能を備えることも知られている。このため、アミグダリン(シアン)を皆無とすることも、美容健康剤への応用に際して好適であるとは言えない。
本発明は以上のような知見からなされたものであり、ハイドロキシラジカル等の生体内ラジカルに対する良好な消去能を具備しながら、下痢症状などを引き起こすおそれがなく、したがって美容健康剤や化粧剤の原材料として好適な枇杷種子由来エキス、およびその製造方法を提供することにある。
本発明は、枇杷種子から抽出されるエキス(枇杷種子由来エキス)を対象とする。そして、エキス中に含まれるシアンの総量が550ppm以上、2000ppm以下の範囲にあることを特徴とする。
本発明に係る枇杷種子由来エキスは、これを数十から数百倍に希釈してなる飲料水の形態で服用することができる。また、エキスを固化・粉砕して顆粒状として服用してもよい。
エキスをパウダー状として、化粧剤に含ませることもできる。
エキス中に含まれるプロリンの総量は、900ppm以上の範囲にあることが望ましい。
また本発明は、枇杷種子由来エキスを製造する方法であって、採取した枇杷より果皮および果実を取り除き、得られた枇杷種子を洗浄処理する工程と、洗浄処理後の枇杷種子を、当該種子の形態のままで天日にて3日間以上乾燥させる天日干し工程と、天日干し後の枇杷種子を粉砕し、溶媒で抽出する抽出工程と、減圧処理により溶媒を除去して濃縮液を得る工程とを含むことを特徴とする。なお、天日干し工程においては、7日以上天日干しすることが、より好適である。
前記天日干し工程後、抽出工程に先立って、40〜60℃の温度条件下で5時間以上枇杷種子を乾燥させる乾燥工程を含むものとすることができる。
前記抽出工程においては、70%エタノールを溶媒として抽出処理を行うことが好ましい。
本発明に係る枇杷種子由来エキスによれば、シアンの総量を2000ppm以下の範囲としたので、エキスに含まれる下痢症状等を引き起こすおそれがなく、安全性に優れたエキスを得ることができる。加えて、本発明に係る枇杷種子由来エキスでは、シアンの総量を550ppm以上としたので、スーパーオキサイドやハイドロラジカルなどの生体内ラジカルに対する良好な消去能を発揮するものとなる。以上より、このエキスは、毎日のように服用される美容健康剤や化粧剤の原材料として好適である。
このように、エキス中のシアンの総量の最適化を図るためには、抽出工程に先立って、枇杷種子を種子の形態のままで天日にて3日間以上、より好ましくは7日以上、天日干しすることが有効である。かかる3日以上の天日干しにより、枇杷種子に含まれるアミグダリンをエムルシンにより分解することができる。つまり、3日間以上天日干しすることにより、アミグダリンの分解酵素であるエルムシンを失活させずに機能させることができるので、当該エムルシンによりアミグダリンをベンズアルデヒドとシアン化水素に効率的に分解させて、これらを揮発・除去することができる。これに対して、天日干し時間が短いと、枇杷種子中のアミグダリンを効率的に分解することができず、結果として、多くのシアンがエキス中に残留することとなる。
加えて、天日干し工程後、抽出工程に先立って、40〜60℃の温度条件下で5時間以上枇杷種子を乾燥させる乾燥工程を行うようにしていると、当該乾燥工程においてもエムルシンのアミグダリンに対する分解能が発揮され、同時に分解後のアミグダリンに対する揮散能が発揮され、したがって、エキス中のシアンの総量をより減少させることができる。かかる乾燥工程においては、種子をスライスしたうえで、乾燥を行うことが好ましい。
エキス中に含まれるプロリンの総量は、900ppm以上の範囲にあることが好ましい。このように表皮細胞増殖促進活性、コラーゲン合成促進活性、角質層保湿作用などの生理活性に優れた、有用アミノ酸の一種であるプロリンを枇杷種子由来エキス中に多く含ませることで、当該エキスは美容健康剤や化粧剤の原材料として有用なものとなる。
エキス中のプロリン等の有効成分の増加を図るとともに、シアン量(アミグダリン)の減少を図るためには、抽出工程における溶媒として70%エタノールを使用することが最適である。これに対して、例えば水を溶媒として抽出作業を行った場合には、エキス中のプロリン等は僅かであり、得られたエキスは美容健康飲剤や化粧剤としては最適であるとは言えない。
本発明者等は、枇杷種子由来エキス中のシアン化合物の含有量を抑えるためには、いかに、アミグダリンの分解酵素であるエルムシンを失活させずに機能させ、当該エムルシンによりアミグダリンをベンズアルデヒドとシアン化水素に分解させるとともに、これらをより確実に揮発・除去することが重要であるとの結論に至り、本発明を完成するに至った。枇杷種子由来エキスの具体的製造方法を以下に示す。
図1に示すように、まず、採取した枇杷より果皮及び果実を取去り、得られた枇杷種子を洗浄する(洗浄工程)。ここでは、枇杷種子を水洗いして薄皮等を除去する。
次に、洗浄処理された枇杷種子を水切りし、種子のままで延べ3日以上「天日干し」を行う(天日干し工程)。かかる天日干しにおける約40℃の温度条件において、アミグダリンの分解酵素であるエムルシンが最も良好な分解能を発揮し、アミグダリンをベンズアルデヒドとシアン化水素に分解して、これらを揮発・除去することができる。
これに対して、乾燥機等を用いて高温(例えば100℃)で乾燥処理した場合には、エムルシンは失活し、良好な分解能が得られない。また、種子をスライスさせて急速に乾燥させた場合にも、エムルシンが分解能を発揮するために不可欠な水分が不足するため、好ましくない。
なお、「天日干し」しない夜間等においては、酵素エムルシンを機能させるために、室温以上の温度(25℃)以上で保存することが好ましい。これに対して、保冷室等の冷所(例えば4℃以下)により保存した場合には、エムルシンの分解能が失活するため好ましくない。
次に、「天日干し」後、乾燥機等を用いて5時間以上乾燥を行う(乾燥工程)。この際の温度条件は40℃以上、60℃以下とする。また、以上のような乾燥工程においては、枇杷種子をスライスしたうえで乾燥を行うことが好ましい。
これに対して、乾燥効率を上げるために、60℃以上の温度で乾燥を行うと、急激な水分の減少により酵素エムルシンが失活あるいは機能しなくなるおそれがある。また、乾燥後、スライスされた種子を保存する際にも室温にて保存することが好ましく、保冷庫等の冷所による保存は不適である。
次に、枇杷種子を粉砕する。粉砕の方法は特に限定されず、ボールミル、ハンマーミル、ローラーミル、ロッドミル、サンプルミル、スタンプミル、ディスインテグレーター、乳鉢、冷却装置付きブレンダーなどの公知の粉砕機を用いることができる。粉砕時における発熱により、各種有効成分が分解することが考えられるため、冷却機付きブレンダーが最適である。なお、本願発明における「粉砕」とはスライスをも含む概念であり、粉砕後の種子の大きさは抽出条件に応じて、適宜に変えることができる。
枇杷種子を粉砕し粉砕物を得た後、各種溶媒に粉砕物を浸漬する(抽出工程)。溶媒としては、エタノール、メタノール、水、ヘキサン、酢酸エチル、クロロホルム、アセトンなどの極性、非極性溶媒を挙げることができる。より有用アミノ酸を多く含むエキスを得るという観点からは、溶媒としてはメタノール、エタノール等が好適である。
特に、70%エタノールを用いれば、有効成分の一つであるプロリンを、より多く抽出することができる。
かかる抽出工程においては、穏やかな攪拌下で行うことができる、溶液の状態に応じて攪拌を行い、場合によってはそのまま溶液を放置してもよい。攪拌する場合には、特に限定されないが、5〜10日間攪拌を持続させることができる。
その後、上清を分取し、これを蒸発乾固或いは濃縮させる(濃縮工程)。これら蒸発乾固或いは濃縮は、エバポレータを用いて、55℃〜80℃の温浴上で行うことができる。濃縮液に対して100℃で30分間加熱してもよい(加熱工程)。かかる加熱工程により、遊離シアンをさらに揮発・除去することができる。最後に濃縮工程を経た固化或いは濃縮液、又は加熱工程を経た加熱後の濃縮液に対して、水を加えて総量が200mlとなるようにして、本発明に係る枇杷種子由来エキスを得た。
〈シアン量の上限値について〉
(実施例1)
(1)天日干し、乾燥工程
枇杷の実を出荷した後の木で枇杷を回収し、手作業で種を外した。得られた枇杷種子に対して、水洗いおよび水切りし、種子形態のままで7日間天日干しを行った。天日干しを行わない夜間等においては、25℃以上に保たれた室内で保存した。次に、枇杷種子をスライスしたうえで、60℃の温度条件下で5時間乾燥させた。
(2)抽出工程、濃縮工程
乾燥工程を経た枇杷種子を、冷却機付きブレンダーで2〜3mm角に粉砕し、粉砕物(1kg)を70%エタノールに10日間浸漬させた。上清を分取し、エバポレータで80℃の温浴上で溶媒を飛ばして、約130gに濃縮させた。かかる濃縮液に水を加えて、総量を200mlとして、実施例1に係る枇杷種子由来エキスを得た。
すなわち、本実施例においては、天日干し工程および乾燥工程を経た粉砕状態の枇杷種子1kgを溶媒に浸漬させて抽出液を得たのちに、抽出液から溶媒を飛ばして約130gに濃縮し、最後に水を加えて総量を200mlとしたものを枇杷種子由来エキスとしている。以下においても同様である。
(実施例2)
天日干し工程において、天日干し時間を3日間とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る枇杷種子由来エキスを得た。
(実施例3)
乾燥工程において、常温で2日間乾燥させた以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係る枇杷種子由来エキスを得た。
(比較例1)
天日干し工程において、表面付着の水分を乾燥させるため数時間天日干しを行い、その後、冷所にて2週間保存した以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る枇杷種子由来エキスを得た。
(比較例2)
天日干し工程を省き、冷所にて4週間保存したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係る枇杷種子由来エキスを得た。
(比較例3)
天日干し工程において、表面付着の水分を乾燥させるため数時間天日干しを行い、その後、室温にて数日間保存した以外は、実施例1と同様にして、比較例3に係る枇杷種子由来エキスを得た。
得られた実施例および比較例に係る枇杷種子由来エキスに含まれる総シアン量の測定結果を表1に示す。
Figure 2009234952
表1より、天日干し時間が3日間以上である実施例1ないし3に係る枇杷種子由来エキスの方が、天日干し時間が数時間、あるいは天日干しを行わない比較例1ないし3に係る枇杷種子由来エキスよりも総シアン量が少ないことがわかる。以上より、天日干し時間を3日間以上とすることで、エキスに含まれるシアン量を減少させることができることが確認できた。
また、実施例1と実施例2の比較より、天日干し時間を7日間(1週間)とすることで、エキスに含まれる総シアン量をより減少させることできることが確認できた。また、実施例1と実施例3の比較より、抽出工程に先立って枇杷種子の形態のままで60℃の加温条件下で乾燥させる(実施例1)と、常温で乾燥させた場合(実施例3)よりも、総シアン量をより減少させることができることが確認できた。
次に、実施例1ないし3および比較例1ないし3に係る枇杷種子由来エキスを100倍に薄めて美容健康飲料水(1%枇杷種子由来エキス含有飲料水)を作成し、各飲料水を3人のモニターに7日間、朝夕50mlずつ内服させた。
その結果、比較例1ないし3(エキス中の総シアン量が2000ppmを超える)では、それぞれ一人のモニターが軟便・下痢症状を訴え、使用感も不快であったと回答した。これに対して、実施例1ないし3に係るエキス(総シアン量が2000ppm以下)を含む美容健康飲料水では、各3人のモニター全員が軟便等とならず、使用感も良好或いは普通であるとの回答を得た。
〈ラットを用いた急性経口毒性試験〉
上述のように、実施例1ないし3に係る枇杷種子由来エキスは、人が口にしても軟便・下痢症状を引き起こすことはなかったが、その安全性をより明確にするため、ラットを用いた急性経口毒性試験を行った。なお、当該試験は、財団法人日本食品分析センターに委託した。
試験群には2000mg/kgの用量の検体を、対象群には溶媒対象として注射用水を雄雌ラットに単回経口投与し、14日間観察を行った。具体的には、枇杷種子由来エキス(実施例1)である検体を注射用液で希釈し、100mg/mlの試験液を調整した。試験動物としては、5週齢のBrlhan:WIST系@Jcl雄雌ラットを日本クレア株式会社から購入し、約1週間の予備飼育を行って一般状態に異常のないことを確認した後、試験に使用した。試験動物は、ポリカーボネート製ゲージに各5匹収容し、室温23℃±2℃、照明時間12時間/日に設定した飼育室内において飼育した。飼料「マウス、ラット用固形飼料:ラボMRストック、日本農産工業株式会社」および飲料水(水道水)は自由に摂取させた。
検体投与量として2000mg/kgを投与する試験群及び溶媒対象として注射用水を投与する対象群を設定し、各群につき雄雌それぞれ5匹を用いた。
投与前に約17時間試験動物を絶食させた。体重を測定した後、試験群には試験液、対象群には注射用水をそれぞれ20ml/kgの投与容量で胃ゾンデを用いて強制単回経口投与した。
観察期間は14日間とし、投与日は頻回、翌日から1日1回の観察を行った。投与後7日及び14日に体重を測定し、t−検定により有意水準5%で群間の比較を行った。観察期間終了後に動物すべてを剖検した。
以上のような試験の結果、雄雌ともにいずれの投与群においても、観察期間中に死亡例は認められなかった。また、一般状態として、雄雌ともにいずれの投与群においても、観察期間中に異常は見られなかった。
投与後7日及び14日の体重測定において、雄雌ともに試験群は対象群と比べ体重値に差は見られなかった。なお表2に体重の変化を示す。また、観察期間終了後の剖検では、雄雌ともに全ての試験動物に異常は見られなかった。
Figure 2009234952
以上より、検体のラットにおける単回経口投与によるLD50値は、雄雌ともに2000mg/kg以上であるとの結論を得た。
〈シアン量の下限値について〉
総シアン量が700ppmである枇杷種子由来エキスを約10倍に薄めて12ppmの総シアン量を有するエキスを作製し、当該エキスのラジカル消去能について測定した。まず、実験的ラジカルに対するラジカル消去能を確認することを目的として、比較的安定なフリーラジカルを有するDPPH(1、1−Diphenyl−2−picrylhydrazyl)に対して試験を行った。ここでは、DPPHのフリーラジカルが半分となるときのエキスの添加量を測定した。また、比較例として、優れたラジカル消去能を有するものとして知られているアスコルビン酸(ビタミンC)とエダラボンについても同様の試験を行った。その結果を表3に示す。
Figure 2009234952
表3より、12ppmの総シアン量を有する本発明の枇杷種子由来エキスが、エダラボンと略同等のDPPHに対するラジカル消去能を具備することが確認できた。
次に、生体内ラジカルであるスーパーオキサイドに対するラジカル消去能について確認試験を行った。ここでは、枇杷種子由来エキス(12ppm総シアン量)、アスコルビン酸、エダラボン各100μMを用いて、スーパーオキサイドのSOD様活性(%)を測定した。その結果を表4に示す。
Figure 2009234952
表4より、12ppmの総シアン量を有する本発明の枇杷種子由来エキスが、アスコルビン酸やエダラボンに比べて、格段に優れたスーパーオキサイドに対する消去能を具備することがわかる。
次に、生体内ラジカルであるハイドロキシラジカルに対するラジカル消去能について確認試験を行った。ここでは、枇杷種子由来エキス(12ppm総シアン量)、アスコルビン酸、エダラボン各100μMを用いて、ハイドロキシラジカルのSOD様活性(%)を測定した。その結果を表5に示す。
Figure 2009234952
表5より、12ppmの総シアン量を含む本発明の枇杷種子由来エキスが、アスコルビン酸やエダラボンに比べて、格段に優れたハイドロキシラジカルに対する消去能を具備することがわかる。
次に、濃度を0mg/ml〜10mg/mlの範囲で希釈してなる5種の濃度のエキスを作製し、各エキスのスーパーオキサイドに対する産生抑制率と除去率とを測定した。その結果を図2に示す。図2より、濃度の上昇に伴い、産生抑制率および除去率は上昇傾向にあることがわかる。このことから、少なくとも12ppmの総シアン量を含む本発明の枇杷種子由来エキスが、生体内ラジカルに対する優れた産生抑制能および消去能を発揮すること、および当該総シアン量の増加に伴い、これら産生抑制能および消去能が増すことが確認できた。また、当該試験結果、および実施例1の結果より、本発明においては、550ppmを総シアン量の下限値とした。
〈枇杷種子由来エキスに含まれる有効成分について〉
枇杷種子由来エキスに含まれる成分は、枇杷種子を極性の異なる溶媒を用いて抽出することにより、その物性により振り分けられる。したがって、使用した溶媒により、エキス成分の種類および含有量は異なる。
図3は、各種枇杷種子由来エキスの成分を調べるために、各種溶媒を用いて抽出したエキスの薄層クロマトグラムを示す。
この薄層クロマトグラムによれば、溶媒が水であるエキス(以下、水エキスという)は、原点にのみスポットが認められ、したがって、タンパク質、糖類、アミグダリン等の極性の高い化合物を含有すると考えられる。
また、溶媒が70%エタノールであるエキス(以下、70%エタノールエキスという)、及び溶媒がメタノールであるエキス(以下、メタノールエキスという)は、薄層クロマトグラムにおいて原点のスポットが水エキスに比較して小さく、タンパク質、糖類、アミグダリン等の極性の高い化合物が少ないと考えられる。70%エタノールエキス及びメタノールエキスにおいては、薄層クロマトグラムにてRf値が0.63を示す化合物はリノール酸、Rf値が0.53を示す化合物は、β−シトステロール、Rf値が0.41を示す化合物はリノール酸、Rf値が0.25を示す化合物はβ−シトステロール−3−0−モノグリコシドであることが、構造解析より判明したことにより、これらの化合物を少なくとも含む。
枇杷種子由来エキスのアミノ酸の分析結果を表6に示す。なお、表6では、枇杷種子1kgから得られるアミノ酸量を示す。当該表1より、70%エタノールを用いて抽出されたエキスが、他の溶媒を用いて抽出されたエキスよりも、プロリンを多く含むことがわかる。
Figure 2009234952
表7および図4に、枇杷種子由来エキスのアミノ酸量をより詳しく分析した結果を示す。かかる表7におよび図4は、70%エタノールを用いて抽出されたエキスの1ml中に含まれる各アミノ酸量を示している。なお、表7において「<QL」は、「quantification limit:(定量限界よりも少ないこと)」を示す。なお、表7において、遊離プロリン量が総プロリン量を超えているのは誤差であると考える。また、当該測定結果より、このエキス中においては、略全てのプロリンが、遊離プロリンとして存在していることがわかる。
Figure 2009234952
また表8に、本発明の他の実施例に係る枇杷種子由来エキスのアミノ酸量の測定結果を示す。当該数値では、特にプロリンの総量が0.9mg/ml(900ppm)以上である点が着目される。
Figure 2009234952
次に、枇杷種子由来エキスのヒト皮膚生理に対する効果を確かめることを目的として、経皮水分喪失を測定した。具体的には、皮膚に疾患を持たない女性36名(30歳、40歳、50歳代の各群)を対象として、表8に係る枇杷種子由来エキスを100倍に薄めてなる美容健康飲料水を朝夕50mlずつ4週間内服してもらった。内服前、内服2週間、内服終了後に検査を行った。使用機器としては、Tewameterを用いて、前腕屈側を30回測定し、平均値を得た。その結果を図5に、使用感に関するアンケート(設問式のデータ集計)の結果を図6に示す。
図5より、30歳代女性では、僅かな経皮水分の損失の増加が見られたが、40歳代および50歳代では、減少が見られた。また、図6に示すように、枇杷種子由来エキスを含む美容健康飲料水の4週間内服によって自覚的にカサカサ感が改善したことが確認できた。以上の図4および図5の結果より、本発明に係る枇杷種子由来エキスが、カサカサ感などの改善に有用であることが確認できた。
本発明に係る枇杷種子由来エキスの製造方法を示す図である。 枇杷種子由来エキスのスーパーオキサイドに対する産生抑制率と除去率の測定結果を示す図である。 各種溶媒を用いた場合の薄層クロマトグラムの結果を示す図である。 枇杷種子由来エキスのアミノ酸量を示す図である。 (a)、(b)、(c)は、経皮水分の測定結果を示す図である。 (a)、(b)、(c)は、枇杷種子由来エキスを含む美容健康飲料水を内服した際の使用感を示すアンケート結果である。

Claims (5)

  1. エキス中に含まれるシアンの総量が、550ppm以上、2000ppm以下の範囲にあることを特徴とする枇杷種子由来エキス。
  2. エキス中に含まれるプロリンの総量が900ppm以上の範囲にある請求項1記載の枇杷種子由来エキス。
  3. 枇杷種子由来エキスを製造する方法であって、
    採取した枇杷より果皮および果実を取り除き、得られた枇杷種子を洗浄処理する工程と、
    洗浄処理後の枇杷種子を、当該種子の形態のままで天日にて3日間以上乾燥させる天日干し工程と、
    天日干し後の枇杷種子を粉砕し、溶媒で抽出する抽出工程と、
    減圧処理により溶媒を除去して濃縮液を得る工程とを含むことを特徴とする枇杷種子由来エキスの製造方法。
  4. 前記天日干し工程後、抽出工程に先立って、40〜60℃の温度条件下で5時間以上枇杷種子を乾燥させる乾燥工程を含む請求項3記載の枇杷種子由来エキスの製造方法。
  5. 前記抽出工程において、70%エタノールを溶媒として抽出処理を行う請求項3又は4記載の枇杷種子由来エキスの製造方法。
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